説明

操作ボタン装置

【課題】操作時にクリック感(操作感)が損なわれることがなく、小スペースで多入力可能に構成した操作ボタン装置を提供する。
【解決手段】操作ボタン装置120は、十字ボタン122とセンターボタン124の押し込み方向側に、アナログスイッチ131と金属ドームシート132の2種類のスイッチを重ねて配置する。そして、操作時に、アナログスイッチ131及び金属ドームシート132が、十字ボタン122のエンボス122a及びカマボコリブ122bや、センターボタン124のエンボス124dによって、ラバー部材等を介さずに押されるように構成する。これにより、同一の押下点において2種類のスイッチ入力がカメラに対して行われるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタルスチルカメラ等の電子機器を操作するための操作ボタン装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタルカメラ等の電子機器は小型化が進む一方で、機器本体に大型の映像出力画面を有する場合が多く、映像出力画面と同一面の操作部材の配置スペースが減少してきている。特に、円弧状にスペースが必要な十字ボタンを配置するのが難しくなってきており、年々その径が小さくなってきている傾向がある。その反対に多機能化が進み、多入力デバイスの必要性が高まってきている。
【0003】
このような現状から、特許文献1では、従来の十字ボタンのような上下左右方向のみの操作だけでなく、右上、右下、左上、左下を加えた8方向の入力が可能な多方向十字ボタンを提案している。また特許文献2では、8方向の入力が可能な多方向十字ボタンに加えて中央のボタンも使用することで、17通りの入力操作を可能にする多入力十字ボタンを提案している。
【0004】
しかしながら、上記特許文献1の多方向十字ボタンでは、多方向の入力を実現するためにスイッチの数を同一面上に増やして対応しているため、配置スペースに余裕がない場合には配置が困難になるという問題点があった。また、上記特許文献2の多方向十字ボタンでは、右スイッチと上スイッチと中央のスイッチの3つのスイッチを同時に押すなどの非常に操作し難いことを要求しており、操作性が著しく低下するという問題点があった。
【0005】
このような問題点を解決するもとして、特許文献3の多入力十字ボタンでは、複数のスイッチを操作部材の押し込み方向に重ねることで、スイッチの配置スペースが増大しないようにしている。即ち、この多入力十字ボタンは、操作部材の中心回りに導電性ラバーを有し、その下側に金属ドームが配置されている。金属ドームは下に凸の薄いドーム状の導電板であり、スイッチの役割をする。操作部材を押下すると、押下側では導電性ラバーが、対応するアナログ回路パターンに操作量に応じた圧力で接触される。同時に、デジタル回路パターンに組み合わされた金属ドームが反転変形して、ケース底の凹部内の突起に当接させてデジタル信号を生成し、操作者が操作確認のために体感するクリック感(操作感)を発生させるようになっている。
【特許文献1】特開平8−88883号公報
【特許文献2】特開2003−338232号公報
【特許文献3】特開2005−197037号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献3の多入力十字ボタンでは、操作者が操作部材を押下する際に、導電性ラバーを介して金属ドームを押圧するようになるので、クリック感が大きく損なわれるという問題点があった。
【0007】
本発明は上記従来の問題点に鑑み、操作時にクリック感(操作感)が損なわれることがなく、小スペースで構成された多入力可能な操作ボタン装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記目的を達成するため、少なくとも一部が操作方向に重なった第1のスイッチと第2のスイッチとを有し、該第1と第2のスイッチが第1の操作部材の同一の押下点を押下することによって操作可能に構成された操作ボタン装置であって、前記第1の操作部材はそれ自体よりも柔軟性を有した弾性体によって位置決め保持され、操作時に、該第1の操作部材に設けられた突起が前記弾性体を介さずに前記第1及び第2のスイッチを押下するように構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、操作時にクリック感(操作感)が損なわれることがなく、小スペースで構成された多入力可能な操作ボタン装置を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0011】
<本実施の形態に適用されるカメラ>
図1は、本発明の実施の形態に係る操作ボタン装置を有するカメラの分解斜視図である。
【0012】
