説明

放出制御クロザピン組成物

薬物を送達するための組成物が開示されている。該組成物は、半透性被膜と、クロザピン粒子と、溶解剤とを含む組成物であって、前記クロザピン粒子は、約2μm又はそれ未満の有効平均粒子径を有し、クロザピン粒子の表面に表面安定化剤が吸着されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロザピンの放出制御製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
関連出願
本出願は米国特許法119条(e)項に基づき米国仮出願No.61/168040、2009年4月9日の利益を主張し、その開示は、引用により全体として本明細書に取り込まれる。
【0003】
背景
クロザピンは、統合失調症の標準的な薬物処置に対して適切な応答を示さない重症の統合失調症患者の管理に使用される。クロザピンは、また、患者履歴及び最近の臨床状態に基づいて自殺行動の再体験に対して慢性的リスクが判断される統合失調症又は統合失調性感情障害患者の再発性自殺行動のリスク低減に使用される。クロザピンは、また、パーキンソン関連の精神病の処置にも使用される。自殺行動は、患者によって患者自身を死のリスクに置く行動である。クロザピンは、他の抗精神病治療への反応が無いか不十分であった難治性統合失調症を有する患者の治療に対して好ましい処置である。例えば、非特許文献1を参照のこと。本文献は引用により全体として本明細書に取り込まれる。
【0004】
現在利用可能なクロザピンの処方は速放性の製品であり、患者は、これらの製剤を使用して定常状態となるべく適宜増量する必要がある。これは、困難性がなくはない。例えば、クロザピン患者への添付リーフレットは、1日25から50mgを超えない範囲での増量を指示する。患者は、400mg以上などの治療用量を10日以上かけることができ、所望の治療的用量への到達に数週間をかけることができる。例えば、非特許文献2を参照のこと。本文献は、引用により全体として本明細書に取り込まれる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Y.W.Francis Lamら、「新薬 対 後発クロザピン:生物学的利用能の比較と代替可能性の問題」、J.Clin.Psychiatry 2001;62(suppl.5)、18−24
【非特許文献2】Iqbalら、「クロザピン:副作用と管理の臨床的レビュー」、Annals of 10 Clinical Psychiatry,第15巻1号33−48ページ、2003年3月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
クロザピンは、典型的に難治性患者に処方される。即ち、例えば、レスペルダル(RESPERDAL)又はジプレクサ(ZYPREXA)などの他の抗精神病薬が反応しない患者に処方される。クロザピンを投与される大半の患者は、施設の設定の中にいる。一旦、これらの患者に対して用量の適宜増量が行われると、何度もクロザピンの速放製剤を投与する必要がある。これは、患者及び患者をケアする施設にとって不便である。必要とされることは、24時間を越えて薬物を放出するクロザピンの処方である。
【0007】
アルザ社の米国特許6210712号は、医薬組成物の徐放性製剤の1つの試みである。本製剤は、医薬及び薬学的に許容可能な担体、医薬組成物を覆う第一のエチルセルロース及びヒドロキシアルキルセルロース被膜、及び、第一の被膜を覆う第二の被膜を含む。第二の被膜は、アシル化セルロース、二アシル化セルロース又は三アシル化セルロースの中の1つである。本医薬組成物は、液体に対して透過可能であり、薬物の通過に対しては透過できない。製剤から薬物を出すためには、薬物層に接触する被膜を通して出口をレーザーで穴あけするか、機械的に穴開けし、薬物の放出を可能にする。従って、24時間以上で薬物を放出するクロザピンの処方の技術的需要がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
半透性被膜と、約2μm又はそれ未満の有効粒子径を有するクロザピン粒子と、クロザピン粒子に吸着された表面安定化剤と、可溶化剤とからなる組成物が論じられる。
【0009】
また、24時間を越えた治療の有効性を有するクロザピン医薬製剤の投与を含む統合失調症の患者の処置方法、半透性被膜と、約2μm又はそれ未満の有効平均粒子径を有するクロザピン粒子と、クロザピン粒子表面に吸着した表面安定化剤と、pH調整剤とを含む製剤が論じられる。
【0010】
さらに、半透性被膜と、約2μm又はそれ未満の有効平均粒子径及びクロザピン粒子表面に吸着された表面安定化剤と、pH調整剤とを含む組成物の統合失調症又は統合失調性感情障害患者の再発性自殺行動のリスク低下の方法が論じられる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本発明は、付随する図表との関係で詳細な説明を読むことによって最も良く理解される。一般的なプラクティスに従って、図表の種々の図が計られるべきではないことが強調される。反対に、明確にするために種々の図の大きさが適宜拡大又は縮小される。図表に含まれるものは以下の図である。
【0012】
【図1】本発明の典型的なクロザピン放出制御製剤であるビーズを表す。
【図2】図1に示したビーズの操作原理を表す。
【図3】種々のpH環境下での200mg用量クロザピンの経時的な溶解百分率のプロットである。
【図4】異なったpH調整剤で調合した場合の200mg用量クロザピンの経時的な溶解百分率のプロットである。
【図5】pH調整剤である酒石酸を異なった量で調合した場合の200mg用量クロザピンの経時的な溶解百分率のプロットである。
【図6】本願発明の典型的なクロザピン組成物を、クロザピンUSP処方錠と溶解プロフィールを比較したプロットである。
【図7】FazaClo(登録商標)1日2回投与(BID)の定常状態後の用量と本発明の典型的な実施態様の定常状態後の用量の平均薬物力学プロフィールのプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
発明の詳細な説明
「約」は、当業者によって理解され、それが使用される文脈によってある程度変化するであろう。もし、それが使用される文脈において、当業者に対して明確でないのであれば、「約」は、特定の用語の±10%までを意味するであろう。
【0014】
「有効平均粒子径」は、与えられた粒子径xに対して、重量又は体積を基に測定した場合に、母集団の50%の粒子がx未満の粒子径であり、母集団の50%の粒子がxよりも大きな流径であることを意味する。例えば、「2000nmの有効平均粒子径」を有するクロザピン粒子からなる組成物は、重量又は体積を基に測定した場合に、クロザピン粒子の50%が2000nm未満であり、クロザピン粒子の50%が2000nmを超えることを意味する。
【0015】
「ナノ粒子/ナノ微粒子クロザピン」は、有効平均粒子径2000nm未満又は約2000nmによって特徴付けられる粒子の集団の有限質量を有する固体粒子形態のクロザピンである。ナノ粒子/ナノ微粒子クロザピンは、ナノ粒子でないクロザピンの粒子径低減工程(いわゆる「トップダウン」工程)又はクロザピンの分子堆積(いわゆる「ボトムアップ」工程)によって製造される。又は、ナノ粒子/ナノ微粒子クロザピンは、ナノ粒子を意図した技術の使用によって製造されるものである。そのような技術の例は、以下によって詳しく記載される。ナノ粒子/ナノ微粒子クロザピンは、典型的に低減された粒子径を有しない非ナノ微粒子クロザピンと区別される。
【0016】
実施態様に従って、非ナノ微粒子クロザピンはナノ微粒子クロザピンへ粒子径を低減するために加工される。1つの実施態様において、粒子径低減加工はミルで粉砕する工程である。ミルで粉体化されたナノ微粒子クロザピンは、粒子径値順のリスト又は存在する粒子の相対量を定義する数学的機能として典型的に特徴化され、大きさに従って仕分けされる。ナノ微粒子クロザピンの粒子径の分布は、当業者に周知のいかなる従来の粒子径測定技術で測定されてもよい。そのような技術は、例えば、沈降場流動分画法、光子相関分光法、光散乱及びディスク遠心分離法を含む。1つの典型的な光散乱装置は、Horibaレーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置LA−950(堀場製作所、京都市南区、日本)である。粒子径分布の測定結果は、典型的に当業者に理解されているウェイブル分布又はロジンラムラー分布を使用して報告される。これらの報告技術は、研磨、臼でのミル化、落下、及び、粉砕作業によって発生する材料の粒子径分布の特徴化に有用である。
【0017】
「D」の後に続く数字の定義は、粒子径分布の%の数字を示す。例えば、重量又は体積を基に測定した場合に、D50は、粒子径分布の50%が、その数値よりも低い粒子径であり、50%がその数値よりも大きい粒子径である。もう1つの例では、粒子径分布D90は、重量又は体積で測定した場合に、90%の粒子がその数値以下で存在し、10%だけの粒子がその数値以上で存在することである。
【0018】
