改良された皺付きダイアフラムポンプ
本発明は、ダイアフラムを収容する推進室を備えた皺付きダイアフラムポンプに関する。ダイアフラムは、推進室の入口(3)から出口(4)に向かって変化する機械特性を有していて、それにより、推進室の入口から出口まで伝わる進行波においてダイアフラムが変形して流体を推進するときに、ダイアフラムの進行波の流速が、推進室内部の流体の変位に関わる断面にわたって、同断面における流体の平均流速と等速またはそれより高速であるようになる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改良された波状ダイアフラムポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1により、少なくとも1つの線形電磁アクチュエータからの駆動力を受けて2つの端板の間を波状に動くように推進室に取り付けられたダイアフラムを備え、これら端板がポンプの入口から出口に向かって流体を推進するための推進室を形成してなるポンプは公知である。
【0003】
アクチュエータの可動部分は、一般に推進室の入口近傍に延在するダイアフラムの外縁部に直接連結されており、可動部分がダイアフラムの外縁部に横振動を与え、それによりダイアフラムをその平面に対して直交する方向に波状に動かしている。波状の動きと流体との間のカップリングの効果は、流体を推進室の入口から出口に向けて推進することである。
【0004】
一般に、推進室内の流体の流区域は、推進室の入口からポンプの出口に向かって縮小しており、流量は保存されるために流体の加速が生じ、したがって、推進室の各断面において測定される流体の平均速度が増大する。この速度は、推進室の入口から出口に向かって漸次大きくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】仏国特許第2744769号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、効率向上を可能にしたダイアフラムポンプを提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するために、本発明は、ダイアフラムを受容する推進室を備えた波状ダイアフラムポンプであって、前記ダイアフラムが、前記推進室の入口から出口に向かって変化する機械的特性を有し、それにより、前記ダイアフラムが作動されて、前記推進室の入口から出口に向かって伝播する進行波を伴って変形して流体を推進するときに、前記ダイアフラムにおける前記進行波の伝播速度が、前記推進室内部の流体の動きに相対する任意の断面において、該断面における流体の平均進行速度と等速か、それよりも高速になる、ポンプを提供する。
【0008】
こうすることによって、ダイアフラムが推進する流体の速度よりも高速でダイアフラムの進行波を推進室内のあらゆる箇所において進行させること、およびダイアフラムに沿った進行波の伝播長さ全体にわたってダイアフラムがその機械エネルギを流体に伝達することを保証する。したがって、波状ダイアフラムと流体との間のカップリングが最適化され、ダイアフラムの動きがより効率的になり、ダイアフラムの表面全体が推進力を備えるようになるので、それによりポンプの効率を改善する。
【0009】
したがって、推進室からの出口における流体の速度を増大し、比較的大きい流量を得ることが可能になり、ダイアフラムの直径を減少させられるとともに、ポンプヘッド全体の寸法を小さくできる。さらに、こうすることによって、ダイアフラムを端板に接触させてしまう虞がある、流体からダイアフラムへのあらゆる正のエネルギ伝達を避けられるようになる。かかる接触は、騒音を生じさせるとともにダイアフラムを損傷する虞がある。また、推進室の出口における圧力および流量の脈動を低減することも可能である。
【0010】
本発明の特定の実施形態において、ダイアフラムは、推進室の入口から出口に向かって変化し、増大する剛性を自らに与えている。剛性が、ダイアフラムを変形させる進行波の伝播速度を定めるための重要なパラメータであることは公知である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の波状ダイアフラムポンプの片側断面図である。
【図2】本発明の種々の特定の実施形態における、ディスク形状のダイアフラムの部分切断斜視図である。
【図3】本発明の別の特定の実施形態において、首部を有するダイアフラムが装着された波状ダイアフラムポンプの断面図である。
【図4】本発明の他の特定の実施形態におけるダイアフラムの斜視図である。
【図5】本発明の他の特定の実施形態におけるダイアフラムの斜視図である。
【図6】本発明の他の特定の実施形態におけるダイアフラムの斜視図である。
【図7】本発明の他の特定の実施形態におけるダイアフラムの斜視図である。
