改善された官能特性及び物理特性を有するタンパク質加水分解組成物
本発明は、タンパク質加水分解組成物、タンパク質加水分解組成物の製造方法、およびタンパク質加水分解組成物を含む食品を提供する。タンパク質加水分解組成物は、通常、各カルボキシル末端に主としてアルギニン残基またはリジン残基のいずれかを有するポリペプチド断片を含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2007年4月16日に出願された米国仮特許出願第60/911,935号、および2008年4月15日に出願された米国非仮特許出願第12/103,514号(参照によってこれらの全体が本明細書に援用される)の優先権を主張する。
【0002】
本発明は、改善された官能特性および物理特性を有するタンパク質加水分解組成物、タンパク質加水分解組成物の製造方法、およびタンパク質加水分解組成物を含む食品に関する。
【背景技術】
【0003】
肥満および肥満に関連する疾患の割合は、米国および世界中で上昇している。根底にある原因は1つではないが、寄与する因子は、多くの人々の速いペースで追い立てられているライフスタイル、およびそれに伴うファーストフードの消費であり得る。ほとんどのファーストフードは脂肪および/または糖が多い傾向にある。従って、「持ち運んで(on the go)」食べたり飲んだりすることができ、栄養があって容易に入手可能な食品が必要とされている。この食品は美味しいだけでなく、栄養的に十分でなければならない。すなわち、この食品は脂肪が少なく、タンパク質が多く、そしてビタミンおよび酸化防止剤が多くなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
栄養的に十分であり、容易に消費され得る食品の1つのタイプは、液体タンパク質含有飲料である。タンパク質は、大豆または様々な他のタンパク質源に由来し得る。大豆は優れたタンパク質源であるが、人によっては不快または口に合わないと感じる「草のような」または「豆のような」風味を有する傾向がある。従って、必要とされるのは、「大豆」風味が低減された単離大豆タンパク質製品である。さらに、液体飲料に添加される単離大豆タンパク質製品は理想的には実質的に可溶性でなければならず、時には実質的に光を透過させなければならない。さらに、単離大豆タンパク質製品は、所望の液体飲料のpHにおいて安定でなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
従って、本発明の多くの態様の1つは、タンパク質加水分解組成物の提供である。タンパク質加水分解組成物は、各カルボキシル末端に主としてアルギニン残基またはリジン残基のいずれかを有するポリペプチド断片の混合物を含む。さらに、タンパク質加水分解組成物は、約6.0よりも高いpHにおいて少なくとも約0.2%DHの加水分解度および少なくとも約80%の可溶性固形分指数(soluble solids index)(SSI)を有する。
【0006】
本発明の別の態様は、タンパク質加水分解組成物の調製方法を提供する。この方法は、タンパク質材料を、アルギニン残基またはリジン残基のカルボキシル末端側でタンパク質材料のペプチド結合を特異的に切断するエンドペプチダーゼと接触させて、タンパク質加水分解組成物を生じさせることを含む。タンパク質加水分解組成物は、約6.0よりも高いpHにおいて少なくとも約0.2%DHの加水分解度および少なくとも約80%の可溶性固形分指数を有する。
【0007】
本発明のさらに別の態様は、食用材料およびタンパク質加水分解組成物を含む食品を包含する。タンパク質加水分解組成物は、各カルボキシル末端に主としてアルギニン残基またはリジン残基のいずれかを有するポリペプチド断片の混合物を含む。さらに、組成物は、約6.0よりも高いpHにおいて少なくとも約0.2%DHの加水分解度および少なくとも約80%の可溶性固形分指数を有する。
【0008】
本発明のその他の態様および特徴は、以下でさらに詳細に説明される。
【0009】
カラー図面の参照
本出願はカラーで作成された少なくとも1枚の写真を含有する。カラー写真付きの本特許出願公報のコピーは、要求および必要な手数料の支払いに応じて特許庁により提供されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】フザリウム(Fusarium)トリプシン様エンドペプチダーゼ(TL1)による単離大豆タンパク質の加水分解を示す。図示されるのは、クーマシー染色されたSDS−ポリアクリルアミドゲルの画像である。レーン3(L3)は、非加水分解単離大豆タンパク質(SUPRO(登録商標)500E)を含有する。レーン4(L4)、レーン5(L5)、レーン6(L6)、レーン7(L7)、およびレーン8(L8)はそれぞれ、0.3%DH、2.2%DH、3.1%DH、4.0%DH、および5.0%DHの加水分解度(DH)を有するTL1加水分解物を含有する。レーン9(L9)は、ゲルの右側に示されるキロダルトン(kDa)の大きさを有するタンパク質MW標準を含有する。
【図2】訓練された査定者により評価されたときの5.0%固形分におけるTL1加水分解物およびALCALASE(登録商標)加水分解物の診断スコアを示す。各加水分解物の同一性および加水分解度(%DH)は各プロットの下に示される。正のスコアは加水分解物が対照サンプルよりも多くの官能特性を有したことを示し、負のスコアは加水分解物が対照サンプルよりも少ない官能特性を有したことを示す。対照サンプルは非加水分解単離大豆タンパク質であった。(A)は、約2.5%DH未満の加水分解度を有するTL1およびALCALASE(登録商標)(ALC)加水分解物のスコアを示す。(B)は、3%DHよりも大きい加水分解度を有するTL1およびALCALASE(登録商標)(ALC)加水分解物のスコアを示す。
【図3】ALCALASE(登録商標)およびTL1加水分解物の溶解度を比較する。それぞれの酵素および加水分解度(%DH)は、各管の下に示される。(A)は、4℃で2週間pH7.0において貯蔵されたALCALASE(登録商標)(ALC)およびTL1加水分解物(2.5%固形分)の管を示す。(B)は、4℃で3週間pH8.2において貯蔵されたTL1およびALCALASE(登録商標)(ALC)加水分解物(2.5%固形分)を示す。
【図4】TL1およびALCALASE(登録商標)加水分解物の溶解度プロットを示す。各加水分解物(2.5%固形分)の可溶性固形分のパーセント(すなわち、可溶性固形分指数)は、pHの関数としてプロットされる。各加水分解物の同一性および加水分解度(%DH)は、各プロットの下に示される。(A)は、TL1加水分解物の溶解度曲線を示す。(B)は、ALCALASE(登録商標)(ALC)加水分解物の溶解度曲線を示す。(C)は、選択されたTL1およびALCALASE(登録商標)(ALC)加水分解物の溶解度の直接比較を示す。
【図5】パイロットプラント規模におけるTL1による大豆タンパク質材料の加水分解を示す。図示されるのはクーマシー染色されたSDS−ポリアクリルアミドゲルの画像であり、TL1加水分解物および対照サンプルを分解した。レーン1(L1)およびレーン3(L3)は非加水分解大豆タンパク質を含有し、レーン2(L2)は2.7%DHのTL1加水分解物を含有し、レーン4(L4)は加水分解対照サンプル(酵素の混合物により2.8%DHまで加水分解されたSUPRO(登録商標)XT219)を含有し、レーン5〜11(L5〜L11)はそれぞれ、1.3%DH、2.0%DH、3.8%DH、0.3%DH、0.9%DH、1.6%DH、および5.2%DHを有するTL1加水分解物を含有する。レーン12(L12)は、ゲルの右側に示されるキロダルトン(kDa)の大きさを有する分子量標準を含有する。
【図6】パイロットプラントTL1加水分解物および対照サンプルの溶解度プロットを示す。各加水分解物の加水分解度(%DH)はプロットの下に示される。
【図7】パイロットプラントTL1加水分解物および対照サンプルの粘度のプロットを示す。各加水分解物の加水分解度(%DH)は、プロットの下に示される。
【図8】パイロットプラントTL1加水分解物の加水分解度の関数として、粘度および溶解度[すなわち、可溶性固形分指数(SSI)および窒素可溶性指数(NSI)]のプロットを示す。
【図9】対照サンプルと比較してTL1加水分解物中の風味揮発性物質のレベルが低いことを示す。(A)は、対照サンプルおよび種々の加水分解度(%DH)を有するTL1加水分解物中の全活性揮発性物質およびヘキサナールのレベルを示す。(B)は、対照サンプルおよび種々の加水分解度(%DH)を有するTL1加水分解物中の表示される風味揮発性物質のレベルを示す。
【図10】パイロットプラントTL1加水分解物および対照サンプルの診断スコアのプロットを示す。対照サンプルは非加水分解単離大豆タンパク質であった。正のスコアは加水分解物が対照サンプルよりも多くの官能特性を有したことを示し、負のスコアは加水分解物が対照サンプルよりも少ない官能特性を有したことを示す。(A)は対照、0.3%DH、および1.6%DHサンプルのスコアを示す。(B)は対照、1.3%DH、および5.2%DHサンプルのスコアを示す。(C)は対照、2.7%DH、および0.9%DHサンプルのスコアを示す。(D)は対照、2.0%DH、および3.8%DHサンプルのスコアを示す。
【図11】TL1加水分解物の官能スコアの要約したプロットを加水分解度(DH)の関数として示す。全体的な好みのスコアが上に示され、苦味のスコアが下に示される。ひし形は予測スコアを示し、正方形は実際のスコアを示す。
【図12】いくつかの異なるトリプシン様プロテアーゼによる単離大豆タンパク質の加水分解を示す。提示されるのは、クーマシー染色されたSDSポリアクリルアミドゲルの画像であり、非加水分解大豆タンパク質および酵素処理した大豆タンパク質サンプルを分解した。レーン1は、ゲルの左側に示される大きさを有する分子量マーカーを含有する。レーン3および9は未処理の単離大豆タンパク質を含有する。レーン2およびレーン4〜8はそれぞれ、TL1、SP3、TL5、TL6、ブタトリプシン、およびウシトリプシンで処理した大豆を含有する。
【図13】大豆および乳製品タンパク質の組み合わせのTL1加水分解物の溶解度をpHの関数として示す。
【図14】他の植物タンパク質材料のTL1による加水分解を示す。提示されるのは、クーマシー染色されたSDS−ポリアクリルアミドゲルの画像であり、未処理および処理済タンパク質サンプルを分解した。レーン1(L1)は分子量マーカー(ゲルの左側にkDaで示される)を含有する。レーン2(L2)、レーン4(L4)、およびレーン6(L6)はそれぞれ、加水分解していないコーン胚芽、キャノーラおよび小麦胚芽のサンプルを含有する。レーン3(L3)、レーン5(L5)、およびレーン7(L7)はそれぞれ、コーン胚芽、キャノーラ、および小麦胚芽のTL1加水分解物を含有する。
【図15】豆乳モデル飲料の平均ヘドニックスコア(Hedonic score)を示す。スケールは、1=非常に嫌い、5=どちらでもない、9=非常に好きであった。後に異なる文字が続く同じ列内の平均値は、95%の信頼度で有意に異なる。
【図16】組み合わせモデル飲料の平均ヘドニックスコアを示す。スケールは、1=非常に嫌い、5=どちらでもない、9=非常に好きであった。後に異なる文字が続く同じ列内の平均値は、95%の信頼度で有意に異なる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、タンパク質加水分解組成物、タンパク質加水分解組成物の製造方法、およびタンパク質加水分解組成物を含む食品を提供する。実施例において説明されるように、アルギニン残基またはリジン残基のカルボキシル末端側でタンパク質材料を特異的に切断するエンドペプチダーゼによるタンパク質材料の消化は、改善された物理特性、風味、および官能特性を有するポリペプチド断片を含む組成物をもたらすことが発見された。改善された物理特性、風味、および官能特性のために、本発明のタンパク質加水分解組成物は、様々な食品において有利に使用することができる。
【0012】
(I)タンパク質加水分解物の調製方法
本発明の一態様は、各カルボキシル末端に主としてアルギニン残基またはリジン残基のいずれかを有するポリペプチド断片の混合物を含むタンパク質加水分解物の調製方法を提供する。本方法は、タンパク質材料を、アルギニン残基またはリジン残基のカルボキシル末端側でタンパク質材料のペプチド結合を特異的に切断するエンドペプチダーゼと接触させて、タンパク質加水分解物を生じさせることを含む。タンパク質加水分解物を調製するために使用されるタンパク質材料またはタンパク質材料の組み合わせは異なり得るであろう。適切なタンパク質材料の例は以下に詳述される。
【0013】
(a)大豆タンパク質材料
いくつかの実施形態では、タンパク質材料は大豆タンパク質材料であり得る。様々な大豆タンパク質材料を本発明の方法で使用して、タンパク質加水分解物を生じさせることができる。一般に、大豆タンパク質材料は、当該技術分野において既知の方法に従って、全大豆から得ることができる。全大豆は、標準の大豆(すなわち、非遺伝子改変大豆)、遺伝子改変大豆(例えば、変性油を有する大豆、変性炭水化物を有する大豆、変性タンパク質サブユニットを有する大豆など)またはこれらの組み合わせでよい。大豆タンパク質材料の適切な例としては、大豆抽出物、豆乳、豆乳粉末、大豆カード、大豆粉、単離大豆タンパク質、大豆タンパク質濃縮物、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0014】
一実施形態では、本方法で使用される大豆タンパク質材料は、大豆タンパク質単離物(単離大豆タンパク質、またはISPとも呼ばれる)であり得る。一般に、大豆タンパク質単離物は、無水ベースで少なくとも約90%の大豆タンパク質のタンパク質含量を有する。大豆タンパク質単離物は無処理の(intact)大豆タンパク質を含んでもよいし、あるいは部分的に加水分解された大豆タンパク質を含んでもよい。大豆タンパク質単離物は、高含量の7S、11S、2Sなどの貯蔵タンパク質サブユニットを有し得る。本発明において出発材料として使用することができる大豆タンパク質単離物の非限定的な例は、例えばSolae,LLC(St.Louis、MO)から市販されており、その中には、SUPRO(登録商標)500E、SUPRO(登録商標)EX 45、SUPRO(登録商標)620、SUPRO(登録商標)670、SUPRO(登録商標)EX 33、SUPRO(登録商標)PLUS 2600F、SUPRO(登録商標)PLUS 2640 DS、SUPRO(登録商標)PLUS 2800、SUPRO(登録商標)PLUS 3000、およびこれらの組み合わせが含まれる。
【0015】
別の実施形態では、大豆タンパク質材料は、無水ベースで約65%から約90%未満のタンパク質含量を有する大豆タンパク質濃縮物であり得る。本発明において有用な適切な大豆タンパク質濃縮物の例としては、PROCONTM製品ライン、ALPHATM12およびALPHATM5800が挙げられ、これらは全てSolae,LLCから市販されている。あるいは、大豆タンパク質材料源として、大豆タンパク質単離物の一部の代わりになるために、大豆タンパク質濃縮物が大豆タンパク質単離物とブレンドされてもよい。通常、大豆タンパク質濃縮物が大豆タンパク質単離物の一部の代わりに使用される場合、大豆タンパク質濃縮物は、最大でも大豆タンパク質単離物の約40重量%までの代わりに使用され、より好ましくは大豆タンパク質単離物の約30重量%までの代わりに使用される。
【0016】
さらに別の実施形態では、大豆タンパク質材料は、無水ベースで約49%〜約65%のタンパク質含量を有する大豆粉であり得る。大豆粉は、脱脂大豆粉、部分脱脂大豆粉、または全脂大豆粉であり得る。大豆粉は、大豆タンパク質単離物または大豆タンパク質濃縮物とブレンドされてもよい。
【0017】
代替の実施形態では、大豆タンパク質材料は、遠心分離機における沈降に基づいて4つの主要な貯蔵タンパク質画分またはサブユニット(15S、11S、7S、および2S)に分離された材料であり得る。一般に、11S画分はグリシニンが非常に豊富であり、7S画分はβ−コングリシニンが非常に豊富である。さらに別の実施形態では、大豆タンパク質材料は、高オレイン酸大豆からのタンパク質であり得る。
【0018】
(b)他のタンパク質材料
別の実施形態では、タンパク質材料は、大豆以外の植物に由来してもよい。非限定的な例として、適切な植物には、アマランス、クズウコン、大麦、ソバ、キャノーラ、キャッサバ、ヒヨコマメ(ガルバンゾ)、豆類、レンティル、ルピナス、トウモロコシ、キビ、オート麦、エンドウ豆、ポテト、米、ライ麦、モロコシ属、ヒマワリ、タピオカ、ライ小麦、小麦、およびこれらの混合物が含まれる。特に好ましい植物タンパク質には、大麦、キャノーラ、ルピナス、トウモロコシ、オート麦、エンドウ豆、ポテト、米、小麦、およびこれらの組み合わせが含まれる。一実施形態では、植物タンパク質材料は、キャノーラミール、キャノーラタンパク質単離物、キャノーラタンパク質濃縮物、およびこれらの組み合わせであり得る。別の実施形態では、植物タンパク質材料は、トウモロコシまたはコーンタンパク質粉末、トウモロコシまたはコーンタンパク質濃縮物、トウモロコシまたはコーンタンパク質単離物、トウモロコシまたはコーン胚芽、トウモロコシまたはコーングルテン、トウモロコシまたはコーングルテンミール、トウモロコシまたはコーン粉、ゼインタンパク質、およびこれらの組み合わせであり得る。さらに別の実施形態では、植物タンパク質材料は、大麦粉末、大麦タンパク質濃縮物、大麦タンパク質単離物、大麦ミール、大麦粉、およびこれらの組み合わせであり得る。代替の実施形態では、植物タンパク質材料は、ルピナス粉、ルピナスタンパク質単離物、ルピナスタンパク質濃縮物、およびこれらの組み合わせであり得る。別の代替の実施形態では、植物タンパク質材料は、オートミール、オート麦粉、オート麦タンパク質粉、オート麦タンパク質単離物、オート麦タンパク質濃縮物、およびこれらの組み合わせであり得る。さらに別の実施形態では、植物タンパク質材料は、エンドウ豆粉、エンドウ豆タンパク質単離物、エンドウ豆タンパク質濃縮物、およびこれらの組み合わせであり得る。さらに別の実施形態では、植物タンパク質材料は、ポテトタンパク質粉末、ポテトタンパク質単離物、ポテトタンパク質濃縮物、ポテト粉、およびこれらの組み合わせであり得る。さらなる実施形態では、植物タンパク質材料は、米粉、米ミール、米タンパク質粉末、米タンパク質単離物、米タンパク質濃縮物、およびこれらの組み合わせであり得る。別の代替の実施形態では、植物タンパク質材料は、小麦タンパク質粉末、小麦グルテン、小麦胚芽、小麦粉、小麦タンパク質単離物、小麦タンパク質濃縮物、可溶化小麦タンパク質、およびこれらの組み合わせであり得る。
【0019】
他の実施形態では、タンパク質材料は動物源に由来してもよい。一実施形態では、動物タンパク質材料は卵に由来し得る。適切な卵タンパク質の非限定的な例としては、粉末卵、乾燥卵固形分、乾燥卵白タンパク質、液体卵白タンパク質、卵白タンパク質粉末、単離オボアルブミンタンパク質、およびこれらの組み合わせが挙げられる。卵タンパク質は、ニワトリ、アヒル、ガチョウ、ウズラ、または他の鳥の卵に由来し得る。代替の実施形態では、タンパク質材料は乳製品源に由来し得る。適切な乳製品タンパク質には、無脂肪乾燥粉乳、乳タンパク質単離物、乳タンパク質濃縮物、酸カゼイン、カゼイン塩(例えば、カゼインナトリウム塩、カゼインカルシウム塩など)、乳清タンパク質単離物、乳清タンパク質濃縮物、およびこれらの組み合わせが含まれる。乳タンパク質材料は、雌ウシ、ヤギ、ヒツジ、ロバ、ラクダ、ラクダ科動物、ヤク、水牛などに由来し得る。さらなる実施形態では、タンパク質は、陸生動物または水生動物の筋肉、臓器、結合組織、または骨格に由来し得る。一例として、動物タンパク質は、ウシまたは他の動物の骨、結合組織、臓器などから抽出されるコラーゲンの部分加水分解によって製造されるゼラチンであり得る。
【0020】
本発明の方法において大豆タンパク質材料および少なくとも1つの他のタンパク質材料の組み合わせが使用され得ることも想定される。すなわち、タンパク質加水分解組成物は、大豆タンパク質材料および少なくとも1つの他のタンパク質材料の組み合わせから調製されてもよい。一実施形態では、タンパク質加水分解組成物は、大豆タンパク質材料と、大麦、キャノーラ、ルピナス、トウモロコシ、オート麦、エンドウ豆、ポテト、米、小麦、動物材料、乳製品、および卵からなる群から選択される1つの他のタンパク質材料との組み合わせから調製することができる。別の実施形態では、タンパク質加水分解組成物は、大豆タンパク質材料と、大麦、キャノーラ、ルピナス、トウモロコシ、オート麦、エンドウ豆、ポテト、米、小麦、動物材料、乳製品、および卵からなる群から選択される2つの他のタンパク質材料との組み合わせから調製することができる。さらなる実施形態では、タンパク質加水分解組成物は、大豆タンパク質材料と、大麦、キャノーラ、ルピナス、トウモロコシ、オート麦、エンドウ豆、ポテト、米、小麦、動物材料、乳製品、および卵からなる群から選択される3つ以上の他のタンパク質材料との組み合わせから調製することができる。
【0021】
組み合わせて使用される大豆タンパク質材料および他のタンパク質材料の濃度は異なり得るであろう。大豆タンパク質材料の量は、組み合わせて使用される全タンパク質の約1%〜約99%の範囲であり得る。一実施形態では、大豆タンパク質材料の量は、組み合わせて使用される全タンパク質の約1%〜約20%の範囲であり得る。別の実施形態では、大豆タンパク質材料の量は、組み合わせて使用される全タンパク質の約20%〜約40%の範囲であり得る。さらに別の実施形態では、大豆タンパク質材料の量は、組み合わせて使用される全タンパク質の約40%〜約80%の範囲であり得る。さらなる実施形態では、大豆タンパク質材料の量は、組み合わせて使用される全タンパク質の約80%〜約99%の範囲であり得る。同様に、(少なくとも1つの)他のタンパク質材料の量は、組み合わせて使用される全タンパク質の約1%〜約99%の範囲であり得る。一実施形態では、他のタンパク質材料の量は、組み合わせて使用される全タンパク質の約1%〜約20%の範囲であり得る。別の実施形態では、他のタンパク質材料の量は、組み合わせて使用される全タンパク質の約20%〜約40%の範囲であり得る。さらに別の実施形態では、他のタンパク質材料の量は、組み合わせて使用される全タンパク質の約40%〜約80%の範囲であり得る。さらなる実施形態では、他のタンパク質材料の量は、組み合わせて使用される全タンパク質の約80%〜約99%の範囲であり得る。
【0022】
(c)タンパク質スラリー
本発明の方法では、通常、タンパク質材料は水中に混合または分散されて、約1重量%〜約20重量%のタンパク質(「現状のまま(as is)」に基づいて)を含むスラリーを形成する。一実施形態では、スラリーは、約1重量%〜約5重量%のタンパク質(現状のまま)を含むことができる。別の実施形態では、スラリーは、約6重量%〜約10重量%のタンパク質(現状のまま)を含むことができる。さらなる実施形態では、スラリーは、約11重量%〜約15重量%のタンパク質(現状のまま)を含むことができる。さらに別の実施形態では、スラリーは、約16重量%〜約20重量%のタンパク質(現状のまま)を含むことができる。
【0023】
タンパク質材料が水中に分散された後、タンパク質材料のスラリーは、推定されている内在性プロテアーゼ阻害剤を不活性化するために、約70℃〜約90℃で約2分〜約20分間加熱され得る。通常、タンパク質スラリーのpHおよび温度は、加水分解反応を最適化するように、そして特に、加水分解反応において使用されるエンドペプチダーゼがその最適な活性レベル付近で機能することを保証するように調整される。タンパク質スラリーのpHは、当該技術分野において一般に知られている方法に従って調整および監視することができる。タンパク質スラリーのpHは、約pH5.0〜約pH10.0に調整および保持され得る。一実施形態では、タンパク質スラリーのpHは、約pH7.0〜約pH8.0に調整および保持され得る。別の実施形態では、タンパク質スラリーのpHは、約pH8.0〜約pH9.0に調整および保持され得る。好ましい実施形態では、タンパク質スラリーのpHは、約pH8.0に調整および保持され得る。タンパク質スラリーの温度は、好ましくは、当該技術分野において既知の方法に従って加水分解反応の間約40℃〜約70℃に調整および保持される。好ましい実施形態では、タンパク質スラリーの温度は、加水分解反応の間約50℃〜約60℃に調整および保持され得る。一般に、この範囲よりも高い温度はエンドペプチダーゼを最終的に不活性化することができ、この範囲よりも低いまたは高い温度はエンドペプチダーゼの活性を遅くする傾向がある。
【0024】
(d)エンドペプチダーゼ
加水分解反応は一般に、エンドペプチダーゼをタンパク質材料のスラリーに添加することによって開始される。いくつかのエンドペプチダーゼは、本発明の方法での使用に適している。好ましくは、エンドペプチダーゼは食品グレードの酵素であろう。エンドペプチダーゼは、約pH6.0〜約pH11.0、より好ましくは約pH7.0〜約pH9.0、そして約40℃〜約70℃の温度、より好ましくは約45℃〜約60℃の温度の加水分解条件下で最適な活性を有することができる。
【0025】
一般に、エンドペプチダーゼは、S1セリンプロテアーゼ類の一員であろう(MEROPS Peptidase Database、release 8.00A;//merops.sanger.ac.uk)。好ましくは、エンドペプチダーゼは、アルギニン、リジン、または両残基のカルボキシル末端側でペプチド結合を切断するであろう。従って、エンドペプチダーゼは、アルギニン、リジン、または両方のカルボキシル末端側でペプチド結合を切断するトリプシン様エンドペプチダーゼであってもよい。本発明との関連におけるトリプシン様エンドペプチダーゼは、100よりも大きいトリプシン比を有するエンドペプチダーゼであると定義することができる(実施例16を参照)。トリプシン様エンドペプチダーゼは、リジン残基のカルボキシル末端側でペプチド結合を切断するリジルエンドペプチダーゼであってもよい。好ましい実施形態では、エンドペプチダーゼは微生物起源を有することができ、さらに好ましくは菌・カビ類起源を有する。トリプシンおよびトリプシン様エンドペプチダーゼは他の源(例えば、動物源)から入手することもできるが、動物源からのトリプシンは、実施例14に示されるように、出発タンパク質材料を切断できないこともある。
【0026】
一実施形態では、エンドペプチダーゼは、フザリウム・オキシスポラム(Fusarium oxysporum)からのトリプシン様プロテアーゼでもよい(米国特許第5,288,627号明細書、米国特許第5,693,520号明細書、これらはそれぞれ参照によってその全体が本明細書に援用される)。このエンドペプチダーゼは「TL1」と呼ばれ、そのタンパク質配列(配列番号1)は表Aに示される。TL1の受入番号はSWISSPROT No.P35049であり、そのMEROPS IDはS01.103である。別の実施形態では、エンドペプチダーゼは、フザリウム・ソラニ(Fusarium solani)からのトリプシン様プロテアーゼでもよい(国際公開第2005/040372−A1号パンフレット、その全体が本明細書に援用される)。このエンドペプチダーゼは「TL5」と呼ばれ、そのタンパク質配列(配列番号2)は表Aに示される。TL5の受入番号はGENESEQP:ADZ80577である。さらに別の実施形態では、エンドペプチダーゼは、フザリウムcf.ソラニ(Fusarium cf. solani)からのトリプシン様プロテアーゼであってもよい。このエンドペプチダーゼは「TL6」と呼ばれ、そのタンパク質配列(配列番号3)は表Aに示される。さらなる実施形態では、エンドペプチダーゼは、アクロモバクター・リティカス(Achromobacter lyticus)からのリジルエンドペプチダーゼであってもよい。このエンドペプチダーゼは「SP3」と呼ばれ、そのタンパク質配列(配列番号4)は表Aに示される。SP3の受入番号はSWISSPROT No.15636であり、SP3のMEROPS IDはS01.280である。例示的な実施形態では、エンドペプチダーゼはTL1であり得る。
【0027】
【0028】
別の実施形態では、エンドペプチダーゼは、配列番号1、2、3、4、またはこれらの断片と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、または85%同一であるアミノ酸配列を含むことができる。さらなる実施形態では、エンドペプチダーゼは、配列番号1、2、3、4、またはこれらの断片と少なくとも86%、87%、88%、89%、90%、91%、または92%同一であるアミノ酸配列を含むことができる。さらに別の実施形態では、エンドペプチダーゼは、配列番号1、2、3、4、またはこれらの断片と少なくとも93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一であるアミノ酸配列を含むことができる。プロテアーゼ活性を有するこれらの配列のいずれかの断片は、例えば処理の後(シグナルペプチドおよび/またはプロペプチドが切断された後など)の活性酵素のアミノ酸配列であり得る。好ましい断片には、配列番号1のアミノ酸25〜248、配列番号2のアミノ酸26〜251、配列番号3のアミノ酸18〜250、または配列番号4のアミノ酸21〜653が含まれる。
【0029】
本発明の目的のために、2つのアミノ酸配列のアライメントは、EMBOSS packageからのNeedleプログラム(Rice,P.、Longden,I.およびBleasby,A.(2000年)EMBOSS:The European Molecular Biology Open Software Suite.Trends in Genetics 16、(6)、276−277頁、http://emboss.org)バージョン2.8.0を用いて決定することができる。Needleプログラムは、Needleman,S.B.およびWunsch,C.D.(1970年)J.Mol.Biol.48、443−453頁に記載される包括的アライメントアルゴリズムを実行する。使用される置換マトリックスはBLOSUM62であり、ギャップオープニングペナルティは10であり、そしてギャップエクステンションペナルティは0.5である。一般に、配列同一性の割合は、比較ウィンドウ上で最適に整列された2つの配列を比較することによって決定され、ここで、比較ウィンドウ内のアミノ酸配列の部分は、2つの配列の最適なアライメントのための参照配列(付加または欠失を含まない)と比較して、付加または欠失(すなわち、ギャップ)を含むことができる。割合は、両方の配列内で同一のアミノ酸が生じる位置の数を決定して一致した位置の数を得て、一致した位置の数を、比較ウィンドウ内の2つの配列の短い方の位置の総数で割り、そしてその結果に100をかけて配列同一性の割合を得ることによって計算される。
