説明

改質用ナノ触媒とその製造および使用方法

改質プロセスにおいて使用する場合に触媒の活性、選択性および寿命が増大するように、分散剤を用いて改質用触媒を形成する。ヒドロキシル、カルボキシル、カルボニル、アミド、アミン、チオール、スルホン酸、ハロゲン化スルホニル、ハロゲン化アシル、有機金属錯体およびこれらの組合せの群から選択される少なくとも1つの官能基を有する分散剤を用いてナノ触媒粒子を形成する。この分散剤は、白金と、スズ、レニウムまたはイリジウムの1種または複数種との合金、組合せ、混合物、装飾物または散在物を含む多成分系触媒の形成に特に有用である。ナノ粒子の形成は、触媒粒子を非ゼロ酸化状態で維持するために不活性または酸化雰囲気中で行われる加熱処理プロセスを含むことができ、これにより、分散剤と触媒原子との間のより強い結合が維持される。固着したナノ触媒粒子を有する多成分系改質用触媒は、ナフサの改質および/またはBTXの形成で使用する場合に特に優れた活性、選択性および寿命を示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、改質用ナノ触媒とその触媒を製造、使用する方法に関する。このような改質用触媒は、担持されたナノ触媒粒子を含み、ナフサ改質およびBTX形成に使用される。
【背景技術】
【0002】
ナフサは、石油または他の化石燃料源から蒸留された炭化水素からなる揮発性で可燃性の液体混合物である。ナフサは、燃料、溶媒として、あるいは様々な化学品を製造する際に使用することができる。ナフサは通常、約65℃から約195℃の間で沸騰する炭化水素の混合物であり、原油および重油留分を加工することにより得られる。
【0003】
ナフサ接触改質は、重要な石油精製作業である。ナフサ接触改質では、ナフサを改質してより価値のある炭化水素製品を製造するために触媒が使用される。
【0004】
たとえば、ナフサ混合物のオクタン価を増大させるために改質用触媒を使用することができ、それによりナフサ混合物をガソリン調合により適したものにすることができる。改質製品、すなわち改質体は、自動車用ガソリンプールへの2つの最も重要な貢献物(contributor)のうちの1つである。接触改質によるオクタン価の増加は、供給量および反応条件に応じて変化するが、通常30から70の範囲に及ぶ。
【0005】
ナフサ改質の別の用途は、総称して別名BTXとして知られているベンゼン、トルエンおよびキシレン類の生成である。これらの化合物は、オクタンを増大させるのに有用であるが、様々な化学工業における重要な価値および使途も有する。ベンゼン、トルエン、キシレン類、エチルベンゼンおよび他の芳香族化合物を生成するために改質を最適化した場合、この改質手順をBTX作業と呼ぶ。
【0006】
ナフサ改質の付加的な利益は、水素の生成である。水素は、他の多くの精製作業で使用され、ナフサ改質は通常、純水素生産を伴う唯一の精製プロセスである。
【0007】
ナフサ接触改質は通常、適切な触媒の上の気相中で起こる多くの異なる反応を含む。重要な改質反応には、芳香族類を形成するためのナフテン類の脱水素化、分岐パラフィン類またはイソパラフィン類を生成するための線状パラフィン類の異性化、および芳香族類を形成するためのパラフィン類の脱水素環化(dehydrocyclization)が含まれる。
【0008】
各反応は、多少異なる反応条件によって好まれることがあり、異なる触媒活性部位で起こることがある。脱水素化などこれらの反応の一部は金属部位によって触媒され、一方、異性化や脱水素環化など他の反応は、主に二官能性機構を経て起こる。これは、反応が金属部位と酸触媒部位を共に必要とすることを意味する。
【0009】
望ましくない反応が起こることもある。望ましくない反応の例には、触媒を失活させることがあるコーキング、およびより大きなパラフィン類から軽質炭化水素ガスを生成するかなりの発熱反応である水素化分解(hydrogenolysis)が含まれる。
【0010】
水素化分解(hydrocracking)は、ナフサ改質中に起こることがある別の反応である。水素化分解は、C−C結合の切断を含み、それにより、より重質なパラフィンからより軽質なパラフィンが形成され、ナフテン類に開環が起こる。一部の炭化水素分子では、水素化分解は望ましいが、他では望ましくない。にもかかわらず、水素化分解は、典型的な改質条件下では通常ある程度起こる。
【0011】
ナフサ改質用触媒は、望ましくない反応を最小限に抑え、ゆっくりと失活し、かつ所望の生成物に対して高活性および高選択性を示すように設計される。これらの特性を実現するために、ナフサ改質用触媒は通常、白金などの貴金属から製造される。
【0012】
【特許文献1】米国特許出願公開第10/990,616号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
現在の改質用触媒は、貴金属など非常に高価な金属で製造されるため、改質用触媒の活性、選択性および長期安定性を増大させる必要がある。近年、改質用触媒に多くの改善がなされてきているが、改質手順のコストを低減するために、これらのおよび他の触媒の活性、選択性および安定性をさらに向上させる必要が依然としてある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、担体とその担体に固着した分散ナノ触媒粒子とを含む担持改質用触媒に関する。このような触媒は、オクタン価を高めるかつ/またはBTXを形成するためのナフサの接触改質において使用される。ナノ粒子の分散性および固着性が改善されるかつ/またはナノ触媒粒子中の触媒成分の分布が改善されると、寿命、活性および/または選択性が増大することによって従来の触媒の欠点が克服される。
【0015】
一実施形態によれば、本発明触媒による担持改質用触媒は、(111)結晶面が露出した結晶粒子を含む。(111)結晶面が露出した結晶は、触媒原子(たとえば、Pt)が中心触媒原子のまわりに六員環で配列されているので、芳香族類を形成する際に特に有用であると見込まれている。本発明による改質用触媒は、従来の改質用触媒と比べると、オクタン価を高めるかつ/または芳香族化合物を形成する能力が増大していることが分かった。したがってこの仮説が支持されることになる。これらの改質用触媒は、従来の改質用触媒と比べると、純水素生産量の増加ももたらした。
【0016】
担体に固着した高分散ナノ触媒粒子を有する担持改質用触媒を形成するための例示的な一実施形態は、(i)複数の触媒原子を提供する、(ii)触媒原子と結合することができる官能基を少なくとも1つ有する複数の有機分子を含む分散剤を提供する、(iii)分散剤を触媒原子と反応させて、担体と結合を形成する、でなければ担体に固着することができる触媒錯体を形成すること、(iv)担体上に触媒錯体を付着させて、触媒原子が非ゼロ酸化状態である中間触媒組成物を形成すること、および(v)担体に固着した寸法が約100nm未満の高分散ナノ触媒粒子を有する担持触媒を形成するために、また不要な成分を少なくとも1種揮発させるために触媒原子を非ゼロ酸化状態とする一方、約50℃よりも高い温度で中間触媒組成物を加熱処理することを含む。
【0017】
前記方法に従って製造した改質用触媒は、少なくとも最初は非ゼロ酸化状態である触媒金属原子を有する触媒粒子を含む。加熱処理中触媒金属原子を非ゼロ酸化状態に維持することにより、基底(すなわち、ゼロ酸化)状態にある触媒金属原子を有する担持触媒の加熱処理に比べて、触媒金属原子と分散剤との間のより強い結合が維持される。このより良い触媒により、触媒ナノ微粒子の凝集が抑制され、これにより、ナノ触媒粒子の分散性がより良く、触媒活性がより高い担持触媒がもたらされる。このような触媒は、通常使用前または使用中にゼロ酸化状態に還元される。
【0018】
本発明の改質用触媒は、ガソリン調合および/またはBTX形成のためのナフサとの改質反応を促進させる際に有用である。本発明による単一成分担持ナノ触媒も多成分系担持ナノ触媒もナフサ改質に使用することができる。有用な単一成分改質用触媒の例には、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)およびイリジウム(Ir)が含まれる。多成分系改質用触媒は、前述の金属を2種以上含むことも、あるいは一次触媒成分としての前述の金属のうちの1種または複数種を、スズ(Sn)、レニウム(Re)、ゲルマニウム(Ge)、鉛(Pb)、ヒ素(As)、アンチモン(Sb)、タングステン(W)、オスミウム(Os)、カドミウム(Cd)、インジウム(In)、チタン(Ti)、リン(P)、ガリウム(Ga)、ルテニウム(Ru)、カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)、バリウム(Ba)およびストロンチウム(Sr)を含む群から選択される少なくとも1種の二次触媒成分と組み合わせて含むこともできる。場合によっては、二次触媒成分が触媒活性を増大させる、他の有用な反応を促進させる、かつ/または、たとえばコーキングによる触媒失活を防ぐのに役立つ。
【0019】
一実施形態によれば、個々の触媒ナノ粒子が異なる金属または成分の混合物(たとえば、合金)を含む多成分系(たとえば、バイメタル)担持触媒を製造することができる。一般に、2種以上の異なる成分の合金または組合せを含むナノ粒子の形成は、(i)異種金属を単一のナノ粒子中で結合させるために通常は高温が必要であり、(ii)このような高温により通常ナノ粒子が互いに凝集して、より大きな(たとえば、ミクロ粒子またはより大きな寸法の粒子)を形成するため、熱力学的観点から非常に嫌われる。にもかかわらず、分散剤の使用により、通常は触媒形成中に存在する同じ成分の引力が低減または排除され、ナノ触媒粒子中で金属のよりランダムな分布がもたらされる。したがって、ナノ触媒粒子を形成すると、各触媒成分の粒子中での分布はよりランダムでより均一となる。
【0020】
他のプロセスを用いて多成分系改質用触媒を形成することもできることを理解されたい。たとえば、担持多成分系ナノ触媒粒子を製造するための方法が、参照によりあらかじめ本明細書中に組み込まれた2004年11月17日に「分散剤を用いて形成した多成分系ナノ粒子(MUTICOMPONENT NANOPARTICLES FORMED USING A DISPERSING AGENT)」という名称で同時出願された特許文献1に開示されている。前述の出願は、加熱処理ステップを必要としないやり方で担持多成分系金属触媒を製造する方法を開示している。
【0021】
一実施形態では、ナノ触媒粒子をアルミナやシリカなどの基体に固着させる。分散剤は、触媒ナノ粒子を基体に結合させるための固着剤として作用する。固着は、使用中の粒子凝集を防ぐのに役立ち、また担体材料からのナノ粒子の浸出を低減する。したがって、本発明の改質用触媒は、向上した触媒活性を有し、また失活に対するより高い耐性を有する。
【0022】
一次および二次触媒成分の制御された分布は、触媒の高い活性および失活に対する耐性にある程度関与していると考えられている。たとえば、スズ、レニウムおよびイリジウムは、触媒活性を向上させ、かつコーキングなどの望ましくない反応を防ぐ能力を有する。これらの有益な特性は通常、異なる触媒原子を互いに密に組み合わせる、混合する、散在させる、装飾する、または合金化すると促進される。
【0023】
本発明による改質用触媒により、ナフサ改質作業のコストを大幅に削減することができる。これらの触媒のより高い活性は、同じ触媒充填量でより高いオクタン価および/またはより多くの芳香族生成物を得ることができることを意味する。あるいは、所望の触媒活性を維持しながら触媒充填量を減らすこともでき、これにより触媒のコストを減らすことができる。触媒の寿命が増大すると、改質作業における触媒の再生および/または交換をそれほど頻繁に行わなくてもよいので、改質プロセスのコストを削減することもできる。
【0024】
本発明のこれらおよび他の利点および特徴は、以下の説明および特許請求の範囲からさらに十分に明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
I.序
本発明は、オクタン価を高め、かつBTXを形成するためのナフサの改質に有用な新規の改質用ナノ触媒の製造を対象とする。本発明の一態様によれば、担体に固着した高分散ナノ触媒粒子が提供されるようなやり方で、新規の改質用ナノ触媒を製造する。
【0026】
例示的な一実施形態では、触媒成分と結合し、少なくとも部分的に触媒成分の分子配列を決定する分散剤を使用する。2種以上の異なる触媒成分を確実にナノ触媒粒子間で所望の分布に分配するために、分散剤を使用することができる。触媒活性が向上し寿命が増大した担持改質用触媒を形成するために、これらのナノ触媒粒子を使用することができる。
