説明

放射線断層撮影装置

【課題】間接放射線が放射線検出器に入射することを抑制し、コントラストの高い断層画像が取得できる放射断層撮影装置を提供する。
【解決手段】本発明のX線撮影装置に係るコリメータのリーフ9aは、X線ビームをコリメートしてX線管3の回転移動方向について幅狭のファンビームとする。この様に構成することで、取得される短冊状画像に間接X線sが入射するのを抑制することができる。これにより短冊状画像のコントラストは高いものとなる。したがって、短冊状画像を基に再構成された断層画像もコントラストが高いものとなり、診断に適した鮮明な断層画像が提供できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線を照射する放射線源を被検体の体軸周りに移動させることによって得られた一連の放射線透視像を組み立てて、被検体の断層画像を取得する放射線断層撮影装置に関し、特に被検体の体内で散乱した放射線の影響を排除し、コントラストの高い断層画像を取得することができる放射線断層撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被検体に放射線を照射し、被検体を透過した透過放射線をイメージングする放射線断層撮影装置には、様々な構成のものがある。例えば、放射線を照射する放射線源と、放射線を検出する放射線検出器の各々がC型の支持部材(C型アーム)の両先端に支持されている構成のものがある。この様な、C型アームを有する放射線検出器は、放射線投影像を撮影しながら被検体に造影剤を注射することが容易なので、例えば、被検体の血管造影検査などに用いられる。
【0003】
まずは、従来の放射線断層撮影装置51の構成について説明する。従来の放射線断層撮影装置51は、図11に示すように、被検体Mを載置する天板52と、被検体Mに放射線を照射するX線管53と、放射線を検出するとともに、検出素子が2次元的に配列された放射線検出器54と、X線管53の管電力を制御するX線管制御部56と、X線管53と放射線検出器54とを支持するC型アーム57と、これを駆動するC型アーム駆動機構59と、C型アーム駆動機構59を制御するC型アーム駆動制御部60とを備えている。なお、C型アーム57は、支柱58によって支持されている。なお、C型アーム57は、被検体Mの体軸周りに回転することができ、これに伴って放射線検出器54とX線管53とが互いの相対的位置を維持しながら旋回移動する。
【0004】
このような放射線断層撮影装置51は、被検体Mの断層像を取得することもできる。すなわち、C型アーム57を中心軸C周りに旋回移動させながら被検体の放射線透視画像を複数枚取得し、これらを基に被検体Mを体軸方向Aと直交する平面で裁断したときの断層画像(アキシャル画像)が撮影できる構成となっている。このような放射線断層画像の取得を行う医用装置の具体的な構成は、例えば特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−146875号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、この様な従来の構成によれば、次のような問題点がある。
すなわち、従来の放射線断層撮影装置51は、被検体Mの体内で進行方向が変更した散乱放射線が放射線透視画像に写りこんでしまい、取得される断層画像のコントラストが悪化するという問題がある。
【0007】
間接放射線(散乱放射線)について簡単に説明する。図12は、従来構成を説明する図であり、被検体に向けてコーン状の放射線ビームBを照射した場合である。図12における直接放射線dは、放射線検出器54に入射する。この直接放射線dの進路上において間接放射線sが生じ、この間接放射線sは放射線検出器54に入射してしまっている。散乱放射線が放射線検出器54に入射すると、取得される放射線透視画像の視認性の悪化に繋がる。具体的には、間接放射線sによって放射線透視画像が一様に明るくなり、コントラストが悪化する。この間接放射線sは、散乱放射線とも呼ばれる。
【0008】
本発明は、この様な事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、間接放射線が放射線検出器に入射することを抑制し、コントラストの高い断層画像が取得できる放射断層撮影装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上述の目的を達成するために、次のような構成をとる。
