説明

改良されたアルデヒド除去率を有するメタノールカルボニル化

改良されたアルデヒド除去率を有するメタノールカルボニル化は、(a)吸収塔溶媒によって排出ガスから軽質留分及びアルデヒド不純物をスクラビングし;(b)吸収塔溶媒から吸収された軽質留分及びアルデヒド不純物をストリッピングして排出流回収軽質留分流を与え;(c)排出流回収軽質留分流を精製してアルデヒド不純物を除去し;そして(d)排出流回収軽質留分流からの精製軽質留分を製造システムに再循環する;ことを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2008年11月7日出願の同じ表題の米国特許出願12/291,310(その全部を参照として包含する)に対する優先権を主張する。
本発明は、酢酸の製造、より詳しくは改良されたアルデヒド除去率を有する酢酸製造に関する。
【背景技術】
【0002】
酢酸を合成するために現在用いられているプロセスの中で、商業的に最も多く用いられているものの1つは、一酸化炭素によるメタノールの接触カルボニル化である。この方法を実施する好ましい方法としては、同じ出願人に譲渡されている1991年3月19日発行の米国特許5,001,259;1991年6月25日発行の米国特許5,026,908;及び1992年9月1日発行の米国特許5,144,068;並びに1992年7月1日公告のヨーロッパ特許EP−0161874−B2;において見られる種類のロジウム又はイリジウムで触媒される所謂「低水(low water)」プロセスが挙げられる。低水カルボニル化プロセスを実施することに関係する特徴としては、反応媒体中において、触媒的に有効な量のロジウム及び少なくとも限定濃度の水と共に、系中のヨウ化水素によって存在するヨウ化物イオンを超える上昇した濃度の無機ヨウ化物アニオンを維持することを挙げることができる。このヨウ化物イオンは単純な塩であってよく、ヨウ化リチウムが殆どの場合において好ましい。米国特許5,001,259;5,026,908;5,144,068;並びヨーロッパ特許EP−0161874−B2は、参照として本明細書中に包含する。
【0003】
酢酸を製造するための低水カルボニル化プロセスは、副生成物の二酸化炭素及び水素を減少させることによって一酸化炭素効率が増加するが、アセトアルデヒド及びその誘導体のような他の不純物の量は、低水カルボニル化プロセスにおいては、反応器内のより高い水分濃度で運転する同様のプロセスと対比して増加する。これらの不純物は、特にそれらを反応プロセスを通して再循環し、これによってカルボニル化合物及びヨウ化アルキルのような誘導不純物の蓄積が引き起こされる場合には酢酸の品質に影響を与える。カルボニル不純物によって、産業界において通常的に用いられている品質試験である酢酸の過マンガン酸塩時間(permanganate time)が減少する。ここで用いる「カルボニル」という句は、不飽和部分を有していてもいなくてもよい、アルデヒド又はケトン官能基を含む化合物を意味すると意図される。カルボニル化プロセスにおける不純物に関する更なる議論に関しては、Catalysis of Organic Reaction, 75, 369-380 (1998)を参照。
【0004】
本発明は、部分的には、アセトアルデヒド、アセトン、メチルエチルケトン、ブチルアルデヒド、クロトンアルデヒド、2−エチルクロトンアルデヒド、及び2−エチルブチルアルデヒドなどのような過マンガン酸塩減少化合物(PRC)、アセトアルデヒドから誘導することができるアルキルヨウ化物、及び不純物のアルドール縮合生成物を減少及び/又は除去することに関する。アセトアルデヒドの形成は、おそらくは反応器内での水素の利用可能性のためにプロピオン酸レベルの増加を引き起こすことが明らかであるので、本発明はまた幾つかの場合においてはプロピオン酸形成の減少をもたらすこともできる。理論に縛られることは意図しないが、多くの不純物はヨウ化物塩、例えばヨウ化リチウムの存在下でより容易に形成されることが明らかであるアセトアルデヒドから誘導されると考えられる。アセトアルデヒドは縮合してクロトンアルデヒドのような不飽和アルデヒドを形成し、これは次に、除去するのが特に困難で酢酸ビニル触媒に対して有害なより高級のアルキルヨウ化物を系中に生成する可能性がある。酢酸ビニルの製造は、酢酸の唯一の最も大きな最終用途である。
【0005】
アセトアルデヒド不純物を除去する通常の方法は、低濃度のアルデヒド不純物を有する酢酸生成物流を、酸化剤、オゾン、水、メタノール、活性炭、アミンなどで処理することを含む。かかる処理は、酢酸の蒸留と組み合わせることができ、また組み合わせなくてもよい。最も通常的な精製処理は、最終生成物の一連の蒸留を含む。また、有機流を、カルボニル化合物と反応してオキシムを形成するヒドロキシルアミンのようなアミン化合物で処理し、次に蒸留して精製有機生成物をオキシム反応生成物から分離することによって有機流からカルボニル不純物を除去することも公知である。しかしながら、最終生成物の更なる処理はプロセスのコストを増加させ、処理した酢酸生成物の蒸留によって更なる不純物が形成される可能性がある。
