説明

放射線検出装置、放射線画像診断装置、及び放射線画像の生成方法

【課題】ビームハードニング現象に因るアーチファクトや軟部組織のコントラスト分解能の低下を防止した状態で、従来の積分モードにおいて得られていたものと同等の、透過放射線に拠る画像を提供する。
【解決手段】放射線検出装置はX線検出器12及びデータ収集回路13により構成される。X線検出器12は光子計数型検出器である。この検出器12が出力した各収集画素の信号に基づいてX線のエネルギースペクトル上の複数のエネルギ領域に分類される当該放射線の粒子数の計数データを演算する手段(13(41〜45))と、この複数のエネルギ領域それぞれの計数データに当該エネルギ領域別に与えられた重み係数の重み付けを施す手段(13(46))と、重み付けされた収集画素毎の複数のエネルギ領域それぞれの計数データを互いに加算して当該加算データを収集画素毎の放射線画像生成用データとして出力する手段(13(47))とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線CTスキャナなどの、放射線を診断対象に照射して当該診断対象からの透過放射線を検出し、その検出信号から診断対象の画像を生成する放射線画像診断装置及び放射線画像の生成方法に係り、とくに、診断対象から透過してきた放射線を光子(粒子)と見做してその光子数を計数する光子計数型(フォトンカウンティング型)の検出器を備え、その検出信号に基づいて画像を生成する放射線画像診断装置及び放射線画像の生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、医療画像診断や構造物の非破壊検査などに見られるように、放射線の一種であるX線を用いて人体や物体の内部を撮像することの重要性は益々高まっている。この要求に応えるために、少ないX線量、高いS/N、及び広い視野で対象物を撮像することが求められており、このための研究も盛んである。
【0003】
これを、X線CTスキャナを例にとって説明する。X線CTスキャナはX線検出器を備えており、このX線検出器は、歴史的にはXeガスの電離現象を応用したものに始まっている。最近では、X線検出器として、GOS、CsI、CWOなどの2次元固体検出器(シンチレータとフォトダイオードの組み合わせによる検出器)を用いたタイプのX線検出器も用いられるようになっている。同時に、近年では、体軸方向に視野の拡大が要求され、X線検出器も心臓や肺野のボリュームスキャンが可能な広い視野に対応できるように大面積化が進んでいる。
【0004】
このX線検出器及びデータ収集システム(DAS)は、当該検出器の入射面に入射してくるX線をデジタル値に変換するために、シンチレータ、フォトダイオード、プリアンプ、A/D変換器などの多種類の回路要素を備えている。このX線検出器及びデータ収集システムは、検出動作モードとして、例えば特許文献1及び非特許文献1に見られるように、積分モードで動作する。すなわち、入射X線の全エネルギを光に変換した後、この光信号を電気信号に変換し、この電気信号を所定時間積分することで検出信号として出力させる。
【特許文献1】特開2000−131440号公報
【非特許文献1】「「常温半導体放射線検出器の現状と将来」、日本原子力学会秋の大会部会企画セッション、 発表日:平成11年9月12日、 発表者:通商産業省 工業技術院 機械技術研究所 三澤雅樹氏」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したX線検出器及びデータ収集システムは、積分モードで動作していることから、X線のエネルギがその積分値として検出される。すなわち、低エネルギから高エネルギまでのX線の全てのエネルギが積分されている。このため、相対的に低エネルギのX線の情報が埋もれてしまうため、かかる検出信号を用いて再構成した画像には、X線の線質の硬化(いわゆる、ビームハードニング現象)に因るアーチファクトが発生したり、軟部組織のコントラスト分解能が低下したりして、画質が劣化するという問題があった。
【0006】
本発明は、上述した従来の積分モードで動作するX線CTスキャナなどの放射線画像診断装置が有する問題に鑑みてなされたもので、統計的なノイズを増やすことなく、ビームハードニング現象に因るアーチファクトや軟部組織のコントラスト分解能の低下を防止することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成させるため、本発明に係る放射線検出装置は、その一様態として、放射線を入射させる複数の収集画素を有し且つ当該収集画素のそれぞれに入射した前記放射線を光子と見做して当該粒子のエネルギに応じた電気信号を出力する光子計数型検出器と、この検出器が出力した各収集画素の信号に基づいて前記放射線のエネルギースペクトル上の複数のエネルギ領域に分類される当該放射線の粒子数の計数データを演算する領域別データ演算手段と、この領域別データ演算手段により演算された収集画素毎の前記複数のエネルギ領域それぞれの計数データに当該エネルギ領域別に与えられた重み係数の重み付けを施す重み付け手段と、この重み付け手段により重み付けされた収集画素毎の前記複数のエネルギ領域それぞれ計数データを収集画素毎に互いに加算して当該加算データを得る放射線画像生成用データとして出力する加算手段とを備えたことを特徴とする。
【0008】
好適には、前記領域別データ演算手段は、前記検出器が出力した信号を前記複数のエネルギ領域に弁別する弁別手段と、この弁別手段により弁別された信号を当該エネルギ領域毎に計数して当該計数値を前記計数データとして前記重み付け手段に渡す計数手段と、を備える。
【0009】
例えば、前記重み付け手段は、前記収集画素毎の前記複数のエネルギ領域のうちの高エネルギ側又は低エネルギ側のエネルギ領域からの前記計数データほど大きい重み付け係数で前記重み付けを施す手段である。さらに、前記重み付け手段は、前記収集画素毎の前記複数のエネルギ領域のうちの高エネルギ側及び低エネルギ側のエネルギ領域からの前記計数データほど、より大きい(又は小さい)重み付け係数で前記重み付けを施す手段であってもよい。
【0010】
