説明

撹拌装置及び該撹拌装置を有する物品移動装置

【課題】複数の収容層に区分されているとともに各収容層の下部に貫通孔を有する容器内における各収容層に進入できる物品移動装置を提供する。
【解決手段】物品移動装置1は、長尺状の撹拌羽根4と、胴体部5と、胴体部5を吊り下げる索体6とを備える。胴体部5は、撹拌羽根4を回転する回転胴51と、胴体部5を貫通孔25に固定するための下部固定胴52とを有する。撹拌羽根4は、回転の軸Z方向と動径方向との間の所定の角度範囲で開閉可能に基端側が回転胴51に枢設され、物品を着脱自在に保持する保持部7を先端側に備える。撹拌羽根4及び胴体部5は、撹拌羽根4が閉じられたときに容器2の上部開口及び貫通孔25を通過可能な大きさである。これにより、物品移動装置1は、撹拌羽根4が閉じられたときに貫通孔25を通過可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反応炉等の容器内で触媒等の粉粒体を撹拌する撹拌装置、及びその撹拌装置を有し、センサ等の物品を容器内で移動する物品移動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、製油所において、原油(炭化水素油)を反応炉で水素化脱硫処理する精製が行われている。この処理には粒状の触媒が用いられている。図3に示されるように、反応炉102は、化学反応を行うための容器であり、触媒103を収容する収容層21、22を複数有するものがある。各収容層21、22は、床板24を下部に有する。炭化水素油は床板24を透過し、触媒103は床板24を通り抜けない。床板24は、触媒103が通り抜ける貫通孔25を有する。床板24上には、貫通孔25の周囲に安息角を成す残触媒の斜面が形成される。残触媒を反応炉102外に排出するため、反応炉102の上部開口23から反応炉102内に梯子26を仮設し、作業員が最上の収容層21に入って残触媒の斜面を崩し、触媒103を貫通孔25から下の収容層22に排出する。作業員は、最上の収容層21から触媒103を排出した後、床板24に設けられた人孔蓋127を開け、梯子を仮設して下の収容層22に移動し、触媒103をさらに下の収容層又は反応炉102外に排出する。反応炉102外に排出された触媒103は、回収され、再生される。
【0003】
反応炉102内は、揮発油や水素など爆発や火災の危険性がある物質が存在する。爆発や火災を防止するため、作業時に反応炉102内に窒素を充満させ、無酸素状態にされる場合がある。また、反応炉102内は、薄暗く、粉塵が立ちこめており、視界が良くない。このように、反応炉102内の作業環境は、大変厳しい。反応炉102内の作業に先立って、残触媒を水漬け状態にする場合もある。この場合、反応炉102全体が水で満たされ、所定時間経過後に水抜きが行われる。これにより、反応炉102内が洗浄され、反応炉102内に残った触媒103は、水を含んだ状態となる。触媒103が水を含むと、爆発や火災が防止され、粉塵も低減される。また、酸素を反応炉102内に入れても触媒103の発熱が抑えられるので、作業員の酸欠作業が回避される。しかし、水を含んだ触媒103は、再生することができない。触媒103は高価であるため、触媒103の再生ができないと、原油精製のコストが著しく増大する。
【0004】
作業員を反応炉102内の過酷な作業から解放するため、各収容層21、22にある残触媒を排出する装置の開発が望まれている。タンク内の粒状物を排出する装置として、撹拌翼で粒状物を撹拌し、粒状物を吸引して排出する装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。この装置は、撹拌翼の回転に伴う反力に対抗するために、タンクの内面に突っ張る支持アームを有する。しかしながら、このような装置を反応炉102内で使おうとすると、支持アームが長くなって装置が大型化し、装置を貫通孔25を通過させて下の収容層22に進入させることができない。また、粒状の触媒103は、吸引して排出すると粉砕されるので、再生することができなくなる。
【0005】
