説明

改良されたアプロチニン変異体

本発明は、セリンプロテアーゼ活性を阻害するタンパク質の分野に関する。本発明は、セリンプロテアーゼ阻害性タンパク質の生産のための核酸構築物、ベクター及び宿主細胞、そのようなタンパク質を含有する製薬学的組成物ならびにそれらの使用方法の分野にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2004年7月13日に申請された米国暫定出願第60/587,655号明細書の利益を請求し、その暫定出願の内容は引用することにより全体が本明細書の内容となる。
【0002】
発明の分野
本発明は、セリンプロテアーゼ活性を阻害するタンパク質の分野に関する。本発明は、セリンプロテアーゼ阻害性タンパク質の生産のための核酸構築物、ベクター及び宿主細胞、そのようなタンパク質を含有する製薬学的組成物及びそれらの使用方法の分野にも関する。
【背景技術】
【0003】
関連技術分野の背景
血液損失は、開心術のような大手術及び他の複雑な処置の重大な合併症である。心臓手術患者は、輸血されるドナー血の有意な割合を説明しており(account for)、且つ依然として輸血は病気の伝染及び不利な反応の危険を有している。さらに、ドナー血は高価であり、多くの場合に需要が供給を超えている。
【0004】
アプロチニン(Aprotinin)(Trasylol(R))は、手術時血液損失を減少させるために用いられる(非特許文献1)。クニッツ(Kunitz)群のウシセリンプロテアーゼ阻害剤であるアプロチニンは、一般にプラスミン(plasmin)のようなプロテアーゼの阻害を介して生体内血液損失を減少させると考えられる。しかしながら、低血圧及び潮紅(非特許文献2)及びアレルギー性反応(非特許文献1)を含む不利な効果が報告されている。さらに、既知の免疫グロブリンを有する患者におけるアプロチニンの繰り返し使用は薦められていない(非特許文献1)。
【0005】
アプロチニンは心臓血管手術(例えば冠状動脈バイパス、オフ−ポンプ(off−pump)、バルブ、血管、肺−容量整復(lung−volume reduction)及びCox−Maze法)、整形外科手術(orthopedic surgeries)(例えば棘、股関節代置及び修復、膝代置及び腫瘍切除)、神経手術及び大きな再建(プラスチック)手術の間に血液損失を減少させるために用いられる。
【0006】
アプロチニンは、外傷の処置(多−臓器機能不全及び脳損傷を含む)、虚血再灌流損傷(例えば発作、脳内出血、心筋梗塞、移植片保存及び前十字靭帯)、ガン(例えば転移及び原発腫瘍抑制)、肺線毛機能(例えば喘息、嚢胞性線維症、慢性閉塞性肺疾患及び抗トリプシン欠乏)ならびに臓器移植法(例えば死体−後臓器保存(post−cadaveric organ preservation)及び移植手術)においても用いられる。アプロチニンはフィブリングルー(fibrin glues)(例えば脊椎穿刺、術創の処置及び歯科的手術の間の使用のため)のような用途においても用いられる。
【0007】
アプロチニンはウシ起源のものなので、薬剤に再−暴露されると人間の患者においてアナフィラキシーを誘導する有限の危険がある。アプロチニンはネズミ及びイヌにおいて、高用量で繰り返し投与されると腎臓毒性でもある(非特許文献3)。1つの仮説はこの効果を、負に帯電した腎臓の近側細管(proximal tubules)において、アプロチニンがその高い正味の正電荷の故に堆積することに帰している(特許文献1)。
【0008】
複数の場合に、PEG化がタンパク質の免疫原性を低下させ得ることが示された。しか
しながらPEG化は多くの場合、修飾タンパク質の機能的活性を低下させ、それはアプチニンのようなアンタゴニストの場合、望ましくない。PEG化されたアプロチニンに関する技術の現状は、変異アプロチニンの1もしくは2個の5kDaPEG修飾を用いるアミン基における非特異的PEG化である(T11D,K15R,R17L,I18H,I19L,V34Y,R39L,K46E)。この修飾は薬理学的側面を向上させるが、生体内有効性は向上しなかった(非特許文献4)。17個の5kDaPEG分子が結合したと推定されるPEG化されたアプロチニンの他の例において、トリプシン阻害は約29分の1に低下した(reduced by about 29−fold)(非特許文献5)。
【0009】
【特許文献1】国際公開第93/14120号パンフレット
【非特許文献1】Dietrich,et al.著,Thorac,Cardiovasc.Surg.37:1989年,92−98
【非特許文献2】Bohrer,et al.著,Anesthesia 45:1990年,853−854
【非特許文献3】Glasser,et al.著,“Verhandlungen der Deutschen Gesellschaft fur Innere Medizin,78.Kongress,”Bergmann,Munchen,1972年,1612−1614
【非特許文献4】Stassen著,Thromb.Haemost.74:1995年,655−659
【非特許文献5】Shin著,Pharm.Pharmacol.Commun.4:1998年,57−260
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って本発明の目的は、特にプラスミン阻害の効力に関してアプロチニンと類似の機能的活性を有し、向上した薬物動態学的及び安全性側面を示し、且つ生体内有効性を保持しているアプロチニンの新規な変異体を作ることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、プロテアーゼ阻害剤として機能するアプロチニンの新規な修飾変異体を提供し、それは向上した薬物動態学的及び免疫原的性質を有する。本発明のタンパク質を、例えば手術の間の血液損失を減少させるために、外傷、虚血再灌流損傷、ガンの予防及び/又は処置において、肺線毛機能及び臓器移植法ならびにフィブリングルーのような用途において用いることができる。
【0012】
特に、本発明の1つの側面は配列番号:3〜15より成る群から選ばれるPEG化アプロチニンならびに表1のペプチドと実質的に同じである少なくとも1つの生物学的機能を示すそのフラグメント、誘導体及び変異体(集合的に本発明のタンパク質)であり、それらの機能的同等物を含む。
【0013】
本発明の他の態様は、アプロチニンの免疫認識を低下させるかもしくは妨げるためにウシ配列の残基をヒト中で見出されるアプロチニンに相同のアミノ酸で置換するアミノ酸変
更を含む。
【0014】
本発明の他の態様は、本発明のペプチドをコードするポリヌクレオチド及び本発明のペプチドを組換え的に発現するために必要な付随するベクター及び宿主細胞である。
【0015】
本発明の他の態様は、本発明のペプチドに選択的に結合する抗体及び抗体フラグメントである。そのような抗体は本発明のペプチドの検出に有用であり、当該技術分野において周知の方法により同定し且つ作ることができる。
【0016】
図面の簡単な記述
図1.アプロチニン及びヒトクニッツドメインの配列の整列
【0017】
発明の詳細な記述
本発明は、アプロチニンの変異体ならびに表1のタンパク質と実質的に同じである少なくとも1つの生物学的機能を示すそのフラグメント、誘導体及び変異体(集合的に本発明のタンパク質)を提供する。天然に存在するウシアプロチニン(配列番号:1)、アプロチニン変異体(配列番号:2のような)及びヒト薬理学的同等物、例えば胎盤性ビクニン(bikunin)(配列番号:3)は、例えばトリプシン、プラスミン及びカリクレインに作用するプロテアーゼ阻害剤である。アプロチニンの使用は、免疫原性のような副作用を伴うので、免疫反応を誘導せず、従って治療薬の繰り返し使用の可能性を許す長期間−作用性プロテアーゼ阻害剤を開発することが望ましい。
【0018】
本発明は、再生をより受け入れ易く且つアプロチニンの良性の位置における特異的なPEG化部位を提供するアプロチニン変異体の製造のための、当該技術分野において以前に記載されていない修正の組み合わせを提供する(例えば表1,配列番号:4〜15を参照されたい)。本発明のペプチドは、薬物動態学的及び免疫原性側面に関して野生型アプロチニンを超える改良を与え、おそらく免疫原性、オートジェニシティー(autogenicity)、アナフィラキシー又は腎臓堆積のような他の望ましくない安全性の影響を誘導することなく有益な治療的利益を与える。
【0019】
タンパク質の生体内の性質を向上させるための1つの方法はPEG化である(Greenwald著,Adv.Drug.Del.Rev.55:2003年,217−250)。今日まで、PEG化はアプロチニンの試験管内又は生体内有効性を向上させなかった。従って当該技術分野における現状を超える有意な改良は、(i)合成又は組換え源から、例えば固−相ペプチド合成によるか又は原核もしくは真核源、例えばエシェリキア・コリ(Escherichia coli)、酵母、バクロウイルス又は植物における発現により得られ;(ii)有効な再生を促進するために修飾され;(iii)プロテアーゼ阻害を和らげる(moderating)点で良性である1個のPEG化部位を含有し;そしてiv)(iv)薬物動態学的性質(例えば必要用量を減少させることにより)及び免疫原性を向上させるPEG修飾を与えるアプロチニン変異体設計により達成されるであろう。
【0020】
アプロチニンをエシェリキア・コリにおける(例えばAuerswald著,Biol.Chem.Hoppe Seyler 368:1987年,1413−1425;Staley著,Proc.Natl.Acad.Sci.89:1992年,1519−1523)か、又は形質転換植物における(Azzoni著,Biotechnol.Bioeng.80:2002年,268−276)か、又は他の発現系、例えばバクロウイルス及び酵母における発現により得ることができる。当該技術分野における熟練者に既知の方法を用いる固−相ペプチド合成によってアプロチニンを得ることもできる(例えばFerrer著,Int.J.Pept.Protein Res.40:1992年,
194−207)。
【0021】
さらに、上記の組換え法を用いてアプロチニン変異体を生産することができ、その方法では本来のタンパク質の3個のジスルフィド結合の1個もしくは2個を、特定部位の突然変異誘発を用いてCys残基をAlaのような他のアミノ酸で置換することにより置き換える(例えばStaley著,Proc.Natl.Acad.Sci.89:1992年,1519−1523)。配列は配列番号:4〜6により例示されるが、これらに限られない。アミノ酸変更は必ずしもAlaに制限される必要はない。そのような置換はアプロチニン変異体の折りたたみを簡単にし、収率を向上させる(例えばStaley,1992年)。さらに、再生収率を向上させるためにタンパク質ジスルフィドイソメラーゼを用いることができる(例えばWeissman,Nature 365:1993年,185−188)。
【0022】
折りたたまれたアプロチニンの収率を向上させるための他の方法は、追加のCys残基を導入することであり、それは本来のアプロチニンのプロ配列(pro sequence)(配列番号:7)中に見出されるか、あるいは非天然の(unnatural)アミノ酸配列(配列番号:8)のようなジスルフィド−結合形成の分子内触媒として働く(例えばWeissman著,Cell 71:1992年,841−851)。付加される配列は様々であることができ(例えば配列番号:8及び10)、アプロチニン変異体中に導入され得る(例えば配列番号:11〜14)。この方法は、薬物動態学的性質を向上させる基、例えばポリエチレングリコール(PEG)を用いる部位−特異的な修飾のための遊離のCys残基を与えるという、以前には認識されていなかった利点を有する。
【0023】
両方とも折りたたみ収率を向上させ、PEG化のためのユニーク部位を与える組換えによるアプロチニンの源(配列番号:4〜6と配列番号:7〜14の組み合わせにより例示されるようなジスルフィド結合の数が減少したかもしくは減少しない)の使用及び遊離のCysを与えるためのNもしくはC末端配列の導入は、ウシ肺から単離される天然のアプロチニンを超える優れた製造的及び薬物動態学的性質を与える。
【0024】
PEG化は、当該技術分野における熟練者に既知の方法により行なうことができる。例えばPEGを、N−末端アミン基、C−末端カルボキシレート基又はCys、Lys、AspもしくはGluのような反応性側鎖を含有する内部アミノ酸又は類似の反応性側鎖部分を含有する非天然アミノ酸への直接の結合によりタンパク質に導入することができる。適した架橋剤の多数の例は当該技術分野における熟練者に既知であり、商業的に入手可能なアミン、アルデヒド、アセタール、マレイミド、スクシンイミド及びチオを含有するPEG誘導体により代表されるが、これらに限られない(例えばNektar Therapeutics,San Carlos,CA,USA及びNOF,Tokyo,Japan)。
【0025】
例えばアミノ酸配列のN−末端もしくはC−末端修飾を介し、再生後にアプロチニンの天然に存在する6個のCys残基の1つとジスルフィド結合を形成しないユニークCysをペプチド中に導入することにより、PEG化を達成することができる。次いでメルカプト基とメトキシ−PEG−マレイミド試薬(例えばNektar Therapeutics,San Carlos,CA,USA及び/又はNOF,Tokyo,Japan)のマレイミド基の間の安定なチオエーテル結合を介してユニークCysをPEG化する。マレイミドの他に、アルキルハライド及びビニルスルホンの使用のような多数のCys反応性基がタンパク質架橋の技術分野における熟練者に既知である。約5kDa〜約43kDaのPEGポリマーに例示されるがそれらに限られない種々のサイズのPEG基を用いることができる。PEG修飾は、1個の線状PEG、例えばマレイミド又は他の架橋基に結合した線状5、20又は30kDa PEGsを含むことができる(例えば表2を参
