説明

撮影装置および撮影装置の制御方法並びにプログラム

【課題】AF補助光源を用いることなく、画像のピンぼけを防止する。
【解決手段】本撮影の指示を受けると、発光制御部23が本撮影の前にフラッシュ24をプレ発光させる。撮像系9がプレ発光によるプレ発光画像を取得し、顔検出部36がプレ発光画像から顔を検出する。第2のAF処理部37が、プレ発光画像から検出された顔の大きさに応じて、撮像系9の合焦動作を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタルカメラ等の撮影装置および撮影装置の制御方法並びに撮影装置の制御方法をコンピュータに実行させるためのプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
デジタルカメラにおいては、レリーズボタンを半押しする操作によりプレ撮影を行い、プレ撮影により取得されたプレ画像を用いてAE処理およびAF処理を行って、露出調整および焦点合わせ等の撮影準備を行い、その後レリーズボタンを全押しする本撮影により画像が取得される。
【0003】
ここで、AF処理は、プレ画像に基づいて合焦位置を検出することにより行われる。合焦位置の検出方式としては、例えば、所望とする被写体にピントが合った状態では画像のコントラストが高くなるという特徴を利用するTTL方式が知られている。TTL方式は、具体的には、プレ画像を複数のAF領域に分割し、各AF領域内の画像に対してハイパスフィルタによるフィルタリング処理を施してAF領域毎にAF評価値を算出し、AF評価値の算出を、フォーカスレンズを所定範囲内において移動させながら複数回繰り返し行い、最も評価が高い、すなわちフィルタによる出力値が最も高いAF評価値を得たフォーカスレンズの位置を合焦位置として検出する方式である。
【0004】
一方、顔検出機能をデジタルカメラに設け、顔検出結果を用いての様々な処理が行われている。例えば、レリーズボタンを押下する前に取得されるスルー画像から顔を検出し、検出した顔の大きさに基づいて、被写体距離を算出する手法が提案されている(特許文献1参照)。
【0005】
ところで、本撮影の前にフラッシュの発光を伴わない撮影およびフラッシュの発光を伴う撮影を行うことにより2つの画像を取得し、2つの画像を用いて本撮影時のフラッシュの発光量を制御する(すなわちフラッシュ調光する)手法が提案されている。このようにフラッシュ調光を行ってフラッシュの発光量を制御することにより、適切な明るさを有する画像を取得することができる。また、発光を伴う露光により取得された画像から顔を検出し、検出した顔領域に応じてフラッシュ調光を行う制御領域を決定し、制御領域内の画像を用いてフラッシュ調光を行う手法が提案されている(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2007−329784号公報
【特許文献2】特開2005−184508号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、TTL方式のAF処理を行うためには、合焦位置を検出するための最低限の被写体輝度が必要である。しかしながら、最低限の被写体輝度が得られない場合、AF処理を適切に行うことができないため、撮影により取得した画像にピンぼけが生じてしまうという問題がある。また、上記特許文献1に記載された手法においても、顔を検出するための最低限の被写体輝度が必要であり、その最低限の被写体輝度が得られない被写体では、顔を検出することができず、その結果、被写体距離を算出できなくなってしまう。
【0007】
この場合、カメラにAF補助光源を設け、AF補助光源から被写体にAF補助光を照射することにより、被写体輝度を確保することが考えられる。しかしながら、この手法ではAF補助光源をカメラに設ける必要があるため、カメラのコストが増大する。さらにAF補助光を被写体に照射する必要があることから、カメラの電力の消費量も大きくなってしまう。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みなされたものであり、AF補助光源を用いることなく、画像のピンぼけを防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による撮影装置は、撮影により画像を取得する撮影手段と、
