撮影装置
【課題】近距離の被写体に対して、簡単に高画質で被写界深度の深い画像を撮影することが可能な撮影装置を提供する。
【解決手段】撮影レンズ202が近距離の被写体に対してその一部にピントが合うよう所定の合焦点位置に設定した後、ユーザが把持したカメラシステム10を被写体側に近づける操作を行った際に、被写体の一部が合焦点状態となり、その状態での被写界深度以内の移動量をZ軸加速度センサ173の出力信号に基づいて判定する毎に撮像部117で撮像した画像を撮影画像として記録メディア127に順次記録する。
【解決手段】撮影レンズ202が近距離の被写体に対してその一部にピントが合うよう所定の合焦点位置に設定した後、ユーザが把持したカメラシステム10を被写体側に近づける操作を行った際に、被写体の一部が合焦点状態となり、その状態での被写界深度以内の移動量をZ軸加速度センサ173の出力信号に基づいて判定する毎に撮像部117で撮像した画像を撮影画像として記録メディア127に順次記録する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、近距離撮影が可能な撮影レンズを持つ撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高画質な静止画撮影が可能な撮影装置としてのデジタルカメラが製品化されているが、そのカメラに用いられる撮影レンズで近距離にある被写体を撮影する場合に、被写界深度が浅いため、狙いの部分にフォーカシングしたとしても、撮影したい被写体の全体にピントが合った画像を得ることが出来なかった。特に、近距離撮影の場合は、撮影者が撮影したい被写体は明確であり、その被写体全体にピントの合った高画質な画像が、求められていた。
【0003】
例えば、特開昭62−11836号公報に開示されているカメラでは、被写体に対して撮影レンズである光学系を固定し、光学系に対して撮像素子の位置を変えながら複数の画像を撮影し、これらの複数の画像を合成して焦点深度の深い画像を得ている。
この特開昭62−11836号公報のカメラでは、撮影レンズである光学系に対して撮像素子の位置を変更して、立体被写体に対する合焦位置を変更しながら複数の画像を撮影し、それらの画像を合成して焦点深度の深い画像を得ている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特開昭62−11836号公報に開示されている撮影装置としてのカメラでは、近距離の撮影の場合に、光学系に対して撮像素子の位置を変更すると被写体の光学像の倍率変化が大きく、被写体画像を合成しようとすると、画像間で段差が発生し、不自然な画像となってしまう。
不自然さが無いようにするには、撮像素子の位置変化を小さくする必要があり、撮影画像の数が非常に多くなっていた。また、撮影画像の数を許容したとしても、遠近感を強調した不自然な画像なっていた。さらに、遠近感を歪補正画像処理したとしても、倍率の小さい部分の画像は、画像処理により、画質が悪化していた。
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、近距離の被写体に対して、簡単に高画質で被写界深度の深い画像を撮影することが可能な撮影装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、位置が変更可能な合焦用レンズを含む撮影レンズと、上記撮影レンズを介して得た光学像を画像信号に変換する撮像部と、を有する撮影装置において、上記撮影レンズの光軸方向に対する撮影装置の移動を判定する移動判定部と、上記光軸方向への移動時に、上記合焦用レンズの位置を固定して上記撮影レンズを所定の合焦点位置に設定した状態で、上記撮像部で得られる画像を連続的に記録する記録部と、を具備することを特徴とする。
【0006】
また、本発明の他の撮像装置は、撮影レンズにより形成される被写体の光学像を電子画像に変換する撮像部と、光学像の合焦点位置を設定する合焦点位置設定部と、上記合焦点位置設定部により設定された合焦点位置を保持して、上記撮影レンズの略光軸方向に、像倍率を一定に保ちながら移動した場合における合焦点位置の移動量を検出する検出部と、を備え、上記検出部が被写界深度範囲以内の所定量の合焦点位置移動を検出する毎に撮影した画像を複数記録することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、近距離の被写体に対して、簡単に高画質で被写界深度の深い画像を撮影することが可能な撮影装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は本発明の撮像装置の第1の実施形態のカメラシステムの電気的なシステム構成を概略的に示すブロック図。
【図2】図2は撮像部移動機構部の概略正面図。
【図3】図3は図2のA−A線による撮像部移動機構部の要部縦断側面図。
【図4】図4は図2のB−B線による撮像部移動機構部の要部縦断側面図。
【図5】図5(A)はボイスコイルモータ(VCM)の要部構造を示す部分正面図、図5(B)は図5(A)のC−C線による部分縦断側面図。
【図6】図6は第1の実施形態における移動判定部等を示す図。
【図7】図7は第1の実施形態におけるマクロ連続撮影する様子の説明図。
【図8】図8は図7において被写体側にカメラシステムを近づけた場合の距離変化によりコントラスト値が変化する様子を示す説明図。
【図9】図9はメニュー操作画面等を示す図。
【図10A】図10Aは第1の実施形態におけるカメラ制御により、マクロ連続撮影を含む処理手順の1例を示すフローチャート。
【図10B】図10Bは第1の実施形態の変形例におけるマクロ連続撮影を含む処理手順の一部を示すフローチャート。
【図11】図11は本発明の第2の実施形態のカメラシステムにおける検出部を構成する位置計算回路等を示す概略図。
【図12】図12は第2の実施形態のカメラシステムにより被写体の一部に順次合焦させて撮影画像を順次記録し、記録した撮影画像から合成画像を生成する動作の概略を示す図。
【図13】図13は第2の実施形態における検出部を構成する回路の出力信号を説明する図。
【図14】図14は第2の実施形態のカメラシステムの位置と被写界深度の関係を示す図。
【図15】図15は第2の実施形態のカメラシステムの撮影動作の詳細を説明するフローチャート。
【図16】図16は第2の実施形態における記録した撮影画像から合成画像を生成する詳細を説明するフローチャート。
【図17】図17は第2の実施形態のカメラシステムにおける通常の撮影を含む動作のフローチャート。
【図18】図18はオートフォーカスの動作のフローチャート。
【図19】図19は本実施形態と従来例との差異の説明図。
【図20】図20は第2の実施形態の変形例のカメラシステムの撮影動作の詳細を説明するフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の撮像装置を図面に基づいて説明する。本実施形態で説明するカメラシステムは、光電変換によって画像信号を得る撮像素子を含む撮像ユニットの手ブレ補正を行うための駆動装置、及び、合焦点検出をするための駆動装置を搭載したものである。
以下の実施形態では、レンズ交換可能な一眼式電子カメラ(デジタルカメラ)への適用例で説明する。なお、本発明は、以下に説明する各実施形態の場合に限定されるものでなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲であれば、種々の変形が可能である。
【0010】
(第1の実施形態)
本実施形態のカメラシステム10は、図1に示すように撮影レンズであるレンズユニット200とボディユニット100とから構成されている。
撮像装置としての本実施形態のカメラシステム10は、被写体の光学像を結像するための撮影レンズを備えたレンズユニット200と、例えば電荷結合素子(CCD)やCMOSセンサ等と称される撮像素子を用いて構成される撮像部117を有する撮像ユニット116を備えたボディユニット200とから構成されている。
以下の説明において、ボディユニット100から被写体に向かう方向を前方と称し、その反対方向を後方と称する。また、レンズユニット200内の撮影レンズを構成する光学系の光軸O1と一致する軸をZ軸とし、Z軸に直交する平面上において互いに直交する2つの軸をX軸(水平方向の軸)及びY軸(垂直方向の軸)とする。
【0011】
まず、このカメラシステム10の詳細な構成について説明する。
図1に示すように、被写体の光学像を結像するために、レンズユニット200内には撮影レンズ202が配置されている。撮影レンズ202の結像位置には、例えば電荷結合素子(CCD)やCMOSセンサ等の結像された光学像を光電変換する撮像素子を用いて構成される撮像部117を配置して、カメラシステム10が構成されている。
また、カメラシステム10は、撮像部117を有するボディユニット100と、該ボディユニット100に着脱可能に装着され、撮影レンズ202を有するレンズユニット200と、によって構成されている。
【0012】
本実施形態では、レンズユニット200の動作は、レンズユニット200に配設されたレンズユニット側の制御手段としてのレンズ制御用マイクロコンピュータ(以下、“Lucom”と称する)201によって制御される。
また、ボディユニット100の動作は、ボディユニット100に配設されたカメラシステム10全体を制御する制御手段としてのボディ制御用マイクロコンピュータ(以下、“Bucom”と称する)101によって制御される。このBucom101は、後述するマクロ連続撮影(第2の実施形態では超深度撮影)を含む撮影動作の制御手段としての制御部101aの機能を持つ。
ボディユニット100にレンズユニット200を装着した状態において、Bucom101とLucom201は、通信コネクタ102を介して互いに通信可能に電気的に接続される。そして、Lucom201はBucom101に従属的に協働しながら稼動するように構成されている。また、通信コネクタ102を通して各ユニットに必要な電力はボディユニット100に設置された電源回路135から供給される。
【0013】
撮影レンズ202は、光軸方向(Z軸方向)に位置が変更可能な合焦用レンズとしてのフォーカスレンズ202aと、位置の変更により倍率を変更する変倍レンズ202bとから構成され、両レンズ共レンズユニット200内に保持されている。
また、撮影レンズ202は、フォーカスレンズ202aを光軸方向に動作することで、フォーカシングを行い、変倍レンズ202bの位置を光軸方向に移動させることで、焦点位置がほぼ一定で像倍率を変化させるズーミングをすることができる。ズーミングのときにフォーカスレンズ202aと変倍レンズ202bの両方を動作させても良い。
両レンズ202a、レンズ202bは、単一のレンズで構成されていても、複数のレンズから構成されていても勿論良い。
【0014】
レンズユニット200は、ボディユニット100の前側(被写体側)に設けられた不図示のボディマウントとレンズユニット200の後ろ側(撮像素子側)に設けられた不図示のレンズマウントを介して着脱自在となる着脱機構が形成される。
この着脱機構は例えばバヨネット形式であり、この構成により、カメラシステム10は、レンズユニット200を特性が異なる様々のレンズユニット200に交換して装着し、撮影することができる。例えば、高い像倍率の撮影が可能なマクロ撮影専用のレンズでも良いし、レンズユニット200とボディユニット100の間に装着されて、より高い像倍率の撮影を可能とするいわゆる中間リングを装着するようにしても良い。
また、レンズユニット200には、絞り203が配設されている。絞り203は、絞り駆動機構205内に設けられた図示しないステッピングモータ等のアクチュエータによって駆動される。
【0015】
一方、フォーカスレンズ202a、変倍レンズ202bは、レンズ駆動機構204内に設けられた図示しないステッピングモータ等のアクチュエータによって駆動される。撮影レンズ202のフォーカスレンズ202a、変倍レンズ202bの位置は、位置検出センサ204a、204bによりそれぞれ検出され、Lucom201に入力される。
さらに、フォーカスレンズ202a、変倍レンズ202bの位置から算出される合焦距離、焦点距離、及び絞り値の情報と、絞り値や合焦距離や焦点距離から算出される被写界深度等のレンズユニット200の情報は、通信コネクタ102を介して、Bucom101に入力される。
【0016】
ここで、位置検出センサ204a、204bは、位置が変化すると変化する電気抵抗を検出するもの、ホール素子やGMR(巨大磁気抵抗)素子により磁性体に着磁された磁気パターンを検出するもの、発光素子と受光素子で光学的なパターンを検出するもの等、位置検出が精密にできるものであればいずれのセンサであっても良い。
撮像部117は、後述するようにこの撮像部117を移動する撮像部移動機構部159を介してボディユニット100内に保持されている。ここで、撮像部117は、上述したようにCCDやCMOSセンサ等の光電変換する機能を備えた撮像素子により構成されている。
なお本実施形態では、撮像部117の前側に、ローパスフィルタ等の光学フィルタ118及び防塵フィルタ119を配設して、撮像ユニット116を構成している。防塵フィルタ119の周縁部には、圧電素子120が取り付けられている。
【0017】
圧電素子120は、防塵フィルタ制御回路121によって、防塵フィルタ119を寸法や材質によって定まる所定の周波数で振動させるように構成されている。圧電素子120の振動によって、防塵フィルタ119に付着した塵埃を除去することができる。
防塵フィルタ119の前側には、一般にフォーカルプレーンシャッタと称される構造のシャッタ108が配設されている。また、ボディユニット100内には、シャッタ108の先幕と後幕を駆動するばねをチャージするシャッタチャージ機構112と、これら先幕と後幕の動きを制御するシャッタ制御回路113が設けられている。
なお、光学フィルタ118、防塵フィルタ119及びシャッタ108は、必要に応じて適宜に配設されるものであり、カメラシステム10はこれらを具備しない構成であってもよい。
【0018】
撮像部117は、この撮像部117の動作を制御する撮像部インターフェース回路122を介して画像処理部126に電気的に接続されている。画像処理部126は、撮像部117により光電変換されて出力される信号に基づいて表示部で表示する画像(信号)や記録部で記録する画像を生成する機能を有する。
画像処理部126は、SDRAM124やFlashROM125等の記憶領域を使用して、画像に対して所定の画像処理を行うように構成されている。
画像処理部126は、いわゆるコントラスト検出方式によるオートフォーカスを行うために、フォーカスレンズ202aあるいは撮像部117を光軸方向に所定の振幅で振動(ウォブリングの動作)させて生成した複数の画像について、所定の領域(フォーカスエリア)におけるコントラスト値を算出して、遠距離側、近距離側のいずれに焦点位置があるのか検出する。
【0019】
そして、ウォブリング動作をしながら焦点が合う方向にフォーカスレンズ202aを移動させつつ、画像を取り込み(撮影する)ことにより、それらの画像から最大コントラストの状態を焦点位置として検出することができ、その焦点位置でフォーカスレンズ202aを停止することにより、撮影レンズ202でオートフォーカス(AF)がなされる。
このように画像処理部126は、最大コントラストの状態を(撮影レンズ202が)焦点位置又は合焦点位置であるとして検出する焦点位置検出部又は合焦点位置検出部126aを有する。また、この合焦点位置検出部126aの検出信号によりBucom101は、撮影レンズ202を合焦点位置に設定する制御を行う合焦点位置設定部101bの機能を備える。
【0020】
レリーズスイッチの半押しの第1スイッチ(1stスイッチ)がONした状態で、オートフォーカスが行われ、フォーカスレンズ202a、変倍レンズ202bと撮像部117の位置はその状態を保つ。すると合焦点位置の像倍率はほぼ一定になり、この状態で被写体と撮像部117の位置を変えながら複数の画像をほぼ連続的に撮影し、撮影した複数の画像を記録部としての記録メディア127に記録する。
画像処理部126は、ボディユニット100の背面に配設された表示部を構成する液晶モニタ123が電気的に接続されており、液晶モニタ123に撮像部117の画像を(スルー画として)表示することができる。
また、画像処理部126は、記録メディア127に記録した複数の画像から所定のコントラストを有する画像領域(画像エリア)を切り出し、合成して1つの合成画像を生成する画像合成部126bの機能を有する。
【0021】
表示部を形成する液晶モニタ123は、カメラシステム10による撮影構図の状態をリアルタイムに表示する、いわゆる電子ビューファインダとしても機能する。また、本実施形態では光学式のファインダを持たない構成となっているが、いわゆる一眼レフ形式の光学式ファインダを設けても良い。
これらのファインダを用いれば、後に述べるマクロ連続撮影(マクロ連写)又は超深度撮影の時に、撮影者(ユーザ)が被写体のピントが合っているかの確認や、撮影の異常を知らせる警告表示を確認することが出来る。
また、この液晶モニタ123は、後述するようにメニューの表示や、撮影モードの表示や、マクロ連写の場合において合焦用レンズとしてのフォーカスレンズ202aの位置を固定した後に、撮影装置としてのカメラシステム10を移動するようにガイド表示する場合のガイド表示等にも利用される。
【0022】
記録部を構成する記録メディア127は、フラッシュメモリやハードディスク(HDD)等の記録媒体であり、ボディユニット100内に着脱可能に設けられている。記録メディア127は、カメラシステム10で撮像された画像等(動画の場合は音声も含む)のデータを記録する。
不揮発性メモリ128は、カメラシステム10の制御に必要な所定の制御パラメータを記憶する、例えばEEPROMからなる記憶部である。不揮発性メモリ128は、Bucom101からアクセス可能に設けられている。
Bucom101には、カメラシステム10の動作状態を出力して表示するによってユーザへ告知するための動作表示用LED(又は動作表示用LCD)130と、カメラ操作スイッチ131と、内蔵されたストロボ132及び図示しない外部ストロボを駆動するストロボ制御回路133と、が接続されている。
【0023】
カメラ操作スイッチ131としては、図6に示すように例えばレリーズスイッチ131c、電源スイッチ(パワースイッチ)131a、メニューボタン(メニュースイッチ)131bなど、カメラシステム10を操作するために必要な操作釦を含むスイッチ群や、図11では図6のメニューボタン131bの代わりのモードスイッチ131b′等を有する。
さらに、該ボディユニット100内には、電源としての電池134と、該電池134の電圧を、当該カメラシステム10を構成する各回路ユニットが必要とする電圧に変換して供給する電源回路135が設けられ、また、外部電源から不図示のジャックを介して電流が供給されたときの電圧変化を検知する電圧検出回路(図示せず)も設けられている。
次に、本実施形態のカメラシステム10の手ブレ補正機能に用いられている駆動装置300を含む撮像部移動機構部159について説明する。
【0024】
本実施形態のカメラシステム10は、手ブレ(手振れ)を補正するために撮像部117をX軸方向、Y軸方向及びZ軸回りの回転方向に移動させることが可能に構成された撮像部移動機構部159を具備している。そして、この撮像部移動機構部159を介して撮像部117を保持していることによって、本実施形態のカメラシステム10は、手ブレを補正するように撮像部117を、X軸方向、Y軸方向及びZ軸回りの回転方向に機械的に移動させることができる。
また、撮像部移動機構部159を構成する手ブレ補正用の駆動装置300は、X軸アクチュエータ163、Y軸アクチュエータ164を駆動源として用い、撮像部117を含む撮像ユニット116を搭載した移動枠166(ホルダ145)を移動対象物として構成される。
【0025】
具体的に撮像部移動機構部159は、X軸ジャイロ160、Y軸ジャイロ161、Z軸ジャイロ170、X軸加速度センサ171、Y軸加速度センサ172、Z軸加速度センサ173、防振制御回路162、X軸アクチュエータ163、Y軸アクチュエータ164、移動枠166、固定枠であるフレーム167、位置検出センサ168及びアクチュエータ駆動回路169を具備して構成されている。
移動枠166は、複数のボール310(図2の310a−310c、図4の310b)を介して、フレーム167に複数のバネ174で押圧されることにより支持され、XY面内方向に自由に動くことができる。バネ174は、図1では引張コイルバネであるが、圧縮コイルバネ、板バネ、磁気バネ等、移動枠166をフレーム167に押圧する機構であれば形態は問わない。
【0026】
つづいて、電磁方式のVCMモータを駆動源として用いる本実施の形態の駆動装置300について図2から図5を参照して説明する。
図2は、本実施の形態の駆動装置300の構成例を示す概略正面図であり、図3は図2の駆動装置300をA−A線により、側面から見た側断面図である。図4は図2の駆動装置300をB−B線により、側面から見た側断面図である。図5(A)は図2における1つのVCM部(例えば図2における下方寄りの左側のもの)の概略構成を示す正面図と、図5(A)のC−C線で断面をとり、側面から見た側断面図である。
固定枠であるフレーム167は、ボディユニット100に固定されており、該フレーム167によって、撮像部117を保持する(移動枠166となる)ホルダ145がX軸方向、Y軸方向、Z軸回りの回転方向に移動可能に支持されている。
【0027】