照されたい)。又、修飾はマレイミド又は他の架橋基に結合した2個もしくはそれより多いPEGポリマー鎖を含有する分枝PEGsを含むことができる(例えば表2を参照されたい)。
【0026】
比較的小さいPEG(例えば線状5kDa PEG)を用いるPEG化はペプチドの活性を低下させそうもないが、比較的大きなPEG(例えば分枝40kDa PEG)は、より活性を低下させそうである。しかしながら、比較的大きなPEGは血漿半減期を延長し、用量を減少させることが可能である。
【0027】
PEG試薬のPEGと架橋基の間のリンカーは様々であることができる。例えば商業的に入手可能なNektar Therapeutics(San Carlos,CA,USA)からのCys−反応性40kDa PEG(mPEG2−MAL)は、Cysへのコンジュゲーション(conjugation)のためにマレイミド基を用い、リシンに基づくリンカーを介してマレイミド基をPEGに結合させる(表2)。第2の例として、商業的に入手可能なNOF(Tokyo,Japan)からのCys−反応性43kDa PEG(GL2−400MA)は、Cysへの複合化のためにマレイミド基を用い、ビス置換アルカンリンカーを介してマレイミド基をPEGに結合させる(表2)。さらに、Nektar Therapeutics(San Carlos,CA,USA)から入手可能な分子量5kDa及び20kDaのPEG試薬により例示されるように、PEGポリマーを直接マレイミドに結合させることができる。
【0028】
PEG化に加え、タンパク質の薬物動態学的性質、免疫原性又は他の安全性を向上させる他の方法は、アミノ酸置換の使用である。免疫系は通常内在性タンパク質配列を認識しないので、アプロチニン変異体は、ヒト相同染色体と異なる残基がヒトタンパク質の対応するアミノ酸で置換されているものを含む。そのような変異体は、好ましくは表面−暴露アミノ酸を標的とし、それは既知のアプロチニンの原子−分解構造(atomic−resolution structures)を用いて同定され、ウシタンパク質のアミノ酸をヒト相同染色体中に見出されるもの、例えばヒト胎盤性ビクニンのクニッツドメインで置換することを含む(図1)。そのような変異体は、埋残基又は部分的埋残基のアミノ酸変更も含むことができる。アプロチニンにおいて1つもしくはそれより多いアミノ酸置換又は全−ドメイン交換を行い、配列番号:10〜13(表1)により例示されるがこれらに限られないヒト相同染色体に類似している配列を作ることができる。変更は、アプロチニンとヒト相同染色体の間の配列整列に基づく。例えばアプロチニンのArg 1をヒト胎盤性ビクニンのIle 7又はTyr 102と置換することができるか、あるいはアプロチニンのPro 3をヒト胎盤性ビクニンのHis 8又はGlu 103と置換することができる(図1)。当該技術分野における熟練者は、図1の配列整列に例示されるがこれらに限られない配列整列からのそのような変更を容易に同定することができ、且つ1つもしくはそれより多くのそのような変更を1個のアプロチニン変異体中に導入できる。
【0029】
上記のアプロチニンへの変異は以下の配列により例示される:
A1A2A3A4A5A6A7A8A9A10 RPDFC5LEPPY TGPC14KARIIR YFYNAKAGLC30
QTFVYGGC38RA KRNNFKSAED C51MRTC55GG A11A12A13A14A15A16A17A18A19A20
(配列番号:15)
式中、
〜A20は天然に存在するアミノ酸、非天然のアミノ酸であるか、又は欠失していることができ、ここで少なくとも1個の残基(A〜A20)はシステイン(Cys)である。例えばA〜A20はリシン、グルタミン、アスパラギン、セリン、トレオニン、グリシン、アラニン又はシステインであることができる。さらに、折りたたみに必要なジスルフィド結合の数を減少させるために、以下のシステインの対:CとC55、C14とC38又はC30とC50をアラニンに置換することができ、ここでシステインの1つの
対は置換されない。さらに、配列番号:15に例示される通り、N−及びC−末端付加(それぞれA〜A10及びA11〜A20)は10個より多い残基であることができる。
【0030】
PEG化に加え、Cys−反応性基で誘導体化された他のポリマーを用いてアプロチニン変異体の薬物動態学的性質又は免疫原性を向上させることができる。例えば制限としてではないが、ヒドロキシエチルデンプンを用いてアプロチニン変異体を修飾することができる(例えば国際公開第2004/024761号パンフレット)。
【0031】
アプロチニン変異体に関連する本明細書に記載される本発明は、ジスルフィド結合を含有する他のPEG化タンパク質、例えばクニッツドメインを含有するヒトプロテアーゼ阻害剤の製造方法を提供することは認識されるであろう。
【0032】
ここで本明細書を通じて用いられるある種の用語を定義し、他の用語は導入される時に定義する。特定のアミノ酸に関する一文字略字、その対応するアミノ酸及び三文字略字は以下の通りである:A,アラニン(Ala);C,システイン(Cys);D,アスパラギン酸(Asp);E,グルタミン酸(Glu);F,フェニルアラニン(Phe);G,グリシン(Gly);H,ヒスチジン(His);I,イソロイシン(Ile);K,リシン(Lys);L,ロイシン(Leu);M,メチオニン(Met);N,アスパラギン(Asn);P,プロリン(Pro);Q,グルタミン(Gln);R,アルギニン(Arg);S,セリン(Ser);T,トレオニン(Thr);V,バリン(Val);W,トリプトファン(Trp);及びY,チロシン(Tyr)。
【0033】
「ペプチドをコードするポリヌクレオチド」という用語は、ペプチドに関するコード配列のみを含むポリヌクレオチドならびに追加のコード及び/又は非−コード配列を含むポリヌクレオチドを包含する。本発明はさらに、配列間に少なくとも約70%、少なくとも約90%そして少なくとも約95%の同一性があれば、本明細書上記で記載した配列にハイブリッド形成するポリヌクレオチドに関する。本発明は特に、緊縮条件下で本明細書上記に記載したポリヌクレオチドにハイブリッド形成するペプチドをコードするポリヌクレオチドに関する。本明細書で用いられる場合、「緊縮条件」という用語は、「緊縮ハイブリッド形成条件」を意味する。ハイブリッド形成は、配列間に少なくとも90%又は約95%から97%の同一性がある場合のみに起こり得る。1つの態様において、本明細書上記で記載したポリヌクレオチドにハイブリッド形成するポリヌクレオチドは、cDNAsによりコードされる成熟ペプチドと実質的に同じ生物学的機能又は活性を保持しているペプチドをコードする。
【0034】
「機能的同等物」及び「実質的に同じ生物学的機能又は活性」はそれぞれ、各ペプチドの生物学的活性を同じ方法により決定する場合に、それが比較されているペプチドが示す生物学的活性の約30%〜約100%内かもしくはそれより多い生物学的活性の程度を示す。
【0035】
「フラグメント」、「誘導体」及び「変異体」という用語は、本発明のペプチドを指す場合、さらに下記に記載される通り、そのようなペプチドと実質的に同じ生物学的機能又は活性を保持しているペプチドのフラグメント、誘導体及び変異体を意味する。
【0036】
フラグメントは、本明細書に開示される生体内モデルにおいて記載される通り、実質的に類似の機能的活性を保持しているペプチドの一部である。
【0037】
誘導体は、本明細書に開示される機能を実質的に保存するペプチドへのすべての修飾を含み、追加の構造及び付随する機能(例えば修飾されたN−末端ペプチド、PEG化されたペプチド)、下記でさらに記載される通り、標的化の特異性を与えるか、もしくは意図
される標的への毒性のような追加の活性を与える融合ペプチドを含む。
【0038】
本発明のペプチドは組換えペプチド、天然の精製されたペプチド又は合成ペプチドであることができる。
【0039】
本発明のペプチドのフラグメント、誘導体又は変異体は、(i)1個もしくはそれより多いアミノ酸残基が保存又は非−保存アミノ酸残基で置換され、そのような置換アミノ酸残基は遺伝コードによりコードされるものであり得るかもしくはあり得ないもの、あるいは(ii)1個もしくはそれより多いアミノ酸残基が置換基を含むもの、あるいは(iii)成熟ペプチドが他の化合物、例えばペプチドの半減期を延長させる化合物と融合しているもの、あるいは(iv)リーダーもしくは分泌配列又は成熟ペプチドの精製に用いられる配列のような追加のアミノ酸が成熟ペプチドに融合しているもの、あるいは(v)ペプチド配列がもっと大きなペプチド(例えば効果の持続時間を延長するためのヒトアルブミン、抗体又はFc)と融合しているものであることができる。そのようなフラグメント、誘導体及び変異体ならびに類似体は、本明細書における記載から、当該技術分野における熟練者の範囲内であると思われる。
【0040】
本発明の誘導体は、1個もしくはそれより多い非必須アミノ酸残基において成される同類アミノ酸置換(下記でさらに定義される)を含有することができる。「非必須」アミノ酸残基は、生物学的活性を改変することなくタンパク質の野生型配列から改変され得る残基であるが、「必須」アミノ酸残基は生物学的活性のために必要である。「同類アミノ酸置換」は、アミノ酸残基が類似の側鎖を有するアミノ酸残基で置換される置換である。類似の側鎖を有するアミノ酸残基の群は、当該技術分野において定義されている。これらの群は塩基性側鎖を有するアミノ酸(例えばリシン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖を有するアミノ酸(例えばアスパラギン酸、グルタミン酸)、非帯電極性側鎖を有するアミノ酸(例えばアスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖を有するアミノ酸(例えばアラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、ベータ−分枝側鎖を有するアミノ酸(例えばトレオニン、バリン、イソロイシン)ならびに芳香族側鎖を有するアミノ酸(例えばチロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を含む。フラグメント又は生物学的に活性な部分には、薬剤としての使用のため、抗体の生産のため、研究試薬としてなどに適したペプチドフラグメントが含まれる。フラグメントは、本発明のペプチドのアミノ酸配列に十分に類似しているか、又はそれに由来し、且つそのペプチドの少なくとも1つの活性を示すが、本明細書に開示される全−長ペプチドより少ないアミノ酸を含むアミノ酸配列を含んでなるペプチドを含む。典型的には、生物学的に活性な部分は、ペプチドの少なくとも1つの活性を有するドメイン又はモチーフを含む。ペプチドの生物学的に活性な部分は、例えば長さが5個もしくはそれより多いアミノ酸であるペプチドであることができる。そのような生物学的に活性な部分を合成的に、又は組換え法により調製することができ、本明細書に開示される及び/又は当該技術分野において周知の手段により、本発明のペプチドの機能的活性の1つもしくはそれより多くに関して評価することができる。
【0041】
さらに本発明の誘導体は、別の化合物、例えばペプチドの半減期を延長するため及び/又はあり得るペプチドの免疫原性を低下させるための化合物と融合したペプチドを含むことができる(例えばポリエチレングリコール,「PEG」)。PEG化の場合、PEGへのペプチドの融合は当該技術分野における熟練者に既知のいずれの手段によっても達成され得る。例えば最初にシステイン突然変異をペプチド中に導入し、上にPEGを結合させるべきリンカーを与え、続いてPEG−マレイミドを用いて部位−特異的誘導体化を行なうことによりPEG化を行なうことができる。例えばシステインをペプチドのC−末端に付加することができる。(例えばTsutsumi,et al.著,Proc.Nat
l.Acad.Sci.USA 97(15):2000年,8548−53;Veronese著,Biomaterials 22:2001年,405−417;Goodsoon & Katre著,Bio/Technology 8:1990年,343−346を参照されたい)。本発明のペプチドの変異体は、本発明のペプチド又はそのドメインのアミノ酸配列に十分に類似したアミノ酸配列を有するペプチドを含む。「十分に類似した」という用語は、第2のアミノ酸配列に対して十分なもしくは最小の数の同一もしくは同等のアミノ酸残基を含有する第1のアミノ酸配列を意味し、第1及び第2のアミノ酸配列は共通の構造的ドメイン及び/又は共通の機能的活性を有する。例えば少なくとも約45%、約75%〜98%同一である共通の構造的ドメインを含有するアミノ酸配列は、本明細書で十分に類似していると定義される。変異体は本発明のペプチドのアミノ酸配列に十分に類似しているであろう。変異体は、本発明のポリヌクレオチド又はその相補体(complement)に緊縮条件下でハイブリッド形成するポリヌクレオチドがコードするペプチドの変異体を含む。そのような変異体は一般に本発明のペプチドの機能的活性を保持している。ポリヌクレオチドのフラグメントのライブラリを用い、スクリーニング及び続く選択のためのフラグメントの斑入り集団(variegated population)を作ることができる。例えば切込み(nicking)が分子当たりに大体1回しか起こらない条件下でヌクレアーゼを用いてポリヌクレオチドの二本鎖PCRフラグメントを処理し、二本鎖DNAを変性させ、DNAを再生させて、種々の切込み生成物からのセンス/アンチセンス対を含み得る二本鎖DNAを形成し、S1ヌクレアーゼを用いる処理により再生された二重らせんから一本鎖部分を除去し、そして得られるフラグメントライブラリを発現ベクター中に連結することにより、フラグメントのライブラリを形成することができる。この方法により、種々のサイズの本発明のペプチドのN−末端及び内部フラグメントをコードする発現ライブラリを誘導することができる。
