説明

改良ステント配備を有するステントおよびカテーテル

インプラント送達システムおよび方法は、インプラント、例えばステント、および送達カテーテルを含む。ステントは、足場を折り畳まれた構成に維持するコーティングまたはシェルを伴う足場を有する。コーティングまたはシェルは、溶解または生物分解媒体に晒されると溶解または生物分解する材料で形成される。ステントは、カテーテルを伴うカテーテルを有するインプラント送達システムと共に使用され、この場合、ステントは、カテーテルシャフトに取り付けられる。カテーテルシャフトは、足場が拡張された構成となったときに患者の脈管を通って引き戻されるように構成される。それにより、有利なことに、インプラントは、インプラントを送達および配備する際に長さを変化させない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、身体管腔内の部位にインプラントを送達するためのシステムに関する。より具体的には、本発明は、自己拡張型ステントなどの血管インプラントのための送達システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ステントは、患者の身体内において、管腔構造を支持するために広く使用されている。例えば、ステントは、冠状動脈、頸動脈、大脳動脈、大腿動脈、静脈を含む他の血管、または他の身体管腔、例えば、尿管、尿道、気管支、食道、または他の管などの開存性を維持するために使用され得る。
【0003】
ステントは、通常、ステンレス鋼、ニチノール、Elgiloy、コバルト・クロム合金、タンタル、および他の金属から作製された金属性管状構造体であるが、ポリマー性のステントも公知である。ステントは、耐久性のある恒久的なインプラントであり得るか、または少なくとも部分的に生体吸収性であり得る。生体吸収性ステントは、ポリマー性、バイオポリマー性、セラミック性、バイオセラミック性、または金属性であり得、および薬物などの物質を時間と共に溶出する場合もある。非生体吸収性ステントも、時間と共に薬物を放出し得る。ステントは、折り畳まれた状態で身体管腔を通される。閉塞場所または身体管腔内の他の配備部位において、ステントは、拡張された直径へと拡張されて、配備部位において管腔を支持する。
【0004】
ある特定の設計において、ステントは、配備部位において、膨張可能なバルーンによって拡張される、複数の貫通孔またはセルを有する管から構成される。このタイプのステントは、多くの場合、「バルーン拡張型」ステントと呼ばれる。バルーン拡張型ステントのためのステント送達システムは、通常、二腔式管に取り付けられた膨張可能なバルーンで構成される。圧縮されたステントを搭載するステント送達システムは、ガイドワイヤ上を処置部位まで進むことができ、およびバルーンは、ステントを拡張して配備するために膨張させられることができる。
【0005】
他のステントは、いわゆる「自己拡張型」ステントであり、ステントを拡張させるためにバルーンが使用されない。自己拡張型ステントの例は、弾性的に変形可能な材料(例えば、ニチノールのような超弾性材料)で作製された管(例えば、ワイヤによるコイル、またはセルで構成された管)である。さらに、いくつかの自己拡張型ステントは、複数の貫通孔またはセルを有する管で構成される。このタイプのステントは、圧縮されて折り畳まれた状態で、ステント送達デバイスに固定される。配備部位において、ステントの圧縮は解放され、ステント内において復元力によって拡大された直径へとステントが自己拡張する。
【0006】
他の自己拡張型ステントは、いわゆる形状記憶金属で作製されている。そのような形状記憶ステントは、人体の高い温度において相転移を受ける。相転移により、結果として、折り畳まれた状態から拡大した状態へと拡張させられる。
【0007】
非常によく使用されるタイプの自己拡張型ステントは、自己拡張性ニチノールで形成されたセルチューブ、例えば、Plymouth、MNのev3,Inc.のEverFlexステントである。セルステントは、通常、管をレーザーカットすることによって、またはシートにパターンを切り入れた後にシートを管状に溶接するかもしくはシートを管状に溶接した後にパターンを切り入れることによって、および他の方法によって形成される。自己拡張型ステントのための別の送達技術は、折り畳まれたステントをステント送達システムの遠位端に取り付けることである。そのようなシステムは、外部管状部材および内部管状部材で構成され得る。内部および外部管状部材は、軸方向に互いに対して滑動可能である。(折り畳まれた状態の)ステントは、その遠位端において内部管状部材を囲むように取り付けられる。外部管状部材(外側シースとも呼ばれる)は、遠位端においてステントを囲む。
【0008】
身体管腔を通してステント送達システムを進める前に、最初にガイドワイヤが、身体管腔を通って配備部位まで送られる。送達システムの内管は、配備部位までガイドワイヤ上を進むことができるように、その長さの少なくとも一部において完全に空洞である。組み合わされた構造(すなわち、ステント送達システム上に取り付けられたステント)は、送達システムの遠位端が身体管腔内の配備部位に達するまで、患者の身体管腔を通って送られる。配備システムおよび/またはステントは、配備する前に医師が蛍光透視法によりステントの位置決めを視覚化できるように、放射線不透過性マーカーを含んでいてもよい。配備部位において、ステントを露出するために、外側シースが引き戻される。露出されたステントは、身体管腔内において自由に自己拡張する。ステントが拡張した後にステントを配備部位の適所に残したまま、身体管腔を通って送達システムを除去することができように、内管は、ステントを自由に通ることができる。
【0009】
先行技術のデバイスでは、ステントが自己拡張できるように、外側シースを引き込むために強い力が必要となり得る。強い引き込み力に耐えるように設計された送達システムは、嵩高であり得、低い柔軟性を有し得、および容認できない故障率を有し得る。その上、先行技術のデバイスでは、ステントと外側シースとの間の摩擦力に起因して、ステントを配備する際に、ステントの全長において、または局所的にステントの或る領域において、ステントの長さが変化する場合がある。例えば、長いステント、薄いステント、ステントの中心軸に対して平行な方向に高い軸柔軟性を有するステント、またはシース中で圧縮された場合に大きな膨張力を有するステントは、外側シースが内部管状部材から引き戻されるに従って、長さを変化させる傾向がある。さらに、先行技術の送達システムは、インプラントが部分的に配備された場合に動くことが可能であるため、結果として、インプラントされたデバイスにおいて望ましくない局所的な長さの変化を生じる。ステント配備の際にステント長さが変化することにより、意図される処置エリアへステントを適切に配備することができず、ステントの破壊抵抗が損なわれる可能性があり、ステントの疲労寿命も損なわれる可能性がある。