【0006】
軽質留分ストリッパーカラムから凝縮される軽質留分を蒸留してアセトアルデヒドを除去することによって高純度の酢酸を製造する他のプロセスが記載されている。処理してアセトアルデヒドを除去するように提案されている流れとしては、主として水、酢酸、及び酢酸メチルを含む軽質相;又は主としてヨウ化メチル、酢酸メチル、及び酢酸を含む重質相;或いは軽質相と重質相を混合することによって形成される流れ;が挙げられる。例えば同じ出願人に譲渡されている米国特許6,143,930及び6,339,171においては、縮合された軽質留分カラム塔頂流に対して多段階精製を行うことによって酢酸生成物中の望ましくない不純物を大きく減少させることができることが開示されている。これらの特許においては、軽質留分塔頂流を2回蒸留し、それぞれの場合においてアセトアルデヒド塔頂流を回収してヨウ化メチルに富む残留物を反応器に戻す精製プロセスが開示されている。2回の蒸留工程の後に得られるアセトアルデヒドに富む蒸留物は、場合によって水で抽出してアセトアルデヒドの大部分を廃棄するために除去して、ラフィネート中に非常に低いアセトアルデヒド濃度を残留させて、これを反応器に再循環する。米国特許6,143,930及び6,339,171はその全部を参照として本明細書中に包含する。アルデヒド及び他の過マンガン酸塩減少化合物を除去するための更なるシステムは、Zinobileらの「酢酸の製造方法」と題された米国特許出願11/116,771(公開US−2006/0247466−A1);Scatesらの「メタノールカルボニル化プロセス流からの過マンガン酸塩減少化合物の除去」と題された米国特許出願10/708,420(公開−US−2005/0197508−A1);及びPicardらの「メタノールカルボニル化プロセス流からの過マンガン酸塩減少化合物の除去」と題された米国特許出願10/708,421(公開US−2005/0197509−A1);(これらの開示事項は参照として本明細書中に包含する)に記載されている。一般に、凝縮された軽質留分は1重量%未満のアセトアルデヒドを含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許5,001,259
【特許文献2】米国特許5,026,908
【特許文献3】米国特許5,144,068
【特許文献4】ヨーロッパ特許EP−0161874−B2
【特許文献5】米国特許6,143,930
【特許文献6】米国特許6,339,171
【特許文献7】米国特許出願公開US−2006/0247466−A1
【特許文献8】米国特許出願公開−US−2005/0197508−A1
【特許文献9】米国特許出願公開US−2005/0197509−A1
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Catalysis of Organic Reaction, 75, 369-380 (1998)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記記載のプロセスは、カルボニル化システムからカルボニル不純物を除去し、アセトアルデヒドレベル及び過マンガン酸塩時間を制御することに成功しているが、既存の手順は、システム中のアルデヒド及び関連する不純物の蓄積を阻止するために特定の流れから除去することが必要なアルデヒド不純物の低いレベルのために設備コスト及び運転コストの両方の点で高価である傾向がある。したがって、メタノールカルボニル化プロセスにおけるアセトアルデヒド除去の効率性を向上させる代替プロセスに関する必要性が未だ存在する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、排出ガス軽質留分回収吸収塔システムを用いて、吸収塔流体からストリッピングされる回収軽質留分流中にアセトアルデヒドを回収する。排出流回収軽質留分流は、回収軽質留分をカルボニル化システムへ戻す前にアセトアルデヒドを除去することによって精製する。したがって、改良点は、一般に、(a)吸収塔溶媒によって排出ガスから軽質留分及びアセトアルデヒドをスクラビングし;(b)吸収塔溶媒から吸収された軽質留分及びアセトアルデヒド不純物をストリッピングして、アセトアルデヒド不純物を有する回収軽質留分流を与え;(c)回収軽質留分流を精製してアルデヒド不純物を除去し;そして(d)回収軽質留分流からの精製軽質留分を製造システムに再循環する;ことを含む。
