支承装置
【課題】鉛直方向と水平方向の荷重支持特性に優れ、当該水平方向の荷重支持特性を任意に設定することが可能であり、鉛直下方及び鉛直上方の揺動に追従して振動を十分に吸収、分散出来、鉛直面内、特に橋軸方向における回転追随性能や回転力分散性能を向上させることを可能とする。
【解決手段】非環状の凸部を有する第一剛性体3と、当該凸部が配置設定される凹部を有する第二剛性体3と、前記第一剛性体と前記第二剛性体との間に介挿される弾性体4とが支承方向に重ねて配設される支承装置であって、前記支承方向に直交すると共に互いに直交する第一方向と第二方向のいずれかの方向から見た場合にも、前記凸部は、前記凹部を形成する壁部と重なる領域を有する。
【解決手段】非環状の凸部を有する第一剛性体3と、当該凸部が配置設定される凹部を有する第二剛性体3と、前記第一剛性体と前記第二剛性体との間に介挿される弾性体4とが支承方向に重ねて配設される支承装置であって、前記支承方向に直交すると共に互いに直交する第一方向と第二方向のいずれかの方向から見た場合にも、前記凸部は、前記凹部を形成する壁部と重なる領域を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば建築物や橋梁等の各種構造物を支承する支承装置に関する。
【背景技術】
【0002】
元来、建築物や橋梁等の構造物の支承装置には、大別して、水平方向の荷重を支承する水平荷重支承機能、鉛直方向の荷重を支承する鉛直荷重支承機能、鉛直面内における回転荷重を支承する鉛直回転支承機能等が求められる。特に、橋梁用支承装置にあっては、水平方向をx軸方向とy軸方向からなる直交座標系で見た場合に、水平荷重支持機能や鉛直回転支承機能として、x軸方向とy軸方向に求められる機能や性能は異なる。
【0003】
ここで、x軸方向を橋軸方向とし、y軸方向を橋軸直角方向とすると、一般に、構造物である橋梁は橋軸直角方向よりも橋軸方向が長くなる。このため、熱伸縮量や動的な交通荷重や風や地震による揺動量、動的或いは静的な交通荷重や地震等による回転量等々が橋軸方向と橋軸直角方向とでは大きく異なるものとなる。従って、橋梁用支承装置では、自ずと方向によって求められる機能や性能が異なるものとなっている。
【0004】
このような技術背景の中、これまでの支承装置、特に橋梁用支承装置には、平成7年の大震災以来、ゴムを主たる構成要素としたゴム支承装置が求められるようになった。中でも鉛直荷重支持性能があって、水平力分散性能の高い積層ゴム支承装置は、広範に使用されるようになった。この積層ゴム支承装置は、例えば特許文献1に記載されているように、ゴム板と鉄板を交互に積層し、加硫接着によって相互に接着して構成され、その上部が橋梁の橋桁等の上部構造物に固定され、その下部が橋脚等の下部構造物に固定されて設置されて用いられる。
【0005】
しかしながら積層ゴム支承装置にあっては、構造上、積層構造を採るため、必然的に所要厚さが大きくなって嵩張る上、高荷重を支持させるには広面積化する必要があり、特に長大橋向けには大型化する欠点がある。従って、性能要求上、支承装置が大型化してしまった場合には、下部構造物である橋脚や橋台の上面の面積がより大きく要求されることになり、橋梁全体として高コスト化してしまうという欠点がある。
【0006】
また大型の支承装置が求められる場合であって、新設でない場合には、既存の支承装置が設置されていることから設置スペースが限定されるために支承装置の大きさが特に問題となり、高さが低く面積が狭い小型の支承装置でなければ交換設置出来ないという不具合があった。
【0007】
まして近年、建築物や橋梁等の構造物の大型化や予想される地震規模の大型化に伴い、支承装置に求められる機能や性能も高度化してきており、積層ゴム支承で対応しようとした場合、大型化してしまうことは避けられない。
【0008】
また上述の如くの積層ゴム支承装置は、平面形状として矩形状、特に正方形状の物や円形状の物があるが、いずれも機能と性能の面で、x軸方向とy軸方向に対して同等になる。しかしながら、既述の通り、x軸方向とy軸方向とでは求められる機能や性能が異なるために、一方では機能不足、或いは機能過剰が生じ、他方では性能不足や性能過剰が生じるということが起こっている。
【0009】
例えば、積層ゴム支承は、橋軸方向への剪断変形による水平力分散性能が優れているが、橋軸直角方向への剪断変形は過剰な水平揺動や落橋の原因となり得るという欠点がある。これらの欠点を補うために、橋軸方向への剪断変形を許容しつつ、橋軸直角方向への剪断変形を防止するため、サイドブロック等を補足的に設置することがなされているが、設計コスト、材料コスト、製造コスト、施工コスト、メンテナンスコスト等の各種の追加コストが必要となる上、設置スペースが必要となるという問題があり、またゴム支承装置自体としての橋軸直角方向への水平剪断変形機能や水平力分散性能は過剰な機能、性能であるという欠点は改善されていないという問題がある。
【0010】
また、橋梁用支承装置においては、鉛直回転支持機能や性能においても橋軸方向と橋軸直角方向とで機能要求の有無や要求性能レベルの問題があることは既述の通りであるが、積層ゴム支承装置の場合には、鋼製支承装置と異なり、鉛直可撓性能があることから橋軸直角方向における鉛直面内での回転は、回転性能によってなされるのではなく鉛直可撓性によって達せられ、橋軸方向における鉛直面内における回転は鉛直方向の圧縮撓みによってなされることになる。
【0011】
しかしながら、圧縮撓み性能、即ち鉛直可撓性能を向上させるには鉛直弾性を改善する必要が生じるが、この改善を図ろうとすると鉛直荷重支持性能が低下するという二律背反が生じる。更に道路橋示方書によれば、ゴム支承においては剪断変形は許容されるが構成ゴムに引張力が作用することは許容されていないことから積層ゴム支承装置において鉛直面内における回転性能を持たせることは困難であった。
【0012】
他方、先述のような鉛直高荷重支持性能の向上に伴う大型化という積層ゴム支承装置の問題の改善を図ったものとして、例えば特許文献2に記載された機能分離型の固定支承としての弾性支承装置が提案されている。この弾性支承装置は、積層ゴム支承装置の持つ水平力分散機能は持たず、この機能を別の支承装置に持たせ、鉛直荷重支持機能を高度化するものであって、上沓と下沓がそれぞれ互いに嵌合する同心円状の複数の円筒部と中心に位置する円柱部とからなる凸部と凹部とを有する。そして、嵌合状態の直径鉛直断面視において、これら互いに嵌合する凸部と凹部は、それぞれ断面矩形状をなし、それらの隣接する側面同士と互いに対向する底面と頂面との間にゴム等の一様な弾性体が実質的に隙間無く充填され、連続するゴム層が挟持されて結合された構成になっている。
【0013】
このように構成される上述の如くの弾性支承装置は、それら互いに隣接する凸部の側面と凹部の側面とこれらの間のゴム層とで水平荷重支持部が構成され、凸部の頂面と凹部の底面とこれらの間のゴム層とで鉛直荷重支持部が構成されている。
【0014】
また、特許文献3に記載された支承装置も、特許文献2の弾性支承装置と同様に上沓と下沓が互いに嵌合する多条の円筒状の構成を採り、上沓と下沓における各凸部と凹部とを構成する円筒部や円柱部は、それぞれ鉛直断面形状における両側面間距離が端面をなす頂面に向かって接近して狭まり、両側面が傾斜してなる断面台形状に形成されて互いに嵌合され、これらの凹部と凸部との間にゴム等の一様な弾性体が実質的に隙間無く充填されて構成されている。このような特許文献2及び3に記載された弾性支承装置によって、支承装置の小型化や軽量化が図られ、鉛直荷重と水平荷重の支持性能の向上がなされるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2002−181129号公報
【特許文献2】特開2005−337002号公報
【特許文献3】特開2009−46944号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
上述した特許文献2、3に記載された弾性支承装置によれば、機能分離型固定支承装置としては、広面積化したり、厚さを増したりと支承装置を大型化させることなく、水平方向及び鉛直方向における荷重支持性能を向上させることが出来る。しかしながら、例えば当該弾性支承装置を橋梁の橋桁と橋脚との間に配設して、これらの間の荷重伝達や荷重緩和を担わせた場合、機能分離型固定支承にあっては、一般に支間距離の分だけ固定支承にはモーメントが集中的に作用することになる。その上、有限の伝達速度を有する地震波の橋梁への入力が、固定支承が配設された橋桁側からあった際には、鉛直力の吸収、分散性能や水平力の吸収、分散性能、とりわけ橋軸方向における吸収、分散性能が求められるが、特許文献2或いは3に記載の弾性支承装置では、橋梁等の社会インフラ的構造物を長期的に保持するための各種入力に対する先述の如くの吸収性能や分散性能が認められないために、今後予想される大型地震に抗して行くことが出来ないという問題がある。
【0017】
また、機能分離型固定支承と併用される可動支承において、PTFE等の滑板を用いて水平変位を可能ならしめる構成の支承装置を併用する場合には、長大橋のように支承する対象としての橋桁が高荷重であったり、或いは交通重量によって高荷重化した場合、滑板に対する鉛直荷重が大きくなる。この様な場合には、滑板の摩擦係数が元来小さな値であるにも拘わらず、垂直抗力が大きくなるために滑板の表面に作用する摩擦抵抗が著しく大きくなる。
【0018】
従って、橋桁や橋脚に水平力が作用しているにも拘わらず、滑板が滑り出さない状態に陥り、滑板式可動支承があたかも固定支承かのように振る舞うことになる。つまり、機能分離型支承においては、従来、可動支承と固定支承の組合せで使用すべきであるにも拘わらず、あたかも固定支承と固定支承の組合せで使用しているのと同様の状態になってしまい、橋桁や橋脚に著しい負荷が掛かることになる。このような事情からも固定支承であっても水平力の吸収、分散性能、特に橋軸方向に対する水平力の吸収、分散性能が求められるが、従来の固定支承では水平力の吸収、分散性能が皆無であってこれらのような問題に対応出来ないという欠点があった。
【0019】
特に、道路橋や鉄道橋等の橋梁用支承装置、とりわけ機能分離型固定支承装置としての弾性支承装置においては、交通渋滞時や低速移動による静的荷重や大型車両や大型積載車両等を含む車両通行などに伴う動的荷重や小規模地震による橋軸方向における鉛直面内での回転や橋軸方向における橋桁の微少変位や微少伸縮に追随したりそれらによる橋桁に対する負荷や橋脚に対する負荷を緩和したりすることが求められるが、先述した特許文献2或いは3に記載された支承装置では、上沓と下沓のそれぞれ凹凸形状をなす円筒部と円柱部の凹部や凸部が互いに嵌合した構成であるため、橋軸方向における鉛直面内での回転に追従出来ず、また振動や揺動、伸縮を十分に吸収することが出来なかった。
【0020】
更に、橋梁用支承装置では、上述のように橋軸方向における鉛直面内での回転や橋軸方向における橋桁の微少変位や微少伸縮に追随したりそれらによる橋桁に対する負荷や橋脚に対する負荷を緩和したりするために、上述のx軸方向とy軸方向とにおける水平荷重特性を変化させることが望ましい場合がある。しかしながら、特許文献2或いは3に記載された支承装置では、水平荷重特性を変化させることが出来ず、水平荷重特性を任意に変更することが出来なかった。
【0021】
本発明は、上述のような実情に鑑みて本発明者等の鋭意研究によってなされたものであり、鉛直方向と水平方向の荷重支持特性に優れ、当該水平方向の荷重支持特性を任意に設定することが可能であり、鉛直下方及び鉛直上方の揺動に追従して振動を十分に吸収、分散出来、鉛直面内、特に橋軸方向における回転追随性能や回転力分散性能を向上させることが可能な支承装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明の支承装置は、非環状の凸部を有する第一剛性体と、当該凸部が配置設定される凹部を有する第二剛性体と、前記第一剛性体と前記第二剛性体との間に介挿される弾性体とが支承方向に重ねて配設される支承装置であって、前記支承方向に直交すると共に互いに直交する第一方向と第二方向のいずれかの方向から見た場合にも、前記凸部は、前記凹部を形成する壁部と重なる領域を有することを特徴とする。
【0023】
前記支承方向から見て一つ以上の前記凸部が略多角形に形状設定されていることを特徴とする。
【0024】
前記支承方向から見て一つ以上の前記凸部が成す略多角形が略三角形、略四角形、略六角形のいずれか一つ以上の形状に設定されていることを特徴とする。
【0025】
前記支承方向から見て一つ以上の前記凸部がジグザグ形乃至波形に形状設定されていることを特徴とする。
【0026】
前記凸部の側面及び前記凹部を形成する壁部の壁面のいずれか或いは両方が傾斜面とされていることを特徴とする。
【0027】
対向する前記凸部の側面と前記凹部を形成する壁部の壁面とが平行とされていることを特徴とする。
【0028】
前記凸部の側面及び前記凹部を形成する壁部の壁面のいずれか或いは両方が、平面、曲面、凹凸面又は粗面、或いはこれらの組み合わせから成ることを特徴とする。
【0029】
前記凸部の頂面及び前記凹部の底面のいずれか或いは両方が、平面、曲面、凹凸面又は粗面、或いはこれらの組み合わせから成ることを特徴とする。
【0030】
前記凸部及び前記凹部を複数備えることを特徴とする。
【0031】
互いに入り組ませて配置設定される前記凸部の頂部と前記凹部の底部との間に前記弾性体が設けられていない空間を有することを特徴とする。
【0032】
前記空間には、充填材が充填されていることを特徴とする。
【0033】
前記充填材は、前記弾性体と異種の弾性体であることを特徴とする。
【0034】
前記充填材は、非圧縮性の流体であることを特徴とする。
【0035】
前記充填材は、前記凸部と前記凹部とを配置設定するより前に予め充填されていることを特徴とする。
【0036】
前記充填材は、前記凹部と前記凸部とを配置設定した後に充填されることを特徴とする。
【0037】
前記第一剛性体と前記第二剛性体とが互いに乖離することを抑制する乖離抑制手段を備えることを特徴とする。
【0038】
前記乖離抑制手段は、前記第一剛性体と前記第二剛性体との一方に設けられる係合部と、他方に設けられる係合受部とで構成され、これら係合部と係合受部とは、支承方向に対する平行面内で回転可能に係合されていることを特徴とする。
【0039】
前記第一剛性体又は前記第二剛性体の上面或いは下面に摺滑手段を設けることを特徴とする。
【0040】
前記第一剛性体が上部構造物に固定される上沓であり、前記第二剛性体が下部構造物に固定される下沓であることを特徴とする。
【0041】
前記第二剛性体が上部構造物に固定される上沓であり、前記第一剛性体が下部構造物に固定される下沓であることを特徴とする。
【0042】
前記上部構造物が橋桁であり、前記下部構造物が橋脚あるいは橋台であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0043】
本発明の支承装置によれば、支承方向に直交する面において互いに直交する第一方向と第二方向とのいずれから見た場合であっても、第一剛性体の凸部が第二剛性体の凹部を形成する壁部と重なる領域を有しているため、弾性体を挟む第一剛性体と第二剛性体とが、第一方向或いは第二方向に相対移動した場合であっても、相対移動を抑制することが出来る。そして、第一剛性体と第二剛性体との相対移動を抑止する抵抗力が第一剛性体の凸部が第二剛性体の凹部を形成する壁部と重なる領域の面積に比例するため、当該面積を調整することによって第一方向と第二方向との荷重支持特性を任意に設定することが可能となる。つまり、本発明の支承装置によれば、第一方向と第二方向とを水平面内に配置するように姿勢設定することによって、水平方向の荷重支持特性を任意に設定することが出来る。
【0044】
また、本発明の支承装置によれば、第一剛性体の凸部と第二剛性体の凹部とが入り組んで配置設定されてその間に弾性体が介挿されている。このため、支承方向及び当該支承方向と直交する方向に作用する荷重を支持することが出来る。このため、支承方向への積層数を最低限に抑えた場合であっても、複数方向から作用する荷重に対して優れた荷重支持特性を発揮することが出来、装置サイズをコンパクトにすることが出来る。また、本発明の支承装置の構成は、従来の積層ゴム支承装置等と異なり、支承装置を構成する金属等の鋼材からなる剛性体とゴム材等の弾性体とを加硫接着する際には、構造的に熱伝導性が良好であるために、加工時間の短縮が可能であり、ゆえに低コスト性及び量産性を著しく高度化することが出来る。
【0045】
更に、本発明の支承装置においては、支承方向から見て凸部を、例えば、略多角形(略三角形、略四角形、略六角形等)、ジグザグ形又は波形に形状設定することが出来る。このように凸部の形状を変更することによって第一方向或いは第二方向から見た凸部と、凹部を形成する壁部とが重なる面積が変化するため、第一方向と第二方向とにおける荷重支持特性を変化させて適宜設定することが出来る。
【0046】
更に、上記凸部の側面及び上記凹部を形成する壁部の壁面のいずれか或いは両方を傾斜面とすることにより、支承方向から作用する荷重を支承方向と当該支承方向と異なる方向とに分散することが出来る。例えば、凸部の側面を支承方向に対して45°とした場合には、支承方向の半分を側面の法線成分に、残り半分を側面の平行成分に分散することが出来、高荷重を支持することが可能となる。
【0047】
また、一つの凸部においては、逆向きの成分によって互いに相殺されて荷重低減がなされ、荷重支持特性が向上する。従って、平面視における面積が小面積でありながら、また厚さ方向が嵩張ることなく、つまり小型でありながら高荷重を支持することが出来る。