前記画像から顔を検出する顔検出手段と、
フラッシュと、
本撮影の指示を受けると、該本撮影の前に前記フラッシュをプレ発光させる発光制御手段と、
前記プレ発光時に前記撮影手段によりプレ発光撮影を行わせることによりプレ発光画像を取得し、該プレ発光画像から顔を検出するよう前記撮影手段および前記顔検出手段を制御する制御手段と、
前記プレ発光画像から検出された顔の大きさに応じて前記撮影手段の合焦動作を行う合焦手段とを備えたことを特徴とするものである。
【0010】
「本撮影」とは、レリーズボタンを全押しすることにより被写体を撮影して被写体を表す本画像を得る撮影であり、レリーズボタンを半押しすることにより、AE処理およびAF処理(本発明による顔の大きさに応じた合焦動作を行うものとは異なる)等の撮影準備を行うプレ撮影とは異なる撮影である。
【0011】
「フラッシュ」は、撮影装置に内蔵されたフラッシュでも、脱着可能な外付フラッシュでもよい。
【0012】
「顔の大きさ」とは、例えば、顔の縦方向の長さ、横方向の長さおよび顔の面積等を用いることができるが、顔を矩形領域により検出した場合の矩形領域の縦または横方向の長さ、および矩形領域の面積を顔の大きさとしてもよい。また、プレ発光画像の縦または横方向の長さあるいは面積に対する顔または矩形領域の縦または横方向の長さおよび面積を顔の大きさとして用いてもよい。
【0013】
なお、本発明による撮影装置においては、前記発光制御手段を、前記本撮影の指示を受けると、該本撮影の前に前記撮影手段に発光を伴わない非発光撮影および前記プレ発光時における前記プレ発光撮影を行わせ、前記非発光撮影により取得された非発光画像および前記プレ発光画像に基づく演算を行って、前記本撮影時における前記フラッシュの発光量を制御するフラッシュ調光を行う手段としてもよい。
【0014】
また、本発明による撮影装置においては、プレ撮影により取得されたプレ画像を複数の領域に分割し、各領域のAF評価値に基づいて前記撮影手段の合焦動作を行う他の合焦手段をさらに備えるものとし、
前記制御手段を、前記他の合焦手段による合焦動作が完了不可能な場合に、前記プレ発光画像から顔を検出するよう前記撮影手段および前記顔検出手段を制御する手段とし、前記合焦手段を、前記プレ発光画像から検出された顔の大きさに応じて前記撮影手段の合焦動作を行う手段としてもよい。
【0015】
「合焦動作が完了不可能である」とは、被写体輝度が低く、AF評価値を適切に算出することができないために、撮影手段が備えるフォーカスレンズの合焦位置を検出できない状態にあることを意味する。また、合焦位置が検出されるまでにAF評価値の算出が繰り返し行われるが、被写体輝度が低いとAF評価値の算出回数が多くなり、合焦位置の検出までに長時間を要する場合がある。本発明においては、AF評価値の算出回数が多くなり、合焦位置の検出が所定時間内に終了しない場合も、合焦動作が完了不可能な状態にあるものとする。
【0016】
本発明による撮影装置の制御方法は、撮影により画像を取得する撮影手段と、
フラッシュと、
本撮影の指示を受けると、該本撮影の前に前記フラッシュをプレ発光させる発光制御手段とを備えた撮影装置の制御方法において、
前記プレ発光時に前記撮影手段によりプレ発光撮影を行わせることによりプレ発光画像を取得し、
該プレ発光画像から顔を検出し、
前記プレ発光画像から検出された顔の大きさに応じて前記撮影手段の合焦動作を行うことを特徴とするものである。
【0017】
なお、本発明による撮影装置の制御方法をコンピュータに実行させるためのプログラムとして提供してもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、本撮影の指示を受けると、本撮影の前にフラッシュがプレ発光され、プレ発光時に撮影手段によりプレ発光撮影を行わせることによりプレ発光画像が取得され、プレ発光画像から顔が検出され、さらに検出された顔の大きさに応じて撮影手段の合焦動作が行われる。
【0019】
ここで、人間の顔の大きさは、人物によらず略一定の大きさを有するため、その大きさを見れば撮影装置からの大まかな距離が分かるものである。また、フラッシュはどのようなカメラにも設けられているものである。このため、検出された顔の大きさに応じて撮影手段の合焦動作を行うことにより、AF補助光源等の特別な手段を撮影装置に設けることなく、ピンぼけのない画像を取得することができる。