【図8】本発明の他の特定の実施形態におけるダイアフラムの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、添付図面に照らしてより良く理解されうる。
図1を参照して、本発明の波状ダイアフラムポンプは、流体推進室を構成する2つの端板2の間に延在するダイアフラムを具備している。アクチュエータ(図示せず)は、ダイアフラムの縁部3に接続されていて、ダイアフラムの縁部3を横方向に作動させ、それによりダイアフラムの縁部3から中央部4に向かって伝播する進行波を伴ってダイアフラムを波状に動かすようになっている。すなわち、流体は、推進室の周辺部における推進室の入口から推進室の中央部に配置された推進室の出口に向かって、2つの端板の間を移送される。
【0013】
Zがポンプの回転軸線である場合において、ポンプを軸線Z周りの円柱状部について概念的に切断した場合、円柱状部と交差するダイアフラムの部分を無視すると、端板2の間に配置された円柱状部の部分が、流体を移動させるための動作区域を形成しているのが分かる。当然ながら、ダイアフラムの中心に近づくと、円柱状部の半径が小さくなるとともに2つの端板が互いにより接近してくるので、動作区域の面積は縮小する。液体などの非圧縮性流体においては、推進室の入口と出口との間における流量保存の法則により、動作区域の面積の減少に比例して、種々の動作区域を通る流体の平均流速が増大する。
【0014】
本発明は、流体推進室の入口と出口との間における流体の平均速度の変化が考慮されたダイアフラムを提案することを目的とする。
図1を参照すると、流体の流区域はダイアフラムと端板との間に位置しており、波高点が、進行波の伝播速度で進行する収縮部をその断面において形成している。収縮部より上流の圧力P1と収縮部より下流の圧力P2との間の圧力差は、進行波の伝播速度と流体の平均速度との間の速度差に応じて定まる。流区域内の平均流量によって乗算される圧力差(P1−P2)との積は、流体に局所的に伝達される流体圧式動力に相当する。
【0015】
推進室の断面全体にわたって速度差を正の値に維持することによって、ダイアフラムに沿った進行波の伝播長さ全体にわたって、すなわちこの実施例においてはダイアフラムの有効半径全体にわたって、流体への正の動力伝達を保証できるようになる。
したがって、波の状態が、一連の収縮部および推進室の入口圧力から出口圧力まで延在する圧力差を定めている。平均流量によって乗算された入口圧力と出口圧力との間の圧力差は、流体に伝達された平均流体圧式動力に相当する。
この実施例において、ダイアフラムは、その有効半径全体にわたってその機械エネルギを流体に伝達することが保証されており、ダイアフラムにおける進行波は、推進室の断面全体にわたって、推進室の前記断面を通って移動する流体の速度よりも高速の速度で伝播する。
【0016】
図2において符号Aが付された特定の実施形態において、この目的のために、ダイアフラム1は同心の環状部分からなり、これらの環状部分は異なる弾性率を有する材料から構成されるとともに、ダイアフラムの材料の弾性率Eが、ダイアフラムの肉厚hの減少よりも急激にダイアフラムの周辺縁部3から中央部4に向かって増大するように配置されている。弾性率Eの変化は一連の環状領域によって象徴的に表されており、当然ながら、その詳細図において、切断面におけるそれらの断面のみによって構成されている。したがって、断面において測定される積E×hは縁部3から中央部4に向かって連続的に増大し、それにより作動時にダイアフラム1を変形させる進行波の伝播速度は連続的に増大するようになる。
【0017】
図2において、半径R1の円柱状部が流体のための(円柱形状の)動作流区域S1を形成していること、および半径R2の円柱状部が流体のための(同様に円柱形状の)動作流区域S2を形成していることが分かる。これらの2つの流区域の面積は、比にすると(R2/R1)2×h2/h1であり、ここで、h1,h2は、それぞれ端板の間における断面S1,S2の高さである。断面S2の面積は、断面S1の面積よりも顕著に小さくなっており、断面S2における流体の速度は、断面S1における流体の速度よりも高速である。
【0018】
ダイアフラムを変形させる進行波の伝播速度を決める重要なパラメータの1つである積E×hの変化が十分に急激に変化することを保証し、伝播速度が常に流体の平均速度より高速であること、或いは伝播速度が推進室の中央部に接近する流体の速度よりも早く実際に増大することを保証するのが適切である。
この条件が満足される場合、ダイアフラムは、ダイアフラムに沿った進行波の伝播長さ全体にわたって、すなわちダイアフラムの有効半径全体に沿って、その機械エネルギを流体に伝達するようになる。
【0019】