【0010】
必要とされるのは、ステントの意図される長さを変えることなく、ステントを低い力で正確に送達することが可能なステント送達システムである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一局面によれば、ステントは、足場と、足場の直径方向の拡張を拘束するコーティングとを含む。コーティングが溶解または生物分解することにより、ステントが拡張すること、またはステントを拡張させることが可能となる。
【0012】
本発明の別の局面によれば、ステントは、足場と、足場の直径方向の拡張を拘束するシェルとを含む。シェルが溶解または生物分解することにより、ステントが拡張すること、またはステントを拡張させることが可能となる。
【0013】
本発明の他の局面によれば、インプラント送達システムは、足場と足場の直径方向の拡張を拘束するコーティングまたはシェルとを備えたステントと、ステントが折り畳まれ拘束された状態で取り付けられたカテーテルとを含む。溶解流または生物分解媒体に晒された際に、コーティングまたはシェルが溶解または生物分解することにより、ステントが拡張する、あるいはステントを拡張させることが可能となる。
【0014】
本発明の他の局面によれば、インプラント送達システムは、足場と足場の直径方向の拡張を拘束するコーティングとを備えたステントと、ステントの下においてカテーテルに取り付けられた膨張式バルーンとを含む。バルーンを膨張させる際に、コーティングまたはシェルが損傷または破壊され、並びにステントが自己拡張するか、またはバルーンのさらなる膨張によってさらに拡張される。溶解流または生物分解媒体に晒されることにより、コーティングまたはシェルの断片が溶解または生物分解する。
【0015】
本発明の他の局面によれば、インプラント送達システムは、足場と足場の直径方向の拡張を拘束するコーティングとを備えたステントと、カテーテルおよび拘束されたステントを囲む滑動可能な管状シース含む。シースを近位に引き戻すと、コーティングまたはシェルが溶解流または生物分解媒体に晒され、コーティングまたはシェルが溶解または生物分解することにより、ステントが拡張すること、またはステントを拡張させることが可能となる。溶解流または生物分解媒体に晒されることにより、コーティングまたはシェルの断片が溶解または生物分解する。
【0016】
本発明のさらに他の局面によれば、インプラント送達システムは、足場と足場の直径方向の拡張を拘束するコーティングとを備えたステントと、カテーテル、膨張可能なバルーン、および拘束されたステントを囲む滑動可能な管状シースとを含む。ステントは、シースを近位に引き戻した後、コーティングまたはシェルを損傷または破壊するためにバルーンを膨張させることによって配備される。次いで、ステントは、自己拡張するかまたはバルーンのさらなる膨張によってさらに拡張される。溶解流体または生物分解媒体に晒されることにより、コーティングまたはシェルの断片が、溶解または生物分解する。
【0017】
本発明のさらに別の局面によれば、足場と足場の直径方向の拡張を拘束するコーティングとを備えたステントを有するインプラント送達システムが、処置部位に送達され、カテーテル、膨張式バルーン、および拘束されたステントを囲む滑動可能な管状シースが、処置部位に送達される。バルーンに対するステントの滑り摩擦が外側シースに対するステントの滑り摩擦より大きくなるまで、処置部位においてバルーンが膨張される。次いで、外側シースを引き込むことによってステントを露出させ、露出に際してステントが自己拡張する。ステントは、バルーンのさらなる膨張によってさらに拡張されてもよい。
【0018】
本発明における上記およびさらなる利点は、添付の図面と併せて以下の説明を参照することにより、さらに良く理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1A】図1Aは、本開示の原理による特徴を有するインプラント送達システムの概略側面図を示す。
【図1B】図1Bは、本開示の原理による特徴を有する、ステントおよびステントインプラントシステムの実施形態の概略断面図を示す。
【図1C】図1Cは、本開示の原理による特徴を有する、ステントおよびステントインプラントシステムの実施形態の概略断面図を示す。
【図2】図2は、本開示の原理による特徴を有する、ステントおよびステントインプラントシステムの実施形態の概略断面図を示す。
【図3A】図3Aは、本開示の原理による特徴を有するインプラント送達システムの概略断面図を示す。
【図3B】図3Bは、本開示の原理による特徴を有するインプラント送達システムの概略断面図を示す。
【図3C】図3Cは、本開示の原理による特徴を有するインプラント送達システムの概略断面図を示す。
【図4】図4は、本開示の原理による特徴を有するインプラント送達システムの概略断面図を示す。
【図5A】図5Aは、本開示の原理による特徴を有するインプラント送達システムの概略断面図を示す。
【図5B】図5Bは、本開示の原理による特徴を有するインプラント送達システムの概略断面図を示す。
【図5C】図5Cは、本開示の原理による特徴を有するインプラント送達システムの概略断面図を示す。
【図5D】図5Dは、本開示の原理による特徴を有するインプラント送達システムの概略断面図を示す。
【図6A】図6Aは、本開示の原理による特徴を有するインプラント送達システムの概略側面図を示す。
【図6B】図6Bは、本開示の原理による特徴を有するインプラント送達システムの概略側面図を示す。
【図6C】図6Cは、本開示の原理による特徴を有するインプラント送達システムの概略側面図を示す。
【図7】図7は、本開示の原理による特徴を有するインプラント送達システムの概略側面図を示す。
【図8A】図8Aは、本開示の原理による特徴を有するインプラント送達システムの概略側面図を示す。
【図8B】図8Bは、本開示の原理による特徴を有するインプラント送達システムの概略側面図を示す。
【図8C】図8Cは、本開示の原理による特徴を有するインプラント送達システムの概略側面図を示す。
【図8D】図8Dは、本開示の原理による特徴を有するインプラント送達システムの概略側面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
ここにおいて、本発明の原理による本発明の局面についての例である実施形態について、図面を参照しながらより詳細に説明する。上述の一般的な説明および以下の詳細な説明は両方とも、単なる例示および説明であって、本明細書において開示される広範囲な本発明の局面を限定するものではないことは理解されるべきである。本明細書において開示された本発明の概念は、本明細書において開示された特定のステント構成に限定されるわけではなく、むしろ、多数の異なるステント構成に適用可能であることも理解されるであろう。
【0021】