すなわち、請求項1に係る放射線断層撮影装置は、放射線ビームを照射する放射線源と、放射線源に付設された放射線ビームをコリメートするコリメート手段と、これを制御するコリメート制御手段と、コリメートされた放射線ビームを検出する放射線検出手段と、放射線源と放射線検出手段とを支持することで両者の相対的な位置関係を保持するとともに、回転可能となっている支持手段と、断層画像を取得する断層画像取得手段とを備え、支持手段が回転されることにより、放射線源と放射線検出手段とが所定の軸周りに回転されながら複数の放射線透視画像を取得し、断層画像取得手段は、これらを再構成して断層画像を取得する放射線断層撮影装置において、コリメート制御手段は、コリメート手段を制御することにより、放射線ビームをコリメートして放射線源の回転移動方向について幅狭のファンビームとし、放射線源は、所定の軸周りに回転されながらファンビームを放射線検出手段に向けて照射し、放射線検出手段は、ファンビームを検出して、所定の軸に沿って伸びた細長状の放射線透視画像を出力し、断層画像取得手段は、複数の細長状となっている放射線透視画像を再構成して断層画像を取得することを特徴とするものである。
【0010】
[作用・効果]本発明の構成によれば、コリメート手段は、放射線ビームをコリメートして放射線源の回転移動方向について幅狭のファンビームとする。この様に構成することで、取得される細長状の放射線透視画像に間接放射線が入射するのを抑制することができる。これにより、細長状の放射線透視画像のコントラストは高いものとなる。したがって、細長状の放射線透視画像を基に再構成された断層画像もコントラストが高いものとなり、診断に適した鮮明な断層画像が提供できる。
【0011】
また、請求項2に係る発明は、請求項1に係る放射線断層撮影装置において、放射線検出手段における放射線を検出する検出面を覆うように配置された放射線グリッドを更に有し、放射線グリッドには、散乱放射線を吸収する第1方向に伸びた吸収箔の各々が所定の軸に配列されていることを特徴とする放射線断層撮影装置。
【0012】
[作用・効果]この様な構成によれば、より確実に間接放射線が放射線透視画像に写りこむことを抑制することができる。細長状の放射線透視画像の短手方向における端部は、間接放射線が写りこむ余地がないので、コントラストは高い。しかしながら、放射線透視画像の長手方向における端部は、放射線ビームのコリメートの効果が十分に及ばず、図12を用いて説明したような間接放射線が写りこむ場合がある。しかしながら、放射線透視画像の長手方向における端部に写りこもうとする間接放射線は、間接放射線を除去する放射線グリッドで除去される。この放射線グリッドには、第1方向に伸びた吸収箔が第2方向に配列されており、しかも、吸収箔は、所定の軸(放射線透視画像における長手方向)に配列されている。直接放射線は、直角に近い角度で放射線検出手段の検出面に入射する。一方、間接放射線は、検出面に鋭角でもって入射しようとする。間接放射線は、直接放射線が散乱したものであり、進行方向が大きく変更されているからである。このような鋭角でもって検出面に入射しようとする間接放射線は、放射線検出手段に入射する前に第1方向に伸びた吸収箔によって吸収される。この様にして、放射線透視画像の長手方向における間接放射線の除去は放射線グリッドに分担させ、放射線透視画像の短手方向における間接放射線の除去は、放射線をコリメートすることで行われる。この様な構成とすれば、確実に間接放射線が写りこんでいない放射線透視画像が取得できるのである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施例1に係る放射線断層撮影装置の構成を説明する機能ブロック図である。
【図2】実施例1に係るX線グリッドの構成について説明する平面図である。
【図3】実施例1に係るX線グリッドの構成について説明する断面図である。
【図4】実施例1に係るコリメータの構成を説明する斜視図である。
【図5】実施例1に係るX線断層撮影装置の動作を説明するフローチャートである。
【図6】実施例1に係るコリメータ開度変更ステップを説明する図である。
【図7】実施例1に係る撮影ステップを説明する図である。
【図8】実施例1に係る撮影ステップを説明する図である。
【図9】実施例1に係る撮影ステップを説明する図である。
【図10】実施例1に係るX線グリッドの構成について説明する断面図である。
【図11】従来構成に係る放射線断層撮影装置の構成を説明する機能ブロック図である。
【図12】従来構成に係る放射線断層撮影装置の構成を説明する断面図である。
【図13】従来構成に係る撮影ステップを説明する図である。
【実施例1】
【0014】
以下、本発明に係る放射線断層撮影装置の実施例について図面を参照しながら説明する。また、実施例1におけるX線は、本発明に係る放射線の一例である。