ホルダ145の支持は、フレーム167に保持された3つのボール310a、310b、310cが、ホルダ145に設置された摺動板B316a、316b、316cを受け、対向した位置に設置された摺動板A315a、315b、315cを、ボール314a、314b、314cを介して、板バネを形成する押えバネ313a、313b、313cでホルダ145をボール310a、310b、310cに押圧することによりなされている。なお、押えバネ313a、313b、313cは、ビス317a,317b,317cによりフレーム167に固定されている。
また、摺動板B316c、摺動板A315c(図示せず)は、図2における摺動板B316b、摺動板A315bと左右対称な位置に設けられている。
【0028】
ボール310a、310b、310cが、ホルダ145の摺動板B316a、316b、316cと接触する3点で形成される平面内方向にホルダ145は自由に動くことが可能となる。
ここで最初にホルダ145をXY面内方向に駆動するアクチュエータであるVCMについて図5で説明する。図5(A)は基本的なVCMの正面図(移動枠166、ヨーク3aは不図示)、図5(B)は図5(A)のC−C線側断面図を示す。絶縁被覆された導電性の細線をトラック形状に巻いたコイルC1は移動枠166(ホルダ145)に接着等で固定されている。
板状の磁石2は、図5においては下側がN極、上側がS極となるようにY方向に着磁され、固定枠5(で示すフレーム167)に接着等で固定されている。また、磁性材で形成された板状のヨーク3a、3bが磁石2、コイルC1を挟んで移動枠166と固定枠5に接着等で固定され、磁石2あるいはコイルC1に電流が流れた時の磁力線が外部に漏れないように閉じた磁気回路を形成している。
【0029】
この状態で、コイルC1に電流を流すと、コイルC1の2つの直線部は磁石2の磁力線に対して電流が直交し、磁力線の方向と電流の方向はコイルC1の2つの直線部では逆方向となっているので、磁力線及び電流と直交する同じ方向に力が働き、移動枠4が駆動される。電流の向きを逆転させると、移動枠166は逆方向に駆動される。また、コイルC1に流れる電流の大きさにより発生する力を変えることが可能である。ここでヨーク3a、3bは、移動枠166、固定枠5を磁性材で形成すれば不用となる。
次に図2、図3、4により、駆動装置300の駆動を説明する。駆動装置300では図5で説明したものと同様に構成されたVCM-XA320a、VCM-XB320b、VCM-YA321a、VCM-YB321b、が図3に示した様に配置されている。VCM-XA320a、VCM-XB320bはX方向の駆動力を発生するVCMであり、VCM-YA321a、VCM-YB321bはY方向の駆動力を発生するVCMである。
【0030】
なお、図5で示したVCMを構成するコイルC1,ヨーク3a、3b、磁石2は、図2−図4における例えば図2のVCM-XA320aにおいては、コイルX301a、ヨークX302a(302a),磁石X303aに対応する。VCM-XB320bにおいては、VCM-XA320aにおけるaの代わりにbを用いて示している。
また、VCM-YA321aにおいては、図5のコイルC1,ヨーク3a、3b、磁石2は、コイルYA304a、ヨークYA305a(305a),磁石YA306aに対応し、VCM-YB321bにおいては、VCM-YA321aにおけるa,Aの代わりにb,Bを用いて示している。
また、Z軸回りの回転方向の駆動をする場合はVCM-YA321a、VCM-YB321bに異なる駆動力(場合によっては反対方向の駆動力)を与えることにより実現可能である。
【0031】
ホルダ145の位置制御は、ホルダ145のX軸方向、Y軸方向、Z軸回りの回転方向位置を検出する(図1に示す)位置検出センサ168と、VCM-XA320a、VCM-XB320b、VCM-YA321a、VCM-YB321bを制御する(図1に示す)アクチュエータ駆動回路169によって行われる。
図3に示すように撮像部117を構成するCCDチップ136は、固定板137の前面の中央位置にフレキシブル基板138と共に実装され、このフレキシブル基板138は接続部139a,139bにより背面側に屈曲されて主回路基板140の背面のコネクタ141a,141bと電気的に接続される。CCDチップ136の撮像面(前面)はスペーサ143を介して取り付けられた保護ガラス142により保護されている。
【0032】
保護ガラス142の前面には、フィルタ受け部材144を介してローパルフィルタ(LPF)118が取り付けられており、このLPF118は、その外形に合わせた開口を設けたホルダ145により保持されている。なお、保護ガラス142の前面は、ホルダ145の段部147に当接して、位置決めされた状態で保持されている。
また、このLPF118の前に防塵フィルタ119が配置され、両者間の開口146の周囲はシール材156によりシールされている。
防塵フィルタ119は、受け部材152、153の間に圧電素子120を配置し、受け部材152と圧電素子120に両面が当接し、前面側の押圧部材151により後方のホルダ145側に押圧した状態でネジ150により、ホルダ145に保持されている。なお、ホルダ145における防塵フィルタ119の後方(背面)部分は、防塵フィルタ119を受ける防塵フィルタ受け部148を形成する。
【0033】
以上のような駆動装置300を備える撮像部移動機構部159の動作を次に説明する。X軸ジャイロ160は、カメラシステム10のX軸回りの回動(ブレ)の角速度を検出し、Y軸ジャイロ161は、カメラシステム10のY軸周りの回動の角速度を検出し、Z軸ジャイロ170は、カメラシステム10のXY平面内の回動の角速度と回転中心位置を検出する。
X軸加速度センサ171は、カメラシステム10のX軸方向の加速度を検出し、Y軸加速度センサ172は、カメラシステム10のY軸方向の加速度を検出する。防振制御回路162は、検出されたカメラシステム10の角速度、回転中心位置、加速度から、手ブレ補償量を演算し、撮像部117を、手ブレを補償するように駆動装置300により変位ないしは移動させる。
このようにして、手ブレが発生した場合に対して、その手ブレが撮像部117に与える影響を実質的に解消するように撮像部117を変位ないしは移動させる。
【0034】
また、Z軸加速度センサ173は、撮影装置としてのカメラシステム10のZ軸方向の加速度を検出して加速度信号を出力する。本実施形態においては、Z軸加速度センサ173は、その検出信号(加速度信号)により以下のように、撮影装置としてのカメラシステム10のZ軸方向(撮影レンズ202の光軸O1方向となる)の移動を判定する移動判定部又は移動部の機能を持つ。
図6に示すようにZ軸加速度センサ173により検出されたZ軸方向の加速度信号は、防振制御回路162中の加速度検出回路162aにより加速度が検出される。
この加速度は積分器をもつ位置計算回路162bにより、積分されてカメラシステム10の移動する速度が計算(演算)され、さらに速度が積分器をもつ位置計算回路162cにより積分されてカメラシステム10の位置が計算(演算)される。
【0035】
Z軸加速度センサ173と、加速度検出回路162aと、位置計算回路162cとにより、カメラシステム10のZ軸方向の移動を判定する移動判定部又は移動部が構成される。カメラシステム10の光軸方向(Z軸方向)の移動を判定する移動判定部又は判定部は、Z軸加速度センサ173の出力信号を用いた位置計算回路162cにより構成されると見なすこともできる。
Z軸加速度センサ173の出力信号を用いることなく、画像処理部126が画像信号から撮影対象の画像のサイズの変化の有無を判定することにより、Z軸方向の移動を判定する判定部を形成するようにしても良い。
【0036】
なお、後述する第2の実施形態においては位置計算回路162cが合焦点位置の移動量を検出する検出部を構成する。
Z軸方向のカメラシステム10の速度と位置は、Bucom101に入力されて、後に述べる高画質で被写界深度が非常に深い画像を撮影するのに利用される。
【0037】
なお、撮像部移動機構部159において、撮像部117を移動させるアクチュエータは、本実施形態ではVCMを用いているが、VCMに限定されるものでなく回転モータ、リニアモータ、超音波モータ等、他の駆動手段を用いても良い。
以上のような構成を有する撮像部移動機構部159は、カメラシステム10の手ブレの動きに応じて撮像部117を移動させることによって、手ブレに起因する撮像部117により撮影対象の被写体像の手ブレにより影響を抑制する機能、いわゆる撮像素子シフト方式の手振れ補正部の機能を有する。
また、この手振れ補正部の手振れ補正機能によりZ軸方向以外のカメラシステム10のブレが補正されるため、Z軸方向の移動量は、より高精度で検出可能となる。さらに、撮影者(ユーザ)が像倍率の高い状態で被写体をフレーミングする場合でも、カメラシステム10の手ブレが補正されるので、容易にフレーミングすることが可能になる。
【0038】
このように本実施形態の撮像装置としてのカメラシステム10は、位置が変更可能な合焦用レンズを含む撮影レンズ202と、上記撮影レンズ202を介して得た光学像を画像信号に変換する撮像部117と、を有する撮影装置において、上記撮影レンズ202の光軸方向に対する撮影装置の移動を判定する移動判定部を構成するZ軸加速度センサ173と、上記光軸方向への移動時に、上記合焦用レンズの位置を固定して上記撮影レンズ202を所定の合焦点位置に設定した状態で、上記撮像部117で得られる画像を連続的に記録する記録部としての記録メディア127と、を具備することを特徴とする。
【0039】
図6はカメラシステム10により被写体としての花11をマクロ連続撮影(マクロ連写)する場合の概略図を示し、図7はカメラシステム10を花に近づけてマクロ連写を行う場合の動作の概略を示し、図8は図7の場合におけるコントラスト値の変化の様子を示す。
ボディユニット100の上面には、電源スイッチ131a、レリーズスイッチ131cが設けられ、背面の上部側の位置にメニューボタン131bが設けてある。また、メニューボタン131bを操作すると、図9(A)に示すように露出補正、ストロボ、ホワイトバランス(WBと略記)、マクロ等の項目を選択することができる。
そして、マクロ連写を行う場合には、図9(A)においてマクロを選択すると、図9(B)に示すようにマクロOFF,マクロ、マクロ連写の項目が表示されるので、マクロ連写を選択すると、マクロ連写の撮影モードに設定することができる。
【0040】
また、図6において、ボディユニット100内のZ軸加速度センサ173の加速度信号は、加速度検出回路162aに入力され、さらに位置計算回路162cにより、カメラシステム10がZ軸方向に移動された場合、その移動を判定することができる。
また、図1の画像処理部126の合焦点位置検出部126aは、マクロ連写の撮影モードにおいては、最初のピント合わせ時において、フォーカスレンズ202aをZ軸方向(光軸方向)に移動した場合における、撮像部117により撮像した画像信号のコントラスト値が最大となる距離をピントが合った合焦点位置であると検出し、カメラ制御を行うBucom101は、フォーカスレンズ202aをその位置に固定して撮影レンズ202をその合焦点位置に固定する。つまり、Bucom101の合焦点位置設定部101bは、撮影レンズ202を所定の合焦点位置に設定する(制御を行う)。
【0041】
そして、図7に示すように被写体としての花11に、ユーザは把持したカメラシステム10を近づけていくと、花11を構成するその一部のパーツにピントが合った距離で図8に示すようにコントラスト値が順次ピークとなる。そのようにコントラスト値が順次ピークとなる状態で撮影を短い時間間隔で連続的に行うようにBucom101の制御部101aは制御し、記録部に撮影した複数の画像(データ)を記録する。
また、記録部に記録された複数の画像は、一致度が最大となる位置で重ね合わせが行われ、合成画像が生成される。
Bucom101は、図10Aに示すようなカメラ制御の処理手順により、上述したマクロ連続撮影及び合成画像の生成の処理を行う。
以下、図10Aを参照して本実施形態の動作を説明する。
【0042】
カメラシステム10の電源が投入されると、ボディユニット100及びレンズユニット200は動作状態となり、ボディユニット100内のBucom101はカメラ制御を開始する。
Bucom101は、最初のステップS1において撮影モードであるか否かの判定を行う。カメラシステム10の初期状態は撮影モードとなっているので、ステップS2においてBucom101は、撮像部117により撮像された画像を液晶モニタ123にスルー画として表示する。一方、ステップS1で撮影者が再生モードを選択した場合は、ステップS15の再生モードの判定に移行する。
次のステップS3においてBucom101は、マクロ連写の撮影モードが選択(設定)されているか否かの判定を行い、マクロ連写の撮影モードが選択されている場合には次のステップS4に進む。
【0043】
ステップS4においてBucom101は、ユーザによる最初のピント合わせの操作において、フォーカスレンズ202aは光軸方向(Z軸方向)に移動される。そして、コントラスト値が最大となる位置にフォーカスレンズ202aを設定(固定)して、撮影レンズ202をそのピント合わせした合焦点位置に固定する。
図7を用いて説明すると、図7(A)よりも前の状態(カメラシステム10が図7(A)の場合よりも花11から離れた距離)において最初のピント合わせする。或いは後述する第2の実施形態において説明するように、図7(A)等において、ピント合わせして所定の合焦点位置に設定した後、一旦カメラシステム10を図7(A)に示す距離よりも離れた距離に設定して、花11に近づけるようにして(マクロ連写を行うようにして)も良い。
【0044】
また、ステップS5においてBucom101は、ユーザに対して、カメラシステム10の移動方向と移動速度の指示であるスキャン指示の表示を行う。例えば、図9(C)に示すように、液晶モニタ123において、「(カメラシステムを)ゆっくり近づけてください」と言う主旨のガイド表示を行う。
ユーザは、このガイド表示に従って、カメラシステム10を花11側にゆっくり近づける操作を行う。ステップS5の後のステップS6においてBucom101は、速度計算回路162b、位置計算回路162cにより、速度や位置が変化したか否かの判定結果を受けてカメラシステム10がZ方向にスキャン(走査)されたか否かを判定する。なお、図10A中においてはカメラシステムをカメラと略記する(後述する図10B,図15においても同様)。
【0045】
カメラシステム10がZ方向にスキャンされた判定結果の場合には、ステップS7においてBucom101は、画像処理部126によりコントラスト検出を行わせると共に、マクロ連続撮影を行う動作を開始する。ここで、マクロ連続撮影の開始をカメラシステム10の他の操作部材の操作信号で行なっても良いことは言うまでもない。
次のステップS8においてBucom101は、画像処理部126が被写界深度以内の移動量において最大コントラスト値を検出したか否かを判定する。
図10Aの例では、ステップS4のピント合わせにおいて、設定した合焦点位置の状態におけるその被写界深度を算出し、その被写界深度以内の移動量で最大コントラスト値を検出する。このように被写界深度以内の移動量で最大コントラスト値を検出する場合に限らず、簡略的に最大コントラスト値を検出するようにしても良い。
画像処理部126が最大コントラスト値を検出しない場合には、ステップS6の処理に戻り、画像処理部126が最大コントラスト値を検出した場合には、ステップS9に進む。
【0046】
図7を用いて説明すると、カメラシステム10を花11側に近づけると図7(A)に示すように撮影レンズ202が花11における最もカメラシステム10に近いパーツ11aに対してピントが合う距離D1において、図8に示すようにコントラスト値がピーク(最大)となる。
このステップS9においてBucom101の制御部101aは、図8に示すように最大コントラスト値を検出した画像を記録部としての記録メディア127に記録させると共に、その画像における最大コントラスト値と該最大コントラスト値の画像エリアの情報を記録メディア127に記録させる。
ステップS9の処理の後、ステップS6の処理に戻り、同様の動作を繰り返す。
【0047】
例えば、図7(A)において、距離D1にピント合わせをした状態で、ユーザがカメラシステム10を花11側に距離D2まで近づけると、図7(B)に示すように距離D1となるパーツ11bに対してコントラスト値が図8に示すように最大となる。そして、最大コントラスト値を検出したタイミングにおいて、Bucom101の制御部101aは、その画像を記録させると共に、その場合の最大コントラスト値も記録する。
また、図7(B)の状態からさらにユーザがカメラシステム10を花11側に距離D3まで近づけると、図7(C)に示すように距離D1となるパーツ11cに対してコントラスト値が図8に示すように最大となる。そして、最大コントラスト値を検出したタイミングにおいて、Bucom101の制御部101aは、その画像を記録メディア127に記録させると共に、その場合の最大コントラスト値も記録する。
【0048】
このようにして、ユーザはマクロ連写の動作を行うことができる。そして、撮影対象の花11にピントが合った距離D1以内に近づけた後にカメラシステム10のスキャンを停止すると、ステップS6においてスキャンの速度が所定以下になることが検出されてスキャンの停止と判定され、ステップS10の処理に進む。ステップS10においてBucom101は、マクロ連写の制御動作を終了する。また、スキャン停止の判定は、所定時間以上、所定位置範囲にカメラシステム10が留まっていることを位置計算回路162cの出力信号から判定しても良いし、カメラシステム10の移動方向が反転したことを速度計算回路162bの出力信号から判定しても良い。さらに、スキャンの停止判定に相当する判定をカメラシステム10の操作部材の操作により行なっても良い。例えば、レリーズスイッチ131cのオフの操作で行なえば、判定はより簡単、確実にできる。
次のステップS10においてBucom101は、画像処理部126が、記録メディア127に記録されたマクロ連写された複数の画像に対して、合成画像を生成させるように制御する。このステップS10において画像処理部126は、複数の画像における隣接して撮影された画像同士を一致度が最大となる位置で重ね合わせを行う。
また、ステップS12において画像処理部126は、画像エリア毎に最大コントラスト部分を採用して複数の画像から1つの合成画像を生成する。図7の例では、花11を撮影した場合、図7(A)で撮影記録した画像ではパーツ11a部分、図7(B)ではパーツ11b部分、図7(C)ではパーツ11c部分をそれぞれ採用して花11の合成画像を生成する。
【0049】
図10Aにおいて、ステップS3においてマクロ連写の撮影モードでない場合には、通常のマクロの撮影モードとなるため、ステップS13においてBucom101は、レリーズ操作がされたか否かを判定する。
レリーズ操作がされた場合には、ステップS14においてBucom101は、レリーズ撮影に対応して、撮影と記録の制御動作を行う。つまり、レリーズ操作がされたタイミングの画像を撮影画像として記録部に記録し、ステップS1の処理に戻る。また、ステップS13において、レリーズ操作がされない場合にも、ステップS1の処理に戻る。
また、ステップS1において撮影モードでない場合には、ステップS15においてBucom101は、再生モードが選択されているか否かの判定を行う。再生モードが選択されている場合には、ステップS16においてBucom101は、再生モードの制御動作を行った後、ステップS17に進む。
【0050】
ステップS17においてBucom101は、レリーズスイッチ131cのオフ等の終了の操作が行われた否かの判定を行い、終了の操作でない場合にはステップS1の処理に戻り、逆に終了の操作の場合には、図10Aの処理を終了する。
このように動作する本実施形態は、近距離の被写体に対して、カメラシステム10を近づけていく簡単な操作により、それぞれの距離において被写体の一部にそれぞれピントが合った複数の画像を順次記録する。そして、撮影後において一部にそれぞれピントが合った画像エリアを、一致度が最大となる位置で重ね合わせ、高画質で被写界深度が非常に深い合成画像を生成する。
【0051】
従って、本実施形態によれば、近距離の被写体に対して、簡単に高画質で被写界深度が深い画像を撮影することが可能な撮影装置を提供できると共に、簡単に高画質で被写界深度が非常に深い合成画像を生成できる。
また、本実施形態によれば、撮像装置としてのカメラシステム10を合焦点状態に固定した状態で、カメラシステム10を被写体側、つまり光軸方向又はZ軸方向に移動して、最大コントラストとなる状態で順次、撮影して撮影画像として記録するため、像倍率を殆ど一定に保った合焦点を含む撮影画像を簡単に取得できる。
なお、図10Aの処理手順の変形例として、図10Aにおける最大コントラストとなる位置で撮影画像として画像を記録する代わりに、図10Bのように実質的に被写界深度範囲以内となる所定の移動量の検出(判定)毎に画像を記録するように変更しても良い。
【0052】
図10Bにおいては、ステップS6のカメラのZ方向にスキャン(走査)後のステップS21において防振制御回路162は手振れの有無に応じてアクチュエータ駆動回路169の動作を制御し、撮像部117に対する手振れ補正を行うように手振れ補正機能を起動する(動作状態にする)。なお、ステップS21の処理をステップS6の前に動作させるようにしても良い。
ステップS21の処理により、ユーザがカメラシステム10を被写体としての花11に近づけるZ方向とは異なる方向に手振れが発生しても、その手振れにより撮像部117による撮像に影響を及ぼすことを低減することができる。