「溶解度」は、与えられた量の環境液体に溶解するクロザピンの量である。環境液体へのクロザピンの添加が溶解クロザピン量に対して正味の変化を生まない場合には、クロザピンと環境液体には、平衡状態にある。その環境液体でのクロザピンの溶解度の結果は、「平衡溶解度」と定義される。
【0019】
「自然の溶解度」は、溶解補助のない特定の環境液体下におけるクロザピンの平衡溶解度である。
【0020】
「過飽和」は、与えられた環境液体でクロザピンの自然の溶解度によって定義される以上の溶解度を特徴とする平衡溶解度を超えたクロザピンの溶解状態である。
【0021】
本明細書において、「使用環境」、「環境液体」又は「液体環境」は、典型的な経口投与製剤が曝される生理的又は局所的な環境状態を説明するために使用される。環境液体は、胃液からなってもよい。典型的に、胃の生理的状態は、絶食状態で1から2の間と報告されるpH値を含む。もう1つの環境液体は、小腸の液体であってもよい。小腸のpH値は約4.7から7.3の間を変動する。十二指腸のpHは、約4.7から6.5を変動し、空腸上部は、約6.2から6.7で、空腸下部は約6.2から7.3で変動すると報告されている。
【0022】
「治療上の有効量」は、そのような治療が必要な意味のある数の被験体に投与された薬物に対する特定の薬理学的反応を与える薬物用量を意味する。例え当業者によって治療上の有効量とみなされるとしても、薬物の治療上の有効量は、本明細書で記載される状態/病気の処置で特定の時間において特定の披験体に対して必ずしも有効とは限らないことが強調される。
【0023】
本発明の制御放出クロザピン組成物は、可溶化剤、クロザピン粒子、及び、半透性被膜を含む。放出制御クロザピン組成物は、放出制御クロザピン組成物の内部でのクロザピン粒子の迅速な溶解を提供することを意図し、浸透圧的に促進された対流及び/又は受動拡散によって溶解したクロザピンが組成物から出ることを可能とする。
【0024】
クロザピンの粒子径と、放出制御クロザピンに浸透する環境液体におけるクロザピンの溶解性を高める可溶化剤との両方は、前記組成物からクロザピンの送達速度に影響を与えるものと信じられる。特定の理論の束縛を受けることを望むことなく、輸送メカニズムは浸透圧的に促進された対流及び/又は受動拡散勾配であると信じられる。
【0025】
図1は、ビーズ型の放出制御クロザピン組成物の典型的な実施態様を表す。本実施態様において、放出制御クロザピン組成物100は多層ビーズである。最終製剤である多粒子カプセル剤の製造のために多数のビーズがカプセルに充填されるものと当業者に理解されるだろう。ビーズの中心に不活性物質110がある。不活性物質110の周囲に可溶化剤の層120がある。実施態様に示されるように、ビーズの最も外側の層は半透性被膜140である。可溶化剤層130と半透性被膜140の間にナノ微粒子クロザピン層130が配置される。クロザピン粒子135は、点描パターンによって表示の目的のみのために表される。
【0026】
図2は、図1に表されたビーズの操作の理論的原理の図である。特定の理論の束縛を受けることを望むことなく、使用される環境液体210は、細孔142を通して半透性被膜140を浸透するものと信じられている。液体210は、実質的にクロザピンを溶解させることなくナノ微粒子クロザピン層130を通過し、可溶化剤層120と接触する。可溶化剤層120は液体210に溶解する。溶解した可溶化剤は、組成物100を浸透する液体210の中でクロザピン粒子135を溶解(以前は不溶)するメカニズムを補助及び/又は提供する。可溶化剤220で今溶解したクロザピンは、矢印225で示されるように、浸透圧的に促進された対流及び/又は受動拡散によって放出制御クロザピン組成物100から出る。
【0027】
本発明の放出制御クロザピン組成物は、種々の経口製剤に処方されてもよい。適切な経口製剤は、カプセルに調剤されたビーズ又はペレット、顆粒、丸薬、懸濁剤、全ての錠剤、ウエハースを含むが、これらに限定されない。前述の製剤の限定されない定義の参考として、FDA医薬品評価センター(CDER)データ標準マニュアル(2006)が認められる。好ましい実施態様に従って、本発明は、ビーズ又はペレットを含むカプセルである。
【0028】
ビーズの実施態様に従って、前記組成物は、不活性物質、可溶化剤、クロザピン粒子、半透性被膜、及び、任意に放出制御又は腸溶性の層からなる。
【0029】
ビーズの実施態様において、ビーズの中心は不活性物質からなる。「不活性」によって、物質は、放出制御組成物でクロザピンと化学的に反応しないことを意味する。不活性物質は、可溶化剤層のサポートを提供する。不活性物質は、半透性被膜を横切って構築される浸透圧勾配に寄与してもよい。前記物質は、担体材料又は担体材料の組み合わせから製造される。該担体材料は、いかなる溶解度、又は、不溶性であり、ショ糖又はデンプンのような生物学的に許容な材料である。典型的な担体材料は、JRS Pharma LP(Patterson,NY.)によって製造される均一な直径を有するSugar Spheres NFのようなNON−PAREIL(登録商標)シーズである。
【0030】
ビーズの選択的な実施態様において、不活性物質は、可溶化剤か、結合剤又は担体と混合された可溶化剤との組み合わせか、クロザピン粒子か、又は、結合剤又は担体かと混合したクロザピン粒子との組み合わせによって代替される。
【0031】
製剤の他の実施態様において、例えば、不活性物質は、例えば圧縮錠又はマトリックス錠において省かれてもよい。
【0032】
放出制御クロザピン組成物は可溶化剤を含む。可溶化剤は、使用環境液体中でクロザピン粒子を溶解するに十分な種類と量が存在する。前記のように、放出制御組成物に浸透する液体中で可溶化剤は溶解させる。溶解した可溶化剤の存在は、クロザピン粒子(環境液体中で難溶性又は本来低溶解性である)を溶解するためのメカニズムを提供する。
【0033】
種々の製剤の実施態様に従って、可溶化剤は、結合剤と混合されビーズのコア部分を形成するか、不活性物質(例えば、糖スフェア・コア)の周囲に隣接して配置される層であるか、薬物層と半透膜の間に配置されるか、又は、製剤が圧縮錠又はマトリクス錠の場合に組成物の他の成分と混合される。
【0034】
可溶化剤がビーズの別の層の周囲を囲うか配置される層の場合の前記実施態様において、溶解層は、小さな欠け、割れ目、ひび、隙間又は穴を有しても良く、完全かつ全部囲まれている必要はないものと想定される。
【0035】
一部の実施態様において、可溶化剤は、界面活性剤、又は、pH調節剤である。
【0036】
界面活性剤が可溶化剤である実施態様において、コロイドの自己会合構造の形成ではあるが、クロザピン粒子の溶解性の向上、又は、ミセルの形成の向上によってクロザピンを溶解するメカニズムが理論化される。クロザピンが別の面で本来低溶解度の液体にクロザピンを溶解するメカニズムの提供によって、本発明の放出制御クロザピン組成物は、環境液体でのクロザピンの本来の溶解度で定義されるよりも高濃度のクロザピン溶液を使用環境に送達する。
【0037】
ミセルは、自発的に会合する疎水性及び親水性部分を有する分子(いわゆる両親媒性分子)の水溶解性凝集体である。このようなミセルは、小さなスフェア、楕円、長円柱の形態が可能であり、両親媒性の2つの平衡な層の2層からなることもできる。このような内部の水性コンパートメントを有する球形ベシクルの形を一般的にとる。特定の界面活性剤は、部分的に、固定したクロザピン量を溶解するのに必要な界面活性剤量であるミセル取り込み率に基づいて選択される。
【0038】
典型的に、界面活性剤は、イオン性(例えば、陰イオン性、陽イオン性、及び、両イオン性)、及び、非イオン性界面活性剤を含む。典型的に、陰イオン性(硫酸、スルホン酸又はカルボキシアニオンに基づく)界面活性剤は、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、ラウリル硫酸アンモニウム、ラウリル硫酸ナトリウム(SLS)及び、他のアルキル硫酸塩類、エーテル硫酸ナトリウム(SLES)としても知られるラウレス硫酸ナトリウム、アルキルベンゼン硫酸塩、種々の石鹸類、脂肪酸塩を含む。典型的な陽イオン性(4級アンモニウム陽イオンに基づく)界面活性剤は、セチルトリメチルアンモニウム臭素塩(CTAB)別名臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、及び、他のアルキルトリメチルアンモニウム塩類、塩化セチルピリディニウム(CPC)、ポリエトキシル化獣脂アミン(POEA)、塩化ベンンザルコニウム(BAC)、及び、塩化ベンゼトニウム(BZT)を含む。典型的な両イオン性(両性)界面活性剤は、ドデシルベタイン、ドデシルジメチルアミンオキシド、コカミドプロピルベタイン、及び、ココナッツ両性グリシン塩を含む。典型的な非イオン性界面活性剤は、アルキルポリ(エチレンオキシド)、ポリ(エチレンオキシド)共重合ポリマー、ポリ(プロピレンオキシド)(商品名Poloxamer又はPolosamine)、オクチルグルコシド及びデシルマルトシドを含むポリグルコシド、セチルアルコール、オレイルアルコール、コカミドMEA、コカミドDEA及びポリソルベート類;商品名Tween(登録商標)、ICI Americas社、を含む脂肪アルコール類を含むが、これらに限定されない。
【0039】