【0011】
回収される軽質留分流は1より多く5重量%まで又はこれより多いアセトアルデヒドを含んでいてよく、これによってカルボニル化システムからそれらを除去するためにアルデヒドを除去する必要がある軽質留分の体積が大きく減少する。即ち、既存のシステムでは10,000ppm未満のアセトアルデヒドを含む流れを処理することが教示されている。したがって、精製して所定量のアセトアルデヒド不純物を除去するのに必要な軽質留分の体積が大きく減少するので、本発明のアプローチによって同程度のアセトアルデヒドを除去するための運転及び設備コストは上記に記載の従来技術の方法よりも著しく低い。好ましくは、アセトアルデヒドは回収される軽質留分中に少なくとも2又は3重量%で5重量%まで又はそれ以上存在する。特定の設計に関しては、回収される軽質留分流中の2〜10重量%のアセトアルデヒドの濃度を達成することができる。
【0012】
本発明の更なる特徴及び有利性は以下の議論から明らかになるであろう。
以下において種々の図面を参照して本発明を詳細に記載する。図面において、同じ数字は同様の部品を示す。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、従来のアルデヒド除去システムを有するメタノールカルボニル化システムの概要図である。
【図2】図2は、本発明による排出ガスストリッパーに接続したアルデヒド除去システムを有する本発明のメタノールカルボニル化システムの概要図である。
【図3】図3は、図2のアルデヒド除去システムを示す拡大詳細図である。
【図4】図4は、本発明の改良されたメタノールカルボニル化システムの別の構造の概要図である。
【図5】図5は、本発明の改良されたメタノールカルボニル化システムの更に他の別構造の概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明を、例証及び例示のみの目的のための幾つかの態様を参照して以下に詳細に記載する。特許請求の範囲に示す本発明の精神及び範囲内の特定の態様に対する修正は、当業者に容易に明らかになるであろう。
【0015】
下記においてより具体的に定義しない限りにおいて、ここで用いる用語はその通常の意味で与えられる。例えば、%などの用語は他に示さない限りにおいて重量%を指す。
「アルデヒド不純物」とは、排出ガス中に存在する可能性があるアセトアルデヒド及び関連する化合物を指す。
【0016】
「軽質留分」とは、酢酸よりも揮発性の高い反応混合物成分を指す。通常は、「軽質留分」とは、主たる成分であるヨウ化メチル及び酢酸メチルを指す。
「ストリッピング」とは、蒸発又は蒸留によって混合物から成分を除去することを指す。
【0017】
図1、2、4、及び5を参照すると、酢酸を製造するために用いる上記記載の種類のカルボニル化システム10が示されている。システム10は、反応器12,フラッシャー14、軽質留分又はストリッパーカラム16、乾燥カラム18を含み、場合によっては乾燥カラム残留生成物の更なる精製を含む。反応器排出流は、公知のように高圧吸収塔又は他の装置に送ることができる。中国特許ZL−92108244.4、並びにヨーロッパ特許EP−0759419及びDenisらの米国特許5,770,768(これらの開示事項は参照として本明細書中に包含する)を参照。システム10内にはまた、26において示す低圧吸収塔、及び28において示す排出流ストリッパーカラムも含まれる。
【0018】
酢酸を製造するために、メタノール及び/又は酢酸メチルのような反応性誘導体並びに一酸化炭素を、均一な金属触媒反応媒体を含む反応器12に供給する。メタノール又はその反応性誘導体をカルボニル化しながら、反応混合物の一部を反応器から引き抜き、ライン30を通してフラッシャー14に供給する。フラッシャーにおいては、反応器と比較して減少した圧力が存在しており、これにより粗生成物流34がフラッシングによって製造されるようになっている。流れ34は、図において示すように軽質留分又はストリッパーカラム16に供給する。フラッシャー14へ供給される触媒は、ライン36を通して反応器12に再循環する。
【0019】
軽質留分カラム16においては、粗生成物流34を更に精製する。特に、軽質留分をカラムから塔頂流38に留出させる。塔頂流38は主としてヨウ化メチル及び酢酸メチルから構成され、これを凝縮器40で凝縮して受容容器42へ供給する。受容容器42から凝縮した物質をデカンテーションして、ライン44、46、及び48において示すような再循環流として用いる。
【0020】
また、還流も受容容器42から引き抜き、ライン50を通して軽質留分カラムに与える。
