放射線撮影装置
【課題】より簡単な構成で散乱線の排除された鮮明な画像を取得できる放射線撮影装置を提供する。
【解決手段】本発明の構成によれば、X線管3に対して移動する遮蔽体5を備えている。遮蔽体5の影が位置を変えながら元画像P0が生成される。中間画像生成部11は遮蔽体5の影ばかりが映り込んだ暗画像P2と遮蔽体5の影以外の部分ばかりが写り込んだ明画像P3とを生成する。暗画像P2には、散乱線成分のみが写り込んでおり、明画像P3には、被検体の透視像に散乱線成分が重畳されている。除去部15は、暗画像P2を基に明画像P3に重畳している散乱線成分を除去する。これにより、より簡単な構成で散乱線の排除された鮮明な画像を取得できる放射線撮影装置を提供できる。
【解決手段】本発明の構成によれば、X線管3に対して移動する遮蔽体5を備えている。遮蔽体5の影が位置を変えながら元画像P0が生成される。中間画像生成部11は遮蔽体5の影ばかりが映り込んだ暗画像P2と遮蔽体5の影以外の部分ばかりが写り込んだ明画像P3とを生成する。暗画像P2には、散乱線成分のみが写り込んでおり、明画像P3には、被検体の透視像に散乱線成分が重畳されている。除去部15は、暗画像P2を基に明画像P3に重畳している散乱線成分を除去する。これにより、より簡単な構成で散乱線の排除された鮮明な画像を取得できる放射線撮影装置を提供できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体に放射線を照射することで画像を取得する放射線撮影装置に係り、特に散乱線の影響を排除して鮮明な画像を取得する放射線撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医療機関には、放射線で被検体Mの画像を取得する放射線撮影装置が備えられている。この様な放射線撮影装置51は、被検体Mを載置する天板52と、放射線を照射する放射線源53と、放射線を検出する放射線検出器54とを備えている(図10,特許文献1参照)。放射線検出器54から出力された検出信号を基に被検体Mの透視像が写り込んだ画像が取得される。
【0003】
この様な放射線撮影装置において、散乱線の影響を排除して鮮明な画像を取得できるようにした構成となっているものがある。この放射線撮影装置において、撮影を行う様子を説明する。放射線源53と放射線検出器54は、互いの位置関係を保った状態で天板52の長手方向に移動する(図10参照)。この移動の最中に複数枚の画像が取得される。この複数枚の画像をつなぎ合わせることで一枚の合成画像が生成される。
【0004】
撮影の際、放射線源53から照射される放射線の広がりが天板52の長手方向に制限されている(図10参照)。従って、撮影される各画像は、天板52の短手方向に細長上の短冊状画像となっている。図10の領域Sは、放射線検出器54における放射線ビームBが入射するの部分を示している。この領域Sは、短冊画像Tを取得する際の放射線検出器54における撮影視野となっている。
【0005】
ところで、放射線を被検体Mに透過させようとすると、放射線の一部は被検体Mの体内で散乱して散乱線sとなる。この散乱線sは、画像を不鮮明にする原因となっている。したがって、画像を取得する際にこの散乱線sを排除して撮影を行った方がよい。
【0006】
従来の構成によれば短冊画像Tの撮影を繰り返す撮影を行うことにより、散乱線sによる画像の乱れが発生しないようにしている。すなわち、被検体Mの体内で発生した散乱線sは、散乱によって進行方向が変化している。従って、散乱線sは、X線ビームBの進行方向から外れて放射線検出器54側に向かう。この様にして散乱線sが短冊画像Tを撮影する際の撮影視野である領域Sには入射しない。したがって、領域Sには画像の乱れが原因となる散乱線sが入射せず、得られる短冊画像Tは散乱線sに影響されずに鮮明な画像となる。
【0007】
そして、図11に示すように次々と取得された短冊画像Tを撮影された順に天板52の長手方向に配列すれば、被検体Mの全身像を写し込んだ合成画像が生成される。この合成画像は、散乱線sが排除されて撮影されたものとなっており、鮮明である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−160077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来の構成によれば次のような問題点がある。
すなわち、従来の放射線撮影装置によれば、放射線源53と放射線検出器54とを精度よく移動させながら撮影を行わなければならないという問題点がある。
【0010】
散乱線sの入射を防いで撮影を行うには、放射線検出器54における撮影視野を小さくして撮影を繰り返すようにしなければならない。すると、撮影視野を小さくして短冊画像Tの撮影を行うと、短冊画像Tには被検体Mのごく一部しか写り込んでいないので、被検体Mの全身像を得ようとうすると、放射線源53と放射線検出器54を天板52に対して移動させることが必須となる。
【0011】
しかも、短冊画像T同士で撮影条件を一致させる必要がある。さもないと、生成される合成画像の短冊画像Tのつなぎ目において、被検体Mの像に食い違いが発生するからである。したがって、天板52に対して放射線源53と放射線検出器54とを互いの位置関係を保った状態で正確に移動させなければならない。このような高精度の移動を実現しようとすれば、放射線撮影装置51自体が大がかりなものとなり、装置の製造コストも増加する。
【0012】
この様に、装置の設置スペースや装置のコストを抑制するには、放射線源53と放射線検出器54とを移動させなくても散乱線の排除された鮮明な画像を取得できる構成が望まれる。
【0013】
本発明は、この様な事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、より簡単な構成で散乱線の排除された鮮明な画像を取得できる放射線撮影装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は上述の課題を解決するために次のような構成をとる。
すなわち、本発明に係る放射線撮影装置は、放射線を照射する放射線源と、放射線源を制御する放射線源制御手段と、照射された放射線を検出して検出信号を出力する放射線検出手段と、放射線源と放射線検出手段とに挟まれる位置に設けられた被検体を載置する天板と、放射線源と天板とに挟まれる位置に設けられるとともに放射線源から照射される放射線の一部を遮蔽する遮蔽体と、遮蔽体を放射線源に対して移動させる遮蔽体移動手段と、遮蔽体移動手段を制御する遮蔽体移動制御手段と、遮蔽体を放射線源に対して移動させながら次々と撮影を行うことにより、遮蔽体の影が位置を変えながら写り込んでいる元画像を検出信号から次々と生成する画像生成手段と、各元画像における遮蔽体の影が写り込んでいる部分のみをつなぎ合わせて暗画像を生成し、同様に各元画像における遮蔽体の影が写り込んでいない部分のみをつなぎ合わせて明画像を生成する中間画像生成手段と、暗画像を基に明画像に重畳している散乱線成分が除去された除去画像を生成する除去手段とを備えることを特徴とするものである。
【0015】
[作用・効果]本発明の構成によれば、放射線源に対して移動する遮蔽体を備えている。遮蔽体の影が位置を変えながら元画像が生成される。この元画像における遮蔽体の影の部分には、何も写り込んでいないように思える。しかし、実際には被検体で生じた散乱線成分がこの影の部分に写り込んでいる。中間画像生成手段は遮蔽体の影ばかりが映り込んだ暗画像と遮蔽体の影以外の部分ばかりが写り込んだ明画像とを生成する。暗画像には、散乱線成分のみが写り込んでおり、明画像には、被検体の透視像に散乱線成分が重畳されている。除去手段は、明画像および暗画像を基に明画像に重畳している散乱線成分を除去する。この様な構成とすることにより、従来のように被検体に対して放射線源・放射線検出手段を移動させなくとも、遮蔽体を移動させる簡単な装置構成で鮮明な像が取得できる。
【0016】
また、上述の放射線撮影装置において、元画像のある部分の画素値と、他の元画像におけるその部分に相当する部分の画素値の各々とを比較し、比較対象のうちの1つを選択するとともに、この動作を元画像の領域を変更しながら繰り返し行う選択手段を備え、選択手段は、比較対象の画素値の平均により示される放射線量よりも放射線量の多い画素値となっている部分を選択し、これを中間画像生成手段がマッピングすることにより明画像が生成され、同様に選択手段は、選択手段が比較対象の画素値の平均により示される放射線量よりも放射線量の少ない画素値となっている部分を選択し、これを中間画像生成手段がマッピングすることにより暗画像が生成されればより望ましい。
【0017】
[作用・効果]上述の構成は、本発明のより具体的な構成を示したものとなっている。選択手段が元画像における放射線量が多く明るい部分を選択することにより中間画像生成手段が明画像を生成し、同様に、選択手段が元画像における放射線量が少なく暗い部分を選択することにより中間画像生成手段が暗画像を生成するようにすれば、確実に明画像・暗画像を得ることができる。
【0018】
また、上述の放射線撮影装置において、選択手段は、各元画像の画素毎に比較・選択を行えばより望ましい。
【0019】
[作用・効果]上述の構成は、本発明のより具体的な構成を示したものとなっている。選択手段が各画像の画素毎に比較・選択を行うようにすれば、より鮮明な除去画像が取得できる。
【0020】
また、上述の放射線撮影装置において、遮蔽体は、遮蔽体の移動方向と直交する方向に細長状となっていればより望ましい。
【0021】
[作用・効果]上述の構成は、本発明のより具体的な構成を示したものとなっている。遮蔽体が遮蔽体の移動方向に直交する方向に細長状となっていれば、各元画像において遮蔽体の影が遮蔽体の移動方向と直交する方向に幅広の広範囲に写り込むことになる。これにより、遮蔽体の影のみが写り込んだ暗画像を生成する際に、暗画像は散乱線成分を元画像の全ての領域について写し込んだものとなる。
【0022】
また、上述の放射線撮影装置において、遮蔽体移動手段は、選択手段が比較に用いる元画像のうち撮影が経時的に隣接している2枚の元画像において、遮蔽体の影がオーバーラップして写り込むように遮蔽体を移動させればより望ましい。
【0023】
[作用・効果]上述の構成は、本発明のより具体的な構成を示したものとなっている。遮蔽体の影が2枚の元画像上でオーバーラップして写り込むように遮蔽体を移動させれば、それに伴い、一連の元画像の全ての部分が一度は遮蔽体の影に覆われることになる。これにより、遮蔽体の影のみが写り込んだ暗画像を生成する際に、暗画像は元画像の全ての領域を写し込んだものとなる。
【0024】
また、上述の放射線撮影装置において、遮蔽体は、撮影の際に、放射線検出手段における放射線の検出面において、遮蔽体の移動方向に1cm以下の幅を有する影となって表れればより望ましい。
【0025】
[作用・効果]上述の構成は、本発明のより具体的な構成を示したものとなっている。遮蔽体が1cmよりも太い幅の影となって放射線検出器に投影されると、遮蔽体が大きすぎて、元画像に写り込む影に十分に散乱線成分が写り込まなくなってしまう。遮蔽体が放射線源制御手段における放射線の検出面において、遮蔽体の移動方向に1cm以下の幅を有する影となって表れるようにすれば、生成される暗画像に確実に散乱線成分が写り込む。
【0026】
また、上述の放射線撮影装置において、放射線源、放射線検出手段、および天板の位置関係は撮影中変更されなければより望ましい。
【0027】
[作用・効果]上述の構成は、本発明のより具体的な構成を示したものとなっている。放射線源、放射線検出手段、および天板の位置関係は撮影中変更されないようにすれば、各部材を移動させる移動手段を必要としないので、確実に装置構成が単純な放射線撮影装置が提供できる。
【0028】
また、上述の放射線撮影装置において、放射線源制御手段は、放射線源を制御して放射線が高エネルギー状態と低エネルギー状態の2つの状態で撮影を行わせ、除去手段は、放射線が高エネルギー状態で撮影された高エネルギー除去画像と、放射線が低エネルギー状態で撮影された低エネルギー除去画像とを生成し、高エネルギー除去画像と低エネルギー除去画像とに重み付けを行い、これらを重ね合わせて強調画像を生成する重ね合わせ手段を更に備えればより望ましい。
【0029】
[作用・効果]上述の構成は、本発明のより具体的な構成を示したものとなっている。放射線が高エネルギー状態と低エネルギー状態の2つの状態で高エネルギー除去画像と低エネルギー除去画像とを生成し、これらを重ね合わせて強調画像(サブトラクション画像)を生成するようにすれば、散乱線成分に影響されない視認性に優れたサブトラクション画像を取得することができる。
【0030】
また、上述の放射線撮影装置において、放射線源制御手段は、遮蔽体が移動範囲の一端側から他端側に移動する間に低エネルギーの撮影と高エネルギーの撮影を交互に行わせればより望ましい。
【0031】