【0048】
更に、対向する上記凸部の側面と上記凹部を形成する壁部の壁面とが平行とされている場合には、第一剛性体と第二剛性体との間に挟まれる弾性体の厚みが均一化され、荷重支持特性を均一とすることが出来る。尚、敢えて凸部の側面と凹部を形成する壁部の壁面とを非平行とし、荷重支持特性を不均一とすることも可能である。
【0049】
更に、凸部の側面及び上記凹部を形成する壁部の壁面のいずれか或いは両方は、平面、曲面、凹凸面又は粗面、或いはこれらの組み合わせから形成することが出来る。また、凸部の頂面及び上記凹部の底面のいずれか或いは両方は、平面、曲面、凹凸面又は粗面、或いはこれらの組み合わせから形成することが出来る。この組み合わせよって、荷重支持特性を変化させることが出来る上、剛性体とこれに接合された弾性体との接合強度を向上させることが出来る。
【0050】
更に、凸部及び凹部を複数備えることが好ましい。これによって、荷重が複数の凸部に分散して作用するため、小型でありながら高荷重を支持することが可能となる。
【0051】
更に、互いに入り組んで配置設定される上記凸部の頂部と上記凹部の底部との間に上記弾性体が設けられていない空間を有する場合には、弾性体が荷重を受けて変形する場合に当該空間に入り込むことが可能となり、弾性体の許容変形量を大きくすることが出来、バネ定数を低下させることができる。つまり、当該空間を設けることによって、バネ定数の調整を行うことが出来る。
【0052】
更に、当該空間に充填材を充填することが出来る。この充填材の構成材料や充填量、充填位置、充填空間の形状等の設定により、支承装置のバネ定数や高さ、荷重支持性能、荷重減衰性能、鉛直面内における回転追従性能等々多用な機能や性能の調整を図ることが出来るようになる。
【0053】
尚、充填材としては、例えば、第一剛性体と第二剛性体との間に介挿される弾性体と異種の弾性体や非圧縮性の流体を用いることが出来る。充填材の種類を選択することによって上述のように支承装置のバネ定数や高さ、荷重支持性能、荷重減衰性能、鉛直面内における回転追従性能等々多用な機能や性能の調整を図ることが出来る。
【0054】
充填材として流体を用いる場合には、例えば、充填時には流体であるが適宜時間が経過した後に固化するものであってもよい。また、一つの空間内に充填される充填材の種類は、一種類であっても或いは複数種類であってもよい。例えば、二液硬化性の流体をそれぞれ適宜量充填して硬化させて適宜の弾性係数を発現するように一固体化させてもよく、勿論、予め二液を混合しておいてから充填することも出来る。また、充填材としては、流体の内部に固体や粒体、気体を混入させたものであってもよい。
【0055】
また、充填材は、気体、液体、ゲル状体から選択される一つ以上の流体から構成することができる。気体は、圧縮率が大きいことから高荷重支持には不向きであるが、比較的低荷重を支持する場合には例えば空気バネのような作用をさせることが可能であり、また加圧状態で充填してもよい。また、不連続気泡のように気泡を内包する流体を充填して置きながら硬化させて、発泡体の如くの充填材とすることも可能である。また例えば、液体やスラリー状乃至ゲル状の非硬化性の充填材を充填した場合、充填空間の変形に自在に対応しつつ、荷重を支持することが可能であり、また寒冷地等の低温下においても凍結しない不凍流体を選択することも可能である。
【0056】
充填材が、非圧縮性の流体である場合には、充填空間の変形に自在に対応しつつも高荷重を支持することが可能となる。
【0057】
充填材が、液体やスラリー状乃至ゲル状の非硬化性で高粘性の高粘性流体である場合には、充填空間を囲繞する弾性体が変形した際に、当該空間内の高粘性の充填材の粘性抵抗によって変形エネルギーを減衰させる効果を期待出来る。
【0058】
また、上述のように、充填材を異種の弾性体とすることも出来る。勿論、充填材が弾性体となるためには、充填時には流動性を示すものであれば好都合である。例えば、弾性体が熱可塑性を示すものであれば、これを充填材として使用する場合には、当該弾性体を適宜温度に加熱して流動可能な状態にしておきながら充填する。また例えば弾性体が、熱硬化性を示すものであれば、硬化前の流動可能な状態の時点で充填する。
【0059】
充填材を予め充填する場合には、予めの設計通り、また手順通りに製造段階や出荷前に充填することが可能であり、これによれば、製造上高効率化を図ることが出来る。
【0060】
また、充填材を後から充填する場合には、出荷後、例えば施工現場において、施工空間の高さ等の大きさに合わせて調整しながら充填することが可能であり、これによれば、従来の施工上における微調整が困難であった問題を解消することが出来る。
【0061】
また、充填材の充填量によって、支承装置の厚み若しくは高さを調整する場合には、充填空間に対する充填材の充填量の多少によって支承装置の厚み若しくは高さを調整することが出来、施工現場での施工空間により精密に適合させることが可能となる。
【0062】
更に、上記第一剛性体と上記第二剛性体とが互いに乖離することを抑制する乖離抑制手段を備える場合には、第一剛性体と第二剛性体とが乖離することが抑制され、大きな地震等によって第一剛性体と第二剛性体とが乖離して支承対象が落下等することを防止することが出来る。
【0063】
また、乖離抑制手段が、上記第一剛性体と上記第二剛性体との一方に設けられる係合部と、他方に設けられる係合受部とで構成され、これら係合部と係合受部とが、支承方向に対する平行面内で回転可能に係合されている場合には、第一剛性体と第二剛性体とを互いに回転可能とすることが出来、支承装置の回転追従性を向上することが出来る。
【0064】
また、第一剛性体又は前記第二剛性体の上面或いは下面に摺滑手段を固設する構成を採用することも出来る。これによれば、第一剛性体又は第二剛性体を摺滑させることが出来、元々固定支承であった本発明の支承装置を可動支承として利用することが可能となる。
【0065】
更に、上記第一剛性体を上部構造物に固定される上沓として、上記第二剛性体を下部構造物に固定される下沓として設定することが可能であり、その反対に、上記第二剛性体を上部構造物に固定される上沓として、上記第一剛性体を下部構造物に固定される下沓として設定することも可能である。何れの場合であっても、優れた荷重支持特性にて、上部構造物と下部構造物との間を支承することが可能となる。
【0066】
上記上部構造物を橋桁として、上記下部構造物を橋脚或いは橋台として設定することが可能であり、この場合には、優れた荷重支持特性にて、橋桁及び橋脚或いは橋台を支承することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の第一の実施例における支承装置の概略構成を示す平面図である。
【図2】本発明の第一の実施例における支承装置の断面図である。
【図3】図2の要部拡大図である。
【図4】本発明の第一の実施例における支承装置が備える上沓及び下沓を示す平面図である。
【図5】本発明の第二の実施例における支承装置の概略構成図である。
【図6】本発明の第三の実施例における支承装置の概略構成図である。
【図7】充填空間を有する本発明の第一の実施例における支承装置の変形例の概略構成図である。
【図8】上揚抑制機構を備える本発明の第一の実施例における支承装置の変形例の概略構成図である。
【図9】上揚抑制機構を備える本発明の第二の実施例における支承装置の変形例の概略構成図である。
【図10】上揚抑制機構を備える本発明の第三の実施例における支承装置の変形例の概略構成図である。
【図11】上沓の上面にすべり板を有する本発明の第一の実施例における支承装置の変形例の断面図である。
【図12】下沓の下面にすべり板を有する本発明の第一の実施例における支承装置の変形例の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0068】
以下に本発明の実施形態の支承装置の構成を詳細に説明する。本発明の支承装置は、建築物や橋梁等の構造物を支承するための支承装置であって、互いに間隙を存して位置する二つの構造体のうち、一方の構造体側に配設される第一剛性体と、この第一剛性体に対向して他方の構造体側に配設される第二剛性体と、これらの第一剛性体と第二剛性体との間に介挿される弾性体とを備えて構成される。ここで例えば、上述の一方の構造体を上部構造体、他方の構造体を下部構造体とする。より具体的な例としては、本発明の支承装置は、上部構造体としての橋桁と下部構造体としての橋脚或いは橋台との間、即ち橋桁と橋脚或いは橋台との間に配設して使用するものであり、この場合には水平荷重や鉛直荷重、回転荷重等の各種の荷重を支えると共に、荷重伝達を果たしながら地震や風、或いは動的或いは静的な交通荷重等による揺動や振動、応力を吸収分散しつつ、支承するものである。以下、上部構造体と下部構造体との間に配設して使用する例を以て本発明の支承装置の実施形態の説明をする。
【0069】
支承装置は、少なくとも、下部構造体に直接或いは間接的に設定される第一剛性体である下沓と、上部構造体に直接的或いは間接的に設定される第二剛性体である上沓と、これら上沓と下沓との間に配設される弾性体とを備えて構成される。
【0070】
下部構造体に対する下沓の設定手段は、例えばボルト、ナット等の締結手段を用いて下沓を下部構造体に対して直接的に固定してもよく、或いは下沓よりも広面積の板状をなす下部プレートの如くの下部固定手段を介して下沓を下部構造体に対して間接的に固定したり、適宜の方法で設定することが出来る。また、下沓の下部に摺滑手段を配設して、下部構造体と支承装置とを相対変位可能に設定しても好い。この摺滑手段としては、例えば、PTFEの如くの低摩擦係数の表面を有するプレート等を、下沓の下面に固定したり、或いは下部構造体や下部構造体に固定される取付手段側の上面に固定することによって構成することが可能である。尚、上沓や下沓の直接的乃至間接的な設定は、着脱可能な方法とするのが好ましく、ボルト、ナット等による締結はその一例である。
【0071】
下沓は、上沓同様、金属やセラミックス、或いは硬質樹脂やFRPの如くの強化樹脂等の鋼製素材によって構成することが好ましいが、必ずしも剛性素材に限定されるものではなく、弾性素材や剛性素材と弾性素材との組合せによって構成される材料によって構成することが出来る。各種素材から構成される下沓は、平面形状が略多角形、略円形、略長円径、略楕円形等の適宜の形状に設定することが出来るが、方形又は円形とすることが製造上、或いは施工上、交換上有利である。勿論、下沓の平面形状等は、必ずしも上沓と一致させる必要はないが、各部のサイズと、凸部や凹部の形状や位置等は下沓の設定と上沓の設定を互いに整合させる必要がある。尚、下沓は、外表面を全体的に弾性体等の被覆層で覆って、耐候性、防錆効果を得るように構成することが出来る。
【0072】
下沓の上面側には、上方に向かって突出し、且つ、非環状の凸部が一つ以上設けられる。凸部を二つ以上設ける場合には、均等間隔を存して併設することが好ましいがこれに限定されない。勿論、凸部同士の間隔は、無くても有っても好く、間隔を設定する場合には、隣接する凸部同士の間に作出される凹部には底部が作出される。凸部の設定数は、特に限定されるものではないが、例えば、nを自然数として、2n−1条の凸部の設定数とし、凹部を2n−2筋に設定するのに対して、後述する上沓に設定される凸部を2n条に設定したり、後述する上沓と下沓を入れ替えた設定とする等、上沓の凸部と下沓の凸部とで、一方の設定数を一つ多めにしたり、或いは、上沓の凸部と下沓の凸部の設定数量を同数、即ち奇数条と奇数条、或いは偶数条と偶数条にすることも可能であり、円筒状の凸部の組合せ等では得られない、設計上の自由度が得られ、所定の平面面積を最大限に有効活用することが出来る。
【0073】
本実施形態の支承装置では、支承方向に直交すると共に互いに直交する第一方向と第二方向と(すなわち水平面をx−y平面とした場合におけるx軸方向とy軸方向と)のいずれの方向から見た場合にも、下沓の上面側に設けられた凸部の少なくとも一部が、後述する上沓の下面側に設けられた凹部を形成する壁部と重なる形状を有する。これに伴って、下沓の凸部の平面視形状は、一端から他端に向かうに連れて幅が変化する形状或いは一端から他端に向かうに連れて位置が変位する形状を選択することが好ましい。具体的には、例えば、菱形、波形或いは三角形に形状設定する他、略台形状、曲線的に狭まる形状等に形状設定することが好ましい。
【0074】
下沓の凸部の鉛直断面形状は、一定の幅をもって立設して成る略矩形状に設定することが出来る他、上端に向かって徐々に幅が狭くなる形状、例えば、略三角形状、略台形状、曲線的に狭まる形状等、適宜所望の形状に設定することが出来る。勿論、三角形状にした場合、凸部の上部には面は無いものとなる。逆に、凸部の上部に面を設定する場合には、平坦な面としてもよく、また曲面としたり、又は凹凸面や粗面としたり、或いはそれらの組合せとしてもよい。例えば、凸部の頂部を平坦な面とした場合には、設計や製作が容易である。また、頂部を曲面とした場合には、曲面の設定によってバネ定数の設定が可能となり、設計上の自由度を向上させることが出来る上、耐荷重性を調整することも可能となる。また、頂部を凹凸面としたり、粗面とすることで、ゴム等の弾性体を下沓に接着した場合における耐剥離性を改善することが出来る。同様に、隣接する凸部同士の間に作出される凹部の底部についても凹部の底部に面を設定する場合には、平坦な面としてもよく、また曲面としたり、凹凸面としたり、粗面としたり、或いはそれらの組合せとしてもよい。
【0075】
下沓の凸部の側面は、平面や曲面とすることが出来る他、凹凸面としたり、粗面としたり、或いはそれらの組合せとすることも出来る。例えば、凸部の側面を平坦な面とした場合には、設計や製作が容易である。また、側面を曲面とした場合には、当該側面に当接するゴム等の弾性体との接触面積を調整することや、荷重の分散性を側面上の部位によって変えることが出来る。また、側面を凹凸面としたり、粗面とすることで、ゴム等の弾性体を上沓に接着した場合における耐剥離性を改善することが出来る。側面を傾斜させる場合、その傾斜角は、水平を基準にして有限の角度で一直角の間、或いはそれ以上即ち鈍角等適宜設定することが出来る。また、一方の側面を角度αで傾斜させ、他方の側面を角度αと異なる角度βで傾斜させることも出来る。
【0076】
下沓の凸部や凹部は、それらの延在方向における端部を丸く形成することが出来、丸く形成した場合には、支承装置の凸部や凹部の延在方向における鉛直面内の回転追従に際して、凸部等の端部に過度な負荷が掛かることや過負荷による角部の座屈等が防止され、円滑に回転追従させることが出来る。
【0077】
上部構造体に対する上沓の設定手段は、例えばボルト、ナット等の締結手段を用いて上沓を上部構造体に対して直接的に固定してもよく、或いは上沓よりも広面積の板状をなす上部プレートの如くの上部固定手段を介して上沓を上部構造体に対して間接的に固定することも出来る。また、上沓の上部に摺滑手段を配設して、上部構造体と支承装置とを相対変位可能に設定しても好い。この摺滑手段としては、例えば、PTFEの如くの低摩擦係数の表面を有するプレート等を、上沓の上面に固定したり、或いは上部構造体や上部構造体に固定される取付手段側の下面に固定することによって構成することが可能である。
【0078】
上沓は、金属やセラミックス、或いは硬質樹脂やFRPの如くの強化樹脂等の鋼製素材によって構成することが好ましいが、必ずしも剛性素材に限定されるものではなく、弾性素材や剛性素材と弾性素材との組合せによって構成される材料によって構成することが出来る。各種素材から構成される上沓は、平面形状が略多角形、略円形、略長円径、略楕円形等の適宜の形状に設定することが出来るが、方形又は円形とすることが製造上、或いは施工上、交換上有利である。尚、上沓は、外表面を全体的に弾性体等の被覆層で覆って、耐候性、防錆効果を得るように構成することが出来る。
【0079】
上沓の下面側には、下方に向かって突出し、且つ、凹部を形成する複数の凸部(本発明における凹部を形成する壁部)が設けられる。これらの凸部は、下沓の凸部が配置設定される凹部を形成するものであり、平面視形状が下沓の凸部の側面に自らの側面が隙間を存して対向配置される形状とされている。上沓の凸部は、x軸方向或いはy軸方向のいずれの方向から見た場合にも、その一部が下沓の凸部と重なるように形状及び配置個数が設定されている。
【0080】
凸部の鉛直断面形状は、一定の幅をもって垂設して成る略矩形状に設定することが出来る他、下端に向かって徐々に幅が狭くなる形状、例えば、略逆三角形状、略台形状、曲線的に狭まる形状等、適宜所望の形状に設定することが出来る。勿論、逆三角形状にした場合、凸部の下部には面は無いものとなる。逆に、凸部の下部に面を設定する場合には、平坦な面としてもよく、また曲面としたり、又は凹凸面や粗面としたり、或いはそれらの組合せとしてもよい。例えば、凸部の下部を平坦な面とした場合には、設計や製作が容易である。また、下部を曲面とした場合には、曲面の設定によってバネ定数の設定が可能となり、設計上の自由度を向上させることが出来る上、耐荷重性を調整することも可能となる。また、下部を凹凸面としたり、粗面とすることで、ゴム等の弾性体を上沓に接着した場合における耐剥離性を改善することが出来る。同様に、隣接する凸部同士の間に作出される凹部の底部についても凹部の底部に面を設定する場合には、平坦な面としてもよく、また曲面としたり、凹凸面としたり、粗面としたり、或いはそれらの組合せとしてもよい。
【0081】