側流52をストリッパーカラム16から引き抜き、図1及び2の図面において示すようにライン52を通して脱水カラム18に供給する。ライン52は、精製生成物流、即ちヨウ化メチル及び酢酸メチルが実質的に除去されている流れを表す。しかしながら、流れ52の組成物は相当量の水を含んでおり、これが乾燥カラム18を用いる理由である。乾燥カラム18においては、水を塔頂54を通して取り出し、示されているように再循環する。生成物がライン56を通して乾燥カラム18から排出され、これは場合によっては生成物貯留に送る前に重質留分及びヨウ素含有不純物を除去するための更なる精製に供給する。
【0021】
具体的に図1を参照すると、受容容器42からの排出ガスをライン62を通して吸収塔26に供給する従来の構成が示されている。塔26においては、ライン62を通して供給される排出ガスを冷却酢酸でスクラビングし、これは使用後にライン64を通して排出流ストリッパー塔28に供給する。ヨウ化メチル及び酢酸メチルを含むストリッピングされた蒸気は、ライン66を通して軽質留分セクションに再供給して、これによってヨウ化メチル及び酢酸メチルを再循環する。
【0022】
68において図示されているアルデヒド除去システムは、70において示されているように受容容器42から引き抜かれる軽質相又は重質相のいずれかについて運転する。アルデヒド除去システム68においては、当該技術において公知なように、ライン70を通して供給される受容容器からの凝縮液をカラム72内で蒸留にかけて、アセトアルデヒド及び場合によっては他の過マンガン酸塩減少化合物を除去する。示されているように、カラム72の精製残留物は製造ユニットに戻す。軽質留分、アセトアルデヒド、及び他の過マンガン酸塩減少化合物を含む塔頂流は、ライン74内に塔頂流として回収する。塔頂流は、76において凝縮し、受容容器78に供給する。抽出器82において過マンガン酸塩減少化合物を凝縮液から抽出する前に、物質を80において更に冷却することができる。精製された塔頂流物質、即ちアセトアルデヒドが除去された物質は、図示されているようにライン84を通して受容容器42に戻す。
【0023】
本発明の改良点を図2及び3に示す。
図2及び3においては、排出ガスを同様にライン62を通して受容容器42から吸収塔26に供給する。カラム26においては、排出ガスを冷却酢酸でスクラビングし、これは使用後にライン64を通して排出流ストリッパーカラム28に供給する。排出流ストリッパーカラム28においては、物質から軽質留分をストリッピングして、66で示す塔頂を通してカラム28から排出する。塔頂流は、主としてヨウ化メチル、酢酸メチル、アセトアルデヒド、及び場合によっては上記で議論した更なる過マンガン酸塩減少化合物を含む。本発明によれば、ライン66は、蒸留カラム92、並びに凝縮器94、受容容器96、及び抽出器98を含むアルデヒド除去システム90に直接供給される。本発明によれば、単段階、多段階、又は攪拌対向流抽出を用いることができる。同様に、回収される軽質留分流を、蒸留、抽出、抽出蒸留、又は上記の組合せによって精製することができる。
【0024】
本発明の顕著な特徴は、熱いストリッピングされたヨウ化メチル及び酢酸メチルを蒸留カラム92に直接供給して、これによって流れのエンタルピーを用いて流れの精製を促進させることができることである。カラム92においては、アセトアルデヒド及び場合によっては他の過マンガン酸塩減少化合物を留去し、塔頂100を通してカラム92から排出する。したがって、カラム92の残留物はアセトアルデヒド不純物が除去されたヨウ化メチル及び酢酸メチルを含んでおり、ライン105を通して製造ユニットに戻すことができる。
【0025】
カラム92からの塔頂流100は凝縮器94に供給し、そこでアセトアルデヒド及び場合によっては他の過マンガン酸塩減少化合物を含む軽質留分を凝縮して受容容器96に供給する。受容容器96からの凝縮物は、抽出器98に供給する前に102において更に冷却することができる。抽出器98においては、水を用いて、酢酸メチル及びヨウ化メチルを含む流れからアルデヒド及び他の過マンガン酸塩減少化合物を抽出する。精製した物質は、ライン105と同様にライン104を通してシステム10に直接戻すことができる。例えば、精製した物質は、受容容器42に戻して、示されているように軽質留分及び反応システムに再循環することができる。或いは、精製した物質は、重質相再循環流を与えるポンプ、触媒再循環流を与えるポンプ、或いは反応器12への戻り流を与える他の専用のポンプに戻すことができる。かかる特徴は、示されている種類の製造システム10に容易に組み込まれる。
【0026】