【0015】
まず、実施例1に係るX線断層撮影装置1に構成について説明する。図1は、実施例1に係る放射線断層撮影装置の構成を説明する機能ブロック図である。図1に示すように、実施例1に係るX線断層撮影装置1には、被検体Mを載置する天板2と天板2の下側に設けられたX線ビームを照射するX線管3と、天板2の上側に設けられるとともに被検体Mを透過したX線を検出するフラット・パネル・ディテクタ(FPD)4とを備えている。また、実施例1に係るX線断層撮影装置1は、X線管3の管電圧、管電流、X線ビームのパルス幅を制御するX線管制御部6を有している。なお、X線管、およびFPDの各々は、放射線源、および放射線検出手段の各々に相当する。
【0016】
X線管3とFPD4とは、C型アーム7によって一括的に支持されている。この円弧状となっているC型アームは、2つの先端を有するが、その一端側にX線管3が、他端側にFPD4が設けられている。このC型アーム7は、天板2と干渉することがないように、天板2を避けるように湾曲した構成となっている。そして、このC型アーム7は、検査室の床面に配置された支柱8に支持される構成となっている。なお、C型アームは、本発明の支持手段に相当する。
【0017】
また、C型アーム7は、傾斜角度の変更が可能となっている。すなわち、X線断層撮影装置1には、C型アーム回転移動機構11と、これを制御するC型アーム回転移動制御部12とが設けられており、C型アーム7は、被検体Mの体軸方向Aに平行な中心軸Q周りに、回転移動自在となっている。図1においては、矢印Fが示すように、支柱8がC型アーム7を支持する支点を回転移動の中心として、時計回りに1回転させることもできれば、逆に、反時計回りに1回転させることもできる。なお、中心軸Qは、所定の軸に相当する。
【0018】
また、X線断層撮影装置1は、FPD4から出力された信号をX線透視画像に変換する画像処理部15と、操作者の操作を取得する操作卓22とを備えている。操作者は操作卓22を通じてC型アーム7の位置・姿勢を変更させることができる。
【0019】
X線断層撮影装置1は、画像処理に関する画像処理部15と再構成部16とを備えている。この再構成部16は、本発明の断層画像取得手段に相当する。
【0020】
X線グリッド5は、FPD4の有するX線検出面を覆うように設けられている。図2は、実施例1に係るX線グリッドの構成について説明する平面図である。図2に示すように、実施例1に係るX線グリッド5は、被検体の所定の第1方向に延伸した短冊状の吸収箔5aを備えている。この吸収箔5aは、第1方向に直交する第2方向に配列しており、X線グリッド5全体で見れば、ブラインド状に配列される。そして、その配列ピッチは、例えば、500μmとなっている。なお、この吸収箔5aは、X線を吸収するモリブデン合金からなっている。なお、FPD4が天板2の直下にあるとき、第1方向は、被検体Mの体側方向Sに沿っており、第2方向は、被検体Mの体軸方向Aに沿っている。なお、X線グリッド5は、本発明の放射線グリッドに相当する。すなわち、吸収箔5aは、X線管3とFPD4とを結ぶ線分、および被検体Mの体軸方向Aとのいずれにも直交する方向に沿って延伸している。
【0021】
続いて、吸収箔5aの傾斜について説明する。X線グリッド5における吸収箔5aは、図3に示すように、吸収体5における体軸方向Aについての端部に向かうに従って次第に傾斜している。このように、実施例1に係るX線グリッド51に備えられた吸収箔5aは、ファン状のX線ビームが照射されたときに、放射状に広がるX線を通過させるように傾斜が変更された構成となっている。
【0022】
なお、X線管3には、X線管3から照射されるX線をコリメートするコリメータ9が付設されている。コリメータ9の構成について説明する。図4は、本発明に係るコリメータの構成を説明する斜視図である。図4に示すように、コリメータ9は、板状のリーフ9a,9bを4枚組み合わせて構成される。1対の第1リーフ対9aは、体軸方向Aにおける放射線ビームの照射幅を調整するもので、同期的に反対方向に移動することで、放射線ビームの照射幅を広げ、同一距離だけ同方向に移動することで放射線ビームの照射幅を狭める構成となっている。つまり、1対の第1リーフ対9aは、放射線ビームの中心軸Cを基準として、鏡像対象に同期移動する構成となっている。また、同様に、1対の第2リーフ対9bは、体側方向Sにおける放射線ビームの照射幅を調整するもので、1対の第2リーフ対9bは、放射線ビームの中心軸Cを基準として、鏡像対象に同期移動する構成となっている。したがって、X線管3が鉛直下向きに向いているとき、4角錐状となっている放射線ビームの中心軸Cは、鉛直下向きに向いている。なお、このコリメータ9の開度は、コリメータ制御部10によって制御される。
