説明

撹拌装置および分析装置

【課題】分析装置にセットされる複数の反応容器に保持された液体を一定の攪拌効率の下に撹拌することができる撹拌装置およびこの撹拌装置を用いた分析装置を提供すること。
【解決手段】複数の反応容器12のそれぞれに保持された液体を撹拌して反応させ、反応液の光学的特性を測定して反応液を分析する自動分析装置1は、反応容器12に保持された液体を撹拌する音波を出射する表面弾性波素子20と撹拌時に表面弾性波素子を移動させて液体を保持する所定の反応容器に接触させる駆動部22とを有する撹拌装置6を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反応容器に保持された液体を撹拌する撹拌装置および分析装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、分析装置は、液体を保持する全ての反応容器のそれぞれに音波出射手段を一体に設け、音波出射手段から反応容器に向けて音波を出射することによって液体を非接触で撹拌する撹拌装置が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2006−90791号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された撹拌装置は、分析装置の反応テーブルにセットされる全ての反応容器のそれぞれに音波出射手段を設けるので、個々の音波出射手段の撹拌性能の違いにより撹拌が一定にならず、同一の検体の同一の検査項目でありながら分析結果にバラツキが生じるという問題があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、分析装置にセットされる複数の反応容器に保持された液体を一定の攪拌効率の下に撹拌することができる撹拌装置およびこの撹拌装置を用いた分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる撹拌装置は、反応容器に保持された液体を撹拌する音波を出射する音波出射手段を有する撹拌装置であって、前記撹拌時に前記音波出射手段を移動させて前記液体を保持する反応容器に接触させる駆動手段を備えたことを特徴とする。
【0007】
本発明にかかる撹拌装置は、上記発明において、前記音波出射手段は、複数の端面を有し、該端面のうちの所定の一端面から前記反応容器に前記音波を出射し、前記駆動手段は、前記一端面のみを前記反応容器に接触させることを特徴とする。
【0008】
本発明にかかる撹拌装置は、上記発明において、前記音波出射手段は、定在波を出射し、前記一端面は、前記音波出射手段から出射される定在波が最大になる位置に設けられることを特徴とする。
【0009】
本発明にかかる撹拌装置は、上記発明において、前記音波出射手段は、母材と、該母材上に形成される櫛型電極からなる振動子とを有する表面弾性波素子であることを特徴とする。
【0010】
本発明にかかる撹拌装置は、上記発明において、前記駆動手段は、前記母材が有する複数の端面のうちの所定の一端面を前記反応容器に接触させることを特徴とする。
【0011】
本発明にかかる撹拌装置は、上記発明において、前記母材は、少なくとも1つの凸部を有し、前記駆動手段は、前記凸部を前記反応容器に接触させることを特徴とする。
【0012】
本発明にかかる撹拌装置は、上記発明において、前記表面弾性波素子は、定在波を出射し、前記凸部は、前記音波出射手段から出射される定在波のエネルギーが最大になる位置に設けられることを特徴とする。
【0013】
本発明にかかる撹拌装置は、上記発明において、前記駆動手段は、前記表面弾性波素子を前記反応容器に接触させる接触位置を変更させることを特徴とする。
【0014】
