説明

支持部材、半導体製造装置及び基板の支持方法

【課題】基板の傾きを一方向に揃えることができ、移載トラブルを低減できるようにした支持部材、半導体製造装置及び基板の支持方法を提供する。
【解決手段】基材1と、基材1の上面に形成された溝部3とを備え、ウエーハWを溝部3に挟んだ状態で支持するプッシャー10であって、溝部3の底面6は、当該底面6と接触したウエーハWの縁端W1を溝部3の側面4の側へ片寄せする形状を有する。例えば、溝部3の底面6は、側面5から側面4に向かって下がる斜面となっている。このような構成であれば、ウエーハWの縁端W1を底面6に沿って滑らせて側面4の側へ片寄せすることができ、ウエーハWの傾きを一方向に揃えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支持部材、半導体製造装置及び基板の支持方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の従来技術としては、例えば特許文献1に開示されたものがある。即ち、この特許文献1には、複数枚のウエーハを一方のカセットから他方のカセットに移し替える際に、これらウエーハを一時的に支持するための支持部材が開示されている。そして、この支持部材には所定のピッチで互いに平行するように複数の支持溝が設けられていること、及び、これら支持溝の各々はその底部から上方に向かって徐々に溝幅が広がる形状を有すること、が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−109877号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記の特許文献1に開示された支持部材では、支持溝の底面は支持部材の上面に対して平行(即ち、平ら)となっている。このため、上記の特許文献1に開示された支持部材では、例えば図9に示すように、隣り合う2枚のウエーハW´のうちの一方は左側に傾き、他方は右側に傾いてしまう可能性があった。このように、支持部材90上においてウエーハW´の傾く方向がそれぞれ異なると、ウエーハW´間の距離にバラツキが生じてしまい、例えば、支持部材90の上方に待機している溝付チャック(図示せず)の1つの溝部に2枚のウエーハW´が一緒に入ったり、本来入るべき溝部の隣の位置にある溝部にウエーハW´が入ったりするなどの、移載トラブルが発生してしまう可能性があった。
そこで、この発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、基板の傾きを一方向に揃えることができ、移載トラブルを低減できるようにした支持部材、半導体製造装置及び基板の支持方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様に係る基板支持装置は、複数の溝部を備える支持部材と、を含む基板支持装置であって、前記複数の溝部の底面の第1の部分は、傾斜していることを特徴とするものである。
また、上記の基板支持装置において、前記複数の溝部は、それぞれ第1の側面及び前記第1の側面に対向する第2の側面を有し、前記第1の部分に形成された傾斜は、前記第1の側面の底部が、前記第2の側面の底部より下方に位置することにより形成されていても良い。
【0006】
また、上記の基板支持装置において、前記複数の溝部は、それぞれ第1の開口部及び第2の開口部を有し、前記第2の開口部は、前記第1の開口部の上方に位置し、前記第2の開口部が有する幅は、前記第1の開口部が有する幅よりも大きいことを特徴としても良い。
また、上記の基板支持装置において、前記第2の開口部は、前記支持部材の上方に向かって幅が広がるように形成されていることを特徴としても良い。
【0007】
また、上記の基板支持装置において、前記複数の溝部は、一定の間隔で前記支持部材に形成されていることを特徴としても良い。
本発明の別の態様に係る半導体製造装置は、上記の支持部材を備えることを特徴としても良い。
本発明のさらに別の態様に係る半導体装置の製造方法は、上記の半導体製造装置を用いることを特徴としても良い。
本発明のさらに別の態様に係る半導体基板の支持方法は、上記の支持部材を用いて、複数の基板を同一方向に傾斜させる工程を備えることを特徴としても良い。
【0008】
本発明のさらに別の態様に係る支持部材、半導体製造装置、又は、基板の支持方法は、例えば下記の発明1〜8であっても良い。