【0030】
当業者は、ポリペプチドの機能に影響を与えることなく類似の側鎖を有する別のアミノ酸残基によってアミノ酸残基が置換され得ることを理解するであろう。例えば、脂肪族側鎖を有するアミノ酸基はグリシン、アラニン、バリン、ロイシン、およびイソロイシンであり、脂肪族−ヒドロキシル側鎖を有するアミノ酸基はセリンおよびスレオニンであり、アミド含有側鎖を有するアミノ酸基はアスパラギンおよびグルタミンであり、芳香族側鎖を有するアミノ酸基はフェニルアラニン、チロシン、およびトリプトファンであり、塩基性側鎖を有するアミノ酸基はリジン、アルギニン、およびヒスチジンであり、そして硫黄含有側鎖を有するアミノ酸基はシステインおよびメチオニンである。好ましい保存的アミノ酸置換基は、バリン−ロイシン−イソロイシン、フェニルアラニン−チロシン、リジン−アルギニン、アラニン−バリン、およびアスパラギン−グルタミンを含む。従って、エンドペプチダーゼは、配列番号1、2、3、または4に関して少なくとも1つの保存的アミノ酸置換を有し得る。一実施形態では、エンドペプチダーゼは、配列番号1、2、3、または4に関して約50の保存的アミノ酸置換を有し得る。別の実施形態では、エンドペプチダーゼは、配列番号1、2、3、または4に関して約40の保存的アミノ酸置換を有し得る。さらに別の実施形態では、エンドペプチダーゼは、配列番号1、2、3、または4に関して約30の保存的アミノ酸置換を有し得る。別の代替の実施形態では、エンドペプチダーゼは、配列番号1、2、3、または4に関して約20の保存的アミノ酸置換を有し得る。さらに別の実施形態では、エンドペプチダーゼは、配列番号1、2、3、または4に関して約10の保存的アミノ酸置換を有し得る。さらに別の実施形態では、エンドペプチダーゼは、配列番号1、2、3、または4に関して約5の保存的アミノ酸置換を有し得る。さらなる実施形態では、エンドペプチダーゼは、配列番号1、2、3、または4に関して約1つの保存的アミノ酸置換を有し得る。
【0031】
タンパク質材料およびエンドペプチダーゼの種々の組み合わせは表Bに示される。
【0032】
【0033】
(表B続き)
【0034】
(表B続き)
【0035】
(表B続き)
【0036】
タンパク質材料に添加されるエンドペプチダーゼの量は、タンパク質材料の源、所望の加水分解度、および加水分解反応の持続時間に依存して異なり得るであろう。エンドペプチダーゼの量は、タンパク質材料1キログラムあたり酵素タンパク質約1mg〜酵素タンパク質約5000mgの範囲であり得る。別の実施形態では、量は、タンパク質材料1キログラムあたり酵素タンパク質10mg〜酵素タンパク質約2000mgの範囲であり得る。さらに別の実施形態では、量は、タンパク質材料1キログラムあたり酵素タンパク質約50mg〜酵素タンパク質約1000mgの範囲であり得る。
【0037】
当業者により認識されるように、加水分解反応の持続時間は異なり得るであろう。一般的に言えば、加水分解反応の持続時間は、数分〜多時間(約30分〜約48時間など)の範囲であり得る。加水分解反応を終了させるために、組成物は、エンドペプチダーゼを不活性化するのに十分に高い温度まで加熱され得る。例えば、組成物を約90℃の温度まで加熱すると、エンドペプチダーゼが実質的に熱不活性化されるであろう。
【0038】
(II)タンパク質加水分解組成物
タンパク質加水分解組成物は、タンパク質出発材料と比較して、種々の長さおよび分子量のポリペプチド断片の混合物を含むであろう。ペプチド断片のそれぞれは、通常、そのカルボキシル末端にアルギニンまたはリジン残基のいずれかを有するであろう(実施例3、4、13、および18で実証されるように)。ポリペプチド断片は、約75ダルトン(Da)〜約50,000Da、より好ましくは約150Da〜約20,000Daの範囲の大きさであり得る。いくつかの実施形態では、ポリペプチド断片の平均分子サイズは、約20,000Da未満であり得る。他の実施形態では、ポリペプチド断片の平均分子サイズは、約15,000Da未満であり得る。さらに他の実施形態では、ポリペプチド断片の平均分子サイズは、約10,000Da未満であり得る。付加的な実施形態では、ポリペプチド断片の平均分子サイズは約5000Da未満であり得る。
【0039】
本発明のタンパク質加水分解組成物の加水分解度は、タンパク質材料源、使用されるエンドペプチダーゼ、および加水分解反応の完成度に依存して異なり得るであろう。加水分解度(DH)は、出発ペプチド結合数に対する切断されたペプチド結合の割合を指す。例えば、500のペプチド結合を含有する出発タンパク質が、50のペプチド結合が切断されるまで加水分解されると、得られる加水分解物のDHは10%DHである。加水分解度は、実施例で詳述されるように、トリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)比色分析法またはオルト−フタルジアルデヒド(OPA)法を用いて決定することができる。加水分解度が高い程、タンパク質の加水分解の程度は大きい。通常、タンパク質がさらに加水分解されるにつれて(すなわち、DHが高い程)、ペプチド断片の分子量は減少し、それに応じてペプチドプロファイルは変化し、そして混合物の粘度は低下する。DHは加水分解物全体(すなわち、全画分)において測定されてもよいし、あるいはDHは、加水分解物の可溶性画分(すなわち、約500〜1000×gで約5〜10分間加水分解物を遠心分離した後の上澄み画分)において測定されてもよい。
【0040】
一般に、タンパク質加水分解物の加水分解度は少なくとも約0.2%DHであろう。一実施形態では、タンパク質加水分解物の加水分解度は、約0.2%DH〜約2%DHの範囲でよい。別の実施形態では、タンパク質加水分解物の加水分解度は、約2%DH〜約8%DHの範囲でよい。さらに別の実施形態では、タンパク質加水分解物の加水分解度は、約8%DH〜約14%DHの範囲でよい。代替の実施形態では、タンパク質加水分解物の加水分解度は、約14%DH〜約20%DHの範囲でよい。付加的な実施形態では、タンパク質加水分解物の加水分解度は、約20%DHよりも大きくてよい。
【0041】
タンパク質加水分解組成物の溶解度は、出発タンパク質材料源、使用されるエンドペプチダーゼ、および組成物のpHに依存して異なり得るであろう。可溶性固形分指数(SSI)は、タンパク質加水分解組成物を構成する固形分(すなわち、ポリペプチド断片)の溶解度の尺度である。可溶性固形分の量は、遠心分離(例えば、約500〜1000×gで約5〜10分間)の前後の溶液中の固形分の量を測定することによって推定することができる。あるいは、可溶性固形分の量は、当該技術分野においてよく知られている技法(例えば、ビシンコニン酸(BCA)タンパク質決定比色分析アッセイなど)を用いて遠心分離の前後の組成物中のタンパク質の量を推定することによって決定することができる。
【0042】
一般に、本発明のタンパク質加水分解組成物は、その加水分解度にかかわらず、約pH6.0よりも高いpHで少なくとも約80%の可溶性固形分指数を有する。一実施形態では、タンパク質加水分解組成物は、約pH6.0よりも高いpHで約80%〜約85%の範囲の可溶性固形分指数を有し得る。別の実施形態では、タンパク質加水分解組成物は、約pH6.0よりも高いpHで約85%〜約90%の範囲の可溶性固形分指数を有し得る。さらなる実施形態では、タンパク質加水分解組成物は、約6.0よりも高いpHで約90%〜約95%の範囲の可溶性固形分指数を有し得る。別の代替の実施形態では、タンパク質加水分解組成物は、約6.0よりも高いpHで約95%〜約99%の範囲の可溶性固形分指数を有し得る。
【0043】
さらに、本発明のタンパク質加水分解組成物の溶解度は、加水分解度に応じて約pH4.0〜約pH5.0で異なり得る。例えば、約3%DHよりも大きい加水分解度を有する大豆タンパク質加水分解組成物は、約3%DH未満の加水分解度を有するものよりも、約pH4.0〜約pH5.0においてより可溶性である傾向がある。
【0044】
一般的に言えば、約1%DH〜約6%DHの加水分解度を有する大豆タンパク質加水分解組成物は、約pH7.0〜約pH8.0のpHで安定である。安定性は、時間が経っても沈降物の形成がないことを言う。タンパク質加水分解組成物は、室温(すなわち、約23℃)または冷蔵温度(すなわち、約4℃)で貯蔵され得る。一実施形態では、タンパク質加水分解組成物は、約1週間〜約4週間安定であり得る。別の実施形態では、タンパク質加水分解組成物は、約1ヶ月〜約6ヶ月間安定であり得る。さらなる実施形態では、タンパク質加水分解組成物は、約6ヶ月よりも長く安定であり得る。
【0045】
タンパク質加水分解組成物は乾燥されてもよい。例えば、タンパク質加水分解組成物はスプレー乾燥され得る。スプレードライヤーの入口の温度は、約260℃(500°F)〜約315℃(600°F)の範囲でよく、排気温度は、約82℃(180°F)〜約38℃(100°F)の範囲でよい。あるいは、タンパク質加水分解組成物は、真空乾燥、凍結乾燥、または当該技術分野において既知の他の手順を用いて乾燥されてもよい。
【0046】
タンパク質加水分解物が大豆タンパク質に由来する実施形態では、加水分解度は約0.2%DH〜約14%DH、より好ましくは約1%DH〜約6%DHの範囲でよい。形成されるポリペプチド断片の数に加えて、実施例において説明されるように、加水分解度は、通常、得られる大豆タンパク質加水分解組成物の他の物理特性および官能特性に影響を与える。通常、加水分解度が約1%DHから約6%DHまで増大するにつれて、大豆タンパク質加水分解組成物は、透明性または透光性が増大し、穀類および大豆/豆類の官能特性が低下する。さらに、加水分解度が約2%DHよりも大きい場合と比較して加水分解度が約2%DH未満である場合には、大豆タンパク質加水分解組成物は苦味の官能特性が実質的に少ない。別の言い方をすると、より高い加水分解度は穀類および大豆/豆類の官能特性を低下させ、より低い加水分解度は苦味の官能特性を低下させる。官能特性およびその決定方法は、実施例において詳述される。
【0047】
さらに、タンパク質加水分解物が大豆に由来する実施形態では、大豆タンパク質加水分解組成物は、配列番号5〜177および270〜274からなる群から選択されるポリペプチドを含み得る。一実施形態では、大豆タンパク質加水分解物は、配列番号5〜177および270〜274からなる群に相当するかまたは由来するアミノ酸配列を有する少なくとも1つのポリペプチドを含み得る。代替の実施形態では、大豆タンパク質加水分解物は、配列番号5〜177および270〜274からなる群から選択される少なくとも約10のポリペプチドまたはその断片を含み得る。別の実施形態では、大豆タンパク質加水分解物は、配列番号5〜177および270〜274からなる群から選択される少なくとも約20のポリペプチドまたはその断片を含み得る。さらなる実施形態では、大豆タンパク質加水分解物は、配列番号5〜177および270〜274からなる群から選択される少なくとも約40のポリペプチドまたはその断片を含み得る。さらに別の実施形態では、大豆タンパク質加水分解物は、配列番号5〜177および270〜274からなる群から選択される少なくとも約80のポリペプチドまたはその断片を含み得る。さらに別の実施形態では、大豆タンパク質加水分解物は、配列番号5〜177および270〜274からなる群から選択される少なくとも約120のポリペプチドまたはその断片を含み得る。さらなる実施形態では、大豆タンパク質加水分解物は、配列番号5〜177および270〜274からなる群から選択される少なくとも約178のポリペプチドまたはその断片を含み得る。
【0048】
タンパク質加水分解物が大豆タンパク質および乳製品の組み合わせに由来するその他の実施形態では、大豆/乳製品の組み合わせタンパク質加水分解組成物は、配列番号5〜197および270〜274からなる群から選択されるポリペプチドを含み得る。一実施形態では、大豆/乳製品の組み合わせ加水分解物は、配列番号5〜197および270〜274からなる群に相当するかまたは由来するアミノ酸配列を有する少なくとも1つのポリペプチドを含み得る。代替の実施形態では、大豆/乳製品の組み合わせ加水分解物は、配列番号5〜197および270〜274からなる群から選択される少なくとも約10のポリペプチドまたはその断片を含み得る。別の実施形態では、大豆/乳製品の組み合わせ加水分解物は、配列番号5〜197および270〜274からなる群から選択される少なくとも約50のポリペプチドまたはその断片を含み得る。別の代替の実施形態では、大豆/乳製品の組み合わせ加水分解物は、配列番号5〜197および270〜274からなる群から選択される少なくとも約100のポリペプチドまたはその断片を含み得る。別の実施形態では、大豆/乳製品加水分解物は、配列番号5〜197および270〜274からなる群から選択される少なくとも約150のポリペプチドまたはその断片を含み得る。さらに別の代替実施形態では、大豆/乳製品の組み合わせ加水分解物は、配列番号5〜197および270〜274からなる群から選択される少なくとも約198のポリペプチドまたはその断片を含み得る。
【0049】
タンパク質加水分解物がキャノーラに由来する付加的な実施形態では、タンパク質加水分解組成物は、配列番号198〜237からなる群から選択されるポリペプチドを含み得る。一実施形態では、キャノーラ加水分解物は、配列番号198〜237からなる群に相当するかまたは由来するアミノ酸配列を有する少なくとも1つのポリペプチドを含み得る。代替の実施形態では、キャノーラ加水分解物は、配列番号198〜237からなる群から選択される少なくとも約10のポリペプチドまたはその断片を含み得る。別の実施形態では、キャノーラ加水分解物は、配列番号198〜237からなる群から選択される少なくとも約20のポリペプチドまたはその断片を含み得る。さらに別の代替実施形態では、キャノーラ加水分解物は、配列番号198〜237からなる群に相当するかまたは由来するアミノ酸配列を有する少なくとも39のポリペプチドを含み得る。
【0050】
タンパク質加水分解物がトウモロコシに由来するその他の付加的な実施形態では、タンパク質加水分解組成物は、配列番号238〜261からなる群から選択されるポリペプチドを含み得る。一実施形態では、トウモロコシ加水分解物は、配列番号238〜261からなる群に相当するかまたは由来するアミノ酸配列を有する少なくとも1つのポリペプチドを含み得る。別の実施形態では、トウモロコシ加水分解物は、配列番号238〜261からなる群に相当するかまたは由来するアミノ酸配列を有する少なくとも10のポリペプチドを含み得る。さらなる実施形態では、トウモロコシ加水分解物は、配列番号238〜261からなる群に相当するかまたは由来するアミノ酸配列を有する少なくとも24のポリペプチドを含み得る。
【0051】
さらに、タンパク質加水分解物が小麦に由来する実施形態では、タンパク質加水分解組成物は、配列番号262〜269からなる群から選択されるポリペプチドを含み得る。一実施形態では、小麦加水分解物は、配列番号262〜269からなる群に相当するかまたは由来するアミノ酸配列を有する少なくとも1つのポリペプチドを含み得る。さらなる実施形態では、小麦加水分解物は、配列番号262〜269からなる群に相当するかまたは由来するアミノ酸配列を有する少なくとも8つのポリペプチドを含み得る。
【0052】
本発明は、本発明の大豆タンパク質加水分解組成物、大豆/乳製品タンパク質加水分解組成物、キャノーラタンパク質加水分解組成物、トウモロコシタンパク質加水分解組成物または小麦タンパク質加水分解組成物から精製され得るポリペプチドまたはその断片のいずれを包含してもよい。通常、純粋なポリペプチド断片は、所与の精製サンプル中の全ポリペプチドの少なくとも約80重量%、好ましくは90重量%、そしてさらにより好ましくは少なくとも約95重量%を構成する。ポリペプチド断片は、サイズ排除クロマトグラフィ、イオン交換クロマトグラフィ、アフィニティクロマトグラフィ、疎水性相互作用クロマトグラフィ、逆相クロマトグラフィなどのクロマトグラフィ法によって精製することができる。例えば、ポリペプチド断片は、配列番号5〜274からなる群から選択することができる。さらに、本発明は、配列番号5〜274からなる群から選択されるものと実質的に同様の配列であるポリペプチド断片も包含する。一実施形態では、ポリペプチド断片は、配列番号5〜274からなる群から選択されるポリペプチド断片に対して少なくとも80、81、82、83、84、85、86、87、88、または89%の配列同一性を有し得る。別の実施形態では、ポリペプチド断片は、配列番号5〜274からなる群から選択されるポリペプチド断片に対して少なくとも90、91、92、93、94、95、96、97、98、または99%の配列同一性を有し得る。ポリペプチド断片が本発明の配列と特定の割合の配列同一性を共有するかどうかを決定するための方法は、上記に示される。
【0053】
本発明のタンパク質加水分解組成物はさらに、非加水分解(すなわち、無処理の)タンパク質を含み得ることも想定される。非加水分解タンパク質は、本質的に無処理の調製物(例えば、大豆カード、コーンミール、ミルクなど)中に存在することができる。さらに、非加水分解タンパク質は、植物由来のタンパク質源(例えば、アマランス、クズウコン、大麦、ソバ、キャノーラ、キャッサバ、ヒヨコマメ(ガルバンゾ)、豆類、レンティル、ルピナス、トウモロコシ、キビ、オート麦、エンドウ豆、ポテト、米、ライ麦、モロコシ属、ヒマワリ、タピオカ、ライ小麦、小麦などの源)から単離されてもよいし、あるいは動物タンパク質材料(適切な単離動物タンパク質の例としては、酸カゼイン、カゼイン塩、乳清、アルブミン、ゼラチンなどが挙げられる)から単離されてもよい。好ましい実施形態では、タンパク質加水分解組成物はさらに、大麦、キャノーラ、ルピナス、トウモロコシ、オート麦、エンドウ豆、ポテト、米、大豆、小麦、動物、乳製品、卵、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される非加水分解タンパク質を含む。タンパク質加水分解物および非加水分解タンパク質の相対的な比率は、関連するタンパク質、および組成物の所望の使用に依存して異なり得るであろう。
【0054】
(III)タンパク質加水分解物を含む食品
本発明のさらなる態様は、食用材料および本明細書に記載されるタンパク質加水分解組成物のいずれかを含む食品の提供である。あるいは、食品は、食用材料および本明細書に記載される単離ポリペプチド断片のいずれかを含んでもよい。
【0055】
食用材料と混ぜ合わせるための特定のタンパク質加水分解組成物の選択は、所望の食品に依存して異なり得るであろう。いくつかの実施形態では、タンパク質加水分解組成物は、大豆タンパク質に由来し得る。他の実施形態では、タンパク質加水分解組成物は、大麦、キャノーラ、ルピナス、トウモロコシ、オート麦、エンドウ豆、ポテト、米、小麦、動物、卵、およびこれらの組み合わせに由来し得る。さらに他の実施形態では、タンパク質加水分解組成物は、大豆と、大麦、キャノーラ、ルピナス、トウモロコシ、オート麦、エンドウ豆、ポテト、米、小麦、動物、乳製品、および卵からなる群から選択される少なくとも1つの他のタンパク質源との組み合わせに由来し得る。代替の実施形態では、タンパク質加水分解組成物は、異なるタンパク質加水分解物の組み合わせを含むことができる。付加的な実施形態では、タンパク質加水分解組成物は、配列番号5〜274からなるアミノ酸配列の群から選択される単離または合成ポリペプチドを含むことができる。
【0056】
適切な食用材料の選択も所望の食品によって異なるであろう。食用材料は、植物由来材料、動物由来材料、または植物由来材料や動物由来材料から単離されるバイオマテリアル(すなわち、タンパク質、炭水化物、脂質など)などであり得る。
【0057】
一実施形態では、食品は飲料であり得る。好ましい飲料としては、そのまま飲める(ready−to−drink)(RTD)飲料または乾燥ブレンド飲料(DBB)が挙げられる。飲料は、実質的に濁った飲料でも実質的に透明な飲料でもよい。適切な飲料の非限定的な例としては、ミルクベースの飲料、ミルク類似飲料(例えば、豆乳、米ミルクなど)、体重管理飲料、プロテインシェーク(protein shake)、食事代用飲料(meal replacement drink)、コーヒーベースの飲料、栄養ドリンク、エネルギードリンク、調製粉乳、果実ジュースベースの飲料、果実飲料、果実風味飲料、野菜ベースの飲料、スポーツドリンクなどが挙げられる。飲料のpHは一般に約pH2.8〜約pH7.5、好ましくは約pH6.5〜約pH7.5の範囲であり、より好ましくは約pH7.0であろう。
【0058】
別の実施形態では、食品は、グラノーラバー、シリアルバー、栄養バー、またはエネルギーバーなどの食品バーであり得る。さらに別の実施形態では、食品は、シリアルベースの製品であり得る。シリアルベースの食品の非限定的な例としては、朝食用シリアル、パスタ、パン、焼成製品(すなわち、ケーキ、パイ、ロール、クッキー、クラッカー)、およびスナック製品(例えば、チップス、プレッツェルなど)が挙げられる。シリアルベースの食品の食用材料は、小麦(例えば、漂白小麦粉、全粒小麦粉、小麦胚芽、小麦フスマなど)、コーン(例えば、コーン粉、コーンミール、コーンスターチなど)、オート麦(例えば、膨化オート麦、オートミール、オート麦粉など)、米(例えば、膨化米、米粉、米デンプン)などに由来し得る。さらに別の実施形態では、食品は、「固形の」乳製品ベースの製品であり得る。適切な「固形の」乳製品ベースの食品の非限定的な例としては、ハードチーズ製品、ソフトチーズ製品、アイスクリーム製品、ヨーグルト製品、フローズンヨーグルト製品、ホイップした乳製品様の製品、シャーベットなどが挙げられる。代替の実施形態では、食品は栄養補助食品であり得る。栄養補助食品は液体でも固体でもよい。別の代替の実施形態では、食品は、食肉製品または食肉類似製品であり得る。食肉食品の例としては、加工肉、ひき肉、および全筋肉の食肉製品が挙げられるがこれらに限定されない。食肉材料は、動物肉でもシーフード肉でもよい。食肉類似品は、動物またはシーフード肉の感触を模倣するテクスチャ化植物または乳製品タンパク質であり得る。食肉類似品は、食肉食品中の食肉材料の一部でも全てでもよい。
【0059】
タンパク質加水分解組成物の加水分解度も、加水分解物および所望の食品を製造するために使用される出発材料に依存して異なるであろう。例えば、大豆含有タンパク質加水分解組成物を含む飲料では、実質的により可溶性であり、時には実質的に光をより透過させる大豆タンパク質加水分解組成物(1%DHよりも6%DHに近い加水分解度を有する組成物など)を用いることが望ましいかもしれない。同様に、苦味の官能特性を最小限にすることが望ましい食品では、6%DHよりも1%DHに近い加水分解度を有する大豆タンパク質加水分解組成物を選択することができる。さらに、穀類および大豆/豆類の官能特性を最小限にすることが望ましい食品では、1%DHよりも6%DHに近い加水分解度を有する大豆タンパク質加水分解組成物を選択することができる。
【0060】
好ましい実施形態では、食品は上記で詳述したような飲料であり得る。そしてタンパク質加水分解組成物の適切な例は上記で詳述した。適切な食用材料の非限定的な例としては、スキムミルク、低脂肪乳、2%乳、全乳、クリーム、エバミルク(evaporated milk)、ヨーグルト、バターミルク、乾燥粉乳、無脂肪乾燥粉乳、乳タンパク質、酸カゼイン、カゼイン塩(例えば、カゼインナトリウム塩、カゼインカルシウム塩など)、乳清タンパク質濃縮物、乳清タンパク質単離物、大豆タンパク質単離物、大豆タンパク質加水分解物、乳清加水分解物、チョコレート、ココア粉末、コーヒー、茶、果実ジュース、野菜ジュースなどが挙げられる。飲料食品はさらに、甘味剤(グルコース、スクロース、フルクトース、マルトデキストリン、スクラロース、コーンシロップ、蜂蜜、メープルシロップなど)、風味剤(例えば、チョコレート、ココア、チョコレート風味、バニラ抽出物、バニラ風味、果実風味など)、乳化または増粘剤(例えば、レシチン、カラギナン、セルロースガム、セルロースゲル、デンプン、アラビアガム、キサンタンガムなど)、安定剤、脂質材料(例えば、キャノーラ油、ヒマワリ油、高オレイン酸ヒマワリ油、脂肪粉末など)、防腐剤(例えば、ソルビン酸カリウム、ソルビン酸など)、酸化防止剤(例えば、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウムなど)、着色剤、ビタミン、ミネラル、およびこれらの組み合わせを含んでもよい。
【0061】
定義
本発明の理解を容易にするために、いくつかの用語を以下に定義する。
【0062】
「加水分解度」という用語は、タンパク質100キログラム(kg)あたりに存在するNH2のモル数を決定することによって測定される、切断された全ペプチド結合の割合を指す。
【0063】
「エンドペプチダーゼ」という用語は、オリゴペプチドまたはポリペプチド鎖中の内部ペプチド結合を加水分解する酵素を指す。エンドペプチダーゼの群は、酵素サブクラスEC 3.4.21〜25を含む(国際生化学・分子生物学連合(International Union of Biochemistry and Molecular Biology)酵素分類システム)。
【0064】
「食品グレード酵素」は、一般に安全と認められる(generally recognized as safe(GRAS))と認可されており、ヒトなどの生物体により消費される場合に安全な酵素である。通常、酵素および酵素が由来し得る製品は、適用可能な法的規制ガイドラインに従って製造される。
【0065】
「加水分解物」は、化合物が水の影響によって切断されたときに得られる反応生成物である。タンパク質加水分解物は、熱的、化学的、または酵素的な分解に引き続いて生じる。反応の間、大きい分子は、より小さいタンパク質、可溶性タンパク質、ペプチド断片、および遊離アミノ酸に破壊される。
【0066】
「穀類」「大豆/豆類」または「苦味」のような用語を説明するために使用されるような「官能特性」という用語は、実施例6において特に明確に記述されるようなSQS採点システムに従って決定される。
【0067】
「可溶性固形分指数」という用語は、可溶性タンパク質または可溶性固形分の割合を指す。
【0068】
本明細書で使用される「単離大豆タンパク質」または「大豆タンパク質単離物」という用語は、無水ベースで少なくとも約90%の大豆タンパク質のタンパク質含量を有する大豆材料を指す。単離大豆タンパク質は、子葉から大豆の皮および胚を除去し、子葉をフレークまたは粉砕してフレークまたは粉砕子葉から油を除去し、子葉の大豆タンパク質および炭水化物を子葉繊維から分離し、次いで大豆タンパク質を炭水化物から分離することによって、大豆から形成される。
【0069】
本明細書で使用される「大豆タンパク質濃縮物」という用語は、無水ベースで約65%から約90%未満までの大豆タンパク質のタンパク質含量を有する大豆材料である。大豆タンパク質濃縮物は、無水ベースで通常約3.5重量%から約20重量%までの大豆子葉繊維も含有する。大豆タンパク質濃縮物は、大豆の皮および胚を除去し、子葉をフレークまたは粉砕してフレークまたは粉砕子葉から油を除去し、大豆タンパク質および大豆子葉繊維を子葉の可溶性炭水化物から分離することによって大豆から形成される。
【0070】
本明細書で使用される「大豆粉」という用語は、粒子がNo.100メッシュ(米国基準)スクリーンを通過できるようなサイズを有する脱脂、一部脱脂、または全脂大豆材料の粉砕形態を指す。大豆ケーク、チップ、フレーク、ミール、または材料の混合物は、従来の大豆粉砕方法を用いて大豆粉に粉砕される。大豆粉は、無水ベースで約49%〜約65%の大豆タンパク質含量を有する。好ましくは、粉は非常に細かく粉砕され、最も好ましくは、300メッシュ(米国基準)スクリーン上に約1%未満の粉が保持されるように粉砕される。
【0071】
本明細書で使用される「大豆子葉繊維」という用語は、少なくとも約70%の食物繊維を含有する大豆子葉の多糖類部分を指す。大豆子葉繊維は通常いくらか少量の大豆タンパク質を含有するが、100%繊維であってもよい。本明細書で使用される大豆子葉繊維は、大豆皮の繊維を指さないかまたは含まない。一般的に、大豆子葉繊維は、大豆の皮および胚芽を除去し、子葉をフレークまたは粉砕してフレークまたは粉砕子葉から油を除去し、大豆子葉繊維を子葉の大豆材料および炭水化物から分離することによって、大豆から形成される。
【0072】
「トリプシン様セリンプロテアーゼ」は、アルギニン残基またはリジン残基のカルボキシル末端側でペプチド結合を優先的に切断する酵素である。
【0073】
本発明またはその好ましい実施形態の要素を導入する場合に、冠詞「a」、「an」、「the」および「said」は、その要素が1つまたは複数存在することを意味するものとする。「comprising」、「including」および「having」という用語は包括的であり、記載される要素以外にさらなる要素が存在し得ることを意味するものとする。
【0074】
本発明の範囲から逸脱することなく上記の化合物、製品および方法には種々の変化がなされ得るので、上記説明および以下に示される実施例に含まれる全ての事項は例示として解釈されるべきであり、限定の意味で解釈されるべきではないことが意図される。
【実施例】
【0075】
以下の実施例は、本発明の実施形態を説明する。
【0076】
実施例1.トリプシン様エンドペプチダーゼTL1による単離大豆タンパク質の加水分解
その溶解度を高め、そしてその官能特性を改善するために、単離大豆タンパク質をより小さいペプチド断片に加水分解した。フザリウム・オキシスポラム(Fusarium oxysporum)からの菌・カビ類トリプシン様ペプチダーゼTL1(その配列は本出願の配列番号1で示される)はアルギニンまたはリジン残基のC末端側でペプチド結合を切断するが、他のペプチダーゼは大豆タンパク質内のランダムなペプチド結合を切断することが示されているので、TL1を選択した。
【0077】
発泡を低減するために穏やかな混合を用いて、320gのSUPRO(登録商標)500E、Solae(St.Louis、MO))を3680gの水中に分散させることによって、単離大豆タンパク質(ISP)の8%スラリーを製造した。必要であれば、2滴の消泡剤を添加した。溶液を80℃に5分間加熱して、存在している可能性のあるセリンプロテアーゼ阻害剤を不活性化した。混合物を50℃まで冷却し、食品グレードのKOH(50%w/w溶液)を用いてpHを8.0に調整した。0、75mg、350mg、650mg、または950mgのTL1/大豆タンパク質1kgの存在下、一定分量(800mL)の8%大豆タンパク質スラリーを50℃で60分間インキュベートした。サンプルを85℃に5分間加熱し、酵素を不活性化した。サンプルを氷上で冷し、4℃で貯蔵した。