[作用・効果]上述の構成は、本発明のより具体的な構成を示したものとなっている。遮蔽体が移動範囲の一端側から他端側に移動する間に低エネルギーの撮影と高エネルギーの撮影を交互に行わせれば、被検体の体動による画像の乱れを防止することができる。すなわち、暗画像は、遮蔽体の影をつなぎ合わせた構成となっている。したがって、暗画像において一番最初に撮影された遮蔽体の影が一端側に位置し、それから他端側に向けて遮蔽体の影が撮影された順に配列されていることになる。高エネルギー除去画像と低エネルギー除去画像とを生成する際にそれぞれ個別に暗画像が生成される。この暗画像の各部における被検体の位置は似通ったものとなっている。遮蔽体が移動範囲の一端側から他端側に移動する間に低エネルギーの撮影と高エネルギーの撮影を交互に行われたのであるから、一番最初に撮影された遮蔽体の影は、2枚の暗画像のそれぞれにおける一端側に位置し、それから他端側に向けて遮蔽体の影が撮影された順に2枚の暗画像のそれぞれに配列されているからである。この様にすると、高エネルギー除去画像と低エネルギー除去画像とを重ね合わせた際に像のズレが少なく視認性に優れたサブトラクション画像が提供できる。
【0032】
また、上述の放射線撮影装置において、強調画像を基に骨塩定量を行う骨塩定量手段を更に備えればより望ましい。
【0033】
[作用・効果]上述の構成は、本発明のより具体的な構成を示したものとなっている。骨塩定量においては、放射線検出手段の視野範囲における撮影で十分であり、上述のサブトラクション画像を有効に使用できる。
【発明の効果】
【0034】
本発明の構成によれば、放射線源に対して移動する遮蔽体を備えている。遮蔽体の影が位置を変えながら元画像が生成される。中間画像生成手段は遮蔽体の影ばかりが映り込んだ暗画像と遮蔽体の影以外の部分ばかりが写り込んだ明画像とを生成する。暗画像には、散乱線成分のみが写り込んでおり、明画像には、被検体の透視像に散乱線成分が重畳されている。除去手段は、明画像および暗画像を基に明画像に重畳している散乱線成分を除去する。これにより、より簡単な構成で散乱線の排除された鮮明な画像を取得できる放射線撮影装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】実施例1に係るX線撮影装置の構成を説明する機能ブロック図である。
【図2】実施例1に係る遮蔽体を説明する斜視図である。
【図3】実施例1に係るX線撮影装置の動作を説明するフローチャートである。
【図4】実施例1に係るX線撮影装置の動作を説明する模式図である。
【図5】実施例1に係るX線撮影装置の動作を説明する模式図である。
【図6】実施例1に係るX線撮影装置の動作を説明する模式図である。
【図7】実施例1に係るX線撮影装置の動作を説明する模式図である。
【図8】実施例1に係るX線撮影装置の動作を説明する模式図である。
【図9】本発明の1変形例に係るX線撮影装置の動作を説明する模式図である。
【図10】従来構成のX線撮影装置の構成を説明する模式図である。
【図11】従来構成のX線撮影装置の構成を説明する模式図である。
【実施例1】
【0036】
<X線撮影装置の全体構成>
まず、実施例1に係るX線撮影装置1の構成について説明する。X線撮影装置1は、図1に示すように被検体Mを載置する天板2と、天板2の上側に設けられたX線を照射するX線管3と、天板2の下側に設けられたX線を検出するFPD4とを備えている。FPD4は、被検体Mの体軸方向Aまたは体側方向Sのいずれかに沿った4つの辺を有する矩形となっている。また、X線管3は、放射状に広がる四角錐状のX線ビームをFPD4に向けて照射する。FPD4は、X線ビームを全面で受光することになる。FPD4のX線を検出する検出面4aには、X線検出素子が体軸方向Aおよび体側方向Sに2次元的に配列されている。X線管3は、本発明の放射線源に相当し、FPD4は、本発明の放射線検出手段に相当する。
【0037】
X線管制御部6は、所定の管電流、管電圧、パルス幅でX線管3を制御する目的で設けられている。FPD4は、X線管3から発せられ、被検体Mを透過したX線を検出して検出信号を生成する。この検出信号は、画像生成部11に送出され、そこで被検体Mの投影像が写り込んだ元画像P0が生成される。X線管制御部6は、本発明の放射線源制御手段に相当し、画像生成部11は、本発明の画像生成手段に相当する。
【0038】
遮蔽体5は、鉛などで構成され、X線管3と天板2とに挟まれる位置に設けられている。遮蔽体5は、X線を吸収する特性を有している。したがって、X線管3から発したX線が遮蔽体5に入射すると、X線はそこで吸収されFPD4側に向かうことができない。したがって、FPD4には遮蔽体5の影が写り込むことになる。
【0039】
遮蔽体移動機構7は、遮蔽体5を移動させる目的で設けられている。従って、遮蔽体5は、遮蔽体移動機構7によってFPD4の一端側からFPD4の他端側に向けて天板2の長手方向(体軸方向A)に沿って移動する。すると遮蔽体5はX線管3に対して移動する。これに伴いFPD4に写り込む遮蔽体5の影の位置は、この遮蔽体5の移動に伴って変化していくことになる。遮蔽体移動制御部8は、遮蔽体移動機構7を制御する目的で設けられている。遮蔽体移動機構7は、本発明の遮蔽体移動手段に相当し、遮蔽体移動制御部8は、本発明の遮蔽体移動制御手段に相当する。
【0040】
図2を参照して、遮蔽体5の具体的な構成について説明する。遮蔽体5は、移動方向である体軸方向A(天板2の長手方向)と直交する体側方向S(天板2の短手方向)に伸びた棒状(細長状)となっている。この遮蔽体5の長さおよび幅は、FPD4のX線を検出する検出面4aに写り込む遮蔽体5の影sを基に決定されている。すなわち、遮蔽体5の体軸方向Aの幅は、X線撮影の際、コーン状のX線ビームBをFPD4に照射したときに影sが体軸方向Aに1cm以下の幅を有するように設定されている。したがって、図2における幅wは、1cm以下となっている。また、遮蔽体5の体側方向Sの長さは、X線撮影の際、コーン状のX線ビームBをFPD4に照射したときに影sがFPD4の体側方向Sの一端から他端の全域に亘るように設定される。したがって、体側方向Sにおける検出面4aと影sとの幅は一致している。X線管3からX線が放射状に広がることを利用して、影sが上述の設定を満たすように遮蔽体5の形状を決定することができる。遮蔽体5の形状は、X線管3の焦点から検出面4aまでの距離、およびX線管3の焦点から遮蔽体5までの距離を用いた幾何学的な計算により決定できる。
【0041】
log変換部12は(図1参照),元画像P0をlog変換して変換画像P1を生成する目的で設けられている。選択部13は、変換画像P1のある部分に写り込んでいる像を各変換画像P1の間で比較し、画素値を基に比較対象のうちの1つを選択する構成となっており、中間画像生成部14は、選択部13が動作を繰り返すことにより選択された各部分をマッピングして中間画像(暗画像P2,明画像P3)を生成する構成となっている。そして、除去部15は、暗画像P2,明画像P3同士を減算して除去画像P4A,P4Bを生成する目的で設けられており、重ね合わせ部16は、撮影条件の異なる除去画像P4A,P4Bを重ね合わせて強調画像P5を生成する構成となっている。骨塩定量部17は、強調画像P5を基に骨塩定量を行う目的で設けられている。選択部13は、本発明の選択手段に相当し、中間画像生成部14は、本発明の中間画像生成手段に相当する。また、除去部15は、本発明の除去手段に相当し、重ね合わせ部16は、本発明の重ね合わせ手段に相当する。また、骨塩定量部17は、本発明の骨塩定量手段に相当し、除去画像P4Aは、本発明の高エネルギー除去画像に相当する。そして、除去画像P4Bは、本発明の低エネルギー除去画像に相当する。
【0042】
表示部25は、X線撮影により取得された各画像を表示したり、骨塩定量検査の結果を表示する目的で設けられている。操作卓26は、術者によるX線照射開始などの指示を入力させる目的で設けられている。また、主制御部27は、各制御部を統括的に制御する目的で設けられている。この主制御部27は、CPUによって構成され、各種のプログラムを実行することにより各制御部6,7,および各部11,12,13,14,15,16,17を実現している。また、上述の各部は、それらを担当する演算装置に分割されて実行されてもよい。記憶部28は、画像処理に用いられるパラメータ、画像処理に伴って生成される中間画像等のX線撮影装置1の制御に関するパラメータの一切を記憶する。
【0043】
<X線撮影装置の動作>
次に、X線撮影装置1の動作について説明する。このX線撮影装置1の動作の一例として、撮影条件の異なる二つの画像を重ね合わせて強調画像(サブトラクション画像)を生成するサブトラクション撮影を行うものとする。実施例1に係るX線撮影装置1を用いて被検体Mの撮影を行うには、図3に示すように、まず被検体Mを天板2に載置し(載置ステップS1),元画像P0の撮影が開始される(撮影開始ステップS2)。そして、撮影された元画像P0を基に変換画像P1を生成し(log変換ステップS3),変換画像P1を基に中間画像(暗画像P2,明画像P3)が生成される(中間画像生成ステップS4)。そして、中間画像を基に除去画像P4A,P4Bが生成され(除去画像生成ステップS5),除去画像P4A,P4Bを基に強調画像P5が生成される(強調画像生成ステップS6)。以降、これらの各ステップについて順を追って説明する。なお、骨塩定量ステップS7は、被検体Mの骨塩定量検査をする場合に追加される動作であり、強調画像生成ステップS6の後で行われる。
【0044】
<載置ステップS1,撮影開始ステップS2>
天板2に被検体Mを載置した後、術者が操作卓26を通じて撮影開始の指示をX線撮影装置1に与えると、X線管制御部6は、記憶部28に記憶されている管電圧・管電流・パルス幅などのX線管3の制御に関する設定値を読み出す。X線管制御部6は、この設定値通りにX線管3を制御し、X線管3にX線を断続的に発生させる。被検体Mを透過したX線は、FPD4で検出され、このときの検出信号が画像生成部11に送出される。画像生成部11は、検出信号を基に被検体Mの透視像が写り込んだ元画像P0を生成する。
【0045】
撮影開始の情報は遮蔽体移動制御部8にも送られる。遮蔽体移動制御部8は、撮影開始と同時に初期位置に存している遮蔽体5の移動を開始する。画像生成部11は、遮蔽体5をX線管3に対して移動させている状態で次々とX線撮影を行うことにより、遮蔽体5の影sが位置を変えながら写り込んでいる元画像P0を次々と撮影する。このとき、移動するのは遮蔽体5のみであり、X線管3,FPD4,および天板2の位置関係は撮影中に変更されることはない。
【0046】
このとき撮影される元画像P0について説明する。図4は、元画像P0が連写される様子を示している。一連の元画像P0の撮影中、X線管3が時間d(例えば33m秒)だけのインターバルを設けながらパルス状のX線ビームの照射が繰り返される。この照射の度に元画像P0が撮影される。しかも、X線ビームの照射は、高い管電圧によるX線が高エネルギー状態での照射p1と低い管電圧によるX線が低エネルギー状態での照射p2とが経時的に交互に行われるようになっている。X線が高エネルギー状態での照射p1で生成される元画像P0を符号P0Aで表すものとし、X線が低エネルギー状態での照射p2で生成される元画像P0を符号P0Bで示すもとする。元画像P0Aのうち最初に撮影された元画像P0A1には、図4に示すように、被検体Mの透視像と、遮蔽体5の影sとの両方が写り込んでいる。元画像P0Aにおける遮蔽体5の影sの部分では、遮蔽体5によってX線ビームが遮られた状態となっているので、この部分には被検体Mの像は写り込んでいない。
【0047】
それでは、影sに何も写り込んでいないかと言うとそうではない。X線ビームのうち、被検体Mで進行方向が変化した散乱線成分がFPD4における影sが写り込んでいる部分に入射するからである。したがって、元画像P0に写り込んでいる影sには、被検体Mより生じる散乱線成分のみが写り込んでおり、被検体Mの透視像は写り込んでいない。
【0048】
元画像P0A1は、遮蔽体5が初期位置にあるときに撮影されたものである。遮蔽体5の初期位置は、影sが元画像P0Aの一端に表れるように決定されている。遮蔽体5の初期位置は、遮蔽体5の体軸方向Aにおける幅w,X線管3の焦点から検出面4aまでの距離、およびX線管3の焦点から遮蔽体5までの距離を用いた幾何学的な計算により決定できる。
【0049】
図4における元画像P0A2は、元画像P0A1と同じ高い管電圧で撮影された画像である。両画像の撮影の間に遮蔽体5がFPD4の一端側から他端側に向けて移動しているので、両画像における影sが写り込んでいる位置は互いに異なっている。
【0050】
