説明

操作入力システム

【課題】入力中の操作画面を第三者に見られても、入力内容が漏洩することのない操作入力システムを提供する。
【解決手段】複合機10の操作パネル30は、パスワードなどセキュリティ情報の入力を受ける場合に、操作画面上に所定のキー配置で入力キー61を設定し、この入力キー非表示の操作画面を操作パネル30に表示すると共に、設定した入力キーに対する操作をタッチパネルで受け付ける。携帯端末40は操作者が操作パネル30を操作する様子をカメラ42で撮影し、このカメラ画像内の操作パネル30の位置・サイズを解析し、このカメラ画像に入力キーの模擬画像を位置合わせして合成した合成画像を表示する。ユーザは携帯端末40を見ながら操作パネル30から入力操作を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作画面でユーザから入力操作を受け付ける操作入力システムに係り、特に、パスワードなどのセキュリティ情報の入力を受ける操作入力システムに関する。
【背景技術】
【0002】
操作パネルからパスワードなどのセキュリティ情報を入力する場合に、第三者が近くに居ると、入力中の操作パネルを盗み見されたり、操作する手の動きを見られたりすることで、入力したセキュリティ情報の内容が漏洩する恐れがある。
【0003】
このような第三者の盗み見による情報漏洩を防止する対策として、たとえば、操作パネルに表示するソフトテンキーの配列を毎回変更することで、第三者に入力中の手の動きを盗み見されても、入力内容を推測され難くする方法が提案されている(特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−258838号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ソフトテンキーの配列を毎回変化させたとしても、図16に示すように、操作パネルの操作画面そのものを、後方の第三者に盗み見された場合、あるいは図17に示すように、悪意で設置されたビデオカメラを使用して盗み見された場合には、入力内容の漏洩を防止することはできない。
【0006】
本発明は、上記の問題を解決しようとするものであり、入力中の操作画面を第三者に見られても、入力内容が漏洩することのない操作入力システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成するための本発明の要旨とするところは、次の各項の発明に存する。
【0008】
[1]操作画面を表示する表示部と、前記操作画面に対する操作を検出する操作検出部とを備えた操作表示装置と、
カメラと第2表示部とを有して前記操作表示装置と通信可能な表示装置と、
を備え、
前記操作表示装置でセキュリティ情報の入力を受ける場合に、
前記操作表示装置は、前記表示部の画面上に所定のキー配置で入力キーを設定しかつ前記入力キーもしくは少なくとも前記入力キーの内容を視認できない操作画面を前記表示部に表示すると共に、前記設定した入力キーに対する操作を前記操作検出部で受け付け、
前記表示装置は、前記カメラの撮影画像に基づいて、前記表示部を操作者が操作する様子に前記入力キーの模擬画像が前記設定された位置に位置合わせして合成された状態が見えるように前記第2表示部の表示内容を制御する
ことを特徴とする操作入力システム。
【0009】
上記発明では、セキュリティ情報の入力を受ける場合に、操作表示装置の表示部には、入力キーそのもの、もしくは入力キーの内容(たとえば、割り当てられている文字や記号)を視認できない操作画面を表示すると共にこの視認できない状態の入力キーに対する操作を受け付ける。一方、表示装置は、表示部を操作者が操作する様子に、入力キーの模擬画像が位置合わせして合成された状態が見えるように第2表示部の表示内容を制御する。これにより、操作者は、入力キーを視認できない操作画面を自分が操作する様子に入力キーの模擬画像が合成された状態を表示装置の第2表示部で確認しながら、操作表示装置の操作画面に対する入力操作を行うことができる。操作表示装置の操作画面には入力キー(もしくは入力キーの内容)が非表示なので、この操作画面やこれを操作する様子を第三者に盗み見されたとしても、入力内容が漏洩することはない。
【0010】
[2]前記操作表示装置でセキュリティ情報の入力を受ける場合に、必要な入力操作以外にダミーの入力操作を行う旨の指示を前記第2表示部に表示する
ことを特徴とする[1]に記載の操作入力システム。
【0011】
上記発明では、盗み見により、操作表示装置への入力操作回数が漏洩したとしても、必要な入力操作以外にダミーの入力操作が行われ、かつ盗み見する者には必要な入力操作とダミーの入力操作とを区別できないので、必要な入力操作の入力回数(たとえば、暗証番号の桁数)の漏洩を防止することができる。
【0012】
[3]前記操作表示装置でセキュリティ情報の入力を受ける場合に、前記入力キーが非表示の操作画面を前記表示部に表示すると共に、前記ダミーの入力操作を前記入力キーの配置されていない箇所に対して行うように指示する
ことを特徴とする[2]に記載の操作入力システム。
【0013】
上記発明では、入力キーが非表示の場合、操作画面を盗み見する者には、操作画面への操作が入力キーに対する操作なのか入力キーのない箇所へのダミーの入力操作なのかを区別できない。一方、第2表示部を見ている操作者は、各入力キーの場所が分かるので、入力キーの配置されていない空きスペースの場所も分かる。そこで、ダミーの入力操作を入力キーの配置されていない箇所に対して行うように指示することで、実際の入力キーに対する余計な入力操作を回避しつつ、ダミーの入力操作を行わせることができる。
【0014】
[4]前記操作表示装置でセキュリティ情報の入力を受ける場合に、前記入力キーの枠を表示しかつ入力キーの内容が非表示の操作画面を前記表示部に表示すると共に、前記ダミーの入力操作を前記必要な入力操作の前後または途中の指定した箇所で指定した回数行うように指示する
ことを特徴とする[2]に記載の操作入力システム。
【0015】
上記発明では、各入力キーの内容は非表示であるが枠は表示されているので、ダミーの入力操作をいずれかの入力キーに対して行うことになる。そこで、必要な入力操作の前後や途中の指定した箇所で指定した回数だけダミーの入力操作を行うように指示する。これにより、操作表示装置では、指定した箇所での指定した回数の入力操作をダミー入力として無視することができる。また、盗み見する者には、入力キーの操作回数は分かっても、実施に必要な入力操作の回数は分からない。
【0016】
[5]前記操作表示装置は、セキュリティ情報の入力を受ける場合に、前記所定のキー配置の情報を前記表示装置に送信し、
前記表示装置は、前記操作表示装置から受信した前記キー配置の情報に基づいて、前記入力キーの模擬画像を合成する
ことを特徴とする[1]乃至[4]のいずれか1項に記載の操作入力システム。
【0017】
