説明

放射線像貯蔵パネルの製造方法

【課題】 蒸着された放射線像貯蔵燐光体パネルを再現可能な方法で製造するための方法を提供する。
【解決手段】 支持体上に放射線像貯蔵燐光体層を製造する方法であって、前記方法が蒸着装置において一つ以上の抵抗加熱されたるつぼから結合剤のない貯蔵燐光体層の蒸着を確実にするためにアルカリ金属ハロゲン化物塩及びランタノイドドーパント塩又はそれらの組み合わせの原材料を蒸着する工程を含み、一つ以上のシャッターが前記るつぼと前記支持体の間に位置されている方法において、前記蒸着工程がシャッターを開放している間に開始するとき、追加の加熱が適用されるとき、蒸着される支持体の側とは反対の支持体の後側の支持体の近くに位置された熱電対によって測定及び記録される開始温度が100℃以上、250℃未満であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結合剤のない蒸着された貯蔵燐光体層を与えられた放射線像貯蔵パネルを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
燐光体の良く知られた用途はX線像の生成にある。従来の放射線写真システムでは、X線放射線写真は、X線を対象物に像に従って透過させ、それをいわゆる増感スクリーン(X線変換スクリーン)における対応する強度の光に変換することによって得られ、前記スクリーンでは、燐光体粒子は透過されたX線を吸収し、それらを可視光及び/又は紫外線に変換する。写真フィルムはX線の直接衝撃に対してより可視光及び/又は紫外線に対して敏感である。
【0003】
例えばUS−A 3859527に開示されているようなX線パターンを記録及び再生する別の方法によれば、パネルに混入される光刺激性燐光体として知られる特別なタイプの燐光体が使用され、それは入射パターンに従って変調されたX線ビームに露光され、その結果としてX線放射線パターンに含まれるエネルギーを一時的に貯蔵する。露光後、ある間隔で、可視又は赤外光のビームはパネルを走査して貯蔵されたエネルギーの光としての放出を刺激し、その光を検出して逐次電気信号に変換し、それを処理して可視像を生成することができる。この目的のため、燐光体は入射X線エネルギーをできるだけ多く貯蔵するべきであり、走査ビームによって刺激されるまで貯蔵されたエネルギーをできるだけ少なく放出するべきである。この像形成技術は「デジタル放射線写真」又は「コンピュータ放射線写真」と称される。
【0004】
二価EuをドープされたCsBrは針状結晶の形で生長されることができる有望なX線貯蔵燐光体である。基本特許US−A 6802991では、例えばEuBr,EuBr及びEuOBrからなる群から選択されたユウロピウム化合物とCsBrの混合物を450℃以上の温度に加熱し、物理蒸着、化学蒸着又は噴霧化技術からなる群から選択された方法によって支持体上に前記燐光体を蒸着することによる蒸着装置における蒸着によってかかる燐光体を製造するための方法が提供される。US−A 6730243では、CsBr:Eu燐光体を製造するための方法は、EuBr,EuBr及びEuOBrからなる群から選択されるユウロピウム化合物の10−3mol%〜5mol%とCsBrを混合し、その混合物を支持体上に蒸着し、結合剤のない燐光体スクリーンを形成し、前記燐光体スクリーンを室温に冷却し、前記燐光体スクリーンを80〜220℃の温度にもたらし、それをその温度で10分〜15時間維持する(アニール工程は燐光体スピードをさらに修正するために加えられる)工程を含む。EP−A 1443525に教示されているように、少なくとも10mJ/mmのエネルギーで150nm〜300nmの範囲の短い紫外線放射線を放出する放射線源からのエネルギーによる製造工程の少なくとも一つの間又はその後の放射線露光処理によってさらなる修正がなされることができる。
【0005】
スピード増加を最適化するためのスピードの修正は、US−A 6852357に教示されているように、気相中で支持体上に斜方晶系ユウロピウム活性化臭化セシウム燐光体結晶層を蒸着し、不活性ガス雰囲気又は少量の酸素もしくは水素を含有する不活性ガス雰囲気において1〜8時間、50℃以上、300℃未満の温度で結晶層を加熱することによってさらに提供される。US−A 2005/040340では、熱処理と称されるアニール工程は80℃〜300℃の温度で実施される。
【0006】
US−A 2006/013966では、るつぼの電気抵抗加熱による蒸発方法が記載され、前記るつぼはその底部の内部表面積及びその内部側壁の高さによって決定される全体積の最大80%まで原材料で充填され、電気加熱は前記原材料の溶融温度を少なくとも10℃越える温度まで行われる。
【0007】
US出願2001/0007352及び2003/0091729では、結合剤のない貯蔵燐光体スクリーンを製造するための方法において、前記方法は、アルカリ金属貯蔵燐光体を与え、前記燐光体を支持体上に真空蒸着する工程を含み、前記真空蒸着工程中、前記支持体が50℃≦T≦300℃の温度Tで維持され、前記真空蒸着が最大3PaのAr圧力を有するAr雰囲気で行われることを特徴とする。
【0008】
US−A 2004/081750は、CsX:Eu2+燐光体(XはBr及びClからなる群から選択されるハロゲン化物を表す)を含む燐光体層及び支持体を少なくとも有する燐光体スクリーンを製造する方法を教示し、前記燐光体は前記支持体上に物理蒸着によって蒸着され、蒸着中、前記支持体は135℃〜235℃の範囲の温度であり、前記蒸着中に生じる支持体の温度の変化が50℃以下であることを特徴とする。
【0009】
US−A 2004/146639に述べられているように、気相蒸着によって支持体上に形成された刺激性燐光体層におけるユウロピウム活性化ハロゲン化セシウム燐光体結晶の良く整列された結晶状態は、特定の条件を満足するために蒸着された刺激性燐光体におけるセシウムに対するユウロピウムのモル比(Eu/Cs)と支持体の温度の間の関係を制御することによって高い信頼性で達成されることができる。そこでは蒸着は支持体が50℃〜300℃の温度、より好ましくは100℃〜290℃の温度で加熱される条件下で実施されることが推奨される。