【0078】
加水分解度(%DH)は、加水分解された特定のペプチド結合のパーセント(すなわち、出発タンパク質中に存在するペプチド結合の総数のうち切断された数)を指す。%DHは、トリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)法を用いて推定した。この手順は正確で再現可能であり、食品タンパク質加水分解物の加水分解度を決定するために一般に適用可能な手順である。このために、0.1gの大豆タンパク質加水分解物を100mLの0.025NのNaOH中に溶解した。一定分量(2.0mL)の加水分解物溶液を8mLの0.05Mホウ酸ナトリウム緩衝液(pH9.5)と混合した。2mLの緩衝加水分解物溶液を0.20mLの10%トリニトロベンゼンスルホン酸で処理した後、室温において暗所で15分間インキュベーションした。4mLの0.1M亜硫酸ナトリウム−0.1Mリン酸ナトリウム溶液(1:99比)を添加することにより反応を失活させ、420nmで吸光度を読み取った。0.1mMのグリシン溶液を標準として用いた。以下の計算を用いてグリシン標準溶液の回収パーセントを決定した:[(420nmにおけるグリシンの吸光度−420nmにおけるブランクの吸光度)×(100/0.710)]。94%以上の値は許容可能であると考えた。
【0079】
表1は、各サンプルの平均TNBS値および%DHを示す。加水分解は6%DHの付近でプラトーになり始め、これは、切断のために容易に利用できるアルギニンおよびリジン部位の数を反映し得ると思われる。この実験は、350mg/kgのTL1による1時間の消化が、十分な加水分解生成物を生じたことを示唆する。
【0080】
【0081】
実施例2.TL1加水分解物のSDS−PAGE分析
0.3%DH、2.2%DH、3.1%DH、4.0%DH、および5.0%DHを有するTL1加水分解物を、本質的に実施例1に記載したとおりに調製した。一定分量の各加水分解物および非加水分解単離大豆タンパク質を、標準的な手順を用いてSDS−PAGEにより分解した。この分析によって、大豆加水分解物中のポリペプチドの分子サイズの、出発大豆タンパク質との比較が可能になった。図1は、クーマシー染色ゲルの画像を示す。非加水分解単離大豆タンパク質は、約5kDa〜約100kDaの範囲の大きさのポリペプチドを含む。0.3%DH加水分解物中のポリペプチドのサイズ範囲は出発材料と同様であったが、この加水分解物は付加的な小さいポリペプチド断片を含有した。より高い%DHを有する加水分解物は、本質的に約20〜30kDaよりも大きいポリペプチドが欠けており、全てが付加的な小さい(<5kDa)ポリペプチドを有していた。2.2%DH、3.1%DH、および4.0%DH加水分解物のポリペプチドパターンはかなり類似していた。しかしなら、5.0%DH加水分解物は、他の加水分解物よりも狭い範囲のポリペプチドサイズ(約0.1〜20kDa)を有した。特に、5.0%DH加水分解物には7Sおよび11Sサブユニットバンドは存在しなかった。(図1、レーン8を参照)。
【0082】
実施例3.LC−MSによるTL1加水分解物中のペプチド断片の分析
実施例1で調製したTL1加水分解物中のペプチド断片を、液体クロマトグラフィ質量分析(LC−MS)によって同定した。2mgの各TL1加水分解物を含有する一定分量を、0.1%ギ酸(1mL)とガラスバイアル中で混合して1〜2分間ボルテックスすることによってLC−MS分析のためのサンプルを調製した。混合物を13,000rpmで5分間遠心分離した。HP(登録商標)−1100(Hewlett Packard(Palo Alto、CA))HPLC機器において、C18分析HPLCカラム(15cm×2.1mm内径5μm、Discovery Bio Wide Pore、Supelco(登録商標)、Sigma−Aldrich(St.Louis、MO))に、一定分量(25μL)の上澄みを注入した。溶出プロファイルは表2に示され、溶媒Aは0.1%ギ酸であり、溶媒Bはアセトニトリル中0.1%のギ酸であった。流速は0.19mL/分であり、カラムのサーモスタット温度は25℃であった。
【0083】
【0084】
MS分析のためのスプリッターシステムを用いて一定分量(10μL)のLC溶離液をESI−MS源に供給した。Thermo FinniganTMLCQTM(Thermo Scientific(Waltham、MA))デカイオントラップ質量分析計を用いて、データ依存性MS/MSおよび動的排除走査事象(dynamic exclusion scan event)のあるデータ依存性MS/MSによりペプチドを分析した。ESI−MSはキャピラリー温度225℃の正イオンモードで実行し、エレクトロスプレーニードルは電圧5.0kVに設定し、走査範囲はm/z400〜2000であった。酵素検索パラメータのないSequest検索エンジン(BIOWORKSTMソフトウェア、Thermo Fisher Scientific(Waltham、MA))によってMS/MS生データをデコンボリューション処理した。National Institutes of HealthにおけるNational Center for Biotechnology Information(NCBI)、またはSwiss Institute of BioinformaticsからのSwiss−Protなどの標準データベースを検索することによってペプチドを同定した。
【0085】
ペプチドは表3に示される。ほぼ全てのペプチド断片は、カルボキシル末端にアルギニンまたはリジンを有した(3つの断片はカルボキシル末端にグルタミンを有した)。リジン残基よりもアルギニン残基を有する末端の断片のほうが約2倍多かった。
【0086】
ペプチド断片の同定によって、βコングリシニンのαサブユニット、βコングリシニンのβサブユニット、グリシニンサブユニットG1、グリシニンサブユニットG3、およびグリシニンGy4の加水分解生成物が各TL1加水分解物中に存在することが明らかになった。同じペプチド断片の多くが各加水分解物で検出された。5.8%および6.1%DHの加水分解物は、P24オレオシンアイソフォームAからの断片も含有した。6.1%DHの加水分解物は、付加的なタンパク質であるトリプシン阻害剤Kti3からの断片の存在を明らかにした。
【0087】
【0088】
(表3続き)
【0089】
実施例4.高加水分解度を有するTL1加水分解物中のペプチド断片のMALDI−MSによる分析
実施例1で調製した6.1%DH大豆加水分解物中のペプチド断片は、マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析(MALDI−TOF/TOF−MS)によっても分析した。最終溶出工程を約50分に延長し、Bio−Rad(登録商標)(Bio−Rad Laboratories(Hercules,CA))フラクションコレクタにおいて1分間隔で画分を集めたことを除いて実施例3に記載されるように、サンプルをHPLCのために調製して分析した。Genevac(登録商標)(Genevac,Ltd(UK))エバポレータにおいて画分#4〜48を30℃よりも低い温度で完全に蒸発させた。
【0090】
このために、乾燥サンプルを50%アセトニトリル中の1%のトリフルオロ酢酸(TFA)溶液200μL中に溶解した。一定分量(1.5μL)の各サンプルを1.5μLのMALDIマトリックス溶液(6.2mgのα−シアノ−4−ヒドロキシケイ皮酸/36%のメタノール(v/v)、56%のアセトニトリル(v/v)、および8%の水1ml)と混合した。サンプルをボルテックスし、遠心分離し、そして1μLをMALDIステンレス鋼標的板にスポットした。さらなる精製およびMS/MS分析のために高品質MSスペクトルを有する13個のサンプルを選択した。それぞれの画分を乾燥させ、PCR管内で1%のアセトニトリル中の0.1%のギ酸溶液10μL中に再懸濁させ、30秒間ボルテックスし、2000rpmで10秒間遠心分離した。ボルテックスおよびスピニングを5回繰り返した。NuTip(10μLの多孔質黒鉛炭素SPEチップ)を用いてペプチド混合物を精製した。予め湿潤させた(60%のアセトニトリル中の0.1%のギ酸、続いて0.1%ギ酸で平衡にした)チップを用いてサンプルを含有するPCR管からペプチドを抽出した。合計50回、サンプル溶液全体をチップ内に吸い込んで管内に排出した。次に、サンプル負荷チップを0.1%のギ酸(10μL)で5回洗浄した(吸込みおよび排出)。最後に、60%のアセトニトリル中の0.1%ギ酸10μLでペプチドをチップから溶出させた。溶出方法は、同じ溶媒混合物(10μL)を用いて10回繰り返した。貯蔵された溶出サンプル溶液を速度真空下で乾燥させ、50%のアセトニトリル中の1%のTFAの溶液1.5μLおよびMALDIマトリックス溶液1.5μL中に再懸濁させた。混合物を30秒間ボルテックスし、2000rpmで5秒間遠心分離し、1μLをMALDI標的板にスポットした。MALDI−TOF/TOF機器(ABI−4700)においてMS分析を実施した。機器はND:YAG(335nm)を備え、MSおよびMS/MSモードの両方において200Hzの反復率で動作した。第1のTOFにおいて20KeVの加速エネルギーでデータを記録し、電圧mアインツェル(Einzel)レンズは6KeVに設定した。酵素検索パラメータのないMASCOT検索エンジン(MATRIX SCIENCE)によって、MS/MSデータをデコンボリューション処理した。NCBIまたはSwiss−Protなどの標準データベースを検索することによってペプチドを同定した。
【0091】
MALDI−MSにより同定されたペプチドは表4に示される。LC−MS(ESI)で同定されたものと同じペプチド断片のいくつかをこの分析で同定した。例えば、βコングリシニンのαサブユニット、βコングリシニンのβサブユニット、グリシニンサブユニットG1、およびグリシニンGy4の断片が両方の分析で発見された。MALDI−MS分析は、βコングリシニンαプライムサブユニット、グリシニンサブユニットG2、および62Kスクロース結合タンパク質前駆体および種子成熟タンパク質LEA4などの付加的なポリペプチドの断片を検出した。
【0092】
【0093】
実施例5.TL1またはALCALASE(登録商標)による単離大豆タンパク質の加水分解
TL1またはALCALASE(登録商標)2.4L、Novozymes(Bagsvaerd、Denmark)から入手可能な微生物サブチリシンプロテアーゼのいずれかにより、種々の加水分解物の官能特性および機能性を比較し得るように、単離大豆タンパク質を加水分解した。5分間の穏やかな混合を用いて72gのSUPRO(登録商標)500Eを828gの水道水中にブレンドすることによって、8%単離大豆タンパク質のスラリーを調製した。2滴の消泡剤を添加した。2NのKOHを用いてスラリーのpHを8.0に調整した。一定分量(800g)のスラリーを混合しながら50℃に加熱した。様々な量のTL1ペプチダーゼまたはALCALASE(登録商標)(ALC)プロテアーゼを添加して、0、1%DH、2%DH、4%DH、および6%DHの目標の加水分解度を達成した。自動滴定装置を用いて、反応のpHをpH8.0で一定に保持した。50℃で所望の加水分解度を生じる時間インキュベートした後、サンプルを85℃に5分間加熱し、酵素を不活性化し、溶液をpH7.0に調整した。サンプルを氷上で冷やし、4℃で貯蔵した。TNBS法を用いて加水分解度(%DH)を決定した(実施例1に記載されるように)。表5は、添加した酵素の量、反応時間、反応中にpHを滴定するために添加したKOHの体積、平均TNBS値、および%DHを示す。
【0094】
【0095】
実施例6.TL1およびALCALASE(登録商標)加水分解物の官能分析
独占的な官能スクリーニング法であるSolae Qualitative Screening(SQS)法を用いて、実施例5で調製されるTL1およびALCALASE(登録商標)加水分解物の風味特性を査定した。この方法は試験サンプルおよび対照サンプル間の直接比較に基づいており、定性的差異および方向性の(directional)定量的差異の両方を提供する。7人の訓練された査定者集団に、一定分量の各サンプル(5%スラリーに希釈)と、非加水分解単離大豆タンパク質の5%スラリーである対照サンプルとを提供した。食品グレードのリン酸を用いて各溶液のpHを7.0に調整した。
【0096】
評価プロトコルは、カップの底をテーブル上に置いたままでカップを3回かき混ぜることを含んだ。サンプルを2秒間そのままにした後、各査定者は約10mL(小さじ2)を少しずつ飲み、彼女/彼の口の中で10秒間音を立て、そして吐き出した。次に、査定者は表6に示されるスケールに従って試験サンプルと対照サンプルとの差異を評定した。
【0097】
【0098】
表7は、各サンプルの平均SQSスコアを示す。TL1加水分解物は、一般に、対照サンプル(未処理の単離大豆タンパク質)とは中程度の差異であると評定された。ALCALASE(登録商標)(ALC)加水分解物は対照とはわずか〜極度の差異を有すると評定された。
【0099】
【0100】
試験サンプルが対照サンプルとは異なる(すなわち、2、3、または4のSQSスコア有する)と評定された場合、試験サンプルが対照サンプルとどのように異なるかについての診断情報を提供するために試験サンプルをさらに評価した。従って、試験サンプルが対照サンプルよりもわずかに多い、中程度に多い、または極度に多い特性(表8を参照)を有する場合には、それぞれ+1、+2、+3のスコアを割り当てた。同様に、試験サンプルが対照サンプルよりもわずかに少ない、中程度に少ない、または極度に少ない特性を有する場合に、それぞれ−1、−2、−3のスコアを割り当てた。この分析は、試験サンプルと対照サンプルとの間の方向性の定量的差異の査定を提供する。
【0101】
【0102】
9つの風味特性の方向性の差異は、同様の%DHレベルを有する加水分解物について図2Aおよび2Bに示される。全ての%DHレベルにおいて、TL1加水分解物はALC加水分解物よりも大きい穀類および大豆/豆類特性の低下と、小さい渋味および苦味の増大とを有した。最も高い%DHのALC加水分解物は、対照と比べて特に大きい苦味の増大を有した。
【0103】
実施例7.TL1およびALCALASE(登録商標)加水分解物の溶解度
加水分解物を2.5%固形分に希釈し、4℃、pH7.0で1週間貯蔵することによって、実施例5で調製したTL1およびALCALASE(登録商標)加水分解物のそれぞれの溶解度を評価した。サンプルを視覚的に評価した。写真画像は図3Aに示される。TL1加水分解物は全てほとんど沈降物がなかったが、5.1%DHのTL1加水分解物は、より低い%DHのものと比べて透明性も増大していた。対照的に、最高の%DHを有するALC加水分解物は、著しい量の沈降物があった。図3Bは、pH8.2、4℃で3週間貯蔵した、2.5%固形分に希釈した6.1%DHのTL1加水分解物および13.8%DHのALC加水分解物の管の画像を示す。TL1加水分解物は沈降物がなく、pH8.2、4℃で長期間安定であることが示されたが、ALC加水分解物は沈降物を有した。
【0104】
実施例5で調製したTL1およびALC加水分解物のそれぞれにおいて、溶解度に対するpHの効果を試験した。それぞれの一定分量をpH2、pH3、pH4、pH5、pH6、pH7、pH8、またはpH9に調整し、サンプルを500×gで10分間遠心分離した。遠心分離の前の溶液中の固体物質の量を遠心分離の後の溶液中の固体物質の量と比較して、可溶性固形分指数(SSI)を得た。TL1およびALC加水分解物の%可溶性固形分はpHの関数として図4Aおよび4Bにそれぞれ示される。溶液は全て、約pH4〜pH5のpHレベル(すなわち、大豆タンパク質の等電点)で低下した溶解度と、それよりも低いpH値でいくらか増大した溶解度とを有した。しかしながら、より高いpH値では、TL1加水分解物は全てpH6.0よりも高いレベルで優れた溶解度を有した(図4A)が、ALC加水分解物のいくつかはより高いpHレベルで低下した溶解度を有した(図4B)。図4Cは、低いおよび高い%DHにおけるTL1およびALC加水分解物の溶解度の直接比較をpHの関数として示す。
【0105】
実施例8.TL1加水分解物の透過度
実施例5で調製したTL1加水分解物のいくつかの透過度を測定した。このために、異なる割合の固形分(すなわち、0.5%、1.0%、1.5%、2.0%、および2.5%)を有する1%DHおよび5.1%DHのTL1加水分解物を調製した。一定分量の各タンパク質スラリーをTURBISCAN(登録商標)Lab Expert装置(Formulaction(I’Union、France))に入れ、合計60秒間、毎秒透過度を記録した。表9は、各サンプルの平均パーセント透過度を示す。0.5%固形分での1.0%DH加水分解物の1.3%の透過度と比較して、5.1%DHのTL1加水分解物は0.5%固形分で37.4%の透過度を有した。これらのデータは視覚的に観察されたこと(図3Aを参照)を確認する。
【0106】
【0107】
実施例9.TL1または他のエンドペプチダーゼを用いて調製した大豆加水分解物の苦味分析
TL1、ALCALASE(登録商標)(ALC)、またはアクロモバクター・リティカス(Achromobacter lyticus)からのリジルエンドペプチダーゼ(SP3、配列番号4)を用いて、本質的に実施例1および5に記載したように、単離大豆タンパク質を加水分解した。酵素濃度および反応条件は、実施例1に記載されるTNBS法によって決定される場合に約5〜6%DHの%DH値を与えるように選択した。実施例6に記載されるSQS法を用いた苦味に焦点を合わせた評価のために加水分解物を5人の査定者集団に与えた。
【0108】
平均SQSスコアおよび診断的な苦味スコアは表10に示される。TL1およびSP3加水分解物は、対照サンプル(非加水分解単離大豆タンパク質)とはわずかな差異を有すると評定された。同様に、TL1およびSP3加水分解物は、対照サンプルよりもほんのわずかだけ苦くないと評定された。対照的に、ALC加水分解物は対照サンプルとは極めて異なり、対照サンプルよりも極めて苦いと評定された。
【0109】
【0110】
実施例10.パイロットプラントTL1加水分解物の物理特性
単離大豆タンパク質のTL1加水分解物の製造をベンチ規模からより大きいパイロットプラント規模に拡大し、加水分解物の官能および機能特性を分析した。このために、出発材料は大豆タンパク質カードであった。大豆タンパク質カード材料を製造するために、大豆フレーク、大豆粉、または大豆グリットを約pH6.5〜約pH10の水溶液で連続的に抽出して、フレーク/粉/グリット状のタンパク質を繊維などの不溶性材料から分離した。フレーク重量を基準として0.05〜0.15%の低レベルの亜硫酸塩を抽出媒体に添加した。フレーク、粉、またはグリットは、第1の抽出のために約pH6.5〜7.0の水酸化ナトリウム水溶液で抽出し、次に第2の抽出のために約pH8.5〜10の溶液で抽出した。大豆フレーク/粉/グリット材料に対する水の重量比は、約8:1〜約16:1であった。
【0111】
抽出の後、ろ過または遠心分離によって抽出物を不溶性材料から分離した。次に、分離した抽出物のpHを適切な酸で大豆タンパク質の等電点付近(約pH4〜5、または好ましくはpH4.4〜4.6)に調整して、大豆タンパク質が大豆可溶分(ガス誘発性のオリゴ糖および他の水溶性炭水化物を含む)から分離されるように大豆タンパク質カードを沈殿させた。適切な食用酸は塩酸、硫酸、硝酸、または酢酸を含む。沈殿したタンパク質材料(カード)を遠心分離により抽出物(乳清)から分離して、大豆タンパク質カード材料を製造した。約5:1〜約12:1の水対タンパク質材料の重量比で、分離した大豆タンパク質カード材料を水で洗浄して残留可溶分を除去した。
【0112】
まず大豆タンパク質カード材料を水酸化ナトリウム溶液または水酸化カリウム溶液などのアルカリ水溶液またはアルカリ土類水溶液で約pH8.0〜約pH9.0、好ましくは約pH8.0〜8.5に中和した。好ましくはジェット調理およびフラッシュ冷却によって、中和した大豆タンパク質カードを加熱および冷却した。次に、大豆タンパク質加水分解物が約35〜55のTNBS値を有するように大豆タンパク質材料を加水分解するために有効な温度及び時間で大豆タンパク質材料をTL1酵素で処理した。タンパク質カード重量を基準として0.005%〜0.02%の酵素タンパク質の濃度で、酵素を大豆タンパク質材料に添加した。40℃〜60℃、好ましくは約50℃の温度で30分〜120分間、好ましくは50分〜70分間、酵素を大豆タンパク質カード材料と接触させてタンパク質を加水分解した。加水分解大豆タンパク質材料を、酵素を不活性化するために有効な温度に加熱することによって加水分解を終了させた。最も好ましくは、加水分解大豆タンパク質カード材料をジェット調理して酵素を不活性化し、フラッシュ冷却し、次に上記のようにスプレー乾燥した。
【0113】
表11は、加水分解物の典型的なセットのための反応パラメータを示す。加水分解度は、本質的に実施例1に記載されるように、TNBS法を用いて決定した。各サンプルのTNBS値および%DHも表11に示される。対照サンプルは、非加水分解単離大豆タンパク質(すなわち、SUPRO(登録商標)500E)および本質的に市販の単離大豆タンパク質加水分解物(すなわち、酵素の混合物で2.8%DHに加水分解したSUPRO(登録商標)XT219)を含んだ。
【0114】
【0115】
標準手順を用いて、TL1加水分解物および対照サンプルをSDS PAGEにより分析した。図5は、ゲルの画像を示す。この分析により、主要な大豆貯蔵タンパク質サブユニットの全てがTL1により切断されることが明らかになった。
【0116】
実施例11.パイロットプラントTL1加水分解物の溶解度および粘度
実施例10で調製したパイロットプラントTL1加水分解物および対照サンプルの溶解度も調べた。一定分量の各サンプルをpH2、pH3、pH4、pH5、pH6、pH7、pH8、およびpH9に調整し、本質的に実施例7に記載されるように可溶性固形分指数(SSI)を決定した。図6に示されるように、TL1加水分解物サンプルの全てがpH6以上のpHレベルでほぼ100%可溶性であったが、加水分解対照サンプルはpH6でわずか約40%の可溶性であった。さらに、加水分解度が増大すると、等電点(すなわち、pH4〜5付近)における溶解度も増大する。
【0117】
TL1加水分解物のいくつかおよび対照サンプルの粘度を種々の割合の固形分(すなわち、12〜20%の固形分)において決定した。小型のWaring(登録商標)(Waring Laboratory(Torrington、CT))ブレンダーを用いて、70グラムの全スラリー含量でサンプルを分散させた。発泡を低減するために最少のせん断を用いてサンプルを合計4分間ブレンドした。次に、小型サンプルアダプターおよびスピンドル18を有するBrookfield粘度計を用いて室温でサンプルを分析した。各サンプルを2通り調製及び分析した。図7は、種々のパラメータに対して粘度測定値をセンチポアズ(cps)でプロットする。単離品は10,000cpsよりも大きく、これは、12%固形分ではBrookfieldのためには粘性過ぎた。この分析によって、加水分解度が増大すると粘度が低下し、固形分パーセントが増大すると粘度が増大することが明らかになった。図8は、粘度および溶解度データを要約する。溶解度は、可溶性固形分指数(SSI)および窒素可溶性指数(nitrogen soluble index)(NSI、全窒素の関数としての水溶性窒素のパーセントである)で表される。図8に示されるように、加水分解度が増大すると粘度は低下し、溶解度は増大する。
【0118】
TL1加水分解物のいくつかにおいて存在する風味揮発性物質の量を、非加水分解単離大豆タンパク質中に存在する量と比較した。風味揮発性物質は、標準的なGC技法を用いて決定した。非加水分解単離大豆タンパク質と比較してTL1加水分解物中では、ヘキサナール、ヘプタナール、ペンタナール、3−オクテン−2−オン、および1−オクテン−3−オールのレベルは低下した(図9Aおよび9B)。
【0119】
実施例12.パイロットプラントTL1加水分解物の官能分析
本質的に実施例6に記載されるSQS法を用いて、実施例10で調製したパイロットプラントTL1加水分解物の風味プロファイルを分析した。11または12人の訓練された査定者集団が、対照サンプル(すなわち、非加水分解単離大豆タンパク質)と比較して加水分解物を評定した。表12は平均SQSスコアを示し、図10A〜Dは診断スコアのプロットを示す。一般に、TL1加水分解物は対照サンプルと比べてわずかに少ない穀類および大豆/豆類特性と、低下した粘度とを有したが、特により高い加水分解度(%DH)では、増大した苦味特性を有した。加水分解対照サンプル(すなわち、サンプル5−3)はわずかに低下した穀類特性を有したが、中程度に増大した苦味および渋味特性を有した。従って、TL1加水分解物は一般に、加水分解対照サンプルよりも苦くないと評定された。
【0120】
【0121】
図11はTL1加水分解物の官能分析の要約を示し、重要な官能特性が加水分解度の関数としてプロットされている。加水分解度が増大すると加水分解物の全体の官能スコアは低下し、加水分解度が増大すると苦味スコアが増大する。約2%DH未満を有する加水分解物は最良の風味を有し、苦味感が最も少なかったと思われる。
【0122】
実施例13.大豆のTL1加水分解物中のペプチド断片の分析
Q−STAR(登録商標)XL MS(Applied Biosystems Inc.(ABI)(Foster City、CA))およびLCQ−Deca MS(ThermoFinnigan(Hertfordshire、Great Britain))を用いて、LC−MS分析によって種々の加水分解度を有する単離大豆タンパク質のTL1加水分解物中のペプチドを同定した。
【0123】
およそ(0.5〜2.0mg)の各サンプルを0.5mLの50mMの重炭酸アンモニウム中に溶解した。データ依存性の収集を用いるLC−MS/MS分析のために内径75umのカラムに5μLを注入した(LC流速は180nL/分であった)。C18 PepMap100カラム(Dionex(UK))を用いるLC Packings UltimateナノLC/C18 PepMap100カラム(Dionex)を用いるEksigent 2DナノLCによって、ナノLCを実施した。溶出プロファイルは表13に示される。溶媒AはMilliQ水中の5%のアセトニトリル、0.1%のギ酸であり、溶媒BはMilliQ水中の95%のアセトニトリル、0.075%のギ酸であった)。
【0124】
【0125】
ナノエレクトロスプレー源(Protana XYZマニピュレータ)を備えたABI QSTAR(登録商標)XL hybrid QTOF MS/MS質量分析計(Applied Biosystems(Foster City、CA))を用いてサンプル分析を進めた。2.5kVでホウケイ酸塩(borosilicate)ナノエレクトロスプレーニードルからポジティブモードのナノエレクトロスプレーを発生した。製造業者からの標準物を用いて機器のm/z応答を毎日較正した。以下のパラメータを有するAnalyst QSソフトウェア中の情報依存性データ収集(IDA)特徴を用いて、TOF質量スペクトルおよび生成イオンスペクトルを取得した。TOF MSおよびMS/MSの質量範囲はそれぞれ、m/z300〜2000および70〜2000であった。毎秒、TOF MS前駆体イオンスペクトルを累積した後、3つの生成イオンスペクトルをそれぞれ3秒間累積した。TOF MSからMS/MSへの切換えは、ペプチドの質量範囲(m/z 300〜2000)、前駆体の荷電状態(2〜4)およびイオン強度(>50カウント)によって始動させた。DP、DP2、およびFPの設定はそれぞれ60、10、および230であり、回転衝突エネルギーを使用した。
【0126】
Analyst QSソフトウェア(Applied Biosystems)を用いてペプチドエレクトロスプレータンデム質量スペクトルを処理した。以下の制約を有するMASCOTバージョン1.9を用いてNCBIまたはSwiss−Protなどの標準データベースを検索することによってペプチドを同定した:どの酵素も1つまでの失敗した切断部位を持たず、MSおよびMS/MS断片イオンの質量許容差はそれぞれ0.8/2.0および0.8Daである。選択される前駆体イオンの電荷状態は1〜3であった。
【0127】
LCQ−Deca MSを用いるLC−MS分析のために、1)ガラスバイアル中で2mgの各TL1加水分解物を含有する一定分量を0.1%のギ酸(1mL)と混合し、1〜2分間分間ボルテックスし、そしてマイクロ遠心分離機において混合物を13,000rpmで5分間遠心分離することによって、あるいは2)マイクロ遠心管内で3mgの各TL1加水分解物を含有する一定分量および0.1%のギ酸(300uL)を混合し、混合物を1〜2分間ボルテックスすることによって、サンプルを調製した。次に、ペプチドの単離のために予め清浄にしたC18チップ(Glygen Corp.(Columbia、MD))に全混合物を移した。60%アセトニトリル中の0.1%のギ酸(300μL)で溶出し、0.1%のギ酸(600μL)で平衡にすることによってC18チップを清浄にした。0.1%のギ酸で溶出した材料画分を廃棄し、ペプチドを60%アセトニトリル中0.1%のギ酸(600μL)で溶出させた。Genevacエバポレータにおいて300℃で10分間溶媒混合物を蒸発させることによって、ペプチド溶液の全体積を200μLに減らした。本質的に実施例3に記載されるようにLC−MS分析を実施した。
【0128】
表14は、大豆タンパク質のTL1加水分解物中で同定されたペプチドの全てを示す。
【0129】
【0130】
(表14続き)
【0131】
(表14続き)
【0132】
(表14続き)
【0133】
実施例14.他のエンドペプチダーゼによる大豆タンパク質の加水分解
種々のエンドペプチダーゼ(例えば、SP3、フザリウム・ソラニ(Fusarium solani)からのトリプシン様プロテアーゼ(TL5、配列番号2)、フザリウムcf.ソラニ(Fusarium cf. solani)からのトリプシン様プロテアーゼ(TL6、配列番号3)、ブタトリプシン、またはウシトリプシン)によって単離大豆タンパク質を処理し、別の源からのトリプシンまたはトリプシン様プロテアーゼが大豆タンパク質を加水分解するために使用できるかどうかを決定した。
【0134】
単離大豆タンパク質(すなわち、SUPRO(登録商標)500E)の8%スラリーを調製し、pH8に調整し、100mgプロテアーゼ/kg大豆タンパク質の最終濃度のためにエンドペプチダーゼの1つと混合した。プロテアーゼを含有しない対照サンプルも含まれた。スラリーを混合しながら水浴中50℃で2時間インキュベートし、次にプロテアーゼを熱不活性化した(80℃で30分間)。5%大豆タンパク質の最終濃度のために各サンプルに脱イオン水を添加した。