ステップS21の後のステップS7においてBucom101は、画像処理部126に対してコントラスト検出を行わせると共に、マクロ連続撮影を行う動作を開始する。
【0053】
次のステップS22においてBucom101は、被写界深度範囲以内、又は(被写界深度範囲の端付近の場合にほぼ対応する)所定のコントラスト値以上(のコントラストを有する場合)において、Z方向(被写体に近づく方向)に所定の移動量だけ移動したか否かを判定する。この所定の移動量は、Z方向の被写界深度範囲(幅)程度より小さく設定される。この所定の移動量の大きさを設定する設定部を備え、マクロ連続撮影する場合の初期設定時などにおいて、ユーザが自由に設定できるようにしても良い。
ステップS22の判定結果に該当しない場合にはステップS6の処理に戻る。
一方、ステップS22の判定結果に該当する場合にはステップS23においてBucom101の制御部101aは、上記所定の移動量毎に、そのタイミングの画像を撮影画像として記録部としての記録メディア127に記録するように制御する。
【0054】
つまり、被写界深度範囲以内、又はこの被写界深度範囲以内に近いコントラストを有する状態において、Z方向に所定の移動量だけ移動する毎に、マクロ連写の撮影画像としてその画像を記録する。
この場合、コントラスト値も記録するようにしても良い。ステップS23の処理の後、ステップS6の処理に戻り、同様の処理を行う。その他の処理は図10Aとほぼ同様である。
本変形例によれば、手振れにより撮像に与える影響を低減できる。また、本変形例によれば、実質的に被写界深度以内において、所定の移動量毎に画像を記録するので、被写界深度範囲内において被写体(の各部)を確実に撮影することができる。
【0055】
つまり、被写界深度の範囲内において撮影記録された画像は、これに隣接して撮影記録された画像と被写界深度の範囲内においてその一部が重複するため、合成画像を生成する場合も、簡単に高画質の合成画像を生成できる。
次に第1の実施形態と同様に、近距離の被写体に対して、高画質で被写界深度が深い画像を撮影することが可能な撮影装置を説明する。
【0056】
(第2の実施形態)
本実施形態は、第1の実施形態とハードウェアの構成が殆ど同じであり、第1の実施形態のマクロ連写とは若干異なる処理手順により高画質で被写界深度が深い撮影を行う。
図11は本実施形態のカメラシステム10Bにより、例えば球形状の被写体400を撮影する概略図を示す。このカメラシステム10Bにおいては、図6におけるカメラシステム10におけるメニューボタン131bの位置に、撮影モード等を変更して撮影するモードスイッチ131b′が設けてある。
また、図6においても説明したようにボディユニット100内のZ軸加速度センサ173の加速度信号を加速度検出回路162aに入力して、カメラシステム10Bの加速度を検出する。
【0057】
この加速度は積分器を夫々もつ速度計算回路162b、位置計算回路162cにより、積分される。そして、位置計算回路162cは、本実施形態におけるカメラシステム10がZ軸方向に移動された場合の合焦点位置の移動量を検出する検出部を形成する。 また、本実施形態は、図1-図5に示した構成により、マクロ連写モード(本実施形態では超深度モード又は超深度撮影モード)において、画像処理部126の合焦点位置検出部126aは、フォーカスレンズ202aをZ軸方向(光軸方向)に移動した場合における、撮像部117により撮像した画像信号のコントラスト値が最大となる距離を合焦点位置であると検出する。
【0058】
また、Bucom101の合焦点位置設定部101bは、合焦点位置検出部126aにより検出された合焦点位置に撮影レンズ202の合焦点位置を保持(固定)(フォーカスレンズ202aの位置も固定)して、撮影レンズ202の略光軸方向に、像倍率を一定に保ちながら移動させるように制御する。
また本実施形態においてはBucom101の制御部101aは、所定のコントラスト以上を有する状態において、検出部が撮影レンズ202の焦点深度以内の所定量の被写体に対する焦点位置移動を検出する毎に画像を撮影画像として順次記録するように制御する記録制御部の機能を持つ。
【0059】
本実施形態の撮像装置を構成するカメラシステム10Bは、撮影レンズ202により形成される被写体の光学像を電子画像に変換する撮像部117と、撮影レンズ202による光学像の合焦点位置を設定する合焦点位置設定部101bと、上記合焦点位置設定部101bにより設定された合焦点位置を保持して、上記撮影レンズ202の略光軸方向に、像倍率を一定に保ちながら移動した場合における合焦点位置の移動量を検出する検出部としての位置計算回路162cと、を備え、上記検出部が被写界深度範囲以内の所定量の合焦点位置移動を検出した場合に撮影した画像を順次、複数記録することを特徴とする。
【0060】
本実施形態では、例えば球状の被写体400を撮影する動作により説明する。図12は、本実施形態における概略の動作を示す。
カメラシステム10Bの電源スイッチ131aがONになり、モードスイッチ131b′で超深度撮影モードが設定されると、ステップS41に示すようにZ軸加速度センサ173が動作し、Z方向位置の検出が開始する。
Z軸加速度センサ173の加速度信号は、防振制御回路162の加速度検出回路162aに入力され、A/D変換されたのち、オフセット補正(加速度0の時の電圧出力を0にする補正)とゲイン調整(出力電圧の大きさを調整)して加速度に対応する加速度信号が加速度検出回路162aから積分器をもつ速度計算回路162bに出力される。
速度計算回路162bでは加速度信号を積分器で積分した速度信号をBucom101と位置計算回路162cに出力する。積分器をもつ位置計算回路162cは速度信号を積分した位置信号をBucom101に出力する。
【0061】
図13(A)、図13(B)、図13(C) はカメラシステム10BのZ軸方向の位置検出について、カメラシステム10Bをユーザが手持ちでZ軸方向に移動した場合(被写体400に近づけた場合)をシミュレーションしたカメラシステム10Bの加速度、速度、位置の例を示す。
各グラフの縦軸は最終計算結果の加速度、速度、位置を示してあるが、図11の加速度検出回路162a、速度計算回路162b、位置計算回路162cの出力は対応した電圧信号となる。
次に図12を参照して、カメラシステム10Bの動作について説明する。モードスイッチ131b′の操作により超深度撮影モードに設定された状態で、電源スイッチ131aがONされると上述されたカメラシステム10BのZ方向位置の検出が開始される(電源スイッチ131aがONしてからモードスイッチ131b′を設定しても良い)。
【0062】
そして、ステップS42に示すようにユーザがレリーズスイッチ131cを操作し、1stレリーズスイッチがONになると、撮影された画像(スルー画)をもとに、ステップS43のAE(自動露光)とステップS44のAF(オートフォーカス)が動作し、適正露光となるようにレンズユニット200の絞りとボディユニット100のシャッタ速度が決められ、被写体400の所定の箇所にピントが合わせられ、撮影レンズ202と撮像部117の相対位置が決る。
この時、ステップS44に示すようにレンズユニット200の絞り値Fと、焦点距離fと、フォーカスレンズ202aの位置から計算された被写体距離Lから近距離側の被写界深度ΔL(近距離側の被写界深度は無限側の被写界深度より小さい数値となる)が計算される。
【0063】
本実施形態における被写界深度の範囲(Z方向の幅)は、近距離側の被写界深度ΔLと無限側(遠点側)の被写界深度との和であり、近距離側の被写界深度ΔLは、被写界深度の範囲の略1/2となる。本実施形態における近距離側の被写界深度ΔLは、被写界深度範囲内の所定量の値(所定の移動量)に相当する。
ステップS44においては、以下に説明する例えば第3撮影画像付近にAFさせた画像例で示している。
【0064】
ここで、許容錯乱円径をδ、x=((L―2・f)+((L−2・f)2−4・f2)1/2)/2とすると、
ΔL=x・f2/(δ・F・x+f2)
となる。
この状態で、ステップS45に示すようにカメラシステム10Bを被写体400から遠ざかる方向に移動し、ファインダ(ここでは電子ファインダ)上で被写体400にピントが合ってないことが確認できる位置でその移動を停止する(被写体400にフォーカスしない距離まで離す)。
そして、ユーザはステップS46に示すようにレリーズスイッチ131cを操作して2ndレリーズスイッチをONする。この操作を受けてBucom101は、検出部が所定量の移動を検出する毎に撮影画像を記録する制御を開始する。
【0065】
この状態を保ったまま、ユーザはカメラシステム10を被写体400に近づける。すると、ステップS47に示すように被写体400の撮影画像が所定のコントラスト(被写界深度内に入ってピントが合った状態)になった位置で、第1枚目の撮影画像の状態となる。この撮影画像を撮影し、記録する(第1撮影画像の記録)。なお、図12においては、最初の第1撮影画像は、画像記録を行わない図示例にしているが、第1撮影画像から画像記録を行うようにしても良い。
画像記録と同時にその時のカメラシステムのZ方向位置をリセットして0とする。以後、近距離側の被写界深度ΔLだけカメラシステム10の位置がZ方向に変化したこと(つまり被写界深度の範囲内における所定量の合焦点位置移動)をZ軸加速度センサ173の検出値から計算されたときに撮影する(第2撮影画像の記録)。以後は同様に近距離側の被写界深度ΔL、カメラシステム10がZ方向に変位するごとに画像を撮影し、記録する。この繰り返しは2ndレリーズスイッチがOFFとなるまで繰り返す。
【0066】
図14はカメラシステム10Bの具体的な絞りのFナンバーFと焦点距離f、被写体距離L、許容錯乱円径δをもとに、各被写体距離Lに対して被写界深度範囲(近距離側の被写界深度と無限側の被写界深度範囲を計算したグラフと、被写体400とカメラシステム10Bの位置関係を概念的に示した図である。
ここでFナンバーF=8、焦点距離f=100mm、被写体距離L=500mm、許容錯乱円径δ=0.033mmとしてある。近距離側の被写界深度ΔLは1.82mmとしてある。すると、ΔLの移動毎に被写体400を撮影すると、被写界深度範囲の約1/2が夫々重なった画像が得られる。
【0067】
なお、被写界深度範囲の約1/2が夫々重なるように撮影記録する場合に限定されるものでなく、少なくとも被写界深度範囲内で一部が重なるように少なくとも被写界深度範囲内の所定量の移動毎に撮影記録することが、望ましい。つまり、少なくとも被写界深度範囲内で一部が重なるようにして撮影記録されていると、時間的に隣接して撮影記録された2つの画像を合成する場合、鮮明に撮影された状態で重なる画像領域において位置合わせができ、画像合成する場合に簡単に位置合わせができ、高画質で被写界深度が深い合成画像を生成し易くなる。
図12におけるステップS48に示すように撮影されて記録された一連の画像から所定の空間周波数、つまり高域側の空間周波数成分を抽出するバンドパスフィルタをかけて各画像のピントの合った領域を切り出す。
【0068】
また、これらの画像は前後の画像に重なり部分をもつのでこの領域を検出して各画像をこの重なり部分を合わせて、被写体の超深度画像を合成する。
そして最後に撮影された画像の背景画像(撮影画像から被写体の超深度画像を切り取った画像)と被写体の超深度画像を合成して、ステップS49に示すように目的の合成画像を得る。
撮影画像から合成画像を生成する一連の画像処理は、カメラシステム10B内の画像処理部126で実施しても良いし、撮影記録された画像データを他のコンピュータに転送する等して、他のコンピュータ上で合成画像を生成するように行なっても勿論良い。
図15、図16はカメラシステム10Bによる動作を示すフローチャートである。より具体的には、図15はカメラシステム10Bにより、被写界深度が深い超深度画像を得るための撮影モードのフローチャートであり、図16は得られた複数の画像を用いて、超深度画像を合成する処理を示すフローチャートである。
【0069】
この超深度撮影モードが開始すると、最初のステップS51においてBucom101は、システム起動時の初期設定を行う。次のステップS52においてBucom101は、レンズユニット200等のアクセサリの検出を行う。また、ステップS53においてBucom101は、操作スイッチの状態検出を行う。
そして、ステップS54においてBucom101は、操作スイッチにより超深度モードに設定されているか否かの判定を行う。超深度モードに設定されていない場合には、設定されたモードに対応した処理に移る。
一方、超深度モードに設定されている場合には、ステップS55においてBucom101は、加速度センサを起動させる。各加速度センサは動作を開始し、それぞれ加速度を検出する。特にZ軸加速度センサ173による加速度信号からステップS56において検出部を構成する位置計算回路162cは、カメラシステム10Bの位置を積分計算により算出する。
【0070】
ステップS57においてユーザは1stレリーズスイッチをONにする。すると、ステップS58、S59において、AE(自動露光)とAF(オートフォーカス)が動作し、適正露光となるようにレンズユニット200の絞りとボディユニット100のシャッタ速度が決められ、被写体400の所定の箇所にピントが合わせられた合焦点状態となり、撮影レンズ202と撮像部117の相対位置が決る。
また、ステップS60においてレンズユニット200の絞り値Fと、焦点距離fと、フォーカスレンズ202aの位置から被写体距離Lが算出され、さらに被写体距離Lから近距離側の被写界深度ΔLが計算により算出される。
【0071】
なお、被写界深度ΔL計算時に使用される被写体距離Lは、AF時にフォーカスレンズ202aを駆動して焦点合わせを実施し、フォーカスレンズ202aの位置は位置検出センサ204aで、被写体の無限位置を基準に検出され、その位置データとフォーカスレンズ202aが変位した時の焦点位置変位量を用いて計算される。
このようにして撮影レンズ202が所定の合焦点位置にセットされた後、ステップS61においてユーザは被写体400からカメラシステム10Bを離し、カメラシステム10Bの位置を合焦点位置の範囲外にセットする。ユーザは、ファインダ画像を見ることにより、ファインダ画像全体が不鮮明になっているかの判定により、合焦点位置の範囲外にセットしたか否かを識別できる。
【0072】
次のステップS62においてBucom101は、コントラスト(による)AF時におけるコントラスト値を用いて、測距エリア内に合焦点となる被写体400があるか否かの判定を行う。判定に用いる閾値は、被写界深度範囲外に被写体が存在する場合のレベル値に設定される。そして、この閾値未満のコントラスト値の場合には、合焦点となる被写体400が存在しないと判定できる。
なお、測距エリアは画像の全域でも良いし、画像の一部でも良い。さらに、測距エリアの設定は自動設定でも良いし、手動設定でも良い。自動設定の場合は、最初にAFをした測距エリアよりも広いエリアを設定する。または、カメラシステム10が被写体から変位した時にコントラスト最大値となるエリアを順次検出し、そのエリアに測距エリアを順次移動させていくのが良い。
【0073】
ステップS62の判定に該当しない場合には、ステップS63においてユーザは2ndレリーズスイッチをONにする。なお、ステップS63の前にユーザに対して2ndレリーズスイッチをONにするようにガイド表示を行うようにしても良い。
2ndレリーズスイッチON後において、ステップS64に示すようにAEを行う。このステップS64におけるAEの露光値が、ステップS58のAEの場合の露光値から所定値以上、変化した場合は、再度その時の絞りのF値から近距離側の被写界深度ΔLを計算する。
次のステップS65においてユーザは把持したカメラシステム10Bを被写体400に接近させる操作を開始すると共に、図10BのステップS21の場合と同様に手振れ補正機能を起動する(動作状態にする)。
このステップS65の直前に、制御手段を構成するBucom101がカメラシステム10Bを被写体400に接近させるようにユーザに対して操作に関するガイド表示を行うようにしても良い。
【0074】
次のステップS66においてBucom101は、被写体のコントラストが被写界深度範囲内の判定用の閾値Ms以上か否かの判定を行う。
この閾値Ms以上か否かの判定は、カメラシステム10Bの変位速度(移動速度)と、シャッタータイムラグ(シャッタを切る信号が発生してから、シャッタが開き始めるまでの時間)と、近距離側の被写界深度ΔLとから、被写体400の最も近距離側にピントが撮影時に合うように行なう。
すなわち、被写体400のコントラストを検出したカメラシステム10Bの位置とシャッタを切ったカメラシステム10Bの位置は、これらの数値によって変化するので、合焦点の状態でのコントラストより低いコントラストに閾値Msを設定することになる。
ステップS66における判定においてコントラストが閾値Ms以上でない場合にはステップS65の処理に戻り、コントラストが閾値Ms以上の判定結果の場合にはステップS67に進む。
【0075】
ステップS67において撮影を行い、撮影した画像を記録メディア127に記録する。この場合、第1撮影画像が記録される。
また、ステップS68において、基準位置情報L0が0にセットされる。なお、基準位置情報L0を第1撮影画像の取得時に行なうのは、カメラシステム10Bの位置情報の取得を撮影開始時に行なうことで、誤差の少ない状態でカメラシステム10Bの位置情報を取得するためである。
ステップS68の基準位置情報L0を0にセットした後の次のステップS69において位置情報Lが検出される。そして、次のステップS70において位置計算回路162cによる移動量の検出部は、近距離側の被写界深度ΔL(換言すると被写界深度範囲内の所定の移動量)に相当する移動量を検出したか否かの判定を行う。
【0076】
つまり、位置情報L―L0=ΔLに達したか否かが判定される。所定の移動量に相当する近距離側の被写界深度ΔLに達していない場合にはステップS69の処理に戻り、逆に、近距離側の被写界深度ΔLに達している場合にはステップS71の処理に進む。
ステップS71においてBucom101の制御部101aは、撮影情報(例えば撮影のコマ番号など)と撮影した画像を記録メディア127に記録するように制御する。記録メディア127には第2撮影画像が記録され、次のステップS72において基準位置情報L0がL0+ΔLに設定される。
そして、次のステップS73においてBucom101は、2ndレリーズスイッチがOFFにされたか否かの判定を行う。2ndレリーズスイッチがOFFにされていない場合には、ステップS69の処理に戻り、同様の動作を繰り返す。例えば、上述した第2撮影画像の記録後に、第3撮影画像、第4撮影画像、…と複数の撮影画像を順次記録する。
【0077】
そして、ユーザはカメラシステム10Bで所望の撮影画像(被写体画像)を記録したと判断した場合には、2ndレリーズスイッチをOFFにすれば良い。2ndレリーズスイッチがOFFにされた場合には、さらにステップS74においてBucom101は、撮影異常が発生したか否かの判定を行う。撮影異常が発生していない場合には最初のステップS51に戻るか図15の処理を終了する。一方、撮影異常が発生した場合には、ステップS75において再撮影を行う指示、警告を行った後、最初のステップS51に戻り、再撮影を行う。
なお、撮影異常の発生は、例えば、カメラシステム10Bの移動速度が速すぎて画像撮影が間に合わずに、画像合成に必要な充分な画像が得られていない場合や、明らかに大きな手ブレが発生している場合(第1の実施形態で説明した手ブレ補正機構での検出値を評価すれば判定可能)には撮影異常となり、撮影終了後に警告(音とか表示)を出して、再撮影を指示(音声とか表示)する。
【0078】
再撮影時は、撮影者が撮影の設定を変えていなければ、先の撮影で撮影異常の発生した画像コマの付近の画像を複数撮影して記録するようにしても良い。
また、ステップS62の判定において測距エリア内に合焦点の被写体400が存在した場合にはステップS76において警告を行い、その警告後のステップS77においてBucom101は、2ndレリーズスイッチがOFFにされたか否かを判定する。2ndレリーズスイッチがOFFにされない場合には、ステップS61の処理に戻り、2ndレリーズスイッチがOFFにされた場合には、ステップS74に移る。
図15に示した超深度モードにより、被写界深度が非常に深い合成画像を生成するのに必要な複数枚の撮影画像を簡単な操作で取得することができる。なお、撮影して記録された各撮影画像は、それぞれ被写体400における一部の領域に対して被写界深度以内に設定されたものであるので、その一部の領域に対しては良好な画質、つまり高画質を有する。
【0079】
次に図16を参照して、取得した複数枚の撮影画像から合成画像を生成する動作を説明する。以下の説明においては、撮影画像の数はn(2以上の自然数)であるとする。
合成画像の動作が開始すると、ステップS81aにおいて画像処理部126は、記録メディア127に記録されている第1撮影画像P(1)(図16中では撮影画像を単に画像と略記)をバッファメッモリに、ステップS81bにおいて画像処理部126は、第2撮影画像P(2)をバッファメッモリに、…、ステップS81nにおいて画像処理部126は、第n撮影画像P(n)をバッファメッモリに記録(転送)する。
次のステップS82において画像処理部126は、各撮影画像P(z)(ここで、z=1,2,…,n)の画像信号をバンドパスフィルタを通すバンドパスフィルタ処理をして、各撮影画像P(z)における合焦部分の画像領域Pb(z)を抽出して、バッファメモリに記録する。
【0080】