符号Bが付された実施形態を参照すると、ダイアフラム11は2つの材料から形成されており、それらは、大きい弾性率E1を有する材料からなっていて一定の肉厚h1または図示されるように縁部13から中央部14に向かって増大する肉厚h1を有する芯部12と、芯部12の両側に延在していて小さい弾性率E2を有する材料からなっていて縁部13から中央部14に向かって縮小する肉厚2×h2を有する被覆部15である。この組立体は、ダイアフラム12を変形させる進行波に伝播速度が十分に与えられるように、数値E1×h1+E2×2×h2が縁部13から中央部14に向かって増大するように形成されており、それにより、この伝播速度は、流体流用の動作区域における減少よりもより急激に増大するようになる。
【0020】
符号Cが付された実施形態を参照すると、ダイアフラム21は均質の材料から構成されている。ダイアフラム21は、肉厚hのディスク形状に切断されていて、その肉厚hは縁部から中央部に向かって概して縮小している。また、ダイアフラム21には、環状の溝がこの実施例では等間隔に形成されるとともに、この実施例では一定の肉厚の芯部が残されるようになっている。この材料の密度はρで表記され、ダイアフラムの単位面積当りの密度は積ρ×hに等しい。ここで、山部および谷部を含めた距離dにわたる数値ρ×hの平均が中央部に近づくと減少するように溝が配列されていて、この技術的構成も進行波の伝播速度に漸次的な変化を生じさせるようになっている。
【0021】
符号Dが付された別の実施形態を参照すると、ダイアフラム31は、大きい弾性率E1を有する材料から形成されていて一定の肉厚h1を有する芯部32と、小さい弾性率E2を有する材料から形成されていて前述した実施形態のように環状の溝を呈する被覆部35とを備えている。
【0022】
他の実施形態において、図3に示されるように、ダイアフラム41は首部45をその中央部に有し、首部が推進室からの出口における送出ダクト(delivery duct)46まで軸線Zに沿って延在している。首部45は、ダイアフラム41の中央部44に向かってダイアフラムの剛性を増大させるように寄与する補強体を形成しており、それにより進行波の伝播速度が増大するようになる。
【0023】
さらに、首部45は、ダイアフラム41の両側の流体流が合流して推進室外部につながる箇所を補完しており、首部からの出口において流体の動圧を利用して、それにより推進室内部のダイアフラム中央部分におけるダイアフラムの面の間の圧力差を保存するようになっている。したがって、ダイアフラムの中央部分はより良い条件で稼働し、よってポンプの効率が改善される。
【0024】
図5において、ダイアフラム71は、大きい弾性率を有する材料からなる芯部72と、縁部73に近接して存在していて小波形状76のプロフィルを有することによってより高い可撓性を有して形成された周辺領域75とを備えており、周辺領域は、ダイアフラム71の縁部73に近接した位置においてダイアフラム71の可撓性を高めている。
図6において、芯部72は、被覆部を形成する可撓性材料の層76に埋め込まれている。
【0025】
図7の実施形態において、ダイアフラム71は、大きい弾性率を有する材料からなる芯部72を備えていて、この芯部72には、その縁部73に近接する位置において可撓性を有する周辺領域75が付与されており、周辺領域75は縁部73に近接する位置に可撓性を与える凹凸のプロフィル77を呈している。
【0026】
前述した記載から理解されうるように、前述した実施形態は、回転体を形成するダイアフラムであって、その機械的特性が縁部から中央部に向かって径方向に変化するにもかかわらず、中心軸線Zを中心とした任意の円に沿って一様の機械的特性を有してなる、ダイアフラムに関する。
【0027】
しかしながら、本発明の範囲内において、機械的特性が径方向に変化するが必ずしも円の周りにおいて一定ではないダイアフラムを提供できる。したがって、図4に示される実施形態のように、ダイアフラム51は、複合体のようにして、分岐部が突出してなる中央リングを備えるとともに大きい弾性率を有する材料からなる星形の補強体52を伴って形成されてもよい。補強体52は、小さい弾性率を有する材料からなるウェブ55に組み込まれている。前述したものと同じようにして、このタイプのダイアフラムは、縁部53から中央部54に向けて、進行波を増大する速度で伝播できる。
【0028】
図8の実施形態において、ダイアフラム61は、リブ65を担持する芯部62を備えており、リブ65は、ダイアフラム61の中央部64から縁部63に向かって、中央部64と縁部63との間のダイアフラム61の中間部分に至るまで径方向に延在している。これらのリブ65は、リブ65が中央部64近傍において最大高さを呈し、かつ中間部分では高さゼロを呈するように、それらの高さが低下している。
芯部62は比較的可撓性を有する材料から形成されており、リブ65によって中央部64に向かって漸次補強されている。
芯部62は、ダイアフラムが平面である面を呈するように、任意に被覆部によって被覆されていてもよい。
【0029】