図1Aおよび1Bは、ステント10、ハブ3を伴うカテーテルシャフト5、およびカテーテルシャフトとハブとを通って延びるガイドワイヤ管腔6から構成されるインプラント送達システム1を示している。カテーテルシャフト5は、比較的柔軟であり、ポリマー性材料、例えば、ナイロンまたはPEBAXなどから構成され得、および60cm乃至300cmの範囲の長さを有し得る。カテーテルの外径は、約2Fr乃至約10Frの範囲であり得る。ガイドワイヤ管腔6の直径は、0.009インチ乃至0.038インチの範囲の直径のガイドワイヤを通すことに十分な大きさであり得る。ハブ3は、カテーテルシャフト5に密封するように取り付けられており、(例えば、ルアーフィッティングによって)他の医療用デバイスに可逆的に接続するように適合されており、およびポリカーボネートで構成され得る。ステント10は、足場12およびコーティング14で構成される。様々な実施形態において、足場は、自己拡張性であり得、バルーン拡張可能であり得、管状であり得、セルで構成され得、コイルで構成され得、金属、ポリマー、セラミック、または他の材料で構成され得、あるいは他の特徴を有し得る。一実施形態において、足場12は、セル状開口部を有し、足場12がヒトの体温で自己拡張することを可能にするための好適な熱処理を施されたニチノール管を含む。本発明に好適な足場12構成としては、これに限定されるわけではないが、テーパー状、フレア状、編組状、二股、破壊可能、メッシュ被覆、放射線不透過性マーカーで構成された足場、および当技術分野において公知の他の足場が挙げられる。長い足場は、本発明に対して特に適している。20乃至400mmの長さを有する足場のためのインプラント送達システム1が考えられる。一実施形態において、インプラント送達システム1は、30mmの足場を送達し、配備し得る。他の実施形態において、インプラント送達システム1は、40mm、60mm、80mm、100mm、120mm、150mm、180mm、200mm、250mm、300mm、または350mmの足場を送達し、配備し得る。図1Bおよび1Cに示されているように、コーティング14は、任意により、カテーテルシャフト5の外径に対して、足場の長さの一部または全部に沿って適用されてもよく、および足場12の外面、内面、または足場12の厚さ方向の少なくとも1つに適用され得る。いくつかの実施形態において、コーティング14は、滑らかな外部コーティングされたステント表面を形成するために、ステント10の露出した端部を覆っている。コーティング14が適用され、硬化させられると、コーティング14は、ステントが配備されるまで、ステント10を拡張していない直径および固定された長さに維持する。コーティング14は、ステントを内側部材に直接付着させ得る。コーティング14は、生物分解性材料で構成され得るか、または体内または血流内において溶解する材料で構成され得る。いくつかの実施形態において、コーティング14は、糖、カルボワックス、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルアルコール、または他の材料を含む。コーティング14は、噴霧法、浸漬法、または他のプロセスにより、拡張されていないステントに対して適用されて硬化され得るか、拡張されたステントに適用され、ステントが圧縮された後に硬化され得るか、ステントが圧縮された後に足場を拡張されていない直径に維持するために、ステントを圧縮する前に拡張されたステントに適用され硬化され得るか、または他の方法によって適用されて硬化され得る。
【0022】
いくつかの実施形態において、コーティング14は、足場を解放するために、時間と共に溶解または生物分解し得る。いくつかの実施形態において、コーティング14は、血液と接触した場合に溶解または生物分解して、足場12の拡張を可能にし得る。溶解または生物分解を引き起こす媒体との接触において、0.5乃至300秒の足場解放時間が考えられる。一実施形態において、足場解放時間はおよそ1秒である。他の実施形態において、足場解放時間は、およそ2、5、10、20、30、45、60、90、120、150、180、または240秒である。いくつかの実施形態において、収縮された構成から拡張された構成へ拡張する際に、10%未満の足場12の長さの変化が考えられる。他の実施形態において、収縮された構成から拡張された構成への拡張の際の足場12の長さの変化は、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、または1%未満である。
【0023】
コーティング14は、生体活性材料、例えば、抗再狭窄薬、抗炎症剤、抗血栓薬、抗アテローム(antiatheromatic(antiatheroma))剤、抗酸化剤、または他の薬剤などから構成され得る。生体活性コーティング材料は、コーティングから周りの組織または血液へと放出され得、および組織または血液において診断作用または治療作用を有し得る。
【0024】
ここにおいて、インプラント送達システム1と共にステント10を使用する例示的方法を説明する。ガイドワイヤは、既知の技術を使用して、患者の大腿動脈中へ進められ、患者の脈管を通って処置部位を通過する。ステント10は、インプラント送達システム1に搭載され、ガイドワイヤ上を患者の脈管中へと導入される。ステント10は、拡張しないようにコーティング14によって拘束されている。ステントとインプラント送達システムとの組み合わせは、ステント10が処置部位、例えば、大腿動脈の狭穿部位に位置するまで、ガイドワイヤ上を患者の脈管を通って進められる。ステント10は、コーティング14が溶解または生物分解し、それによって足場12が自己拡張することによって配備される。次いで、カテーテルシャフト5が、患者の脈管を通って患者の体外へ引き戻される。足場と脈管の間に固定されているか、足場に付着されているか、または処置部位から塞栓を形成する任意のコーティングは、時間と共に溶解または生物分解する。足場10は、処置部位に送達される際にコーティング14によってカテーテルシャフト5上に固定されているため、および配備される際にステントを過ぎて引き抜かれるシースが無いため、配備の際に長さが変化しない。
【0025】
図2は、ステント20、ハブ(図示せず)を備えたカテーテルシャフト5、およびカテーテルシャフトとハブとを通って延びるガイドワイヤ管腔6から構成されるインプラント送達システム1を示している。ステント20は、足場12およびシェル24を含む。シェル24は足場12を囲み、ステント20の上に平滑な外側表面を形成し得る。シェル24は、ステントが配備されるまで、ステント20を拡張されていない直径に維持し、および生物分解性材料で構成され得るか、または体内または血流中で溶解する材料で構成され得る。いくつかの実施形態において、シェル24は、糖、カルボワックス、ポリエチレンオキシド、ポリビニルアルコール、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ乳酸グリコール酸(PLGA)、ポリ(ε−カプロラクトン)コポリマー、ポリジオキサノン、ポリ(プロピレンフマレート)ポリ(トリメチレンカーボネート)コポリマー、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリホスファゼン、ポリ無水物、ポリ(オルトエステル)、ポリ(アミノ酸)、または「疑似」−ポリ(アミノ酸)を含む。