また、上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる分析装置は、複数の反応容器のそれぞれに保持された液体を撹拌して反応させ、反応液の光学的特性を測定して前記反応液を分析する分析装置であって、前記反応容器に保持された液体を撹拌する音波を出射する音波出射手段と前記撹拌時に前記音波出射手段を移動させて前記液体を保持する所定の反応容器に接触させる駆動手段とを有する前記撹拌装置を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明にかかる撹拌装置および分析装置は、撹拌時に同じ音波出射手段から出射される音波で各反応容器に保持された液体の撹拌を行うので、各反応容器内の液体の撹拌を一定の攪拌効率の下に撹拌することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に添付図面を参照して、本発明の実施の形態にかかる撹拌装置および分析装置を詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0017】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1の自動分析装置を示す概略構成図である。図2は、図1に示した自動分析装置を構成する反応容器12および反応テーブル5を断面にして示したブロック図である。図3は、図2の自動分析装置1を構成する反応テーブル5のホルダ5a、反応容器12および表面弾性波素子の配置を示す斜視図である。
【0018】
自動分析装置1は、図1に示すように、作業テーブル2上に検体テーブル3、検体分注機構4、反応テーブル5、撹拌装置6、測光部7、洗浄装置8、試薬テーブル9および試薬分注機構10を備えている。
【0019】
検体テーブル3は、図1に示すように、駆動手段によって矢印で示す方向に回転され、外周には周方向に沿って等間隔で配置される検体格納部3aが複数設けられている。各検体格納部3aは、検体を収容した検体容器11が着脱自在に格納される。検体分注機構4は、反応テーブル5の外周上方を表面に沿って2次元方向に移動する。
【0020】
検体分注機構4は、図1に示すように、反応テーブル5のホルダ5aに保持される反応容器12に検体を分注する分注手段であり、検体ノズル4a(図2参照)を備えている。検体分注機構4は、駆動手段によって駆動され、反応テーブル5の外周上方を表面に沿って2次元方向に移動する。これにより、検体分注機構4は、検体ノズル4aによって検体テーブル3の検体格納部3aに格納された複数の検体容器11から検体を順次ホルダ5aに格納された反応容器12に分注する。
【0021】
反応テーブル5は、図1に示すように、検体テーブル3を駆動する駆動手段とは異なる駆動手段である駆動モータ5f(図2参照)によって矢印で示す方向に回転され、外周には周方向に沿って等間隔で配置される凹状に成形されたホルダ5aが複数設けられている。各ホルダ5aは、半径方向両側に測光部7の分析光Bが透過する開口5b,5c(図2,図3参照)が形成されている。各ホルダ5aには、検体を試薬と反応させる反応容器12が挿脱自在に配置されている。なお、図1では、ホルダ5a内に収容される反応容器12を一部省略して簡略的に示している。開口5bは、ホルダ5aの外側壁5dに形成され、分析光Bが透過すると共に、表面弾性波素子20が反応容器12に当接するための当接窓を兼ねている。開口5cは、ホルダ5aの内側壁5eに形成された円形状の窓である。反応テーブル5は、一周期で時計方向に(1周−1反応容器)/4分回転し、四周期で反時計方向にホルダ5aの1個分回転する。反応テーブル5の近傍には、撹拌装置6、測光部7および洗浄装置8が設けられている。
【0022】
反応容器12は、容量が数nL〜数十μLと微量な四角形状の容器であり、測光部7から出射された分析光(340〜800nm)に含まれる光の80%以上を降下する透明素材、たとえば耐熱ガラスを含むガラス、環状オレフィンやポリスチレンなどの合成樹脂からなる。反応容器12の上部には、検体分注機構4および試薬分注機構10によって液体を分注するための開口12aが形成されている。
【0023】