発明1の支持部材は、基材と、前記基材の上面に形成された溝部とを備え、基板を前記溝部に挟んだ状態で支持する支持部材であって、前記溝部の底面は、当該底面と接触した前記基板の縁部の端を前記溝部の第1の側面の側へ片寄せする形状を有することを特徴とするものである。このような構成であれば、基板の傾きを一方向に揃えることができる。
発明2の支持部材は、発明1の支持部材において、前記溝部の底面は、前記溝部の前記第1の側面と対向する第2の側面から、前記第1の側面に向かって下がる斜面、を含むことを特徴とするものである。このような構成であれば、基板の縁部の端(以下、縁端ともいう。)を溝部の底面に沿って滑らせて、当該縁端を溝部の第1の側面の側へ片寄せすることができる。また、この片寄せの結果、基板の傾きを一方向に揃えることができる。
【0009】
発明3の支持部材は、発明2の支持部材において、前記溝部は、前記第1の側面と前記第2の側面との間の距離が一定である第1の開口部と、前記第1の開口部上に位置して、前記第1の側面と前記第2の側面との間の距離が前記基材の上方に向かって徐々に拡がる第2の開口部と、を有し、前記第1の側面において前記第1の開口部と第2の開口部との境界部分には第1の角部が存在し、前記第2の側面において前記第1の開口部と第2の開口部との境界部分には第2の角部が存在し、前記第2の角部は、前記第1の角部よりも上方に位置することを特徴とするものである。このような構成であれば、第1の角部と第2の角部とが同じ高さに位置する場合と比べて、基板をより直立に近い状態で支持することができる。
【0010】
発明4の支持部材は、発明3の支持部材において、前記第1の角部の前記底面からの高さは、3mm以上、5mm以下であることを特徴とするものである。このような構成であれば、基板の第1の面において、溝部の第1の側面と接触する領域は縁端から中心に向かって5mmまでの領域となる。縁端から中心に向かって5mm以上離れた領域が溝部の第1の側面と接触することを防ぐことができ、当該領域に傷が付くことを防ぐことができる。例えば、ウエーハの表面に設定される製品領域(即ち、製品としての半導体装置が作りこまれる領域)は、通常、ウエーハの縁端から中心に向かって5mm以上離れた領域に設定されるが、上記の構成であれば、製品領域が溝部の第1の側面と接触することを防ぐことができ、製品領域に傷が付くことを防ぐことができる。
【0011】
発明5の支持部材は、発明1から発明4の何れか一の支持部材において、前記溝部は、一定の間隔で複数形成されていることを特徴とするものである。このような構成であれば、複数枚の基板を一定の間隔で支持することができる。
発明6の支持部材は、発明5の支持部材において、前記一定の間隔で複数形成された前記溝部のうちの、隣り合う一方の溝部と他方の溝部との境界部分は、前記基材の上方に向かって突き出た形状を有することを特徴とするものである。このような構成であれば、基板を溝部に挟み込む際に、基板の縁端が溝部の底面ではなく、上記の境界部分に接触した場合でも、この縁端を境界部分の表面に沿って滑らせて溝部の底面に誘導することができる。従って、溝部と基板との位置合わせのマージンを大きくする(つまり、余裕を持たせる)ことができる。
【0012】
発明7の半導体製造装置は、基板を第1のカセットから第2のカセットに移し替える半導体製造装置であって、発明1から発明6の何れか一の支持部材を備えることを特徴とするものである。ここで、「基板」としては、例えばウエーハが挙げられる。このような構成であれば、例えば、複数枚のウエーハを支持部材で支持した際に、支持部材上でのウエーハの傾きを一方向に揃えることができる。従って、複数枚のウエーハを第1のカセットから第2のカセットに移し替える際に、溝付チャックの1つの溝に2枚のウエーハが一緒に入ったり、本来入るべき溝の隣の位置にある溝にウエーハが入ったりするなどの移載トラブルを低減することができる。これにより、移載トラブルに起因したウエーハの破損(割れ、欠け等)を防止することができるので、半導体装置の歩留まりの向上に寄与することができる。
【0013】
発明8の基板の支持方法は、基材と、前記基材の上面に形成された溝部とを備えた支持基材の前記溝部に、基板を挟み込んで支持する方法であって、前記基板の縁部の端を前記溝部の底面に接触させる工程と、前記底面と接触した前記縁部の端を前記溝部の第1の側面の側へ片寄せする工程と、を含むことを特徴とするものである。このような方法によれば、支持部材上での基板の傾きを一方向に揃えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施形態に係るプッシャー10の構成例を示す図。