適切な界面活性剤の選択は、イオン化可能な置換基、pKa値、溶解度及びpH−溶解プロフィール、塩形成特性、疎水性、分子サイズ、錯体形成特性、化学的安定性などのクロザピンの物理化学的性質の存在や種類、並びに、投与量及びクロザピンの送達環境についての考慮を基にして決定される。もし、界面活性剤が可溶化剤として使用されるならば、界面活性剤は、疎水性及びクロザピンの分子サイズ並びにミセル化によってクロザピンを溶解する界面活性剤の能力、分子包摂、ハイドロトロピー、錯体形成又は分子会合を基に選択される。クロザピンは、2つの弱い塩基性イオン化可能な置換基を含むため、追加的に、界面活性剤の選択は、pH−荷電溶解プロフィール及び界面活性剤によって運ばれる荷電を考慮することによって選択される。適切な界面活性剤の同定は、クロザピンの溶解度、化学的安定性に対するイン・ビトロスクリーニングの当業者に公知の技術の使用により決定される。
【0040】
前記界面活性剤は、前記組成物に浸透する環境液体でのクロザピンの溶解性を高めるのに十分な量が組成物中に存在する。
【0041】
前記界面活性剤は、前記組成物の重量に対して約1%、約3%、約5%、約7%、約10%、約12%、約14%、約17%、約18%、約19%、約20%、約21%、約22%、約23%、約24%、約25%、約26%、約27%、約28%、約29%、約30%、約32%、約34%、約36%、約38%、約40%、約43%、約46%、約49%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、及び、約90%から存在する。組成物中の界面活性剤の量は、上記リストに記載された個別の百分率の間の範囲で表されてもよい。
【0042】
実施態様において、前記可溶化剤はpH調節剤であり、クロザピン粒子を溶解するメカニズムは、放出制御クロザピン組成物の中で環境液体pHを調節することによると理論化される。前記pH調節剤は、前記放出制御クロザピン組成物に入った液体のpHに対してクロザピンの電離化を助け、それによってクロザピン(さもなければ、本来、その溶液中で低溶解性である)の溶解を許容するように前記液体のpHを調節する。溶解されたクロザピンは、半透性被膜の細孔を通り抜けて、製剤から溶解前の種類の使用環境へ出る。
【0043】
好ましくは、pH調節剤は、薬学的に許容可能な有機又は無機の弱酸である。
【0044】
前記実施態様において、pH調節剤は、酸、少なくとも1種、場合によっては2種以上の有機酸であり、pH調節剤として存在する。前記放出制御クロザピン組成物の所望の送達プロフィールに依存して、3種以上のpH調節剤が想定される。典型的なpH調節剤である有機酸の種類は、アジピン酸、アスコルビン酸、クエン酸、フマル酸、没食子酸、グルタル酸、乳酸、リンゴ酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、及び、WO01/032149に記載され引用により本明細書に取り込まれる経口投与の医薬組成物調製における使用に好適な他の有機酸を含むが、これらに限定されない。
【0045】
本発明の放出制御クロザピン組成物をサポートするために診断の処方モデルシステムが確立された。本モデルシステムは、半透膜、ナノ微粒子クロザピン粒子、及び、可溶化剤を包含する。本モデルシステムは、本発明の放出制御クロザピン組成物のサポートに必要かもしれないイン・ビトロ放出実験で相違し、広範な種類の変更処方への対処に柔軟性を提供するために多面的特性によって設計された。
【0046】
図4において、異なったpH調節剤、特に、酒石酸、フマル酸、リンゴ酸、及び、コハク酸の、本モデルシステムの使用によって得られた経時的なクロザピンの放出百分率に対する効果が示される。
【0047】
適切なpH調節剤の選択は、イオン化可能な置換基の数と種類、置換基のpKa値、pH−溶解プロフィール、塩形成特性、ksp、化学的安定性などの関連するクロザピンの物理化学的性質、及び、用量並びにクロザピンの送達環境に基づきなされる。クロザピンは、弱塩基性置換基を2つ含むため、pH調節剤は、典型的には、弱塩基性クロザピン置換基の1つ又は両方のpKa値よりも好ましくは1 log単位低いpKa値を有する有機又は無機の弱酸である。もし、クロザピンとpH調節剤の間の塩形成が可能であるならば、高い溶解度積定数(ksp)を有する塩を形成する可溶化剤が好ましい。
【0048】
前記pH調節剤は、前記組成物に浸透する環境液体中のクロザピンの溶解度を向上させるのに十分な量が、前記組成物に存在する。前記pH調節剤は、組成物の重量に対して、約1%、約3%、約5%、約7%、約10%、約12%、約14%、約17%、約20%、約22%、約25%、約27%、約30%、約31%、約32%、約33%、約34%、約35%、約36%、約37%、約38%、約39%、約40%、約41%、約43%、約46%、約49%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、及び、約90%から存在する。組成物中のpH調節剤の量は、上記リストの個別のいかなる百分率の間の範囲として表されてもよい。
【0049】
図5は、図4のモデルシステムと一致し、pH調節剤、特に、酒石酸の量の、クロザピンの経時的放出百分率に対する効果を表す。図5において、pH調節剤の量は、放出制御製剤におけるクロザピンの相対モル比として表される。
【0050】
一部の実施態様において、使用される同一環境において本来のクロザピンの溶解度によって定義されるよりも高い濃度のクロザピン溶液の使用環境を本組成物は提供する。換言すれば、本発明の放出制御クロザピン組成物は、同一環境液体でのクロザピンの本来の溶解度と比較したときに有効な過飽和の溶液形態のクロザピンの環境への送達を可能とする。
【0051】
もう1つの実施態様において、本発明の典型的な組成物は、クロザピンUSP錠のような商業的に利用可能なクロザピン速放錠の使用で到達するよりも高濃度のクロザピン溶液を、その使用環境へ送達する。
【0052】
本発明の放出制御クロザピン組成物は、使用環境で、クロザピンの本来の溶解度、又は、クロザピンUSP錠のような商業的に利用可能なクロザピン速放錠の使用で到達するクロザピンの溶解度の101%、102%、103%、104%、105%、106%、107%、108%、109%、100%、110%、120%、130%、140%、150%、160%、170%、180%、190%、200%、210%、220%、230%、240%、250%、260%、270%、280%、290%、300、310%、320%、330%、340%、350%、360%、370%、380%、390%、400%、410%、420%、430%、440%、450%、460%、470%、480%、490%、500%、510%、520%、530%、540%、550%、560%、570%、580%、590%、600%、700%、800%、又は、1000%の濃度に溶解されたクロザピンを提供する。
【0053】
換言すれば、本発明の放出制御クロザピン組成物は、使用環境での本来の溶解度、又は、商業的に利用可能なクロザピンUSP速放錠によって到達される溶解度の1.00、1.25、1.50、1.75、2.00、2.25、2.50、2.75、3.00、3.25、3.50、3.75、4.00、4.25、4.50、4.75、5.00、5.25、5.50、5.75、6.00、6.25、6.50、6.75、7.00、7.25、7.50、7.75、8.00、8.25、8.50、8.75、9.00、9.25、9.50、9.75、又は、10.0倍のクロザピンを送達することができる。
【0054】
クロザピンは、IUPAC名が8−クロロ−11−(4−メチルピペラジン−1−イル)−5H−ジベンゾ[b,e][1,4]ジアゾピンであり、統合失調症の処置に使用される抗精神病薬である。クロザピンは、統合失調症の標準的な薬物治療に不適応な重症統合失調症の管理に適用される。クロザピンは、黄色、結晶性粉体で、水に対して難溶性である。非典型抗精神病薬に分類される3環性ジベンゾジアゼピンである。中枢神経系受容体のいくつかの種類に結合し、特異的な薬理学的プロフィールを示す。クロザピンは、5−HT 2A/2C受容体サブタイプに強く結合するセロトニン拮抗薬である。クロザピンは、いくつかのドーパミン受容体に強い親和性を示すが、精神安定活性を調節すると考えられる一般的な受容体、ドーパミンD2受容体に対しては、弱い拮抗作用しか示さない。
【0055】
前記組成物でのクロザピン量は、重量で約10%から約90%の範囲、例えば20%と40%の間である。ある実施態様において、クロザピン量は、総組成物の重量に対して0.1%、0.5%、0.75%、1%、1.25%、1.5%、1.75%、2%、3%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、及び、90%である。組成物中クロザピン量は、上記リストのいかなる個別百分率の間の範囲として表されてもよい。
【0056】
典型的なクロザピンのミリグラム量は、最終的な放出制御製剤で、1200、600、400、200、175、150、125、120、100、80、75、60、50、40、30、25、20、12.5、又は、10mgである。
【0057】
