説明

放射線検出器上の放射線スポットの切換え可能な直径を備える光学ヘッド

BD、DVD、及び、CDのような異なる種類の光学記録担体(5)の情報平面を走査し得る光学走査装置において、検出器(7)上の放射線スポットの直径は、記録担体を走査するために使用される対物レンズ系(4)の開口数に依存する。BDを走査するための光学検出系の最適な設計は、DVD及びCDのような他の種類のための小さな放射線スポットをもたらす。DVD又はCDが走査される状況における放射線スポットの直径を増大する光学素子(13)を提供することによって、迷光の影響は低減され、トラッキング信号は改良される。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、様々なフォーマットの記録担体を読み取り或いは記録するのに適した光学走査ヘッドに関する。本発明は、光学走査ヘッドを使用する光学記憶装置にも関する。
【背景技術】
【0002】
光記録システムにおけるより高い記憶容量のための増大する要求の故に、新規な記憶システムがCD(コンパクトディスク)及びDVD(デジタル多用途ディスク)を超えて開発されている。ブルーレイディスク(BD)は、そのような新規な記憶システムである。12cm直径ディスク毎にCDが約650MB、DVDが約4.7GBを記憶し得るのに対し、BDは既に12cmディスク上に約27GBを記憶し得る。ディスクのデータ記憶容量のさらなる増大のために、多層媒体がDVD並びにDBのためにも開発されている。そのような媒体は、例えば、2つのデータ層を含み、それらはスペーサ層によって分離される。各層は記憶担体の入射表面を通じてアクセスされ得る。
【0003】
光ディスクシステムのこれらの世代の間の光学的見地からの主たる相違は、放射線源の波長と、放射線ビームをデータ層上に集束する対物レンズ系の開口数である。CDに関しては、波長は典型的には785nmであり、0.45の開口数(NA)が使用されるのに対し、DVDに関しては、それぞれ約660nm及び0.60であり、BDに関しては、それぞれ405nm及び0.85である。全てのこれらの異なる光記憶システムを橋渡しするために、互換性のある光学走査ヘッドが開発され、それは異なる光記録システム世代の読取り及び書込みを行い得る。そのような互換性のある光学走査ヘッドを設計するときには、単一の光路及び単一の放射線検出器を使用するのが望ましい。何故ならば、これはより少ない光学素子を備える光学ヘッドをもたらし、従って、より安価であり、より競争的である。
【0004】
各用途(CD、DVD、又は、BD)のための対物レンズ系のNAの相違の故に、放射線検出器に向かって戻る放射線ビームのNAも異なる。これは光検出器上に集束するスポットの直径もNAに比例することを意味する。例えば、非点焦点を伴うBD用途のための光検出器上の70μmの放射線スポットの直径が、100μm×100μmの寸法を備える典型的な光検出器を使用し得るのに対し、DVD用途のためには、放射線スポットの直径は約54μmであり、CD用途のためには、たった約37μmである。
【0005】
ビーム着陸(beamlanding)が起こるとき、即ち、検出器及び光スポットが、例えば、機械的応力、光学ヘッドの製造中の不整列、又は、光学走査ヘッドにおける熱不安定性に起因して、相互に横方向に変位するときに問題が生じる。このビーム着陸は、走査システムの集束及びトラッキング信号の品質に劣悪な効果を有する。10〜15μmまでのビーム着率誤差は、光学走査ヘッドにおいて一般的である。システムのDVD及びCD用途に関して、そのようなビーム着陸値は、それぞれ約54μm及び37μmの放射線スポットの直径に対して比較的大きい。
【0006】
システムが二層DVDディスクを読み取るときに他の問題が生じる。放射線ビームは、対物レンズ系によって、データ読出しのために2つの情報層の一方の上に集束される。焦点にない他の層での反射は、放射線検出器上に二次的スポットを引き起こす。この二次的スポットは、記録担体で焦点が外れているので、放射線検出器上でより一層大きい地域を有するが、光分布の一部は依然として放射線検出器の感受地域によって捕捉される。この二次的スポットは、望まれない迷光とみなされ得る。何故ならば、それはロバストな集束及びトラッキング信号生成に影響を及ぼすからである。米国特許第5,841,735号には、多層ディスクに関する検出器寸法の要件が記載されている。しかしながら、BD用途のために最適化された固定の検出器寸法は、そのような要件の不整合を引き起こし、システムの二層DVD用途のための放射線検出器上の迷光の大きな部分をもたらし、その結果、DVD用途におけるシステムの読出し及び記録性能の低減を招く。
【0007】