また、本発明に係る放射線画像診断装置は、典型的には、上記放射線検出装置と、この放射線検出装置の前記加算手段から出力される収集画素毎の放射線画像生成用データを用いて放射線画像を生成する画像生成手段と、を備えたことを特徴とする。なお、本発明に係る放射線診断装置には、各種の医療用、非破壊検査用、空港手荷物検査用、内部構造分析用のX線CTスキャナ、X線診断装置、各種シンチレーションカメラ、シンチレーションプローブ、ガンマ線非破壊検査装置などがある。
【0011】
さらにまた、本発明に係る放射線画像の生成方法は、入射する放射線を粒子と見做して収集画素毎に検知し当該入射した前記放射線の粒子のエネルギに応じた電気信号を出力し、この出力した各収集画素の信号に基づいて前記放射線のエネルギースペクトル上の複数のエネルギ領域に分類される当該放射線の粒子数の計数データを演算し、この演算された収集画素毎の前記複数のエネルギ領域それぞれの計数データに当該エネルギ領域別に与えられた重み係数の重み付けを施し、この重み付けされた収集画素毎の前記複数のエネルギ領域それぞれの計数データを互いに加算して当該加算データを収集画素毎の放射線画像生成用データとして出力し、この放射線画像生成用データを用いて放射線画像を生成する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、入射する放射線を粒子と見做して収集画素毎に検知した信号が用いられる。この信号に基づいて放射線のエネルギースペクトル上の複数のエネルギ領域に分類される当該放射線の粒子数の計数データが演算される。この演算された収集画素毎の複数のエネルギ領域それぞれの計数データに当該エネルギ領域別に与えられた重み係数の重み付けが施される。この重み付けされた複数のエネルギ領域それぞれの計数データが互いに加算されて当該加算データが各収集画素の放射線画像生成用データとして出力される。このため、重み係数の値をエネルギースペクトル上の高低に応じてエネルギ領域別に変えることで、低エネルギ成分の情報も確実に取り込むことができる。したがって、重み係数を粒子エネルギに応じて変わる適度な加重パターンで設定することによって、ビームハードニング現象に因るアーチファクトや軟部組織のコントラスト分解能の低下を防止した状態で、従来の積分モードにおいて得られていたものと同等の、透過放射線に拠る画像を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して、本発明に係る放射線画像診断装置及び放射線画像の生成方法の実施形態を説明する。
【0014】
(第1の実の施形態)
図1〜図8を参照して、本発明に係る第1の実施の形態を説明する。
【0015】
本実施形態では、本発明に係る放射線画像診断装置はX線CT(Computed Tomography)スキャナとして実施されており、このX線CTスキャナの中で本発明に係る放射線画像の生成方法も実施される。
【0016】
図1には、このX線CTスキャナの概略構成を示す。
【0017】
図1に示すように、X線CTスキャナ1は、ガントリ2、高電圧発生装置3、寝台4、及びコンソール5を備える。ガントリ2の内部には、図示しないX線源(放射線源)としてのX線管11及びX線検出器(放射線検出器)12が円筒状の開口部OPを介して対向配置され、且つ、このX線管11及びX線検出器12の対がガントリ2内で開口部OPの周りで回転可能に配置されている。
【0018】
X線管11には高電圧発生装置3から高電圧が供給され、これにより、例えば連続スペクトルを有するパルス状のX線が開口部OPに向けて曝射されるようになっている。この開口部OPには、寝台4の天板4Pが進退自在に挿入される。天板4P上には被検体Pが載置されるので、X線管11から曝射されたX線は被検体Pを透過して、その開口部OPの反対側に向かう。
【0019】
X線検出器12は、図2に示すように、被検体Pの体軸方向に相当するスライス方向と、このスライス方向に直交するチャンネル方向とを有し、この2次元面に沿って複数の多数の画素が2次元アレイ状に配置された2次元検出器になっている。しかも、このX線検出器12のチャンネル方向は特に、X線管11からのX線ビームの広がり角度を考慮して湾曲を持たせている。なお、X線検出器12の全体の形状は、用途によって決まり、平板状であってもよい。
【0020】
このX線検出器12は、かかる2次元面を複数の面に分割するように複数の検出器ブロック12Jに分割され、且つ、その検出器ブロック同士を着脱自在に結合可能になっている。また、検出器ブロック12JのX線入射側の前面には、モリブデン製あるいはタングステン製の図示しないコリメータがスライス方向に配置された状態で、X線管11からのX線透過像が得られるようになっている。
【0021】
各検出器ブロック12Jは、化合物半導体から成り且つ所定サイズ(例えば数センチ×数センチ)の層状の半導体セルSと、この半導体セルSの放射線入射面を電圧印加用の荷電電極E1で覆うとともに、この半導体セルSの放射線入射面に反対側の面を2次元アレイ状(碁盤目状)に分割した複数の集電電極E2で覆うモノリシック構造を有する。この集電電極E2が各画素に対応している。この半導体セルSの材料としては、テルル化カドミウム半導体(CdTe半導体)、カドミュームジンクテルライド半導体(CdZnTe半導体)、シリコン半導体(Si半導体)などが用いられる。荷電電極E1には例えば数十V〜数百V程度の比較的高い電圧が印加される。これにより、半導体セルSに入射したX線光子に因り、その内部に電子と正孔の対が発生し、このうちの電子が相対的に正電位の集電電極E2それぞれに集められ、この電子による電荷がパルス状の信号として検知される。つまり、放射線入射面に入射したX線は電気量のパルス信号に直接、変換される。
【0022】
碁盤目状に分割された複数の電極E2それぞれのサイズにより、X線に対する収集画素のサイズが決まる。このサイズは、X線を光子(粒子)として検出することが可能な十分小さい値になっている。これにより、フォトンカウンティング(光子計数)が可能なX線検出器12が構成され、その全体では所定数個でかつマトリクス状の収集画素チャンネルが形成されている。
【0023】