連写される元画像P0Aに影sがどのように写り込むかを説明する。図5は、元画像P0Aにおける影sの位置を示したものとなっている。図5における符号s1は、元画像P0A1に写り込んでいる影sを意味しており、以降同様に、符号snは、元画像P0Anに写り込んでいる影sを意味している。図5を参照すれば分かるように、影s1と影s2は、体軸方向Aにオーバーラップしている。このように、撮影が経時的に隣接している2枚の元画像P0Aにおいて、遮蔽体5の影sがオーバーラップして写り込んでいる。つまり、遮蔽体移動制御部8は、撮影の際、経時的に隣接している2枚の元画像P0Aに影sがオーバーラップするような速度で遮蔽体5を移動させる。より具体的には、撮影の際、経時的に隣接している2枚の元画像P0Aにおいて、影sが被検体Mの体軸方向Aの幅未満だけ位置を変えながら写り込むように遮蔽体5の速度が決定される。遮蔽体5の速度は、X線管3の焦点から検出面4aまでの距離、およびX線管3の焦点から遮蔽体5までの距離を用いた幾何学的な計算により決定できる。
【0051】
影snは、元画像P0Aのうち、最後に撮影された元画像P0Anに写り込んでいる遮蔽体5の位置を表している。元画像P0Anは、遮蔽体5が最終位置にあるときに撮影されたものである。遮蔽体5の最終位置は、影sが元画像P0Aの他端に表れるように決定されている。遮蔽体5の最終位置は、遮蔽体5の体軸方向Aにおける幅w,X線管3の焦点から検出面4aまでの距離、およびX線管3の焦点から遮蔽体5までの距離を用いた幾何学的な計算により決定できる。
【0052】
元画像P0A,P0Bのそれぞれには、20cm×20cmの視野範囲内の被検体Mが写り込んでいる。遮蔽体5の影sは、例えば1cmの幅でFPD4に写り込んでいるので、体軸方向における視野範囲の幅の1/20は影sが写り込んでいることになる。20cmの幅を1cm幅の影sが互いにオーバーラップしながら覆い尽くすように元画像P0Aが撮影されることからすれば、撮影される元画像P0Aの枚数は、20枚よりも多いものとなっていることになる。
【0053】
撮影開始ステップS2において、X線管3の管電圧が高い状態で元画像P0Aが撮影される。この撮影最中に、X線管3の管電圧が低い状態で元画像P0Bも撮影される。元画像P0Bは、遮蔽体5が移動する間に複数枚連写され、その撮影の様子は元画像P0Bと同様である。したがって、元画像P0Bに写り込む影sの位置、および遮蔽体5の移動の様子は、図5を用いた上述の説明のとおりとなっている。このように遮蔽体5が移動範囲の一端側から他端側に移動する間に低線量の撮影と高線量の撮影とが交互に行われて一連の元画像P0A,P0Bが撮影されることになる。
【0054】
<log変換ステップS3>
撮影された元画像P0A,P0Bは、log変換部12に送出される。log変換部12は、元画像P0A,P0Bを構成する画素データの値をlog変換した後、これをマッピングし、変換画像P1を生成する。高管電圧に係る元画像P0Aがlog変換された変換画像を符号P1Aで表すものとし、低管電圧に係る元画像P0Bがlog変換された変換画像を符号P1Bで表すものとする。このlog変換は、強調画像(サブトラクション画像)を生成する際の下準備である。このlog変換動作を行うことにより高管電圧に係る画像と低管電圧に係る画像との差違が判然とするようになる。
【0055】
<中間画像生成ステップS4>
前ステップで生成された変換画像P1A,P1Bは、選択部13に送出される。選択部13は、後述の中間画像生成部14と協働して、変換画像P1Aに対しピークホールド処理をすることにより暗画像P2Aおよび明画像P3Aを生成し、変換画像P1Bに対しピークホールド処理をすることにより暗画像P2Bおよび明画像P3Bを生成する。
【0056】
暗画像P2Aを生成するときの選択部13の動作について説明する。選択部13は、図6に示すように、変換画像P1Aを構成する画素の内の1つに注目し、この注目の画素Rを変換画像P1A1〜P1Anに亘って比較する。つまり、選択部13は、画素Rについてn個の画素値を比較することになる。選択部13が比較するn個の画素Rは、被検体Mの同じ部分を写し込んでいる。しかし、n個の画素Rの中には遮蔽体5の影sが写り込んでいるものがあり、それらには遮蔽体5の異なる部分が写り込んでいる。元画像P0Aは、遮蔽体5をFPD4に対して移動させながら撮影されたものだからである。
【0057】
そして、選択部13は、n個の画素値のうち比較対象のn個の画素における画素値の平均よりも低い画素値、具体的には最も画素値が低い画素値を選択して、これを中間画像生成部14に送出する。この様に選択部13は、変換画像P1Aの画素毎に比較・選択を行う。
【0058】
選択部13は、上述の比較・選択を変換画像P1Aを構成する画素の全てにおいて実行し、その度毎に選択された画素値が中間画像生成部14に出力される。このように、選択部13は、元画像P0Aを変換した変換画像P1Aのある画素に写り込んでいる像を一連の変換画像P1Aの間で比較し、最も低い画素値を有する画素を比較対象の画素うちの1つを選択するとともに、この動作を変換画像P1Aの領域を変更しながら繰り返し行う。一連の変換画像P1Aにおける最も低い画素値は、X線量が最も少ない画素値であることを意味している。つまり、選択部13は、元画像P0A(具体的には変換画像P1A)のある部分の画素値と、他の元画像P0A(具体的には他の変換画像P1A)におけるその部分に相当する部分の画素値の各々とを比較し、比較対象のうちの1つを選択するとともに、この動作を元画像P0A(具体的には変換画像P1A)の領域を変更しながら繰り返し行う。
【0059】
中間画像生成部14は、選択部13が選択した各画素値をマッピングすることにより、変換画像P1A〜P1Anを構成する画素値のうち最低の画素値を画像上の画素の位置ごとに選抜された暗画像P2Aを生成する(図7参照)。この暗画像P2Aに属する画素は、必ず画像上の影sに位置する画素が選抜されたものとなっている。この理由について説明する。図5を用いて説明したように、影sは、一連の元画像P0Aにおいてオーバーラップして写り込んでいる。そして、変換画像P1Aの各々に写り込む影sの部分は、影s以外の部分と比べて極端に暗い。従って、選択部13が暗画像P2Aを生成しようとして、一連の元画像P0Aに亘って注目の画素を比較したときに、比較対象の画素のいずれかは影sを写し込んだものとなっている。そして、その影sを写し込んだ画素値は、影sを写し込んでいない画素値と比べて極端に低い。したがって、選択部13が最も暗い画素値を選択すると影sを写し込んだ画素の画素値を必然的に選択することになる。選択された画素値を基に生成された暗画像P2Aは、一連の変換画像P1Aに写り込む影sを抜き出したものとなっている(図7参照)。つまり、中間画像生成部14は、各元画像P0A(具体的には各変換画像P1A)における遮蔽体5の影sが写り込んでいる部分のみをつなぎ合わせて暗画像P2Aを生成する。
【0060】
次に、明画像P3Aを生成するときの選択部13の動作について説明する。選択部13は、明るい画素値について同様の選択を行う。すなわち、選択部13は、図6を用いて説明した要領で、変換画像P1A1〜P1Anにおける同じ位置に存するn個の画素の画素値のうち今度は比較対象のn個の画素における画素値の平均よりも高い画素値、具体的には最も画素値が高い画素値を選択して、これを中間画像生成部14に送出する。
【0061】
選択部13は、上述の比較・選択を変換画像P1Aを構成する画素の全てにおいて実行し、その度毎に選択された画素値が中間画像生成部14に出力される。このように、選択部13は、元画像P0Aの変換画像P1Aのある画素に写り込んでいる像を一連の変換画像P1Aの間で比較し、最も高い画素値を有する画素を比較対象の画素うちの1つを選択するとともに、この動作を変換画像P1Aの領域を変更しながら繰り返し行う。一連の変換画像における最も高い画素値は、X線量が最も多い画素値であることを意味している。
【0062】
中間画像生成部14は、選択部13が選択した各画素値をマッピングすることにより、変換画像P1A〜P1Anを構成する画素値のうち最高の画素値が画像上の画素の位置ごとに選抜された明画像P3Aを生成する(図7参照)。この明画像P3Aに属する画素は、必ず画像上の影s以外に位置する画素が選抜されたものとなっている。変換画像P1Aの各々に写り込む影sの部分は、影s以外の部分と比べて極端に明い。従って、選択部13が明画像P3Aを生成しようとして、一連の元画像P0Aに亘って注目の画素を比較したときに、影sを写し込んでいない画素値は、影sを写し込んでいる画素値と比べて極端に高い。したがって、選択部13が最も明い画素値を選択すると影sを写し込んでいない画素の画素値を必然的に選択することになる。選択された画素値を基に生成された明画像P3Aは、一連の変換画像P1Aに写り込む影s以外の部分を抜き出したものとなっている(図7参照)。つまり、中間画像生成部14は、各元画像P0A(具体的には変換画像P1A)における遮蔽体5の影sが写り込んでいない部分のみをつなぎ合わせて明画像P3Aを生成する。
【0063】
選択部13および中間画像生成部14は、同様の動作を一連の変換画像P1Bについても行い、一連の変換画像P1Bにおける影sばかりが写り込んだ暗画像P2Bおよび影s以外の部分ばかりが写り込んだ明画像P3Bを生成する。
【0064】
<除去画像生成ステップS5>
中間画像生成部14が生成した暗画像P2A,P2Bおよび明画像P3A,P3Bは、除去部15に送出される。除去部15は、明画像P3Aから暗画像P2Aを減算し、除去画像P4Aを生成する。暗画像P2Aは影sばかりが写り込んでいる画像である。この影sは、図7に示すように被検体Mから発した散乱線成分のみが写り込んでいる。したがって、暗画像P2Aは、FPD4に入射する散乱線成分の強度をマッピングしたものとなっている。一方、明画像P3Aは、影s以外の部分ばかりが写り込んでいる画像である。この部分は、X線管3から直線的に進行してFPD4に向かう直接線成分と、被検体Mの内部で生じた間接線成分とが合計された像となっている。したがって、明画像P3Aは、図7に示すように被検体Mの像を構成する直接線成分と、斜線で示す間接線成分とが同時に写し込んだものとなっている。除去部15が明画像P3Aから暗画像P2Aを減算すると、明画像P3Aに重畳している間接線成分が減算されて除去されることになる。このように、除去部15が生成する除去画像P4Aは、散乱線成分が除去された鮮明なものとなる(図8参照)。
【0065】
除去部15は、同様の動作を暗画像P2B,明画像P3Bについても行い、明画像P3Bに重畳している間接線成分が除去された除去画像P4Bを生成する。
【0066】
<強調画像生成ステップS6>
除去画像P4A,P4Bは、重ね合わせ部16に送出される。重ね合わせ部16は、除去画像P4A,P4Bのそれぞれに重み付けを行った後、これらを重ね合わせて強調画像P5が生成される。重ね合わせ部16は、記憶部28に記憶されている設定値を読み出して、除去画像P4A,P4Bのそれぞれに設定値が規定する係数を乗じて、これらを足し合わせることにより強調画像P5を生成する。
【0067】
このとき生成される強調画像P5は、例えば被検体Mの透視像における骨組織のみを抜き出したものとなっている。被検体Mにおける骨組織の部分と軟組織の部分とでX線の透過特性は異なっている。しかも、この特性は照射するX線の強さに応じて変化する。したがって、例えば、高エネルギーに係る除去画像P4Aに写り込んでいる軟組織と同じ画素値になるように低エネルギーに係る除去画像P4Bの軟組織の画素値を画像処理により調整したとしても、両画像に写り込んでいる骨組織の画素値は同一とはならない。したがって、軟組織が互いにキャンセルされるように両除去画像P4A,P4Bに重み付けを行って重ね合わせても、両除去画像P4A,P4Bに写り込んでいる骨組織は完全にキャンセルされない。重ね合わせ部16は、このような現象を利用して被検体Mの骨組織のみが写り込んだ強調画像P5を取得するのである。この様な画像の強調方法をサブトラクション処理と呼ぶ。強調画像P5は、表示部25に表示される。
【0068】
<骨塩定量ステップS7>
強調画像P5は骨塩定量部17に送出される。骨塩定量部17は、強調画像P5に写り込んでいる骨組織の画素値を参照して、被検体Mの骨塩を定量する。この定量の結果は表示部25に表示される。
【0069】
以上のように、実施例1の構成によれば、X線管3に対して移動する遮蔽体5を備えている。遮蔽体5の影sが位置を変えながら元画像P0が生成される。この元画像P0における遮蔽体5の影sの部分には、何も写り込んでいないように思える。しかし、実際には被検体Mで生じた散乱線成分がこの影sの部分に写り込んでいる。選択部13と中間画像生成部11は協働して遮蔽体5の影sばかりが映り込んだ暗画像P2と遮蔽体5の影s以外の部分ばかりが写り込んだ明画像P3とを生成する。暗画像P2には、散乱線成分のみが写り込んでおり、明画像P3には、被検体Mの透視像に散乱線成分が重畳されている。除去部15は、明画像P3および暗画像P2を基に明画像P3に重畳している散乱線成分を除去する。この様な構成とすることにより、従来のように被検体Mに対してX線管3・FPD4を移動させなくとも、遮蔽体5を移動させる簡単な装置構成で鮮明な像が取得できる。
【0070】