【0026】
シェル24の吸収または溶解時間は、構成材料の比率を変えることによって、または他の手段によって変わり得る。シェル材料は、一軸方向または二軸方向に配向し得るか、または他の構造を有し得る。シェル24は、足場12が挿入されている管、または圧縮された足場の周りに巻き付けられた薄膜で構成され得るか、あるいは他の構造であり得、および他の適用方法によっても適用され得る。シェルは、スリット状であるか、孔が設けられ得るか、高い伸張能力を有し得るか、体温付近に加熱された場合に急激に、もしくは実質的に軟化し得るか、または足場の拡張の際にシェルが破壊することを支援する他の特徴を有し得る。
【0027】
いくつかの実施形態において、シェル24は、足場を解放するために時間と共に溶解または生物分解し得る。いくつかの実施形態において、シェル24は、足場12の拡張を可能にするために、血液と接触した際に溶解または生物分解し得る。溶解または生物分解を生じる媒体との接触において、0.5乃至300秒の足場解放時間が考えられる。一実施形態において、足場解放時間はおよそ1秒である。他の実施形態において、足場解放時間は、およそ2、5、10、20、30、45、60、90、120、150、180、または240秒である。いくつかの実施形態において、収縮された構成から拡張された構成へと拡張される際に、10%未満の足場12の長さの変化が考えられる。他の実施形態において、収縮された構成から拡張された構成へと拡張される際の足場12の長さの変化は、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、または1%未満である。
【0028】
シェル24は、生体活性材料、例えば、抗再狭窄薬、抗炎症剤、抗血栓薬、抗アテローム剤、抗酸化剤、または他の薬剤で構成することもできる。生体活性コーティング材料は、コーティングから周りの組織または血液へと放出され得、および組織または血液に対して診断作用または治療作用を有し得る。
【0029】
ここにおいて、インプラント送達システム1と共にステント20を使用する例示的方法について説明する。ガイドワイヤは、既知の技術を使用して、患者の大腿動脈中へ進められ、患者の脈管を通って処置部位を通過する。ステント20は、インプラント送達システム1に搭載され、ガイドワイヤ上を患者の脈管中へと導入される。ステント20は、拡張しないようにシェル24によって拘束されている。ステントとインプラント送達システムとの組み合わせは、ステント20が処置部位、例えば、頸動脈の狭穿部位に位置するまで、ガイドワイヤ上を患者の脈管を通って進められる。ステント20は、シェル24が溶解または生物分解し、それによって足場が自己拡張することにより配備される。シェルは、足場の拡張に際して破壊され得、およびそのような破壊は、予め形成された切り込み、溝、シェルの壁厚の局所的薄化、または他の手段によって補助され得る。次いで、カテーテルシャフト5が、患者の脈管を通って患者の体外へ引き戻される。足場と脈管の間に固定されているか、足場に付着されているか、または処置部位から塞栓を形成する任意のシェル24は、時間と共に溶解または生物分解する。足場12は、処置部位に送達される際にカテーテルシャフト5上に固定されているため、および配備する際にステントを過ぎて引き抜かれるシースが無いので、配備の際に長さが変化しない。
【0030】
図3A〜3Cは、ステント32と、バルーン膨張管腔(図示せず)、ガイドワイヤ管腔36、ガイドワイヤ管腔出口スカイブ39、および膨張ハブ33を有するカテーテルシャフト35と、バルーン31とで構成されたRapid Exchange(RX)送達システム30の例を示している。カテーテルシャフト35は、比較的柔軟であり、ポリマー性材料、例えば、ナイロンまたはPEBAXなどから構成され得、および60cm乃至300cmの範囲の長さを有し得る。カテーテルシャフト35の外径は、約2Fr乃至約10Frの範囲であり得る。ガイドワイヤ管腔36の直径は、0.009インチ乃至0.038インチの範囲の直径のガイドワイヤを通過させること十分な大きさであり得る。ハブ33は、カテーテルシャフト35に密封するように取り付けられており、(例えば、ルアーフィッティングによって)他の医療用デバイスに可逆的に接続するように適合されており、およびポリカーボネートで構成され得る。バルーン31は、カテーテルシャフト35の近位端および遠位端の両方に密封するように取り付けられており、および二軸方向に配向したナイロン、ポリエステル、Pebax、ポリオレフィン、または他の材料で構成され得る。ステント32は、ステント10、20、または他のステントで構成され得、図3Aおよび3Bに拡張されていない構成が示されており、図3Cに拡張された構成が示されている。ステント32は、膨張デバイス(図示せず)をハブ33に接続し、液体または気体によってバルーン膨張管腔を加圧してバルーン31を拡張させ、結果としてステント32を拡張させることによって配備される。いくつかの実施形態において、ステント32は、バルーン31の拡張によって完全に拡張されて脈管壁と接触する。
【0031】
バルーン31がステント10の下で拡張される場合、コーティング14の拘束力がバルーン圧に負けて、コーティングが破壊し、それによってステント10が拡張される。バルーン31がステント20の下で拡張される場合、シェル24の拘束力がバルーン圧に負けてシェルが破壊し、それによってステント20が拡張させられる。
【0032】
ここにおいて、送達システム30と共にステント32を使用する例示的方法について説明する。ガイドワイヤは、既知の技術を使用して、患者の大腿動脈中へ進められ、患者の脈管を通って処置部位を通過する。ステント32(例えば、ステント10、20)は、インプラント送達システム30に搭載され、ガイドワイヤ上を患者の脈管中へと導入される。ステントとインプラント送達システムとの組み合わせは、ステントが処置部位、例えば、頸動脈の狭穿部位に位置するまで、ガイドワイヤ上を患者の脈管を通って進められる。ステント10、20は、バルーン31を膨張させ、それによってコーティング14またはシェル24の破壊を生じさせ、ステントを拡張させることにより配備される。次いで、カテーテル35が、患者の脈管を通って患者の体外へ引き戻される。足場の下に固定されているかまたは塞栓を形成する任意のコーティングまたはシェルは、時間と共に溶解/分解する。ステント10、20は、処置部位に送達される際にカテーテルシャフト35上に固定されているため、および配備する際にステントを過ぎて引き抜かれるシースが無いので、配備の際に長さが変化しない。
【0033】