【0020】
また、フラッシュ調光を行う場合の発光を伴う撮影とプレ発光撮影とを兼用することにより、合焦動作のためにフラッシュを発光させることなく、フラッシュ調光と併せて撮影手段の合焦動作を行うことができるため、効率よく合焦動作を行うことができる。
【0021】
また、プレ撮影により取得されたプレ画像を複数の領域に分割し、各領域のAF評価値に基づいて撮影手段の合焦動作を行う他の合焦手段をさらに備えた場合において、他の合焦手段の合焦動作が完了不可能な場合に、プレ発光画像から検出された顔の大きさに応じて撮影手段の合焦動作を行うことにより、被写体輝度が高く、他の合焦手段による合焦動作が完了可能な場合には、より精度が高い他の合焦手段により撮影手段の合焦動作が行われるため、より精度よく合焦動作を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。図1および図2は本発明の実施形態による撮影装置を適用したデジタルカメラ1の外観を示す図である。図1および図2に示すように、このデジタルカメラ1の上部には、レリーズボタン2、電源ボタン3およびズームレバー4が備えられている。
【0023】
レリーズボタン2は、2段階の押下により2種類の動作を指示できる構造となっている。例えば、自動露出調整機能(AE:Auto Exposure)、自動焦点調節機能(AF:Auto Focus)を利用した撮影では、デジタルカメラ1は、レリーズボタン2が軽く押下される第1の押下操作(半押しともいう)がなされたときに、露出調整、焦点合わせ等の撮影準備を行う。その状態で、レリーズボタン2が強く押下される第2の押下操作(全押しともいう)がなされると、デジタルカメラ1は露光を開始し、露光により得られた1画面分の画像データを記録メディアに記録する。
【0024】
また、デジタルカメラ1の背面には、液晶等のモニタ5、撮影モード等の設定に利用されるモードダイヤル6、および後各種操作ボタン8が備えられている。なお、本実施形態においては、撮影を行う撮影モード、記録メディアに記録された画像をモニタ5に再生する再生モード等を設定可能とされている。
【0025】
次いで、デジタルカメラ1の内部構成について説明する。図3は本発明の実施形態による撮影装置を適用したデジタルカメラの内部構成を示す概略ブロック図である。図3に示すように本実施形態による撮影装置を適用したデジタルカメラ1は、撮像系9を有する。
【0026】
撮像系9は、被写体にピントを合わせるためのフォーカスレンズ10aおよびズーム機能を実現するためのズームレンズ10bからなる撮影レンズ10を有する。各々のレンズは、モータとモータドライバとからなるフォーカスレンズ駆動部11およびズームレンズ駆動部12によって光軸方向に移動可能である。フォーカスレンズ駆動部11は、後述する第1のAF処理部28または第2のAF処理部37からの指示に基づいて、ズームレンズ駆動部12はズームレバー4の操作に応じたCPU40からの指示に基づいて、各々のレンズの移動を制御する。なお、フォーカスレンズ10aおよび第1のAF処理部28が、他の合焦手段を、フォーカスレンズ10aおよび第2のAF処理部37が、合焦手段を構成する。
【0027】
絞り14は、複数の絞り羽根からなる。絞り駆動部15は、ステッピングモータ等小型のモータで、AE処理部29から出力される絞り値データに応じて、絞りの開口サイズが目的に適ったサイズになるように絞り羽根の位置を調整する。
【0028】
シャッタ16はメカニカルシャッタであり、シャッタ駆動部17によって駆動される。シャッタ駆動部17は、レリーズボタンの押下により発生する信号と、AE処理部29から出力されるシャッタスピードデータとに応じて、シャッタ16の開閉の制御を行う。
【0029】
シャッタ16の後方には撮像素子であるCCD18を有している。CCD18は、多数の受光素子を2次元的に配列した光電面を有しており、撮影レンズ10等の光学系を通過した被写体光がこの光電面に結像し、光電変換される。光電面の前方には、各画素に光を集光するためのマイクロレンズアレイと、R,G,B各色のフィルタが規則的に配列されたカラーフィルタアレイとが配置されている。CCD18は、CCD制御部19から供給される垂直同期信号および水平同期信号に同期して、画素毎に蓄積された電荷を1ラインずつシリアルなアナログ撮影信号として出力する。なお、垂直同期信号により1画面分の電荷が出力されることとなる。各画素において電荷を蓄積する時間、すなわち露光時間は、CCD制御部19から与えられる電子シャッタ駆動信号によって決定される。また、CCD18はCCD制御部19により、あらかじめ定められた大きさのアナログ撮像信号が得られるようにゲインが調整されている。