また、遮蔽体5が遮蔽体5の移動方向に直交する体側方向Sに細長状となっていれば、各元画像P0において遮蔽体5の影sが遮蔽体5の移動方向と直交する体側方向Sに幅広の広範囲に写り込むことになる。これにより、遮蔽体5の影sのみが写り込んだ暗画像P2を生成する際に、暗画像P2は散乱線成分を元画像P0の全ての領域について写し込んだものとなる。
【0071】
そして、遮蔽体5の影sが2枚の元画像上でオーバーラップして写り込むように遮蔽体5を移動させれば、それに伴い、一連の元画像P0の全ての部分が一度は遮蔽体5の影sに覆われることになる。これにより、遮蔽体5の影sのみが写り込んだ暗画像P2を生成する際に、暗画像P2は元画像P0の全ての領域を写し込んだものとなる。
【0072】
また、遮蔽体5が1cmよりも太い幅の影となってFPD4に投影されると、遮蔽体5が大きすぎて、元画像P0に写り込む影sに十分に散乱線成分が写り込まなくなってしまう。遮蔽体5がX線管制御部6におけるX線の検出面において、遮蔽体5の移動方向に1cm以下の幅を有する影sとなって表れるようにすれば、生成される暗画像P2に確実に散乱線成分が写り込む。
【0073】
また、上述のようにX線管3,FPD4,および天板2の位置関係は撮影中変更されないようにすれば、各部材を移動させる移動手段を必要としないので、確実に装置構成が単純なX線撮影装置が提供できる。
【0074】
X線が強い状態と弱い状態の2つの状態で除去画像P4Aと除去画像P4Bとを生成し、これらを重ね合わせて強調画像P5(サブトラクション画像)を生成するようにすれば、散乱線成分に影響されない視認性に優れたサブトラクション画像を取得することができる。
【0075】
また、遮蔽体5が移動範囲の一端側から他端側に移動する間に低エネルギーの撮影と高エネルギーの撮影を交互に行わせれば、被検体Mの体動による画像の乱れを防止することができる。すなわち、暗画像P2は、遮蔽体5の影sをつなぎ合わせた構成となっている。したがって、暗画像P2において一番最初に撮影された遮蔽体5の影sが一端側に位置し、それから他端側に向けて遮蔽体5の影sが撮影された順に配列されていることになる。除去画像P4Aと除去画像P4Bとを生成する際にそれぞれ個別に暗画像P2が生成される。この暗画像P2の各部における被検体Mの位置は似通ったものとなっている。遮蔽体5が移動範囲の一端側から他端側に移動する間に低エネルギーの撮影と高エネルギーの撮影を交互に行われたのであるから、一番最初に撮影された遮蔽体5の影sは暗画像P2のそれぞれの一端側に位置し、それから他端側に向けて遮蔽体5の影sが暗画像P2のそれぞれにおいて撮影された順に配列されているからである。
【0076】
すなわち、両暗画像の一端側は、ともに撮影開始後すぐに取得された取得された遮蔽体5の影sが写り込んでおり、両画像の他端側は、ともに撮影終了間際に取得された遮蔽体5の影sが写り込んでいる。被検体Mが撮影開始から撮影終了までに体動により移動したとしても、両暗画像の同じ部分でほぼ同時に取得された散乱線成分が写り込むことになるのである。この様にすると、除去画像P4Aと除去画像P4Bとを重ね合わせた際に像のズレが少なく視認性に優れたサブトラクション画像が提供できる。
【0077】
上述の構成は、実施例1のより具体的な構成を示したものとなっている。骨塩定量においては、FPD4の視野範囲における撮影で十分であり、上述のサブトラクション画像を有効に使用できる。
【0078】
本発明は、上述の構成に限られず、下記のように変形実施することが可能である。
【0079】
(1)上述の実施例では、遮蔽体5が体軸方向Aに移動する構成となっていたが、これを体側方向Sに移動させる構成としてもよい。この場合、遮蔽体5の体側方向Sの幅は、X線撮影の際、コーン状のX線ビームBをFPD4に照射したときに影sが体側方向Sに1cm以下の幅を有するように設定されることになる。同様に、遮蔽体5の体軸方向Aの長さは、X線撮影の際、コーン状のX線ビームBをFPD4に照射したときに影sがFPD4の体軸方向Aの一端から他端の全域に亘るように設定される。
【0080】
(2)上述の実施例では、X線が高エネルギー状態での元画像P0AとX線が低エネルギー状態での元画像P0Bについて、一連の元画像P0Aと一連の元画像P0Bとには同じように遮蔽体5の影sが写り込むようになっていたが、本発明はこの様な構成に限られない。すなわち、FPD4の検出面4aに写り込む影sにおける体軸方向Aの幅の1/2未満だけ影sが体軸方向Aに移動するように遮蔽体5を移動させる様にしてもよい。
【0081】
元画像P0Aと元画像P0Bとは、交互に撮影されるのであるから(図4参照),元画像P0A1と、これの次に撮影される元画像P0B1とを比較すると、それぞれに写り込む影sA1,影sB1は、体軸方向Aにおける影sの幅の1/2に満たない分だけ互いにずれている(図9参照)。このズレ幅は、元画像P0B1と、これの次に撮影される元画像P0A2とに写り込んだ影sB1,影sA2のズレ幅と同じである。ということは、一回目に撮影された元画像P0A1と三回目に撮影された元画像P0A2とに写り込んだ影sA1,影sA2のズレ幅を比較すると、そのズレ幅は、影sの体軸方向Aの幅に満たない幅となっている。
【0082】
すなわち、体軸方向Aの幅の1/2未満だけ影sが移動する様に遮蔽体5を移動させながらX線が低エネルギー状態での撮影とX線が高エネルギー状態での撮影を交互に行うようにすれば、X線が高エネルギー状態で撮影された元画像P0Aには、影sが体軸方向にオーバーラップして写り込むことになる。同様に、X線が低エネルギー状態で撮影された元画像P0Bにも、影sが体軸方向にオーバーラップして写り込む。これにより、影sばかりが写り込んだ暗画像P2A,P2Bが確実に取得できる。なお、図9において説明の便宜上、影sを影sの長手方向にずらして描画している。実際は、取得される元画像P0においてこの様なズレは見られない。
【0083】
(3)上述した実施例では、選択部13は、元画像P0Aを構成する画素毎に画素値を比較していたが、本発明はこれに限られない。すなわち、選択部13は、2×2ピクセルなどの所定の大きさを有する画素塊ごとに比較・選択の動作をするようにしてもよい。この場合、比較の指標として画素塊の平均値を用いることができる。
【0084】
(4)上述した実施例では、ピークホールド動作をする選択部13を有する構成となっていたが本発明はこれに限られない。中間画像生成部14が元画像P0Aが撮影された時点における遮蔽体5の位置を遮蔽体移動制御部8より取得する構成としてもよい。この場合、中間画像生成部14は、遮蔽体5の位置情報と記憶部28に記憶されているX線管3、およびFPD4の位置情報を用いて、各元画像P0Aのどの部分に遮蔽体5の影sが写り込んでいるかを把握する。そして、中間画像生成部14は、各元画像P0Aの各部分で遮蔽体5の影sが写り込んでいる部分をつなぎ合わせて暗画像P2Aを生成し、同様に各元画像P0Aの各部分で遮蔽体5の影sが写り込んでいない部分をつなぎ合わせて明画像P3Aを生成するようにしてもよい。
【0085】
(5)上述した実施例は、骨塩定量を行う構成となっていたが、本発明はこれに限られない。一般的なスポット撮影や骨塩定量以外のサブトラクション撮影にも本発明を用いることができる。
【0086】
(6)上述した実施例は、医用の装置であったが、本発明は、工業用や、原子力用の装置に適用することもできる。
【0087】
(7)上述した実施例のいうX線は、本発明における放射線の一例である。したがって、本発明は、X線以外の放射線にも適応できる。
【0088】
(8)選択部13は、比較対象の画素群から最低の画素値および最高の画素値を選択するように設定されていたが、本発明はこの構成に限られない。選択部13は、最低の画素値の代わりに比較対象の画素値の平均により示されるX線量よりもX線線量の少ない画素値を選択するようにしてもよい。同様に、選択部13は、最高の画素値の代わりに比較対象の画素値の平均により示されるX線量よりもX線線量の多い画素値を選択するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0089】
P0 元画像
P2 暗画像
P3 明画像
P4A 除去画像(高エネルギー除去画像)
P4B 除去画像(低エネルギー除去画像)
P5 強調画像
2 天板
3 X線管(放射線源)
4 FPD(放射線検出手段)
5 遮蔽体
6 X線源制御部(放射線源制御手段)
7 遮蔽体移動機構(遮蔽体移動手段)
8 遮蔽体移動制御部(遮蔽体移動制御手段)
11 画像生成部(画像生成手段)
13 選択部(選択手段)
14 中間画像生成部(中間画像生成手段)
15 除去部(除去手段)
16 重ね合わせ部(重ね合わせ手段)
17 骨塩定量部(骨塩定量手段)
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体に放射線を照射することで画像を取得する放射線撮影装置に係り、特に散乱線の影響を排除して鮮明な画像を取得する放射線撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医療機関には、放射線で被検体Mの画像を取得する放射線撮影装置が備えられている。この様な放射線撮影装置51は、被検体Mを載置する天板52と、放射線を照射する放射線源53と、放射線を検出する放射線検出器54とを備えている(図10,特許文献1参照)。放射線検出器54から出力された検出信号を基に被検体Mの透視像が写り込んだ画像が取得される。
【0003】
この様な放射線撮影装置において、散乱線の影響を排除して鮮明な画像を取得できるようにした構成となっているものがある。この放射線撮影装置において、撮影を行う様子を説明する。放射線源53と放射線検出器54は、互いの位置関係を保った状態で天板52の長手方向に移動する(図10参照)。この移動の最中に複数枚の画像が取得される。この複数枚の画像をつなぎ合わせることで一枚の合成画像が生成される。
【0004】
撮影の際、放射線源53から照射される放射線の広がりが天板52の長手方向に制限されている(図10参照)。従って、撮影される各画像は、天板52の短手方向に細長上の短冊状画像となっている。図10の領域Sは、放射線検出器54における放射線ビームBが入射するの部分を示している。この領域Sは、短冊画像Tを取得する際の放射線検出器54における撮影視野となっている。
【0005】
ところで、放射線を被検体Mに透過させようとすると、放射線の一部は被検体Mの体内で散乱して散乱線sとなる。この散乱線sは、画像を不鮮明にする原因となっている。したがって、画像を取得する際にこの散乱線sを排除して撮影を行った方がよい。
【0006】
従来の構成によれば短冊画像Tの撮影を繰り返す撮影を行うことにより、散乱線sによる画像の乱れが発生しないようにしている。すなわち、被検体Mの体内で発生した散乱線sは、散乱によって進行方向が変化している。従って、散乱線sは、X線ビームBの進行方向から外れて放射線検出器54側に向かう。この様にして散乱線sが短冊画像Tを撮影する際の撮影視野である領域Sには入射しない。したがって、領域Sには画像の乱れが原因となる散乱線sが入射せず、得られる短冊画像Tは散乱線sに影響されずに鮮明な画像となる。
【0007】
そして、図11に示すように次々と取得された短冊画像Tを撮影された順に天板52の長手方向に配列すれば、被検体Mの全身像を写し込んだ合成画像が生成される。この合成画像は、散乱線sが排除されて撮影されたものとなっており、鮮明である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−160077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来の構成によれば次のような問題点がある。
すなわち、従来の放射線撮影装置によれば、放射線源53と放射線検出器54とを精度よく移動させながら撮影を行わなければならないという問題点がある。
【0010】
散乱線sの入射を防いで撮影を行うには、放射線検出器54における撮影視野を小さくして撮影を繰り返すようにしなければならない。すると、撮影視野を小さくして短冊画像Tの撮影を行うと、短冊画像Tには被検体Mのごく一部しか写り込んでいないので、被検体Mの全身像を得ようとうすると、放射線源53と放射線検出器54を天板52に対して移動させることが必須となる。
【0011】
しかも、短冊画像T同士で撮影条件を一致させる必要がある。さもないと、生成される合成画像の短冊画像Tのつなぎ目において、被検体Mの像に食い違いが発生するからである。したがって、天板52に対して放射線源53と放射線検出器54とを互いの位置関係を保った状態で正確に移動させなければならない。このような高精度の移動を実現しようとすれば、放射線撮影装置51自体が大がかりなものとなり、装置の製造コストも増加する。
【0012】
この様に、装置の設置スペースや装置のコストを抑制するには、放射線源53と放射線検出器54とを移動させなくても散乱線の排除された鮮明な画像を取得できる構成が望まれる。