図4は、ステント42と、バルーン膨張管腔(図示せず)、ガイドワイヤ管腔(図示せず)、および多岐管47を有するカテーテルシャフト45と、バルーン41とから構成されるOver The Wire(OTW)送達システム40の例を示している。多岐管47は、ガイドワイヤ管腔出口ポート49および膨張ハブ43を含む。カテーテルシャフト45、ガイドワイヤ管腔、バルーン41、および膨張ハブ43は、上記において図3A〜3Cに関連して説明したカテーテルシャフト35、ガイドワイヤ管腔36、バルーン31、および膨張ハブ33と実質的に同じ構成、寸法、および機能を有する。多岐管47は、カテーテルシャフト45に密封するように取り付けられており、およびポリカーボネートで構成され得る。ガイドワイヤ管腔出口ポート49および膨張ハブ43は、(例えば、ルアーフィッティングによって)他の医療用デバイスに可逆的に接続するように適合されている。(例えば、ステント10、20)、ステント42は、ステント10、20、または他のステントで構成され得、図4に拡張された構成が示されている。ステント42は、膨張デバイス(図示せず)をハブ43に接続し、液体または気体によってバルーン膨張管腔を加圧してバルーン41を拡張させ、結果としてステント42を拡張させることによって配備される。いくつかの実施形態において、ステント42は、バルーン41の拡張によって、完全に拡張させられて脈管壁と接触する。
【0034】
Over The Wire(OTW)送達システム40を使用する方法および利益は、上記においてRapid Exchange(RX)送達システム30に対して説明したものと実質的に同じである。
【0035】
図5A、5B、5C、および5Dは、本開示の原理による特徴を有するインプラント送達システムのさらなる実施形態を示している。図5Aは、インプラント送達システム30、40における遠位のバルーンを有する部分が変更されたインプラント送達システム30、40で構成されるインプラント送達システム50を示している。システム50の近位領域は、上記においてシステム30、40に対して説明したように、バルーン膨張管腔51aおよびガイドワイヤ管腔55aを備えるカテーテルシャフト35、45、膨張ハブ33、43(図示せず)、およびカテーテルシャフト35中のガイドワイヤ管腔出口スカイブ39(図示せず)またはカテーテルシャフト45に取り付けられた多岐管47(図示せず)のいずれかを含む。システム50の遠位領域は、カテーテルシャフト35、45、バルーン51、ステント52、バンド56a、および接着剤54を含む。バルーン51は、カテーテルシャフト35、45に対して、近位結合部51pおよび遠位結合部51dに密封するように取り付けられ、伸展性、半伸展性、非伸展性であり得るか、または低圧バルーン材料で構成され得、および二軸方向に配向したナイロン、ポリエステル、Pebax、ポリオレフィン、または他の材料で構成され得る。いくつかの実施形態において、バルーン51は、ポリウレタンゴムなどの高弾性材料を含む。
【0036】
ステント52は、ステント10、ステント20、または接着剤54が接着し得る任意のステントから構成され得る。例えば、本発明に好適なステント54の構成としては、これらに限定されるわけではないが、セル状ステント、破壊可能なステント、コイル状ステント、被覆ステント、ステントグラフト、メッシュ被覆ステント、テーパー状ステント、フレア状ステント、編組状ステント、二股ステント、および当技術分野において公知の他のステントが挙げられる。長いステントは、本発明に対して特に適している。20乃至400mmの長さを有するステントのためのインプラント送達システム50が考えられる。一実施形態において、ステント送達システム50は、30mmのステントを送達し配備することができる。他の実施形態において、ステント送達システム50は、40mm、60mm、80mm、100mm、120mm、150mm、180mm、200mm、250mm、300mm、または350mmのステントを送達し配備することができる。
【0037】
バンド56aは、摩擦嵌合によって、カテーテルシャフト35、45に取り付けられ、および、金属、Elgiloy、白金、白金合金、ニッケル−チタン合金、エンジニアリングポリマー、液晶ポリマー、ポリエステル、ナイロン、またはその他の材料などの材料で構成され得る。バンドの端部は、バルーンの膨張時にバルーンを破裂させないように、丸みを帯びた形状となっている。バンド56aは、バンドとカテーテルシャフトとの間にバルーン51を挟装する。バンドは、バンド56aの下にないバルーン51の一部が膨張できるように構成される。一実施形態において、バンド56aは、コイル状リボンの形態を取る。別の実施形態において、カテーテル35、45の外部表面は、バンド56aを受け入れるために表面に沿って溝を備えている。接着剤54によって、ステント52がバンド56aに接着されており、および生物分解性または溶解性材料、例えば、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、またはポリ乳酸グリコール酸(PLGA)で構成され得るか、あるいは、EVA、ポリウレタン、ナイロン、またはその他の材料で構成され得る。いくつかの実施形態において、接着剤は、ステント52の壁厚を通って開口部に広がっている。
【0038】
別の実施形態(図5Bおよび5C)において、バンド56bは、円形、楕円形、不規則形状、または他の形状を有する1つ以上の材料の斑または島を有し、さらに、バンド56aを構築するために使用された材料の1種以上から構成される。バンド56bはバルーン51に接着されており、バルーン51は、熱、接着剤、または他の手段によって、バンド56bの下の領域において局所的にカテーテルシャフト35、45に接着されている。カテーテルシャフト35、45に対するバルーン51の局所的接着は、フローによってバルーンの接着されていない部分を膨張させることが可能なパターンで配置されている。さらに別の実施形態(図5D)において、バルーンは、熱、接着剤、または他の手段により、円形、楕円形、不規則形状、または他の形状を有する斑または島の上において局所的にカテーテルシャフト35、45に接着されており、バンド56cは、接着された領域または斑もしくは島を含む。カテーテルシャフト35、45に対するバルーン51の局所的接着は、フローによってバルーンの接着されていない部分を膨張させることが可能なパターンで配置されている。ステント52は、接着剤54によってバンド56b、56cに接着されており、および生物分解性または溶解性材料、例えば、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、またはポリ乳酸グリコール酸(PLGA)などで構成され得るか、あるいは、EVA、ポリウレタン、ナイロン、またはその他の材料で構成され得る。いくつかの実施形態において、接着剤は、ステント52の壁厚を通って開口部に広がっている。
【0039】