本発明は前述した記載に限定されず、むしろ請求の範囲によって画定される範囲に含まれるいかなる変形物にも及ぶ。
特に、ディスク形状のダイアフラムを参照して本発明を説明したが、本発明は、ストリップ形状または筒状のダイアフラムにも等しく良好に応用されることは明らかである。このタイプのダイアフラムを用いるポンプにおいては、推進室を通る流体流用の動作区域は縮小しているが、単に2つの端板が互いに接近しているため、或いは場合によってはさらにダイアフラムがより厚肉になっているために、前述したような種類のディスク形状のダイアフラムを備えたポンプにおける場合よりも緩やかな割合で縮小することに留意されたい。推進室の入口と出口との間における速度の変化は、さほど顕著ではない。結果として、推進室内部の流体流に相対するあらゆる断面において、ダイアフラムにおける進行波の伝播速度を前記断面における流体の進行速度と等速か、またはそれよりも高速にさせるためのダイアフラムの機械的特性の変化がより緩やかに発生しており、したがって、実施するのがより容易である。
【0030】
一変更例において、ダイアフラムの弾性率Eをダイアフラムの肉厚の減少よりも緩やかに変化させてもよいが、ポンプの性能は前述した実施形態のものと比較すると低下するであろう。
一変更例において、弾性率に変化を与えるように局所的に処置を施した単一の材料からダイアフラムを構成してもよい(処置は、熱間変形、粒子ボンバードメント、局所ドーピングなどが可能である)。
【技術分野】
【0001】
本発明は、改良された波状ダイアフラムポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1により、少なくとも1つの線形電磁アクチュエータからの駆動力を受けて2つの端板の間を波状に動くように推進室に取り付けられたダイアフラムを備え、これら端板がポンプの入口から出口に向かって流体を推進するための推進室を形成してなるポンプは公知である。
【0003】
アクチュエータの可動部分は、一般に推進室の入口近傍に延在するダイアフラムの外縁部に直接連結されており、可動部分がダイアフラムの外縁部に横振動を与え、それによりダイアフラムをその平面に対して直交する方向に波状に動かしている。波状の動きと流体との間のカップリングの効果は、流体を推進室の入口から出口に向けて推進することである。
【0004】
一般に、推進室内の流体の流区域は、推進室の入口からポンプの出口に向かって縮小しており、流量は保存されるために流体の加速が生じ、したがって、推進室の各断面において測定される流体の平均速度が増大する。この速度は、推進室の入口から出口に向かって漸次大きくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】仏国特許第2744769号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、効率向上を可能にしたダイアフラムポンプを提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するために、本発明は、ダイアフラムを受容する推進室を備えた波状ダイアフラムポンプであって、前記ダイアフラムが、前記推進室の入口から出口に向かって変化する機械的特性を有し、それにより、前記ダイアフラムが作動されて、前記推進室の入口から出口に向かって伝播する進行波を伴って変形して流体を推進するときに、前記ダイアフラムにおける前記進行波の伝播速度が、前記推進室内部の流体の動きに相対する任意の断面において、該断面における流体の平均進行速度と等速か、それよりも高速になる、ポンプを提供する。
【0008】
こうすることによって、ダイアフラムが推進する流体の速度よりも高速でダイアフラムの進行波を推進室内のあらゆる箇所において進行させること、およびダイアフラムに沿った進行波の伝播長さ全体にわたってダイアフラムがその機械エネルギを流体に伝達することを保証する。したがって、波状ダイアフラムと流体との間のカップリングが最適化され、ダイアフラムの動きがより効率的になり、ダイアフラムの表面全体が推進力を備えるようになるので、それによりポンプの効率を改善する。
【0009】
したがって、推進室からの出口における流体の速度を増大し、比較的大きい流量を得ることが可能になり、ダイアフラムの直径を減少させられるとともに、ポンプヘッド全体の寸法を小さくできる。さらに、こうすることによって、ダイアフラムを端板に接触させてしまう虞がある、流体からダイアフラムへのあらゆる正のエネルギ伝達を避けられるようになる。かかる接触は、騒音を生じさせるとともにダイアフラムを損傷する虞がある。また、推進室の出口における圧力および流量の脈動を低減することも可能である。
【0010】