日本国公報第10−177738号は、放射線検出器に向かう放射線ビームの開口数、故に、放射線検出器上の焦点のサイズが、DVD用途及びCD用途の双方のために、ほぼ同じであるよう開口数と両方の対物レンズとの間の関係とに特定の要件を備えるDVD−CD互換光学走査ヘッドのための2対物レンズアクチュエータを開示している。光学走査ヘッドがBDのような第三世代の光学記録担体とも互換性がある必要があるとき、提案される解決策はアクチュエータ内に3つのレンズを要求する。これはアクチュエータヘッドをより複雑且つ高価にする。それはアクチュエータ内の質量も増大し、それはアクチュエータシステムの帯域幅を制限し、その結果、記録担体の読出し速度の制限を招く。3Dアクチュエータにおいて解決策を使用する可能性も、より一層複雑になる。3Dアクチュエータは、記録担体の集束及び径方向トラッキングのために、並びに、(通常は径方向における)記録担体の傾斜の補正のために使用される。そのような3DアクチュエータはDVDシステムにおいて一般的に使用されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
アクチュエータ性能に影響を与えることなく、上述の問題点の1つ或いはそれよりも多くを解決する、複数の記録担体世代の読出し及び/又は記録に適した光学走査ヘッド(及びその用途)を提供することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
情報層を有する光学記録担体を走査するための光学走査装置は、放射線ビームを生成するための放射線源と、放射線ビームを前記情報層上に集束するための前進倍率を有する前進経路と、情報層によって放射線検出器に反射される放射線ビームを透過するための戻り倍率を有する戻り光路とを有する光学系とを含み、戻り光路は戻り倍率を有し、前進倍率に実質的に影響を及ぼすことなしに、戻り倍率を変更し或いは調節するための手段をさらに含む。
【0010】
戻り倍率を変更することは、受動的並びに能動的モードの両方で解釈されるべきである。受動モードでは、変更は、例えば、戻り倍率を変更するための手段が、例えば、回折光学素子を含むときの放射線ビームの波長への依存に起因し得る。
【0011】
放射線ビームの偏光方向のための手段への依存は、受動的意味において、変化の実施例とみなされ得る。
【0012】
能動モードは、戻り経路倍率を変更するための手段における調節可能な機能を含むとみなされるべきである。
【0013】
本発明を使用することによって、光学記録担体の情報層又は複数の情報層上への放射線ビームの集束するために、単一の多ディスクフォーマット互換対物レンズが使用され得る。
【0014】
光学系の戻り経路倍率は、放射線検出器の表面上の放射線ビームのスポットのサイズのための決定パラメータである。
【0015】
BD及びDVDの情報層を走査するのに適した光学走査システムは、例えば、BDと共に使用するための放射線検出器寸法に関して最適化され得る。その場合には、放射線検出器寸法は、DVDとの使用のために実際に必要とされるものよりも大きくあり得る。何故ならば、その場合におけるスポットのサイズはBDの場合においてよりも小さいからである。DVD用途における戻り経路倍率をDB用途における放射線検出器上のスポットのサイズとほぼ同一の寸法に減少することにより放射線検出器上のスポットのサイズを増大することによって、多層DVD読出し又はビーム着陸に起因する迷光に関する問題は低減される。何故ならば、比較的より少ない迷光が放射線検出器上にかかるからである。走査装置がCDとの組み合わせにおいて使用される場合には、スポットのサイズは、例えば、しばしばビーム着陸とも呼ばれる放射線検出器上のスポットの横方向位置決めを考慮する要件と一致するよう増大され得る。
【0016】
好適実施態様において、本発明に従った光学走査装置は、放射線源によって放射される放射線ビームを情報層によって反射される放射線ビームから分離するためのビームスプリッタを含み、戻り経路倍率を変更し或いは調節するための手段は、ビームスプリッタと放射線検出器との間に位置する。
【0017】
この実施態様におけるように、戻り経路倍率を変更するための手段は、放射線ビームによって前進経路に通されず、それは前進経路における放射線ビームに対して直接的な影響を有さない。
【0018】
他の好適実施態様において、手段は調節可能な焦点距離を有する光学装置を含む。
【0019】
戻り経路倍率及び焦点位置の両方が変更されるか或いは好適には調節されるとき、倍率を変更し或いは調節する間に導入され得る焦点誤差を補正することが可能である。光学走査装置の、ジッタのような、読出し性能又は記録性能を向上するために、追加的な焦点位置調節が使用され得る。
【0020】
本発明の実施態様において、戻り経路倍率及び焦点位置を調節するための手段は、エレクトロウェッティングレンズを含む。エレクトロウェッティングレンズに電圧を印可することによって、2つの流体の間のメニスカスの形状は変更され得る。その結果、エレクトロウェッティングレンズの異なる光学的特性をもたらす。好ましくは、エレクトロウェッティングレンズは2つのメニスカスを含み、手段にズーム機能を導入することを可能にし、その結果、適切な焦点位置を維持しながら倍率を変更する可能性をもたらす。
