説明

放射冷暖房用合成樹脂管、及び、放射冷暖房用パネル

【課題】放射冷暖房効果が高くかつ低温媒体を流通させた場合であっても管表面に結露が発生しにくい放射冷暖房用合成樹脂管、及び、これを用いてなる放射冷暖房用パネルを提供する。
【解決手段】少なくとも、最外層に設けられた断熱層と、前記断熱層の内面側に設けられた熱放射層とを有する放射冷暖房用合成樹脂管であって、前記断熱層の熱伝導率が0.04W/m・K以下かつ赤外線透過率が90%以上であり、前記熱放射層の赤外波長域の熱放射率が0.9以上である放射冷暖房用合成樹脂管。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射冷暖房効果が高くかつ低温媒体を流通させた場合であっても管表面に結露が発生しにくい放射冷暖房用合成樹脂管、及び、これを用いてなる放射冷暖房用パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、灯油ボイラーやガス給湯器等で加熱した湯、又は、不凍液を循環させる温水式床暖房パネルや、温水式パネルジェネレーターは、その熱放射効果によるエアコン等と比較して穏やかな暖房の快適さに対する認知が広まりつつあり、集合住宅、戸建住宅はもちろんのこと、特に病室や高齢者施設、児童施設等の穏やかな空調が求められる空間への導入が積極的に進められている。
【0003】
ところが、これらの温水式暖房器具による熱放射効果の快適さを夏季でも享受しようと、床暖房パネルに冷水を循環させると、冷気は室内の下部に滞留するため期待されたほどの効果は得られず、湿った空気が冷やされてパネルで結露し、建物の根太を腐らせて基礎を損なう危険性があるため、実際には行われるに至っていない。
このような問題に対し、パネルを床面に配置するのではなく、天井面や壁面に配置して冷水を循環させることで人体からの放射熱を吸収し、冷房効果を及ぼす放射冷暖房用パネルが近年注目されている。
【0004】
このような放射冷暖房用パネルに用いられる配管として、例えば、特許文献1には、架橋ポリエチレン管を利用することが開示されており、また、特許文献2には、合成樹脂からなる管を利用することが開示されている。しかしながら、これらの放射冷暖房用パネルに用いられる配管は、熱伝導率が金属管と比較して遥かに低く、熱放射率もさほど高くないため、室内の熱の授受や熱交換効率を考えると、充分とは言い難いものであった。
また、これらの配管の形態としては、例えば、輻射パネルとしてプレートを付属させたものや、コンクリートスラブに埋め込んだもの等が挙げられるが、合成樹脂等からなる配管は、可撓性を有するため施工時にコンクリート埋設する際に仮止め等が必要であり、大掛かりでシステム価格が上昇し、結果、エアコン代替となるほど爆発的に世の中に広まっていない。
【0005】
また、一般に、熱放射の効果は、熱源と対象物との温度の4乗の差に比例することが知られており、放射冷暖房用パネルを用いて暖房を行う場合、一般的な熱源機の生み出す配管に循環させる温水の温度は60℃程度であるため、外気温度を5℃程度と仮定すると、その差はΔ55℃もあり、このように外気と循環させる温水との温度差を大きくとることによって、配管の熱交換能力が多少劣っていても充分な暖房を行うことが可能であった。
一方、放射冷暖房用パネルを用いて冷房を行う場合、熱源機側の効率(COP)を悪化させないために配管に循環させる冷水の温度は15℃程度であるため、外気温を35℃程度と仮定すると、その差はΔ20℃と暖房を行う場合と比較して非常に不利となる。また、より高い冷房効果を得るために、より低温の冷水を循環させると、配管の表面及び表面に接触したコンクリートスラブ、プレート等の表面が、これらの近傍の空気を露点以下まで冷却することで結露が発生し、配管のさび、カビ、不快臭等、外観上、衛生上の問題が発生する可能性があった。
【0006】