【0135】
加水分解度を評価するために、4〜20%Tris−グリシンゲル(Novex Inc.(Wadsworth、OH))において、一定分量の各サンプルをSDS−PAGEにより分解した。図12に示されるように、TL1、SP3、TL5、およびTL6は、大豆タンパク質をより小さいポリペプチド断片に加水分解したが、ブタトリプシンまたはウシトリプシンのいずれかで処理した後の大豆タンパク質加水分解は少ししかないかまたは全くなかった(レーン7および8を参照)。ブタおよびウシトリプシンが大豆タンパク質を切断できないことは、37℃および50℃(pH8)の両方で観察された。
【0136】
実施例15.Bowman−Birk阻害剤によるトリプシン様プロテアーゼの阻害
大豆は、大豆材料の製造中に加熱処理に持ちこたえる活性プロテアーゼ阻害剤を含有するので、ブタおよびウシトリプシンが大豆タンパク質材料を加水分解できなかったことはあり得る。この仮説を試験するために、プロテアーゼを種々の濃度のBowman−Birk阻害剤の市販の調製物と共にインキュベートし、残留酵素活性を測定した。
【0137】
アッセイ緩衝液(0.1MのTris、0.02%のBrij 35、pH8.0)によりプロテアーゼを0.001mg/mlに希釈し、マイクロタイタープレートのウェル内で種々の濃度のBowman−Birk阻害剤(Cat# T−9777、Sigma−Aldrich)と混合した。攪拌しながらプレートを室温で1時間インキュベートした。0.6mg/mlの基質、Boc−Val−Leu−Gly−Arg−p−ニトロアニリド(L−1205、Bachem Biosciences(Prussia、PA))を添加することによって、残留活性を測定した。室温で10秒ごとに3分間、405nmにおいて吸光度を測定した。405nmで測定された吸光度の初期傾斜から活性を計算した。残留活性は、阻害剤のないウェル内の活性に対する、阻害剤を有するウェル内の活性として計算した。
【0138】
表15に示されるように、微生物プロテアーゼよりも低い濃度のBowman−Birk阻害剤によってブタおよびウシトリプシンは阻害された。従って、大豆材料は、動物由来のトリプシンの活性を阻害する化合物を含有すると思われる。
【0139】
【0140】
実施例16.トリプシン様プロテアーゼのトリプシン比および同定
トリプシン様活性を有する酵素を同定するためにアッセイを開発した。このために、一般式Suc−Ala−Ala−Pro−Xxx−pNA(式中、Xxxは20種の天然アミノ酸残基のうちの1つの3文字の略語であり、pNAはパラ−ニトロアニリドである)(Bachem Biosciences(King of Prussia、PA))を有する色素生産性の基質を用いてトリプシン様活性を測定した。エンドペプチダーゼがXxxのカルボキシル末端側でペプチド結合を切断したら、パラ−ニトロアニリドが放出され、黄色が生じ、本質的に実施例15に記載されるように測定した。XxxがAla、Arg、Asp、Glu、Ile、Leu、Lys、Met、PheまたはValである10種のpNA基質を使用した。
【0141】
以下のエンドペプチダーゼを試験した:ALCALASE(登録商標)、SP3、TL1、およびブタトリプシン。クロマトグラフィにより全ての酵素を高純度に精製した。すなわち、クーマシー染色SDS−ポリアクリルアミドゲルにおいて各ペプチダーゼに対してただ1つのバンドが見られた。活性がSuc−Ala−Ala−Pro−Xxx−pNA基質に関してpH最適値における活性の少なくとも半分であるpH値において、各酵素の活性を測定した。これらの基質に関して、ALCのpH最適値はpH9であり、他の3つのペプチダーゼのpH最適値はpH10であった。アッセイ緩衝液は、100mMのコハク酸、100mMのHEPES、100mMのCHES、100mMのCABS、1mMのCaCl2、150mMのKCl、および0.01%のTriton X−100、pH9.0であった。20μLの各ペプチダーゼ希釈液(0.01%のTriton X−100中に希釈)をマイクロタイタープレートの10個のウェルに入れた。各ウェルに10種のpNA基質の1つを200μL添加する(50mgを1.0mlのDMSO中に溶解し、さらにアッセイ緩衝液で90倍に希釈した)ことによってアッセイを開始した。ペプチダーゼ活性の尺度としてOD405の初期増加を監視した。4分の測定時間内に直線的なプロットが達成されなければ、ペプチダーゼをさらに希釈してアッセイを繰り返した。
【0142】
トリプシン比は、ArgまたはLysのいずれかを含有する基質による最大活性を8つの他の基質のいずれかによる最大活性で割って計算した。トリプシン様エンドペプチダーゼは、100よりも大きいトリプシン比を有するエンドペプチダーゼと定義した。
【0143】
活性レベルは、最高活性およびトリプシン比を有するSuc−Ala−Ala−Pro−Xxx−pNA基質の活性に対する活性として表16に示される。アッセイはpH9で実施され、試験ペプチダーゼのうちの3つはpH9よりも高いpH最適値を有するが、pH9におけるこれらの3つのペプチダーゼの活性は、pH最適値における活性の半分よりも大きかった。従って、この分析によって、アクロモバクター・リティカス(Achromobacter lyticus)プロテアーゼ(SP3)、フザリウム(Fusarium)トリプシン様プロテアーゼ(TL1)およびブタトリプシンはトリプシン様エンドペプチダーゼであるが、ALCALASE(登録商標)(ALC)はトリプシン様エンドペプチダーゼでないことが明らかになった。
【0144】
【0145】
実施例17.大豆および乳製品タンパク質の組み合わせから得られるTL1加水分解物
単離大豆タンパク質および単離乳製品タンパク質の組み合わせを、組み合わせの機能特性および官能特性を評価できるように、TL1によって種々の加水分解度に加水分解した。
【0146】
単離大豆タンパク質(SUPRO(登録商標)500E)およびカゼインナトリウム塩(Alanate(登録商標180、NZMP Inc.(Wellington、New Zealand))の50/50混合物を穏やかに混合しながら水中に分散させることによって、大豆および乳製品タンパク質の5%スラリーを製造した。混合物を80℃に加熱して、5分間保持し、50℃に冷却し、そして1MのNaOHを用いてpHを8.0に調整した。一定分量のスラリーを中位に混合しながら50℃に加熱し、様々な量のTL1(無処理のタンパク質1kgあたり約17〜600mgの酵素タンパク質)を添加して、0、2%DH、4%DH、および6%DHの目標の%DH値を達成した。50℃で所望の加水分解度を生じるための時間(約60分間)インキュベートした後、サンプルを90℃に3分間加熱して、酵素を不活性化した。サンプルを氷上で冷やし、4℃で貯蔵した。TNBSを用いて加水分解度(%DH)を決定した(実施例1に記載されるように)。
【0147】
2つの大豆/乳製品TL1加水分解物(すなわち、4.3%DHおよび6.7%DH)において溶解度に対するpHの効果を試験した。それぞれの一定分量をpH5、pH6、pH7、またはpH8に調整し、サンプルを500×gで10分間遠心分離した。遠心分離の前の溶液中の固体物質の量を、遠心分離の後の溶液中の固体物質の量と比較して、可溶性固形分指数(SSI)を得た。pHの関数としての%可溶性固形分は図13に示される。溶液は両方共、約pH5のpHレベル(すなわち、大豆タンパク質の等電点付近)において低下された溶解度を有した。しかしながら、大豆/乳製品TL1加水分解物は両方共、約pH6.0以上のレベルにおいて優れた溶解度を有した。
【0148】
実施例18.大豆/乳製品のTL1加水分解物中のペプチド断片の分析
実施例17で調製した大豆/乳製品TL1加水分解物中のペプチド断片は、上記で詳述した方法(実施例3、4、および13を参照)を用いて、液体クロマトグラフィ質量分析(LC−MS)によって同定した。この研究で同定したペプチド断片の配列は表17に記載される。4つの新しい大豆由来のペプチドを同定した(すなわち、配列番号174、175、176、および177)。乳製品由来の配列は配列番号178〜197である。
【0149】
【0150】
(表17続き)
【0151】
実施例19.他のタンパク質材料から得られるTL1加水分解物
様々な他の植物由来のタンパク質材料をTL1で処理して、さらなる加水分解物を生成した。これらの加水分解物は、小さい規模(すなわち、ベンチトップ)で製造した。このために、キャノーラタンパク質単離物、小麦グルテン、またはコーン胚芽タンパク質のいずれかの5%スラリーを、80℃よりも高い温度で5分間変性させた。タンパク質スラリーを、水酸化ナトリウム溶液または水酸化カリウム溶液などのアルカリ水溶液またはアルカリ土類水溶液で約pH8.0〜8.5に中和した。次に、タンパク質材料を加水分解するために十分な温度および時間で、タンパク質スラリーのそれぞれをTL1酵素で処理した。タンパク質カード重量を基準として0.01%〜0.08%の酵素タンパク質の濃度でTL1酵素をタンパク質スラリーに添加した。約50℃の温度で50分〜70分の間、酵素をタンパク質カード材料と接触させて、タンパク質を加水分解した。加水分解大豆タンパク質材料を、酵素を有効に不活性化する温度に加熱することによって加水分解反応を終了させた。
【0152】
表18は、加水分解物の典型的なセットのための反応パラメータを示す。TL1酵素の活性は、タンパク質100kgあたりに存在するNH2のモル数を決定することによって測定される%DHに基づいて測定した。増大したTNBS値は、酵素活性を実証する。活性は各タンパク質のために最適化されないが、酵素活性はタンパク質材料の懸濁または溶解度によって影響を受けるように見えた。
【0153】
【0154】
標準的な手順を用いてSDS PAGEによってTL1キャノーラ、コーン、または小麦加水分解物および非加水分解対照サンプルを分析した。図14はゲルの画像を示す。この分析によって、各タンパク質材料の主要なタンパク質サブユニットの全てがTL1によって切断されることが明らかになった。
【0155】
上記で詳述した手順を用いてキャノーラ、コーン、または小麦TL1加水分解物中の代表的なペプチドを同定した。表19、20、および21はそれぞれ、キャノーラ、コーン、および小麦のTL1加水分解物中で同定された代表的なペプチドを示す。
【0156】
【0157】
(表19続き)
【0158】
【0159】
【0160】
実施例20.大豆加水分解物および無処理の乳製品タンパク質の組み合わせの官能分析
大豆のTL1加水分解物を無処理の乳製品タンパク質(すなわち、カゼイン塩または乳清)と混ぜ合わせた。上記の実施例6で詳述されたSQS法を用いて、大豆加水分解物および無処理の乳製品タンパク質のこれらの組み合わせの官能プロファイルを、非加水分解(無処理の)大豆および無処理の乳製品タンパク質の組み合わせと比較した。約2.1%DHの加水分解度を有するTL1大豆加水分解物を5%スラリーに希釈した。非加水分解大豆タンパク質も5%スラリーに希釈した。1回の試行のためにTL1加水分解物をカゼインナトリウム塩(1:1)と混合し、カゼインナトリウム塩と混合した非加水分解大豆タンパク質(1:1)である対照サンプルに対して査定した。第2の試行では、TL1加水分解物を乳製品の甘味乳清(4:1)と混合し、乳製品の甘味乳清と混合した非加水分解大豆タンパク質(4:1)である対照サンプルに対して査定した。
【0161】
表22は、各サンプルの平均SQSスコアおよび診断評定を示す。TL1加水分解物を含む組み合わせは、一般に、対照サンプルとはわずかに異なると評定された。診断スコアは、TL1加水分解物および無処理の乳製品タンパク質の組み合わせが、対照サンプル(すなわち、非加水分解大豆および無処理の乳製品タンパク質の組み合わせ)と比べて改善された官能特性を有することを示した。
【0162】
【0163】
実施例21.タンパク質加水分解物を含む飲料の分析
種々の加水分解度を有するTL1単離大豆タンパク質加水分解物を用いて、いくつかのプロトタイプのそのまま飲める(RTD)中性飲料および乾燥ブレンド飲料ミックスを調製した。飲料には、豆乳モデル飲料(すなわち、8オンスの1回分あたり8.5gのタンパク質を有する、4%の大豆タンパク質単離物を含有する風味付けされていない低脂肪豆乳飲料)、組み合わせモデル飲料(すなわち、8オンスの1回分あたり8gのタンパク質を有する風味付けされていない飲料、ここで、全タンパク質の半分は大豆からのものであり、タンパク質のもう半分はスキムミルクからのものである)、および乾燥ブレンドモデル飲料が含まれた。RTD飲料の物理特性および官能特性を、種々の源の非加水分解大豆タンパク質および/または乳製品タンパク質で調製した飲料の特性と比較した。
【0164】
表23は、豆乳モデル飲料の配合を示す。豆乳モデル飲料を調製するために、クエン酸塩を水中に溶解し、大豆タンパク質を添加し、混合速度を上昇させて、タンパク質を水中に分散させた。タンパク質が十分に分散されたら、スラリー温度を77℃(170°F)に上昇させて混合速度を低下させ、スラリーを10分間混合した。マルトデキストリン、糖および安定剤を予め一緒にブレンドし、タンパク質スラリーに添加した。スラリーを低速で5分間混合した。ヒマワリ油をスラリーに添加し、混合物が均質になるまで低速で混合を継続した(約3分間)。45%の水酸化カリウムを用いてスラリーのpHを約7.0〜7.2に調整した。スラリーを500psi(第2段階)および2500psi(第1段階)で均質にした。超高温(UHT)処理によってスラリーを141℃(286°F)で6秒間低温殺菌した。混合物を31℃(88°F)に冷却し、滅菌ボトル内に詰めた。製品を冷蔵温度で貯蔵した。
【0165】
【0166】
表24は組み合わせモデル飲料の配合を示す。組み合わせモデル飲料を調製するために、穏やかに混合しながらクエン酸塩を水中に溶解した。大豆タンパク質を添加し、混合速度を上昇させて、タンパク質を水中に分散させた。タンパク質が十分に分散されたら、スラリー温度を77℃(170°F)に上昇させて混合速度を低下させ、スラリーを10分間混合した。マルトデキストリン、糖、ビタミン/ミネラルプレミックス、リン酸マグネシウム、セルロース、および安定剤を予め一緒にブレンドし、タンパク質スラリーに添加した。スラリーを低速で5分間混合した。ヒマワリ油をスラリーに添加し、混合物が均質になるまで低速で混合を継続した(約3分間)。45%の水酸化カリウムまたは50%のクエン酸を用いてスラリーのpHを約6.9〜7.1に調整した。スキムミルクを72℃(162°F)にゆっくり加熱し、加熱したスキムミルクに大豆タンパク質スラリーを添加し、混合物を3分間ゆっくり混合した。混合物を500psi(第2段階)および2500psi(第1段階)で均質にした。超高温(UHT)処理によって混合物を141℃(286°F)で6秒間低温殺菌した。混合物を31℃(88°F)に冷却し、滅菌ボトル内に詰めた。製品を冷蔵温度で貯蔵した。
【0167】
【0168】
乾燥ブレンドモデル飲料の配合は表25に示される。飲料ミックスを製造するために、大豆タンパク質およびココア粉末をふるい、中間速度で15分間、他の原料全てと混合した。乾燥粉末は、消毒した容器内に貯蔵した。
【0169】
【0170】
飲料の粘度を測定するために、豆乳モデルおよび組み合わせモデル飲料を均一の分散液が達成されるまで振とうさせ、ブレンダーを用いて1回分のサイズの乾燥ブレンドモデル飲料の乾燥粉末を、低速で30〜40秒間または完全に分散するまで、特定の量の水中に完全に分散させた。各サンプルをすぐに180mlのビーカー(no.14070、Kimax(登録商標)、USA)内に注ぎ、ビーカーの湾曲部分の底に達するまで充満させた。目に見える発泡は測定前に除去した。固定時間が経過したら、スピンドル#1を有するBrookfield粘度計(モデルDV−II+)(Brookfield Engineering Laboratories,Inc.(Middleboro、MA))およびRPM60を用いて1分間、粘度をセンチポアズ(cP)で測定した(25〜30℃)。
【0171】
豆乳モデル飲料の安定性を査定するために、UHT処理の後、250mlの無菌の四角のメディアボトル内にサンプルを収集した。ボトルを室温(25℃)で4週間貯蔵(平静に)した。次に、ボトルを平坦な表面に置き、定規(1mm増分で最低100mm)を用いて沈降レベルを測定した。以下の式:(沈降(mm)/全液体体積(mm))×100を用いて、沈降パーセントを得た。ボトルの底に、そしてサンプルボトルの側面に接して置いたときに定規の端部の下側に沈降層があれば、これを微量の沈降として記録した。
【0172】
表26および27はそれぞれ、豆乳モデルおよび組み合わせモデル飲料の粘度および安定性を示す。豆乳モデル飲料の粘度測定は、非加水分解大豆対照サンプルと同等であった。組み合わせモデル飲料の粘度測定は大豆を含有する対照サンプルの範囲内であり、ミルク対照サンプルよりもわずかに低かった。豆乳モデルおよび組み合わせモデル飲料は全て良好な安定性を有した。これらのデータは、種々の加水分解度を有するTL1単離大豆タンパク質加水分解物を用いることによってモデル飲料の機能特性が悪影響を受けないことを明らかにした。
【0173】
【0174】
【0175】
9点ヘドニック(Hedonic)スケールを用いて様々なモデル飲料の官能および風味特性の消費者テストを査定した。非常に嫌いに対する1から非常に好きに対する9までのスケールで飲料をランク付けした。5は好きでも嫌いでもないことを示す。図15は、豆乳モデル飲料、すなわち2つの対照サンプルおよびTL1の2.2%DHサンプルの強制ランキングを示す。TL1加水分解物サンプルは、「全体的な好み」、「風味の好み」および「あと味の好み」に関して2つの対照サンプルよりも著しく高いと評定された。さらに、強いてランク付けを要求すると、消費者はセットの中で好ましいサンプルとしてTL1の2.2%DHサンプルをランク付けした。図16は、組み合わせモデル飲料、すなわち100%スキムミルク対照、50%非加水分解大豆/50%スキムミルク、および50%TL1の2.2%DH大豆加水分解物/50%スキムミルクの強制ランキングを示す。TL1加水分解物含有サンプルは、ほぼ全ての好みの特性において非加水分解大豆含有サンプルよりも著しく高いとランク付けされ、全ての好みの特性(すなわち、全体的な好み、色の好み、風味の好み、口あたりの好み、濃さの好み、およびあと味の好み)に関して100%スキムミルク対照サンプルと同等であると採点された。
【0176】
また、豆乳モデルおよび組み合わせモデル飲料ならびにその対応するタンパク質スラリーもSQS法を用いて分析した(実施例6に詳述されるように)。表28は、SQSスコアおよび診断評定を示す。表に示されるように、各試験サンプルを対照サンプルと比較した。一般に、TL1加水分解物を含有するサンプルは、対照サンプルと比べて低下した大豆/豆類、穀類、およびボール紙/木質の官能特性を有した。
【0177】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2007年4月16日に出願された米国仮特許出願第60/911,935号、および2008年4月15日に出願された米国非仮特許出願第12/103,514号(参照によってこれらの全体が本明細書に援用される)の優先権を主張する。
【0002】
本発明は、改善された官能特性および物理特性を有するタンパク質加水分解組成物、タンパク質加水分解組成物の製造方法、およびタンパク質加水分解組成物を含む食品に関する。
【背景技術】
【0003】
肥満および肥満に関連する疾患の割合は、米国および世界中で上昇している。根底にある原因は1つではないが、寄与する因子は、多くの人々の速いペースで追い立てられているライフスタイル、およびそれに伴うファーストフードの消費であり得る。ほとんどのファーストフードは脂肪および/または糖が多い傾向にある。従って、「持ち運んで(on the go)」食べたり飲んだりすることができ、栄養があって容易に入手可能な食品が必要とされている。この食品は美味しいだけでなく、栄養的に十分でなければならない。すなわち、この食品は脂肪が少なく、タンパク質が多く、そしてビタミンおよび酸化防止剤が多くなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
栄養的に十分であり、容易に消費され得る食品の1つのタイプは、液体タンパク質含有飲料である。タンパク質は、大豆または様々な他のタンパク質源に由来し得る。大豆は優れたタンパク質源であるが、人によっては不快または口に合わないと感じる「草のような」または「豆のような」風味を有する傾向がある。従って、必要とされるのは、「大豆」風味が低減された単離大豆タンパク質製品である。さらに、液体飲料に添加される単離大豆タンパク質製品は理想的には実質的に可溶性でなければならず、時には実質的に光を透過させなければならない。さらに、単離大豆タンパク質製品は、所望の液体飲料のpHにおいて安定でなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
従って、本発明の多くの態様の1つは、タンパク質加水分解組成物の提供である。タンパク質加水分解組成物は、各カルボキシル末端に主としてアルギニン残基またはリジン残基のいずれかを有するポリペプチド断片の混合物を含む。さらに、タンパク質加水分解組成物は、約6.0よりも高いpHにおいて少なくとも約0.2%DHの加水分解度および少なくとも約80%の可溶性固形分指数(soluble solids index)(SSI)を有する。
【0006】
本発明の別の態様は、タンパク質加水分解組成物の調製方法を提供する。この方法は、タンパク質材料を、アルギニン残基またはリジン残基のカルボキシル末端側でタンパク質材料のペプチド結合を特異的に切断するエンドペプチダーゼと接触させて、タンパク質加水分解組成物を生じさせることを含む。タンパク質加水分解組成物は、約6.0よりも高いpHにおいて少なくとも約0.2%DHの加水分解度および少なくとも約80%の可溶性固形分指数を有する。
【0007】
本発明のさらに別の態様は、食用材料およびタンパク質加水分解組成物を含む食品を包含する。タンパク質加水分解組成物は、各カルボキシル末端に主としてアルギニン残基またはリジン残基のいずれかを有するポリペプチド断片の混合物を含む。さらに、組成物は、約6.0よりも高いpHにおいて少なくとも約0.2%DHの加水分解度および少なくとも約80%の可溶性固形分指数を有する。
【0008】
本発明のその他の態様および特徴は、以下でさらに詳細に説明される。
【0009】
カラー図面の参照
本出願はカラーで作成された少なくとも1枚の写真を含有する。カラー写真付きの本特許出願公報のコピーは、要求および必要な手数料の支払いに応じて特許庁により提供されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】フザリウム(Fusarium)トリプシン様エンドペプチダーゼ(TL1)による単離大豆タンパク質の加水分解を示す。図示されるのは、クーマシー染色されたSDS−ポリアクリルアミドゲルの画像である。レーン3(L3)は、非加水分解単離大豆タンパク質(SUPRO(登録商標)500E)を含有する。レーン4(L4)、レーン5(L5)、レーン6(L6)、レーン7(L7)、およびレーン8(L8)はそれぞれ、0.3%DH、2.2%DH、3.1%DH、4.0%DH、および5.0%DHの加水分解度(DH)を有するTL1加水分解物を含有する。レーン9(L9)は、ゲルの右側に示されるキロダルトン(kDa)の大きさを有するタンパク質MW標準を含有する。
【図2】訓練された査定者により評価されたときの5.0%固形分におけるTL1加水分解物およびALCALASE(登録商標)加水分解物の診断スコアを示す。各加水分解物の同一性および加水分解度(%DH)は各プロットの下に示される。正のスコアは加水分解物が対照サンプルよりも多くの官能特性を有したことを示し、負のスコアは加水分解物が対照サンプルよりも少ない官能特性を有したことを示す。対照サンプルは非加水分解単離大豆タンパク質であった。(A)は、約2.5%DH未満の加水分解度を有するTL1およびALCALASE(登録商標)(ALC)加水分解物のスコアを示す。(B)は、3%DHよりも大きい加水分解度を有するTL1およびALCALASE(登録商標)(ALC)加水分解物のスコアを示す。
【図3】ALCALASE(登録商標)およびTL1加水分解物の溶解度を比較する。それぞれの酵素および加水分解度(%DH)は、各管の下に示される。(A)は、4℃で2週間pH7.0において貯蔵されたALCALASE(登録商標)(ALC)およびTL1加水分解物(2.5%固形分)の管を示す。(B)は、4℃で3週間pH8.2において貯蔵されたTL1およびALCALASE(登録商標)(ALC)加水分解物(2.5%固形分)を示す。
【図4】TL1およびALCALASE(登録商標)加水分解物の溶解度プロットを示す。各加水分解物(2.5%固形分)の可溶性固形分のパーセント(すなわち、可溶性固形分指数)は、pHの関数としてプロットされる。各加水分解物の同一性および加水分解度(%DH)は、各プロットの下に示される。(A)は、TL1加水分解物の溶解度曲線を示す。(B)は、ALCALASE(登録商標)(ALC)加水分解物の溶解度曲線を示す。(C)は、選択されたTL1およびALCALASE(登録商標)(ALC)加水分解物の溶解度の直接比較を示す。
【図5】パイロットプラント規模におけるTL1による大豆タンパク質材料の加水分解を示す。図示されるのはクーマシー染色されたSDS−ポリアクリルアミドゲルの画像であり、TL1加水分解物および対照サンプルを分解した。レーン1(L1)およびレーン3(L3)は非加水分解大豆タンパク質を含有し、レーン2(L2)は2.7%DHのTL1加水分解物を含有し、レーン4(L4)は加水分解対照サンプル(酵素の混合物により2.8%DHまで加水分解されたSUPRO(登録商標)XT219)を含有し、レーン5〜11(L5〜L11)はそれぞれ、1.3%DH、2.0%DH、3.8%DH、0.3%DH、0.9%DH、1.6%DH、および5.2%DHを有するTL1加水分解物を含有する。レーン12(L12)は、ゲルの右側に示されるキロダルトン(kDa)の大きさを有する分子量標準を含有する。
【図6】パイロットプラントTL1加水分解物および対照サンプルの溶解度プロットを示す。各加水分解物の加水分解度(%DH)はプロットの下に示される。
【図7】パイロットプラントTL1加水分解物および対照サンプルの粘度のプロットを示す。各加水分解物の加水分解度(%DH)は、プロットの下に示される。
【図8】パイロットプラントTL1加水分解物の加水分解度の関数として、粘度および溶解度[すなわち、可溶性固形分指数(SSI)および窒素可溶性指数(NSI)]のプロットを示す。
【図9】対照サンプルと比較してTL1加水分解物中の風味揮発性物質のレベルが低いことを示す。(A)は、対照サンプルおよび種々の加水分解度(%DH)を有するTL1加水分解物中の全活性揮発性物質およびヘキサナールのレベルを示す。(B)は、対照サンプルおよび種々の加水分解度(%DH)を有するTL1加水分解物中の表示される風味揮発性物質のレベルを示す。
【図10】パイロットプラントTL1加水分解物および対照サンプルの診断スコアのプロットを示す。対照サンプルは非加水分解単離大豆タンパク質であった。正のスコアは加水分解物が対照サンプルよりも多くの官能特性を有したことを示し、負のスコアは加水分解物が対照サンプルよりも少ない官能特性を有したことを示す。(A)は対照、0.3%DH、および1.6%DHサンプルのスコアを示す。(B)は対照、1.3%DH、および5.2%DHサンプルのスコアを示す。(C)は対照、2.7%DH、および0.9%DHサンプルのスコアを示す。(D)は対照、2.0%DH、および3.8%DHサンプルのスコアを示す。
【図11】TL1加水分解物の官能スコアの要約したプロットを加水分解度(DH)の関数として示す。全体的な好みのスコアが上に示され、苦味のスコアが下に示される。ひし形は予測スコアを示し、正方形は実際のスコアを示す。
【図12】いくつかの異なるトリプシン様プロテアーゼによる単離大豆タンパク質の加水分解を示す。提示されるのは、クーマシー染色されたSDSポリアクリルアミドゲルの画像であり、非加水分解大豆タンパク質および酵素処理した大豆タンパク質サンプルを分解した。レーン1は、ゲルの左側に示される大きさを有する分子量マーカーを含有する。レーン3および9は未処理の単離大豆タンパク質を含有する。レーン2およびレーン4〜8はそれぞれ、TL1、SP3、TL5、TL6、ブタトリプシン、およびウシトリプシンで処理した大豆を含有する。
【図13】大豆および乳製品タンパク質の組み合わせのTL1加水分解物の溶解度をpHの関数として示す。
【図14】他の植物タンパク質材料のTL1による加水分解を示す。提示されるのは、クーマシー染色されたSDS−ポリアクリルアミドゲルの画像であり、未処理および処理済タンパク質サンプルを分解した。レーン1(L1)は分子量マーカー(ゲルの左側にkDaで示される)を含有する。レーン2(L2)、レーン4(L4)、およびレーン6(L6)はそれぞれ、加水分解していないコーン胚芽、キャノーラおよび小麦胚芽のサンプルを含有する。レーン3(L3)、レーン5(L5)、およびレーン7(L7)はそれぞれ、コーン胚芽、キャノーラ、および小麦胚芽のTL1加水分解物を含有する。
【図15】豆乳モデル飲料の平均ヘドニックスコア(Hedonic score)を示す。スケールは、1=非常に嫌い、5=どちらでもない、9=非常に好きであった。後に異なる文字が続く同じ列内の平均値は、95%の信頼度で有意に異なる。
【図16】組み合わせモデル飲料の平均ヘドニックスコアを示す。スケールは、1=非常に嫌い、5=どちらでもない、9=非常に好きであった。後に異なる文字が続く同じ列内の平均値は、95%の信頼度で有意に異なる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、タンパク質加水分解組成物、タンパク質加水分解組成物の製造方法、およびタンパク質加水分解組成物を含む食品を提供する。実施例において説明されるように、アルギニン残基またはリジン残基のカルボキシル末端側でタンパク質材料を特異的に切断するエンドペプチダーゼによるタンパク質材料の消化は、改善された物理特性、風味、および官能特性を有するポリペプチド断片を含む組成物をもたらすことが発見された。改善された物理特性、風味、および官能特性のために、本発明のタンパク質加水分解組成物は、様々な食品において有利に使用することができる。
【0012】
(I)タンパク質加水分解物の調製方法
