説明

支持フィルムおよびこれを用いた配線基板の製造方法、ならびに配線基板

【課題】 デラミネーションが発生するのを抑制するとともに、導体ペーストによる配線パターンを印刷にじみ無く印刷できるとともに剥離性に優れた配線パターン付きセラミックグリーンシートを形成するための支持フィルムおよびこれを用いた配線基板の製造方法、ならびに配線基板を提供する。
【解決手段】 本発明の支持フィルム1は、支持フィルム本体11の上面に、離型剤層12を介して、熱可塑性樹脂および無機フィラーを含有し、離型剤層12によって吸収されない溶剤を吸収する溶剤吸収層13が形成されており、溶剤吸収層13の上面に配線パターン付きセラミックグリーンシートが形成されることを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子収納用パッケージや高周波モジュールに適用される配線基板の製造に際し、導体ペーストによる配線パターンを形成するために用いられる支持フィルムおよびこれを用いた配線基板の製造方法、ならびに配線基板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、移動体通信分野などで使用される電子機器の小型化に伴い、この電子機器に用いられる配線基板においても小型化及び高性能化が望まれている。
【0003】
このような配線基板は、セラミック粉末に有機バインダ、可塑剤および溶剤等を加えてスラリーとし、ドクターブレード等によりセラミックグリーンシートを成形した後、金属粉末を含有する導体ペーストを印刷するなどしてセラミックグリーンシート上に配線パターンを形成し、次に複数枚の配線パターンが形成されたセラミックグリーンシートを積層して加圧することによりセラミックグリーンシート積層体を得た後、このセラミックグリーンシート積層体を焼成することにより得られる。
【0004】
ところが、配線基板に対する前述の要求に対応するために、セラミックグリーンシートの厚みを薄くするとともにセラミックグリーンシートの積層数を多くすると、異なるセラミックグリーンシートの層間に形成された配線パターンが積層方向において重なる領域と重ならない領域とではその厚み差が大きくなる。このため、セラミックグリーンシート積層体を作製するために加圧する際に、異なるセラミックグリーンシートの層間に形成された配線パターンが積層方向において重なる領域においては加圧力が十分に加わるものの、重ならない領域において加圧力が十分に加わりにくくなるので、不十分な圧着となりやすい。そして、そのように不十分な圧着により形成されたセラミックグリーンシート積層体を焼成すると、圧着が不十分な部分でデラミネーション(層間剥離)が発生する可能性があった。
【0005】
一方、上記のセラミックグリーンシート積層体において、重要な電気特性である直流抵抗値の低減のためには、配線パターンの厚みを厚くする必要がある。しかしながら、配線パターンの厚みを厚くしようとすると、上記デラミネーションはいっそう生じ易くなるという問題があった。
【0006】
これらの問題に対して、支持フィルム上にスクリーン印刷法等により導体ペーストによる配線パターンを印刷し、その上にセラミックスラリーを塗布して乾燥させた後、付着している支持フィルムを剥がすことにより、セラミックグリーンシートに配線パターンを転写することを特徴とする配線パターン付きセラミックグリーンシートの製造方法が提案されている(特許文献1を参照)。そして、特許文献1には、支持フィルムの剥離性をよくするために、予め支持フィルムに離型剤(ポリテトラフルオロエチレン)をスプレー法などの任意の方法でコーティングしておくことも記載されている。
【0007】
この製造方法によれば、導体ペーストによる配線パターンがセラミックグリーンシートに埋設されているので、配線パターンの形成されたセラミックグリーンシートの表面が平坦になることから、セラミックグリーンシートを積層したときに異なるセラミックグリーンシートの層間に形成された配線パターンが積層方向において重なる領域と重ならない領域とで厚み差がなくなり、不均一な加圧力によりデラミネーションが発生するのを抑制することができる。
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載された製造方法によれば、離型剤層が導体ペーストに含まれる溶剤を吸収せずにはじき易いという特徴がある為、導体ペーストによる配線パターンを支持フィルム上にスクリーン印刷法等により形成する際に、印刷にじみが発生する問題があった。
【0009】
