説明

操作入力装置およびマニピュレータシステム

【課題】操作者が操作部を正常に操作できない状態となったときにそれを迅速に検知し、表示物の意図しない動きを防ぐ。
【解決手段】ディスプレイ4と、操作者Bの頭部Cに装着される頭部装着部5と、操作者Bの操作によりディスプレイ4上に表示された表示物2に対する操作信号が入力される操作部6と、頭部装着部5と操作部6との相対位置を検出する相対位置検出手段8,12と、該相対位置検出手段8,12によって検出された相対位置に基づいて、操作部6に入力された操作信号に従って表示物2の動作を制御する第1の制御モードと、操作部6に入力された操作信号に対して制限をかけて表示物2の動作を制御する第2の制御モードとを切り替えて表示物2を制御する制御部7とを備える操作入力装置1を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作入力装置およびマニピュレータシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、外界の異常を検知したときに、視界が遮断されている装着者に対して視野を開放したり異常を知らせたりする頭部装着型映像表示装置(HMD;Head Mounted Display)が知られている(例えば、特許文献1および2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−304646号公報
【特許文献2】特開平9−149339号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1および2では、装着者がHMDに表示されている機器等の表示物を手元の操作部で操作する場合に、装着者に異常が発生したときなどの機器等の制御について考慮されていない。すなわち、装着者が何らかの事情により突然体勢を変えたり操作部を手放したりして操作部が装着者によって正しく操作されない状態となったときに、操作対象である機器等が意図しない動きをしてしまう可能性があるという問題がある。また、装着者が不注意などにより操作部に対して傾いた姿勢で操作部を操作すると、HMD上の操作対象である機器等と操作部の操作方向との上下左右方向が一致しなくなるので、機器等を意図しない方向に操作してしまう可能性があるという問題がある。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、操作者が操作部を正常に操作できない状態となったときにそれを迅速に検知し、表示物の意図しない動きを防ぐことができる操作入力装置およびマニピュレータシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明は以下の手段を提供する。
本発明は、ディスプレイと、操作者の頭部に装着される頭部装着部と、前記操作者の操作により前記ディスプレイ上に表示された表示物に対する操作信号が入力される操作部と、前記頭部装着部と前記操作部との相対位置を検出する相対位置検出手段と、該相対位置検出手段によって検出された相対位置に基づいて、前記操作部に入力された操作信号に従って前記表示物の動作を制御する第1の制御モードと、前記操作部に入力された操作信号に対して制限をかけて前記表示物の動作を制御する第2の制御モードとを切り替えて前記表示物を制御する制御部とを備える操作入力装置を提供する。
【0007】
本発明によれば、頭部装着部を装着した操作者は、第1の制御モードにおいて、ディスプレイを見ながら該ディスプレイ上の表示物を手元の操作部で任意に操作することができる。この場合に、何らかの事情で操作者または操作部が移動すると、相対位置検出手段により検出される相対位置が変化して制御部が第2の制御モードに切り替える。これにより、操作者が操作部を正常に操作できない状態となったときにそれを迅速に検知するとともに、操作部に入力された操作信号に対して表示物の動作を制限して、操作部の不慮の操作による表示物の意図しない動きを防ぐことができる。
【0008】
上記発明においては、前記制御部は、前記頭部装着部および前記操作部との相対位置が所定の範囲から外れたときに、前記第1の制御モードから前記第2の制御モードに切り替えてもよい。
このようにすることで、所定の範囲として、操作者による表示物の通常の操作状態において配される範囲を設定しておけば、操作者および操作部が通常の操作状態でなくなったことをより精度よく検知して操作部による表示物の操作を制限することができる。