【0021】
本発明のこれらの及び他の特徴は図面を参照してさらに説明される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
図面は原寸に比例しておらず、純粋に概略的である。図面中の同一の参照番号は同一の素子を指している。
【0023】
図1には、BD及びDVD又はDVD及びCDのような2つの異なる光記録担体フォーマットの読出し及び記録に適した光学走査装置10の実施例が示されている。放射線源1、例えば、半導体レーザが、例えば、BD読出しのために使用されるべき約405nmの波長を備える光ビームを放射する。情報層によって反射される放射線ビームから放射線源によって放射される放射線ビームを分離するために、ビームスプリッタ2が使用される。ビームスプリッタ2によって反射されて、放射線ビームはコリメータレンズ3に送られ、コリメータレンズは発散放射ビームを対物レンズ4に向かう実質的に平行なビームに変換し、対物レンズは光ビームを記録担体5の情報層上に集束する。反射後、光ビームは、対物レンズ、コリメータレンズを介して移送され、ビームスプリッタを通じて透過され、センサレンズ6を介して放射線検出器7に向かう。このセンサレンズは多少の光パワーを有する。センサレンズは、非点収差集束法のために放射線検出器に向かう戻りビームに非点収差も生成するが、非点収差を生成するために、傾斜平面−平行プレート又は回折光学素子のような他の光学的解決策も使用し得る。ここでは、戻りビームを放射線検出器上に集束するために、コリメータレンズ及びセンサレンズの組み合わせが使用される。前進ビームが光り記録担体の情報層上に集束され、放射線検出器が光学走査装置1内で正しく組み立てられるとき、光検出器上に形成される放射線スポットは、非点収差法を使用する光学走査装置内で生成されるような両方の焦線間の最小混乱の円である。
【0024】
例えば、対物レンズ又はコリメータレンズのような、本明細書に記載されるようなレンズは、単一の光学素子又は複数の光学素子(レンズ系)を含み得る。
【0025】
DVD又はCDのような異なるフォーマットでディスクを読み出すために、異なる波長を有する他の放射線源11が使用されることが可能である。DVDのためには、普通、約660nmの波長が使用されるのに対し、CDのためには、適用される波長は、普通、約785nmである。この放射線ビームは、ビームスプリッタ12によってコリメータレンズ3に向かって反射され、BDの読出しのために使用されるのと同一の対物レンズ4によって集束される。
【0026】
対物レンズ4は、そのような異なるディスクフォーマット上の読出し/記録のための互換性を得るために、例えば、WO2004/051636号及びWO2003/060891号(又はB.H.W.Hendriks et al.,Proc.Optical Design and Fabrication 2000,p.l325及びB.H.W.Hendricks et al.,Appl.Opt.40,pl.6548(2001))に記載されているようなBD−DVD又はBD−DVD−CD互換対物レンズ又は系であり得る。
【0027】
放射線検出器7上に集束される放射線スポットφの直径は、2つの焦線間の距離Δf、記録担体の情報層上に集束するために使用される対物レンズ4の開口数NA、及び、記録担体から放射線検出器への戻り経路倍率Mに依存する。この関係は以下によって表され得る。
【数1】

戻り経路倍率は、戻り光路内の光学素子の特性によって決定される。図1の光学配置のために、これらの光学素子は、対物レンズ4、コリメータレンズ3、及び、センサレンズ6である。
【0028】
放射線源1及び放射線源11の両方の光路に同一のコリメータレンズ3を使用するとき、その放射線源と共に使用されるときのコリメータレンズの有効開口数は、その放射線源に対応する記録担体フォーマットを走査するときの対物レンズの有効瞳直径によって決定される。従って、コリメータレンズの有効使用開口数は、異なるフォーマットの記録担体を走査するために使用されるときの対物レンズの開口数に対応する。
【0029】
従って、放射線スポットφの直径は、以下のように書かれ得る。
【数2】

ここで、Mは、開口数NAの対物レンズで第一記録担体を走査するときの戻り倍率であり、φは、開口数NAの対物レンズでi番目の記録担体を走査するときの放射線スポットの直径である。
【0030】