上記発明では、キー配置の情報を操作表示装置から表示装置へ送信するだけで両装置を連携させることができ、操作表示装置と表示装置との間で授受する情報量を少なくすることができる。
【0018】
[6]前記操作表示装置でセキュリティ情報の入力を受ける場合に前記操作表示装置と前記表示装置とが通信できないときは、前記操作表示装置の表示部に前記入力キーを表示する
ことを特徴とする[1]乃至[5]のいずれか1項に記載の操作入力システム。
【0019】
上記発明では、操作表示装置と前記表示装置が通信できない場合は、操作表示装置単独で動作するように、操作表示装置の操作画面に入力キーを表示する。
【0020】
[7]前記操作表示装置でセキュリティ情報の入力を受ける毎に、前記キー配置を変更する
ことを特徴とする[1]乃至[6]のいずれか1項に記載の操作入力システム。
【0021】
[8]前記表示装置は、前記カメラの撮影画像に前記入力キーの模擬画像を合成した画像を前記第2表示部に表示する
ことを特徴とする[1]乃至[7]のいずれか1項に記載の操作入力システム。
【0022】
[9]前記表示装置の前記第2表示部は、外の様子にハーフミラーで画像を重ね合わせる方式のヘッドマウントディスプレイであり、外の様子に前記入力キーの模擬画像を重ね合わせる
ことを特徴とする[1]乃至[7]のいずれか1項に記載の操作入力システム。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る操作入力システムによれば、入力中の操作画面を第三者に見られても、入力内容が漏洩しないので、セキュリティが向上する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る操作入力システムのシステム構成を示す図である。
【図2】セキュリティ情報の入力操作を受ける際の操作パネルおよび携帯端末の表示内容の一例を示す説明図である。
【図3】本発明の操作入力システムの操作パネルを備えた複合機の概略構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係る操作入力システムの携帯端末の概略構成を示すブロック図である。
【図5】第1の実施の形態におけるセキュリティ情報入力時の通常操作画面の一例を示す正面図である。
【図6】第1の実施の形態におけるセキュリティ情報入力時の秘匿操作画面(入力キー非表示)の一例を示す正面図である。
【図7】複合機の操作パネルから携帯端末を併用してセキュリティ情報を入力する際の複合機の動作を示す流れ図である。
【図8】複合機の操作パネルから携帯端末を併用してセキュリティ情報を入力する際の携帯端末の動作を示す流れ図である。
【図9】第2の実施の形態におけるセキュリティ情報入力時の通常操作画面の一例を示す正面図である。
【図10】第2の実施の形態におけるセキュリティ情報入力時の秘匿操作画面(入力キーの内容非表示)の一例を示す正面図である。
【図11】第2の実施の形態に係る複合機の操作パネルから携帯端末を併用してセキュリティ情報を入力する際の複合機の動作を示す流れ図である。
【図12】第2の実施の形態において、携帯端末を併用してセキュリティ情報を複合機の操作パネルから入力する状態を例示した説明図である。
【図13】ヘッドマウントディスプレイの概略外観を示す図である。
【図14】ヘッドマウントディスプレイの構成を示すブロック図である。
【図15】第3の実施の形態において、ヘッドマウントディスプレイを併用してセキュリティ情報を複合機の操作パネルから入力する際の表示例を示す説明図である。
【図16】従来の操作パネルが第3者によって盗み見される様子を示す説明図である。
【図17】従来の操作パネルが、設置されたビデオカメラを通じて盗み見される様子を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面に基づき本発明の実施の形態を説明する。
【0026】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る操作入力システムを適用した複合機システム3の構成を示している。本例の操作入力システムは、複合機10に備え付けられた操作パネル30(操作表示装置)と、複合機10と別体にされてユーザが携帯可能な携帯端末40(表示装置)とを備えて構成される。
【0027】
複合機10は、原稿を光学的に読み取ってその複製画像を記録紙に印刷するコピージョブ、読み取った原稿の画像データをファイルにして保存したり外部端末へネットワークを通じて送信したりするスキャンジョブ、端末装置からネットワークを通じて受信した印刷データに係る画像を記録紙上に形成して印刷出力するプリントジョブなどの複数種類のジョブを実行する機能を備えた装置である。
【0028】
複合機10は、ジョブの投入操作や各種の設定操作などをユーザから受け付ける操作パネル30を備えている。また、携帯端末40は、パスワードなどのセキュリティ情報を操作パネル30から入力する際に併用される。携帯端末40は表面に表示部41を有し、裏面に該裏面の臨む方向を撮影するカメラ42を備えている。
【0029】
パスワードなどのセキュリティ情報の入力を受ける場合、複合機10の操作パネル30および携帯端末40は、図2に示すように連携して動作する。すなわち、パスワードなどのセキュリティ情報の入力を受ける場合、複合機10の操作パネル30ではセキュリティ情報の入力に使用される入力キー(ソフトキー)が非表示(もしくは入力キーの枠(形状)は表示されるが内容は非表示)になる。
【0030】
一方、携帯端末40のカメラ42で複合機10の操作パネル30を撮影すると、携帯端末40の表示部41には、カメラ画像内の操作パネルに、現実の操作パネル30では非表示になっている入力キーの模擬画像を位置合わせして合成した画像が表示される。この状態で操作者が現実の操作パネル30を操作しようとすると、操作者の指もカメラ42に撮影されるので、図2下部に示すように、携帯端末40には、操作者の指が操作パネル30を操作する様子に入力キーの模擬画像が位置合わせし合成されて表示される。
【0031】
従って、操作者は携帯端末40の表示を見ながら入力操作を行うことで、各入力キーの位置を認識しながら、入力キーが非表示の操作パネル30に対する入力操作を円滑に行うことができる。たとえば、携帯端末40を自分の顔に近づけて見るなど第三者から盗み見されないようにしながらセキュリティ情報の入力操作を操作パネル30に対して行えば、操作パネル30や入力操作中の指の動きを第三者に盗み見されたりビデオカメラで撮影されたりした場合でも、入力内容の漏洩を防止することができる。
【0032】
図3は、複合機10の概略構成を示すブロック図である。複合機10は、当該複合機10の動作を統括的に制御するCPU(Central Processing Unit)11を有している。CPU11にはバスを通じてROM(Read Only Memory)12と、RAM(Random Access Memory)13と、画像読取部14と、プリンタ部15と、画像処理部16と、不揮発メモリ17と、自動原稿搬送部18と、ファクシミリ通信部19と、ネットワーク通信部21と、無線通信部22と、操作パネル30などが接続さされている。