撹拌装置6は、図2に示すように、表面弾性波素子(SAW)20、駆動回路21および駆動部22を備えている。表面弾性波素子20は、音波によって液体を撹拌する音波出射手段であり、表面弾性波素子20の母材20a上に櫛型電極(IDT)からなる振動子20b(図4参照)が形成されている。振動子20bは、駆動回路21と接続されており、駆動回路21から供給される電力によって駆動される。表面弾性波素子20は、駆動部22によって矢印の方向に駆動されるアーム22aと連結され、外側壁5dに形成された開口5b内に移動して、振動子20bが外側壁5d側に位置する反応容器12の側壁12bに当接する。この時、表面弾性波素子20は、ホルダ5aに保持される反応容器12の側壁12bに対向させると共に、側壁12bと平行(図5参照)に配置されている。
【0024】
駆動回路21は、制御部16からの制御信号に基づいて発振周波数をプログラマブルに変更可能な発振回路を有しており、数十MNz〜数百MNz程度の高周波の発振信号を増幅し、駆動信号として表面弾性波素子20に出力する。この他に駆動回路21は、制御部16からの制御信号に基づいて駆動信号の駆動周波数を段階的に切り替える。駆動回路21は、表面弾性波素子20の振動子20bを駆動して反応容器12に保持される液体を撹拌する。なお、振動子20bは、反応容器12に接触した両端面20b1,20b2(図5参照)から反応容器12に向けて表面弾性波を出射し、この表面弾性波Hが反応容器12に保持された液体中へ漏れ出し(図6参照)、液体を攪拌する。ここで、制御部16は、撹拌装置6を制御する場合には、たとえば表面弾性波素子20が発する音波の特性(周波数、強度、位相、波の特性)、波形(正弦波、三角波、矩形波、バースト波)或いは変調(振幅変調、周波数変調)などを制御する。また、制御部16は、内蔵したタイマに従って駆動回路21が発振する発振信号の周波数を切り替えることができる。
【0025】
駆動部22は、制御部16による制御の下に表面弾性波素子20が連結されたアーム22aを前後に駆動して表面弾性波素子20を反応容器12の側壁12bに接触させると共に、この接触状態を維持したまま表面弾性波素子20を左右、上下、右または左回転(図4〜図6参照)に駆動させる駆動手段であり、たとえば3軸方向の移動が可能な3軸ステージおよびこの3軸ステージの駆動とアーム22aの回転とを可能にするモータを備えている。表面弾性波素子20は、駆動部22の駆動によって反応容器12の側壁12bに接触した状態で、反応容器12との接触位置を変更させることができる。
【0026】
測光部7は、図1に示すように、反応テーブル5のホルダ5aを挟んで半径方向に対向する位置に設けられる測光手段であり、反応容器12内に保持された液体を分析する分析光Bを出射する光源7aと、この液体を透過した分析光Bを分光して受光する受光器7bとを備えている。光源7aから出射された分析光Bは、反応容器12内に保持された液体の検液面を登校して受光器7bに受光される。測光部7における測光が終了した反応容器12は、洗浄装置8に移送されて洗浄された後、再度新たな検体の分析に使用される。
【0027】
洗浄装置8は、測光終了後の反応容器12内の液体を排出する排出手段と、液体を排出した反応容器12に洗浄液を分注する分注手段とを有している。洗浄装置8は、測光後の液体を排出手段によって反応容器12から排出する。その後、洗浄装置8は、分注手段によって反応容器12に洗浄液を分注し、分注した洗浄液を前記排出手段によって反応容器12から排出する。洗浄装置8は、この洗浄液の分注,排出動作を複数回繰り返すことにより、反応容器12内を洗浄する。このようにして洗浄された反応容器12は、再度、新たな検体の分析に使用される。
【0028】
試薬テーブル9は、図1に示すように、検体テーブル3および反応テーブル5とは異なる駆動手段によって矢印で示す方向に回転され、試薬容器14を着脱自在に収納する試薬格納部9aが周方向に沿って複数設けられている。複数の試薬容器14は、それぞれ検査項目に応じた所定の試薬が満たされ、外面には収容した試薬に関する情報を表示するバーコードラベル等を含む情報記録媒体(図示せず)が貼付されている。
【0029】