このような結露が発生する問題に対し、現状では、内部に流通する媒体の温度を比較的高温(15〜17℃程度)に設定することによって結露の発生を抑えるか、別途除湿機構を備え付ける等の方策が採られている。しかしながら、内部を流通する媒体の温度を高くすると、熱放射による冷房効果は低下し、室内を快適にするまでに要する時間が長くなるという問題があり、除湿機構を別途備え付けると、コストアップにつながるという問題があった。そのため、より低温の媒体を流しながらも結露を抑えることができる配管が求められていた。
【特許文献1】特開2003−160985号公報
【特許文献2】特開2001−248850号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記現状に鑑み、放射冷暖房効果が高くかつ低温媒体を流通させた場合であっても管表面に結露が発生しにくい放射冷暖房用合成樹脂管、及び、これを用いてなる放射冷暖房用パネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、少なくとも、最外層に設けられた断熱層と、上記断熱層の内面側に設けられた熱放射層とを有する放射冷暖房用合成樹脂管であって、上記断熱層の熱伝導率が0.04W/m・K以下かつ赤外線透過率が90%以上であり、上記熱放射層の赤外波長域の熱放射率が0.9以上である放射冷暖房用合成樹脂管である。
以下に本発明を詳述する。
【0009】
図1は、本発明の放射冷暖房用合成樹脂管の一例を模式的に示す断面図である。
図1に示すように、本発明の放射冷暖房用合成樹脂管10は、少なくとも、最外層に設けられた断熱層11と、断熱層11の内面側に設けられた熱放射層12とを有する。
【0010】
本発明の放射冷暖房用合成樹脂管10において、断熱層11は、最外層に設けられた管状の部材であって、本発明の放射冷暖房用合成樹脂管10内を循環させる冷温媒体の熱が表面に伝わり該表面付近の外気が加熱又は冷却されることを防止するものである。この断熱層11を有することで、本発明の放射冷暖房用合成樹脂管10は、低温媒体を循環させた場合であっても、本発明の放射冷暖房用合成樹脂管の表面近傍の外気が露点以下まで冷却されることがなく、その表面に結露が発生することがない。
【0011】
断熱層11は、熱伝導率の上限が0.04W/m・Kである。0.04W/m・Kを超えると、本発明の放射冷暖房用合成樹脂管10中に低温媒体を流通させたときに、断熱層11の表面温度が低温媒体の温度に近づき、本発明の放射冷暖房用合成樹脂管10の表面近傍の外気が露点以下まで冷却され、結露の発生を抑えることができない。好ましい下限は0.025W/m・Kである。なお、本発明の放射冷暖房用合成樹脂管において、「断熱層の熱伝導率」とは、該断熱層を構成する樹脂材料を用いてサンプルを作製し、該サンプルを用いてASTM C177に準拠して測定した値である。
【0012】
また、断熱層11は、赤外線透過率の下限が90%である。90%未満であると、後述する熱放射層12からの熱放射による熱交換を遮蔽してしまい、本発明の放射冷暖房用合成樹脂管10による放射冷暖房効果が阻害される。好ましい上限は100%である。なお、本発明の放射冷暖房用合成樹脂管において、「断熱層の赤外線透過率」とは、該断熱層を構成する樹脂材料を用いて断熱層と同じ厚さのサンプルを作製し、該サンプルを用いてJIS K7361に準拠し、波長3〜15μmの赤外線について測定した値である。
【0013】
また、本発明の放射冷暖房用合成樹脂管10の断熱層11は、なかでも、波長8〜14μmの領域の赤外線に顕著な吸収帯、反射帯が存在しないことが好ましい。すなわち、断熱層11は、波長8〜14μmの領域の赤外線透過率の下限が90%であることが好ましい。いわゆる「大気の窓」と言われるように、空気は、波長8〜14μmの領域の赤外線透過率が高く、断熱層11がこのような波長域での赤外線透過率が高いことにより、本発明の放射冷暖房用合成樹脂管10の熱放射層12からの熱放射による熱交換を高効率で行うことが可能となる。