ビーズを含むカプセル剤の典型的な実施態様において、ビーズは、1又は2層以上の分離層を有してもよい。分離層は、他の成分層からクロザピン層を保護するのに役立つ。典型的な分離層成分は、Opadray(登録商標)の商標名でColorcon社(West Point、PA)から販売される水性フィルムコーティングシステムを含む。
【0058】
本発明のクロザピン粒子は、その表面に吸着された少なくとも1つの表面安定化剤を有する。有用な表面安定化剤は、クロザピン粒子と化学的に反応することなく、ナノ微粒子クロザピン表面に物理的に付着又は結合する。前記表面安定化剤は、使用環境におけるクロザピン粒子の形成及び/又は再分散の間の凝集、又は、集塊を実質的に予防するに十分な量が存在する。本発明の表面安定化剤として好適な化合物は、本発明の可溶化剤としても好適であるかもしれないが、そのような化合物の表面安定化剤としての機能に必要とされる量は、使用環境液体中でのクロザピン粒子の実質的な解離の達成には一般的に不十分である。さらに、ここで定義されるように、本発明の表面安定化剤は、クロザピン粒子の表面に吸着される。
【0059】
典型的な表面安定化剤は、ペプチド及びタンパク質と同様に公知の有機及び無機の医薬品添加剤を含む。そのような添加剤は、種々のポリマー、低分子量オリゴマー、天然物、及び、界面活性剤を含む。有用な表面安定化剤は、非イオン性表面安定化剤、陰イオン性表面安定化剤、陽イオン性表面安定化剤、及び、両イオン性表面安定化剤を含む。1種以上の表面安定化剤の組み合わせが、本発明で使用できる
【0060】
代表的な表面安定化剤の例は、以下の単独又は組み合わせを含む:ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC);スルホコハク酸ジオクチルナトリウム(DOSS);ラウリル硫酸ナトリウム(SLS)別名ドデシル硫酸ナトリウム(SDS);HPC−SLグレード・ヒドロキシプロピルセルロース(粘稠度 2.0−2.9mPa.s、水性2%W/V溶液、20℃、日本曹達株式会社);BASF販売Kollidone(登録商標)K12 別名 ISP Technologies Inc (米国)販売Plasdone(登録商標) C−12、BASF販売Kollidone(登録商標)K17 別名 Technologies Inc (米国)販売Plasdone(登録商標)C−17、BASF販売Kollidone(登録商標)K29/32 別名 Technologies Inc (米国)販売Plasdone(登録商標)C−29/32などのポリビニルピロリドン; デオキシコール酸ナトリウム; 一般的にpoloxamerとして知られPluronic(登録商標)F 68 別名 Poloxamer 188、Pluronic(登録商標) F108、別名 poloxamer 338、Pluronic(登録商標)F 127 別名 poloxamer 407を含むBASF販売商品名Pluronic(登録商標)(欧州で商品名Lutorol(登録商標)で販売)などの名前で販売されているエチレンオキシド及びプロピレンオキシドに基づくブロック共重合体;塩化ベンザコルニウム別名塩化アルキルジメチルベンジルアンモニウム;ISP Technologies,Inc.(米国)によってPlasdone(登録商標)S−630の商品名で販売され、一般に共ポピドンとして知られるビニルピロリドンと酢酸ビニルとの共重合ポリマー;レシチン;ポリオキシエチレン20 ソルビタン モノラルレート 別名「ポリソルベート 20」、ポリオキシエチレン20 ソルビタン モノパルミテート 別名「ポリソルベート40」、ポリオキシエチレン20 ソルビタン モノオレート 別名 「ポリソルベート80」(各々商品名 Tween(登録商標)20、Tween(登録商標)40 及び Tween(登録商標)80でICI Americasにより販売)の名前で一般的に知られるポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類;アルブミン;リゾチーム;ゼラチン;マクロゴール15ヒドロキシステアレート(BASFによりSolutol(登録商標)15として販売);tyloxapol、及び、ポリエトキシル化ひまし油(BASFによりCremophor(登録商標)ELの商品名で販売)が含まれるが、これらに限定されない。
【0061】
他の表面安定化剤は、ヒドロキシプロピルセルロース、ビニルピロリドンとビニル酢酸のランダム共重合ポリマー類、デキストラン、アラビアゴム、コレステロール、トラガカンツ、ステアリン酸、塩化ベンザルニウム、ステアリン酸カルシウム、グリセロールモノステレート、セトステアリルアルコール、セトマクロゴール乳化ワックス、ソルビタンエステル類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類(例えば、セトマクロゴール 1000のようなマクロゴール エーテル類);ポリエチレングリコール類(例えば、Carbowax 3550(登録商標)及び934(登録商標)(Union Carbide)、ポリオキシエチレンステアレート類、コロイド シリコンジオキシド、リン酸類、カルボキシメチルセルロース カルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、非結晶セルロース、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、トリエタノールアミン、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレンオキシド及びホルムアルデヒド含有4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノールポリマー(tyloxapol、superionn、及び、tironとしても知られる); ポロキサミン類(例えば、Tetronic 908(登録商標)、プロピレンオキシドとエチレンオキシドの逐次的付加で誘導される四置換性ブロック共重合ポリマー、BASF Wyandotte社、Parsippany、N.J.); Tetronic 1508(登録商標)(T−1508)(BASF Wyandotte社)、Triton X−200(登録商標) (硫酸アルキルアリールポリエーテル、Dow); Crodestas F−110(登録商標)(ショ糖ステアリン酸とショ糖ジステアリン酸の混合物、Croda Inc.); p−イソノニルフェノキシポリ−(グリシドール)(Olin−10,又は 界面活性剤 10−G(Olin Chemicals、Stamford、Conn.))としても知られる); Crodestas SL−40(登録商標)(Croda Inc.); 及び、SA9OHCO(C18H37CH2C(O)N(CH3)−CH2(CHOH)4(CH20H)2(Eastman Kodak Co.);デカノイル−N−メチルグルカミド;n−デシルβ−D−グルコピラノシド;n−ドデシルβ−D−マルトシド;n−ドデシルβ−D−グルコピラノシド;n−ドデシルβ−D−マルトシド;ヘパタノイル−N−メチルグルカミド;n−ヘプチル−β−D−グルコピラノシド;n−ヘプチル β−D−チオグルコシド;n−ヘキシルβ−D−グルコピラノシド;ノナノイル−N−メチルグルカミド;n−ノイル β−D−グルコピラノシド;オクタノイル−N−メチルグルカミド;n−オクチル−β−D−グルコピラノシド;オクチルβ−D−チオグルコピラノシド;PEG−リン脂質、PEG−コレステロール、PEG−コレステロール誘導体、PEG−ビタミンAなどを含むが、これらに限定されない。
【0062】
有用な表面安定化剤の追加例として、ポリマー類、バイオポリマー類、ポリサッカロイド類、セルロース類、アルギン酸塩類、リン脂質類、塩化ポリ−n−メチルピリジニウム、塩化アントリュール ピリジニウム、カチオン性リン脂質類、キトサン、ポリリジン、ポリビニルイミダゾール、ポリブレン、ポリメチルメタクレート、臭化トリメチルアンモニウム(PMMTMABr)、臭化ヘキシルデシルトリメチルアンモニウム(HDMAB)、及び、ポリビニルピロリドン−2−ジメチルアミノエチルメタクリレートジメチル硫酸を含むが、これらに限定されない。
【0063】