上沓の凸部の側面は、平面や曲面とすることが出来る他、凹凸面としたり、粗面としたり、或いはそれらの組合せとすることも出来る。例えば、凸部の側面を平坦な面とした場合には、設計や製作が容易である。また、側面を曲面とした場合には、当該側面に当接するゴム等の弾性体との接触面積を調整することや、荷重の分散性を側面上の部位によって変えることが出来る。また、側面を凹凸面としたり、粗面とすることで、ゴム等の弾性体を上沓に接着した場合における耐剥離性を改善することが出来る。側面を傾斜されて傾斜面とすることも出来る。この場合、その傾斜角は、水平を基準にして有限の角度で一直角までの間で適宜設定することが出来る。また、一方の側面を角度γで傾斜させ、他方の側面を角度γと異なる角度δで傾斜させることも出来る。
【0082】
上沓の凸部や凹部は、それらの延在方向における端部を丸く形成することが出来、丸く形成した場合には、支承装置の凸部や凹部の延在方向における鉛直面内の回転追従に際して、凸部等の端部に過度な負荷が掛かることや過負荷による角部の座屈等が防止され、円滑に回転追従させることが出来る。
【0083】
弾性体は、上沓と下沓の間の所望の部位に、所望量配設される。この配設部位と配設量によって、鉛直荷重支持性能や水平荷重支持性能、並びに鉛直回転性能を調節することが出来る。勿論、弾性体として採用する材料によっても荷重支持性能や回転追従性などの設定を行うことが出来る。また、上沓と下沓の間に配設される弾性体は、接着していてもいなくてもどちらでもよいが、好ましくは加硫接着乃至接着剤による接着等によって上沓と下沓とのそれぞれに対して接合し、応力集中や経年変化等によっても弾性体が乖離したり剥離して機能不全を生じさせないようにすることが好ましい。勿論、上沓や下沓に対する弾性体の接着方法は特に限定されるものではない。
【0084】
弾性体の配設部位は、上沓の凸部及び/又は凹部と、下沓の凹部及び/又は凸部の間とすることが出来る。特に、上沓の凸部の側面と、これに対向する下沓の凸部の側面との間に配設することが鉛直荷重の支承上及び水平荷重の支承上、そして鉛直面内における回転追従上好ましい。上沓の凸部及び/又は凹部と、下沓の凹部及び/又は凸部の間に対する弾性体の配設に当たっては、接着せずに配置するだけとすることも出来るが、適宜の接着法、例えば加硫接着や接着剤を用いての接着によって、弾性体と上沓乃至下沓とを接合することが好ましい。
【0085】
弾性体の主たる構成素材となるエラストマとしては、天然ゴムや合成ゴム、熱可塑性エラストマや熱硬化性エラストマを用いることができ、これらの中でも天然ゴムを主成分として使用することが好ましい。具体的なエラストマ成分としては、例えば、天然ゴム(NR)、ポリイソプレンゴム(IR)、ポリブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、エチレン−プロピレンゴム、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム(臭素化、塩素化等)、アクリルゴム、ポリウレタン、シリコーンゴム、フッ化ゴム、多硫化ゴム、ハイパロン、エチレン酢酸ビニルゴム、エピクロルヒドリンゴム、エチレン−メチルアクリレート共重合体、スチレン系エラストマー、ウレタン系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマー、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体(SIS)、エポキシ化天然ゴム、trans−ポリイソプレン、ノルボルネン開環重合体(ポリノルボルネン)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ハイスチレン樹脂、イソプレンゴム等のゴムを1種単独、或いは2種以上を併用することが出来る。
【0086】
また、上沓の凸部の頂部と下沓の凹部の底部との間、或いは下沓の凸部の頂部と上沓の凹部との間に、弾性体を配設しない空間を設定することが出来、この場合、この空間を空気や窒素ガスの如くの気体を封入して空隙とすることも可能である。又はこの空間に充填材として、上沓と下沓との間に介挿される弾性体とは異種又は同種の弾性体を配設したり、或いは他の充填材を充填することも可能である。この空間に異種又は同種の弾性体を配設する場合には、それらの弾性体が互いに接着していなくてもよく、例えば互いに適宜間隔を存して設けられてもよく、この場合には、水平変形し易くなることの他、対向する凸部の側面間に位置する弾性体と、凸部の上部と凹部の底部との間に位置する弾性体とのそれぞれが個々に有する特性を独立に発揮させることが可能となる。
【0087】
尚、上沓と下沓の間に設定する上記空間は、一つだけであっても複数設定してもよく、また一定の狭い範囲に設定したり、広範な領域に断続的に設定してもよいが、各空間を連通路を以て一連とすることにより、充填材等の充填の容易性を向上させることが可能となる。
【0088】
充填材は、上沓と下沓の間の適宜の部位に設定される弾性体の配設されていない上述の空間、即ち充填空間の内部に適宜量充填されるものであり、その充填量は充填空間の容積よりも少量であっても、等量であっても、或いは多量であってもよく、少量の場合には、残存空隙分だけ圧縮或いは変形し得る余地が出来、支承装置の厚みを薄く設定出来、等量とした場合には、残存容積が無く元々の設計通りの支承装置の厚みを実現出来、また多量とした場合には、充填空間の容積が元々の設計値よりも増量して支承装置の厚みを厚く設定することが可能となり、充填材の充填量によって支承装置の厚み若しくは高さを調整し得るようにすることが出来る。
【0089】
充填材は、少なくとも充填時には流体であることが好ましい。勿論、充填後も流体であってもよい。充填時に流体である充填材のうち、例えば、充填時には流体であるが適宜時間が経過した後に固化するものを採用することも可能である。また、一つの空間内に充填される充填材の種類は、一種類であっても或いは複数種類であってもよい。例えば、二液硬化性の流体をそれぞれ適宜量充填して硬化させて適宜の弾性係数を発現するものとして一固体化させてもよく、勿論、予め二液を混合して置いてから充填することも出来る。また、充填材としては、流体の内部に固体や粒体を混入させて支承装置に対する外部入力の減衰性能を改善したり、気体を混入させてバネ定数や弾性を改質或いは調整するようにしてもよい。
【0090】
充填材は、気体、液体、ゲル状体から選択される一つ以上の流体から構成することが可能である。充填材の主成分として気体を採用する場合には、気体は圧縮率が大きいことから高荷重支持には不向きとなるが、比較的低荷重を支持する場合には例えば空気バネのような作用をさせることが可能であり、また加圧状態で充填してもよい。また、不連続気泡のように気泡を内包する流体を充填して置きながら硬化させて、発泡体の如くの充填材とすることも可能である。また例えば、充填材の主成分として液体やスラリー状乃至ゲル状の非硬化性の流体を採用した場合には、充填空間の変形に自在に対応しつつ、荷重を支持することが可能であり、また寒冷地等の低温下においても凍結しない不凍流体を選択することが可能である。
【0091】
充填材には、非圧縮性の流体を採用することが可能であり、充填材として非圧縮性の流体を採用した場合には、充填空間の変形に自在に対応しつつも高荷重を支持することが可能となる。
【0092】
また充填材には、高粘性の流体を採用することも可能であり、液体やスラリー状乃至ゲル状の非硬化性で高粘性の充填材を充填した場合、充填空間を囲繞する弾性体が変形した際には、当該空間内の高粘性の充填材が粘性抵抗によって変形エネルギーを減衰させる効果を期待出来る。勿論、非圧縮性を有し高粘性の流体を採用した場合には、非圧縮性流体を充填材として採用した場合に得られる効果と、高粘性流体を充填材として採用した場合に得られる効果と、両者の効果を得ることが可能となる。
【0093】
或いは、充填材には、上沓と下沓との間に介在させる弾性体と異種又は同種の弾性体を採用することが可能である。勿論、充填材が弾性体となるためには、充填時には流動性を示すものであることが好ましい。例えば、弾性体が熱可塑性を示すものであれば、これを充填材として使用する場合には、当該弾性体を適宜温度に加熱して流動可能な状態にしておきながら充填する。また例えば弾性体が、熱硬化性を示すものであれば、硬化前の流動可能な状態の時点で充填し、適宜の条件で硬化させる。
【0094】
充填材の充填は、予めの充填であってもよく、或いは製造後に充填してもよい。予め充填材を充填する場合には、充填材の充填は予めの設計通り、また手順通りに製造段階や出荷前に充填することになり、これによれば、製造上高効率化することが出来る。また、後から充填材を充填する場合には、充填材の充填は、出荷後、例えば施工現場において、施工空間の高さ等の大きさに合わせて調整しながら充填することも可能となり、これによれば、従来施工上における微調整が困難であった問題を解消することが出来る。
【0095】
尚、上沓の凸部及び/又は凹部と下沓の凸部及び/又は凹部との配置関係は、少なくとも上沓の凸部と下沓の凸部との鉛直方向における重なりが有限の大きさとなるようにすることが好ましく、例えば、凸部の高さの半分程度が重なり高さとなるように設定することが出来るが、これに限定されるものではない。
【0096】
また、上沓の凸部の側面とこれに対向する下沓の凸部の側面とは、互いに平行に設定することも可能であるが、これに限らず互いに非並行な面とすることも可能である。
【0097】
また、上沓と、下沓とには、上沓と下沓を支承方向に平行な面内における相対回転移動可能に係合する上揚抑制手段を設けることが出来る。この上揚抑制手段は、上沓と下沓とが乖離することを抑制する乖離抑制手段として機能するものであり、上沓及び下沓の一方側に設けられる係合部と、他方側に設けられる係合受部とで構成され、鉛直面内における回転を可能とするように構成されることが好ましい。
【0098】
具体的には、例えば、下沓の上面中央には、係合受部としての雌ねじ孔が形成され、上沓の中央には、表裏に貫通した小径の円孔を上沓に穿設し、これと同心で上沓の厚み方向の途中深さまで上面側から穿設した大径の円孔とによって段付き円孔を構成し、これと合わせて頭部を有する雄ねじを以て係合部として、この雄ねじを上沓の上部側から段付き円孔に挿通して下方に位置する下沓の雌ねじに螺合して係合し、これら上沓と下沓とが上揚力によって乖離しないように構成し、且つ、上沓と下沓とが相対変位可能に構成することが出来る。
【0099】
上揚防止手段を設定する場合には、支承装置の鉛直面内における回転追従に伴う上沓と下沓との相対変位を阻害しないように、例えば係合部と係合受部との間と、上沓と下沓との間等の各部間が、相対回転中心を中心として1/150ラジアン相対回転しても互いが当接しない程度に所謂遊びを設定する構成とすることが好ましい。
【0100】
上揚防止手段は、係合部又は係合受部のいずれか一方、又は両方が弾性体を介して、被支承体からの鉛直荷重を受け支えるように構成することが可能である。上揚防止手段が弾性体を含むように構成すれば、支承装置に掛かる荷重をこの弾性体を介して上揚防止手段でさえも支持するようにすることが可能となり、この場合、従来、この種の上揚防止手段の配設領域では鉛直荷重を支持出来ず、その分、同じ支承面積の場合、荷重支持性能が劣るものとなっていた点が改善され、より高荷重を支承することが出来るようになる。
【0101】
勿論、上揚防止手段は、上沓と下沓の外部に設定することも可能であり、この場合、上揚防止手段としては例えば、上沓又は下沓の一方の外部に設けられる係合部と、他方の外部に設けられる係合段部とを備え、これらが互いに係合するよう構成され、支承負方向の外力が作用した場合に、係合段部に係合部が係合して、上沓と下沓の乖離を防止するように構成される。
【実施例】
【0102】
本発明の支承装置の実施例について添付図面を参照しながら以下に説明する。先ず、本発明の支承装置の第一の実施例を図1乃至図4を参照しながら説明する。
【0103】
図1に示す支承装置1は、例えば橋梁において、橋桁(図示省略)と橋脚(図示省略)或いは橋台(図示省略)との間に装着して水平荷重や鉛直荷重、回転荷重等の各種の荷重を支えると共に、地震や風、動的或いは静的交通荷重等による揺動や振動、応力を吸収、分散しつつ、支承する橋梁用支承装置である。尚、図1は支承装置1の平面の透視図である。また、図2は支承装置1の断面図である。また、図3は図2の要部拡大図である。また、図4は支承装置1が備える上沓及び下沓を示す図であり、(a)が上沓2の下面図、(b)が下沓3の上面図である。
【0104】
支承装置1は、上沓2と下沓3を、弾性体、具体的にはゴム等から構成されるゴム層4を介して、鉛直方向及び水平方向に対するゴム層4の撓み分だけ相対変位を可能とするように配置設定させて構成されている。上沓2は、二点鎖線で示す上部プレート6を介してその上面が、上部構造物として例えば橋桁に固定されている。下沓3は、二点鎖線で示す下部プレート7を介してその下面が、下部構造物として例えば橋脚に固定されている。勿論、ここでいう上部プレートや下部プレートは、必須ではなく、上沓と上部プレートを一体的に構成したり、下沓と下部プレートを一体的に構成したりして、上沓や下沓にそれぞれに対応する構成を持たせてもよい。
【0105】
図1乃至図4において、上沓2は、例えば平面視において略長方形板状を成す基板2aの上面に上部プレート6が固定され、特に図4(a)に示すように、下面に、複数の凸部8と、当該凸部8によって形成される凹部9とを備えている。これらの凸部8は、水平面内において互いに直交するx軸方向(橋軸方向)或いはy軸方向(橋軸直角方向)のいずれの方向から見た場合にも、その一部が後述する下沓3の凸部11と重なるように形状(本実施例では三角形状)及び配置個数が設定されている。
【0106】
図3に示すように、凸部8は、その側面が水平面に対して所定角度θで傾斜する共通の一対の傾斜面8a、8aを有している。凸部8には水平面状の頂部8bが形成され、凹部9には水平面状の底部9bが形成されている。これら凸部8と凹部9は第一凹凸部10を構成する。
【0107】
また、下沓3も略長方形状を成す基板3aの下面に下部プレート7が固定され、特に図4(b)に示すように、上面である上沓2に対向する面に、平面視において略菱形の凸部11と、当該凸部11によって形成される括れ形状の凹部12が複数交互に配列されて形成されている。
【0108】
図3に示すように、凸部11は、その側面が水平面に対して所定角度θで傾斜する共通の一対の傾斜面11a、11aを有している。また、凸部11には水平面状の頂部11bが形成され、凹部12には水平面状の底部12bが形成されている。これら凸部11と凹部12は第二凹凸部13を構成する。
【0109】
尚、本実施例においては、凸部11の延在方向を橋軸方向に合わせて支承装置1が姿勢設定されている。勿論、支承装置1の姿勢はこれに限られるものではなく、凸部11の延在方向を橋軸直角方向に合わせたり、凸部11の延在方向を橋軸方向に対して傾斜させたりしても良い。
【0110】
そして、上沓2の凸部8は下沓3の凹部12に、上沓2の凹部9は下沓3の凸部11にそれぞれ配置設定されている。そして、上沓2の凸部8又は凹部9の傾斜面8aとこれに対向する下沓3の凹部12又は凸部11の傾斜面11aとの間に、層状にゴム層4が凸部8,11と凹部12,9の延在方向に沿って固定されている。ゴム層4は例えば加硫接着法により対向する傾斜面8a,11aにそれぞれ接合されている。
【0111】
また、傾斜面8a,11a間に挟持されたゴム層4の厚みをTとすると、ゴム層4の傾斜角は傾斜面8a,11aにおける傾斜角θであるから、ゴム層4の鉛直方向の厚みT′はT′=T/cosθによって得られる。そのため、ゴム層4の厚みを比較的薄く形成しても大きな鉛直方向厚さT′を得ることが出来ることにより、鉛直方向の耐荷重を大きく設定出来る。
【0112】
また、支承装置1の台形状を成す凸部8,11の側面である傾斜面8a,11aに掛かる荷重のうち、水平方向の分力による水平荷重は各凸部8,11内で互いに向かい合う方向の力が相殺されるから、水平方向成分の荷重が小さくなり、より大きな鉛直荷重を支持することが可能となる。
【0113】
ところで、凸部8,11と凹部12,9とで形成する傾斜面8a,11aの傾斜角θは特に限定されるものではないが鋭角、即ち、0°<θ<90°の範囲に設定されていることが好ましい。
【0114】
尚、上沓2及び下沓3の材質は、適宜の公知の材質を採用することが出来、例えば公知の鋼板等の金属板、セラミックス、強化プラスチック等を含むプラスチック等で形成することが出来る。同様に、ゴム層4も公知の天然ゴム等の素材を採用することが出来る。
【0115】
また、上述した支承装置1について、その外面をゴム皮膜によって被覆してもよく、これによって、上沓2及び下沓3等の金属部分は殆ど外部に露出しないので、金属の腐食等が発生し難く、耐環境性を向上させることが出来る。
【0116】
このような本実施例の支承装置1によれば、水平面内で直交するx軸方向とy軸方向とのいずれから見た場合であっても、上沓2の凸部8と下沓3の凸部11とに必ず重なる領域が存在する。このため、当該重なる領域によって、上沓2と下沓3との相対移動を抑止することができる。そして、上沓2と下沓3との相対移動を抑止する抵抗力は、上沓2の凸部8と下沓3の凸部11とが重なる領域の面積に比例する。このため、当該面積を調整することによってx軸方向とy軸方向との荷重支持特性、すなわち水平方向の荷重支持特性を任意に設定することが可能となる。更に、上沓2の凸部8や下沓3の凸部11の形状は、図1に示すように、それぞれx軸方向とy軸方向とが一致している必要はなく、寧ろこれらを一致させない形状に設定することによって、x軸方向に対する荷重支持性能や変位可能量とy軸方向に対する荷重支持性能や変位可能量を相異なるよう適宜に設定することが可能となる。