図2及び3に示されるシステムは、流れ66中に与えられる排出流ストリッピングされたヨウ化メチル及び酢酸メチルがシステム10において得られる他の流れと比較して非常に高いアセトアルデヒドの濃度を有するという点で従来技術のシステムを凌ぐ有利性を有する。アセトアルデヒド及び場合によっては他の過マンガン酸塩減少化合物がより濃縮され、目標の純度レベルを達成するためにより少ない物質しか精製及び再循環する必要がないので、流れ66中の過マンガン酸塩減少化合物の高い濃度によって更なる有利性が与えられる。更に、精製プロセスにおいて比較的早期に過マンガン酸塩減少化合物を除去することによって、クロトンアルデヒドのような誘導不純物が生成する機会が減少する。
【0027】
本発明の更に他の有利性は、ストリッピングされた蒸気流66を気体形態でカラム92へ直接供給すると、ストリッピングされた蒸気流66におけるエンタルピーを用いて流れからアセトアルデヒドを除去するのを促進することができることである。或いは、利用可能な装置に基づいてより好都合である場合には、排出流ストリッピングされた軽質留分流を液体に凝縮し、その後に精製することができる。
【0028】
図4に示す本発明の他の態様においては、流れ66を既存のアルデヒド除去システム68に供給することができる。所望の場合には、ストリッパー28からの軽質留分は、所望の場合には、ライン108を用いてカラム72に供給する前に106において更に冷却することができる。場合によっては、流れ66中の物質の一部を軽質留分カラム16に戻すことができる。
【0029】
図5に示す本発明の更に他の態様においては、図において示されるように、受容容器からの凝縮液はライン70を通して通常のアルデヒド除去システムに供給し、一方、ストリッピングされた蒸気はライン66を通してアルデヒド除去システム90に供給する。場合によっては、ストリッピングされた蒸気の一部を既存のアルデヒド除去システム68、即ちカラム72に送ることができる。
【0030】
当業者であれば、システム10を種々の方法で構成することができ、異なる触媒、促進剤などを用いることができることを認識するであろう。本発明に関して用いる第VIII族触媒金属は、ロジウム及び/又はイリジウム触媒であってよい。ロジウム金属触媒は、当該技術において周知なように、ロジウムが触媒溶液中において[Rh(CO)アニオンを含む平衡混合物として存在するような任意の好適な形態で加えることができる。ロジウム溶液が反応器の一酸化炭素に富む雰囲気中に存在する場合には、ロジウム/カルボニルヨウ化物アニオン種は水及び酢酸中に概して可溶であるので、ロジウムの溶解度は概して保持される。しかしながら、フラッシャー、軽質留分カラムなどの中に通常存在するような一酸化炭素に乏しい雰囲気に移すと、より少ない一酸化炭素しか利用できないので平衡ロジウム/触媒の組成が変化する。例えばロジウムはRhIとして沈殿する。反応器の下流の同伴ロジウムの形態に関する詳細はよく理解されていない。ヨウ化物塩は、当業者に認められるように、所謂「低水」条件下においてフラッシャー内での沈殿の軽減を促進する。
【0031】
ここで記載するプロセスの反応混合物中に保持されるヨウ化物塩は、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の可溶性塩、或いは第4級アンモニウム又はホスホニウム塩の形態であってよい。幾つかの態様においては、触媒共促進剤は、ヨウ化リチウム、酢酸リチウム、又はこれらの混合物である。ヨウ化物塩は、ヨウ化リチウム及びヨウ化ナトリウム及び/又はヨウ化カリウムの混合物のような塩の混合物として加えることができる。或いは、反応システムの運転条件下においては、アルカリ金属酢酸塩のような広範囲の非ヨウ化物塩前駆体がヨウ化メチルと反応して対応する共促進剤であるヨウ化物塩安定剤を生成するので、ヨウ化物塩をその場で生成させることができる。好適な塩は、所望の場合にはホスフィン酸化物又は任意の好適な1種類又は複数の有機リガンドのような非イオン性前駆体からその場で生成させることができる。ホスフィン酸化物及び好適な有機リガンドは、一般にヨウ化メチルの存在下において昇温下で4級化を受けて塩を生成し、これによってヨウ化物アニオンの濃度が保持される。ヨウ化物塩の生成に関する更なる詳細に関しては、Smithらの米国特許5,001,259;Smithらの5,026,908;及びこれもSmithらの5,144,068(これらの開示事項は参照として本明細書中に包含する)を参照。
【0032】