【0009】
また、上記発明においては、前記相対位置検出手段が、前記操作部または前記頭部装着部の一方に設けられた指標と、前記操作部または前記頭部装着部の他方に設けられ前記指標を撮影する撮影部とを備え、前記制御部が、前記撮影部によって撮影された画像内における前記指標の位置に基づいて、前記第1の制御モードと前記第2の制御モードとを切り替えてもよい。
このようにすることで、頭部装着部と操作部との相対位置を簡便な構成で検出することができる。
【0010】
また、上記発明においては、前記相対位置検出手段が、前記頭部装着部および前記操作部にそれぞれ設けられ、その空間座標系における変位情報を検出する空間センサを備え、前記制御部は、前記空間センサにより得られた前記頭部装着部と前記操作部との相対位置が所定の範囲から外れたときに、前記第1の制御モードから前記第2の制御モードに切り替えてもよい。
このようにすることで、頭部装着部と操作部との相対位置を簡便な構成で検出することができる。
【0011】
また、上記発明においては、前記相対位置検出手段が、前記頭部装着部および前記操作部にそれぞれ設けられ、その空間座標系における変位情報を検出する空間センサを備え、前記制御部は、少なくとも一方の前記空間センサにより検出された変位情報が所定の閾値より大きいときに、前記第1の制御モードから前記第2の制御モードに切り替えてもよい。
【0012】
このようにすることで、頭部装着部または操作部の移動によりこれらの相対位置がずれたことを簡便な構成で検知することができる。さらに、指標および撮影部と組み合わせて用いた場合には、指標および撮影部もしくは空間センサが正常に作動しない状況となったときでも、操作者が通常の操作状態にあるか否かを正確に検知して表示物を適切に制御することができる。
【0013】
また、上記発明においては、前記頭部装着部と前記操作部との相対角度を検出する相対角度検出手段を備え、前記制御部は、前記相対角度検出手段により検出された相対角度が所定の閾値より大きいときに、前記第1の制御モードから前記第2の制御モードに切り替えてもよい。
このようにすることで、頭部装着部と操作部との相対姿勢が検出され、両者の相対移動をより高い精度で検知することができる。
【0014】
また、上記発明においては、前記操作部に設けられ、該操作部と前記操作者の手との接触の有無を検出する接触センサを備え、前記制御部は、前記接触センサにより前記操作部と前記操作者の手との接触が検出されないときに、前記第1の制御モードから前記第2の制御モードに切り替えてもよい。
このようにすることで、操作部が操作者の手に適切に保持されていないときには操作部による表示物の操作を制限することができる。
【0015】
また、上記発明においては、前記頭部装着部に設けられ、該頭部装着装置と前記操作者の頭部との接触の有無を検出する接触センサを備え、前記制御部は、前記接触センサにより前記頭部装着部と前記操作者の頭部との接触が検出されないときに、前記第1の制御モードから前記第2の制御モードに切り替えてもよい。
このようにすることで、頭部装着部が操作者の頭部に適切に装着されていないときには操作部による表示物の操作を制限することができる。
【0016】
また、上記発明においては、前記操作者の視線を検出する視線検出手段を備え、前記制御部は、前記視線検出手段により検出された視線が前記操作者の正面方向からからずれた方向であるときに、前記第1の制御モードから前記第2の制御モードに切り替えてもよい。
このようにすることで、操作者が正面に配置されたディスプレイからそれた方向を見ているときには、操作部による表示物の操作を制限することができる。
【0017】
また、上記発明においては、前記操作者による操作により前記制御部に対して前記第2の制御モードから前記第1の制御モードへの切り替えを許可する許可手段を備え、前記制御部は、前記第1の制御モードから前記第2の制御モードに切り替えた後、前記許可手段によって許可されたときに前記第1の制御モードに切り替えてもよい。
このようにすることで、第2の制御モードに切り替わった後、操作者が通常の操作状態に戻ってから任意のタイミングで表示物の動作に対する制限を解除することができる。
【0018】
