説明

操作子及び運転者操作装置

【課題】加速操作と制動操作の切替時間の低減を図りつつ、加速操作と制動操作とを適切に実施可能とする。
【解決手段】上記課題を解決するために、本発明は、加減速操作用操作子2に、足底を当接可能な足底当接面4aと足の踵部で引っかけ可能な立上り部5を設ける。加減速操作用操作子2は、進退機構Aによって車両前後方向に進退可能となっている。そして、基準位置Hよりも後方に後退させることで加速操作を行い、基準位置Hから踏み込むことで制動操作を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転者が加速操作及び制動操作を行うための操作子、及び運転者操作装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載のペダル装置は、前方向へ踏み込むブレーキパッドと左右方向へ押し開くアクセルパッドとからなる。そして、特許文献1に記載のペダル装置では、ブレーキパッドの踏み込みとアクセルパッドの押し開きとを切り替えることで、運転者が、加速操作と制動操作とを一つの操作子で選択的に行うことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−6969号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1のペダル装置は、制動操作子の上に加速操作子が配置された構成となっており、加速操作も制動操作もともに運転者による前方への踏込み操作によって実施する構成である。このため、誤って加速操作と制動操作とが同時に行われる可能性が高いという課題がある。
本発明は、上記のような点に着目したもので、加速操作と制動操作とを適切に実施可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明は、操作子に、上方若しくは斜め上方を向く面である足底当接面と、この足底当接面から上方に立ち上がると共に、足底当接面の中心に対し車両前後方向後側に偏心した位置に設けられる立上り部とを設ける。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、例えば、足底当接面の踏込みによって制動操作を行い、立上り部に踵部を引っかけて後方に操作子を移動させることで加速操作を行うというような操作が可能となる。
これによって、制動操作方向と加速操作方向とは異なる方向への操作とすることが出来るので、適切な加速操作と制動操作とを独立して実施することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明に基づく実施形態に係る操作子を備える車両の概要構成図である。
【図2】本発明に基づく実施形態に係る操作子を示す斜視図である。
【図3】本発明に基づく実施形態に係る操作子の配置を示す模式的側面図である。
【図4】進退機構の例を説明する図である。
【図5】回動機構の例を説明する図である。
【図6】加速操作を説明する図である。
【図7】操作子の案内部の変形例を示す模式的側面図である。
【図8】ストッパについて説明する図である。
【図9】ストッパについて説明する図である。
【図10】ストッパについて説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
次に、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
図1は、本実施形態の操作子及び運転者操作装置が設けられた車両の概要構成図である。
(構成)
図1中符号1は運転席である。運転席1は、車両の車室内に設置され、車両前方を向いて配置されている。
符号2は加減速操作用操作子である。加減速操作用操作子2は、運転者が加速操作及び制動操作を足で実行する操作子である。加減速操作用操作子2は、上記運転席1の前方に位置する車室内の床面3に配置されている。その加減操作用操作子は、図2及び図3に示すように、操作子本体4と立上り部5とを備える。
【0009】
操作子本体4は、上面が上方若しくは斜め上方を向く足底当接面4aを形成する。足底当接面4aは、運転者の足Fの底を載置可能な大きさ及び形状となっている。本実施形態の足底当接面4aは平坦な平面形状となっている。平坦形状とすることで、車両前後方向前方に踏込み易くする。足底当接面4aには、運転者の足Fの底との摩擦を稼ぐために、微小な凹凸状や模様状の加飾物があっても構わない。
【0010】