【0010】
US−A 2005/0133731では、支持体の温度は一般に、20℃〜350℃の範囲、好ましくは100℃〜300℃の範囲で維持されることが繰り返される。形成された燐光体が支持体上に蒸着及び蓄積される速度を意味する蒸着速度は、加熱器に供給される電流を調整することによって制御されると言われ、蒸着速度は一般に、0.1〜1000μm/分の範囲、好ましくは1〜100μm/分の範囲である。100℃〜300℃の範囲に維持される支持体はまた、US−P 6835940に提案され、そこでは柱状刺激性燐光体結晶を含む刺激性燐光体層において、柱状結晶は20°〜80°の平均角度を示す先端を有する。その角度は結晶生長の方向における中央線が中央線を有する先端の一区域に接する線と作る角度である。支持体温度に加えて、そこでは結晶生長条件を最適化するために真空度、結晶生長スピード及び刺激性燐光体の種類が重要であることが教示されている。支持体温度が低いほど結晶は細くなる傾向を有するが、過剰に低い温度は柱状形態を維持することを困難にする。従って、支持体の温度は好ましくは100℃〜300℃、より好ましくは150℃〜270℃であり、蒸気流の入射角度は好ましくは0°〜5°であり、真空度は好ましくは0.13Pa以下である。
【0011】
US−A 2003/0209675では、CsBrの真空蒸着中、主要な活性化剤Euは次のようにして導入される。例えば、真空蒸着がCsBrとEuBrの混合物からなる燐光体原材料を使用して実施されるとき、EuBrの融点(705℃)より少なくとも20℃高い温度で燐光体原材料を加熱しながら真空蒸着層が形成される。真空蒸着が上と同じ方法で(Cs,Eu)Br(式中、a+b=x)を形成する複塩結晶を原材料として使用して実施されるとき、前記原材料は蒸気を形成するためにEuBrの融点より少なくとも20℃高い温度で加熱される。それゆえ、蒸着中、層形成速度は好ましくは少なくとも20μm/分、最も好ましくは少なくとも60μm/分である。
【0012】
蒸着された斜方晶、ブロック状結晶又は針状結晶の寸法に関してUS−A 2006/0065851では、蒸着法の如き気相蓄積法によって形成された燐光体層が柱状の形の燐光体からなり、燐光体の柱がその先端表面で平均数マイクロメータの直径を有することが述べられている。しかしながら、燐光体柱状結晶は、その一部が異常に生長することが多い点で、必ずしも均一に生長せず、従って隣接する燐光体柱状結晶は互いに融合及び結合しうる。異常に生長又は融合された燐光体柱状結晶は放射線像を読み出すための画素サイズより又は像を再現する際の画像サイズより大きな直径をその上部表面に有することが多い。これは点欠陥を起こし、再現された像の品質を損ない、結果として様々な診断及び検査に対して好ましくない影響を与える。特に胸部像形成のための放射線写真診断においてそこで確立されているように、貯蔵パネルから放射線像を読み出すための画素サイズは一般に、100μmピッチであるが、像を再現するための画像サイズは200μmピッチである。従って、貯蔵パネルが胸部の医療診断のために使用される場合には、上部表面に200μmより大きい直径を有する燐光体柱状結晶は深刻なトラブルの原因である。上部表面の近くで融合された燐光体柱状結晶の凝集体の形の異常な結晶モルフォロジーは、蒸発される前の蒸発源が、その全体がはね上げ又ははね返りを防止するように溶融するように加熱される予備処理を受けるなら、形成しないことが開示されている。原材料の蒸発源全体を溶融するようにるつぼ容器を予備加熱する工程は、中央領域の蒸発源の温度と周囲領域の蒸発源の温度の差が30℃以下であるという条件下で実施される。結果として互いに平行に立っている多数の燐光体柱状結晶を含む燐光体層を得る目的が達成される。そこでは燐光体柱状結晶はその上部表面に0.1〜50μmの範囲の平均直径を有し、上部表面には200μmより大きい直径を有する燐光体柱状結晶を有さない。そのため、その方法の予備処理工程では、原材料の蒸発源を充填されたるつぼ容器は蒸発源が蒸着工程で蒸発される蒸発温度より高い温度に加熱されることが好ましい。従って、るつぼ容器は次の条件(1)を満足しかつ蒸発温度より高い温度T℃で2〜20分間保持されることが有利である:
+10<T<T+150 (1)
式中、Tは蒸発源が予備処理を受ける温度(℃)であり、Tは蒸発源の融点(℃)である。CsBrについては、前記融点は636℃である。さらに、そこでは、刺激された光放出が拡散することを効果的に防止するためには、特に燐光体層の表面の近くの隣接する燐光体柱状結晶間の間隙は、100nm〜5μmの範囲の刺激された放出の波長の1/3より大きいことが好ましいことが教示される。燐光体層の厚さと対応する燐光体柱状結晶の高さは一般に、50μm〜1000μmの範囲、より好ましくは200〜700μmの範囲である。抵抗加熱ユニットを使用する加熱は二つ以上の燐光体層を形成するために二回以上繰り返されうることが述べられている。蒸着工程が完了した後、蒸着層は加熱処理(即ち、アニール処理)を受けてもよく、それは一般に、少量の酸素ガス又は水素ガスを含有してもよい不活性ガス雰囲気中で100℃〜300℃の温度で0.5〜3時間、好ましくは150℃〜250℃の温度で0.5〜2時間、実施される。
【0013】
US−A 7053385では、支持体と原材料蒸着源るつぼの間に与えられたそらせ板は、支持体及びるつぼ容器における原材料に平行になるように形成され、そして中央における通過抑制が大きく、側部における通過抑制が揮発温度に従って小さくなるような形状で(即ち、穴の数がそらせ板の中央で少なく、そらせ板の側部で多い)形成されることが望ましいことが教示される。90nm以上の結晶サイズを有する光刺激性燐光体を製造するため、蒸発原材料に希土類元素を導入している間、支持体温度は170℃以下にするべきであり、真空度は0.7Pa(700mPa)以下にするべきである。