【0030】
CCD18から読み出されたアナログ撮影信号は、アナログフロントエンド(AFE)20に入力される。AFE20は、アナログ信号のノイズを除去する相関2重サンプリング回路(CDS)と、アナログ信号のゲインを調節するオートゲインコントローラ(AGC)と、アナログ信号をデジタル信号に変換するA/Dコンバータ(ADC)とからなる。このデジタル信号に変換された画像データは、画素毎にR,G,Bの濃度値を持つCCD−RAWデータである。
【0031】
タイミングジェネレータ21は、同期信号を発生させるものであり、このタイミング信号をシャッタ駆動部17、CCD制御部19、およびAFE20に供給することにより、レリーズボタンの操作、シャッタ16の開閉、CCD18からの電荷の読み出し、およびAFE20の処理の同期をとっている。
【0032】
また、デジタルカメラ1は撮影時において必要なときに発光されるフラッシュ24を有する。フラッシュ24は、発光制御部23によりその発光が制御される。
【0033】
フラッシュ24は、レリーズボタン2の全押し操作と連動して2回発光する。1回目の発光は被写体からの反射光量を測定するためのプレ発光であり、通常の発光に比べれば発光量は微小である。プレ発光には反射光量の測定のほか、赤目を予防する目的もある。2回目の発光は被写体に対して撮影に十分な光を供給するための(適切な露光量を得るための)本発光であり、本発光の発光量が適正であれば、適切な明るさの画像を得ることができる。
【0034】
また、発光制御部23はフラッシュ調光を行う。すなわち、レリーズボタン2が全押しされると、後述するCPU40がフラッシュ調光の開始の指示を発光制御部23に対して行い、これにより、発光を伴わない非発光撮影により非発光画像が取得される。非発光画像はフレームメモリ26に記憶されている最新の画像データにより表される画像である。さらに、フラッシュ24がプレ発光した際にプレ発光画像が取得される。プレ発光画像はプレ発光時にフレームメモリ26に記憶されている画像データにより表される画像である。
【0035】
そして、発光制御部23は、非発光画像およびプレ発光画像に基づいて、フラッシュ24の発光量を算出する。具体的には、まず非発光画像およびプレ発光画像を複数の調光エリアに分割し、調光エリア毎の輝度情報の差分値を算出する。図4は調光エリアへの分割の一例を示す図であり、非発光画像またはプレ発光画像を、n×m(ここでは16×16=256)個に分割した状態を示している。以下の説明では、(1,1)、(n,m)といった符号により、位置が異なる調光エリアを区別するものとする。
【0036】
そして、発光制御部23は、非発光画像の調光エリア毎の非発光輝度情報Ya(1,1)〜Ya(n,m)を取得する。例えば、非発光画像をRGB−YCC変換し、各画素の輝度値を求め、その輝度値の調光エリア毎の平均値を求め、非発光輝度情報Yaとする。プレ発光画像についても、同様の手順により各調光エリアのプレ発光の輝度情報Yb(1,1)〜Yb(n,m)を取得する。次いで発光制御部23は、調光エリア毎に非発光の輝度情報Ya(x,y)とプレ発光の輝度情報Yb(x,y)との差分値Yd(x,y)(=Yb(x,y)−Ya(x,y))を算出する。
【0037】
そして、全領域ブロックの差分Yd(1,1)〜Yd(n,m)に基づいて、フラッシュ発光量のプレ発光に対する発光倍率を算出する。例えば、差分Yd(1,1)〜Yd(n,m)および非発光輝度情報Ya(1,1)〜Ya(n,m)の単純平均あるいは加重平均Ydm、Yamを算出し、目標輝度Yoを用いて下記の式(1)により、目標輝度を得るために必要な、プレ発光の発光量に対する発光倍率を算出する。
【0038】
発光倍率=(Yo−Yam)/Ydm (1)
さらに、発光制御部23は、あらかじめ発光時間と発光倍率との関係を対応付けたルックアップテーブルを参照して、発光倍率からフラッシュ24の発光時間を算出する。なお、算出した発光倍率および発光時間がフラッシュ24の発光量となる。また、ルックアップテーブルは内部メモリ35に記憶されている。