また上記立上り部5は、上記足底当接面4aの中心よりも車両前後方向後方位置(上記運転席1側位置)に偏心して位置され、且つ当該足底当接面4aから上方に延在するように立ち上がっている。本実施形態の立上り部5は、操作子本体4と一体に形成されている。その立上り部5は、上記足底当接面4aを規定する平面に対し略90度、つまり上記平面のほぼ法線方向に向けて延びている。すなわち、上記立上り部5は、上記足底当接面4aに対し略90度の角度θをもって立ち上がっている。略90度とは、本実施形態では80度以上100度以下の角度範囲の角度とする。
【0011】
上記のように、立上り部5を上記足底当接面4aの上記運転席1側位置に設けることで、立上り部5における車両前後方向前方を向く面(以下、引っかけ面5aと呼ぶ)は、上記足底当接面4aに載置した運転者の足Fの踵部に対し、車両前後方向後方から対向する。本実施形態の立上り部5の高さは、上記足底当接面4aに載置した運転者の足Fの踵部の上側に位置する運転者の足首とも車両前後方向で対向可能な高さとなっている。
その立上り部5の引っかけ面5aは、円弧状の横断面凹形状となっている。
本実施形態の運転操作装置は、進退機構A、及び回動機構Bを備える。
進退機構Aは、車両前後方向に向けて上記加減速操作用操作子2を進退可能とする機構である。回動機構Bは、車幅方向に延びる回転軸周りに上記操作子を回動可能とする機構である。
【0012】
その進退機構A及び回動機構Bについて、図4,図5を参照しつつ説明する。
進退機構Aは、図4に示すように、平板状の支持台6と、車輪7と、レール8とを備える。車輪7は、支持台6の下面に対し、軸を車幅方向に向けて回転自在に固定されている。またレール8は、車室内の床面3に対し車両前後方向に向けて延在するように敷設されている。そして、上記車輪7が上記レール8上を転動することで、上記支持台6は車両前後方向に進退可能となっている。その支持台6の上に上記加減速操作用操作子2が取り付けられる。これによって、加減速操作用操作子2は、車両前後方向に進退可能となっている。
【0013】
上記加減速操作用操作子2は、車幅方向に軸を向けた回転軸周りに回動可能な状態で上記支持台6に取り付けられている。次にその取付け構造である回動機構Bについて説明する。
回動機構Bは、図5に示すように、一対の台側取付け片10a、10b、一対の操作子側取付け片11a、11b、第1回転軸12、第2回転軸13を備える。
【0014】
一対の台側取付け片10a、10bは支持台6上面から上方に立設している。一対の台側取付け片10a、10bは車幅方向で対向配置している。また、一対の操作子側取付け片11a、11bは加減速操作用操作子2の下面から下方に立設している。この一対の操作子側取付け片11a、11bも車幅方向で対向配置している。そして、一方の台側取付け片10aと一方の操作子側取付け片11aが、車幅方向に延在する第1回転軸12によって連結され、他方の台側取付け片10bと他方の操作子側取付け片11bが、車幅方向に延在する第2回転軸13によって連結されている。これによって、上記加減速操作用操作子2は、車幅方向に軸を向けた回転軸周りに回動可能な状態となっている。なお、回転軸は、上記立上り部5近傍に設定する。また、その回転軸の位置によって加減速操作用操作子2の車両前後方向の位置を規定する。
【0015】
また、上記第2回転軸13の一端部は、上記他方の操作子側取付け片11bに固定されている。また、上記第2回転軸13の他端部は、反力モータ15の出力軸に連結している。反力モータ15は、上記支持台6に支持されている。この反力モータ15は、無負荷状態における、上記加減速操作用操作子2の足底当接面4aの向きを規定すると共に、当該足底当接面4aを踏み込む際に反力を付与可能となっている。
【0016】
また、上記支持台6つまり加減速操作用操作子2を予め設定した基準位置に付勢する復帰機構Cを備える。本実施形態の復帰機構Cは、図4に示すように、回転ドラム16とワイヤ17とを備える。すなわち、回転ドラム16は、上記支持台6の車両前後方向前側に配置され、回転軸を車幅方向に向けて車体に取り付けられている。その回転ドラム16にはワイヤ17が巻回されており、そのワイヤ17の一端部側は、車両前後方向後方に延び、その一端部を当該支持台6に連結している。上記回転ドラム16は、不図示のバネなどの付勢機構によって回転が付勢させるようになっている。これによって、予め設定した基準位置から上記支持台6つまり加減速操作用操作子2が車両前後方向に変位すると、その分だけ回転ドラム16が回転し、上記支持台6つまり加減速操作用操作子2を基準位置に向けて付勢する。なお、復帰機構Cは上記構成には限定されない。