【0042】
変異体は、突然変異誘発の故にアミノ酸配列が異なるペプチドを含む。アプロチニンとして機能する変異体を、本発明のペプチドの突然変異体、例えばトランケーション(truncation)突然変異体の組み合わせライブラリの、アプロチニン活性に関するスクリーニングにより同定することができる。
【0043】
1つの態様において、核酸レベルにおける組み合わせ突然変異誘発により、類似体の斑入りライブラリを形成し、それは斑入り遺伝子ライブラリによりコードされる。例えば合成オリゴヌクレオチドの混合物を遺伝子配列中に酵素的に連結して変異体アミノ酸配列の可能性のあるものの縮重セットを個々のペプチドとして、あるいはまた中に配列のそのセットを含有する1組のより大きな融合タンパク質として(例えばファージディスプレー(phage display)のため)発現可能であるようにすることにより、変異体の斑入りライブラリを作ることができる。縮重オリゴヌクレオチド配列から変異体の可能性のあるもののライブラリを作るために用いられ得る多様な方法がある。縮重遺伝子配列の化学的合成を自動DNA合成機で行なうことができ、次いで合成遺伝子を適した発現ベクター中に連結する。遺伝子の縮重セットの使用は、1つの混合物中で望ましい組の変異体配列の可能性のあるものをコードする配列のすべてを与えることを可能にする。縮重オリゴヌクレオチドの合成方法は当該技術分野において既知である(例えばNarang著,Tetrahedron 39:1983年,3;Itakura,et al.著,Annu.Rev.Biochem.53:1984年,323;Itakura,et al.著,Science 198:1984年,1056;Ike,et al.著,Nucleic Acid Res.11:1983年,477を参照されたい)。
【0044】
選ばれた性質を有する遺伝子産物に関する、点突然変異又はトランケーションにより作られる組み合わせライブラリの遺伝子産物のスクリーニングのため及びcDNAライブラリのスクリーニングのためにいくつかの方法が当該技術分野において既知である。そのような方法をR−アゴニストペプチドの組み合わせ突然変異誘発により作られる遺伝子ライ
ブラリの迅速スクリーニングに適応させることができる。大きな遺伝子ライブラリのスクリーニングのための高処理量分析を受け入れる最も広く用いられる方法は、典型的には遺伝子ライブラリを複製可能な発現ベクター中にクローニングし、得られるベクターのライブラリを用いて適した細胞を形質転換し、所望の活性の検出が、産物が検出された遺伝子をコードするベクターの単離を容易にするような条件下で組み合わせ遺伝子を発現させることを含む。繰り返し同時突然変異誘発(recursive ensemble mutagenesis)(REM)、ライブラリ中の機能性突然変異体の頻度を増強する方法をスクリーニングアッセイと組み合わせて用い、所望の変異体を同定することができる。
【0045】
本発明のペプチドは、ペプチド結合又は修飾ペプチド結合(すなわちペプチドアイソスター)により互いに結合したアミノ酸から構成されることができ、20個の遺伝子にコードされるアミノ酸以外のアミノ酸を含有することができる。ペプチドは自然のプロセス、例えば翻訳後プロセシングにより、又は当該技術分野で周知の化学的修飾法により修飾されることができる。そのような修飾は基本的な教本及びより詳細な専攻論文ならびに巻数の多い研究文献に十分に記載されている。修飾は、ペプチド主鎖、アミノ酸側鎖及びアミノもしくはカルボキシル末端を含むペプチド中のどこでも起こり得る。与えられるペプチド中のいくつかの部位において同じかもしくは異なる程度に同じ型の修飾が存在し得ることは認識されるであろう。また、与えられるペプチドは多くの型の修飾を含有することができる。ペプチドは、例えばユビキチン化の結果として分枝していることができ、且つそれらは分枝を有するかもしくは有せずに環状であることができる。環状、分枝及び分枝環状ペプチドは翻訳後の自然のプロセスから生じ得るか、又は合成法により作られ得る。修飾はアセチル化、アシル化、ADP−リボシル化、アミド化、フラビンの共有結合、ヘム部分の共有結合、ヌクレオチドもしくはヌクレオチド誘導体の共有結合、脂質もしくは脂質誘導体の共有結合、ホスホチジルイノシトールの共有結合、架橋、環化、ジスルフィド結合形成、脱メチル化、共有結合架橋の形成、システインの形成、ピログルタメートの形成、フォーミュレーション(formulation)、ガンマ−カルボキシル化、グリコシル化、GPIアンカー形成、ヒドロキシル化、ヨード化、メチル化、ミリストイル化、酸化、ポリエチレングリコール化(pegylation)、タンパク質分解的プロセシング、リン酸化、プレニル化、ラセミ化、セレノイル化、硫化、タンパク質への転移−RNA媒介アミノ酸の付加、例えばアルギニル化及びユビキチン化を含む(例えばProteins,Structure and Molecular Properties,2nd ed.,T.E.Creighton,W.H.Freeman and Company,New York(1993年);Posttranslational
Covalent Modification of Proteins,B.C.Johnson,ed.,Academic Press,New York,pgs.1−12(1983年);Seifter,et al著,Meth.Enzymol 182:1990年,626−646;Rattan,et al.著,Ann.N.Y.Acad.Sci.663:1992年,48−62を参照されたい)。
【0046】
本発明のペプチドは、配列番号:3〜15のペプチドならびにそれらからの配列中に実質的でない(insubstantial)変異を有する配列を含む。「実質的でない変異」は、実質的に本発明のペプチドの少なくとも1つの生物学的機能、例えばアプロチニン活性を保持している配列付加、置換又は欠失変異体を含む。これらの機能的同等物は、本発明のペプチドに少なくとも約70%の同一性、本発明のペプチドに少なくとも90%の同一性及び本発明のペプチドに少なくとも95%の同一性を有するペプチドを含むことができ、ならびにまた、実質的に同じ生物学的活性を有するそのようなペプチドの一部を含む。しかしながら、本明細書にさらに記載される機能的同等性を示す、本発明のペプチドからのアミノ酸配列中に実質的でない変異を有するペプチドは本発明の記載中に含まれる。
【0047】
当該技術分野において既知の通り、2個のペプチド間の「類似性」はアミノ酸配列の比較及び第2のペプチドの配列への1つのペプチドの同類アミノ酸置換物により決定される。そのような同類置換には上記ならびにDayhoff(The Atlas of Protein Sequence and Structure 5,1978年)及びArgos(EMBO J.8:1989年,779−785)により記載されたものが含まれる。例えば以下の群の1つに属するアミノ酸は同類変更を示す:
−Ala,Pro,Gly,Gln,Asn,Ser,Thr;
−Cys,Ser,Tyr,Thr;
−Val,Ile,Leu,Met,Ala,Phe;
−Lys,Arg,His;
−Phe,Tyr,Trp,His;及び
−Asp,Glu。
【0048】
本発明は、本発明のペプチドをコードするポリヌクレオチドならびにこれらのポリヌクレオチドを含むベクター、本発明のベクターを用いて遺伝子操作された宿主細胞及び組換え法による本発明のペプチドの生産にも関する。例えばクローニングベクター又は発現ベクターであることができる本発明のベクターを用いて宿主細胞を遺伝子操作(形質導入、形質転換又はトランスフェクション)することができる。ベクターは、例えばプラスミド、ウイルス粒子、ファージなどの形態にあることができる。操作された宿主細胞を、適宜プロモーターの活性化又は形質転換細胞の選択のために改変された通常の栄養培地中で培養することができる。培養条件、例えば温度、pHなどは発現のために選ばれる宿主細胞で以前に用いられたものであり、通常の熟練者に明らかであろう。組換え法によるペプチドの生産のために本発明のポリヌクレオチドを用いることができる。かくして例えば多様な発現伝達体、特にペプチドの発現のためのベクター又はプラスミドのいずれか1つにポリヌクレオチド配列を含ませることができる。そのようなベクターには染色体、非−染色体及び合成DNA配列(例えばSV40の誘導体);バクテリアプラスミド;ファージDNA;酵母プラスミド;プラスミドとファージDNAの組み合わせに由来するベクター;ウイルスDNA、例えばワクシニア、アデノウイルス、鶏痘ウイルス及び仮性狂犬病が含まれる。しかしながら、他のベクター又はプラスミドを、それらが複製可能であり、且つ宿主中で生存可能である限り、用いることができる。
【0049】
適したDNA配列を多様な方法によりベクター中に導入することができる。一般に当該技術分野において既知の方法により、DNA配列を適した制限エンドヌクレアーゼ部位中に導入する。そのような方法及び他の方法は当該技術分野における熟練者の範囲内であると思われる。発現ベクター中のDNA配列は、直接mRNA合成のために適した発現調節配列(プロモーター)中に操作可能的に連結される。そのようなプロモーターの代表的な例にはLTR又はSV40プロモーター、E.コリ lac、T7又はtrp、ファージラムダPプロモーター及び原核もしくは真核細胞又はそれらのウイルス中における遺伝子の発現を調節することが知られている他のプロモーターが含まれるが、これらに限られない。発現ベクターは翻訳開始のためのリボソーム結合部位及び転写ターミネーターも含有することができる。ベクターは発現を増幅するための適した配列も含むことができる。さらに発現ベクターは、形質転換された宿主細胞の選択のための表現型の特色、例えば真核細胞培養物の場合のジヒドロフォレートレダクターゼもしくはネオマイシン耐性、あるいは例えばE.コリにおけるテトラサイクリンもしくはアンピシリン耐性を与える遺伝子を含有することができる。本明細書上記で記載された適したDNA配列ならびに適したプロモーターもしくは調節配列を含有するベクターを用いて適した宿主を形質転換し、宿主がタンパク質を発現するのを可能にすることができる。適した宿主の代表的な例にはバクテリア細胞、例えばE.コリ、サルモネラ・チフィムリウム(Salmonella typhimurium)、ストレプトミセス(Streptomyces);菌・カビ細
胞、例えば酵母;昆虫細胞、例えばドロソフィラ S2(Drosophia S2)及びスポドプテラ Sf9(Spodoptera Sf9);動物細胞、例えばCHO、COS又はBowes黒色腫;アデノウイルス;植物細胞などが含まれるが、これらに限られない。適した宿主の選択は、本明細書の記載から当該技術分野における熟練者の範囲内であると思われる。
【0050】
本発明は、上記で広範囲に記載された配列の1つもしくはそれより多くを含んでなる組換え構築物も含む。構築物は、中に本発明の配列が前進もしくは逆配向で導入されたベクター、例えばプラスミド又はウイルスベクターを含む。この態様の1つの側面において、構築物はさらに、例えば配列に操作可能的に連結されたプロモーターを含む調節配列を含む。多数の適したベクター及びプロモーターが当該技術分野における熟練者に既知であり、且つ商業的に入手可能である。例として以下のベクターを示す。バクテリア性:pETベクター、pQE70、pQE60、pQE−9、pBS、ファージスクリプト、psiX174、pBluescript SK、pBsKS、pNH8a、pNH16a、pNH18a、pNH46a、pTRC99A、pKK223−3、pKK233−3、pDR540及びPRIT5。真核性:pWLneo、pSV2cat、pOG44、pXT1、pSG、pSVK3、pBPV、pMSG及びPSVL。しかしながら、他のプラスミド又はベクターを、それらが複製可能であり、且つ宿主中で生存可能である限り用いることができる。CAT(クロラムフェニコールトランスフェラーゼ)ベクター又は選択可能なマーカーを有する他のベクターを用い、いずれの所望の遺伝子からもプロモーター領域を選択することができる。2種の適したベクターはpKK232−8及びpCM7である。特定の命名されたバクテリアプロモーターにはlaci、lacZ、T3、T7、gpt、ラムダP、P及びtrpが含まれる。真核プロモーターにはCMV即時型、HSVチミジンキナーゼ、初期及び後期SV40、レトロウイルスからのLTRs及びマウスメタロチオネイン−1(metallothionein−1)が含まれる。適したベクター及びプロモーターの選択は、十分に当該技術分野における通常の熟練者のレベル内である。
【0051】