さらに、有用な安定化剤の例として、カチオン性脂質類、スルホニウム、ホスホニウム、及び、4級アンモニウム化合物類、塩化ステアリン酸トリメチルアンモニウム、臭化ベンジル−ジ(2−クロロエチル)エチルアンモニウム、ココナッツ塩化又は臭化トリメチルアンモニウム、ココナッツ塩化又は臭化ジヒドロキシエチルアンモニウム、塩化デシルトリエチルアンモニウム、塩化又は臭化デシルジメチルヒドロキシエチル アンモニウム、塩化又は臭化C12−15ジメチルヒドロキシエチルアンモニウム、ココナッツ塩化又は臭化ジメチルヒドロキシエチルアンモニウム、ミリスチルトリメチルアンモニウムメチル硫酸、塩化又は臭化ラウリルジメチルベンジルアンモニウム、塩化又は臭化ラウリルジメチル(エテノキシ)4アンモニウム、塩化N−アルキル(C12−18)ジメチルベンジルアンモニウム、塩化N−アルキル(C14−18)ジメチルベンジルアンモニウム、塩化N−テトラデシリドメチルベンジルアンモニウム1水和物、塩化ジメチルジデシルアンモニウム、塩化N−アルキル及び(C12-14)ジメチル1−ナルフチルメチルアンモニウム、トリメチルアンモニウムハライド、アルキル−トリメチルアンモニウム塩類及びジアルキル−ジメチルアンモニウム塩類、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、エトキシル化アルキルアミドアルキルジアルキルアンモニウム塩及び/又はエトキシル化トリアルキルアンモニウム塩、塩化ジアルキルベンゼンジアルキルアンモニウム、塩化N−ジデシルメチルアンモニウム、塩化N−テトラデシルジメチルベンジルアンモニウム1水和物、塩化N−アルキル(C12-14)ジメチル1−ナフチルメチルアンモニウム及び塩化ドデシルメチルベンジルアンモニウム、塩化ジアルキルベンゼンアルキルアンモニウム、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化アルキルベンジルメチルアンモニウム、臭化アルキルベンジルジメチルアンモニウム、臭化C12、C15、C17トリメチルアンモニウム類、塩化ドデシルベンジルトリエチルアンモニウム、塩化ポリ−ジアリルジメチルアンモニウム(DADMAC)、塩化ジメチルアンモニウム類、ハロゲン化アルキルジメチルアンモニウム類、塩化トリセチルメチルアンモニウム、臭化デシルトリメチルアンモニウム、臭化ドデシルトリエチルアンモニウム、臭化テトラデシルトリメチルアンモニウム、塩化メチルトリオクチルアンモニウム(商品名ALIQIAT(登録商標)336、Henkel Corporation)、Polyquaternium−10、臭化テトラブチルアンモニウム、臭化ベンジルトリメチルアンモニウム、コリンエステル類(脂肪酸類のコリンエステル類等)、塩化ベンザルコニウム、塩化ステアラルコニウム化合物類(塩化ステアリルトリモニウム及び塩化ジステアリルジモニウム等)、臭化又は塩化セチルピリジウム、ポリオキシエチルアルキルアミン4級アミンハロゲン塩類、アルキルピリジニウム塩類;アミン類(アルキルアミン類、ジアルキルアミン類、アルカノルアミン類、ポリエチレンポリアミン類、N,N−ジアルキルアミノアルキルアクリレート類、及び、ビニルピリジン等)、アミン塩類(ラウリルアミンアセテート、ステアリルアミンアセテート、アルキルピリジニウム塩、及び、アルキルイミダゾリウム塩)、及び、アミンオキシド類;イミトアゾリニウム塩類;水素化4級アクリルアミド類;メチル化4級ポリマー類(塩化ポリ[ジアリルジメチルアンモニウム]及び塩化ポリ−[N−メチルビニルピリジウム]等);並びに、カチオン性グアールを含むが、これらに限定されない。
【0064】
追加の典型的な表面安定化剤は、「医薬品添加剤ハンドブック」(米国医薬品協会及び英国医薬品協会共同発行、医薬出版2005)に詳細に記載されている。表面安定化剤は、商業的に利用可能であり、及び/又は、公知技術によって調製可能である。典型的な表面活性化剤類の紹介は、McCutcheon「界面活性剤及び乳化剤」(Allied出版会社、New Jersey,2004、及び、Van Os、Haak及びRupert,「Pysico−chemical Properties of Selected Anionic,Cationic and Nonionic Surfactants」Elsevier,アムステルダム、1993;Analytical and Biological Evaluation (Marcel Dekker,1994);P.and D.Rubingh編「カチオン性界面活性剤:生理化学(Marcel Dekker,1991);及び、J.Richmond「カチオニック界面活性剤:有機化学」(Marcel Dekker,1990);これらは全て引用として取り込まれる。
【0065】
ナノ粒子の典型的な製造方法は、米国特許5145684号公報に記載されており、本明細書において、引用により全ての内容は取り込まれる。粒子径の減少工程での破砕時間や添加表面安定化剤の量の調節による制御によって、所望とする本発明の有効平均粒子径を、取得可能である。結晶の成長及び粒子の凝集は、破砕操作又はより低温下での組成物の沈殿、サイズ減少後の表面安定化剤の存在又は添加での破砕操作によって、及び、最終組成物をより低温で貯蔵することにより最小化することができる。
【0066】
ナノ粒子の分散体を得るための水溶液中でのクロザピンの破砕操作は、水溶液中でのクロザピンの分散操作を含み、その後、所望の有効平均サイズまで化合物の粒子径を減少するための研磨操作の存在下、機械的手段の適用が続く。クロザピンは、有効に表面安定化剤の存在下粒子径を減少できる。代替的に、クロザピンは、摩耗後2種以上の表面安定化剤と接触可能である。バルク剤のような他の化合物は、粒子径減少工程で、クロザピン/表面安定化剤混合物へ添加することが可能である。分散剤は、持続的に、又は、バッチモードで製造可能である。分散ナノ微粒子クロザピン結果物は、スプレー乾燥及び所望される製剤に調製できる。
【0067】
典型的に有用なミルは、ローラーミル、摩耗ミル、振動性ミル、ボールミルなどの低エネルギーミル、及び、ダイノミル類、Netzschミル類、DCミル類、プラネタリミルなどの高エネルギーミルを含む。メディアミルは、サンドミル及びビーズミルを含む。メディアミルにおいて、クロザピンは、分散溶媒(例えば、水)、及び、少なくとも2つの表面安定化剤を伴うリザーバーに入れられる。該混合物は、溶媒と回転するシャフト/羽根車を含むチャンバーを通して、再循環される。回転しているシャフトは、前記化合物に衝撃とシア力を与え、それによって粒子径を減少させる媒体を攪拌する。
【0068】
典型的な研磨剤は、基本的にポリマー樹脂からなるビーズなどの、実質的に形態が球形の媒体を含む。もう1つの実施態様において、研磨剤は、表面上にポリマー樹脂の被膜を有するコアからなる。他の研磨剤の例は、ガラス、金属オキシド、又は、セラミックからなる基本的に球形の粒子からなる。
【0069】
一般的に、適切なポリマー樹脂は、化学的及び物理的に不活性で、実質的に金属、溶剤、モノマーを含まず、十分な硬度で、研磨中に欠け潰れを回避可能な破砕性のモノマーである。好ましいポリマー樹脂は、限定されないが、ジビニルベンゼンとの交叉連結ポリスチレンなどの交叉連結ポリスチレン類;例えば、PolyMill(登録商標)(Elan Pharma International Ltd.)などのスチレン共ポリマー類;ポリカーボネート類;例えば、Delrin(登録商標)ミル溶媒(E.I.du Pont de Nemours and Co.)のポリアセタール類;塩化ビニルポリマー類、及び、共ポリマー類;ポリウレタン類;ポリアミド類;例えば、テフロン(登録商標)ポリマー(E.I.du Pont de Nemours and Co.)及び、他のフッ素化ポリマー類のポリ(テトラフルオロエチレン)類;高密度ポリエチレン類;ポリプロピレン類;酢酸セルロースのようなセルロースエーテル類及びエステル類;ポリヒドロキシメタクリレート;ポリヒドロキシエチルアクリレート;及び、ポリシロキサン類などのシリコン含有ポリマー類を含む。前記ポリマーは生分解性であることができる。典型的な生分解性ポリマー類は、ポリ(ラクチド)類、ラクチド類及びグリコリドのポリ(グリコリド)共ポリマー類、ポリ無水物類、ポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ(イミノカーボネート)類、ポリ(N−アシルヒドロキシプロリン)エステル類、ポリ(N−パルミトイルヒドロキシプロリン)エステル類、エチレンービニルアセテート共ポリマー類、ポリ(オルトエステル)類、ポリ(カプロカクトン)類、及び、ポリ(ホスファゼン)類を含む。生分解ポリマー類に対して、溶媒自体からの夾雑物は、生体から除去可能で生体に許容可能な産物へインビボにおいて好都合に代謝可能である。
【0070】
研磨剤は、好ましくは、約10μmから約3mmまでの範囲の粒子径である。微細研磨に対しては、典型的に研磨剤は約20μmから約2mmまでである。他の1つの実施態様において、典型的な研磨剤は、約30μmから約1mmまでの粒子径である。もう1つの実施態様において、研磨剤は約500μmの粒子径である。ポリマー樹脂は、約0.8から3.0g/mlまでの密度を有することが可能である。
【0071】
もう1つの所望するナノ微粒子クロザピンの形成方法は、微量沈降法による。微量の有毒溶媒や溶解した重金属不純物を含まない表面安定化剤、及び、1種以上のコロイド安定性増加剤の存在下、クロザピンの安定な分散体を調製する方法である。典型的な方法は、以下のステップを含む:(1)適切な溶媒に化合物を溶解すること;(2)ステップ(1)からの処方を透明溶液を形成するために表面安定化剤からなる溶液に添加すること;及び、(3)適切な非溶媒を使用し、ステップ(2)からの処方を沈降させること、を含む。該方法は、もし存在するならば、透析又は透析濾過及び従来の手段での分散の濃縮によっていかなる塩形成物の除去を次に続けることができる。結果としてのナノ微粒子クロザピン分散は、スプレー乾燥、及び、所望とされる製剤に処方可能である。
【0072】