液体カルボニル化反応組成物中のイリジウム触媒は、液体反応組成物中に可溶の任意のイリジウム含有化合物を含んでいてよい。イリジウム触媒は、液体反応組成物中に溶解するか、又は可溶性形態に転化させることができる任意の好適な形態で、カルボニル化反応のための液体反応組成物に加えることができる。液体反応組成物に加えることができる好適なイリジウム含有化合物の例としては、IrCl、IrI、IrBr、[Ir(CO)I]、[Ir(CO)Cl]、[Ir(CO)Br]、[Ir(CO)、[Ir(CO)Br、[Ir(CO)、[Ir(CH)I(CO)]、Ir(CO)12、IrCl・3HO、IrBr・3HO、Ir(CO)12、イリジウム金属、Ir、Ir(acac)(CO)、Ir(acac)、酢酸イリジウム、[IrO(OAc)(HO)][OAc]、及びヘキサクロロイリジウム酸[HIrCl]が挙げられる。通常は、酢酸塩、シュウ酸塩、及びアセト酢酸塩のような塩化物を含まないイリジウムのコンプレックスを出発物質として用いる。液体反応組成物中のイリジウム触媒の濃度は、100〜6000ppmの範囲であってよい。イリジウム触媒を用いるメタノールのカルボニル化は周知であり、以下の米国特許:5,942,460;5,932,764;5,883,295;5,877,348;5,877,347;及び5,696,284(これらの開示事項は参照としてそれらの全てを示されているように本出願中に包含する)に一般的に記載されている。
【0033】
所望の場合には、担持された第VIII族触媒を用いることができる。1つの好ましい系としては、ロジウム種を担持する懸垂ピロリドン基を有する不溶のポリマーが挙げられる。1つの好適な触媒は、架橋され、ロジウムが装填されたポリビニルピロリドンである。架橋は、米国特許2,938,017において開示されているような苛性触媒を用いるか、或いはドイツ特許DE−2,059,484において開示されているような架橋剤を用いることによって行うことができる。これらの参考文献は参照として本明細書中に包含する。この触媒は、ポリマー担体をアルカリハロゲン化物及びロジウム化合物と反応させることによって製造される。いずれの反応も、標準的な手順によって、かかる反応のための公知の成分を用いて容易に行われる。例えば、そうでなければメタノールカルボニル化反応のための均一な媒体として構成されるものに粉末又は樹脂ビーズなどの形態の一定量の不溶のポリマーを単純に加えることが好ましい。かかるカルボニル化反応媒体は、圧力容器内に、メタノール及び/又は酢酸メチル、酢酸、及び少量の水を、ここで記載するロジウム化合物及びヨウ化物促進剤と共に含む。更なる詳細は米国特許5,466,874(その開示事項はその全てを参照として本明細書中に包含する)において見られる。
【0034】
他の系は、不溶のピリジン環含有ポリマー、及びその上に担持されている第VIII族金属を含み、それ自体公知である。ここで用いる「ピリジン環含有ポリマー」という用語は、置換又は非置換ピリジン環、或いはキノリン環のような置換又は非置換ピリジン含有重縮合環を含むポリマーを指すように意図される。置換基としては、アルキル基及びアルコキシ基のようなメタノールカルボニル化に対して不活性のものが挙げられる。不溶のピリジン環含有ポリマーの代表例としては、ビニルピリジンとジビニルモノマーとの反応、或いはビニルピリジンとジビニルモノマー含有ビニルモノマーとの反応によって得られるもの、例えば4−ビニルピリジンとジビニルベンゼンとのコポリマー、2−ビニルピリジンとジビニルベンゼンとのコポリマー、スチレン、ビニルベンゼン、及びジビニルベンゼンのコポリマー、ビニルメチルピリジンとジビニルベンゼンとのコポリマー、並びにビニルピリジン、メチルアクリレート、及びエチルジアクリレートのコポリマーが挙げられる。更なる詳細は米国特許5,334,755(その開示事項はその全てを参照として本明細書中に包含する)において見られる。
【0035】
ヨウ化メチルは促進剤として用いる。好ましくは、液体反応組成物中のヨウ化メチルの濃度は、1〜50重量%、好ましくは2〜30重量%の範囲である。
促進剤は、塩安定剤/共促進剤化合物と組み合わせることができ、これとしては第IA族又はIIA族の金属の塩、或いは第4級アンモニウム又はホスホニウム塩を挙げることができる。ヨウ化物又は酢酸塩、例えばヨウ化リチウム又は酢酸リチウムが特に好ましい。
【0036】
ヨーロッパ特許公開EP−0849248(その開示事項は参照として本明細書中に包含する)に記載されているような他の促進剤及び共促進剤を、本発明の触媒系の一部として用いることができる。好適な促進剤は、ルテニウム、オスミウム、タングステン、レニウム、亜鉛、カドミウム、インジウム、ガリウム、水銀、ニッケル、白金、バナジウム、チタン、銅、アルミニウム、スズ、アンチモンから選択され、より好ましくはルテニウム及びオスミウムから選択される。米国特許6,627,770(その全てを参照として本明細書中に包含する)に特定の共促進剤が記載されている。
【0037】