ここで、印刷にじみ無く印刷を行うことを可能とするために、特許文献2に記載のようなインクジェット記録媒体、具体的には、吸水性支持フィルムの上に、無機顔料と熱可塑性樹脂とを含有する表層を有するインク吸収層が形成されたインクジェット記録媒体を用いることが考えられる。
【0010】
しかしながら、このインクジェット記録媒体を用いる方法では、支持フィルム上に導体ペーストによる配線パターンを形成し、セラミックスラリーを塗布して乾燥した後、配線パターンの形状を保持した状態で支持フィルムを剥離することが困難であった。すなわち、インク吸収層によりインク及びセラミックスラリーの支持フィルムへの定着性が強化される為、相反する性質である剥離性も同時に持たせることは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平9−283360号公報
【特許文献2】特開2003−211836号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであり、デラミネーションが発生するのを抑制するとともに、導体ペーストによる配線パターンを印刷にじみ無く印刷できるとともに剥離性に優れた配線パターン付きセラミックグリーンシートを形成するための支持フィルムおよびこれを用いた配線基板の製造方法、ならびに配線基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、支持フィルム本体の上面に、離型剤層を介して、熱可塑性樹脂および無機フィラーを含有し、前記離型剤層によって吸収されない溶剤を吸収する溶剤吸収層が形成されており、該溶剤吸収層の上面に配線パターン付きセラミックグリーンシートが形成されることを特徴とする支持フィルムである。
【0014】
また本発明は、上記の支持フィルムを用意する工程と、該支持フィルムにおける前記溶剤吸収層の上に導体ペーストによる配線パターンを形成する工程と、前記配線パターンおよび露出した前記溶剤吸収層を覆うように前記配線パターンの厚みよりも厚くセラミックスラリーを塗布し乾燥して配線パターン付きセラミックグリーンシートを作製する工程と、前記支持フィルム本体および前記離型剤層を剥離する工程と、下面に前記溶剤吸収層を有する前記配線パターン付きセラミックグリーンシートを複数積層して積層体を作製する工程と、該積層体を焼成する工程とを有することを特徴とする配線基板の製造方法である。
【0015】
また本発明は、上記の配線基板の製造方法によって形成され、配線層が埋設された複数のセラミック絶縁層が、前記無機フィラーによる無機フィラー層を介して積層一体化されていることを特徴とする配線基板である。
【発明の効果】
【0016】
本発明による支持フィルムによれば、スクリーン印刷等によって導体ペーストによる配線パターンを形成する際の印刷にじみを抑制することができる。
【0017】
すなわち、溶剤吸収層にアクリル樹脂などの熱可塑性樹脂が含まれていることで、支持フィルム本体、離型剤層、溶剤吸収層および配線パターン付きセラミックグリーンシートの積層体から、支持フィルム本体および離型剤層のみを剥離することができ、溶剤吸収層が配線パターン付きセラミックグリーンシートに付着した状態とすることができる。したがって、溶剤吸収層は、そのまま次工程で行う積層体作製時(密着積層時)の密着層として働くことができ、焼成時に脱脂されることから、製造された配線基板への残留炭素の問題も無い。また、溶剤吸収層に無機フィラーが含まれていることで、配線パターン形成時の印刷性(溶剤吸収性)と配線パターン付きセラミックグリーンシートの剥離性を両立させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の支持フィルムの一実施形態の概略断面図である。
【図2】図1に示す支持フィルムを用いた配線基板の製造方法の説明図であり、図2(a)は支持フィルムの上面に導体ペーストによる配線パターンが形成された状態を表し、図2(b)は支持フィルムの上面に配線パターン付きセラミックグリーンシートを作製した状態を表し、図2(c)は支持フィルム本体および離型剤層を剥離した状態を表し、図2(d)は下面に溶剤吸収層を有する配線パターン付きセラミックグリーンシートを複数積層して積層体を作製した状態を表している。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、添付の図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
【0020】