試薬分注機構10は、反応テーブル5に形成したホルダ5aに試薬を分注する試薬分注手段であり、試薬ノズル10a(図2参照)を備えている。試薬分注機構10は、検体分注機構4とは異なる駆動手段によって駆動され、図1に示すように、反応テーブル5の外周上方を表面に沿って2次元方向に移動し、試薬ノズル10aによって試薬テーブル9の所定の試薬容器14から試薬を順次ホルダ5a内の反応容器12に分注する。
【0030】
ここで、試薬テーブル9の外周には、試薬容器14に貼付した上記情報記録媒体に記録された試薬の種類、ロットおよび有効期限などの情報を読み取り、制御部16へ出力する読取装置15が設置されている。制御部16は、検体テーブル3、検体分注機構4、反応テーブル5、撹拌装置6、受光器7b、洗浄装置8、試薬テーブル9、試薬分注機構10、読取装置15、分析部17、入力部18および表示部19と接続され、たとえば分析結果を記憶する記憶機能を備えたマイクロコンピュータなどが使用される。制御部16は、自動分析装置1の各部の作動を制御すると共に、上記情報記録媒体の記録から読み取った情報に基づき、試薬のロットや有効期限などが設置範囲外の場合、分析作業を停止するように自動分析装置1を制御し、あるいはオペレータに警告を発する。
【0031】
分析部17は、制御部16を介して受光器7bに接続され、受光器7bが受光した光量に基づく反応容器12内の液体の吸光度から検体の成分濃度などを分析し、分析結果を制御部16に出力する。入力部18は、制御部16へ検査項目などを入力する操作を行う部分であり、たとえばキーボードやマウスなどが使用される。表示部19は、分析内容や警報などを表示するもので、ディスプレイパネルなどが使用される。
【0032】
以上のように構成される自動分析装置1は、制御部16の制御の下、反応テーブル5を回転させ、分注対象の反応容器12が保持されたホルダ5aを試薬分注位置に停止させる。次に、自動分析装置1は、制御部16の制御の下、試薬分注機構10が試薬ノズル10aによって反応容器12の上方から開口12aに第1試薬を分注する。
【0033】
次に、自動分析装置1は、制御部16の制御の下、反応テーブル5を回転させ、第1試薬が分注された反応容器12を測光部7へ移動させる。これにより、反応容器12は、光源7aから出射された分析光Bがホルダ5a下部の開口5cから照射され、第1試薬を透過した分析光Bの光束が受光器7bによって測光される。受光器7bは、受光した光束に関する光情報を制御部16へ出力する。この光情報に基づき、制御部16は、第1試薬の吸光度を算出して記憶する。
【0034】
このようにして第1試薬に関する測光が終了した後、自動分析装置1は、制御部16の制御の下、駆動モータ5fを駆動して反応テーブル5を回転させ、第1試薬が分注された反応容器12を検体分注機構4へ移動させる。次に、自動分析装置1は、制御部16の制御の下、検体ノズル4aによって検体容器11から検体を反応容器12に分注する。その後、自動分析装置1は、制御部16の制御の下、駆動モータ5fを駆動して反応テーブル5を回転させ、第1試薬と検体が保持された反応容器12を撹拌装置6の位置へ移動させる。
【0035】
次に、自動分析装置1は、制御部16の制御の下、駆動部22を駆動してアーム22aを繰り出し、振動子20bを移動させて第1試薬と検体が保持された反応容器12に接触させる。なお、振動子20bの接触位置は、振動子20bの一方の端面(たとえば下方の端面20b2)を液面の位置、又は振動子20bが液体の上下方向中央となるように、振動子20bを駆動部22によって移動させて撹拌を行うことが好ましい。これは、反応容器12に保持された液体の液量、検査項目等に応じて振動子20bを最適な攪拌位置に配置することで、液体の液量、検査項目等が変化しても略一定の攪拌効率を達成するためである。次いで、自動分析装置1は、制御部16の制御の下、駆動回路21によって振動子20bを駆動して音波(表面弾性波)を出射させて、反応容器12に保持された第1試薬と検体とを撹拌して反応させて第1反応液を生成する。
【0036】