本発明は、上記の構築物を含有する宿主細胞にも関する。宿主細胞は高級真核細胞、例えば哺乳類細胞又は低級真核細胞、例えば酵母細胞であることができるか、あるいは宿主細胞は原核細胞、例えばバクテリア細胞であることができる。宿主細胞中への構築物の導入は、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE−デキストラン媒介トランスフェクション又はエレクトロポレーション(Davis,et al.著,Basic Methods in Molecular Biology,1986年)により行なうことができる。宿主細胞中の構築物を通常の方法で用い、組換え配列によりコードされる遺伝子産物を生産することができる。あるいはまた、通常のペプチド合成機により本発明のペプチドを合成的に生産することができる。
【0052】
成熟タンパク質を適したプロモーターの調節下で哺乳類細胞、酵母、バクテリア又は他の細胞中で発現させることができる。本発明のDNA構築物から誘導されるRNAsを用い、無−細胞翻訳系を用いてそのようなタンパク質を生産することもできる。原核及び真核宿主と共に使用するための適したクローニング及び発現ベクターはSambrook,et al.著,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Second Edition,(Cold Spring Harbor,N.Y.,1989年)により記載されており、その開示は引用することにより本明細書の内容となる。
【0053】
高級真核生物による本発明のペプチドをコードするDNAの転写は、ベクター中にエンハンサー配列を導入することにより増加する。エンハンサーは、DNAのシス−作用性要素であり、通常は約10〜約300bpであり、それはプロモーターにその転写を増加さ
せるように作用する。例には複製起点の後側(late side)上のSV40エンハンサー(bp100〜270)、サイトメガロウイルス初期プロモーターエンハンサー、複製起点の後側上のポリオーマエンハンサー及びアデノウイルスエンハンサーが含まれる。一般に、組換え発現ベクターは複製起点及び宿主細胞の形質転換を可能にする選択可能マーカー(例えばE.コリのアンピシリン耐性遺伝子又はS.セレビシアエ(S.cerevisiae)TRP1遺伝子)ならびに下流構造配列の転写を方向付けるための高度に発現される遺伝子に由来するプロモーターを含むであろう。そのようなプロモーターは、解糖酵素、例えば中でも3−ホスホグリセレートキナーゼ(PGK)、α因子、酸ホスファターゼ又は熱ショックタンパク質をコードするオペロンから誘導されることができる。異種構造配列を、翻訳、開始及び終止配列及び場合により翻訳されたタンパク質の周辺腔又は細胞外培地中への分泌を方向付けることができるリーダー配列と一緒に適したフェーズ(phase)中に集合させる。場合により異種配列は、所望の特性(例えば発現される組換え産物の安定もしくはかんたんな精製)を与えるN−末端同定ペプチドを含む融合タンパク質をコードすることができる。
【0054】
バクテリア的使用のための有用な発現ベクターは、所望のタンパク質をコードする構造DNA配列を、機能性プロモーターを有する操作可能な読取り相中の適した翻訳、開始及び終止シグナルと一緒に導入することにより、構築することができる。ベクターは1種もしくはそれより多い表現型選択可能マーカーならびにベクターの保持を保証するため、及び望ましい場合には宿主内における増幅を与えるための複製起点を含むことができる。形質転換のための適した原核宿主には、例えばE.コリ、バシルス・スブチリス(Bacillus subtilis)、サルモネラ・チフィムリウムならびにシュードモナス(Pseudomonas)、ストレプトミセス及びスタフィロコックス(Staphylococcus)属中の種々の種が含まれるが、他も選択肢(a matter of choice)として用いることができる。バクテリア的使用のための有用な発現ベクターは、選択可能マーカー及び周知のクローニングベクターpBR322(ATCC 37017)の遺伝子要素を含んでなる商業的に入手可能なプラスミドに由来するバクテリア性複製起点を含むことができる。そのような市販のベクターには、例えばpKK223−3(Pharmacia Fine Chemicals,Uppsala,Sweden)及びGEM1(Promega,Madison,Wis.,USA)が含まれる。これらのpBR322「主鎖」切片を適したプロモーター及び発現されるべき構造配列と組み合わせることができる。
【0055】
適した宿主株の形質転換及び適した細胞密度までの宿主株の成育の後、選択されたプロモーターを適した手段(例えば温度変化又は化学的誘導)により抑制解除し、細胞をさらなる期間培養する。典型的には遠心により細胞を収穫し、物理的もしくは化学的手段により崩壊させ、得られる粗抽出物をさらなる精製のために保持する。タンパク質の発現において用いられる微生物細胞を、凍結−解凍循環、音波処理、機械的崩壊又は細胞ライシング剤の使用を含むいずれかの通常の方法により崩壊させることができる。
【0056】
組換えタンパク質の発現のために種々の哺乳類細胞培養系を用いることもできる。哺乳類発現系の例には、Gluzman(Cell 23:1981年,175)により記載されたサル腎臓線維芽細胞のCOS−7系及び適合性ベクターを発現することができる他の細胞系、例えばC127、3T3、CHO、HeLa及びBHK細胞系が含まれる。哺乳類発現ベクターは、複製起点、適したプロモーター及びエンハンサーならびに又必要なリボソーム結合部位、ポリアデニル化部位、スプライスドナー及びアクセプター部位、転写終止配列及び5’フランキング非転写配列を含むことができる。SV40ウイルスゲノムに由来するDNA配列、例えばSV40起点、初期プロモーター、エンハンサー、スプライス及びポリアデニル化部位を用い、必要な非−転写遺伝子要素を与えることができる。
【0057】
硫酸アンモニウム又はエタノール沈降、酸抽出、アニオンもしくはカチオン交換クロマトグラフィー、ホスホセルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー及びレクチンクロマトグラフィーを含む、現在までに用いられてきた方法により、本発明のペプチドを組換え細胞培養物から回収し、精製することができる。成熟タンパク質の立体配置の完成において、必要ならタンパク質再生段階を用いることができる。最後に高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)を最終的な精製段階のために用いることができる。
【0058】
本発明のペプチドは化学的合成法の産物であることができるか、あるいは原核もしくは真核宿主(例えばバクテリア、酵母、高級植物、昆虫及び哺乳類細胞)から組換え法により生産されることができる。組換え生産法で用いられる宿主に依存して、本発明のペプチドは哺乳類もしくは他の真核性炭水化物でグリコシル化されてい得るか、あるいは非−グリコシル化であり得る。本発明のペプチドは初期メチオニンアミノ酸残基を含むこともできる。単離されたかもしくは精製された本発明のペプチドあるいは生物学的に活性なその一部は、組換え法により生産される場合には実質的に他の細胞材料又は培地を含まないか、あるいは化学的に合成される場合には実質的に化学的前駆体又は他の化学品を含まない。本発明の単離されたペプチドは実質的に細胞材料を含まず、且つ約30%(乾燥重量により)より少ない非−ペプチドもしくは汚染材料を有する。本発明のペプチド又は生物学的に活性なその一部が組換え的に生産される場合、培地はペプチド試料の体積の約30%より少量に相当することができる。本発明が化学的合成により生産される場合、試料は乾燥重量により約30%より少量の化学的前駆体又は本発明のものでない化学品を含有することができる。
【0059】
下記の特定の実施例に記載する通り、本発明のペプチドを簡単に単離することができる。精製されたペプチドの試料は少なくとも70%純粋であるか;あるいは約85%〜約99%純粋である。試料の純度は当該技術分野において既知の手段、例えばSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動及び質量分析/液体クロマトグラフィーにより評価することができる。
【0060】
当該技術分野において周知の化学的方法を用い、本発明のペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を全体的もしくは部分的に合成することができる(例えばCaruthers,et al.著,Nucl.Acids Res.Symp.Ser.1980年,215−223;Horn,et al.著,Nucl.Acids Res.Symp.Ser.1980年,225−232を参照されたい)。ペプチドをコードするポリヌクレオチドを次いでペプチドの発現のための発現ベクター中にクローニングすることができる。
【0061】
当該技術分野における熟練者により理解される通り、自然には存在しないコドンを有するペプチド−コードヌクレオチド配列を作るのが有利であり得る。例えば特定の原核もしくは真核宿主が好むコドンを選択し、ペプチド発現の速度を向上させるか、又は望ましい性質、例えば天然に存在する配列から生成する転写産物の半減期より長い半減期を有するRNA転写産物を生ずることができる。
【0062】
当該技術分野において一般に既知の方法を用いて本明細書に開示されるヌクレオチド配列を操作し、ペプチド又はmRNA産物の閉鎖(closing)、プロセシング及び/又は発現を改変する変更を含むがこれらに限られない多様な理由のためにペプチド−コード配列を変更することができる。ランダムフラグメント化によるDNAシャッフリング(shuffling)ならびに遺伝子フラグメント及び合成オリゴヌクレオチドのPCR再集合を用いてヌクレオチド配列を操作することができる。例えば特定部位の突然変異誘
発を用い、新しい制限部位を導入し、グリコシル化パターンを変更し、コドンの好みを変え、スプライス変異体を形成し、突然変異を導入するなどができる。
【0063】
当該技術分野における熟練者の理解の範囲内の関連ペプチド、例えばケミカルミメティックス(chemical mimetics)、オルガノミメティックス(organomimetics)又はペプチドミメティックスも提供する。本明細書で用いられる場合、「ミメティック」、「ペプチドミメティック(peptide mimetic)」、「ペプチドミメティック(peptidemimetic)」、「オルガノミメティック」及び「ケミカルミメティック」という用語は、ペプチド誘導体、ペプチド類似体及び本発明のペプチドの三次元配向と同等である三次元配向における原子の配置を有する化学化合物を包含することが意図されている。本明細書で用いられる「に同等」という句は、該ペプチド中のある原子又は化学的部分の置換を有し、それが本発明のペプチドと同じかもしくはその生物学的機能を有するのに十分に類似した該原子及び部分の配置もしくは配向を生ずるミメティックペプチドにおける結合長、結合角及び配置を有するペプチドを包含することが意図されていることが理解されるであろう。本発明のペプチドミメティックスにおいて、化学的構成成分の三次元配置は、ペプチド中のペプチド主鎖及び成分アミノ酸側鎖の三次元配置に構造的及び/又は機能的に同等であり、実質的な生物学的活性を有する本発明のペプチドのペプチド−、オルガノ−及びケミカルミメティックスを生ずる。これらの用語は、例えば引用することにより本明細書の内容となるFauchere(Adv.Drug Res.15:1986年,29);Veber & Freidinger(TINS 1985年,p392);及びEvans,et al(J.Med.Chem.30:1987年,1229)により例示されている通り、当該技術分野における理解に従って用いられる。
【0064】
本発明の各ペプチドの生物学的活性のためにファーマコフォア(pharmacophore)が存在することが理解される。ファーマコフォアは当該技術分野において、生物学的活性のための構造的要件の理想的な三次元的定義を含んでなると理解される。現在のコンピューターモデリングソフトウェアを用い、各ファーマコフォアに適合するようにペプチド−、オルガノ−及びケミカルミメティックスを設計することができる(コンピューター補助薬剤設計)。該ミメティックスを本発明のペプチド中の置換基原子からの位置的情報に基づき、構造−機能分析により製造することができる。
【0065】
本発明により与えられるペプチドを当該技術分野において既知の化学合成法のいずれか、特に例えば商業的に入手可能な自動ペプチド合成機を用いる固−相合成法により有利に合成することができる。本発明のミメティックスをペプチドの合成に通常用いられる固相もしくは液相法により合成することができる(例えば引用することによりその記載事項全体が本明細書の内容となるMerrifield著,J.Amer.Chem.Soc.85,1963年,2149−54;Carpino著,Acc.Chem.Res.6:1973年,191−98;Birr著,Aspects of the Merrifield Peptide Synthesis,Spring−Verlag:Heidelberg,1978年;The Peptide:Analysis,Synthesis Biology,Vols.1,2,3,and 5,(Gross & Meinhofer,eds.),Academic Press:New York,1979年;Stewart,et al.著,Solid Phase Peptide Synthesisk,2nd.ed.,Pierce Chem.Co.:Rockford,III.,1984年;Kent著,Ann.Rev.Biochem.57:1988年,957−89;及びGregg,et al.著,Int.J.Peptide Protein Res.55:1990年,161−214を参照されたい)。
【0066】