【0014】
断熱層11を構成する樹脂材料としては特に限定されないが、上述した赤外線透過率の関係上、低密度非架橋ポリエチレンやポリプロピレン、ポリブテン等の比較的分子構造が単純、かつ、赤外線領域に広範な吸収帯を示す官能基をもたない高分子であることが好ましい。更に、断熱性を考慮すると、結晶化度が低くかつ非架橋のポリマーであることが好ましい。
【0015】
ここで、上記低密度非架橋ポリエチレンやポリプロピレン、ポリブテン等は、熱伝導率が0.09〜0.53W/m・Kであるため、このままでは、断熱層11の熱伝導率が上述した範囲を満たさない。上記低密度非架橋ポリエチレンやポリプロピレン、ポリブテン等の熱伝導率の上限を0.04W/m・Kとする方法としては、例えば、上記低密度非架橋ポリエチレンやポリプロピレン、ポリブテン等を発泡させる方法、グラスウール等を混入させる方法等が挙げられる。
【0016】
なお、上記低密度非架橋ポリエチレンやポリプロピレン、ポリブテン等は、赤外線透過率が上記範囲を満たすものであるが、上述した発泡やグラスウールの混入により光の透過率の低下が考えられる。しかし、上記発泡やグラスウールの混入により透過率が低下するのは可視光領域の光である。これに対して、上述のように、空気は波長8〜14μmの領域の赤外線透過率が高いため、例えば、発泡により空気を混入させた低密度非架橋ポリエチレン等は、赤外線透過率の低下が少ない。
【0017】
断熱層11の厚さとしては特に限定されないが、好ましい下限は0.3mm、好ましい上限は5mmである。0.3mm未満であると、赤外線透過率の面では有利となるが、断熱性が維持できなる上、外傷によって後述する熱放射層12がむき出しとなり、本発明の放射冷暖房用合成樹脂管10による結露防止効果が発現しないことがある。5mmを超えると、充分な断熱効果が期待できるが、その反面、断熱層11の厚みによって赤外線透過率が低下し、放射による熱交換効率が不充分となることがある。より好ましい下限は1mm、より好ましい上限は3mmである。
【0018】
熱放射層12は、上述した断熱層11の内面側に設けられた管状の部材であって、本発明の放射冷暖房用合成樹脂管10内を循環する冷温媒体の熱を外部に放射させて熱交換を行うものである。
【0019】
本発明の放射冷暖房用合成樹脂管10において、熱放射層12は、赤外波長域の熱放射率εの下限が0.9である。熱放射率εが0.9未満であると、本発明の放射冷暖房用合成樹脂管10内を循環する冷温媒体の熱の放射による熱交換が不充分となる。なお、本発明の放射冷暖房用合成樹脂管において、「熱放射層の熱放射率ε」とは、該熱放射層を構成する樹脂材料を用いてサンプルを作製し、該サンプルを用いてJIS A 1423に準拠した方法により測定した値である。
【0020】
熱放射層12を構成する樹脂材料としては特に限定されず、例えば、耐熱性ポリエチレン、架橋ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、塩化ビニル等が好適に用いられる。なかでも、比較的熱伝導率、熱放射率が良好な耐熱性ポリエチレン、架橋ポリエチレンが好適に用いられる。
なお、上述した耐熱性ポリエチレン等の熱放射層12を構成する樹脂材料は、熱放射率εが0.83以下程度であるため、このままでは充分な熱放射による熱交換を行うまでには至らない。そのため、熱放射層12を構成する樹脂材料が上述した耐熱性ポリエチレン等である場合、更に他の物質を混入することによって、その熱放射率εを上記範囲とすることが必要である。
【0021】
熱放射層12を構成する上述した樹脂材料に混入させる物質としては特に限定されず、例えば、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化マンガン、珪酸ナトリウム、炭化珪素、カーボンブラック、天然の蛇紋石等が挙げられる。
【0022】