図1は、本発明の支持フィルムの一実施形態の概略断面図であり、本発明の支持フィルム1は、支持フィルム本体11の上面に、離型剤層12を介して、熱可塑性樹脂および無機フィラー(図示せず)を含有し、離型剤層12によって吸収されない溶剤を吸収する溶剤吸収層13が形成されており、溶剤吸収層13の上面に配線パターン付きセラミックグリーンシートを形成することを特徴とするものである。
【0021】
支持フィルム本体11は、この上面に離型剤層12および溶剤吸収層13が形成されたうえで、さらにこの上面に配線パターン付きセラミックグリーンシートを形成する支持体としての役割を有するものであるから、その材質としては機械的強度、耐熱性等に優れているポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリイミド等が挙げられるが、コストを考慮するとポリエチレンテレフタレート(PET)が望ましい。また、支持フィルム本体11の厚みは、機械的強度維持、変形防止およびコストの点から、50〜100μm程度であるのが望ましく、特に50〜60μmが望ましい。
【0022】
離型剤層12は、支持フィルム本体11とこの離型剤層12とを一体にして後述する溶剤吸収層13から剥離するためのもので、その材質としてはフッ素系樹脂、シリコーン系樹脂等が挙げられるが、シリコーン系樹脂を用いるのが望ましく、その厚みは、必要とされる十分な剥離性が維持できる為に、10〜50nmであるのが望ましい。
【0023】
溶剤吸収層13は、離型剤層12によって吸収されない溶剤を吸収する性質を備えている。すなわち、後述するように、この溶剤吸収層13の上面には、離型剤層12では吸収されずにはじかれてしまうような溶剤が含まれる導体ペーストによる配線パターンが形成されるが、離型剤層12によって吸収されない溶剤を吸収する性質を備えていることで、印刷にじみの抑制された配線パターンを形成することができる。
【0024】
具体的には、溶剤吸収層13は、熱可塑性樹脂および無機フィラーを含有している。溶剤吸収層13に熱可塑性樹脂が含まれていることで、溶剤吸収層13の上面に配線パターン付きセラミックグリーンシートを形成した後、支持フィルム本体11と離型剤層12とを一体に剥離する際に、溶剤吸収層4を配線パターン付きセラミックグリーンシートにきれいに付着させた状態とすることができる。熱可塑性樹脂としては、アクリル樹脂系接着剤が望ましく採用される。また、アクリル樹脂系接着剤のガラス転移温度(Tg)は、ハンドリング性の観点、後に複数の配線パターン付きセラミックグリーンシートを積層する際にできる限り低温でも十分に密着性を満足するという熱圧着性の観点より、40〜90℃であるのが望ましい。
【0025】
ここで、溶剤吸収層13が離型剤層12によって吸収されない溶剤を吸収する性質を備えるためには、溶剤吸収層13に無機フィラーが含まれていることが重要である。溶剤吸収層13に無機フィラーが含まれていることで、上述のハンドリング性、熱圧着性に加えて、配線パターン付きセラミックグリーンシート形成時の印刷性(溶剤吸収性)を満足することができる。無機フィラー材料としては、配線パターン付きセラミックグリーンシートにおけるセラミックグリーンシート含まれるセラミックスと同じセラミックスを使用することでセラミックグリーンシートへの収縮や特性変動への影響を抑制することができる。例えば、本発明の支持フィルム1を用いてアルミナを主成分とするセラミックグリーンシートを形成する場合には、無機フィラーとしてアルミナを用いるのが望ましく、本発明の支持フィルム1を用いてガラスセラミックスを主成分とするセラミックグリーンシートを形成する場合には、無機フィラーとしてガラスセラミックス、シリカなどを用いるのが望ましい。
【0026】
また、熱可塑性樹脂と無機フィラーとの配合割合は、溶剤吸収層13形成時の流動性を考慮して、熱可塑性樹脂20〜80質量%で無機フィラー80〜20質量%であるのが望ましい。また、溶剤吸収層13の中での分散のバラツキを抑制するため、無機フィラーの形状は球形であるのが望ましい。
【0027】
溶剤吸収層13は、配線パターン付きセラミックグリーンシートを積層する際に密着層として機能して積層体の一部を構成するものとなる。したがって、導体ペーストの印刷に必要な溶剤吸収性を維持しつつ、積層体の厚みが厚くなりすぎずに十分に薄くなるよう、溶剤吸収層13の厚みは200nm〜2μmが望ましく、特に印刷に必要な溶剤吸収性を最低限保持しうる厚みの200nm〜400nmが望ましい。
【0028】
なお、溶剤吸収層13の厚みは200nm〜2μmが望ましいことから、溶剤吸収層13を構成する無機フィラーの平均粒径は30〜200nmであるのが望ましい。
【0029】