図2A及び2Bは、対物レンズで異なる開口数を使用する異なるディスクフォーマットの読出しの場合の放射線検出器上の異なるスポット直径を例証している。BDに関して、対物レンズ4の一般的に適用される開口数は約0.85であり、DVDに関して、これは約0.60であり、CDに関して、これは約0.45である。第一記録担体が情報層上に集束するために必要とされる対物レンズの第一開口数NAで走査されるとき、放射線検出器上に形成される放射線スポット21は直径φを有する。同様に、第二記録担体がNAよりも小さな第二開口数NAで走査されるならば、結果として得られる放射線検出器7上の放射線スポット22は直径φを有し、それは、第一記録担体の場合には、因数NA/NA×放射線スポット22の直径φである。
【0031】
第一記録担体がBDであり、第二記録担体がDVDである場合には、DVDのための放射線検出器上の放射線スポットの直径φは、BDに対する放射線スポットの直径φの約0.7倍である。放射線検出器が直径φを有するBDのための放射線スポットの寸法と一致するよう設計されるとき、放射線検出器寸法は、直径φを備える放射線スポットを有するDVDと組み合わせて使用されるときに必要とされるよりも大きい。これらのより大きな放射線検出器寸法は、走査される情報層上の走査スポットの集束及びトラッキングのロバストさに対する迷光の影響を増大する。
【0032】
類似の議論が、BDのための放射線検出器上の放射線スポット寸法がDCのそれと比較される場合のために与えられ得る。その場合には、CDの走査中の放射線検出器上のスポット直径は、BDを走査するときの放射線検出器上のスポット直径のそれの約0.5倍である。
【0033】
トラッキング信号上の放射線検出器の変位の影響、又は、迷光の影響、例えば、オフセットは、放射線検出器上のスポットの直径がより小さいときにより大きくなる。従って、径方向トラッキング信号及び焦点信号のような、トラッキング信号を生成するために使用される放射線検出器の寸法と一致する放射線スポットの直径を適合するのが好ましい。
【0034】
本発明によれば、スポット直径の適合は、倍率Mを適合することによって達成され得る。第一記録担体が倍率Mと組み合わせて開口数NAを使用して走査され、第二記録担体がNAよりも小さな開口数NAを使用して走査されるとき、実質的に等しい放射線スポット直径φ及びφを得るために、倍率MはNA/NA×Mであるべきである。
【0035】
式1に示されるように、異なるフォーマットの記録担体を走査するときには、焦線間の距離Δfを適合することも可能である。
【0036】
本発明によれば、倍率M及び/又は2つの焦線間の距離Δfを変更し得る光路内に調節可能な光学素子を加えることで、放射線検出器上の放射線スポットの直径は、記録担体を走査するために使用される対物レンズ系のNAと無関係に実質的に同一にされ得る。
【0037】
BDE/DVD互換光学走査装置は、BDを走査するときに放射線検出器寸法が放射線スポットの寸法に最適化されるよう設計され得る。BDを走査する間のようにDVDを走査する間に放射線スポットの実質的に等しい直径を得るために、放射線検出器上の放射線スポットの直径を拡大するよう、戻り経路の倍率Mが減少されるか或いは焦線距離Δfが増大される必要がある。
【0038】
焦線距離Δfを減少し、或いは、戻り経路倍率Mを増大することによって、DVD用途のための設計を最適化し、且つ、BD用途において使用される時の放射線スポットの直径を減少することも可能であり得る。これは、BD用途において使用されるときに、読出し信号の達成可能な帯域幅に関して追加的な利益を有し得る。何故ならば、そのような帯域幅も放射線検出器地域のサイズに依存するからである。即ち、放射線検出器地域が大きければ大きいほど、一般的には、より大きな容量、従って、より低い帯域幅をもたらす。
【0039】
光学走査装置がBD、DVD、及び、CDを走査するために互換的であるよう設計されるとき、好適な設計は、DVDを走査することに基づき、より好適なものは、BDを走査することに基づき、CDを走査する場合における倍率は、例えば、ビーム着陸に関連する集束及びトラッキングサーボ信号に関連する問題を低減するために、放射線検出器上の放射線スポットの直径を拡大するよう減少される。
【0040】
例えば、センサレンズ内の正又は負の光パワーを使用することによって、或いは、光パワーを備える追加的な光学素子を放射線源1とビームスプリッタ2との間に適用することによって、放射線源1から記録担体5への倍率は、記録担体5から放射線検出器7への倍率と同一又は異なり得る。共通の光路内、例えば、ビームスプリッタ2と記録担体5との間で倍率を変更するとき、放射線源から記録担体への倍率並びに記録担体から放射線検出器への倍率の両方が変化する。放射線経路である共通の光路は、放射線源からの放射線ビームを光記録担体に向かって光検出器に向かって方向付けるために使用され、並びに、記録担体によって光検出器に向かって反射されるときに放射線ビームによって使用される。
【0041】