熱放射層12を構成する上述した樹脂材料に混入させる物質の形状としては特に限定されず、粒状、針状等任意の形状が挙げられるが、いわゆる最密充填となるように粒径を調整し、添加部数を増やしたほうが高熱放射化しやすいため好ましい。
【0023】
熱放射層12を構成する上述した樹脂材料に混入させる物質の混入量としては、上記混入させる物質の表面状態や比重等によって適宜決定されるが、熱放射層12中好ましい下限が3重量%、好ましい上限が33重量%である。3重量%未満であると、熱放射層12の熱放射率が上記範囲を満たさないことがあり、33重量%を超えると、成形加工が困難となる場合が多い。より好ましい下限は5重量%、より好ましい上限は20重量%である。
なお、上記混入物質を熱放射層12を構成する樹脂材料に混入させる際には、粘度調整剤、界面活性剤等を使用して添加部数を調整してもよい。
【0024】
熱放射層12の厚さとしては特に限定されないが、好ましい下限は0.01mm、好ましい上限は5mmである。0.01mm未満であると、本発明の放射冷暖房用合成樹脂管10のたわみによって破損することがあり、5mmを超えると、放射による熱交換の効率が悪くなることがある。より好ましい下限は0.2mm、より好ましい上限は2mmである。
【0025】
このような断熱層11と熱放射層12との間には、これらの密着性を高めるために、従来公知の接着剤等が塗布されていてもよい。断熱層11と熱放射層12との間に接着剤が塗布されている場合、厚さが0.2mm以下となるように塗布されることが好ましい。0.2mmよりも厚い場合、熱放射層12からの熱放射を阻害し、熱交換効率が低下することがある。
【0026】
また、本発明の放射冷暖房用合成樹脂管は、上記熱放射層の内面側に更に本発明の放射冷暖房用合成樹脂管の剛性強化等を目的として補強層が設けられていてもよい。
上記補強層を構成する材料としては、適度な剛性と高い熱伝導率とを兼ね備えたものであれば特に限定されず、例えば、アルミニウム、銅等の金属材料、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタラート、ポリブテン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ポリメタクリル酸メチル等の熱可塑性樹脂や、これらの熱可塑性樹脂に熱伝導率の高いフィラーである銅、アルミ等の金属やカーボンブラック、酸化マグネシウム、アルミナ、ジルコニア等を混練したもの等が挙げられる。
上記補強層は、単一の上記材料からなる単層構造であってもよく、上記材料の2種以上からなる複数層構造であってもよい。また、熱可塑性樹脂に混練されるフィラーに関しては特に限定されず、管としての物性を確保する限りにおいては混練量に関しても特に限定されない。
【0027】
本発明の合成樹脂管の外径としては特に限定されないが、好ましい下限は5mm、好ましい上限は25mmである。5mm未満であると、本発明の放射冷暖房用合成樹脂管が異物により閉塞することがあり、25mmを超えると、施工時の取り扱い、保有水量の重量等の点から本発明の放射冷暖房用合成樹脂管を用いてなる放射冷暖房用パネルを屋内に設置することが困難となり、更に破損の恐れがある。
【0028】
このような構造の本発明の放射冷暖房用合成樹脂管内を循環させる冷温媒体としては特に限定されず、冷温水、不凍液等放射冷暖房装置に用いられている従来公知のものが挙げられる。
【0029】
本発明の放射冷暖房用合成樹脂管を製造する方法としては、一般的な押出機を用いた多層押出成形が挙げられる。
【0030】