【0017】
また、本実施形態の運転操作装置は、加速操作検出センサ20と制動操作検出センサ21とを備える。
加速操作検出センサ20は、運転席1前方に設定した基準位置Hに対する加減速操作用操作子2の車両前後方向後方(運転席1方向)への移動量に応じた量を加速操作量として検出する。加速操作検出センサ20は、例えばストロークセンサで構成し、基準位置Hを原点とした加減速操作用操作子2の後退量を検出する。または、加速操作検出センサ20は、例えば回転ドラム16の回転角を基準位置Hに対する加減速操作用操作子2の後退量に応じた量として検出する。加速操作検出センサ20は、検出信号を駆動源コントローラ22に出力する。
駆動源コントローラ22は、加速操作検出センサ20からの信号に基づき駆動源23を駆動して車両の加速を制御する。駆動源23は、エンジンでも良いしモータでも良い。すなわち車両は、エンジン車両でも電気車両でもハイブリッド車両でも構わない。
【0018】
また制動操作検出センサ21は、予め設定した基準位置Hからの上記加減速操作用操作子2の踏込み量若しくは足底当接面4aへの踏込み圧を運転者の制動操作量に応じた量として検出する。制動操作検出センサ21は、上記加減速操作用操作子2が上記基準位置H若しくは基準位置Hよりも車両前後方向前方に位置する場合に検出を行う。本実施形態の制動操作検出センサ21は、例えば上記足底当接面4aの踏力(踏込み圧)を制動操作量に応じた量として検出する。制動操作検出センサ21は、検出値を制動コントローラ24に出力する。制動コントローラ24は、制動操作検出センサ21から入力した検出値に応じて制動装置25を制御することで、車両に上記検出値に応じた制動力を付与する。制動装置25は、油圧ブレーキであっても良いし電動ブレーキであっても良い。また回生制動であっても良い。制動操作検出センサ21は、力覚センサなどで構成すればよい。
【0019】
本実施形態の制動操作検出センサ21は、基準位置Hから加減速操作用操作子2の踏込みを検出すると、反力モータ15が足底当接面4aを予め設定したストローク角(床面3に近づくストローク角)まで小さな反力で回動変位させ、その後、踏み込み量が多くなるほど、ストロークを抑制するように、反力モータ15が加減速操作用操作子2に相対的に大きな反力を付与する。そして、踏力に応じたストローク角若しくは力覚センサ等で踏力自体を検出する。ストローク角は、例えば反力モータ15の出力軸に設けられた回転角センサによって検出する。この場合、力覚センサ及び回転角センサが制動操作検出センサ21となる。この場合、上記予め設定したストローク角となるまでは、上記ストローク角を制動操作量として検出し、その後は、踏力を制動操作量として検出する。もちろん上記ストローク角だけを制動操作量としても良いし、踏力だけを制動操作量としても良い。
【0020】
また制動操作検出センサ21は、反力モータ15で発生している反力と反力モータ15の出力軸の回転角度に基づき、踏力を制動操作量として算出するようにしても良い。
ここで、基準位置Hの検出は、不図示のリミットスイッチによって検出しても良いし、上記加速操作検出センサ20の検出信号に基づき判定しても良い。
上記構成の加減速操作用操作子2は、上述のように復帰機構Cによって予め設定した基準位置Hに戻るように付勢されている。
【0021】
上記基準位置Hは、図3に示すように運転席1の前方に設置される。また、基準位置Hにおいて、上記加減速操作用操作子2の足底当接面4aが運転席1側を向くように傾斜させておく。上記足底当接面4aの傾斜は、着座姿勢において、運転者の足首角度が90度若しくは90度近傍の角度となるような傾斜角度に設定しておく。上記傾斜の設定は、反力モータ15によって行う。
【0022】
ここで、無負荷の状態における上記加減速操作用操作子2の足底当接面4aの傾斜角は、反力モータ15で実施せず、不図示のバネなどの付勢機構によって上記運転席1側を向くように傾斜となるようにしておいても良い。
なお、上記反力モータ15による反力は、上記加減速操作用操作子2が基準位置Hよりも座席側位置に存在する場合には、相対的に小さく若しくは零(フリー状態)に設定する。これによって、加速操作時において、上記加減速操作用操作子2の引き寄せに応じて、常に運転者の足首が90度に出来るなど、加速操作がやりやすくなる。
【0023】
(動作その他)
運転者の足Fが上記加減速操作用操作子2に載っていないなど、上記加減速操作用操作子2が無負荷の状態では、加減速操作用操作子2は、復帰機構Cによって基準位置Hに付勢されている。