【0117】
また、支承装置1によれば、上沓2の凸部8と下沓3の凹部12とが互いに入り組んで配置設定されてその間にゴム層4が介挿されている。このため、鉛直方向及び水平方向に作用する荷重を支持することが出来る。このため、鉛直方向へのゴム層の積層数を最低限(つまり一層)に抑えた場合であっても、複数方向から作用する荷重に対して優れた荷重支持特性を発揮することが出来、装置サイズをコンパクトにすることが出来る。よって、支承装置1よれば、施工性及び交換性の高度化を図ることが出来、熱伝導性の向上及び加工時間の短縮が可能となることで低コスト性及び量産性を高度化することが出来る。
【0118】
また、支承装置1によれば、凸部8の側面及び凸部11の側面が傾斜面8a,11aとされている。このため、鉛直方向から作用する荷重を鉛直方向と水平方向とに分散することが出来、高面圧支持性能が向上する。また、ゴム層4は、傾斜面8a,11aの法線方向に対するゴム層4の厚み、即ち実厚に対して、鉛直方向における鉛直厚が増すため、実厚を薄くすることも出来、またゴム層4の実厚よりも鉛直荷重の吸収、分散性能を向上させることが出来る。
【0119】
また、一つの凸部8,11に掛かる荷重の水平成分は、逆向きの成分が互いに相殺されて荷重低減がなされ、水平荷重支持特性が向上する。従って、平面視における面積が小面積でありながら、また厚さ方向が嵩張ることなく、つまり小型でありながら高荷重を支持することが出来る支承装置1を得ることが出来る。
【0120】
また、支承装置1によれば、対向する凸部8の側面と凸部11の側面とが平行とされている。このため、ゴム層4の厚みが均一化され、荷重支持特性を均一とすることが出来る。尚、敢えて凸部の側面と凹部を形成する壁部の壁面とを非平行とし、荷重支持特性を不均一とすることも可能である。
【0121】
尚、支承装置1においては、例えば、上沓2に対して菱形の凸部8を設ける構成を採用しても良い。
【0122】
本発明による支承装置は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変更が可能である。本発明の他の実施例や変形例について以下に説明するが、上述した実施例と同一又は同様な部分や部品等には同一の符号を用いて説明を省略する。
【0123】
図5は、本発明の第二の実施例の支承装置20の概略構成図であり、(a)が平面図、(b)が断面図である。これらの図に示すように、本実施例の支承装置20は、上沓2が橋軸方向に波長方向が一致する波形形状の凸部21を複数有し、またこれらの凸部21によって形成される凹部22を有している。また、下沓3も、上沓2の凸部21と同一形状で、橋軸方向に波長方向が一致する波形形状の凸部23を複数有し、またこれらの凸部23によって形成される凹部24を有している。
【0124】
また、本実施例においても、上沓2の凸部21が下沓3の凹部24に配置設定され、下沓3の凸部23が上沓2の凹部22に配置設定され、上沓2と下沓3との間にゴム層4が介挿されている。
【0125】
そして、上沓2に設けられた凸部21と、下沓3に設けられた凸部23との曲率は、橋軸方向から見た場合に、凸部21の一部がこれに隣接配置される凸部23の一部に重なるように設定されている。つまり、本実施例の支承装置20においても、第一の実施例の支承装置1と同様に、水平面内で直交するx軸方向とy軸方向とのいずれから見た場合であっても、上沓2の凸部21と下沓3の凸部23とに必ず重なる領域が存在する。このため、当該重なる領域によって、上沓2と下沓3との相対移動を抑止することができる。そして、上沓2と下沓3との相対移動を抑止する抵抗力は、上沓2の凸部21と下沓3の凸部23とが重なる領域の面積や対抗する面同士の相対的な角度や変位方向に対するこれらの面の角度の関数となる。このため、当該面積や対抗する面同士の相対的な角度や変位方向に対するこれらの面の角度等を調整することによってx軸方向とy軸方向との荷重支持特性、すなわち水平方向の荷重支持特性を任意に設定することが可能となる。
【0126】
尚、凸部21の側面及び凸部23の側面も、第一の実施例の支承装置1と同様に、傾斜面とされている。このため、支承装置20は、鉛直方向から作用する荷重を鉛直方向と水平方向とに分散することが出来、高面圧支持性能が高いものとなっている。
【0127】
図6は、本発明の第三の実施例の支承装置30の概略構成図であり、(a)が平面の透視図、(b)が断面図である。これらの図に示すように、本実施例の支承装置30は、上沓2が、平面視形状において先端が橋軸方向の一方向に向く二等辺三角形形状の凸部31を複数有し、またこれらの凸部31によって形成される凹部32を有している。また、下沓3も、上沓2の凸部31と同一形状で、先端が橋軸方向の他方向に向く二等辺三角形状の凸部33を複数有し、またこれらの凸部33によって形成される凹部34を有している。
【0128】
また、本実施例においても、上沓2の凸部31が下沓3の凹部34に配置設定され、下沓3の凸部33が上沓2の凹部32に配置設定され、上沓2と下沓3との間にゴム層4が介挿されている。
【0129】
そして、上沓2に設けられた凸部31と、下沓3に設けられた凸部33との幅は、橋軸方向から見た場合に、凸部31の一部が凸部33の一部に重なるように拡げられている。また、凸部31と凸部33との橋軸方向の長さは、橋軸直角方向から見た場合に重なる長さに設定されている。つまり、本実施例の支承装置30においても、第一の実施例の支承装置1と同様に、水平面内で直交するx軸方向とy軸方向とのいずれから見た場合であっても、上沓2の凸部31と下沓3の凸部33とに必ず重なる領域が存在する。このため、当該重なる領域によって、上沓2と下沓3との相対移動を抑止することができる。そして、上沓2と下沓3との相対移動を抑止する抵抗力は、上沓2の凸部31と下沓3の凸部33とが重なる領域の面積に比例する。このため、当該面積を調整することによってx軸方向とy軸方向との荷重支持特性、すなわち水平方向の荷重支持特性を任意に設定することが可能となる。
【0130】
また、本実施例の支承装置30においては、上沓2の凸部31と下沓3の凸部33とがそれぞれ対向して交互配置に設定される三角形状に構成されているため、橋軸方向における一方向きに対しては変位制限が働くが、逆向きには変位制限が働かないものとなる。従って、支承装置30は、配置の向きによって変位制限の有無を設定したり、或いは複数の支承装置30を互い違いの向きに併設することによって変位制限を設定したりすることが可能となる。
【0131】
尚、凸部31の側面及び凸部33の側面も、第一の実施例の支承装置1と同様に、傾斜面とされている。このため、支承装置30は、鉛直方向から作用する荷重を鉛直方向と水平方向とに分散することが出来、高面圧支持性能が高いものとなっている。
【0132】
また、図7に示すように、第一の実施例の支承装置1において、入り組んだ配置設定状態にある凸部8,11と凹部12,9との頂部8b,11bと底部12b,9bとの間の空間にゴム層4が存在しない充填空間15を設けても良い。そして、このような充填空間15を設け、充填材として加圧空気を当該充填空間15に充填する場合には、加圧空気の充填量によって下沓3に対する上沓2の高さが調整され、支承装置1の高さとバネ定数を調整出来る。
【0133】
尚、上述のように充填材としては、加圧空気に限られるものではなく、気体、液体、ゲル状体から選択される一つ以上の流体、非圧縮性の流体、高粘性の流体、或いはエチレングリコール等の不凍性流体、若しくは、ゴム層4と異種又は同種の弾性体を用いることができる。
【0134】
また、充填空間15内に空気等の気体や充填材等の流体を充填させる場合、充填空間15の両端を密閉状態に封止しておくことが好ましい。また、充填材は支承装置1の組立前に充填しておいてもよく、組立後に充填してもよい。このように充填空間を設定する構成とすることは、第一の実施例の場合に限らず、第二の実施例、或いは第三の実施例、若しくは本発明の主旨を逸脱しない構成の支承装置に対して設定することが可能である。
【0135】
更に、図8に示すように、第一の実施例の支承装置1において、乖離抑制手段として、上揚抑制機構16を備えても良い。上揚抑制機構16は、下沓3の中央部分に上沓2側に突出して設けられた心棒16aと、上沓2に設けられると共に心棒16aを基板2a側に貫通させる貫通孔16bと、基板2aの上部プレート6側に設けられると共に貫通孔16bに連通する拡径された拡径溝部16cとを備えている。
【0136】
また、貫通孔16bを貫通する心棒16aの他端側には、貫通孔16bの外径より拡径された拡径係止部16dが連結されており、上揚力が働いた際の上沓2と下沓3との分離を防止している。拡径係止部16dは拡径溝部16cの内径より小径に形成されている。
【0137】
心棒16aと拡径係止部16dの結合構造として、例えば心棒16aの他端側に雄ねじ部が形成され、拡径係止部16dは例えば心棒16aの雄ねじ部に螺合する雌ねじ部で構成されている。これら下沓3に設けた心棒16a、拡径係止部16d、上沓2に設けた貫通孔16b、拡径溝部16cは上揚抑制機構16を構成する。なお、上述の構成に代えて、上揚抑制機構16として、上沓2に心棒16aと拡径係止部16dを設け、下沓3に貫通孔16bと拡径溝部16cを設けてもよい。また、上揚抑制機構16において、心棒16aと拡径係止部16dは係合部を構成し、貫通孔16bと拡径溝部16cは係合受部を構成する。そして、係合部と係合受部とは、上沓2と下沓3とが鉛直面内や水平面内での回転が可能となるように係合されている。
【0138】
支承装置1では、上述の構成を備えていることにより、上沓2は下沓3に対して水平面内で相対的に微小回転することが許容されている。これと同時に、鉛直面内での橋桁の揺動による回転運動によって、上部プレート6を介して上沓2に上揚力が働くが、心棒16aに設けた拡径係止部16dによって上沓2が下沓3から分離して凸部8,11と凹部9,12の入り組み状態が解除されることを防止して、橋桁の揺動による回転運動に支承装置1が追従する。
【0139】
このような上揚抑制機構16を設けることにより、鉛直面内で橋桁の揺動による回転運動が生じても、支承装置1の上沓2が下沓3から乖離して離脱することを防止しつつ、橋梁に追従することが出来る。
【0140】
また、図9に示すように、第二の実施例の支承装置20が上揚抑制機構16を備える構成を採用することもできる。同様に、また、図10に示すように、第三の実施例の支承装置30が上揚抑制機構16を備える構成を採用することもできる。
【0141】
更に、図11に示すように、第一の実施例の支承装置1において、上沓2の上面にすべり板17を摺滑手段として固設することが可能であり、この場合、元々固定支承であった支承装置1を可動支承として利用することが可能となる。すべり板17は、例えばPTFE製とされる。
【0142】
すべり板17を設けることにより、水平方向、特に橋軸方向に振動が生じた場合に、橋桁に固定された上部プレート6の下面に対してすべり板17が滑動し、可動支承としての役割を果たすことが出来るようになり、免震構造が得られる。
【0143】
また、図12に示すように、第一の実施例の支承装置1において、下沓3の下面にすべり板17を備える構成を採用することもできる。勿論、すべり板17の設定は第一の実施例の支承装置1に限らず、第二の実施例の支承装置20や第三の実施例の支承装置30、若しくはその他、本発明の主旨を逸脱しない構成の支承装置に対して設定することが可能である。
【0144】
尚、上述の説明では、本発明の支承装置として橋梁用支承装置について説明したが、本発明は橋梁用支承装置に限定されることはなく、各種の構造物の制震、免震用の支承装置として採用することが出来る。
【0145】
また、支承装置を上下反転し、上沓2を下沓として、下沓3を上沓として用いることも可能である。
【0146】
また、ゴム層4の厚さは、必ずしも一定である必要はなく、例えば、支承装置の内周側で薄く、外周側で厚いというように設定したり、或いは、支承装置の内側で厚く外周側で薄くなるように設定したり、部位によって適宜の厚さに設定することが出来る。
【0147】
また、充填部位によって充填材の充填量や充填空間15の広さは相異なっても良く、或いは一定であっても良い。また充填に関しては、追加充填や予め充填されている充填材を削減する等も含め充填量や充填空間の広さは適宜に変更することが出来る。
【0148】
また、凸部8,21,31及び凸部11,23,33の形状、配置、設置数は、厭くまでも一例であり、橋軸方向と橋軸直角方向から見て、互いに重なる部位が存在するように任意に設定することが出来る。
【符号の説明】
【0149】
1,20,30 支承装置
2 上沓
3 下沓
4 ゴム層
8,11,21,23,31,33 凸部
9,12,22,24,32,34 凹部
12b 底部
15 充填空間
16 上揚抑制機構
16a 心棒
16b 貫通孔
16c 拡径溝部
16d 拡径係止部
17 すべり板
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば建築物や橋梁等の各種構造物を支承する支承装置に関する。
【背景技術】
【0002】
元来、建築物や橋梁等の構造物の支承装置には、大別して、水平方向の荷重を支承する水平荷重支承機能、鉛直方向の荷重を支承する鉛直荷重支承機能、鉛直面内における回転荷重を支承する鉛直回転支承機能等が求められる。特に、橋梁用支承装置にあっては、水平方向をx軸方向とy軸方向からなる直交座標系で見た場合に、水平荷重支持機能や鉛直回転支承機能として、x軸方向とy軸方向に求められる機能や性能は異なる。
【0003】
ここで、x軸方向を橋軸方向とし、y軸方向を橋軸直角方向とすると、一般に、構造物である橋梁は橋軸直角方向よりも橋軸方向が長くなる。このため、熱伸縮量や動的な交通荷重や風や地震による揺動量、動的或いは静的な交通荷重や地震等による回転量等々が橋軸方向と橋軸直角方向とでは大きく異なるものとなる。従って、橋梁用支承装置では、自ずと方向によって求められる機能や性能が異なるものとなっている。
【0004】
このような技術背景の中、これまでの支承装置、特に橋梁用支承装置には、平成7年の大震災以来、ゴムを主たる構成要素としたゴム支承装置が求められるようになった。中でも鉛直荷重支持性能があって、水平力分散性能の高い積層ゴム支承装置は、広範に使用されるようになった。この積層ゴム支承装置は、例えば特許文献1に記載されているように、ゴム板と鉄板を交互に積層し、加硫接着によって相互に接着して構成され、その上部が橋梁の橋桁等の上部構造物に固定され、その下部が橋脚等の下部構造物に固定されて設置されて用いられる。
【0005】
しかしながら積層ゴム支承装置にあっては、構造上、積層構造を採るため、必然的に所要厚さが大きくなって嵩張る上、高荷重を支持させるには広面積化する必要があり、特に長大橋向けには大型化する欠点がある。従って、性能要求上、支承装置が大型化してしまった場合には、下部構造物である橋脚や橋台の上面の面積がより大きく要求されることになり、橋梁全体として高コスト化してしまうという欠点がある。
【0006】
また大型の支承装置が求められる場合であって、新設でない場合には、既存の支承装置が設置されていることから設置スペースが限定されるために支承装置の大きさが特に問題となり、高さが低く面積が狭い小型の支承装置でなければ交換設置出来ないという不具合があった。
【0007】
まして近年、建築物や橋梁等の構造物の大型化や予想される地震規模の大型化に伴い、支承装置に求められる機能や性能も高度化してきており、積層ゴム支承で対応しようとした場合、大型化してしまうことは避けられない。
【0008】
また上述の如くの積層ゴム支承装置は、平面形状として矩形状、特に正方形状の物や円形状の物があるが、いずれも機能と性能の面で、x軸方向とy軸方向に対して同等になる。しかしながら、既述の通り、x軸方向とy軸方向とでは求められる機能や性能が異なるために、一方では機能不足、或いは機能過剰が生じ、他方では性能不足や性能過剰が生じるということが起こっている。
【0009】
例えば、積層ゴム支承は、橋軸方向への剪断変形による水平力分散性能が優れているが、橋軸直角方向への剪断変形は過剰な水平揺動や落橋の原因となり得るという欠点がある。これらの欠点を補うために、橋軸方向への剪断変形を許容しつつ、橋軸直角方向への剪断変形を防止するため、サイドブロック等を補足的に設置することがなされているが、設計コスト、材料コスト、製造コスト、施工コスト、メンテナンスコスト等の各種の追加コストが必要となる上、設置スペースが必要となるという問題があり、またゴム支承装置自体としての橋軸直角方向への水平剪断変形機能や水平力分散性能は過剰な機能、性能であるという欠点は改善されていないという問題がある。
【0010】
また、橋梁用支承装置においては、鉛直回転支持機能や性能においても橋軸方向と橋軸直角方向とで機能要求の有無や要求性能レベルの問題があることは既述の通りであるが、積層ゴム支承装置の場合には、鋼製支承装置と異なり、鉛直可撓性能があることから橋軸直角方向における鉛直面内での回転は、回転性能によってなされるのではなく鉛直可撓性によって達せられ、橋軸方向における鉛直面内における回転は鉛直方向の圧縮撓みによってなされることになる。
【0011】
しかしながら、圧縮撓み性能、即ち鉛直可撓性能を向上させるには鉛直弾性を改善する必要が生じるが、この改善を図ろうとすると鉛直荷重支持性能が低下するという二律背反が生じる。更に道路橋示方書によれば、ゴム支承においては剪断変形は許容されるが構成ゴムに引張力が作用することは許容されていないことから積層ゴム支承装置において鉛直面内における回転性能を持たせることは困難であった。