【0013】
本発明は、この様な事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、より簡単な構成で散乱線の排除された鮮明な画像を取得できる放射線撮影装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は上述の課題を解決するために次のような構成をとる。
すなわち、本発明に係る放射線撮影装置は、放射線を照射する放射線源と、放射線源を制御する放射線源制御手段と、照射された放射線を検出して検出信号を出力する放射線検出手段と、放射線源と放射線検出手段とに挟まれる位置に設けられた被検体を載置する天板と、放射線源と天板とに挟まれる位置に設けられるとともに放射線源から照射される放射線の一部を遮蔽する遮蔽体と、遮蔽体を放射線源に対して移動させる遮蔽体移動手段と、遮蔽体移動手段を制御する遮蔽体移動制御手段と、遮蔽体を放射線源に対して移動させながら次々と撮影を行うことにより、遮蔽体の影が位置を変えながら写り込んでいる元画像を検出信号から次々と生成する画像生成手段と、各元画像における遮蔽体の影が写り込んでいる部分のみをつなぎ合わせて暗画像を生成し、同様に各元画像における遮蔽体の影が写り込んでいない部分のみをつなぎ合わせて明画像を生成する中間画像生成手段と、暗画像を基に明画像に重畳している散乱線成分が除去された除去画像を生成する除去手段とを備えることを特徴とするものである。
【0015】
[作用・効果]本発明の構成によれば、放射線源に対して移動する遮蔽体を備えている。遮蔽体の影が位置を変えながら元画像が生成される。この元画像における遮蔽体の影の部分には、何も写り込んでいないように思える。しかし、実際には被検体で生じた散乱線成分がこの影の部分に写り込んでいる。中間画像生成手段は遮蔽体の影ばかりが映り込んだ暗画像と遮蔽体の影以外の部分ばかりが写り込んだ明画像とを生成する。暗画像には、散乱線成分のみが写り込んでおり、明画像には、被検体の透視像に散乱線成分が重畳されている。除去手段は、明画像および暗画像を基に明画像に重畳している散乱線成分を除去する。この様な構成とすることにより、従来のように被検体に対して放射線源・放射線検出手段を移動させなくとも、遮蔽体を移動させる簡単な装置構成で鮮明な像が取得できる。
【0016】
また、上述の放射線撮影装置において、元画像のある部分の画素値と、他の元画像におけるその部分に相当する部分の画素値の各々とを比較し、比較対象のうちの1つを選択するとともに、この動作を元画像の領域を変更しながら繰り返し行う選択手段を備え、選択手段は、比較対象の画素値の平均により示される放射線量よりも放射線量の多い画素値となっている部分を選択し、これを中間画像生成手段がマッピングすることにより明画像が生成され、同様に選択手段は、選択手段が比較対象の画素値の平均により示される放射線量よりも放射線量の少ない画素値となっている部分を選択し、これを中間画像生成手段がマッピングすることにより暗画像が生成されればより望ましい。
【0017】
[作用・効果]上述の構成は、本発明のより具体的な構成を示したものとなっている。選択手段が元画像における放射線量が多く明るい部分を選択することにより中間画像生成手段が明画像を生成し、同様に、選択手段が元画像における放射線量が少なく暗い部分を選択することにより中間画像生成手段が暗画像を生成するようにすれば、確実に明画像・暗画像を得ることができる。
【0018】
また、上述の放射線撮影装置において、選択手段は、各元画像の画素毎に比較・選択を行えばより望ましい。
【0019】
[作用・効果]上述の構成は、本発明のより具体的な構成を示したものとなっている。選択手段が各画像の画素毎に比較・選択を行うようにすれば、より鮮明な除去画像が取得できる。
【0020】
また、上述の放射線撮影装置において、遮蔽体は、遮蔽体の移動方向と直交する方向に細長状となっていればより望ましい。
【0021】
[作用・効果]上述の構成は、本発明のより具体的な構成を示したものとなっている。遮蔽体が遮蔽体の移動方向に直交する方向に細長状となっていれば、各元画像において遮蔽体の影が遮蔽体の移動方向と直交する方向に幅広の広範囲に写り込むことになる。これにより、遮蔽体の影のみが写り込んだ暗画像を生成する際に、暗画像は散乱線成分を元画像の全ての領域について写し込んだものとなる。
【0022】
また、上述の放射線撮影装置において、遮蔽体移動手段は、選択手段が比較に用いる元画像のうち撮影が経時的に隣接している2枚の元画像において、遮蔽体の影がオーバーラップして写り込むように遮蔽体を移動させればより望ましい。
【0023】
[作用・効果]上述の構成は、本発明のより具体的な構成を示したものとなっている。遮蔽体の影が2枚の元画像上でオーバーラップして写り込むように遮蔽体を移動させれば、それに伴い、一連の元画像の全ての部分が一度は遮蔽体の影に覆われることになる。これにより、遮蔽体の影のみが写り込んだ暗画像を生成する際に、暗画像は元画像の全ての領域を写し込んだものとなる。
【0024】
また、上述の放射線撮影装置において、遮蔽体は、撮影の際に、放射線検出手段における放射線の検出面において、遮蔽体の移動方向に1cm以下の幅を有する影となって表れればより望ましい。
【0025】
[作用・効果]上述の構成は、本発明のより具体的な構成を示したものとなっている。遮蔽体が1cmよりも太い幅の影となって放射線検出器に投影されると、遮蔽体が大きすぎて、元画像に写り込む影に十分に散乱線成分が写り込まなくなってしまう。遮蔽体が放射線源制御手段における放射線の検出面において、遮蔽体の移動方向に1cm以下の幅を有する影となって表れるようにすれば、生成される暗画像に確実に散乱線成分が写り込む。
【0026】
また、上述の放射線撮影装置において、放射線源、放射線検出手段、および天板の位置関係は撮影中変更されなければより望ましい。
【0027】
[作用・効果]上述の構成は、本発明のより具体的な構成を示したものとなっている。放射線源、放射線検出手段、および天板の位置関係は撮影中変更されないようにすれば、各部材を移動させる移動手段を必要としないので、確実に装置構成が単純な放射線撮影装置が提供できる。
【0028】
また、上述の放射線撮影装置において、放射線源制御手段は、放射線源を制御して放射線が高エネルギー状態と低エネルギー状態の2つの状態で撮影を行わせ、除去手段は、放射線が高エネルギー状態で撮影された高エネルギー除去画像と、放射線が低エネルギー状態で撮影された低エネルギー除去画像とを生成し、高エネルギー除去画像と低エネルギー除去画像とに重み付けを行い、これらを重ね合わせて強調画像を生成する重ね合わせ手段を更に備えればより望ましい。
【0029】
[作用・効果]上述の構成は、本発明のより具体的な構成を示したものとなっている。放射線が高エネルギー状態と低エネルギー状態の2つの状態で高エネルギー除去画像と低エネルギー除去画像とを生成し、これらを重ね合わせて強調画像(サブトラクション画像)を生成するようにすれば、散乱線成分に影響されない視認性に優れたサブトラクション画像を取得することができる。
【0030】
また、上述の放射線撮影装置において、放射線源制御手段は、遮蔽体が移動範囲の一端側から他端側に移動する間に低エネルギーの撮影と高エネルギーの撮影を交互に行わせればより望ましい。
【0031】
[作用・効果]上述の構成は、本発明のより具体的な構成を示したものとなっている。遮蔽体が移動範囲の一端側から他端側に移動する間に低エネルギーの撮影と高エネルギーの撮影を交互に行わせれば、被検体の体動による画像の乱れを防止することができる。すなわち、暗画像は、遮蔽体の影をつなぎ合わせた構成となっている。したがって、暗画像において一番最初に撮影された遮蔽体の影が一端側に位置し、それから他端側に向けて遮蔽体の影が撮影された順に配列されていることになる。高エネルギー除去画像と低エネルギー除去画像とを生成する際にそれぞれ個別に暗画像が生成される。この暗画像の各部における被検体の位置は似通ったものとなっている。遮蔽体が移動範囲の一端側から他端側に移動する間に低エネルギーの撮影と高エネルギーの撮影を交互に行われたのであるから、一番最初に撮影された遮蔽体の影は、2枚の暗画像のそれぞれにおける一端側に位置し、それから他端側に向けて遮蔽体の影が撮影された順に2枚の暗画像のそれぞれに配列されているからである。この様にすると、高エネルギー除去画像と低エネルギー除去画像とを重ね合わせた際に像のズレが少なく視認性に優れたサブトラクション画像が提供できる。
【0032】
また、上述の放射線撮影装置において、強調画像を基に骨塩定量を行う骨塩定量手段を更に備えればより望ましい。
【0033】
[作用・効果]上述の構成は、本発明のより具体的な構成を示したものとなっている。骨塩定量においては、放射線検出手段の視野範囲における撮影で十分であり、上述のサブトラクション画像を有効に使用できる。
【発明の効果】
【0034】
本発明の構成によれば、放射線源に対して移動する遮蔽体を備えている。遮蔽体の影が位置を変えながら元画像が生成される。中間画像生成手段は遮蔽体の影ばかりが映り込んだ暗画像と遮蔽体の影以外の部分ばかりが写り込んだ明画像とを生成する。暗画像には、散乱線成分のみが写り込んでおり、明画像には、被検体の透視像に散乱線成分が重畳されている。除去手段は、明画像および暗画像を基に明画像に重畳している散乱線成分を除去する。これにより、より簡単な構成で散乱線の排除された鮮明な画像を取得できる放射線撮影装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】実施例1に係るX線撮影装置の構成を説明する機能ブロック図である。
【図2】実施例1に係る遮蔽体を説明する斜視図である。
【図3】実施例1に係るX線撮影装置の動作を説明するフローチャートである。
【図4】実施例1に係るX線撮影装置の動作を説明する模式図である。
【図5】実施例1に係るX線撮影装置の動作を説明する模式図である。
【図6】実施例1に係るX線撮影装置の動作を説明する模式図である。
【図7】実施例1に係るX線撮影装置の動作を説明する模式図である。
【図8】実施例1に係るX線撮影装置の動作を説明する模式図である。
【図9】本発明の1変形例に係るX線撮影装置の動作を説明する模式図である。
【図10】従来構成のX線撮影装置の構成を説明する模式図である。
【図11】従来構成のX線撮影装置の構成を説明する模式図である。
【実施例1】
【0036】
<X線撮影装置の全体構成>
まず、実施例1に係るX線撮影装置1の構成について説明する。X線撮影装置1は、図1に示すように被検体Mを載置する天板2と、天板2の上側に設けられたX線を照射するX線管3と、天板2の下側に設けられたX線を検出するFPD4とを備えている。FPD4は、被検体Mの体軸方向Aまたは体側方向Sのいずれかに沿った4つの辺を有する矩形となっている。また、X線管3は、放射状に広がる四角錐状のX線ビームをFPD4に向けて照射する。FPD4は、X線ビームを全面で受光することになる。FPD4のX線を検出する検出面4aには、X線検出素子が体軸方向Aおよび体側方向Sに2次元的に配列されている。X線管3は、本発明の放射線源に相当し、FPD4は、本発明の放射線検出手段に相当する。
【0037】
X線管制御部6は、所定の管電流、管電圧、パルス幅でX線管3を制御する目的で設けられている。FPD4は、X線管3から発せられ、被検体Mを透過したX線を検出して検出信号を生成する。この検出信号は、画像生成部11に送出され、そこで被検体Mの投影像が写り込んだ元画像P0が生成される。X線管制御部6は、本発明の放射線源制御手段に相当し、画像生成部11は、本発明の画像生成手段に相当する。
【0038】
遮蔽体5は、鉛などで構成され、X線管3と天板2とに挟まれる位置に設けられている。遮蔽体5は、X線を吸収する特性を有している。したがって、X線管3から発したX線が遮蔽体5に入射すると、X線はそこで吸収されFPD4側に向かうことができない。したがって、FPD4には遮蔽体5の影が写り込むことになる。
【0039】
遮蔽体移動機構7は、遮蔽体5を移動させる目的で設けられている。従って、遮蔽体5は、遮蔽体移動機構7によってFPD4の一端側からFPD4の他端側に向けて天板2の長手方向(体軸方向A)に沿って移動する。すると遮蔽体5はX線管3に対して移動する。これに伴いFPD4に写り込む遮蔽体5の影の位置は、この遮蔽体5の移動に伴って変化していくことになる。遮蔽体移動制御部8は、遮蔽体移動機構7を制御する目的で設けられている。遮蔽体移動機構7は、本発明の遮蔽体移動手段に相当し、遮蔽体移動制御部8は、本発明の遮蔽体移動制御手段に相当する。
【0040】