【0014】
US−A 7029836では、パネルが蒸着によって製造される条件が、蒸着時の支持体温度を50℃〜150℃に制御するべきであることが確立されている。光刺激性燐光体原材料を含む蒸気流を支持体に向けるとき、支持体の一方の面を加熱し、支持体の他方の面を冷却する同時工程中に、少なくとも一つの光刺激性燐光体層が形成される。
【0015】
US−A 2004/0188633では、支持体上に光刺激性燐光体層を有する放射線写真像変換パネルの製造方法が提案され、その方法は、光刺激性燐光体基本材料と支持体の間の距離を7〜60cmに設定し、支持体の温度を制御し、0.5μm/分以上の蒸発速度で1.0×10−2Paの真空度で光刺激性燐光体基本材料を蒸発し、蒸気相法によって光刺激性燐光体層に光刺激性燐光体を形成する工程を含む。そこでは支持体の温度を制御することは冷却によって実施され、その冷却は支持体の温度を10℃〜200℃の範囲に制御することを含む。
【0016】
US−A 2004/0188634では、放射線写真像変換パネルを製造するための方法は、1×10−2〜1×10−1Paの真空度で400〜700℃の温度で1〜30時間、光刺激性燐光体原材料を加熱し、蒸発源を迅速に冷却し、冷却された蒸発源をさらに加熱する工程を含む。
【0017】
US−A 2005/0145808では、励起光の干渉による無秩序な光干渉に起因するスポットのような無秩序な像ノイズの発生を抑制し、従来より優れたシャープネスを有する良好な像品質を有する像を読みとる方法が示されている。そこでは、好ましくは柱状結晶の平均面積S2は1×10−6〜1×10−3mmであり、励起光のビームの平均面積S1は3×10−4〜3×10−2mmである。柱状結晶の平均面積S2及び励起光のビームの平均面積S1のこれらの値は、励起光が柱状結晶を均一に励起し、従って光刺激された光として受けた光の強度の変動が特に効果的に抑制できることを実現する。好ましくは、柱状結晶の平均面積S2と励起光のビームの平均面積S1の間の相対的関係は10×S2<S1<10000×S2にされる。柱状結晶の平均面積S2は、蒸着実施時の装置の真空度及び支持体の温度、支持体の表面粗さ、蒸気流入射角度などによって影響される。それゆえ、これらを制御することによって、所望の平均面積を有する柱状結晶を製造することができる。従って、光刺激性燐光体層を形成するために支持体の表面上に光刺激性燐光体の原材料を含有する蒸気流を導入しながら、支持体の表面を加熱又は冷却することによって支持体の温度を制御することが好ましい。従って、光刺激性燐光体層を与えられた支持体の全体の温度を予め決められた範囲内に調整し、予め決められた範囲からの逸脱をできるだけ少なくすることによって柱状結晶の平均面積S2を制御することができる。従って、その温度は200℃以下、好ましくは150℃以下、より好ましくは50℃〜150℃の範囲である。支持体の温度の予め決められた温度範囲の逸脱は±20℃、より好ましくは±10℃、特に好ましくは±5℃である。
【0018】
US−A 2005/0258377では、柱状結晶の厚さ、即ち柱状結晶直径が支持体の温度、真空度及び蒸気流の入射角度によって影響され、従って所望の厚さの柱状結晶がこれらの要因を制御することによって製造されることができることが確立されている。支持体の温度が低いほど結晶を細くする傾向を有するが、過剰に低い温度は柱状形態を維持することを困難にする。支持体の温度は好ましくは100℃〜300℃、より好ましくは150〜270℃である。蒸気流の入射角度が0°より大きい場合には、柱状結晶はより大きな角度で細くなり、そこでは好ましい入射角度は30°〜80°、より好ましくは30°〜70°である。さらに、入射角度が0°より大きい場合には、高い真空度は細い柱状結晶を形成し、そこでは好ましい真空度は0.0013Pa以下である。入射角度が0°である場合には、低い真空領域における低い真空度は細い柱状結晶を形成し、そこでは好ましい真空度は0.13Pa以下である。さらに、柱状結晶直径比(D2/D1)は、支持体の温度、真空度及び蒸気流の入射角度を最適に変化することによって最適に制御されることができる。
【0019】
シャープネス又は解像度のため、柱状結晶からなる刺激性燐光体の変調伝達関数(MTF)を増強するために、柱状結晶直径は好ましくは1〜50μm、より好ましくは1〜30μmである。柱状結晶直径は、支持体表面に平行な側から見たときの柱状結晶の区域の面積に等価な円の直径(又は区域のいわゆる円等価直径)の平均値に関する。その発明では、柱状結晶直径は電子顕微鏡写真において少なくとも100個の柱状結晶を測定することによって決定される。従って、前述の柱状結晶直径D1及びD2は各々、前に規定したような柱状結晶直径の平均値であり、それは少なくとも100個の柱状結晶の電子顕微鏡観察によって決定されることができる。1μmより細い柱状結晶は柱状結晶による刺激されたルミネセンスの散乱のために低下したMTFを生じ、逆に1μmより太い柱状結晶は刺激されたルミネセンスの低下した指向性を生じ、さらにMTFも低下する。各柱状結晶の間の間隔は好ましくは30μm以下、より好ましくは5μm以下である。30μmを越える間隔は燐光体層の燐光体の充填比率を低下する。前述の刺激性燐光体の傾斜した柱状結晶の生長角度は0°より大きく90°以下であり、好ましくは10°〜70°、より好ましくは20°〜55°である。10°〜70°の生長角度は20°〜80°の入射角度によって達成されることができ、20°〜55°の生長角度は40°〜70°の入射角度によって達成されることができる。大きい生長角度は支持体の方へ過剰に傾斜した柱状結晶を生じ、脆い層を形成する。かくしてクレームされた放射線像変換パネルは柱状結晶構造を有する刺激性燐光体結晶を含む刺激性燐光体層を上部に有する支持体を含み、前記柱状結晶構造は式1.3≦D2/D1≦3.0に合致する柱状結晶直径比を有し、式中、D2は刺激性燐光体層の表面上の第一柱状結晶直径を表し、D1は支持体の表面から刺激性燐光体層の表面の方への0.1Tの距離における第二柱状結晶直径を表し、Tは刺激性燐光体層の厚さを表す。その特許出願に示されるように、表1において、例えばパネルNo.4の製造方法では、支持体温度は200℃から160℃へ変化され、パネルNo.5の製造方法Iでは、真空度は0.27Paから0.81Paへ変化された。変化時間(又はタイミング)は電子顕微鏡を使用して結晶生長スピードを観察することによって得られた実験データに基いて決定された。
