説明

操作スイッチ用部材、キーパネル、電子機器および操作スイッチ用部材の製造方法

【課題】レーザ光を良好に透過可能な隠蔽層を備えると共に副生成物の発生を抑えることが可能な遮光層を備える操作スイッチ用部材を提供する。
【解決手段】隠蔽層30と、遮光層40とを有し、隠蔽層30は、所定の波長のレーザ光を透過させる透過性を備える材質から形成されていると共に、透明材質と比較して隠蔽層30の表面側から遮光層40を見る場合の視認性を低下させ、遮光層40は、隠蔽層30の表面側からレーザ光が照射された際に、光透過性を照射前よりも向上させる材質であって、カーボンおよび酸化鉄のうちの少なくとも1つを材料として含む場合よりも、ガスおよび煤のうちの少なくとも1つの発生を抑える材質から形成され、隠蔽層30の表面側からのレーザ光の照射によって、遮光層40におけるレーザ光の照射部位が変質し、その変質によって当該遮光層40の他の部分よりも可視光領域での光透過率を向上させる表示部42が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作スイッチ用部材、キーパネル、電子機器および操作スイッチ用部材の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
操作スイッチ用部材の中には、たとえば特許文献1に示すように、隠蔽層を備えるものがある。この特許文献1においては、内部光源が消灯している場合には、隠蔽層の存在によって表示用部材に付されている表示(第1の表示部他)は操作面側から視認することができない。一方、内部光源が点灯して光量が多くなると、隠蔽層を光が透過し、表示用部材に付されている表示(第1の表示部他)を操作面側から視認することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−301887号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述の特許文献1に示すような構成においては、操作スイッチ用部材を組み立てた後に、表示用部材(以下、遮光層とする)に表示を形成することは困難である。すなわち、遮光層に抜き文字等の表示を形成すべく、操作面側からレーザ光を照射すると、隠蔽層がレーザ光を吸収して隠蔽層中の所定の成分が反応してしまい、内部光源が消灯している状態においても、その表示が操作面側から認識されてしまう。そのため、隠蔽層は、内部光源の消灯時において表示を隠す、という機能を発揮することができない状態となり、操作スイッチ用部材の品質の低下をきたしてしまう。
【0005】
また、遮光層にレーザ光を照射して表示を形成する場合において、遮光層を由来とする副生成物(たとえばガス、煤等)が発生する場合がある。そのような副生成物の中で、たとえばガスが発生すると操作面側が盛り上がる等の不具合が生じる。また、副生成物の中で煤が発生すると、表示が汚れたような印象となる。つまりは、このような不具合は、操作スイッチ用部材の品質の低下となってしまう。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みて成されたものであり、レーザ光を良好に透過可能な隠蔽層を備えることと、副生成物の発生を抑えることが可能な遮光層を備えることのうち、少なくとも一方を達成可能な操作スイッチ用部材、これを用いたキーパネルおよび電子機器、ならびに、当該操作スイッチ用部材の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は以下の本発明により達成される。すなわち、本発明の操作スイッチ用部材は、隠蔽層と、隠蔽層の裏面側に配置される遮光層とを有し、隠蔽層は、所定の波長のレーザ光を透過させる透過性を備える材質から形成されていると共に、透明材質と比較して隠蔽層の表面側から遮光層を見る場合の視認性を低下させる、ことを特徴とする。
【0008】
また、本発明の操作スイッチ用部材の他の側面は、上述の発明に加えて更に、遮光層は、隠蔽層の表面側からレーザ光が照射された際に、光透過性を照射前よりも向上させる材質であって、カーボンおよび酸化鉄のうちの少なくとも1つを材料として含む場合よりも、ガスおよび煤のうちの少なくとも1つの発生を抑える材質から形成されていて、さらに隠蔽層の表面側からのレーザ光の照射によって、遮光層におけるレーザ光の照射部位が変質し、その変質によって当該遮光層の他の部分よりも可視光領域での光透過率を向上させる表示部が形成される、ことが好ましい。
【0009】
また、本発明の操作スイッチ用部材の他の側面は、上述の発明に加えて更に、所定の波長のレーザ光は、1064nmのレーザ光である、ことが好ましい。
【0010】
また、本発明の操作スイッチ用部材の他の側面は、上述の各発明に加えて更に、隠蔽層は、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントブラック1、C.I.ピグメントバイオレット23、C.I.ピグメントオレンジ5、C.I.ピグメントグリーン7のうち、少なくとも1つからなる有機顔料を含む、および/または隠蔽層は、当該隠蔽層に含有される酸化鉄と炭素質紛体の合計の含有率が0重量%を超え30%以下である、ことが好ましい。
【0011】
また、本発明の操作スイッチ用部材の他の側面は、上述の各発明に加えて更に、遮光層は、In、Sn、In−Sn合金またはAlによって形成され、その膜厚は0.02μm〜0.3μmの範囲内である、ことが好ましい。
【0012】
また、本発明の操作スイッチ用部材の他の側面は、上述の各発明に加えて更に、隠蔽層と遮光層との間には、それらの間の密着性を向上させると共に透明性を有する第1の透明樹脂層が設けられていて、遮光層のうち隠蔽層側の面とは反対側の面には、色材成分によって着色された着色層が配置され、遮光層と着色層との間には、それらの間の密着性を向上させると共に透明性を有する第2の透明樹脂層が設けられている、ことが好ましい。
【0013】
また、他の発明は、上述の操作スイッチ用部材の各発明を備えたキーパネルであることが好ましい。
【0014】
また、他の発明は、上述の操作スイッチ用部材の各発明を備えた電子機器であることが好ましい。
【0015】
また、本発明の他の側面である操作スイッチ用部材の製造方法は、隠蔽層と、隠蔽層の裏面側に配置される遮光層とを有する操作スイッチ用部材を製造する製造方法であって、隠蔽層の表面側に、所定の波長のレーザ光を透過させる透過性を備える材質から形成されていると共に、透明材質と比較して隠蔽層の表面側から遮光層側を見る場合の視認性を低下させる隠蔽層を形成する隠蔽層形成工程と、隠蔽層の裏面側に、隠蔽層の表面側からレーザ光が照射された際に、光透過性を照射前よりも向上させると共に、カーボンおよび酸化鉄のうちの少なくとも1つを材料として含む場合よりも、ガスおよび煤のうちの少なくとも1つの発生を抑える非透光性の遮光層をIn、Sn、In−Sn合金またはAlの物理気相成長法またはスパッタリングによって形成する遮光層形成工程と、隠蔽層の表面側から遮光層の一部の領域に対してレーザ光を照射して、その照射部位を変質させて遮光層の他の部分よりも可視光領域での光透過率を向上させる表示部を形成するレーザ光照射工程と、を行うことで、操作スイッチ用部材を作製することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、隠蔽層によってレーザ光が良好に透過可能となると共に、遮光層では隠蔽層を透過したレーザ光が照射されても副生成物の発生を抑えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施形態の操作スイッチ用部材の一例を示す模式断面図であり、(A)はレーザ光の照射前の状態を示し、(B)はレーザ光の照射後の状態を示す。
【図2】図1における操作スイッチ用部材を視認したときの様子を示す平面図であり、(A)はデイライト下で視認されるものを示し、(B)はバックライト下で視認されるものを示す。