図2を参照して、遮蔽体5の具体的な構成について説明する。遮蔽体5は、移動方向である体軸方向A(天板2の長手方向)と直交する体側方向S(天板2の短手方向)に伸びた棒状(細長状)となっている。この遮蔽体5の長さおよび幅は、FPD4のX線を検出する検出面4aに写り込む遮蔽体5の影sを基に決定されている。すなわち、遮蔽体5の体軸方向Aの幅は、X線撮影の際、コーン状のX線ビームBをFPD4に照射したときに影sが体軸方向Aに1cm以下の幅を有するように設定されている。したがって、図2における幅wは、1cm以下となっている。また、遮蔽体5の体側方向Sの長さは、X線撮影の際、コーン状のX線ビームBをFPD4に照射したときに影sがFPD4の体側方向Sの一端から他端の全域に亘るように設定される。したがって、体側方向Sにおける検出面4aと影sとの幅は一致している。X線管3からX線が放射状に広がることを利用して、影sが上述の設定を満たすように遮蔽体5の形状を決定することができる。遮蔽体5の形状は、X線管3の焦点から検出面4aまでの距離、およびX線管3の焦点から遮蔽体5までの距離を用いた幾何学的な計算により決定できる。
【0041】
log変換部12は(図1参照),元画像P0をlog変換して変換画像P1を生成する目的で設けられている。選択部13は、変換画像P1のある部分に写り込んでいる像を各変換画像P1の間で比較し、画素値を基に比較対象のうちの1つを選択する構成となっており、中間画像生成部14は、選択部13が動作を繰り返すことにより選択された各部分をマッピングして中間画像(暗画像P2,明画像P3)を生成する構成となっている。そして、除去部15は、暗画像P2,明画像P3同士を減算して除去画像P4A,P4Bを生成する目的で設けられており、重ね合わせ部16は、撮影条件の異なる除去画像P4A,P4Bを重ね合わせて強調画像P5を生成する構成となっている。骨塩定量部17は、強調画像P5を基に骨塩定量を行う目的で設けられている。選択部13は、本発明の選択手段に相当し、中間画像生成部14は、本発明の中間画像生成手段に相当する。また、除去部15は、本発明の除去手段に相当し、重ね合わせ部16は、本発明の重ね合わせ手段に相当する。また、骨塩定量部17は、本発明の骨塩定量手段に相当し、除去画像P4Aは、本発明の高エネルギー除去画像に相当する。そして、除去画像P4Bは、本発明の低エネルギー除去画像に相当する。
【0042】
表示部25は、X線撮影により取得された各画像を表示したり、骨塩定量検査の結果を表示する目的で設けられている。操作卓26は、術者によるX線照射開始などの指示を入力させる目的で設けられている。また、主制御部27は、各制御部を統括的に制御する目的で設けられている。この主制御部27は、CPUによって構成され、各種のプログラムを実行することにより各制御部6,7,および各部11,12,13,14,15,16,17を実現している。また、上述の各部は、それらを担当する演算装置に分割されて実行されてもよい。記憶部28は、画像処理に用いられるパラメータ、画像処理に伴って生成される中間画像等のX線撮影装置1の制御に関するパラメータの一切を記憶する。
【0043】
<X線撮影装置の動作>
次に、X線撮影装置1の動作について説明する。このX線撮影装置1の動作の一例として、撮影条件の異なる二つの画像を重ね合わせて強調画像(サブトラクション画像)を生成するサブトラクション撮影を行うものとする。実施例1に係るX線撮影装置1を用いて被検体Mの撮影を行うには、図3に示すように、まず被検体Mを天板2に載置し(載置ステップS1),元画像P0の撮影が開始される(撮影開始ステップS2)。そして、撮影された元画像P0を基に変換画像P1を生成し(log変換ステップS3),変換画像P1を基に中間画像(暗画像P2,明画像P3)が生成される(中間画像生成ステップS4)。そして、中間画像を基に除去画像P4A,P4Bが生成され(除去画像生成ステップS5),除去画像P4A,P4Bを基に強調画像P5が生成される(強調画像生成ステップS6)。以降、これらの各ステップについて順を追って説明する。なお、骨塩定量ステップS7は、被検体Mの骨塩定量検査をする場合に追加される動作であり、強調画像生成ステップS6の後で行われる。
【0044】
<載置ステップS1,撮影開始ステップS2>
天板2に被検体Mを載置した後、術者が操作卓26を通じて撮影開始の指示をX線撮影装置1に与えると、X線管制御部6は、記憶部28に記憶されている管電圧・管電流・パルス幅などのX線管3の制御に関する設定値を読み出す。X線管制御部6は、この設定値通りにX線管3を制御し、X線管3にX線を断続的に発生させる。被検体Mを透過したX線は、FPD4で検出され、このときの検出信号が画像生成部11に送出される。画像生成部11は、検出信号を基に被検体Mの透視像が写り込んだ元画像P0を生成する。
【0045】
撮影開始の情報は遮蔽体移動制御部8にも送られる。遮蔽体移動制御部8は、撮影開始と同時に初期位置に存している遮蔽体5の移動を開始する。画像生成部11は、遮蔽体5をX線管3に対して移動させている状態で次々とX線撮影を行うことにより、遮蔽体5の影sが位置を変えながら写り込んでいる元画像P0を次々と撮影する。このとき、移動するのは遮蔽体5のみであり、X線管3,FPD4,および天板2の位置関係は撮影中に変更されることはない。
【0046】
このとき撮影される元画像P0について説明する。図4は、元画像P0が連写される様子を示している。一連の元画像P0の撮影中、X線管3が時間d(例えば33m秒)だけのインターバルを設けながらパルス状のX線ビームの照射が繰り返される。この照射の度に元画像P0が撮影される。しかも、X線ビームの照射は、高い管電圧によるX線が高エネルギー状態での照射p1と低い管電圧によるX線が低エネルギー状態での照射p2とが経時的に交互に行われるようになっている。X線が高エネルギー状態での照射p1で生成される元画像P0を符号P0Aで表すものとし、X線が低エネルギー状態での照射p2で生成される元画像P0を符号P0Bで示すもとする。元画像P0Aのうち最初に撮影された元画像P0A1には、図4に示すように、被検体Mの透視像と、遮蔽体5の影sとの両方が写り込んでいる。元画像P0Aにおける遮蔽体5の影sの部分では、遮蔽体5によってX線ビームが遮られた状態となっているので、この部分には被検体Mの像は写り込んでいない。
【0047】
それでは、影sに何も写り込んでいないかと言うとそうではない。X線ビームのうち、被検体Mで進行方向が変化した散乱線成分がFPD4における影sが写り込んでいる部分に入射するからである。したがって、元画像P0に写り込んでいる影sには、被検体Mより生じる散乱線成分のみが写り込んでおり、被検体Mの透視像は写り込んでいない。
【0048】
元画像P0A1は、遮蔽体5が初期位置にあるときに撮影されたものである。遮蔽体5の初期位置は、影sが元画像P0Aの一端に表れるように決定されている。遮蔽体5の初期位置は、遮蔽体5の体軸方向Aにおける幅w,X線管3の焦点から検出面4aまでの距離、およびX線管3の焦点から遮蔽体5までの距離を用いた幾何学的な計算により決定できる。
【0049】
図4における元画像P0A2は、元画像P0A1と同じ高い管電圧で撮影された画像である。両画像の撮影の間に遮蔽体5がFPD4の一端側から他端側に向けて移動しているので、両画像における影sが写り込んでいる位置は互いに異なっている。
【0050】
連写される元画像P0Aに影sがどのように写り込むかを説明する。図5は、元画像P0Aにおける影sの位置を示したものとなっている。図5における符号s1は、元画像P0A1に写り込んでいる影sを意味しており、以降同様に、符号snは、元画像P0Anに写り込んでいる影sを意味している。図5を参照すれば分かるように、影s1と影s2は、体軸方向Aにオーバーラップしている。このように、撮影が経時的に隣接している2枚の元画像P0Aにおいて、遮蔽体5の影sがオーバーラップして写り込んでいる。つまり、遮蔽体移動制御部8は、撮影の際、経時的に隣接している2枚の元画像P0Aに影sがオーバーラップするような速度で遮蔽体5を移動させる。より具体的には、撮影の際、経時的に隣接している2枚の元画像P0Aにおいて、影sが被検体Mの体軸方向Aの幅未満だけ位置を変えながら写り込むように遮蔽体5の速度が決定される。遮蔽体5の速度は、X線管3の焦点から検出面4aまでの距離、およびX線管3の焦点から遮蔽体5までの距離を用いた幾何学的な計算により決定できる。
【0051】
影snは、元画像P0Aのうち、最後に撮影された元画像P0Anに写り込んでいる遮蔽体5の位置を表している。元画像P0Anは、遮蔽体5が最終位置にあるときに撮影されたものである。遮蔽体5の最終位置は、影sが元画像P0Aの他端に表れるように決定されている。遮蔽体5の最終位置は、遮蔽体5の体軸方向Aにおける幅w,X線管3の焦点から検出面4aまでの距離、およびX線管3の焦点から遮蔽体5までの距離を用いた幾何学的な計算により決定できる。
【0052】
元画像P0A,P0Bのそれぞれには、20cm×20cmの視野範囲内の被検体Mが写り込んでいる。遮蔽体5の影sは、例えば1cmの幅でFPD4に写り込んでいるので、体軸方向における視野範囲の幅の1/20は影sが写り込んでいることになる。20cmの幅を1cm幅の影sが互いにオーバーラップしながら覆い尽くすように元画像P0Aが撮影されることからすれば、撮影される元画像P0Aの枚数は、20枚よりも多いものとなっていることになる。
【0053】
撮影開始ステップS2において、X線管3の管電圧が高い状態で元画像P0Aが撮影される。この撮影最中に、X線管3の管電圧が低い状態で元画像P0Bも撮影される。元画像P0Bは、遮蔽体5が移動する間に複数枚連写され、その撮影の様子は元画像P0Bと同様である。したがって、元画像P0Bに写り込む影sの位置、および遮蔽体5の移動の様子は、図5を用いた上述の説明のとおりとなっている。このように遮蔽体5が移動範囲の一端側から他端側に移動する間に低線量の撮影と高線量の撮影とが交互に行われて一連の元画像P0A,P0Bが撮影されることになる。
【0054】
<log変換ステップS3>
撮影された元画像P0A,P0Bは、log変換部12に送出される。log変換部12は、元画像P0A,P0Bを構成する画素データの値をlog変換した後、これをマッピングし、変換画像P1を生成する。高管電圧に係る元画像P0Aがlog変換された変換画像を符号P1Aで表すものとし、低管電圧に係る元画像P0Bがlog変換された変換画像を符号P1Bで表すものとする。このlog変換は、強調画像(サブトラクション画像)を生成する際の下準備である。このlog変換動作を行うことにより高管電圧に係る画像と低管電圧に係る画像との差違が判然とするようになる。
【0055】
<中間画像生成ステップS4>
前ステップで生成された変換画像P1A,P1Bは、選択部13に送出される。選択部13は、後述の中間画像生成部14と協働して、変換画像P1Aに対しピークホールド処理をすることにより暗画像P2Aおよび明画像P3Aを生成し、変換画像P1Bに対しピークホールド処理をすることにより暗画像P2Bおよび明画像P3Bを生成する。
【0056】
暗画像P2Aを生成するときの選択部13の動作について説明する。選択部13は、図6に示すように、変換画像P1Aを構成する画素の内の1つに注目し、この注目の画素Rを変換画像P1A1〜P1Anに亘って比較する。つまり、選択部13は、画素Rについてn個の画素値を比較することになる。選択部13が比較するn個の画素Rは、被検体Mの同じ部分を写し込んでいる。しかし、n個の画素Rの中には遮蔽体5の影sが写り込んでいるものがあり、それらには遮蔽体5の異なる部分が写り込んでいる。元画像P0Aは、遮蔽体5をFPD4に対して移動させながら撮影されたものだからである。
【0057】
そして、選択部13は、n個の画素値のうち比較対象のn個の画素における画素値の平均よりも低い画素値、具体的には最も画素値が低い画素値を選択して、これを中間画像生成部14に送出する。この様に選択部13は、変換画像P1Aの画素毎に比較・選択を行う。
【0058】
選択部13は、上述の比較・選択を変換画像P1Aを構成する画素の全てにおいて実行し、その度毎に選択された画素値が中間画像生成部14に出力される。このように、選択部13は、元画像P0Aを変換した変換画像P1Aのある画素に写り込んでいる像を一連の変換画像P1Aの間で比較し、最も低い画素値を有する画素を比較対象の画素うちの1つを選択するとともに、この動作を変換画像P1Aの領域を変更しながら繰り返し行う。一連の変換画像P1Aにおける最も低い画素値は、X線量が最も少ない画素値であることを意味している。つまり、選択部13は、元画像P0A(具体的には変換画像P1A)のある部分の画素値と、他の元画像P0A(具体的には他の変換画像P1A)におけるその部分に相当する部分の画素値の各々とを比較し、比較対象のうちの1つを選択するとともに、この動作を元画像P0A(具体的には変換画像P1A)の領域を変更しながら繰り返し行う。
【0059】