また、本発明は、上記いずれかに記載の操作入力装置と、前記表示物であるマニピュレータと、前記ディスプレイに表示する前記表示物の映像を取得する観察装置とを備えるマニピュレータシステムを提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、操作者が操作部を正常に操作できない状態となったときにそれを迅速に検知し、表示物の意図しない動きを防ぐことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る操作入力装置およびマニピュレータシステムの全体構成図である。
【図2】図1の操作入力装置およびマニピュレータシステムの機能ブロック図である。
【図3】(a)操作者の通常の操作状態と、(b)そのときに撮影部によって撮影される画像とを示す図である。
【図4】(a)操作者の不適切な操作状態と、(b)そのときに撮影部によって撮影される画像とを示す図である。
【図5】図1の操作入力装置の動作を説明するフローチャートである。
【図6】図1の操作入力装置によるマニピュレータの制御方法の変形例を説明する図である。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る操作入力装置の全体構成図である。
【図8】図7の操作入力装置およびマニピュレータシステムの機能ブロック図である。
【図9】図1および図7の操作入力装置の変形例であり、別置き型のディスプレイを用いた場合の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の第1の実施形態に係る操作入力装置1およびマニピュレータシステム100について、図1〜図6を参照して以下に説明する。
本実施形態に係るマニピュレータシステム100は、外科手術に用いられるものであり、図1に示されるように、患者Aの体内に挿入されるマニピュレータ(表示物)2と、該マニピュレータ2の映像を撮影する内視鏡(観察装置)3と、本実施形態に係る操作入力装置1とを備えている。
【0022】
マニピュレータ2は、モータ2aによってその姿勢や位置や作動状態をそれぞれ変化させることができるようになっている。また、内視鏡3もモータ3aによって、その姿勢や位置や作動状態を変化させることができるようになっている。
【0023】
操作入力装置1は、内視鏡3により取得された患者Aの体内におけるマニピュレータ2の映像を表示する表示部(ディスプレイ)4を備え、操作者Bの頭部Cに装着されるHMD(頭部装着部)5と、操作者Bによって操作される操作部6と、操作部6の操作によりマニピュレータ2を作動させる制御部7とを備えている。
【0024】
HMD5は、操作者Bの頭部Cに装着された状態で、表示部4を操作者Bの眼前に配置するように構成されている。HMD5は、図2に示されるように、操作者Bの頭部Cに装着された状態で、操作者Bの頭部Cの前方を撮影可能な視野を有するCCDのような撮影部(相対位置検出手段)8と、該撮影部8により撮影した画像信号を無線送信する送受信部9とを備えている。
【0025】
操作部6は、操作者Bが手に保持して操作することにより、マニピュレータ2および内視鏡3の操作信号が入力されるようになっている。このときに、通常の操作状態において操作者Bは、図3(a)に示されるように、自身の胴体に対して正面方向に操作部6を配置し、顔を操作部6の方向に向けた姿勢で操作部6を操作する。これにより、操作者Bが表示部4に視線を向けるとその視線の延長線上に操作部6が配置され、内視鏡3に対するマニピュレータ2の位置・姿勢と、内視鏡3の映像が表示される表示部4に対する操作部6の位置・姿勢とが一致した状態となり、マニピュレータ2を操作者Bの意図した方向に操作することができる。
【0026】
また、操作部6は、押下されることにより制御部7に対してマニピュレータ2の作動を許可する許可信号を出力する許可ボタン10(許可手段)を備えている。許可ボタン10は、例えば、図示しないカバーなどにより覆われ、操作者Bの操作によりカバーが外されないと押下されないようになっている。
操作部6に入力されたマニピュレータ2および内視鏡3の操作信号ならびにマニピュレータ2の作動の許可信号は、送信部11により無線送信される。
【0027】