【0023】
また、X線断層撮影装置1は、図1に示すように、各制御部6,10,12を統括的に制御する主制御部24をも備えている。この主制御部24は、CPUによって構成され、各種のプログラムを実行することにより各制御部6,10,12を実現している。また、上述の各制御は、それらを担当する制御装置に分割されて実行されてもよい。この他に、実施例1に係るX線断層撮影装置1は、被検体MのX線透視画像を表示する表示部23を備えている。
【0024】
次に、実施例1に係るX線断層撮影装置1の動作について説明する。図5は、実施例1に係るX線断層撮影装置の動作を説明するフローチャートである。実施例1に係るX線断層撮影装置1を用いて被検体Mの断層画像を取得する動作は、被検体Mを天板2に載置する載置ステップS1と、コリメータ9の開度を変更するコリメータ開度変更ステップS2と、C型アーム7を回転させながら、被検体MのX線透視画像を複数枚、撮影する撮影ステップS3と、取得されたX線透視画像を再構成することにより、被検体Mの断層画像を取得する断層画像取得ステップS4とを有している。以降、図面を参照しながら、各ステップの詳細を順を追って説明する。
【0025】
まず、被検体Mが天板2に載置される(載置ステップS1)。そして、操作者は、操作卓22を通じて、被検体Mの断層画像を取得する旨の指示を行う。図6(a)は、X線断層撮影装置1を被検体Mの体側方向Sに沿って裁断したときの断面図である。図6(a)に示すように、コリメータ制御部10は、第2リーフ対9bは、体側方向Sにおける放射線ビームの照射幅を調整する第2リーフ対の開度を小さなものとする(コリメータ開度変更ステップS2)。第1リーフ対9a,および第2リーフ対9bによってコリメートされたX線ビームは、被検体Mの体軸方向〔図6(a)における紙面の深さ方向〕に向けて広がる扇型のファンビームとなっている。X線管3は、図6(a)の矢印が示すように、被検体Mの体軸方向Aに平行な中心軸Q周りに回転するのであるから、X線ビームは、図6(a)におけるX線管3に付された矢印で示すX線管3の回転移動方向に幅狭のファンビームとなっている。
【0026】
一方、図6(b)は、X線断層撮影装置1を被検体Mの体軸方向Aに沿って裁断したときの断面図である。体軸方向Aにおける放射線ビームの照射幅を調整する第1リーフ対9aの開度は、第2リーフ対9bの開度よりも大きくなっている。具体的には、X線ビームは、FPD4の体軸方向Aにおける両端4a,4bに到達することができる。
【0027】
したがって、X線ビームは、FPD4の一部に入射することになる。具体的には、図6(c)に示すように、FPD4における体側方向Sの両端部に挟まれるとともに体軸方向に延びた短冊状の領域RにX線ビームが入射することになる。このとき、図6(d)に示すように、短冊状の領域Rの体側方向Sにおける両端部から被検体Mの透視画像がはみ出していてもよい。なお、図6(c)における矢印はFPD4の回転移動の方向を示している。
【0028】
コリメータ9の開度が調節されると、C型アーム7は、回転移動制御部10の制御にしたがって、被検体Mの体軸(中心軸Q)周りに1回転する。これにより、X線管3,およびFPD4は、相対位置を保ったまま、回転されることになる。その際に、X線管3は、FPD4に向けてファンビームを間欠的に照射し、その度ごとにFPD4に投影された被検体Mの放射線透視画像が撮影される(撮影ステップS3)。このX線透視画像は、FPD4における領域Rと同様の形状をしており、被検体Mの体軸方向Aに伸びた短冊状である。撮影ステップS3において撮影されるX線透視画像を、便宜上、短冊状画像と呼ぶ。X線管3,およびFPD4とが1回転する間に、360枚の短冊状画像が撮影される。
【0029】
第2リーフ対9bの開度を小さなものとする効果について説明する。説明の便宜上、X線管3が被検体の鉛直上向きにある場合を考えると、図7に示すように、体側方向S(一般には、X線管3の回転移動方向)についてX線ビームBは、コリメータ9により幅狭となっている。そして、短冊状画像は、FPD4のうちのX線ビームBが照射する領域Rから取得された検出データのみを用いる。この領域Rは、X線管3を基準に決定されるものであり、領域RとX線管3とは、体側方向Sについて、同一位置となっている。したがって、直接X線dは、領域Rに入射することができる。しかし、間接X線sは、領域Rに入射することができない。間接X線sの進行方向は、直接X線dの進行方向とは、相当異なっている傾向にあり、領域Rを迂回するからである。このようにして、短冊状画像には、直接X線dのみを写しこんでおり、間接X線の影響が回避される。