もう1つの所望するナノ微粒子クロザピンの形成方法はホモジナイズ法による。沈降法のように、本技術は、破砕手段を使用しない。代わりに、クロザピン、表面安定化剤(類)及び担体−−前記「混合物」(又は、代替的な実施態様において、クロザピン、及び、粒子径の低減後に添加された表面安定化剤を伴う担体)は、Microfluidizer(登録商標)スプレー(Microfluidics Corp.)の中でインターアクションチャンバーと呼ばれる加工ゾーンへ送られる加工工程からなる。処理される混合物は、ポンプに誘導され、その後、押し出される。Microfluidier(登録商標)の起動弁はポンプ外へ空気を抜く。一旦前記混合物でポンプが満たされれば、起動弁は閉じられ、混合物は前記インターアクションチャンバーを通過させられる。前記インターアクションチャンバーの配置は、粒子径を減少する強いシア力、衝撃、及び、キャビテーションを生む。インターアクションチャンバーの中において、加圧された混合物は2つの流れに分けられ超高速まで加速される。該形成された噴流は、それぞれの方向に向けられ、反応ゾーンで衝突する。結果として製造物は、非常に微細で単一な粒子径を有する。
【0073】
前記の典型的ないずれかの技術で形成されるクロザピン粒子の分布は、有効平均粒子径が約2000nm(2μm)又はそれ未満、約1900nm又はそれ未満、約1800nm又はそれ未満、約1700nm又はそれ未満、約1600nm又はそれ未満、約1500nm又はそれ未満、約1400nm又はそれ未満、約1300nm又はそれ未満、約1200nm又はそれ未満、約1100nm又はそれ未満、約1000nm(1μm)又はそれ未満、約900nm又はそれ未満、約800nm又はそれ未満、約700nm又はそれ未満、約600nm又はそれ未満、約500nm又はそれ未満、約400nm又はそれ未満、約300nm又はそれ未満、約200nm又はそれ未満、約150nm又はそれ未満、約100nm又はそれ未満、約75nm又はそれ未満、及び、約50nm又はそれ未満である。
【0074】
クロザピン粒子の分布はD90によっても特徴付けされる。本発明の実施態様に従ったクロザピン粒子の分布のD90は、約5000nm又はそれ未満、約4900nm又はそれ未満、約4800nm又はそれ未満、約4700nm又はそれ未満、約4600nm又はそれ未満、約4500nm又はそれ未満、約4400nm又はそれ未満、約4300nm又はそれ未満、約4200nm又はそれ未満、約4100nm又はそれ未満、約3000nm又はそれ未満、約3900nm又はそれ未満、約3800nm又はそれ未満、約3700nm又はそれ未満、約3600nm又はそれ未満、約3500nm又はそれ未満、約3400nm又はそれ未満、約3300nm又はそれ未満、約3200nm又はそれ未満、約3100nm又はそれ未満、約3000nm又はそれ未満、約2900nm又はそれ未満、約2800nm又はそれ未満、約2700nm又はそれ未満、約2600nm又はそれ未満、約2500nm又はそれ未満、約2400nm又はそれ未満、約2300nm又はそれ未満、約2200nm又はそれ未満、約2150nm又はそれ未満、約2100nm又はそれ未満、約2075nm又はそれ未満、約2000nm(2μm)又はそれ未満、約1900nm又はそれ未満、約1800nm又はそれ未満、約1700nm又はそれ未満、約1600nm又はそれ未満、約1500nm又はそれ未満、約1400nm又はそれ未満、約1300nm又はそれ未満、約1200nm又はそれ未満、約1100nm又はそれ未満、約1000nm(1μm)又はそれ未満、約900nm又はそれ未満、約800nm又はそれ未満、約700nm又はそれ未満、約600nm又はそれ未満、約500nm又はそれ未満、約400nm又はそれ未満、約300nm又はそれ未満、約200nm又はそれ未満、約150nm又はそれ未満、約100nm又はそれ未満、約75nm又はそれ未満、及び、約50nm又はそれ未満である。
【0075】
前記放出制御クロザピン組成物は、薬物、動物生体、又は宿主へ悪影響を与えない1種以上の半透性被膜を有する。該半透性被膜は実質的に放出制御クロザピン組成物の外へのクロザピン粒子の通過を阻止し、一方、該組成物の内部から放出される溶解クロザピンの通過を許容する。1つの実施態様において、前記半透性被膜は、前記組成物の最外層にある。
【0076】
前記半透性被膜は、放出制御クロザピン組成物において、放出制御クロザピン組成物の総重量に対して、クロザピン1%から50%の範囲の量、その間の量、例えば、1%、3%、5%、7%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、22%、25%、30%、35%、40%、及び、50%の量で存在する。半透性被膜の前記量は、前記リスト化された百分率のいかなる個々の値の間の範囲で表されてもよい。
【0077】
一部の実施態様において、前記半透性被膜は、微多孔制御被膜、1種以上の水膨潤性ポリマー又はそれらの組み合わせである。
【0078】
前記微多孔制御被膜は以下を含む:(1)使用環境で不溶性のポリマーと、(2)使用環境中で可溶性で微細孔被膜中に分散する細孔形成剤と、任意に、(3)他の添加剤とを含む。微多孔制御被膜の適切な典型例は、WO2001/032149公報に記載され、本明細書に取り込まれる。
【0079】
前記微多孔制御被膜は、走査電子顕微鏡で観察すると不連続な織り込まれた空隙のネットワークを形成する無数の開放及び閉じた小室で組成されたスポンジ様構造のように視覚的に見える。微多孔制御被膜の物理的性質、すなわち、開放及び閉鎖小室のネットワークは、環境液体の入口及び溶解したクロザピンの出口の両方として役立つ。微多孔制御被膜の両面上に開放されている(すなわち、内部表面は放出制御クロザピン組成物の中心に面し、外部表面は使用環境に面する)前記細孔は、連続的な細孔であることが可能である。前記細孔は、曲がりくねったり、部分的に曲がりくねったり様々な方向を向いた連続した細孔であり、さえぎられてつながった細孔であることもあり、及び、顕微鏡観察により識別可能なその他の多孔質通路であることもある、規則的及び不規則的な形状の曲がりくねった通路を通じて相互につながった細孔であることもある。一般に、微多孔制御被膜は、細孔の大きさ、細孔の数、微細孔多孔質被膜の曲がりの程度及び細孔の大きさと数に関連する多孔度によって定義される。微細孔多孔質被膜の細孔の大きさは、電子顕微鏡の下で、材料の表面に観察される細孔の直径を測定することによって容易に確認される。一般的には、約5%から約95%の細孔を有し、約10オングストロームから約100ミクロンの大きさの細孔を有する材料が使用できる。前記微多孔制御被膜は、使用環境において構築されるように、小さな溶質反射係数σを有し、そして、標準的な浸透性小室におかれた場合に、弱い半透性の特性を示す。
【0080】
使用環境中で不溶性の微多孔制御被膜を含む典型的なポリマーは、セルロースポリマー類と、メタクリレート類と、フタレート類とを含む。
【0081】
より特徴的には、典型的なポリマー類は、ポリマーの無水糖単位上の置換基が置換された水酸基の平均数を意味する置換度D.S.が1以下であってアセチル基量21%以下を有する酢酸セルロース類;1から2のD.S.であってアセチル基量21から35%を有する二酢酸セルロース;2から3のD.S.であってアセチル基量35及び44.8%を有する三酢酸セルロース;1.5から7%のアセチル量であり、39.2及び45%のプロピオニル基量で2.8から5.4%の水酸基量を有するプロピオン酸セルロース;1.8のD.S.であり、13から15%のアセチル基量及び34から39%のビチリル基量の酢酸ブチル酸セルロース;アセチル基量2から99.5%、ブチリル基量17から53%、及び、0.5から4.7%の水酸基量の酢酸セルロース;三吉草酸セルロース、三ラウリル酸セルロース、三パルミチン酸セルロース、三コハク酸セルロース、三ヘプチル酸セルロース、三カプリル酸セルロース、三オクタン酸セルロース及び三プロピオン酸セルロースなどのD.S.2.9から3の三酢酸セルロース類;二カプリル酸セルロース及び二ペンタン酸セルロースなどの2.2から2.6のD.S.を有する二アシルセルロース類を生じる対応する三エステルの加水分解によって製造される低置換度の二エステルセルロース類、並びに酢酸吉草酸セルロース、酢酸コハク酸セルロース、プロピオン酸コハク酸セルロース、酢酸オクタン酸セルロース、吉草酸パルミチン酸セルロース、酢酸パルミチン酸セルロース及び酢酸ヘプタン酸セルロースなどの、同一のセルロースポリマーに結合する異なったアシル置換基を含むエステル類をエステル化反応中で生じる無水アシル類又はアシル酸から製造されるエステル類を含む。
【0082】
追加的な典型的なポリマー類は、酢酸アセト酢酸セルロース、酢酸塩化酢酸セルロース、フロ酸酢酸セルロース、ジメトキシエチル酢酸セルロース、カルボキシメトキシプロピオン酸酢酸セルロース、安息香酸酢酸セルロース、ブチル酸ナフチル酸セルロース、メチルシアノエチル酢酸セルロースメチルセルロース、酢酸メトキシ酢酸セルロース、酢酸エトキシ酢酸セルロース、ジメチルスルファミン酸酢酸セルロース、エチルセルロース、ジメチルスルファミン酸エチルセルロース、パラトルエンスルホン酸酢酸セルロース、メチルスルホン酸酢酸セルロース、ジプロピルスルファミン酸酢酸セルロース、ブチルスルホン酸酢酸セルロース、ラウリル酸酢酸セルロース、ステアリン酸セルロース、メチルカルバミン酸酢酸セルロース、酢酸カンテン、三酢酸β―グルカン酢酸アミロース、三酢酸βグルカン、ジメチル酢酸アセトアルデヒド、酢酸エチルカルバミン酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース、酢酸ジメチルアミノ酢酸セルロース、酢酸エチルカルバミン酸セルロース、ポリ(ビニルメチル)エーテル共ポリマー類、酢酸エチレンビニルが水酸化されたアセチル化水酸化エチルセルロースの酢酸セルロース、ポリオルトエステル類、ポリアセタール類、半透性のポリグリコール又はポリアクチック酸及びそれらの誘導体類、選択的透過性を伴うポリ電解質類、アクリル酸及びメタクリル酸並びにそれらのエステル類のポリマー類、大気温で重量比1から50%の水を吸着する、好ましくは30%未満の水を吸着するフィルム形成材料類、アシル化ポリサッカロイド類、アシル化澱粉類、水透過性を示すポリマー材料を含む芳香性窒素、ポリマーエポキシド類から製造される膜類、アルキレンオキシド類及びアルキルグリシジルエーテル類の共ポリマー類、ポリウレタン類などを含む。種々のポリマー類の混合物を使用してもよい。