【0039】
また、デジタルカメラ1は、AFE20が出力した画像データをデータバス41を介して他の処理部に転送する画像入力コントローラ25、および画像入力コントローラ25から転送された画像データを一時記憶するフレームメモリ26を備える。
【0040】
フレームメモリ26は、画像データに対して後述の各種処理を行う際に使用する作業用メモリであり、例えば、一定周期のバスクロック信号に同期してデータ転送を行うSDRAM(Synchronous Dynamic Random Access Memory)が使用される。
【0041】
表示制御部27は、フレームメモリ26に格納された画像データをスルー画像としてモニタ5に表示させたり、再生モード時に記録メディア34に保存されている画像をモニタ5に表示させたりするためのものである。なお、スルー画像は、撮影モードが選択されている間、タイミングジェネレータ21が発生する垂直同期信号に同期して、所定時間間隔で撮像系9により撮影される。
【0042】
第1のAF処理部28およびAE処理部29は、プレ画像に基づいて撮影条件を決定する。このプレ画像とは、レリーズボタンが半押しされることによって発生する半押し信号を検出したCPU40がCCD18にプレ撮影を実行させた結果、フレームメモリ26に格納された画像データにより表される画像であり、プレ発光画像とは異なる。
【0043】
第1のAF処理部28は、プレ画像に基づいてフォーカスレンズ10aの合焦位置を検出する(第1のAF処理)。合焦位置の検出方式としては、例えば、所望とする被写体にピントが合った状態では画像のコントラストが高くなるという特徴を利用して合焦位置を検出するTTL方式を用いる。TTL方式は、プレ画像を複数のAF領域に分割し、各AF領域内の画像に対してハイパスフィルタによるフィルタリング処理を施してAF領域毎にAF評価値を算出し、AF評価値の算出を、フォーカスレンズ10aを所定範囲内において移動させながら複数回繰り返し行い、最も評価が高い、すなわちフィルタによる出力値が最も高いAF評価値を得たフォーカスレンズ10aの位置を合焦位置として検出して、合焦動作を完了するものである。
【0044】
このように、第1のAF処理においてはAF評価値の算出が、適切な合焦位置が検出されるまで繰り返し行われる。しかしながら、被写体輝度が所定輝度よりも低い場合には、AF評価値の最大値を得ることが困難なため、フォーカスレンズ10aの所定範囲内における移動およびAF評価値の算出が繰り返し行われることから、合焦位置が検出されるまでに長時間を要する場合がある。このため、第1のAF処理部28は、被写体輝度が低く、AF評価値を適切に算出することができないために合焦位置を検出できない場合、あるいは合焦位置の検出までに長時間を要する場合等、第1のAF処理が完了不可能な場合、その旨の情報をCPU40に出力する。
【0045】
AE処理部29は、プレ画像に基づいて被写体輝度を測定し、測定した被写体輝度に基づいて絞り値およびシャッタスピード等を決定し、絞り値データおよびシャッタスピードデータを露出設定値として出力する(AE処理)。
【0046】
AWB処理部30は、撮影時のホワイトバランスを自動調整する(AWB処理)。
【0047】
画像処理部31は、本画像の画像データに対して、階調補正、シャープネス補正、色補正等の画質補正処理、およびCCD−RAWデータを輝度信号であるYデータと、青色色差信号であるCbデータおよび赤色色差信号であるCrデータとからなるYCデータに変換するYC処理を行う。この本画像とは、レリーズボタンが全押しされることによって実行される本撮影によりCCD18から取り込まれ、AFE20、画像入力コントローラ25経由でフレームメモリ26に格納された画像データにより表される画像である。
【0048】
圧縮/伸長処理部32は、画像処理部31によって処理が行われた本画像の画像データに対して、例えば、JPEG等の圧縮形式で圧縮処理を行い、画像ファイルを生成する。この画像ファイルには、Exifフォーマット等に基づいて、撮影日時等の付帯情報が格納されたタグが付加される。
【0049】
メディア制御部33は、不図示のメディアスロットルに着脱自在にセットされた記録メディア34にアクセスして、画像ファイルの書き込みと読み込みの制御を行う。