【図3】本実施形態の操作スイッチ用部材の他の例を示す模式断面図である。
【図4】本実施形態の操作スイッチ用部材の他の例を示す模式断面図である。
【図5】本実施形態の操作スイッチ用部材の他の例を示す模式断面図である。
【図6】図5における操作スイッチ用部材を視認したときの様子を示す平面図であり、(A)はデイライト下で視認されるものを示し、(B)はバックライト下で視認されるものを示す。
【図7】本実施形態の操作スイッチ用部材の他の例を示す模式断面図である。
【図8】図7における操作スイッチ用部材を視認したときの様子を示す平面図であり、(A)はデイライト下で視認されるものを示し、(B)はバックライト下で視認されるものを示す。
【図9】本実施形態の操作スイッチ用部材の他の例を示す模式断面図である。
【図10】本実施形態の操作スイッチ用部材の他の例を示す図であり、操作スイッチ用部材の半製品を三次元形状に形成する様子を示す図である。
【図11】本実施形態の操作スイッチ用部材の他の例を示す図であり、モールドプリントに操作スイッチ用部材の半製品を接着して三次元形状に形成する様子を示す図である。
【図12】本実施形態の電子機器の一例を示す外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(操作スイッチ用部材およびその製造方法)
本実施形態の操作スイッチ用部材は、隠蔽層と、隠蔽層の裏面側に配置される遮光層とを有し、隠蔽層は、所定の波長のレーザ光を透過させる透過性を備える材質から形成されていると共に、透明材質と比較して隠蔽層の表面側から遮光層を見る場合の視認性を低下させることを特徴とする。
【0019】
また本実施形態の操作スイッチ用部材は、さらに、遮光層は、隠蔽層の表面側からレーザ光が照射された際に、光透過性を照射前よりも向上させる材質であって、カーボンおよび酸化鉄のうちの少なくとも1つを材料として含む場合よりも、ガスおよび煤のうちの少なくとも1つの発生を抑える材質から形成されていて、さらに隠蔽層の表面側からのレーザ光の照射によって、遮光層におけるレーザ光の照射部位が変質し、その変質によって当該遮光層の他の部分よりも可視光領域での光透過率を向上させる表示部が形成される、ことを特徴とする。
【0020】
より詳細には、隠蔽層は、基本的には、たとえば半透明といった、透明である場合よりも光透過率が劣る層である。この隠蔽層は、たとえば所定の波長の光を透過させる光学フィルタと同様に、所定の波長のレーザ光は透過させる透過性を備える。一方、可視光領域の波長の光に対しては、光を吸収または反射させることにより、隠蔽層の表面側(キートップの操作面側)から、それとは反対側の遮光層側を視認する場合の視認性を低下させる。そのため、遮光層の裏面側(遮光層のうちキートップが位置する側とは反対の面側)に光源を配置する場合において、その光源が消灯している場合には、操作面側から遮光層側を視認することは困難である。一方、光源が点灯し、その光源から光が出射される場合には、その光は表示部を透過し、さらには隠蔽層を透過する。ここで、隠蔽層には表示部を透過した光のみが到達するため、使用者は、操作面側から表示部に対応するデザインを認識可能となる。
【0021】
このため、上述のように構成された半製品に対して、隠蔽層の表面側(キートップの操作面側)から所定の波長のレーザ光を照射すれば、表示部が形成され、操作スイッチ用部材が完成する。ここで、遮光層は、カーボンおよび酸化鉄のうちの少なくとも1つを材料として含む場合よりも、ガスおよび煤のうちの少なくとも1つの発生を抑える材質から形成されているので、表示部を形成するために所定の波長のレーザ光を照射してもガスおよび煤の発生が抑えられる。そして、上述のレーザ光の照射によるガスの発生が抑えられることで、キートップの操作面側が膨れる、といった不具合が発生するのを抑えることが可能となる。また、上述のレーザ光の照射による煤の発生が抑えられることで、表示部が汚れて品質が低下するのを抑えることが可能となる。
【0022】
なお、遮光層の表示部は、その遮光層の表示部以外の領域に対して相対的に光透過性が向上しているのであれば、透明領域の光透過率は、肉眼では半透明として認識できる程度であってもよい。
【0023】
また、従来は、操作スイッチ用部材を成形する前に、レーザ光にて遮光層に所望のパターンに対応する表示部を形成し、表示部における光透過率を遮光層の他の部分よりも向上させている。そのため、従来は、たとえば透明領域が形成される前の半製品を大量にストックしておくといった作りだめができないため、遮光層のうちキートップが配置される側とは反対側からレーザエッチングして透明領域を形成し、その後印刷等の工程を経て操作スイッチ用部材を形成していた。また従来においては、各国の言語等に応じたパターンに対応する表示部を、ガスや煤の発生を抑えつつ形成することが困難である。特に、ガスはキートップの操作面側の膨れとなって認識され、煤は表示部の汚れとなって認識され、両方とも不良の原因となる。しかしながら、遮光層がカーボンおよび酸化鉄のうちの少なくとも1つを材料として含む場合よりも、ガスおよび煤のうちの少なくとも1つの発生を抑える材質から形成されているので、表示部を形成するために所定の波長のレーザ光を照射してもガスおよび煤の発生が抑えられる。それにより、従来必要とされていた、レーザ光の照射の後に、金型を用いて、キートップの操作面の膨らみを、操作面側とは反対側の面側(非操作面側)に押し込める工程が不要となる。また、煤を除去する工程も不要となる。
【0024】
それにより、操作スイッチ用部材として必要な層が積層された半製品を準備しておけば、操作スイッチ用部材を用いた電子機器等の製品を組み立てるユーザからの要求があった場合、レーザ加工を実施するだけで、各地域の言語等に対応した表示部が形成された操作スイッチ用部材をユーザに出荷できる。すなわち、本実施形態の操作スイッチ用部材は、ユーザからの要求に応じて短期間で製造して出荷することが可能である。また、レーザ加工のみで完成品となる半製品は、レーザ加工により、如何様な地域にも対応した表示部を形成できる。このため、見込み生産によるレーザ加工済みの完成品をストックしておく場合と比べて、ストックされた半製品をレーザ加工して出荷する場合では、在庫リスクを非常に小さくすることができる。
【0025】
また、地域の言語等に対応した表示部は、後にレーザ加工によって形成可能となるため、その表示部の存在しない半製品を一度に大量に生産することが可能となる。それにより、生産効率を大きく向上させることが可能となる。
【0026】
図1は、本実施形態の操作スイッチ用部材の一例を示す模式断面図であり、最も基本的な層構成を示したものである。なお、以下の説明においては、必要に応じて、キートップ20の操作面側を表面側、それとは反対側を裏面側として説明するが、キートップ20以外の各層においても、表面と裏面の関係は同様である。
【0027】
図1に示す操作スイッチ用部材10A(10)は、キートップ20の非操作面20B上に、隠蔽層30、遮光層40が、この順に積層された層構成を有する。図1(A)に示すように、所定の波長のレーザ光の照射前には、遮光層40には表示部42が形成されていないものの、図1(B)に示すように、所定の波長のレーザ光の照射後には、表示部42が形成される。表示部42は、遮光層40の一部の領域であるが、この表示部42は、可視光領域の光透過率が遮光層40の他の部分よりも高く、それによって透明性が付与されている。
【0028】
また、遮光層40の裏面側には、回路基板Pが配置され、この回路基板Pには、可視光領域の所定の波長の光を出射可能な光源Lが配置されている。また、回路基板Pには、ドーム状部材M、固定接点(不図示)、および導電部(不図示)が配置されている。たとえば金属等の導電部材からなるドーム状部材Mは、逆碗状に配置され、回路基板Pの固定接点(不図示)と接している。また、遮光層40のうち、ドーム状部材Mと対向する部位には、押圧子Sが設けられている。押圧子Sは遮光層40に対して一体的に設けられていても良いが、別体的に設けられていても良い。