【0083】
前記ポリマー類は、公知技術で調整できるか、Encyclopedia of Polymer Science and Technology,Vol.3,p325−354、459と549(Intersicence Publishers、Inc.New York出版)、Scott J.R.、Roff,W.J.著”Handbook of Common Polymers”(CRC Press,Cleveland,Ohio出版)、及び、米国特許3133132号;3173876号;3276586号;3541055号;3541006号;及び、3546142号公報のに説明される手順に従って調製できる。
【0084】
細孔形成添加剤は、制御放出微細孔被膜の多孔性を定義する。システムのオペレーション中において、微細孔形成を目的に細孔形成添加剤の溶解又は浸出による除去によって放出制御微細孔被膜の多孔性がその位置に形成される場合がある。細孔は、前記被膜の最終形体で空隙と細孔を形成する硬化ポリマー溶液中でのガス形成によってシステムのオペレーションの前に形成されてもよい。
【0085】
使用環境での典型的な細孔形成添加剤溶液は、典型的な実施態様に従って、登録商標「Opadray」(Colorcon Inc.,West Point,PA)として販売されている細孔形成添加剤である。
【0086】
他の実施態様に従えば、前記細孔形成添加剤は、これらに限定されないが、HPMC,PVP,多価アルコール類、又は、糖類を含む。
【0087】
また、他の実施態様において、前記細孔形成添加剤は、無機又は有機化合物である。本発明のための適切な前記細孔形成添加剤は、前記ポリマーの化学変化を伴わずに抽出可能な細孔形成添加剤を含む。固体の添加剤は、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸カリウム、リン酸カリウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、硝酸カリウムなどのアルカリ金属塩類を含む。塩化カルシウム、硝酸カルシウムなどのアルカリ土類金属塩類。塩化第二鉄、硫酸第一鉄、硫酸亜鉛、塩化第二銅などの遷移金属塩類。水が細孔形成として使用されてもよい。これらの細孔形成添加剤は、糖類などの有機化合物を含む。該糖類は、砂糖ショ糖、ブドウ糖、フルクトース、マンノース、ガラクトース、アルドヘキソース、アルトロース、タロース、乳糖、単糖類、二糖類、及び、水溶性多糖類を含む。また、他価アルコール類、ポリ(アルキレングリコール類)、アルキレングリコール類、ポリ(単−共)アルキレンジオール類、エステル類又はアルキレングリコール類、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、及び、水溶性ポリマー材料を典型とするジオール類とポリオール類を含むソルビトール、マンニトール、有機脂肪族及び芳香族アルコール類。ポリマー溶液中での構成成分の揮発によって、又は、コア団へのポリマー溶液の適用の前又は適用中に気体を放出する該溶液中での化学反応によって、本発明の微細孔被膜として役に立つポリマー発泡体の製造に結びつき、微細孔被膜中に細孔が形成されてもよい。前記細孔形成添加剤は無毒性であり、これらの除去で、液体で満たされるトンネルを形成する。1つの好ましい実施態様において、前記無毒性細孔形成添加剤は、無機及び有機塩類、糖類、ポリアルキレングリコール類、ポリ(単−共)アルキレンジオール類、アルキレングリコール類のエステル類、及び、生物的環境において使用されるグリコール類からなる群から選択される。
【0088】
微細孔被膜を調製する工程は、R.E.Kesting著「Synthetic Polymer Membranes」第4、5章、1971年 McGraw Hill、Inc.出版;「Chemical Reviews、Ultrafiltration、Vol.18、373−455ページ、1934年;Polymer Eng. And Sci.Vol.11、No.4、284−288ページ、1971年;J.Appl.Poly.Sci.、Vol.15,811−829ページ、1971年;並びに米国特許第3565259号;第3615024号;第3751536号;第3801692号;第3852224号;及び、第3849528号公報に記載されている。
【0089】
前記細孔形成添加剤の微多孔制御被膜中の重量割合は、約0.5%、約0.75%、約1.0%、約1.3%、約1.5%、約1.7%、約1.9%、約2.0%、約2.5%、約3.0%、約3.5%、約4%、約4.5%、約5%、約6%、約7%、約8%、約9%、約10%、約12%、約13%、約15%、約17%、約19%、約21%、約22%、約24%、約26%、約28%、約30%、約32%、約34%、約36%、約38%、約41%、約43%、約45%、約47%、約49%、及び、約50%からである。前記組成物における前記細孔形成添加剤の量が、上記リストのいかなる個別の百分率の間の範囲で表されてもよい。
【0090】
本発明のもう1つの実施態様において、前記半透性被膜は1種以上の水膨潤性ポリマー類を含む。該水膨潤性ポリマー類は、実質的にクロザピン粒子の放出を防止し、一方、同時に、溶解したクロザピンの使用環境中への通過を許容する親水性マトリクスを形成する。これらのポリマー類は、使用環境との接触のときに、液体を吸収し、膨化し、粘着性ゲルを形成する。
【0091】
典型的な前記水膨潤性ポリマーは、ダウ・ケミカル社(米国ミシガン州Midland)によって販売されている水溶解性セルロースエステル類であるMethocel(商標)メチルセルロース及びヒポロメロースシステムを含む。
【0092】
さらなる実施態様において、本発明の放出制御クロザピン組成物は追加の被膜又は層を含む。このような被膜又は層は、本技術分野で公知の遅放性ポリマー又は腸溶性ポリマーを含む。
【0093】
図7は、患者における、典型的な放出制御クロザピン処方(200mg用量)の実施例1に従って調整された定常状態投与における、FazaClo(登録商標)(100mg クロザピンUSP、Azur Pharma、Inc.)1日2回投与の定常状態と比較した薬物動力学平均プロフィールのプロットである。
【実施例】
【0094】
以下の実施例は本発明の種々の実施態様の例示を意図するものである。
実施例1
実施例1は、クロザピン及びpH調節剤を含む典型的な放出制御クロザピンの環境液体中の溶解薬物量を、クロザピンの対照処方、すなわち、商業的利用可能なクロザピンUSP速放錠と比較した場合を示す。
【0095】
クロザピンの水に対する確立した本来の溶解度は0.016mg/mLである。そのpKa値は、3.98と7.62である。pH6.8での理論的計算での飽和溶解度は、0.12mg/mLと算定された。
【0096】
本発明の放出制御クロザピン組成物から環境液体中への送達濃度は、ヒト小腸の環境液体として代表的な37℃でpH6.8の0.1Mリン酸ナトリウム緩衝液で測定された。本実施例の放出制御クロザピンの該処方は下記の表に記載されている。
【0097】
【表1】

【0098】
上記組成のクロザピン200mg、600mg 及び 1200mgの3つの量を試験した。これらの組成物は、USP(711)に準拠し1000mLの0.1Mリン酸ナトリウムpH6.8、apparatusII(2009)、パドル75rpmに設定された。対照実験は、クロザピン200mg、600mg及び 1200mgの速放錠で実施された。本発明の組成物及びクロザピン対照処方の比較溶解結果は下記の表に示す。図6に本成績のグラフ表示を示す。線(1)、 (2)及び (3)は、200mg、600mg及び1200mgのクロザピン対照錠サンプルから得られたプロフィールを表す。線(4)は、クロザピンの名目200mgから得られたプロフィールを表す。線(5)は、クロザピン名目600mgから得られたプロフィールを表す。線(6)は、クロザピン名目1200mgから得られたプロフィールを表す。
【0099】
【表2】

【0100】
対照クロザピン処方の環境液体中での20時間後の測定濃度は、200mg、600mg及び1200mgの試料量で期待された飽和溶解度まで到達しなかった。むしろ、クロザピン対照処方600mg及び1200mgは、それぞれ0.094mg/mL及び 0.102mg/mLの値しか到達しなかった。本発明の放出制御クロザピン組成物からの送達濃度は、pH6.8リン酸緩衝液中で、等量のクロザピン対照処方錠を使用する実験をはるかに上回る濃度に到達した。
【0101】