【0012】
他方、先述のような鉛直高荷重支持性能の向上に伴う大型化という積層ゴム支承装置の問題の改善を図ったものとして、例えば特許文献2に記載された機能分離型の固定支承としての弾性支承装置が提案されている。この弾性支承装置は、積層ゴム支承装置の持つ水平力分散機能は持たず、この機能を別の支承装置に持たせ、鉛直荷重支持機能を高度化するものであって、上沓と下沓がそれぞれ互いに嵌合する同心円状の複数の円筒部と中心に位置する円柱部とからなる凸部と凹部とを有する。そして、嵌合状態の直径鉛直断面視において、これら互いに嵌合する凸部と凹部は、それぞれ断面矩形状をなし、それらの隣接する側面同士と互いに対向する底面と頂面との間にゴム等の一様な弾性体が実質的に隙間無く充填され、連続するゴム層が挟持されて結合された構成になっている。
【0013】
このように構成される上述の如くの弾性支承装置は、それら互いに隣接する凸部の側面と凹部の側面とこれらの間のゴム層とで水平荷重支持部が構成され、凸部の頂面と凹部の底面とこれらの間のゴム層とで鉛直荷重支持部が構成されている。
【0014】
また、特許文献3に記載された支承装置も、特許文献2の弾性支承装置と同様に上沓と下沓が互いに嵌合する多条の円筒状の構成を採り、上沓と下沓における各凸部と凹部とを構成する円筒部や円柱部は、それぞれ鉛直断面形状における両側面間距離が端面をなす頂面に向かって接近して狭まり、両側面が傾斜してなる断面台形状に形成されて互いに嵌合され、これらの凹部と凸部との間にゴム等の一様な弾性体が実質的に隙間無く充填されて構成されている。このような特許文献2及び3に記載された弾性支承装置によって、支承装置の小型化や軽量化が図られ、鉛直荷重と水平荷重の支持性能の向上がなされるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2002−181129号公報
【特許文献2】特開2005−337002号公報
【特許文献3】特開2009−46944号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
上述した特許文献2、3に記載された弾性支承装置によれば、機能分離型固定支承装置としては、広面積化したり、厚さを増したりと支承装置を大型化させることなく、水平方向及び鉛直方向における荷重支持性能を向上させることが出来る。しかしながら、例えば当該弾性支承装置を橋梁の橋桁と橋脚との間に配設して、これらの間の荷重伝達や荷重緩和を担わせた場合、機能分離型固定支承にあっては、一般に支間距離の分だけ固定支承にはモーメントが集中的に作用することになる。その上、有限の伝達速度を有する地震波の橋梁への入力が、固定支承が配設された橋桁側からあった際には、鉛直力の吸収、分散性能や水平力の吸収、分散性能、とりわけ橋軸方向における吸収、分散性能が求められるが、特許文献2或いは3に記載の弾性支承装置では、橋梁等の社会インフラ的構造物を長期的に保持するための各種入力に対する先述の如くの吸収性能や分散性能が認められないために、今後予想される大型地震に抗して行くことが出来ないという問題がある。
【0017】
また、機能分離型固定支承と併用される可動支承において、PTFE等の滑板を用いて水平変位を可能ならしめる構成の支承装置を併用する場合には、長大橋のように支承する対象としての橋桁が高荷重であったり、或いは交通重量によって高荷重化した場合、滑板に対する鉛直荷重が大きくなる。この様な場合には、滑板の摩擦係数が元来小さな値であるにも拘わらず、垂直抗力が大きくなるために滑板の表面に作用する摩擦抵抗が著しく大きくなる。
【0018】
従って、橋桁や橋脚に水平力が作用しているにも拘わらず、滑板が滑り出さない状態に陥り、滑板式可動支承があたかも固定支承かのように振る舞うことになる。つまり、機能分離型支承においては、従来、可動支承と固定支承の組合せで使用すべきであるにも拘わらず、あたかも固定支承と固定支承の組合せで使用しているのと同様の状態になってしまい、橋桁や橋脚に著しい負荷が掛かることになる。このような事情からも固定支承であっても水平力の吸収、分散性能、特に橋軸方向に対する水平力の吸収、分散性能が求められるが、従来の固定支承では水平力の吸収、分散性能が皆無であってこれらのような問題に対応出来ないという欠点があった。
【0019】
特に、道路橋や鉄道橋等の橋梁用支承装置、とりわけ機能分離型固定支承装置としての弾性支承装置においては、交通渋滞時や低速移動による静的荷重や大型車両や大型積載車両等を含む車両通行などに伴う動的荷重や小規模地震による橋軸方向における鉛直面内での回転や橋軸方向における橋桁の微少変位や微少伸縮に追随したりそれらによる橋桁に対する負荷や橋脚に対する負荷を緩和したりすることが求められるが、先述した特許文献2或いは3に記載された支承装置では、上沓と下沓のそれぞれ凹凸形状をなす円筒部と円柱部の凹部や凸部が互いに嵌合した構成であるため、橋軸方向における鉛直面内での回転に追従出来ず、また振動や揺動、伸縮を十分に吸収することが出来なかった。
【0020】
更に、橋梁用支承装置では、上述のように橋軸方向における鉛直面内での回転や橋軸方向における橋桁の微少変位や微少伸縮に追随したりそれらによる橋桁に対する負荷や橋脚に対する負荷を緩和したりするために、上述のx軸方向とy軸方向とにおける水平荷重特性を変化させることが望ましい場合がある。しかしながら、特許文献2或いは3に記載された支承装置では、水平荷重特性を変化させることが出来ず、水平荷重特性を任意に変更することが出来なかった。
【0021】
本発明は、上述のような実情に鑑みて本発明者等の鋭意研究によってなされたものであり、鉛直方向と水平方向の荷重支持特性に優れ、当該水平方向の荷重支持特性を任意に設定することが可能であり、鉛直下方及び鉛直上方の揺動に追従して振動を十分に吸収、分散出来、鉛直面内、特に橋軸方向における回転追随性能や回転力分散性能を向上させることが可能な支承装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明の支承装置は、非環状の凸部を有する第一剛性体と、当該凸部が配置設定される凹部を有する第二剛性体と、前記第一剛性体と前記第二剛性体との間に介挿される弾性体とが支承方向に重ねて配設される支承装置であって、前記支承方向に直交すると共に互いに直交する第一方向と第二方向のいずれかの方向から見た場合にも、前記凸部は、前記凹部を形成する壁部と重なる領域を有することを特徴とする。
【0023】
前記支承方向から見て一つ以上の前記凸部が略多角形に形状設定されていることを特徴とする。
【0024】
前記支承方向から見て一つ以上の前記凸部が成す略多角形が略三角形、略四角形、略六角形のいずれか一つ以上の形状に設定されていることを特徴とする。
【0025】
前記支承方向から見て一つ以上の前記凸部がジグザグ形乃至波形に形状設定されていることを特徴とする。
【0026】
前記凸部の側面及び前記凹部を形成する壁部の壁面のいずれか或いは両方が傾斜面とされていることを特徴とする。
【0027】
対向する前記凸部の側面と前記凹部を形成する壁部の壁面とが平行とされていることを特徴とする。
【0028】
前記凸部の側面及び前記凹部を形成する壁部の壁面のいずれか或いは両方が、平面、曲面、凹凸面又は粗面、或いはこれらの組み合わせから成ることを特徴とする。
【0029】
前記凸部の頂面及び前記凹部の底面のいずれか或いは両方が、平面、曲面、凹凸面又は粗面、或いはこれらの組み合わせから成ることを特徴とする。
【0030】
前記凸部及び前記凹部を複数備えることを特徴とする。
【0031】
互いに入り組ませて配置設定される前記凸部の頂部と前記凹部の底部との間に前記弾性体が設けられていない空間を有することを特徴とする。
【0032】
前記空間には、充填材が充填されていることを特徴とする。
【0033】
前記充填材は、前記弾性体と異種の弾性体であることを特徴とする。
【0034】
前記充填材は、非圧縮性の流体であることを特徴とする。
【0035】
前記充填材は、前記凸部と前記凹部とを配置設定するより前に予め充填されていることを特徴とする。
【0036】
前記充填材は、前記凹部と前記凸部とを配置設定した後に充填されることを特徴とする。
【0037】
前記第一剛性体と前記第二剛性体とが互いに乖離することを抑制する乖離抑制手段を備えることを特徴とする。
【0038】
前記乖離抑制手段は、前記第一剛性体と前記第二剛性体との一方に設けられる係合部と、他方に設けられる係合受部とで構成され、これら係合部と係合受部とは、支承方向に対する平行面内で回転可能に係合されていることを特徴とする。
【0039】
前記第一剛性体又は前記第二剛性体の上面或いは下面に摺滑手段を設けることを特徴とする。
【0040】
前記第一剛性体が上部構造物に固定される上沓であり、前記第二剛性体が下部構造物に固定される下沓であることを特徴とする。
【0041】
前記第二剛性体が上部構造物に固定される上沓であり、前記第一剛性体が下部構造物に固定される下沓であることを特徴とする。
【0042】
前記上部構造物が橋桁であり、前記下部構造物が橋脚あるいは橋台であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0043】
本発明の支承装置によれば、支承方向に直交する面において互いに直交する第一方向と第二方向とのいずれから見た場合であっても、第一剛性体の凸部が第二剛性体の凹部を形成する壁部と重なる領域を有しているため、弾性体を挟む第一剛性体と第二剛性体とが、第一方向或いは第二方向に相対移動した場合であっても、相対移動を抑制することが出来る。そして、第一剛性体と第二剛性体との相対移動を抑止する抵抗力が第一剛性体の凸部が第二剛性体の凹部を形成する壁部と重なる領域の面積に比例するため、当該面積を調整することによって第一方向と第二方向との荷重支持特性を任意に設定することが可能となる。つまり、本発明の支承装置によれば、第一方向と第二方向とを水平面内に配置するように姿勢設定することによって、水平方向の荷重支持特性を任意に設定することが出来る。
【0044】
また、本発明の支承装置によれば、第一剛性体の凸部と第二剛性体の凹部とが入り組んで配置設定されてその間に弾性体が介挿されている。このため、支承方向及び当該支承方向と直交する方向に作用する荷重を支持することが出来る。このため、支承方向への積層数を最低限に抑えた場合であっても、複数方向から作用する荷重に対して優れた荷重支持特性を発揮することが出来、装置サイズをコンパクトにすることが出来る。また、本発明の支承装置の構成は、従来の積層ゴム支承装置等と異なり、支承装置を構成する金属等の鋼材からなる剛性体とゴム材等の弾性体とを加硫接着する際には、構造的に熱伝導性が良好であるために、加工時間の短縮が可能であり、ゆえに低コスト性及び量産性を著しく高度化することが出来る。
【0045】
更に、本発明の支承装置においては、支承方向から見て凸部を、例えば、略多角形(略三角形、略四角形、略六角形等)、ジグザグ形又は波形に形状設定することが出来る。このように凸部の形状を変更することによって第一方向或いは第二方向から見た凸部と、凹部を形成する壁部とが重なる面積が変化するため、第一方向と第二方向とにおける荷重支持特性を変化させて適宜設定することが出来る。
【0046】
更に、上記凸部の側面及び上記凹部を形成する壁部の壁面のいずれか或いは両方を傾斜面とすることにより、支承方向から作用する荷重を支承方向と当該支承方向と異なる方向とに分散することが出来る。例えば、凸部の側面を支承方向に対して45°とした場合には、支承方向の半分を側面の法線成分に、残り半分を側面の平行成分に分散することが出来、高荷重を支持することが可能となる。
【0047】
また、一つの凸部においては、逆向きの成分によって互いに相殺されて荷重低減がなされ、荷重支持特性が向上する。従って、平面視における面積が小面積でありながら、また厚さ方向が嵩張ることなく、つまり小型でありながら高荷重を支持することが出来る。
【0048】
更に、対向する上記凸部の側面と上記凹部を形成する壁部の壁面とが平行とされている場合には、第一剛性体と第二剛性体との間に挟まれる弾性体の厚みが均一化され、荷重支持特性を均一とすることが出来る。尚、敢えて凸部の側面と凹部を形成する壁部の壁面とを非平行とし、荷重支持特性を不均一とすることも可能である。
【0049】
更に、凸部の側面及び上記凹部を形成する壁部の壁面のいずれか或いは両方は、平面、曲面、凹凸面又は粗面、或いはこれらの組み合わせから形成することが出来る。また、凸部の頂面及び上記凹部の底面のいずれか或いは両方は、平面、曲面、凹凸面又は粗面、或いはこれらの組み合わせから形成することが出来る。この組み合わせよって、荷重支持特性を変化させることが出来る上、剛性体とこれに接合された弾性体との接合強度を向上させることが出来る。
【0050】
更に、凸部及び凹部を複数備えることが好ましい。これによって、荷重が複数の凸部に分散して作用するため、小型でありながら高荷重を支持することが可能となる。
【0051】
更に、互いに入り組んで配置設定される上記凸部の頂部と上記凹部の底部との間に上記弾性体が設けられていない空間を有する場合には、弾性体が荷重を受けて変形する場合に当該空間に入り込むことが可能となり、弾性体の許容変形量を大きくすることが出来、バネ定数を低下させることができる。つまり、当該空間を設けることによって、バネ定数の調整を行うことが出来る。
【0052】
更に、当該空間に充填材を充填することが出来る。この充填材の構成材料や充填量、充填位置、充填空間の形状等の設定により、支承装置のバネ定数や高さ、荷重支持性能、荷重減衰性能、鉛直面内における回転追従性能等々多用な機能や性能の調整を図ることが出来るようになる。
【0053】
尚、充填材としては、例えば、第一剛性体と第二剛性体との間に介挿される弾性体と異種の弾性体や非圧縮性の流体を用いることが出来る。充填材の種類を選択することによって上述のように支承装置のバネ定数や高さ、荷重支持性能、荷重減衰性能、鉛直面内における回転追従性能等々多用な機能や性能の調整を図ることが出来る。
【0054】
充填材として流体を用いる場合には、例えば、充填時には流体であるが適宜時間が経過した後に固化するものであってもよい。また、一つの空間内に充填される充填材の種類は、一種類であっても或いは複数種類であってもよい。例えば、二液硬化性の流体をそれぞれ適宜量充填して硬化させて適宜の弾性係数を発現するように一固体化させてもよく、勿論、予め二液を混合しておいてから充填することも出来る。また、充填材としては、流体の内部に固体や粒体、気体を混入させたものであってもよい。
【0055】
また、充填材は、気体、液体、ゲル状体から選択される一つ以上の流体から構成することができる。気体は、圧縮率が大きいことから高荷重支持には不向きであるが、比較的低荷重を支持する場合には例えば空気バネのような作用をさせることが可能であり、また加圧状態で充填してもよい。また、不連続気泡のように気泡を内包する流体を充填して置きながら硬化させて、発泡体の如くの充填材とすることも可能である。また例えば、液体やスラリー状乃至ゲル状の非硬化性の充填材を充填した場合、充填空間の変形に自在に対応しつつ、荷重を支持することが可能であり、また寒冷地等の低温下においても凍結しない不凍流体を選択することも可能である。
【0056】
充填材が、非圧縮性の流体である場合には、充填空間の変形に自在に対応しつつも高荷重を支持することが可能となる。
【0057】
充填材が、液体やスラリー状乃至ゲル状の非硬化性で高粘性の高粘性流体である場合には、充填空間を囲繞する弾性体が変形した際に、当該空間内の高粘性の充填材の粘性抵抗によって変形エネルギーを減衰させる効果を期待出来る。
【0058】
また、上述のように、充填材を異種の弾性体とすることも出来る。勿論、充填材が弾性体となるためには、充填時には流動性を示すものであれば好都合である。例えば、弾性体が熱可塑性を示すものであれば、これを充填材として使用する場合には、当該弾性体を適宜温度に加熱して流動可能な状態にしておきながら充填する。また例えば弾性体が、熱硬化性を示すものであれば、硬化前の流動可能な状態の時点で充填する。
【0059】
充填材を予め充填する場合には、予めの設計通り、また手順通りに製造段階や出荷前に充填することが可能であり、これによれば、製造上高効率化を図ることが出来る。
【0060】
また、充填材を後から充填する場合には、出荷後、例えば施工現場において、施工空間の高さ等の大きさに合わせて調整しながら充填することが可能であり、これによれば、従来の施工上における微調整が困難であった問題を解消することが出来る。
【0061】
また、充填材の充填量によって、支承装置の厚み若しくは高さを調整する場合には、充填空間に対する充填材の充填量の多少によって支承装置の厚み若しくは高さを調整することが出来、施工現場での施工空間により精密に適合させることが可能となる。
【0062】
更に、上記第一剛性体と上記第二剛性体とが互いに乖離することを抑制する乖離抑制手段を備える場合には、第一剛性体と第二剛性体とが乖離することが抑制され、大きな地震等によって第一剛性体と第二剛性体とが乖離して支承対象が落下等することを防止することが出来る。
【0063】
また、乖離抑制手段が、上記第一剛性体と上記第二剛性体との一方に設けられる係合部と、他方に設けられる係合受部とで構成され、これら係合部と係合受部とが、支承方向に対する平行面内で回転可能に係合されている場合には、第一剛性体と第二剛性体とを互いに回転可能とすることが出来、支承装置の回転追従性を向上することが出来る。