【0030】
次に、従来のX線断層撮影と実施例1の構成と違いを説明する。一般的なX線断層撮影装置においても、図13に示すように、X線管3と、FPD4とが相対的な位置関係を保った状態で体軸方向Aを中心に回転されながらX線透視画像が撮影される。このとき、被検体Mにおける体側方向Sの一端部に位置する端点pは、常にX線ビームに含まれる構成となっている。したがって、被検体Mの端点pは、撮影されたX線透視画像の全てに写りこんでいる。X線透視画像は、X線管3,およびFPD4とが1回転する間に、10〜20枚程度撮影され、端点pは、X線透視画像の各々で互いに異なる位置で写りこんでいる。従来の再構成部16においては、X線管3,およびFPD4とが1回転する間の端点pの移動の挙動を基に、端点pが断層画像上にマッピングされる。すなわち、端点pをマッピングするには、X線管3,およびFPD4を移動させながら、10〜20枚のX線透視画像を撮影すればよいことになる。
【0031】
実施例1の構成によれば、X線管3が被検体の上部に位置するとき、図8に示すように、端点pは、短冊状画像の視野の外に存する。したがって、このままでは、再構成部16は、端点pを断層画像にマッピングすることができない。しかし、実施例1の構成によれば、X線管3,およびFPD4とが1回転する間に、360枚の短冊状画像が撮影される。その短冊状画像を取得する間に、まず、図9(a)に示すように、X線管3が端点pに向けて回転していき、X線管3と端点pとが接近する。この状態において、ファンビームは端点pを確実に通過する。しかも、X線管3,およびFPD4とを1度づつ回転する毎に短冊状画像を撮影するので、X線管3と端点pとが接近している状態において、端点pは、確実に5〜10枚の短冊状画像に写りこむ。また、図9(b)に示すように、FPD4の領域Rが端点pに向けて回転していき、FPD4の領域Rと端点pとが接近する。この状態において、ファンビームは端点pを確実に通過する。しかも、X線管3,およびFPD4とを1度づつ回転する毎に短冊状画像を撮影するので、FPD4の領域Rと端点pとが接近している状態において、端点pは、確実に5〜10枚の短冊状画像に写りこむ。
【0032】
この様にして、X線管3,およびFPD4を移動させながら、端点pが写りこんだ10〜20枚の短冊状画像が撮影されるのである。この短冊状画像の枚数としては、端点pを断層画像上にマッピングするには、充分の枚数となっている。
【0033】
撮影ステップS3で撮影された360枚の短冊状画像は、短冊状画像が取得された支柱7の回転角度の情報とともに再構成部16に送出され、そこで、被検体Mを体側方向に沿って裁断したときの断層画像が取得される(断層画像取得ステップS4)。この断層画像の取得方法としては、周知のバックプロジェクション法が用いられる。短冊状画像は、散乱放射線の影響を受けていないので、被検体Mの透視像は、高いコントラストで写りこんでいる。これを基に断層画像が取得されるのであるから、最終的に取得される断層画像のコントラストも高いものとなる。再構成部16が生成した断層画像は、表示部23で表示されて実施例1に係るX線断層撮影装置の動作は完了となる。
【0034】
以上のように、実施例1の構成によれば、コリメータ9は、X線ビームをコリメートしてX線管3の回転移動方向について幅狭のファンビームとする。この様に構成することで、取得される短冊状画像に間接X線sが入射するのを抑制することができる。これにより短冊状画像のコントラストは高いものとなる。したがって、短冊状画像を基に再構成された断層画像もコントラストが高いものとなり、診断に適した鮮明な断層画像が提供できる。
【0035】
また、実施例1の構成によれば、X線グリッド5を備えることにより、確実に間接X線sが短冊状画像に写りこむことを抑制することができる。細長状の短冊状画像の短手方向における端部は、間接X線sが写りこむ余地がないので、コントラストは高い。しかしながら、第1リーフ対9aの開度は、広いものとなっているので、短冊状画像の長手方向における端部は、図12を用いて説明したように、間接X線sが写りこんでいないとは限らない。
【0036】
しかしながら、短冊状画像の長手方向における端部に写りこもうとする間接X線sは、間接X線sを除去するX線グリッド5で除去される。この様子を図10を用いて説明する。X線グリッド5には、被検体の体側方向Sに伸びた吸収箔5aが被検体の体軸方向A(中心軸Qの延伸方向)に配列されている。図10(a)に示すように、直接X線dは、直角に近い角度でX線検出手段の検出面に入射する。一方、間接X線sは、直接X線dから分岐して生じたものであり、その進行方向が変更されている。この様な間接X線sの進行方向が、被検体の体側方向Sに変更されたものとすると、間接X線sは、FPD4における体側方向Sの端部4pに向かい、領域Rに入射できず、結局、短冊状画像に写りこむことがない。