本発明の支持フィルム1は、表面に離型剤層12が形成された支持フィルム本体11を用意し、これに溶剤吸収層13を構成する上記の熱可塑性樹脂と無機フィラーとを含み、さらにトルエン、アセトン等の有機溶剤を含むスラリーを、グラビアコーター、リバースグラビアコーター、メイヤーバーコーター、ダイコーター、リバースロールコーター、ファンテンリバースロールコーター、キスロールコーター等の方法で塗工形成することにより得られる。
【0030】
次に、上記の支持フィルム1を用いた配線基板の製造方法について説明する。
【0031】
本発明の配線基板の製造方法は、まず、上述したように、支持フィルム本体11の上面に、離型剤層12を介して、熱可塑性樹脂および無機フィラー(図示せず)を含有し、離型剤層12によって吸収されない溶剤を吸収する溶剤吸収層13が形成された支持フィルム1を用意する。
【0032】
次に、図2(a)に示すように、支持フィルム1における溶剤吸収層13の上に導体ペーストによる配線パターンを形成する。
【0033】
導体ペーストとしては、例えば製造しようとする配線基板を構成するセラミック絶縁層がアルミナからなる場合は、W、Mo等の導体粉末を主成分とし、これに有機バインダ、有機溶剤が添加されたものが用いられる。有機バインダとしては、例えばアクリル系の単独重合体または共重合体(アクリル酸,メタクリル酸またはそれらのエステルの単独重合体または共重合体、具体的にはアクリル酸エステル共重合体,メタクリル酸エステル共重合体,アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル共重合体等)や、ポリビニルブチラール系、ポリビニルアルコール系、アクリル−スチレン系、ポリプロピレンカーボネート系、セルロース系等の単独重合体または共重合体が挙げられる。また、有機溶剤としては、導体粉末および有機バインダを分散させ、適切な粘度の導体ペーストが得られるように、例えばエーテル類、エステル類、ケトン類、アルコール類等が挙げられる。具体的には、テルピネオール、ジメチルフタレート、ブチルカルビトールアセテート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート、ジブチルフタレート等が挙げられる。なお、分散をより良好なものとするために導体ペーストに分散剤を添加してもよい。
【0034】
また、製造しようとする配線基板を構成するセラミック絶縁層がガラスセラミックスからなる場合は、Cu、Agなどの導体粉末を主成分とし、これに上述した有機バインダ、有機溶剤、必要により分散剤が添加されたものが用いられる。特に、導体粉末がCuを主成分とする場合には、焼成工程での分解、揮発性を考慮して、アクリル系バインダを用いるのが好ましい。
【0035】
配線パターンの形成には、スクリーン印刷、インクジェット印刷、オフセット印刷等が採用できるが、パターン形成タクト面、設備コスト面よりスクリーン印刷法を用いるのが望ましく、通常、10〜500μmの幅で2〜50μmの厚みに形成される。
【0036】
次に、図2(b)に示すように、導体ペーストによる配線パターン21および露出した溶剤吸収層13を覆うように配線パターン21の厚みよりも厚くセラミックスラリー22を塗布し乾燥して配線パターン付きセラミックグリーンシート2を作製する。
【0037】
導体ペーストによる配線パターン21が形成された支持フィルム1の上面に、配線パターン21および露出した溶剤吸収層13を覆うように配線パターン21の厚みよりも厚くセラミックスラリー22を塗布するが、セラミックスラリー22としては、製造しようとする配線基板を構成するセラミック絶縁層の原料粉末、例えばアルミナ粉末、ガラスセラミック粉末、シリカ粉末等を主成分とし、これに上述したような有機バインダ、有機溶剤が添加され、必要により分散剤が添加されたものが採用され、セラミック絶縁層の原料粉末の平均粒径は溶剤吸収層13を構成する無機フィラーの平均粒径よりもかなり大きくなっている。なお、塗工方法としては、ドクターブレード、リップコーター、ダイコーターによる方法等が用いられ、乾燥工程では、乾燥速度や熱変形を防止の観点より、30〜70℃で乾燥するのが望ましいが、特に50℃〜65℃で乾燥するのが望ましい。
【0038】
次に、図2(c)に示すように、支持フィルム本体11および離型剤層12を剥離する。離型剤層12の剥離性により、離型剤層12と溶剤吸収層13との間できれいに剥離することができる。なお、支持フィルム本体11と離型剤層12との間では、共有結合等の化学的な結合及びアンカー効果理由により、剥離することはない。
【0039】