【0029】
このような構成により、キートップ20の操作面20A側が押し込まれると、押圧子Sがドーム状部材Mを押し込み、ドーム状部材Mを座屈させる。それにより、回路基板Pの表側の面において、ドーム状部材Mの内側に配置されている導電部(不図示)と、ドーム状部材Mとが導通状態になり、スイッチがONになる。一方、キートップ20の押し下げを解除すると、ドーム状部材Mの復元力により、導電部(不図示)と、ドーム状部材Mとが非導通状態になる。すなわち、スイッチがOFFになる。
【0030】
また、スイッチのON/OFFと同期せずに、またはスイッチのON/OFFとは同期して、光源Lが点灯可能となっている。光源Lが点灯した場合においては、ユーザは、表示部42の輪郭形状によって、所定のデザインを視認可能となる。なお、操作スイッチ用部材10A(10)は、光源Lおよびドーム状部材Mを備える回路基板Pを有しないものであるが、かかる回路基板Pを有するものとしても良い。また、操作スイッチ用部材10A(10)の概念には、上述の押圧子Sが含まれないものとしても良く、含まれるものとしても良い。
【0031】
ここで、光源Lが点灯しなく、操作スイッチ用部材10A(10)の外部から光が照射される状態(デイライト下の状態)において、ユーザがその操作面20A側(表面側)から視認可能な形状を図2(A)に示す。また、光源Lが点灯した状態(バックライト下の状態)において、ユーザがその操作面20A側(表面側)から視認可能な形状を図2(B)に示す。図2(A),(B)から明らかなように、光源Lが点灯するバックライト下では、光源Lが点灯しないデイライト下では視認できない(視認が困難な)表示部42(ハッチングにて示す部分)を視認可能となっている。
【0032】
なお、操作面20Aの耐傷性の確保や、各部材・層間の接着性確保などの観点から、図1に示す操作スイッチ用部材10Aに対して、必要に応じてさらにその他の層を設けることができる。以下、それについて説明する。また、以下の各図に基づく説明においては、説明の簡略化のため、所定の波長のレーザ光が照射されて、表示部42が形成されたものについて説明するものとする。
【0033】
図3は、本実施形態の操作スイッチ用部材の一例を示す模式断面図である。なお、図3中、図1に示すものと同様のものについては同じ符号が付してある。ここで、図3に示す操作スイッチ用部材10B(10)は、保護層50と、キートップ20と、隠蔽層30と、遮光層40と、接着層60と、ベースシート70と、がこの順に積層された層構成を有している。上述の保護層50は、キートップ20の操作面20Aを被覆して、キートップ20を保護する役割を有していて、透明性を有する材質から形成されている。この保護層50は、キートップ20の操作面20Aと側面20Cとを覆っている。また、接着層60は、ベースシート70を遮光層40に接着させる役割を有している。
【0034】
図3に示す操作スイッチ用部材10B(10)を視認すると、図2に示した状態と同様となる。すなわち、光源Lが点灯しないデイライト下の状態においては、ユーザがその操作面20A側(表面側)からは、図2(A)に示す状態を視認可能となる。また、光源Lが点灯したバックライト下の状態においては、ユーザは図2(B)に示す状態を視認可能となる。
【0035】
図4は、本実施形態の操作スイッチ用部材の他の例を示す模式断面図である。なお、図4中、図3に示すものと同様のものについては同じ符号が付してある。ここで、図4に示す操作スイッチ用部材10C(10)は、図3に示す操作スイッチ用部材10Bに対して、以下の点が相違している。すなわち、操作スイッチ用部材10C(10)においては、隠蔽層30と遮光層40の間には、下地緩衝層80(アンダーコート)が設けられている。また、遮光層40と接着層60との間には、中間緩衝層90(ミドルコート)が設けられている。さらに、中間緩衝層90のうち遮光層40とは反対の面側には、着色層100が設けられている。
【0036】
上述のうち、下地緩衝層80は、遮光層40を視認するために透明性を有している。同様に、中間緩衝層90も、着色層100を視認するために透明性を有している。下地緩衝層80を隠蔽層30と遮光層40との間に設ける場合、隠蔽層30と遮光層40との間の密着性を向上させることができる。同様に、中間緩衝層90を遮光層40と着色層100との間に設ける場合、遮光層40と着色層100との間の密着性を向上させることができる。
【0037】
なお、図4に示す操作スイッチ用部材10C(10)の視認に関しては、図2に示すものと同様であるため、その説明は省略する。
【0038】
図5は、本実施形態の操作スイッチ用部材の他の例を示す模式断面図である。なお、図4中、図3に示すものと同様のものについては同じ符号が付してある。ここで、図4に示す操作スイッチ用部材10D(10)は、図3に示す操作スイッチ用部材10Bに対し、隠蔽層30には、着色部32が設けられている点で相違している。
【0039】
着色部32は、隠蔽層30のうちキートップ20側の部分に設けられている。ただし、着色部32は、隠蔽層30のうちキートップ20側の部分に設けられる構成には限られず、保護層50のうちキートップ20側の部分に設けるように構成しても良い。この着色部32は、隠蔽層30を貫通せずに設けられている。すなわち、着色部32の裏面側(遮光層40側)にも隠蔽層30が存在している。そのため、着色部32を介して見ても、その着色部32の裏面側(遮光層40側)は視認され難い状態となっている。一方、着色部32は、隠蔽層30の他の部分と同様に、光源Lが点灯する場合において、表示部42を透過した光は着色部32を透過するように設けられている。
【0040】
なお、着色部32は、隠蔽層30の他の部分と区別可能なように着色された部分である。そのため、光源が消灯している状態においては、ユーザは、着色部32から構成される所定のデザインを視認可能となる。ただし、着色部32は、隠蔽層30の他の部分に対して、着色によって区別可能とする場合には限られず、着色部32が隠蔽層30の他の部分と同色であっても、着色部32における光の吸収・反射が他の部分と異なることによって、隠蔽層30の他の部分と区別可能であれば、ここでいう着色部32に含まれる。
【0041】
なお、図5における操作スイッチ用部材10D(10)においては、着色部32は、操作スイッチ用部材10Dの厚み方向(操作面20Aから回路基板Pに向かう方向;図5におけるZ方向)において、1つの表示部42と同じ位置に設けられている。なお、このような同じ位置には限られず、操作面20A側から操作スイッチ用部材10D(10)を見たときに、着色部32が表示部42を完全に覆う状態に設けても良い。
【0042】
図5に示す操作スイッチ用部材10D(10)を視認すると、図6に示す状態となる。すなわち、光源Lが点灯しないデイライト下の状態においては、ユーザがその操作面20A側(表面側)からは、図6(A)に示す状態を視認可能となる。すなわち、着色部32が視認できるが、表示部42は視認できない(視認が困難な)状態となる。一方、光源Lが点灯したバックライト下の状態においては、ユーザは図6(B)に示す状態を視認可能となる。すなわち、図6(B)においては、着色部32に対しては、表示部42を透過した光が透過するため、その着色部32(図6(B)の左側の表示部42)を視認可能となる。それに加えて、隠蔽層30によってデイライト下では視認ができない(視認が困難な)状態の表示部42(図6(B)における右側の表示部42)が視認可能となる。なお、図6(B)においては、着色部32と図6(B)における左側の表示部42とが厚み方向において同じ位置にあるため、デイライト下とバックライト下では着色部32として視認できる形状は変わらないが、表示部42と着色部32の重なりにより、視認できる色合い等が変化するものとしても良い。