促進剤は、液体反応組成物及び/又は酢酸回収段階からカルボニル化反応器へ再循環される全ての液体プロセス流中におけるその溶解度の限界値以下の有効量で存在させることができる。用いる場合には、促進剤は、好適には、[0.5〜15]:1、好ましくは[2〜10]:1、より好ましくは[2〜7.5]:1の促進剤と金属触媒とのモル比で液体反応組成物中に存在させる。好適な促進剤の濃度は400〜5000ppmである。
【0038】
本発明の対象であるカルボニル化装置又は方法は、通常は、反応セクション、精製セクション、触媒貯留システム、及び軽質留分回収システムを含む。本発明は、例えば、反応溶媒(通常は酢酸)、メタノール及び/又はその反応性誘導体、可溶性ロジウム触媒、及び少なくとも有限濃度の水を含む均一な触媒反応系中での一酸化炭素によるメタノールのカルボニル化と関連して理解することができる。カルボニル化反応は、メタノール及び一酸化炭素を反応器に連続的に供給しながら進行させる。一酸化炭素反応物質は、実質的に純粋であってよく、或いは二酸化炭素、メタン、窒素、希ガス、水、及びC〜Cパラフィン系炭化水素のような不活性不純物を含んでいてもよい。一酸化炭素中に存在し、及び水性ガスシフト反応によってその場で生成する水素の存在は、水素化生成物の形成を引き起こす可能性があるので、好ましくは例えば1bar未満の低い分圧に保持する。反応中の一酸化炭素の分圧は、好適には、1〜70bar、好ましくは1〜35bar、最も好ましくは1〜15barの範囲である。
【0039】
カルボニル化反応の圧力は、好適には、10〜200bar、好ましくは10〜100bar、最も好ましくは15〜50barの範囲である。カルボニル化反応の温度は、好適には、100〜300℃の範囲、好ましくは150〜220℃の範囲である。酢酸は、通常は、液相反応で、約150〜200℃の温度及び約20〜約50barの全圧において製造する。
【0040】
酢酸は、通常は反応のための溶媒として反応混合物中に含ませる。
好適なメタノールの反応性誘導体としては、酢酸メチル、ジメチルエーテル、ギ酸メチル、及びヨウ化メチルが挙げられる。メタノール及びその反応性誘導体の混合物を、本発明方法において反応物質として用いることができる。好ましくは、反応物質としてメタノール及び/又は酢酸メチルを用いる。メタノール及び/又はその反応性誘導体の少なくとも一部は、液体反応組成物中において、酢酸生成物又は溶媒との反応によって酢酸メチルに転化し、したがって酢酸メチルとして存在する。液体反応組成物中の酢酸メチルの濃度は、好適には、0.5〜70重量%、好ましくは0.5〜50重量%、より好ましくは1〜35重量%、最も好ましくは1〜20重量%の範囲である。
【0041】
水は、例えばメタノール反応物質と酢酸生成物との間のエステル化反応によって、液体反応組成物中においてその場で形成することができる。水は、液体反応組成物の他の成分と一緒か又は別々にカルボニル化反応器に導入することができる。水を反応器から排出される反応組成物の他の成分から分離して、液体反応組成物中における水の求められる濃度を保持するように制御された量で再循環することができる。好ましくは、液体反応組成物中に保持する水の濃度は、0.1〜16重量%、より好ましくは1〜14重量%、最も好ましくは1〜10重量%の範囲である。
【0042】
特定の例に関して本発明を説明したが、本発明の精神及び範囲内でのこれらの例に対する修正は、当業者には容易に明らかとなろう。背景技術及び詳細な説明に関して上記で議論した上述の議論、当該技術における関連する知識、及び参考文献(その開示事項は全て参照として本明細書中に包含する)を考慮すると、更なる説明は不要であると考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応媒体を含む反応器及び生成物精製装置を有し、吸収塔へ排出する製造システムを含む種類の酢酸を製造するための装置の改良された運転方法であって、
(a)吸収塔溶媒を用いて排出ガスから軽質留分及びアルデヒド不純物をスクラビングし;
(b)吸収塔溶媒から吸収された軽質留分及びアルデヒド不純物をストリッピングして排出流回収軽質留分流を与え;
(c)排出流回収軽質留分流を精製してアルデヒド不純物を除去し;そして
(d)排出流回収軽質留分流からの精製軽質留分を製造システムに再循環する;
ことを含む上記方法。
【請求項2】
アルデヒド不純物がアセトアルデヒドを含む、請求項1に記載の改良。
【請求項3】
軽質留分がヨウ化メチルを含む、請求項1に記載の改良。
【請求項4】
軽質留分が酢酸メチルを含む、請求項1に記載の改良。
【請求項5】
吸収塔溶媒が酢酸を含む、請求項1に記載の改良。
【請求項6】
吸収塔溶媒がメタノールを含む、請求項1に記載の改良。
【請求項7】
排出流回収軽質留分流を蒸留によって精製する、請求項1に記載の改良。
【請求項8】
排出流回収軽質留分流が蒸気相であり、還流蒸留塔に供給する、請求項1に記載の改良。
【請求項9】