【図2】実施形態に係るウエーハ移載装置100の構成例を示す図。
【図3】実施形態に係るウエーハWの移載方法を示す図(その1)。
【図4】実施形態に係るウエーハWの移載方法を示す図(その2)。
【図5】プッシャー10による支持の仕組みを示す図。
【図6】ウエーハWの傾きが一方向に揃っている状態を示す図。
【図7】プッシャー10の他の構成例を示す図(その1)。
【図8】プッシャー10の他の構成例を示す図(その2)。
【図9】従来技術の課題を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する各図において、同一の構成を有する部分には同一の符号を付し、その重複する説明は省略する。
図1(a)及び(b)は、本発明の実施形態に係るプッシャー10の構成例を示す図であり、図1(a)は斜視図、図1(b)は図1(a)の斜視図をY−Z平面で切断したときの拡大断面図である。
【0016】
図1(a)及び(b)に示すプッシャー10は、例えば、シリコン基板又はSOI基板などのウエーハを一方のカセット(キャリアとも呼ばれる。)から他方のカセットに移し替える際に使用されるものである。具体的には、半導体装置の製造工程において、ウエーハは25枚程度を1ロットとして取り扱われるが、この1ロット(即ち、25枚)のウエーハは、箱型の容器に仕切りの溝が設けられたカセットに1枚ずつ垂直に離して収納される。そして、1ロットのウエーハは、カセットに収納された状態で一方の工程から他方の工程へ搬送されたり、所定の製造装置において半導体装置を作りこむための処理が施されたりする。ここで、上記のカセットは、搬送用カセット、プロセス用カセット等のように使用環境に応じて使い分けられており、1ロットのウエーハを一方のカセットから他方のカセットへと移し替えることが半導体装置の製造工程において頻繁に行われている。この移し替えは、後述するウエーハ移載装置により行われるが、図1(a)及び(b)に示すプッシャー10は、このウエーハ移載装置に組み込まれて使用されるものである。
【0017】
図1(a)及び(b)に示すように、このプッシャー10は、例えば、耐磨耗性に優れた樹脂からなる基材1を有し、この基材1の上面に複数の溝部3が形成されている。耐摩耗性に優れた樹脂としては、例えば、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、又は、PCTFE(ポリクロロトリフルオロエチレン)等が挙げられる。また、複数の溝部3は、複数枚のウエーハの縁部を挟んで支持するためのものである。例えば、1ロット(即ち、25枚)のウエーハに対応して、基材1には25個の溝部3が形成されている。また、これら溝部3はその各々が互いに同一の形状を有し、且つその各々が互いに平行となるように、図1(a)のZ軸方向に向けて所定のピッチ(即ち、間隔)で形成されている。
【0018】
図1(b)に示すように、溝部3のピッチをPとする。このプッシャー10が6インチ径のウエーハ(以下、6インチウエーハともいう。)を支持する場合は、各溝部3は例えばP=4.76mmとなるように形成されている。ここで、図示しない6インチウエーハを収納するカセットの溝部のピッチは、通常4.76mmに設定されている。従って、プッシャー10のピッチPを6インチ用カセットのピッチと一致させることにより、このカセットに収納されている6インチウエーハの縁部をそのままプッシャー10の溝部3に差し込むことができる。
【0019】
また、これら溝部3の各々は、開口部3aと開口部3bとによって構成されている。開口部3aは、対向する側面4と側面5との間の距離が一定である。また、開口部3bは、開口部3aの上方に位置し、側面4と側面5との間の距離が基材1の上方に向かって徐々に拡がっている。図1(b)に示すように、開口部3aの幅(即ち、Z方向の長さ)をWとしたとき、Wは例えばウエーハの標準的な厚さの1.1倍程度の大きさである。一例を挙げると、6インチウエーハの標準的な厚さは625μmであり、このプッシャー10が6インチウエーハを支持する場合は、各溝部3は例えばW=625μm×1.1=687.5μm、つまり、W≒700μmとなるように形成されている。
【0020】