【0020】
支持体のための冷却及び加熱シールド又は要素についての詳細は例えばUS出願2004/0219289及び2004/0224084において、特に例えば一つ以上のローラ上に取り付けられた移動支持体上の連続蒸着のために適応された蒸着装置に記載されている。
【0021】
US出願2003/0091729では、図7はアルカリ金属貯蔵燐光体を含む、結合剤のない貯蔵燐光体スクリーンを製造するために有用な蒸着装置の概略図を示し、そこではかかる装置は蒸着源が支持体とは反対側に配置される真空容器を含み、支持体は好ましくは軸のまわりに回転し、典型的には650℃〜700℃の蒸気温度よりずっと涼しい、例えば室温であるアルゴンの如き不活性ガスは調整弁を介して真空容器中に導入されることができ、従って不活性ガスは好ましくはまずそらせ板に衝突し、蒸気ジェット中に直接導入されない。不活性ガスは真空ポンプによって再び排気され、そこでは真空ポンプは10Pa未満、好ましくは1Pa〜3Paの圧力が真空容器内で生成されるように設定される。もしそう望むなら、冷却ガス流が支持体の冷却のために十分でないとき、支持体を外部冷却装置に連結することができる。
【0022】
上で与えたような支持体温度範囲に関するデータを別として、そして電子ビーム又は抵抗加熱によるような噴霧化による蒸発についての詳細を別として、蒸着支持体の温度をどの器具によってどこを測定するかについての詳細な教示は全く見出されないし、また蒸着時に測定された温度プロファイルについての教示を全く与えられていない。従って、加熱及び/又は冷却された支持体上への蒸着工程における結合剤のない蒸着された針状CsBr:Eu燐光体層を被覆された放射線像貯蔵燐光体スクリーン又はプレートの製造を実施しているときに高いスピードと高いシャープネスの間の最適な再現可能な関係を達成するための動機も見出すことができないことが確立されている。
【発明の開示】
【0023】
本発明の目的は、蒸着された放射線像貯蔵燐光体パネルを再現可能な方法で製造するための方法を提供することである。
【0024】
特に、本発明の目的は、抵抗加熱蒸着工程で得られた、かかる貯蔵燐光体パネルの結合剤のない層において高い再現可能なスピードレベルの蒸着された放射線像貯蔵燐光体のためにシャープネスを最適化しかつ増大することである。
【0025】
上述の有利な効果は請求項1に記載の製造方法において特別な工程を適用することによって放射線像貯蔵燐光体パネルを製造するための方法を提供することによって実現される。本発明の好ましい実施態様のための特別な特徴は従属請求項に述べられている。
【0026】
定義
温度は、以下の明細書で示される部位で存在する熱電対によって測定及び記録される摂氏度(℃)で表示される。それらの温度は前記支持体及び前記熱電対の各々の放射熱の異なる放出係数によって及び温度測定時の前記熱電対の存在の影響(それによって前記温度測定に対する不確実性を起こす)によって例えばパネル表面の支持体の実際の温度とは異なりうる
【0027】
支持体のための追加の加熱器に関して、抵抗加熱器並びに放射線加熱器が適用されうる。抵抗加熱器は、ここでは目に見ることができない赤外放射線、即ち700nm以上の長い波長範囲の放射線を与えるものとして規定され、ランプの形の放射線加熱器は700nm以上の長い波長範囲の赤外放射線に加えて、700nm未満のスペクトル波長範囲の可視放射線も放出するものとして規定される。
【0028】
シャッターは、前記蒸着装置に存在する支持体上への蒸発材料の付着のためにるつぼからの連続蒸発の開始を可能にする温度として考えられる温度がるつぼの内側で達成される前に、原材料が前記るつぼから蒸発するのを避けるために前記るつぼを閉じるるつぼのカバーである。さらに、シャッターは前記るつぼと前記支持体の間に位置されたプレートの形で存在させてもよい。かかる追加のシャッターは蒸気流が支持体上への蒸発材料の層の付着を可能にする状態にもたらす瞬間から除去される。
【0029】
RODAX,Antwerp,ベルギーによって与えられるばね負荷されたトランスミッターハウジングを有する熱電対はウェブサイトwww.rodax−europe−com.上に記載されるように使用された。特に、IEC584による、NiAlでカバーされたNiCr組成を有するK−タイプの熱電対を使用した。MgO鉱物絶縁金属被覆ケーブルを有するこの高品質熱電対要素は優れた安定性及び再現性を与え、完全に湾曲可能であり、1200℃までの測定を可能にする。かかる熱電対は支持体と接触する測定のために使用された。
【0030】
非接触式測定のため、EXERGEN Corp.,Watertown,MA,米国によって入手可能である、正確かつ信頼性のある温度制御のため及び臨界的な熱処理の制御のために好適な「マイクロIRt/c」非接触式温度センサーが使用された。
【0031】