【0033】
CPU11は、OS(Operating System)プログラムをベースとし、その上で、ミドルウェアやアプリケーションプログラムなどを実行する。また、CPU11は、操作パネル30の表示内容や携帯端末40との連携動作を制御する制御部としての機能を果たす。
【0034】
ROM12には、各種のプログラムが格納されており、これらのプログラムに従ってCPU11が各種処理を実行することで複合機10の各機能が実現される。
【0035】
RAM13は、CPU11がプログラムに基づいて処理を実行する際に各種のデータを一時的に格納するワークメモリや画像データを格納する画像メモリなどとして使用される。
【0036】
画像読取部14は、原稿を光学的に読み取って画像データを取得する機能を果たす。画像読取部14は、例えば、原稿に光を照射する光源と、その反射光を受けて原稿を幅方向に1ライン分読み取るラインイメージセンサと、ライン単位の読取位置を原稿の長さ方向に順次移動させる移動ユニットと、原稿からの反射光をラインイメージセンサに導いて結像させるレンズやミラーなどからなる光学経路と、ラインイメージセンサの出力するアナログ画像信号をデジタルの画像データに変換する変換部などを備えて構成される。
【0037】
プリンタ部15は、画像データに応じた画像を記録紙上に画像形成する機能を果たす。ここでは、記録紙の搬送装置と、感光体ドラムと、帯電装置と、レーザーユニットと、現像装置と、転写分離装置と、クリーニング装置と、定着装置とを有し、電子写真プロセスによって画像形成を行う、所謂、レーザープリンタとして構成されている。画像形成は他の方式でもかまわない。
【0038】
画像処理部16は、画像の拡大縮小、回転などの処理のほか、印刷データをイメージデータに変換するラスタライズ処理、画像データの圧縮、伸張処理などを行う。
【0039】
不揮発メモリ17は、電源をオフにしても記憶内容が破壊されないメモリ(フラッシュメモリ)であり、各種設定情報の保存などに使用される。
【0040】
自動原稿搬送部18は、原稿台にセットされた原稿をその最上のものから1枚ずつ順に繰り出して搬送し、画像読取部14の読み取り位置を通過させて所定の排紙位置へ排紙する機能を果たす。
【0041】
ファクシミリ通信部19は、ファクシミリ機能を備えた外部装置と公衆回線を通じて画像データを送受信する機能を果たす。
【0042】
ネットワーク通信部21は、LAN(Local Area Network)などのネットワークを通じて端末装置やその他の外部装置との間でデータを通信する機能を果たす。
【0043】
無線通信部22は、近くの携帯端末40と無線通信する機能を果たす。無線通信部22の通信可能距離は1m程度で十分であり、通信方式には各種の近距離無線通信方式を採用することができる。なお、携帯端末40との間の通信は、無線LAN(Local Area Network)を利用してもかまわない。
【0044】
操作パネル30は、表示部31と、操作部32とを備えている。表示部31は、液晶ディスプレイ(LCD…Liquid Crystal Display)などで構成され、各種の操作画面、設定画面などを表示する機能を果たす。操作部32は、スタートボタンなどの各種操作スイッチと、表示部31の物理的画面上に設けられたタッチパネルとを備えている。タッチパネルは、表示部31の物理的画面がタッチペンや指などで接触操作された座標位置を検出する。
【0045】
図4は、携帯端末40の概略構成を示している。携帯端末40は、CPU43にバスを介してROM44、RAM45、不揮発メモリ46、方位センサー部47、カメラ42、操作部48、表示部41、ネットワーク通信部49、画像処理部51、無線通信部52などを接続して構成される。
【0046】
CPU43はROM44に格納されているプログラムに従って携帯端末40の動作を制御する。ROM44にはプログラムや固定データが記憶されている。RAM45はCPU43がプログラムを実行する際に各種のデータを一時的に格納するワークメモリなどとして使用される。不揮発メモリ46には、各種の設定情報が記憶される。
【0047】
方位センサー部47は、携帯端末40の向きや姿勢、およびそれらの変化を検出する。カメラ42は携帯端末40の裏面側に設けられて携帯端末40の裏面が臨む方向を撮影する。カメラ42は動画を撮影でき、たとえば、毎秒30フレームの画像を取り込む。
【0048】
表示部41は液晶ディスプレイなどで構成される。操作部48は表示部41の物理的画面上に設けられたタッチパネルなどで構成される。
【0049】
ネットワーク通信部49は、LANなどのネットワークを通じて複合機10や他の外部装置と通信する機能を果たす。画像処理部51は、画像データに対して、回転、拡大縮小など各種の処理を施す。無線通信部52は近くの複合機10と無線通信する機能を果たす。なお、複合機10との間の通信は、無線LAN(Local Area Network)を利用してもかまわない。
【0050】
図5は、セキュリティ情報入力時の通常操作画面60Aの一例を、図6は、セキュリティ情報入力時の秘匿操作画面60Bの一例を示している。通常操作画面60Aは携帯端末40を併用せずに、操作パネル30単独でセキュリティ情報を入力する際に操作パネル30の表示部31に表示される。通常操作画面60Aには、セキュリティ情報の各文字の入力に使用される複数の入力キー61、キャンセル釦62、認証釦63、案内メッセージ64、入力値表示欄65などのオブジェクトが表示される。
【0051】
秘匿操作画面60Bは携帯端末40を併用してセキュリティ情報を入力する際に操作パネル30の表示部31に表示される。秘匿操作画面60Bには、通常操作画面60Aにあった入力キー61、入力値表示欄65は表示されない。各入力キー61は通常操作画面60Aと同様に画面上に設定(定義)されているが非表示になっている。また、秘匿操作画面60Bの四隅には位置合わせマーク66が表示される。位置合わせマーク66は、携帯端末40のカメラ42で撮影した画像内において操作パネル30の表示部31の位置を特定する際の基準位置を示す。位置合わせマーク66は、秘匿操作画面60Bの四隅に配置するほか、いずれか一方の対角位置にのみ配置してもよい。位置合わせマーク66の形状や配置は、基準位置を示す機能を果たすことができれば、例示したものに限定されない。
【0052】
図7は、操作パネル30からパスワードなどのセキュリティ情報を入力する際の複合機10の動作の流れを示している。たとえば、複合機10は、使用を開始するに際してユーザ認証を必要とし、このユーザ認証用のID(Identification)、パスワードの入力操作を受ける場合に図7に示す動作が行われる。
【0053】