【0050】
内部メモリ35は、デジタルカメラ1において設定される各種定数、ルックアップテーブル、およびCPU40が実行するプログラム等を記憶する。
【0051】
また、デジタルカメラ1は、顔検出部36および第2のAF処理部37を備える。
【0052】
顔検出部36は、テンプレートマッチングによる手法、顔の多数のサンプル画像を用いてマシンラーニング学習により得られた顔判別器を用いる手法等により、撮影により取得された画像から、顔を囲む矩形の領域(顔領域)を顔として検出する。なお、顔を検出する手法はこれに限定されるものではなく、例えば画像における肌色を有しかつ顔の輪郭形状を囲む矩形の領域を顔として検出する手法、顔の輪郭形状をなす領域を顔として検出する手法等、任意の手法を用いることができる。また、撮影により取得した画像に顔が複数含まれている場合にはすべての顔を検出する。
【0053】
なお、顔検出部36は、スルー画像、プレ画像、プレ発光画像および本画像のいずれからも顔を検出するものであり、検出された顔の情報は、AF処理、フラッシュ調光、および顔の画質を向上させる画像処理等に用いられる。とくに、第1のAF処理部28においてAF処理が完了不可能な場合に、顔検出部36は、フラッシュ調光により取得されるプレ発光画像から顔を検出する。
【0054】
第2のAF処理部37は、第1のAF処理部28においてAF処理が完了不可能な場合に、フラッシュ調光により取得されるプレ発光画像から検出された顔の大きさに応じて、フォーカスレンズ10aの合焦位置を決定する(第2のAF処理)。まず、第2のAF処理部37は、図5に示すように画像の縦方向の長さL1に対する顔領域の縦方向の長さF1の比率F1/L1を算出する。ここで、人間の顔の大きさは、人物によらず略一定の大きさを有するため、その大きさを見ればデジタルカメラ1から被写体までの大まかな距離が分かるものである。
【0055】
本実施形態においては、図6に示すように各種ズーム倍率に応じた比率F1/L1に対するフォーカスレンズ10aの合焦位置Pの関係を規定したルックアップテーブルLUT1を内部メモリ35に記憶しており、第2のAF処理部37は、ルックアップテーブルLUT1を参照して、算出した比率F1/L1に対する合焦位置Pを求める。そして求めた合焦位置Pにフォーカスレンズ10aを移動させるための指示をフォーカスレンズ駆動部11に出力する。これにより合焦動作が完了する。
【0056】
CPU40は、操作ボタン8および第1のAF処理部28等の各種処理部からの信号に応じてデジタルカメラ1の本体各部を制御する。
【0057】
データバス41は、各種処理部、フレームメモリ26およびCPU40等に接続されており、画像データおよび各種指示等のやり取りを行う。
【0058】
次いで、本実施形態において行われる処理について説明する。図7は本実施形態において行われる処理を示すフローチャートである。なお、本発明はフラッシュ調光により取得されたプレ発光画像を用いた処理に特徴を有するため、以下に説明する実施形態においては、フラッシュ調光が行われるものとして説明する。
【0059】
CPU40はレリーズボタン2が半押しされたか否かを監視しており(ステップST1)、レリーズボタン2が半押しされると、撮像系9がプレ撮影を行い(ステップST2)、第1のAF処理部28がプレ撮影により取得されたプレ画像を用いて第1のAF処理を行う(ステップST3)。次いでCPU40は、第1のAF処理が完了不可能であるか否かを判定し(ステップST4)、ステップST4が肯定されると、撮影者が撮影をやめることにより、レリーズボタン2が離されたか否かを判定する(ステップST5)。ステップST5が肯定されるとステップST1に戻る。ステップST5が否定されると、レリーズボタン2が全押しされたか否かを判定し(ステップST6)、ステップST6が否定されるとステップST5に戻る。
【0060】
ステップST6が肯定されると、発光制御部23がフラッシュ調光を行う(ステップST7)。これによりフラッシュ24の発光量が算出される。なお、この場合のフラッシュ調光時のフォーカスレンズ10aの合焦位置は、あらかじめ定められた位置(例えばカメラから1〜2mの位置)に設定される。次いで、顔検出部36がフラッシュ調光により取得されたプレ発光画像から顔を検出し(ステップST8)、第2のAF処理部37が顔の大きさに基づいて第2のAF処理を行う(ステップST9)。そして、フォーカスレンズ駆動部11が第2のAF処理により決定された合焦位置にフォーカスレンズ10aを移動する(合焦動作、ステップST10)。