【0027】
開示を目的とするため、および特許請求の範囲のため、用語「ナノ粒子」または「ナノ寸法粒子」は、直径が約100ナノメートル(nm)未満の粒子を意味する。
【0028】
用語「少数成分」は、粒子中での濃度がより少ない多成分系ナノ触媒粒中の成分を意味する。2種以上の成分の濃度が粒子中で基本的に同じである場合には、少数のものの決定は統計的に非現実的であることからも分かるように、いずれかの成分が少数成分であると見なされる。
【0029】
開示を目的とするため、および特許請求の範囲のため、用語「個数比(Number Ratio)」または「NR」は、NA/NBに相当し、ここで、NAは、所与のナノ粒子または一組のナノ粒子中のより多い成分Aの原子の数(またはモル数)であり、NBは、そのナノ粒子または一組のナノ粒子中のより少ない成分Bの原子の数(またはモル数)である。特定のナノ粒子iについては、NRを具体的な値(NRi)で表すことができる。所与の組のナノ粒子におけるナノ粒子すべてについての平均NRは、平均値(NRavg)で表される。
【0030】
ほとんどの場合、所与の試料または一組のナノ粒子中の様々な粒子に対応する個々のNR値は、単一の離散値と等しくはならないが、NR値の範囲(すなわち、「NR範囲(Range of NR)」)内にある。各粒子中に少なくとも2種の異なるナノ粒子成分を有する所与の試料または一組のナノ粒子NR範囲は、上方値NRmaxおよび下方値NRminを有する。
【0031】
II.担持改質用ナノ触媒および中間体を製造するために使用する成分
本発明による担持改質用ナノ触媒は、通常1種または複数の異なる種類の触媒原子、分散剤、担体および1種または複数種の溶媒を用いて製造される。以下に詳述するように、溶媒、触媒錯体、任意選択で過剰な分散剤および/または触媒成分を含む溶液、コロイドまたは懸濁液を形成するために、通常1種または複数種の溶媒を使用することにより、1種または複数種の触媒金属または触媒成分を最初に分散剤と反応させて触媒錯体を形成する。この触媒錯体を、担体上に含浸して、あるいは担体に付着させて、触媒原子が非ゼロ酸化状態である中間触媒組成物を形成する。一実施形態によれば、この中間触媒組成物は、担体に固着した寸法が約100nm未満の高分散ナノ触媒粒子を有する担持触媒が形成されるように、触媒原子を非ゼロ酸化状態に維持しながら加熱処理する。他の実施形態では、本発明による改質用触媒(多成分系触媒を含む)を熱処理ステップなしで製造することができる。
【0032】
A.触媒原子
本発明の触媒ナノ粒子を形成する触媒原子は、接触改質活性を示す任意の金属、すなわち1種または複数種の金属または他の元素の組合せを含むことができる。有用な触媒原子の例には、1種または複数種の貴金属が含まれ、これらの貴金属には、白金、パラジウム、イリジウム、金、オスミウム、ルテニウム、ロジウムおよびレニウムが含まれる。他の触媒原子の例には、1種または複数種の塩基遷移金属、希土類金属、アルカリ土類金属、アルカリ金属および非金属さえもが含まれ、これらの金属および非金属は、単独で使用することも、他の触媒材料と錯体または合金を形成することもできる。
【0033】
白金(Pt)は、改質用触媒における一次触媒成分として特に有用である。それほど好ましくはないが、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)およびイリジウム(Ir)も一次触媒成分として使用することができ、これらの金属は、二次触媒成分として白金と組み合わせて使用することもできる。スズ(Sn)およびレニウム(Re)は、二次触媒成分として白金と組み合わせて有益に使用することができ、ゲルマニウム(Ge)、鉛(Pb)、ヒ素(As)、アンチモン(Sb)、タングステン(W)、オスミウム(Os)、カドミウム(Cd)、インジウム(In)、チタン(Ti)、リン(P)、ガリウム(Ga)、ルテニウム(Ru)、カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)、バリウム(Ba)、ストロンチウム(Sr)など他の様々な成分でもよい。
【0034】
以下で説明するように、これらの触媒原子を適当な溶媒またはキャリアに添加して、溶液または懸濁液を形成する。触媒原子は、元素(たとえば、金属)形態で添加することも、あるいはイオン形態で添加することもできる。通常、触媒原子は、溶媒またはキャリア中でより容易に溶解するまたは分散するように、イオン形態で添加される。適切なイオン形態の例には、金属ハロゲン化物、金属窒化物、あるいは、溶媒またはキャリアに容易に可溶となる他の適当な金属塩が含まれる。具体例には、金属リン酸塩、金属硫酸塩、金属タングステン酸塩、金属酢酸塩、金属クエン酸塩、金属グリコール酸塩が含まれる。
【0035】
酸化物などそれ自体が化合物である金属成分は、適当な化合物形態で液状媒質に添加することができ、触媒形成中に適当な化学的形態へと変換される異なる化学的形態でもよい。
【0036】
B.分散剤
分散剤は、担体に結合または付着することが可能な触媒錯体の形成が促進されるように選択する。加えて、分散剤は、所望の安定性、寸法および/または均一性を有するナノ触媒粒子が生成されるように選択する。本発明の範囲内の分散剤には、様々な有機小分子、ならびにポリマーおよびオリゴマーが含まれる。例示的な分散剤は、イオン結合、共有結合、ファンデルワールス相互作用/結合または水素結合を含む様々な機構を通して、適当な溶媒またはキャリア中で溶解または分散した触媒原子と相互に作用し、錯体を形成することが可能である。
【0037】
分散剤と触媒原子との間の結合を提供するために、分散剤は1種または複数種の適当な官能基を有する。分散剤が触媒原子と錯体を形成するための適切な官能基には、ヒドロキシル、カルボキシル、アミン、チオール、エステル、アミド、ケトン、アルデヒド、スルホン酸、ハロゲン化アリール、ハロゲン化スルホニルおよびこれらの組合せのうちの1種または複数種が含まれる。分散剤は、単官能性でも、二官能性でも、三官能性でもよい。触媒原子が金属である場合には、触媒原子と分散剤とから形成される触媒錯体は通常有機金属錯体である。
【0038】
適切な単官能性分散剤の例には、エタノールやプロパノールなどのアルコールならびにギ酸や酢酸などのカルボン酸が含まれる。有用な二官能性分散剤には、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸などの二価酸、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオールなどのジアルコール、グリコール酸や乳酸などのヒドロキシ酸が含まれる。有用な多官能性分散剤には、グルコースなどの糖、クエン酸などの多官能性カルボン酸、ヒドロキシル二価酸等が含まれる。
【0039】
他の有用な分散剤には、エタノールアミン、メルカプトエタノール、2−メルカプトアセテート、グリシンやアラニンなどのアミノ酸、スルホベンジルアルコールやスルホ安息香酸などのスルホン酸、アミノ官能基およびチオール官能基を有する他のスルホベンジル化合物が含まれる。
【0040】
本発明による分散剤には、ポリマーまたはオリゴマーも含まれ、これらのポリマーおよびオリゴマーは天然でも合成でもよい。分散剤がオリゴマーまたはポリマーである場合、数平均で測定される分子量は、好ましくは約300から約15,000ダルトンの範囲内、より好ましくは約600から約6000ダルトンの範囲内である。しかしながら、分子量の大きい、すなわち15,000よりも大きいポリマーであっても、溶媒、キャリアまたは媒体(vehicle)に容易に可溶である場合には、分散剤として使用でき、触媒原子と錯体を形成することができることが確認されている。
【0041】
これらポリマー分子またはオリゴマー分子の分子量は、1分子当たりに所望の数の官能基を有する分散剤が生成されるように選択することができる。一般に、官能基の数は、1分子当たり4個から200個の範囲の官能基でよく、好ましくは約8個から約80個の官能基、より好ましくは約10個から約20個の官能基である。多くの場合、ポリマーまたはオリゴマー中の官能基の数は、繰り返し単位の数に少なくともおおよそ対応する。
【0042】
本発明の範囲内の適切なポリマーおよびオリゴマーには、ポリアクリル酸、ポリアクリレート類、ポリビニルベンゾエート類、ポリビニルサルフェート、スルホン化スチレンを含むポリビニルスルホネート類、ポリビスフェノールカーボネート類、ポリベンズイミダゾール類、ポリピリジン、スルホン化ポリエチレンテレフタレートが含まれるが、これらに限定されない。他の適切なポリマーには、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等が含まれる。
【0043】
触媒原子の数に対して過剰な官能基が提供されるように、分散剤を過剰に提供すると有利であることがある。過剰な官能基を含むと、触媒原子のすべてまたはほぼすべてが確実に分散剤によって錯体を形成するのに役立つ。過剰な分散剤を提供すると、結合が望まれる基体に触媒を結合するための官能基の有効性を確実にするのに役立つこともできる。
【0044】
分散剤の特性に加えて、触媒原子に対する分散剤官能基のモル比を制御することも有利であることがある。たとえば、二価金属イオンの場合、理論化学量論比を提供するために一価の官能基が2モル当量必要であろう。(1)触媒原子のすべてまたはほぼすべてが確実に錯体を形成し、(2)ナノ粒子を担体に結合させ、(3)ナノ粒子が塊にならないようあるいは互いに凝集しないようにナノ粒子を分離した状態に保つ助けになるために、過剰な分散剤官能基を提供することが望ましいことがある。一般に、触媒原子に対する分散剤官能基のモル比が約1000:1から約1:1000の範囲内であること、より好ましくは約50:1から約1:50の範囲内であることが好ましい。
【0045】
本発明の分散剤により、非常に小さくかつ均一なナノ粒子の形成が可能となる。好ましい一実施形態では、分散剤の存在下で形成される触媒ナノ粒子は、好ましくは約100nm未満、より好ましくは約10nm未満、さらにより好ましくは約6nm未満、さらに特に好ましくは約5nm未満、最も好ましくは約4nm未満である。
【0046】
以下に述べるように、ナノ触媒粒子は、担体表面に担持される。担体材料を触媒錯体の懸濁液または溶液に添加する場合、分散剤は錯体を形成している触媒原子および/または懸濁しているナノ粒子を担体材料上に均一に分散させるために作用すると考えられている。ナノ触媒粒子と担体材料との間固着剤として作用するような分散剤を選択することができ、この分散剤については以下で詳述する。ナノ触媒粒子の形成中および形成後、分散剤は、ナノ粒子を基体に固定するための固着剤として作用することができる。好ましくは、この基体がその表面に、分散剤の1つまたは複数の官能基と縮合反応などによって化学的に結合することが可能な複数のヒドロキシル基または他の官能基を有する。分散剤の1つまたは複数の別の官能基は、ナノ粒子中の1種または複数種の原子とも結合し、それによりナノ粒子が基体に固着する。
【0047】
分散剤は、固着することなく凝集を抑制する能力を有するが、分散剤を通じてナノ粒子を基体表面に化学的に結合させることは、凝集を防ぐための別の特に効果的な機構である。
【0048】
一実施形態によれば、(111)結晶面が露出した改質用触媒が生成されるように分散剤を選択する。一般に、小分子分散剤(たとえば、クエン酸、グリコール酸、乳酸およびエチレングリコール)ならびに分岐オリゴマーおよび分岐ポリマー(たとえば、分岐ポリアクリル酸)は、(111)結晶面が露出した担持触媒粒子の形成を促進することが分かっている。
【0049】
C.触媒錯体
用語「触媒錯体」は、分散剤と1種または複数の異なる種類の触媒原子との間に結合または配位錯体が形成されている溶液、懸濁液または他の組成物を指す。分散剤と触媒原子との間の「結合」は、イオン性でも共有結合性でも静電性でもよく、非結合電子との配位、とのファンデルワールス力など他の結合力を含むこともできる。
【0050】
触媒錯体は、1種または複数の異なる種類の分散剤と錯体を形成する1種または複数の異なる種類の触媒原子を含む。場合によっては、触媒錯体は、溶媒中で溶液または懸濁液中の分散剤と結合した個々の触媒原子を含む。このような場合、触媒錯体を担体に付着させて中間触媒組成物を形成し、次いでこの中間触媒組成物に1つまたは複数の適当な加工ステップを施して触媒粒子を生成した後、触媒粒子が形成される。他の場合には、触媒錯体は、担体に触媒錯体を塗布する前に懸濁液中でナノ触媒粒子を含むまたは形成する。