まず、操作パネル30の制御を行うCPU11は、セキュリティ情報の入力を受ける際に、セキュリティ情報入力用の各入力キー61のキー配置を、たとえば、無作為抽選などによって決定して設定(定義)する(ステップS101)。
【0054】
ここでは、セキュリティ情報入力時の操作画面においてセキュリティ情報の入力に使用する入力キー61以外のオブジェクトの配置は予め固定的に定めてあり、これら固定配置のオブジェクトが存在しないスペースにセキュリティ情報入力用の各入力キー61をランダムに配置する。本例では、図5、図6に示すキャンセル釦62、認証釦63、案内メッセージ64、入力値表示欄65、位置合わせマーク66は固定配置のオブジェクトであり、これらの存在しない空きスペースに入力キー61を配置する。
【0055】
次に、携帯端末40と通信により接続可能か否かを調べる(ステップS102)。携帯端末40と通信により接続できた場合は(ステップS103;Yes)、ステップS108へ移行する。通信できない場合は(ステップS103;No)、操作パネル30の表示部31に警告メッセージを表示し、携帯端末40を準備して通信可能な状態にするようにユーザを促す(ステップS104)。
【0056】
その後、携帯端末40と通信可能となったか否かを確認し、所定時間内に通信可能になった場合は(ステップS105;Yes)、ステップS108へ移行する。所定時間が経過しても携帯端末40と通信して接続できない場合は(ステップS105;No)、セキュリティ情報入力用の各入力キー61を視認可能に表示する通常操作画面60A(図5参照)を操作パネル30の表示部31に表示する(ステップS106)。そして、この通常操作画面60Aにてセキュリティ情報の入力操作を受け付けて(ステップS107)本処理を終了する。
【0057】
携帯端末40と通信により接続可能な場合は(ステップS103;Yes、もしくは、ステップS105;Yes)、セキュリティ情報入力用の各入力キー61が非表示にされた秘匿操作画面60B(図6参照)を操作パネル30の表示部31に表示する(ステップS108)。そして、秘匿操作画面60Bで非表示となっている入力キー61や入力値表示欄65の配置情報を携帯端末40に対して送信する(ステップS109)。たとえば、入力キー61の配置情報は、操作パネル30の表示部31の左下端を原点とした座標系における各入力キー61の位置座標、各入力キー61の形状やサイズ、各入力キー61に割り当てられている内容(文字や記号)などで構成される。
【0058】
さらに、セキュリティ情報として必要な入力以外のダミー入力を入力キー61などの配置されていない空きスペースに対して適宜行う旨のメッセージおよびこのメッセージの表示指示を携帯端末40に送信する(ステップS110)。
【0059】
その後、操作パネル30は、入力キー61が非表示になっている秘匿操作画面60Bに対するユーザからの操作を監視する(ステップS111)。非表示の入力キー61が定義されている箇所に対する操作を受けた場合は(ステップS112;Yes)、その箇所に定義されている非表示の入力キー61に対する操作があったものとして、その入力キー61に割り当てられている文字や記号を入力する(ステップS113)。
【0060】
さらにその入力内容を携帯端末40へ送信し(ステップS114)、ステップS111に戻って処理を継続する。入力内容の送信は暗号化して行われる。なお、入力内容そのものを送信する代わりに、入力キー61に与えた番号などを通知してもよい。たとえば、入力キー61の配列情報に、各入力キー61の番号とその入力キー61の内容とを対応付けした情報を含めておけば、入力キー61の番号を携帯端末40に通知することで、携帯端末40側で入力内容を認識することができる。
【0061】
認証釦63に対する操作など入力終了の操作を受けた場合は(ステップS115;Yes)、表示終了指示を携帯端末40に送信して(ステップS116)本処理を終了する。入力終了の操作を受けない場合は(ステップS115;No)、ステップS111に戻って処理を継続する。
【0062】
図8は、操作パネル30に表示された秘匿操作画面60Bからセキュリティ情報を入力する際に併用される携帯端末40の動作の流れを示している。図8は、図7に示す動作に対応した携帯端末40の動作を示している。携帯端末40は、複合機10から入力キー61や入力値表示欄65の配置情報を受信すると(ステップS201)、カメラ42で撮影を開始する(ステップS202)。さらに、複合機10からダミー入力のメッセージおよび該メッセージの表示指示を受信する(ステップS203)。
【0063】
その後、連続撮影しているカメラ42の出力するカメラ画像を解析し、このカメラ画像内での操作パネル30の表示部31の位置を検出する。ここでは、位置合わせマーク66を検出し、この位置合わせマーク66を基準にカメラ画像内の表示部31を検出する(ステップS204)。より詳細には、四隅もしくは対角に配置された各位置合わせマーク66の位置や互いの間隔などからカメラ画像内での表示部31の位置、サイズ、傾きなどを検出する。
【0064】
次に、検出した操作パネル30の表示部31の位置、サイズ、傾斜に合わせて、各入力キー61の模擬画像および入力値表示欄65の模擬画像をカメラ画像に合成し、この画像にさらに、ステップS203で受信したダミー入力のメッセージを、カメラ画像内の表示部31と重ならない位置に合成したものを携帯端末40の表示部41に表示する(ステップS205)。なお、模擬画像の合成では、ステップS201で受信した配置情報から実物の操作パネル30の表示部31内での各入力キー61や入力値表示欄65の位置や形状を把握し、該情報とステップS204で検出した情報とから、カメラ画像内の操作パネル30の表示部31の位置、大きさ、傾きなどに、各入力キー61や入力値表示欄65の模擬画像のサイズ、位置、傾きなどを合わせ込んで合成する。
【0065】
その後、複合機10から入力キー61の操作による入力内容を受信した場合は(ステップS206;Yes)、その入力内容に従って、入力値表示欄65の入力内容を更新してカメラ画像に合成表示する(ステップS207)。たとえば、携帯端末40の表示内容は図2の下部に示すようなものになる。
【0066】
複合機10から表示終了指示を受信した場合は(ステップS208;Yes)、本処理を終了する。表示終了指示を受信しない場合は(ステップS208;No)、ステップS204に戻って処理を継続する。
【0067】
図7の処理を複合機10で行い、図8の処理を携帯端末40で行うことにより、図2に示すような表示状態でセキュリティ情報を複合機10の操作パネル30から入力することができる。すなわち、パスワードなどのセキュリティ情報の入力を受ける場合、複合機10の操作パネル30ではセキュリティ情報の入力に使用される入力キー61が非表示になっている。一方、携帯端末40の表示部41には、操作者の指が操作パネル30を操作する様子に入力キー61の模擬画像が位置合わせして合成された画像が表示される。操作者は携帯端末40の表示を見ながら操作パネル30に対して入力操作を行うことで、入力キー61が非表示の操作パネル30に対する入力操作を各入力キー61の位置を認識しながら行うことができる。