本発明の一態様は、各カルボキシル末端に主としてアルギニン残基またはリジン残基のいずれかを有するポリペプチド断片の混合物を含むタンパク質加水分解物の調製方法を提供する。本方法は、タンパク質材料を、アルギニン残基またはリジン残基のカルボキシル末端側でタンパク質材料のペプチド結合を特異的に切断するエンドペプチダーゼと接触させて、タンパク質加水分解物を生じさせることを含む。タンパク質加水分解物を調製するために使用されるタンパク質材料またはタンパク質材料の組み合わせは異なり得るであろう。適切なタンパク質材料の例は以下に詳述される。
【0013】
(a)大豆タンパク質材料
いくつかの実施形態では、タンパク質材料は大豆タンパク質材料であり得る。様々な大豆タンパク質材料を本発明の方法で使用して、タンパク質加水分解物を生じさせることができる。一般に、大豆タンパク質材料は、当該技術分野において既知の方法に従って、全大豆から得ることができる。全大豆は、標準の大豆(すなわち、非遺伝子改変大豆)、遺伝子改変大豆(例えば、変性油を有する大豆、変性炭水化物を有する大豆、変性タンパク質サブユニットを有する大豆など)またはこれらの組み合わせでよい。大豆タンパク質材料の適切な例としては、大豆抽出物、豆乳、豆乳粉末、大豆カード、大豆粉、単離大豆タンパク質、大豆タンパク質濃縮物、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0014】
一実施形態では、本方法で使用される大豆タンパク質材料は、大豆タンパク質単離物(単離大豆タンパク質、またはISPとも呼ばれる)であり得る。一般に、大豆タンパク質単離物は、無水ベースで少なくとも約90%の大豆タンパク質のタンパク質含量を有する。大豆タンパク質単離物は無処理の(intact)大豆タンパク質を含んでもよいし、あるいは部分的に加水分解された大豆タンパク質を含んでもよい。大豆タンパク質単離物は、高含量の7S、11S、2Sなどの貯蔵タンパク質サブユニットを有し得る。本発明において出発材料として使用することができる大豆タンパク質単離物の非限定的な例は、例えばSolae,LLC(St.Louis、MO)から市販されており、その中には、SUPRO(登録商標)500E、SUPRO(登録商標)EX 45、SUPRO(登録商標)620、SUPRO(登録商標)670、SUPRO(登録商標)EX 33、SUPRO(登録商標)PLUS 2600F、SUPRO(登録商標)PLUS 2640 DS、SUPRO(登録商標)PLUS 2800、SUPRO(登録商標)PLUS 3000、およびこれらの組み合わせが含まれる。
【0015】
別の実施形態では、大豆タンパク質材料は、無水ベースで約65%から約90%未満のタンパク質含量を有する大豆タンパク質濃縮物であり得る。本発明において有用な適切な大豆タンパク質濃縮物の例としては、PROCONTM製品ライン、ALPHATM12およびALPHATM5800が挙げられ、これらは全てSolae,LLCから市販されている。あるいは、大豆タンパク質材料源として、大豆タンパク質単離物の一部の代わりになるために、大豆タンパク質濃縮物が大豆タンパク質単離物とブレンドされてもよい。通常、大豆タンパク質濃縮物が大豆タンパク質単離物の一部の代わりに使用される場合、大豆タンパク質濃縮物は、最大でも大豆タンパク質単離物の約40重量%までの代わりに使用され、より好ましくは大豆タンパク質単離物の約30重量%までの代わりに使用される。
【0016】
さらに別の実施形態では、大豆タンパク質材料は、無水ベースで約49%〜約65%のタンパク質含量を有する大豆粉であり得る。大豆粉は、脱脂大豆粉、部分脱脂大豆粉、または全脂大豆粉であり得る。大豆粉は、大豆タンパク質単離物または大豆タンパク質濃縮物とブレンドされてもよい。
【0017】
代替の実施形態では、大豆タンパク質材料は、遠心分離機における沈降に基づいて4つの主要な貯蔵タンパク質画分またはサブユニット(15S、11S、7S、および2S)に分離された材料であり得る。一般に、11S画分はグリシニンが非常に豊富であり、7S画分はβ−コングリシニンが非常に豊富である。さらに別の実施形態では、大豆タンパク質材料は、高オレイン酸大豆からのタンパク質であり得る。
【0018】
(b)他のタンパク質材料
別の実施形態では、タンパク質材料は、大豆以外の植物に由来してもよい。非限定的な例として、適切な植物には、アマランス、クズウコン、大麦、ソバ、キャノーラ、キャッサバ、ヒヨコマメ(ガルバンゾ)、豆類、レンティル、ルピナス、トウモロコシ、キビ、オート麦、エンドウ豆、ポテト、米、ライ麦、モロコシ属、ヒマワリ、タピオカ、ライ小麦、小麦、およびこれらの混合物が含まれる。特に好ましい植物タンパク質には、大麦、キャノーラ、ルピナス、トウモロコシ、オート麦、エンドウ豆、ポテト、米、小麦、およびこれらの組み合わせが含まれる。一実施形態では、植物タンパク質材料は、キャノーラミール、キャノーラタンパク質単離物、キャノーラタンパク質濃縮物、およびこれらの組み合わせであり得る。別の実施形態では、植物タンパク質材料は、トウモロコシまたはコーンタンパク質粉末、トウモロコシまたはコーンタンパク質濃縮物、トウモロコシまたはコーンタンパク質単離物、トウモロコシまたはコーン胚芽、トウモロコシまたはコーングルテン、トウモロコシまたはコーングルテンミール、トウモロコシまたはコーン粉、ゼインタンパク質、およびこれらの組み合わせであり得る。さらに別の実施形態では、植物タンパク質材料は、大麦粉末、大麦タンパク質濃縮物、大麦タンパク質単離物、大麦ミール、大麦粉、およびこれらの組み合わせであり得る。代替の実施形態では、植物タンパク質材料は、ルピナス粉、ルピナスタンパク質単離物、ルピナスタンパク質濃縮物、およびこれらの組み合わせであり得る。別の代替の実施形態では、植物タンパク質材料は、オートミール、オート麦粉、オート麦タンパク質粉、オート麦タンパク質単離物、オート麦タンパク質濃縮物、およびこれらの組み合わせであり得る。さらに別の実施形態では、植物タンパク質材料は、エンドウ豆粉、エンドウ豆タンパク質単離物、エンドウ豆タンパク質濃縮物、およびこれらの組み合わせであり得る。さらに別の実施形態では、植物タンパク質材料は、ポテトタンパク質粉末、ポテトタンパク質単離物、ポテトタンパク質濃縮物、ポテト粉、およびこれらの組み合わせであり得る。さらなる実施形態では、植物タンパク質材料は、米粉、米ミール、米タンパク質粉末、米タンパク質単離物、米タンパク質濃縮物、およびこれらの組み合わせであり得る。別の代替の実施形態では、植物タンパク質材料は、小麦タンパク質粉末、小麦グルテン、小麦胚芽、小麦粉、小麦タンパク質単離物、小麦タンパク質濃縮物、可溶化小麦タンパク質、およびこれらの組み合わせであり得る。
【0019】
他の実施形態では、タンパク質材料は動物源に由来してもよい。一実施形態では、動物タンパク質材料は卵に由来し得る。適切な卵タンパク質の非限定的な例としては、粉末卵、乾燥卵固形分、乾燥卵白タンパク質、液体卵白タンパク質、卵白タンパク質粉末、単離オボアルブミンタンパク質、およびこれらの組み合わせが挙げられる。卵タンパク質は、ニワトリ、アヒル、ガチョウ、ウズラ、または他の鳥の卵に由来し得る。代替の実施形態では、タンパク質材料は乳製品源に由来し得る。適切な乳製品タンパク質には、無脂肪乾燥粉乳、乳タンパク質単離物、乳タンパク質濃縮物、酸カゼイン、カゼイン塩(例えば、カゼインナトリウム塩、カゼインカルシウム塩など)、乳清タンパク質単離物、乳清タンパク質濃縮物、およびこれらの組み合わせが含まれる。乳タンパク質材料は、雌ウシ、ヤギ、ヒツジ、ロバ、ラクダ、ラクダ科動物、ヤク、水牛などに由来し得る。さらなる実施形態では、タンパク質は、陸生動物または水生動物の筋肉、臓器、結合組織、または骨格に由来し得る。一例として、動物タンパク質は、ウシまたは他の動物の骨、結合組織、臓器などから抽出されるコラーゲンの部分加水分解によって製造されるゼラチンであり得る。
【0020】
本発明の方法において大豆タンパク質材料および少なくとも1つの他のタンパク質材料の組み合わせが使用され得ることも想定される。すなわち、タンパク質加水分解組成物は、大豆タンパク質材料および少なくとも1つの他のタンパク質材料の組み合わせから調製されてもよい。一実施形態では、タンパク質加水分解組成物は、大豆タンパク質材料と、大麦、キャノーラ、ルピナス、トウモロコシ、オート麦、エンドウ豆、ポテト、米、小麦、動物材料、乳製品、および卵からなる群から選択される1つの他のタンパク質材料との組み合わせから調製することができる。別の実施形態では、タンパク質加水分解組成物は、大豆タンパク質材料と、大麦、キャノーラ、ルピナス、トウモロコシ、オート麦、エンドウ豆、ポテト、米、小麦、動物材料、乳製品、および卵からなる群から選択される2つの他のタンパク質材料との組み合わせから調製することができる。さらなる実施形態では、タンパク質加水分解組成物は、大豆タンパク質材料と、大麦、キャノーラ、ルピナス、トウモロコシ、オート麦、エンドウ豆、ポテト、米、小麦、動物材料、乳製品、および卵からなる群から選択される3つ以上の他のタンパク質材料との組み合わせから調製することができる。
【0021】
組み合わせて使用される大豆タンパク質材料および他のタンパク質材料の濃度は異なり得るであろう。大豆タンパク質材料の量は、組み合わせて使用される全タンパク質の約1%〜約99%の範囲であり得る。一実施形態では、大豆タンパク質材料の量は、組み合わせて使用される全タンパク質の約1%〜約20%の範囲であり得る。別の実施形態では、大豆タンパク質材料の量は、組み合わせて使用される全タンパク質の約20%〜約40%の範囲であり得る。さらに別の実施形態では、大豆タンパク質材料の量は、組み合わせて使用される全タンパク質の約40%〜約80%の範囲であり得る。さらなる実施形態では、大豆タンパク質材料の量は、組み合わせて使用される全タンパク質の約80%〜約99%の範囲であり得る。同様に、(少なくとも1つの)他のタンパク質材料の量は、組み合わせて使用される全タンパク質の約1%〜約99%の範囲であり得る。一実施形態では、他のタンパク質材料の量は、組み合わせて使用される全タンパク質の約1%〜約20%の範囲であり得る。別の実施形態では、他のタンパク質材料の量は、組み合わせて使用される全タンパク質の約20%〜約40%の範囲であり得る。さらに別の実施形態では、他のタンパク質材料の量は、組み合わせて使用される全タンパク質の約40%〜約80%の範囲であり得る。さらなる実施形態では、他のタンパク質材料の量は、組み合わせて使用される全タンパク質の約80%〜約99%の範囲であり得る。
【0022】
(c)タンパク質スラリー
本発明の方法では、通常、タンパク質材料は水中に混合または分散されて、約1重量%〜約20重量%のタンパク質(「現状のまま(as is)」に基づいて)を含むスラリーを形成する。一実施形態では、スラリーは、約1重量%〜約5重量%のタンパク質(現状のまま)を含むことができる。別の実施形態では、スラリーは、約6重量%〜約10重量%のタンパク質(現状のまま)を含むことができる。さらなる実施形態では、スラリーは、約11重量%〜約15重量%のタンパク質(現状のまま)を含むことができる。さらに別の実施形態では、スラリーは、約16重量%〜約20重量%のタンパク質(現状のまま)を含むことができる。
【0023】
タンパク質材料が水中に分散された後、タンパク質材料のスラリーは、推定されている内在性プロテアーゼ阻害剤を不活性化するために、約70℃〜約90℃で約2分〜約20分間加熱され得る。通常、タンパク質スラリーのpHおよび温度は、加水分解反応を最適化するように、そして特に、加水分解反応において使用されるエンドペプチダーゼがその最適な活性レベル付近で機能することを保証するように調整される。タンパク質スラリーのpHは、当該技術分野において一般に知られている方法に従って調整および監視することができる。タンパク質スラリーのpHは、約pH5.0〜約pH10.0に調整および保持され得る。一実施形態では、タンパク質スラリーのpHは、約pH7.0〜約pH8.0に調整および保持され得る。別の実施形態では、タンパク質スラリーのpHは、約pH8.0〜約pH9.0に調整および保持され得る。好ましい実施形態では、タンパク質スラリーのpHは、約pH8.0に調整および保持され得る。タンパク質スラリーの温度は、好ましくは、当該技術分野において既知の方法に従って加水分解反応の間約40℃〜約70℃に調整および保持される。好ましい実施形態では、タンパク質スラリーの温度は、加水分解反応の間約50℃〜約60℃に調整および保持され得る。一般に、この範囲よりも高い温度はエンドペプチダーゼを最終的に不活性化することができ、この範囲よりも低いまたは高い温度はエンドペプチダーゼの活性を遅くする傾向がある。
【0024】
(d)エンドペプチダーゼ
加水分解反応は一般に、エンドペプチダーゼをタンパク質材料のスラリーに添加することによって開始される。いくつかのエンドペプチダーゼは、本発明の方法での使用に適している。好ましくは、エンドペプチダーゼは食品グレードの酵素であろう。エンドペプチダーゼは、約pH6.0〜約pH11.0、より好ましくは約pH7.0〜約pH9.0、そして約40℃〜約70℃の温度、より好ましくは約45℃〜約60℃の温度の加水分解条件下で最適な活性を有することができる。
【0025】
一般に、エンドペプチダーゼは、S1セリンプロテアーゼ類の一員であろう(MEROPS Peptidase Database、release 8.00A;//merops.sanger.ac.uk)。好ましくは、エンドペプチダーゼは、アルギニン、リジン、または両残基のカルボキシル末端側でペプチド結合を切断するであろう。従って、エンドペプチダーゼは、アルギニン、リジン、または両方のカルボキシル末端側でペプチド結合を切断するトリプシン様エンドペプチダーゼであってもよい。本発明との関連におけるトリプシン様エンドペプチダーゼは、100よりも大きいトリプシン比を有するエンドペプチダーゼであると定義することができる(実施例16を参照)。トリプシン様エンドペプチダーゼは、リジン残基のカルボキシル末端側でペプチド結合を切断するリジルエンドペプチダーゼであってもよい。好ましい実施形態では、エンドペプチダーゼは微生物起源を有することができ、さらに好ましくは菌・カビ類起源を有する。トリプシンおよびトリプシン様エンドペプチダーゼは他の源(例えば、動物源)から入手することもできるが、動物源からのトリプシンは、実施例14に示されるように、出発タンパク質材料を切断できないこともある。
【0026】
一実施形態では、エンドペプチダーゼは、フザリウム・オキシスポラム(Fusarium oxysporum)からのトリプシン様プロテアーゼでもよい(米国特許第5,288,627号明細書、米国特許第5,693,520号明細書、これらはそれぞれ参照によってその全体が本明細書に援用される)。このエンドペプチダーゼは「TL1」と呼ばれ、そのタンパク質配列(配列番号1)は表Aに示される。TL1の受入番号はSWISSPROT No.P35049であり、そのMEROPS IDはS01.103である。別の実施形態では、エンドペプチダーゼは、フザリウム・ソラニ(Fusarium solani)からのトリプシン様プロテアーゼでもよい(国際公開第2005/040372−A1号パンフレット、その全体が本明細書に援用される)。このエンドペプチダーゼは「TL5」と呼ばれ、そのタンパク質配列(配列番号2)は表Aに示される。TL5の受入番号はGENESEQP:ADZ80577である。さらに別の実施形態では、エンドペプチダーゼは、フザリウムcf.ソラニ(Fusarium cf. solani)からのトリプシン様プロテアーゼであってもよい。このエンドペプチダーゼは「TL6」と呼ばれ、そのタンパク質配列(配列番号3)は表Aに示される。さらなる実施形態では、エンドペプチダーゼは、アクロモバクター・リティカス(Achromobacter lyticus)からのリジルエンドペプチダーゼであってもよい。このエンドペプチダーゼは「SP3」と呼ばれ、そのタンパク質配列(配列番号4)は表Aに示される。SP3の受入番号はSWISSPROT No.15636であり、SP3のMEROPS IDはS01.280である。例示的な実施形態では、エンドペプチダーゼはTL1であり得る。
【0027】
【0028】
別の実施形態では、エンドペプチダーゼは、配列番号1、2、3、4、またはこれらの断片と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、または85%同一であるアミノ酸配列を含むことができる。さらなる実施形態では、エンドペプチダーゼは、配列番号1、2、3、4、またはこれらの断片と少なくとも86%、87%、88%、89%、90%、91%、または92%同一であるアミノ酸配列を含むことができる。さらに別の実施形態では、エンドペプチダーゼは、配列番号1、2、3、4、またはこれらの断片と少なくとも93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一であるアミノ酸配列を含むことができる。プロテアーゼ活性を有するこれらの配列のいずれかの断片は、例えば処理の後(シグナルペプチドおよび/またはプロペプチドが切断された後など)の活性酵素のアミノ酸配列であり得る。好ましい断片には、配列番号1のアミノ酸25〜248、配列番号2のアミノ酸26〜251、配列番号3のアミノ酸18〜250、または配列番号4のアミノ酸21〜653が含まれる。
【0029】
本発明の目的のために、2つのアミノ酸配列のアライメントは、EMBOSS packageからのNeedleプログラム(Rice,P.、Longden,I.およびBleasby,A.(2000年)EMBOSS:The European Molecular Biology Open Software Suite.Trends in Genetics 16、(6)、276−277頁、http://emboss.org)バージョン2.8.0を用いて決定することができる。Needleプログラムは、Needleman,S.B.およびWunsch,C.D.(1970年)J.Mol.Biol.48、443−453頁に記載される包括的アライメントアルゴリズムを実行する。使用される置換マトリックスはBLOSUM62であり、ギャップオープニングペナルティは10であり、そしてギャップエクステンションペナルティは0.5である。一般に、配列同一性の割合は、比較ウィンドウ上で最適に整列された2つの配列を比較することによって決定され、ここで、比較ウィンドウ内のアミノ酸配列の部分は、2つの配列の最適なアライメントのための参照配列(付加または欠失を含まない)と比較して、付加または欠失(すなわち、ギャップ)を含むことができる。割合は、両方の配列内で同一のアミノ酸が生じる位置の数を決定して一致した位置の数を得て、一致した位置の数を、比較ウィンドウ内の2つの配列の短い方の位置の総数で割り、そしてその結果に100をかけて配列同一性の割合を得ることによって計算される。
【0030】
当業者は、ポリペプチドの機能に影響を与えることなく類似の側鎖を有する別のアミノ酸残基によってアミノ酸残基が置換され得ることを理解するであろう。例えば、脂肪族側鎖を有するアミノ酸基はグリシン、アラニン、バリン、ロイシン、およびイソロイシンであり、脂肪族−ヒドロキシル側鎖を有するアミノ酸基はセリンおよびスレオニンであり、アミド含有側鎖を有するアミノ酸基はアスパラギンおよびグルタミンであり、芳香族側鎖を有するアミノ酸基はフェニルアラニン、チロシン、およびトリプトファンであり、塩基性側鎖を有するアミノ酸基はリジン、アルギニン、およびヒスチジンであり、そして硫黄含有側鎖を有するアミノ酸基はシステインおよびメチオニンである。好ましい保存的アミノ酸置換基は、バリン−ロイシン−イソロイシン、フェニルアラニン−チロシン、リジン−アルギニン、アラニン−バリン、およびアスパラギン−グルタミンを含む。従って、エンドペプチダーゼは、配列番号1、2、3、または4に関して少なくとも1つの保存的アミノ酸置換を有し得る。一実施形態では、エンドペプチダーゼは、配列番号1、2、3、または4に関して約50の保存的アミノ酸置換を有し得る。別の実施形態では、エンドペプチダーゼは、配列番号1、2、3、または4に関して約40の保存的アミノ酸置換を有し得る。さらに別の実施形態では、エンドペプチダーゼは、配列番号1、2、3、または4に関して約30の保存的アミノ酸置換を有し得る。別の代替の実施形態では、エンドペプチダーゼは、配列番号1、2、3、または4に関して約20の保存的アミノ酸置換を有し得る。さらに別の実施形態では、エンドペプチダーゼは、配列番号1、2、3、または4に関して約10の保存的アミノ酸置換を有し得る。さらに別の実施形態では、エンドペプチダーゼは、配列番号1、2、3、または4に関して約5の保存的アミノ酸置換を有し得る。さらなる実施形態では、エンドペプチダーゼは、配列番号1、2、3、または4に関して約1つの保存的アミノ酸置換を有し得る。
【0031】
タンパク質材料およびエンドペプチダーゼの種々の組み合わせは表Bに示される。
【0032】
【0033】
(表B続き)
【0034】
(表B続き)
【0035】
(表B続き)
【0036】
タンパク質材料に添加されるエンドペプチダーゼの量は、タンパク質材料の源、所望の加水分解度、および加水分解反応の持続時間に依存して異なり得るであろう。エンドペプチダーゼの量は、タンパク質材料1キログラムあたり酵素タンパク質約1mg〜酵素タンパク質約5000mgの範囲であり得る。別の実施形態では、量は、タンパク質材料1キログラムあたり酵素タンパク質10mg〜酵素タンパク質約2000mgの範囲であり得る。さらに別の実施形態では、量は、タンパク質材料1キログラムあたり酵素タンパク質約50mg〜酵素タンパク質約1000mgの範囲であり得る。
【0037】
当業者により認識されるように、加水分解反応の持続時間は異なり得るであろう。一般的に言えば、加水分解反応の持続時間は、数分〜多時間(約30分〜約48時間など)の範囲であり得る。加水分解反応を終了させるために、組成物は、エンドペプチダーゼを不活性化するのに十分に高い温度まで加熱され得る。例えば、組成物を約90℃の温度まで加熱すると、エンドペプチダーゼが実質的に熱不活性化されるであろう。
【0038】
(II)タンパク質加水分解組成物
タンパク質加水分解組成物は、タンパク質出発材料と比較して、種々の長さおよび分子量のポリペプチド断片の混合物を含むであろう。ペプチド断片のそれぞれは、通常、そのカルボキシル末端にアルギニンまたはリジン残基のいずれかを有するであろう(実施例3、4、13、および18で実証されるように)。ポリペプチド断片は、約75ダルトン(Da)〜約50,000Da、より好ましくは約150Da〜約20,000Daの範囲の大きさであり得る。いくつかの実施形態では、ポリペプチド断片の平均分子サイズは、約20,000Da未満であり得る。他の実施形態では、ポリペプチド断片の平均分子サイズは、約15,000Da未満であり得る。さらに他の実施形態では、ポリペプチド断片の平均分子サイズは、約10,000Da未満であり得る。付加的な実施形態では、ポリペプチド断片の平均分子サイズは約5000Da未満であり得る。
【0039】
本発明のタンパク質加水分解組成物の加水分解度は、タンパク質材料源、使用されるエンドペプチダーゼ、および加水分解反応の完成度に依存して異なり得るであろう。加水分解度(DH)は、出発ペプチド結合数に対する切断されたペプチド結合の割合を指す。例えば、500のペプチド結合を含有する出発タンパク質が、50のペプチド結合が切断されるまで加水分解されると、得られる加水分解物のDHは10%DHである。加水分解度は、実施例で詳述されるように、トリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)比色分析法またはオルト−フタルジアルデヒド(OPA)法を用いて決定することができる。加水分解度が高い程、タンパク質の加水分解の程度は大きい。通常、タンパク質がさらに加水分解されるにつれて(すなわち、DHが高い程)、ペプチド断片の分子量は減少し、それに応じてペプチドプロファイルは変化し、そして混合物の粘度は低下する。DHは加水分解物全体(すなわち、全画分)において測定されてもよいし、あるいはDHは、加水分解物の可溶性画分(すなわち、約500〜1000×gで約5〜10分間加水分解物を遠心分離した後の上澄み画分)において測定されてもよい。
【0040】
一般に、タンパク質加水分解物の加水分解度は少なくとも約0.2%DHであろう。一実施形態では、タンパク質加水分解物の加水分解度は、約0.2%DH〜約2%DHの範囲でよい。別の実施形態では、タンパク質加水分解物の加水分解度は、約2%DH〜約8%DHの範囲でよい。さらに別の実施形態では、タンパク質加水分解物の加水分解度は、約8%DH〜約14%DHの範囲でよい。代替の実施形態では、タンパク質加水分解物の加水分解度は、約14%DH〜約20%DHの範囲でよい。付加的な実施形態では、タンパク質加水分解物の加水分解度は、約20%DHよりも大きくてよい。
【0041】
タンパク質加水分解組成物の溶解度は、出発タンパク質材料源、使用されるエンドペプチダーゼ、および組成物のpHに依存して異なり得るであろう。可溶性固形分指数(SSI)は、タンパク質加水分解組成物を構成する固形分(すなわち、ポリペプチド断片)の溶解度の尺度である。可溶性固形分の量は、遠心分離(例えば、約500〜1000×gで約5〜10分間)の前後の溶液中の固形分の量を測定することによって推定することができる。あるいは、可溶性固形分の量は、当該技術分野においてよく知られている技法(例えば、ビシンコニン酸(BCA)タンパク質決定比色分析アッセイなど)を用いて遠心分離の前後の組成物中のタンパク質の量を推定することによって決定することができる。
【0042】
一般に、本発明のタンパク質加水分解組成物は、その加水分解度にかかわらず、約pH6.0よりも高いpHで少なくとも約80%の可溶性固形分指数を有する。一実施形態では、タンパク質加水分解組成物は、約pH6.0よりも高いpHで約80%〜約85%の範囲の可溶性固形分指数を有し得る。別の実施形態では、タンパク質加水分解組成物は、約pH6.0よりも高いpHで約85%〜約90%の範囲の可溶性固形分指数を有し得る。さらなる実施形態では、タンパク質加水分解組成物は、約6.0よりも高いpHで約90%〜約95%の範囲の可溶性固形分指数を有し得る。別の代替の実施形態では、タンパク質加水分解組成物は、約6.0よりも高いpHで約95%〜約99%の範囲の可溶性固形分指数を有し得る。
【0043】
さらに、本発明のタンパク質加水分解組成物の溶解度は、加水分解度に応じて約pH4.0〜約pH5.0で異なり得る。例えば、約3%DHよりも大きい加水分解度を有する大豆タンパク質加水分解組成物は、約3%DH未満の加水分解度を有するものよりも、約pH4.0〜約pH5.0においてより可溶性である傾向がある。
【0044】
一般的に言えば、約1%DH〜約6%DHの加水分解度を有する大豆タンパク質加水分解組成物は、約pH7.0〜約pH8.0のpHで安定である。安定性は、時間が経っても沈降物の形成がないことを言う。タンパク質加水分解組成物は、室温(すなわち、約23℃)または冷蔵温度(すなわち、約4℃)で貯蔵され得る。一実施形態では、タンパク質加水分解組成物は、約1週間〜約4週間安定であり得る。別の実施形態では、タンパク質加水分解組成物は、約1ヶ月〜約6ヶ月間安定であり得る。さらなる実施形態では、タンパク質加水分解組成物は、約6ヶ月よりも長く安定であり得る。
【0045】
タンパク質加水分解組成物は乾燥されてもよい。例えば、タンパク質加水分解組成物はスプレー乾燥され得る。スプレードライヤーの入口の温度は、約260℃(500°F)〜約315℃(600°F)の範囲でよく、排気温度は、約82℃(180°F)〜約38℃(100°F)の範囲でよい。あるいは、タンパク質加水分解組成物は、真空乾燥、凍結乾燥、または当該技術分野において既知の他の手順を用いて乾燥されてもよい。
【0046】
タンパク質加水分解物が大豆タンパク質に由来する実施形態では、加水分解度は約0.2%DH〜約14%DH、より好ましくは約1%DH〜約6%DHの範囲でよい。形成されるポリペプチド断片の数に加えて、実施例において説明されるように、加水分解度は、通常、得られる大豆タンパク質加水分解組成物の他の物理特性および官能特性に影響を与える。通常、加水分解度が約1%DHから約6%DHまで増大するにつれて、大豆タンパク質加水分解組成物は、透明性または透光性が増大し、穀類および大豆/豆類の官能特性が低下する。さらに、加水分解度が約2%DHよりも大きい場合と比較して加水分解度が約2%DH未満である場合には、大豆タンパク質加水分解組成物は苦味の官能特性が実質的に少ない。別の言い方をすると、より高い加水分解度は穀類および大豆/豆類の官能特性を低下させ、より低い加水分解度は苦味の官能特性を低下させる。官能特性およびその決定方法は、実施例において詳述される。
【0047】
さらに、タンパク質加水分解物が大豆に由来する実施形態では、大豆タンパク質加水分解組成物は、配列番号5〜177および270〜274からなる群から選択されるポリペプチドを含み得る。一実施形態では、大豆タンパク質加水分解物は、配列番号5〜177および270〜274からなる群に相当するかまたは由来するアミノ酸配列を有する少なくとも1つのポリペプチドを含み得る。代替の実施形態では、大豆タンパク質加水分解物は、配列番号5〜177および270〜274からなる群から選択される少なくとも約10のポリペプチドまたはその断片を含み得る。別の実施形態では、大豆タンパク質加水分解物は、配列番号5〜177および270〜274からなる群から選択される少なくとも約20のポリペプチドまたはその断片を含み得る。さらなる実施形態では、大豆タンパク質加水分解物は、配列番号5〜177および270〜274からなる群から選択される少なくとも約40のポリペプチドまたはその断片を含み得る。さらに別の実施形態では、大豆タンパク質加水分解物は、配列番号5〜177および270〜274からなる群から選択される少なくとも約80のポリペプチドまたはその断片を含み得る。さらに別の実施形態では、大豆タンパク質加水分解物は、配列番号5〜177および270〜274からなる群から選択される少なくとも約120のポリペプチドまたはその断片を含み得る。さらなる実施形態では、大豆タンパク質加水分解物は、配列番号5〜177および270〜274からなる群から選択される少なくとも約178のポリペプチドまたはその断片を含み得る。
【0048】