【0064】
また、第一剛性体又は前記第二剛性体の上面或いは下面に摺滑手段を固設する構成を採用することも出来る。これによれば、第一剛性体又は第二剛性体を摺滑させることが出来、元々固定支承であった本発明の支承装置を可動支承として利用することが可能となる。
【0065】
更に、上記第一剛性体を上部構造物に固定される上沓として、上記第二剛性体を下部構造物に固定される下沓として設定することが可能であり、その反対に、上記第二剛性体を上部構造物に固定される上沓として、上記第一剛性体を下部構造物に固定される下沓として設定することも可能である。何れの場合であっても、優れた荷重支持特性にて、上部構造物と下部構造物との間を支承することが可能となる。
【0066】
上記上部構造物を橋桁として、上記下部構造物を橋脚或いは橋台として設定することが可能であり、この場合には、優れた荷重支持特性にて、橋桁及び橋脚或いは橋台を支承することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の第一の実施例における支承装置の概略構成を示す平面図である。
【図2】本発明の第一の実施例における支承装置の断面図である。
【図3】図2の要部拡大図である。
【図4】本発明の第一の実施例における支承装置が備える上沓及び下沓を示す平面図である。
【図5】本発明の第二の実施例における支承装置の概略構成図である。
【図6】本発明の第三の実施例における支承装置の概略構成図である。
【図7】充填空間を有する本発明の第一の実施例における支承装置の変形例の概略構成図である。
【図8】上揚抑制機構を備える本発明の第一の実施例における支承装置の変形例の概略構成図である。
【図9】上揚抑制機構を備える本発明の第二の実施例における支承装置の変形例の概略構成図である。
【図10】上揚抑制機構を備える本発明の第三の実施例における支承装置の変形例の概略構成図である。
【図11】上沓の上面にすべり板を有する本発明の第一の実施例における支承装置の変形例の断面図である。
【図12】下沓の下面にすべり板を有する本発明の第一の実施例における支承装置の変形例の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0068】
以下に本発明の実施形態の支承装置の構成を詳細に説明する。本発明の支承装置は、建築物や橋梁等の構造物を支承するための支承装置であって、互いに間隙を存して位置する二つの構造体のうち、一方の構造体側に配設される第一剛性体と、この第一剛性体に対向して他方の構造体側に配設される第二剛性体と、これらの第一剛性体と第二剛性体との間に介挿される弾性体とを備えて構成される。ここで例えば、上述の一方の構造体を上部構造体、他方の構造体を下部構造体とする。より具体的な例としては、本発明の支承装置は、上部構造体としての橋桁と下部構造体としての橋脚或いは橋台との間、即ち橋桁と橋脚或いは橋台との間に配設して使用するものであり、この場合には水平荷重や鉛直荷重、回転荷重等の各種の荷重を支えると共に、荷重伝達を果たしながら地震や風、或いは動的或いは静的な交通荷重等による揺動や振動、応力を吸収分散しつつ、支承するものである。以下、上部構造体と下部構造体との間に配設して使用する例を以て本発明の支承装置の実施形態の説明をする。
【0069】
支承装置は、少なくとも、下部構造体に直接或いは間接的に設定される第一剛性体である下沓と、上部構造体に直接的或いは間接的に設定される第二剛性体である上沓と、これら上沓と下沓との間に配設される弾性体とを備えて構成される。
【0070】
下部構造体に対する下沓の設定手段は、例えばボルト、ナット等の締結手段を用いて下沓を下部構造体に対して直接的に固定してもよく、或いは下沓よりも広面積の板状をなす下部プレートの如くの下部固定手段を介して下沓を下部構造体に対して間接的に固定したり、適宜の方法で設定することが出来る。また、下沓の下部に摺滑手段を配設して、下部構造体と支承装置とを相対変位可能に設定しても好い。この摺滑手段としては、例えば、PTFEの如くの低摩擦係数の表面を有するプレート等を、下沓の下面に固定したり、或いは下部構造体や下部構造体に固定される取付手段側の上面に固定することによって構成することが可能である。尚、上沓や下沓の直接的乃至間接的な設定は、着脱可能な方法とするのが好ましく、ボルト、ナット等による締結はその一例である。
【0071】
下沓は、上沓同様、金属やセラミックス、或いは硬質樹脂やFRPの如くの強化樹脂等の鋼製素材によって構成することが好ましいが、必ずしも剛性素材に限定されるものではなく、弾性素材や剛性素材と弾性素材との組合せによって構成される材料によって構成することが出来る。各種素材から構成される下沓は、平面形状が略多角形、略円形、略長円径、略楕円形等の適宜の形状に設定することが出来るが、方形又は円形とすることが製造上、或いは施工上、交換上有利である。勿論、下沓の平面形状等は、必ずしも上沓と一致させる必要はないが、各部のサイズと、凸部や凹部の形状や位置等は下沓の設定と上沓の設定を互いに整合させる必要がある。尚、下沓は、外表面を全体的に弾性体等の被覆層で覆って、耐候性、防錆効果を得るように構成することが出来る。
【0072】
下沓の上面側には、上方に向かって突出し、且つ、非環状の凸部が一つ以上設けられる。凸部を二つ以上設ける場合には、均等間隔を存して併設することが好ましいがこれに限定されない。勿論、凸部同士の間隔は、無くても有っても好く、間隔を設定する場合には、隣接する凸部同士の間に作出される凹部には底部が作出される。凸部の設定数は、特に限定されるものではないが、例えば、nを自然数として、2n−1条の凸部の設定数とし、凹部を2n−2筋に設定するのに対して、後述する上沓に設定される凸部を2n条に設定したり、後述する上沓と下沓を入れ替えた設定とする等、上沓の凸部と下沓の凸部とで、一方の設定数を一つ多めにしたり、或いは、上沓の凸部と下沓の凸部の設定数量を同数、即ち奇数条と奇数条、或いは偶数条と偶数条にすることも可能であり、円筒状の凸部の組合せ等では得られない、設計上の自由度が得られ、所定の平面面積を最大限に有効活用することが出来る。
【0073】
本実施形態の支承装置では、支承方向に直交すると共に互いに直交する第一方向と第二方向と(すなわち水平面をx−y平面とした場合におけるx軸方向とy軸方向と)のいずれの方向から見た場合にも、下沓の上面側に設けられた凸部の少なくとも一部が、後述する上沓の下面側に設けられた凹部を形成する壁部と重なる形状を有する。これに伴って、下沓の凸部の平面視形状は、一端から他端に向かうに連れて幅が変化する形状或いは一端から他端に向かうに連れて位置が変位する形状を選択することが好ましい。具体的には、例えば、菱形、波形或いは三角形に形状設定する他、略台形状、曲線的に狭まる形状等に形状設定することが好ましい。
【0074】
下沓の凸部の鉛直断面形状は、一定の幅をもって立設して成る略矩形状に設定することが出来る他、上端に向かって徐々に幅が狭くなる形状、例えば、略三角形状、略台形状、曲線的に狭まる形状等、適宜所望の形状に設定することが出来る。勿論、三角形状にした場合、凸部の上部には面は無いものとなる。逆に、凸部の上部に面を設定する場合には、平坦な面としてもよく、また曲面としたり、又は凹凸面や粗面としたり、或いはそれらの組合せとしてもよい。例えば、凸部の頂部を平坦な面とした場合には、設計や製作が容易である。また、頂部を曲面とした場合には、曲面の設定によってバネ定数の設定が可能となり、設計上の自由度を向上させることが出来る上、耐荷重性を調整することも可能となる。また、頂部を凹凸面としたり、粗面とすることで、ゴム等の弾性体を下沓に接着した場合における耐剥離性を改善することが出来る。同様に、隣接する凸部同士の間に作出される凹部の底部についても凹部の底部に面を設定する場合には、平坦な面としてもよく、また曲面としたり、凹凸面としたり、粗面としたり、或いはそれらの組合せとしてもよい。
【0075】
下沓の凸部の側面は、平面や曲面とすることが出来る他、凹凸面としたり、粗面としたり、或いはそれらの組合せとすることも出来る。例えば、凸部の側面を平坦な面とした場合には、設計や製作が容易である。また、側面を曲面とした場合には、当該側面に当接するゴム等の弾性体との接触面積を調整することや、荷重の分散性を側面上の部位によって変えることが出来る。また、側面を凹凸面としたり、粗面とすることで、ゴム等の弾性体を上沓に接着した場合における耐剥離性を改善することが出来る。側面を傾斜させる場合、その傾斜角は、水平を基準にして有限の角度で一直角の間、或いはそれ以上即ち鈍角等適宜設定することが出来る。また、一方の側面を角度αで傾斜させ、他方の側面を角度αと異なる角度βで傾斜させることも出来る。
【0076】
下沓の凸部や凹部は、それらの延在方向における端部を丸く形成することが出来、丸く形成した場合には、支承装置の凸部や凹部の延在方向における鉛直面内の回転追従に際して、凸部等の端部に過度な負荷が掛かることや過負荷による角部の座屈等が防止され、円滑に回転追従させることが出来る。
【0077】
上部構造体に対する上沓の設定手段は、例えばボルト、ナット等の締結手段を用いて上沓を上部構造体に対して直接的に固定してもよく、或いは上沓よりも広面積の板状をなす上部プレートの如くの上部固定手段を介して上沓を上部構造体に対して間接的に固定することも出来る。また、上沓の上部に摺滑手段を配設して、上部構造体と支承装置とを相対変位可能に設定しても好い。この摺滑手段としては、例えば、PTFEの如くの低摩擦係数の表面を有するプレート等を、上沓の上面に固定したり、或いは上部構造体や上部構造体に固定される取付手段側の下面に固定することによって構成することが可能である。
【0078】
上沓は、金属やセラミックス、或いは硬質樹脂やFRPの如くの強化樹脂等の鋼製素材によって構成することが好ましいが、必ずしも剛性素材に限定されるものではなく、弾性素材や剛性素材と弾性素材との組合せによって構成される材料によって構成することが出来る。各種素材から構成される上沓は、平面形状が略多角形、略円形、略長円径、略楕円形等の適宜の形状に設定することが出来るが、方形又は円形とすることが製造上、或いは施工上、交換上有利である。尚、上沓は、外表面を全体的に弾性体等の被覆層で覆って、耐候性、防錆効果を得るように構成することが出来る。
【0079】
上沓の下面側には、下方に向かって突出し、且つ、凹部を形成する複数の凸部(本発明における凹部を形成する壁部)が設けられる。これらの凸部は、下沓の凸部が配置設定される凹部を形成するものであり、平面視形状が下沓の凸部の側面に自らの側面が隙間を存して対向配置される形状とされている。上沓の凸部は、x軸方向或いはy軸方向のいずれの方向から見た場合にも、その一部が下沓の凸部と重なるように形状及び配置個数が設定されている。
【0080】
凸部の鉛直断面形状は、一定の幅をもって垂設して成る略矩形状に設定することが出来る他、下端に向かって徐々に幅が狭くなる形状、例えば、略逆三角形状、略台形状、曲線的に狭まる形状等、適宜所望の形状に設定することが出来る。勿論、逆三角形状にした場合、凸部の下部には面は無いものとなる。逆に、凸部の下部に面を設定する場合には、平坦な面としてもよく、また曲面としたり、又は凹凸面や粗面としたり、或いはそれらの組合せとしてもよい。例えば、凸部の下部を平坦な面とした場合には、設計や製作が容易である。また、下部を曲面とした場合には、曲面の設定によってバネ定数の設定が可能となり、設計上の自由度を向上させることが出来る上、耐荷重性を調整することも可能となる。また、下部を凹凸面としたり、粗面とすることで、ゴム等の弾性体を上沓に接着した場合における耐剥離性を改善することが出来る。同様に、隣接する凸部同士の間に作出される凹部の底部についても凹部の底部に面を設定する場合には、平坦な面としてもよく、また曲面としたり、凹凸面としたり、粗面としたり、或いはそれらの組合せとしてもよい。
【0081】
上沓の凸部の側面は、平面や曲面とすることが出来る他、凹凸面としたり、粗面としたり、或いはそれらの組合せとすることも出来る。例えば、凸部の側面を平坦な面とした場合には、設計や製作が容易である。また、側面を曲面とした場合には、当該側面に当接するゴム等の弾性体との接触面積を調整することや、荷重の分散性を側面上の部位によって変えることが出来る。また、側面を凹凸面としたり、粗面とすることで、ゴム等の弾性体を上沓に接着した場合における耐剥離性を改善することが出来る。側面を傾斜されて傾斜面とすることも出来る。この場合、その傾斜角は、水平を基準にして有限の角度で一直角までの間で適宜設定することが出来る。また、一方の側面を角度γで傾斜させ、他方の側面を角度γと異なる角度δで傾斜させることも出来る。
【0082】
上沓の凸部や凹部は、それらの延在方向における端部を丸く形成することが出来、丸く形成した場合には、支承装置の凸部や凹部の延在方向における鉛直面内の回転追従に際して、凸部等の端部に過度な負荷が掛かることや過負荷による角部の座屈等が防止され、円滑に回転追従させることが出来る。
【0083】
弾性体は、上沓と下沓の間の所望の部位に、所望量配設される。この配設部位と配設量によって、鉛直荷重支持性能や水平荷重支持性能、並びに鉛直回転性能を調節することが出来る。勿論、弾性体として採用する材料によっても荷重支持性能や回転追従性などの設定を行うことが出来る。また、上沓と下沓の間に配設される弾性体は、接着していてもいなくてもどちらでもよいが、好ましくは加硫接着乃至接着剤による接着等によって上沓と下沓とのそれぞれに対して接合し、応力集中や経年変化等によっても弾性体が乖離したり剥離して機能不全を生じさせないようにすることが好ましい。勿論、上沓や下沓に対する弾性体の接着方法は特に限定されるものではない。
【0084】
弾性体の配設部位は、上沓の凸部及び/又は凹部と、下沓の凹部及び/又は凸部の間とすることが出来る。特に、上沓の凸部の側面と、これに対向する下沓の凸部の側面との間に配設することが鉛直荷重の支承上及び水平荷重の支承上、そして鉛直面内における回転追従上好ましい。上沓の凸部及び/又は凹部と、下沓の凹部及び/又は凸部の間に対する弾性体の配設に当たっては、接着せずに配置するだけとすることも出来るが、適宜の接着法、例えば加硫接着や接着剤を用いての接着によって、弾性体と上沓乃至下沓とを接合することが好ましい。
【0085】
弾性体の主たる構成素材となるエラストマとしては、天然ゴムや合成ゴム、熱可塑性エラストマや熱硬化性エラストマを用いることができ、これらの中でも天然ゴムを主成分として使用することが好ましい。具体的なエラストマ成分としては、例えば、天然ゴム(NR)、ポリイソプレンゴム(IR)、ポリブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、エチレン−プロピレンゴム、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム(臭素化、塩素化等)、アクリルゴム、ポリウレタン、シリコーンゴム、フッ化ゴム、多硫化ゴム、ハイパロン、エチレン酢酸ビニルゴム、エピクロルヒドリンゴム、エチレン−メチルアクリレート共重合体、スチレン系エラストマー、ウレタン系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマー、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体(SIS)、エポキシ化天然ゴム、trans−ポリイソプレン、ノルボルネン開環重合体(ポリノルボルネン)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ハイスチレン樹脂、イソプレンゴム等のゴムを1種単独、或いは2種以上を併用することが出来る。
【0086】
また、上沓の凸部の頂部と下沓の凹部の底部との間、或いは下沓の凸部の頂部と上沓の凹部との間に、弾性体を配設しない空間を設定することが出来、この場合、この空間を空気や窒素ガスの如くの気体を封入して空隙とすることも可能である。又はこの空間に充填材として、上沓と下沓との間に介挿される弾性体とは異種又は同種の弾性体を配設したり、或いは他の充填材を充填することも可能である。この空間に異種又は同種の弾性体を配設する場合には、それらの弾性体が互いに接着していなくてもよく、例えば互いに適宜間隔を存して設けられてもよく、この場合には、水平変形し易くなることの他、対向する凸部の側面間に位置する弾性体と、凸部の上部と凹部の底部との間に位置する弾性体とのそれぞれが個々に有する特性を独立に発揮させることが可能となる。
【0087】
尚、上沓と下沓の間に設定する上記空間は、一つだけであっても複数設定してもよく、また一定の狭い範囲に設定したり、広範な領域に断続的に設定してもよいが、各空間を連通路を以て一連とすることにより、充填材等の充填の容易性を向上させることが可能となる。
【0088】
充填材は、上沓と下沓の間の適宜の部位に設定される弾性体の配設されていない上述の空間、即ち充填空間の内部に適宜量充填されるものであり、その充填量は充填空間の容積よりも少量であっても、等量であっても、或いは多量であってもよく、少量の場合には、残存空隙分だけ圧縮或いは変形し得る余地が出来、支承装置の厚みを薄く設定出来、等量とした場合には、残存容積が無く元々の設計通りの支承装置の厚みを実現出来、また多量とした場合には、充填空間の容積が元々の設計値よりも増量して支承装置の厚みを厚く設定することが可能となり、充填材の充填量によって支承装置の厚み若しくは高さを調整し得るようにすることが出来る。
【0089】