【0037】
ところが、間接X線sの進行方向が、被検体の体軸方向Aに変更されたものとすると、図10(a)に示すように、間接X線sは、領域Rの体軸方向Aの一端部に向かおうとする。このままでは、間接X線sが短冊状画像に写りこんでしまうことになる。ところが、このような進行方向が被検体の体軸方向Aに変更された間接X線sは、被検体の体側方向S(一般には、FPD4の回転移動方向)に伸びた吸収箔5aに入射する。したがって、実施例1に係るX線断層撮影装置1において、間接X線sは、進行方向に係らず、短冊状画像に写りこむことがない。
【0038】
なお、吸収箔5aは、被検体の体軸方向Aに向かうにしたがって、次第に傾斜されている。この様にすることで、図10(b)に示すように、短冊状画像における体軸方向Aの端部に入射する直接X線dは、X線グリッド5を通過することになる。しかも、この直接X線dから分岐して生じる間接X線sは、図10(a)の場合と同様に、吸収箔5aで吸収される。
【0039】
この様にして、領域Rの長手方向(短冊状画像の長手方向)における間接X線sの除去はX線グリッド5に分担させ、領域Rの長手方向(短冊状画像の短手方向)における間接X線sの除去は、X線をコリメートすることで行われる。この様な構成とすれば、確実に間接X線sが写りこんでいない短冊状画像が取得できるのである。
【0040】
本発明は上述の構成に限られず、下記のように変形実施することができる。
【0041】
(1)上述の構成は、C型アーム7を有していたが、本発明はこれに限られず、X線管3,およびFPD4とを対向移動させることができるガントリを有する放射線断層撮影装置にも適応できる。
【0042】
(2)上述した各実施例は、医用の装置であったが、本発明は、工業用や、原子力用の装置に適用することもできる。
【0043】
(3)上述した各実施例のいうX線は、本発明における放射線の一例である。したがって、本発明は、X線以外の放射線にも適応できる。
【符号の説明】
【0044】
1 X線断層撮影装置(放射線断層撮影装置)
3 X線管(放射線源)
4 FPD(放射線検出手段)
5 放射線グリッド(X線グリッド)
7 C型アーム(支持手段)
9 コリメータ(コリメート手段)
10 コリメータ制御部(コリメート制御手段)
16 再構成部(断層画像取得手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線ビームを照射する放射線源と、前記放射線源に付設された前記放射線ビームをコリメートするコリメート手段と、これを制御するコリメート制御手段と、コリメートされた放射線ビームを検出する放射線検出手段と、前記放射線源と前記放射線検出手段とを支持することで両者の相対的な位置関係を保持するとともに、回転可能となっている支持手段と、断層画像を取得する断層画像取得手段とを備え、前記支持手段が回転されることにより、前記放射線源と前記放射線検出手段とが所定の軸周りに回転されながら複数の放射線透視画像を取得し、前記断層画像取得手段は、これらを再構成して断層画像を取得する放射線断層撮影装置において、
前記コリメート制御手段は、前記コリメート手段を制御することにより、前記放射線ビームをコリメートして前記放射線源の回転移動方向について幅狭のファンビームとし、
前記放射線源は、所定の軸周りに回転されながら前記ファンビームを前記放射線検出手段に向けて照射し、
前記放射線検出手段は、前記ファンビームを検出して、前記所定の軸に沿って伸びた細長状の放射線透視画像を出力し、
前記断層画像取得手段は、複数の前記細長状となっている放射線透視画像を再構成して断層画像を取得することを特徴とする放射線断層撮影装置。
【請求項2】
請求項1に係る放射線断層撮影装置において、
前記放射線検出手段における放射線を検出する検出面を覆うように配置された放射線グリッドを更に有し、
前記放射線グリッドには、散乱放射線を吸収する第1方向に伸びた吸収箔の各々が前記所定の軸に配列されていることを特徴とする放射線断層撮影装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−233877(P2010−233877A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−86298(P2009−86298)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】