本発明の放射冷暖房用合成樹脂管は、最外層に上述した断熱層を有するため、本発明の放射冷暖房用合成樹脂管内を低温媒体が流通する場合であっても、該低温媒体の温度が断熱層表面まで殆ど伝わらない。そのため、放射による冷房効果を高めるために、従来の放射冷暖房装置に比べて低温の媒体を循環させた場合であっても、断熱層表面付近の空気の温度が露点以下になりにくくなり、結露の発生を抑えることができる。一方、暖房時に高温媒体を循環させた場合であっても、断熱層表面が高温になりにくく、本発明の放射冷暖房用合成樹脂管を露出した形態の放射冷暖房パネルを作製した場合であっても、不意な接触によるやけどを防止することができる。そのため、本発明の放射冷暖房用合成樹脂管を露出した形態の放射冷暖房パネルは、高齢者や幼児等が頻繁に往来する居住スペースであっても、安心して設置することができる。
【0031】
本発明の放射冷暖房用合成樹脂管は、図2(a)又は(b)に示すようなヘッダーに取り付けられ、パネル化されることで放射冷暖房用パネルを構成することができる。なお、図2(a)及び(b)は、本発明の放射冷暖房用合成樹脂管を取り付けるためのヘッダーの一例を模式的に示す斜視図である。
【0032】
図2(a)に示すヘッダー30は、長方形状の本体部の内部に冷温媒体を流通させる管状の流路31と、流路31に通じる複数の開口32とが設けられている。一方、図2(b)に示すヘッダー35は、長方形状の本体部の内部に冷温媒体を流通させる2の管状の流路36a、36bと、流路36a、36bのそれぞれに通じる複数の開口37a、37bとが設けられている。
【0033】
本発明の放射冷暖房用合成樹脂管をこのようなヘッダー30やヘッダー35に取り付ける場合、各ヘッダーに設けられた開口の数に合わせて本発明の放射冷暖房用合成樹脂管を複数並列に配置し、本発明の放射冷暖房用合成樹脂管の末端をヘッダーの開口に取り付ける。
このような、複数並列に配列された本発明の放射冷暖房用合成樹脂管、及び、内部に冷温媒体を流通させる管状の流路と該流路に通じる複数の開口とが設けられたヘッダーを有し、上記放射冷暖房用合成樹脂管の末端が上記ヘッダーの開口に取り付けられ、パネル化されている放射冷暖房用パネルもまた、本発明の1つである。
【0034】
図3は、本発明の放射冷暖房用合成樹脂管を図2(a)に示すヘッダー30に取り付ける様子を模式的に示す分解斜視図である。
図3に示すように、本発明の放射冷暖房用合成樹脂管をヘッダー30に取り付けてパネル化する場合、一対のヘッダー間に本発明の放射冷暖房用合成樹脂管が配置される。
すなわち、一対のヘッダー30を開口32が設けられた面が対向するように配置し、各ヘッダー30の開口32と、開口32の数に合わせて複数並列に配置した本発明の放射冷暖房用合成樹脂管40の末端とを接続金具41を介して取り付ける。なお、図3に示すように、本発明の放射冷暖房用合成樹脂管40の一方の末端に取り付けた接続金具41は、更に流量調整バルブ42を介してヘッダー30の開口32に取り付けられることが好ましい。
【0035】
図3に示すようにヘッダー30に本発明の放射冷暖房用合成樹脂管40を取り付けてなる放射冷暖房用パネルを使用する際には、冷温媒体は、一方のヘッダー30の流路31から各開口32に通じ、本発明の放射冷暖房用合成樹脂管40の内部に供給され、他方のヘッダー30の開口32から流路31に循環する。
【0036】
また、図4は、本発明の放射冷暖房用合成樹脂管を図2(b)に示すヘッダー35に取り付ける様子を模式的に示す分解斜視図である。
図4に示すように、本発明の放射冷暖房用合成樹脂管をヘッダー35に取り付けてパネル化する場合、屈曲した本発明の放射冷暖房用合成樹脂管50の一方の末端が一方の流路36aに通じる開口37aに取り付けられ、本発明の放射冷暖房用合成樹脂管50の他方の流路37bに取り付けられる。
すなわち、ヘッダー35の開口37a及び37bが設けられた面上に中央付近で屈曲させた本発明の放射冷暖房用合成樹脂管50を、開口37a及び37bの数に合わせて複数並列に配置し、ヘッダー35の開口37a及び開口37bと、本発明の放射冷暖房用合成樹脂管50の末端とを接続金具41を介して取り付ける。なお、図4に示すように、本発明の放射冷暖房用合成樹脂管50の一方の末端に取り付けた接続金具41は、更に流量調整バルブ42を介してヘッダー35の開口36aに取り付けられることが好ましい。