また、図1(b)に示すように、開口部3aと開口部3bとからなる溝部3の底面6は、側面5から側面4に向かって下がる斜面(即ち、傾斜)となっている。この斜面の角度(即ち、Z軸方向を0゜としたときの角度)をθとしたとき、θは例えば15〜70゜であり、この範囲の中でも特にθ≧30゜であることが好ましい。そして、これら溝部3の各々について、側面4における開口部3aと開口部3bとの境界部分である角部7は、側面5における開口部3aと開口部3bとの境界部分である角部8よりも下方に位置している。なお、これら溝部3の各々について、底面6から角部7までの高さをH1とし、底面6から角部8までの高さをH2としたとき、H1は例えば3〜5mmであり、H2は例えば3〜5mm程度である。H1=H2であっても良いし、H1≠H2であっても良い。次に、このようなプッシャー10を備えたウエーハ移載装置について説明する。
【0021】
図2は、本発明の実施形態に係るウエーハ移載装置100の構成例を示す図である。
図2に示すように、このウエーハ移載装置100は、プッシャー10と、ロッド20と、ステージ30と、溝付チャック40と、を含んだ構成となっている。これらの中で、ロッド20の先端にはプッシャー10が取り付けられており、その他端の側には図示しない昇降機構が取り付けられている。この図示しない昇降機構が動作することにより、プッシャー10はステージ30の下から上へ移動し、また、ステージ30の上から下へ移動するようになっている。
【0022】
ステージ30はカセット50が載せられる台であり、その表面にはカセット50の位置を決めるガイド31が設けられている。例えば、このガイド31によって脚部51が両側から挟まれるようにカセット50を置くことにより、カセット50を毎回同じ位置に配置することができる。さらに、ステージ30の真上には、一対の溝付チャック40が設けられている。図示しないが、この溝付チャック40には、ガイド31によってステージ30上で位置決めされたカセット50の溝部と対応するように、複数の溝部が形成されている。この溝付チャック40も、プッシャー10と同様、例えば、耐磨耗性に優れた樹脂からなる。また、この一対の溝付チャック40にはそれぞれアーム41が取り付けられている。次に、上記のプッシャー10を備えたウエーハ移載装置100を用いて、一方のカセットから他方のカセットへウエーハWを移し替える場合について説明する。
【0023】
図3(a)〜図4(b)は、本発明の実施形態に係るウエーハWの移載方法を示す図である。また、図5(a)及び(b)は、移載過程でのウエーハWの動きを示す図である、
図3(a)では、まず始めに、1ロット(即ち、25枚)のウエーハWを収納したカセット50をステージ30上に配置する。このとき、カセット50の脚部51をガイド31で挟むようにすることで、カセット50を所定の位置に配置することができる。なお、カセット50に収納されたウエーハWのオリエンテーションフラット(以下、オリフラという。)は、カセット50をステージ30上に配置した後で、図示しないオリフラ合わせ機によって例えば下方に調整する。或いは、このようなオリフラ合わせは、カセット50をステージ30上に配置する前に、行っても良い。
【0024】
次に、図示しない昇降機構を動作させて、ロッド20の先端に取り付けられたプッシャー10を上方へ移動させる。これにより、プッシャー10の溝部にウエーハWの縁部が入り、ウエーハWは直立に近い状態で支持される。そして、ウエーハWは、直立に近い状態で支持されたまま、上方へ押し上げられてカセット50から取り出される。このプッシャー10による支持の仕組みについて、より詳しく説明する。
図5(a)に示すように、まず、ウエーハWの縁部が溝部3に入り、ウエーハWの縁部の端(即ち、縁端)W1が溝部3の底面6に接触する。すると、底面6は側面4に向かって下がる斜面となっているので、ウエーハWの縁端W1は斜面に沿って滑り、側面4の側へ片寄せされる。そして、この片寄せの結果、ウエーハWは縁端W1を側面4の側に残したまま反対側(即ち、側面5の側)へ倒れ、図5(b)に示すように、ウエーハWの裏面が角部8と接触した状態で支えられることとなる。
【0025】
ここで、製品領域(即ち、製品としての半導体装置が作りこまれる領域)は、通常、ウエーハWの表面W2に設定されている。従って、ウエーハWの裏面W3と角部8とが接触しても製品領域に傷が付くことはない。また、角部8は角部7よりも上方に位置するので、角部7と角部8が同じ高さにある場合と比べて、ウエーハWをより直立に近い状態で支持することができる。さらに、図5(a)の状態から図5(b)の状態に移行する際に、ウエーハWの表面W2と溝部3の側面4とが一時的に接触することも想定される。しかしながら、側面4の高さH1(図1(b)参照。)を例えば3〜5mm程度に設定していれば、この側面4は製品領域に届かないので、製品領域に傷が付くことを防ぐことができる。