その後、自動分析装置1は、制御部16の制御の下、駆動部22を駆動してアーム22aを引き込むと共に、駆動モータ5fを駆動して反応テーブル5を回転させ、反応容器12を測光部7の位置へ移動させる。これにより、反応容器12に保持された第1反応液は、測光部7によって測光される。制御部16は、受光器7bが測光した光情報に基づき、第1反応液の吸光度を算出して記憶する。
【0037】
次に、自動分析装置1は、制御部16の制御の下、駆動モータ5fを駆動して反応テーブル5を回転させ、第1反応液を保持した反応容器12を試薬分注機構10の位置へ移動させる。その後、自動分析装置1は、制御部16の制御の下、試薬ノズル10aから第2試薬を反応容器12に分注する。次いで、自動分析装置1は、制御部16の制御の下、駆動モータ5fを駆動して反応テーブル5を回転させ、第1反応液と第2試薬が保持された反応容器12を撹拌装置6の位置へ移動させる。
【0038】
次に、自動分析装置1は、制御部16の制御の下、駆動部22を駆動してアーム22aを繰り出し、振動子20bを移動させて第2試薬が分注された反応容器12に接触させる。次いで、自動分析装置1は、制御部16の制御の下、駆動回路21によって振動子20bを駆動して音波(表面弾性波)を出射し、反応容器12に保持された第1反応液と第2試薬とを撹拌すると共に、反応させ、第2反応液を生成する。
【0039】
その後、自動分析装置1は、制御部16の制御の下、駆動部22を駆動してアーム22aを引き込むと共に、駆動モータ5fを駆動して反応テーブル5を回転させ、反応容器12を測光部7へ移動させる。これにより、反応容器12に保持された第2反応液は、測光部7によって測光される。制御部16は、受光器7bが測光した光情報に基づき、第2反応液の吸光度を算出し、先に測定してある第1試薬の吸光度および第1反応液の吸光度を基に、検体の成分濃度などを算出し、記憶する。そして、測光部7における測光が終了した反応容器12は、洗浄装置8に移送されて第2反応液が排出され、洗浄された後、再度新たな検体の分析に使用される。
【0040】
ここで、実施の形態1にかかる自動分析装置1は、たとえば撹拌装置6によって撹拌を行う時には、制御部16の制御の下、駆動部22の3軸ステージおよびモータを駆動し、振動子20bを反応容器12に接触させた状態で上下左右に移動させ、或いはアーム22aの中心軸を中心として右左に回転させることも可能である。
【0041】
このように、実施の形態1は、撹拌時に撹拌装置6の駆動部22が表面弾性波素子20を移動させて液体を保持する所定の反応容器12に接触させるので、撹拌時に同じ表面弾性波素子20によって異なる反応容器12に保持された液体を同じ攪拌条件(効率)の下に撹拌することができる。このため、自動分析装置1は、各反応容器12内の液体を同一の攪拌性能を有する攪拌装置6によって一定の攪拌効率の下に攪拌することができると共に、直接撹拌棒を液体に挿入して撹拌する場合に発生するキャリーオーバーを抑制することができる。
【0042】
また、実施の形態1は、表面弾性波素子20と駆動回路21とは常に電気的に接続されているので、従来例のように撹拌時に表面弾性波素子20と駆動回路21とを接続するための機構などが必要なくなり、装置構成の複雑化を防ぐことができる。
【0043】
また、実施の形態1は、表面弾性波素子20を反応容器12の側壁に直接接触させるので、隣接して設置される他の反応容器内の液体に振動が伝播されず、この振動伝播に伴う影響、たとえば撹拌時間の差異が生じるのを防止して一定の撹拌を実現することができる。さらに、本発明の攪拌装置6および自動分析装置1は、防振材を介して反応容器12をホルダ5aに配置するように構成すれば、さらに他の反応容器12が保持した液体への振動の伝搬が抑制され、さらに一定効率での撹拌を実現することができる。
【0044】
また、実施の形態1は、撹拌時に振動子20bを反応容器12に接触させた状態で上下左右に移動させ、或いは右左に回転させることが可能なので、反応容器12に保持される液体の量に対応させて表面弾性波素子20を最適位置に移動することができ、反応容器12に保持された液体をさらに一定効率の下に撹拌することができる。