【0051】
溶媒を取り除いて乾燥させた触媒錯体を生成することも本発明の範囲内にあり、この乾燥させた触媒錯体を後でもどして溶液または懸濁液を生成することができ、この溶液または懸濁液を担体に含浸させるまたは塗布することができる。
【0052】
触媒錯体は、単独で、あるいは別のまたは追加の分散剤と組み合わせて有機金属化合物を含むことができる。例示的な一実施形態では、この有機金属化合物が下記一般式を有することができる。
【0053】
【化1】

【0054】
式中、
a)XおよびX’は、互いに独立してR、OR、OC(=O)R、ハロゲン原子およびこれらの組合せを含む群から選択され、Rはアルキル基またはアリール基を表す。ハロゲン原子が好ましい。
【0055】
b)YおよびY’は、O、N、P、S、他の原子などの電子供与原子である。YおよびY’は、単一配位化合物に属していても、独立に配位した配位子の一部であってもよい。
【0056】
一実施形態によれば、この有機金属錯体の金属中心は、白金、別の貴金属および/または所望の触媒活性を有する他の金属でよい。
【0057】
D.溶媒およびキャリア
(通常はイオン性塩の形の)触媒原子および/または分散剤を結合させるための媒体として、溶媒またはキャリアを使用することができる。本発明の前駆体組成物を製造するために使用される溶媒は、有機溶媒、水またはこれらの組合せでよい。使用することができる有機溶媒には、アルコール類、エーテル類、グリコール類、ケトン類、アルデヒド類、ニトリル類等が含まれる。
【0058】
好ましい溶媒は、金属塩を溶解させるのに十分な極性を有する液体である。これらの好ましい溶媒には、水、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロピルアルコール、アセトニトリル、アセトン、テトラヒドロフラン、エチレングリコール、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、塩化メチレン等が含まれ、これらの混合物も含まれる。
【0059】
この液体混合物に、他の化学修飾剤が含まれていてもよい。たとえば、混合物のpHを調整するために、酸または塩基を添加することができる。混合物の表面張力を調整するために、すなわちナノ粒子を安定化させるために、界面活性剤を添加することもできる。
【0060】
ナノ粒子成分用の溶媒は、純溶媒でよいが、ナノ粒子成分の溶解の際の酸助剤として、酸性溶液を使用することが好ましい。有機および無機助剤を含めた任意の適切な酸で、溶液を酸性化することができる。好ましい酸は、硫酸、リン酸、塩酸などの鉱酸、あるいはこれらの組合せである。広範囲の濃度の酸を使用することが可能であるが、一般に比較的希薄な溶液により所望の溶解度の向上が実現される。さらに、濃酸の溶液により、追加の危険および費用を提示されることがある。したがって、現在のところ希釈酸性溶液が好ましい。
【0061】
E.担体および担体材料
担持改質用触媒を生成するために、ナノ触媒粒子は通常、固体の別個の固体材料上に形成されるまたは塗布される。この固体担体材料は、有機物でも無機物でもよく、また化学反応環境において化学的に不活性であることも触媒粒子の機能を補完する触媒機能を果たすこともできる。改質条件がより高い温度を含む場合には、担体が好ましくは無機材料を含むことになる。
【0062】
有用な触媒粒子担体として当業者に知られている任意の固体担体材料を、本発明のナノ触媒粒子用担体として使用することができる。これらの担体は、様々な物理的形状をとることができる。これらの担体は多孔性であっても非多孔性であってもよい。これらの担体は、粉末、顆粒、タブレット、押出物などの3次元構造、あるいは他の3次元構造でもよい。担体は、フィルム、膜、コーティングなどの2次元構造の形をとっていても、他の主に2次元の構造をとっていてもよい。担体が極薄繊維やフィラメントなどの1次元構造であることさえ考えられる。
【0063】
好ましい実施形態では、改質用触媒担体が多孔性無機材料を含む。この多孔性無機材料としては、アルミナ、シリカ、シリカゲル、チタニア、珪藻土(kieselguhr)、珪藻土(diatomaceous earth)、ベントナイト、粘土、ジルコニア、マグネシア、ならびに他の様々な金属の酸化物を単独でまたは組合せで挙げられるが、これらに限定されない。また、この多孔性無機材料としては、天然または合成ゼオライトやその関連材料など、規則性のまたは疑似規則性の細孔構造を有する多孔性固体も挙げられる。担体材料として多孔性の固体を使用する場合には、担体の表面積が少なくとも20m2/g、より好ましくは50m2/gよりも大きいことが好ましい。
【0064】
別の有用な類の担体には、カーボンブラック、活性炭、グラファイト、フッ素化炭素など炭素をベースとする材料が含まれる。他の有用な類の担体材料には、ポリマーなどの有機固体ならびに金属および金属合金が含まれる。
【0065】
触媒活性を与えるために、その一例が塩素であるハロゲンで担体材料を処理すると有利であることがある。その代わりにまたは加えて、担体を硫化すると有利であることがある。
【0066】
ナノ触媒粒子は、担体材料上に広範囲の充填量で堆積させることができる。充填量は、担持触媒の総重量の0.01重量%から90重量%の範囲に及ぶことができる。この好ましい充填量は、関与する具体的な改質用途に依存することになる。
【0067】
III.改質用触媒
本発明による改質用触媒は、適当な担体材料に固着した高分散ナノ触媒粒子を含む。オクタン価を高めるまたはBTXを形成するためのナフサの改質に適した改質用触媒は、1種類の触媒金属または触媒成分を含んでいてもあるいは多成分系触媒であってもよい。触媒を製造する1つの方法は、以下に詳述するように、複数の異なる金属を含む多成分系ナノ触媒粒子を有する改質用触媒の製造で特に有用である。
【0068】
例示的な改質用触媒は、一次触媒成分としての白金、パラジウム、ロジウムまたはイリジウムの1種または複数種を、二次改質用触媒成分、好ましくはスズまたはレニウムの1種または複数種と組み合わせて含む多成分系ナノ触媒粒子を含む。他の二次改質用触媒成分には、ゲルマニウム、鉛、ヒ素、アンチモン、タングステン、オスミウム、カドミウム、インジウム、チタン、リン、ガリウム、ルテニウム、カルシウム、マグネシウム、バリウムおよびストロンチウムの1種または複数種が含まれる。多成分系改質用触媒を提供する場合には、ナノ触媒粒子は、好ましくは触媒原子の所望の分布を有することになる。
【0069】
多成分系改質用触媒の場合、改質用触媒中のナノ触媒粒子の少なくとも約50%が、好ましくは2種以上のナノ触媒成分を含むことになる。より好ましくは、改質用触媒中のナノ触媒粒子の少なくとも約75%が2種以上のナノ触媒成分を含み、さらにより好ましくは、ナノ触媒粒子の少なくとも約85%が2種以上のナノ触媒成分を含み、最も好ましくは、改質用触媒中のナノ触媒粒子の少なくとも約95%が2種以上のナノ触媒成分を含む。本発明による改質用触媒中のナノ触媒粒子の少なくとも約99%が2種以上のナノ触媒成分を含むことは本発明の範囲内である。
【0070】
本発明に従って調製した多成分系ナノ触媒粒子の相当の割合が2種以上のナノ触媒成分を含むため、単一の多成分系粒子中にこれらの触媒成分を有することから生じる利益は、単一成分触媒粒子の不均一な混合物と比べて、ナノ触媒粒子全体にわたってより均一に分布している。したがって、触媒全体は、これら有益な特性の増大を示す。
【0071】
本発明の別の態様によれば、本発明に従って調製したナノ粒子の2種以上の成分の分散度を、2種以上の成分を有する所与の組のナノ粒子の個数比(NR)またはNR範囲によって測ることができる。この個数比=NA/NBにおいて、NAは、本発明によるナノ粒子または一組のナノ粒子中のより多い成分Aの原子の数(またはモル数)であり、NBは、そのナノ粒子または一組のナノ粒子中のより少ない成分Bの原子の数(またはモル数)である。NRの値は、所与の組の中のナノ粒子すべてについての平均値(NRavg)または特定のナノ粒子iについての具体的な値(NRi)で表すことができる。
【0072】
理想的な場合には、所与の組の本発明のナノ粒子における各ナノ粒子iについての値NRiが、NRavgに等しくなる。この場合、各粒子iには成分AおよびBが等しく分配されている。本発明は、特定の試料中のナノ粒子すべてについてのNR値の範囲が所望の範囲内となるように、二成分または多成分系ナノ粒子中の成分の分散を制御することも企図する。NR範囲は、上方値NRmaxおよび下方値NRminを有する。NRmaxおよびNRminがNRavgからより小さい値にそれるにつれて、NR範囲はより狭くなり、これは、ナノ粒子がより均一であることを示す。
【0073】
好ましい実施形態では、NRmaxの値は、NRavgの値の約5倍を越えず、より好ましくはNRavgの値の約3倍を越えず、最も好ましくはNRavgの値の約2倍を越えない。
【0074】
逆に、NRminの値は、好ましくはNRavgの値の少なくとも約0.2倍、より好ましくはNRavgの値の少なくとも約0.33倍、最も好ましくはNRavgの値の少なくとも約0.5倍である。
【0075】
したがって、上記を前提とすると、NR範囲は、好ましくはNRavgの値の約0.2倍から約5倍、より好ましくはNRavgの値の約0.33倍から約3倍、最も好ましくはNRavgの値の約0.5倍から約2倍である。上記範囲は、「異常値」(すなわち、正しく形成されていない粒子、およびNRavgから過度にそれてNR範囲の外側にある粒子)を数に入れていないことが理解されよう。場合によっては、「異常値」のNRがNRavgに考慮されることがあるが、定義による「NR範囲」内にはない。
【0076】
好ましい実施形態では、所与の改質用触媒中の個々のナノ粒子の少なくとも約50%が、NR範囲内のNRiを有することになる。より好ましくは、触媒中の個々のナノ粒子の少なくとも約75%が、NR範囲内のNRiを有し、さらにより好ましくは、触媒中の個々のナノ粒子の少なくとも約85%が、NR範囲内のNRiを有し、最も好ましくは、触媒中の個々のナノ粒子の少なくとも約95%が、NR範囲内のNRiを有することになる。本発明による改質用触媒中の個々のナノ粒子の少なくとも約99%がNR範囲内のNRiを有することは、本発明の範囲内である。
【0077】
本発明に従って製造したナノ粒子についての比較的狭いNR範囲とは対照的に、従来技術におけるナノ粒子は、非常に広いNRi範囲を有し、場合によっては、ゼロから無限大にまで及ぶ。これは、一部の粒子がある成分を基本的に有しておらず、他の粒子がその他の成分を基本的に有していないことを示す。
【0078】
以下の2つの単純な数値例により、所望のNR範囲を有する本発明のナノ触媒粒子の非限定的な例が提供される。成分Bがバイメタルナノ粒子混合物を1%含み、成分Aが所与の組のナノ粒子においてその残余を含む場合を考える。この場合、この組のナノ粒子についてのNRavgは約100である。したがって、この組のナノ粒子についての好ましいNR範囲は20から500であり、これは、両方の成分を含有する個々のナノ粒子中の成分Bの0.2%から5%の範囲となる。NRのより好ましい範囲は33から300であり、これは、両方の成分を含有する個々のナノ粒子中の成分Bの0.33%から3%の組成範囲となる。NRiの最も好ましい範囲は50から200、すなわち両方の成分を含有する個々のナノ粒子中の成分Bの0.5%から2%の組成範囲である。
【0079】
第2の単純な数値例では、全体のNRavgが1となるように、成分AおよびBがそれぞれ全体の50%で同量存在する場合を考える。この場合、好ましいNRi範囲は0.2から5であり、両方の成分を含有する個々のナノ粒子中の成分Bの16%から83%の組成範囲に対応する。より好ましいNRi範囲は0.33から3であり、両方の成分を含有する個々のナノ粒子中の成分Bの25%から75%の組成範囲に対応する。最後に、最も好ましいNRi範囲は0.5から2、すなわち両方の成分を含有する個々のナノ粒子中の成分Bの33%から67%の組成範囲である。
【0080】
上述したように、本発明のナノ触媒粒子の特徴である所望の分散性および均一性を提供するために、本発明の分散剤を使用する。本発明による分散剤を使用すると、NRによって定義される上述の均一性を得ることができる。
【0081】
通常、分散剤は改質用触媒の構成要素として(すなわち、ナノ触媒粒子を担体に固着させる固着剤として)残る。本発明の発明者らは、分散剤に起因する特性が最終的なナノ触媒生成物に存在することがあることを見出した。これは、分散剤がナノ触媒調製ステップの後も存続することを示している。
【0082】