【0068】
たとえば、第三者から盗み見されないように携帯端末40を自分の顔に近づけて見ながらセキュリティ情報の入力操作を操作パネル30からを行えば、操作パネル30を第三者に盗み見されたりビデオカメラで撮影されたりした場合でも、入力内容の漏洩を防止することができる。
【0069】
また、実際の入力操作は操作パネル30に対して行うので、入力内容を携帯端末40から複合機10へ送信する必要もなく、この送信に由来して入力内容が漏洩することも防止される。
【0070】
また、操作パネル30上では各入力キー61が完全に非表示なので、図2に示すように各入力キー61の配置を操作パネル30の画面内に散在させることで、行列状などに規則正しく配列する場合に比べて、操作パネル30を盗み見等する第三者によるキー配置の推測をより困難にしてセキュリティを高めることができる。
【0071】
また、操作パネル30上では各入力キー61が完全に非表示なので、操作パネル30を操作する様子からは、入力キー61を操作しているのか、何もない空きスペースを操作しているのかを区別することができない。そこで、本実施の形態では、ダミー入力を、入力キー61の無い箇所に適宜行う旨のメッセージを携帯端末40に表示して、ダミー入力を促している。たとえば、入力の必要なセキュリティ情報が「02751」である場合に、「X02X75X1X」(Xは空きスペースへのダミー入力を示す)のように、入力の必要なセキュリティ情報の前後や途中でダミー入力(X)を適宜混ぜながら操作すればよい。また、空きスペースへのダミー入力は、操作パネル30側で自ずと無視されるので、特別に処理を追加することなく、ダミー入力を含ませることができる。
【0072】
このように、ダミー入力を行わせることで、セキュリティ情報が何文字で構成されるかについても第三者は推認できなくなり、セキュリティが向上する。
【0073】
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。
【0074】
第1の実施の形態では、秘匿操作画面60Bにおいて入力キー61を完全に非表示としたが、第2の実施の形態では、入力キー61の枠は表示し、その入力キー61による入力内容(その入力キー61に割り当てられている文字や記号)は視認できない秘匿操作画面を表示する。
【0075】
図9は、第2の実施の形態におけるセキュリティ情報入力時の通常操作画面60Cの一例を示している。また図10は、第2の実施の形態におけるセキュリティ情報入力時の秘匿操作画面60Dの一例を示している。通常操作画面60Cは携帯端末40を併用せずに操作パネル30単独でセキュリティ情報を入力する際に操作パネル30の表示部31に表示される。通常操作画面60Cには、セキュリティ情報を構成する各文字の入力に使用される複数の入力キー61、キャンセル釦62、認証釦63、案内メッセージ64、入力値表示欄65などのオブジェクトがすべて視認可能に表示される。
【0076】
秘匿操作画面60Dは携帯端末40を併用してセキュリティ情報を入力する際に操作パネル30の表示部31に表示される。秘匿操作画面60Dには、通常操作画面60Cにあった入力キー61はその枠(形状)のみ表示され、入力キー61の内容(割り当てられている文字や記号)は表示されない。また入力値表示欄65の枠は表示されるが、入力操作によって受け付けた入力内容は表示されない。
【0077】
秘匿操作画面60Dには、第1の実施の形態の秘匿操作画面60Bにあった位置合わせマーク66は表示されない。第2の実施の形態では入力キー61の枠や入力値表示欄65の枠が位置合わせマークとして機能する。なお、入力値表示欄65は枠を含めて完全に非表示としてもよい。
【0078】
入力キー61の枠を表示すると、操作者の操作が、入力キー61に対する操作であるか、他の場所への操作であるかを、操作パネル30を盗み見する第三者は区別できる。このため、第1の実施の形態の秘匿操作画面60Bで例示したように入力キー61を散在させることの意義は少ない。そこで、第2の実施の形態では、操作性を優先し、入力キー61を縦横の格子状に整列して配置してある。ただし、各入力キー61に割り当てる内容は、セキュリティ情報の入力毎にランダムに変更する。
【0079】
また、第2の実施の形態では、入力キー61の枠を表示するので、ダミー入力を空きスペースに行うことはできない。そこで、ダミー入力を、必要な入力操作の前後や途中など指定した入力位置で所定した回数行わせるようになっている。
【0080】
図11は、第2の実施の形態に係る複合機10の操作パネル30からパスワードなどのセキュリティ情報を入力する際の複合機10の動作の流れを示している。操作パネル30の制御を行うCPU11は、セキュリティ情報の入力を受ける際に、セキュリティ情報入力用の各入力キー61のキー配置を、たとえば、無作為抽選などによって決定する(ステップS301)。第2の実施の形態では入力キー61の物理的な配列は縦横の格子状に固定されているので、それぞれの入力キー61に割り当てる文字や記号をランダムに変更してキー配置を決定し定義する。
【0081】
次に、携帯端末40と通信により接続可能か否かを調べる(ステップS302)。携帯端末40と通信により接続できた場合は(ステップS303;Yes)、ステップS308へ移行する。通信できない場合は(ステップS303;No)、操作パネル30の表示部31に警告メッセージを表示し、携帯端末40を準備して通信可能な状態にするようにユーザを促す(ステップS304)。その後、携帯端末40と通信可能となったか否かを確認し、所定時間内に通信可能になった場合は(ステップS305;Yes)、ステップS308へ移行する。
【0082】
所定時間が経過しても携帯端末40と接続できない場合は(ステップS305;No)、セキュリティ情報入力用の各入力キー61の内容についても視認可能な通常操作画面60C(図9参照)を操作パネル30の表示部31に表示する(ステップS306)。そして、通常操作画面60Cにてセキュリティ情報の入力操作を受け付けて(ステップS307)本処理を終了する。
【0083】
携帯端末40と通信により接続可能な場合は(ステップS303;Yes、もしくは、ステップS305;Yes)、セキュリティ情報入力用の各入力キー61の枠のみ表示され内容が非表示の秘匿操作画面60D(図10参照)を操作パネル30の表示部31に表示する(ステップS308)。そして、各入力キー61や入力値表示欄65の配置情報を携帯端末40に対して送信する(ステップS309)。さらに、セキュリティ情報として必要な入力以外のダミー入力を、必要な入力操作の前後もしくは途中の指定された位置で指定された回数行う旨のメッセージおよびこのメッセージの表示指示を携帯端末40に送信する(ステップS310)。
【0084】