次のステップS83において画像処理部126は、処理用パラメータNを1にセットする。そして、ステップS84において画像処理部126は、Nがn−1に一致するか否かを判定する。
この場合には、Nがn−1に一致しないため、ステップS85において画像処理部126は、画像領域Pb(N)とPb(N+1)の画像領域間の重なり領域を抽出する。
次のステップS86において画像処理部126は、抽出した画像領域Pb(N)とPb(N+1)の画像領域間の重なり領域を合わせて画像領域Pb(N)とPb(N+1)を合成し、合成したものを画像領域Pb(N+1)に上書きする。
次のステップS87において画像処理部126は、NをN+1(この場合にはNは2)にセットし、ステップS84の処理に戻る。そして、Nを2とした場合において、上述したステップS85−87の処理を同様に行う。このようにしてNがn−1までステップS85−S87の処理が繰り返される。
【0081】
このようにして、合焦部分の画像領域を全て重ね合わせた画像領域(つまり合焦状態の被写体画像)Pb(N)(ここでN=n−1)が生成される。そして、ステップS84において、Nがn−1に一致するため、ステップS88において画像処理部126は、合焦状態の被写体画像Pb(n−1)をバッファメモリに記録する。
次のステップS89において画像処理部126は、上記合焦状態の被写体画像Pb(n−1)と第n−1撮影画像P(n−1)とを合成して、バッファメモリ又は記録メディアに合成画像として記録する。そして、図16の処理を終了、又は最初のステップS81aに戻り、他の撮影画像がある場合には同様の処理を行う。
このように動作することによって、超深度モードにより、撮影した複数枚の撮影画像から画質が良く、被写界深度が非常に深い合成画像を簡単に生成することができる。
【0082】
なお、図15,図16においては、第2の実施形態における超深度モードに関係する機能の動作を説明したが、超深度モードを含む動作を図17のフローチャートにより説明する。
カメラシステム10Bの電源が投入されると、Bucom101は動作を開始する。そして、図15の場合と同様にステップS101においてシステム起動時における初期設定、ステップS102のアクセサリの検出、ステップS103の操作スイッチの状態検出が行われる。
次のステップS104においてBucom101は再生ボタンがONされたか否かを判定する。再生ボタンがONされた場合には、ステップS105において再生の処理が行われる。
【0083】
ステップS104において再生ボタンがONされていない場合、又はステップS105において再生の処理が終了した場合にはステップS106においてBucom101は動画ボタンがONされたか否かを判定する。動画ボタンがONされた場合には、ステップS107において記録中フラグを反転する処理が行われる。
動画記録状態(スルー画が液晶モニタ123にでる状態)になり、ステップS108の動画記録状態か否かの判定がYESとなり、ステップS109以降の処理が行われる。そして、ループ処理により再びステップS106の動画ボタンONか否かの判定が行われる。
【0084】
そして、さらに動画ボタンONがYES(録画ボタンがもう一回押される)と、ステップS107の記録中フラグが反転して動画記録状態ではなくなり、この場合にはステップS108の動画記録状態か否かの判定はNOとなる。
上記ステップS108の判定結果が動画記録状態である場合には、ステップS109においてAEを行い、ステップS110において動画撮影を行い、続くステップS111においてAFを行い、ステップS112において撮影した動画に対する画像処理を行い、ステップS113において記録部に画像を記録する。このステップS113の後、ステップS118の処理に移る。
【0085】
一方、ステップS108の判定が動画記録状態でない場合にはステップS114においてBucom101は、1stレリーズスイッチONに変化したかの判定を行う。
1stレリーズスイッチONに変化した場合には静止画撮影を行う状態となり、ステップS115においてAEを行い、ステップS116において静止画の画像撮影を行い、撮影画像が液晶モニタ123による表示モニタに表示されるとともに、続くステップS117においてAFを行う。
続くステップS118において電源OFFの操作がされたか否かを判定し、電源OFFの操作がされていない場合にはステップS104の処理に戻る。
【0086】
そして、ステップS114において1stレリーズスイッチONに変化しない場合にはステップS119の処理に移り、このステップS119においてBucom101は、2ndレリーズスイッチONかの判定を行う。
2ndレリーズスイッチONの場合にはステップS120において静止画を撮影し、ステップS121において画像処理部126は撮影した静止画に対する画像処理を行い、ステップS122において画像処理した静止画を記録してステップS118の処理に移る。
この静止画撮影は、1stレリーズがONのままであると、画像撮影の動作が継続し、表示モニタは表示を続行し、2ndレリーズがONされるごとに、静止画の撮影画像が1コマ撮影されて記録される。
【0087】
また、ステップS119において2ndレリーズスイッチONでない場合にもステップS118の処理に移り、電源OFFの操作がされた場合には表示モニタの表示が消え、図17の処理が終了する。
【0088】
また、本実施形態におけるAF動作は、図18のようになる。AFの動作が開始すると、最初のステップS131においてBucom101は、AFモード状態か否かの判定を行う。AFモード状態でない判定結果の場合には、AFモードでない非AFモードに対する処理に移る。
【0089】
一方、AFモード状態の判定結果の場合には、ステップS132においてBucom101は、AF開始状態か否かの判定を行う。AF開始状態でない場合には、ステップS131の処理に戻る。
一方、AF開始状態の場合には、ステップS133においてBucom101はウォブリングの処理を行うように制御する。このウォブリングは、撮影レンズ202を構成するフォーカスレンズ202a又は可動レンズを光軸方向に所定の周波数で、正弦波の駆動信号で振動させる。この動作によりコントラストが大きくなる方向の合焦点が存在する方向が分かる。
次のステップS134においてBucom101は、画像撮影を行ように制御し、その際ステップS135に示すように画像処理部126は、画像のコントラストを検出する。また、次のステップS136において画像処理部126は、検出されたコントラストがAFにおける許容差以内か否かを判定する。
【0090】
許容差以内でない判定結果の場合には、ステップS137においてBucom101は、コントラストが大きくなる方向にフォーカスレンズ202aを駆動して、ステップS133の処理に戻る。
一方、許容差以内の判定結果の場合には、ステップS138においてBucom101は、ウォブリングを停止させ、このAF動作を終了する。
本実施形態における超深度モードで撮影する場合と従来例による撮影方式とは図19に示すように異なる。
図19(A)は、近距離の被写体400に対して本実施形態のカメラシステム10Bにより、撮影レンズ202を所定の合焦点に設定して撮影する様子を示し、この場合実線で示す撮影状態においては、被写体400のカメラシステム10B側に近い位置(パーツ位置)400aがCCDチップ136の位置Paに結像する。
【0091】
そして、このカメラシステム10Bを被写体400側に点線で示す位置まで移動した場合には、被写体400のパーツ位置400aよりも光軸から離れたパーツ位置400bがCCDチップ136の位置Pbに結像する。
このように本実施形態による光学像を形成する位置Pa、Pbにおける光軸からの距離は、被写体400における光軸からのパーツ位置400a,400bまでの距離、つまり被写体のサイズを反映した関係を維持する。
図19(B)は従来例により被写体400を撮影する様子を示し、従来例においてはカメラシステムにおける撮影レンズ(を構成するフォーカスレンズ)を移動して撮影を行う。
【0092】
被写体400のパーツ位置400aに撮影レンズをフォーカスさせると、パーツ位置400aは実線で示すようにCCDチップの位置Pa′に結像される。
一方、パーツ位置400aよりもカメラシステムから遠方側となるパーツ位置400bの位置にフォーカスさせると撮影レンズは点線で示す位置となり、パーツ位置400bは点線で示すようにCCDチップの位置Pb′に結像される。この場合、位置Pa′、Pb′は光軸からの距離が、被写体400における光軸からのパーツ位置400a,400bまでの距離を反映しない関係となってしまう。
【0093】
つまり、従来例においては、撮影した複数の画像における像倍率が変化するのみに限らす、被写体側でのサイズを逆転させてしまうような複数の画像関係となる場合が発生するため、撮影した複数の画像から合成画像を生成しようとした場合、被写体側のサイズを忠実に反映した合成画像を生成することが困難になる。
これに対して、本実施形態のカメラシステム10B(第1の実施形態のカメラシステム10も同様)によれば、図19(A)において説明したように、被写体側のサイズを反映した状態、例えば像倍率を一定に保った状態で複数枚の画像を撮影するため、被写体のサイズを反映した合成画像を簡単に生成することができる。
従って、本実施形態によれば、近距離の被写体に対して、簡単に高画質で被写界深度が深い画像を複数撮影することができ、撮影された複数の画像から簡単に高画質で被写界深度が非常に深い合成画像を生成できる。また、手振れ補正により、撮像に及ぼす影響を低減することができる。
【0094】
(第2の実施形態の変形例)
図20は第2の実施形態の変形例によるカメラシステム10Bのシーケンスを表す。本変形例のカメラシステム10Bの構成は、第2の実施形態と殆ど同じである。但し、本変形例においては、図1におけるレンズ駆動機構204が撮影レンズ202を構成する少なくとも一部のレンズを略光軸方向に、合焦点位置及び像倍率を一定に保つように移動させる合焦点位置移動部204cを形成する。
なお、撮影レンズ202側のみでなく、撮像部117又は撮像素子を光軸方向に移動して合焦点位置及び像倍率を一定に保つように移動させて合焦点位置移動部を構成しても良い。その他は、第2の実施形態と同様であるので、その説明は省略する。
【0095】
第2の実施形態と異なる点は、カメラシステム10Bを被写体400に対して移動するのではなく、例えばフォーカスレンズ202aを変位させることで被写体400の合焦位置を変えているので、例えばカメラシステム10Bを三脚に固定し、ブレ補正を行わないようにしても良いし、Z軸加速度センサ173からカメラシステム10の位置を検出する必要もない。
但し、フォーカスレンズ202aを変位してフォーカシングすると、像の倍率(より正確には光軸と垂直方向の光学像の大きさを被写体の大きさで割った横倍率)が変化するので、像の横倍率が変化しないように、変倍レンズ202bを変位させてズーミングする構成にしている。
【0096】
ここで像の横倍率βは、レンズユニット200の焦点距離fと、被写体距離Lから、以下のように計算される。
β=f/(((L―2・f)+((L−2・f)2−4・f2)1/2)/2)
具体的には、焦点距離f=100mm、被写体距離L=500mm〜510mm、としてフォーカスのみで焦点合わせした場合の像の横倍率変化を見ると、0.382倍〜0.366倍まで変化する。ここでズーミングにより像の横倍率βを補正する。例えば、焦点距離f=102mmとすれば、被写体距離L=510mmの時に、像の横倍率β=0.382倍となり、被写体距離L=500mmの時と同じになる。
このズームミングによる倍率変更を実施しない場合は、この例では倍率比を考えると画像の大きさが4%ほども異なり、画像合成が複雑になるばかりでなく、画質も低下してしまうことになる。しかし、この場合、各焦点位置で近距離側の被写界深度ΔLは変わることになり、被写体距離Lに応じて計算したΔL(L)を用いるのが良い。
【0097】
次に図20の処理を説明する。図20の処理内容は、図15の処理に類似しているので、異なる部分のみを説明する。図20におけるステップS51−54は、図15と同様の処理となり、図15におけるステップS55、S56を行うこと無く、図15と同様のステップS57−60の処理を行う。
また、ステップS60の後に、図15のステップS61の処理を行う代わりに、図20においては、ステップS91において画像処理部126(又はBucom101)は、像の横倍率βを計算した後、ステップS92においてフォーカシングにより焦点位置を移動し、ズーミングにより像の横倍率βに調整する。
このステップS92の処理後に、図15の場合と同様にステップS62−S64の処理を行う。
【0098】
ステップS64の処理後のステップS93においてフォーカスレンズ202aにより焦点位置を移動し、変倍レンズ202bのズームにより像の横倍率βを調整する。このステップS93の処理後、図15と同様にステップS66−S67の処理を行う、
このステップS67の処理後に、図15のステップS68の処理の代わりに、ステップS94においてBucom101は、被写体距離Lを基準位置情報L0に設定する。また、次のステップS95においてBucom101は、ステップS92と同様の処理を行う。このステップS95の後のステップS96において位置検出部は被写体距離Lを検出し、さらに画像処理部126はΔLを算出する。
このステップS96の処理後に、図15の場合と同様に、ステップS70の処理を行う。ステップS70においてL−L0がΔLに一致しない場合には、ステップS94の処理に戻り、逆にL−L0がΔLに一致する場合には、ステップS71の処理に進む。
また、ステップS71の後にステップS72,S73の処理を行い、ステップS73において2ndレリーズスイッチがOFFにされない場合には、ステップS96の処理に戻り、逆に2ndレリーズスイッチがOFFにされた場合には、ステップS74の処理に進む。このステップS74以降の処理は図15と同様である。
【0099】
本変形例によれば、像の横倍率βを調整して複数の画像を順次撮影するようにしているので、第2の実施形態の場合と同様に高画質で被写界深度が非常に深い合成画像を生成するのに必要な複数枚の撮影画像を簡単な操作で取得することができる。
なお、図20の超深度モードにより撮影した撮影画像に対しては、図16に示した処理により、高画質で被写界深度が非常に深い合成画像を生成することができる。
上述した実施形態、変形例においては、所定の被写界深度ΔLごとに画像撮影を実施すると説明していたが、カメラシステム10、10Bの最大連射撮影コマ数で2ndレリーズスイッチがOFFになるまで撮影した後に、近距離側の被写界深度ΔLごとの画像を抜き出して記録するような撮影画像記録方法を採用しても良い。
【0100】
この場合には記録前の各撮影画像と焦点位置情報(被写体距離L等)とを関連づけて記録するようにすると良い。
上述したように第1又は第2の実施形態等において、被写界深度が非常に深い合成画像を生成することができることを説明したが、(近距離側の被写界深度ΔLのように)被写界深度範囲内の所定の移動量ΔL′の移動毎に記録した撮影画像の枚数(又はΔL′のトータルの移動量の大きさ)がある閾値以上の場合には、複数の撮影画像における一部の撮影画像のサイズを補正して合成画像を生成するようにしても良い。例えば、画像処理部126に、撮影画像のサイズを補正するサイズ補正部126c(図1参照)を設けても良い。なお、サイズ補正部126cを画像合成部126b内に設けるようにしても良い。また、サイズ補正部126cを画像処理部126の外部に設けるようにしても良い。
【0101】
具体的に説明すると、例えば水平面に配置され、Z軸方向と角度をなすように配置された円筒形状の被写体を、カメラシステム10又は10Bを接近させながら撮影した場合、円筒各部を所定の移動量ΔL′毎に撮影画像として順次記録する。このようにして記録した撮影画像を上述のように合成した場合、円筒各部の奥行き方向(Z方向)の値(つまり距離)が変化しても円筒各部のサイズが同じとなる合成画像となるため、Z方向の値に応じて撮影画像のサイズを補正して、より自然に近い合成画像を生成することができるようにしても良い。
具体的には、最初に被写体距離Lで、撮影レンズ202の焦点距離fで記録した撮影画像のサイズ補正を行わない基準サイズ1(最初の撮影画像を基準サイズとする場合に限定されない)とし、2番目に記録した撮影画像のサイズを、被写体距離L+ΔL′の場合として結像したものとなるように補正する(つまり1―ΔL′/Lのサイズに補正する)。
【0102】
2番目以降の例えばj番目に記録した撮影画像のサイズは、被写体距離L+(j―1)・ΔL′とした場合に対応するように補正する(つまり1―(j―1)・ΔL′/Lのサイズに補正する)。撮影枚数が閾値Th以上の場合には、このようなサイズ補正を行い、閾値Th未満の場合にはこのようなサイズ補正を行わないようにしても良い。また、サイズ補正量(の絶対値)が閾値以上の撮影画像に対して、サイズ補正を行い、閾値未満となる撮影画像に対してはサイズ補正を行わないようにしても良い。
また、合成画像を生成する場合、ユーザがサイズ補正を行うか否かを選択できるようにしても良い。なお、サイズ補正を行う場合、上記の値のように補正する場合に限定されるものでなく、例えばj番目に記録した撮影画像のサイズを補正する場合、補正パラメータをkとして1―k・(j―1)・ΔL′/Lのように補正しても良い。ここで、kは1を含む範囲、例えば0.5<k<2程度にしても良い。
上述した各実施形態又は変形例における処理手順の各ステップは、その性質に反しない限り、実行順序を変更したり、複数同時に実行し、あるいは異なった順序で実行してもよい。
また、上述した各実施形態、変形例等を部分的に組み合わせる等して構成される実施形態も本発明に属する。
【符号の説明】
【0103】
10,10B…カメラシステム、 100…ボディユニット、101…ボディ制御用マイクロコンピュータ(Bucom)、101a…制御部、101b…合焦点位置設定部、117…撮像部、123…液晶モニタ、126…画像処理部、126a…合焦点位置検出部、126b…画像合成部、126c…サイズ補正部、127…記録メディア、128…不揮発性メモリ(記憶部)、135…電源回路、145、166…移動枠(ホルダ)、159…撮像部移動機構部、162…防振制御回路、162c…位置計算回路、167…固定枠(フレーム)、173…Z軸加速度センサ、200…レンズユニット、201…レンズ制御用マイクロコンピュータ、202…撮影レンズ、202a…フォーカスレンズ、202b…変倍レンズ、204c…合焦点位置移動部、313a,313b,313c…バネ(押えバネ)、320a,320b…VCM―XA、VCM−XB,321a,321b…VCM−YA、VCM−YB
【先行技術文献】
【特許文献】
【0104】
【特許文献1】特開昭62−11836号公報
【技術分野】
【0001】
本発明は、近距離撮影が可能な撮影レンズを持つ撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高画質な静止画撮影が可能な撮影装置としてのデジタルカメラが製品化されているが、そのカメラに用いられる撮影レンズで近距離にある被写体を撮影する場合に、被写界深度が浅いため、狙いの部分にフォーカシングしたとしても、撮影したい被写体の全体にピントが合った画像を得ることが出来なかった。特に、近距離撮影の場合は、撮影者が撮影したい被写体は明確であり、その被写体全体にピントの合った高画質な画像が、求められていた。
【0003】
例えば、特開昭62−11836号公報に開示されているカメラでは、被写体に対して撮影レンズである光学系を固定し、光学系に対して撮像素子の位置を変えながら複数の画像を撮影し、これらの複数の画像を合成して焦点深度の深い画像を得ている。
この特開昭62−11836号公報のカメラでは、撮影レンズである光学系に対して撮像素子の位置を変更して、立体被写体に対する合焦位置を変更しながら複数の画像を撮影し、それらの画像を合成して焦点深度の深い画像を得ている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特開昭62−11836号公報に開示されている撮影装置としてのカメラでは、近距離の撮影の場合に、光学系に対して撮像素子の位置を変更すると被写体の光学像の倍率変化が大きく、被写体画像を合成しようとすると、画像間で段差が発生し、不自然な画像となってしまう。
不自然さが無いようにするには、撮像素子の位置変化を小さくする必要があり、撮影画像の数が非常に多くなっていた。また、撮影画像の数を許容したとしても、遠近感を強調した不自然な画像なっていた。さらに、遠近感を歪補正画像処理したとしても、倍率の小さい部分の画像は、画像処理により、画質が悪化していた。
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、近距離の被写体に対して、簡単に高画質で被写界深度の深い画像を撮影することが可能な撮影装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、位置が変更可能な合焦用レンズを含む撮影レンズと、上記撮影レンズを介して得た光学像を画像信号に変換する撮像部と、を有する撮影装置において、上記撮影レンズの光軸方向に対する撮影装置の移動を判定する移動判定部と、上記光軸方向への移動時に、上記合焦用レンズの位置を固定して上記撮影レンズを所定の合焦点位置に設定した状態で、上記撮像部で得られる画像を連続的に記録する記録部と、を具備することを特徴とする。
【0006】