多成分系ナノ粒子が、すべての成分を含有する真の多成分系化合物または結晶構造を含むことも可能であるが、これは必要とされていない。一実施形態では、各ナノ粒子を、化学的にどのように結合しているかにかかわらず、成分の混合物で構成することができる。これらの成分は、相対的に孤立した原子として、または小さい原子クラスタとして存在することができる。これらの成分は、非晶質粒子として存在することもできる。これらの成分は、合金を含め微結晶(crystallite)として存在することもできる。成分結晶の結晶面を比較的無作為に露出させることも、特定の結晶面を制御してまたは選択的に露出させることもできる。
【0083】
分散剤を使用することによって可能となる均一性により、改質用触媒特性の改善がもたらされる。寿命など多成分系改質用触媒の多くの特性が、白金とスズなど2つの成分の近さ(proximity)に依存する。触媒調製中の成分のかなり均一な分布により、これらの異なる成分が互いに近接してその最終的な形の触媒に所望の官能性(functionality)または特性を提供するより大きな可能性が提供される。
【0084】
分散剤は、平均組成百分率を制御することによって、非常に正確な成分比を選択することも可能にする。個々の多成分系触媒粒子は、平均の組成とほんの少し異なる組成百分率を有するため、出発材料を調整して平均組成百分率を制御することによって、個々のナノ粒子の組成百分率をより正確に制御することができる。
【0085】
(111)結晶面が露出した触媒は、触媒原子(たとえば、Pt)が中心触媒原子のまわりに六員環で配列されているので、芳香族類を形成する際に特に有用であると見込まれている。本発明による改質用触媒は、従来の改質用触媒と比べると、オクタン価を高めるかつ/または芳香族化合物を形成する能力が増大していることが分かった。したがってこの仮説が支持されることになる。これらの改質用触媒は、従来の改質用触媒と比べると、純水素生産量の増加をももたらした。
【0086】
IV.改質用触媒を製造する例示的な方法
本発明による担持改質用触媒を製造するための例示的な方法は、次のように大まかに要約することができる。第一に、1種または複数種の触媒原子および1種または複数種の分散剤を選択する。第二に、触媒原子(たとえば、金属または他の成分)と分散剤を互いに反応させてまたは結合して触媒錯体を形成する。第三に、触媒錯体を担体材料上に含浸する、でなければ担体材料に塗布する。
【0087】
一実施形態によれば、改質用触媒をさらに加熱処理して、触媒を活性化する、すなわち改質プロセスで使用するために触媒を調製する。この方法は、一成分改質用触媒を製造する際にも多成分系改質用触媒を製造する際にも有用である。
【0088】
別の実施形態によれば、参照によりあらかじめ本明細書中に組み込まれた特許文献1に記載されている方法に従って多成分系改質用触媒を製造することができる。
【0089】
本発明による改質用触媒は、加熱処理プロセスを用いても用いなくても製造することができる。この加熱処理プロセスは、触媒原子を非ゼロ酸化状態からゼロ酸化状態に還元する前に、または還元した後に行うことができる。
【0090】
上記概説した第2のステップ中に製造される触媒錯体は、通常、溶液または懸濁液が形成されるように、触媒原子および分散剤を適当な溶媒またはキャリアに溶解させ、触媒原子が触媒錯体として再結合することを可能にすることによって形成される。一実施形態では、分散ナノ触媒粒子が懸濁液中に形成される。一代替実施形態では、分散剤が、1つまたは複数の後のステップにおいて担体表面に配置されたときに、ナノ触媒の形成を容易にする。
【0091】
触媒原子は、触媒錯体を形成するために使用する溶媒またはキャリアに可溶性または分散性となるように、任意の形で提供することができる。たとえば、溶媒またはキャリアに容易に溶解可能な金属塩として触媒原子を提供することができる。金属塩化物および金属窒化物は通常他の金属塩よりも可溶性であるため、金属塩化物および金属窒化物を使用すると有利なことがある。
【0092】
触媒原子は、単独で、あるいは様々な種類の触媒原子の混合物を含む最終的なナノ触媒粒子が提供されるように組み合わせて、溶媒またはキャリアに添加することができる。たとえば、まず白金の前駆体溶液およびスズの前駆体溶液を形成し、次いでこれらの前駆体溶液を組み合わせることによって、白金/スズ改質用触媒を形成することができる。一般に最終的なナノ触媒粒子の組成は、前駆体溶液に添加される触媒原子の種類によって決まることになる。したがって、前駆体溶液に添加される金属塩の量を制御することにより、最終的なナノ触媒粒子中の異なる種類の触媒原子の相対的な濃度を制御するための便利な方法が提供される。
【0093】
分散剤は、触媒錯体を形成するために、分散剤の触媒原子との結合を容易にするように溶媒またはキャリアに添加される。一部の分散剤は、それら自体が溶媒またはキャリアに可溶性であることがある。カルボン酸基を含む分散剤の場合、この酸の金属塩(たとえば、アルカリまたはアルカリ土類金属塩)を形成すると有利であることがある。たとえば、ポリアクリル酸ナトリウム塩としてポリアクリル酸を提供することができ、この塩は水性溶媒系にも容易に可溶で、触媒金属塩と反応して金属−ポリアクリル酸錯体を形成することもできる。この錯体は、溶媒またはキャリア中で可溶性あっても、懸濁液を形成してもよい。
【0094】
本発明の一態様は、非常に小さいナノ触媒粒子を制御可能に形成することができることである。本発明者らは、触媒原子に対する分散剤の相対量(または相対比率)が、得られる触媒ナノ粒子の寸法を決定する際の因子となるのではないかと考えている。一般に、化学量論的に過剰な分散剤は、粒子の凝集を低減するのに役立ち、それにより一般にはナノ粒子の寸法も低減される。
【0095】
次いで、この触媒錯体を担体材料に含浸する、あるいは担体材料に塗布して、中間触媒組成物を生成する。一実施形態では、触媒錯体の溶液または懸濁液を物理的に固体担体に接触させる。触媒錯体を担体表面に塗布または含浸して中間触媒組成物を生成するために、触媒錯体の固体担体への接触は、通常触媒錯体溶液中の適当な溶媒またはキャリアによって実現される。
【0096】
固体担体の物理的形状に応じて、触媒錯体を担体に接触させるまたは塗布するプロセスは、様々な方法によって実現される。たとえば、溶媒またはキャリアと触媒錯体とを含む溶液または懸濁液に、担体を沈めるまたは浸すことができる。あるいは、この溶液または懸濁液を、初期湿潤含浸(incipient wetness impregnation)などによって、担体に吹き付ける、流し込む、塗る、でなければ塗布することができる。その後、分散剤を担体に化学的に結合または付着させる反応ステップと関連して任意選択で、溶媒またはキャリアを取り除く。どちらにしても、このプロセスにより中間触媒組成物が生成される。
【0097】
一実施形態によれば、オクタン価向上および/またはBTX形成のためのナフサの接触改質で使用するために、この中間触媒組成物を加熱処理して担持触媒原子または粒子をさらに活性化するまたは調製する。場合によっては、改質用触媒を使用する前に加熱処理プロセスをナノ触媒粒子に施すと、最初触媒がより活性であることが分かっている。一実施形態では、ナノ触媒粒子から不要な分子を揮発させるために、この加熱処理を行う。ナノ触媒粒子の担体材料への固着を高めるために加熱処理を行うこともできる。たとえば、ナフサ改質用触媒では、500℃まで徐々に加熱すると、ナノ触媒粒子とアルミナやシリカなどの担体材料との間の結合を改善することができる。触媒錯体を担体材料に塗布するより前に懸濁ナノ粒子が形成されていない場合には、加熱処理により、錯体を形成している個々の原子からのナノ触媒粒子の初期形成を起こすことができる。
【0098】
例示的な一実施形態では、不活性または酸化環境中、触媒原子を少なくとも最初は非ゼロ酸化状態にしてこの加熱処理プロセスを行う。少なくとも一部の場合では、加熱処理前に触媒原子をゼロ酸化状態に還元すると、触媒原子と分散剤との相互作用を弱め、場合によっては望ましくないナノ触媒粒子の凝集を引き起こすことがあると考えられている。この非ゼロ酸化状態では、触媒原子の電荷により、触媒原子がはるかに強い分散剤との結合を形成する。加熱処理プロセスにより触媒原子が多少還元されてしまう場合には、不活性または酸化雰囲気中で加熱処理を行うと、H2などの還元環境中で処理を行った場合よりも長く触媒原子を非ゼロ酸化状態で維持するのに役立つ。
【0099】
ナノ触媒粒子が多成分系ナノ粒子である場合、非ゼロ酸化状態における加熱処理は、ナノ触媒粒子の成分分布を改善することができる。分散剤と異なるナノ粒子成分との間のより強い結合を維持することにより、同じ成分の引力が低減される。同じ成分の引力を低減することにより、ナノ粒子の異なる触媒原子のよりランダムな分布が可能となり、かつ/または、加熱処理ステップを行う前に触媒ナノ粒子中にすでに存在する分布を同じ成分の引力が破壊することが防止される。一成分触媒系であっても、触媒原子を非ゼロ酸化状態に維持しながら改質用触媒を加熱処理すると、加熱処理プロセスに伴うより高温でのナノ触媒粒子の望ましくない凝集を防止するのを助けることができる。
【0100】
本発明の加熱処理プロセスは、好ましくは約50℃から約600度の範囲、より好ましくは約100℃から約500℃の範囲、最も好ましくは約150℃から約400℃の範囲の温度で行われる。加熱処理プロセスの継続期間は、好ましくは約5分から約24時間の範囲、より好ましくは約30分から約12時間の範囲、最も好ましくは約1時間から約6時間の範囲である。加熱処理ステップを行うための好ましい不活性環境は、N2を含む。
【0101】
金属触媒粒子を非ゼロ酸化状態で維持しながら改質用触媒を加熱処理することの1つの有利な特徴は、ナノ粒子を劣化させることも触媒活性を低下させることもないことである。分散剤と非ゼロ酸化状態の触媒原子との間の強い相互作用によりナノ粒子の破壊または凝集を防止するのを助ける追加の安定性が、分散剤により提供される。
【0102】
一実施形態によれば、部分的に触媒原子を還元するために、部分的な還元ステップを加熱処理前に行うことができる。この実施形態では、還元ステップにより触媒原子がゼロ酸化状態にまで還元されるのではなく、正しくは、触媒原子は部分的にしか還元されない(すなわち、より高い非ゼロ酸化状態からより低い非ゼロ酸化状態へ)。通常、還元ステップが十分に低い温度で行われる場合には、触媒原子は部分的にしか還元されない。例示的な一実施形態では、H2の存在下ナノ触媒粒子を約100℃未満の温度に加熱することによって、白金触媒原子を部分的に還元することができる。
【0103】
加熱処理プロセスが完了したら、高温での還元ステップを行うことが望ましいことがある。以下に説明するように、改質反応器内で還元を行うことができる(たとえば、ナフサ自体が触媒脱水素中に還元剤として作用することができる)。上記加熱処理プロセスの後に還元プロセスを行うことは、触媒原子の分散性および/または分布に影響を及ぼす可能性は低い。非ゼロ酸化状態で触媒原子を加熱処理することにより、より良く固着した触媒粒子が形成され、これら固着した触媒粒子は、後の還元条件にさらされた場合により良く安定化される。
【0104】
必要に応じ、改質用触媒を使用する前に、還元手順(たとえば、水素化)を用いることによって触媒ナノ粒子を還元することができる。水素は、1つの好ましい還元剤である。還元剤として水素を用いる代わりに、あるいは水素の使用に加えて、他の様々な還元剤を使用することもでき、これら他の還元剤には、水素化アルミニウムリチウム、水素化ナトリウム、水素化ホウ素ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、ヒドロキノン、メタノール、アルデヒド類、一酸化炭素、アンモニア等が含まれるが、これらには限定されない。この還元プロセスは、20℃から600℃の間の温度で行うことができる。
【0105】
最後に、この改質用触媒を、具体的な反応器またはプロセス構成に適した寸法および形状の完成品にさらに加工することができる。たとえば、数ある方法の中でも押出し成形、ペレット化または噴射乾燥によって、粉末を加工することができる。
【0106】
V.炭化水素を改質する方法
本発明による改質用触媒は、ナフサなどの炭化水素の改質に使用することができる。数ある反応の中でも、芳香族類を生成するためのナフテン類の脱水素化、分岐パラフィン類またはイソパラフィン類を形成するための線状パラフィン類の異性化、および芳香族類を形成するためのパラフィン類の脱水素環化に改質用触媒を使用することができる。燃料調合用にオクタン価を高めるために、および/またはベンゼン、トルエン、キシレン類、エチルベンゼンおよび他の芳香族化合物を生成するためのBTX反応で改質用触媒を使用することもできる。