ここにおいて、インプラント送達システム50と共にステント52を使用する例示的方法を説明する。ガイドワイヤは、既知の技術を使用して、患者の大腿動脈中へ進められ、患者の脈管を通って処置部位を通過する。ステント52(例えば、ステント10、20、または他のステント)は、ステント送達システム50に搭載され、ガイドワイヤ上を患者の脈管中へと導入される。ステントとステント送達システムとの組み合わせは、ステントが処置部位、例えば、膝窩動脈の狭穿部位に位置するまで、ガイドワイヤ上を患者の脈管を通って進められる。ステント52は、バルーン51を膨張させて、その結果としてバンド(単数または複数)56a、56b、56c、およびステント52の間に接着している接着剤54を破壊し、それによってステントの拡張を生じさせるかまたは拡張することを可能にすることにより配備される。次いで、カテーテルシャフト35、45が、患者の脈管を通って患者の体外へ引き戻される。生物分解性または溶解性の接着剤54の場合、ステント52の下に固定されているか、または塞栓を形成する任意の接着剤は、時間と共に溶解または分解する。ステント52は、処置部位へ送達される際にカテーテルシャフト35上に固定されているため、および配備の際にステントを過ぎて引き抜かれるシースが無いので、配備の際に長さが変化しない。
【0040】
図6A、6B、8A、8B、8C、および8Dは、遠位領域80とステント82とを有するインプラント送達カテーテル66から構成されたRX送達システム60を示している。インプラント送達カテーテル66は、カテーテルシャフト65、ガイドワイヤ管腔65a、近位ガイドワイヤ出口スカイブ69、近位ハンドル68、シース84、および遠位多岐管67を含む。近位ハンドル68は、カテーテルシャフト65に密封するように取り付けられており、およびポリカーボネートで構成され得る。カテーテルシャフト65は、比較的柔軟であり、ポリマー性材料、例えば、ナイロンまたはPEBAXなどから構成され得、および60cm乃至300cmの範囲の長さを有し得る。カテーテルの外径は、約2Fr乃至約10Frの範囲であり得る。ガイドワイヤ管腔65aの直径は、0.009インチ乃至0.038インチの範囲の直径のガイドワイヤを通過させることに十分な大きさであり得る。遠位多岐管67は、シース84に密封するように取り付けられており、およびポリカーボネートで構成され得る。シース84は、編組強化ポリエステル、非強化ポリマー、例えば、ナイロンまたはポリエステルなど、あるいは他の材料で構成され得、および捻れに耐え、かつ長さに沿った軸方向の力を伝達するように適合され得る。シース84は、その長さに沿って異なる柔軟性を有するように構成することもできる。一実施形態(図6C)において、シース84は、シール84a、ウィープホール84b、または両方を備える。シールは、シースがステント82を完全に覆うまで進められた場合に、液体または体液がステント82に接触することを防ぎ、および弾性材料、例えば、低ジュロメーターのPEBAX、ポリウレタン、または他の材料などから構成され得る。ウィープホール84bは、シース84とカテーテルシャフト65との間の輪形隙間を、空気によってパージすることを可能にする。ステント82は、ステント10、20、または他のステントで構成され得る。いくつかの実施形態において、コーティング14またはシェル24は、シースとシールとの組み合わせにおけるシースの遮断特性によって、溶解または生物分解を生じる媒体から実質的に遮蔽されている。
【0041】
任意により、インプラント送達カテーテル66は、さらに、バルーン81(図8D)、カテーテル65内のバルーン膨張管腔(図示せず)、およびバルーン膨張ハブ63で構成されていている。ハブ63は、近位ハンドル88に密封するように取り付けられており、(例えば、ルアーフィッティングによって)他の医療用デバイスに可逆的に接続するように適合されており、およびポリカーボネートで構成され得る。バルーン81は、カテーテルシャフト65に近位端および遠位端の両方において密封するように取り付けられており、および二軸方向に配向したナイロン、ポリエステル、Pebax、ポリオレフィン、または他の材料で構成され得る。一実施形態において、バルーン81は、ステント82との接触におけるバルーンの摩擦係数が、ステント82との接触におけるシース84の摩擦係数より大きくなるように構成される。
【0042】
図7、8A、8B、8C、および8Dは、遠位領域80とステント82とを有するインプラント送達カテーテル76から構成されたOTW送達システム70を示している。インプラント送達カテーテル76は、カテーテルシャフト75、ガイドワイヤ管腔(図示せず)、近位ガイドワイヤ出口ポート79、近位ハンドル78、シース84、および遠位多岐管77aを含む。シース84は、任意により、シール84a、ウィープホール84b、または両方で構成されていてもよく、および遠位多岐管77aは、コック77bを有する注入管を含む。カテーテルシャフト75、ガイドワイヤ管腔、近位ハンドル78、および遠位多岐管は、上記において図6A〜6Dに関連して説明したカテーテルシャフト65、ガイドワイヤ管腔65a、近位ハンドル68、および遠位多岐管67と実質的に同じ構成、寸法、および機能を有する。ステント82は、ステント10、20、または他のステントで構成され得る。いくつかの実施形態において、コーティング14またはシェル24は、シースとシールとの組み合わせにおけるシースの遮断特性により、溶解または生物分解を生じる媒体から実質的に遮蔽されている。
【0043】
任意により、インプラント送達カテーテル76は、さらに、バルーン81(図8D)、カテーテル75内のバルーン膨張管腔(図示せず)、およびバルーン膨張ハブ73で構成されている。ハブ73は、近位ガイドワイヤ出口ポート79に密封するように取り付けられており、(例えば、ルアーフィッティングによって)他の医療用デバイスに可逆的に接続するように適合されており、およびポリカーボネートで構成され得る。バルーン81は、カテーテルシャフト75に近位端および遠位端の両方において密封するように取り付けられており、および二軸方向に配向したナイロン、ポリエステル、Pebax、ポリオレフィン、または他の材料で構成され得る。
【0044】
ここにおいて、ステント82を伴うインプラント送達システム60、70を使用する例示的方法について、図8A〜8Cを参照しながら説明する。ガイドワイヤは、既知の技術を使用して、患者の大腿動脈中へ進められ、患者の脈管を通って処置部位を通過する。ステント82(例えば、ステント10、20)は、ステント送達システム60、70(図8A)に搭載され、ガイドワイヤ上を患者の脈管中へと導入される。ステントとステント送達システムとの組み合わせは、ステントが処置部位、例えば、腸骨動脈の狭穿部位に位置するまで、ガイドワイヤ上を患者の脈管を通って進められる。ステント82は、近位ハンドル68、78および遠位多岐管67、77aを一緒により近くへと滑動させ、それによってシース84を近位方向に引き戻してステント82を露出させることにより配備される(図8B)。ステント10、20からシースを引き戻すことにより、血液および/または媒体をコーティングまたはシェルに接触させ、それによってコーティングまたはシェルの溶解または生物分解の後にステントを拘束から解放して、ステントが自己拡張することを可能にする(図8C)。次いで、カテーテル66、76が、患者の脈管を通って患者の体外へ引き戻される。コーティングまたはシェルによって、ステントの拡張またはその長さの変化が拘束されるため、シース引き戻し力は低下し、およびステントは配備される際にその長さを変えない。