本発明の特定の実施形態において、ダイアフラムは、推進室の入口から出口に向かって変化し、増大する剛性を自らに与えている。剛性が、ダイアフラムを変形させる進行波の伝播速度を定めるための重要なパラメータであることは公知である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の波状ダイアフラムポンプの片側断面図である。
【図2】本発明の種々の特定の実施形態における、ディスク形状のダイアフラムの部分切断斜視図である。
【図3】本発明の別の特定の実施形態において、首部を有するダイアフラムが装着された波状ダイアフラムポンプの断面図である。
【図4】本発明の他の特定の実施形態におけるダイアフラムの斜視図である。
【図5】本発明の他の特定の実施形態におけるダイアフラムの斜視図である。
【図6】本発明の他の特定の実施形態におけるダイアフラムの斜視図である。
【図7】本発明の他の特定の実施形態におけるダイアフラムの斜視図である。
【図8】本発明の他の特定の実施形態におけるダイアフラムの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、添付図面に照らしてより良く理解されうる。
図1を参照して、本発明の波状ダイアフラムポンプは、流体推進室を構成する2つの端板2の間に延在するダイアフラムを具備している。アクチュエータ(図示せず)は、ダイアフラムの縁部3に接続されていて、ダイアフラムの縁部3を横方向に作動させ、それによりダイアフラムの縁部3から中央部4に向かって伝播する進行波を伴ってダイアフラムを波状に動かすようになっている。すなわち、流体は、推進室の周辺部における推進室の入口から推進室の中央部に配置された推進室の出口に向かって、2つの端板の間を移送される。
【0013】
Zがポンプの回転軸線である場合において、ポンプを軸線Z周りの円柱状部について概念的に切断した場合、円柱状部と交差するダイアフラムの部分を無視すると、端板2の間に配置された円柱状部の部分が、流体を移動させるための動作区域を形成しているのが分かる。当然ながら、ダイアフラムの中心に近づくと、円柱状部の半径が小さくなるとともに2つの端板が互いにより接近してくるので、動作区域の面積は縮小する。液体などの非圧縮性流体においては、推進室の入口と出口との間における流量保存の法則により、動作区域の面積の減少に比例して、種々の動作区域を通る流体の平均流速が増大する。
【0014】
本発明は、流体推進室の入口と出口との間における流体の平均速度の変化が考慮されたダイアフラムを提案することを目的とする。
図1を参照すると、流体の流区域はダイアフラムと端板との間に位置しており、波高点が、進行波の伝播速度で進行する収縮部をその断面において形成している。収縮部より上流の圧力P1と収縮部より下流の圧力P2との間の圧力差は、進行波の伝播速度と流体の平均速度との間の速度差に応じて定まる。流区域内の平均流量によって乗算される圧力差(P1−P2)との積は、流体に局所的に伝達される流体圧式動力に相当する。
【0015】
推進室の断面全体にわたって速度差を正の値に維持することによって、ダイアフラムに沿った進行波の伝播長さ全体にわたって、すなわちこの実施例においてはダイアフラムの有効半径全体にわたって、流体への正の動力伝達を保証できるようになる。
したがって、波の状態が、一連の収縮部および推進室の入口圧力から出口圧力まで延在する圧力差を定めている。平均流量によって乗算された入口圧力と出口圧力との間の圧力差は、流体に伝達された平均流体圧式動力に相当する。
この実施例において、ダイアフラムは、その有効半径全体にわたってその機械エネルギを流体に伝達することが保証されており、ダイアフラムにおける進行波は、推進室の断面全体にわたって、推進室の前記断面を通って移動する流体の速度よりも高速の速度で伝播する。
【0016】
図2において符号Aが付された特定の実施形態において、この目的のために、ダイアフラム1は同心の環状部分からなり、これらの環状部分は異なる弾性率を有する材料から構成されるとともに、ダイアフラムの材料の弾性率Eが、ダイアフラムの肉厚hの減少よりも急激にダイアフラムの周辺縁部3から中央部4に向かって増大するように配置されている。弾性率Eの変化は一連の環状領域によって象徴的に表されており、当然ながら、その詳細図において、切断面におけるそれらの断面のみによって構成されている。したがって、断面において測定される積E×hは縁部3から中央部4に向かって連続的に増大し、それにより作動時にダイアフラム1を変形させる進行波の伝播速度は連続的に増大するようになる。
【0017】
図2において、半径R1の円柱状部が流体のための(円柱形状の)動作流区域S1を形成していること、および半径R2の円柱状部が流体のための(同様に円柱形状の)動作流区域S2を形成していることが分かる。これらの2つの流区域の面積は、比にすると(R2/R1)2×h2/h1であり、ここで、h1,h2は、それぞれ端板の間における断面S1,S2の高さである。断面S2の面積は、断面S1の面積よりも顕著に小さくなっており、断面S2における流体の速度は、断面S1における流体の速度よりも高速である。