また、操作部6には、LED(相対位置検出手段、指標)12が固定されている。操作者Bが通常の操作状態にあるときには、図3(b)に示されるように、撮影部8により撮影された画像Dの中央付近にLED12が存在する。一方、図4(a)に示されるように、操作者Bが顔の向きを変えたり操作部6を落下させたりするなどして通常の操作状態でなくなり、HMD5と操作部6との相対位置が移動すると、図4(b)に示されるように、画像D内のLED12が中央付近から外側に移動する、あるいは、画像D内からLED12が消える。
【0028】
制御部7は、内視鏡3により取得された画像信号が入力されることにより、これを処理してHMD5に送信する送受信部13を備え、HMD5に設けられた表示部4に撮影された内視鏡映像を表示させるようになっている。
また、制御部7は、操作部6およびHMD5から無線送信されてきた操作信号および画像信号を、送受信部13を介して受信し、受信した操作信号および画像信号に基づいてマニピュレータ2または内視鏡3のモータ2a,3aを作動させ、マニピュレータ2または内視鏡3を移動させあるいは作動状態を変化させる制御信号を生成する。
【0029】
具体的には、制御部7は、撮影部8により取得された画像D内からLED12を抽出し、所定の領域E内にLED12が存在すれば第1の制御モードによりマニピュレータ2を制御し、所定の領域E内にLED12が存在しなければ第2の制御モードによりマニピュレータ2を制御する。
【0030】
ここで、第1の制御モードは、操作部6から送信されてきたマニピュレータ2の操作信号に従ってマニピュレータ2の制御信号を生成する制御モードである。第2の制御モードは、操作部6から送信されてきたマニピュレータ2の操作信号に依らずにマニピュレータ2を強制停止させる制御モードである。
制御部7は、第1の制御モードから第2の制御モードに切り替えた後、画像D内においてLED12が所定の領域E内に配置された状態で操作部6から許可信号を受信したときに、第1の制御モードに復帰するようになっている。
【0031】
このように構成された操作入力装置1およびマニピュレータシステム100の作用について、図5のフローチャートを参照して以下に説明する。
本実施形態に係るマニピュレータシステム100を用いて外科手術を行うには、操作者Bは、HMD5を頭部Cに装着し、手に保持した操作部6を正面に配置して操作部6に顔を向ける。これにより、表示部4に表示された内視鏡映像を見ながら操作部6によって内視鏡3およびマニピュレータ2を任意に操作することができる(ステップS1)。
【0032】
操作者Bが内視鏡3およびマニピュレータ2の操作の途中で体勢を変えたり手から操作部6を落下させたりして、画像D内のLED12の位置が所定の領域E内から外れる(ステップS2)と、操作入力装置1は、操作者Bが通常の操作状態でなくなったことを検知し、第2の制御モードに切り替えてマニピュレータ2を強制停止させる(ステップS3)。マニピュレータ2は、操作者Bが再び通常の操作状態に戻って(ステップS4)許可ボタン10を押下する(ステップS5)まで停止した状態に維持される。
【0033】
このように、本実施形態によれば、操作者Bの顔と操作部6とが正対した状態でなくなったときに、それがHMD5と操作部6との相対位置から迅速にかつ高い精度で検知されてマニピュレータ2の動作が停止させられる。これにより、例えば、操作者Bが操作部6以外方向を向いた状態で操作部6を意図しない方向に操作してしまったり、操作部6が手元から落下して床などに接触した際に操作されてしまったりしても、操作部6の不慮の操作によってマニピュレータ2が意図しない動作をすることを未然に回避することができるという利点がある。特に、本実施形態のように、操作部6がリンク等により動作範囲を制限されていなかったり、表示部4が環境に固定されたものでなかったりする場合に、上述の利点は顕著である。
【0034】
また、マニピュレータ2が一旦強制停止させられた後の第1の制御モードへの復帰が操作者Bによって任意のタイミングで行われる。これにより、操作者Bが通常の操作状態に戻ったと同時にマニピュレータ2が動き出してしまうことなく、操作者Bが落ち着いて正確にマニピュレータ2の操作を再開することができる。
【0035】
なお、上記実施形態においては、第2の制御モードにおいてマニピュレータ2が強制停止させられることとしたが、これに代えて、操作部6から送信されてきたマニピュレータ2の操作信号に従いつつ十分に緩めた動作速度でマニピュレータ2を動作させることとしてもよく、表示部4に警告を表示したり警告音を鳴らしたりして操作者Bに対して通常の操作状態にないことを報知することとしてもよい。