好ましくは、戻り倍率のみが、記録担体上の情報層に向かう放射線ビームにおける倍率が影響されないよう適合される。この前進経路の倍率の変化は、例えば、コリメータ3の異なる有効開口数をもたらし、それによって、対物レンズ4内の放射線ビームのリム強度に影響を及ぼす。放射線源から情報層への倍率が適用されると、走査スポットの寸法が変更され、それは光学走査装置の読出し性能に対する影響を有し得る。
【0042】
図3は、2つの放射線源1及び11、例えば、BD読出しのための405nm半導体レーザ及びDVD読出しのための660nm半導体レーザを含む光学走査装置10'の実施例のための本発明の実施態様を概略的に示している。素子の参照は、図1中の対応する素子のためと同じである。しかしながら、図3及び図1中の対応する素子の具体的な特性は異なり得る(例えば、異なる塗膜、異なる放射線波長等)。放射線源1によって放射される放射線ビームは、ビームスプリッタ2によって反射され、ビームスプリッタ12を通じて記録担体に向かって透過される。放射線源11によって放射される放射線ビームは、ビームスプリッタ12によって記録担体に向かって反射される。
【0043】
倍率を調節するための手段13が、放射線検出器7とビームスプリッタ2との間の戻り光路内に配置される。それはセンサレンズ6のいずれの側にも配置され得る。手段13がセンサレンズ6と放射線検出器7との間に配置されるとき、手段13内のビーム直径は、手段13がセンサレンズ6とビームスプリッタ2との間に配置されるときよりも小さく、それは、例えば、手段13内にエレクトロウェッティング又は液晶装置を使用するときに好適であり得る。倍率を調節するための手段13は、センサレンズ機能性及び/又は非点収差の生成も含み得るので、別個のセンサレンズは不要である。
【0044】
光学走査装置の戻り経路の設計が、例えば、放射線検出器寸法に関してBDを走査するために最適化されるとき、手段13は、装置がレーザ1によって生成される放射線ビームでBDを走査するために使用されるときに非活性モードであり得る。何故ならば、倍率、故に、放射線スポットの直径の調節は不要であり得る。走査装置10'がレーザ11によって生成される放射線ビームでDVDを走査するために使用されるとき、結果として得られる放射線検出器上の放射線スポットの直径は、DVDを走査するために使用されるより小さな開口数の故に、(式(1)に従って)より小さい。活性モードにある調節手段13を活性化することによって、戻り経路倍率は減少され得る。故に、放射線スポットの直径は、例えば、放射線源1でBDを走査する間に生じるときと実質的に同じ直径の放射線スポットに拡大され得る。その場合には、例えば、ビーム着陸並びに二層ディスク読出しに起因する漏話の効果は減少され、その結果、より高品質の収束、トラッキング、及び、データ信号がもたらされる。上記のような異なる波長の使用は必要でない。何故ならば、一般的に使用される種類の認識方法は、倍率の調節をするための手段13のための制御と組み合わせても使用されて得るからである。
【0045】
本発明の実施態様において、倍率を調節するための手段13は、エレクトロウェッティングに基づく可変焦点レンズを含む。可変焦点レンズの原理は、WO2003/069380号及びWO2004/038480号に詳細に記載されていることが付記される。エレクトロウェッティング装置に対する印可電圧を変更することは、メニスカスの形状及び/又は位置を変更し得る。故に、変更可能なメニスカスが得られる。
【0046】
エレクトロウェッティング装置に基づく可変焦点レンズは、単一の変更可能なメニスカス又は可変焦点レンズ素子を使用し得るが、好ましくは、放射線検出器上で放射線スポットを焦点内に維持しながら倍率を変更するために、可変焦点レンズは、2つの変更可能なメニスカスを含む。後者の場合には、焦点オフセットは集束サーボ信号内に実質的に導入されない。これは可変焦点レンズが好ましくはズームレンズとして作用しなければならないことを意味する。
【0047】
図4(WO2004/038480号から取られている)は、エレクトロウェッティングに基づく可変焦点レンズ、即ち、エレクトロウェッティングレンズの実施例を示しており、倍率を調節するための手段はそれを含み得る。図面はエレクトロウェッティング装置に基づく制御可能なレンズ部分を備えるそのような可変焦点レンズ素子24,26のための可能な構成の断面図を示しており、その部分はエレクトロウェッティング装置に基づく2つの可変焦点レンズ24,26を含む。このエレクトロウェッティング装置は、伝導性材料のシリンダ22を含む。シリンダは絶縁層28で塗工される。シリンダの内側は流体接触層30を備える。流体接触層30が十分な絶縁特性を有するとき、単一の絶縁流体接触層が使用され得る。伝導性シリンダ22は、レンズ素子24及び26のための共通の第一電極を形成している。第一レンズ素子2の第二電極は、放射線を通すための中央透明地域を有する環状伝導層32によって構成されている。