充填材は、少なくとも充填時には流体であることが好ましい。勿論、充填後も流体であってもよい。充填時に流体である充填材のうち、例えば、充填時には流体であるが適宜時間が経過した後に固化するものを採用することも可能である。また、一つの空間内に充填される充填材の種類は、一種類であっても或いは複数種類であってもよい。例えば、二液硬化性の流体をそれぞれ適宜量充填して硬化させて適宜の弾性係数を発現するものとして一固体化させてもよく、勿論、予め二液を混合して置いてから充填することも出来る。また、充填材としては、流体の内部に固体や粒体を混入させて支承装置に対する外部入力の減衰性能を改善したり、気体を混入させてバネ定数や弾性を改質或いは調整するようにしてもよい。
【0090】
充填材は、気体、液体、ゲル状体から選択される一つ以上の流体から構成することが可能である。充填材の主成分として気体を採用する場合には、気体は圧縮率が大きいことから高荷重支持には不向きとなるが、比較的低荷重を支持する場合には例えば空気バネのような作用をさせることが可能であり、また加圧状態で充填してもよい。また、不連続気泡のように気泡を内包する流体を充填して置きながら硬化させて、発泡体の如くの充填材とすることも可能である。また例えば、充填材の主成分として液体やスラリー状乃至ゲル状の非硬化性の流体を採用した場合には、充填空間の変形に自在に対応しつつ、荷重を支持することが可能であり、また寒冷地等の低温下においても凍結しない不凍流体を選択することが可能である。
【0091】
充填材には、非圧縮性の流体を採用することが可能であり、充填材として非圧縮性の流体を採用した場合には、充填空間の変形に自在に対応しつつも高荷重を支持することが可能となる。
【0092】
また充填材には、高粘性の流体を採用することも可能であり、液体やスラリー状乃至ゲル状の非硬化性で高粘性の充填材を充填した場合、充填空間を囲繞する弾性体が変形した際には、当該空間内の高粘性の充填材が粘性抵抗によって変形エネルギーを減衰させる効果を期待出来る。勿論、非圧縮性を有し高粘性の流体を採用した場合には、非圧縮性流体を充填材として採用した場合に得られる効果と、高粘性流体を充填材として採用した場合に得られる効果と、両者の効果を得ることが可能となる。
【0093】
或いは、充填材には、上沓と下沓との間に介在させる弾性体と異種又は同種の弾性体を採用することが可能である。勿論、充填材が弾性体となるためには、充填時には流動性を示すものであることが好ましい。例えば、弾性体が熱可塑性を示すものであれば、これを充填材として使用する場合には、当該弾性体を適宜温度に加熱して流動可能な状態にしておきながら充填する。また例えば弾性体が、熱硬化性を示すものであれば、硬化前の流動可能な状態の時点で充填し、適宜の条件で硬化させる。
【0094】
充填材の充填は、予めの充填であってもよく、或いは製造後に充填してもよい。予め充填材を充填する場合には、充填材の充填は予めの設計通り、また手順通りに製造段階や出荷前に充填することになり、これによれば、製造上高効率化することが出来る。また、後から充填材を充填する場合には、充填材の充填は、出荷後、例えば施工現場において、施工空間の高さ等の大きさに合わせて調整しながら充填することも可能となり、これによれば、従来施工上における微調整が困難であった問題を解消することが出来る。
【0095】
尚、上沓の凸部及び/又は凹部と下沓の凸部及び/又は凹部との配置関係は、少なくとも上沓の凸部と下沓の凸部との鉛直方向における重なりが有限の大きさとなるようにすることが好ましく、例えば、凸部の高さの半分程度が重なり高さとなるように設定することが出来るが、これに限定されるものではない。
【0096】
また、上沓の凸部の側面とこれに対向する下沓の凸部の側面とは、互いに平行に設定することも可能であるが、これに限らず互いに非並行な面とすることも可能である。
【0097】
また、上沓と、下沓とには、上沓と下沓を支承方向に平行な面内における相対回転移動可能に係合する上揚抑制手段を設けることが出来る。この上揚抑制手段は、上沓と下沓とが乖離することを抑制する乖離抑制手段として機能するものであり、上沓及び下沓の一方側に設けられる係合部と、他方側に設けられる係合受部とで構成され、鉛直面内における回転を可能とするように構成されることが好ましい。
【0098】
具体的には、例えば、下沓の上面中央には、係合受部としての雌ねじ孔が形成され、上沓の中央には、表裏に貫通した小径の円孔を上沓に穿設し、これと同心で上沓の厚み方向の途中深さまで上面側から穿設した大径の円孔とによって段付き円孔を構成し、これと合わせて頭部を有する雄ねじを以て係合部として、この雄ねじを上沓の上部側から段付き円孔に挿通して下方に位置する下沓の雌ねじに螺合して係合し、これら上沓と下沓とが上揚力によって乖離しないように構成し、且つ、上沓と下沓とが相対変位可能に構成することが出来る。
【0099】
上揚防止手段を設定する場合には、支承装置の鉛直面内における回転追従に伴う上沓と下沓との相対変位を阻害しないように、例えば係合部と係合受部との間と、上沓と下沓との間等の各部間が、相対回転中心を中心として1/150ラジアン相対回転しても互いが当接しない程度に所謂遊びを設定する構成とすることが好ましい。
【0100】
上揚防止手段は、係合部又は係合受部のいずれか一方、又は両方が弾性体を介して、被支承体からの鉛直荷重を受け支えるように構成することが可能である。上揚防止手段が弾性体を含むように構成すれば、支承装置に掛かる荷重をこの弾性体を介して上揚防止手段でさえも支持するようにすることが可能となり、この場合、従来、この種の上揚防止手段の配設領域では鉛直荷重を支持出来ず、その分、同じ支承面積の場合、荷重支持性能が劣るものとなっていた点が改善され、より高荷重を支承することが出来るようになる。
【0101】
勿論、上揚防止手段は、上沓と下沓の外部に設定することも可能であり、この場合、上揚防止手段としては例えば、上沓又は下沓の一方の外部に設けられる係合部と、他方の外部に設けられる係合段部とを備え、これらが互いに係合するよう構成され、支承負方向の外力が作用した場合に、係合段部に係合部が係合して、上沓と下沓の乖離を防止するように構成される。
【実施例】
【0102】
本発明の支承装置の実施例について添付図面を参照しながら以下に説明する。先ず、本発明の支承装置の第一の実施例を図1乃至図4を参照しながら説明する。
【0103】
図1に示す支承装置1は、例えば橋梁において、橋桁(図示省略)と橋脚(図示省略)或いは橋台(図示省略)との間に装着して水平荷重や鉛直荷重、回転荷重等の各種の荷重を支えると共に、地震や風、動的或いは静的交通荷重等による揺動や振動、応力を吸収、分散しつつ、支承する橋梁用支承装置である。尚、図1は支承装置1の平面の透視図である。また、図2は支承装置1の断面図である。また、図3は図2の要部拡大図である。また、図4は支承装置1が備える上沓及び下沓を示す図であり、(a)が上沓2の下面図、(b)が下沓3の上面図である。
【0104】
支承装置1は、上沓2と下沓3を、弾性体、具体的にはゴム等から構成されるゴム層4を介して、鉛直方向及び水平方向に対するゴム層4の撓み分だけ相対変位を可能とするように配置設定させて構成されている。上沓2は、二点鎖線で示す上部プレート6を介してその上面が、上部構造物として例えば橋桁に固定されている。下沓3は、二点鎖線で示す下部プレート7を介してその下面が、下部構造物として例えば橋脚に固定されている。勿論、ここでいう上部プレートや下部プレートは、必須ではなく、上沓と上部プレートを一体的に構成したり、下沓と下部プレートを一体的に構成したりして、上沓や下沓にそれぞれに対応する構成を持たせてもよい。
【0105】
図1乃至図4において、上沓2は、例えば平面視において略長方形板状を成す基板2aの上面に上部プレート6が固定され、特に図4(a)に示すように、下面に、複数の凸部8と、当該凸部8によって形成される凹部9とを備えている。これらの凸部8は、水平面内において互いに直交するx軸方向(橋軸方向)或いはy軸方向(橋軸直角方向)のいずれの方向から見た場合にも、その一部が後述する下沓3の凸部11と重なるように形状(本実施例では三角形状)及び配置個数が設定されている。
【0106】
図3に示すように、凸部8は、その側面が水平面に対して所定角度θで傾斜する共通の一対の傾斜面8a、8aを有している。凸部8には水平面状の頂部8bが形成され、凹部9には水平面状の底部9bが形成されている。これら凸部8と凹部9は第一凹凸部10を構成する。
【0107】
また、下沓3も略長方形状を成す基板3aの下面に下部プレート7が固定され、特に図4(b)に示すように、上面である上沓2に対向する面に、平面視において略菱形の凸部11と、当該凸部11によって形成される括れ形状の凹部12が複数交互に配列されて形成されている。
【0108】
図3に示すように、凸部11は、その側面が水平面に対して所定角度θで傾斜する共通の一対の傾斜面11a、11aを有している。また、凸部11には水平面状の頂部11bが形成され、凹部12には水平面状の底部12bが形成されている。これら凸部11と凹部12は第二凹凸部13を構成する。
【0109】
尚、本実施例においては、凸部11の延在方向を橋軸方向に合わせて支承装置1が姿勢設定されている。勿論、支承装置1の姿勢はこれに限られるものではなく、凸部11の延在方向を橋軸直角方向に合わせたり、凸部11の延在方向を橋軸方向に対して傾斜させたりしても良い。
【0110】
そして、上沓2の凸部8は下沓3の凹部12に、上沓2の凹部9は下沓3の凸部11にそれぞれ配置設定されている。そして、上沓2の凸部8又は凹部9の傾斜面8aとこれに対向する下沓3の凹部12又は凸部11の傾斜面11aとの間に、層状にゴム層4が凸部8,11と凹部12,9の延在方向に沿って固定されている。ゴム層4は例えば加硫接着法により対向する傾斜面8a,11aにそれぞれ接合されている。
【0111】
また、傾斜面8a,11a間に挟持されたゴム層4の厚みをTとすると、ゴム層4の傾斜角は傾斜面8a,11aにおける傾斜角θであるから、ゴム層4の鉛直方向の厚みT′はT′=T/cosθによって得られる。そのため、ゴム層4の厚みを比較的薄く形成しても大きな鉛直方向厚さT′を得ることが出来ることにより、鉛直方向の耐荷重を大きく設定出来る。
【0112】
また、支承装置1の台形状を成す凸部8,11の側面である傾斜面8a,11aに掛かる荷重のうち、水平方向の分力による水平荷重は各凸部8,11内で互いに向かい合う方向の力が相殺されるから、水平方向成分の荷重が小さくなり、より大きな鉛直荷重を支持することが可能となる。
【0113】
ところで、凸部8,11と凹部12,9とで形成する傾斜面8a,11aの傾斜角θは特に限定されるものではないが鋭角、即ち、0°<θ<90°の範囲に設定されていることが好ましい。
【0114】
尚、上沓2及び下沓3の材質は、適宜の公知の材質を採用することが出来、例えば公知の鋼板等の金属板、セラミックス、強化プラスチック等を含むプラスチック等で形成することが出来る。同様に、ゴム層4も公知の天然ゴム等の素材を採用することが出来る。
【0115】
また、上述した支承装置1について、その外面をゴム皮膜によって被覆してもよく、これによって、上沓2及び下沓3等の金属部分は殆ど外部に露出しないので、金属の腐食等が発生し難く、耐環境性を向上させることが出来る。
【0116】
このような本実施例の支承装置1によれば、水平面内で直交するx軸方向とy軸方向とのいずれから見た場合であっても、上沓2の凸部8と下沓3の凸部11とに必ず重なる領域が存在する。このため、当該重なる領域によって、上沓2と下沓3との相対移動を抑止することができる。そして、上沓2と下沓3との相対移動を抑止する抵抗力は、上沓2の凸部8と下沓3の凸部11とが重なる領域の面積に比例する。このため、当該面積を調整することによってx軸方向とy軸方向との荷重支持特性、すなわち水平方向の荷重支持特性を任意に設定することが可能となる。更に、上沓2の凸部8や下沓3の凸部11の形状は、図1に示すように、それぞれx軸方向とy軸方向とが一致している必要はなく、寧ろこれらを一致させない形状に設定することによって、x軸方向に対する荷重支持性能や変位可能量とy軸方向に対する荷重支持性能や変位可能量を相異なるよう適宜に設定することが可能となる。
【0117】
また、支承装置1によれば、上沓2の凸部8と下沓3の凹部12とが互いに入り組んで配置設定されてその間にゴム層4が介挿されている。このため、鉛直方向及び水平方向に作用する荷重を支持することが出来る。このため、鉛直方向へのゴム層の積層数を最低限(つまり一層)に抑えた場合であっても、複数方向から作用する荷重に対して優れた荷重支持特性を発揮することが出来、装置サイズをコンパクトにすることが出来る。よって、支承装置1よれば、施工性及び交換性の高度化を図ることが出来、熱伝導性の向上及び加工時間の短縮が可能となることで低コスト性及び量産性を高度化することが出来る。
【0118】
また、支承装置1によれば、凸部8の側面及び凸部11の側面が傾斜面8a,11aとされている。このため、鉛直方向から作用する荷重を鉛直方向と水平方向とに分散することが出来、高面圧支持性能が向上する。また、ゴム層4は、傾斜面8a,11aの法線方向に対するゴム層4の厚み、即ち実厚に対して、鉛直方向における鉛直厚が増すため、実厚を薄くすることも出来、またゴム層4の実厚よりも鉛直荷重の吸収、分散性能を向上させることが出来る。
【0119】
また、一つの凸部8,11に掛かる荷重の水平成分は、逆向きの成分が互いに相殺されて荷重低減がなされ、水平荷重支持特性が向上する。従って、平面視における面積が小面積でありながら、また厚さ方向が嵩張ることなく、つまり小型でありながら高荷重を支持することが出来る支承装置1を得ることが出来る。
【0120】
また、支承装置1によれば、対向する凸部8の側面と凸部11の側面とが平行とされている。このため、ゴム層4の厚みが均一化され、荷重支持特性を均一とすることが出来る。尚、敢えて凸部の側面と凹部を形成する壁部の壁面とを非平行とし、荷重支持特性を不均一とすることも可能である。
【0121】
尚、支承装置1においては、例えば、上沓2に対して菱形の凸部8を設ける構成を採用しても良い。
【0122】
本発明による支承装置は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変更が可能である。本発明の他の実施例や変形例について以下に説明するが、上述した実施例と同一又は同様な部分や部品等には同一の符号を用いて説明を省略する。
【0123】
図5は、本発明の第二の実施例の支承装置20の概略構成図であり、(a)が平面図、(b)が断面図である。これらの図に示すように、本実施例の支承装置20は、上沓2が橋軸方向に波長方向が一致する波形形状の凸部21を複数有し、またこれらの凸部21によって形成される凹部22を有している。また、下沓3も、上沓2の凸部21と同一形状で、橋軸方向に波長方向が一致する波形形状の凸部23を複数有し、またこれらの凸部23によって形成される凹部24を有している。
【0124】
また、本実施例においても、上沓2の凸部21が下沓3の凹部24に配置設定され、下沓3の凸部23が上沓2の凹部22に配置設定され、上沓2と下沓3との間にゴム層4が介挿されている。
【0125】
そして、上沓2に設けられた凸部21と、下沓3に設けられた凸部23との曲率は、橋軸方向から見た場合に、凸部21の一部がこれに隣接配置される凸部23の一部に重なるように設定されている。つまり、本実施例の支承装置20においても、第一の実施例の支承装置1と同様に、水平面内で直交するx軸方向とy軸方向とのいずれから見た場合であっても、上沓2の凸部21と下沓3の凸部23とに必ず重なる領域が存在する。このため、当該重なる領域によって、上沓2と下沓3との相対移動を抑止することができる。そして、上沓2と下沓3との相対移動を抑止する抵抗力は、上沓2の凸部21と下沓3の凸部23とが重なる領域の面積や対抗する面同士の相対的な角度や変位方向に対するこれらの面の角度の関数となる。このため、当該面積や対抗する面同士の相対的な角度や変位方向に対するこれらの面の角度等を調整することによってx軸方向とy軸方向との荷重支持特性、すなわち水平方向の荷重支持特性を任意に設定することが可能となる。
【0126】
尚、凸部21の側面及び凸部23の側面も、第一の実施例の支承装置1と同様に、傾斜面とされている。このため、支承装置20は、鉛直方向から作用する荷重を鉛直方向と水平方向とに分散することが出来、高面圧支持性能が高いものとなっている。
【0127】
図6は、本発明の第三の実施例の支承装置30の概略構成図であり、(a)が平面の透視図、(b)が断面図である。これらの図に示すように、本実施例の支承装置30は、上沓2が、平面視形状において先端が橋軸方向の一方向に向く二等辺三角形形状の凸部31を複数有し、またこれらの凸部31によって形成される凹部32を有している。また、下沓3も、上沓2の凸部31と同一形状で、先端が橋軸方向の他方向に向く二等辺三角形状の凸部33を複数有し、またこれらの凸部33によって形成される凹部34を有している。
【0128】
また、本実施例においても、上沓2の凸部31が下沓3の凹部34に配置設定され、下沓3の凸部33が上沓2の凹部32に配置設定され、上沓2と下沓3との間にゴム層4が介挿されている。
【0129】
そして、上沓2に設けられた凸部31と、下沓3に設けられた凸部33との幅は、橋軸方向から見た場合に、凸部31の一部が凸部33の一部に重なるように拡げられている。また、凸部31と凸部33との橋軸方向の長さは、橋軸直角方向から見た場合に重なる長さに設定されている。つまり、本実施例の支承装置30においても、第一の実施例の支承装置1と同様に、水平面内で直交するx軸方向とy軸方向とのいずれから見た場合であっても、上沓2の凸部31と下沓3の凸部33とに必ず重なる領域が存在する。このため、当該重なる領域によって、上沓2と下沓3との相対移動を抑止することができる。そして、上沓2と下沓3との相対移動を抑止する抵抗力は、上沓2の凸部31と下沓3の凸部33とが重なる領域の面積に比例する。このため、当該面積を調整することによってx軸方向とy軸方向との荷重支持特性、すなわち水平方向の荷重支持特性を任意に設定することが可能となる。