また、本発明の他の撮像装置は、撮影レンズにより形成される被写体の光学像を電子画像に変換する撮像部と、光学像の合焦点位置を設定する合焦点位置設定部と、上記合焦点位置設定部により設定された合焦点位置を保持して、上記撮影レンズの略光軸方向に、像倍率を一定に保ちながら移動した場合における合焦点位置の移動量を検出する検出部と、を備え、上記検出部が被写界深度範囲以内の所定量の合焦点位置移動を検出する毎に撮影した画像を複数記録することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、近距離の被写体に対して、簡単に高画質で被写界深度の深い画像を撮影することが可能な撮影装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は本発明の撮像装置の第1の実施形態のカメラシステムの電気的なシステム構成を概略的に示すブロック図。
【図2】図2は撮像部移動機構部の概略正面図。
【図3】図3は図2のA−A線による撮像部移動機構部の要部縦断側面図。
【図4】図4は図2のB−B線による撮像部移動機構部の要部縦断側面図。
【図5】図5(A)はボイスコイルモータ(VCM)の要部構造を示す部分正面図、図5(B)は図5(A)のC−C線による部分縦断側面図。
【図6】図6は第1の実施形態における移動判定部等を示す図。
【図7】図7は第1の実施形態におけるマクロ連続撮影する様子の説明図。
【図8】図8は図7において被写体側にカメラシステムを近づけた場合の距離変化によりコントラスト値が変化する様子を示す説明図。
【図9】図9はメニュー操作画面等を示す図。
【図10A】図10Aは第1の実施形態におけるカメラ制御により、マクロ連続撮影を含む処理手順の1例を示すフローチャート。
【図10B】図10Bは第1の実施形態の変形例におけるマクロ連続撮影を含む処理手順の一部を示すフローチャート。
【図11】図11は本発明の第2の実施形態のカメラシステムにおける検出部を構成する位置計算回路等を示す概略図。
【図12】図12は第2の実施形態のカメラシステムにより被写体の一部に順次合焦させて撮影画像を順次記録し、記録した撮影画像から合成画像を生成する動作の概略を示す図。
【図13】図13は第2の実施形態における検出部を構成する回路の出力信号を説明する図。
【図14】図14は第2の実施形態のカメラシステムの位置と被写界深度の関係を示す図。
【図15】図15は第2の実施形態のカメラシステムの撮影動作の詳細を説明するフローチャート。
【図16】図16は第2の実施形態における記録した撮影画像から合成画像を生成する詳細を説明するフローチャート。
【図17】図17は第2の実施形態のカメラシステムにおける通常の撮影を含む動作のフローチャート。
【図18】図18はオートフォーカスの動作のフローチャート。
【図19】図19は本実施形態と従来例との差異の説明図。
【図20】図20は第2の実施形態の変形例のカメラシステムの撮影動作の詳細を説明するフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の撮像装置を図面に基づいて説明する。本実施形態で説明するカメラシステムは、光電変換によって画像信号を得る撮像素子を含む撮像ユニットの手ブレ補正を行うための駆動装置、及び、合焦点検出をするための駆動装置を搭載したものである。
以下の実施形態では、レンズ交換可能な一眼式電子カメラ(デジタルカメラ)への適用例で説明する。なお、本発明は、以下に説明する各実施形態の場合に限定されるものでなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲であれば、種々の変形が可能である。
【0010】
(第1の実施形態)
本実施形態のカメラシステム10は、図1に示すように撮影レンズであるレンズユニット200とボディユニット100とから構成されている。
撮像装置としての本実施形態のカメラシステム10は、被写体の光学像を結像するための撮影レンズを備えたレンズユニット200と、例えば電荷結合素子(CCD)やCMOSセンサ等と称される撮像素子を用いて構成される撮像部117を有する撮像ユニット116を備えたボディユニット200とから構成されている。
以下の説明において、ボディユニット100から被写体に向かう方向を前方と称し、その反対方向を後方と称する。また、レンズユニット200内の撮影レンズを構成する光学系の光軸O1と一致する軸をZ軸とし、Z軸に直交する平面上において互いに直交する2つの軸をX軸(水平方向の軸)及びY軸(垂直方向の軸)とする。
【0011】
まず、このカメラシステム10の詳細な構成について説明する。
図1に示すように、被写体の光学像を結像するために、レンズユニット200内には撮影レンズ202が配置されている。撮影レンズ202の結像位置には、例えば電荷結合素子(CCD)やCMOSセンサ等の結像された光学像を光電変換する撮像素子を用いて構成される撮像部117を配置して、カメラシステム10が構成されている。
また、カメラシステム10は、撮像部117を有するボディユニット100と、該ボディユニット100に着脱可能に装着され、撮影レンズ202を有するレンズユニット200と、によって構成されている。
【0012】
本実施形態では、レンズユニット200の動作は、レンズユニット200に配設されたレンズユニット側の制御手段としてのレンズ制御用マイクロコンピュータ(以下、“Lucom”と称する)201によって制御される。
また、ボディユニット100の動作は、ボディユニット100に配設されたカメラシステム10全体を制御する制御手段としてのボディ制御用マイクロコンピュータ(以下、“Bucom”と称する)101によって制御される。このBucom101は、後述するマクロ連続撮影(第2の実施形態では超深度撮影)を含む撮影動作の制御手段としての制御部101aの機能を持つ。
ボディユニット100にレンズユニット200を装着した状態において、Bucom101とLucom201は、通信コネクタ102を介して互いに通信可能に電気的に接続される。そして、Lucom201はBucom101に従属的に協働しながら稼動するように構成されている。また、通信コネクタ102を通して各ユニットに必要な電力はボディユニット100に設置された電源回路135から供給される。
【0013】
撮影レンズ202は、光軸方向(Z軸方向)に位置が変更可能な合焦用レンズとしてのフォーカスレンズ202aと、位置の変更により倍率を変更する変倍レンズ202bとから構成され、両レンズ共レンズユニット200内に保持されている。
また、撮影レンズ202は、フォーカスレンズ202aを光軸方向に動作することで、フォーカシングを行い、変倍レンズ202bの位置を光軸方向に移動させることで、焦点位置がほぼ一定で像倍率を変化させるズーミングをすることができる。ズーミングのときにフォーカスレンズ202aと変倍レンズ202bの両方を動作させても良い。
両レンズ202a、レンズ202bは、単一のレンズで構成されていても、複数のレンズから構成されていても勿論良い。
【0014】
レンズユニット200は、ボディユニット100の前側(被写体側)に設けられた不図示のボディマウントとレンズユニット200の後ろ側(撮像素子側)に設けられた不図示のレンズマウントを介して着脱自在となる着脱機構が形成される。
この着脱機構は例えばバヨネット形式であり、この構成により、カメラシステム10は、レンズユニット200を特性が異なる様々のレンズユニット200に交換して装着し、撮影することができる。例えば、高い像倍率の撮影が可能なマクロ撮影専用のレンズでも良いし、レンズユニット200とボディユニット100の間に装着されて、より高い像倍率の撮影を可能とするいわゆる中間リングを装着するようにしても良い。
また、レンズユニット200には、絞り203が配設されている。絞り203は、絞り駆動機構205内に設けられた図示しないステッピングモータ等のアクチュエータによって駆動される。
【0015】
一方、フォーカスレンズ202a、変倍レンズ202bは、レンズ駆動機構204内に設けられた図示しないステッピングモータ等のアクチュエータによって駆動される。撮影レンズ202のフォーカスレンズ202a、変倍レンズ202bの位置は、位置検出センサ204a、204bによりそれぞれ検出され、Lucom201に入力される。
さらに、フォーカスレンズ202a、変倍レンズ202bの位置から算出される合焦距離、焦点距離、及び絞り値の情報と、絞り値や合焦距離や焦点距離から算出される被写界深度等のレンズユニット200の情報は、通信コネクタ102を介して、Bucom101に入力される。
【0016】
ここで、位置検出センサ204a、204bは、位置が変化すると変化する電気抵抗を検出するもの、ホール素子やGMR(巨大磁気抵抗)素子により磁性体に着磁された磁気パターンを検出するもの、発光素子と受光素子で光学的なパターンを検出するもの等、位置検出が精密にできるものであればいずれのセンサであっても良い。
撮像部117は、後述するようにこの撮像部117を移動する撮像部移動機構部159を介してボディユニット100内に保持されている。ここで、撮像部117は、上述したようにCCDやCMOSセンサ等の光電変換する機能を備えた撮像素子により構成されている。
なお本実施形態では、撮像部117の前側に、ローパスフィルタ等の光学フィルタ118及び防塵フィルタ119を配設して、撮像ユニット116を構成している。防塵フィルタ119の周縁部には、圧電素子120が取り付けられている。
【0017】
圧電素子120は、防塵フィルタ制御回路121によって、防塵フィルタ119を寸法や材質によって定まる所定の周波数で振動させるように構成されている。圧電素子120の振動によって、防塵フィルタ119に付着した塵埃を除去することができる。
防塵フィルタ119の前側には、一般にフォーカルプレーンシャッタと称される構造のシャッタ108が配設されている。また、ボディユニット100内には、シャッタ108の先幕と後幕を駆動するばねをチャージするシャッタチャージ機構112と、これら先幕と後幕の動きを制御するシャッタ制御回路113が設けられている。
なお、光学フィルタ118、防塵フィルタ119及びシャッタ108は、必要に応じて適宜に配設されるものであり、カメラシステム10はこれらを具備しない構成であってもよい。
【0018】
撮像部117は、この撮像部117の動作を制御する撮像部インターフェース回路122を介して画像処理部126に電気的に接続されている。画像処理部126は、撮像部117により光電変換されて出力される信号に基づいて表示部で表示する画像(信号)や記録部で記録する画像を生成する機能を有する。
画像処理部126は、SDRAM124やFlashROM125等の記憶領域を使用して、画像に対して所定の画像処理を行うように構成されている。
画像処理部126は、いわゆるコントラスト検出方式によるオートフォーカスを行うために、フォーカスレンズ202aあるいは撮像部117を光軸方向に所定の振幅で振動(ウォブリングの動作)させて生成した複数の画像について、所定の領域(フォーカスエリア)におけるコントラスト値を算出して、遠距離側、近距離側のいずれに焦点位置があるのか検出する。
【0019】
そして、ウォブリング動作をしながら焦点が合う方向にフォーカスレンズ202aを移動させつつ、画像を取り込み(撮影する)ことにより、それらの画像から最大コントラストの状態を焦点位置として検出することができ、その焦点位置でフォーカスレンズ202aを停止することにより、撮影レンズ202でオートフォーカス(AF)がなされる。
このように画像処理部126は、最大コントラストの状態を(撮影レンズ202が)焦点位置又は合焦点位置であるとして検出する焦点位置検出部又は合焦点位置検出部126aを有する。また、この合焦点位置検出部126aの検出信号によりBucom101は、撮影レンズ202を合焦点位置に設定する制御を行う合焦点位置設定部101bの機能を備える。
【0020】
レリーズスイッチの半押しの第1スイッチ(1stスイッチ)がONした状態で、オートフォーカスが行われ、フォーカスレンズ202a、変倍レンズ202bと撮像部117の位置はその状態を保つ。すると合焦点位置の像倍率はほぼ一定になり、この状態で被写体と撮像部117の位置を変えながら複数の画像をほぼ連続的に撮影し、撮影した複数の画像を記録部としての記録メディア127に記録する。
画像処理部126は、ボディユニット100の背面に配設された表示部を構成する液晶モニタ123が電気的に接続されており、液晶モニタ123に撮像部117の画像を(スルー画として)表示することができる。
また、画像処理部126は、記録メディア127に記録した複数の画像から所定のコントラストを有する画像領域(画像エリア)を切り出し、合成して1つの合成画像を生成する画像合成部126bの機能を有する。
【0021】
表示部を形成する液晶モニタ123は、カメラシステム10による撮影構図の状態をリアルタイムに表示する、いわゆる電子ビューファインダとしても機能する。また、本実施形態では光学式のファインダを持たない構成となっているが、いわゆる一眼レフ形式の光学式ファインダを設けても良い。
これらのファインダを用いれば、後に述べるマクロ連続撮影(マクロ連写)又は超深度撮影の時に、撮影者(ユーザ)が被写体のピントが合っているかの確認や、撮影の異常を知らせる警告表示を確認することが出来る。
また、この液晶モニタ123は、後述するようにメニューの表示や、撮影モードの表示や、マクロ連写の場合において合焦用レンズとしてのフォーカスレンズ202aの位置を固定した後に、撮影装置としてのカメラシステム10を移動するようにガイド表示する場合のガイド表示等にも利用される。
【0022】
記録部を構成する記録メディア127は、フラッシュメモリやハードディスク(HDD)等の記録媒体であり、ボディユニット100内に着脱可能に設けられている。記録メディア127は、カメラシステム10で撮像された画像等(動画の場合は音声も含む)のデータを記録する。
不揮発性メモリ128は、カメラシステム10の制御に必要な所定の制御パラメータを記憶する、例えばEEPROMからなる記憶部である。不揮発性メモリ128は、Bucom101からアクセス可能に設けられている。
Bucom101には、カメラシステム10の動作状態を出力して表示するによってユーザへ告知するための動作表示用LED(又は動作表示用LCD)130と、カメラ操作スイッチ131と、内蔵されたストロボ132及び図示しない外部ストロボを駆動するストロボ制御回路133と、が接続されている。
【0023】
カメラ操作スイッチ131としては、図6に示すように例えばレリーズスイッチ131c、電源スイッチ(パワースイッチ)131a、メニューボタン(メニュースイッチ)131bなど、カメラシステム10を操作するために必要な操作釦を含むスイッチ群や、図11では図6のメニューボタン131bの代わりのモードスイッチ131b′等を有する。
さらに、該ボディユニット100内には、電源としての電池134と、該電池134の電圧を、当該カメラシステム10を構成する各回路ユニットが必要とする電圧に変換して供給する電源回路135が設けられ、また、外部電源から不図示のジャックを介して電流が供給されたときの電圧変化を検知する電圧検出回路(図示せず)も設けられている。
次に、本実施形態のカメラシステム10の手ブレ補正機能に用いられている駆動装置300を含む撮像部移動機構部159について説明する。
【0024】
本実施形態のカメラシステム10は、手ブレ(手振れ)を補正するために撮像部117をX軸方向、Y軸方向及びZ軸回りの回転方向に移動させることが可能に構成された撮像部移動機構部159を具備している。そして、この撮像部移動機構部159を介して撮像部117を保持していることによって、本実施形態のカメラシステム10は、手ブレを補正するように撮像部117を、X軸方向、Y軸方向及びZ軸回りの回転方向に機械的に移動させることができる。
また、撮像部移動機構部159を構成する手ブレ補正用の駆動装置300は、X軸アクチュエータ163、Y軸アクチュエータ164を駆動源として用い、撮像部117を含む撮像ユニット116を搭載した移動枠166(ホルダ145)を移動対象物として構成される。
【0025】
具体的に撮像部移動機構部159は、X軸ジャイロ160、Y軸ジャイロ161、Z軸ジャイロ170、X軸加速度センサ171、Y軸加速度センサ172、Z軸加速度センサ173、防振制御回路162、X軸アクチュエータ163、Y軸アクチュエータ164、移動枠166、固定枠であるフレーム167、位置検出センサ168及びアクチュエータ駆動回路169を具備して構成されている。
移動枠166は、複数のボール310(図2の310a−310c、図4の310b)を介して、フレーム167に複数のバネ174で押圧されることにより支持され、XY面内方向に自由に動くことができる。バネ174は、図1では引張コイルバネであるが、圧縮コイルバネ、板バネ、磁気バネ等、移動枠166をフレーム167に押圧する機構であれば形態は問わない。
【0026】
つづいて、電磁方式のVCMモータを駆動源として用いる本実施の形態の駆動装置300について図2から図5を参照して説明する。
図2は、本実施の形態の駆動装置300の構成例を示す概略正面図であり、図3は図2の駆動装置300をA−A線により、側面から見た側断面図である。図4は図2の駆動装置300をB−B線により、側面から見た側断面図である。図5(A)は図2における1つのVCM部(例えば図2における下方寄りの左側のもの)の概略構成を示す正面図と、図5(A)のC−C線で断面をとり、側面から見た側断面図である。
固定枠であるフレーム167は、ボディユニット100に固定されており、該フレーム167によって、撮像部117を保持する(移動枠166となる)ホルダ145がX軸方向、Y軸方向、Z軸回りの回転方向に移動可能に支持されている。
【0027】
ホルダ145の支持は、フレーム167に保持された3つのボール310a、310b、310cが、ホルダ145に設置された摺動板B316a、316b、316cを受け、対向した位置に設置された摺動板A315a、315b、315cを、ボール314a、314b、314cを介して、板バネを形成する押えバネ313a、313b、313cでホルダ145をボール310a、310b、310cに押圧することによりなされている。なお、押えバネ313a、313b、313cは、ビス317a,317b,317cによりフレーム167に固定されている。
また、摺動板B316c、摺動板A315c(図示せず)は、図2における摺動板B316b、摺動板A315bと左右対称な位置に設けられている。
【0028】
ボール310a、310b、310cが、ホルダ145の摺動板B316a、316b、316cと接触する3点で形成される平面内方向にホルダ145は自由に動くことが可能となる。
ここで最初にホルダ145をXY面内方向に駆動するアクチュエータであるVCMについて図5で説明する。図5(A)は基本的なVCMの正面図(移動枠166、ヨーク3aは不図示)、図5(B)は図5(A)のC−C線側断面図を示す。絶縁被覆された導電性の細線をトラック形状に巻いたコイルC1は移動枠166(ホルダ145)に接着等で固定されている。
板状の磁石2は、図5においては下側がN極、上側がS極となるようにY方向に着磁され、固定枠5(で示すフレーム167)に接着等で固定されている。また、磁性材で形成された板状のヨーク3a、3bが磁石2、コイルC1を挟んで移動枠166と固定枠5に接着等で固定され、磁石2あるいはコイルC1に電流が流れた時の磁力線が外部に漏れないように閉じた磁気回路を形成している。
【0029】
この状態で、コイルC1に電流を流すと、コイルC1の2つの直線部は磁石2の磁力線に対して電流が直交し、磁力線の方向と電流の方向はコイルC1の2つの直線部では逆方向となっているので、磁力線及び電流と直交する同じ方向に力が働き、移動枠4が駆動される。電流の向きを逆転させると、移動枠166は逆方向に駆動される。また、コイルC1に流れる電流の大きさにより発生する力を変えることが可能である。ここでヨーク3a、3bは、移動枠166、固定枠5を磁性材で形成すれば不用となる。
次に図2、図3、4により、駆動装置300の駆動を説明する。駆動装置300では図5で説明したものと同様に構成されたVCM-XA320a、VCM-XB320b、VCM-YA321a、VCM-YB321b、が図3に示した様に配置されている。VCM-XA320a、VCM-XB320bはX方向の駆動力を発生するVCMであり、VCM-YA321a、VCM-YB321bはY方向の駆動力を発生するVCMである。
【0030】
なお、図5で示したVCMを構成するコイルC1,ヨーク3a、3b、磁石2は、図2−図4における例えば図2のVCM-XA320aにおいては、コイルX301a、ヨークX302a(302a),磁石X303aに対応する。VCM-XB320bにおいては、VCM-XA320aにおけるaの代わりにbを用いて示している。
また、VCM-YA321aにおいては、図5のコイルC1,ヨーク3a、3b、磁石2は、コイルYA304a、ヨークYA305a(305a),磁石YA306aに対応し、VCM-YB321bにおいては、VCM-YA321aにおけるa,Aの代わりにb,Bを用いて示している。
また、Z軸回りの回転方向の駆動をする場合はVCM-YA321a、VCM-YB321bに異なる駆動力(場合によっては反対方向の駆動力)を与えることにより実現可能である。
【0031】
ホルダ145の位置制御は、ホルダ145のX軸方向、Y軸方向、Z軸回りの回転方向位置を検出する(図1に示す)位置検出センサ168と、VCM-XA320a、VCM-XB320b、VCM-YA321a、VCM-YB321bを制御する(図1に示す)アクチュエータ駆動回路169によって行われる。