固相法により本発明のペプチドを製造することができる。要するに、N−保護C−末端アミノ酸残基をジビニルベンゼン架橋ポリスチレン、ポリアクリルアミド樹脂、キーゼルグール/ポリアミド(ペプシン K)、制御孔ガラス(controlled pore
glass)、セルロース、ポリプロピレン膜、アクリル酸−コーティングされたポリエチレンロッドなどのような不溶性の支持体に連結させる。脱保護、中和及び続く保護アミノ酸誘導体のカップリングのサイクルを用い、アミノ酸配列に従ってC−末端からアミノ酸を連結させる。いくつかの合成ペプチドの場合、酸−感受性樹脂を用いるFMOC戦略を用いることができる。これに関する固体支持体はジビニルベンゼン架橋ポリスチレン樹脂であることができ、それはクロロメチル樹脂、ヒドロキシメチル樹脂、パラアセトアミドメチル樹脂、ベンズヒドリルアミン(BHA)樹脂、4−メチルベンズヒドリルアミン(MBHA)樹脂、オキシム樹脂、4−アルコキシベンジルアルコール樹脂(Wang樹脂)、4−(2’,4’−ジメトキシフェニルアミノメチル)−フェノキシメチル樹脂、2,4−ジメトキシベンズヒドリル−アミン樹脂及び4−(2’,4’−ジメトキシフェニル−FMOC−アミノ−メチル)−フェノキシアセトアミドノルロイシル−MBHA樹脂(RinkアミドMBHA樹脂)を含む多様な官能基化された形態で商業的に入手可能である。アルファアミノ酸のための保護基は塩基に不安定な9−フルオレニルメトキシ−カルボニル(FMOC)である。
【0067】
BOC(t−ブチルオキシカルボニル)及びFMOC基と化学的に適合性のアミノ酸の側鎖官能基のために適した保護基は当該技術分野において周知である。多様なカップリング剤及び当該技術分野において既知の化学、例えばDIC(ジイソプロピル−カルボジイミド)、DCC(ジシクロヘキシルカルボジイミド)、BOP(ベンゾトリアゾリル−N−オキシトリスジメチルアミノホスホニウムヘキサフルオロ−ホスフェート)、PyBOP(ベンゾトリアゾール−1−イル−オキシ−トリス−ピロリジノホスホニウムヘキサフルオロ−ホスフェート)、PyBrOP(ブロモ−トリス−ピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェート)を用いる直接のカップリングにより;予備形成される対称無水物を介して;ペンタフルオロフェニルエステルのような活性エステルを介して;あるいは予備形成されるHOBt(1−ヒドロキシベンゾトリアゾール)活性エステルを介して、あるいはFMOC−アミノ酸フルオリド及びクロリドの使用により、あるいはFMOC−アミノ酸−N−カルボキシ無水物の使用により、アミノ酸残基をカップリングさせることができる。HOBt又はHOAt(7−アザヒドロキシベンゾトリアゾール)の存在下においてHBTU(2−(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル),1,1,3,3−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート)又はHATU(2−(1H−7−アザ−ベンゾトリアゾール−1−イル),1,1,3,3−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロ−ホスフェート)を用いる活性化が好ましい。
【0068】
固相法を手動で行なうことができ、且つ商業的に入手可能なペプチド合成機(例えばApplied Biosystems 433Aなど;Applied Biosystems,Foster City,CA)上での自動合成も利用できる。典型的な合成では、第1の(C−末端)アミノ酸をクロロトリチル樹脂上に置く。ABI FastMoc案(Applied Biosystems)に従う連続的脱保護(20%ピペリジン/NMP(N−メチルピロリドン)を用いる)及びカップリングのサイクルを用い、ペプチド配列を形成することができる。無水酢酸によるキャッピングを用いる二重及び三重カップリングも用いることができる。
【0069】
合成ミメティックペプチドを樹脂から切断し、適した掃去剤を含有するTFA(トリフルオロ酢酸)を用いる処理により脱保護することができる。多くのそのような切断試薬、例えばReagent K(0.75g 結晶性フェノール,0.25mL エタンジチオール,0.5mL チオアニソール,0.5mL 脱イオン水,10mL TFA)及び他を用いることができる。濾過によりペプチドを樹脂から分離し、エーテル沈降により
単離する。通常の方法、例えばゲル濾過及び逆相HPLC(高性能液体クロマトグラフィー)によりさらなる精製を行なうことができる。本発明に従う合成ミメティックスは、製薬学的に許容され得る塩、特に有機塩基及び無機塩基の塩を含む塩基−付加塩の形態にあることができる。酸性アミノ酸残基の塩基−付加塩は、当該技術分野における熟練者に周知の方法に従い、適した塩基又は無機塩基でペプチドを処理することにより調製されるか、あるいは適した塩基の凍結乾燥により直接所望の塩を得ることができる。
【0070】
一般に当該技術分野における熟練者は、本明細書に記載されるペプチドを多様な化学的方法により修飾し、非修飾ペプチドと本質的に同じ活性を有し、且つ場合により他の望ましい性質を有するペプチドを生産できることを認識するであろう。例えばペプチドのカルボン酸基を製薬学的に許容され得るカチオンの塩の形態で与えることができる。ペプチド内のアミノ基は製薬学的に許容され得る酸付加塩、例えばHCl塩、HBr塩、酢酸塩、安息香酸塩、トルエンスルホン酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩及び他の有機塩の形態にあることができるか、あるいはアミドに転換されることができる。当該技術分野における熟練者は、本来の結合立体配置がもっと近くに近づくように、本発明のペプチド内に環状構造を導入する方法も認識するであろう。
【0071】
対応するペプチドと同じかもしくは類似の所望の生物学的活性を有するが、溶解度、安定性ならびに加水分解及びタンパク質分解に対する感受性に関してペプチドより好ましい活性を有するペプチド誘導体及び類似体の構築のための多様な方法を利用できる。そのような誘導体及び類似体にはN−末端アミノ基、C−末端カルボキシル基において修飾されたか、及び/又はペプチド中の1個もしくはそれより多いアミド結合が非−アミド結合に変更されたペプチドが含まれる。1個のペプチドミメティック構造中で2種もしくはそれより多いそのような改変が組み合わされ得ることは理解されるであろう(例えばC−末端カルボキシル基における修飾及びペプチド中の2個のアミノ酸の間に−CH−カルバメート結合が含まれること)。
【0072】
アミノ末端修飾にはアルキル化、アセチル化、カルボベンゾイル基の付加及びスクシンイミド基の形成が含まれる。特に、N−末端アミノ基を反応させて式RC(O)NH−のアミド基を形成することができ、ここでRはアルキルであり、酸ハライド、RC(O)Cl又は酸無水物との反応により付加される。典型的には大体等モルもしくは過剰量(例えば約5当量)の酸ハライドを、反応の間に生成する酸の掃去のための過剰の(例えば約10当量)の第3級アミン、例えばジイソプロピルエチルアミンを含有する不活性希釈剤(例えばジクロロメタン)中でペプチドに接触させることにより反応を行なうことができる。反応条件は、他の点では通常である(例えば室温で30分間)。低級アルキルN−置換を与える末端アミノのアルキル化及び続く上記の酸ハライドとの反応は、式RC(O)NR−のN−アルキルアミド基を与えるであろう。あるいはまた、無水コハク酸との反応により、アミノ末端を共有結合させてスクシンイミド基とすることができる。大体等モル量かもしくは過剰の無水コハク酸(例えば約5当量)を用い、記載事項全体が引用することにより本明細書の内容となるWollenberg,et al.(米国特許第4,612,132号明細書)に記載されている通り、適した不活性溶媒(例えばジクロロメタン)中における過剰の(例えば10当量)第3級アミン、例えばジイソプロピルチルアミンの使用を含む当該技術分野において周知の方法により、末端アミノ基をスクシンイミドに転換する。コハク酸基を例えばC〜C−アルキルもしくは−SR置換基で置換することができ、それはペプチドのN−末端において置換スクシンイミドを与えるための通常の方法で製造されることも理解されるであろう。そのようなアルキル置換基は、Wollenberg,et al.,同上により記載されている方法で低級オレフィン(C−〜C−アルキル)を無水マレイン酸と反応させることにより製造することができ、−SR置換基はRが上記で定義された通りであるRSHと無水マレイン酸の反応により製造することができる。他の有利な態様において、アミノ末端を誘導体化し、ベンジルオキシカル
ボニル−NH−又は置換ベンジルオキシカルボニル−NH−基を形成することができる。この誘導体は、反応の間に生成する酸の掃去のための第3級アミンを含有する適した不活性希釈剤(例えばジクロロメタン)中における大体当量かもしくは過剰のベンジルオキシカルボニルクロリド(CBZ−Cl)又は置換CBZ−Clとの反応により製造することができる。さらに別の誘導体においてN−末端は、適した不活性希釈剤(ジクロロメタン)中で当量かもしくは過剰(例えば5当量)のR−S(O)Clと反応させて末端アミンをスルホンアミドに転換することによりスルホンアミド基を含み、ここでRはアルキル(例えば低級アルキル)である。不活性希釈剤は、反応の間に生成する酸の掃去のために過剰の第3級アミン(例えば10当量)、例えばジイソプロピルエチルアミンを含有する。反応条件は、他の点では通常である(例えば室温で30分間)。適した不活性希釈剤(例えばジクロロメタン)中で当量かもしくは過剰の(例えば5当量)R−OC(O)Cl又はR−OC(O)OC−p−NOと反応させることにより末端アミンをカルバメートに転換することによって、アミノ末端においてカルバメート基を形成することができ、ここでRはアルキル(例えば低級アルキル)である。不活性希釈剤は、反応の間に生成する酸の掃去のために過剰(例えば約10当量)の第3級アミン、例えばジイソプロピルエチルアミンを含有することができる。反応条件は、他の点では通常である(例えば室温で30分間)。適した不活性希釈剤(例えばジクロロメタン)中で当量又は過剰(例えば5当量)のR−N=C=Oと反応させて末端アミンをウレア(すなわちRNHC(O)NH−)基に転換することにより、アミノ末端においてウレア基を形成することができ、ここでRは上記で定義された通りである。不活性希釈剤は、過剰(例えば約10当量)の第3級アミン、例えばジイソプロピルエチルアミンを含有することができる。反応条件は、他の点では通常である(例えば室温で約30分間)。
【0073】
C−末端カルボキシル基がエステル(例えばRがアルキルである−C(O)OR)により置き換えられていることができるペプチドミメティックスの製造において、ペプチド酸の製造に用いられる樹脂を用いることができ、側鎖が保護されたペプチドを塩基及び適したアルコール(例えばメタノール)を用いて切断することができる。側鎖保護基を通常のやり方で、フッ化水素を用いる処理により除去し、所望のエステルを得ることができる。C−末端カルボキシル基がアミド−C(O)NRにより置き換えられているペプチドミメティックスの製造において、ペプチド合成のための固体支持体としてベンズヒドリルアミン樹脂が用いられる。合成が完了したら、支持体からペプチドを遊離させるためのフッ化水素処理は直接遊離のペプチドアミド(すなわちC−末端は−C(O)NHである)を生ずる。あるいはまた、ペプチド合成の間のクロロメチル化樹脂の使用及びそれと組み合わされた支持体からの側鎖保護ペプチドの切断のためにアンモニアとの反応は、遊離のペプチドアミドを与え、アルキルアミン又はジアルキルアミンとの反応は側鎖保護アルキルアミド又はジアルキルアミド(すなわちC−末端は−C(O)NRRであり、ここでR及びRはアルキル、低級アルキルである)を与える。次いで通常のやり方で、フッ化水素を用いる処理により側鎖保護を除去し、遊離のアミド、アルキルアミド又はジアルキルアミドを与える。
【0074】
当該技術分野で理解され且つ本発明により与えられるペプチドミメティックスは、構造的に本発明のペプチドに類似しているが、当該技術分野において既知であり且つさらにそれぞれの記載事項が引用することにより本明細書の内容となる以下の参照文献:Spatola著,Chemistry and Biochemistry of Amino
Acids,Pepetides,and Proteins,(Weinstein,ed.),Marcel Dekker:New York,1983年,p.267;Spatola著,Peptide Backbone Modifications
1:1983年,3;Morley著,Trends Pharm.Sci.1980年,pp.463−468;Hudson,et al.著,Int.J.Pept.Prot.Res.14:1979年,177−185;Spatola,et al.著
,Life Sci.38:1986年,1243−1249;Hann著,J.Chem.Soc.Perkin Trans.1982年,1307−314;Almquist,et al.著,J.Med.Chem.23:1980年,1392−1398;Jennings−White,et al.著,Tetrahedron Lett.23:1982年,2533;Szelke,et al.著,欧州特許第045665A号明細書;Holladay,et al.著,Tetrahedron Lett.24:1983年,4401−4404;及びHruby著,Life Sci.31:1982年,189−199に記載されている方法により、1個もしくはそれより多いペプチド結合が場合により:−CHNH−、−CHS−、−CHCH−、−CH=CH−(シス及びトランスコンフォーマーの両方における)、−COCH−、−CH(OH)CH−及び−CHSO−より成る群から選ばれる結合により置き換えられていることができる。そのようなペプチドミメティックスは、例えば生産がより経済的であること、より高い化学的安定性又は強化された薬理学的性質(例えば半減期、吸収、力価、有効性など)を有すること、抗原性の低下及び他の性質を含む、ペプチドの態様を越える有意な利点を有することができる。