タンパク質加水分解物が大豆タンパク質および乳製品の組み合わせに由来するその他の実施形態では、大豆/乳製品の組み合わせタンパク質加水分解組成物は、配列番号5〜197および270〜274からなる群から選択されるポリペプチドを含み得る。一実施形態では、大豆/乳製品の組み合わせ加水分解物は、配列番号5〜197および270〜274からなる群に相当するかまたは由来するアミノ酸配列を有する少なくとも1つのポリペプチドを含み得る。代替の実施形態では、大豆/乳製品の組み合わせ加水分解物は、配列番号5〜197および270〜274からなる群から選択される少なくとも約10のポリペプチドまたはその断片を含み得る。別の実施形態では、大豆/乳製品の組み合わせ加水分解物は、配列番号5〜197および270〜274からなる群から選択される少なくとも約50のポリペプチドまたはその断片を含み得る。別の代替の実施形態では、大豆/乳製品の組み合わせ加水分解物は、配列番号5〜197および270〜274からなる群から選択される少なくとも約100のポリペプチドまたはその断片を含み得る。別の実施形態では、大豆/乳製品加水分解物は、配列番号5〜197および270〜274からなる群から選択される少なくとも約150のポリペプチドまたはその断片を含み得る。さらに別の代替実施形態では、大豆/乳製品の組み合わせ加水分解物は、配列番号5〜197および270〜274からなる群から選択される少なくとも約198のポリペプチドまたはその断片を含み得る。
【0049】
タンパク質加水分解物がキャノーラに由来する付加的な実施形態では、タンパク質加水分解組成物は、配列番号198〜237からなる群から選択されるポリペプチドを含み得る。一実施形態では、キャノーラ加水分解物は、配列番号198〜237からなる群に相当するかまたは由来するアミノ酸配列を有する少なくとも1つのポリペプチドを含み得る。代替の実施形態では、キャノーラ加水分解物は、配列番号198〜237からなる群から選択される少なくとも約10のポリペプチドまたはその断片を含み得る。別の実施形態では、キャノーラ加水分解物は、配列番号198〜237からなる群から選択される少なくとも約20のポリペプチドまたはその断片を含み得る。さらに別の代替実施形態では、キャノーラ加水分解物は、配列番号198〜237からなる群に相当するかまたは由来するアミノ酸配列を有する少なくとも39のポリペプチドを含み得る。
【0050】
タンパク質加水分解物がトウモロコシに由来するその他の付加的な実施形態では、タンパク質加水分解組成物は、配列番号238〜261からなる群から選択されるポリペプチドを含み得る。一実施形態では、トウモロコシ加水分解物は、配列番号238〜261からなる群に相当するかまたは由来するアミノ酸配列を有する少なくとも1つのポリペプチドを含み得る。別の実施形態では、トウモロコシ加水分解物は、配列番号238〜261からなる群に相当するかまたは由来するアミノ酸配列を有する少なくとも10のポリペプチドを含み得る。さらなる実施形態では、トウモロコシ加水分解物は、配列番号238〜261からなる群に相当するかまたは由来するアミノ酸配列を有する少なくとも24のポリペプチドを含み得る。
【0051】
さらに、タンパク質加水分解物が小麦に由来する実施形態では、タンパク質加水分解組成物は、配列番号262〜269からなる群から選択されるポリペプチドを含み得る。一実施形態では、小麦加水分解物は、配列番号262〜269からなる群に相当するかまたは由来するアミノ酸配列を有する少なくとも1つのポリペプチドを含み得る。さらなる実施形態では、小麦加水分解物は、配列番号262〜269からなる群に相当するかまたは由来するアミノ酸配列を有する少なくとも8つのポリペプチドを含み得る。
【0052】
本発明は、本発明の大豆タンパク質加水分解組成物、大豆/乳製品タンパク質加水分解組成物、キャノーラタンパク質加水分解組成物、トウモロコシタンパク質加水分解組成物または小麦タンパク質加水分解組成物から精製され得るポリペプチドまたはその断片のいずれを包含してもよい。通常、純粋なポリペプチド断片は、所与の精製サンプル中の全ポリペプチドの少なくとも約80重量%、好ましくは90重量%、そしてさらにより好ましくは少なくとも約95重量%を構成する。ポリペプチド断片は、サイズ排除クロマトグラフィ、イオン交換クロマトグラフィ、アフィニティクロマトグラフィ、疎水性相互作用クロマトグラフィ、逆相クロマトグラフィなどのクロマトグラフィ法によって精製することができる。例えば、ポリペプチド断片は、配列番号5〜274からなる群から選択することができる。さらに、本発明は、配列番号5〜274からなる群から選択されるものと実質的に同様の配列であるポリペプチド断片も包含する。一実施形態では、ポリペプチド断片は、配列番号5〜274からなる群から選択されるポリペプチド断片に対して少なくとも80、81、82、83、84、85、86、87、88、または89%の配列同一性を有し得る。別の実施形態では、ポリペプチド断片は、配列番号5〜274からなる群から選択されるポリペプチド断片に対して少なくとも90、91、92、93、94、95、96、97、98、または99%の配列同一性を有し得る。ポリペプチド断片が本発明の配列と特定の割合の配列同一性を共有するかどうかを決定するための方法は、上記に示される。
【0053】
本発明のタンパク質加水分解組成物はさらに、非加水分解(すなわち、無処理の)タンパク質を含み得ることも想定される。非加水分解タンパク質は、本質的に無処理の調製物(例えば、大豆カード、コーンミール、ミルクなど)中に存在することができる。さらに、非加水分解タンパク質は、植物由来のタンパク質源(例えば、アマランス、クズウコン、大麦、ソバ、キャノーラ、キャッサバ、ヒヨコマメ(ガルバンゾ)、豆類、レンティル、ルピナス、トウモロコシ、キビ、オート麦、エンドウ豆、ポテト、米、ライ麦、モロコシ属、ヒマワリ、タピオカ、ライ小麦、小麦などの源)から単離されてもよいし、あるいは動物タンパク質材料(適切な単離動物タンパク質の例としては、酸カゼイン、カゼイン塩、乳清、アルブミン、ゼラチンなどが挙げられる)から単離されてもよい。好ましい実施形態では、タンパク質加水分解組成物はさらに、大麦、キャノーラ、ルピナス、トウモロコシ、オート麦、エンドウ豆、ポテト、米、大豆、小麦、動物、乳製品、卵、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される非加水分解タンパク質を含む。タンパク質加水分解物および非加水分解タンパク質の相対的な比率は、関連するタンパク質、および組成物の所望の使用に依存して異なり得るであろう。
【0054】
(III)タンパク質加水分解物を含む食品
本発明のさらなる態様は、食用材料および本明細書に記載されるタンパク質加水分解組成物のいずれかを含む食品の提供である。あるいは、食品は、食用材料および本明細書に記載される単離ポリペプチド断片のいずれかを含んでもよい。
【0055】
食用材料と混ぜ合わせるための特定のタンパク質加水分解組成物の選択は、所望の食品に依存して異なり得るであろう。いくつかの実施形態では、タンパク質加水分解組成物は、大豆タンパク質に由来し得る。他の実施形態では、タンパク質加水分解組成物は、大麦、キャノーラ、ルピナス、トウモロコシ、オート麦、エンドウ豆、ポテト、米、小麦、動物、卵、およびこれらの組み合わせに由来し得る。さらに他の実施形態では、タンパク質加水分解組成物は、大豆と、大麦、キャノーラ、ルピナス、トウモロコシ、オート麦、エンドウ豆、ポテト、米、小麦、動物、乳製品、および卵からなる群から選択される少なくとも1つの他のタンパク質源との組み合わせに由来し得る。代替の実施形態では、タンパク質加水分解組成物は、異なるタンパク質加水分解物の組み合わせを含むことができる。付加的な実施形態では、タンパク質加水分解組成物は、配列番号5〜274からなるアミノ酸配列の群から選択される単離または合成ポリペプチドを含むことができる。
【0056】
適切な食用材料の選択も所望の食品によって異なるであろう。食用材料は、植物由来材料、動物由来材料、または植物由来材料や動物由来材料から単離されるバイオマテリアル(すなわち、タンパク質、炭水化物、脂質など)などであり得る。
【0057】
一実施形態では、食品は飲料であり得る。好ましい飲料としては、そのまま飲める(ready−to−drink)(RTD)飲料または乾燥ブレンド飲料(DBB)が挙げられる。飲料は、実質的に濁った飲料でも実質的に透明な飲料でもよい。適切な飲料の非限定的な例としては、ミルクベースの飲料、ミルク類似飲料(例えば、豆乳、米ミルクなど)、体重管理飲料、プロテインシェーク(protein shake)、食事代用飲料(meal replacement drink)、コーヒーベースの飲料、栄養ドリンク、エネルギードリンク、調製粉乳、果実ジュースベースの飲料、果実飲料、果実風味飲料、野菜ベースの飲料、スポーツドリンクなどが挙げられる。飲料のpHは一般に約pH2.8〜約pH7.5、好ましくは約pH6.5〜約pH7.5の範囲であり、より好ましくは約pH7.0であろう。
【0058】
別の実施形態では、食品は、グラノーラバー、シリアルバー、栄養バー、またはエネルギーバーなどの食品バーであり得る。さらに別の実施形態では、食品は、シリアルベースの製品であり得る。シリアルベースの食品の非限定的な例としては、朝食用シリアル、パスタ、パン、焼成製品(すなわち、ケーキ、パイ、ロール、クッキー、クラッカー)、およびスナック製品(例えば、チップス、プレッツェルなど)が挙げられる。シリアルベースの食品の食用材料は、小麦(例えば、漂白小麦粉、全粒小麦粉、小麦胚芽、小麦フスマなど)、コーン(例えば、コーン粉、コーンミール、コーンスターチなど)、オート麦(例えば、膨化オート麦、オートミール、オート麦粉など)、米(例えば、膨化米、米粉、米デンプン)などに由来し得る。さらに別の実施形態では、食品は、「固形の」乳製品ベースの製品であり得る。適切な「固形の」乳製品ベースの食品の非限定的な例としては、ハードチーズ製品、ソフトチーズ製品、アイスクリーム製品、ヨーグルト製品、フローズンヨーグルト製品、ホイップした乳製品様の製品、シャーベットなどが挙げられる。代替の実施形態では、食品は栄養補助食品であり得る。栄養補助食品は液体でも固体でもよい。別の代替の実施形態では、食品は、食肉製品または食肉類似製品であり得る。食肉食品の例としては、加工肉、ひき肉、および全筋肉の食肉製品が挙げられるがこれらに限定されない。食肉材料は、動物肉でもシーフード肉でもよい。食肉類似品は、動物またはシーフード肉の感触を模倣するテクスチャ化植物または乳製品タンパク質であり得る。食肉類似品は、食肉食品中の食肉材料の一部でも全てでもよい。
【0059】
タンパク質加水分解組成物の加水分解度も、加水分解物および所望の食品を製造するために使用される出発材料に依存して異なるであろう。例えば、大豆含有タンパク質加水分解組成物を含む飲料では、実質的により可溶性であり、時には実質的に光をより透過させる大豆タンパク質加水分解組成物(1%DHよりも6%DHに近い加水分解度を有する組成物など)を用いることが望ましいかもしれない。同様に、苦味の官能特性を最小限にすることが望ましい食品では、6%DHよりも1%DHに近い加水分解度を有する大豆タンパク質加水分解組成物を選択することができる。さらに、穀類および大豆/豆類の官能特性を最小限にすることが望ましい食品では、1%DHよりも6%DHに近い加水分解度を有する大豆タンパク質加水分解組成物を選択することができる。
【0060】
好ましい実施形態では、食品は上記で詳述したような飲料であり得る。そしてタンパク質加水分解組成物の適切な例は上記で詳述した。適切な食用材料の非限定的な例としては、スキムミルク、低脂肪乳、2%乳、全乳、クリーム、エバミルク(evaporated milk)、ヨーグルト、バターミルク、乾燥粉乳、無脂肪乾燥粉乳、乳タンパク質、酸カゼイン、カゼイン塩(例えば、カゼインナトリウム塩、カゼインカルシウム塩など)、乳清タンパク質濃縮物、乳清タンパク質単離物、大豆タンパク質単離物、大豆タンパク質加水分解物、乳清加水分解物、チョコレート、ココア粉末、コーヒー、茶、果実ジュース、野菜ジュースなどが挙げられる。飲料食品はさらに、甘味剤(グルコース、スクロース、フルクトース、マルトデキストリン、スクラロース、コーンシロップ、蜂蜜、メープルシロップなど)、風味剤(例えば、チョコレート、ココア、チョコレート風味、バニラ抽出物、バニラ風味、果実風味など)、乳化または増粘剤(例えば、レシチン、カラギナン、セルロースガム、セルロースゲル、デンプン、アラビアガム、キサンタンガムなど)、安定剤、脂質材料(例えば、キャノーラ油、ヒマワリ油、高オレイン酸ヒマワリ油、脂肪粉末など)、防腐剤(例えば、ソルビン酸カリウム、ソルビン酸など)、酸化防止剤(例えば、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウムなど)、着色剤、ビタミン、ミネラル、およびこれらの組み合わせを含んでもよい。
【0061】
定義
本発明の理解を容易にするために、いくつかの用語を以下に定義する。
【0062】
「加水分解度」という用語は、タンパク質100キログラム(kg)あたりに存在するNH2のモル数を決定することによって測定される、切断された全ペプチド結合の割合を指す。
【0063】
「エンドペプチダーゼ」という用語は、オリゴペプチドまたはポリペプチド鎖中の内部ペプチド結合を加水分解する酵素を指す。エンドペプチダーゼの群は、酵素サブクラスEC 3.4.21〜25を含む(国際生化学・分子生物学連合(International Union of Biochemistry and Molecular Biology)酵素分類システム)。
【0064】
「食品グレード酵素」は、一般に安全と認められる(generally recognized as safe(GRAS))と認可されており、ヒトなどの生物体により消費される場合に安全な酵素である。通常、酵素および酵素が由来し得る製品は、適用可能な法的規制ガイドラインに従って製造される。
【0065】
「加水分解物」は、化合物が水の影響によって切断されたときに得られる反応生成物である。タンパク質加水分解物は、熱的、化学的、または酵素的な分解に引き続いて生じる。反応の間、大きい分子は、より小さいタンパク質、可溶性タンパク質、ペプチド断片、および遊離アミノ酸に破壊される。
【0066】
「穀類」「大豆/豆類」または「苦味」のような用語を説明するために使用されるような「官能特性」という用語は、実施例6において特に明確に記述されるようなSQS採点システムに従って決定される。
【0067】
「可溶性固形分指数」という用語は、可溶性タンパク質または可溶性固形分の割合を指す。
【0068】
本明細書で使用される「単離大豆タンパク質」または「大豆タンパク質単離物」という用語は、無水ベースで少なくとも約90%の大豆タンパク質のタンパク質含量を有する大豆材料を指す。単離大豆タンパク質は、子葉から大豆の皮および胚を除去し、子葉をフレークまたは粉砕してフレークまたは粉砕子葉から油を除去し、子葉の大豆タンパク質および炭水化物を子葉繊維から分離し、次いで大豆タンパク質を炭水化物から分離することによって、大豆から形成される。
【0069】
本明細書で使用される「大豆タンパク質濃縮物」という用語は、無水ベースで約65%から約90%未満までの大豆タンパク質のタンパク質含量を有する大豆材料である。大豆タンパク質濃縮物は、無水ベースで通常約3.5重量%から約20重量%までの大豆子葉繊維も含有する。大豆タンパク質濃縮物は、大豆の皮および胚を除去し、子葉をフレークまたは粉砕してフレークまたは粉砕子葉から油を除去し、大豆タンパク質および大豆子葉繊維を子葉の可溶性炭水化物から分離することによって大豆から形成される。
【0070】
本明細書で使用される「大豆粉」という用語は、粒子がNo.100メッシュ(米国基準)スクリーンを通過できるようなサイズを有する脱脂、一部脱脂、または全脂大豆材料の粉砕形態を指す。大豆ケーク、チップ、フレーク、ミール、または材料の混合物は、従来の大豆粉砕方法を用いて大豆粉に粉砕される。大豆粉は、無水ベースで約49%〜約65%の大豆タンパク質含量を有する。好ましくは、粉は非常に細かく粉砕され、最も好ましくは、300メッシュ(米国基準)スクリーン上に約1%未満の粉が保持されるように粉砕される。
【0071】
本明細書で使用される「大豆子葉繊維」という用語は、少なくとも約70%の食物繊維を含有する大豆子葉の多糖類部分を指す。大豆子葉繊維は通常いくらか少量の大豆タンパク質を含有するが、100%繊維であってもよい。本明細書で使用される大豆子葉繊維は、大豆皮の繊維を指さないかまたは含まない。一般的に、大豆子葉繊維は、大豆の皮および胚芽を除去し、子葉をフレークまたは粉砕してフレークまたは粉砕子葉から油を除去し、大豆子葉繊維を子葉の大豆材料および炭水化物から分離することによって、大豆から形成される。
【0072】
「トリプシン様セリンプロテアーゼ」は、アルギニン残基またはリジン残基のカルボキシル末端側でペプチド結合を優先的に切断する酵素である。
【0073】
本発明またはその好ましい実施形態の要素を導入する場合に、冠詞「a」、「an」、「the」および「said」は、その要素が1つまたは複数存在することを意味するものとする。「comprising」、「including」および「having」という用語は包括的であり、記載される要素以外にさらなる要素が存在し得ることを意味するものとする。
【0074】
本発明の範囲から逸脱することなく上記の化合物、製品および方法には種々の変化がなされ得るので、上記説明および以下に示される実施例に含まれる全ての事項は例示として解釈されるべきであり、限定の意味で解釈されるべきではないことが意図される。
【実施例】
【0075】
以下の実施例は、本発明の実施形態を説明する。
【0076】
実施例1.トリプシン様エンドペプチダーゼTL1による単離大豆タンパク質の加水分解
その溶解度を高め、そしてその官能特性を改善するために、単離大豆タンパク質をより小さいペプチド断片に加水分解した。フザリウム・オキシスポラム(Fusarium oxysporum)からの菌・カビ類トリプシン様ペプチダーゼTL1(その配列は本出願の配列番号1で示される)はアルギニンまたはリジン残基のC末端側でペプチド結合を切断するが、他のペプチダーゼは大豆タンパク質内のランダムなペプチド結合を切断することが示されているので、TL1を選択した。
【0077】
発泡を低減するために穏やかな混合を用いて、320gのSUPRO(登録商標)500E、Solae(St.Louis、MO))を3680gの水中に分散させることによって、単離大豆タンパク質(ISP)の8%スラリーを製造した。必要であれば、2滴の消泡剤を添加した。溶液を80℃に5分間加熱して、存在している可能性のあるセリンプロテアーゼ阻害剤を不活性化した。混合物を50℃まで冷却し、食品グレードのKOH(50%w/w溶液)を用いてpHを8.0に調整した。0、75mg、350mg、650mg、または950mgのTL1/大豆タンパク質1kgの存在下、一定分量(800mL)の8%大豆タンパク質スラリーを50℃で60分間インキュベートした。サンプルを85℃に5分間加熱し、酵素を不活性化した。サンプルを氷上で冷し、4℃で貯蔵した。
【0078】
加水分解度(%DH)は、加水分解された特定のペプチド結合のパーセント(すなわち、出発タンパク質中に存在するペプチド結合の総数のうち切断された数)を指す。%DHは、トリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)法を用いて推定した。この手順は正確で再現可能であり、食品タンパク質加水分解物の加水分解度を決定するために一般に適用可能な手順である。このために、0.1gの大豆タンパク質加水分解物を100mLの0.025NのNaOH中に溶解した。一定分量(2.0mL)の加水分解物溶液を8mLの0.05Mホウ酸ナトリウム緩衝液(pH9.5)と混合した。2mLの緩衝加水分解物溶液を0.20mLの10%トリニトロベンゼンスルホン酸で処理した後、室温において暗所で15分間インキュベーションした。4mLの0.1M亜硫酸ナトリウム−0.1Mリン酸ナトリウム溶液(1:99比)を添加することにより反応を失活させ、420nmで吸光度を読み取った。0.1mMのグリシン溶液を標準として用いた。以下の計算を用いてグリシン標準溶液の回収パーセントを決定した:[(420nmにおけるグリシンの吸光度−420nmにおけるブランクの吸光度)×(100/0.710)]。94%以上の値は許容可能であると考えた。
【0079】
表1は、各サンプルの平均TNBS値および%DHを示す。加水分解は6%DHの付近でプラトーになり始め、これは、切断のために容易に利用できるアルギニンおよびリジン部位の数を反映し得ると思われる。この実験は、350mg/kgのTL1による1時間の消化が、十分な加水分解生成物を生じたことを示唆する。
【0080】
【0081】
実施例2.TL1加水分解物のSDS−PAGE分析
0.3%DH、2.2%DH、3.1%DH、4.0%DH、および5.0%DHを有するTL1加水分解物を、本質的に実施例1に記載したとおりに調製した。一定分量の各加水分解物および非加水分解単離大豆タンパク質を、標準的な手順を用いてSDS−PAGEにより分解した。この分析によって、大豆加水分解物中のポリペプチドの分子サイズの、出発大豆タンパク質との比較が可能になった。図1は、クーマシー染色ゲルの画像を示す。非加水分解単離大豆タンパク質は、約5kDa〜約100kDaの範囲の大きさのポリペプチドを含む。0.3%DH加水分解物中のポリペプチドのサイズ範囲は出発材料と同様であったが、この加水分解物は付加的な小さいポリペプチド断片を含有した。より高い%DHを有する加水分解物は、本質的に約20〜30kDaよりも大きいポリペプチドが欠けており、全てが付加的な小さい(<5kDa)ポリペプチドを有していた。2.2%DH、3.1%DH、および4.0%DH加水分解物のポリペプチドパターンはかなり類似していた。しかしなら、5.0%DH加水分解物は、他の加水分解物よりも狭い範囲のポリペプチドサイズ(約0.1〜20kDa)を有した。特に、5.0%DH加水分解物には7Sおよび11Sサブユニットバンドは存在しなかった。(図1、レーン8を参照)。
【0082】
実施例3.LC−MSによるTL1加水分解物中のペプチド断片の分析
実施例1で調製したTL1加水分解物中のペプチド断片を、液体クロマトグラフィ質量分析(LC−MS)によって同定した。2mgの各TL1加水分解物を含有する一定分量を、0.1%ギ酸(1mL)とガラスバイアル中で混合して1〜2分間ボルテックスすることによってLC−MS分析のためのサンプルを調製した。混合物を13,000rpmで5分間遠心分離した。HP(登録商標)−1100(Hewlett Packard(Palo Alto、CA))HPLC機器において、C18分析HPLCカラム(15cm×2.1mm内径5μm、Discovery Bio Wide Pore、Supelco(登録商標)、Sigma−Aldrich(St.Louis、MO))に、一定分量(25μL)の上澄みを注入した。溶出プロファイルは表2に示され、溶媒Aは0.1%ギ酸であり、溶媒Bはアセトニトリル中0.1%のギ酸であった。流速は0.19mL/分であり、カラムのサーモスタット温度は25℃であった。
【0083】
【0084】
MS分析のためのスプリッターシステムを用いて一定分量(10μL)のLC溶離液をESI−MS源に供給した。Thermo FinniganTMLCQTM(Thermo Scientific(Waltham、MA))デカイオントラップ質量分析計を用いて、データ依存性MS/MSおよび動的排除走査事象(dynamic exclusion scan event)のあるデータ依存性MS/MSによりペプチドを分析した。ESI−MSはキャピラリー温度225℃の正イオンモードで実行し、エレクトロスプレーニードルは電圧5.0kVに設定し、走査範囲はm/z400〜2000であった。酵素検索パラメータのないSequest検索エンジン(BIOWORKSTMソフトウェア、Thermo Fisher Scientific(Waltham、MA))によってMS/MS生データをデコンボリューション処理した。National Institutes of HealthにおけるNational Center for Biotechnology Information(NCBI)、またはSwiss Institute of BioinformaticsからのSwiss−Protなどの標準データベースを検索することによってペプチドを同定した。
【0085】
ペプチドは表3に示される。ほぼ全てのペプチド断片は、カルボキシル末端にアルギニンまたはリジンを有した(3つの断片はカルボキシル末端にグルタミンを有した)。リジン残基よりもアルギニン残基を有する末端の断片のほうが約2倍多かった。
【0086】
ペプチド断片の同定によって、βコングリシニンのαサブユニット、βコングリシニンのβサブユニット、グリシニンサブユニットG1、グリシニンサブユニットG3、およびグリシニンGy4の加水分解生成物が各TL1加水分解物中に存在することが明らかになった。同じペプチド断片の多くが各加水分解物で検出された。5.8%および6.1%DHの加水分解物は、P24オレオシンアイソフォームAからの断片も含有した。6.1%DHの加水分解物は、付加的なタンパク質であるトリプシン阻害剤Kti3からの断片の存在を明らかにした。
【0087】
【0088】
(表3続き)
【0089】
実施例4.高加水分解度を有するTL1加水分解物中のペプチド断片のMALDI−MSによる分析
実施例1で調製した6.1%DH大豆加水分解物中のペプチド断片は、マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析(MALDI−TOF/TOF−MS)によっても分析した。最終溶出工程を約50分に延長し、Bio−Rad(登録商標)(Bio−Rad Laboratories(Hercules,CA))フラクションコレクタにおいて1分間隔で画分を集めたことを除いて実施例3に記載されるように、サンプルをHPLCのために調製して分析した。Genevac(登録商標)(Genevac,Ltd(UK))エバポレータにおいて画分#4〜48を30℃よりも低い温度で完全に蒸発させた。
【0090】
このために、乾燥サンプルを50%アセトニトリル中の1%のトリフルオロ酢酸(TFA)溶液200μL中に溶解した。一定分量(1.5μL)の各サンプルを1.5μLのMALDIマトリックス溶液(6.2mgのα−シアノ−4−ヒドロキシケイ皮酸/36%のメタノール(v/v)、56%のアセトニトリル(v/v)、および8%の水1ml)と混合した。サンプルをボルテックスし、遠心分離し、そして1μLをMALDIステンレス鋼標的板にスポットした。さらなる精製およびMS/MS分析のために高品質MSスペクトルを有する13個のサンプルを選択した。それぞれの画分を乾燥させ、PCR管内で1%のアセトニトリル中の0.1%のギ酸溶液10μL中に再懸濁させ、30秒間ボルテックスし、2000rpmで10秒間遠心分離した。ボルテックスおよびスピニングを5回繰り返した。NuTip(10μLの多孔質黒鉛炭素SPEチップ)を用いてペプチド混合物を精製した。予め湿潤させた(60%のアセトニトリル中の0.1%のギ酸、続いて0.1%ギ酸で平衡にした)チップを用いてサンプルを含有するPCR管からペプチドを抽出した。合計50回、サンプル溶液全体をチップ内に吸い込んで管内に排出した。次に、サンプル負荷チップを0.1%のギ酸(10μL)で5回洗浄した(吸込みおよび排出)。最後に、60%のアセトニトリル中の0.1%ギ酸10μLでペプチドをチップから溶出させた。溶出方法は、同じ溶媒混合物(10μL)を用いて10回繰り返した。貯蔵された溶出サンプル溶液を速度真空下で乾燥させ、50%のアセトニトリル中の1%のTFAの溶液1.5μLおよびMALDIマトリックス溶液1.5μL中に再懸濁させた。混合物を30秒間ボルテックスし、2000rpmで5秒間遠心分離し、1μLをMALDI標的板にスポットした。MALDI−TOF/TOF機器(ABI−4700)においてMS分析を実施した。機器はND:YAG(335nm)を備え、MSおよびMS/MSモードの両方において200Hzの反復率で動作した。第1のTOFにおいて20KeVの加速エネルギーでデータを記録し、電圧mアインツェル(Einzel)レンズは6KeVに設定した。酵素検索パラメータのないMASCOT検索エンジン(MATRIX SCIENCE)によって、MS/MSデータをデコンボリューション処理した。NCBIまたはSwiss−Protなどの標準データベースを検索することによってペプチドを同定した。
【0091】
MALDI−MSにより同定されたペプチドは表4に示される。LC−MS(ESI)で同定されたものと同じペプチド断片のいくつかをこの分析で同定した。例えば、βコングリシニンのαサブユニット、βコングリシニンのβサブユニット、グリシニンサブユニットG1、およびグリシニンGy4の断片が両方の分析で発見された。MALDI−MS分析は、βコングリシニンαプライムサブユニット、グリシニンサブユニットG2、および62Kスクロース結合タンパク質前駆体および種子成熟タンパク質LEA4などの付加的なポリペプチドの断片を検出した。
【0092】
【0093】
実施例5.TL1またはALCALASE(登録商標)による単離大豆タンパク質の加水分解
TL1またはALCALASE(登録商標)2.4L、Novozymes(Bagsvaerd、Denmark)から入手可能な微生物サブチリシンプロテアーゼのいずれかにより、種々の加水分解物の官能特性および機能性を比較し得るように、単離大豆タンパク質を加水分解した。5分間の穏やかな混合を用いて72gのSUPRO(登録商標)500Eを828gの水道水中にブレンドすることによって、8%単離大豆タンパク質のスラリーを調製した。2滴の消泡剤を添加した。2NのKOHを用いてスラリーのpHを8.0に調整した。一定分量(800g)のスラリーを混合しながら50℃に加熱した。様々な量のTL1ペプチダーゼまたはALCALASE(登録商標)(ALC)プロテアーゼを添加して、0、1%DH、2%DH、4%DH、および6%DHの目標の加水分解度を達成した。自動滴定装置を用いて、反応のpHをpH8.0で一定に保持した。50℃で所望の加水分解度を生じる時間インキュベートした後、サンプルを85℃に5分間加熱し、酵素を不活性化し、溶液をpH7.0に調整した。サンプルを氷上で冷やし、4℃で貯蔵した。TNBS法を用いて加水分解度(%DH)を決定した(実施例1に記載されるように)。表5は、添加した酵素の量、反応時間、反応中にpHを滴定するために添加したKOHの体積、平均TNBS値、および%DHを示す。
【0094】
【0095】
実施例6.TL1およびALCALASE(登録商標)加水分解物の官能分析
独占的な官能スクリーニング法であるSolae Qualitative Screening(SQS)法を用いて、実施例5で調製されるTL1およびALCALASE(登録商標)加水分解物の風味特性を査定した。この方法は試験サンプルおよび対照サンプル間の直接比較に基づいており、定性的差異および方向性の(directional)定量的差異の両方を提供する。7人の訓練された査定者集団に、一定分量の各サンプル(5%スラリーに希釈)と、非加水分解単離大豆タンパク質の5%スラリーである対照サンプルとを提供した。食品グレードのリン酸を用いて各溶液のpHを7.0に調整した。