【0107】
本発明による改質用触媒は、当技術分野で知られている改質用触媒よりも優れている。というのも、ナノ触媒粒子がより強く担体に固着しているからであり、これにより触媒の耐用寿命が延長される。多成分系触媒の場合には、改質用触媒が、従来の多成分系ナノ触媒に通常見られるような異なる種類の単一成分触媒粒子からなる完全にまたは大部分が不均一な混合物ではなく、ナノ触媒粒子中に2種以上の触媒成分を含む触媒粒子を含むため優れている。
【0108】
この改質プロセスは、通常反応器の中で行われる。ナフサ接触改質などの反応用の3つの適切な反応器構成には、a)触媒が6カ月から24カ月ごとに再生され、反応器を停止することを必要とする準再生プロセス、b)別の反応器が触媒再生のためにオフラインとなっている間、予備の反応器をオンラインにする循環プロセス、およびc)触媒が改質反応器の上部から下部へ連続的に循環し、次いで外部の再活性化用再生ユニットに供給され、その後反応器の上部に送られる連続触媒再生(CCR)プロセスが含まれる。
【0109】
通常、改質用触媒をまず反応器に投入し、改質用触媒に還元的処理を施す。この処理には通常、純水素環境中で触媒を高温(400℃〜525℃)に加熱することが含まれる。次いで、水素を連続的に流しながらナフサを反応器に連続的に供給する。炭化水素に対する水素の典型的なモル比は、3から8の間である。
【0110】
オクタンの増加を最大限に高め、軽質ガスへの損失を最小限に抑え、かつ触媒寿命を延長することの折衷として反応条件を選択する。コーク前駆体の水素化を容易にし、したがって触媒失活および設備の汚れを最小限に抑えるために、水素雰囲気中でナフサ接触改質を行う。同時に、水素のより高い分圧は、脱水素化反応を抑制する傾向がある。全体の作業圧力は、約300kPaから約3.5MPaの範囲に及ぶ。温度に関しては、改質体のより高いオクタン価にも軽質ガスを生成する水素化分解にも、より高い値が有利に働く。典型的な作業温度は、約460℃から約525℃の間である。
【0111】
以下の例示的な手順は、本発明による改質用触媒を調製するために、またナフサ供給原料のオクタン価を改善しBTX芳香族類も生成する改質用触媒の能力を試験するために使用される。
【実施例1】
【0112】
白金およびスズを触媒成分として用いて本発明による改質用触媒を調製した。この触媒は、以下のステップおよび濃度を用いて調製した。
【0113】
(i)H2PtCl6・6H2O(Pt:38〜40%、39%を選択)1.0209gを水に溶解させ、100.0mlに希釈することによって、白金溶液を調製した。白金溶液の最終的な濃度は、0.003982gPt/mlであった。
【0114】
(ii)SnCl2・2H2O(98%)1.9390gと、37%HCl水溶液5.74gとを混合して塩化スズ(SnCl2)を溶解させることによって、スズ溶液を調製した。次いで、このスズ溶液を200.0mlに希釈して、スズ濃度が0.004999gSn/mlの溶液を形成した。
【0115】
(iii)0.003982gPt/ml溶液23.56gを希釈して100gの溶液を形成し、次いで37%HCl溶液4.4gを撹拌しながら添加することによって、溶液Aを調製した。
【0116】
(iv)0.004999gSn/mlの溶液12.96gを水で希釈して100gの溶液を形成し、次いで溶液Aを添加することによって、溶液Bを調製した。
【0117】
(v)溶液Bを1時間放置し、次いで37%HCl溶液を1.67g添加することによって、溶液Cを調製した。
【0118】
(vi)水を用いて45%ポリアクリル酸ナトリウム塩溶液2.73gを220gに希釈し、溶液Cを添加することによって、溶液Dを調製した。
【0119】
(vii)溶液Dを、100ml/分のN2で1時間パージした。このN2を100ml/分のH2で20分間置換した。次いで、継続的に撹拌しながらフラスコを一晩密封した。
【0120】
(viii)直径1/16インチの球状のAl23を27.60g真空下に30分間置き、次いで、メタノール約80mlを30分間このAl23に含浸した。メタノールの過剰分を、ピペットを用いることによって取り除いた。次いで、このAl23担体を溶液Dに添加した。得られた混合物を回転させながら、赤外線ランプで液体がすべて蒸発するまで加熱した。
【0121】
(ix)次いで、白金原子およびスズ原子を最初は非ゼロ酸化状態で含む試料をマッフル炉に設置し、以下の手順に従ってN2中で加熱処理した。
【0122】
1)室温から120℃まで3℃/分で加熱
2)120℃で2時間保持
3)120℃から300℃まで3℃/分で加熱
4)300℃で2時間保持
5)300℃から500℃まで1℃/分で加熱
6)500℃で2時間保持
(x)室温まで冷却した後、試料を取り出し、毎回100mlの熱湯(80〜90℃)を用いて2度洗浄した。これに続き、毎回100mlの室温の水を用いて3回洗浄して、残留ナトリウムイオンを取り除いた。次いで、この試料を乾燥オーブン内に2時間置いた。
【0123】
(xi)次いで、37%のHCl溶液0.83gと水29.2gとを混合することによって調製したHCl溶液を、試料に含浸した。この試料を室温で乾燥させ、続いて乾燥オーブン内で2時間乾燥させ、最後に200℃の気流下マッフル炉に2時間置いた。室温まで冷却した後、試料の重さを量り、試料を瓶に詰めた。得られた触媒の重量組成は、Ptが0.34%、Snが0.23%、Clが1.08%であった。
【0124】
比較考察
比較研究では、本発明の実施例1のPt−Sn改質用触媒を、固定床反応器に投入し、ナフサの接触改質に使用した。直接比較するために、従来の改質用触媒を使用した(すなわち、分散剤を使用せずに製造)。この従来の改質用触媒は、同じ材料上に担持され、本発明の実施例1の改質用触媒と同じ元素組成を有していたが、分散剤を使用せずに調製された。これら従来の改質用触媒および本発明の実施例1の改質用触媒を同一の反応器に投入し、同じ前処理条件および反応条件にさらした。
【0125】
各反応試験では、約21gの固体触媒を、再加熱ゾーンによって分離されている2つの同一触媒床に加熱体積が分割される管型反応器に投入した。両触媒を不活性ガラスビーズで希釈して、床の等温性(isothermicity)を改善した。密度が59.6°API(0.7405g/cc)、不純物レベルが硫黄も窒素も1ppm未満、最初の沸点および最後の沸点がそれぞれ68.7℃および143℃であるナフサ供給を、その水分レベルが確実に20ppm未満となるように、分子ふるい床(molecular sieve bed)を通過させることによって乾燥させた。反応に先立ち、酸化された触媒を、純水素中480℃で12時間還元した。ナフサを50g/時間で、水素を2.11scf/時間で連続供給しながら、480℃、100psigで改質反応を行った。これにより、毎時重量空間速度(WHSV)は2.4/時間、炭化水素に対する水素のモル比は5.0となる。これらの値は、十分に従来のCCR反応器の通常の稼働の範囲内である。ガスクロマトグラフ(GC)によって出口ガスを分析して、生成した水素および軽質炭化水素ガス(C1−C4)の量を決定した。反応は90時間行い、この時点で供給ガスを止め、液体生成物を回収し、その詳細な組成およびリサーチオクタン価(RON)を決定した。
【0126】
実施例1の担持改質用触媒の使用を従来の改質用触媒と比較した結果を表Iに示す。リサーチオクタン価(RON)は、標準的なASTMのエンジン試験法によって決定した。
【0127】
【表1】

【0128】
表Iの結果は、本発明の実施例1の改質用触媒のオクタン価、水素生成量および液体改質体生成物中の芳香族類含有量が、試験で使用した従来の改質用触媒と比べて大幅に改善されていることを示している。本発明の実施例1の改質用触媒を用いて形成した生成物の、従来の改質用触媒を用いて形成した生成物を超える比重増加の改善は、実施例1の改質用触媒を用いて生成したより高レベルの水素の値と一致する。これらの結果は、本発明の改質用触媒を自動車燃料のオクタン価を増大させるために使用することができ、またBTXおよび他の芳香族類を生成するためにも使用することができることを示している。
【0129】
また、これらの試験は、互いに混ぜ合わされた白金原子とスズ原子とを共に含む触媒粒子を有する改質用触媒を提供することにより、優れた接触改質活性が提供されることを示唆している。これにより、非ゼロ酸化状態の触媒原子と分散/固着剤との間の強い結合がない状態で加熱処理または焼成した従来の改質用触媒と比べて、白金原子とスズ原子が担持触媒全体にわたってより均一に分散していることが示唆される。
【実施例2】
【0130】
白金およびスズを触媒成分として用いて本発明による改質用触媒を調製した。この触媒は、以下のステップおよび濃度を用いて調製した。
【0131】
(i)直径1/16インチの球状のAl2330gに、2.0%水酸化ナトリウム溶液150mlを2時間含浸した。Al23をフィルタによって収集し、水およびアセトンで洗浄した後、90℃で4時間乾燥させた。
【0132】
(ii)シス−ジクロロビス(硫化ジエチル)−白金(II)0.2335gおよびジクロロビス(アセチルアセトネート)−スズ(IV)0.2254gを20mlのトルエンに溶解させた。
【0133】
(iii)ステップ(i)のAl2330gを30mlのトルエンに添加し、続いてステップ(ii)で調製した溶液を添加した。この混合物を、窒素雰囲気中で12時間、懸濁液撹拌棒によって静かにかき混ぜて、固体試料を形成した。この固体試料をろ過して取り除き、トルエンで洗浄し、その後90℃で2時間乾燥させた。
【0134】
(iv)次いで、白金原子およびスズ原子を最初は非ゼロ配位錯体状態で含む試料をマッフル炉に設置し、以下の手順に従って空気中で加熱処理した。
【0135】
1)室温から300℃まで7℃/分で加熱
2)300℃で2時間保持
3)300℃から500℃まで3℃/分で加熱
4)500℃で2時間保持
(v)室温まで冷却した後、(37%のHCl溶液0.83gと水29.2gとを混合することによって調製した)HCl希薄溶液を8時間試料に含浸した。この試料を、80℃の乾燥オーブン内で12時間乾燥させた。得られた触媒の重量組成は、Ptが0.34%、Snが0.23%、Clが1.08%であった。
【実施例3】
【0136】
白金およびスズを触媒成分として用いて本発明による改質用触媒を調製した。この触媒は、以下のステップおよび濃度を用いて調製した。
【0137】
(i)Pt(acac)2209.1mgおよびSn(acac)2Cl2229.2mgを100mlのアセトンに溶解させた。
【0138】
(ii)Al23担体30gを100mlのアセトンに2時間浸した。次いで、このアセトンをデカンテーションによって取り除いた。
【0139】
(iii)ステップ(ii)の前処理済Al23担体にステップ(i)の溶液を添加し、回転真空蒸発によって乾燥させた。
【0140】
(iv)ステップ(iii)で得られた混合物を、70℃のオーブン内に6時間置き、次いで予熱マッフル炉に移動させて、窒素雰囲気下300℃で1時間、かつ480℃で3時間加熱した。
【0141】
(v)室温まで冷却した後、次いで、37%のHCl溶液0.93gと水25mlとを混合することによって調製したHCl希薄溶液を、試料に含浸した。この試料を室温で乾燥させ、続いて乾燥オーブン内で2時間乾燥させた。室温まで冷却した後、試料の重さを量り、試料を瓶に詰めた。得られた触媒の重量組成は、Ptが0.34%、Snが0.23%、Clが1.08%であった。
【実施例4】
【0142】
白金およびスズを触媒成分として用いて本発明による改質用触媒を調製した。この触媒は、以下のステップおよび濃度を用いて調製した。
【0143】
(i)H2PtCl6・6H2O(0.532mmol)275.52mgおよびSnCl2・2H2O(0.591mmol)133.36mgを、エチレングリコール30mlに溶解させた。
【0144】
(ii)この溶液をAl23担体30gに含浸した。
【0145】
(iii)得られた混合物を、100℃の真空オーブン内で6時間乾燥させた。
【0146】
(iv)次いで、白金原子およびスズ原子を最初は非ゼロ酸化状態で含む試料をマッフル炉に設置し、以下の手順に従ってN2下で加熱処理した。
【0147】
1)室温から120℃まで3℃/分で加熱
2)120℃で2時間保持
3)120℃から300℃まで3℃/分で加熱
4)300℃で2時間保持
5)300℃から500℃まで1℃/分で加熱
6)500℃で2時間保持
(v)室温まで冷却した後、大量の水で試料を洗浄した。次いで、この試料を80℃で2時間乾燥させた。