たとえば、パスワードの入力完了後、2回のダミー入力を行う旨のメッセージを送信する。なお、指定するダミー入力の位置や回数を毎回もしくは複数回の1回の割合で変更するようにすれば、さらにセキュリティが向上する。
【0085】
操作パネル30は、入力キー61の枠だけ表示されて内容が非表示になっている秘匿操作画面60Dに対するユーザの操作を監視する(ステップS311)。いずれかの入力キー61の枠が表示されている領域に対する操作を受けた場合は(ステップS312;Yes)、今回の入力が予め定めたダミー入力の位置での入力か否かを判定する(ステップS313)。たとえば、5桁のパスワードの後ろに2桁のダミー入力をするように指示してある場合は、6回目と7回目の入力をダミー入力と判断する。
【0086】
今回の入力操作がダミー入力でなければ(ステップS313;No)、その操作された入力キー61に割り当てられている文字や記号の入力があったものとする(ステップS314)。さらにその入力内容を携帯端末40へ送信して(ステップS315)、ステップS311に戻って処理を継続する。
【0087】
今回の入力操作がダミー入力であった場合は(ステップS313;Yes)、ダミー入力があった旨を携帯端末40に送信する(ステップS316)。その後、ステップS311に戻って処理を継続する。
【0088】
認証釦63に対する操作など入力終了の操作を受けた場合は(ステップS317;Yes)、表示終了指示を携帯端末40に送信して(ステップS318)本処理を終了する。入力終了の操作を受けない場合は(ステップS317;No)、ステップS311に戻って処理を継続する。
【0089】
なお、携帯端末40側の処理は図8に示すものと基本的に同一である。ただし、第2の実施の形態では、入力キー61の枠が現実の操作パネル30に表示されるので、携帯端末40のカメラ42が撮影したカメラ画像内の操作パネルにも入力キー61の枠が写っている。そこで、ステップS205では、各入力キー61の内容を表す文字や記号のみをカメラ画像内の各入力キー61の枠に位置合わせして合成する。もちろん、枠を含めた入力キー61全体の模擬画像を合成するようにしてもかまわない。入力値表示欄65についても同様である。
【0090】
図12は、第2の実施の形態において、携帯端末40を併用してセキュリティ情報を複合機10の操作パネル30から入力する状態を例示している。パスワードなどのセキュリティ情報の入力を受ける場合、複合機10の操作パネル30に表示された秘匿操作画面60Dではセキュリティ情報の入力に使用される入力キー61の枠は表示されるが各入力キー61の内容が非表示になっている。携帯端末40の表示部41には、操作パネル30を操作者の指が操作する様子に、入力キー61の内容の模擬画像を位置合わせして合成した画像が表示される。操作者は携帯端末40の表示を見ながら入力操作を行うことで、入力キー61の内容が非表示の操作パネル30に対する入力操作を各入力キー61の内容を認識しながら行うことができる。
【0091】
たとえば、携帯端末40を自分の顔に近づけて見るなど第三者から盗み見されないようにしながらセキュリティ情報の入力操作を操作パネル30からを行えば、操作パネル30を第三者に盗み見されたりビデオカメラで撮影されたりした場合でも、入力内容の漏洩を防止することができる。
【0092】
また、一連の入力操作中にダミー入力を行わせるので、セキュリティ情報が何文字で構成されるかについても第三者には推認できなくなり、セキュリティが向上する。図12の例では、パスワードの入力後に、2回のダミー入力操作を行う旨のメッセージが携帯端末40に表示されている。このときユーザが、入力の必要なセキュリティ情報「02751」に対して、「0275138」のように7桁の入力を行うと、操作パネル30では最後の2桁をダミー入力として扱う。携帯端末40の入力値表示欄65には、「02751**」と表示され、最後の2回の入力がダミー入力として認識されたことが示される。
【0093】
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。
【0094】
第1、第2の実施の形態では、セキュリティ情報の入力操作時に携帯端末40を併用したが、第3の実施の形態では、携帯端末40に代えて透過型のヘッドマウントディスプレイ70を使用する。
【0095】
図13は、ヘッドマウントディスプレイ70の概略構成を示している。ヘッドマウントディスプレイ70は、眼鏡に類似した形を成しており、人の頭に装着されて使用される。本例のヘッドマウントディスプレイ70は、外の様子にハーフミラーで画像を重ね合わせる方式(所謂、光透過型)を採用している。
【0096】
ヘッドマウントディスプレイ70は、装着時に装着者の左右の目の前にそれぞれ配置される表示部71と、左右の表示部71をそれらの間で繋ぐブリッジ72と、ブリッジ72で連結された左右の表示部71の両脇から同一方向に延びて装着者の耳に引っ掛けられるツル73などを備えている。
【0097】
また、表示部71の両脇には、ネットワーク通信部81、画像処理部82、制御部83などの制御回路、投影部84、カメラ85などを含む基幹部74が設けられている。また各表示部71の前方に位置するようにハーフミラー75が、左右の基幹部74から延びる支持腕に支持されている。
【0098】
ハーフミラー75は前方から表示部71に向けて入射する光L1に対して45度の角度で傾斜して設けてあり、基幹部74の投影部84は、画像(拡張現実感情報の画像光L2とする)をハーフミラー75に向けて投影する。ハーフミラー75は透明基板(ガラス基板)に、反射膜(金属膜と誘電体膜)をコーティングして構成されている。ハーフミラー75は、たとえば、透過と反射の光量比が1:1になっている。
【0099】
ヘッドマウントディスプレイ70の装着者の目は、外光L1と画像光L2とが1:1の割合で合成された光が表示部71を通じて入射する。すなわち、ヘッドマウントディスプレイ70の装着者は、外の様子と投影部84が投影した画像とを半々の透過率で重ね合わせた様子を見る。
【0100】
図14は、ヘッドマウントディスプレイ70の構成を示すブロック図である。ヘッドマウントディスプレイ70は、制御部としてのCPU83にバスを介してROM86、RAM87、不揮発メモリ88、方位センサー部89、投影部84、カメラ85、操作部91、表示部71、ネットワーク通信部81、画像処理部92、無線通信部93などを接続して構成される。
【0101】
CPU83はROM86に格納されているプログラムに従ってヘッドマウントディスプレイ70の動作を制御する。ROM86にはプログラムや固定データが記憶されている。RAM87はCPU83がプログラムを実行する際に各種のデータを一時的に格納するワークメモリなどとして使用される。不揮発メモリ88には、各種の設定情報が記憶される。
【0102】