【0075】
本発明のペプチドのミメティック類似体は、通常の又は合理的な(rational)薬剤設計の原理を用いて得ることもできる(例えば開示が引用することにより本明細書の内容となるAndrews,et al.著,Proc.Alfred Benzon Symp.28:1990年,145−165;McPherson著,Eur.J.Biochem.189:1990年,1−24;Hol,et al.著,in Molecular Recognition:Chemical and Biochemical Problems,(Roberts,ed.);Royal Society
of Chemistry;pp.84−93,1989a;Hol著,Arzneim−Forsch.39:1016−1018,1989b;Hol著,Agnew Chem.Int.Ed.Engl.25:1986年,767−778を参照されたい)。
【0076】
通常の薬剤設計の方法に従い、その構造が「本来の」ペプチドの構造と共通の属性を有する分子を無作為に試験することにより、所望のミメティック分子を得ることができる。ペプチドの活性との比較において推定ミメティックの生物学的活性を測定することにより、結合分子の特定の基における変更から生ずる量的な寄与を決定することができる。合理的薬剤設計の1つの態様において、ペプチドの最も安定な三次元コンフォーメーションの属性を共有するようにミメティックを設計する。かくして例えば本明細書に開示される本発明のペプチドが示す相互作用に類似したイオン性、疎水性又はファンデルワールス相互作用を引き起こすのに十分なやり方で配向する化学基を有するように、ミメティックを設計することができる。
【0077】
合理的ミメティック設計を行なう1つの方法は、ペプチドの三次元構造の表示を形成することができる分子グラフィックスソフトウェア(molecular graphics software)を用いる。当該技術分野において商業的に入手可能なコンピューター−補助設計プログラムを用い、本発明のペプチドのペプチド−、オルガノ−及びケミカルミメティックスの分子構造を作ることができる。そのようなプログラムの例にはSYBYL 6.5(R)、HQSARTM及びALCHEMY 2000TM(Tripos);GALAXYTM及びAM2000TM(AM Technologies,Inc.,San Antonio,TX);CATALYSTTM及びCERIUSTM(Molecular Simulations,Inc.,San Diego,CA);CACHE PRODUCTSTM、TSARTM、AMBERTM及びCHEM−XTM(Oxford Molecular Products,Oxford,CA)ならびにCHEMBUILDER3DTM(Interactive Simulation
s,Inc.,San Diego,CA)が含まれる。
【0078】
例えば当該技術分野で認められる分子モデリングプログラムを用い、本明細書で開示されるペプチドを用いて生産されるペプチド−、オルガノ−及びケミカルミメティックスを、例えば組み合わせ化学法を含む高処理量スクリーニングに適応するように設計される通常の化学合成法を用いて生産することができる。本発明のペプチド−、オルガノ−及びケミカルミメティックスの生産において有用な組み合わせ法には、例えばSIDDCO(Tuscon,Arizona);Tripos Inc.;Calbiochem/Nevabiochem(San Diego,CA);Symyx Technologies,Inc.(Santa Clara,CA);Medichem Research,Inc.(Lemont,IL);Pharm−Eco Laboratories,Inc.(Bethlehem,PA);又はN.V.Organon(Oss,Netherlands)により与えられるファージディスプレーアレー、固−相合成及び組み合わせ化学アレーが含まれる。Terrett(Combinatorial Chemistry,Oxford University Press,London,1988年);Gallop, et al.著,J.Med.Chem.37:1994年,1233−51;Gordon,et al.著,J.Med.Chem.37:1994年,1385−1401;Look,et al.著,Bioorg.Med.Chem.Lett.6:1996年,707−12;Ruhland,et al.著,J.Amer.Chem.Soc.118:1996年,253−4;Gordon,et
al.著,Acc.Chem.Res.29:1996年,144−54;Thompson & Ellman著,Chem.Rev.96:1996年,555−600;Fruchtel & Jung著,Angew.Chem.Int.Ed.Engl.35:1996年,17−42;Pavia著,“The Chemical Generation of Molecular Diversity”,Network Science Center,www.netsci.org,1995年;Adnan,et al.著,“Solid Support Combinatorial Chemistry in Lead Discovery and SAR Optimization,”ld.,1995年;Davis and Briant著,“Combinatorial Chemistry Library Design using Pharmacophore Diversity,”ld.,1995年;Pavia,“Chemically Generated Screening Libraries:Present and Future,”ld.,1996年;及ならびに米国特許第5,880,972;5,463,564;5,331573;及び5,573,905号明細書に開示されている方法を含むがこれらに限られない当該技術分野において既知の方法に従って、本発明のペプチド−、オルガノ−及びケミカルミメティックスの組み合わせ化学生産を生ずることができる。
【0079】
新しく合成されるペプチドを調製的高性能液体クロマトグラフィーにより実質的に精製することができる(例えばCreighton著,Proteins:Structure And Molecular Principles,WH Freeman and Co.,New York,N.Y.,1983年を参照されたい)。本発明の合成ペプチドの組成を、例えばEdman分解法(Creighton,同上)によるアミノ酸分析又は配列決定により確証することができる。さらに、ペプチドのアミノ酸配列のいずれかの部分を直接合成の間に変更することができるか、及び/又は化学的方法を用いて他のタンパク質からの配列と組合せ、変異体ペプチド又は融合タンパク質を作ることができる。
【0080】
本発明のペプチドに選択的に結合する抗体及び抗体フラグメントも本発明に含まれる。当該技術分野において周知の方法を用い、当該技術分野において既知のいずれの型の抗体
を形成することもできる。例えば本発明のペプチドのエピトープに特異的に結合する抗体を作ることができる。本明細書で用いられる「抗体」は、無損傷の免疫グロブリン分子ならびに本発明のペプチドのエピトープに結合することができるそのフラグメント、例えばFab、F(ab’)及びFvを含む。典型的には、エピトープの形成に少なくとも6、8、10又は12個の連続アミノ酸が必要である。しかしながら、非−連続アミノ酸を含むエピトープはもっと多くのアミノ酸、例えば少なくとも15、25又は50個のアミノ酸を必要とし得る。
【0081】
本発明のペプチドのエピトープに特異的に結合する抗体を治療的に、ならびに免疫化学的検定法、例えばウエスターンブロット(Western blots)、ELISAs、放射線免疫検定法、免疫組織化学的検定法、免疫沈降あるいは当該技術分野において既知の他の免疫化学的検定法において用いることができる。所望の特異性を有する抗体の同定のために種々の免疫検定法を用いることができる。競争的結合又は免疫放射線検定法のための多数の案が当該技術分野において周知である。そのような免疫検定法は、典型的には免疫原とその免疫原に特異的に結合する抗体の間における複合体形成の測定を含む。
【0082】
典型的には、本発明のペプチドに特異的に結合する抗体は、免疫化学的検定法において用いられる場合、他のタンパク質が与える検出シグナルより少なくとも5−、10−又は20−倍高い検出シグナルを与える。好ましくは、本発明のペプチドに特異的に結合する抗体は、免疫化学的検定法において他のタンパク質を検出せず、本発明のペプチドを溶液から免疫沈降させることができる。
【0083】
マウス、ラット、ウサギ、モルモット、サル又はヒトのような哺乳類を免疫化し、ポリクローナル抗体を生産するために本発明のペプチドを用いることができる。必要なら、本発明のペプチドを担体タンパク質、例えばウシ血清アルブミン、チログロブリン及びキーホールリンペットヘモシアニン(keyhole limpet hemocyanin)にコンジュゲート(conjugate)させることができる。宿主の種に依存して、種々のアジュバントを用いて免疫学的反応を向上させることができる。そのようなアジュバントにはフロイントアジュバント(Freund’s adjuvant)、無機ゲル(例えば水酸化アルミニウム)及び界面活性物質(例えばリゾレシチン、プルロニックポリオール、ポリアニオン、ペプチド、油エマルション、キーホールリンペットヘモシアニン及びジニトロフェノール)が含まれるが、これらに限られない。ヒトにおいて用いられるアジュバントの中で、BCG(無菌化ウシ型結核菌(bacilli Calmette−Guerin))及びコリネバクテリウム・パルブム(Corynebacterium parvum)が特に有用である。
【0084】
培養中で連続的継代細胞系による抗体分子の生産を与えるいずれかの方法を用い、本発明のペプチドに特異的に結合するモノクローナル抗体を調製することができる。これらの方法にはハイブリドーマ法、ヒトB細胞ハイブリドーマ法及びEBVハイブリドーマ法が含まれるが、これらに限られない(Kohler,et al.著,Nature 256:1985年,495−97;Kozbor,et al.著,J.Immunol.Methods 81:1985年,3142;Cote,et al.著,Proc.Natl.Acad.Sci.80:1983年,2026−30;Cole,et al.著,Mol.Cell Biol.62:1984年,109−20)。
【0085】
さらに、マウス抗体遺伝子をヒト抗体遺伝子にスプライシングして適した抗原特異性及び生物学的活性を有する分子を得る、「キメラ抗体」の生産のために開発された方法を用いることができる(Morrison,et al.著,Proc.Natl.Acad.Sci.81:1984年,6851−55;Neuberger,et al.著,Nature 312:1984年,604−08;Takeda,et al.著,N
ature 314:1985年,452−54)。モノクローナル及び他の抗体を「ヒト化」して、それが治療的に用いられる場合に患者が抗体に対する免疫反応を起こす(mounting)のを防ぐこともできる。そのような抗体は、治療において直接用いられるのに十分に配列がヒト抗体に類似していることができるか、あるいはいくつかの重要な残基の変更が必要であり得る。個々の残基の特定部位の突然変異誘発によってヒト配列中の残基と異なる残基を置換することにより、又は相補性決定領域全体をすり合わせること(grating)により、ネズミ抗体とヒト配列の間の配列の相違を最小にすることができる。あるいはまた、組換え法を用いてヒト化抗体を生産することができる(例えば英国特許第2188638B号明細書を参照されたい)。本発明のペプチドに特異的に結合する抗体は、米国特許第5,565,332号明細書に開示されているように、部分的もしくは全体的にヒト化された抗原結合部位を含有していることができる。
【0086】
あるいはまた、当該技術分野において既知の方法を用いて一本鎖抗体の生産のために記載された方法を応用し、本発明のペプチドに特異的に結合する一本鎖抗体を生産することができる。関連する特異性を有するが、独特のイディオタイプ組成のものである抗体を、無作為組み合わせ免疫グロブリンライブラリからの鎖シャッフリングにより形成することができる(Burton著,Proc.Natl.Acad.SCi.88:1991年,11120−23)。
【0087】
DNA増幅法、例えば鋳型としてハイブリドーマcDNAを用いるPCR(Thirion,et al.著,Eur.J.Cancer Prev.5:1996年,507−11)を用いて一本鎖抗体を構築することもできる。一本鎖抗体は単一−又は二重特異性であることができ、二価又は四価であることができる。四価二重特異性一本鎖抗体の構築は、例えばColoma & Morrison(Nat.Biotechnol.15:1997年,159−63)において記載されている。二価二重特異性一本鎖抗体の構築は、Mallender & Voss(J.Biol.Chem.269:1994年,199−206に記載されている。