【0148】
(vi)室温まで冷却した後、次いで、37%のHCl溶液0.93gと水25mlとを混合することによって調製したHCl希薄溶液を、試料に含浸した。この試料を室温で乾燥させ、続いて80℃のオーブン内で2時間乾燥させた。室温まで冷却した後、試料の重さを量り、試料を瓶に詰めた。得られた触媒の重量組成は、Ptが0.34%、Snが0.23%、Clが1.08%であった。
【実施例5】
【0149】
白金およびスズを触媒成分として用いて本発明による改質用触媒を調製した。この触媒は、以下のステップおよび濃度を用いて調製した。
【0150】
(i)H2PtCl6・6H2O(Pt:38〜40%、39%を選択)0.9950gを水に溶解させ、100.0mlに希釈することによって、白金溶液を調製した。この溶液中の白金の最終的な濃度は、0.003881gPt/mlであった。
【0151】
(ii)SnCl2・2H2O(98%)7.66gと、37%HCl水溶液10gを混合してSnCl2を溶解させることによって、スズ溶液を調製した。次いで、このスズ溶液を200.0mlに希釈して、スズ濃度が0.01976gSn/mlの溶液を形成した。
【0152】
(iii)37%HCl4.0gと、ステップ(i)で調製した0.003881gPt/mlの溶液24.18gと、ステップ(ii)で調製した0.01976gSn/mlの溶液3.21gとを混合し、次いで0.001169g/mlグリコール酸溶液を6.26g添加することによって、溶液Aを調製した。
【0153】
(iv)溶液Aを加熱して沸騰させ、10分間還流し、次いで室温まで冷却することによって、溶液Bを調製した。
【0154】
(v)直径1/16インチの球状のAl23を27.60g真空下に30分間置き、次いで、メタノール約50mlを30分間このAl23に含浸した。メタノールの過剰分を、ピペットを用いることによって取り除いた。次いで、溶液BをこのAl23に添加し、液体がすべて蒸発するまで室温で含浸させた。
【0155】
(vi)次いで、この試料を乾燥オーブン内で3時間乾燥させ、その後マッフル炉に設置し、以下の手順に従って空気中で熱処理した。
【0156】
1)室温から120℃まで3℃/分で加熱
2)120℃で2時間保持
3)室温から300℃まで3℃/分で加熱
4)300℃で2時間保持
5)室温から500℃まで1℃/分で加熱
6)500℃で2時間保持
(vii)室温まで冷却した後、試料を取り出した。次いで、37%のHCl溶液0.83gと水29.2gとを混合することによって調製したHCl希薄溶液を、試料に含浸した。
【0157】
(viii)この試料を室温で乾燥させ、次いで乾燥オーブン内で一晩乾燥させた。室温まで冷却した後、試料の重さを量り、試料を瓶に詰めた。得られた触媒の重量組成は、Ptが0.34%、Snが0.23%、Clが1.08%であった。
【実施例6】
【0158】
白金およびスズを触媒成分として用いて本発明による改質用触媒を調製した。この触媒は、以下のステップおよび濃度を用いて調製した。
【0159】
(i)H2PtCl6・6H2O(Pt:38〜40%、39%を選択)1.0200gを水に溶解させ、100.0mlに希釈することによって、白金溶液を調製した。溶液中の白金の最終的な濃度は、0.003978gPt/mlであった。
【0160】
(ii)SnCl2・2H2O(98%)1.23gと、37%HCl水溶液4.3gを混合してSnCl2を溶解させることによって、スズ溶液を調製した。次いで、このスズ溶液を200.0mlに希釈して、スズ濃度が0.003236gSn/mlの溶液を形成した。
【0161】
(iii)ステップ(i)の0.003978gPt/mlの溶液23.59gを希釈して100gの溶液を形成し、次いで37%HCl4.4gを撹拌しながら添加することによって、溶液Aを調製した。
【0162】
(iv)ステップ(ii)の0.003236gSn/mlの溶液19.62gを水で希釈して100gの溶液を形成し、この溶液を溶液Aに添加し、次いで37%HCl1.67gを溶液Bに添加することによって、溶液Bを調製した。
【0163】
(v)45%ポリアクリル酸(ナトリウム塩)溶液2.73gを220gの水で希釈し、この溶液を溶液Bに添加することによって、溶液Cを調製した。
【0164】
(vi)溶液Cを、100ml/分のN2で1時間パージした。その後、このN2を100ml/分のH2で20分間置換した。次いで、継続的に撹拌しながらフラスコを一晩密封した。
【0165】
(vii)直径1/16インチの球状のAl23を27.60g真空下に30分間置き、次いで、メタノール約50mlを30分間このAl23に含浸した。メタノールの過剰分を、ピペットを用いることによって取り除いた。次いで、このAl23に溶液Cを添加した。得られた混合物を回転させながら、赤外線ランプで液体がすべて蒸発するまで加熱した。
【0166】
(viii)次いで、この試料を乾燥オーブンで一晩乾燥させ、その後マッフル炉に設置し、以下の手順に従ってN2下で加熱処理した。
【0167】
1)室温から120℃まで3℃/分で加熱
2)120℃で2時間保持
3)室温から300℃まで3℃/分で加熱
4)300℃で2時間保持
5)室温から500℃まで1℃/分で加熱
6)500℃で2時間保持
(ix)室温まで冷却した後、試料を取り出し、毎回100mlの熱湯(80〜90℃)を用いて2度洗浄した。これに続き、毎回100mlの室温の水を用いて3回洗浄して、残留ナトリウムイオンを取り除いた。次いで、この試料を乾燥オーブン内に4時間置いた。
【0168】
(x)次いで、(37%HCl溶液0.42gと水29.6gとを混合することによって調製した)HCl希薄溶液を、室温で一晩試料に含浸した。次いでこの試料を約40℃で乾燥させ、その後乾燥オーブン内で4時間乾燥させた。室温まで冷却した後、試料の重さを量り、試料を瓶に詰めた。得られた触媒の重量組成は、Ptが0.34%、Snが0.23%、Clが0.54%であった。
【実施例7】
【0169】
白金およびスズを触媒成分として用いて本発明による改質用触媒を調製した。この触媒は、以下のステップおよび濃度を用いて調製した。
【0170】
(i)25.52wt%H2PtCl6水溶液406.35mgを水で15mlに希釈することによって、白金溶液を調製した。
【0171】
(ii)SnCl2・2H2O(98%)133.36mgを37%HCl4gと共に脱イオン水で15mlに溶解させることによって、スズ溶液を調製した。
【0172】
(iii)ステップ(i)の白金溶液をステップ(ii)のスズ溶液と混合することによって、溶液Aを調製した。
【0173】
(iv)クエン酸215.75mgを溶液Aに添加することによって、溶液Bを調製した。
【0174】
(v)溶液Bを1時間還流し、次いで、継続的に撹拌しながら室温まで冷却した。
【0175】
(vi)直径1/16インチの球状のAl23を30g真空下に30分間置き、次いで、メタノール約50mlを30分間このAl23に含浸した。メタノールの過剰分を、ピペットを用いることによって取り除いた。次いで、このAl23担体を溶液Bに添加した。得られた混合物を、液体がすべて蒸発するまで熱板上で加熱した。
【0176】
(vii)得られた混合物を、80℃のオーブン内に3時間置いた。
【0177】
(viii)次いで、白金原子およびスズ原子を最初は非ゼロ酸化状態で含む試料をマッフル炉に設置し、以下の手順に従ってN2下で加熱処理した。
【0178】
1)室温から120℃まで3℃/分で加熱
2)120℃で2時間保持
3)120℃から300℃まで3℃/分で加熱
4)300℃で2時間保持
5)300℃から500℃まで1℃/分で加熱
6)500℃で2時間保持
(ix)室温まで冷却した後、加熱処理した触媒を脱イオン水1500ml(冷水750ml+温水(約80℃)750ml)で洗浄した。
【0179】
(xi)次いで、37%のHCl溶液0.93gと水25mlとを混合することによって調製したHCl希薄溶液を、試料に含浸した。この試料を室温で乾燥させ、続いて乾燥オーブン内で2時間乾燥させた。室温まで冷却した後、試料の重さを量り、試料を瓶に詰めた。得られた触媒の重量組成は、Ptが0.34%、Snが0.23%、Clが1.08%であった。
【実施例8】
【0180】
活性成分としての白金、アルミナ担体およびエチレングリコール分散剤を用いて本発明による改質用触媒を調製した。この触媒は、以下のステップおよび濃度を用いて調製した。
【0181】
(i)H2PtCl6・6H2O(39wt%Pt)5gをエチレングリコールに溶解させ、200mlに希釈することによって、白金溶液を調製した。溶液中の白金の最終的な濃度は、0.00975gPt/mlであった。
【0182】
(ii)ステップ(i)の0.00975gPt/mlのH2PtCl6溶液9mlを水で21.5mlに希釈することによって、溶液Aを調製した。
【0183】
(iii)継続的に撹拌しながら1mol/LのNaOH/エチレングリコール溶液を溶液Aに4.5ml添加することによって、溶液Bを調製した。
【0184】
(iv)溶液Bを130℃で30分間保ち、次いで継続的に撹拌しながら室温まで冷却した。
【0185】
(v)Al2328.86gを真空下に30分間置き、次いで、メタノール約50mlを30分間このAl23に含浸した。メタノールの過剰分を、ピペットを用いることによって取り除いた。次いで、この処理済Al23担体にステップ(iv)の溶液Bを添加した。
【0186】
(vi)得られた混合物を、液体がすべて蒸発するまで100℃の真空オーブン内に6時間置いた。
【0187】
(vii)室温まで冷却した後、乾燥させた触媒を脱イオン水1500ml(冷水750ml+温水(約80℃)750ml)で洗浄した。次いで、この試料を80℃で2時間乾燥させた。
【0188】
(viii)次いで、37%のHCl溶液0.83gと水25mlとを混合することによって調製したHCl希薄溶液を、試料に含浸した。この試料を室温で乾燥させ、続いて乾燥オーブン内で2時間乾燥させた。室温まで冷却した後、試料の重さを量り、試料を瓶に詰めた。得られた触媒の重量組成は、Ptが0.3%、Clが1%であった。
【0189】
実施例2〜8の担持改質用触媒を使用して、実施例1に関して上で説明した同じ手順を用いることによりナフサを改質した。実施例2〜8の触媒を用いた改質手順の結果を表IIに記載する。
【0190】
【表2】

【実施例9】
【0191】
白金を触媒成分として用いて本発明による改質用触媒を調製した。この触媒は、以下のステップおよび濃度を用いて調製した。
【0192】
(i)H2PtCl6・6H2O(Pt:38〜40%、39%を選択)1.0200gを水に溶解させ、100.0mlに希釈することによって、白金溶液を調製した。この溶液中の白金の最終的な濃度は、0.003978gPt/mlであった。
【0193】
(ii)0.001169g/mlのグリコール酸溶液3.00gを22.6gに希釈し、次いでこの溶液を0.003978gPt/ml溶液22.62gと混合することによって、溶液Aを調製した。
【0194】
(iii)溶液Aを加熱して沸騰させ、10分間還流し、次いで室温まで冷却することによって、溶液Bを調製した。
【0195】
(iv)1/16インチの棒状のAl23を30.00g真空下に30分間置き、次いで、メタノール80mlを30分間このAl23に含浸した。メタノールの過剰分を、ピペットを用いて取り除いた。次いで、このAl23に溶液Bを添加し、室温で一晩含浸させた。
【0196】
(v)この試料を約40℃に加熱し、乾燥するまで保持し、次いで乾燥オーブン内で3時間乾燥させ、その後マッフル炉に設置し、以下の手順に従ってN2下で加熱処理した。
【0197】
1)室温から120℃まで3℃/分で加熱
2)120℃で2時間保持
3)室温から300℃まで3℃/分で加熱
4)300℃で2時間保持
5)室温から480℃まで1℃/分で加熱
6)480℃で2時間保持
(vi)室温まで冷却した後、試料をマッフル炉から取り出した。次いで、37%のHCl溶液0.80gと水29.2gとを混合することによって調製したHCl希薄溶液を、試料に含浸した。
【0198】
(vii)この試料を約40℃で乾燥させ、次いで乾燥オーブン内で一晩乾燥させた。室温まで冷却した後、試料の重さを量り、試料を瓶に詰めた。得られた触媒の重量組成は、Ptが0.3%、Clが1%であった。
【実施例10】
【0199】
白金を触媒成分として用いて本発明による改質用触媒を調製した。この触媒は、以下のステップおよび濃度を用いて調製した。
【0200】