【0045】
いくつかの方法では、シース84がステント82から部分的に引き戻され、それによって、ステントの露出した一部が拡張して脈管壁と接触し、その結果、脈管壁に対するステントの拡張された部分の摩擦による位置決めが提供される。
【0046】
いくつかの実施形態では、コーティングまたはシェルが溶解または生物分解する前に、手術者は、ステントを再捕捉するためにシースを遠位に進め得る。これは、シースの遠位端がステントの構造上の一部と機械的に絡み合わないように、コーティングまたはシェルによって構造上の一部の上になめらかな覆いが提供されているので可能である。手術者がステントの最終的に配備された位置を変えたい場合、または他の理由から、ステントの再捕捉が所望される。他の実施形態において、シースシール84aは、ステントの送達の際に、患者内において血液および/または媒体がステント82に接触することを防ぎ、それにより、コーティング14またはシェル24の時期尚早の溶解または生物分解の後に続いて発生するステント82の拡張を防ぐ。さらに他の実施形態において、送達システム60、70は、患者へ導入する前に、空気をパージするために流体によってフラッシュされるが、これは、フラッシング溶液(例えば、生理食塩水)で満たされたシリンジを遠位多岐管67、77aに接続し、シース84を通してフラッシング溶液を押し込んでウィープホール84bから排出させることによって行われ、これによってウィープホールによってフラッシング流体がステント82に接触し、コーティング14またはシェル24の時期尚早の溶解または生物分解を生じる可能性が防がれる。
【0047】
バルーン81がシステムに組み込まれているインプラント送達システム60、70の実施形態を使用する方法では、シース84が引き戻された後に、膨張デバイス(図示せず)をハブ63、73に接続し、液体または気体を用いてバルーン膨張管腔を加圧することによってバルーン81が膨張し(図8D)、それによって、コーティングまたはシェルが破壊または損傷した後にステント82が拡張する。いくつかの実施形態において、ステント82は、バルーンの拡張によって、完全に拡張させられて脈管壁と接触する。コーティングまたはシェルによって、ステントの拡張またはその長さの変化が拘束されるので、およびステントがバルーンによって拡張されるので、シース引き戻し力は低下し、およびステントは配備される際にその長さが変化しない。
【0048】
ここにおいて、ステント82を伴うシステムの中にバルーン81が組み込まれているインプラント送達システム60、70の実施形態を使用する別の例示的方法について、図8A〜8Dを参照しながら説明する。ガイドワイヤは、既知の技術を使用して、患者の大腿動脈中へ進められ、患者の脈管を通って処置部位を通過する。ステント82(例えば、別のデバイスまたは構成要素によって拘束されない場合に自己拡張する任意のステント)は、ステント送達システム60、70(図8A)に搭載され、ガイドワイヤ上を患者の脈管の中へと導入される。ステントとステント送達システムとの組み合わせは、ステントが処置部位、例えば、頸動脈の狭穿部位に位置するまで、ガイドワイヤ上を患者の脈管を通って進められる。バルーン81は、シース84(図8A、バルーンは図示せず)を引き戻す前に、膨張デバイス(図示せず)をハブ63、73に接続して、液体または気体を用いてバルーン81に対するステント82の滑り摩擦がシース84に対するステント82の滑り摩擦を超えるまでバルーン膨張管腔を加圧することによって膨張させる。ステント82は、近位ハンドル68、78および遠位多岐管67、77aを一緒により近くへと滑動させ、それによってシース84を近位方向に引き戻してステント82を露出させることにより配備される(図8D)。次いで、カテーテル66、76が、患者の脈管を通って患者の体外へ引き戻される。膨張したバルーンは、シース内においてステントの長さが変化すること(例えば、座屈、伸張、捻れ、または「束状化」)を拘束するため、シース引き戻し力は減少し、およびステントは配備される際に長さが変化しない。
【0049】
本発明の様々な例は、ステントおよびステント送達システムに関するものであるが、本発明の範囲はそれらに限定されるわけではない。例えば、本発明の様々な局面は、ステント送達システムに特に適している一方で、他のタイプの拡張可能なインプラントを送達するためのシステムにも適用可能であるということは理解されるだろう。非限定的な一例である他のタイプの拡張可能なインプラントとして、吻合デバイス、血液フィルタ、移植体、大静脈フィルタ、経皮弁、動脈瘤処置デバイス、または他のデバイスが挙げられる。
【0050】
本発明のある特定の目的が好ましい方法においてどのように達成されるに到ったかを示してきた。開示された概念の修正物および同等物も、特許請求の範囲内に含まれることが意図される。多くの送達システムの構成要素のための別の材料は、概して、当技術分野において周知であり、構成要素の機能要件を満たす場合、上記において列挙された任意の非限定的な例と置き換えることが可能である。さらに、材料および構成に対する選択について、上記においてある特定の実施形態に関して説明してきたが、説明された材料および構成は、実施形態に限定されずその範囲を超えて適用可能であることは、当業者には理解されるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
身体管腔の中に挿入するためのステントであって、
折り畳まれかつ直径方向に拡張された構成を有する足場と、
該足場をそれの折り畳まれた構成に維持する、該足場を囲むコーティングまたはシェルであって、溶解または生物分解媒体に晒されると溶解または生物分解する材料で形成されている、コーティングまたはシェルと
を含み、該コーティングまたはシェルが該溶解または生物分解媒体に晒されることによって、該足場は、それの折り畳まれた構成からそれの拡張された構成へと拡張させられる、ステント。
【請求項2】
前記コーティングは、糖、カルボワックス、ポリエチレンオキシド、およびポリビニルアルコールからなる群より選択される材料を含む、請求項1に記載のステント。
【請求項3】
前記コーティングまたはシェルは、抗再狭窄薬、抗炎症剤、抗血栓薬、抗アテローム剤、および抗酸化剤からなる群より選択される生物活性材料を含む、請求項1に記載のステント。