図3に示すように撮像部117を構成するCCDチップ136は、固定板137の前面の中央位置にフレキシブル基板138と共に実装され、このフレキシブル基板138は接続部139a,139bにより背面側に屈曲されて主回路基板140の背面のコネクタ141a,141bと電気的に接続される。CCDチップ136の撮像面(前面)はスペーサ143を介して取り付けられた保護ガラス142により保護されている。
【0032】
保護ガラス142の前面には、フィルタ受け部材144を介してローパルフィルタ(LPF)118が取り付けられており、このLPF118は、その外形に合わせた開口を設けたホルダ145により保持されている。なお、保護ガラス142の前面は、ホルダ145の段部147に当接して、位置決めされた状態で保持されている。
また、このLPF118の前に防塵フィルタ119が配置され、両者間の開口146の周囲はシール材156によりシールされている。
防塵フィルタ119は、受け部材152、153の間に圧電素子120を配置し、受け部材152と圧電素子120に両面が当接し、前面側の押圧部材151により後方のホルダ145側に押圧した状態でネジ150により、ホルダ145に保持されている。なお、ホルダ145における防塵フィルタ119の後方(背面)部分は、防塵フィルタ119を受ける防塵フィルタ受け部148を形成する。
【0033】
以上のような駆動装置300を備える撮像部移動機構部159の動作を次に説明する。X軸ジャイロ160は、カメラシステム10のX軸回りの回動(ブレ)の角速度を検出し、Y軸ジャイロ161は、カメラシステム10のY軸周りの回動の角速度を検出し、Z軸ジャイロ170は、カメラシステム10のXY平面内の回動の角速度と回転中心位置を検出する。
X軸加速度センサ171は、カメラシステム10のX軸方向の加速度を検出し、Y軸加速度センサ172は、カメラシステム10のY軸方向の加速度を検出する。防振制御回路162は、検出されたカメラシステム10の角速度、回転中心位置、加速度から、手ブレ補償量を演算し、撮像部117を、手ブレを補償するように駆動装置300により変位ないしは移動させる。
このようにして、手ブレが発生した場合に対して、その手ブレが撮像部117に与える影響を実質的に解消するように撮像部117を変位ないしは移動させる。
【0034】
また、Z軸加速度センサ173は、撮影装置としてのカメラシステム10のZ軸方向の加速度を検出して加速度信号を出力する。本実施形態においては、Z軸加速度センサ173は、その検出信号(加速度信号)により以下のように、撮影装置としてのカメラシステム10のZ軸方向(撮影レンズ202の光軸O1方向となる)の移動を判定する移動判定部又は移動部の機能を持つ。
図6に示すようにZ軸加速度センサ173により検出されたZ軸方向の加速度信号は、防振制御回路162中の加速度検出回路162aにより加速度が検出される。
この加速度は積分器をもつ位置計算回路162bにより、積分されてカメラシステム10の移動する速度が計算(演算)され、さらに速度が積分器をもつ位置計算回路162cにより積分されてカメラシステム10の位置が計算(演算)される。
【0035】
Z軸加速度センサ173と、加速度検出回路162aと、位置計算回路162cとにより、カメラシステム10のZ軸方向の移動を判定する移動判定部又は移動部が構成される。カメラシステム10の光軸方向(Z軸方向)の移動を判定する移動判定部又は判定部は、Z軸加速度センサ173の出力信号を用いた位置計算回路162cにより構成されると見なすこともできる。
Z軸加速度センサ173の出力信号を用いることなく、画像処理部126が画像信号から撮影対象の画像のサイズの変化の有無を判定することにより、Z軸方向の移動を判定する判定部を形成するようにしても良い。
【0036】
なお、後述する第2の実施形態においては位置計算回路162cが合焦点位置の移動量を検出する検出部を構成する。
Z軸方向のカメラシステム10の速度と位置は、Bucom101に入力されて、後に述べる高画質で被写界深度が非常に深い画像を撮影するのに利用される。
【0037】
なお、撮像部移動機構部159において、撮像部117を移動させるアクチュエータは、本実施形態ではVCMを用いているが、VCMに限定されるものでなく回転モータ、リニアモータ、超音波モータ等、他の駆動手段を用いても良い。
以上のような構成を有する撮像部移動機構部159は、カメラシステム10の手ブレの動きに応じて撮像部117を移動させることによって、手ブレに起因する撮像部117により撮影対象の被写体像の手ブレにより影響を抑制する機能、いわゆる撮像素子シフト方式の手振れ補正部の機能を有する。
また、この手振れ補正部の手振れ補正機能によりZ軸方向以外のカメラシステム10のブレが補正されるため、Z軸方向の移動量は、より高精度で検出可能となる。さらに、撮影者(ユーザ)が像倍率の高い状態で被写体をフレーミングする場合でも、カメラシステム10の手ブレが補正されるので、容易にフレーミングすることが可能になる。
【0038】
このように本実施形態の撮像装置としてのカメラシステム10は、位置が変更可能な合焦用レンズを含む撮影レンズ202と、上記撮影レンズ202を介して得た光学像を画像信号に変換する撮像部117と、を有する撮影装置において、上記撮影レンズ202の光軸方向に対する撮影装置の移動を判定する移動判定部を構成するZ軸加速度センサ173と、上記光軸方向への移動時に、上記合焦用レンズの位置を固定して上記撮影レンズ202を所定の合焦点位置に設定した状態で、上記撮像部117で得られる画像を連続的に記録する記録部としての記録メディア127と、を具備することを特徴とする。
【0039】
図6はカメラシステム10により被写体としての花11をマクロ連続撮影(マクロ連写)する場合の概略図を示し、図7はカメラシステム10を花に近づけてマクロ連写を行う場合の動作の概略を示し、図8は図7の場合におけるコントラスト値の変化の様子を示す。
ボディユニット100の上面には、電源スイッチ131a、レリーズスイッチ131cが設けられ、背面の上部側の位置にメニューボタン131bが設けてある。また、メニューボタン131bを操作すると、図9(A)に示すように露出補正、ストロボ、ホワイトバランス(WBと略記)、マクロ等の項目を選択することができる。
そして、マクロ連写を行う場合には、図9(A)においてマクロを選択すると、図9(B)に示すようにマクロOFF,マクロ、マクロ連写の項目が表示されるので、マクロ連写を選択すると、マクロ連写の撮影モードに設定することができる。
【0040】
また、図6において、ボディユニット100内のZ軸加速度センサ173の加速度信号は、加速度検出回路162aに入力され、さらに位置計算回路162cにより、カメラシステム10がZ軸方向に移動された場合、その移動を判定することができる。
また、図1の画像処理部126の合焦点位置検出部126aは、マクロ連写の撮影モードにおいては、最初のピント合わせ時において、フォーカスレンズ202aをZ軸方向(光軸方向)に移動した場合における、撮像部117により撮像した画像信号のコントラスト値が最大となる距離をピントが合った合焦点位置であると検出し、カメラ制御を行うBucom101は、フォーカスレンズ202aをその位置に固定して撮影レンズ202をその合焦点位置に固定する。つまり、Bucom101の合焦点位置設定部101bは、撮影レンズ202を所定の合焦点位置に設定する(制御を行う)。
【0041】
そして、図7に示すように被写体としての花11に、ユーザは把持したカメラシステム10を近づけていくと、花11を構成するその一部のパーツにピントが合った距離で図8に示すようにコントラスト値が順次ピークとなる。そのようにコントラスト値が順次ピークとなる状態で撮影を短い時間間隔で連続的に行うようにBucom101の制御部101aは制御し、記録部に撮影した複数の画像(データ)を記録する。
また、記録部に記録された複数の画像は、一致度が最大となる位置で重ね合わせが行われ、合成画像が生成される。
Bucom101は、図10Aに示すようなカメラ制御の処理手順により、上述したマクロ連続撮影及び合成画像の生成の処理を行う。
以下、図10Aを参照して本実施形態の動作を説明する。
【0042】
カメラシステム10の電源が投入されると、ボディユニット100及びレンズユニット200は動作状態となり、ボディユニット100内のBucom101はカメラ制御を開始する。
Bucom101は、最初のステップS1において撮影モードであるか否かの判定を行う。カメラシステム10の初期状態は撮影モードとなっているので、ステップS2においてBucom101は、撮像部117により撮像された画像を液晶モニタ123にスルー画として表示する。一方、ステップS1で撮影者が再生モードを選択した場合は、ステップS15の再生モードの判定に移行する。
次のステップS3においてBucom101は、マクロ連写の撮影モードが選択(設定)されているか否かの判定を行い、マクロ連写の撮影モードが選択されている場合には次のステップS4に進む。
【0043】
ステップS4においてBucom101は、ユーザによる最初のピント合わせの操作において、フォーカスレンズ202aは光軸方向(Z軸方向)に移動される。そして、コントラスト値が最大となる位置にフォーカスレンズ202aを設定(固定)して、撮影レンズ202をそのピント合わせした合焦点位置に固定する。
図7を用いて説明すると、図7(A)よりも前の状態(カメラシステム10が図7(A)の場合よりも花11から離れた距離)において最初のピント合わせする。或いは後述する第2の実施形態において説明するように、図7(A)等において、ピント合わせして所定の合焦点位置に設定した後、一旦カメラシステム10を図7(A)に示す距離よりも離れた距離に設定して、花11に近づけるようにして(マクロ連写を行うようにして)も良い。
【0044】
また、ステップS5においてBucom101は、ユーザに対して、カメラシステム10の移動方向と移動速度の指示であるスキャン指示の表示を行う。例えば、図9(C)に示すように、液晶モニタ123において、「(カメラシステムを)ゆっくり近づけてください」と言う主旨のガイド表示を行う。
ユーザは、このガイド表示に従って、カメラシステム10を花11側にゆっくり近づける操作を行う。ステップS5の後のステップS6においてBucom101は、速度計算回路162b、位置計算回路162cにより、速度や位置が変化したか否かの判定結果を受けてカメラシステム10がZ方向にスキャン(走査)されたか否かを判定する。なお、図10A中においてはカメラシステムをカメラと略記する(後述する図10B,図15においても同様)。
【0045】
カメラシステム10がZ方向にスキャンされた判定結果の場合には、ステップS7においてBucom101は、画像処理部126によりコントラスト検出を行わせると共に、マクロ連続撮影を行う動作を開始する。ここで、マクロ連続撮影の開始をカメラシステム10の他の操作部材の操作信号で行なっても良いことは言うまでもない。
次のステップS8においてBucom101は、画像処理部126が被写界深度以内の移動量において最大コントラスト値を検出したか否かを判定する。
図10Aの例では、ステップS4のピント合わせにおいて、設定した合焦点位置の状態におけるその被写界深度を算出し、その被写界深度以内の移動量で最大コントラスト値を検出する。このように被写界深度以内の移動量で最大コントラスト値を検出する場合に限らず、簡略的に最大コントラスト値を検出するようにしても良い。
画像処理部126が最大コントラスト値を検出しない場合には、ステップS6の処理に戻り、画像処理部126が最大コントラスト値を検出した場合には、ステップS9に進む。
【0046】
図7を用いて説明すると、カメラシステム10を花11側に近づけると図7(A)に示すように撮影レンズ202が花11における最もカメラシステム10に近いパーツ11aに対してピントが合う距離D1において、図8に示すようにコントラスト値がピーク(最大)となる。
このステップS9においてBucom101の制御部101aは、図8に示すように最大コントラスト値を検出した画像を記録部としての記録メディア127に記録させると共に、その画像における最大コントラスト値と該最大コントラスト値の画像エリアの情報を記録メディア127に記録させる。
ステップS9の処理の後、ステップS6の処理に戻り、同様の動作を繰り返す。
【0047】
例えば、図7(A)において、距離D1にピント合わせをした状態で、ユーザがカメラシステム10を花11側に距離D2まで近づけると、図7(B)に示すように距離D1となるパーツ11bに対してコントラスト値が図8に示すように最大となる。そして、最大コントラスト値を検出したタイミングにおいて、Bucom101の制御部101aは、その画像を記録させると共に、その場合の最大コントラスト値も記録する。
また、図7(B)の状態からさらにユーザがカメラシステム10を花11側に距離D3まで近づけると、図7(C)に示すように距離D1となるパーツ11cに対してコントラスト値が図8に示すように最大となる。そして、最大コントラスト値を検出したタイミングにおいて、Bucom101の制御部101aは、その画像を記録メディア127に記録させると共に、その場合の最大コントラスト値も記録する。
【0048】
このようにして、ユーザはマクロ連写の動作を行うことができる。そして、撮影対象の花11にピントが合った距離D1以内に近づけた後にカメラシステム10のスキャンを停止すると、ステップS6においてスキャンの速度が所定以下になることが検出されてスキャンの停止と判定され、ステップS10の処理に進む。ステップS10においてBucom101は、マクロ連写の制御動作を終了する。また、スキャン停止の判定は、所定時間以上、所定位置範囲にカメラシステム10が留まっていることを位置計算回路162cの出力信号から判定しても良いし、カメラシステム10の移動方向が反転したことを速度計算回路162bの出力信号から判定しても良い。さらに、スキャンの停止判定に相当する判定をカメラシステム10の操作部材の操作により行なっても良い。例えば、レリーズスイッチ131cのオフの操作で行なえば、判定はより簡単、確実にできる。
次のステップS10においてBucom101は、画像処理部126が、記録メディア127に記録されたマクロ連写された複数の画像に対して、合成画像を生成させるように制御する。このステップS10において画像処理部126は、複数の画像における隣接して撮影された画像同士を一致度が最大となる位置で重ね合わせを行う。
また、ステップS12において画像処理部126は、画像エリア毎に最大コントラスト部分を採用して複数の画像から1つの合成画像を生成する。図7の例では、花11を撮影した場合、図7(A)で撮影記録した画像ではパーツ11a部分、図7(B)ではパーツ11b部分、図7(C)ではパーツ11c部分をそれぞれ採用して花11の合成画像を生成する。
【0049】
図10Aにおいて、ステップS3においてマクロ連写の撮影モードでない場合には、通常のマクロの撮影モードとなるため、ステップS13においてBucom101は、レリーズ操作がされたか否かを判定する。
レリーズ操作がされた場合には、ステップS14においてBucom101は、レリーズ撮影に対応して、撮影と記録の制御動作を行う。つまり、レリーズ操作がされたタイミングの画像を撮影画像として記録部に記録し、ステップS1の処理に戻る。また、ステップS13において、レリーズ操作がされない場合にも、ステップS1の処理に戻る。
また、ステップS1において撮影モードでない場合には、ステップS15においてBucom101は、再生モードが選択されているか否かの判定を行う。再生モードが選択されている場合には、ステップS16においてBucom101は、再生モードの制御動作を行った後、ステップS17に進む。
【0050】
ステップS17においてBucom101は、レリーズスイッチ131cのオフ等の終了の操作が行われた否かの判定を行い、終了の操作でない場合にはステップS1の処理に戻り、逆に終了の操作の場合には、図10Aの処理を終了する。
このように動作する本実施形態は、近距離の被写体に対して、カメラシステム10を近づけていく簡単な操作により、それぞれの距離において被写体の一部にそれぞれピントが合った複数の画像を順次記録する。そして、撮影後において一部にそれぞれピントが合った画像エリアを、一致度が最大となる位置で重ね合わせ、高画質で被写界深度が非常に深い合成画像を生成する。
【0051】
従って、本実施形態によれば、近距離の被写体に対して、簡単に高画質で被写界深度が深い画像を撮影することが可能な撮影装置を提供できると共に、簡単に高画質で被写界深度が非常に深い合成画像を生成できる。
また、本実施形態によれば、撮像装置としてのカメラシステム10を合焦点状態に固定した状態で、カメラシステム10を被写体側、つまり光軸方向又はZ軸方向に移動して、最大コントラストとなる状態で順次、撮影して撮影画像として記録するため、像倍率を殆ど一定に保った合焦点を含む撮影画像を簡単に取得できる。
なお、図10Aの処理手順の変形例として、図10Aにおける最大コントラストとなる位置で撮影画像として画像を記録する代わりに、図10Bのように実質的に被写界深度範囲以内となる所定の移動量の検出(判定)毎に画像を記録するように変更しても良い。
【0052】
図10Bにおいては、ステップS6のカメラのZ方向にスキャン(走査)後のステップS21において防振制御回路162は手振れの有無に応じてアクチュエータ駆動回路169の動作を制御し、撮像部117に対する手振れ補正を行うように手振れ補正機能を起動する(動作状態にする)。なお、ステップS21の処理をステップS6の前に動作させるようにしても良い。
ステップS21の処理により、ユーザがカメラシステム10を被写体としての花11に近づけるZ方向とは異なる方向に手振れが発生しても、その手振れにより撮像部117による撮像に影響を及ぼすことを低減することができる。
ステップS21の後のステップS7においてBucom101は、画像処理部126に対してコントラスト検出を行わせると共に、マクロ連続撮影を行う動作を開始する。
【0053】
次のステップS22においてBucom101は、被写界深度範囲以内、又は(被写界深度範囲の端付近の場合にほぼ対応する)所定のコントラスト値以上(のコントラストを有する場合)において、Z方向(被写体に近づく方向)に所定の移動量だけ移動したか否かを判定する。この所定の移動量は、Z方向の被写界深度範囲(幅)程度より小さく設定される。この所定の移動量の大きさを設定する設定部を備え、マクロ連続撮影する場合の初期設定時などにおいて、ユーザが自由に設定できるようにしても良い。
ステップS22の判定結果に該当しない場合にはステップS6の処理に戻る。
一方、ステップS22の判定結果に該当する場合にはステップS23においてBucom101の制御部101aは、上記所定の移動量毎に、そのタイミングの画像を撮影画像として記録部としての記録メディア127に記録するように制御する。
【0054】
つまり、被写界深度範囲以内、又はこの被写界深度範囲以内に近いコントラストを有する状態において、Z方向に所定の移動量だけ移動する毎に、マクロ連写の撮影画像としてその画像を記録する。
この場合、コントラスト値も記録するようにしても良い。ステップS23の処理の後、ステップS6の処理に戻り、同様の処理を行う。その他の処理は図10Aとほぼ同様である。
本変形例によれば、手振れにより撮像に与える影響を低減できる。また、本変形例によれば、実質的に被写界深度以内において、所定の移動量毎に画像を記録するので、被写界深度範囲内において被写体(の各部)を確実に撮影することができる。
【0055】
つまり、被写界深度の範囲内において撮影記録された画像は、これに隣接して撮影記録された画像と被写界深度の範囲内においてその一部が重複するため、合成画像を生成する場合も、簡単に高画質の合成画像を生成できる。
次に第1の実施形態と同様に、近距離の被写体に対して、高画質で被写界深度が深い画像を撮影することが可能な撮影装置を説明する。
【0056】
(第2の実施形態)
本実施形態は、第1の実施形態とハードウェアの構成が殆ど同じであり、第1の実施形態のマクロ連写とは若干異なる処理手順により高画質で被写界深度が深い撮影を行う。
図11は本実施形態のカメラシステム10Bにより、例えば球形状の被写体400を撮影する概略図を示す。このカメラシステム10Bにおいては、図6におけるカメラシステム10におけるメニューボタン131bの位置に、撮影モード等を変更して撮影するモードスイッチ131b′が設けてある。
また、図6においても説明したようにボディユニット100内のZ軸加速度センサ173の加速度信号を加速度検出回路162aに入力して、カメラシステム10Bの加速度を検出する。
【0057】
この加速度は積分器を夫々もつ速度計算回路162b、位置計算回路162cにより、積分される。そして、位置計算回路162cは、本実施形態におけるカメラシステム10がZ軸方向に移動された場合の合焦点位置の移動量を検出する検出部を形成する。 また、本実施形態は、図1-図5に示した構成により、マクロ連写モード(本実施形態では超深度モード又は超深度撮影モード)において、画像処理部126の合焦点位置検出部126aは、フォーカスレンズ202aをZ軸方向(光軸方向)に移動した場合における、撮像部117により撮像した画像信号のコントラスト値が最大となる距離を合焦点位置であると検出する。
【0058】
また、Bucom101の合焦点位置設定部101bは、合焦点位置検出部126aにより検出された合焦点位置に撮影レンズ202の合焦点位置を保持(固定)(フォーカスレンズ202aの位置も固定)して、撮影レンズ202の略光軸方向に、像倍率を一定に保ちながら移動させるように制御する。