【0018】
ダイアフラムを変形させる進行波の伝播速度を決める重要なパラメータの1つである積E×hの変化が十分に急激に変化することを保証し、伝播速度が常に流体の平均速度より高速であること、或いは伝播速度が推進室の中央部に接近する流体の速度よりも早く実際に増大することを保証するのが適切である。
この条件が満足される場合、ダイアフラムは、ダイアフラムに沿った進行波の伝播長さ全体にわたって、すなわちダイアフラムの有効半径全体に沿って、その機械エネルギを流体に伝達するようになる。
【0019】
符号Bが付された実施形態を参照すると、ダイアフラム11は2つの材料から形成されており、それらは、大きい弾性率E1を有する材料からなっていて一定の肉厚h1または図示されるように縁部13から中央部14に向かって増大する肉厚h1を有する芯部12と、芯部12の両側に延在していて小さい弾性率E2を有する材料からなっていて縁部13から中央部14に向かって縮小する肉厚2×h2を有する被覆部15である。この組立体は、ダイアフラム12を変形させる進行波に伝播速度が十分に与えられるように、数値E1×h1+E2×2×h2が縁部13から中央部14に向かって増大するように形成されており、それにより、この伝播速度は、流体流用の動作区域における減少よりもより急激に増大するようになる。
【0020】
符号Cが付された実施形態を参照すると、ダイアフラム21は均質の材料から構成されている。ダイアフラム21は、肉厚hのディスク形状に切断されていて、その肉厚hは縁部から中央部に向かって概して縮小している。また、ダイアフラム21には、環状の溝がこの実施例では等間隔に形成されるとともに、この実施例では一定の肉厚の芯部が残されるようになっている。この材料の密度はρで表記され、ダイアフラムの単位面積当りの密度は積ρ×hに等しい。ここで、山部および谷部を含めた距離dにわたる数値ρ×hの平均が中央部に近づくと減少するように溝が配列されていて、この技術的構成も進行波の伝播速度に漸次的な変化を生じさせるようになっている。
【0021】
符号Dが付された別の実施形態を参照すると、ダイアフラム31は、大きい弾性率E1を有する材料から形成されていて一定の肉厚h1を有する芯部32と、小さい弾性率E2を有する材料から形成されていて前述した実施形態のように環状の溝を呈する被覆部35とを備えている。
【0022】
他の実施形態において、図3に示されるように、ダイアフラム41は首部45をその中央部に有し、首部が推進室からの出口における送出ダクト(delivery duct)46まで軸線Zに沿って延在している。首部45は、ダイアフラム41の中央部44に向かってダイアフラムの剛性を増大させるように寄与する補強体を形成しており、それにより進行波の伝播速度が増大するようになる。
【0023】
さらに、首部45は、ダイアフラム41の両側の流体流が合流して推進室外部につながる箇所を補完しており、首部からの出口において流体の動圧を利用して、それにより推進室内部のダイアフラム中央部分におけるダイアフラムの面の間の圧力差を保存するようになっている。したがって、ダイアフラムの中央部分はより良い条件で稼働し、よってポンプの効率が改善される。
【0024】
図5において、ダイアフラム71は、大きい弾性率を有する材料からなる芯部72と、縁部73に近接して存在していて小波形状76のプロフィルを有することによってより高い可撓性を有して形成された周辺領域75とを備えており、周辺領域は、ダイアフラム71の縁部73に近接した位置においてダイアフラム71の可撓性を高めている。
図6において、芯部72は、被覆部を形成する可撓性材料の層76に埋め込まれている。
【0025】
図7の実施形態において、ダイアフラム71は、大きい弾性率を有する材料からなる芯部72を備えていて、この芯部72には、その縁部73に近接する位置において可撓性を有する周辺領域75が付与されており、周辺領域75は縁部73に近接する位置に可撓性を与える凹凸のプロフィル77を呈している。
【0026】
前述した記載から理解されうるように、前述した実施形態は、回転体を形成するダイアフラムであって、その機械的特性が縁部から中央部に向かって径方向に変化するにもかかわらず、中心軸線Zを中心とした任意の円に沿って一様の機械的特性を有してなる、ダイアフラムに関する。
【0027】
しかしながら、本発明の範囲内において、機械的特性が径方向に変化するが必ずしも円の周りにおいて一定ではないダイアフラムを提供できる。したがって、図4に示される実施形態のように、ダイアフラム51は、複合体のようにして、分岐部が突出してなる中央リングを備えるとともに大きい弾性率を有する材料からなる星形の補強体52を伴って形成されてもよい。補強体52は、小さい弾性率を有する材料からなるウェブ55に組み込まれている。前述したものと同じようにして、このタイプのダイアフラムは、縁部53から中央部54に向けて、進行波を増大する速度で伝播できる。