【0037】
図4に示すようにヘッダー35に本発明の放射冷暖房用合成樹脂管50を取り付けてなる放射冷暖房用パネルを使用する際には、冷温媒体は、例えば、流路36aから各開口37aに通じ、本発明の放射冷暖房用合成樹脂管50の内部に供給され、開口37bから流路36bに循環する。
【発明の効果】
【0038】
本発明の放射冷暖房用合成樹脂管は、最外層に断熱層を有するため、本発明の放射冷暖房用合成樹脂管内を低温媒体が流通する場合であっても、該低温媒体の温度が断熱層表面まで殆ど伝わらない。そのため、放射による冷房効果を高めるために、従来の放射冷暖房装置に比べて低温の媒体を循環させた場合であっても、断熱層表面付近の空気の温度が露点以下になりにくくなり、結露の発生を抑えることができる。一方、暖房時に高温媒体を循環させた場合であっても、断熱層表面が高温になりにくく、本発明の放射冷暖房用合成樹脂管を露出した形態の放射冷暖房パネルを作製した場合であっても、不意な接触によるやけどを防止することができる。そのため、本発明の放射冷暖房用合成樹脂管を露出した形態の放射冷暖房パネルは、高齢者や幼児等が頻繁に往来する居住スペースであっても、安心して設置することができる。
【0039】
従って、本発明によると、放射冷暖房効果が高くかつ低温媒体を流通させた場合であっても管表面に結露が発生しにくい放射冷暖房用合成樹脂管、及び、これを用いてなる放射冷暖房用パネルを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0041】
(実施例1)
(1)補強層の形成
まず、押出成形機によって公知の方法により、内径13mm、厚さ1.2mmで高密度ポリエチレン(丸善石油化学社製)からなる管状の補強層を作製した。
【0042】
(2)熱放射層の形成
次いで、マトリクス樹脂として高密度ポリエチレン(丸善石油化学社製、P9820)を使用し、粒径50μmの酸化ケイ素10重量%と粒径10μmのカーボンブラック5重量%とを混練押し出ししてマスターバッチ化した後、押し出し成形法にて、補強層の上に被覆押出しを行い、厚さ0.3mmの熱放射層を形成した。なお、熱放射層を構成する樹脂材料を用いて、別途50mm角、厚さ8mmの熱放射率測定用サンプルを作製し、該熱放射率測定用サンプルの熱放射率εを、JIS A 1423に準拠した方法で測定したところ、0.94であった。
【0043】
(3)断熱層の形成
そして、マトリクス樹脂として低密度ポリエチレンを使用し、グラスウール5重量%を混練押出ししてマスターバッチ化した後、押し出し成形法にて熱放射層の上に被覆押し出しを行い、熱放射層の表面に厚さ0.3mmの断熱層を形成し、放射冷暖房用合成樹脂管を製造した。なお、断熱層を構成する樹脂材料を用いて、別途50mm角、厚さ0.5mmの赤外線透過率測定用サンプルを作製し、該赤外線透過率測定用サンプルを用いて、JIS K7361に準拠して全光線透過率を測定したところ、90%であった。また、断熱層を構成する樹脂材料を用いて、別途50mm角、厚さ8mmの熱伝導率測定用サンプルを作製し、該熱伝導率測定用サンプルを用いて、ASTM C177に準拠した方法で、京都電子工業社製、プローブ式熱伝道率計「QTM−3」で熱伝導率を測定したところ、0.04W/m・Kであった。
【0044】
(4)放射冷暖房用パネルの作製
得られた放射冷暖房用合成樹脂管を長さ2000mmにカットし、図3に示すような形態で75mmピッチで15本平行に配置した放射冷暖房用パネルを作製した。
【0045】
実施例1で作製した放射冷暖房用合成樹脂管及び放射冷暖房用パネルについて、以下の評価を行った。
【0046】
(1)結露の発生
作製した放射冷暖房用パネルを用いて、室温30度、相対湿度60%RHの雰囲気下において、15℃の冷水を通水し、1時間後の結露の有無を評価した。その結果、放射冷暖房用合成樹脂管の表面には、結露は殆ど観察されなかった。