【0043】
図7は、本実施形態の操作スイッチ用部材の他の例を示す模式断面図である。なお、図7中、図6に示すものと同様のものについては同じ符号が付してある。図7に示す操作スイッチ用部材10E(10)は、図6に示す操作スイッチ用部材10D(10)に対して、着色部32と表示部42とが設けられている位置が異なるものである。すなわち、図7に示す操作スイッチ用部材10E(10)においては、着色部32は、操作スイッチ用部材10Eの厚み方向(Z方向)において、表示部42と同じ位置には存在しない。
【0044】
このような操作スイッチ用部材10E(10)を視認すると、図8に示す状態となる。すなわち、光源Lが点灯しないデイライト下の状態においては、ユーザがその操作面20A側(表面側)からは、図8(A)に示す状態を視認可能となる。すなわち、着色部32が視認できるが、表示部42は視認できない(視認が困難な)状態となる。一方、光源Lが点灯したバックライト下の状態においては、ユーザは図8(B)に示す状態を視認可能となる。すなわち、着色部32は厚み方向(Z方向)において表示部42と同じ位置にない(重なっていない)ため、光源Lから出射される光は遮光層40で遮光され、着色部32に到達しない。そのため、着色部32を視認できない(視認が困難な)状態となる。一方、バックライト下の状態では、光源Lから出射される光は表示部42を透過し、さらには隠蔽層30を透過する。それによって、隠蔽層30によってデイライト下では視認ができない(視認が困難な)状態の表示部42が視認可能となる。
【0045】
図9は、本実施形態の操作スイッチ用部材の他の例を示す模式断面図である。なお、図9中、図5に示すものと同様のものについては同じ符号が付してある。図9に示す操作スイッチ用部材10F(10)は、図5に示す操作スイッチ用部材10D(10)に対して、積層順が異なったものとなっている。すなわち、操作スイッチ用部材10F(10)では、保護層側から裏面側(回路基板P側)に向かって、保護層50、隠蔽層30、下地緩衝層80(アンダーコート)、遮光層40、中間緩衝層90(ミドルコート)、着色層100、下地緩衝層80、キートップ20、接着層60、ベースシート70の順に積層されている。
【0046】
すなわち、キートップ20の操作面20A側に、保護層50、隠蔽層30、下地緩衝層80(アンダーコート)、遮光層40、中間緩衝層90(ミドルコート)、着色層100および下地緩衝層80が、この順で積層されている。そのため、キートップ20の操作面20A側において、所望するデザイン(加飾)を施した構成となっている。
【0047】
なお、隠蔽層30における着色部32と、遮光層40における表示部42の厚み方向(Z方向)における位置関係は、図5に示す操作スイッチ用部材10D(10)と同様であるため、その説明は省略する。
【0048】
また、保護層50は、キートップ20の操作面20A側と、側面20Cとを覆っている。図9に示す構成では、キートップ20のうち操作面20Aから離れる側には、上述した保護層50から下地緩衝層80までが積層されているため、保護層50の表面側(回路基板Pとは反対側の面側)と、保護層50から下地緩衝層80までの各層の側面を覆い、さらに側面20Cを覆っている。
【0049】
なお、図9に示す操作スイッチ用部材10F(10)の視認に関しては、図6に示すものと同様であるため、その説明は省略する。
【0050】
以上に説明した本実施形態の操作スイッチ用部材10の作製に際しては、キートップ20の非操作面20B側に、隠蔽層30を形成する隠蔽層形成工程と、隠蔽層30に対してキートップ20とは反対の裏面側に、キートップ20の操作面20A側から所定の波長のレーザ光が照射された際に、光透過性を照射前よりも向上させると共に、カーボンおよび酸化鉄のうちの少なくとも1つを材料として含む場合よりも、ガスおよび煤のうちの少なくとも1つの発生を抑える非透光性の遮光層40をIn、Sn、In−Sn合金またはAlの物理気相成長法またはスパッタリングによって形成する遮光層形成工程と、を少なくとも実施する。
【0051】
なお、操作スイッチ用部材10の層構成に応じて、これら3つの工程の他に、キートップ20の操作面20A側に保護層50を形成する保護層形成工程を実施することが好ましい。また、隠蔽層30の裏面側または遮光層40の表面側に、下地緩衝層80を形成する下地緩衝層形成工程を実施することが好ましい。また、遮光層40の裏面側に、中間緩衝層90を形成する中間緩衝層形成工程を実施することが好ましい。また、中間緩衝層90の裏面側に着色層100を形成する着色層形成工程を実施することが好ましい。また、着色層100の裏面側に接着層60を形成する接着層形成工程を実施することが好ましい。
【0052】
そして、隠蔽層形成工程と遮光層形成工程とを少なくとも経た後に、キートップ20の操作面20A側から、遮光層40の一部の領域(すなわち、表示部42となりうる部分)に対して、所定の波長のレーザ光を照射するレーザ照射工程を行う。すると、遮光層40のうちレーザ光の照射部位には熱エネルギが与えられ、その熱エネルギが与えられることにより遮光層40の照射部位が変質し、その変質によって光透過率が変化して、透明性が付与される。それによって表示部42が形成される。
【0053】
ここで、遮光層40は、所定の波長のレーザ光が照射された際に、光透過性を照射前よりも向上させる材質であって、カーボンおよび酸化鉄のうちの少なくとも1つを材料として含む場合よりも、ガスおよび煤のうちの少なくとも1つの発生を抑える材質から形成されている。そのため、所定の波長のレーザ光の照射部位においては、ガスおよび煤の発生を抑えつつ変質させて、表示部42を形成することが可能となっている。
【0054】
以上のようにして、可視光領域の光の透過率が向上して、透明性が付与された表示部42が形成される。なお、このレーザ照射工程は、操作スイッチ用部材10を作製する際の実質的な最終工程であり、レーザ照射工程の実施直前の状態(半製品の状態)では、操作スイッチ用部材10として必要な層構成は完成した状態にある。
【0055】
また、操作スイッチ用部材10の作製に際しては、さらに次のようにしても良い。この様子を、図10に示す。すなわち、図1、図3〜図5、図7または図9のいずれかの層構成を有する操作スイッチ用部材10の半製品H(レーザ加工前のもの)を作製した後に、この半製品Hを、図10(A)に示すように絞り金型装置200の金型凸型201と金型凹型202の間に設置する。その後に、図10(B)に示すように、金型凸型201と金型凹型202とを突き合わせ、それらを突き合わせたときに形成される空間(キャビティ)の形状に倣うように半製品Hを絞り加工する。この絞り加工によって、半製品Hは金型凹型202に向かって突出する突出部H1を有する状態となり、突出部H1の裏側が窪み部H2となる。
【0056】
次に、金型凸型201と金型凹型202との突き合わせを開放した後に、図10(C)に示すように、射出成型機210を用いて、窪み部H2に熱可塑性樹脂等の樹脂を充填する。すると、たとえば所定時間経過して熱可塑性樹脂等の樹脂が硬化すると、図10(D)に示すように、窪み部H2に樹脂が固化したコア部H3を有する操作スイッチ用部材10を作製することが可能となる。すなわち、図10に示すような各プロセスを経ることにより、平面形状ではなく三次元形状の操作スイッチ用部材10を作製することが可能となり、当該三次元形状の操作スイッチ用部材10に加飾を施すことが可能となる。
【0057】