【0028】
図8の実施形態において、ダイアフラム61は、リブ65を担持する芯部62を備えており、リブ65は、ダイアフラム61の中央部64から縁部63に向かって、中央部64と縁部63との間のダイアフラム61の中間部分に至るまで径方向に延在している。これらのリブ65は、リブ65が中央部64近傍において最大高さを呈し、かつ中間部分では高さゼロを呈するように、それらの高さが低下している。
芯部62は比較的可撓性を有する材料から形成されており、リブ65によって中央部64に向かって漸次補強されている。
芯部62は、ダイアフラムが平面である面を呈するように、任意に被覆部によって被覆されていてもよい。
【0029】
本発明は前述した記載に限定されず、むしろ請求の範囲によって画定される範囲に含まれるいかなる変形物にも及ぶ。
特に、ディスク形状のダイアフラムを参照して本発明を説明したが、本発明は、ストリップ形状または筒状のダイアフラムにも等しく良好に応用されることは明らかである。このタイプのダイアフラムを用いるポンプにおいては、推進室を通る流体流用の動作区域は縮小しているが、単に2つの端板が互いに接近しているため、或いは場合によってはさらにダイアフラムがより厚肉になっているために、前述したような種類のディスク形状のダイアフラムを備えたポンプにおける場合よりも緩やかな割合で縮小することに留意されたい。推進室の入口と出口との間における速度の変化は、さほど顕著ではない。結果として、推進室内部の流体流に相対するあらゆる断面において、ダイアフラムにおける進行波の伝播速度を前記断面における流体の進行速度と等速か、またはそれよりも高速にさせるためのダイアフラムの機械的特性の変化がより緩やかに発生しており、したがって、実施するのがより容易である。
【0030】
一変更例において、ダイアフラムの弾性率Eをダイアフラムの肉厚の減少よりも緩やかに変化させてもよいが、ポンプの性能は前述した実施形態のものと比較すると低下するであろう。
一変更例において、弾性率に変化を与えるように局所的に処置を施した単一の材料からダイアフラムを構成してもよい(処置は、熱間変形、粒子ボンバードメント、局所ドーピングなどが可能である)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイアフラムを受容する推進室を備えた波状ダイアフラムポンプにおいて、
前記ダイアフラムが、前記推進室の入口(3;13;23;33;43;53)から出口(4;14;24;34;44;54)に向かって変化する機械的特性を有し、それにより、前記ダイアフラムが作動されて、前記推進室の入口から出口に向かって伝播する進行波を伴って変形して流体を推進するときに、前記ダイアフラムにおける前記進行波の伝播速度が、前記推進室内部の流体の動きに相対する任意の断面において、該断面における流体の平均進行速度と等速か、それよりも高速になることを特徴とする、ポンプ。
【請求項2】
前記ダイアフラム(1)が少なくとも1つの材料からなり、該ダイアフラムの材料において、前記推進室の入口から出口に向かって増大する弾性率(E)を有してなる、請求項1に記載のポンプ。
【請求項3】
前記ダイアフラムの肉厚(h)によって乗算される前記ダイアフラムの材料の弾性率(E)との積が、前記推進室の入口から出口に向かって増大する、請求項2に記載のポンプ。
【請求項4】
前記ダイアフラム(11)が、大きい弾性率(E1)および肉厚(h1)を有する材料からなる芯部(12)と、小さい弾性率(E2)および肉厚(h2)を有する材料から形成されていて前記芯部(12)の少なくとも一方の側に形成されるとともに前記芯部を被覆する被覆部(15)とを含んでおり、それにより、前記芯部の肉厚(h1)によって乗算された弾性率(E1)との積に、前記被覆部の肉厚(h2)によって乗算された弾性率(E2)との積を加算した合計が、前記推進室の入口から出口に向かって増大するようになる、請求項1に記載のポンプ。
【請求項5】
前記ダイアフラム(21)は、前記推進室の入口から出口に向かってその肉厚が減少するディスクによって構成されるとともに、前記ダイアフラム(21)には環状の溝が形成されており、芯部が前記環状の溝に残存している、請求項1に記載のポンプ。
【請求項6】
前記ダイアフラム(41)が回転体として延在し、その中央部において前記ダイアフラムの中心軸線(Z)周りに延在する首部を呈する、請求項1に記載のポンプ。
【請求項7】
前記ダイアフラム(51)は、大きい弾性率を有する材料からなっていて分岐部が延出してなる中央リングを含む星形状の補強体(52)を有しており、該補強体(52)が、小さい弾性率を有する材料からなるウェブ(55)に一体化される、請求項1に記載のポンプ。