【請求項4】
前記シェルは、糖、カルボワックス、ポリエチレンオキシド、ポリビニルアルコール、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ乳酸グリコール酸(PLGA)、ポリ(ε−カプロラクトン)コポリマー、ポリジオキサノン、ポリ(プロピレンフマレート)ポリ(トリメチレンカーボネート)コポリマー、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリホスファゼン、ポリ無水物、ポリ(オルトエステル)、ポリ(アミノ酸)、または「疑似」−ポリ(アミノ酸)からなる群より選択される材料を含む、請求項1に記載のステント。
【請求項5】
前記シェルは、前記足場が挿入される管、または前記圧縮された足場の周りに巻き付けられた薄膜を含む、請求項1に記載のステント。
【請求項6】
前記シェルは、縦方向のスリットを含むか、または孔が設けられている、請求項5に記載のステント。
【請求項7】
前記足場は、自己拡張性である、請求項1に記載のステント。
【請求項8】
前記足場は、バルーン拡張可能である、請求項1に記載のステント。
【請求項9】
患者の脈管の中にステントを配備するためのインプラント送達システムであって、
カテーテルシャフトを有するカテーテルと、
該カテーテルシャフト上に取り付けられたステントであって、該ステントは、折り畳まれた構成と直径方向に拡張された構成とを有する足場を含む、ステントと、
該足場を囲み、該足場をそれの折り畳まれた構成に維持するコーティングまたはシェルであって、該コーティングまたはシェルは、溶解または生物分解媒体に晒されると溶解または生物分解する材料で形成される、コーティングまたはシェルと
を含み、
該コーティングまたはシェルを溶解または生物分解媒体に晒すことによって、該足場がそれの折り畳まれた構成からそれの拡張された構成へと拡張され、該足場がそれの拡張された構成にあるときに、該カテーテルシャフトが該患者の脈管を通って引き戻されるように構成される、システム。
【請求項10】
前記ステントは、自己拡張性である、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記カテーテルシャフト上で前記折り畳まれた構成にある前記ステントを囲む滑動可能な管状シースをさらに含み、該管状シースは、前記コーティングまたはシェルが前記溶解または生物分解媒体に晒されることから保護する、請求項9に記載のシステム。
【請求項12】
前記ステントと前記カテーテルシャフトとの間に配置される膨張可能なバルーンをさらに含み、該バルーンは、膨張する際に、前記コーティングまたはシェルを破壊する、請求項9に記載のシステム。
【請求項13】
前記バルーンは、前記カテーテルシャフトの近位端および遠位端の両方に密封するように取り付けられる、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記カテーテルシャフト上の前記折り畳まれた構成にある前記ステントを囲む滑動可能な管状シースをさらに含み、前記バルーンは、該ステントとの接触における該バルーンの摩擦力が、該ステントとの接触における該シースの摩擦力より大きくなるように構築されている、請求項12に記載のシステム。
【請求項15】
処置部位にステントを送達するための方法であって、
カテーテルシャフト上にステントが取り付けられているインプラント送達システムを提供するステップであって、該ステントは、足場を有し、該足場は、該足場を囲み、該足場をそれの折り畳まれた構成に維持するコーティングまたはシェルを伴い、管状シースが該カテーテルシャフト上の該折り畳まれた構成にある該ステントを囲む、ステップと、
該インプラント送達システムを該処置部位へと進めるステップと、
該管状シースを引き戻して、該コーティングまたはシェルを溶解または生物分解媒体に晒すステップと、
該カテーテルシャフトを該処置部位から引き戻すステップと
を含む、方法。
【請求項16】
前記ステントは、自己拡張性である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記送達システムは、前記ステントと前記カテーテルシャフトとの間に挿入されたバルーンをさらに含み、前記方法は、該カテーテルシャフトを引き出す前に、該バルーンを膨張させて該ステントを拡張させるステップをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記バルーンを膨張させるステップは、該バルーンに対する前記ステントの滑り摩擦力が前記管状シースに対する該ステントの滑り摩擦力を超えるまで、液体または気体によってバルーン膨張管腔を加圧するステップを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
処置部位にステントを送達するための方法であって、
カテーテルシャフト上にステントが取り付けられているインプラント送達システムを提供するステップであって、バルーンが該ステントと該カテーテルシャフトとの間に挿入され、管状シースが該カテーテルシャフト上の折り畳まれた構成にある該ステントを囲む、ステップと、
該インプラント送達システムを該処置部位へと進めるステップと、
該管状シースを引き戻す前に、該バルーンを膨張させて該ステントを拡張させるステップと、
該管状シース引き戻すステップと、
該カテーテルシャフトを該処置部位から引き戻すステップと
を含む、方法。
【請求項20】
前記ステントは、自己拡張性である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記バルーンを膨張させるステップは、該バルーンに対する前記ステントの滑り摩擦力が、前記管状シースに対する該ステントの滑り摩擦力を超えるまで、液体または気体によってバルーン膨張管腔を加圧するステップを含む、請求項19に記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図8D】
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【公表番号】特表2012−501803(P2012−501803A)
【公表日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−526968(P2011−526968)
【出願日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際出願番号】PCT/US2009/056495
【国際公開番号】WO2010/030766
【国際公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(502072569)イーブイ3 インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】