同図において、1はカメラの正面側を覆う前面カバー、2は裏側を覆う背面カバーである。11は撮影レンズ等を保持する鏡筒ユニットであり、鏡筒を駆動させるためのズームモーター13及びギヤユニット14が一体的に組みつけられている。そして、鏡筒ユニット11は、鏡筒固定ねじ12a、12b,12cにより金属シャーシ4に固定されている。また、21は電池23を保持するための電池ケースであり、電池ケース固定ねじ22a及び22bによって金属シャーシ4に固定されている。
【0013】
51はCPUやメモリ、画像処理LSI、電源回路等が実装されたメイン配線基板である。メイン配線基板51の背面には、映像や音声を保存する外部メモリであるメモリカード53のスロット52及びUSBコネクタ54が実装されている。そして、該メイン配線基板51は、メイン配線基板固定ねじ55a、55b、55cによって金属シャーシ4にねじ止めされる。
【0014】
金属シャーシ4上には、操作フレキシブル配線基板61が取り付けられている。操作フレキシブル配線基板61には、レリーズスイッチ及び電源スイッチ等が実装されるほか、金属ドームシート132が粘着材により固定されている。そして、操作フレキシブル配線基板61には、金属ドームシート132を含む操作ボタン装置120が設置されている。
【0015】
81は液晶パネルであり、液晶カバー82でカバーすることによってバックライト83と一つのユニットを構成している。この液晶パネル81とバックライト83のユニットは、液晶固定ねじ84a、84bによって金属シャーシ4に固定される。また85は補強板であり、外圧から液晶パネル81を保護するために取り付けられている。
【0016】
101は上面カバーであり、カメラの動作モードの切り替えレバー102、ズームレバー107、レリーズボタン108、及び電源ボタン109を保持する。この上面カバー101は、電池ケース21の上面に操作フレキシブル配線基板61を挟んで配置される。そして、該側面カバー111は、側面カバーねじ114a及び114bによって、正面カバー1、背面カバー2及びインナー部材113を挟み込んだ状態で金属シャーシ4に固定されている。そして、正面カバー1及び背面カバー2は、側面固定ねじ6a、6bにより側面に、また底面固定ねじ7a、7bにより底面にそれぞれ固定されている。
【0017】
<本実施の形態に係る操作ボタン装置の構造>
次に、図2、図3及び図4を参照して、本実施の形態に係る操作ボタン装置120の構造について、詳しく説明する。
【0018】
図2は、本実施の形態に係る操作ボタン装置120の上面側の分解斜視図であり、図3は、本実施の形態に係る操作ボタン装置120の背面側の分解斜視図である。また、図4は、本実施の形態に係る操作ボタン装置120の断面図である。
【0019】
図2、図3及び図4中の121は十字ボタンユニットである。十字ボタンユニット121は、十字ボタン122、センターボタン124、及び操作部材保持マット125を備えている。センターボタン124は、操作部材保持マット125に設けられた保持孔125a、125b、125cに対し、センターボタン125に設けられた3つの突起124a、124b、124cを挿入することで、当該ボタン124の位置決めと保持を行っている。センターボタン124には、金属ドーム専用の押し子としてエンボス124dがボタン本体から突出するように形成されている。このエンボス124dは、操作部材保持マット125の中央に設けられた穴125dに挿通している。
【0020】
十字ボタン122は、デコレーション用の十字ボタンキャップ123が接着固定され、2つの部材で一つの操作ボタンを形成している。この十字ボタン122は、シリコンゴム等から成る操作部材保持マット125に両面テープ126によって接着固定され、センターボタン124と共に中立位置に復帰するようになっている。この両面テープ126は、片面がシリコンに対して接着力を有する特別な両面テープである。この両面テープ126は、表裏で異なる粘着材を有しており、表裏の違いを組み立て作業者に認識させ易くするために切り欠き126aが設けられている。そして、操作部材保持マット125は、十字ボタン122の周縁部と当接しており、この当接部で位置決めを行い十字ボタン122の偏心を防止している。
【0021】
さらに、十字ボタン122には、同一円周上に10個のエンボス122aと1個のカマボコ状リブ122bがボタン本体から突出するように形成されている。そして、操作部材保持マット125の同一円周上に設けられた穴125eに、これらエンボス122a及びカマボコ状リブ122bが係合することで回転止めが行われている。
【0022】
また、上記十字ボタン122とセンターボタン124の押し込み方向側には、アナログスイッチ131と金属ドームシート132の2種類のスイッチが、アナログスイッチ131を上にして重なり合って配置されている。そして、操作ボタン装置120の操作時には、アナログスイッチ131及び金属ドーム132aが、十字ボタン122のエンボス122a及びカマボコリブ122bや、センターボタン124のエンボス124dによって押圧される。その結果、同一の押下点において2種類のスイッチ入力がカメラに対して行われることになる。