また本実施形態においてはBucom101の制御部101aは、所定のコントラスト以上を有する状態において、検出部が撮影レンズ202の焦点深度以内の所定量の被写体に対する焦点位置移動を検出する毎に画像を撮影画像として順次記録するように制御する記録制御部の機能を持つ。
【0059】
本実施形態の撮像装置を構成するカメラシステム10Bは、撮影レンズ202により形成される被写体の光学像を電子画像に変換する撮像部117と、撮影レンズ202による光学像の合焦点位置を設定する合焦点位置設定部101bと、上記合焦点位置設定部101bにより設定された合焦点位置を保持して、上記撮影レンズ202の略光軸方向に、像倍率を一定に保ちながら移動した場合における合焦点位置の移動量を検出する検出部としての位置計算回路162cと、を備え、上記検出部が被写界深度範囲以内の所定量の合焦点位置移動を検出した場合に撮影した画像を順次、複数記録することを特徴とする。
【0060】
本実施形態では、例えば球状の被写体400を撮影する動作により説明する。図12は、本実施形態における概略の動作を示す。
カメラシステム10Bの電源スイッチ131aがONになり、モードスイッチ131b′で超深度撮影モードが設定されると、ステップS41に示すようにZ軸加速度センサ173が動作し、Z方向位置の検出が開始する。
Z軸加速度センサ173の加速度信号は、防振制御回路162の加速度検出回路162aに入力され、A/D変換されたのち、オフセット補正(加速度0の時の電圧出力を0にする補正)とゲイン調整(出力電圧の大きさを調整)して加速度に対応する加速度信号が加速度検出回路162aから積分器をもつ速度計算回路162bに出力される。
速度計算回路162bでは加速度信号を積分器で積分した速度信号をBucom101と位置計算回路162cに出力する。積分器をもつ位置計算回路162cは速度信号を積分した位置信号をBucom101に出力する。
【0061】
図13(A)、図13(B)、図13(C) はカメラシステム10BのZ軸方向の位置検出について、カメラシステム10Bをユーザが手持ちでZ軸方向に移動した場合(被写体400に近づけた場合)をシミュレーションしたカメラシステム10Bの加速度、速度、位置の例を示す。
各グラフの縦軸は最終計算結果の加速度、速度、位置を示してあるが、図11の加速度検出回路162a、速度計算回路162b、位置計算回路162cの出力は対応した電圧信号となる。
次に図12を参照して、カメラシステム10Bの動作について説明する。モードスイッチ131b′の操作により超深度撮影モードに設定された状態で、電源スイッチ131aがONされると上述されたカメラシステム10BのZ方向位置の検出が開始される(電源スイッチ131aがONしてからモードスイッチ131b′を設定しても良い)。
【0062】
そして、ステップS42に示すようにユーザがレリーズスイッチ131cを操作し、1stレリーズスイッチがONになると、撮影された画像(スルー画)をもとに、ステップS43のAE(自動露光)とステップS44のAF(オートフォーカス)が動作し、適正露光となるようにレンズユニット200の絞りとボディユニット100のシャッタ速度が決められ、被写体400の所定の箇所にピントが合わせられ、撮影レンズ202と撮像部117の相対位置が決る。
この時、ステップS44に示すようにレンズユニット200の絞り値Fと、焦点距離fと、フォーカスレンズ202aの位置から計算された被写体距離Lから近距離側の被写界深度ΔL(近距離側の被写界深度は無限側の被写界深度より小さい数値となる)が計算される。
【0063】
本実施形態における被写界深度の範囲(Z方向の幅)は、近距離側の被写界深度ΔLと無限側(遠点側)の被写界深度との和であり、近距離側の被写界深度ΔLは、被写界深度の範囲の略1/2となる。本実施形態における近距離側の被写界深度ΔLは、被写界深度範囲内の所定量の値(所定の移動量)に相当する。
ステップS44においては、以下に説明する例えば第3撮影画像付近にAFさせた画像例で示している。
【0064】
ここで、許容錯乱円径をδ、x=((L―2・f)+((L−2・f)2−4・f2)1/2)/2とすると、
ΔL=x・f2/(δ・F・x+f2)
となる。
この状態で、ステップS45に示すようにカメラシステム10Bを被写体400から遠ざかる方向に移動し、ファインダ(ここでは電子ファインダ)上で被写体400にピントが合ってないことが確認できる位置でその移動を停止する(被写体400にフォーカスしない距離まで離す)。
そして、ユーザはステップS46に示すようにレリーズスイッチ131cを操作して2ndレリーズスイッチをONする。この操作を受けてBucom101は、検出部が所定量の移動を検出する毎に撮影画像を記録する制御を開始する。
【0065】
この状態を保ったまま、ユーザはカメラシステム10を被写体400に近づける。すると、ステップS47に示すように被写体400の撮影画像が所定のコントラスト(被写界深度内に入ってピントが合った状態)になった位置で、第1枚目の撮影画像の状態となる。この撮影画像を撮影し、記録する(第1撮影画像の記録)。なお、図12においては、最初の第1撮影画像は、画像記録を行わない図示例にしているが、第1撮影画像から画像記録を行うようにしても良い。
画像記録と同時にその時のカメラシステムのZ方向位置をリセットして0とする。以後、近距離側の被写界深度ΔLだけカメラシステム10の位置がZ方向に変化したこと(つまり被写界深度の範囲内における所定量の合焦点位置移動)をZ軸加速度センサ173の検出値から計算されたときに撮影する(第2撮影画像の記録)。以後は同様に近距離側の被写界深度ΔL、カメラシステム10がZ方向に変位するごとに画像を撮影し、記録する。この繰り返しは2ndレリーズスイッチがOFFとなるまで繰り返す。
【0066】
図14はカメラシステム10Bの具体的な絞りのFナンバーFと焦点距離f、被写体距離L、許容錯乱円径δをもとに、各被写体距離Lに対して被写界深度範囲(近距離側の被写界深度と無限側の被写界深度範囲を計算したグラフと、被写体400とカメラシステム10Bの位置関係を概念的に示した図である。
ここでFナンバーF=8、焦点距離f=100mm、被写体距離L=500mm、許容錯乱円径δ=0.033mmとしてある。近距離側の被写界深度ΔLは1.82mmとしてある。すると、ΔLの移動毎に被写体400を撮影すると、被写界深度範囲の約1/2が夫々重なった画像が得られる。
【0067】
なお、被写界深度範囲の約1/2が夫々重なるように撮影記録する場合に限定されるものでなく、少なくとも被写界深度範囲内で一部が重なるように少なくとも被写界深度範囲内の所定量の移動毎に撮影記録することが、望ましい。つまり、少なくとも被写界深度範囲内で一部が重なるようにして撮影記録されていると、時間的に隣接して撮影記録された2つの画像を合成する場合、鮮明に撮影された状態で重なる画像領域において位置合わせができ、画像合成する場合に簡単に位置合わせができ、高画質で被写界深度が深い合成画像を生成し易くなる。
図12におけるステップS48に示すように撮影されて記録された一連の画像から所定の空間周波数、つまり高域側の空間周波数成分を抽出するバンドパスフィルタをかけて各画像のピントの合った領域を切り出す。
【0068】
また、これらの画像は前後の画像に重なり部分をもつのでこの領域を検出して各画像をこの重なり部分を合わせて、被写体の超深度画像を合成する。
そして最後に撮影された画像の背景画像(撮影画像から被写体の超深度画像を切り取った画像)と被写体の超深度画像を合成して、ステップS49に示すように目的の合成画像を得る。
撮影画像から合成画像を生成する一連の画像処理は、カメラシステム10B内の画像処理部126で実施しても良いし、撮影記録された画像データを他のコンピュータに転送する等して、他のコンピュータ上で合成画像を生成するように行なっても勿論良い。
図15、図16はカメラシステム10Bによる動作を示すフローチャートである。より具体的には、図15はカメラシステム10Bにより、被写界深度が深い超深度画像を得るための撮影モードのフローチャートであり、図16は得られた複数の画像を用いて、超深度画像を合成する処理を示すフローチャートである。
【0069】
この超深度撮影モードが開始すると、最初のステップS51においてBucom101は、システム起動時の初期設定を行う。次のステップS52においてBucom101は、レンズユニット200等のアクセサリの検出を行う。また、ステップS53においてBucom101は、操作スイッチの状態検出を行う。
そして、ステップS54においてBucom101は、操作スイッチにより超深度モードに設定されているか否かの判定を行う。超深度モードに設定されていない場合には、設定されたモードに対応した処理に移る。
一方、超深度モードに設定されている場合には、ステップS55においてBucom101は、加速度センサを起動させる。各加速度センサは動作を開始し、それぞれ加速度を検出する。特にZ軸加速度センサ173による加速度信号からステップS56において検出部を構成する位置計算回路162cは、カメラシステム10Bの位置を積分計算により算出する。
【0070】
ステップS57においてユーザは1stレリーズスイッチをONにする。すると、ステップS58、S59において、AE(自動露光)とAF(オートフォーカス)が動作し、適正露光となるようにレンズユニット200の絞りとボディユニット100のシャッタ速度が決められ、被写体400の所定の箇所にピントが合わせられた合焦点状態となり、撮影レンズ202と撮像部117の相対位置が決る。
また、ステップS60においてレンズユニット200の絞り値Fと、焦点距離fと、フォーカスレンズ202aの位置から被写体距離Lが算出され、さらに被写体距離Lから近距離側の被写界深度ΔLが計算により算出される。
【0071】
なお、被写界深度ΔL計算時に使用される被写体距離Lは、AF時にフォーカスレンズ202aを駆動して焦点合わせを実施し、フォーカスレンズ202aの位置は位置検出センサ204aで、被写体の無限位置を基準に検出され、その位置データとフォーカスレンズ202aが変位した時の焦点位置変位量を用いて計算される。
このようにして撮影レンズ202が所定の合焦点位置にセットされた後、ステップS61においてユーザは被写体400からカメラシステム10Bを離し、カメラシステム10Bの位置を合焦点位置の範囲外にセットする。ユーザは、ファインダ画像を見ることにより、ファインダ画像全体が不鮮明になっているかの判定により、合焦点位置の範囲外にセットしたか否かを識別できる。
【0072】
次のステップS62においてBucom101は、コントラスト(による)AF時におけるコントラスト値を用いて、測距エリア内に合焦点となる被写体400があるか否かの判定を行う。判定に用いる閾値は、被写界深度範囲外に被写体が存在する場合のレベル値に設定される。そして、この閾値未満のコントラスト値の場合には、合焦点となる被写体400が存在しないと判定できる。
なお、測距エリアは画像の全域でも良いし、画像の一部でも良い。さらに、測距エリアの設定は自動設定でも良いし、手動設定でも良い。自動設定の場合は、最初にAFをした測距エリアよりも広いエリアを設定する。または、カメラシステム10が被写体から変位した時にコントラスト最大値となるエリアを順次検出し、そのエリアに測距エリアを順次移動させていくのが良い。
【0073】
ステップS62の判定に該当しない場合には、ステップS63においてユーザは2ndレリーズスイッチをONにする。なお、ステップS63の前にユーザに対して2ndレリーズスイッチをONにするようにガイド表示を行うようにしても良い。
2ndレリーズスイッチON後において、ステップS64に示すようにAEを行う。このステップS64におけるAEの露光値が、ステップS58のAEの場合の露光値から所定値以上、変化した場合は、再度その時の絞りのF値から近距離側の被写界深度ΔLを計算する。
次のステップS65においてユーザは把持したカメラシステム10Bを被写体400に接近させる操作を開始すると共に、図10BのステップS21の場合と同様に手振れ補正機能を起動する(動作状態にする)。
このステップS65の直前に、制御手段を構成するBucom101がカメラシステム10Bを被写体400に接近させるようにユーザに対して操作に関するガイド表示を行うようにしても良い。
【0074】
次のステップS66においてBucom101は、被写体のコントラストが被写界深度範囲内の判定用の閾値Ms以上か否かの判定を行う。
この閾値Ms以上か否かの判定は、カメラシステム10Bの変位速度(移動速度)と、シャッタータイムラグ(シャッタを切る信号が発生してから、シャッタが開き始めるまでの時間)と、近距離側の被写界深度ΔLとから、被写体400の最も近距離側にピントが撮影時に合うように行なう。
すなわち、被写体400のコントラストを検出したカメラシステム10Bの位置とシャッタを切ったカメラシステム10Bの位置は、これらの数値によって変化するので、合焦点の状態でのコントラストより低いコントラストに閾値Msを設定することになる。
ステップS66における判定においてコントラストが閾値Ms以上でない場合にはステップS65の処理に戻り、コントラストが閾値Ms以上の判定結果の場合にはステップS67に進む。
【0075】
ステップS67において撮影を行い、撮影した画像を記録メディア127に記録する。この場合、第1撮影画像が記録される。
また、ステップS68において、基準位置情報L0が0にセットされる。なお、基準位置情報L0を第1撮影画像の取得時に行なうのは、カメラシステム10Bの位置情報の取得を撮影開始時に行なうことで、誤差の少ない状態でカメラシステム10Bの位置情報を取得するためである。
ステップS68の基準位置情報L0を0にセットした後の次のステップS69において位置情報Lが検出される。そして、次のステップS70において位置計算回路162cによる移動量の検出部は、近距離側の被写界深度ΔL(換言すると被写界深度範囲内の所定の移動量)に相当する移動量を検出したか否かの判定を行う。
【0076】
つまり、位置情報L―L0=ΔLに達したか否かが判定される。所定の移動量に相当する近距離側の被写界深度ΔLに達していない場合にはステップS69の処理に戻り、逆に、近距離側の被写界深度ΔLに達している場合にはステップS71の処理に進む。
ステップS71においてBucom101の制御部101aは、撮影情報(例えば撮影のコマ番号など)と撮影した画像を記録メディア127に記録するように制御する。記録メディア127には第2撮影画像が記録され、次のステップS72において基準位置情報L0がL0+ΔLに設定される。
そして、次のステップS73においてBucom101は、2ndレリーズスイッチがOFFにされたか否かの判定を行う。2ndレリーズスイッチがOFFにされていない場合には、ステップS69の処理に戻り、同様の動作を繰り返す。例えば、上述した第2撮影画像の記録後に、第3撮影画像、第4撮影画像、…と複数の撮影画像を順次記録する。
【0077】
そして、ユーザはカメラシステム10Bで所望の撮影画像(被写体画像)を記録したと判断した場合には、2ndレリーズスイッチをOFFにすれば良い。2ndレリーズスイッチがOFFにされた場合には、さらにステップS74においてBucom101は、撮影異常が発生したか否かの判定を行う。撮影異常が発生していない場合には最初のステップS51に戻るか図15の処理を終了する。一方、撮影異常が発生した場合には、ステップS75において再撮影を行う指示、警告を行った後、最初のステップS51に戻り、再撮影を行う。
なお、撮影異常の発生は、例えば、カメラシステム10Bの移動速度が速すぎて画像撮影が間に合わずに、画像合成に必要な充分な画像が得られていない場合や、明らかに大きな手ブレが発生している場合(第1の実施形態で説明した手ブレ補正機構での検出値を評価すれば判定可能)には撮影異常となり、撮影終了後に警告(音とか表示)を出して、再撮影を指示(音声とか表示)する。
【0078】
再撮影時は、撮影者が撮影の設定を変えていなければ、先の撮影で撮影異常の発生した画像コマの付近の画像を複数撮影して記録するようにしても良い。
また、ステップS62の判定において測距エリア内に合焦点の被写体400が存在した場合にはステップS76において警告を行い、その警告後のステップS77においてBucom101は、2ndレリーズスイッチがOFFにされたか否かを判定する。2ndレリーズスイッチがOFFにされない場合には、ステップS61の処理に戻り、2ndレリーズスイッチがOFFにされた場合には、ステップS74に移る。
図15に示した超深度モードにより、被写界深度が非常に深い合成画像を生成するのに必要な複数枚の撮影画像を簡単な操作で取得することができる。なお、撮影して記録された各撮影画像は、それぞれ被写体400における一部の領域に対して被写界深度以内に設定されたものであるので、その一部の領域に対しては良好な画質、つまり高画質を有する。
【0079】
次に図16を参照して、取得した複数枚の撮影画像から合成画像を生成する動作を説明する。以下の説明においては、撮影画像の数はn(2以上の自然数)であるとする。
合成画像の動作が開始すると、ステップS81aにおいて画像処理部126は、記録メディア127に記録されている第1撮影画像P(1)(図16中では撮影画像を単に画像と略記)をバッファメッモリに、ステップS81bにおいて画像処理部126は、第2撮影画像P(2)をバッファメッモリに、…、ステップS81nにおいて画像処理部126は、第n撮影画像P(n)をバッファメッモリに記録(転送)する。
次のステップS82において画像処理部126は、各撮影画像P(z)(ここで、z=1,2,…,n)の画像信号をバンドパスフィルタを通すバンドパスフィルタ処理をして、各撮影画像P(z)における合焦部分の画像領域Pb(z)を抽出して、バッファメモリに記録する。
【0080】
次のステップS83において画像処理部126は、処理用パラメータNを1にセットする。そして、ステップS84において画像処理部126は、Nがn−1に一致するか否かを判定する。
この場合には、Nがn−1に一致しないため、ステップS85において画像処理部126は、画像領域Pb(N)とPb(N+1)の画像領域間の重なり領域を抽出する。
次のステップS86において画像処理部126は、抽出した画像領域Pb(N)とPb(N+1)の画像領域間の重なり領域を合わせて画像領域Pb(N)とPb(N+1)を合成し、合成したものを画像領域Pb(N+1)に上書きする。
次のステップS87において画像処理部126は、NをN+1(この場合にはNは2)にセットし、ステップS84の処理に戻る。そして、Nを2とした場合において、上述したステップS85−87の処理を同様に行う。このようにしてNがn−1までステップS85−S87の処理が繰り返される。
【0081】
このようにして、合焦部分の画像領域を全て重ね合わせた画像領域(つまり合焦状態の被写体画像)Pb(N)(ここでN=n−1)が生成される。そして、ステップS84において、Nがn−1に一致するため、ステップS88において画像処理部126は、合焦状態の被写体画像Pb(n−1)をバッファメモリに記録する。
次のステップS89において画像処理部126は、上記合焦状態の被写体画像Pb(n−1)と第n−1撮影画像P(n−1)とを合成して、バッファメモリ又は記録メディアに合成画像として記録する。そして、図16の処理を終了、又は最初のステップS81aに戻り、他の撮影画像がある場合には同様の処理を行う。
このように動作することによって、超深度モードにより、撮影した複数枚の撮影画像から画質が良く、被写界深度が非常に深い合成画像を簡単に生成することができる。
【0082】
なお、図15,図16においては、第2の実施形態における超深度モードに関係する機能の動作を説明したが、超深度モードを含む動作を図17のフローチャートにより説明する。
カメラシステム10Bの電源が投入されると、Bucom101は動作を開始する。そして、図15の場合と同様にステップS101においてシステム起動時における初期設定、ステップS102のアクセサリの検出、ステップS103の操作スイッチの状態検出が行われる。
次のステップS104においてBucom101は再生ボタンがONされたか否かを判定する。再生ボタンがONされた場合には、ステップS105において再生の処理が行われる。
【0083】
ステップS104において再生ボタンがONされていない場合、又はステップS105において再生の処理が終了した場合にはステップS106においてBucom101は動画ボタンがONされたか否かを判定する。動画ボタンがONされた場合には、ステップS107において記録中フラグを反転する処理が行われる。
動画記録状態(スルー画が液晶モニタ123にでる状態)になり、ステップS108の動画記録状態か否かの判定がYESとなり、ステップS109以降の処理が行われる。そして、ループ処理により再びステップS106の動画ボタンONか否かの判定が行われる。
【0084】
そして、さらに動画ボタンONがYES(録画ボタンがもう一回押される)と、ステップS107の記録中フラグが反転して動画記録状態ではなくなり、この場合にはステップS108の動画記録状態か否かの判定はNOとなる。
上記ステップS108の判定結果が動画記録状態である場合には、ステップS109においてAEを行い、ステップS110において動画撮影を行い、続くステップS111においてAFを行い、ステップS112において撮影した動画に対する画像処理を行い、ステップS113において記録部に画像を記録する。このステップS113の後、ステップS118の処理に移る。
【0085】
一方、ステップS108の判定が動画記録状態でない場合にはステップS114においてBucom101は、1stレリーズスイッチONに変化したかの判定を行う。