また、操作スイッチ用部材10の作成に際しては、さらに次のようにしても良い。すなわち、図1、図3〜図5、図7または図9のいずれかの層構成を有する操作スイッチ用部材10の半製品H(レーザ加工前のもの)を作製した後に、この半製品Hを、図11に示すようなモールドプリント220に、接着層60を介して接着するようにしても良い。ここで、モールドプリント220には凹凸が設けられることで(図11では凸部221が設けられている)、三次元形状に形成されている。そのため、図11に示すようにモールドプリント220に半製品Hを接着させることにより、平面形状ではなく三次元形状の操作スイッチ用部材10を作製することが可能となり、当該三次元形状の操作スイッチ用部材10に加飾を施すことが可能となる。
【0058】
ここで、操作スイッチ用部材10を作成する場合、まずキートップ20の非操作面20B上に、隠蔽層30を形成する。隠蔽層30は、後述するような所定の成分を、たとえばスクリーン印刷、グラビア印刷、パッド印刷等のような印刷、またはスプレー塗装、カーテンコーター塗装やロールコーター塗装等のような各種のコーター塗装により、非操作面20B上に形成される。
【0059】
その後に、隠蔽層30上に必要に応じて下地緩衝層80を形成する。そして、隠蔽層30上、または下地緩衝層80上に、遮光層40を形成する。ここで、遮光層40は、In(インジウム)、Sn(錫)、In−Sn合金(インジウム錫合金)またはAl(アルミニウム)を、たとえばスパッタリングに代表されるPVD法(Physical Vapor Deposition;物理気相成長法)によって薄膜状に形成される。なお、プラズマCVDに代表されるCVD法(Chemical Vapor Deposition)により、PVD法と同等の薄膜状の遮光層40を形成するようにしても良い。
【0060】
そして、遮光層40を形成した後に、必要に応じて中間緩衝層90、着色層100を形成した積層体を得る。次に、この積層体のうちキートップ20が位置する側とは反対側の面に対して、ベースシート70を接着して接着層60を形成することで、少なくともキートップ20、隠蔽層30、遮光層40がこの順に積層された半製品を得る。なお、隠蔽層30の形成に前後させて、キートップ20の操作面20A側には、必要に応じて保護層50を形成するようにしても良い。
【0061】
そして、この半製品のうちキートップ20が設けられた側から所定の波長のレーザ光を照射する。すると、所定の波長のレーザ光は、キートップ20および隠蔽層30を透過し、遮光層40の一部の領域に照射・吸収される。そして、レーザ光が照射・吸収される領域においては、その部位が変質し、その変質によって透明性が付与された表示部42が形成される。
【0062】
レーザ加工する際に利用する所定波長のレーザ光としては、(1)隠蔽層30は透過するものであること(すなわち隠蔽層30ではほとんど吸収されないこと)、(2)遮光層40では吸収されるものであること、(3)照射される遮光層40においてガスや煤の発生を抑えるものであること、が少なくとも必要である。このような波長のレーザ光(所定波長のレーザ光)としては、赤外域のレーザ光である、たとえば1064nmの中心波長を持つYAGレーザ、YVO4 レーザなどを挙げることができる。
【0063】
ただし、所定の波長のレーザ光としては、上述のYAGレーザ、YVO4 レーザに限るものではなく、上述の(1)〜(3)の条件を満たす種々のレーザ光を使用することが可能である。
【0064】
−キートップ−
次に、図1、図3〜図5、図7および図9に例示した本実施形態の操作スイッチ用部材10の各層の詳細についてより具体的に説明する。キートップ20は、図1等に例示したように1つのキーとして認識できる形状、または、複数のキーとして認識できる形状(1枚のシートに個々のキー部分に対応する複数の凸部等を設けた形状)を成すのであればその形状や材質は特に限定されないが、一般的には、断面形状が半円形や半楕円形、台形等などのブロック状樹脂が用いられ、このブロック状樹脂は1枚のベースシート70の片面に複数個設けられたものでもよい。キートップ20は、たとえば、射出成型や、UV硬化型樹脂を用いた型転写などにより作製することができる。
【0065】
キートップ20は、上述した所定の波長のレーザ光を透過させる材質から構成される必要があり、そのようなキートップ20の作製に用いられる材料(樹脂材料)としては、例えば、PC樹脂(ポリカーボネート樹脂)やABS樹脂(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合樹脂)、PMMA樹脂(ポリメチルメタクリレート樹脂)、PBT樹脂(ポリブチレンテレフタレート樹脂)、PA樹脂(ポリアミド樹脂)、PVC樹脂(ポリ塩化ビニール樹脂)、エポキシ樹脂などが挙げられる。これらの中で、PVC樹脂(ポリ塩化ビニール樹脂)、エポキシ樹脂は、可塑剤を添加する分量を変化させることにより、硬度を自由に変更することが可能となっている。また、UV硬化型樹脂としてはウレタンアクリレートなどが挙げられる。また、キートップ20は透光性を有していることが必要である。ここで、本願明細書において、「透光性」とは、可視光域の波長(約400〜800nm)の光に対する透過率が5%以上であることを意味する。なお、透過率は10%以上であることが好ましく、20%以上であることがより好ましい。
【0066】
−隠蔽層−
隠蔽層30は、光源Lが点灯しないデイライト下において、それよりも裏面側に積層される層を隠蔽することが必要であるが、特に遮光層40のうちのレーザ光による照射部分である表示部42を視認させ難くする性質が必要である。また、隠蔽層30は、光源Lが点灯するバックライト下において、その光源Lから出射される光を透過させ、表示部42を視認させることが必要である。
【0067】
そのようなものとしては、所定の波長のレーザ光に対する反応性の高い、酸化鉄、炭素質紛体といった無機顔料・無機フィラーを含まないものが挙げられる。また、隠蔽層30は、所定の波長のレーザ光に対する反応性の高い酸化鉄を含むものであっても、その含有割合が0重量%より大きく30重量%以下であることが必要であり、10重量%以下であることが好ましい。また、隠蔽層30は、所定の波長のレーザ光に対する反応性の高い炭素質紛体を含むものであっても、その含有割合が0重量%より大きく30重量%以下であることが必要であり、10重量%以下であることが好ましい。
【0068】
また、隠蔽層30としては、次に述べる有機顔料、すなわちPigment Blue 15(透過色:青〜緑)、Pigment Red 149(透過色:赤)、Pigment Red 144(透過色:赤)、Pigment Yellow 12(透過色:黄)、Pigment Black 1(透過色:黒)、Pigment Violet 23(透過色:紫)、Pigment Orange 5(透過色:橙)、Pigment Green 7(透過色:緑)を含むものが好適である。なお、有機顔料の含有割合は、20重量%〜90重量%の範囲内にあれば良く、40重量%〜80重量%の範囲内にあることが特に好ましい。
【0069】
また、染料も使用可能である。なお、これらの有機顔料としては、アゾ系のもの、多環系のものが好適である。
【0070】
なお、上述した無機顔料、無機フィラー、有機顔料、有機染料等は、1つの層(単一層)内に、列記した各成分の複数を配合しても良い。また、それぞれ異なる単一の成分から構成される層を複数重ねることにより、隠蔽層30を形成しても良い。また、これらの各成分を適宜選択し、あるいは配合成分を調整することにより、光源Lにより照光される際の隠蔽層30の色合い(意匠色)を自由に設定することも可能である。
【0071】
−遮光層−
遮光層40は、上述したように、カーボンおよび酸化鉄のうちの少なくとも1つを材料として含む場合よりも、ガスおよび煤のうちの少なくとも1つの発生を抑える非透光性の遮光層40をIn、Sn、In−Sn合金またはAlを、たとえばスパッタリングに代表されるPVD法によって形成する。
【0072】