本発明の放出制御クロザピン組成物の名目200mg試料は、クロザピン濃度0.171mg/mL(理論的飽和溶解度の140%)、又は、等量の対照クロザピン処方錠に対して1.96倍の送達濃度を達成した。
【0102】
本発明の放出制御クロザピン組成物の名目600mg試料は、クロザピン濃度0.453mg/mL(理論的飽和溶解度の371%)、又は、等量の対照クロザピン処方錠に対して4.82倍の送達濃度を達成した。
【0103】
本発明の放出制御クロザピン組成物の名目1200mg試料は、クロザピン濃度0.787mg/mL(理論的飽和溶解度の645%)、又は、同量の対照クロザピン処方錠の7.69倍の送達濃度を達成した。
【符号の説明】
【0104】
100: 多層ビーズ
110: 不活性物質
120: 可溶化剤層
130: ナノ微粒子クロザピン層
135: 溶解中のクロザピン粒子
140: 半透性被膜
142: 細孔
210: 液体
220: 可溶化剤で溶解されたクロザピン
225: 矢印で示されている浸透圧で促進された対流及び/又は受動拡散のクロザピンの流れ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半透性被膜と、クロザピン粒子と、溶解剤とを含む組成物であって、
前記クロザピン粒子は、約2μm又はそれ未満の有効平均粒子径を有し、クロザピン粒子の表面に表面安定化剤が吸着されることを特徴とする、組成物。
【請求項2】
前記半透性被膜は微多孔制御被膜であることを特徴とする、請求項1の組成物。
【請求項3】
前記微多孔制御被膜は、使用環境中で不溶性のポリマーと、使用環境中で可溶性の細孔形成添加剤とを含有することを特徴とする、請求項2の組成物。
【請求項4】
前記ポリマーは、セルロースポリマー類と、メタクリレート類と、フタレート類とからなる群から選択され、前記細孔形成添加剤は、HPMCと、PVPと、多価アルコール類と、糖類とからなる群から選択されることを特徴とする、請求項3の組成物。
【請求項5】
前記細孔形成添加剤の微多孔制御被膜中の重量百分率は、0.5%、1.0%、1.5%、2.0%、2.5%、3.0%、3.5%、4%、4.5%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、12%、13%、15%、17%、19%、21%、22%、24%、26%、28%、30%、32%、34%、36%、38%、41%、43%、45%、47%、49%、及び、50%からなる群から選択されることを特徴とする、請求項3の組成物。
【請求項6】
前記有効平均粒径は、約1900nm又はそれ未満、約1800nm又はそれ未満、約1700nm又はそれ未満、約1600nm又はそれ未満、約1500nm又はそれ未満、約1400nm又はそれ未満、約1300nm又はそれ未満、約1200nm又はそれ未満、約1100nm又はそれ未満、約1000nm又はそれ未満(1μm)、約900nm又はそれ未満、約800nm又はそれ未満、約700nm又はそれ未満、約600nm又はそれ未満、約500nm又はそれ未満、約400nm又はそれ未満、約300nm又はそれ未満、約200nm又はそれ未満、約150nm又はそれ未満、約100nm又はそれ未満、約75nm又はそれ未満、及び、約50nm又はそれ未満からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1の組成物。
【請求項7】
前記クロザピン粒子のD90は、約5000nm又はそれ未満、約4900nm又はそれ未満、約4800nm又はそれ未満、約4700nm又はそれ未満、約4600nm又はそれ未満、約4500nm又はそれ未満、約4400nm又はそれ未満、約4300nm又はそれ未満、約4200nm又はそれ未満、約4100nm又はそれ未満、約3000nm又はそれ未満、約3900nm又はそれ未満、約3800nm又はそれ未満、約3700nm又はそれ未満、約3600nm又はそれ未満、約3500nm又はそれ未満、約3400nm又はそれ未満、約3300nm又はそれ未満、約3200nm又はそれ未満、約3100nm又はそれ未満、約3000nm又はそれ未満、約2900nm又はそれ未満、約2800nm又はそれ未満、約2700nm又はそれ未満、約2600nm又はそれ未満、約2500nm又はそれ未満、約2400nm又はそれ未満、約2300nm又はそれ未満、約2200nm又はそれ未満、約2150nm又はそれ未満、約2100nm又はそれ未満、約2075nm又はそれ未満、及び、約2000nm又はそれ未満からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1の組成物。
【請求項8】
前記表面安定化剤は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)と,ヒプロメロースと、ジオクチルナトリウムスルホコハク酸(DOSS)と,ラウリル硫酸ナトリウム(SLS)と、ヒドロキシプロピルセルロースと、ポリビニルピロリドンと、デオキシコール酸ナトリウムと、エチレン及びプロピレンに基づくブロック共重合体類と、ビニルピロリドン及び酢酸ビニルの共重合体類と、レシチンと、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類と、アルブミンと、リゾチームと、ゼラチンと、マクロゴール15ヒドロキシステアレートと、チロキサポールと、ポリエトキシル化ヒマシ油とからなる群から選択されることを特徴とする、請求項1の組成物。
【請求項9】
請求項1の組成物であって、前記溶解剤は、使用環境へクロザピンを供給する前に、前記組成物中のクロザピン粒子を溶解するために十分な種類及び量が前記組成物中に存在することを特徴とする、請求項1の組成物。
【請求項10】
前記溶解剤は、界面活性剤、又は、pH調節剤であることを特徴とする、請求項9の組成物。
【請求項11】
前記界面活性剤は、陰イオン性、陽イオン性、両イオン性、及び、非イオン性の界面活性剤からなる群から選択される、請求項10の組成物。
【請求項12】
前記溶解剤はpH調節剤であり、使用環境の液体に暴露されるときに、前記組成物中のpH環境を電離型クロザピンに好ましいように調節することを特徴とする、請求項10の組成物。
【請求項13】
前記pH調節剤は、アジピン酸、アスコルビン酸、クエン酸、フマル酸、没食子酸、グルタル酸、乳酸、リンゴ酸、マレイン酸、コハク酸、及び、酒石酸と、それらの混合物又は組み合わせとから選択される弱酸であることを特徴とする、請求項12の組成物。
【請求項14】
前記組成物は、使用環境中のクロザピンの本来の溶解度で定義される濃度よりも高い濃度のクロザピン溶液を前記組成物が使用環境へ供給することを特徴とする、請求項1の組成物。
【請求項15】
前記使用環境の溶液に溶解する前記クロザピン濃度は、前記使用環境でのクロザピンの本来の前記溶解度で定義される濃度よりも、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%100%、110%、120%、130%、140%、150%、160%、170%、180%、190%、200%、210%、220%、230%、240%、250%、260%、270%、280%、290%、300、310%、320%、330%、340%、350%、360%、370%、380%、390%、400%、410%、420%、430%、440%、450%、460%、470%、480%、490%、500%、510%、520%、530%、540%、550%、560%、570%、580%、590%、600%、700%、800%、又は、1000%高いことを特徴とする、請求項14の組成物。
【請求項16】
24時間まで治療効果を有するクロザピン製剤の前記患者への投与を含む、統合失調症の患者を治療する方法であって、
前記製剤は、半透性被膜と、クロザピン粒子と、pH調節剤とを含み、
前記クロザピン粒子は、約2μm又はそれ未満の有効平均粒径を有し、前記クロザピン粒子の表面に表面安定化剤が吸着されることを特徴とする、方法。
【請求項17】
統合失調症又は統合失調性感情障害の患者の再発性自殺行動リスクを減少する方法であって、
前記患者への24時間を超える単回用量の組成物の投与を含み、
前記組成物は、半透性被膜と、クロザピン粒子と、pH調節剤とを含み、
前記クロザピン粒子は、約2μm又はそれ未満の有効平均粒径を有し、前記クロザピン粒子の表面に表面安定化剤が吸着されることを特徴とする、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2012−523428(P2012−523428A)
【公表日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−504864(P2012−504864)
【出願日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際出願番号】PCT/US2010/030393
【国際公開番号】WO2010/118232
【国際公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(511243624)アルカーメス ファーマ アイルランド リミテッド (3)
【Fターム(参考)】