【0061】
次いで、CPU40が本撮影を行い(ステップST11)、処理を終了する。本撮影においては、フラッシュの発光(本発光)および画像の取得は、CPU40の指示の下、同期して行われる。なお、発光制御部23は、CPU40から指示されたタイミングで、算出した発光量にてフラッシュ24を発光させる。そして本撮影により取得した本画像の画像データを記録メディア34に記録する。
【0062】
一方、ステップST4が否定されると、CPU40は、撮影者が撮影をやめることにより、レリーズボタン2が離されたか否かを判定する(ステップST12)。ステップST12が肯定されるとステップST1に戻る。ステップST12が否定されると、レリーズボタン2が全押しされたか否かを判定し(ステップST13)、ステップST13が否定されるとステップST12に戻る。
【0063】
ステップST12が肯定されると、発光制御部23がフラッシュ調光を行う(ステップST14)。これによりフラッシュ24の発光量が算出される。なお、この場合のフラッシュ調光時のフォーカスレンズ10aの合焦位置は、第1のAF処理により検出された合焦位置となる。次いで、ステップST11の処理に進み、CPU40が本撮影を行い、処理を終了する。
【0064】
このように、本実施形態においては、第2のAF処理によりプレ発光画像から検出された顔の大きさに応じて合焦動作を行うようにしたため、AF補助光源等の特別な手段を撮影装置に設けることなく、ピンぼけのない画像を取得することができる。
【0065】
また、フラッシュ調光を行う場合のプレ発光により取得された画像を用いて第2のAF処理を行うことにより、第2のAF処理のみを目的としてフラッシュ24を発光させることなく、フラッシュ調光と併せて第2のAF処理を行うことができるため、効率よく第2のAF処理を行うことができる。
【0066】
また、第1のAF処理部28の合焦動作が完了不可能な場合に、第2のAF処理を行うことにより、被写体輝度が高く第1のAF処理が実行可能な場合には、より高い精度により合焦動作が行われるため、より精度よく合焦動作を行うことができる。
【0067】
なお、上記実施形態においては、第2のAF処理において、フラッシュ調光を行う際のプレ発光によりプレ発光画像を用いているが、フラッシュ24の発光は、赤目を防止する場合にも行われる。このため、フラッシュ調光を行わず、赤目防止のためにフラッシュ24を発光したときに撮像系9により撮影を行わせ、これにより取得した画像をプレ発光画像として用いて、第2のAF処理を行うようにしてもよい。また、第2のAF処理を行うことのみを目的としてフラッシュ24を発光させるようにしてもよい。
【0068】
また、上記実施形態においては、第1のAF処理による合焦動作が完了不可能な場合に第2のAF処理を行っているが、第2のAF処理のみを行うようにしてもよい。
【0069】
また、上記実施形態においては、プレ発光画像から複数の顔が検出される場合がある。このように複数の顔が検出された場合には、複数の顔のサイズの平均値、最も大きい顔、画像の中心に最も近い位置にある顔等の大きさに応じて、合焦位置を求めるようにすればよい。
【0070】
また、上記実施形態においては、画像の縦方向の長さに対する顔領域の縦方向の長さの比率を用いて合焦位置を求めているが、画像の縦方向の長さに対する顔領域の縦方向の長さの比率、画像の面積に対する顔領域の面積の比率、顔領域の縦または横方向の長さおよび顔領域の面積のいずれかを用いて合焦位置を求めるようにしてもよい。この場合、合焦位置を求めるためのルックアップテーブルは、画像の面積に対する顔領域の面積の比率等、対象とする顔のパラメータに応じて用意される。
【0071】
また、上記実施形態においては、ルックアップテーブルを用いて合焦位置を求めているが、ズーム倍率に応じた演算を行って合焦位置を求めるようにしてもよい。
【0072】