ここで、遮光層40は、金属光沢感が付与された、金属の連続膜(いわゆるベタ膜)となる。この場合の遮光層40の膜厚は、可視光領域の光に対する遮光性を備えると共に、副生成物の発生を抑えるものであれば特に限定されない。しかしながら、遮光性を備える金属の連続膜(ベタ膜)となると共に、所定の波長のレーザ光の照射によって透明性を備え、さらに副生成物の発生を抑えつつ表示部42を良好に形成可能であることを考慮すると、通常は、0.02μm〜1.5μmの範囲内が好ましく、0.02μm〜0.3μmの範囲内がより好ましい。膜厚が0.02μm以上とすることにより、遮光性を十分に備えるものとなる。また、膜厚を1.5μm以下程度とする場合には、所定の波長のレーザ光の照射によって、十分な透明性が付与されることとなる。
【0073】
なお、遮光層40の膜厚が薄い場合には、上述のように可視光領域の光に対する遮光性が十分でないものとなる。一方、遮光層40の膜厚が厚い場合には、レーザ光の照射に際して副生成物の発生の影響があると考えられる。たとえば、上述のように、煤が発生する量が多くなったり、ガスの発生量が多くなる、という不具合がある、と考えられる。そこで、遮光層40の膜厚は、上述の範囲内とすることが好ましい。なお、遮光層40の金属の膜が気化してもその後常温に冷却されると、ガスそのものはほとんどなくなると考えられるが、一度ガスの発生により操作スイッチ用部材10の内部に空洞が形成され、それが大きくなると、冷却しても、その空洞がない状態に戻らなくなる、とも考えられる。そのため、ガスの発生は少ない方が好ましく、そのために遮光層40の膜厚は上記の範囲内であることが好ましい。
【0074】
−保護層−
保護層50の形成方法は特に限定されないが、たとえば、オフセット印刷、スクリーン印刷、パッド印刷などの公知の印刷方法、または、公知の塗装方法を利用して形成できる。保護層50は、キートップ20と同様の透光性を有し、かつ、操作スイッチ用部材10表面の機械的化学的耐久性を向上させることができるものであれば公知の材料を利用できる。保護層50の形成に際して、たとえば、ウレタンアクリレート等の透明な樹脂材料を溶剤に溶解した溶液や、公知のハードコート剤などが利用できる。なお、保護層50の厚みとしては、機械的・化学的耐久性を向上の確保等の実用上の観点から、5μm〜30μmの範囲内が好ましく、10μm〜25μmの範囲内がより好ましい。
【0075】
−接着層−
接着層60は、接着剤の硬化によって形成されるもの、両面テープによって構成されるもののいずれであっても良い。接着剤としては、たとえば、シアノアクリレート系接着剤、エポキシ系接着剤、アクリル系接着剤、ウレタン系接着剤、シリコーン系接着剤、紫外線硬化型接着剤、可視光硬化型接着剤を利用することができる。
【0076】
また、上述のように、接着層60としては両面テープを用いることもできる。両面テープは、基材の両面に粘着剤が塗布されたものであるが、基材としては、紙、布、PET等の樹脂を用いることができる。また、粘着剤としては、アクリル系、シリコーン系、ゴム系等のものを用いることができる。
【0077】
−ベースシート−
ベースシート70は、予めフィルム状に形成されたシートを用いることができ、キートップ20側の部材と接着される面と反対側の面に、予め押圧子(凸部)が設けられていてもよい。押圧子を設けた場合、操作スイッチ用部材10は、押釦スイッチ用部材として用いることができる。このベースシート70を構成する材料としては、たとえば、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)などを用いることができる。
【0078】
−下地緩衝層−
下地緩衝層80は、たとえば、オフセット印刷、スクリーン印刷、パッド印刷などの公知の印刷方法、または、公知の塗装方法を利用して形成できる。この下地緩衝層80は、キートップ20と同様の透光性を有しており、このような透光性が得られる透明樹脂材料を溶剤に溶解させた溶液を用いて形成される。かかる下地緩衝層80としては、各種の硬質プラスチックを採用することが可能であり、そのような硬質プラスチックとしては、PC樹脂(ポリカーボネート樹脂)、PMMA樹脂(ポリメチルメタクリレート樹脂)、PVC樹脂(ポリ塩化ビニール樹脂)、エポキシ樹脂などが挙げられる。これらの中で、PVC樹脂(ポリ塩化ビニール樹脂)、エポキシ樹脂は、可塑剤を添加する分量を変化させることにより、硬度を自由に変更することが可能となっている。
【0079】
また、下地緩衝層80は、未硬化の紫外線硬化型樹脂をコーティング後、紫外線を照射して硬化することにより形成したり、熱硬化型樹脂をコーティングした後に加熱硬化させることにより形成することができる。紫外線硬化型樹脂としては、光重合型プレポリマーとモノマーを含む主剤に光重合開始剤等を添加したものを用いることができる。また、紫外線硬化型樹脂としては、上記の他に、必要に応じて、充填剤、老化防止剤、反応促進剤、反応抑制剤、安定剤、着色剤等を配合しても良い。紫外線硬化型樹脂の主剤としては、アクリル系、メタクリル系、スチレン系、不飽和ポリエステル系、ポリエステルポリオール系、ポリエステルエーテル系、ウレタン系、シリコーン系、エポキシ系またはフェノール系等のモノマーおよび/またはオリゴマー、これらの誘導体のモノマーおよび/またはオリゴマー、もしくはこれらの複数種を混合したものを用いることができる。また、熱硬化性樹脂としては、たとえば、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂などを用いることができる。
【0080】
−中間緩衝層−
中間緩衝層90は、たとえば、未硬化の紫外線硬化型樹脂をコーティング後、紫外線を照射して硬化することにより形成したり、熱硬化型樹脂をコーティングした後に加熱硬化させることにより形成することができる。紫外線硬化型樹脂としては、光重合型プレポリマーとモノマーを含む主剤に光重合開始剤等を添加したものを用いることができる。また、紫外線硬化型樹脂としては、上記の他に、必要に応じて、充填剤、老化防止剤、反応促進剤、反応抑制剤、安定剤、着色剤等を配合しても良い。紫外線硬化型樹脂の主剤としては、アクリル系、メタクリル系、スチレン系、不飽和ポリエステル系、ポリエステルポリオール系、ポリエステルエーテル系、ウレタン系、シリコーン系、エポキシ系またはフェノール系等のモノマーおよび/またはオリゴマー、これらの誘導体のモノマーおよび/またはオリゴマー、もしくはこれらの複数種を混合したものを用いることができる。また、熱硬化性樹脂としては、たとえば、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂などを用いることができる。
【0081】
−着色層−
着色層100においては、その形成方法は特に限定されないが、たとえば、オフセット印刷、スクリーン印刷、パッド印刷などの公知の印刷方法が利用できる。ここで、着色層100は、主に色材成分および樹脂成分から構成され、これらの成分を溶媒に溶解させたインクを用いて形成される。ここで色材成分としては、公知の顔料や染料が利用でき、この他に、金属薄片、フレーク状ガラスの表面に金属および/または金属酸化物をコーティングした光輝性無機顔料なども利用できる。なお、着色層100の厚みとしては、表示部42の色濃度を確保してデザイン性、視認性を高める等の実用上の観点から、1.0μm以上が好ましく、1.5μm以上が好ましい。また、着色層100の厚みの上限は、特に限定されないが、実用上は10μm以下であることが好ましい。また、本実施の形態の着色層100は透光性を有する。そのため、着色層100の可視光域の光の透過率は、10%〜60%の範囲内が好ましい。
【0082】
また、着色層100は、上述した隠蔽層30と同じ構成とすることもできる。つまり、着色層100としては、上述の隠蔽層30と同じインクを用いて形成しても良く、さらには着色層100の厚みも上述の隠蔽層30と同じ厚さとしても良い。着色層100をこのように形成する場合には、隠蔽層30が奏する色合いがより強調される状態となる。