一つ以上のシャッターが前記るつぼと前記支持体の間に位置される蒸着装置において一つ以上の抵抗加熱されたるつぼからの結合剤のない貯蔵燐光体層の蒸着を確実にするためにアルカリ金属ハロゲン化物塩及びランタノイドドーパント塩又はそれらの組み合わせの原材料の蒸着工程を含む、支持体層上に放射線像貯蔵燐光体層を製造する方法において、前記蒸着工程がシャッター開放時に(シャッター開放によって)開始するとき、追加の加熱が適用されるとき、蒸発される原材料が付着される側とは反対の前記支持体の後側の近くに(即ち、前記支持体の側と接触して又は前記支持体の側に最大5cmの距離で接触せずに)位置された熱電対によって測定及び記録される開始温度は、100℃以上、250℃未満にすべきであることが見出された。
【0032】
本発明による燐光体又はシンチレータパネルの製造方法における好ましい実施態様は以下の通りである:
− 蒸着される熱電対によって測定及び記録される前記開始温度は、追加の加熱が適用されるとき、130℃以上、220℃未満である;
− 蒸着される熱電対によって測定及び記録される前記開始温度は、追加の加熱が適用されるとき、150℃以上、200℃未満である;
− 蒸着を実施しながら又は蒸着を開始する前に予備加熱の形の前記追加の加熱は電気抵抗加熱又は放射線加熱によって、即ち例えばハロゲンランプ又は赤外ランプのようなランプによって行う;
− 熱電対によって測定及び記録される前記温度は非接触式測定によって実施される;
− アルカリ金属ハロゲン化物塩としてCsBrが使用され、ランタノイドドーパント塩としてEuX,EuX,EuOX又はEuX(2<z<3)が使用される;
− アルカリ金属ハロゲン化物塩とランタノイドドーパント塩の組み合わせとして式CsEuX′x+αyが使用され、式中、x/y>0.25,α≧2であり、X′はCl,Br及びI並びにそれらの組み合わせからなる群から選択されるハロゲン化物である;
− 前記蒸着装置では前記蒸着工程全体を通して10−5〜1Paの範囲の圧力がさらに維持される;
− 前記支持体は、所望により追加の被覆を被覆された金属支持体を含む;
− 前記金属はアルミニウム又はチタンである;
− 前記アルミニウム支持体は陽極酸化工程、次いで封止工程に供され、前記アルミニウム支持体は前記工程の少なくとも一つにおいてクロム化合物を含有する溶液で処理される;
− 追加の被覆として有機ポリマーを含むプレコート層が所望により存在する;
− 追加の被覆として無機化合物を含む下層が所望により存在する。
【0033】
本発明のさらなる利点及び特別な実施態様は以下の記載から明らかであるが、本発明はそれらに限定されない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
本発明によれば、支持体層上に放射線像貯蔵燐光体層を製造する方法が提供され、前記方法は蒸着装置において一つ以上の抵抗加熱されたるつぼからの結合剤のない貯蔵燐光体層の蒸着を確実にするためにアルカリ金属ハロゲン化物塩及びランタノイドドーパント塩又はそれらの組み合わせの原材料の蒸着工程を含み、一つ以上のシャッターが所望により前記るつぼと前記支持体の間に位置され、前記方法は前記蒸着工程がシャッター開放時に開始しているとき、追加の加熱が適用されるとき、蒸着される支持体の側とは反対の支持体の後側の支持体の近くに位置された熱電対によって測定及び記録される開始温度が100℃以上、250℃未満であることを特徴とする。
【0035】
特別な実施態様において、本発明による燐光体又はシンチレータパネルの製造方法では、蒸着される支持体の側とは反対の支持体の後側の支持体の近くに位置される熱電対によって測定及び記録される開始温度は、追加の加熱が適用されるとき、130℃以上、220℃未満である。
【0036】
さらに特別な実施態様において、本発明による燐光体又はシンチレータパネルの製造方法では、蒸着される支持体の側とは反対の支持体の後側の支持体の近くに位置される熱電対によって測定及び記録される開始温度は、追加の加熱が適用されるとき、150℃以上、200℃未満である。
【0037】
本発明による方法では、前記追加の加熱は抵抗加熱又は放射線加熱によって行われる。蒸着開始前又は蒸着実施中の予備加熱の形の前記追加の加熱は電気抵抗加熱又は放射線加熱によって、即ち例えばハロゲンランプ又は赤外ランプのようなランプによって行われる。蒸着前及び/又は蒸着中のランプによる放射線加熱は通常、蒸気流又は雲の空間のちょうど外側の、好ましくはるつぼと支持体の間又はるつぼを包囲する位置で、るつぼの隣に位置されたランプによって蒸発前及び/又は蒸発中に、蒸着する支持体の側で行われる。それ以外では抵抗加熱は通常、支持体の後側で実施され、抵抗加熱は、支持体又は抵抗加熱上への付着が起こらないように、支持体に沿って動きかつるつぼから逃避する蒸気流が当たることができないように位置される。しかしながら、これらの特別な配置から逸脱すること、そして反対の配置を有することは除外されず、または放射線加熱器もしくは抵抗加熱器をもっぱら使用することは除外されない。
【0038】
本発明の方法によるさらなる実施態様では、熱電対によって測定及び記録される温度は非接触式測定によって行われる。
【0039】
アルカリ金属ハロゲン化物塩として、本発明の方法によれば、CsBrが使用され、ランタノイドドーパント塩としてEuX,EuX,EuOX、又は二価及び三価のユウロピウムと混合された塩としてEuX(2<z<3)が使用される。
【0040】
別の実施態様では、アルカリ金属ハロゲン化物塩とランタノイドドーパント塩の組み合わせとして、本発明の方法によれば、式CsEuX′x+αyによる塩(式中、x/y>0.25,α≧2,X′はCl,Br及びI並びにそれらの組み合わせからなる群から選択されるハロゲン化物である)が使用される。
【0041】
前記蒸着装置では、本発明の方法によれば、前記蒸着工程全体を通して10−5〜1Paの範囲の圧力がさらに維持される。
【0042】