1stレリーズスイッチONに変化した場合には静止画撮影を行う状態となり、ステップS115においてAEを行い、ステップS116において静止画の画像撮影を行い、撮影画像が液晶モニタ123による表示モニタに表示されるとともに、続くステップS117においてAFを行う。
続くステップS118において電源OFFの操作がされたか否かを判定し、電源OFFの操作がされていない場合にはステップS104の処理に戻る。
【0086】
そして、ステップS114において1stレリーズスイッチONに変化しない場合にはステップS119の処理に移り、このステップS119においてBucom101は、2ndレリーズスイッチONかの判定を行う。
2ndレリーズスイッチONの場合にはステップS120において静止画を撮影し、ステップS121において画像処理部126は撮影した静止画に対する画像処理を行い、ステップS122において画像処理した静止画を記録してステップS118の処理に移る。
この静止画撮影は、1stレリーズがONのままであると、画像撮影の動作が継続し、表示モニタは表示を続行し、2ndレリーズがONされるごとに、静止画の撮影画像が1コマ撮影されて記録される。
【0087】
また、ステップS119において2ndレリーズスイッチONでない場合にもステップS118の処理に移り、電源OFFの操作がされた場合には表示モニタの表示が消え、図17の処理が終了する。
【0088】
また、本実施形態におけるAF動作は、図18のようになる。AFの動作が開始すると、最初のステップS131においてBucom101は、AFモード状態か否かの判定を行う。AFモード状態でない判定結果の場合には、AFモードでない非AFモードに対する処理に移る。
【0089】
一方、AFモード状態の判定結果の場合には、ステップS132においてBucom101は、AF開始状態か否かの判定を行う。AF開始状態でない場合には、ステップS131の処理に戻る。
一方、AF開始状態の場合には、ステップS133においてBucom101はウォブリングの処理を行うように制御する。このウォブリングは、撮影レンズ202を構成するフォーカスレンズ202a又は可動レンズを光軸方向に所定の周波数で、正弦波の駆動信号で振動させる。この動作によりコントラストが大きくなる方向の合焦点が存在する方向が分かる。
次のステップS134においてBucom101は、画像撮影を行ように制御し、その際ステップS135に示すように画像処理部126は、画像のコントラストを検出する。また、次のステップS136において画像処理部126は、検出されたコントラストがAFにおける許容差以内か否かを判定する。
【0090】
許容差以内でない判定結果の場合には、ステップS137においてBucom101は、コントラストが大きくなる方向にフォーカスレンズ202aを駆動して、ステップS133の処理に戻る。
一方、許容差以内の判定結果の場合には、ステップS138においてBucom101は、ウォブリングを停止させ、このAF動作を終了する。
本実施形態における超深度モードで撮影する場合と従来例による撮影方式とは図19に示すように異なる。
図19(A)は、近距離の被写体400に対して本実施形態のカメラシステム10Bにより、撮影レンズ202を所定の合焦点に設定して撮影する様子を示し、この場合実線で示す撮影状態においては、被写体400のカメラシステム10B側に近い位置(パーツ位置)400aがCCDチップ136の位置Paに結像する。
【0091】
そして、このカメラシステム10Bを被写体400側に点線で示す位置まで移動した場合には、被写体400のパーツ位置400aよりも光軸から離れたパーツ位置400bがCCDチップ136の位置Pbに結像する。
このように本実施形態による光学像を形成する位置Pa、Pbにおける光軸からの距離は、被写体400における光軸からのパーツ位置400a,400bまでの距離、つまり被写体のサイズを反映した関係を維持する。
図19(B)は従来例により被写体400を撮影する様子を示し、従来例においてはカメラシステムにおける撮影レンズ(を構成するフォーカスレンズ)を移動して撮影を行う。
【0092】
被写体400のパーツ位置400aに撮影レンズをフォーカスさせると、パーツ位置400aは実線で示すようにCCDチップの位置Pa′に結像される。
一方、パーツ位置400aよりもカメラシステムから遠方側となるパーツ位置400bの位置にフォーカスさせると撮影レンズは点線で示す位置となり、パーツ位置400bは点線で示すようにCCDチップの位置Pb′に結像される。この場合、位置Pa′、Pb′は光軸からの距離が、被写体400における光軸からのパーツ位置400a,400bまでの距離を反映しない関係となってしまう。
【0093】
つまり、従来例においては、撮影した複数の画像における像倍率が変化するのみに限らす、被写体側でのサイズを逆転させてしまうような複数の画像関係となる場合が発生するため、撮影した複数の画像から合成画像を生成しようとした場合、被写体側のサイズを忠実に反映した合成画像を生成することが困難になる。
これに対して、本実施形態のカメラシステム10B(第1の実施形態のカメラシステム10も同様)によれば、図19(A)において説明したように、被写体側のサイズを反映した状態、例えば像倍率を一定に保った状態で複数枚の画像を撮影するため、被写体のサイズを反映した合成画像を簡単に生成することができる。
従って、本実施形態によれば、近距離の被写体に対して、簡単に高画質で被写界深度が深い画像を複数撮影することができ、撮影された複数の画像から簡単に高画質で被写界深度が非常に深い合成画像を生成できる。また、手振れ補正により、撮像に及ぼす影響を低減することができる。
【0094】
(第2の実施形態の変形例)
図20は第2の実施形態の変形例によるカメラシステム10Bのシーケンスを表す。本変形例のカメラシステム10Bの構成は、第2の実施形態と殆ど同じである。但し、本変形例においては、図1におけるレンズ駆動機構204が撮影レンズ202を構成する少なくとも一部のレンズを略光軸方向に、合焦点位置及び像倍率を一定に保つように移動させる合焦点位置移動部204cを形成する。
なお、撮影レンズ202側のみでなく、撮像部117又は撮像素子を光軸方向に移動して合焦点位置及び像倍率を一定に保つように移動させて合焦点位置移動部を構成しても良い。その他は、第2の実施形態と同様であるので、その説明は省略する。
【0095】
第2の実施形態と異なる点は、カメラシステム10Bを被写体400に対して移動するのではなく、例えばフォーカスレンズ202aを変位させることで被写体400の合焦位置を変えているので、例えばカメラシステム10Bを三脚に固定し、ブレ補正を行わないようにしても良いし、Z軸加速度センサ173からカメラシステム10の位置を検出する必要もない。
但し、フォーカスレンズ202aを変位してフォーカシングすると、像の倍率(より正確には光軸と垂直方向の光学像の大きさを被写体の大きさで割った横倍率)が変化するので、像の横倍率が変化しないように、変倍レンズ202bを変位させてズーミングする構成にしている。
【0096】
ここで像の横倍率βは、レンズユニット200の焦点距離fと、被写体距離Lから、以下のように計算される。
β=f/(((L―2・f)+((L−2・f)2−4・f2)1/2)/2)
具体的には、焦点距離f=100mm、被写体距離L=500mm〜510mm、としてフォーカスのみで焦点合わせした場合の像の横倍率変化を見ると、0.382倍〜0.366倍まで変化する。ここでズーミングにより像の横倍率βを補正する。例えば、焦点距離f=102mmとすれば、被写体距離L=510mmの時に、像の横倍率β=0.382倍となり、被写体距離L=500mmの時と同じになる。
このズームミングによる倍率変更を実施しない場合は、この例では倍率比を考えると画像の大きさが4%ほども異なり、画像合成が複雑になるばかりでなく、画質も低下してしまうことになる。しかし、この場合、各焦点位置で近距離側の被写界深度ΔLは変わることになり、被写体距離Lに応じて計算したΔL(L)を用いるのが良い。
【0097】
次に図20の処理を説明する。図20の処理内容は、図15の処理に類似しているので、異なる部分のみを説明する。図20におけるステップS51−54は、図15と同様の処理となり、図15におけるステップS55、S56を行うこと無く、図15と同様のステップS57−60の処理を行う。
また、ステップS60の後に、図15のステップS61の処理を行う代わりに、図20においては、ステップS91において画像処理部126(又はBucom101)は、像の横倍率βを計算した後、ステップS92においてフォーカシングにより焦点位置を移動し、ズーミングにより像の横倍率βに調整する。
このステップS92の処理後に、図15の場合と同様にステップS62−S64の処理を行う。
【0098】
ステップS64の処理後のステップS93においてフォーカスレンズ202aにより焦点位置を移動し、変倍レンズ202bのズームにより像の横倍率βを調整する。このステップS93の処理後、図15と同様にステップS66−S67の処理を行う、
このステップS67の処理後に、図15のステップS68の処理の代わりに、ステップS94においてBucom101は、被写体距離Lを基準位置情報L0に設定する。また、次のステップS95においてBucom101は、ステップS92と同様の処理を行う。このステップS95の後のステップS96において位置検出部は被写体距離Lを検出し、さらに画像処理部126はΔLを算出する。
このステップS96の処理後に、図15の場合と同様に、ステップS70の処理を行う。ステップS70においてL−L0がΔLに一致しない場合には、ステップS94の処理に戻り、逆にL−L0がΔLに一致する場合には、ステップS71の処理に進む。
また、ステップS71の後にステップS72,S73の処理を行い、ステップS73において2ndレリーズスイッチがOFFにされない場合には、ステップS96の処理に戻り、逆に2ndレリーズスイッチがOFFにされた場合には、ステップS74の処理に進む。このステップS74以降の処理は図15と同様である。
【0099】
本変形例によれば、像の横倍率βを調整して複数の画像を順次撮影するようにしているので、第2の実施形態の場合と同様に高画質で被写界深度が非常に深い合成画像を生成するのに必要な複数枚の撮影画像を簡単な操作で取得することができる。
なお、図20の超深度モードにより撮影した撮影画像に対しては、図16に示した処理により、高画質で被写界深度が非常に深い合成画像を生成することができる。
上述した実施形態、変形例においては、所定の被写界深度ΔLごとに画像撮影を実施すると説明していたが、カメラシステム10、10Bの最大連射撮影コマ数で2ndレリーズスイッチがOFFになるまで撮影した後に、近距離側の被写界深度ΔLごとの画像を抜き出して記録するような撮影画像記録方法を採用しても良い。
【0100】
この場合には記録前の各撮影画像と焦点位置情報(被写体距離L等)とを関連づけて記録するようにすると良い。
上述したように第1又は第2の実施形態等において、被写界深度が非常に深い合成画像を生成することができることを説明したが、(近距離側の被写界深度ΔLのように)被写界深度範囲内の所定の移動量ΔL′の移動毎に記録した撮影画像の枚数(又はΔL′のトータルの移動量の大きさ)がある閾値以上の場合には、複数の撮影画像における一部の撮影画像のサイズを補正して合成画像を生成するようにしても良い。例えば、画像処理部126に、撮影画像のサイズを補正するサイズ補正部126c(図1参照)を設けても良い。なお、サイズ補正部126cを画像合成部126b内に設けるようにしても良い。また、サイズ補正部126cを画像処理部126の外部に設けるようにしても良い。
【0101】
具体的に説明すると、例えば水平面に配置され、Z軸方向と角度をなすように配置された円筒形状の被写体を、カメラシステム10又は10Bを接近させながら撮影した場合、円筒各部を所定の移動量ΔL′毎に撮影画像として順次記録する。このようにして記録した撮影画像を上述のように合成した場合、円筒各部の奥行き方向(Z方向)の値(つまり距離)が変化しても円筒各部のサイズが同じとなる合成画像となるため、Z方向の値に応じて撮影画像のサイズを補正して、より自然に近い合成画像を生成することができるようにしても良い。
具体的には、最初に被写体距離Lで、撮影レンズ202の焦点距離fで記録した撮影画像のサイズ補正を行わない基準サイズ1(最初の撮影画像を基準サイズとする場合に限定されない)とし、2番目に記録した撮影画像のサイズを、被写体距離L+ΔL′の場合として結像したものとなるように補正する(つまり1―ΔL′/Lのサイズに補正する)。
【0102】
2番目以降の例えばj番目に記録した撮影画像のサイズは、被写体距離L+(j―1)・ΔL′とした場合に対応するように補正する(つまり1―(j―1)・ΔL′/Lのサイズに補正する)。撮影枚数が閾値Th以上の場合には、このようなサイズ補正を行い、閾値Th未満の場合にはこのようなサイズ補正を行わないようにしても良い。また、サイズ補正量(の絶対値)が閾値以上の撮影画像に対して、サイズ補正を行い、閾値未満となる撮影画像に対してはサイズ補正を行わないようにしても良い。
また、合成画像を生成する場合、ユーザがサイズ補正を行うか否かを選択できるようにしても良い。なお、サイズ補正を行う場合、上記の値のように補正する場合に限定されるものでなく、例えばj番目に記録した撮影画像のサイズを補正する場合、補正パラメータをkとして1―k・(j―1)・ΔL′/Lのように補正しても良い。ここで、kは1を含む範囲、例えば0.5<k<2程度にしても良い。
上述した各実施形態又は変形例における処理手順の各ステップは、その性質に反しない限り、実行順序を変更したり、複数同時に実行し、あるいは異なった順序で実行してもよい。
また、上述した各実施形態、変形例等を部分的に組み合わせる等して構成される実施形態も本発明に属する。
【符号の説明】
【0103】
10,10B…カメラシステム、 100…ボディユニット、101…ボディ制御用マイクロコンピュータ(Bucom)、101a…制御部、101b…合焦点位置設定部、117…撮像部、123…液晶モニタ、126…画像処理部、126a…合焦点位置検出部、126b…画像合成部、126c…サイズ補正部、127…記録メディア、128…不揮発性メモリ(記憶部)、135…電源回路、145、166…移動枠(ホルダ)、159…撮像部移動機構部、162…防振制御回路、162c…位置計算回路、167…固定枠(フレーム)、173…Z軸加速度センサ、200…レンズユニット、201…レンズ制御用マイクロコンピュータ、202…撮影レンズ、202a…フォーカスレンズ、202b…変倍レンズ、204c…合焦点位置移動部、313a,313b,313c…バネ(押えバネ)、320a,320b…VCM―XA、VCM−XB,321a,321b…VCM−YA、VCM−YB
【先行技術文献】
【特許文献】
【0104】
【特許文献1】特開昭62−11836号公報
【特許請求の範囲】
【請求項1】
位置が変更可能な合焦用レンズを含む撮影レンズと、
上記撮影レンズを介して得た光学像を画像信号に変換する撮像部と、
を有する撮影装置において、
上記撮影レンズの光軸方向に対する撮影装置の移動を判定する移動判定部と、
上記光軸方向への移動時に、上記合焦用レンズの位置を固定して上記撮影レンズを所定の合焦点位置に設定した状態で、上記撮像部で得られる画像を連続的に記録する記録部と、
を具備することを特徴とする撮影装置。
【請求項2】
さらに、表示部を有し、
上記合焦用レンズの位置固定後に、上記表示部に上記撮影装置移動のためのガイド表示を行うことを特徴とする請求項1に記載の撮影装置。
【請求項3】
上記移動判定部は、加速度センサ、または、上記画像信号の変化を判定する判定部により構成されることを特徴とする請求項1に記載の撮影装置。
【請求項4】
上記移動判定部により、上記撮影装置が上記撮影レンズの被写界深度以内での所定の移動量を判定する毎に、上記撮像部で得た画像を上記記録部に記録するように制御する制御部を有することを特徴とする請求項1に記載の撮影装置。
【請求項5】
ユーザが上記撮影装置を手で把持して上記光軸方向に移動する場合における上記光軸方向とは異なる方向への手振れを補正する手振れ補正部を有することを特徴とする請求項1に記載の撮影装置。
【請求項6】
撮影レンズにより形成される被写体の光学像を電子画像に変換する撮像部と、
光学像の合焦点位置を設定する合焦点位置設定部と、
上記合焦点位置設定部により設定された合焦点位置を保持して、上記撮影レンズの略光軸方向に、像倍率を一定に保ちながら移動した場合における合焦点位置の移動量を検出する検出部と、
を備え、
上記検出部が被写界深度範囲以内の所定量の合焦点位置移動を検出する毎に撮影した画像を複数記録することを特徴とする撮影装置。
【請求項7】
上記撮影した複数の画像から所定のコントラストとなる画像領域を切り出し、合成した合成画像を生成する画像合成部を備えることを特徴とする請求項6に記載の撮影装置。
【請求項8】
上記検出部は、上記被写体に対して上記撮影装置を略光軸方向に変位させた場合における前記撮影装置の移動量を検出することを特徴とする請求項6に記載の撮影装置。
【請求項9】
さらに、上記撮像素子及び撮影レンズを構成する少なくとも一部のレンズを略光軸方向に、前記合焦点位置及び前記像倍率を一定に保つように移動させる合焦点位置移動部を備えることを特徴とする請求項6に記載の撮影装置。
【請求項10】
上記画像合成部は、合成画像を生成する場合、上記撮影した複数の画像における一部の画像のサイズ補正を行うサイズ補正部を備えることを特徴とする請求項7に記載の撮影装置。
【請求項1】
位置が変更可能な合焦用レンズを含む撮影レンズと、
上記撮影レンズを介して得た光学像を画像信号に変換する撮像部と、
を有する撮影装置において、
上記撮影レンズの光軸方向に対する撮影装置の移動を判定する移動判定部と、
上記光軸方向への移動時に、上記合焦用レンズの位置を固定して上記撮影レンズを所定の合焦点位置に設定した状態で、上記撮像部で得られる画像を連続的に記録する記録部と、
を具備することを特徴とする撮影装置。
【請求項2】
さらに、表示部を有し、
上記合焦用レンズの位置固定後に、上記表示部に上記撮影装置移動のためのガイド表示を行うことを特徴とする請求項1に記載の撮影装置。
【請求項3】
上記移動判定部は、加速度センサ、または、上記画像信号の変化を判定する判定部により構成されることを特徴とする請求項1に記載の撮影装置。
【請求項4】
上記移動判定部により、上記撮影装置が上記撮影レンズの被写界深度以内での所定の移動量を判定する毎に、上記撮像部で得た画像を上記記録部に記録するように制御する制御部を有することを特徴とする請求項1に記載の撮影装置。
【請求項5】
ユーザが上記撮影装置を手で把持して上記光軸方向に移動する場合における上記光軸方向とは異なる方向への手振れを補正する手振れ補正部を有することを特徴とする請求項1に記載の撮影装置。
【請求項6】
撮影レンズにより形成される被写体の光学像を電子画像に変換する撮像部と、
光学像の合焦点位置を設定する合焦点位置設定部と、
上記合焦点位置設定部により設定された合焦点位置を保持して、上記撮影レンズの略光軸方向に、像倍率を一定に保ちながら移動した場合における合焦点位置の移動量を検出する検出部と、
を備え、
上記検出部が被写界深度範囲以内の所定量の合焦点位置移動を検出する毎に撮影した画像を複数記録することを特徴とする撮影装置。
【請求項7】
上記撮影した複数の画像から所定のコントラストとなる画像領域を切り出し、合成した合成画像を生成する画像合成部を備えることを特徴とする請求項6に記載の撮影装置。
【請求項8】
上記検出部は、上記被写体に対して上記撮影装置を略光軸方向に変位させた場合における前記撮影装置の移動量を検出することを特徴とする請求項6に記載の撮影装置。
【請求項9】
さらに、上記撮像素子及び撮影レンズを構成する少なくとも一部のレンズを略光軸方向に、前記合焦点位置及び前記像倍率を一定に保つように移動させる合焦点位置移動部を備えることを特徴とする請求項6に記載の撮影装置。
【請求項10】
上記画像合成部は、合成画像を生成する場合、上記撮影した複数の画像における一部の画像のサイズ補正を行うサイズ補正部を備えることを特徴とする請求項7に記載の撮影装置。
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図13】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図1】
【図11】
【図12】
【図14】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図13】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図1】
【図11】
【図12】
【図14】
【公開番号】特開2013−21407(P2013−21407A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−151128(P2011−151128)
【出願日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(504371974)オリンパスイメージング株式会社 (2,647)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(504371974)オリンパスイメージング株式会社 (2,647)
【Fターム(参考)】
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