中間画像生成部14は、選択部13が選択した各画素値をマッピングすることにより、変換画像P1A〜P1Anを構成する画素値のうち最低の画素値を画像上の画素の位置ごとに選抜された暗画像P2Aを生成する(図7参照)。この暗画像P2Aに属する画素は、必ず画像上の影sに位置する画素が選抜されたものとなっている。この理由について説明する。図5を用いて説明したように、影sは、一連の元画像P0Aにおいてオーバーラップして写り込んでいる。そして、変換画像P1Aの各々に写り込む影sの部分は、影s以外の部分と比べて極端に暗い。従って、選択部13が暗画像P2Aを生成しようとして、一連の元画像P0Aに亘って注目の画素を比較したときに、比較対象の画素のいずれかは影sを写し込んだものとなっている。そして、その影sを写し込んだ画素値は、影sを写し込んでいない画素値と比べて極端に低い。したがって、選択部13が最も暗い画素値を選択すると影sを写し込んだ画素の画素値を必然的に選択することになる。選択された画素値を基に生成された暗画像P2Aは、一連の変換画像P1Aに写り込む影sを抜き出したものとなっている(図7参照)。つまり、中間画像生成部14は、各元画像P0A(具体的には各変換画像P1A)における遮蔽体5の影sが写り込んでいる部分のみをつなぎ合わせて暗画像P2Aを生成する。
【0060】
次に、明画像P3Aを生成するときの選択部13の動作について説明する。選択部13は、明るい画素値について同様の選択を行う。すなわち、選択部13は、図6を用いて説明した要領で、変換画像P1A1〜P1Anにおける同じ位置に存するn個の画素の画素値のうち今度は比較対象のn個の画素における画素値の平均よりも高い画素値、具体的には最も画素値が高い画素値を選択して、これを中間画像生成部14に送出する。
【0061】
選択部13は、上述の比較・選択を変換画像P1Aを構成する画素の全てにおいて実行し、その度毎に選択された画素値が中間画像生成部14に出力される。このように、選択部13は、元画像P0Aの変換画像P1Aのある画素に写り込んでいる像を一連の変換画像P1Aの間で比較し、最も高い画素値を有する画素を比較対象の画素うちの1つを選択するとともに、この動作を変換画像P1Aの領域を変更しながら繰り返し行う。一連の変換画像における最も高い画素値は、X線量が最も多い画素値であることを意味している。
【0062】
中間画像生成部14は、選択部13が選択した各画素値をマッピングすることにより、変換画像P1A〜P1Anを構成する画素値のうち最高の画素値が画像上の画素の位置ごとに選抜された明画像P3Aを生成する(図7参照)。この明画像P3Aに属する画素は、必ず画像上の影s以外に位置する画素が選抜されたものとなっている。変換画像P1Aの各々に写り込む影sの部分は、影s以外の部分と比べて極端に明い。従って、選択部13が明画像P3Aを生成しようとして、一連の元画像P0Aに亘って注目の画素を比較したときに、影sを写し込んでいない画素値は、影sを写し込んでいる画素値と比べて極端に高い。したがって、選択部13が最も明い画素値を選択すると影sを写し込んでいない画素の画素値を必然的に選択することになる。選択された画素値を基に生成された明画像P3Aは、一連の変換画像P1Aに写り込む影s以外の部分を抜き出したものとなっている(図7参照)。つまり、中間画像生成部14は、各元画像P0A(具体的には変換画像P1A)における遮蔽体5の影sが写り込んでいない部分のみをつなぎ合わせて明画像P3Aを生成する。
【0063】
選択部13および中間画像生成部14は、同様の動作を一連の変換画像P1Bについても行い、一連の変換画像P1Bにおける影sばかりが写り込んだ暗画像P2Bおよび影s以外の部分ばかりが写り込んだ明画像P3Bを生成する。
【0064】
<除去画像生成ステップS5>
中間画像生成部14が生成した暗画像P2A,P2Bおよび明画像P3A,P3Bは、除去部15に送出される。除去部15は、明画像P3Aから暗画像P2Aを減算し、除去画像P4Aを生成する。暗画像P2Aは影sばかりが写り込んでいる画像である。この影sは、図7に示すように被検体Mから発した散乱線成分のみが写り込んでいる。したがって、暗画像P2Aは、FPD4に入射する散乱線成分の強度をマッピングしたものとなっている。一方、明画像P3Aは、影s以外の部分ばかりが写り込んでいる画像である。この部分は、X線管3から直線的に進行してFPD4に向かう直接線成分と、被検体Mの内部で生じた間接線成分とが合計された像となっている。したがって、明画像P3Aは、図7に示すように被検体Mの像を構成する直接線成分と、斜線で示す間接線成分とが同時に写し込んだものとなっている。除去部15が明画像P3Aから暗画像P2Aを減算すると、明画像P3Aに重畳している間接線成分が減算されて除去されることになる。このように、除去部15が生成する除去画像P4Aは、散乱線成分が除去された鮮明なものとなる(図8参照)。
【0065】
除去部15は、同様の動作を暗画像P2B,明画像P3Bについても行い、明画像P3Bに重畳している間接線成分が除去された除去画像P4Bを生成する。
【0066】
<強調画像生成ステップS6>
除去画像P4A,P4Bは、重ね合わせ部16に送出される。重ね合わせ部16は、除去画像P4A,P4Bのそれぞれに重み付けを行った後、これらを重ね合わせて強調画像P5が生成される。重ね合わせ部16は、記憶部28に記憶されている設定値を読み出して、除去画像P4A,P4Bのそれぞれに設定値が規定する係数を乗じて、これらを足し合わせることにより強調画像P5を生成する。
【0067】
このとき生成される強調画像P5は、例えば被検体Mの透視像における骨組織のみを抜き出したものとなっている。被検体Mにおける骨組織の部分と軟組織の部分とでX線の透過特性は異なっている。しかも、この特性は照射するX線の強さに応じて変化する。したがって、例えば、高エネルギーに係る除去画像P4Aに写り込んでいる軟組織と同じ画素値になるように低エネルギーに係る除去画像P4Bの軟組織の画素値を画像処理により調整したとしても、両画像に写り込んでいる骨組織の画素値は同一とはならない。したがって、軟組織が互いにキャンセルされるように両除去画像P4A,P4Bに重み付けを行って重ね合わせても、両除去画像P4A,P4Bに写り込んでいる骨組織は完全にキャンセルされない。重ね合わせ部16は、このような現象を利用して被検体Mの骨組織のみが写り込んだ強調画像P5を取得するのである。この様な画像の強調方法をサブトラクション処理と呼ぶ。強調画像P5は、表示部25に表示される。
【0068】
<骨塩定量ステップS7>
強調画像P5は骨塩定量部17に送出される。骨塩定量部17は、強調画像P5に写り込んでいる骨組織の画素値を参照して、被検体Mの骨塩を定量する。この定量の結果は表示部25に表示される。
【0069】
以上のように、実施例1の構成によれば、X線管3に対して移動する遮蔽体5を備えている。遮蔽体5の影sが位置を変えながら元画像P0が生成される。この元画像P0における遮蔽体5の影sの部分には、何も写り込んでいないように思える。しかし、実際には被検体Mで生じた散乱線成分がこの影sの部分に写り込んでいる。選択部13と中間画像生成部11は協働して遮蔽体5の影sばかりが映り込んだ暗画像P2と遮蔽体5の影s以外の部分ばかりが写り込んだ明画像P3とを生成する。暗画像P2には、散乱線成分のみが写り込んでおり、明画像P3には、被検体Mの透視像に散乱線成分が重畳されている。除去部15は、明画像P3および暗画像P2を基に明画像P3に重畳している散乱線成分を除去する。この様な構成とすることにより、従来のように被検体Mに対してX線管3・FPD4を移動させなくとも、遮蔽体5を移動させる簡単な装置構成で鮮明な像が取得できる。
【0070】
また、遮蔽体5が遮蔽体5の移動方向に直交する体側方向Sに細長状となっていれば、各元画像P0において遮蔽体5の影sが遮蔽体5の移動方向と直交する体側方向Sに幅広の広範囲に写り込むことになる。これにより、遮蔽体5の影sのみが写り込んだ暗画像P2を生成する際に、暗画像P2は散乱線成分を元画像P0の全ての領域について写し込んだものとなる。
【0071】
そして、遮蔽体5の影sが2枚の元画像上でオーバーラップして写り込むように遮蔽体5を移動させれば、それに伴い、一連の元画像P0の全ての部分が一度は遮蔽体5の影sに覆われることになる。これにより、遮蔽体5の影sのみが写り込んだ暗画像P2を生成する際に、暗画像P2は元画像P0の全ての領域を写し込んだものとなる。
【0072】
また、遮蔽体5が1cmよりも太い幅の影となってFPD4に投影されると、遮蔽体5が大きすぎて、元画像P0に写り込む影sに十分に散乱線成分が写り込まなくなってしまう。遮蔽体5がX線管制御部6におけるX線の検出面において、遮蔽体5の移動方向に1cm以下の幅を有する影sとなって表れるようにすれば、生成される暗画像P2に確実に散乱線成分が写り込む。
【0073】
また、上述のようにX線管3,FPD4,および天板2の位置関係は撮影中変更されないようにすれば、各部材を移動させる移動手段を必要としないので、確実に装置構成が単純なX線撮影装置が提供できる。
【0074】
X線が強い状態と弱い状態の2つの状態で除去画像P4Aと除去画像P4Bとを生成し、これらを重ね合わせて強調画像P5(サブトラクション画像)を生成するようにすれば、散乱線成分に影響されない視認性に優れたサブトラクション画像を取得することができる。
【0075】
また、遮蔽体5が移動範囲の一端側から他端側に移動する間に低エネルギーの撮影と高エネルギーの撮影を交互に行わせれば、被検体Mの体動による画像の乱れを防止することができる。すなわち、暗画像P2は、遮蔽体5の影sをつなぎ合わせた構成となっている。したがって、暗画像P2において一番最初に撮影された遮蔽体5の影sが一端側に位置し、それから他端側に向けて遮蔽体5の影sが撮影された順に配列されていることになる。除去画像P4Aと除去画像P4Bとを生成する際にそれぞれ個別に暗画像P2が生成される。この暗画像P2の各部における被検体Mの位置は似通ったものとなっている。遮蔽体5が移動範囲の一端側から他端側に移動する間に低エネルギーの撮影と高エネルギーの撮影を交互に行われたのであるから、一番最初に撮影された遮蔽体5の影sは暗画像P2のそれぞれの一端側に位置し、それから他端側に向けて遮蔽体5の影sが暗画像P2のそれぞれにおいて撮影された順に配列されているからである。
【0076】
すなわち、両暗画像の一端側は、ともに撮影開始後すぐに取得された取得された遮蔽体5の影sが写り込んでおり、両画像の他端側は、ともに撮影終了間際に取得された遮蔽体5の影sが写り込んでいる。被検体Mが撮影開始から撮影終了までに体動により移動したとしても、両暗画像の同じ部分でほぼ同時に取得された散乱線成分が写り込むことになるのである。この様にすると、除去画像P4Aと除去画像P4Bとを重ね合わせた際に像のズレが少なく視認性に優れたサブトラクション画像が提供できる。
【0077】
上述の構成は、実施例1のより具体的な構成を示したものとなっている。骨塩定量においては、FPD4の視野範囲における撮影で十分であり、上述のサブトラクション画像を有効に使用できる。
【0078】
本発明は、上述の構成に限られず、下記のように変形実施することが可能である。
【0079】
(1)上述の実施例では、遮蔽体5が体軸方向Aに移動する構成となっていたが、これを体側方向Sに移動させる構成としてもよい。この場合、遮蔽体5の体側方向Sの幅は、X線撮影の際、コーン状のX線ビームBをFPD4に照射したときに影sが体側方向Sに1cm以下の幅を有するように設定されることになる。同様に、遮蔽体5の体軸方向Aの長さは、X線撮影の際、コーン状のX線ビームBをFPD4に照射したときに影sがFPD4の体軸方向Aの一端から他端の全域に亘るように設定される。
【0080】
(2)上述の実施例では、X線が高エネルギー状態での元画像P0AとX線が低エネルギー状態での元画像P0Bについて、一連の元画像P0Aと一連の元画像P0Bとには同じように遮蔽体5の影sが写り込むようになっていたが、本発明はこの様な構成に限られない。すなわち、FPD4の検出面4aに写り込む影sにおける体軸方向Aの幅の1/2未満だけ影sが体軸方向Aに移動するように遮蔽体5を移動させる様にしてもよい。
【0081】
元画像P0Aと元画像P0Bとは、交互に撮影されるのであるから(図4参照),元画像P0A1と、これの次に撮影される元画像P0B1とを比較すると、それぞれに写り込む影sA1,影sB1は、体軸方向Aにおける影sの幅の1/2に満たない分だけ互いにずれている(図9参照)。このズレ幅は、元画像P0B1と、これの次に撮影される元画像P0A2とに写り込んだ影sB1,影sA2のズレ幅と同じである。ということは、一回目に撮影された元画像P0A1と三回目に撮影された元画像P0A2とに写り込んだ影sA1,影sA2のズレ幅を比較すると、そのズレ幅は、影sの体軸方向Aの幅に満たない幅となっている。
【0082】
すなわち、体軸方向Aの幅の1/2未満だけ影sが移動する様に遮蔽体5を移動させながらX線が低エネルギー状態での撮影とX線が高エネルギー状態での撮影を交互に行うようにすれば、X線が高エネルギー状態で撮影された元画像P0Aには、影sが体軸方向にオーバーラップして写り込むことになる。同様に、X線が低エネルギー状態で撮影された元画像P0Bにも、影sが体軸方向にオーバーラップして写り込む。これにより、影sばかりが写り込んだ暗画像P2A,P2Bが確実に取得できる。なお、図9において説明の便宜上、影sを影sの長手方向にずらして描画している。実際は、取得される元画像P0においてこの様なズレは見られない。