加減速操作を行うために、運転者が運転席1に着座して、足を加減速操作用操作子2の足底当接面4aを載せたとする。
このとき、足底当接面4aが運転席1側に傾斜していることで、足首が90度に近い状態で足を足底当接面4aに載せることが可能となる(図3参照)。なお、反力モータ15の発生する反力を小さくしておくことで、運転者の踏込みによって、運転者の好みの傾斜角度に足底当接面4aが調整できるようにしても良い。
【0024】
そして、運転者が車両を加速したい場合、加速操作として、加減速操作用操作子2に載せた足を運転席1側に引くことで実施される。足を運転者側(手前)に引くことで、加減速操作用操作子2は、レール8に案内されて手前に移動(後退)する。この後退量を加速操作検出センサ20が検出することで、基準位置Hからの後退量(操作量)に応じた加速制御が実施される。
【0025】
この足を引き寄せる操作のときには、反力モータ15の反力を小さく若しくはゼロとしておくことで、操作子を引きつけるにつれて、図3示すように、足底当接面4aが上方に向くように自然と変化することで、加速操作を妨げることが無い。
このとき、足底当接面4aに対する立上り部5の立上り角度を略90度としているので、踵部が立上り部5の引っかかり面5aに引っかかりやすくなる。この結果、足裏が足底当接面4aから離れたり足底当接面4aへの接触圧が小さくても、足の引き寄せにともない、確実に加減速操作用操作子2を手前に引き付けることが可能となる。
また、加速操作状態から加減速操作用操作子2を基準位置Hに向けて戻すことで、上記後退量が小さくなることで加速操作量が小さくなり、基準位置Hに復帰したときに加速操作量は零となる。
【0026】
また、運転者が車両速度を減速したい場合には、制動操作として、基準位置Hから加減速操作用操作子2の足底当接面4aを前方に踏み込む。すなわち制動操作を行う場合には、基準位置Hから加減速操作用操作子2を前方に向けて踏み込むことで操作を行う。このとき、踏み込み初期は、反力モータ15の反力が相対的に小さい状態で予め設定した所定角度まで、水平面に対する足底当接面4aの角度αが狭くなるようにストローク量(踏込み量)がストロークする。その後は、反力モータ15の反力が相対的に大きくなることで、踏み込み量が多くなるほど加減速操作用操作子2は前方にストロークしなくなり、踏力を制動操作量として制動操作検出センサ21が検出する。そして、その制動操作検出センサ21が検出する操作量に応じた制動制御が行われる。
【0027】
このように、加速操作時は、基準位置Hに対して加減速操作用操作子2を引き寄せて加速操作を行い、制動操作時には、基準位置Hに対して加減速操作用操作子2を前方に踏み込んで制動支持を行う。これによって、加速及び減速操作を行う操作子を一つにしても、加速操作と制動操作が排他的に実施され、加速操作と制動操作が誤って同時に実施されることが回避される。
【0028】
また、車両加速時には、加速Gによって運転者の体は運転席1のシートに押さえつけられる。このため、加速操作を引く方向に設定することで、加速操作がやりやすくなる。この結果、確実に加速操作を行うことが可能となる。また車両制動時は、減速Gで運転者の体が運転席1から離れる方向の力を受け、加減速操作子を踏み込み易くなる。したがって制動操作を車両前後方向前方の踏み込みとすることで、制動操作がやりやすくなる。この結果、確実に制動操作を行うことが可能となる。
【0029】
また、加減速操作用操作子2は車両前後方向にのみ進退する構成となっている。つまり、加減速操作用操作子2が車幅方向に変位することがないので、加速及び制動操作の操作量への影響を抑えられる。このように、車両旋回時の横Gやロール等によって加速及び制動操作量が想定した操作量よりも多くなったり少なくなったりすることを抑制することが出来る。
ここで、上記加減速操作用操作子2は操作子を構成する。上記レール8は案内部を構成する。加速操作検出センサ20は、加速操作検出装置を構成する。制動操作検出センサ21は制動操作検出装置を構成する。
【0030】
(本実施形態の効果)
(1)運転者が足Fで加速及び制動操作を行う操作子は、上方若しくは斜め上方を向く面である足底当接面4aと、その足底当接面4aから上方に立ち上がる立上り部5とを備える。上記立上り部5は、上記足底当接面4aの中心に対し車両前後方向後側に偏心した位置に設けられている。
足底当接面4aの踏込みによって制動操作を行い、また立上り部5に踵部を引っかけて後方に操作子を移動させることで加速操作を行うというような加減速操作が可能となる。
このように、一つの操作子で加速操作と制動操作とが可能となるので、加速操作と制動操作の切替時間の低減を図ることが出来る。