【0096】
評価プロトコルは、カップの底をテーブル上に置いたままでカップを3回かき混ぜることを含んだ。サンプルを2秒間そのままにした後、各査定者は約10mL(小さじ2)を少しずつ飲み、彼女/彼の口の中で10秒間音を立て、そして吐き出した。次に、査定者は表6に示されるスケールに従って試験サンプルと対照サンプルとの差異を評定した。
【0097】
【0098】
表7は、各サンプルの平均SQSスコアを示す。TL1加水分解物は、一般に、対照サンプル(未処理の単離大豆タンパク質)とは中程度の差異であると評定された。ALCALASE(登録商標)(ALC)加水分解物は対照とはわずか〜極度の差異を有すると評定された。
【0099】
【0100】
試験サンプルが対照サンプルとは異なる(すなわち、2、3、または4のSQSスコア有する)と評定された場合、試験サンプルが対照サンプルとどのように異なるかについての診断情報を提供するために試験サンプルをさらに評価した。従って、試験サンプルが対照サンプルよりもわずかに多い、中程度に多い、または極度に多い特性(表8を参照)を有する場合には、それぞれ+1、+2、+3のスコアを割り当てた。同様に、試験サンプルが対照サンプルよりもわずかに少ない、中程度に少ない、または極度に少ない特性を有する場合に、それぞれ−1、−2、−3のスコアを割り当てた。この分析は、試験サンプルと対照サンプルとの間の方向性の定量的差異の査定を提供する。
【0101】
【0102】
9つの風味特性の方向性の差異は、同様の%DHレベルを有する加水分解物について図2Aおよび2Bに示される。全ての%DHレベルにおいて、TL1加水分解物はALC加水分解物よりも大きい穀類および大豆/豆類特性の低下と、小さい渋味および苦味の増大とを有した。最も高い%DHのALC加水分解物は、対照と比べて特に大きい苦味の増大を有した。
【0103】
実施例7.TL1およびALCALASE(登録商標)加水分解物の溶解度
加水分解物を2.5%固形分に希釈し、4℃、pH7.0で1週間貯蔵することによって、実施例5で調製したTL1およびALCALASE(登録商標)加水分解物のそれぞれの溶解度を評価した。サンプルを視覚的に評価した。写真画像は図3Aに示される。TL1加水分解物は全てほとんど沈降物がなかったが、5.1%DHのTL1加水分解物は、より低い%DHのものと比べて透明性も増大していた。対照的に、最高の%DHを有するALC加水分解物は、著しい量の沈降物があった。図3Bは、pH8.2、4℃で3週間貯蔵した、2.5%固形分に希釈した6.1%DHのTL1加水分解物および13.8%DHのALC加水分解物の管の画像を示す。TL1加水分解物は沈降物がなく、pH8.2、4℃で長期間安定であることが示されたが、ALC加水分解物は沈降物を有した。
【0104】
実施例5で調製したTL1およびALC加水分解物のそれぞれにおいて、溶解度に対するpHの効果を試験した。それぞれの一定分量をpH2、pH3、pH4、pH5、pH6、pH7、pH8、またはpH9に調整し、サンプルを500×gで10分間遠心分離した。遠心分離の前の溶液中の固体物質の量を遠心分離の後の溶液中の固体物質の量と比較して、可溶性固形分指数(SSI)を得た。TL1およびALC加水分解物の%可溶性固形分はpHの関数として図4Aおよび4Bにそれぞれ示される。溶液は全て、約pH4〜pH5のpHレベル(すなわち、大豆タンパク質の等電点)で低下した溶解度と、それよりも低いpH値でいくらか増大した溶解度とを有した。しかしながら、より高いpH値では、TL1加水分解物は全てpH6.0よりも高いレベルで優れた溶解度を有した(図4A)が、ALC加水分解物のいくつかはより高いpHレベルで低下した溶解度を有した(図4B)。図4Cは、低いおよび高い%DHにおけるTL1およびALC加水分解物の溶解度の直接比較をpHの関数として示す。
【0105】
実施例8.TL1加水分解物の透過度
実施例5で調製したTL1加水分解物のいくつかの透過度を測定した。このために、異なる割合の固形分(すなわち、0.5%、1.0%、1.5%、2.0%、および2.5%)を有する1%DHおよび5.1%DHのTL1加水分解物を調製した。一定分量の各タンパク質スラリーをTURBISCAN(登録商標)Lab Expert装置(Formulaction(I’Union、France))に入れ、合計60秒間、毎秒透過度を記録した。表9は、各サンプルの平均パーセント透過度を示す。0.5%固形分での1.0%DH加水分解物の1.3%の透過度と比較して、5.1%DHのTL1加水分解物は0.5%固形分で37.4%の透過度を有した。これらのデータは視覚的に観察されたこと(図3Aを参照)を確認する。
【0106】
【0107】
実施例9.TL1または他のエンドペプチダーゼを用いて調製した大豆加水分解物の苦味分析
TL1、ALCALASE(登録商標)(ALC)、またはアクロモバクター・リティカス(Achromobacter lyticus)からのリジルエンドペプチダーゼ(SP3、配列番号4)を用いて、本質的に実施例1および5に記載したように、単離大豆タンパク質を加水分解した。酵素濃度および反応条件は、実施例1に記載されるTNBS法によって決定される場合に約5〜6%DHの%DH値を与えるように選択した。実施例6に記載されるSQS法を用いた苦味に焦点を合わせた評価のために加水分解物を5人の査定者集団に与えた。
【0108】
平均SQSスコアおよび診断的な苦味スコアは表10に示される。TL1およびSP3加水分解物は、対照サンプル(非加水分解単離大豆タンパク質)とはわずかな差異を有すると評定された。同様に、TL1およびSP3加水分解物は、対照サンプルよりもほんのわずかだけ苦くないと評定された。対照的に、ALC加水分解物は対照サンプルとは極めて異なり、対照サンプルよりも極めて苦いと評定された。
【0109】
【0110】
実施例10.パイロットプラントTL1加水分解物の物理特性
単離大豆タンパク質のTL1加水分解物の製造をベンチ規模からより大きいパイロットプラント規模に拡大し、加水分解物の官能および機能特性を分析した。このために、出発材料は大豆タンパク質カードであった。大豆タンパク質カード材料を製造するために、大豆フレーク、大豆粉、または大豆グリットを約pH6.5〜約pH10の水溶液で連続的に抽出して、フレーク/粉/グリット状のタンパク質を繊維などの不溶性材料から分離した。フレーク重量を基準として0.05〜0.15%の低レベルの亜硫酸塩を抽出媒体に添加した。フレーク、粉、またはグリットは、第1の抽出のために約pH6.5〜7.0の水酸化ナトリウム水溶液で抽出し、次に第2の抽出のために約pH8.5〜10の溶液で抽出した。大豆フレーク/粉/グリット材料に対する水の重量比は、約8:1〜約16:1であった。
【0111】
抽出の後、ろ過または遠心分離によって抽出物を不溶性材料から分離した。次に、分離した抽出物のpHを適切な酸で大豆タンパク質の等電点付近(約pH4〜5、または好ましくはpH4.4〜4.6)に調整して、大豆タンパク質が大豆可溶分(ガス誘発性のオリゴ糖および他の水溶性炭水化物を含む)から分離されるように大豆タンパク質カードを沈殿させた。適切な食用酸は塩酸、硫酸、硝酸、または酢酸を含む。沈殿したタンパク質材料(カード)を遠心分離により抽出物(乳清)から分離して、大豆タンパク質カード材料を製造した。約5:1〜約12:1の水対タンパク質材料の重量比で、分離した大豆タンパク質カード材料を水で洗浄して残留可溶分を除去した。
【0112】
まず大豆タンパク質カード材料を水酸化ナトリウム溶液または水酸化カリウム溶液などのアルカリ水溶液またはアルカリ土類水溶液で約pH8.0〜約pH9.0、好ましくは約pH8.0〜8.5に中和した。好ましくはジェット調理およびフラッシュ冷却によって、中和した大豆タンパク質カードを加熱および冷却した。次に、大豆タンパク質加水分解物が約35〜55のTNBS値を有するように大豆タンパク質材料を加水分解するために有効な温度及び時間で大豆タンパク質材料をTL1酵素で処理した。タンパク質カード重量を基準として0.005%〜0.02%の酵素タンパク質の濃度で、酵素を大豆タンパク質材料に添加した。40℃〜60℃、好ましくは約50℃の温度で30分〜120分間、好ましくは50分〜70分間、酵素を大豆タンパク質カード材料と接触させてタンパク質を加水分解した。加水分解大豆タンパク質材料を、酵素を不活性化するために有効な温度に加熱することによって加水分解を終了させた。最も好ましくは、加水分解大豆タンパク質カード材料をジェット調理して酵素を不活性化し、フラッシュ冷却し、次に上記のようにスプレー乾燥した。
【0113】
表11は、加水分解物の典型的なセットのための反応パラメータを示す。加水分解度は、本質的に実施例1に記載されるように、TNBS法を用いて決定した。各サンプルのTNBS値および%DHも表11に示される。対照サンプルは、非加水分解単離大豆タンパク質(すなわち、SUPRO(登録商標)500E)および本質的に市販の単離大豆タンパク質加水分解物(すなわち、酵素の混合物で2.8%DHに加水分解したSUPRO(登録商標)XT219)を含んだ。
【0114】
【0115】
標準手順を用いて、TL1加水分解物および対照サンプルをSDS PAGEにより分析した。図5は、ゲルの画像を示す。この分析により、主要な大豆貯蔵タンパク質サブユニットの全てがTL1により切断されることが明らかになった。
【0116】
実施例11.パイロットプラントTL1加水分解物の溶解度および粘度
実施例10で調製したパイロットプラントTL1加水分解物および対照サンプルの溶解度も調べた。一定分量の各サンプルをpH2、pH3、pH4、pH5、pH6、pH7、pH8、およびpH9に調整し、本質的に実施例7に記載されるように可溶性固形分指数(SSI)を決定した。図6に示されるように、TL1加水分解物サンプルの全てがpH6以上のpHレベルでほぼ100%可溶性であったが、加水分解対照サンプルはpH6でわずか約40%の可溶性であった。さらに、加水分解度が増大すると、等電点(すなわち、pH4〜5付近)における溶解度も増大する。
【0117】
TL1加水分解物のいくつかおよび対照サンプルの粘度を種々の割合の固形分(すなわち、12〜20%の固形分)において決定した。小型のWaring(登録商標)(Waring Laboratory(Torrington、CT))ブレンダーを用いて、70グラムの全スラリー含量でサンプルを分散させた。発泡を低減するために最少のせん断を用いてサンプルを合計4分間ブレンドした。次に、小型サンプルアダプターおよびスピンドル18を有するBrookfield粘度計を用いて室温でサンプルを分析した。各サンプルを2通り調製及び分析した。図7は、種々のパラメータに対して粘度測定値をセンチポアズ(cps)でプロットする。単離品は10,000cpsよりも大きく、これは、12%固形分ではBrookfieldのためには粘性過ぎた。この分析によって、加水分解度が増大すると粘度が低下し、固形分パーセントが増大すると粘度が増大することが明らかになった。図8は、粘度および溶解度データを要約する。溶解度は、可溶性固形分指数(SSI)および窒素可溶性指数(nitrogen soluble index)(NSI、全窒素の関数としての水溶性窒素のパーセントである)で表される。図8に示されるように、加水分解度が増大すると粘度は低下し、溶解度は増大する。
【0118】
TL1加水分解物のいくつかにおいて存在する風味揮発性物質の量を、非加水分解単離大豆タンパク質中に存在する量と比較した。風味揮発性物質は、標準的なGC技法を用いて決定した。非加水分解単離大豆タンパク質と比較してTL1加水分解物中では、ヘキサナール、ヘプタナール、ペンタナール、3−オクテン−2−オン、および1−オクテン−3−オールのレベルは低下した(図9Aおよび9B)。
【0119】
実施例12.パイロットプラントTL1加水分解物の官能分析
本質的に実施例6に記載されるSQS法を用いて、実施例10で調製したパイロットプラントTL1加水分解物の風味プロファイルを分析した。11または12人の訓練された査定者集団が、対照サンプル(すなわち、非加水分解単離大豆タンパク質)と比較して加水分解物を評定した。表12は平均SQSスコアを示し、図10A〜Dは診断スコアのプロットを示す。一般に、TL1加水分解物は対照サンプルと比べてわずかに少ない穀類および大豆/豆類特性と、低下した粘度とを有したが、特により高い加水分解度(%DH)では、増大した苦味特性を有した。加水分解対照サンプル(すなわち、サンプル5−3)はわずかに低下した穀類特性を有したが、中程度に増大した苦味および渋味特性を有した。従って、TL1加水分解物は一般に、加水分解対照サンプルよりも苦くないと評定された。
【0120】
【0121】
図11はTL1加水分解物の官能分析の要約を示し、重要な官能特性が加水分解度の関数としてプロットされている。加水分解度が増大すると加水分解物の全体の官能スコアは低下し、加水分解度が増大すると苦味スコアが増大する。約2%DH未満を有する加水分解物は最良の風味を有し、苦味感が最も少なかったと思われる。
【0122】
実施例13.大豆のTL1加水分解物中のペプチド断片の分析
Q−STAR(登録商標)XL MS(Applied Biosystems Inc.(ABI)(Foster City、CA))およびLCQ−Deca MS(ThermoFinnigan(Hertfordshire、Great Britain))を用いて、LC−MS分析によって種々の加水分解度を有する単離大豆タンパク質のTL1加水分解物中のペプチドを同定した。
【0123】
およそ(0.5〜2.0mg)の各サンプルを0.5mLの50mMの重炭酸アンモニウム中に溶解した。データ依存性の収集を用いるLC−MS/MS分析のために内径75umのカラムに5μLを注入した(LC流速は180nL/分であった)。C18 PepMap100カラム(Dionex(UK))を用いるLC Packings UltimateナノLC/C18 PepMap100カラム(Dionex)を用いるEksigent 2DナノLCによって、ナノLCを実施した。溶出プロファイルは表13に示される。溶媒AはMilliQ水中の5%のアセトニトリル、0.1%のギ酸であり、溶媒BはMilliQ水中の95%のアセトニトリル、0.075%のギ酸であった)。
【0124】
【0125】
ナノエレクトロスプレー源(Protana XYZマニピュレータ)を備えたABI QSTAR(登録商標)XL hybrid QTOF MS/MS質量分析計(Applied Biosystems(Foster City、CA))を用いてサンプル分析を進めた。2.5kVでホウケイ酸塩(borosilicate)ナノエレクトロスプレーニードルからポジティブモードのナノエレクトロスプレーを発生した。製造業者からの標準物を用いて機器のm/z応答を毎日較正した。以下のパラメータを有するAnalyst QSソフトウェア中の情報依存性データ収集(IDA)特徴を用いて、TOF質量スペクトルおよび生成イオンスペクトルを取得した。TOF MSおよびMS/MSの質量範囲はそれぞれ、m/z300〜2000および70〜2000であった。毎秒、TOF MS前駆体イオンスペクトルを累積した後、3つの生成イオンスペクトルをそれぞれ3秒間累積した。TOF MSからMS/MSへの切換えは、ペプチドの質量範囲(m/z 300〜2000)、前駆体の荷電状態(2〜4)およびイオン強度(>50カウント)によって始動させた。DP、DP2、およびFPの設定はそれぞれ60、10、および230であり、回転衝突エネルギーを使用した。
【0126】
Analyst QSソフトウェア(Applied Biosystems)を用いてペプチドエレクトロスプレータンデム質量スペクトルを処理した。以下の制約を有するMASCOTバージョン1.9を用いてNCBIまたはSwiss−Protなどの標準データベースを検索することによってペプチドを同定した:どの酵素も1つまでの失敗した切断部位を持たず、MSおよびMS/MS断片イオンの質量許容差はそれぞれ0.8/2.0および0.8Daである。選択される前駆体イオンの電荷状態は1〜3であった。
【0127】
LCQ−Deca MSを用いるLC−MS分析のために、1)ガラスバイアル中で2mgの各TL1加水分解物を含有する一定分量を0.1%のギ酸(1mL)と混合し、1〜2分間分間ボルテックスし、そしてマイクロ遠心分離機において混合物を13,000rpmで5分間遠心分離することによって、あるいは2)マイクロ遠心管内で3mgの各TL1加水分解物を含有する一定分量および0.1%のギ酸(300uL)を混合し、混合物を1〜2分間ボルテックスすることによって、サンプルを調製した。次に、ペプチドの単離のために予め清浄にしたC18チップ(Glygen Corp.(Columbia、MD))に全混合物を移した。60%アセトニトリル中の0.1%のギ酸(300μL)で溶出し、0.1%のギ酸(600μL)で平衡にすることによってC18チップを清浄にした。0.1%のギ酸で溶出した材料画分を廃棄し、ペプチドを60%アセトニトリル中0.1%のギ酸(600μL)で溶出させた。Genevacエバポレータにおいて300℃で10分間溶媒混合物を蒸発させることによって、ペプチド溶液の全体積を200μLに減らした。本質的に実施例3に記載されるようにLC−MS分析を実施した。
【0128】
表14は、大豆タンパク質のTL1加水分解物中で同定されたペプチドの全てを示す。
【0129】
【0130】
(表14続き)
【0131】
(表14続き)
【0132】
(表14続き)
【0133】
実施例14.他のエンドペプチダーゼによる大豆タンパク質の加水分解
種々のエンドペプチダーゼ(例えば、SP3、フザリウム・ソラニ(Fusarium solani)からのトリプシン様プロテアーゼ(TL5、配列番号2)、フザリウムcf.ソラニ(Fusarium cf. solani)からのトリプシン様プロテアーゼ(TL6、配列番号3)、ブタトリプシン、またはウシトリプシン)によって単離大豆タンパク質を処理し、別の源からのトリプシンまたはトリプシン様プロテアーゼが大豆タンパク質を加水分解するために使用できるかどうかを決定した。
【0134】
単離大豆タンパク質(すなわち、SUPRO(登録商標)500E)の8%スラリーを調製し、pH8に調整し、100mgプロテアーゼ/kg大豆タンパク質の最終濃度のためにエンドペプチダーゼの1つと混合した。プロテアーゼを含有しない対照サンプルも含まれた。スラリーを混合しながら水浴中50℃で2時間インキュベートし、次にプロテアーゼを熱不活性化した(80℃で30分間)。5%大豆タンパク質の最終濃度のために各サンプルに脱イオン水を添加した。
【0135】
加水分解度を評価するために、4〜20%Tris−グリシンゲル(Novex Inc.(Wadsworth、OH))において、一定分量の各サンプルをSDS−PAGEにより分解した。図12に示されるように、TL1、SP3、TL5、およびTL6は、大豆タンパク質をより小さいポリペプチド断片に加水分解したが、ブタトリプシンまたはウシトリプシンのいずれかで処理した後の大豆タンパク質加水分解は少ししかないかまたは全くなかった(レーン7および8を参照)。ブタおよびウシトリプシンが大豆タンパク質を切断できないことは、37℃および50℃(pH8)の両方で観察された。
【0136】
実施例15.Bowman−Birk阻害剤によるトリプシン様プロテアーゼの阻害
大豆は、大豆材料の製造中に加熱処理に持ちこたえる活性プロテアーゼ阻害剤を含有するので、ブタおよびウシトリプシンが大豆タンパク質材料を加水分解できなかったことはあり得る。この仮説を試験するために、プロテアーゼを種々の濃度のBowman−Birk阻害剤の市販の調製物と共にインキュベートし、残留酵素活性を測定した。
【0137】
アッセイ緩衝液(0.1MのTris、0.02%のBrij 35、pH8.0)によりプロテアーゼを0.001mg/mlに希釈し、マイクロタイタープレートのウェル内で種々の濃度のBowman−Birk阻害剤(Cat# T−9777、Sigma−Aldrich)と混合した。攪拌しながらプレートを室温で1時間インキュベートした。0.6mg/mlの基質、Boc−Val−Leu−Gly−Arg−p−ニトロアニリド(L−1205、Bachem Biosciences(Prussia、PA))を添加することによって、残留活性を測定した。室温で10秒ごとに3分間、405nmにおいて吸光度を測定した。405nmで測定された吸光度の初期傾斜から活性を計算した。残留活性は、阻害剤のないウェル内の活性に対する、阻害剤を有するウェル内の活性として計算した。
【0138】
表15に示されるように、微生物プロテアーゼよりも低い濃度のBowman−Birk阻害剤によってブタおよびウシトリプシンは阻害された。従って、大豆材料は、動物由来のトリプシンの活性を阻害する化合物を含有すると思われる。
【0139】
【0140】
実施例16.トリプシン様プロテアーゼのトリプシン比および同定
トリプシン様活性を有する酵素を同定するためにアッセイを開発した。このために、一般式Suc−Ala−Ala−Pro−Xxx−pNA(式中、Xxxは20種の天然アミノ酸残基のうちの1つの3文字の略語であり、pNAはパラ−ニトロアニリドである)(Bachem Biosciences(King of Prussia、PA))を有する色素生産性の基質を用いてトリプシン様活性を測定した。エンドペプチダーゼがXxxのカルボキシル末端側でペプチド結合を切断したら、パラ−ニトロアニリドが放出され、黄色が生じ、本質的に実施例15に記載されるように測定した。XxxがAla、Arg、Asp、Glu、Ile、Leu、Lys、Met、PheまたはValである10種のpNA基質を使用した。
【0141】
以下のエンドペプチダーゼを試験した:ALCALASE(登録商標)、SP3、TL1、およびブタトリプシン。クロマトグラフィにより全ての酵素を高純度に精製した。すなわち、クーマシー染色SDS−ポリアクリルアミドゲルにおいて各ペプチダーゼに対してただ1つのバンドが見られた。活性がSuc−Ala−Ala−Pro−Xxx−pNA基質に関してpH最適値における活性の少なくとも半分であるpH値において、各酵素の活性を測定した。これらの基質に関して、ALCのpH最適値はpH9であり、他の3つのペプチダーゼのpH最適値はpH10であった。アッセイ緩衝液は、100mMのコハク酸、100mMのHEPES、100mMのCHES、100mMのCABS、1mMのCaCl2、150mMのKCl、および0.01%のTriton X−100、pH9.0であった。20μLの各ペプチダーゼ希釈液(0.01%のTriton X−100中に希釈)をマイクロタイタープレートの10個のウェルに入れた。各ウェルに10種のpNA基質の1つを200μL添加する(50mgを1.0mlのDMSO中に溶解し、さらにアッセイ緩衝液で90倍に希釈した)ことによってアッセイを開始した。ペプチダーゼ活性の尺度としてOD405の初期増加を監視した。4分の測定時間内に直線的なプロットが達成されなければ、ペプチダーゼをさらに希釈してアッセイを繰り返した。
【0142】
トリプシン比は、ArgまたはLysのいずれかを含有する基質による最大活性を8つの他の基質のいずれかによる最大活性で割って計算した。トリプシン様エンドペプチダーゼは、100よりも大きいトリプシン比を有するエンドペプチダーゼと定義した。
【0143】
活性レベルは、最高活性およびトリプシン比を有するSuc−Ala−Ala−Pro−Xxx−pNA基質の活性に対する活性として表16に示される。アッセイはpH9で実施され、試験ペプチダーゼのうちの3つはpH9よりも高いpH最適値を有するが、pH9におけるこれらの3つのペプチダーゼの活性は、pH最適値における活性の半分よりも大きかった。従って、この分析によって、アクロモバクター・リティカス(Achromobacter lyticus)プロテアーゼ(SP3)、フザリウム(Fusarium)トリプシン様プロテアーゼ(TL1)およびブタトリプシンはトリプシン様エンドペプチダーゼであるが、ALCALASE(登録商標)(ALC)はトリプシン様エンドペプチダーゼでないことが明らかになった。
【0144】
【0145】
実施例17.大豆および乳製品タンパク質の組み合わせから得られるTL1加水分解物
単離大豆タンパク質および単離乳製品タンパク質の組み合わせを、組み合わせの機能特性および官能特性を評価できるように、TL1によって種々の加水分解度に加水分解した。
【0146】
単離大豆タンパク質(SUPRO(登録商標)500E)およびカゼインナトリウム塩(Alanate(登録商標180、NZMP Inc.(Wellington、New Zealand))の50/50混合物を穏やかに混合しながら水中に分散させることによって、大豆および乳製品タンパク質の5%スラリーを製造した。混合物を80℃に加熱して、5分間保持し、50℃に冷却し、そして1MのNaOHを用いてpHを8.0に調整した。一定分量のスラリーを中位に混合しながら50℃に加熱し、様々な量のTL1(無処理のタンパク質1kgあたり約17〜600mgの酵素タンパク質)を添加して、0、2%DH、4%DH、および6%DHの目標の%DH値を達成した。50℃で所望の加水分解度を生じるための時間(約60分間)インキュベートした後、サンプルを90℃に3分間加熱して、酵素を不活性化した。サンプルを氷上で冷やし、4℃で貯蔵した。TNBSを用いて加水分解度(%DH)を決定した(実施例1に記載されるように)。
【0147】
2つの大豆/乳製品TL1加水分解物(すなわち、4.3%DHおよび6.7%DH)において溶解度に対するpHの効果を試験した。それぞれの一定分量をpH5、pH6、pH7、またはpH8に調整し、サンプルを500×gで10分間遠心分離した。遠心分離の前の溶液中の固体物質の量を、遠心分離の後の溶液中の固体物質の量と比較して、可溶性固形分指数(SSI)を得た。pHの関数としての%可溶性固形分は図13に示される。溶液は両方共、約pH5のpHレベル(すなわち、大豆タンパク質の等電点付近)において低下された溶解度を有した。しかしながら、大豆/乳製品TL1加水分解物は両方共、約pH6.0以上のレベルにおいて優れた溶解度を有した。
【0148】
実施例18.大豆/乳製品のTL1加水分解物中のペプチド断片の分析
実施例17で調製した大豆/乳製品TL1加水分解物中のペプチド断片は、上記で詳述した方法(実施例3、4、および13を参照)を用いて、液体クロマトグラフィ質量分析(LC−MS)によって同定した。この研究で同定したペプチド断片の配列は表17に記載される。4つの新しい大豆由来のペプチドを同定した(すなわち、配列番号174、175、176、および177)。乳製品由来の配列は配列番号178〜197である。
【0149】
【0150】
(表17続き)
【0151】
実施例19.他のタンパク質材料から得られるTL1加水分解物
様々な他の植物由来のタンパク質材料をTL1で処理して、さらなる加水分解物を生成した。これらの加水分解物は、小さい規模(すなわち、ベンチトップ)で製造した。このために、キャノーラタンパク質単離物、小麦グルテン、またはコーン胚芽タンパク質のいずれかの5%スラリーを、80℃よりも高い温度で5分間変性させた。タンパク質スラリーを、水酸化ナトリウム溶液または水酸化カリウム溶液などのアルカリ水溶液またはアルカリ土類水溶液で約pH8.0〜8.5に中和した。次に、タンパク質材料を加水分解するために十分な温度および時間で、タンパク質スラリーのそれぞれをTL1酵素で処理した。タンパク質カード重量を基準として0.01%〜0.08%の酵素タンパク質の濃度でTL1酵素をタンパク質スラリーに添加した。約50℃の温度で50分〜70分の間、酵素をタンパク質カード材料と接触させて、タンパク質を加水分解した。加水分解大豆タンパク質材料を、酵素を有効に不活性化する温度に加熱することによって加水分解反応を終了させた。
【0152】
表18は、加水分解物の典型的なセットのための反応パラメータを示す。TL1酵素の活性は、タンパク質100kgあたりに存在するNH2のモル数を決定することによって測定される%DHに基づいて測定した。増大したTNBS値は、酵素活性を実証する。活性は各タンパク質のために最適化されないが、酵素活性はタンパク質材料の懸濁または溶解度によって影響を受けるように見えた。
【0153】
【0154】
標準的な手順を用いてSDS PAGEによってTL1キャノーラ、コーン、または小麦加水分解物および非加水分解対照サンプルを分析した。図14はゲルの画像を示す。この分析によって、各タンパク質材料の主要なタンパク質サブユニットの全てがTL1によって切断されることが明らかになった。
【0155】
上記で詳述した手順を用いてキャノーラ、コーン、または小麦TL1加水分解物中の代表的なペプチドを同定した。表19、20、および21はそれぞれ、キャノーラ、コーン、および小麦のTL1加水分解物中で同定された代表的なペプチドを示す。
【0156】
【0157】
(表19続き)
【0158】
【0159】
【0160】
実施例20.大豆加水分解物および無処理の乳製品タンパク質の組み合わせの官能分析
大豆のTL1加水分解物を無処理の乳製品タンパク質(すなわち、カゼイン塩または乳清)と混ぜ合わせた。上記の実施例6で詳述されたSQS法を用いて、大豆加水分解物および無処理の乳製品タンパク質のこれらの組み合わせの官能プロファイルを、非加水分解(無処理の)大豆および無処理の乳製品タンパク質の組み合わせと比較した。約2.1%DHの加水分解度を有するTL1大豆加水分解物を5%スラリーに希釈した。非加水分解大豆タンパク質も5%スラリーに希釈した。1回の試行のためにTL1加水分解物をカゼインナトリウム塩(1:1)と混合し、カゼインナトリウム塩と混合した非加水分解大豆タンパク質(1:1)である対照サンプルに対して査定した。第2の試行では、TL1加水分解物を乳製品の甘味乳清(4:1)と混合し、乳製品の甘味乳清と混合した非加水分解大豆タンパク質(4:1)である対照サンプルに対して査定した。
【0161】
表22は、各サンプルの平均SQSスコアおよび診断評定を示す。TL1加水分解物を含む組み合わせは、一般に、対照サンプルとはわずかに異なると評定された。診断スコアは、TL1加水分解物および無処理の乳製品タンパク質の組み合わせが、対照サンプル(すなわち、非加水分解大豆および無処理の乳製品タンパク質の組み合わせ)と比べて改善された官能特性を有することを示した。
【0162】
【0163】
実施例21.タンパク質加水分解物を含む飲料の分析