【0088】
下記に記載するとおり、一本鎖抗体をコードするヌクレオチド配列を手動もしくは自動ヌクレオチド合成を用いて構築し、標準的な組換えDNA法を用いて発現構築物中にクローニングし、細胞中に導入してコード配列を発現させることができる。あるいはまた、例えば繊維状ファージ法(Verhaar,et al.著,Int.J.Cancer 61:1995年,497−501;Nicholls,et al.著,J.Immunol.Meth.165:1993年,81−91)を用い、一本鎖抗体を直接生産することができる。
【0089】
本発明のペプチドに特異的に結合する抗体を、リンパ球集団における生体内生産の誘導によるか、あるいは文献に開示されている高度に特異的な試薬の免疫グロブリンライブラリもしくはパネルのスクリーニングにより生産することもできる(Orlandi,et
al.著,Proc.Natl.Acad.Sci.86:1989年,38333−37;Winter,et al.著,Nature 349:1991年,293−99)。
【0090】
本発明の方法において他の型の抗体を構築し、治療的に用いることができる。例えば国際公開第93/03151号パンフレットに開示されているようなキメラ抗体を構築することができる。免疫グロブリンに由来し、多価及び多重特異性である結合タンパク質、例えば「ジアボディー(diabodies)」を調製することもできる(例えば国際公開第94/13804号パンフレットを参照されたい)。
【0091】
本発明のペプチドに結合する能力を有するヒト抗体を、以下の通りにMorphoSy
s HuCAL(R)ライブラリから同定することもできる。本発明のペプチドをマイクロタイタープレート上にコーティングし、MorphoSys HuCAL(R) Fabファージライブラリと一緒にインキュベーションすることができる。本発明のペプチドに結合しないファージ−結合Fabsをプレートから洗い流し、本発明のペプチドにしっかり結合するファージのみを残すことができる。結合ファージを例えばpHにおける変更によるか、又はE.コリを用いる溶離により溶離させ、E.コリ宿主の感染により増幅することができる。このパンニングプロセス(panning process)を1回もしくは2回繰り返し、本発明のペプチドにしっかり結合する抗体の集団に関して濃縮することができる。濃縮されたプールからのFabsを次いで発現させ、精製し、ELISA検定においてスクリーニングする。
【0092】
本発明に従う抗体を当該技術分野において周知の方法により精製することができる。例えば本発明のペプチドが結合するカラム上を通過させることにより、抗体をアフィニティー精製することができる。次いで高塩濃度を有する緩衝液を用い、結合抗体をカラムから溶離させることができる。
【0093】
使用法
本明細書で用いられる場合、種々の用語は下記に定義される。
【0094】
本発明又はその態様の要素を導入する場合、「a」、「an」、「the」及び「said」という冠詞は、1個もしくはそれより多い要素があることを意味するものとする。「含んでなる」、「含む」及び「有する」という用語はすべてを含むことが意図され、挙げられる要素以外の追加の要素があり得ることを意味する。
【0095】
本明細書で用いられる「患者」という用語は哺乳類(例えば人間及び動物)を含む。
【0096】
「処置」という用語は、人間を含む患者が患者の状態を直接もしくは間接的向上させるか、又は患者における状態もしくは障害の進行を遅らせる目的で医学的援助を与えられるいずれかのプロセス、行動、適用、治療などを含む。
【0097】
「組み合わせ治療」又は「共−治療」という用語は、2種もしくはそれより多い治療薬の投与を意味する。そのような投与は、実質的に同時のやり方で、例えば固定された比率の活性成分を有する1個のカプセルにおいて、あるいは各阻害剤のための複数の分離されたカプセルで2種もしくはそれより多い治療薬を共−投与することを包含する。さらにそのような投与は、逐次的やり方における各型の治療薬の使用を包含する。
【0098】
「治療的に有効な」という句は、疾患状態における改善の目的を達成しながら、与えられる治療的処置に伴う不利な副作用を避けるかもしくは最小にする各薬剤の投与される量を意味する。
【0099】
「製薬学的に許容され得る」という用語は、本品目が製薬学的製品中における使用に適していることを意味する。
【0100】
多くの止血性変化、例えば虚血再灌流損傷及び血液損失の増加を生ずる全身性炎症反応を低下させるために、本発明のペプチドを用いることができる。これらのペプチドを、例えば心臓血管手術(例えば冠状動脈バイパス、オフ−ポンプ、バルブ、血管、肺−容量整復及びCox−Maze法)、整形外科手術(例えば棘、股関節代置及び修復、膝代置及び腫瘍切除)、神経手術、再建(プラスチック)手術及び腫瘍手術の間に手術時血液損失を減少させるために用いることもできる。
【0101】
本発明のペプチドを外傷の処置(多−臓器機能不全及び脳損傷を含む)、虚血再灌流損傷(例えば発作、脳内出血、心筋梗塞、移植片保存及び前十字靭帯)、ガン(例えば転移及び原発腫瘍抑制)、肺線毛機能(例えば喘息、嚢胞性線維症、慢性閉塞性肺疾患及び抗トリプシン欠乏)ならびに臓器移植法(例えば死体−後臓器保存及び移植手術)において用いることもできる。本発明のペプチドをフィブリングルー(例えば脊椎穿刺、術創の処置及び歯科的手術の間の使用のため)のような用途において用いることもできる。
【0102】
本発明のペプチドを単独で、又は当該技術分野における熟練者に既知の追加の治療及び/又は化合物と組み合わせて用いることができる。あるいはまた、本明細書に記載される方法及びペプチドを、部分的にかもしくは完全に、組み合わせ治療において用いることができる。そのような共−治療を2種もしくはそれより多い薬剤のいずれの組み合わせにおいて施すこともできる。そのような共−治療を上記のような製薬学的組成物の形態で施すことができる。
【0103】
哺乳類における上記で同定される状態の処置のための有効性を決定するために用いられる周知の検定に基づき、且つこれらの結果をこれらの状態の処置に用いられる既知の薬剤の結果と比較することにより、本発明のペプチドの有効な用量を、それぞれの所望の適応症の処置のために容易に決定することができる。これらの状態の1つの処置において投与されるべき活性成分(例えばペプチド)の量は、用いられる特定のペプチド及び投薬量単位、投与の様式、処置の期間、処置される患者の年令及び性別ならびに処置される状態の性質及び程度のような考慮事項に従って広く変わり得る。
【0104】
投与されるべき活性成分の合計量は一般に1日につき体重のkg当たり約0.0001mg〜約200mg、又は約0.01mg〜約200mgの範囲であることができる。単位投薬量は約0.05mg〜約1500mgの活性成分を含有することができ、1日に付き1回かもしくはそれより多く投与され得る。静脈内、筋肉内、皮下及び非経口的注入ならびに輸液法の使用を含む注入による投与に関する1日の投薬量は約0.01〜約200mg/kgであることができる。1日の直腸的投薬量管理は、合計体重のkg当たり0.01〜200mgであることができる。経皮的濃度は、0.01〜200mg/kgの1日の投薬量を保持するのに必要な濃度であることができる。
【0105】
もちろん、各患者に関する特定の初期及び継続投薬量管理は、診療する診断医により決定される状態の性質及び重度、用いられる特定のペプチドの活性、患者の年令、患者の食事、、投与の時間、投与の経路、薬剤の排出の速度、薬剤の組み合わせなどに従って変わるであろう。本発明のペプチドの望ましい処置の様式及び投薬の回数は、通常の処置試験を用いて当該技術分野における熟練者が突き止めることができる。
【0106】
必要のある患者に、適切に調製された製薬学的組成物において投与することにより、所望の薬理学的効果を達成するために本発明のペプチドを用いることができる。本発明の目的の場合、患者は特定の状態又は疾患のための処置を必要とする人間を含む哺乳類である。従って本発明は、製薬学的に許容され得る担体及び治療的に有効な量のペプチドを含んでなる製薬学的組成物を含む。製薬学的に許容され得る担体は、比較的無毒性であり且つ活性成分の有効活性と一致する濃度において患者に害がなく、担体に帰せられ得る副作用が活性成分の有益な効果を損なわないいずれかの担体である。ペプチドの治療的に有効な量は、処置されている特定の状態に所望の結果を生むか、又は影響を及ぼす量である。例えば即時及び時間調節(timed)放出調製物を含む有効な通常の投薬単位形態物を用い、製薬学的に許容され得る担体と一緒に、本明細書に記載されるペプチドを経口的、非経口的、局所的などに投与することができる。
【0107】
経口的投与のために、ペプチドを固体又は液体調製物、例えばカプセル、丸薬、錠剤、
トローチ、ロゼンジ、融解剤(melts)、粉剤、溶液、懸濁剤又は乳剤に調製することができ、製薬学的組成物の製造に関する技術分野に既知の方法に従って調製することができる。固体単位投薬形態物はカプセルであることができ、それは例えば界面活性剤、滑択剤及び不活性充填剤、例えばラクトース、スクロース、リン酸カルシウム及びコーンスターチを含有する通常の硬質−又は軟質−殻ゼラチン型のものであることができる。
【0108】
本発明のペプチドを非経口的に、すなわち皮下、静脈内、筋肉内又は腹腔内に、製薬学的担体と一緒の生理学的に許容され得る希釈剤中のペプチドの注入可能な投薬として投与することもでき、担体は製薬学的に許容され得る界面活性剤又は乳化剤あるいは他の製薬学的添加剤が加えられるかもしくは加えられない無菌の液体又は液体の混合物であることができる。
【0109】
本発明の非経口用組成物は、典型的には約0.5重量%〜約25重量%の活性成分を溶液中に含有することができる。防腐剤及び緩衝剤も有利に用いることができる。注入の部位における刺激を最小にするか又は取り除くために、そのような組成物は約12〜約17の親水性−親油性バランス(HLB)を有する非−イオン性界面活性剤を含有することができる。そのような調剤中の界面活性剤の量は約5重量%〜約15重量%の範囲である。界面活性剤は上記のHLBを有する単一の成分であることができるか、あるいは所望のHLBを有する2種もしくはそれより多い成分の混合物であることができる。
【0110】
製薬学的組成物は無菌の注入可能な水性懸濁剤の形態にあることができる。そのような懸濁剤は既知の方法に従い、適した分散剤もしくは湿潤剤及び懸濁化剤を用いて調製することができる。
【0111】
本発明の組成物を、薬剤の直腸的投与のための座薬の形態で投与することもできる。これらの組成物は、常温で固体であるが直腸温度で液体であり、従って直腸で融解して薬剤を放出する適した無−刺激性賦形剤と薬剤(例えばペプチド)を混合することにより調製され得る。そのような材料は、例えばココアバター及びポリエチレングリコールである。
【0112】
本発明の方法において用いられる他の調剤は、経皮送達装置(「パッチ」)を用いる。制御された量で本発明のペプチドを継続的又は断続的に注入するために、そのような経皮パッチを用いることができる。製薬学的薬剤の送達のための経皮パッチの構成及び使用は当該技術分野において周知である(例えば引用することによりその記載事項が本明細書の内容となる米国特許第5,023,252号明細書を参照されたい)。そのようなパッチを製薬学的薬剤の継続的、パルス的あるいはオンデマンド送達用に構成することができる。
【0113】
機械的送達装置を介して製薬学的組成物を患者に導入するのが望ましいか、又は必要であり得る。製薬学的薬剤の送達のための機械的送達装置の構成及び使用は当該技術分野において周知である。例えば脳に直接薬剤を投与するための直接法は通常、血液−脳関門を迂回するために患者の脳室系内に薬剤送達カテーテルを置くことを含む。体の特定の解剖学的領域に薬剤を輸送するために用いられる1つのそのような移植可能な送達システムは、引用することによりその記載事項が本明細書の内容となる米国特許第5,011,472号明細書に記載されている。
【0114】
本発明の組成物は、一般に担体又は希釈剤と呼ばれる他の通常の製薬学的に許容され得る配合成分も必要通りもしくは所望通りに含有することができる。酸化防止剤、例えばアスコルビン酸の添加によるか、又は他の適した防腐剤により、本発明のいずれの組成物も防腐することができる。適した投薬形態でそのような組成物を調製するための通常の方法を用いることができる。
【0115】
本明細書に記載されるペプチドを単独の製薬学的薬剤として、あるいは1種もしくはそれより多い他の製薬学的薬剤と組み合わせて投与することができ、ここで組み合わせは許容され得ない悪影響を引き起こさない。
【0116】
本明細書に記載されるペプチドを組成物中で、研究及び診断において、あるいは分析用の参照標準としてなどで利用することもできる。従って本発明は、不活性担体及び本明細書に記載される方法により同定されるペプチド又はその塩もしくはエステルの有効量を含んでなる組成物を含む。不活性担体は、担持されるべきペプチドと相互作用せず、且つ担持されるべきペプチドに支持、運搬手段、嵩、追跡可能な材料などを与えるいずれかの材料である。ペプチドの有効量は、行なわれている特定の方法に結果を生むか、もしくは影響を与える量である。
【0117】