下側の伝導層34は第二レンズ素子26の第二電極を形成している。透明層36及び38はそれぞれ伝導層32及び34を覆い得る。シリンダの中央部は、第一の透明且つ非伝導性流体(液体又は蒸気)Aで充填される。流体Aの各側で、第二の透明且つ伝導的又は極性の流体B(液体又は蒸気)が存在し、その流体は第一流体Aとは異なる屈折率を有する。上側にある非メニスカス流体は第一メニスカス40によって分離され、それは第一可変焦点レンズ素子を形成している。下側にある流体A及びBは第二メニスカス42によって分離され、それは第二可変焦点レンズ素子を形成している。メニスカスの曲率、よって、レンズ素子24及び26の焦点距離は、制御可能な電圧源44及び46をそれぞれ用いて互いに独立して変更され得る。ズーム、即ち、ズームレンズの焦点距離を変更することは、源44の電圧V1の適用を介して第一レンズ素子24のメニスカス曲率を変更することによって遂行される。集束、即ち、異なるズーム構成のための鮮明な画像を維持することは、源46の電圧V2の適用を介して第二レンズ素子26のメニスカス曲率を変更することによって遂行される。距離ズームインは、ズームレンズ系の焦点距離が増大されることを意味し、ズームアウトは、この距離が減少されることを意味する。
【0048】
図4に関連して記載されたような可変焦点レンズは、ズーム機能を生成するために、2つの可変焦点レンズ素子を備える単一のシリンダ又はセルを含む。しかしながら、エレクトロウェッティング装置に基づく可変焦点素子をそれぞれ含む2つのセルの構成のような他の構成も可能である。
【0049】
代替的に、倍率を調節するための手段13は、ズームレンズに一般的に使用されるような光学系の光軸に沿う(よって、軸方向に移動する)光学素子(又は複数の光学素子)の変位を使用する可変焦点レズを含む。
【0050】
ズーム機能を有する蒸気の実施態様には、放射線検出器上の放射線スポットの直径を変更するために倍率を変更するための光学素子、並びに、集束サーボ信号内の焦点オフセットの導入を防止するために放射線検出器上の放射線スポットを焦点内に維持するための調節可能な焦点距離を有する光学素子がある。
【0051】
手段13のズームは、1つ又は複数の(離散的な)ステップを用いて最大値と最小値との間で切り換え可能であり得る。ステップの数は、走査されるべき記録担体の異なる種類の量、並びに、倍率のために必要とされる変化の量に依存し得る。例えば、BD、DVD、及び、CDを走査するのに適する走査装置のために、2つのステップズームが使用され得る。走査装置のBD最適化された設計のために、これらの2つのステップは、BDからDVD走査能力への1つのズームステップと、走査装置のDVDからCD走査能力への他の特別なズームステップとである。しかしながら、ズームステップのみが走査装置のBDからDVD走査能力へ必要とされることも可能であり、追加的なズームステップはCD走査能力のためには使用されない。当業者は他のズームステップ構成も可能であることを理解しよう。同一のことが切換可能な倍率可能性のみを有する手段13に当て嵌まる。
【0052】
手段13が連続的なズーム能力を有することがより好ましい。これは走査装置の性能がさらに最適化され得るという追加的な利益を有する。
【0053】
倍率の変化は本発明に従った放射線スポットの直径の変化をもたらすのに加え、例えば、焦点サーボ信号内の焦点オフセットを削減し或いは走査ジッタを最適化するために、焦点の微調整が加えられ得る。
【0054】
連続ズーム能力を備えることによって、走査装置が情報層上で焦点内にある間、放射線検出器上の放射線スポットを放射線検出器の寸法によって許容可能な最大サイズに拡大することも可能である。この状況では、記録担体内の可能な他の情報層上の(記録担体内の情報層上に集束される)放射線ビームの反射によって引き起こされる可能な迷光は減少される。
【0055】
走査装置がBD走査のために最適化され、倍率を変化するための手段13がDVD又はCDを走査するために倍率を調節するために使用されるとき、手段13は、放射線検出器の寸法に適合するよう放射線スポット直径を拡大するためにも使用され得る。これはBDを走査する場合における迷光の影響を減少し、よって、走査装置の走査性能を増大し得る。
【0056】
本発明に従った他の実施態様において、倍率を変更する手段13は、放射線ビームの波長に依存して倍率を変更する。これは、手段13が、例えば、回折光学素子のような波長依存光学素子を含むときに可能である。ホログラフィックレンズが波長依存焦点距離を有し、従って、光学系の倍率に影響を及ぼし得る。放射線スポットを放射線検出器上で焦点状態に維持しながら倍率を変更するために、第二回折光学素子が導入されるのが好ましい。これらの2つの回折光学素子の組み合わせは、その場合には、波長依存ズームレンズとして作用する。
【0057】