本発明の燐光体パネルは従来公知のいかなる支持体であることもできる支持体を含むが、スクリーンの所望の高い耐湿性に照らして、極めて低い水蒸気透過性を有する支持体が好ましく使用される。それはいかなる幾何学的形状、例えば箔、繊維(例えば炭素繊維補強樹脂シート(複数)、特に炭素繊維補強樹脂シートにおける炭素繊維の方向が互いに異なるように耐熱性樹脂を含浸されかつ一方向に配置された炭素繊維をそれぞれが含むシート(複数))をさらにとることができる有機又は無機質の固体、及び粒子を使用することができる。特別な有機支持体はポリイミドシート、エポキシ化合物、異なる組成、ポリエーテル、ポリエステル及びポリカーボネート組成の熱可塑性及び熱硬化性化合物から選択されてもよいが、それらに限定されない。無機非金属支持体として化学的に補強されたガラス又は結晶化ガラスを使用することができる。使用のために好適な無機金属支持体は例えばアルミニウム、チタン、鉛、鉄、銅、鋼、モリブデン、ベリリウムからなる金属支持体、例えばアルミニウム、チタン、鉛、銅、ベリリウム、マンガン、タングステン、バナジウム及びシリコン酸化物からなる金属及び非金属酸化物の支持体である。保護層ユニット及び/又は燐光体付着物を支持体に適用する前に洗浄及び脱脂に関するクリーニング手順に支持体を供することが推奨される。好ましい支持体はUS−A 6815095及びUS出願2003/0134087に開示されているような支持体及び陽極酸化アルミニウムの支持体である。
【0043】
本発明の方法によれば、前記支持体は、所望により追加の被覆を被覆された金属支持体を含む。
【0044】
特に、本発明の方法による前記金属支持体はアルミニウム又はチタンである。チタンシートもしくはその合金の形の支持体層、又はチタン層もしくはチタン合金層を含む支持体は、例えばEP出願No.06114366(2006年5月23日出願)において耐腐食性に関して特に好適な支持体として提案されているように適用されてもよい。
【0045】
アルミニウム支持体の場合において、本発明の方法によれば、前記アルミニウム支持体は陽極酸化工程、続いて封止工程に供されてもよく、前記アルミニウム支持体は例えばEP出願No.06112797及び06112798(ともに2006年4月20日出願)に記載されているように前記工程の少なくとも一つにおいてクロム化合物を含有する溶液で処理される。陽極酸化されたアルミニウム支持体層、針状燐光体結晶を含む燐光体層及び保護層を連続層の層配置として有する放射線像貯蔵燐光体パネルを製造してもよく、前記陽極酸化されたアルミニウム支持体層は、支持体層と貯蔵燐光体の間の許容可能な接着性及び少ない腐食性のため、6:1000〜6:10の範囲の平均表面粗さ「Ra」対陽極酸化された層厚さ「t」の比を有する。かかる放射線像貯蔵燐光体パネルは有利にはアルミニウム支持体層を有し、それは第一製造工程において陽極酸化及び封止工程によって処理され、前記工程の少なくとも一つにおいてクロム化合物で処理される。
【0046】
別の実施態様では、追加の被覆として、EP出願No.06112800(2006年4月20日出願)に記載されたもののような無機化合物を含む下層を所望により存在させる。腐食性の低下のため、陽極酸化されたアルミニウム支持体、下層及び針状燐光体結晶を有する燐光体層を連続層の層配置として含む放射線像貯蔵燐光体パネルを形成してもよく、そこでは前記下層は無機金属酸化物又は金属化合物を含み、前記下層は20μm未満の厚さを有する。前記金属が錫、銅、ニッケル、クロム、スカンジウム、イットリウム、タンタル、バナジウム、チタン、ニオブ、コバルト、ジルコニウム、モリブデン及びタングステンからなる群から選択され、前記アルミニウム支持体は有利にはマグネシウムを含有する。
【0047】
本発明の方法によれば、追加の被覆として、例えばEP出願No.06112799(2006年4月20日出願)に記載されているように有機ポリマーを含むプレコート層を所望により存在させる。接着性のためにそこで教示され、本発明に適用可能であるように、放射線像貯蔵燐光体パネルは層の配置として、陽極酸化されたアルミニウム支持体、プレコート層及び針状燐光体結晶を含む燐光体層を連続的な順序で含み、前記プレコート層は20μm未満の厚さを有する。有機ポリマーとしてポリ−P−キシリレンの使用を別として、前記ポリマーはセライト、ポリアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリスチレン、ポリスチレン−アクリロニトリル、ポリウレタン、ヘキサ官能ポリアクリレート、ポリビニリデン−ジフルオライド、シランベースのポリマー及びエポキシ官能ポリマーからなる群から選択される。
【0048】
支持体層上に被覆されるとき、支持体と燐光体層の間の中間層としてUS−A 2004/0051441及びUS−A 2004/0051438に開示されるようなパリレン層又は例えばUS−A 6927404におけるような別の染料含有層を推奨してもよく、かかるパリレン層はUS−A 6822243に記載されているように又はUS−A 6710356のように燐光体層と最外保護層又はトップコートの間に存在させてもよい。二つの保護層間の良好な接着はUS−A 2005/0067584に開示されているように燐酸エステル化合物を使用するとき有利に提供される。上述のパリレン層は、環境の湿度に極めて敏感であるとして知られるように、ドープされたアルカリ金属ハロゲン化物燐光体を湿分から保護する層として適用されることが特に推奨される。支持体材料と燐光体層の間にパリレン層が存在する場合には、覆われた支持体の表面粗さは表面粗さの減少につれて良好な滑らかさを示し(好ましくは0.5以下、より好ましくは0.1以下)、それはUS−A 2004/0051438に記載されているように小さな直径を有する針状結晶又は柱状結晶を蒸着するためであってもよく、それによって蒸着された光刺激性燐光体層の表面積の平方単位あたりの前記針状結晶の改良された充填密度及び改良されたシャープネス又は解像度に導く。US−A 6967339に開示されているような、かかる柱状、針状又は円柱状燐光体の寸法への努力が有利でありうる。
【0049】