【請求項8】
前記ダイアフラム(71)が、前記推進室の入口近傍であってダイアフラムの縁部(3)に近接する位置に、可撓性を伴って形成された小波状または凹凸状のプロフィルを呈する部分を含む、請求項1に記載のポンプ。
【請求項9】
前記ダイアフラム(61)が、前記推進室の出口近傍であってダイアフラムの縁部に近接する位置に、前記縁部に向かって高さが増大する径方向のリブ(65)によって補強される部分を含む、請求項1に記載のポンプ。
【請求項1】
ダイアフラムを受容する推進室を備えた波状ダイアフラムポンプにおいて、
前記ダイアフラムが、前記推進室の入口(3;13;23;33;43;53)から出口(4;14;24;34;44;54)に向かって変化する機械的特性を有し、それにより、前記ダイアフラムが作動されて、前記推進室の入口から出口に向かって伝播する進行波を伴って変形して流体を推進するときに、前記ダイアフラムにおける前記進行波の伝播速度が、前記推進室内部の流体の動きに相対する任意の断面において、該断面における流体の平均進行速度と等速か、それよりも高速になることを特徴とする、ポンプ。
【請求項2】
前記ダイアフラム(1)が少なくとも1つの材料からなり、該ダイアフラムの材料において、前記推進室の入口から出口に向かって増大する弾性率(E)を有してなる、請求項1に記載のポンプ。
【請求項3】
前記ダイアフラムの肉厚(h)によって乗算される前記ダイアフラムの材料の弾性率(E)との積が、前記推進室の入口から出口に向かって増大する、請求項2に記載のポンプ。
【請求項4】
前記ダイアフラム(11)が、大きい弾性率(E1)および肉厚(h1)を有する材料からなる芯部(12)と、小さい弾性率(E2)および肉厚(h2)を有する材料から形成されていて前記芯部(12)の少なくとも一方の側に形成されるとともに前記芯部を被覆する被覆部(15)とを含んでおり、それにより、前記芯部の肉厚(h1)によって乗算された弾性率(E1)との積に、前記被覆部の肉厚(h2)によって乗算された弾性率(E2)との積を加算した合計が、前記推進室の入口から出口に向かって増大するようになる、請求項1に記載のポンプ。
【請求項5】
前記ダイアフラム(21)は、前記推進室の入口から出口に向かってその肉厚が減少するディスクによって構成されるとともに、前記ダイアフラム(21)には環状の溝が形成されており、芯部が前記環状の溝に残存している、請求項1に記載のポンプ。
【請求項6】
前記ダイアフラム(41)が回転体として延在し、その中央部において前記ダイアフラムの中心軸線(Z)周りに延在する首部を呈する、請求項1に記載のポンプ。
【請求項7】
前記ダイアフラム(51)は、大きい弾性率を有する材料からなっていて分岐部が延出してなる中央リングを含む星形状の補強体(52)を有しており、該補強体(52)が、小さい弾性率を有する材料からなるウェブ(55)に一体化される、請求項1に記載のポンプ。
【請求項8】
前記ダイアフラム(71)が、前記推進室の入口近傍であってダイアフラムの縁部(3)に近接する位置に、可撓性を伴って形成された小波状または凹凸状のプロフィルを呈する部分を含む、請求項1に記載のポンプ。
【請求項9】
前記ダイアフラム(61)が、前記推進室の出口近傍であってダイアフラムの縁部に近接する位置に、前記縁部に向かって高さが増大する径方向のリブ(65)によって補強される部分を含む、請求項1に記載のポンプ。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【公表番号】特表2011−529549(P2011−529549A)
【公表日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−520546(P2011−520546)
【出願日】平成21年7月24日(2009.7.24)
【国際出願番号】PCT/FR2009/000921
【国際公開番号】WO2010/012889
【国際公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【出願人】(511027312)アーエムエス エールエデー ソシエテ パ アクシオンス シンプリフィエ (2)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月24日(2009.7.24)
【国際出願番号】PCT/FR2009/000921
【国際公開番号】WO2010/012889
【国際公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【出願人】(511027312)アーエムエス エールエデー ソシエテ パ アクシオンス シンプリフィエ (2)
【Fターム(参考)】
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