(i)H2PtCl6・6H2O(Pt:38〜40%、39%を選択)1.0200gを水に溶解させ、100.0mlに希釈することによって、白金溶液を調製した。この溶液中の白金の最終的な濃度は、0.003978gPt/mlであった。
【0201】
(ii)ステップ(i)の0.003978gPt/mlの溶液22.62gを水で204mlに希釈することによって、溶液Aを調製した。
【0202】
(iii)45%ポリアクリル酸(ナトリウム塩)溶液1.23gを水で204mlに希釈し、次いでこの溶液を溶液Aに添加することによって、溶液Bを調製した。
【0203】
(iv)溶液Bを、100ml/分のN2で1時間パージした。その後、このN2を100ml/分のH2で20分間置換した。次いで、継続的に撹拌しながらフラスコを一晩密封した。
【0204】
(v)1/16インチの棒状のAl23を30.00g真空下に30分間置き、次いで、メタノール80mlを30分間このAl23に含浸した。メタノールの過剰分をピペットで取り除いた。次いで、この処理済Al23に溶液Bに添加した。得られた混合物を、赤外線ランプを用いて液体がすべて蒸発するまで加熱した。
【0205】
(vi)この試料を乾燥オーブン内で一晩乾燥させ、次いでマッフル炉に設置し、以下の手順に従ってN2下で加熱処理した。
【0206】
1)室温から120℃まで3℃/分で加熱
2)120℃で2時間保持
3)室温から300℃まで3℃/分で加熱
4)300℃で2時間保持
5)室温から480℃まで1℃/分で加熱
6)480℃で2時間保持
(vii)室温まで冷却した後、試料を取り出し、毎回100mlの熱湯(80〜90℃)を用いて2回洗浄した。これに続き、毎回100mlの室温の水を用いて3回洗浄して、残留ナトリウムイオンを取り除いた。次いで、この試料を乾燥オーブン内に2時間置いた。
【0207】
(viii)次いで、37%のHCl溶液0.80gと水29.2gとを混合することによって調製したHCl希薄溶液を、試料に含浸した。この試料を約40℃で乾燥させ、次いで乾燥オーブン内で一晩乾燥させた。室温まで冷却した後、試料の重さを量り、試料を瓶に詰めた。得られた触媒の重量組成は、Ptが0.3%、Clが1%であった。
【実施例11】
【0208】
本発明による担持白金改質用触媒を、以下のステップおよび濃度を用いて調製した。
【0209】
(i)直径1/16インチの球状のAl23担体30gに、2.0%水酸化ナトリウム溶液150mlを2時間含浸した。この処理済Al23をろ過によって収集し、水およびアセトンで洗浄した後、90℃で4時間乾燥させた。
【0210】
(ii)シス−ジクロロビス(硫化ジエチル)−白金(II)0.206gをトルエン20mlに溶解させた。
【0211】
(iii)ステップ(i)の処理済Al2330gをトルエン30mlに添加し、続いてステップ(ii)で調製した溶液を添加した。この混合物全体を、窒素雰囲気下で12時間、懸濁液撹拌棒を用いて静かにかき混ぜて、固体試料を形成した。この固体試料をろ過によって取り除き、トルエンで洗浄し、その後90℃で2時間乾燥させた。
【0212】
(iv)室温まで冷却した後、(37%HCl溶液0.768gと水29.2gとを混合することによって調製した)HCl希薄溶液を、8時間試料に含浸した。この試料を、80℃の乾燥オーブン内で12時間乾燥させた。得られた触媒の重量組成は、Ptが0.30%、Clが1.0%であった。
【実施例12】
【0213】
白金を触媒成分として用いて本発明による改質用触媒を調製した。この触媒は、以下のステップおよび濃度を用いて調製した。
【0214】
(i)H2PtCl6・6H2O(Pt:38〜40%、39%を選択)5.0942gを水に溶解させ、100.0mlに希釈することによって、白金溶液を調製した。この溶液中の白金の最終的な濃度は、0.01987gPt/mlであった。
【0215】
(ii)ステップ(i)の0.01987gPt/mlの溶液4.53gを98%のグリシン0.035gと混合し、次いで25gに希釈することによって、溶液Aを調製した。
【0216】
(iii)溶液Aを加熱して沸騰させ、30分間還流し、次いで室温まで冷却することによって、溶液Bを調製した。
【0217】
(v)1/16インチの棒状のAl23を30.00g真空下に30分間置き、次いで、メタノール50mlを30分間このAl23に含浸した。メタノールの過剰分を、ピペットを用いて取り除いた。次いで、この処理済Al23に溶液Bを添加し、乾燥するまで約40℃で含浸させた。
【0218】
(vi)次いで、この試料を乾燥オーブン内で一晩乾燥させ、その後マッフル炉に設置し、以下の手順に従って空気中で加熱処理した。
【0219】
1)室温から120℃まで3℃/分で加熱
2)120℃で2時間保持
3)室温から300℃まで3℃/分で加熱
4)300℃で2時間保持
5)室温から500℃まで1℃/分で加熱
6)500℃で2時間保持
(vii)室温まで冷却した後、試料をマッフル炉から取り出した。次いで、37%HCl溶液0.83gと水24.2gとを混合することによって調製したHCl希薄溶液を、試料に含浸した。
【0220】
(viii)この試料を約40℃で乾燥させ、次いで乾燥オーブン内で3時間乾燥させた。室温まで冷却した後、試料の重さを量り、試料を瓶に詰めた。得られた触媒の重量組成は、Ptが0.3%、Clが1%であった。
【実施例13】
【0221】
活性成分としての白金、アルミナ担体およびクエン酸分散剤を用いて本発明による改質用触媒を調製した。この触媒は、以下のステップおよび濃度を用いて調製した。
【0222】
(i)25.52wt%H2PtCl6水溶液343.73mgを水で50mlに希釈することによって、白金溶液を調製した。
【0223】
(ii)クエン酸86.45mgを水50mlに溶解させ、次いでステップ(i)の上記H2PtCl6水溶液に添加した。
【0224】
(iii)ステップ(ii)の混合物を1時間還流し、次いで、継続的に撹拌しながら室温まで冷却した。
【0225】
(iv)Al2328.86gを真空下に30分間置き、次いで、メタノール約50mlを30分間このAl23に含浸した。メタノールの過剰分をピペットによって取り除いた。次いで、このAl23担体をステップ(iii)の溶液に添加した。得られた混合物を、液体がすべて蒸発するまで熱板上で加熱した。
【0226】
(v)得られた混合物を、80℃のオーブンに3時間置いた。
【0227】
(vi)次いで、白金原子を最初は非ゼロ酸化状態で含む試料をマッフル炉に設置し、以下の手順に従ってN2下で加熱処理した。
【0228】
1)室温から120℃まで3℃/分で加熱
2)120℃で2時間保持
3)120℃から300℃まで3℃/分で加熱
4)300℃で2時間保持
5)300℃から500℃まで1℃/分で加熱
6)500℃で2時間保持
(vii)室温まで冷却した後、加熱処理した触媒を脱イオン水1500ml(冷水750ml+温水(約80℃)750ml)で洗浄した。
【0229】
(viii)次いで、37%のHCl溶液0.81gと水25mlとを混合することによって調製したHCl希薄溶液を、試料に含浸した。この試料を室温で乾燥させ、続いて80℃の乾燥オーブン内で2時間乾燥させた。室温まで冷却した後、試料の重さを量り、試料を瓶に詰めた。得られた触媒の重量組成は、Ptが0.3%、Clが1%であった。
【実施例14】
【0230】
ステップ(iii)の後、固体試料を以下の手順に従ってマッフル炉内で加熱処理したこと以外は、基本的に上述した実施例11と同じ手順を用いて改質用触媒を調製した。
【0231】
1)空気雰囲気中室温から300℃まで7℃/分で加熱
2)300℃で2時間保持
3)300℃から500℃まで3℃/分で加熱し窒素雰囲気に変更
4)500℃で3時間保持
得られた触媒の重量組成は、Ptが0.30%、Clが1.0%であった。
【0232】
実施例9〜14の担持改質用触媒を使用して、実施例1に関して上で説明した同じ手順を用いることによりナフサを改質した。実施例9〜14の触媒を用いた改質手順の結果を表IIIに記載する。
【0233】
【表3】

【実施例15】
【0234】
白金およびスズを触媒成分として用いて本発明による改質用触媒を調製した。この触媒は、以下のステップおよび濃度を用いて調製した。
【0235】
(i)H2PtCl6・6H2O(Pt:38〜40%、39%を選択)1.0200gを水に溶解させ、100.0mlに希釈することによって、白金溶液を調製した。この溶液中の白金の最終的な濃度は、0.003978gPt/mlであった。
【0236】
(ii)SnCl2・2H2O(98%)1.23gと、37%のHCl水溶液4.3gを混合してSnCl2を溶解させることによって、スズ溶液を調製した。次いで、このスズ溶液を水で200.0mlに希釈して、スズ濃度が0.003236gSn/mlの溶液を形成した。
【0237】
(iii)37%HCl4.0gと、ステップ(i)の0.003978gPt/mlの溶液を23.59gと、ステップ(ii)の0.003236gSn/mlを19.62gと、グリシン0.08gとを混合することによって、溶液Aを調製した。
【0238】
(iv)溶液Aを加熱して沸騰させ、30分間還流し、次いで室温まで冷却することによって、溶液Bを調製した。
【0239】
(v)直径1/16インチの球状のAl23を27.60g真空下に30分間置き、次いで、メタノール50mlを30分間このAl23に含浸した。メタノールの過剰分を、ピペットを用いて取り除いた。次いで、溶液Bをこの処理済Al23に添加し、一晩室温で含浸させた。次いでこの試料を、液体がすべて蒸発するまで約40℃に加熱した。
【0240】
(vi)次いで、この試料を乾燥オーブン内で一晩乾燥させ、その後マッフル炉に設置し、以下の手順に従って空気中で加熱処理した。
【0241】
1)室温から120℃まで3℃/分で加熱
2)120℃で2時間保持
3)室温から300℃まで3℃/分で加熱
4)300℃で2時間保持
5)室温から500℃まで1℃/分で加熱
6)500℃で2時間保持
(vii)室温まで冷却した後、試料を取り出した。次いで、37%のHCl溶液0.83gと水24.2gとを混合することによって調製したHCl希薄溶液を、試料に含浸した。
【0242】
(viii)この試料を室温で2時間乾燥させ、次いで液体がすべて蒸発するまで約40℃に加熱し、その後乾燥オーブン内で3時間乾燥させた。室温まで冷却した後、試料の重さを量り、試料を瓶に詰めた。得られた触媒の重量組成は、Ptが0.34%、Snが0.23%、Clが1.08%であった。
【0243】
本発明は、その精神または本質的な特徴から逸脱することなく、他の具体的な形で実施することができる。記載されている諸実施形態は、あらゆる点で単なる例示的でしかなく、限定的なものではない。したがって、本発明の範囲は、上記記載ではなく特許請求の範囲によって示される。特許請求の範囲と均等な意味および範囲に含まれるすべての変更が、特許請求の範囲に含まれるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素の改質に使用するための多成分系改質用触媒であって、
少なくとも一部が多成分系粒子を含む、寸法が約100nm未満の複数のナノ触媒粒子であって、各多成分系粒子が、白金、パラジウム、ロジウム、イリジウムおよびそれらの混合物を含む群から選択される第1の成分と、スズ、レニウム、ゲルマニウム、鉛、ヒ素、アンチモン、タングステン、オスミウム、カドミウム、インジウム、チタン、リン、ガリウム、ルテニウム、カルシウム、マグネシウム、バリウム、ストロンチウムおよびそれらの混合物を含む群から選択される第2の成分とを含むナノ触媒粒子と、
担体材料と、
前記ナノ触媒粒子の少なくとも一部を前記担体材料に固着させる分散剤であって、前記ナノ触媒粒子と結合することができる官能基を少なくとも1つ有し、かつ前記担体材料と結合することができる他の官能基を少なくとも1つ有する複数の有機分子を含む分散剤とを含むことを特徴とする多成分系改質用触媒。
【請求項2】
前記ナノ触媒粒子中の原子の少なくとも一部は非ゼロ酸化状態であることを特徴とする請求項1に記載の多成分系改質用触媒。
【請求項3】
前記ナノ触媒粒子中の原子の少なくとも一部はゼロ酸化状態であることを特徴とする請求項1に記載の多成分系改質用触媒。
【請求項4】
前記多成分系触媒粒子は、一次触媒成分として白金を、また二次触媒成分としてスズ、レニウムまたはイリジウムの1種または複数種を含むことを特徴とする請求項1に記載の多成分系改質用触媒。
【請求項5】
前記多成分系触媒粒子は、異種金属の合金、組合せ、混合物、散在物または装飾物を含むことを特徴とする請求項1に記載の多成分系改質用触媒。
【請求項6】
前記ナノ触媒粒子は、約10nm未満の寸法を有することを特徴とする請求項1に記載の多成分系改質用触媒。