ペプチドは水性及び非−水性環境中で加水分解、脱アミド化、酸化、ラセミ化及び異性化を経ることが知られている。加水分解、脱アミド化又は酸化のような分解は、毛管電気泳動により容易に検出され得る。酵素的分解にもかかわらず、長い血漿半減期又は生物学的滞留時間を有するペプチドは、最低でも水溶液中で安定でなければならない。ペプチドが体温において1日間に及んで10%未満の分解を示すのは必須である。ペプチドが体温において1日間に及んで5%未満の分解を示すのはさらにもっと好ましい。体温において数週間に及ぶ安定性(すなわち数パーセント未満の分解)は、より少ない頻度の投薬を可能にするであろう。冷蔵庫温度で数年の長さにおける安定性は、製造者が液体調剤を提供することを許し、かくして再構築の不便さが避けられるであろう。さらに、有機溶媒中における安定性は、移植片のような新規な投薬形態物に調製されるペプチドを与えるであろう。
【0118】
皮下、静脈内、筋肉内などに適した調剤;適した製薬学的担体;ならびに調製及び投与の方法は、当該技術分野において周知の方法のいずれかに準備されている(例えばRemington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Co.,Easton,Pa.,20th edition,2000年を参照されたい)。
【0119】
本明細書に記載される本発明を例示するために以下の実施例を示すが、全く本発明の範囲を制限するとみなされるべきではない。
【実施例】
【0120】
本発明をより良く理解できるように、以下の実施例を示す。これらの実施例は例示のみの目的用であり、いかようにも本発明の範囲を制限するとみなされるべきではない。本明細書に挙げられるすべての公開文献は、引用することによりその記載事項全体が本明細書の内容となる。
【0121】
実施例1.アプロチニンの生産及び再生
当該技術分野における熟練者に既知の方法を用い、E.コリ、酵母、昆虫細胞、哺乳類細胞又は形質転換植物中における発現により、アプロチニンを生産することができる(例えばStaley著,Proc.Natl.Acad.Sci.89:1992年,1519−1523;Azzoni著,Biotechnol.Bioeng.80:2002年,268−276;Auerswald著,Biol.Che.,Hoppe−Seyler 368:1987年,1413−1425)か、あるいは固−相ペプチド合成を用いて合成することができる(例えばFerrer著,Int.J.Pept.Protein Res.40:1992年,194−207)。ジスルフィド−還元形態で発現される場合、当該技術分野における熟練者に既知の方法を用いてアプロチニンを再生す
ることができる(例えばFerrer著,1992年;Staley著,1992年;Azzoni著,2002年)。
【0122】
E.コリ中における発現のために、配列番号:15をコードする合成遺伝子を、最適E.コリ使用のために選ばれるコドンを用いてpET−3a又は他の適したE.コリ発現ベクター中に連結することにより、発現ベクターを調製する。プラスミドをE.コリ株BL21(DE3)pLysS中に形質転換し、IPTGを用いて発現を誘導する。遠心を用いて細胞を収穫し、音波処理を用いてライシスする。不溶性細胞ライセート画分を8Mウレア中に再懸濁させ、10%酢酸に対して透析する。次いでC18逆相HPLCを用いてアプロチニン変異体を精製する。還元及び酸化グルタチオンを含有するレドックス緩衝液中でアプロチニン変異体を再生させ、C18逆相HPLCを用いて精製する。
【0123】
アプロチニン変異体は固−相ペプチド合成を用いても生産される。ペプチドは、Wang Rinkアミド樹脂又は他のいずれかの適した樹脂上でHBTU活性化を用い、FmocもしくはBoc化学を用いるApplied Biosystems 433Aペプチド合成機を用いて合成される。84.6%のTFA、4.4%のフェノール、4.4%の水、4.4%のチオアニソール及び2.2%のエタンジチオールを用いてペプチドを切断し;冷tertブチルメチルエーテルを用いて切断カクテルからペプチドを沈降させる。沈降物を冷エーテルで洗浄し、アルゴン下で乾燥する。逆相C18HPLCにより、0.1%のTFAを含有する直線的水/アセトニトリル勾配を用いてペプチドを精製する。次いで当該技術分野における熟練者に既知の方法を用い、アプロチニン変異体を再生させる(例えばFerrer著,Int.J.Pept.Protein Res.40:1992年,194−207;Staley著,1992年;Azzoni著,2002年)。
【0124】
実施例2.アプロチニン変異体のPEG化
PEG誘導体は、N−末端修飾基のメルカプト部分へのカップリングのためにマレイミドで誘導体化されたメトキシポリエチレングリコールをインキュベーションすることにより製造される。Nektar Therapeutics(Hunstsville,AI,USA)により供給されるmPEG−MAL又はmPEG2−MAL製品あるいはNOF(Tokyo,Japan)により供給されるGLE−200MA又はGLE−400MA製品を用いることができる。カップリング反応は、アプロチニン及び2−倍モル過剰のマレイミド−PEGを50mM Tris,pH7中で室温において2〜12時間インキュベーションすることにより行なわれる。好ましいアプロチニン濃度は1mg/mlかもしくはそれ未満である。イオン交換クロマトグラフィー及び透析を用いるか、又は逆相C18HPLCにより、非誘導体化アプロチニン変異体及びPEGをPEG化されたアプロチニン変異体から精製する。
【0125】
実施例3.試験管内プロテアーゼ阻害活性の決定
本明細書に開示されるアプロチニン変異体によるトリプシン、血漿カリクレイン及びプラスミンのようなプロテアーゼの阻害を、当該技術分野における熟練者に既知の分光学的検定を用いて検定することができる。
【0126】
カリクレイン阻害のために、1単位のプロテアーゼを16mlの50mM Tris、0.1M NaCl及び0.05% Tween 20,pH8.2中で希釈する。この酵素溶液(200μl)を漸減的体積の試験緩衝液(例えば250,240,230,220,200,180,170,150,100及び50μl)と混合し、漸増する量の阻害剤(例えば0.7mg/mlにおいて10,20,30,50,70,80,100,150,200及び250μl)を加える。カリクレイン/阻害剤溶液を室温で4時間インキュベーションする。各溶液のアリコート(180μl)を20μlの基質溶液に加
え、吸収における変化により反応を監視する。適した基質には:カリクレインに関するS−2302;プラスミンに関するクロモジム PL(chromozym PL);因子XIに関するHD−Pro−Phe−Arg−pNA、トリプシンに関するS−2444及びクリモトリプシンに関するSuc−Phe−Leu−Phe−pNAが含まれる。
【0127】
実施例4.アプロチニン変異体の薬物動態学的性質の決定
マウス、ラット、イヌ及びサルのような動物モデルにおける本発明のアプロチニン変異体の血漿レベルを、アプロチニン変異体の静脈内輸液に続いて決定することができる。アプロチニン変異体レベルは、アプロチニンへの捕獲抗体(capture antiboky)(実施例6に記載される通りに生産される)及びPEGへのリポーター抗体(例えばアカドミカ・シニカ(Acadmica Sinica)からのAGP3)を利用するサンドイッチELISAを用いて測定される。放射性標識されたアプロチニン変異体を用いてアプロチニン変異体血漿レベルを測定することもできる(例えばShin著,Pharm.Pharmcol.Commun.4:1998年,257−260)。
【0128】
実施例5.動物におけるアプロチニン変異体の生体内効果の決定
麻酔されたラットの尾の離断に続いて血液損失へのアプロチニン変異体の効果を決定する。ラットをPlavix(3mg/kg)で処置する。2時間後、ラットをペントバルビタール(80mg/kg,腹腔内)で麻酔し、アプロチニン(10mg/kg,静脈内)で処置する。10分後、尾の遠位2mmを取り出し、食塩水中に入れる。出血が止まる時間を測定する。アプロチニン及び活性変異体は、Plavix−処置された群の出血時間を短縮する。
【0129】
実施例6.アプロチニン抗体の生産
追加のNもしくはC−末端Cys残基を有するアプロチニン配列に由来するペプチドの合成を実施例1に記載した通りに行なう。PerSeptive V Biosystems Voyager DE Pro MALDI質量分析器を用いるMALDI質量分析を用いて、ペプチドのアイデンティティー(identity)を確証する。Pierce Imject Maleimide Activated mcKLHキット及び案(Pierce,Rockford,IL)を用い、システイン残基をKLHにカップリングさせる。ウサギを免疫化し、当該技術分野における熟練者に既知の方法を用いて抗体を単離する。ウサギ中で生産されるアプロチニンペプチドに対する抗体を、当該技術分野における熟練者に既知の方法を用いて酵素結合イムノソルベント検定法(ELISA)により確証する。
【0130】
上記の明細書中に挙げられるすべての公開文献及び特許は、引用することによりその記載事項が本明細書の内容となる。記載される組成及び本発明の方法の種々の修正及び変更は、本発明の範囲及び精神から逸脱することなく、当該技術分野における熟練者に明らかであろう。特定の態様と結びつけて本発明を記載してきたが、特許請求される本発明はそのような特定の態様に不当に制限されるべきでないことは理解されねばならない。事実、分子生物学の分野又は関連する分野における熟練者に明らかな本発明の実施のための上記のやり方の種々の修正は、前記の請求項の範囲内であることが意図されている。当該技術分野における熟練者は、慣例的な実験以上のものを用いずに、本明細書に記載される本発明の特定の態様への多くの同等事項を認識するか、又は突き止めることができる。そのような同等事項は、前記の請求項により包含されることが意図されている。
【0131】
【表1】

【0132】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0133】
【図1】アプロチニン及びヒトクニッツドメインの配列の整列

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号:4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15ならびにその機能的に同等なフラグメント、誘導体及び変異体より成る群から選ばれるペプチド。
【請求項2】
ペプチドがPEG化されている請求項1のペプチド。
【請求項3】
請求項1又は2のペプチドの治療的に有効な量を製薬学的に許容され得る担体と組み合わせて含んでなる製薬学的組成物。
【請求項4】
請求項1又は2のペプチドの治療的に有効な量を製薬学的に許容され得る担体及び1種もしくはそれより多い製薬学的薬剤と組み合わせて含んでなる製薬学的組成物。
【請求項5】
必要な患者に請求項1又は請求項2のペプチドの治療的に有効な量を投与する段階を含んでなる手術時血液損失を減少させるための方法。
【請求項6】
心臓血管手術、整形外科手術、神経外科手術、再建手術又は腫瘍手術の間の手術時血液損失を減少させるためにペプチドを投与する請求項5の方法。
【請求項7】
必要な患者に請求項1又は請求項2のペプチドの治療的に有効な量を投与する段階を含んでなる全身性炎症反応を減少させるための方法。
【請求項8】
必要な患者に請求項1又は請求項2のペプチドの治療的に有効な量を投与する段階を含んでなる虚血再灌流損傷の処置方法。
【請求項9】
必要な患者に請求項1又は請求項2のペプチドの治療的に有効な量を投与する段階を含んでなるガンの処置方法。
【請求項10】
必要な患者に請求項1又は請求項2のペプチドの治療的に有効な量を投与する段階を含んでなる発作又は脳内出血の処置方法。
【請求項11】
必要な患者に請求項1又は請求項2のペプチドの治療的に有効な量を投与する段階を含んでなる心筋梗塞の処置方法。
【請求項12】
必要な患者に請求項1又は請求項2のペプチドの治療的に有効な量を投与する段階を含んでなる喘息、嚢胞性線維症及び慢性閉塞性肺疾患の処置方法。
【請求項13】
請求項1のペプチド及び製薬学的に許容され得る担体を含んでなるフィブリングルー。
【請求項14】
請求項1のペプチドをコードするポリヌクレオチド又はその縮重変異体。
【請求項15】
請求項14のポリヌクレオチドを含んでなるベクター。
【請求項16】
請求項15のベクターを含んでなる宿主細胞。
【請求項17】
a)請求項16の宿主細胞を該ポリペプチドの発現に適した条件下で培養し;そして
b)宿主細胞培養物からポリペプチドを回収する
ことを含んでなるペプチドの生産方法。
【請求項18】
請求項1のポリペプチドに特異的に結合する精製された抗体。
【請求項19】
手術時血液損失を減少させるための請求項1に従うペプチド。
【請求項20】
少なくとも1種の請求項1に従うペプチドを、少なくとも1種の製薬学的に許容され得る、製薬学的に安全な担体又は賦形剤と組み合わせて含有する薬剤。
【請求項21】
手術時血液損失を減少させるための薬剤の製造のための請求項1に従うペプチドの使用。
【請求項22】
手術時血液損失を減少させるための請求項20に従う薬剤。

【図1】
image rotate


【公表番号】特表2008−506391(P2008−506391A)
【公表日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−521627(P2007−521627)
【出願日】平成17年7月13日(2005.7.13)
【国際出願番号】PCT/US2005/024951
【国際公開番号】WO2006/017355
【国際公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【出願人】(503211596)バイエル・フアーマシユーチカルズ・コーポレーシヨン (46)
【Fターム(参考)】