本実施形態において、X線をその粒子として検出可能なサイズとは、「放射線(例えばX線)粒子が同一位置又はその近傍に複数個連続して入射したときの各入射に応答したパルス信号間の重畳現象の発生を実質的に無視可能なサイズ」であると定義される。この重畳現象が発生すると、X線粒子の「入射数対実際の計測数」の特性にX線粒子の数え落とし特性が発生する。このため、X線検出器12に形成する収集画素のサイズは、この数え落とし特性が発生しない又は実質的に発生しないとみなせる大きさに設定されている。
【0024】
なお、このフォトンカウンティングが可能なX線検出器は、従来、特開2000−69369号公報においても知られている。
【0025】
これにより、被検体Pを透過したX線は、ガントリ2の内部に設けられた2次元のX線検出器12によりX線粒子(すなわちX線光子)として一定時間毎に計数され、光子エネルギに応じたアナログ量の検出信号が画素毎に出力される。
【0026】
このX線検出器12から出力された各画素の検出信号は、ガントリ2に内に設けられたデータ収集回路13に送られる。このデータ収集回路13及びX線検出器12は、本発明に係る放射線検出装置RDSを成す。
【0027】
このデータ収集回路13は、図3に示すように、X線検出器12の各収集画素を成す半導体セルSに応じて、複数チャンネルのデータ収集回路Cが形成されている。この各データ収集回路Cは、半導体セルS(センサ)から出力されたアナログ量の電気信号を受けるチャージアンプ41を有し、このチャージアンプ41の後段に、波形整形回路42、多段の比較器43〜43、エネルギ領域振分け回路44、多段のカウンタ45〜45、重み付け回路46、及び加算回路47を順次備える。
【0028】
なお、1つの変形例として、このデータ収集回路13を成す複数チャンネル分の各種処理回路は、X線検出器12の半導体セル(センサ)の裏面にASIC層(特定用途向け集積回路)として作り込んでもよい。つまり、各データ収集チャンネルを成す波形整形回路42、多段の比較器43〜43、エネルギ領域振分け回路44、及び多段のカウンタ45〜45、並びに、共通回路である重み付け回路46及び加算回路47をX線検出器12と一体に形成するのである。勿論、このデータ収集回路13は、本実施形態のように、X線検出器12と別体に構成してもよい。また、別の変形例としては、共通回路である重み付け回路加算回路46及び加算回路47をコンソール5に設けてもよいし、それらの回路46〜48の機能をコンソール5に設けた演算器で実施するようにしてもよい。
【0029】
図3に示す各データ収集チャンネルにおいて、チャージアンプ41は、半導体セルSの各集電電極E2に接続され、X線粒子の入射に応答して集電される電荷をチャージアップして電気量のパルス信号として出力する。このチャージアンプ41の出力端は、ゲイン及びオフセットが調整可能な波形整形回路42に接続されており、検知したパルス信号の波形を、予め調整されているゲイン及びオフセットで処理して波形整形する。この波形整形回路42のゲイン及びオフセットは、半導体セルSの収集画素毎の電荷チャージアップ特性に対する不均一性を考慮した調整パラメータである。収集画素チャンネル毎の波形整形回路42のゲイン及びオフセットをキャリブレーション作業にて事前に調整しておくことにより、かかる不均一性を排除した波形整形を行うことができる。この結果、各データ収集チャンネルの波形整形回路42から出力された、波形整形済みのパルス信号は実質的に入射X線粒子のエネルギ量を反映した特性を有することになり、収集画素チャンネル間のかかるばらつきは殆ど解消される。
【0030】
この波形整形回路42の出力端は、複数の比較器43〜43の比較入力端にそれぞれ接続されている。この複数の比較器43〜43の各基準入力端には、それぞれ値が異なる基準値TH1(〜THn)が印加されている。このように、1つのパルス信号を異なる基準TH1(〜THn)と比較する理由は、入射したX線粒子のエネルギ量が、事前に複数に分けて設定したエネルギ領域のうちのどの領域に入るのか、その情報をするためである。図4(a)に例示するように、パルス信号の波高値(つまり、各入射X線粒子のエネルギ量を表す)が基準値TH1〜TH3(n=3のとき)のどの値を超えているかにより、弁別されるエネルギ領域が異なる。かかる波高値が基準値TH1とTH2との間にある場合、現在計測中のX線粒子のエネルギ量はエネルギ領域1に入るものと弁別され、基準値TH2とTH3との間にある場合、現在計測中のX線粒子のエネルギ量はエネルギ領域2に入るものと弁別され、さらに、基準値TH3以上の場合、現在計測中のX線粒子のエネルギ量はエネルギ領域3に入るものと弁別される。なお、最も低い基準値TH1は、外乱や、半導体セルS、チャージアンプ41などの回路に起因するホワイトノイズを検出させない誤検出防止用の閾値として設定される。また、基準値の数、すなわち比較器の数は、必ずしも3個(弁別可能なエネルギ領域数=3)に限定されず、2個又は4個であってもよいし、場合によっては、1個であってもよい。1個の場合には、X線粒子が入射したか否かの情報が得られる。
【0031】
図5に、この基準値TH1〜THnの設定例を示す。同図に示す波形は、通常に使用されているX線管球から曝射されるX線のエネルギの連続スペクトルを示す。なお、縦軸のカウント数はX線管電流に依存する量であり、横軸のエネルギースペクトルはX線管の管電圧に依存する量である。このスペクトルに対して、第1の基準値TH1を、X線粒子数を計数不能領域と低目のエネルギ領域1と弁別可能な値に設定し、第2の基準値TH2を低目のエネルギ領域1と中程度のエネルギ領域2とを互いに弁別可能な値に設定し、更に第3の基準値TH3を中程度のエネルギ領域2とそれ以上のエネルギ領域3とを弁別可能な値にそれぞれ設定している。本実施形態では、例えば、このように3つの基準値TH1〜TH3を設定することで、入射したX線は粒子とみなされて検出された後、エネルギ領域1〜3にそれぞれ分類される。なお、この基準値TH1〜THnの設定数や設定値は任意である。
【0032】