支持体と燐光体の間の良好な接着性のために、別の実施態様では、EP−出願No.06101437(2006年2月9日出願)に提案されるような手段をとってもよく、そこではハロゲン化物化合物を少なくとも含む、結合剤のない非蒸着層の形の下層は良好な接着性を与えている。
【0050】
本発明の特別な実施態様では燐光体層の表面は燐光体層が支持体の縁に到達しないように支持体の表面より小さくてもよい。従って、パネルが燐光体層の主表面より大きい表面を持ち、従って燐光体層が支持体の一部分を自由にさせた支持体を有し、層A及びトップコート層Bを含む保護層が燐光体層によって自由にさせた支持体の部分を少なくとも部分的に覆ってもよい。かかる構造の利点は、燐光体層の縁が装置の機械的部品に接触せず、従ってパネルの使用時、特にスキャナにおける移動時に容易に損傷されることが少ないことにある。この構成の別の利点は特別な縁補強が全く必要ないことである(但し、もし望むなら、さらなる縁補強も適用できる)。燐光体層の表面が支持体の表面より小さく、従って燐光体層が支持体の縁に到達しない燐光体パネルの構成は、本発明の特別な実施態様を表すが、かかる構成は公知の保護層で覆われた燐光体パネルの製造のために有益でありうる。
【0051】
貯蔵パネルの繰り返しクリーニングのため及び貯蔵燐光体プレートの取り扱い時の引っ掻き傷を避けるため、EP出願No.06118157及び06118158(2006年7月31日出願)に提案されているような手段をとってもよい。これらの用途のように光又は電子線硬化組成物を有する保護被覆が適用されてもよく、前記組成物はポリマー又はコポリマー及び(メタ)アクリレート型モノマーを含み、(メタ)アクリレート型モノマーはモノマー分子あたり一つより多い(メタ)アクリレート基及び前記モノマー中の(メタ)アクリレート基あたり少なくとも一つのエチレンオキシ基を有し、前記組成物はそれらの出願に提案されている。支持体、貯蔵燐光体層及び最外トップコートを含む光刺激性燐光体スクリーンのためのかかるトップコート層は、かかるトップコート層がセルロースエステルポリマーを含むとき、繰り返しクリーニングのために使用するのに特に好適である。それ以外では、ポリマー又はコポリマー及び(メタ)アクリレート型モノマーを含み、モノマー分子あたり一つより多い(メタ)アクリレート基及び前記モノマー中の(メタ)アクリレート基あたり二つ以上のエチレンオキシ基を有する光硬化性組成物は貯蔵燐光体スクリーン又はパネルのためのトップコート層として使用するために好適であり、特に前記ポリマーがポリメチルメタクリレート又はそれらのコポリマーであるとき好適であり、それによってスクラッチを回避する。トップコート層を有する貯蔵燐光体スクリーンが突き出るビーズを持つとき、ビーズがスキャナの機械的部品に接触しないこと、及び貯蔵パネルがスキャナにおける移動時に幾らかのよろめきを示すときであってもこの通りであることが重要である。それゆえビーズは本発明の貯蔵燐光体スクリーンにおいてスペーシング粒子として使用されるとき、0.5μm≦d50≦25μmのメジアン体積直径及び0.1≦d50/d50≦1.20のメジアン数直径を有することが好ましい。さらに、ビーズは前記ポリマービーズが0.25≦dv50/t≦4.0のメジアン体積直径dv50を有するように本発明の貯蔵パネル上の層Bの厚さtに適応されることが好ましい。
【実施例】
【0052】
本発明をその好ましい実施態様と関連して以下の実施例に記載するが、本発明をそれらの実施態様に限定することを意図しないことは理解されるだろう。
【0053】
原材料としてCsBrとEuOBrの混合物を出発材料として有するるつぼの抵抗加熱によって、真空室において可撓性のクロム封止された陽極酸化アルミニウムプレート上に蒸着工程によってCsBr:Eu光刺激性燐光体スクリーンを製造した。前記可撓性の陽極酸化アルミニウム支持体上への前記蒸着工程は、前記支持体が蒸気流上で回転するような方法で実施された。
【0054】
電気加熱オーブン及び二つの耐火トレー又はボート(一方は左側に置かれ、他方は右側に置かれる)が使用され、そこでは330gのCsBrとEuOBrの混合物(CsBr/EuOBr重量%比=99.5%/0.5%)を蒸着のために前記るつぼの各々に原材料として存在させた。
【0055】
るつぼとして100mmの長さを有する細長いボートを使用し、それは0.5mmの厚さを有する「タンタル」から構成された35mmの幅及び45mmの側壁高さを有し、三つの集積部品:るつぼ容器、スリット及び小さな開口を有する「第二」プレート及びスリット出口を有するカバーから構成された。長手方向部分は漏れを克服するために一つの連続タンタルベースプレートから折り曲げられ、頭部分が溶接された。前記第二プレートは45mmの前記側壁高さの2/3より小さい最外カバープレートからの距離でるつぼの内部に装着された。真空室へのアルゴンガスの連続注入によって維持された真空圧力(2×10−3mbarに等価な2×10−1Paの圧力)下で、かつ蒸気源(760℃)の十分に高い温度で、得られた蒸気は、移動するシート支持体の方に向けられ、前記支持体が蒸気流の上で回転するにつれて連続的にその上に付着された。蒸気源の前記温度は、外側に存在しかつ前記るつぼの底の下で圧縮された熱電対によって及びるつぼに存在するタンタル保護された熱電対によって測定された。蒸着装置において蒸発を開始する前、ボート又はるつぼにおいて原材料を加熱して、それらを蒸発のために準備しているとき、シャッターはボート、トレー又はるつぼを覆っている。
【0056】
800μmの厚さ、18cmの幅及び24cmの長さを有するクロム封止された陽極酸化アルミニウム支持体は、燐光体が蒸着される側をパリレンCプレコートで覆われ、支持体とるつぼ蒸気出口スリットの間の(垂直に測定した)距離が22cmになるように位置させた。
【0057】
プレートはほぼ等しい厚さの燐光体層を有する燐光体プレートに導く同じ蒸着時間を実施した後に蒸着装置から取り出された。
【0058】