方位センサー部89は、ヘッドマウントディスプレイ70の向きや姿勢およびその変化を検出する。カメラ85はヘッドマウントディスプレイ70の前方を撮影する。より詳細には、装着者が前方を見たときの視野とほぼ同じ範囲を撮影する。カメラ85は、左右の基幹部74にそれぞれ設けられてもよいし、いずれか一方のみに設けられてもよい。カメラ85は動画を撮影し、たとえば、毎秒30フレームの画像を取り込む。
【0103】
操作部91は基幹部74等に設けられたスイッチ等であり、投影画像の明るさなどの調整に使用される。
【0104】
ネットワーク通信部81は、LANなどのネットワークを通じて複合機10や他の外部装置との間でデータを通信する機能を果たす。無線通信部93は近くの複合機10と無線通信する機能を果たす。なお、複合機10との間の通信は、無線LAN(Local Area Network)を利用してもかまわない。画像処理部92は、模擬画像の変形などを行う。
【0105】
透過型のヘッドマウントディスプレイ70で行う処理は基本的には図8に示すものと同一である。ただし、第1、第2の実施の形態の携帯端末40ではカメラ画像に入力キー61などの模擬画像を位置合わせして合成した画像を表示部41に表示したが、第3の実施の形態のヘッドマウントディスプレイ70では、装着者が見ている現実空間の操作パネル30の表示部31に位置合わせして、入力キー61などの模擬画像のみを投影部84に投影する。
【0106】
詳細には、ヘッドマウントディスプレイ70のカメラ85の撮影するカメラ画像を解析し、このカメラ画像内にある操作パネル30の表示部31の位置を特定する。この位置は、ヘッドマウントディスプレイ70の装着者が見ている現実空間内での表示部31の位置に対応しているので、装着者が見ている現実空間内の表示部31の位置やサイズ、向きに、位置や形状、向きを合わせ込んで入力キー61などの模擬画像を投影部84から投影する。
【0107】
第1の実施の形態と同様に、操作パネル30の表示部31に入力キー61が完全に非表示の秘匿操作画面60Bが表示される場合には、投影部84の投影する画像は入力キー61や入力値表示欄65の模擬画像になる。また第2の実施の形態と同様に、操作パネル30の表示部31に入力キー61の枠が表示され内容が非表示の秘匿操作画面60Dが表示される場合には、投影部84の投影する画像は入力キー61の内容を示す文字や記号、入力値表示欄65の中に表示する入力内容の画像になる。
【0108】
図15は、第3の実施の形態において、ヘッドマウントディスプレイ70を併用してセキュリティ情報を複合機10の操作パネル30から入力する状態を例示している。同図(a)は、複合機10の操作パネル30の表示状態を示している。この例では、入力キー61が完全に非表示の秘匿操作画面60Bが表示されている。
【0109】
同図(b)はヘッドマウントディスプレイ70の装着者の目に映る現実空間を示している。同図(c)はヘッドマウントディスプレイ70の投影部84が投影した画像を示している。入力キー61および入力値表示欄65の模擬画像が、同図(b)の現実空間の操作パネル30の表示部31に位置・形状・傾斜などが合わせ込まれて投影される。同図(d)は、ヘッドマウントディスプレイ70の装着者に見える内容であり、同図(b)と同図(c)とを重ね合わせたものになっている。
【0110】
このように、ヘッドマウントディスプレイ70を使用すれば、投影部84で投影した入力キー61(あるいは入力キー61の内容)や入力値表示欄65の内容は、ヘッドマウントディスプレイ70の装着者にしか見ることができず、第3者に見られることは一切ないので、さらにセキュリティを高めることができる。
【0111】
次に、上記各実施の形態に共通適用可能な応用例を説明する。
【0112】
(1)処理負担の軽減
携帯端末40やヘッドマウントディスプレイ70は、カメラ42、85で撮影した画像を解析して、その画像内にある操作パネル30の表示部31の位置、サイズ、傾きなどを特定する。この特定処理の処理負担を以下のように軽減する。
【0113】
上記特定処理は、初回の検出時および、方位センサー部47、89が携帯端末40やヘッドマウントディスプレイ70の位置が一定以上変化したことを検出したときのみ行う。
【0114】
(2)携帯端末40やヘッドマウントディスプレイ70との通信
実施の形態では携帯端末40やヘッドマウントディスプレイ70と複合機10との間の通信を無線通信によって行ったが、人体通信で行うようにしてもよい。すなわち、携帯端末40を一方の手に持った操作者もしくはヘッドマウントディスプレイ70を装着した操作者が操作パネル30の表示部31の表示面を指で操作したとき、人体を通信媒体として携帯端末40もしくはヘッドマウントディスプレイ70と通信する。
【0115】
たとえば、携帯端末40やヘッドマウントディスプレイ70を併用する秘匿モードでセキュリティ情報の入力を行うか否かの選択釦を操作パネル30の表示部31に表示し、ユーザが秘匿モードの選択釦を押下操作したときに人体通信を行う。この人体通信により携帯端末40やヘッドマウントディスプレイ70との接続を確認すると共に、接続を確認できたときは、入力キー61の配置情報などを携帯端末40やヘッドマウントディスプレイ70に対して送信する。
【0116】
これにより、実際のセキュリティ情報の入力操作前に、入力キー6161などの配置情報などを携帯端末40やヘッドマウントディスプレイ70に送信して合成する画像を生成させることができる。人体通信を利用することで、通信中のセキュリティが高まり、通信による情報漏洩を防止することができる。
【0117】
(3)携帯端末40やヘッドマウントディスプレイ70の省電力モード自動解除
セキュリティ情報の入力に際して携帯端末40やヘッドマウントディスプレイ70との通信による接続を確認できたときに携帯端末40やヘッドマウントディスプレイ70が省電力モードであれば、通常電力モードに復帰させる。すなわち、所定の復帰コマンドを複合機10から携帯端末40やヘッドマウントディスプレイ70に送信して、これらを通常動作状態に復帰させる。
【0118】
以上、本発明の実施の形態を図面によって説明してきたが、具体的な構成は実施の形態に示したものに限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0119】
実施の形態では、本発明に係る操作入力システムを複合機10に適用した場合を例に説明したが、適用対象の機器は複合機に限定されるものではない。なお、本発明によるセキュリティ向上の効果は、第3者による操作パネルの盗み見等を完全に防止できない場合により発揮される。たとえば、操作パネル30が、当該操作パネル30によって操作される装置本体と一体不可分で取り外しできないような態様に本発明は好適である。
【0120】
第3の実施の形態では、外の様子にハーフミラーで画像を重ね合わせる方式のヘッドマウントディスプレイを採用したが、装着すると外の様子を見ることができず、映し出される画像のみが見える、VR(Virtual Rsality)型のヘッドマウントディスプレイであってもよい。この場合は携帯端末40と同様にカメラ画像に入力キー61などの模擬画像を合成した画像を表示すればよい。