複数の比較器43〜43の出力端は、図3に示すように、エネルギ領域振分け回路44に接続されている。このエネルギ領域振分け回路44は、複数の比較器43〜43の出力のうち、どの比較結果がオン(オフ)になっているかを読み取り、現在計測中のX線粒子のエネルギがどの領域に入るかという振分けを行う機能を有する。具体的には、この回路44は例えば論理回路の組み合わせで成る。例えば図4(a)に示すパルス信号の場合、その波高値(エネルギ量)はエネルギ領域2を示しているので、図4(b)に示すように比較器43、43の出力がオンとなり、且つ、比較器43の出力がオフとなる。このため、エネルギ領域振分け回路44は、このオンオフ情報を読み取って解読し、エネルギ振分け信号をその出力端から出力する。一例として、図4(b)の場合、このエネルギ振分け信号は「エネルギ領域2」を示す信号のみをオンに立ち上げたものとなる。これにより、現在計測しているX線粒子のエネルギは「エネルギ領域2」に入るとの振分け情報が得られる。
【0033】
このエネルギ領域振分け回路44の複数の出力端は、複数のカウンタ45〜45に各別に接続されており、そのエネルギ振分け信号が各別に複数のカウンタ45〜45それぞれに与えられる。このため、カウンタ45〜45は、それぞれ、入力したエネルギ振分け信号がオンのときにのみ計数値をインクリメント(カウントアップ)して、各担当するエネルギ領域に入るX線粒子数を一定時間に渡って計測することができる。一例として、図4(c)、(d)に示す状況にあっては、X線粒子のエネルギはエネルギ領域2に入るので、このエネルギ領域2の計測するカウンタ45の計数値がインクリメントされる。
【0034】
このようにして、リセットされるまでの一定時間の間に、複数のカウンタ45〜45により、X線検出器12に入射したX線の粒子数が、収集画素毎に且つエネルギ領域毎に計測される。この計数値、すなわち、X線粒子数の計数値は、複数のカウンタ45〜45のそれぞれからデジタル量の計数データKとして出力される。
【0035】
この計数データは、その後、重み付け回路46に送られて、この回路46にて、後述するように、エネルギ領域それぞれの計数値に対する重み付けがなされる。
【0036】
具体的には、この重み付け回路46は、図6に示すように、カウンタ45〜45の数に応じて設けたn個の乗算器51〜51と、これらの乗算器51〜51を与える重み付け係数発生器52とを備える。乗算器51〜51のそれぞれは、対応するカウンタ45(〜45)から出力される計数値と重み付け係数発生器52から各別に与えられる重み付け係数Wとを乗算することで当該計数値を重み付けするようになっている。重み付け係数発生器52は、一例として、コンソール5のコントローラから送られてくるX線エネルギ領域別の重み付け情報を受け、この情報に応じて乗算器51〜51のそれぞれに与える重み付け係数Wを発生させる。
【0037】
ここでの重み付けの手法(その根拠は後述される)は、一例として、図7(A)に示す如く、ビームハードニングに因るアーチファクト抑制を目的として高いエネルギ領域を強調する(重み付け係数Wの値を高くする);同図(B)に示す如く、軟部組織のコントラスト改善を目的として低いエネルギ領域を強調する;又は、同図(C)に示す如く、ビームハードニングに因るアーチファクト抑制及び軟部組織のコントラスト改善を目的としてその両方の領域を共に強調するという複数の様態のうちの何れかに基づいている。
【0038】
この乗算器51〜51で重み付けされたデータは、加算回路47により相互に加算され、1つの収集画素分のフォトンカウンティングに拠る収集データとして出力される。図4に示すように、この重み付け処理を伴うデータ収集は、収集画素それぞれの半導体セル(センサ)について並列に実行されるので、X線検出器12の全収集画素について同様にデータ収集可能になっている。
【0039】
(重み付けをする根拠とその具体的な手法)
この重み付け回路46で成される重み付け処理は、本発明の特徴の中心を成すもので、本発明者が研究の末に得た原理に基づくものである。
【0040】
この原理を以下に説明する。いま、X線のエネルギーフルエンスをΨ(E)、X線のエネルギースペクトルをφ(E)とすると、エネルギーフルエンスをΨ(E)は、エネルギースペクトルをφ(E)に各光子のエネルギEを乗算したものであり、
[数1]
Ψ(E)=φ(E)・E ……(1)
と表すことができる。従来のシンチレーション検出器は、このエネルギーフルエンスをΨ(E)の積分値、すなわち合計値として、そのエネルギが計測されている。本実施形態のように、フォトンカウンティング型検出器を採用する場合、検出器におけるX線のエネルギースペクトルφ(E)を知ることができるので、これにエネルギ加重関数w(E)を導入して、
[数2]
Ψ(E)´=φ(E)・w(E) ……(2)
という物理量を擬似的に作ることができる。したがって、(1)式は(2)式においてw(E)=Eという重み付けを行なったときの一例と見做すことができる。
【0041】
そこで、本発明者は、エネルギ加重関数w(E)に様々な関数を用いて既存のX線CTスキャナに生じているビームハードニングに因るアーチファクトや軟部組織のコントラスト分解能の低下といった問題を改善できることを見出した。
【0042】
典型的には、エネルギ加重関数w(E)として、高エネルギに強い加重を掛けるとき(High Energy Weighted: HEW)に、w(E)=E、及び、低エネルギに強い加重を掛けるとき(Low Energy Weighted: LEW)に、w(E)=(160−E)とすることができる。なお、従来型のX線CT画像の再構成は、エネルギーフルエンス(Energy Fluence:EF)であって、w(E)=Eとしたことに相当する。これは、従来の積分型の検出器によって得られた画像と同質の画像を得ることに相当する。エネルギ加重関数w(E)に基づく重み付け係数Wは何れの場合も正規化されている。
【0043】
勿論、このほかにも中高エネルギに強い加重を掛けることもできるし、低中エネルギに強い加重を掛けることもできる。さらに、高エネルギと低エネルギの双方に中エネルギよりも強い加重を掛けるように、加重曲線で言えば下に凸の放物線を画くように設定できる。
【0044】
(ビームハードニングに因るアーチファクト除去との関係)