【0047】
(2)放熱量
冷温水チラーを用い、往き温水温度を40℃とした。流量は1.0L/minに設定した。温水戻り温度は、作製した放射冷暖房パネルの放熱性能により成り行きとなった。
次世代省エネ基準(III地域)のQ値・C値に準拠して作製した模擬住宅の6畳の一室を評価駆体として利用した。長府製作所製、冷温水供給ヒートポンプ(AEY4030SVXC)にて、放射冷暖房用パネルから熱が放出されようとも、常に室内空間を20℃(外気温度5℃)に維持した。
運転後3時間後に放射冷暖房用パネルの放射熱量を、往き温水温度と戻り温水温度の差と流量から室内に放出した熱量を測定した。これをパネル単位面積で割り、単位面積あたりの放熱量とした。
その結果、温水戻り温度は32℃となり、単位面積当たりの放熱量は280W/mとなった。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明によれば、放射冷暖房効果が高くかつ低温媒体を流通させた場合であっても管表面に結露が発生しにくい放射冷暖房用合成樹脂管、及び、これを用いてなる放射冷暖房用パネルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の放射冷暖房用合成樹脂管の一例を模式的に示す断面図である。
【図2】(a)は、本発明の放射冷暖房用パネルに用いるヘッダーの一例を模式的に示す斜視図であり、(b)は、本発明の放射冷暖房用パネルに用いるヘッダーの別の一例を模式的に示す斜視図である。
【図3】本発明の放射冷暖房用合成樹脂管を図2(a)に示すヘッダー30に取り付ける様子を模式的に示す分解斜視図である。
【図4】本発明の放射冷暖房用合成樹脂管を図2(b)に示すヘッダー35に取り付ける様子を模式的に示す分解斜視図である。
【符号の説明】
【0050】
10、40、50 放射冷暖房用合成樹脂管
11 断熱層
12 熱放射層
30 ヘッダー
31 流路
32 開口
35 ヘッダー
36a、36b 流路
37a、37b 開口
41 接続金具
42 流量調整バルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、最外層に設けられた断熱層と、前記断熱層の内面側に設けられた熱放射層とを有する放射冷暖房用合成樹脂管であって、
前記断熱層の熱伝導率が0.04W/m・K以下かつ赤外線透過率が90%以上であり、
前記熱放射層の赤外波長域の熱放射率が0.9以上である
ことを特徴とする放射冷暖房用合成樹脂管。
【請求項2】
複数並列に配置された請求項1記載の放射冷暖房用合成樹脂管、及び、内部に冷温媒体を流通させる管状の流路と該流路に通じる複数の開口とが設けられたヘッダーを有し、前記放射冷暖房用合成樹脂管の末端が前記ヘッダーの開口に取り付けられ、パネル化されていることを特徴とする放射冷暖房用パネル。
【請求項3】
一対のヘッダー間に放射冷暖房用合成樹脂管が配置されていることを特徴とする請求項2記載の放射冷暖房用パネル。
【請求項4】
ヘッダーは、内部に2の管状の流路と前記2の管状の流路にそれぞれ通じる複数の開口とが設けられており、屈曲した放射冷暖房用合成樹脂管の一方の末端が一方の前記流路に通じる開口に取り付けられ、前記放射冷暖房用合成樹脂管の他方の末端が他方の前記流路に取り付けられていることを特徴とする請求項2記載の放射冷暖房用パネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−20119(P2008−20119A)
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−192183(P2006−192183)
【出願日】平成18年7月12日(2006.7.12)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】