このようにしても、操作者Bが意図しない方向に操作部6を操作してしまってもマニピュレータ2が突発的に動いてしまうことを防止したり、操作者Bに対して注意を喚起したりして、マニピュレータ2の意図しない動作を防止することができる。
【0036】
また、上記実施形態においては、マニピュレータ2の動作を、第1の制御モードと第2の制御モードの2段階で切り替えて制御することしたが、これに代えて、3段階以上で切り替えて制御することとしてもよい。
例えば、図6に示されるように、撮影部8により撮影される画像D内に2以上の領域(図示する例では2つの領域E,F)を設定し、LED12の位置が領域Fから外れたときに第2の制御モードに切り替え、LED12の位置がさらに領域Eから外れたときに第3の制御モードに切り替えることとしてもよい。
【0037】
この場合、第2の制御モードにおいては、例えば、マニピュレータ2の動作速度を遅くする、あるいは、表示部4に警告を表示したりブザーを鳴らしたりするなどして操作者Bに対して通常の操作状態にないことを報知する。第3の制御モードにおいては、上述した実施形態における第2の制御モードと同様にマニピュレータ2を強制停止させる。
このようにすることで、操作者Bの小さな身動きなどによって頻繁にマニピュレータ2が強制停止させられて手術の進行が不要に妨げられるのを防止することができる。
【0038】
また、上記実施形態においては、撮影部8をHMD5に設けLED12を操作部6に設けたが、これに代えて、撮影部8を操作部6に設けLED12をHMD5に設けてもよい。
このようにしても、操作者Bの頭部Cと操作部6との相対位置を検出することができる。
【0039】
次に、本発明の第2の実施形態に係る操作入力装置1およびマニピュレータシステム100について、図7〜図8を参照して以下に説明する。
なお、本実施形態においては第1の実施形態と異なる点について主に説明し、第1の実施形態と共通の構成については同一の符号を付してその説明を省略する。
本実施形態に係る操作入力装置1は、図7に示されるように、HMD5および操作部6にそれぞれ設けられた加速度センサ(相対位置検出手段)14,24および接触センサ15,25と、HMD5に設けられた視線センサ16とを備えている点において第1の実施形態と異なる。
【0040】
加速度センサ14,24は、異なる3方向の加速度を検出する。
HMD5に設けられた接触センサ15は、操作者BがHMD5を正しく装着したときに操作者Bの頭部Cと接触する位置に配置され、操作部6に設けられた接触センサ25は、操作者Bが操作部6を正しく保持したときに操作者Bの手と接触する位置に配置されている。
視線センサ16は、操作者Bの視線を検出する。
各センサ14,15,16,24,25により検出された加速度、接触の有無および視線の情報は、図8に示されるように、送受信部9または送信部11によって制御部7に送信される。
【0041】
制御部7は、少なくとも一方の加速度センサ14,24により検出された加速度の大きさが所定の閾値より大きいときに、第2の制御モードに切り替える。これにより、操作者Bが振り向いたり操作部6を落下させたりすると、そのときのHMD5または操作部6のすばやい動きが検知されてマニピュレータ2が強制停止させられる。
【0042】
また、制御部7は、操作部6の操作が開始されてから各加速度センサ14,24により検出された加速度を各方向について2階積分して変位を算出し、算出した変位を積算することにより、現時刻における操作部6に対するHMD5の3次元空間における相対位置を検出する。
制御部7は、撮影部8の画像DにおいてLED12が所定の領域E内に存在せず、かつ、加速度センサ14,24によって検出された加速度から検出したHMD5と操作部6との相対位置が、操作者Bの通常の操作状態において配される所定の範囲から外れたときに、第1の制御モードから第2の制御モードに切り替える。
【0043】
また、制御部7は、操作部6の操作が開始されてから、各接触センサ15,25により操作者Bの頭部Cまたは手との接触状態が検出されなくなったときに、第1の制御モードから第2の制御モードに切り替える。これにより、HMD5の位置がずれて操作者Bが表示部4を正常に観察できなくなったこと、または、操作部6が操作者Bの手から離れたことが迅速に検知されてマニピュレータ2が強制停止させられる。
【0044】