X線が吸収計数の大きい媒質を通過するときに、エネルギの小さなX線ほど媒質に吸収されやすいので、透過したX線を観察すると、高エネルギ側のX線が相対的に多く残存することになる。この現象は線質硬化(ビームハードニング)と呼ばれ、これによってアーチファクトが発生する。これを図5のスペクトルを用いて説明すると、透過X線にビームハードニングが起こると、その平均エネルギは、入射時のそれより高エネルギ側にシフトするので、(2)式において高エネルギに強い加重を掛けるHEWを採用することで、ビームハードニングに因るアーチファクトが軽減される。
【0045】
(軟部組織のコントラスト分解能の改善)
X線CT画像におけるコントラストは、対象物質を構成する媒質の線吸収係数の差を表している。軟部組織では線吸収係数の値が近いので、その違いを表現することは難しい。しかしながら、フォトンカウンティング型の検出器の場合、低エネルギのX線吸収の情報も得られるので、この情報を用いて物質の違いを強調することができる。つまり、この場合には、(2)式において低エネルギ側に強い加重をするLEWを採用することで、軟部組織のコントラストを強調できる。
【0046】
(シミュレーション)
上記考察に基づいて、モンテカルロシミュレーションを実行して従来型の画像と比較したところ、ビームハードニングに因るアーチファクト及び軟部組織のコントラスト分解能が共に改善するという結果が得られた。
【0047】
図1に戻って説明すると、データ収集回路13の、各収集画素に対応して設けられた加算回路47から出力された各収集画素のデジタルデータは、放射線画像生成用データであるビューデータ(収集データ)として、ガントリ2内において図示しないスリップリング又は非接触タイプの通信接続部を介して固定部に送られる。このガントリ2の固定部から通信ラインを介してコンソール5に送信される。コンソール5は、X線CTスキャナ1の構成要素の全体を統括するとともに前述した重み係数情報を重み付け回路46に送るコントローラ20を備える。また、コンソール5は、このコントローラ20に加えて、インターフェース21、記憶ユニット22、再構成ユニット17、表示器18、及び入力器19を備える。
【0048】
また、表示器18、入力器19、及びコンピュータ20は術者との間のインターフェースを形成しており、コンピュータ20の与える所定のアルゴリズムに基づいて、このインターフェースの一部の機能として術者にエネルギ加重関数w(E)の所望のプロファイル(すなわち、エネルギ加重関数w(E)で決まる重み付け係数の高低)を決定させることができる。
【0049】
この処理は、例えば図8に示すようにコンピュータ20により実行される。コンピュータ20は、表示器18を介して術者にエネルギ加重関数w(E)の所望のプロファイル決定のために参照画像を表示させるか否かの問いかけを行なう(ステップS1)。この問いかけに対して術者が参照画像の表示と応答した場合(ステップS1、YES)、コンピュータ20は既存の参照画像を表示器18に表示させる(ステップS2)。この参照画像は、術者がビームハードニングに因るアーチファクトや軟部組織のコントラスト低下が起きているか否かを目視判定するために表示させるもので、撮像対象の診断部位について予め撮像・保存していたプリスキャンなどの画像がこれに該当する。準備していた参照画像が無い場合(ステップS1、NO)、術者は経験値などに基づくプロファイル指定を行なうことになるので、ステップS2の表示処理はスキップされる。
【0050】
コンピュータ20は次いで術者からエネルギ加重関数w(E)の所望のプロファイルのパターン指定を受け付ける(ステップS3)。次いで、このパターンが、図7(A)に示すように高エネルギ領域になるほど重み係数を高くするパターンAか、図7(B)に示すように低エネルギ領域になるほど重み係数を高くするパターンBか、又は、図7(C)に示すように低エネルギ領域及び高エネルギ領域で重み係数を高くするパターンCかを判定する(ステップS4〜S6)。
【0051】
図7(A)に示すパターンAは、計測不能領域を除くエネルギ領域を低、中、及び高の3領域に分けたエネルギ領域(エネルギ領域1〜3)のうちの、高エネルギ側の領域から得られた計数データ(粒子の計測数)であるほど、重み付け係数Wを大きくすることを示している。反対に、図7(B)に示すパターンBは、上述の3つのエネルギ領域(エネルギ領域1〜3)のうちの、低エネルギ側の領域から得られた計数データ(粒子の計測数)であるほど、重み付け係数Wを大きくすることを示している。さらに、図7(C)に示すパターンBは、上述の3つのエネルギ領域(エネルギ領域1〜3)のうちの、低エネルギ側及び高エネルギ側のエネルギ領域から得られた計数データ(粒子の計測数)であるほど、重み付け係数Wを大きくすることを示している。
【0052】
このため、所望のプロファイルが判定できると、コンピュータ20は、パターンA,B,Cの別に、加重度合いの調整情報を術者から受けてそれに応じた制御信号を生成し、この制御信号を重み付け回路46の重み係数発生器52(図6参照)を送る(ステップS7〜S12)。つまり、同じパターンAであっても、高エネルギ領域側の加重度合い(正規化されている重み係数の高低)を調整することができ(例えば図7(A)の曲線CV1,CV2参照)、術者はこれを任意に選択することができるようになっている。この同一パターン内の加重度合いの調整はパターンB,Cについても同様に可能である。
【0053】
コンソール5では、送られてきたビューデータが記憶ユニット22に一旦記憶される。撮像は、所定のスキャン方式に応じて、寝台の天板を移動させながら、或いは、天板の位置を固定した状態で、X線管11とX線検出器12との対を被検体の周りに回転させ、その回転途中における所定角度ずつ移動した各回転位置でX線を曝射させて、被検体に対するX線スキャンが実行される。これにより、各回転位置における各収集画素に入射したX線の粒子の計数データに基づく上述したビューデータが得られ、これが記憶ユニット22に順次格納される。そこで、再構成ユニット17は、適宜なタイミングで、記憶ユニット22から画像再構成に必要な各ビューのデータを読み出し、このデータを所望の再構成アルゴリズムで再構成して、エネルギ別のX線粒子数に基づく、積分モード動作のCT画像と同様のCT画像を得る。