【0045】
(実施の形態2)
次に、本発明の表面弾性波素子20にかかる実施の形態2について、図面を参照して説明する。実施の形態1の表面弾性波素子20は、振動子20bが反応容器12の側壁12bに離接されるのに対し、実施の形態2の表面弾性波素子20は、図7および図8に示すように、母材20aの一端面20a1が反応容器12の側壁12bに離接される。
【0046】
実施の形態2は、表面弾性波素子20をたとえば共振型の表面弾性波素子で構成し、音波(表面弾性波)の反射によって生ずる定在波Tを母材20aの一端面20a1から出射させる。さらに、実施の形態2は、母材20aを反応容器12の側壁12bに対して所定角度θになるように傾けてアーム22aに連結する。このとき、角度θは、表面弾性波素子20の電波の伝播特性、たとえば電波の伝播方向などを考慮して、最適な角度に設定する。
【0047】
このような構成により、自動分析装置1は、制御部16の制御の下に駆動部22を駆動してアーム22aを繰り出す。これにより、自動分析装置1は、図8に示すように、表面弾性波素子20の一端面20a1を液体が保持された反応容器12の側壁12bに接触させ、振動子20bを駆動して発生した定在波Tを一端面20a1から反応容器12が保持した液体中へ出射させる。ここで、一端面20a1は、振動子20bから出射された定在波のエネルギーが最大となる位置、たとえば定在波を形成する表面弾性波の位相が90度ずれて交わる節や、表面弾性波の振幅の差が最も大きい腹の位置となるように設定されるが、この位置は母材20aの寸法、振動子20bの母材20a上の位置並びに定在波Tの波長等から決まる。
【0048】
このように、実施の形態2は、実施の形態1と同様の効果を奏することができると共に、表面弾性波素子20の一端面20a1を駆動部22によって反応容器12に接触させ、一端面20a1から反応容器12に定在波を出射するので、反応容器12の最適位置に一端面20a1を位置決めして安定な撹拌を行うことができる。
【0049】
また、表面弾性波素子は、一般的に振動する時に熱が発生し、この熱が反応容器12内の液体に伝達され液体の反応状態に影響を与え、たとえば各反応容器12内の液体の反応速度が一定でなくなることがある。しかし、実施の形態2では、表面弾性波素子20の一端面20a1のみが反応容器12と接触するだけなので、表面弾性波素子20から反応容器12への熱伝達が抑制され、液体の反応速度に影響を与えることが抑えられる。
【0050】
なお、実施の形態2では、表面弾性波素子20の母材20aの端面加工状態により、振動子20bで発振された音波の伝播方向が変わる。このため、母材20aの端面加工(たとえば面取りや稜線部に代えて湾曲部を設けるなど)を接触角度に合わせて最適化することも可能である。
【0051】
(実施の形態3)
次に、本発明の表面弾性波素子20にかかる実施の形態3について、図9および図10の図面を参照して説明する。図9および図10において、実施の形態3の表面弾性波素子20は、実施の形態2と同様に共振型の表面弾性波素子で構成され、かつ、ホルダ5aに保持される反応容器12の側壁12bに対向させて平行に配置される。
【0052】
また、実施の形態3は、母材20aの一端面20a1に凸部20cを複数、たとえば2つ形成する。凸部20cは、振動子20bの厚さより高く構成し、移動されるアーム22aによって各凸部20cのみが反応容器12の側壁12bに当接されるように構成する。
【0053】
このように構成することにより、自動分析装置1は、制御部16の制御の下、駆動部22を駆動してアーム22aを繰り出し、表面弾性波素子20の凸部20cを液体が保持された反応容器12の側壁12bに接触させる。そして、駆動回路21によって振動子20bを駆動し、発生した定在波Tを凸部20cから出射させる。このとき、凸部20cは、振動子20bから出射された定在波のエネルギーが最大になる位置、たとえば実施の形態2と同様に、定在波を形成する表面弾性波の位相が90度ずれて交わる節や、この表面弾性波の振幅の差が最も大きい腹の位置に予め設定されるが、この位置は母材20aの寸法、凸部20cの母材20a上の位置並びに定在波Tの波長等から決まる。