回折光学素子は、用途において使用される全ての波長のために活性であり得るが、1つ又はそれよりも多くの波長範囲のために実質的に不可視的であり得る。よって、放射線検出器に向かう光ビームに実質的に影響を及ぼさない。これは、例えば、回折構造によって導入される位相差が構造によって影響されない放射線ビームの波長の整数倍である回折光学素子を適用することによって得られる。
【0058】
代替的に、倍率又は2つの焦線間の距離Δfに影響を及ぼすために、分散性流体(又は複数の流体)を備えるエレクトロウェッティング装置も使用され得る。そのような流体を使用することによって、装置を通る放射線ビーム上のエレクトロウェッティング装置の光学的影響も、その放射線ビームの波長に依存する。
【0059】
本発明に従ったさらに他の実施態様において、倍率を変更するための手段13は、放射線ビームの偏光に依存して倍率を変更する。これは手段13が複屈折光学素子を含むときに可能である。
【0060】
第一放射線ビームが第一偏光方向を有し、第二放射線ビームが第二偏光方向を有するとき、複屈折光学素子は、第一放射線ビームを第二放射線ビームと異なって影響し得る。そのような光学素子は、例えば、第二複屈折素子に接合された第一屈折性非複屈折素子を備える複合レンズであり得る。その複合レンズのために、第一波長(例えば、405nm)のための第一素子と第二素子との間には屈折率の差が実質的になく、第二波長(例えば、660nm)のための屈折率に実質的な差があり、それによって、放射線検出器に向かう第二放射線ビームの倍率に影響を及ぼす。好ましくは、第一及び第二放射線ビームの偏光は直角であり得る。当業者に明らかであるように、他の組み合わせも可能である。
【0061】
代替的に、手段13は液晶材料を含む。効果は、手段13を通る放射線ビームの偏光の故に受動的な方法、手段13内の切換可能なLCセル内のLC材料の向きの偏光の故に能動的な方法、或いは、それらの組み合わせであり得る。放射線検出器に向かう放射線ビームの可能な焦点外れを補正するために、液晶材料は単一の素子又は二重の素子内にあり得る。
【0062】
光学走査システム内の放射線検出器に向かう放射線ビームの倍率変化を得ながら、検出器に向かう放射線ビームの可能な焦点外れを補正するために、回折光学素子及び複屈折光学素子の組み合わせの可能である。
【0063】
当業者によって理解され得るように、放射線検出器上の放射線スポットの直径を適合するために、戻り経路倍率を変更するための手段13のための上記の実施例及び実施態様は、非点収差焦点システム内の焦線間の距離Δfを変更する手段のためにも使用され得る。
【0064】
戻り経路倍率を変更するための手段と非点収差システム内の焦線間の距離Δfを変更するための手段との組み合わせも使用され得る。
【0065】
前の実施態様及び実施例に記載されているように、戻り倍率を変更するための手段及び焦線間の距離Δfを変更するための手段は、受動的手段(例えば、回折変更素子)又は能動的手段(例えば、エレクトロウェッティング装置又は切換可能なLCセル)であり得る。能動的手段は、変更手段13の活性化又は切換えのための出力信号を生成する制御手段を必要とする。この制御手段は、例えば、走査されるべき記録担体の種類又はフォーマットに依存する或いは記録担体の走査のためにスイッチオンされる放射線源に依存する入力信号を有し得る。この入力信号に依存して、制御手段は、放射線検出器の所要寸法と調和する放射線スポットの直径を得るために、手段13を戻り経路倍率が所要値又はレベルに設定されるような状態に切り換え、活性化し、或いは、変更する出力信号を生成する。
【0066】
実施例として、放射線ビームを情報層上に集束するために使用される開口数が光学走査装置内のNA−選択信号によって能動的に適合されるとき、同一のNA−選択信号は、手段13のための制御手段のための入力信号として使用され得る。他の実施例は当業者に明らかである。
【0067】
戻り倍率又は焦線間の距離Δfの微調整によって走査装置の走査性能を最適化することも可能である。
【0068】
BDを走査する間にその検出器上の放射線スポットの直径のために最適された放射線検出器の設計を有する光学走査装置において、DVDを走査するときの放射線検出器上の放射線スポットの直径は、本発明に従って拡大され得る。しかしながら、BDを走査しながら放射線検出器上の放射線スポットの直径が拡大される(或いは検出器寸法に対して最大化される)ことも走査装置の走査性能にとって関心であり得る。走査装置がBD記録担体の情報層上に正しく集束されるとき、検出器上の放射線スポットの直径は、検出器の寸法と実質的に一致するまで拡大され得る。その場合には、例えば、BD記録担体内の他の層上の反射に起因する迷光は、例えば、漏話の故に走査装置の生成されたトラッキング信号に余り影響を有さない。走査装置がそのような多層BD記録担体内に存在する他の情報層にジャンプしなければならないとき、検出器上のBD放射線スポットの余分な拡大は、このジャンプが活性化される前にスイッチオフされ得る。同様に、例えば、迷光、漏話、及び、ビーム着陸の影響をさらに減少するために、DVD記録担体を走査するときに放射線スポットをさらに拡大することは有利であり得る。