【0054】
このCT画像は例えば表示器18に表示される。なお、このコンソール5に、後処理用の後処理プロセッサを設けて、データ収集回路13から送信されてきたビューデータに補正処理などの適宜な後処理を施し、この後処理されたデータを再構成に用いるようにしてもよい。
【0055】
以上のように、本実施形態に拠れば、X線の入射光子のエネルギースペクトルを擬似的にエネルギ領域毎に加重しているので、光子の減衰度合いがエネルギ値の関数になっているという不利益を回避又は軽減することができる。従来の場合、X線のエネルギが積分値として計測されていたため、ビームハードニングなどの線質の変化に対応できず、アーチファクトや軟部組織のコントラスト分解能の低下につながっていた。しかしながら、X線をフォトンカウンティング法によって検出し、収集画素毎の各エネルギ領域のX線粒子の計数データをエネルギ領域毎に所望のプロファイルで重み付けし、その後に相互に加算して各収集画素のビューデータを得ている。このため、統計的ノイズを増やすことない状態で、X線粒子の低エネルギ情報を取りこぼすことなく、この低エネルギ情報を、最終的に生成する各収集画素のビューデータに反映させることができる。
【0056】
エネルギ領域の分別は前述したように必ずしも3つのエネルギ領域1〜3(図5参照)に限定する必要な無く、任意数の分別領域を設定してもよい。例えば、図5に示すX線のエネルギースペクトルにおいて、計測不能領域を除く残りのエネルギ領域を4つ、5つ、又は6つに分けてもよいし、7つ以上に細分化してもよい。そのようなエネルギ領域の更なる分割を行なうには、その分割数に応じた構成を採る、つまり、各収集画素に対応した信号処理チャンネルとして、多段の比較器43〜43、エネルギ領域振分け回路44、多段のカウンタ45〜45、重み付け回路46、及び加算回路47を図3と同様に備えればよい。具体的には、分割数分の比較器43を用意し、これらの比較器43のそれぞれに、分割するエネルギ領域数に対応させた基準値THを与える。また、カウンタ45も分割数、すなわち比較器43の数に応じて用意し、エネルギ領域振分け回路44及び重み付け回路46との間に配置する。このため、各カウンタ45の一定時間毎の計数データは、重み付け回路46に送られて、コントローラ20から指令されるエネルギ領域別の重み係数Wを用いて計数データが重み付けされる。この重み付けされたエネルギ領域別の計数データは、加算回路47で相互に加算され、各収集画素分のビューデータ(画像再構成用データ)として、コンソール5に送られる。
【0057】
このように、各収集画素に対して、エネルギースペクトル上でのフォトンカウンティングを行なうエネルギ領域数を多くすればするほど、ビューデータに取り込める粒子エネルギ量の情報は多くなって、より正確で高画質の、積分動作モードと同様のCT画像を提供することができる。
【0058】
なお、本発明に係る放射線検出装置及び放射線画像診断装置は、必ずしもX線CTスキャナに限定されず、透過像を専門に撮像するX線診断装置であってもよい。
【0059】

(第2の実施の形態)
図9〜10を参照して、本発明に係る放射線画像診断装置及び放射線画像の生成方法の実施形態を説明する。なお、この第2の実施形態の説明において、前述した第1の実施形態で用いたものと同様又は同等の構成要素には同一符号を付して、その説明を簡略化又は省略する。
【0060】
この第2の実施形態は、ラジオアイソトープ(RI)又はその標識化合物が生体内の特定の組織や臓器に選択的に取り込まれる性質を利用して、そのRIから放射されるガンマ線を体外から測定し、RIの線量分布を画像化する、放射線画像診断装置としての核医学診断装置に関する。この核医学診断装置は、例えば、SPECT(single photon ECT)装置又はポジトロンECT(positron ECT)装置として実施される。ここでは、核医学診断装置がSPECT装置として実施されている。
【0061】
この第2の実施形態に係るSPECT装置は、前述した図5と同様の、フォトンカウンティングを行なう複数のエネルギ領域のうち、特定のエネルギ領域を更に細分化して、フォトンカウンティングを行なう構成に特徴を有する。この細分化は見方を変えれば、図5の横軸に示すエネルギ値を特定の関心領域を、より細分化してフォトンカウンティングさせる手法であるとも言える。
【0062】
図9に、これを実施するSPECT装置の検出器に搭載される信号処理回路113の例を示す。この信号処理回路113を搭載する検出器は、ガンマカメラとして構成される。この信号処理回路113は、ガンマ線検出器112の収集画素毎の半導体セルSに対応して設けられた、全収集画素分の複数チャンネルのデータ収集回路Cを備える。
【0063】
各データ収集回路Cは、図示の如く、収集画素毎に、半導体セルSに接続されたチャージアンプ41、波形整形回路42、複数の比較器143、エネルギ領域振分回路144、複数のカウンタ145、重み付け回路146、及び加算回路147を備える。このうち、複数の比較器143は、波形整形回路42の出力端に互いに並列に接続された第1の比較器143、第2の比較器群143、及び第3の比較器143を備える。さらに、第2の比較器群143は、波形整形回路42の出力端に互いに並列に接続された1段目比較器14321、2段目比較器14322、及び3段目比較器14323を備える。これにより、波形整形回路42の出力信号は、全ての比較器の非反転入力端に並列に出力される。
【0064】
この比較器143〜143の反転入力端のうち、第1の比較器143の反転入力端にはエネルギ領域弁別用の基準値TH1が与えられ、第2の比較器群143のうちの1段目比較器14321、2段目比較器14322、及び3段目比較器14323の反転入力端には基準値TH2、TH21、TH22がそれぞれ与えられ、さらに、第3の比較器143の反転入力端には基準値TH3が与えられている。これらの基準値には、TH1<TH2<TH21<TH22<TH3の大小関係が設定されており、このうちの基準値TH1,TH2,TH3により、図10(A)に示す如く、低エネルギ側から順に計測不能領域、エネルギ領域1、エネルギ領域2、及びエネルギ領域3が設定されている。さらに、基準値TH21およびTH22を基準値TH1、TH3の間に設定することにより、中間のエネルギ領域2が更にその低エネルギ側から順に3つのサブエネルギ領域2,2,2に分割されるようになっている。この中間のエネルギ領域2は、通常、検出器113の各収集画素の位置に入射するガンマ線のエネルギースペクトルのフォトピークPKが入るように設定される。