種々の加水分解度を有するTL1単離大豆タンパク質加水分解物を用いて、いくつかのプロトタイプのそのまま飲める(RTD)中性飲料および乾燥ブレンド飲料ミックスを調製した。飲料には、豆乳モデル飲料(すなわち、8オンスの1回分あたり8.5gのタンパク質を有する、4%の大豆タンパク質単離物を含有する風味付けされていない低脂肪豆乳飲料)、組み合わせモデル飲料(すなわち、8オンスの1回分あたり8gのタンパク質を有する風味付けされていない飲料、ここで、全タンパク質の半分は大豆からのものであり、タンパク質のもう半分はスキムミルクからのものである)、および乾燥ブレンドモデル飲料が含まれた。RTD飲料の物理特性および官能特性を、種々の源の非加水分解大豆タンパク質および/または乳製品タンパク質で調製した飲料の特性と比較した。
【0164】
表23は、豆乳モデル飲料の配合を示す。豆乳モデル飲料を調製するために、クエン酸塩を水中に溶解し、大豆タンパク質を添加し、混合速度を上昇させて、タンパク質を水中に分散させた。タンパク質が十分に分散されたら、スラリー温度を77℃(170°F)に上昇させて混合速度を低下させ、スラリーを10分間混合した。マルトデキストリン、糖および安定剤を予め一緒にブレンドし、タンパク質スラリーに添加した。スラリーを低速で5分間混合した。ヒマワリ油をスラリーに添加し、混合物が均質になるまで低速で混合を継続した(約3分間)。45%の水酸化カリウムを用いてスラリーのpHを約7.0〜7.2に調整した。スラリーを500psi(第2段階)および2500psi(第1段階)で均質にした。超高温(UHT)処理によってスラリーを141℃(286°F)で6秒間低温殺菌した。混合物を31℃(88°F)に冷却し、滅菌ボトル内に詰めた。製品を冷蔵温度で貯蔵した。
【0165】
【0166】
表24は組み合わせモデル飲料の配合を示す。組み合わせモデル飲料を調製するために、穏やかに混合しながらクエン酸塩を水中に溶解した。大豆タンパク質を添加し、混合速度を上昇させて、タンパク質を水中に分散させた。タンパク質が十分に分散されたら、スラリー温度を77℃(170°F)に上昇させて混合速度を低下させ、スラリーを10分間混合した。マルトデキストリン、糖、ビタミン/ミネラルプレミックス、リン酸マグネシウム、セルロース、および安定剤を予め一緒にブレンドし、タンパク質スラリーに添加した。スラリーを低速で5分間混合した。ヒマワリ油をスラリーに添加し、混合物が均質になるまで低速で混合を継続した(約3分間)。45%の水酸化カリウムまたは50%のクエン酸を用いてスラリーのpHを約6.9〜7.1に調整した。スキムミルクを72℃(162°F)にゆっくり加熱し、加熱したスキムミルクに大豆タンパク質スラリーを添加し、混合物を3分間ゆっくり混合した。混合物を500psi(第2段階)および2500psi(第1段階)で均質にした。超高温(UHT)処理によって混合物を141℃(286°F)で6秒間低温殺菌した。混合物を31℃(88°F)に冷却し、滅菌ボトル内に詰めた。製品を冷蔵温度で貯蔵した。
【0167】
【0168】
乾燥ブレンドモデル飲料の配合は表25に示される。飲料ミックスを製造するために、大豆タンパク質およびココア粉末をふるい、中間速度で15分間、他の原料全てと混合した。乾燥粉末は、消毒した容器内に貯蔵した。
【0169】
【0170】
飲料の粘度を測定するために、豆乳モデルおよび組み合わせモデル飲料を均一の分散液が達成されるまで振とうさせ、ブレンダーを用いて1回分のサイズの乾燥ブレンドモデル飲料の乾燥粉末を、低速で30〜40秒間または完全に分散するまで、特定の量の水中に完全に分散させた。各サンプルをすぐに180mlのビーカー(no.14070、Kimax(登録商標)、USA)内に注ぎ、ビーカーの湾曲部分の底に達するまで充満させた。目に見える発泡は測定前に除去した。固定時間が経過したら、スピンドル#1を有するBrookfield粘度計(モデルDV−II+)(Brookfield Engineering Laboratories,Inc.(Middleboro、MA))およびRPM60を用いて1分間、粘度をセンチポアズ(cP)で測定した(25〜30℃)。
【0171】
豆乳モデル飲料の安定性を査定するために、UHT処理の後、250mlの無菌の四角のメディアボトル内にサンプルを収集した。ボトルを室温(25℃)で4週間貯蔵(平静に)した。次に、ボトルを平坦な表面に置き、定規(1mm増分で最低100mm)を用いて沈降レベルを測定した。以下の式:(沈降(mm)/全液体体積(mm))×100を用いて、沈降パーセントを得た。ボトルの底に、そしてサンプルボトルの側面に接して置いたときに定規の端部の下側に沈降層があれば、これを微量の沈降として記録した。
【0172】
表26および27はそれぞれ、豆乳モデルおよび組み合わせモデル飲料の粘度および安定性を示す。豆乳モデル飲料の粘度測定は、非加水分解大豆対照サンプルと同等であった。組み合わせモデル飲料の粘度測定は大豆を含有する対照サンプルの範囲内であり、ミルク対照サンプルよりもわずかに低かった。豆乳モデルおよび組み合わせモデル飲料は全て良好な安定性を有した。これらのデータは、種々の加水分解度を有するTL1単離大豆タンパク質加水分解物を用いることによってモデル飲料の機能特性が悪影響を受けないことを明らかにした。
【0173】
【0174】
【0175】
9点ヘドニック(Hedonic)スケールを用いて様々なモデル飲料の官能および風味特性の消費者テストを査定した。非常に嫌いに対する1から非常に好きに対する9までのスケールで飲料をランク付けした。5は好きでも嫌いでもないことを示す。図15は、豆乳モデル飲料、すなわち2つの対照サンプルおよびTL1の2.2%DHサンプルの強制ランキングを示す。TL1加水分解物サンプルは、「全体的な好み」、「風味の好み」および「あと味の好み」に関して2つの対照サンプルよりも著しく高いと評定された。さらに、強いてランク付けを要求すると、消費者はセットの中で好ましいサンプルとしてTL1の2.2%DHサンプルをランク付けした。図16は、組み合わせモデル飲料、すなわち100%スキムミルク対照、50%非加水分解大豆/50%スキムミルク、および50%TL1の2.2%DH大豆加水分解物/50%スキムミルクの強制ランキングを示す。TL1加水分解物含有サンプルは、ほぼ全ての好みの特性において非加水分解大豆含有サンプルよりも著しく高いとランク付けされ、全ての好みの特性(すなわち、全体的な好み、色の好み、風味の好み、口あたりの好み、濃さの好み、およびあと味の好み)に関して100%スキムミルク対照サンプルと同等であると採点された。
【0176】
また、豆乳モデルおよび組み合わせモデル飲料ならびにその対応するタンパク質スラリーもSQS法を用いて分析した(実施例6に詳述されるように)。表28は、SQSスコアおよび診断評定を示す。表に示されるように、各試験サンプルを対照サンプルと比較した。一般に、TL1加水分解物を含有するサンプルは、対照サンプルと比べて低下した大豆/豆類、穀類、およびボール紙/木質の官能特性を有した。
【0177】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
各カルボキシル末端に主としてアルギニン残基またはリジン残基のいずれかを有するポリペプチド断片の混合物を含むタンパク質加水分解組成物であって、約6.0よりも高いpHにおいて少なくとも約0.2%DHの加水分解度および少なくとも約80%の可溶性固形分指数を有する組成物。
【請求項2】
前記組成物が、大豆、大麦、キャノーラ、ルピナス、トウモロコシ、オート麦、エンドウ豆、ポテト、米、小麦、動物、卵、およびこれらの組み合わせからなる群から選択されるタンパク質に由来する請求項1に記載のタンパク質加水分解組成物。
【請求項3】
前記組成物が、大麦、キャノーラ、ルピナス、トウモロコシ、オート麦、エンドウ豆、ポテト、米、小麦、動物、乳製品、および卵からなる群から選択される少なくとも1つのタンパク質と組み合わせた大豆に由来する請求項1に記載のタンパク質加水分解組成物。
【請求項4】
前記タンパク質が大豆である請求項2に記載のタンパク質加水分解組成物。
【請求項5】
前記組成物の加水分解度が、約0.2%DH〜約14%DHである請求項4に記載のタンパク質加水分解組成物。
【請求項6】
前記組成物の加水分解度が約1%DH〜約6%DHである場合に、前記組成物が約pH7.0〜約pH8.0において実質的に安定である請求項5に記載のタンパク質加水分解組成物。
【請求項7】
前記組成物が、加水分解度が約1%DHである場合と比較して、加水分解度が約6%DHである場合に実質的に光をより透過させる請求項5に記載のタンパク質加水分解組成物。
【請求項8】
前記組成物が、加水分解度が約0.2%DHである場合と比較して、加水分解度が約1%DH〜約6%DHである場合に実質的に少ない穀類および大豆/豆類の官能特性を有する請求項5に記載のタンパク質組成物。
【請求項9】
前記組成物が、加水分解度が約2%DHよりも高い場合と比較して、加水分解度が約2%DH未満である場合に実質的に少ない苦味の官能特性を有する請求項5に記載のタンパク質加水分解組成物。
【請求項10】
前記組成物が、配列番号5〜177および270〜274からなる群から選択される少なくとも2つのポリペプチド断片を含む請求項4に記載のタンパク質加水分解組成物。
【請求項11】
前記組成物が大豆および乳製品タンパク質に由来し、配列番号5〜197および270〜274からなる群から選択される少なくとも2つのポリペプチド断片を含む請求項3に記載のタンパク質加水分解組成物。
【請求項12】
前記組成物がキャノーラタンパク質に由来し、配列番号198〜237からなる群から選択される少なくとも2つのポリペプチド断片を含む請求項2に記載のタンパク質加水分解組成物。
【請求項13】
前記組成物がトウモロコシタンパク質に由来し、配列番号238〜261からなる群から選択される少なくとも2つのポリペプチド断片を含む請求項2に記載のタンパク質加水分解組成物。
【請求項14】
前記組成物が小麦タンパク質に由来し、配列番号262〜269からなる群から選択される少なくとも2つのポリペプチド断片を含む請求項2に記載のタンパク質加水分解組成物。
【請求項15】
前記組成物が、大麦、キャノーラ、ルピナス、トウモロコシ、オート麦、エンドウ豆、ポテト、米、大豆、小麦、動物、乳製品、卵、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される非加水分解タンパク質をさらに含む請求項1に記載のタンパク質加水分解組成物。
【請求項16】
タンパク質材料を、アルギニン残基またはリジン残基のカルボキシル末端側でタンパク質材料のペプチド結合を特異的に切断するエンドペプチダーゼと接触させて、約6.0よりも高いpHにおいて少なくとも約0.2%DHの加水分解度および少なくとも約80%の可溶性固形分指数を有するタンパク質加水分解組成物を生じさせることを含む、タンパク質加水分解組成物の調製方法。
【請求項17】
前記エンドペプチダーゼが、食品グレードの微生物酵素である請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記エンドペプチダーゼが、トリプシン様プロテアーゼである請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記エンドペプチダーゼが、フザリウム・オキシスポラム(Fusarium oxysporum)からのトリプシン様プロテアーゼ、フザリウム・ソラニ(Fusarium solani)からのトリプシン様プロテアーゼ、フザリウムcf.ソラニ(Fusarium cf. solani)からのトリプシン様プロテアーゼ、およびアクロモバクター・リティカス(Achromobacter lyticus)からのリジルエンドペプチダーゼからなる群から選択される請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記エンドペプチダーゼが、フザリウム・オキシスポラム(Fusarium oxysporum)からのトリプシン様プロテアーゼである請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記エンドペプチダーゼが、配列番号1、2、3、および4からなる群から選択される配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含む請求項17に記載の方法。
【請求項22】
前記エンドペプチダーゼが、配列番号1、2、3、および4からなる群から選択される配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記エンドペプチダーゼが、配列番号1、2、3、および4からなる群から選択される配列と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記エンドペプチダーゼが、配列番号1、2、3、および4からなる群から選択される配列と少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を含む請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記エンドペプチダーゼが、約7.0〜約9.0のpHおよび約45℃〜約60℃の温度において最適なタンパク質分解活性を有する請求項16に記載の方法。
【請求項26】
タンパク質材料1キログラムあたり約10mg〜約1000mgのエンドペプチダーゼが接触させられる請求項16に記載の方法。
【請求項27】
前記タンパク質材料が、大豆、大麦、キャノーラ、ルピナス、トウモロコシ、オート麦、エンドウ豆、ポテト、米、小麦、動物、卵、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される請求項16に記載の方法。
【請求項28】
前記タンパク質材料が、大麦、キャノーラ、ルピナス、トウモロコシ、オート麦、エンドウ豆、ポテト、米、小麦、動物、乳製品、および卵からなる群から選択される少なくとも1つのタンパク質と組み合わせた大豆である請求項16に記載の方法。
【請求項29】
前記タンパク質材料が大豆である請求項16に記載の方法。
【請求項30】
前記大豆タンパク質材料が、大豆抽出物、豆乳、豆乳粉末、大豆カード、脱脂大豆粉、部分脱脂大豆粉、全脂大豆粉、単離大豆タンパク質、大豆タンパク質濃縮物、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記組成物の加水分解度が、約0.2%DH〜約14%DHである請求項29に記載の方法。
【請求項32】
前記タンパク質加水分解組成物が、配列番号5〜177および270〜274からなる群から選択される少なくとも2つのポリペプチド断片を含む請求項29に記載の方法。
【請求項33】
前記タンパク質材料が大豆および乳製品の組み合わせであり、前記タンパク質加水分解組成物が、配列番号5〜197および270〜274からなる群から選択される少なくとも2つのポリペプチド断片を含む請求項28に記載の方法。
【請求項34】
前記タンパク質材料がキャノーラであり、前記タンパク質加水分解組成物が、配列番号198〜237からなる群から選択される少なくとも2つのポリペプチド断片を含む請求項27に記載の方法。
【請求項35】
前記タンパク質材料がトウモロコシであり、前記タンパク質加水分解組成物が、配列番号238〜261からなる群から選択される少なくとも2つのポリペプチド断片を含む請求項27に記載の方法。
【請求項36】
前記タンパク質材料が小麦であり、前記タンパク質加水分解組成物が、配列番号261〜269からなる群から選択される少なくとも2つのポリペプチド断片を含む請求項27に記載の方法。
【請求項37】
(a)食用材料と、
(b)各カルボキシル末端に主としてアルギニン残基またはリジン残基のいずれかを有するポリペプチド断片の混合物を含むタンパク質加水分解組成物と
を含む食品であって、約6.0よりも高いpHにおいて少なくとも約0.2%DHの加水分解度および少なくとも約80%の可溶性固形分指数を有する食品。
【請求項38】
前記タンパク質加水分解組成物が、大豆、大麦、キャノーラ、ルピナス、トウモロコシ、オート麦、エンドウ豆、ポテト、米、小麦、動物、卵、およびこれらの組み合わせからなる群から選択されるタンパク質に由来する請求項37に記載の食品。
【請求項39】
前記タンパク質加水分解組成物が、大麦、キャノーラ、ルピナス、トウモロコシ、オート麦、エンドウ豆、ポテト、米、小麦、動物、乳製品、および卵からなる群から選択される少なくとも1つのタンパク質と組み合わせた大豆に由来する請求項37に記載の食品。
【請求項40】
前記タンパク質加水分解組成物が大豆に由来し、前記加水分解度が、約0.2%DH〜約14%DHである請求項37に記載の食品。
【請求項41】
前記食品が飲料である請求項37に記載の食品。
【請求項42】
前記飲料が、そのまま飲める飲料、ミルクまたはミルク類似飲料、体重管理飲料、プロテインシェーク、および食事代用飲料からなる群から選択される請求項41に記載の食品。
【請求項43】
前記飲料が、約6.5〜約7.5のpHを有する請求項41に記載の食品。
【請求項44】
前記食用材料が、スキムミルク、全乳、クリーム、乾燥粉乳、無脂肪乾燥粉乳、カゼイン塩、大豆タンパク質濃縮物、大豆タンパク質単離物、乳清タンパク質濃縮物、乳清タンパク質単離物、チョコレート、ココア粉末、コーヒー、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される請求項41に記載の食品。
【請求項45】
前記食品が、甘味剤、乳化剤、増粘剤、安定剤、脂質材料、防腐剤、酸化防止剤、風味剤、着色剤、ビタミン、ミネラル、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される原料をさらに含む請求項37に記載の食品。
【請求項46】
前記食品が、食品バー、栄養補助食品、シリアルベースの製品、食肉または食肉類似製品、および乳製品または乳製品類似製品からなる群から選択される請求項37に記載の食品。
【請求項1】
各カルボキシル末端に主としてアルギニン残基またはリジン残基のいずれかを有するポリペプチド断片の混合物を含むタンパク質加水分解組成物であって、約6.0よりも高いpHにおいて少なくとも約0.2%DHの加水分解度および少なくとも約80%の可溶性固形分指数を有する組成物。
【請求項2】
前記組成物が、大豆、大麦、キャノーラ、ルピナス、トウモロコシ、オート麦、エンドウ豆、ポテト、米、小麦、動物、卵、およびこれらの組み合わせからなる群から選択されるタンパク質に由来する請求項1に記載のタンパク質加水分解組成物。
【請求項3】
前記組成物が、大麦、キャノーラ、ルピナス、トウモロコシ、オート麦、エンドウ豆、ポテト、米、小麦、動物、乳製品、および卵からなる群から選択される少なくとも1つのタンパク質と組み合わせた大豆に由来する請求項1に記載のタンパク質加水分解組成物。
【請求項4】
前記タンパク質が大豆である請求項2に記載のタンパク質加水分解組成物。
【請求項5】
前記組成物の加水分解度が、約0.2%DH〜約14%DHである請求項4に記載のタンパク質加水分解組成物。
【請求項6】
前記組成物の加水分解度が約1%DH〜約6%DHである場合に、前記組成物が約pH7.0〜約pH8.0において実質的に安定である請求項5に記載のタンパク質加水分解組成物。
【請求項7】
前記組成物が、加水分解度が約1%DHである場合と比較して、加水分解度が約6%DHである場合に実質的に光をより透過させる請求項5に記載のタンパク質加水分解組成物。
【請求項8】
前記組成物が、加水分解度が約0.2%DHである場合と比較して、加水分解度が約1%DH〜約6%DHである場合に実質的に少ない穀類および大豆/豆類の官能特性を有する請求項5に記載のタンパク質組成物。
【請求項9】
前記組成物が、加水分解度が約2%DHよりも高い場合と比較して、加水分解度が約2%DH未満である場合に実質的に少ない苦味の官能特性を有する請求項5に記載のタンパク質加水分解組成物。
【請求項10】
前記組成物が、配列番号5〜177および270〜274からなる群から選択される少なくとも2つのポリペプチド断片を含む請求項4に記載のタンパク質加水分解組成物。
【請求項11】
前記組成物が大豆および乳製品タンパク質に由来し、配列番号5〜197および270〜274からなる群から選択される少なくとも2つのポリペプチド断片を含む請求項3に記載のタンパク質加水分解組成物。
【請求項12】
前記組成物がキャノーラタンパク質に由来し、配列番号198〜237からなる群から選択される少なくとも2つのポリペプチド断片を含む請求項2に記載のタンパク質加水分解組成物。
【請求項13】
前記組成物がトウモロコシタンパク質に由来し、配列番号238〜261からなる群から選択される少なくとも2つのポリペプチド断片を含む請求項2に記載のタンパク質加水分解組成物。
【請求項14】
前記組成物が小麦タンパク質に由来し、配列番号262〜269からなる群から選択される少なくとも2つのポリペプチド断片を含む請求項2に記載のタンパク質加水分解組成物。
【請求項15】
前記組成物が、大麦、キャノーラ、ルピナス、トウモロコシ、オート麦、エンドウ豆、ポテト、米、大豆、小麦、動物、乳製品、卵、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される非加水分解タンパク質をさらに含む請求項1に記載のタンパク質加水分解組成物。
【請求項16】
タンパク質材料を、アルギニン残基またはリジン残基のカルボキシル末端側でタンパク質材料のペプチド結合を特異的に切断するエンドペプチダーゼと接触させて、約6.0よりも高いpHにおいて少なくとも約0.2%DHの加水分解度および少なくとも約80%の可溶性固形分指数を有するタンパク質加水分解組成物を生じさせることを含む、タンパク質加水分解組成物の調製方法。
【請求項17】
前記エンドペプチダーゼが、食品グレードの微生物酵素である請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記エンドペプチダーゼが、トリプシン様プロテアーゼである請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記エンドペプチダーゼが、フザリウム・オキシスポラム(Fusarium oxysporum)からのトリプシン様プロテアーゼ、フザリウム・ソラニ(Fusarium solani)からのトリプシン様プロテアーゼ、フザリウムcf.ソラニ(Fusarium cf. solani)からのトリプシン様プロテアーゼ、およびアクロモバクター・リティカス(Achromobacter lyticus)からのリジルエンドペプチダーゼからなる群から選択される請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記エンドペプチダーゼが、フザリウム・オキシスポラム(Fusarium oxysporum)からのトリプシン様プロテアーゼである請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記エンドペプチダーゼが、配列番号1、2、3、および4からなる群から選択される配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含む請求項17に記載の方法。
【請求項22】
前記エンドペプチダーゼが、配列番号1、2、3、および4からなる群から選択される配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記エンドペプチダーゼが、配列番号1、2、3、および4からなる群から選択される配列と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記エンドペプチダーゼが、配列番号1、2、3、および4からなる群から選択される配列と少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を含む請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記エンドペプチダーゼが、約7.0〜約9.0のpHおよび約45℃〜約60℃の温度において最適なタンパク質分解活性を有する請求項16に記載の方法。
【請求項26】
タンパク質材料1キログラムあたり約10mg〜約1000mgのエンドペプチダーゼが接触させられる請求項16に記載の方法。
【請求項27】
前記タンパク質材料が、大豆、大麦、キャノーラ、ルピナス、トウモロコシ、オート麦、エンドウ豆、ポテト、米、小麦、動物、卵、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される請求項16に記載の方法。
【請求項28】
前記タンパク質材料が、大麦、キャノーラ、ルピナス、トウモロコシ、オート麦、エンドウ豆、ポテト、米、小麦、動物、乳製品、および卵からなる群から選択される少なくとも1つのタンパク質と組み合わせた大豆である請求項16に記載の方法。
【請求項29】
前記タンパク質材料が大豆である請求項16に記載の方法。
【請求項30】
前記大豆タンパク質材料が、大豆抽出物、豆乳、豆乳粉末、大豆カード、脱脂大豆粉、部分脱脂大豆粉、全脂大豆粉、単離大豆タンパク質、大豆タンパク質濃縮物、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記組成物の加水分解度が、約0.2%DH〜約14%DHである請求項29に記載の方法。
【請求項32】
前記タンパク質加水分解組成物が、配列番号5〜177および270〜274からなる群から選択される少なくとも2つのポリペプチド断片を含む請求項29に記載の方法。
【請求項33】
前記タンパク質材料が大豆および乳製品の組み合わせであり、前記タンパク質加水分解組成物が、配列番号5〜197および270〜274からなる群から選択される少なくとも2つのポリペプチド断片を含む請求項28に記載の方法。
【請求項34】
前記タンパク質材料がキャノーラであり、前記タンパク質加水分解組成物が、配列番号198〜237からなる群から選択される少なくとも2つのポリペプチド断片を含む請求項27に記載の方法。
【請求項35】
前記タンパク質材料がトウモロコシであり、前記タンパク質加水分解組成物が、配列番号238〜261からなる群から選択される少なくとも2つのポリペプチド断片を含む請求項27に記載の方法。
【請求項36】
前記タンパク質材料が小麦であり、前記タンパク質加水分解組成物が、配列番号261〜269からなる群から選択される少なくとも2つのポリペプチド断片を含む請求項27に記載の方法。
【請求項37】
(a)食用材料と、
(b)各カルボキシル末端に主としてアルギニン残基またはリジン残基のいずれかを有するポリペプチド断片の混合物を含むタンパク質加水分解組成物と
を含む食品であって、約6.0よりも高いpHにおいて少なくとも約0.2%DHの加水分解度および少なくとも約80%の可溶性固形分指数を有する食品。
【請求項38】
前記タンパク質加水分解組成物が、大豆、大麦、キャノーラ、ルピナス、トウモロコシ、オート麦、エンドウ豆、ポテト、米、小麦、動物、卵、およびこれらの組み合わせからなる群から選択されるタンパク質に由来する請求項37に記載の食品。
【請求項39】
前記タンパク質加水分解組成物が、大麦、キャノーラ、ルピナス、トウモロコシ、オート麦、エンドウ豆、ポテト、米、小麦、動物、乳製品、および卵からなる群から選択される少なくとも1つのタンパク質と組み合わせた大豆に由来する請求項37に記載の食品。
【請求項40】
前記タンパク質加水分解組成物が大豆に由来し、前記加水分解度が、約0.2%DH〜約14%DHである請求項37に記載の食品。
【請求項41】
前記食品が飲料である請求項37に記載の食品。
【請求項42】
前記飲料が、そのまま飲める飲料、ミルクまたはミルク類似飲料、体重管理飲料、プロテインシェーク、および食事代用飲料からなる群から選択される請求項41に記載の食品。
【請求項43】
前記飲料が、約6.5〜約7.5のpHを有する請求項41に記載の食品。
【請求項44】
前記食用材料が、スキムミルク、全乳、クリーム、乾燥粉乳、無脂肪乾燥粉乳、カゼイン塩、大豆タンパク質濃縮物、大豆タンパク質単離物、乳清タンパク質濃縮物、乳清タンパク質単離物、チョコレート、ココア粉末、コーヒー、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される請求項41に記載の食品。
【請求項45】
前記食品が、甘味剤、乳化剤、増粘剤、安定剤、脂質材料、防腐剤、酸化防止剤、風味剤、着色剤、ビタミン、ミネラル、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される原料をさらに含む請求項37に記載の食品。
【請求項46】
前記食品が、食品バー、栄養補助食品、シリアルベースの製品、食肉または食肉類似製品、および乳製品または乳製品類似製品からなる群から選択される請求項37に記載の食品。
【図1】
【図2】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図10D】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図10D】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公表番号】特表2010−524471(P2010−524471A)
【公表日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−504217(P2010−504217)
【出願日】平成20年4月16日(2008.4.16)
【国際出願番号】PCT/US2008/060486
【国際公開番号】WO2008/131008
【国際公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【出願人】(504140299)ソレイ リミテッド ライアビリティ カンパニー (42)
【出願人】(509287337)ノヴォザイムズ ノース アメリカ インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年4月16日(2008.4.16)
【国際出願番号】PCT/US2008/060486
【国際公開番号】WO2008/131008
【国際公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【出願人】(504140299)ソレイ リミテッド ライアビリティ カンパニー (42)
【出願人】(509287337)ノヴォザイムズ ノース アメリカ インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】
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