別の実験(CB74120参照)では、寸法として130mmの長さ、45mmの幅及び60mmの側壁高さを有する一つだけのるつぼが使用された。前記るつぼは600gのCsBrとEuOBrの混合物(CsBr/EuOBrの重量%比=99.5%/0.5%)を原材料として充填された。
【0059】
以下の表1では、もし適用されるなら、追加の加熱が実施される場合が示される:CB74120,CB74310及びCB74312を除く実験の全てにおいて原材料を蒸発している間に支持体の後側に、即ち蒸気が付着される支持体の前側とは反対の側に予備加熱工程の形の追加の加熱が電気抵抗加熱器によって適用され;実験CB74310及びCB74312において原材料を蒸発している間に蒸気が付着された支持体の燐光体側に予備加熱工程の形の追加の加熱が(ハロゲンランプでの放射線加熱によって)適用された。
【0060】
− 「TtcKsシャッター」は、支持体プレートの後側(即ち、蒸発を実施している間に蒸発材料が付着される前側とは反対の側)で測定され、蒸着装置中の左(表1参照:シャッター左)又は右(表1参照:シャッター右)の側に位置されたるつぼ上に存在するシャッターを開放する前にRODAX,Antwerp,ベルギーからの熱電対タイプKによって記録された開始温度を表す。
【0061】
表1にまとめられたデータの全てから、蒸発を開始する直前の(即ち、シャッターが閉じられた)熱電対温度は、前記温度が支持体の後側、即ち結合剤のない燐光体層が付着される前側とは反対側で測定されるとき、100℃〜250℃の範囲であることは明らかである。
【0062】
表1の温度Tの全ては摂氏度(℃)で表される。

【0063】
3線対/mmのMTF値によって反映される像シャープネスに関して、余分の又は追加の支持体加熱のない一つの大きなるつぼだけから作られたCB74120は、それに対してほぼ許容可能な結果に導くパネルを表すが、他の予備加熱された支持体プレートは、以下の表2にまとめられた結果から明らかなように高いスピード及び良好な像シャープネスを与える。
【0064】
燐光体層の被覆重量、シャープネスを示す1lp/mm及び3lp/mmのMTF値、及び相対スピード並びに燐光体被覆重量に対する修正後に得られた絶対スピードについてのデータは以下の表2に記載され、さらに、Agfa−Gevaert,Mortsel,ベルギーによって製造されるMD10(登録商標)参照光刺激性燐光体スクリーンの走査平均レベル(「Scan Average Levels」)から誘導されるスピードと比較した、走査平均レベルから誘導されたスクリーンの各々についてのスピードとして規定される相対スピード(SAL%)、及び修正された絶対スピード(SAL_corr.abs)(即ち、被覆重量差に対する修正)も同様に記載された。

【0065】
CB74120は、まだ許容可能な結果を与えるが(例えばその高いスピード、SAL_relとして表示される、修正後にはSAL_corr.absとして表示され、大きい数字ほど高いスピードを表す)、CBプレート74113,74114,74115,74118,74310及び74312に対してシャープネスの低下の傾向を示す(大きいMTF値ほどシャープな像を表す)。
【0066】
本発明の有利な効果として、明細書及び実施例において上述したように、抵抗加熱蒸発工程においてるつぼのシャッターを開放することによって蒸発を開始している間、原材料が付着されない支持体の後側の熱電対によって測定及び記録された温度範囲が100℃以上、250℃未満の温度範囲内の条件において、追加の加熱が適用されるとき、かくして得られた貯蔵燐光体プレートに対して最適なスピード及びシャープネスが測定されることが確立される。
【0067】
本発明の好ましい実施態様を詳細に記載したが、添付の特許請求の範囲に規定された本発明の範囲から逸脱せずに多数の変更をその中でなしうることが当業者に明らかであるだろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に放射線像貯蔵燐光体層を製造する方法であって、前記方法が蒸着装置において一つ以上の抵抗加熱されたるつぼから結合剤のない貯蔵燐光体層の蒸着を確実にするためにアルカリ金属ハロゲン化物塩及びランタノイドドーパント塩又はそれらの組み合わせの原材料を蒸着する工程を含み、一つ以上のシャッターが前記るつぼと前記支持体の間に位置されている方法において、前記蒸着工程がシャッターを開放している間に開始するとき、追加の加熱が適用されるとき、蒸着される支持体の側とは反対の支持体の後側の支持体の近くに位置された熱電対によって測定及び記録される開始温度が100℃以上、250℃未満であることを特徴とする方法。
【請求項2】
アルカリ金属ハロゲン化物塩としてCsBrを使用し、ランタノイドドーパント塩としてEuX,EuX,EuOX又はEuXz、但し2<z<3を使用する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
アルカリ金属ハロゲン化物塩とランタノイドドーパント塩の組み合わせとして式CsEuX′x+αyによる塩を使用し、但しx/y>0.25,α≧2,X′はCl,Br及びI並びにそれらの組み合わせからなる群から選択されるハロゲン化物である請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記蒸着装置において前記蒸着工程全体を通して10−5〜1Paの範囲の圧力が維持される請求項1〜3のいずれかに記載の方法。

【公開番号】特開2008−46119(P2008−46119A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−198289(P2007−198289)
【出願日】平成19年7月31日(2007.7.31)
【出願人】(307010203)アグファ・ヘルスケア・エヌヴィ (10)
【Fターム(参考)】