【0026】
図3(a)に戻って、このようにプッシャー10によってウエーハWはその下側から支持され、この状態で上方に押し上げられる。そして、ウエーハWがカセット50から完全に取り出され、溝付チャック40と同じ高さまで押し上げられると、一対の溝付チャック40が内側へ閉じる。これにより、図3(b)に示すように、溝付チャック40によってウエーハWはその両側から支持されることとなる。次に、図示しない昇降機構を動作させて、プッシャー10をステージ30の下まで移動させる。そして、ステージ30上にある一方のカセット50を、他方のカセット50に置き換える。なお、一方のカセット50とは、例えば搬送用カセット又はプロセス用カセットのうちの一方のことであり、他方のカセット50とは搬送用カセット又はプロセス用カセットのうちの他方のことである。
【0027】
次に、図4(a)において、図示しない昇降機構を動作させて、プッシャー10を上方に移動させる。これにより、プッシャー10の溝部にウエーハWの縁部が入り、ウエーハWはその下側から支持される。次に、一対の溝付チャック40が外側へ開く。これにより、溝付チャック40による支持状態が解除され、ウエーハWはプッシャー10によってのみ支持された状態となる。その後、図4(b)において、図示しない昇降機構を動作させ
て、プッシャー10をステージ30の下まで移動させる。これにより、1ロットのウエーハWは他方のカセット50に収納されて、その移載作業が完了する。
【0028】
このように、本発明の実施形態によれば、溝部3の底面6が側面5から側面4に向かって下がる斜面(即ち、傾斜)となっている。これにより、ウエーハWの縁端W1を底面6に沿って滑らせて、側面4の側へ片寄せすることができる。また、この片寄せの結果、ウエーハWの傾きを一方向(例えば、図5(b)において、右側)に揃えることができる。
それゆえ、例えば図6に示すように、1ロットのウエーハWを移載する際に、溝付チャック40の1つの溝部に1枚のウエーハWを正しく入れることができる。つまり、それぞれのウエーハWを本来入るべき溝部に正しく入れることができる。従来例で課題とした挙げた移載トラブルを低減することができ、移載トラブルに起因したウエーハWの破損(割れ、欠け等)を防止することができるので、半導体装置の歩留まりの向上に寄与することができる。
【0029】
また、角部8は角部7よりも高い位置にあり、底面から角部までの高さをH1、底面から角部までの高さをH2としたとき、H1、H2は例えば3〜5mmとなっている。これにより、ウエーハWをより直立に近い状態で支持すると共に、ウエーハWの表面W2に設定される製品領域に傷が付くことを防ぐことができる。
この実施形態では、プッシャー10が本発明の「基板支持装置」に対応し、基材1が本発明の「支持部材」に対応し、ウエーハWが本発明の「基板」に対応している。また、側面4が本発明の「第1の側面」に対応し、側面5が本発明の「第2の側面」に対応し、底面6全体が本発明の「底面の第1の部分」に対応している。さらに、開口部3aが本発明の「第1の開口部」に対応し、開口部3bが本発明の「第2の開口部」に対応している。また、角部7が本発明の「第1の角部」に対応し、角部8が本発明の「第2の角部」に対応している。そして、ウエーハ移載装置100が本発明の「半導体製造装置」に対応している。
【0030】
なお、本発明において、プッシャー10の構成は図1に示した構成に限定されるものではなく、例えば、図7(a)又は図7(b)に示すような構成であっても良い。即ち、図7(a)に示すように、隣り合う一方の溝部3と他方の溝部3との境界部分9は、上方に向かって突き出た角部となっていても良い。このような構成であれば、ウエーハの縁端が溝部3の底面ではなく、境界部分9に接触した場合でも、この縁端を境界部分9の表面(即ち、角部の斜面)に沿って滑らせて、溝部3の底面6に誘導することができる。従って、溝部3とウエーハとの位置合わせのマージンを大きくする(つまり、余裕を持たせる)ことができる。
【0031】
或いは、図7(b)に示すように、プッシャー10において、上記の境界部分9は、角部ではなく、上方に向かって突き出た曲部であっても良い。このような構成であっても、ウエーハの縁端を境界部分9の表面(即ち、曲面)に沿って滑らせて底面6に誘導することができるので、図7(a)と同様の効果を得ることができる。