【0054】
このように、実施の形態3は、表面弾性波素子20の凸部20cを駆動部22によって反応容器12に接触させ、凸部20cから反応容器12に定在波を出射するので、実施の形態2と同様の効果を奏することができると共に、凸部20cをピンポイントで最適位置に位置決めすることができるので、攪拌効率を一層安定させることができる。
【0055】
図11〜図13は、実施の形態3にかかる表面弾性波素子20の変形例1〜3である。なお、これら変形例1〜3では、便宜上反応テーブル5およびアーム22aを省略して示す。まず、図11に示す変形例1は、実施の形態3に示した構成の表面弾性波素子20の母材20aを、実施の形態2と同様に反応容器12の側壁12bに対して所定角度傾け、凸部20cのみが反応容器12の側壁12bに当接されるように構成した変形例である。変形例1に示す構成であっても、実施の形態3と同様の効果を奏することができる。
【0056】
また、図12に示す変形例2は、実施の形態3に示した構成の表面弾性波素子20の母材20aの反応容器12の側壁12b側とは逆の裏面20a2に振動子20bを形成すると共に、側壁12b側の面20a3であって、かつ、振動子20bから出射された定在波のエネルギーが最大となる位置に凸部20cを複数(この例では3つ)設けるように構成した変形例である。複数の凸部20cの設置位置は、振動子20bの裏面で、それぞれを結ぶと三角形を構成する位置となる。変形例2に示す構成であっても、実施の形態3と同様の効果を奏することができる。
【0057】
また、図13に示す変形例3は、実施の形態3に示した構成の表面弾性波素子20の母材20aの側壁12b側の面20a3であって、形成された振動子20bから出射された定在波が最大出力となる位置に凸部20cを複数(この例では3つ)設けるように構成した変形例である。複数の凸部20cの設置位置は、それぞれを結ぶと三角形を構成し、かつ、振動子20bを囲む位置となる。変形例3に示す構成であっても、実施の形態3と同様の効果を奏することができる。
【0058】
なお、これら実施の形態では、表面弾性波素子20が出射する表面弾性波を用いて液体を攪拌する場合について説明したが、本発明はこれに限らず、たとえば素子の母材内を伝播するバルク波を用いて液体を攪拌することも可能であり、この場合も実施の形態と同様の効果を奏することができる。
【0059】
また、実施の形態では、表面弾性波素子20を外側壁5d側の反応容器12の側壁12bに一面接触させる構成としたが(図2参照)、本発明はこれに限らず、外側壁5d側の側壁12bに対向する内側壁5e側の側壁12bに一面接触させてもよいし、または外側壁5d側および内側壁5e側の両側壁12bに二面接触させる構成とすることも可能である。この場合には、ユーザのニーズに応じた汎用性の高い自動分析装置を提供でき、さらい二面接触の場合には、攪拌効率が増加し、撹拌時間を削減することが可能となる。
【0060】
また、実施の形態では、表面弾性波素子20を接触させる位置は、反応容器12の側壁12bの液面位置としたが、本発明はこれに限らず、液面位置以外の位置に設定することも可能である。この場合には、測光部7による測光で、表面弾性波素子20の接触によって生じた傷や汚れの情報を取得することがなくなり、正確な光情報を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】実施の形態1の自動分析装置を示す概略構成図である。
【図2】図1に示した自動分析装置を構成する反応容器および反応テーブルを断面にして示したブロック図である。
【図3】図2に示した反応テーブルのホルダ、反応容器および表面弾性波素子の配置を示す斜視図である。
【図4】図2に示した表面弾性波素子の移動状態を説明するための斜視図である。
【図5】図2に示した反応テーブルのホルダ、反応容器および表面弾性波素子の配置を示す断面図である。