【0065】
この比較器143〜143で比較された結果はエネルギ領域振分回路144にそれぞれ送られる。このため、この振分回路144により、第1の実施形態と同様に、検出器113の各収集画素に入射したガンマ線(粒子と見做す)がどのエネルギ領域1(〜3)(およびサブエネルギ領域2(〜2)に分類されるのかについて最終的に確定される。
【0066】
複数のカウンタ145は、低エネルギ側及び高エネルギ側のエネルギ領域1,3および中間のサブエネルギ領域2,2,2のそれぞれ各別に対応した複数のカウンタ145(:145,14521,14522,14523,145)から成る。このため、各カウンタ145は、エネルギ領域振分回路145からの出力される、粒子と見做したガンマ線の担当エネルギ領域に入ったことを示す信号を受け、この信号がオンのときには、カウントアップする。この複数のカウンタ145の計数データは重み付け回路146に送られる。
【0067】
この重み付け回路146には、図10(B)に示すように、エネルギ領域1,3および中間のサブエネルギ領域2,2,2のそれぞれに応じて、重み付け係数Wがコントローラ20から指令されている。この重み付け係数Wは、それらの領域毎に割り当てられるW1、W2,W3,W4,W5の5個から成り、本実施形態では、W5≦W1<W2<W3<W4の関係に設定されている。低エネルギ側のエネルギ領域1には重み付け係数W1が割り当てられ、中間のエネルギ領域2の1段目〜3段目のサブエネルギ領域2,2,2には重み付け係数W2〜W4がこの順に割り当てられ、そして、高エネルギ側のエネルギ領域3には重み付け係数W5が割り当てられている。このうち、高エネルギ側のエネルギ領域3に割り当てる重み付け係数W5は、本実施形態では、W5=0にしているが、W5≒0であってもよい。またW1=0であっても良い。
【0068】
この結果、重み付け回路146では、エネルギ領域毎に、ガンマ線の粒子数の計数データ(計数値)に、与えられた重み付け計数Wが乗算されて重み付けされる。この重み付けされた計数データは加算回路147に送られ、その加算回路147で相互に加算される。これにより、各収集画素のSPECT画像生成用のデータが得られ、このデータがコンソール5に送られて、SPECT画像の生成に付される。
【0069】
上述した以外の構成及び動作は、前述した第1の実施形態で説明したものと同等又は等価である。
【0070】
このため、この第2の実施形態に係るSPECT装置によれば、検出器113が温度や磁場の影響を受けて、その検出特性にドリフトを生じることがあるが、そのようなドリフトの影響を最小限に抑えることができる。
【0071】
つまり、かかるドリフト現象が発生すると、図10(A)の矢印Dで示すように、計数値のピーク(フォトピーク)が横軸方向に移動して、この移動量による計数値曲線の変化を無視できないこともある。これは、SPECT画像のアーチファクトの原因ともなり、散乱線を多く含む画像の場合、そのようなドリフト現象の影響を受け易い。
【0072】
これに対して、本実施形態によれば、フォトピークが入るであろう中間のエネルギ領域2(サブエネルギ領域2(〜2))はより細かく分割してフォトンカウンティング及び重み付けを行い、かつ、高エネルギ側のエネルギ領域3は急落させた重み付係数=0で重み付けを行なっている。
【0073】
これにより、以下のような利点が得られる。核医学では散乱線にも位置情報がある程度含まれている。このため、中間のエネルギ領域2及び低エネルギ側のエネルギ領域1に設定した段階的に細かく変化させた重み付け係数W1〜W4で、その情報を取り込むとともに、高エネルギ側のエネルギ領域3に設定した重み付け係数W5=0で、ドリフト現象により高エネルギ側に移動した係数値曲線を補正することができ、散乱線を除去したのと似た効果が得られる。また、これにより、SPECT画像のドリフトに因るアーチファクトを低減させることができる一方で、統計的なノイズの増大も極力回避でき、より高品質で安定したSPECT画像を提供することができる。
【0074】
なお、核医学診断装置の場合、通常、RIからの放射線のエネルギ値を連続的な値として計測することができるので、この値に乗算する重み付け係数を連続的に変えることもできる。この場合には、デジタル値で出力されるエネルギ値そのものが、各ウインドウで比較された結果であると解釈できるので、本発明の範疇に含まれる。
【0075】
なお、本発明に放射線検出器及び放射線撮像システムは、上述した実施形態に記載の構成及びその変形例の構成に限定されるものではなく、当業者においては、特許請求の範囲に記載の要旨を逸脱しない範囲で適宜に変更、変形可能なものである。例えば、X線検出器は、前述したように収集画素が2次元配列になるものみに限定されず、収集画素を1次元配列の検出器、又は、2次元配列の検出器を積層してなる3次元配列の検出器であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る放射線画像診断装置としてのX線CTスキャナの概略構成を示す説明図。
【図2】X線CTスキャナに搭載したX線検出器の概略を示す斜視図。
【図3】X線検出器及びデータ収集回路を中心としたX線CTスキャナの電気的な概略構成を示すブロック図。
【図4】入射X線粒子のエネルギ弁別から、その計数動作までを説明するタイミングチャート。
【図5】通常のX線管球から曝射されるX線のエネルギースペクトルと閾値との関係を示すグラフ。
【図6】データ収集回路に搭載される重み付け回路の概略を示すブロック図。
【図7】各種のエネルギ加重関数をパターン別に説明するグラフ。
【図8】重み付け係数をユーザとの対話の元に設定するための処理の概要を説明するフローチャート。