また、反応炉102内で残触媒を排出するロボットの開発が行われている。ロボットを反応炉102内で用いる場合、ロボットの位置や残触媒の状況等を検出するため、反応炉102の各収容層にセンサが設置される。センサを人手を使わずに反応炉102内に設置するため、センサ(物品)を最上の収容層21より下の収容層22に移動する装置の開発が望まれている。また、触媒103を撹拌した状態をセンサで測定するため、収容層21、22に進入して触媒103を撹拌する装置の開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−235282号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記問題を解決するものであり、複数の収容層に区分されているとともに各収容層の下部に貫通孔を有する容器内における各収容層に進入できる撹拌装置及び物品移動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の撹拌装置は、粉粒体を収容する複数の収容層に区分されているとともに各収容層の下部に貫通孔を有する容器内に上部開口から進入して粉粒体を撹拌するものであって、長尺状の撹拌羽根と、前記撹拌羽根を有する胴体部と、前記胴体部を吊り下げる索体とを備え、前記胴体部は、前記撹拌羽根を回転する回転胴と、前記回転胴の下部に位置して該胴体部を前記貫通孔に固定するための下部固定胴とを有し、前記撹拌羽根は、回転の軸方向と動径方向との間の所定の角度範囲で開閉可能に基端側が前記回転胴に枢設され、前記撹拌羽根及び胴体部は、該撹拌羽根が前記軸方向に閉じられたときに前記上部開口及び貫通孔を通過可能な大きさであることを特徴とする。
【0009】
この撹拌装置において、前記下部固定胴は、前記貫通孔の内面を押圧する複数の押圧部材を有することが好ましい。
【0010】
本発明の物品移動装置は、この撹拌装置を有し、前記撹拌羽根は、物品を着脱自在に保持する保持部を先端側に備えることを特徴とする。
【0011】
この物品移動装置において、前記容器は、炭化水素油を精製する反応炉であり、前記保持部は、反応炉内の物理量を検出するセンサを物品として保持することが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、胴体部が貫通孔に固定されるので、容器の内面に固定するよりも小型化され、撹拌羽根が閉じられたときに貫通孔を通過可能となり、容器内の各収容層に進入することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係る物品移動装置が設けられた反応炉の断面図。
【図2】同装置の正面図。
【図3】従来の反応炉の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一実施形態に係る物品移動装置を図1及び図2を参照して説明する。物品移動装置1は、容器2内において用いられる。容器2は、粉粒体3を収容する複数の収容層21、22に区分されている。収容層は、3層以上あってもよい。容器2は、上部に上部開口23を有し、各収容層21、22の下部に床板24を有する。床板24は、貫通孔25を有する。物品移動装置1は、容器2内に上部開口23から進入して粉粒体3を撹拌する撹拌装置としても用いられる。
【0015】
物品移動装置1は、長尺状の撹拌羽根4と、撹拌羽根4を有する胴体部5と、索体6とを備える。索体6は、胴体部5を吊り下げる。胴体部5は、回転胴51と、回転胴51の下部に位置する下部固定胴52とを有する。回転胴51は、撹拌羽根4を回転する。下部固定胴52は、胴体部5を貫通孔25に固定する。撹拌羽根4は、回転の軸Z方向と動径方向との間の所定の角度範囲で開閉可能に基端側が回転胴51に枢設されている。所定の角度は、90°よりも若干大きい。撹拌羽根4及び胴体部5は、撹拌羽根4が軸Z方向に閉じられたときに上部開口23及び貫通孔25を通過可能な大きさである。
【0016】
下部固定胴52は、複数の押圧部材53を有する。押圧部材53は、貫通孔25の内面を押圧する部材である。
【0017】
撹拌羽根4は、物品を着脱自在に保持する保持部7を先端側に備える。物品は、容器2内の物理量を検出するセンサである。センサは、例えば、画像センサ、測距センサ等である。
【0018】
物品移動装置1は、動作用のエネルギー源として圧縮空気を胴体部5に送るエアホース54を有する。下部固定胴52は、下端にビデオカメラ55を有する。索体6は、中間部にカメラ取付座61を有する。カメラ取付座61の幅は、貫通孔25の径以下である。カメラ取付座61には、ビデオカメラ62が取り付けられている。ビデオカメラ55、62が撮影した映像は、容器2外に伝送され、物品移動装置1の遠隔制御及び容器2内の状況の監視等に用いられる。なお、カメラ取付座61、ビデオカメラ62、62は省略されることがある。