次に、図2(d)に示すように、下面に溶剤吸収層13を有する配線パターン付きセラミックグリーンシート2を複数積層して積層体3を作製する。
【0040】
ここで、溶剤吸収層13は、そのまま配線パターン付きセラミックグリーンシート2の積層時における密着層として機能する。したがって、積層時にあらためて密着液や積層助剤等の接合材を塗布する必要がないという効果を奏する。なお、溶剤吸収層13を構成する熱可塑性樹脂は、焼成時に脱脂されることから、製造された配線基板への残留炭素の問題も無い。
【0041】
最後に、積層体3を焼成する。
【0042】
具体的には、配線パターン付きセラミックグリーンシート2を構成する配線パターン21がW、Mo材料からなり、セラミックスラリー22が乾燥してなるセラミックグリーンシートがアルミナ材料からなる場合は、還元雰囲気で1300〜1600℃の焼成温度で焼成がなされる。また、配線パターン付きセラミックグリーンシート2を構成する配線パターン21がCu材料からなり、セラミックスラリー22が乾燥してなるセラミックグリーンシートがガラスセラミック材料からなる場合は、窒素還元雰囲気で800〜1000℃の焼成温度で焼成がなされ、配線パターン付きセラミックグリーンシート2を構成する配線パターン21がAg材料からなり、セラミックスラリー22が乾燥してなるセラミックグリーンシートがガラスセラミック材料からなる場合は、大気雰囲気で800〜1000℃の焼成温度で焼成がなされる。
【0043】
以上の製造方法により、配線層が埋設された複数のセラミック絶縁層が、無機フィラーによる無機フィラー層を介して積層一体化されている配線基板を得ることができる。
【0044】
なお、ここでいう無機フィラーとは、上述したように、配線パターン付きセラミックグリーンシート2の積層時における密着層として機能した溶剤吸収層13を構成する無機フィラーのことである。そして、焼成によって溶剤吸収層13を構成していた熱可塑性樹脂が焼失するが、溶剤吸収層13を構成していた無機フィラーは焼成によっても焼失しないことから、セラミック絶縁層とセラミック絶縁層との層間に層状に残存したもののことを便宜上無機フィラー層と定義した。なお、無機フィラー層は、ガラス粉末、焼結助剤粉末等の作用により、セラミックグリーンシートに含まれるセラミック原料粉末とともに焼結したものであり、焼結していない無機フィラーが層状に形成されたものではない。
【0045】
このようにして得られた配線基板は、印刷にじみが抑制され、精度良く形成された配線層を備えたものとなる。
【符号の説明】
【0046】
1:支持フィルム
11:支持フィルム本体
12:離型剤層
13:溶剤吸収層
2:配線パターン付きセラミックグリーンシート
21:配線パターン
22:セラミックスラリー
3:積層体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持フィルム本体の上面に、離型剤層を介して、熱可塑性樹脂および無機フィラーを含有し、前記離型剤層によって吸収されない溶剤を吸収する溶剤吸収層が形成されており、該溶剤吸収層の上面に配線パターン付きセラミックグリーンシートが形成されることを特徴とする支持フィルム。
【請求項2】
請求項1に記載の支持フィルムを用意する工程と、該支持フィルムにおける前記溶剤吸収層の上に導体ペーストによる配線パターンを形成する工程と、前記配線パターンおよび露出した前記溶剤吸収層を覆うように前記配線パターンの厚みよりも厚くセラミックスラリーを塗布し乾燥して配線パターン付きセラミックグリーンシートを作製する工程と、前記支持フィルム本体および前記離型剤層を剥離する工程と、下面に前記溶剤吸収層を有する前記配線パターン付きセラミックグリーンシートを複数積層して積層体を作製する工程と、該積層体を焼成する工程とを有することを特徴とする配線基板の製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載の配線基板の製造方法によって形成され、配線層が埋設された複数のセラミック絶縁層が、前記無機フィラーによる無機フィラー層を介して積層一体化されていることを特徴とする配線基板。




【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2011−96754(P2011−96754A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−247273(P2009−247273)
【出願日】平成21年10月28日(2009.10.28)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】