【0083】
(キーパネルおよび電子機器)
本実施形態のキーパネルは、少なくとも本実施形態の操作スイッチ用部材10を備えたものである。ここで、本願明細書において、「キーパネル」とは操作スイッチを有する操作盤のことである。キーパネルは、キー部分を押し込むことで操作を行うタイプのキーパネルであってもよいし、キー部分をタッチすることで操作を行うタイプのキーパネル(いわゆるタッチパネル)であってもよい。また、キーパネルは、スイッチ操作による操作対象となる電子機器本体と一体に設けられたものであってもよいし、スイッチ操作による操作対象となる電子機器本体と物理的に分離して設けられたものであってもよい。なお、後者の場合は、キーパネルと電子機器とが、有線接続されるタイプであってもよいし、キーパネルと電子機器とが赤外線通信などによって信号のやり取りが可能なワイヤレスタイプであってもよい。また、本実施形態の電子機器は、上述したキーパネルを電子機器本体と一体的に有するものであればその用途は特に限定されない。
【0084】
そのような電子機器の一例を、図12に示す。図12は、本実施形態の電子機器の一例を示す外観図であり、具体的には携帯電話について示す図である。図12に示す携帯電話300は、ディスプレイ部分302と本実施形態の操作スイッチ用部材10を備えたキーパネルを有する本体部分304とから構成されている。
【実施例】
【0085】
以下に本発明を、実施例を挙げてより具体的に説明するが本発明は以下の実施例にのみ限定されるものではない。また、以下の説明においては、キートップ20の操作面20Aに保護層50を形成する場合について説明しているが、実施例1から比較例1においては、キートップ20の操作面20Aに保護層50を形成する場合と、保護層50を形成しない場合の双方について、評価を行った。
【0086】
(実施例1)
図1に示す層構成を有する操作スイッチ用部材10Bを以下の手順で作製した。まず、キートップ20(ポリカーボネート樹脂(PC樹脂)製、厚み0.5mm)の操作面20Aに、紫外線硬化型アクリル系樹脂(UV樹脂)を塗装し、紫外線を照射することで厚み10.0μmの保護層50を形成した。次に、キートップ20の非操作面20B上に、スクリーン印刷により、C.I.ピグメントブルー15とC.I.ピグメントブラック1を含有するインクによって隠蔽層30を形成した。なお、インクの溶剤はアクリル樹脂であり、形成された隠蔽層30の厚みは5μmであった。また、この隠蔽層30の光の透過率は7%であり、透過色は青色であり、反射色は黒色であった。
【0087】
次に、この隠蔽層30上に紫外線硬化型アクリル系樹脂(UV樹脂)を塗装し、紫外線を照射することで厚み10.0μmの下地緩衝層80(アンダーコート)を形成した。次に、この下地緩衝層80上に、PVDにより、Alからなる遮光層40を形成した。このときの遮光層40の厚みは0.1μmであった。さらに、遮光層40上に紫外線硬化型アクリル系樹脂(UV樹脂)を塗装し、紫外線を照射することで厚み10.0μmの中間緩衝層90(ミドルコート)を形成した。
【0088】
続いて、この中間緩衝層90上に着色層100を形成した。この着色層100は、上述の隠蔽層30と同じインクを用いて形成しており、形成された着色層100の厚みおよび光の透過率も隠蔽層30と同様であった。さらに、着色層100に対して、シアノアクリレート系接着剤の塗布による接着層60を介してベースシート70を接着した。このベースシート70は、厚みが0.5mmのシリコーンゴムを材質としている。また、シアノアクリレート系接着剤の塗布による接着層60の厚みは50.0μmであった。
【0089】
続いて、この半製品のキートップ20側から、レーザ光を照射して、レーザ加工を行い、表示部42を形成した。これにより図4に示す層構成を有する操作スイッチ用部材10Bを得た。なお、レーザ加工に際しては、レーザ光源として、YVO4 レーザ(波長1064nm)を用い、レーザパワーを3W、ビーム径を0.06mmに設定した。
【0090】
(実施例2)
実施例2では、隠蔽層30と遮光層40と着色層100以外は、実施例1と同様となっている。ここで、実施例2においては、キートップ20の非操作面20B上へのスクリーン印刷を行って隠蔽層30を形成したが、このスクリーン印刷においては、C.I.ピグメントレッド149とC.I.ピグメントブラック1を含有するインクによって隠蔽層30を形成した。なお、この隠蔽層30の厚みは5μmであった。また、この隠蔽層30の光の透過率は7%であり、透過色は赤色であり、反射色は黒色であった。なお、着色層100も隠蔽層30と同じインクを用いて形成され、その着色層100の厚みと光の透過率も隠蔽層30と同様となっている。
【0091】
また、実施例2においては、PVDによって、下地緩衝層80上にSnからなる遮光層40を形成した。このときのSnからなる遮光層40の厚みは0.02μmであった。
【0092】
(実施例3)
実施例3では、隠蔽層30と遮光層40と着色層100以外は、実施例1と同様となっている。ここで、実施例3においては、キートップ20の非操作面20B上へのスクリーン印刷を行って隠蔽層30を形成したが、このスクリーン印刷においては、C.I.ピグメントイエロー12とC.I.ピグメントブラック1を含有するインクによって隠蔽層30を形成した。なお、この隠蔽層30の厚みは5μmであった。また、この隠蔽層30の光の透過率は7%であり、透過色は黄色であり、反射色は黒色であった。なお、着色層100も隠蔽層30と同じインクを用いて形成され、その着色層100の厚みと光の透過率も隠蔽層30と同様となっている。
【0093】
また、実施例3においては、PVDによって、下地緩衝層80上にInからなる遮光層40を形成した。このときのInからなる遮光層40の厚みは0.02μmであった。
【0094】
(実施例4)
実施例4では、隠蔽層30と遮光層40と着色層100以外は、実施例1と同様となっている。ここで、実施例4においては、キートップ20の非操作面20B上へのスクリーン印刷を行って隠蔽層30を形成したが、このスクリーン印刷においては、C.I.ピグメントグリーン7とC.I.ピグメントブラック1を含有するインクによって隠蔽層30を形成した。なお、この隠蔽層30の厚みは5μmであった。また、この隠蔽層30の光の透過率は7%であり、透過色は緑色であり、反射色は黒色であった。なお、着色層100も隠蔽層30と同じインクを用いて形成され、その着色層100の厚みと光の透過率も隠蔽層30と同様となっている。
【0095】
また、実施例4においては、PVDによって、下地緩衝層80上にIn−Sn合金からなる遮光層40を形成した。このときのIn−Sn合金からなる遮光層40の厚みは0.02μmであった。
【0096】
(実施例5)
実施例5では、隠蔽層30と遮光層40以外は、実施例1と同様となっている。ここで、実施例5においては、キートップ20の非操作面20B上へのスクリーン印刷を行って隠蔽層30を形成したが、このスクリーン印刷においては、酸化チタンを顔料として含むインクによって隠蔽層30を形成した。なお、この隠蔽層30の厚みは5μmであった。また、この隠蔽層30の光の透過率は7%であり、透過色は白色であり、反射色は白色であった。また、着色層100も隠蔽層30と同じインクを用いて形成され、その着色層100の厚みと光の透過率も隠蔽層30と同様となっている。
【0097】
また、実施例5においては、PVDによって、下地緩衝層80上にAlからなる遮光層40を形成した。このときのAlからなる遮光層40の厚みは0.1μmであった。
【0098】
(比較例1)
比較例1においても、隠蔽層30以外は、実施例1と同様となっている。ここで、比較例1においては、キートップ20の非操作面20B上へのスクリーン印刷を行って隠蔽層30を形成したが、このスクリーン印刷においては、酸化チタンを顔料として含むインクによって隠蔽層30を形成した。なお、この隠蔽層30の厚みは5μmであった。また、この隠蔽層30の光の透過率は7%であり、透過色は黒色であり、反射色は黒色であった。また、着色層100も隠蔽層30と同じインクを用いて形成され、その着色層100の厚みと光の透過率も隠蔽層30と同様となっている。