【図9】本発明の第2の実施形態に係る放射線画像診断装置としてのSPECT装置(核医学診断装置)のガンマ線検出器及びデータ収集回路を中心とした電気的な概略構成を示すブロック図。
【図10】SPECT装置で設定するエネルギ領域及び重み付け係数と、ガンマ線のフォトンカウンティングされた計数値曲線の重み付け処理を説明する図。
【符号の説明】
【0077】
1 X線CTスキャナ(放射線画像診断装置)
RDS 放射線検出装置
2 ガントリ
3 高電圧発生装置
4 寝台
P 被検体
11 X線管(放射線源)
5 コンソール
12 X線検出器(放射線検出器)
13 データ収集回路
20 コントローラ
22 記憶ユニット
23 再構成ユニット
41 チャージアンプ
42 波形整形回路
43 比較器
44 エネルギ領域振分回路
45 カウンタ
46 重み付け回路
47 加算回路
112 ガンマ線検出器
113 データ収集回路
143 比較器
144 エネルギ領域振分回路
145 カウンタ
146 重み付け回路
147 加算回路
S 半導体セル
E1 荷電電極
E2 集電電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線を入射させる複数の収集画素を有し且つ当該収集画素のそれぞれに入射した前記放射線を光子と見做して当該粒子のエネルギに応じた電気信号を出力する光子計数型検出器と、
この検出器が出力した各収集画素の信号に基づいて前記放射線のエネルギースペクトル上の複数のエネルギ領域に分類される当該放射線の粒子数の計数データを演算する領域別データ演算手段と、
この領域別データ演算手段により演算された収集画素毎の前記複数のエネルギ領域それぞれの計数データに当該エネルギ領域別に与えられた重み係数の重み付けを施す重み付け手段と、
この重み付け手段により重み付けされた収集画素毎の前記複数のエネルギ領域それぞれの計数データを互いに加算して当該加算データを収集画素毎の放射線画像生成用データとして出力する加算手段とを備えたことを特徴とする放射線検出装置。
【請求項2】
前記領域別データ演算手段は、前記検出器が出力した信号を前記複数のエネルギ領域に弁別する弁別手段と、この弁別手段により弁別された信号を当該エネルギ領域毎に計数して当該計数値を前記計数データとして前記重み付け手段に渡す計数手段と、を備えたことを特徴とする請求項1に記載の放射線検出装置。
【請求項3】
前記重み付け手段は、前記収集画素毎の前記複数のエネルギ領域のうちの高エネルギ側のエネルギ領域から得られた前記計数データほど大きい重み付け係数で前記重み付けを施す手段であることを特徴とする請求項1又は2に記載の放射線検出装置。
【請求項4】
前記重み付け手段は、前記収集画素毎の前記複数のエネルギ領域のうちの低エネルギ側のエネルギ領域から得られた前記計数データほど大きい重み付け係数で前記重み付けを施す手段であることを特徴とする請求項1又は2に記載の放射線検出装置。
【請求項5】
前記重み付け手段は、前記収集画素毎の前記複数のエネルギ領域のうちの高エネルギ側及び低エネルギ側のエネルギ領域から得られた前記計数データほど、より大きい重み付け係数で前記重み付けを施す手段であることを特徴とする請求項1又は2に記載の放射線検出装置。
【請求項6】
前記重み付け手段は、前記収集画素毎の前記複数のエネルギ領域のうちの高エネルギ側及び低エネルギ側のエネルギ領域から得られた前記計数データほど、より小さい重み付け係数で前記重み付けを施す手段であることを特徴とする請求項1又は2に記載の放射線検出装置。
【請求項7】
前記検出器は、前記収集画素を1次元状又は2次元状に配列させた1次元検出器又は2次元検出器であることを特徴とする請求項1〜6の何れか一項に記載の放射線検出装置。
【請求項8】
前記検出器は、前記放射線としてのX線を入射させるX線検出器であることを特徴とする請求項1〜7の何れか一項に記載の放射線検出装置。
【請求項9】
請求項1〜8の何れか一項に記載の放射線検出装置と、この放射線検出装置の前記加算手段から出力される収集画素毎の放射線画像生成用データを用いて放射線画像を生成する画像生成手段と、を備えたことを特徴とする放射線画像診断装置。
【請求項10】
前記画像生成手段は、前記放射線画像生成用データに所望のアルゴリズムの再構成処理を付して、前記放射線でスキャンした被検体の断層像を生成する手段である請求項9に記載の放射線画像診断装置。
【請求項11】
前記検出器は、前記放射線としてのガンマ線を入射させるガンマ線検出器であることを特徴とする請求項1〜7の何れか一項に記載の放射線検出装置。
【請求項12】
前記重み付け手段で用いる前記重み付け係数を所望のプロファイルに沿った値に設定する係数設定手段を備えた請求項1乃至11の何れか一項に記載の放射線画像診断装置。
【請求項13】
入射する放射線を収集画素毎に検知し当該入射した前記放射線を粒子と見做して当該粒子のエネルギに応じた電気信号を出力し、
この出力した各収集画素の信号に基づいて前記放射線のエネルギースペクトル上の複数のエネルギ領域に分類される当該放射線の粒子数の計数データを演算し、
この演算された収集画素毎の前記複数のエネルギ領域それぞれの計数データに当該エネルギ領域別に与えられた重み係数の重み付けを施し、
この重み付けされた収集画素毎の前記複数のエネルギ領域それぞれの計数データを互いに加算して当該加算データを収集画素毎の放射線画像生成用データとして出力し、
この放射線画像生成用データを用いて放射線画像を生成する、ことを特徴とする放射線画像の生成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−101926(P2006−101926A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−289024(P2004−289024)
【出願日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2004年8月4日、5日 日本医用画像工学会主催の「第23回 日本医用画像工学会大会」において文書をもって発表
【出願人】(302060982)株式会社エムアンドシー (2)
【Fターム(参考)】