【0069】
本発明は非点収差集束法を使用する光学走査装置に適用されることに限定されないことが留意されるべきである。本発明は、例えば、差分スポットサイズ法又はフーコー法のような、他の集束法にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】従来的な光学走査装置を示す概略図である。
【図2A】従来的な光学走査装置がBD用途で使用される状況のための放射線検出器上に集束される光スポットを示す概略図である。
【図2B】従来的な光学走査装置がDVD用途で使用される状況のための放射線検出器上に集束される光スポットを示す概略図である。
【図3】本発明の実施態様に従った光学走査装置を示す概略図である。
【図4】本発明の他の実施態様に従った制御可能なレンズ部分を備える可変焦点レンズの可能な構造を示す断面図である。
【符号の説明】
【0071】
1 放射線源
2 ビームスプリッタ
3 コリメータレンズ
4 対物レンズ
5 記録担体
6 センサレンズ
7 放射線検出器
10 光学走査装置
11 放射線源
12 ビームスプリッタ
13 倍率を調節するための手段
22 シリンダ
24 可変焦点レンズ素子(第一レンズ素子)
26 可変焦点レンズ素子(第二レンズ素子)
28 絶縁層
30 流体接触層
32 伝導層
34 伝導層
36 透明層
38 透明層
40 第一メニスカス
42 第二メニスカス
44 電圧源
46 電圧源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報層を有する光学記録担体を走査するための光学走査装置であり、
放射線ビームを生成するための放射線源と、
放射線検出器と、
前進経路と、前記放射線ビームを前記情報層上に集束するための前進倍率とを有する光学系と、前記情報層によって前記放射線検出器に反射される前記放射線ビームを透過するための戻り倍率を有する戻り光路とを含む光学走査装置であって、
当該光学走査装置は、前記前進倍率に実質的に影響を及ぼすことなしに、前記戻り倍率を変更し或いは調節するための手段をさらに含むことを特徴とする、
光学走査装置。
【請求項2】
前記放射線源によって放射される前記放射線ビームを前記情報層によって反射される前記放射線ビームから分離するためのビームスプリッタを含み、前記手段は、前記ビームスプリッタと前記放射線検出器との間に位置することを特徴とする、請求項1に記載の光学走査装置。
【請求項3】
前記手段は、調節可能な焦点距離を有する光学装置を含む、請求項1又は2に記載の光学走査装置。
【請求項4】
前記手段は、軸方向に移動可能な光学素子を含む、請求項3に記載の光学走査装置。
【請求項5】
前記放射線ビームは波長を有し、前記手段は、さらに前記波長に依存して前記戻り倍率を変更し或いは調節するよう構成される、請求項1、2、又は、3のうちのいずれか1項に記載の光学走査装置。
【請求項6】
前記手段は、回折光学素子を含む、請求項5に記載の光学走査装置。
【請求項7】
前記放射線ビームは偏光を有し、前記手段は、さらに前記偏光に依存して前記戻り倍率を変更し或いは調節するよう構成される、請求項1、2、又は、3のうちのいずれか1項に記載の光学走査装置。
【請求項8】
前記手段は、複屈折光学素子を含む、請求項7に記載の光学走査装置。
【請求項9】
前記手段は、エレクトロウェッティングレンズを含む、請求項1、2、又は、3のうちのいずれか1項に記載の光学走査装置。
【請求項10】
前記手段は、液晶材料を含む可変光学装置を含む、請求項1、2、又は、3のうちのいずれか1項に記載の光学走査装置。
【請求項11】
上記請求項のうちのいずれか1項に記載の光学走査装置を含む、異なるフォーマットの光学記録担体を走査するための光記録装置。

【図1】
image rotate

【図2A】
image rotate

【図2B】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公表番号】特表2008−521151(P2008−521151A)
【公表日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−540810(P2007−540810)
【出願日】平成17年11月11日(2005.11.11)
【国際出願番号】PCT/IB2005/053718
【国際公開番号】WO2006/054215
【国際公開日】平成18年5月26日(2006.5.26)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】