製造ユニットに再循環する前に水による抽出によって排出流回収軽質留分からアルデヒド不純物を除去する、請求項1に記載の改良。
【請求項10】
反応媒体がロジウム又はイリジウム触媒及び1〜10重量%の濃度の水を含む、請求項1に記載の改良。
【請求項11】
アルデヒド及びアルデヒド誘導不純物を制御しながら酢酸を製造する方法であって、
(a)製造システムの反応器内において、反応媒体の1〜10重量%の反応器内での水の濃度を保持しながら、且つ同時に反応器内において一酸化炭素の所定の分圧を保持しながら、メタノール又はその反応性誘導体を第VIII族金属触媒及びヨウ化メチル促進剤の存在下でカルボニル化し;
(b)軽質留分及びアルデヒド不純物を含む排出ガスを与えるように製造システムから非凝縮性物質を排出し、;
(c)製造システムからの排出ガスを吸収塔に供給し;
(d)酢酸、メタノール、酢酸メチル、又はこれらの混合物を含むスクラバー溶媒を吸収塔に供給し;
(e)排出ガスをスクラバー溶媒と接触させ、これによってガスから軽質留分及びアルデヒド不純物を除去してスクラバー溶媒中に吸収させ;
(f)吸収塔溶媒から吸収された軽質留分及びアルデヒド不純物をストリッピングして排出流回収軽質留分流を与え;
(g)排出流回収軽質留分流を精製してアルデヒド不純物を除去し;そして
(h)排出流回収軽質留分流からの精製軽質留分を製造システムに再循環する;
ことを含む上記方法。
【請求項12】
第VIII族金属触媒がロジウム触媒である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
第VIII族金属触媒がイリジウム触媒である、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
反応器内の水の濃度を反応媒体の2〜8重量%に保持する、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
軽質留分を製造流に再循環する前に、排出流回収軽質留分流を蒸留、抽出、抽出蒸留、又はこれらの組合せによって精製する、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
酢酸の製造装置であって、
(a)酢酸反応混合物内にロジウム触媒、イリジウム触媒、及びこれらの混合物から選択される触媒を含む、メタノール又はその反応性誘導体をカルボニル化するための反応器;
(b)酢酸反応混合物の流れを受容し、それを(i)少なくとも第1の液体触媒再循環流、及び(ii)酢酸を含む粗プロセス流に分離するように構成されているフラッシュシステム;
(c)フラッシュシステムに接続されており、粗プロセス流から低沸点成分を分離し、精製プロセス流を生成させるように適合されている第1の蒸留カラム(ここで、第1の蒸留カラム及び場合によっては反応器及びフラッシュシステムはまた、軽質留分及びアルデヒド不純物を含む排出ガス流を生成させるように運転する);
(d)排出ガス流を受容し、スクラバー溶媒によってそれから軽質留分及びアルデヒド不純物を除去するように適合されている吸収塔;
(e)吸収塔に接続されており、スクラバー溶媒から軽質留分及びアルデヒド不純物をストリッピングして、アルデヒド不純物を含む排出流回収軽質留分流を生成させるためのストリッピングカラム;及び
(f)ストリッピングカラムに接続されており、回収される軽質留分流を受容し、それからアルデヒド不純物を除去するためのアルデヒド除去システム;
を含む上記装置。
【請求項17】
アルデヒド除去システムが蒸留カラムを含む、請求項16に記載の装置。
【請求項18】
アルデヒド除去システムが抽出ユニットを含む、請求項16に記載の装置。
【請求項19】
アルデヒド除去システムが蒸留カラム及び抽出ユニットを含む、請求項16に記載の装置。
【請求項20】
第1の蒸留カラムに接続されており、精製プロセス流を受容してそれから水を除去するための乾燥カラムを更に含む、請求項16に記載の装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公表番号】特表2012−508166(P2012−508166A)
【公表日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−534534(P2011−534534)
【出願日】平成21年11月6日(2009.11.6)
【国際出願番号】PCT/US2009/006017
【国際公開番号】WO2010/053571
【国際公開日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(500175107)セラニーズ・インターナショナル・コーポレーション (77)
【Fターム(参考)】