【0023】
アナログスイッチ131は、2次元の軌跡上のある点を押下したときにその座標によって入力値が異なるスイッチであり、そのコネクト部131fを、操作フレキシブル配線基板61に実装されたコネクタ65に差し込むことで、電気的な導通が図られている。また、金属ドームシート132は、5個の金属ドーム132aが粘着シートに接着されて構成され、操作フレキシブル配線基板61上に設けられた接点パターン64間を金属ドーム132aの反転により導通させることでスイッチとして機能している。
【0024】
本実施の形態では、操作フレキシブル配線基板61を位置決め固定している電池ケース21から延出している位置決めボス21c、21dを金属ドームシート132の位置決め用として共通利用している。これにより、操作フレキシブル配線基板61と金属ドームシート132の位置ズレを最小限に抑えている。
【0025】
<アナログスイッチ131の詳細>
次に、図5を参照して、アナログスイッチ131の詳細について説明する。
【0026】
図5は、前記アナログスイッチ131の外観斜視図である。
【0027】
アナログスイッチ131は、フレキシブル配線基板部131bと金属板131aとが熱圧着によって一体的に構成されたスイッチ部材となっている。また、フレキシブル配線基板131b上には、カーボン印刷を施したカーボン印刷部131cが形成されている。このカーボン印刷部131cは、ACFという導電性を有した接着処理が施され、カーボン印刷部131cと金属板131aとの導通が常に確保されている。さらに、フレキシブル配線基板131b上には、3端子のパターン131eと円周状に配されたカーボン印刷部131dとが形成されている。
【0028】
十字ボタン122に設けられたエンボス122aまたはカマボコリブ122bが同一円周状のカーボン印刷部131d上のある点を押下すると、その押下点のフレキシブル配線基板部131bと金属板131aとのギャップが潰れる。このとき、ACF接着されたカーボン印刷部131cがあるため、押下点のカーボン印刷層と金属板131aがショートし、ある抵抗値を不図示のシステムに入力させることができる。そして、システム上では、押下点に応じた抵抗値から押下点の座標位置を読み取り、十字ボタン122の押下点に応じた出力を行う。
【0029】
また、アナログスイッチ131は、フレキシブル配線基板部131bが撓むことでスイッチ入力が行われる。そのため、金属ドーム132aを反転させなければ入力されない金属ドームシート132のスイッチよりも軽い荷重で操作させることが可能となっている。従って、十字ボタン122のある押下点を押下したときには、アナログスイッチ131の方が金属ドームシート132のスイッチよりも先にオン状態となる。
【0030】
金属ドームシート132は、金属ドーム132aを5つのみ備えているので、十字ボタンユニット121における中央及び上下左右のボタンに適用されている。また、アナログスイッチ131の押し場所は連続的である。即ち、5つの金属ドーム132aの位置だけの押し子であると十分には連続的な入力を行うことができないため、金属ドーム132aのない場所にもエンボス122aやカマボコリブ122bを設け、アナログスイッチ103専用の押し子としている。
【0031】
アナログスイッチ131の位置決めは、電池ケース21に設けられた位置決めボス21c、21dで行っている。この位置決めボス21c、21dは、操作フレキシブル配線基板61の位置決めと金属ドームシート132の位置決めを同一にし、アナログスイッチ131の相対位置ズレを最小限に抑えている。また、前述したように、位置決めボス21c、21dは、金属シャーシ4からでなく電池ケース21から延出している。これは、アナログスイッチ131の構成部材である金属板131aが活電部であるため、金属シャーシ4から延出させた金属のボスでは電気的にショートを起こしてしまうためである。
【0032】
本実施の形態においては、スイッチ手段として、押下点によって抵抗値が変化するアナログスイッチ131や、金属ドームシート132を例にとって説明した。スイッチ手段は、これに限定されず、押下した圧力を検知する感圧スイッチや、静電気を検知する静電スイッチ、タクトスイッチなど他のスイッチ手段を用いても適用は容易である。
【0033】
<本実施の形態の利点>
(1)本実施の形態に係る操作ボタン装置120は、十字ボタン122とセンターボタン124の押し込み方向側に、アナログスイッチ131と金属ドームシート132の2種類のスイッチを重ねて配置する。そして、操作時に、アナログスイッチ131及び金属ドームシート132は、十字ボタン122のエンボス122a及びカマボコリブ122bや、センターボタン124のエンボス124dとによって、ラバー部材等を介さずに押される。これによって同一の押下点において2種類のスイッチ入力がカメラに対して行われるようにした。