【0083】
(3)上述した実施例では、選択部13は、元画像P0Aを構成する画素毎に画素値を比較していたが、本発明はこれに限られない。すなわち、選択部13は、2×2ピクセルなどの所定の大きさを有する画素塊ごとに比較・選択の動作をするようにしてもよい。この場合、比較の指標として画素塊の平均値を用いることができる。
【0084】
(4)上述した実施例では、ピークホールド動作をする選択部13を有する構成となっていたが本発明はこれに限られない。中間画像生成部14が元画像P0Aが撮影された時点における遮蔽体5の位置を遮蔽体移動制御部8より取得する構成としてもよい。この場合、中間画像生成部14は、遮蔽体5の位置情報と記憶部28に記憶されているX線管3、およびFPD4の位置情報を用いて、各元画像P0Aのどの部分に遮蔽体5の影sが写り込んでいるかを把握する。そして、中間画像生成部14は、各元画像P0Aの各部分で遮蔽体5の影sが写り込んでいる部分をつなぎ合わせて暗画像P2Aを生成し、同様に各元画像P0Aの各部分で遮蔽体5の影sが写り込んでいない部分をつなぎ合わせて明画像P3Aを生成するようにしてもよい。
【0085】
(5)上述した実施例は、骨塩定量を行う構成となっていたが、本発明はこれに限られない。一般的なスポット撮影や骨塩定量以外のサブトラクション撮影にも本発明を用いることができる。
【0086】
(6)上述した実施例は、医用の装置であったが、本発明は、工業用や、原子力用の装置に適用することもできる。
【0087】
(7)上述した実施例のいうX線は、本発明における放射線の一例である。したがって、本発明は、X線以外の放射線にも適応できる。
【0088】
(8)選択部13は、比較対象の画素群から最低の画素値および最高の画素値を選択するように設定されていたが、本発明はこの構成に限られない。選択部13は、最低の画素値の代わりに比較対象の画素値の平均により示されるX線量よりもX線線量の少ない画素値を選択するようにしてもよい。同様に、選択部13は、最高の画素値の代わりに比較対象の画素値の平均により示されるX線量よりもX線線量の多い画素値を選択するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0089】
P0 元画像
P2 暗画像
P3 明画像
P4A 除去画像(高エネルギー除去画像)
P4B 除去画像(低エネルギー除去画像)
P5 強調画像
2 天板
3 X線管(放射線源)
4 FPD(放射線検出手段)
5 遮蔽体
6 X線源制御部(放射線源制御手段)
7 遮蔽体移動機構(遮蔽体移動手段)
8 遮蔽体移動制御部(遮蔽体移動制御手段)
11 画像生成部(画像生成手段)
13 選択部(選択手段)
14 中間画像生成部(中間画像生成手段)
15 除去部(除去手段)
16 重ね合わせ部(重ね合わせ手段)
17 骨塩定量部(骨塩定量手段)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線を照射する放射線源と、
前記放射線源を制御する放射線源制御手段と、
照射された放射線を検出して検出信号を出力する放射線検出手段と、
前記放射線源と前記放射線検出手段とに挟まれる位置に設けられた被検体を載置する天板と、
前記放射線源と前記天板とに挟まれる位置に設けられるとともに前記放射線源から照射される放射線の一部を遮蔽する遮蔽体と、
前記遮蔽体を前記放射線源に対して移動させる遮蔽体移動手段と、
前記遮蔽体移動手段を制御する遮蔽体移動制御手段と、
前記遮蔽体を前記放射線源に対して移動させながら次々と撮影を行うことにより、前記遮蔽体の影が位置を変えながら写り込んでいる元画像を検出信号から次々と生成する画像生成手段と、
各元画像における遮蔽体の影が写り込んでいる部分のみをつなぎ合わせて暗画像を生成し、同様に各元画像における遮蔽体の影が写り込んでいない部分のみをつなぎ合わせて明画像を生成する中間画像生成手段と、
前記暗画像を基に前記明画像に重畳している散乱線成分が除去された除去画像を生成する除去手段とを備えることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項2】
請求項1に記載の放射線撮影装置において、
元画像のある部分の画素値と、他の元画像におけるその部分に相当する部分の画素値の各々とを比較し、比較対象のうちの1つを選択するとともに、この動作を元画像の領域を変更しながら繰り返し行う選択手段を備え、
前記選択手段は、比較対象の画素値の平均により示される放射線量よりも放射線量の多い画素値となっている部分を選択し、これを前記中間画像生成手段がマッピングすることにより明画像が生成され、
同様に前記選択手段は、前記選択手段が比較対象の画素値の平均により示される放射線量よりも放射線量の少ない画素値となっている部分を選択し、これを前記中間画像生成手段がマッピングすることにより暗画像が生成されることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項3】
請求項2に記載の放射線撮影装置において、
前記選択手段は、各元画像の画素毎に比較・選択を行うことを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の放射線撮影装置において、
前記遮蔽体は、前記遮蔽体の移動方向と直交する方向に細長状となっていることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項5】
請求項2または請求項3に記載の放射線撮影装置において、
前記遮蔽体移動手段は、前記選択手段が比較に用いる元画像のうち撮影が経時的に隣接している2枚の元画像において、前記遮蔽体の影がオーバーラップして写り込むように前記遮蔽体を移動させることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の放射線撮影装置において、
前記遮蔽体は、撮影の際に、前記放射線検出手段における放射線の検出面において、前記遮蔽体の移動方向に1cm以下の幅を有する影となって表れることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の放射線撮影装置において、
前記放射線源、前記放射線検出手段、および前記天板の位置関係は撮影中変更されないことを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の放射線撮影装置において、
前記放射線源制御手段は、前記放射線源を制御して放射線が高エネルギー状態と低エネルギー状態の2つの状態で撮影を行わせ、
前記除去手段は、放射線が高エネルギー状態で撮影された高エネルギー除去画像と、放射線が低エネルギー状態で撮影された低エネルギー除去画像とを生成し、
前記高エネルギー除去画像と前記低エネルギー除去画像とに重み付けを行い、これらを重ね合わせて強調画像を生成する重ね合わせ手段を更に備えることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項9】
請求項8に記載の放射線撮影装置において、
前記放射線源制御手段は、前記遮蔽体が移動範囲の一端側から他端側に移動する間に低エネルギーの撮影と高エネルギーの撮影を交互に行わせることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項10】
請求項8または請求項9に記載の放射線撮影装置において、
強調画像を基に骨塩定量を行う骨塩定量手段を更に備えることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項1】
放射線を照射する放射線源と、
前記放射線源を制御する放射線源制御手段と、
照射された放射線を検出して検出信号を出力する放射線検出手段と、
前記放射線源と前記放射線検出手段とに挟まれる位置に設けられた被検体を載置する天板と、
前記放射線源と前記天板とに挟まれる位置に設けられるとともに前記放射線源から照射される放射線の一部を遮蔽する遮蔽体と、
前記遮蔽体を前記放射線源に対して移動させる遮蔽体移動手段と、
前記遮蔽体移動手段を制御する遮蔽体移動制御手段と、
前記遮蔽体を前記放射線源に対して移動させながら次々と撮影を行うことにより、前記遮蔽体の影が位置を変えながら写り込んでいる元画像を検出信号から次々と生成する画像生成手段と、
各元画像における遮蔽体の影が写り込んでいる部分のみをつなぎ合わせて暗画像を生成し、同様に各元画像における遮蔽体の影が写り込んでいない部分のみをつなぎ合わせて明画像を生成する中間画像生成手段と、
前記暗画像を基に前記明画像に重畳している散乱線成分が除去された除去画像を生成する除去手段とを備えることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項2】
請求項1に記載の放射線撮影装置において、
元画像のある部分の画素値と、他の元画像におけるその部分に相当する部分の画素値の各々とを比較し、比較対象のうちの1つを選択するとともに、この動作を元画像の領域を変更しながら繰り返し行う選択手段を備え、
前記選択手段は、比較対象の画素値の平均により示される放射線量よりも放射線量の多い画素値となっている部分を選択し、これを前記中間画像生成手段がマッピングすることにより明画像が生成され、
同様に前記選択手段は、前記選択手段が比較対象の画素値の平均により示される放射線量よりも放射線量の少ない画素値となっている部分を選択し、これを前記中間画像生成手段がマッピングすることにより暗画像が生成されることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項3】
請求項2に記載の放射線撮影装置において、
前記選択手段は、各元画像の画素毎に比較・選択を行うことを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の放射線撮影装置において、
前記遮蔽体は、前記遮蔽体の移動方向と直交する方向に細長状となっていることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項5】
請求項2または請求項3に記載の放射線撮影装置において、
前記遮蔽体移動手段は、前記選択手段が比較に用いる元画像のうち撮影が経時的に隣接している2枚の元画像において、前記遮蔽体の影がオーバーラップして写り込むように前記遮蔽体を移動させることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の放射線撮影装置において、
前記遮蔽体は、撮影の際に、前記放射線検出手段における放射線の検出面において、前記遮蔽体の移動方向に1cm以下の幅を有する影となって表れることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の放射線撮影装置において、
前記放射線源、前記放射線検出手段、および前記天板の位置関係は撮影中変更されないことを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の放射線撮影装置において、
前記放射線源制御手段は、前記放射線源を制御して放射線が高エネルギー状態と低エネルギー状態の2つの状態で撮影を行わせ、
前記除去手段は、放射線が高エネルギー状態で撮影された高エネルギー除去画像と、放射線が低エネルギー状態で撮影された低エネルギー除去画像とを生成し、
前記高エネルギー除去画像と前記低エネルギー除去画像とに重み付けを行い、これらを重ね合わせて強調画像を生成する重ね合わせ手段を更に備えることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項9】
請求項8に記載の放射線撮影装置において、
前記放射線源制御手段は、前記遮蔽体が移動範囲の一端側から他端側に移動する間に低エネルギーの撮影と高エネルギーの撮影を交互に行わせることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項10】
請求項8または請求項9に記載の放射線撮影装置において、
強調画像を基に骨塩定量を行う骨塩定量手段を更に備えることを特徴とする放射線撮影装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−61148(P2012−61148A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−208167(P2010−208167)
【出願日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】
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