また、本発明において、プッシャー10の底面は、例えば図7(a)又は図7(b)に示すように、底面6は側面5から側面4に向かって下がる斜面6aと、プッシャー10の上面に対して平ら(つまり、X−Z平面に対して水平)な平面6bとにより構成されていても良い。このような構成であっても、斜面6aに接触したウエーハの縁端を側面4の側へ片寄せすることができるので、上記の実施形態と同様の効果を得ることができる。なお、図7(a)及び(b)では、斜面6aが本発明の「底面の第1の部分」に対応している。
【0032】
また、本発明において、プッシャー10の底面は、例えば図8に示すように、X−Y平面において弧を描くように湾曲していても良い。このような構成であれば、ウエーハWを移載する際にオリフラOFを上にした場合であっても、ウエーハWの左右への動きを湾曲した底面6によって制限することができる。また、この場合は、プッシャー10の上面も底面と同じように湾曲させることが好ましい。これにより、X−Y平面において溝部3の深さを均一にすることができる。
【0033】
さらに、本発明において、支持の対象となるウエーハWの直径は6インチに限定されるものではなく、例えば、ウエーハWは8インチであっても良い。また、ウエーハWの大きさに応じて、プッシャー10の大きさを適宜に調整することが可能である。例えば、8インチ径のウエーハ(以下、8インチウエーハともいう。)をプッシャー10で支持する場合は、溝部3のピッチPを例えばP=6.35mmとなるように形成する。8インチウエーハを収納するカセットは、その溝部のピッチが通常6.35mmに設定されているので、プッシャー10のピッチPを8インチ用カセットのピッチと一致させることにより、このカセットに収納されている8インチウエーハの縁部をそのままプッシャー10の溝部3に差し込むことができる。これにより、上記の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0034】
1 基材、3 溝部、3a、3b 開口部、4、5 側面、6 底面、6a 斜面、6b 平面、7、8 角部、9 境界部分、10 プッシャー、20 ロッド、30 ステージ、31 ガイド、40 溝付チャック、41 アーム、50 カセット、51 脚部、OF オリフラ、W ウエーハ、W1 縁端、W2 表面、W3 裏面、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の溝部を備える支持部材と、を含む基板支持装置であって、
前記複数の溝部の底面の第1の部分は、傾斜していることを特徴とする基板支持装置。
【請求項2】
前記複数の溝部は、それぞれ第1の側面及び前記第1の側面に対向する第2の側面を有し、
前記第1の部分に形成された傾斜は、前記第1の側面の底部が、前記第2の側面の底部より下方に位置することにより形成されていることを特徴とする請求項1に記載の基板支持装置。
【請求項3】
前記複数の溝部は、それぞれ第1の開口部及び第2の開口部を有し、
前記第2の開口部は、前記第1の開口部の上方に位置し、
前記第2の開口部が有する幅は、前記第1の開口部が有する幅よりも大きいことを特徴とする請求項1または2に記載の基板支持装置。
【請求項4】
前記第2の開口部は、前記支持部材の上方に向かって幅が広がるように形成されていることを特徴とする請求項3に記載の基板支持装置。
【請求項5】
前記複数の溝部は、一定の間隔で前記支持部材に形成されていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の基板支持装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の支持部材を備えることを特徴とする半導体製造装置。
【請求項7】
請求項6に記載の半導体製造装置を用いることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項8】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の支持部材を用いて、複数の基板を同一方向に傾斜させる工程を備えることを特徴とする半導体基板の支持方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−34501(P2010−34501A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−70704(P2009−70704)
【出願日】平成21年3月23日(2009.3.23)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】