【0121】
このほか、秘匿操作画面60B、60Dにおいて「パスワードを入力してください」などのメッセージを非表示とし、これを携帯端末40側にのみ表示するように構成すれば、セキュリティ情報を入力しようとしていることすら第3者にわからなくなり、セキュリティの向上に寄与する。
【0122】
また、実施の形態では、複合機10から携帯端末40やヘッドマウントディスプレイ70に対して入力キー61などの配列情報を送信し、この配列情報に基づいて携帯端末40やヘッドマウントディスプレイ70側で入力キー61などの模擬画像を作成して合成する構成であったが、複合機10と、携帯端末40、ヘッドマウントディスプレイ70との作業分担はこれに限定されるものではない。たとえば、カメラ画像を解析して得た操作パネル30の表示部31の位置・形状・傾きなどの情報を携帯端末40やヘッドマウントディスプレイ70から複合機10に対して送信し、この情報に基づいて複合機10側で合成すべき画像を作成し、この画像を携帯端末40に送信してカメラ画像と合成させて表示する、あるいはヘッドマウントディスプレイ70に送信して投影部84に投影させるといった構成でもかまわない。
【0123】
実施の形態では、入力値表示欄65および入力内容を携帯端末40やヘッドマウントディスプレイ70に表示するようにしたが、これらの表示は省略してもよい。複合機10と携帯端末40やヘッドマウントディスプレイ70との入力内容に関する通信が不要になり、セキュリティがさらに高まる。
【0124】
セキュリティ情報は、実施の形態で例示したパスワードなどに限定されない。いかなる情報をセキュリティ情報とするかは任意に定義・設定すればよい。
【符号の説明】
【0125】
3…複合機システム
10…複合機
11…CPU
12…ROM
13…RAM
14…画像読取部
15…プリンタ部
16…画像処理部
17…不揮発メモリ
18…自動原稿搬送部
19…ファクシミリ通信部
21…ネットワーク通信部
22…無線通信部
30…操作パネル
31…表示部
32…操作部
40…携帯端末
41…表示部
42…カメラ
43…CPU
44…ROM
45…RAM
46…不揮発メモリ
47…方位センサー部
48…操作部
49…ネットワーク通信部
51…画像処理部
52…無線通信部
60A…通常操作画面
60B…入力キーが完全非表示の秘匿操作画面
60C…通常操作画面
60D…入力キーの枠が表示され内容が非表示の秘匿操作画面
61…入力キー
62…キャンセル釦
63…認証釦
64…案内メッセージ
65…入力値表示欄
66…位置合わせマーク
70…ヘッドマウントディスプレイ
71…表示部
72…ブリッジ
73…ツル
74…基幹部
75…ハーフミラー
81…ネットワーク通信部
82…画像処理部
83…制御部(CPU)
84…投影部
85…カメラ
86…ROM
87…RAM
88…不揮発メモリ
89…方位センサー部
91…操作部
92…画像処理部
93…無線通信部
L1…外光
L2…画像光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作画面を表示する表示部と、前記操作画面に対する操作を検出する操作検出部とを備えた操作表示装置と、
カメラと第2表示部とを有して前記操作表示装置と通信可能な表示装置と、
を備え、
前記操作表示装置でセキュリティ情報の入力を受ける場合に、
前記操作表示装置は、前記表示部の画面上に所定のキー配置で入力キーを設定しかつ前記入力キーもしくは少なくとも前記入力キーの内容を視認できない操作画面を前記表示部に表示すると共に、前記設定した入力キーに対する操作を前記操作検出部で受け付け、
前記表示装置は、前記カメラの撮影画像に基づいて、前記表示部を操作者が操作する様子に、前記入力キーの模擬画像が前記設定された位置に位置合わせして合成された状態が見えるように前記第2表示部の表示内容を制御する
ことを特徴とする操作入力システム。
【請求項2】
前記操作表示装置でセキュリティ情報の入力を受ける場合に、必要な入力操作以外にダミーの入力操作を行う旨の指示を前記第2表示部に表示する
ことを特徴とする請求項1に記載の操作入力システム。
【請求項3】
前記操作表示装置でセキュリティ情報の入力を受ける場合に、前記入力キーが非表示の操作画面を前記表示部に表示すると共に、前記ダミーの入力操作を前記入力キーの配置されていない箇所に対して行うように指示する
ことを特徴とする請求項2に記載の操作入力システム。
【請求項4】
前記操作表示装置でセキュリティ情報の入力を受ける場合に、前記入力キーの枠を表示しかつ入力キーの内容が非表示の操作画面を前記表示部に表示すると共に、前記ダミーの入力操作を前記必要な入力操作の前後または途中の指定した箇所で指定した回数行うように指示する
ことを特徴とする請求項2に記載の操作入力システム。
【請求項5】
前記操作表示装置は、セキュリティ情報の入力を受ける場合に、前記所定のキー配置の情報を前記表示装置に送信し、
前記表示装置は、前記操作表示装置から受信した前記キー配置の情報に基づいて、前記入力キーの模擬画像を合成する
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の操作入力システム。
【請求項6】
前記操作表示装置でセキュリティ情報の入力を受ける場合に前記操作表示装置と前記表示装置とが通信できないときは、前記操作表示装置の表示部に前記入力キーを表示する
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の操作入力システム。
【請求項7】
前記操作表示装置でセキュリティ情報の入力を受ける毎に、前記キー配置を変更する
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の操作入力システム。
【請求項8】
前記表示装置は、前記カメラの撮影画像に前記入力キーの模擬画像を合成した画像を前記第2表示部に表示する
ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の操作入力システム。
【請求項9】
前記表示装置の前記第2表示部は、外の様子にハーフミラーで画像を重ね合わせる方式のヘッドマウントディスプレイであり、外の様子に前記入力キーの模擬画像を重ね合わせる
ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の操作入力システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2013−110514(P2013−110514A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−252820(P2011−252820)
【出願日】平成23年11月18日(2011.11.18)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】