【0130】
また、本実施例の支承装置30においては、上沓2の凸部31と下沓3の凸部33とがそれぞれ対向して交互配置に設定される三角形状に構成されているため、橋軸方向における一方向きに対しては変位制限が働くが、逆向きには変位制限が働かないものとなる。従って、支承装置30は、配置の向きによって変位制限の有無を設定したり、或いは複数の支承装置30を互い違いの向きに併設することによって変位制限を設定したりすることが可能となる。
【0131】
尚、凸部31の側面及び凸部33の側面も、第一の実施例の支承装置1と同様に、傾斜面とされている。このため、支承装置30は、鉛直方向から作用する荷重を鉛直方向と水平方向とに分散することが出来、高面圧支持性能が高いものとなっている。
【0132】
また、図7に示すように、第一の実施例の支承装置1において、入り組んだ配置設定状態にある凸部8,11と凹部12,9との頂部8b,11bと底部12b,9bとの間の空間にゴム層4が存在しない充填空間15を設けても良い。そして、このような充填空間15を設け、充填材として加圧空気を当該充填空間15に充填する場合には、加圧空気の充填量によって下沓3に対する上沓2の高さが調整され、支承装置1の高さとバネ定数を調整出来る。
【0133】
尚、上述のように充填材としては、加圧空気に限られるものではなく、気体、液体、ゲル状体から選択される一つ以上の流体、非圧縮性の流体、高粘性の流体、或いはエチレングリコール等の不凍性流体、若しくは、ゴム層4と異種又は同種の弾性体を用いることができる。
【0134】
また、充填空間15内に空気等の気体や充填材等の流体を充填させる場合、充填空間15の両端を密閉状態に封止しておくことが好ましい。また、充填材は支承装置1の組立前に充填しておいてもよく、組立後に充填してもよい。このように充填空間を設定する構成とすることは、第一の実施例の場合に限らず、第二の実施例、或いは第三の実施例、若しくは本発明の主旨を逸脱しない構成の支承装置に対して設定することが可能である。
【0135】
更に、図8に示すように、第一の実施例の支承装置1において、乖離抑制手段として、上揚抑制機構16を備えても良い。上揚抑制機構16は、下沓3の中央部分に上沓2側に突出して設けられた心棒16aと、上沓2に設けられると共に心棒16aを基板2a側に貫通させる貫通孔16bと、基板2aの上部プレート6側に設けられると共に貫通孔16bに連通する拡径された拡径溝部16cとを備えている。
【0136】
また、貫通孔16bを貫通する心棒16aの他端側には、貫通孔16bの外径より拡径された拡径係止部16dが連結されており、上揚力が働いた際の上沓2と下沓3との分離を防止している。拡径係止部16dは拡径溝部16cの内径より小径に形成されている。
【0137】
心棒16aと拡径係止部16dの結合構造として、例えば心棒16aの他端側に雄ねじ部が形成され、拡径係止部16dは例えば心棒16aの雄ねじ部に螺合する雌ねじ部で構成されている。これら下沓3に設けた心棒16a、拡径係止部16d、上沓2に設けた貫通孔16b、拡径溝部16cは上揚抑制機構16を構成する。なお、上述の構成に代えて、上揚抑制機構16として、上沓2に心棒16aと拡径係止部16dを設け、下沓3に貫通孔16bと拡径溝部16cを設けてもよい。また、上揚抑制機構16において、心棒16aと拡径係止部16dは係合部を構成し、貫通孔16bと拡径溝部16cは係合受部を構成する。そして、係合部と係合受部とは、上沓2と下沓3とが鉛直面内や水平面内での回転が可能となるように係合されている。
【0138】
支承装置1では、上述の構成を備えていることにより、上沓2は下沓3に対して水平面内で相対的に微小回転することが許容されている。これと同時に、鉛直面内での橋桁の揺動による回転運動によって、上部プレート6を介して上沓2に上揚力が働くが、心棒16aに設けた拡径係止部16dによって上沓2が下沓3から分離して凸部8,11と凹部9,12の入り組み状態が解除されることを防止して、橋桁の揺動による回転運動に支承装置1が追従する。
【0139】
このような上揚抑制機構16を設けることにより、鉛直面内で橋桁の揺動による回転運動が生じても、支承装置1の上沓2が下沓3から乖離して離脱することを防止しつつ、橋梁に追従することが出来る。
【0140】
また、図9に示すように、第二の実施例の支承装置20が上揚抑制機構16を備える構成を採用することもできる。同様に、また、図10に示すように、第三の実施例の支承装置30が上揚抑制機構16を備える構成を採用することもできる。
【0141】
更に、図11に示すように、第一の実施例の支承装置1において、上沓2の上面にすべり板17を摺滑手段として固設することが可能であり、この場合、元々固定支承であった支承装置1を可動支承として利用することが可能となる。すべり板17は、例えばPTFE製とされる。
【0142】
すべり板17を設けることにより、水平方向、特に橋軸方向に振動が生じた場合に、橋桁に固定された上部プレート6の下面に対してすべり板17が滑動し、可動支承としての役割を果たすことが出来るようになり、免震構造が得られる。
【0143】
また、図12に示すように、第一の実施例の支承装置1において、下沓3の下面にすべり板17を備える構成を採用することもできる。勿論、すべり板17の設定は第一の実施例の支承装置1に限らず、第二の実施例の支承装置20や第三の実施例の支承装置30、若しくはその他、本発明の主旨を逸脱しない構成の支承装置に対して設定することが可能である。
【0144】
尚、上述の説明では、本発明の支承装置として橋梁用支承装置について説明したが、本発明は橋梁用支承装置に限定されることはなく、各種の構造物の制震、免震用の支承装置として採用することが出来る。
【0145】
また、支承装置を上下反転し、上沓2を下沓として、下沓3を上沓として用いることも可能である。
【0146】
また、ゴム層4の厚さは、必ずしも一定である必要はなく、例えば、支承装置の内周側で薄く、外周側で厚いというように設定したり、或いは、支承装置の内側で厚く外周側で薄くなるように設定したり、部位によって適宜の厚さに設定することが出来る。
【0147】
また、充填部位によって充填材の充填量や充填空間15の広さは相異なっても良く、或いは一定であっても良い。また充填に関しては、追加充填や予め充填されている充填材を削減する等も含め充填量や充填空間の広さは適宜に変更することが出来る。
【0148】
また、凸部8,21,31及び凸部11,23,33の形状、配置、設置数は、厭くまでも一例であり、橋軸方向と橋軸直角方向から見て、互いに重なる部位が存在するように任意に設定することが出来る。
【符号の説明】
【0149】
1,20,30 支承装置
2 上沓
3 下沓
4 ゴム層
8,11,21,23,31,33 凸部
9,12,22,24,32,34 凹部
12b 底部
15 充填空間
16 上揚抑制機構
16a 心棒
16b 貫通孔
16c 拡径溝部
16d 拡径係止部
17 すべり板
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非環状の凸部を有する第一剛性体と、当該凸部が配置設定される凹部を有する第二剛性体と、前記第一剛性体と前記第二剛性体との間に介挿される弾性体とが支承方向に重ねて配設される支承装置であって、
前記支承方向に直交すると共に互いに直交する第一方向と第二方向のいずれかの方向から見た場合にも、前記凸部は、前記凹部を形成する壁部と重なる領域を有することを特徴とする支承装置。
【請求項2】
前記支承方向から見て一つ以上の前記凸部が略多角形に形状設定されていることを特徴とする請求項1に記載の支承装置。
【請求項3】
前記支承方向から見て一つ以上の前記凸部が成す略多角形が略三角形、略四角形、略六角形のいずれか一つ以上の形状に設定されていることを特徴とする請求項2に記載の支承装置。
【請求項4】
前記支承方向から見て一つ以上の前記凸部がジグザグ形乃至波形に形状設定されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の支承装置。
【請求項5】
前記凸部の側面及び前記凹部を形成する壁部の壁面のいずれか或いは両方が傾斜面とされていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の支承装置。
【請求項6】
対向する前記凸部の側面と前記凹部を形成する壁部の壁面とが平行とされていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の支承装置。
【請求項7】
前記凸部の側面及び前記凹部を形成する壁部の壁面のいずれか或いは両方が、平面、曲面、凹凸面又は粗面、或いはこれらの組み合わせから成ることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の支承装置。
【請求項8】
前記凸部の頂面及び前記凹部の底面のいずれか或いは両方が、平面、曲面、凹凸面又は粗面、或いはこれらの組み合わせから成ることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の支承装置。
【請求項9】
前記凸部及び前記凹部を複数備えることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の支承装置。
【請求項10】
互いに入り組んで配置設定される前記凸部の頂部と前記凹部の底部との間に前記弾性体が設けられていない空間を有することを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載の支承装置。
【請求項11】
前記空間には、充填材が充填されていることを特徴とする請求項10に記載の支承装置。
【請求項12】
前記充填材は、前記弾性体と異種の弾性体であることを特徴とする請求項11に記載の支承装置。
【請求項13】
前記充填材は、非圧縮性の流体であることを特徴とする請求項11に記載の支承装置。
【請求項14】
前記充填材は、前記凸部と前記凹部とを入り組ませて配置設定するより前に予め充填されていることを特徴とする請求項11乃至13のいずれかに記載の支承装置。
【請求項15】
前記充填材は、前記凹部と前記凸部とを入り組ませて配置設定した後に充填されることを特徴とする請求項11乃至13のいずれかに記載の支承装置。
【請求項16】
前記第一剛性体と前記第二剛性体とが互いに乖離することを抑制する乖離抑制手段を備えることを特徴とする請求項1乃至15のいずれかに記載の支承装置。
【請求項17】
前記乖離抑制手段は、前記第一剛性体と前記第二剛性体との一方に設けられる係合部と、他方に設けられる係合受部とで構成され、
これら係合部と係合受部とは、支承方向に対する平行面内で回転可能に係合されている
ことを特徴とする請求項16に記載の支承装置。
【請求項18】
前記第一剛性体又は前記第二剛性体の上面或いは下面に摺滑手段を設けることを特徴とする請求項1乃至17のいずれかに記載の支承装置。
【請求項19】
前記第一剛性体が上部構造物に固定される上沓であり、前記第二剛性体が下部構造物に固定される下沓であることを特徴とする請求項1乃至18のいずれかに記載の支承装置。
【請求項20】
前記第二剛性体が上部構造物に固定される上沓であり、前記第一剛性体が下部構造物に固定される下沓であることを特徴とする請求項1乃至18のいずれかに記載の支承装置。
【請求項21】
前記上部構造物が橋桁であり、前記下部構造物が橋脚あるいは橋台であることを特徴とする請求項19又は20に記載の支承装置。
【請求項1】
非環状の凸部を有する第一剛性体と、当該凸部が配置設定される凹部を有する第二剛性体と、前記第一剛性体と前記第二剛性体との間に介挿される弾性体とが支承方向に重ねて配設される支承装置であって、
前記支承方向に直交すると共に互いに直交する第一方向と第二方向のいずれかの方向から見た場合にも、前記凸部は、前記凹部を形成する壁部と重なる領域を有することを特徴とする支承装置。
【請求項2】
前記支承方向から見て一つ以上の前記凸部が略多角形に形状設定されていることを特徴とする請求項1に記載の支承装置。
【請求項3】
前記支承方向から見て一つ以上の前記凸部が成す略多角形が略三角形、略四角形、略六角形のいずれか一つ以上の形状に設定されていることを特徴とする請求項2に記載の支承装置。
【請求項4】
前記支承方向から見て一つ以上の前記凸部がジグザグ形乃至波形に形状設定されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の支承装置。
【請求項5】
前記凸部の側面及び前記凹部を形成する壁部の壁面のいずれか或いは両方が傾斜面とされていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の支承装置。
【請求項6】
対向する前記凸部の側面と前記凹部を形成する壁部の壁面とが平行とされていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の支承装置。
【請求項7】
前記凸部の側面及び前記凹部を形成する壁部の壁面のいずれか或いは両方が、平面、曲面、凹凸面又は粗面、或いはこれらの組み合わせから成ることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の支承装置。
【請求項8】
前記凸部の頂面及び前記凹部の底面のいずれか或いは両方が、平面、曲面、凹凸面又は粗面、或いはこれらの組み合わせから成ることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の支承装置。
【請求項9】
前記凸部及び前記凹部を複数備えることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の支承装置。
【請求項10】
互いに入り組んで配置設定される前記凸部の頂部と前記凹部の底部との間に前記弾性体が設けられていない空間を有することを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載の支承装置。
【請求項11】
前記空間には、充填材が充填されていることを特徴とする請求項10に記載の支承装置。
【請求項12】
前記充填材は、前記弾性体と異種の弾性体であることを特徴とする請求項11に記載の支承装置。
【請求項13】
前記充填材は、非圧縮性の流体であることを特徴とする請求項11に記載の支承装置。
【請求項14】
前記充填材は、前記凸部と前記凹部とを入り組ませて配置設定するより前に予め充填されていることを特徴とする請求項11乃至13のいずれかに記載の支承装置。
【請求項15】
前記充填材は、前記凹部と前記凸部とを入り組ませて配置設定した後に充填されることを特徴とする請求項11乃至13のいずれかに記載の支承装置。
【請求項16】
前記第一剛性体と前記第二剛性体とが互いに乖離することを抑制する乖離抑制手段を備えることを特徴とする請求項1乃至15のいずれかに記載の支承装置。
【請求項17】
前記乖離抑制手段は、前記第一剛性体と前記第二剛性体との一方に設けられる係合部と、他方に設けられる係合受部とで構成され、
これら係合部と係合受部とは、支承方向に対する平行面内で回転可能に係合されている
ことを特徴とする請求項16に記載の支承装置。
【請求項18】
前記第一剛性体又は前記第二剛性体の上面或いは下面に摺滑手段を設けることを特徴とする請求項1乃至17のいずれかに記載の支承装置。
【請求項19】
前記第一剛性体が上部構造物に固定される上沓であり、前記第二剛性体が下部構造物に固定される下沓であることを特徴とする請求項1乃至18のいずれかに記載の支承装置。
【請求項20】
前記第二剛性体が上部構造物に固定される上沓であり、前記第一剛性体が下部構造物に固定される下沓であることを特徴とする請求項1乃至18のいずれかに記載の支承装置。
【請求項21】
前記上部構造物が橋桁であり、前記下部構造物が橋脚あるいは橋台であることを特徴とする請求項19又は20に記載の支承装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−77502(P2012−77502A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−223004(P2010−223004)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(509338994)株式会社IHIインフラシステム (104)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【出願人】(510202167)Next Innovation合同会社 (30)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(509338994)株式会社IHIインフラシステム (104)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【出願人】(510202167)Next Innovation合同会社 (30)
【Fターム(参考)】
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