【0034】
このように、十字ボタン122から突出したエンボス122a及びカマボコ状リブ122bが、アナログスイッチ131及び金属ドーム132aを押すときに、クリック感を大きく損ねてしまう原因であるラバー部材等を介して押すことがない。センターボタン124から突出したエンボス124dが金属ドーム132aを押すときも、同様である。このような構成により、操作者が操作ボタン装置120を押下する際に、クリック感(操作感)が損なわれることがなく、操作を正確に確認することができる。また、操作ボタン装置を構成するスペースを増やすことなく、複数のスイッチ(アナログスイッチ103と金属ドームシート132)を配置することができ、さらにスイッチを追加させることも可能になる。
【0035】
(2)また、弾性体(操作部材保持マット125)により、第1及び前記第2の操作部材(十字ボタン122とセンターボタン124)を位置決め保持するように構成した。これにより、操作感(クリック感)を損なうことなく前記操作部材を中立位置に復帰させることが可能で、しかも外装との偏心を容易に防止することができる。
【0036】
(3)第1のスイッチ(金属ドームシート132)の入力点が第2のスイッチ(アナログスイッチ103)の入力点より多い場合でも、それぞれのスイッチの入力方法の特徴を損なうことなく、多入力が可能な操作ボタン装置を構成することが可能になる。
【0037】
(4)第2のスイッチ(アナログスイッチ103)が第1のスイッチ(金属ドームシート132)よりも軽い荷重で入力させることができるので、操作荷重の制御によって第2のスイッチの入力だけを行い、第1のスイッチは入力させないという制御が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】実施の形態に係る操作ボタン装置を有するカメラの分解斜視図である。
【図2】実施の形態に係る操作ボタン装置の上面側の分解斜視図である。
【図3】実施の形態に係る操作ボタン装置の背面側の分解斜視図である。
【図4】実施の形態に係る操作ボタン装置の断面図である。
【図5】アナログスイッチの外観斜視図である。
【符号の説明】
【0039】
120 操作ボタン装置
122 十字ボタン
122a 十字ボタンのエンボス
122b 十字ボタンのカマボコリブ
124 センターボタン
124d センターボタンのエンボス
131 アナログスイッチ
132 金属ドームシート
132a 金属ドーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一部が操作方向に重なった第1のスイッチと第2のスイッチとを有し、該第1と第2のスイッチが第1の操作部材の同一の押下点を押下することによって操作可能に構成された操作ボタン装置であって、
前記第1の操作部材は、それ自体よりも柔軟性を有した弾性体によって位置決め保持され、操作時に、該第1の操作部材に設けられた突起が前記弾性体を介さずに前記第1及び第2のスイッチを押下するように構成したことを特徴とする操作ボタン装置。
【請求項2】
前記第1の操作部材によって取り囲まれるように配置された第2の操作部材を備え、
前記弾性体により、前記第1及び前記第2の操作部材を位置決め保持することを特徴とする請求項1に記載の操作ボタン装置。
【請求項3】
前記弾性体は、その中央部及び外周部に複数の貫通孔を有し、前記第2の操作部材に設けられた突起が前記中央部の貫通孔に挿通され、前記第1の操作部材に設けられた突起が前記外周部の貫通孔に挿通する構造であることを特徴とする請求項2に記載の操作ボタン装置。
【請求項4】
前記第1の操作部材に設けられた複数の突起のうちの少なくとも一つ以上は、前記第1のスイッチを押下する場所以外に設けたことを特徴とする請求項3に記載の操作ボタン装置。
【請求項5】
前記第2のスイッチは、前記第1のスイッチよりも軽い荷重で入力させることが可能に構成され、前記第1の操作部材の所定の押下点を押下したときに前記第2のスイッチが先に入力状態となることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の操作ボタン装置。
【請求項6】
前記第2のスイッチは、2次元の軌跡上の任意の点を押下したときにその座標によって入力値が異なるスイッチであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の操作ボタン装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−213964(P2007−213964A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−32412(P2006−32412)
【出願日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】