また、制動操作方向と加速操作方向とを異なる方向への操作とすることが出来るので、適切な加速操作と制動操作とを独立して実施することが可能となる。
また、足で加減速を操作できると、手は操舵操作に集中できる。
【0031】
(2)上記立上り部5は、上記足底当接面4aに対し80度以上100度以下の角度範囲の角度をもって立ち上がっている。
これによって、立上り部5に足を引っかけた操作がやりやすくする。80度以上100度以下の角度範囲としたのは、次の理由による。
ここで、足底当接面4aに対する立上り部5の角度が100度よりも大きい場合(足底当接面4aに対し立上り部5が大きく後方に倒れている場合)には、踵部が立ち上がり部に引っ掛けにくく操作子を後退させる操作が行いづらい。一方、足底当接面4aに対する立上り部5の角度が80度よりも小さい場合(足底当接面4aに対し立上り部5が大きく前方に倒れている場合)には、足首(アキレス腱)の部分に対し立上り部5が集中して当接して操作子の操作がし難くなる。
【0032】
(3)上記足底当接面4aは平坦形状となっており、上記立上り部5における車両前後方向前方を向く面は、横断面凹形状となっている。
足底当接面4aを平坦形状とすることで踏込み易くなる。ここで、足底当接面4aが凹状の場合には、踏みづらく、足底当接面4aが凸状の場合には、足のサイズによって位置があわせにくい。
また、立上り部5の車両前後方向前方を向く面を横断面凹形状となっているので、踵部を引っかけやすく、且つ踵部がずれにくくなる。
【0033】
(4)運転者操作装置は、上記操作子を車両前後方向に進退可能とする進退機構Aと、予め設定した基準位置Hに対し車両前後方向後方への上記操作子の後退を加速操作として検出する加速操作検出装置と、を備える。
進退方向つまり操作子の操作方向を車両前後方向とすることで、横Gによる加速操作や制動操作への影響を抑えることが可能となる。
車両加速時には、加速Gによって運転者の体は運転席1に押さえつけられる。このため、加速操作を手前に引く方向に設定することで、加速操作がやりやすくなる。この結果、確実に加速操作を行うことが可能となる。
【0034】
(5)運転者操作装置は、車幅方向に延在する回転軸周りに上記操作子を回動可能とする回動機構Bを備える。なお回転軸は、足底当接面4aにおける車両前後方向後側に設けることが好ましい。
操作子を進退させるに伴い、足首の角度を最適とする足底当接面4aの傾斜角度は変わる。これに対し、回動機構Bを設けることで、操作子の進退位置に応じて操作子の傾きを変更可能となるので、操作子を操作する足の足首の角度を適切な角度にすることが出来る。
【0035】
(6)運転者操作装置は、上記基準位置Hから車両前後方向前方への上記操作子の踏込みを運転者の制動操作として検出する制動操作検出装置を備える。
車両制動時は、減速Gで運転者の体が運転席1から離れる方向の力を受け、加減速操作子を踏み込み易くなる。制動操作を車両前後方向前方の踏み込みとすることで、制動操作がやりやすくなる。この結果、確実に制動操作を行うことが可能となる。
また上述のように、加速操作時は、基準位置Hに対して加減速操作用操作子2を引き寄せて加速操作を行う。そして、制動操作時には、基準位置Hに対して加減速操作用操作子2を前方に踏み込んで制動支持を行う。これによって、加速及び減速操作を行う操作子を一つにしても、加速操作と制動操作が排他的に実施され、加速操作と制動操作が誤って同時に実施されることが回避される。
【0036】
(7)運転者操作装置は、運転者が足で加速及び制動操作を行う操作子を車両前後方向に進退可能な進退機構Aと、予め設定した基準位置Hに対し車両前後方向前方への上記操作子の踏込みを検出する制動操作検出装置と、上記基準位置Hに対し車両前後方向後方への上記操作子の変位を検出する加速操作検出装置と、を備える。
加速及び減速操作を行う操作子を一つにしても、加速操作と制動操作が排他的に実施され、加速操作と制動操作が誤って同時に実施されることが回避される。
【0037】
(変形例)
(1)上記進退機構Aは、上記操作子を車両前後方向に案内する案内部を備え、その案内部は、上記基準位置Hから車両前後方向後方に向かうにつれて下方に変位する円弧状の軌道で上記操作子を案内可能となっている。
すなわち、図7に示すように、基準位置Hから座席側に向かうレール8を、座席側に近づくほど下側に変位した側面視凹状の曲線軌道とする。着座した運転者の平均的な膝位置から基準位置Hのレール8までの距離を半径とし、上記平均的な膝位置を円中心とした円弧軌道に設定する。なお、基準位置Hよりも前方側は平坦とする。