また、制御部7は、視線センサ16により検出された視線の、操作者Bの正面方向に対する角度が閾値より大きくなったときに、第1の制御モードから第2の制御モードに切り替える。これにより、操作者Bの視線が表示部4の方向からそれると、それが検知されてマニピュレータ2が強制停止させられる。
【0045】
このように構成されたマニピュレータシステム100の作用について以下に説明する。
本実施形態に係るマニピュレータシステム100を用いて外科手術を行うには、第1の実施形態と同様に操作者BがHMD5を装着し操作部6を手に保持して内視鏡3とマニピュレータ2とを操作する。外界で異常が発生するなどして操作者Bが操作部6を手放したりHMD5を頭部Cから外したり、あるいは、周囲の人から話しかけられて操作者Bが振り向いたりすると、マニピュレータ2が強制停止させられる。マニピュレータ2は、操作者Bが通常の操作状態に戻って許可ボタン10を押下するまでの間、停止し続ける。
【0046】
このようにしても、第1の実施形態と同様に、操作者Bが操作部6を正常に操作できない状態になったときにそれが迅速に検知され、操作部6の不慮の操作によってマニピュレータ2が意図しない動作をしてしまうことを未然に回避することができる。
【0047】
また、HMD5と操作部6との相対位置を、撮影部8とLED12ならびに加速度センサ14,24によって2重に検出することにより、例えば、HMD5と操作部6との間に物体が介入して撮影部8に対してLED12が隠され、撮影部8の画像DからLED12が突然消えるなど、撮影部8とLED12あるいは加速度センサ14,24の一方が正常に動作しない状況となっても、HMD5と操作部6との相対位置が正確に検出される。これにより、操作者Bが操作部6を通常通り操作しているにもかかわらずマニピュレータ2が不要に停止させられるなどの不都合を防止して適切にマニピュレータ2を制御することができる。
【0048】
なお、上記実施形態においては、加速度センサ14,24に代えて、ジャイロセンサ(相対角度検出手段)を採用してもよい。ジャイロセンサは、異なる3方向の角速度を検出する。
この場合、制御部7は、少なくとも一方のジャイロセンサにより検出された角速度が所定の閾値より大きいときに第2の制御モードに切り替える。また、制御部7は、各ジャイロセンサにより検出された角速度を各方向について1階積分して回転角度を算出し、算出した回転角度を積算することにより、現時刻におけるHMD5と操作部6との相対姿勢を検出する。
【0049】
そして、制御部7は、撮影部8の画像DにおいてLED12が所定の領域E内に存在せず、かつ、ジャイロセンサにより検出された角速度から算出した操作部6とHMD5との相対姿勢が所定の姿勢からずれていたときに、第1の制御モードから第2の制御モードに切り替える。
このようにしても、HMD5または操作部6のすばやい動きを迅速に検知できるとともに、HMD5と操作部6とが適切な位置関係にあるか否かを正確に検知することができる。
【0050】
また、上述した第1および第2の実施形態においては、HMD5を例示して表示部4が頭部装着部と一体で設けられていることとしたが、これに代えて、図9に示されるように頭部装着部とは別置き型のディスプレイ17を採用してもよい。また、頭部装着部として、別置き型の3D表示装置に対する3Dメガネを採用してもよい。第2の実施形態における各センサ14,15,16,24,25は適宜操作者Bの頭部Cまたは操作部6に設けることができる。
このようにしても、操作者Bが急に体勢を変えたり操作部6を手放したりして操作部6を正常に操作できない状態となったときに、それを迅速に検知してマニピュレータ2の意図しない動作を防ぐことができる。
【符号の説明】
【0051】
1 操作入力装置
2 マニピュレータ(表示物)
2a,3a モータ
3 内視鏡(観察装置)
4 表示部(ディスプレイ)
5 HMD(頭部装着部)
6 操作部
7 制御部
8 撮影部(相対位置検出手段)
9,13 送受信部
10 許可ボタン(許可手段)
11 送信部
12 LED(相対位置検出手段、指標)
14,24 加速度センサ(相対位置検出手段)
15,25 接触センサ
16 視線センサ
17 ディスプレイ
100 マニピュレータシステム
A 患者
B 操作者
C 操作者の頭部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスプレイと、