【請求項7】
前記ナノ触媒粒子は、約5nm未満の寸法を有することを特徴とする請求項1に記載の多成分系改質用触媒。
【請求項8】
前記分散剤は、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩類、ポリビニルベンゾエート、ポリビニルサルフェート、スルホン化スチレンを含むポリビニルスルホネート類、ポリビスフェノールカーボネート類、ポリベンズイミダゾール類、ポリピリジン、スルホン化ポリエチレンテレフタレート、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールおよびそれらの組合せを含む群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の多成分系改質用触媒。
【請求項9】
前記分散剤は、グリシン、アラニン、グリコール酸、乳酸、糖、グルコース、クエン酸、ヒドロキシジカルボン酸類、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、エタノールアミン、メルカプトエタノール、2−メルカプトアセテート、スルホベンジルアルコール、スルホ安息香酸、スルホベンジルチオール、スルホベンジルアミンおよびそれらの組合せを含む群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の多成分系改質用触媒。
【請求項10】
請求項1に記載の前記多成分系改質用触媒を用いて芳香族化合物または分岐パラフィンの少なくとも1つの形成を触媒することを含むことを特徴とする、炭化水素を改質する方法。
【請求項11】
炭化水素の改質に使用するための多成分系改質用触媒であって、
寸法が100nm未満であり、白金、パラジウム、ロジウムまたはイリジウムのうち1種または複数種と、スズ、レニウム、ゲルマニウム、鉛、ヒ素、アンチモン、タングステン、オスミウム、カドミウム、インジウム、チタン、リン、ガリウム、ルテニウム、カルシウム、マグネシウム、バリウムまたはストロンチウムのうち1種または複数種とを含む、複数のナノ触媒粒子であって、炭化水素を改質するための触媒活性を提供するナノ触媒粒子と、
担体材料と、
前記ナノ触媒粒子の少なくとも一部を前記担体材料に固着させる分散剤とを含み、
前記分散剤は、アミド、アミン、チオール、スルホン酸、ハロゲン化スルホニル、ハロゲン化アシル、カルボキシル、カルボニル、ヒドロキシル、それらの誘導体およびそれらの組合せを含む群から選択される少なくとも1つの官能基を有するポリマーまたは有機分子の少なくとも1つを含むことを特徴とする多成分系改質用触媒。
【請求項12】
前記分散剤は、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩類、ポリビニルベンゾエート類、ポリビニルサルフェート、スルホン化スチレンを含むポリビニルスルホネート類、ポリビスフェノールカーボネート類、ポリベンズイミダゾール、ポリピリジン、スルホン化ポリエチレンテレフタレート、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールおよびそれらの組合せを含む群から選択されることを特徴とする請求項11に記載の多成分系改質用触媒。
【請求項13】
前記分散剤は、グリシン、アラニン、グリコール酸、乳酸、糖、グルコース、クエン酸、ヒドロキシジカルボン酸類、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、エタノールアミン、メルカプトエタノール、2−メルカプトアセテート、スルホベンジルアルコール、スルホ安息香酸、スルホベンジルチオール、スルホベンジルアミンおよびそれらの組合せを含む群から選択されることを特徴とする請求項11に記載の多成分系改質用触媒。
【請求項14】
前記ナノ触媒粒子の前記少なくとも一部は、異なる金属の合金、組合せ、混合物、散在物または装飾物を含むことを特徴とする請求項11に記載の多成分系改質用触媒。
【請求項15】
多成分系改質用触媒を製造する方法であって、
(i)白金、パラジウム、ロジウム、イリジウムおよびそれらの混合物を含む群から選択される第1の成分と、スズ、レニウム、ゲルマニウム、鉛、ヒ素、アンチモン、タングステン、オスミウム、カドミウム、インジウム、チタン、リン、ガリウム、ルテニウム、カルシウム、マグネシウム、バリウム、ストロンチウムおよびそれらの混合物を含む群から選択される第2の成分とを含む複数の触媒原子を提供すること、
(ii)前記複数の触媒原子と結合することができる官能基を少なくとも1つ有し、かつ担体材料と結合することができる第2の官能基を有する複数の有機分子を含む分散剤を提供すること、
(iii)前記分散剤を前記第1および第2の成分と反応させて、触媒錯体を形成すること、
(iv)担体上に前記触媒錯体を塗布して、前記複数の触媒原子が非ゼロ酸化状態である中間触媒組成物を生成すること、および
(v)少なくとも一部が多成分系粒子を含む、寸法が約100nm未満であるナノ触媒粒子であって、各多成分系粒子が前記第1および第2の成分を含むナノ触媒粒子を前記担体材料に固着させることを含むことを特徴とする方法。
【請求項16】
前記第1および第2の官能基は、ヒドロキシル、カルボキシル、カルボニル、アミド、アミン、チオール、スルホン酸、ハロゲン化スルホニル、ハロゲン化アシル、有機金属錯体およびそれらの組合せを含む群から選択される少なくとも1つの基を含むことを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記担体材料は、シリカ、アルミナ、ゼオライトまたは金属酸化物の少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記触媒錯体の少なくとも一部分は、下記一般式を有する有機金属錯体を含み、
【化1】

式中、
a)XおよびX’は、互いに独立してR、OR、OC(=O)R、ハロゲンおよびこれらの組合せを含む群から選択され、Rはアルキル基またはアリール基を表し、
b)YおよびY’は、O、N、P、Sおよびこれらの組合せからなる群から選択される電子供与原子であることを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記触媒原子の少なくとも一部を非ゼロ酸化状態に維持しながら前記多成分系改質用触媒を熱処理することをさらに含むことを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項20】
(iii)で形成した前記1種または複数種の触媒錯体から前記溶媒の少なくとも一部を取り除いて、乾燥させた触媒錯体材料を生成し、後に、前記触媒錯体材料を、(iv)を行う前に1種または複数種の溶媒でもどすことをさらに含むことを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項21】
担持改質用触媒を製造する方法であって、
(i)白金を含み、また任意選択で他の種類の金属を少なくとも1種含む複数の触媒原子を提供すること、
(ii)前記触媒原子と結合することができる官能基を少なくとも1つ有する複数の有機分子を含む分散剤を提供すること、
(iii)前記分散剤を前記触媒原子と反応させて、触媒錯体を形成すること、
(iv)担体に前記触媒錯体を塗布して、前記触媒原子の一部が非ゼロ酸化状態である中間触媒組成物を生成すること、および
(v)前記触媒原子の少なくとも一部を非ゼロ酸化状態に維持するために、不活性または酸化環境中約50℃よりも高い温度で前記中間触媒組成物を加熱処理することを含み、
白金を含み、また任意選択で他の種類の金属を少なくとも1種含む寸法が約100nm未満の複数のナノ触媒粒子が前記担体材料に固着している担持改質用触媒を生成することを特徴とする方法。
【請求項22】
(v)を行う前に、より高い酸化状態からより低い非ゼロ酸化状態へ前記触媒原子を部分的に還元することをさらに含むことを特徴とする請求項21に記載の方法。
【請求項23】
約100℃を下回る温度でH2に前記ナノ触媒粒子をさらすことによって、前記触媒原子を部分的に還元することを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項24】
(v)を行った後、前記触媒原子をゼロ酸化状態に還元することをさらに含むことを特徴とする請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記分散剤の前記少なくとも1つの官能基は、ヒドロキシル、カルボキシル、カルボニル、アミド、アミン、チオール、スルホン酸、ハロゲン化スルホニル、ハロゲン化アシル、有機金属錯体およびそれらの組合せを含む群から選択されることを特徴とする請求項21に記載の方法。
【請求項26】
前記ナノ触媒粒子の少なくとも一部は、前記白金と、パラジウム、ロジウム、イリジウム、スズ、レニウム、ゲルマニウム、鉛、ヒ素、アンチモン、タングステン、オスミウム、カドミウム、インジウム、チタン、リン、ガリウム、ルテニウム、カルシウム、マグネシウム、バリウムまたはストロンチウムの少なくとも1種との合金、組合せ、混合物、装飾物または散在物を含むことを特徴とする請求項21に記載の方法。
【請求項27】
請求項21に記載の前記方法により製造されたことを特徴とする担持改質用触媒。
【請求項28】
請求項27に記載の前記担持改質用触媒を用いて芳香族化合物または分岐パラフィンの少なくとも1つの形成を触媒することを含むことを特徴とする、炭化水素を改質する方法。
【請求項29】
担持改質用触媒の製造に使用するための多成分系触媒錯体であって、
白金、パラジウム、ロジウム、イリジウムおよびそれらの混合物を含む群から選択される第1の成分と、スズ、レニウム、ゲルマニウム、鉛、ヒ素、アンチモン、タングステン、オスミウム、カドミウム、インジウム、チタン、リン、ガリウム、ルテニウム、カルシウム、マグネシウム、バリウム、ストロンチウムおよびそれらの混合物を含む群から選択される第2の成分とを含む複数の触媒原子と、
前記触媒原子と錯体を形成する分散剤であって、
前記触媒原子と結合することができる官能基を少なくとも1つ有し、かつ担持改質用触媒を形成するために使用される担体材料と結合することができる他の官能基を少なくとも1つ有する有機分子、または
アミド、アミン、チオール、スルホン酸、ハロゲン化スルホニル、ハロゲン化アシル、カルボキシル、カルボニル、ヒドロキシル、それらの誘導体およびそれらの組合せを含む群から選択される少なくとも1つの官能基を有するポリマーまたは有機分子、
の少なくとも1つを含む分散剤とを含むことを特徴とする多成分系触媒錯体。
【請求項30】
担持改質用触媒の製造に使用するための多成分系触媒錯体を製造する方法であって、
(i)白金、パラジウム、ロジウム、イリジウムおよびそれらの混合物を含む群から選択される第1の成分と、スズ、レニウム、ゲルマニウム、鉛、ヒ素、アンチモン、タングステン、オスミウム、カドミウム、インジウム、チタン、リン、ガリウム、ルテニウム、カルシウム、マグネシウム、バリウム、ストロンチウムおよびそれらの混合物を含む群から選択される第2の成分とを含む複数の触媒原子を提供すること、
(ii)前記触媒原子と結合することができる官能基を少なくとも1つ有し、かつ担持改質用触媒を形成するために使用される担体材料と結合することができる他の官能基を少なくとも1つ有する有機分子、または
アミド、アミン、チオール、スルホン酸、ハロゲン化スルホニル、ハロゲン化アシル、カルボキシル、カルボニル、ヒドロキシル、それらの誘導体およびそれらの組合せを含む群から選択される少なくとも1つの官能基を有するポリマーまたは有機分子、
の少なくとも1つを含む分散剤を提供すること、および
(iii)前記分散剤を前記第1および第2の成分と反応させて、前記多成分系触媒錯体を形成することを含むことを特徴とする方法。

【公表番号】特表2008−526504(P2008−526504A)
【公表日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−551248(P2007−551248)
【出願日】平成17年11月28日(2005.11.28)
【国際出願番号】PCT/US2005/042841
【国際公開番号】WO2006/078352
【国際公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【出願人】(507028251)ヘッドウォーターズ テクノロジー イノベーション リミテッド ライアビリティ カンパニー (12)
【Fターム(参考)】