【0019】
物品移動装置1についてさらに詳述する。本実施形態では、容器2は、炭化水素油を精製する反応炉である。容器2は、床板24によって複数の収容層21、22に区分される。各収容層21、22は、内部に粉粒体3が充填される。本実施形態では、粉粒体3は、粒状の触媒である。触媒は、経時変化によって一部が粉状になることがある。床板24は、多数の細かな孔が開いている。炭化水素油のような液体は、床板24を透過し、粉粒体3は、床板24を通り抜けない。容器2内に充填されていた粉粒体3は、貫通孔25から自然落下によって、下の収容層又は容器2外に排出される。床板24上には、貫通孔25の周囲に安息角を成す粉粒体3の斜面が形成される。なお、上部開口23の径は、容器2の内径よりも小さく、貫通孔25の径は、上部開口23の径よりも小さい。
【0020】
撹拌羽根4は、粉粒体3を撹拌する羽根であり、物品を保持するためのアームを兼ねる。撹拌羽根4は、空気を噴出するノズル41を先端近傍に有する。撹拌羽根4は、上下逆向きの傘の骨のように胴体部5に対して開閉可能とされている。撹拌羽根4の開閉は、容器2外に設けられたコントローラ(図示せず)によって遠隔制御され、回転胴51に内蔵されたエアモータ又はエアアクチュエータによって駆動される。撹拌羽根4は、閉じられたとき、胴体部5の側面に形成された凹部に収容され、胴体部5から動径方向に張り出さない。
【0021】
胴体部5は、略円柱形状であり、下部固定胴52の側面に、粉粒体3の通過を促進するための縦溝を形成してもよい。下部固定胴52の押圧部材53は、かまぼこ形の構造体であり、平面視で対称に複数設けられる。下部固定胴52は、各々の押圧部材53を動径方向にスライドするスライド機構(図示せず)を有する。複数の押圧部材53は、スライド機構が下部固定胴52内で干渉しないように、上下にずらして配置されている。押圧部材53が引き込まれた状態において、下部固定胴52の径は、貫通孔25の径よりも小さい。押圧部材53のスライドは、コントローラによって遠隔制御され、スライド機構のエアアクチュエータによって駆動される。押圧部材53がスライドして貫通孔25の内面を押圧することによって、胴体部5が固定される。胴体部5は、内蔵するエアモータによって回転胴51を回転する。回転胴51の回転及び停止並びに回転方向の切替は、コントローラによって遠隔制御される。回転胴51の回転によって、撹拌羽根4が回転される。下部固定胴52は、撹拌羽根4の回転に伴う反力に対抗する。
【0022】
索体6は、本実施形態では2列のチェーンである。索体6をワイヤ又はロープにしてもよい。索体6を支持する構成は、限定されるものではなく、本実施形態では、索体6は、ブーム63の先端側に支持される。ブーム63の基端は、ロッド64の下端に旋回可能に設けられる。ロッド64の上端は、容器2外に設けられた荷役機械(図示せず)によって昇降可能に支持される。また、上部開口23に設けたドラムによって索体6の上端を支持し、ブーム63に滑車を設け、索体6の中間部をその滑車で支持してもよい。貫通孔25が上部開口23の真下に位置する場合、ブーム63及びロッド64を省略し、上部開口23に設けたドラムによって索体6を直接支持してもよい。
【0023】
保持部7は、移動する物品に応じた機構を有し、例えば、空気力によって物品を吸引、又は物品を機械的に把持する。保持部7を取替可能としてもよい。保持部7の動作は、コントローラによって遠隔制御される。
【0024】
上記のように構成された物品移動装置1は、容器2である反応炉の内部に窒素が充満された後に、撹拌羽根4が上向きに閉じた状態で、容器2の上部開口23から容器2内の最上の収容層21に入れられる。下部固定胴52は、収容層21の下部にある床板24の貫通孔25に入れられ、押圧部材53を動径方向にスライドして胴体部5を固定する。撹拌羽根4は、横向きに開かれ、粉粒体3の上面に当たって止まる。撹拌羽根4は、回転胴51の回転によって、左右に回転され、粉粒体3を撹拌する。撹拌によって、撹拌羽根4に接している箇所の粉粒体3が崩落する。崩落した粉粒体3は、下部固定胴52と貫通孔25との隙間から下の収容層22に落ちる。撹拌羽根4で粉粒体3を落としきれない状態になるまで、撹拌羽根4が回転される。