操作者の頭部に装着される頭部装着部と、
前記操作者の操作により前記ディスプレイ上に表示された表示物に対する操作信号が入力される操作部と、
前記頭部装着部と前記操作部との相対位置を検出する相対位置検出手段と、
該相対位置検出手段によって検出された相対位置に基づいて、前記操作部に入力された操作信号に従って前記表示物の動作を制御する第1の制御モードと、前記操作部に入力された操作信号に対して制限をかけて前記表示物の動作を制御する第2の制御モードの少なくとも2つの制御モードを切り替えて前記表示物を制御する制御部とを備える操作入力装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記頭部装着部および前記操作部との相対位置が所定の範囲から外れたときに、前記第1の制御モードから前記第2の制御モードに切り替える請求項1に記載の操作入力装置。
【請求項3】
前記相対位置検出手段が、前記操作部または前記頭部装着部の一方に設けられた指標と、前記操作部または前記頭部装着部の他方に設けられ前記指標を撮影する撮影部とを備え、
前記制御部が、前記撮影部によって撮影された画像内における前記指標の位置に基づいて、前記第1の制御モードと前記第2の制御モードとを切り替える請求項1に記載の操作入力装置。
【請求項4】
前記相対位置検出手段が、前記頭部装着部および前記操作部にそれぞれ設けられ、その空間座標系における変位情報を検出する空間センサを備え、
前記制御部は、前記空間センサにより得られた前記頭部装着部と前記操作部との相対位置が所定の範囲から外れたときに、前記第1の制御モードから前記第2の制御モードに切り替える請求項1または請求項3に記載の操作入力装置。
【請求項5】
前記相対位置検出手段が、前記頭部装着部および前記操作部にそれぞれ設けられ、その空間座標系における変位情報を検出する空間センサを備え、
前記制御部は、少なくとも一方の前記空間センサにより検出された変位情報が所定の閾値より大きいときに、前記第1の制御モードから前記第2の制御モードに切り替える請求項1または請求項3に記載の操作入力装置。
【請求項6】
前記頭部装着部と前記操作部との相対角度を検出する相対角度検出手段を備え、
前記制御部は、前記相対角度検出手段により検出された相対角度が所定の閾値より大きいときに、前記第1の制御モードから前記第2の制御モードに切り替える請求項1に記載の操作入力装置。
【請求項7】
前記操作部に設けられ、該操作部と前記操作者の手との接触の有無を検出する接触センサを備え、
前記制御部は、前記接触センサにより前記操作部と前記操作者の手との接触が検出されないときに、前記第1の制御モードから前記第2の制御モードに切り替える請求項1に記載の操作入力装置。
【請求項8】
前記頭部装着部に設けられ、該頭部装着装置と前記操作者の頭部との接触の有無を検出する接触センサを備え、
前記制御部は、前記接触センサにより前記頭部装着部と前記操作者の頭部との接触が検出されないときに、前記第1の制御モードから前記第2の制御モードに切り替える請求項1に記載の操作入力装置。
【請求項9】
前記操作者の視線を検出する視線検出手段を備え、
前記制御部は、前記視線検出手段により検出された視線が、正面方向からずれたときに、前記第1の制御モードから前記第2の制御モードに切り替える請求項1に記載の操作入力装置。
【請求項10】
前記操作者による操作により前記制御部に対して前記第2の制御モードから前記第1の制御モードへの切り替えを許可する許可手段を備え、
前記制御部は、前記第1の制御モードから前記第2の制御モードに切り替えた後、前記許可手段によって許可されたときに前記第1の制御モードに切り替える請求項1に記載の操作入力装置。
【請求項11】
請求項1から請求項10のいずれかに記載の操作入力装置と、
前記表示物であるマニピュレータと、
前記ディスプレイに表示する前記表示物の映像を取得する観察装置とを備えるマニピュレータシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−206180(P2011−206180A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−75378(P2010−75378)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】