以上、本発明の実施形態に係るデジタルカメラ1について説明したが、コンピュータを、上記の顔検出部36および第2のAF処理部37に対応する手段として機能させ、図7に示すような処理を行わせるプログラムも、本発明の実施形態の1つである。また、そのようなプログラムを記録したコンピュータ読取り可能な記録媒体も本発明の実施形態の1つである。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の実施形態による撮影装置を適用したデジタルカメラの外観を示す図(正面側)
【図2】本発明の実施形態による撮影装置を適用したデジタルカメラの外観を示す図(背面側)
【図3】本発明の実施形態による撮影装置を適用したデジタルカメラの内部構成を示す概略ブロック図
【図4】調光エリアへの分割の一例を示す図
【図5】顔の大きさの算出を説明するための図
【図6】各種ズーム倍率に応じた比率F1/L1に対する合焦位置Pの関係を規定したルックアップテーブルを示す図
【図7】本実施形態において行われる処理を示すフローチャート
【符号の説明】
【0074】
1 デジタルカメラ
5 モニタ
9 撮像系
10 撮影レンズ
11 フォーカスレンズ駆動部
23 発光制御部
24 フラッシュ
28 第1のAF処理部
36 顔検出部
37 第2のAF処理部
40 CPU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮影により画像を取得する撮影手段と、
前記画像から顔を検出する顔検出手段と、
フラッシュと、
本撮影の指示を受けると、該本撮影の前に前記フラッシュをプレ発光させる発光制御手段と、
前記プレ発光時に前記撮影手段によりプレ発光撮影を行わせることによりプレ発光画像を取得し、該プレ発光画像から顔を検出するよう前記撮影手段および前記顔検出手段を制御する制御手段と、
前記プレ発光画像から検出された顔の大きさに応じて前記撮影手段の合焦動作を行う合焦手段とを備えたことを特徴とする撮影装置。
【請求項2】
前記発光制御手段は、前記本撮影の指示を受けると、該本撮影の前に前記撮影手段に発光を伴わない非発光撮影および前記プレ発光時における前記プレ発光撮影を行わせ、前記非発光撮影により取得された非発光画像および前記プレ発光画像に基づく演算を行って、前記本撮影時における前記フラッシュの発光量を制御するフラッシュ調光を行う手段であることを特徴とする請求項1記載の撮影装置。
【請求項3】
プレ撮影により取得されたプレ画像を複数の領域に分割し、各領域のAF評価値に基づいて前記撮影手段の合焦動作を行う他の合焦手段をさらに備え、
前記制御手段は、前記他の合焦手段による合焦動作が完了不可能な場合に、前記プレ発光画像から顔を検出するよう前記撮影手段および前記顔検出手段を制御する手段であり、前記合焦手段は、前記プレ発光画像から検出された顔の大きさに応じて前記撮影手段の合焦動作を行う手段であることを特徴とする請求項1記載の撮影装置。
【請求項4】
撮影により画像を取得する撮影手段と、
フラッシュと、
本撮影の指示を受けると、該本撮影の前に前記フラッシュをプレ発光させる発光制御手段とを備えた撮影装置の制御方法において、
前記プレ発光時に前記撮影手段によりプレ発光撮影を行わせることによりプレ発光画像を取得し、
該プレ発光画像から顔を検出し、
前記プレ発光画像から検出された顔の大きさに応じて前記撮影手段の合焦動作を行うことを特徴とする撮影装置の制御方法。
【請求項5】
撮影により画像を取得する撮影手段と、
フラッシュと、
本撮影の指示を受けると、該本撮影の前に前記フラッシュをプレ発光させる発光制御手段とを備えた撮影装置の制御方法をコンピュータに実行させることを特徴とするプログラムにおいて、
前記プレ発光時に前記撮影手段によりプレ発光撮影を行わせることによりプレ発光画像を取得する手順と、
該プレ発光画像から顔を検出する手順と、
前記プレ発光画像から検出された顔の大きさに応じて前記撮影手段の合焦動作を行う手順とをコンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−26039(P2010−26039A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−184634(P2008−184634)
【出願日】平成20年7月16日(2008.7.16)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【復代理人】
【識別番号】100104189
【弁理士】
【氏名又は名称】福尾 勲将
【Fターム(参考)】