【0099】
(比較例2)
比較例2においても、遮光層40以外は、実施例1と同様となっている。
【0100】
また、比較例2においては、カーボンを顔料として含むインクにより下地緩衝層40上へスクリーン印刷を行って遮光層40を形成した。このときの遮光層40の厚みは5μmであった。
【0101】
(評価)
各実施例および比較例の操作スイッチ用部材について、いずれも目視で明確に確認できる表示部42が形成されていた。また、各実施例および比較例の操作スイッチ用部材について、遮光性、副生成物の発生について評価した結果を表1に示す。なお、いずれの実施例および比較例の操作スイッチ用部材においても、レーザ光が照射された表示部42は、照明光を透過させるように光透過率が向上していることが確認された。
【0102】
【表1】

【0103】
なお、表1中に示す各評価項目の評価方法および評価基準は以下の通りである。
【0104】
−遮光性−
遮光性については、蛍光灯照明下の室内にて操作スイッチ用部材のキートップ側の面を目視観察して、レーザ光を照射した後においても、隠蔽層30における照射部位が遮光性を有するか否かを評価した。評価基準は以下の通りである。
A:照射部位はレーザ光の照射によっても変わらずに遮光性を有している。
B:変質により遮光性が劣ることは確認できるものの、比較例に対して大幅に低減されて、特に注意しなければ視認できないレベルである。
C:特に注意しなくても変質により遮光性が劣ることが視認できるレベルである。
【0105】
−副生成物の発生−
副生成物の発生については、操作スイッチ用部材のキートップ側を目視観察してガスの発生(膨れの発生)を確認すると共に、煤が発生していないかを目視観察して、レーザ光を照射した後においても、隠蔽層30における照射部位が遮光性を有するか否かを評価した。評価基準は以下の通りである。
A:目視によっては、膨れの発生および煤の発生がほとんど視認できない。
B:膨れの発生および/または煤の発生は僅かに視認できるものの、比較例に対して大幅に低減されて、特に注意しなければ視認できないレベルである。
C:特に注意しなくても膨れの発生および/または煤の発生が視認できるレベルである。
【符号の説明】
【0106】
10、10A〜10F…操作スイッチ用部材
20…キートップ
20A…操作面
20B…非操作面
20C…側面
30…隠蔽層
32…着色部
40…遮光層
42…表示部
50…保護層
60…接着層
70…ベースシート
80…下地緩衝層
90…中間緩衝層
100…着色層
200…金型装置
201…金型凸型
202…金型凹型
210…射出成型機
220…モールドプリント
221…凸部
300…携帯電話
302…ディスプレイ部分
304…本体部分
H…半製品
H1…突出部
H2…部
H3…コア部
L…光源
M…ドーム状部材
P…回路基板
S…押圧子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
隠蔽層と、前記隠蔽層の裏面側に配置される遮光層とを有し、
前記隠蔽層は、所定の波長のレーザ光を透過させる透過性を備える材質から形成されていると共に、透明材質と比較して前記隠蔽層の表面側から前記遮光層を見る場合の視認性を低下させる、
ことを特徴とする操作スイッチ用部材。
【請求項2】
請求項1記載の操作スイッチ用部材であって、
前記遮光層は、前記隠蔽層の前記表面側から前記レーザ光が照射された際に、光透過性を照射前よりも向上させる材質であって、カーボンおよび酸化鉄のうちの少なくとも1つを材料として含む場合よりも、ガスおよび煤のうちの少なくとも1つの発生を抑える材質から形成されていて、
さらに前記隠蔽層の前記表面側からの前記レーザ光の照射によって、前記遮光層における前記レーザ光の照射部位が変質し、その変質によって当該遮光層の他の部分よりも可視光領域での光透過率を向上させる表示部が形成される、
ことを特徴とする操作スイッチ用部材。
【請求項3】
請求項1または2記載の操作スイッチ用部材であって、
前記所定の波長のレーザ光は、1064nmのレーザ光である、
ことを特徴とする操作スイッチ用部材。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の操作スイッチ用部材であって、
前記隠蔽層は、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントブラック1、C.I.ピグメントバイオレット23、C.I.ピグメントオレンジ5、C.I.ピグメントグリーン7のうち、少なくとも1つからなる有機顔料を含む、および/または前記隠蔽層は、当該隠蔽層に含有される酸化鉄と炭素質紛体の合計の含有率が0重量%を超え30%以下である、
ことを特徴とする操作スイッチ用部材。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか1項に記載の操作スイッチ用部材であって、
前記遮光層は、In、Sn、In−Sn合金またはAlによって形成され、その膜厚は0.02μm〜0.3μmの範囲内である、
ことを特徴とする操作スイッチ用部材。
【請求項6】
請求項1から4のいずれか1項に記載の操作スイッチ用部材であって、
前記隠蔽層と前記遮光層との間には、それらの間の密着性を向上させると共に透光性を有する第1の透明樹脂層が設けられていて、
前記遮光層のうち前記裏面側には、色材成分によって着色された着色層が配置され、
前記遮光層と前記着色層との間には、それらの間の密着性を向上させると共に透光性を有する第2の透明樹脂層が設けられている、
ことを特徴とする操作スイッチ用部材。
【請求項7】
請求項1から5のいずれか1項に記載の操作スイッチ用部材を備えることを特徴とするキーパネル。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1つに記載の操作スイッチ用部材を備え、さらに、
前記遮光層のうち前記裏面側には、光源が設けられている、
ことを特徴とする電子機器。
【請求項9】
隠蔽層と、前記隠蔽層の裏面側に配置される遮光層とを有する操作スイッチ用部材を製造する製造方法であって、
前記隠蔽層の表面側に、所定の波長のレーザ光を透過させる透過性を備える材質から形成されていると共に、透明材質と比較して前記隠蔽層の前記表面側から前記遮光層側を見る場合の視認性を低下させる前記隠蔽層を形成する隠蔽層形成工程と、
前記隠蔽層の前記裏面側に、前記隠蔽層の前記表面側から前記レーザ光が照射された際に、光透過性を照射前よりも向上させると共に、カーボンおよび酸化鉄のうちの少なくとも1つを材料として含む場合よりも、ガスおよび煤のうちの少なくとも1つの発生を抑える非透光性の前記遮光層をIn、Sn、In−Sn合金またはAlの物理気相成長法またはスパッタリングによって形成する遮光層形成工程と、
前記隠蔽層の前記表面側から前記遮光層の一部の領域に対してレーザ光を照射して、その照射部位を変質させて前記遮光層の他の部分よりも可視光領域での光透過率を向上させる表示部を形成するレーザ光照射工程と、
を行うことで、操作スイッチ用部材を作製することを特徴とする操作スイッチ用部材の製造方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−30281(P2013−30281A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−163670(P2011−163670)
【出願日】平成23年7月26日(2011.7.26)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】