【図6】表面弾性波素子が反応容器に接触した状態を示した反応テーブルのホルダ、反応容器および表面弾性波素子の配置を示す断面図である。
【図7】実施の形態2にかかる反応テーブルのホルダ、反応容器および表面弾性波素子の配置を示す断面図である。
【図8】実施の形態2において、表面弾性波素子が反応容器に接触した状態を示した反応テーブルのホルダ、反応容器および表面弾性波素子の配置を示す断面図である。
【図9】実施の形態3にかかる反応テーブルのホルダ、反応容器および表面弾性波素子の配置を示す断面図である。
【図10】実施の形態3にかかる反応容器および表面弾性波素子の配置を示す斜視図である。
【図11】実施の形態3の変形例1にかかる反応容器および表面弾性波素子の配置を示す斜視図である。
【図12】実施の形態3の変形例2にかかる反応容器および表面弾性波素子の配置を示す斜視図である。
【図13】実施の形態3の変形例3にかかる反応容器および表面弾性波素子の配置を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0062】
1 自動分析装置
2 作業テーブル
3 検体テーブル
3a 検体格納部
4 検体分注機構
4a 検体ノズル
5 反応テーブル
5a ホルダ
5b,5c 開口
5d 外側壁
5e 内側壁
5f 駆動モータ
6 撹拌装置
7 測光部
7a 光源
7b 受光器
8 洗浄装置
9 試薬テーブル
9a 試薬格納部
10 試薬分注機構
10a 試薬ノズル
11 検体容器
12 反応容器
12a 開口
12b 側壁
14 試薬容器
15 読取装置
16 制御部
17 分析部
18 入力部
19 表示部
20 表面弾性波素子
20a 母材
20a1 一端面
20b 振動子
20c 凸部
21 駆動回路
22 駆動部
22a アーム
H 表面弾性波

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応容器に保持された液体を撹拌する音波を出射する音波出射手段を有する撹拌装置であって、
前記撹拌時に前記音波出射手段を移動させて前記液体を保持する反応容器に接触させる駆動手段を備えたことを特徴とする撹拌装置。
【請求項2】
前記音波出射手段は、母材と、該母材上に形成される櫛型電極からなる振動子とを有する表面弾性波素子であることを特徴とする請求項1記載の撹拌装置。
【請求項3】
前記駆動手段は、前記母材が有する複数の端面のうちの所定の一端面を前記反応容器に接触させることを特徴とする請求項2に記載の撹拌装置。
【請求項4】
前記母材は、少なくとも1つの凸部を有し、
前記駆動手段は、前記凸部を前記反応容器に接触させることを特徴とする請求項2に記載の撹拌装置。
【請求項5】
前記表面弾性波素子は、定在波を出射し、
前記凸部は、前記音波出射手段から出射される定在波のエネルギーが最大になる位置に設けられることを特徴とする請求項4に記載の撹拌装置。
【請求項6】
前記駆動手段は、前記表面弾性波素子を前記反応容器に接触させる接触位置を変更させることを特徴とする請求項2〜5のいずれか一つに記載の撹拌装置。
【請求項7】
複数の反応容器のそれぞれに保持された液体を撹拌して反応させ、反応液の光学的特性を測定して前記反応液を分析する分析装置であって、
前記反応容器に保持された液体を撹拌する音波を出射する音波出射手段と前記撹拌時に前記音波出射手段を移動させて前記液体を保持する所定の反応容器に接触させる駆動手段とを有する請求項1〜6のいずれか一つに記載の撹拌装置を備えたことを特徴とする分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−256565(P2008−256565A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−99803(P2007−99803)
【出願日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】