【0025】
次に、押圧部材53がスライド機構によって引き込まれ、撹拌羽根4が再度上向きに閉じられる。物品移動装置1は、収容層21の下部にある床板24の貫通孔25を通過して、下の収容層22に入れられる。物品移動装置1は、収容層21内と同様に、収容層22内の粉粒体3をさらに下の収容層または容器2外に落として排出する。
【0026】
物品移動装置1は、保持部7によって物品であるセンサを保持している場合、撹拌羽根4を開く動作等によって容器2の内面にセンサを取付ける。宙吊り状態の物品移動装置1によってセンサを容器2内に支持してもよい。
【0027】
センサやロボットの試験を行う場合、撹拌羽根4は、粉粒体3である触媒の斜面の崩落を再現するために用いられ、ノズル41から空気を噴出し、粉粒体3による粉塵の様子を再現する。
【0028】
本実施形態に係る物品移動装置1は、胴体部5が貫通孔25に固定されるので、容器2の内面に固定するよりも小型化され、撹拌羽根4が閉じられたときに貫通孔25を通過可能となり、容器2内の各収容層21、22に進入することができる。
【0029】
下部固定胴52が押圧部材53によって胴体部5を貫通孔25に固定するので、撹拌羽根4の回転に伴う反力に対抗することができる。
【0030】
保持部7が物品を保持するので、物品を容器2内の各収容層21、22に移動させることができる。
【0031】
保持部7が反応炉内の物理量を検出するセンサを保持するので、作業員が反応炉内に入らなくてもセンサを反応炉内の各収容層21、22に移動させることができる。
【0032】
なお、本発明は、上記の実施形態の構成に限られず、発明の要旨を変更しない範囲で種々の変形が可能である。例えば、撹拌羽根4の保持部7を省略してもよい。この場合、本発明は専ら撹拌装置として用いられる。また、容器2は、炭化水素油を精製する反応炉に限定されず、粉粒体3は、触媒に限定されない。
【符号の説明】
【0033】
1 物品移動装置(撹拌装置)
4 撹拌羽根
5 胴体部
51 回転胴
52 下部固定胴
53 押圧部材
6 索体
7 保持部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉粒体を収容する複数の収容層に区分されているとともに各収容層の下部に貫通孔を有する容器内に上部開口から進入して粉粒体を撹拌する撹拌装置であって、
長尺状の撹拌羽根と、前記撹拌羽根を有する胴体部と、前記胴体部を吊り下げる索体とを備え、
前記胴体部は、前記撹拌羽根を回転する回転胴と、前記回転胴の下部に位置して該胴体部を前記貫通孔に固定するための下部固定胴とを有し、
前記撹拌羽根は、回転の軸方向と動径方向との間の所定の角度範囲で開閉可能に基端側が前記回転胴に枢設され、
前記撹拌羽根及び胴体部は、該撹拌羽根が前記軸方向に閉じられたときに前記上部開口及び貫通孔を通過可能な大きさであることを特徴とする撹拌装置。
【請求項2】
前記下部固定胴は、前記貫通孔の内面を押圧する複数の押圧部材を有することを特徴とする請求項1に記載の撹拌装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の撹拌装置を有し、
前記撹拌羽根は、物品を着脱自在に保持する保持部を先端側に備えることを特徴とする物品移動装置。
【請求項4】
前記容器は、炭化水素油を精製する反応炉であり、
前記保持部は、反応炉内の物理量を検出するセンサを物品として保持することを特徴とする請求項3に記載の物品移動装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−40014(P2013−40014A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−178079(P2011−178079)
【出願日】平成23年8月16日(2011.8.16)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成22年度、経済産業省、戦略的基盤技術高度化支援事業委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(508099922)知能技術株式会社 (6)
【Fターム(参考)】