このようにすると、加減速操作用操作子2を加速操作のために引き寄せる際に、膝位置が変化しないか膝の移動を小さく抑えられる。この結果、着座姿勢を変えずに、つまり、リラックスした状態で加速操作を行うことが可能となる。
【0038】
(2)また、図8〜図10に示すように、基準位置Hから加減速操作用操作子2を踏み込む際に、操作子本体4と支持台6との間に収まる楔状のストッパ30を設けても良い。
このストッパ30はレール31に案内されて車両前後方向に揺動可能として、操作子本体4と支持台6との間に楔状のストッパ30が挟み込む際の衝撃を緩和可能とする。
この場合、加減速操作用操作子2を踏み込むと、上記ストッパ30によって、加減速操作用操作子2の角度が固定される。そして、加減速操作用操作子2の踏み込み初期はストッパ30が加減速操作用操作子2と共に少しだけ前進し、その前進用をストッパ30もしくは加減速操作用操作子2に設定した操作量検出装置(ストロークセンサなど)を用いて検出する。この検出値を制動操作量とする。さらに、踏み込むとストッパ30は前進せず、足底当接面4aへの踏力を制動操作量として力覚センサなどを用いて検出する。
(3)上記実施形態では、進退機構Aの進退をレール8と車輪7によって実現しているが、これに限定しない。例えば、リニアガイドなどの直動案内装置で進退機構Aを構成しても良い。
【符号の説明】
【0039】
1 運転席
2 加減速操作用操作子
3 床面
4 操作子本体
4a 足底当接面
5 立上り部
5a 引っかけ面
6 支持台
7 車輪
8 レール(案内部)
10a 台側取付け片
10b 台側取付け片
11a 操作子側取付け片
11b 操作子側取付け片
12 第1回転軸
13 第2回転軸
15 反力モータ
16 回転ドラム
17 ワイヤ
20 加速操作検出装置
21 制動操作検出装置
22 駆動源コントローラ
23 駆動源
24 制動コントローラ
25 制動装置
30 ストッパ
A 進退機構
B 回動機構
C 復帰機構
F 足

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転者が足で加速及び制動操作を行う操作子であって、
上方若しくは斜め上方を向く面である足底当接面と、その足底当接面から上方に立ち上がる立上り部とを備え、上記立上り部は、上記足底当接面の中心に対し車両前後方向後側に偏心した位置に設けられていることを特徴とする操作子。
【請求項2】
上記立上り部は、上記足底当接面に対し80度以上100度以下の角度範囲の角度をもって立ち上がっていることを特徴とする請求項1に記載した操作子。
【請求項3】
上記足底当接面は平坦形状となっており、上記立上り部における車両前後方向前方を向く面は、横断面凹形状となっていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載した操作子。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載した操作子と、上記操作子を車両前後方向に進退可能とする進退機構と、予め設定した基準位置に対し車両前後方向後方への上記操作子の後退を加速操作として検出する加速操作検出装置と、を備えることを特徴とする運転者操作装置。
【請求項5】
車幅方向に延在する回転軸周りに上記操作子を回動可能とする回動機構を備えることを特徴とする請求項4に記載した運転者操作装置。
【請求項6】
上記進退機構は、上記操作子を車両前後方向に案内する案内部を備え、その案内部は、上記基準位置から車両前後方向後方に向かうにつれて下方に変位する円弧状の軌道で上記操作子を案内可能となっていることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載した運転者操作装置。
【請求項7】
上記基準位置から車両前後方向前方への上記操作子の踏込みを運転者の制動操作として検出する制動操作検出装置を備えることを特徴とする請求項4〜請求項6のいずれか1項に記載した運転者操作装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−128797(P2012−128797A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−281913(P2010−281913)
【出願日】平成22年12月17日(2010.12.17)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】