放射線検出装置
【課題】2つの放射線検出器における画素数が異なっても、これらの放射線検出器による放射線像に基づく演算処理を容易にする放射線検出装置を提供する。
【解決手段】一実施形態に係る放射線検出装置80は、サブトラクション法を用いる異物検査用の放射線検出装置であって、被検査物Sを透過した放射線を検出する第1放射線検出器32及び第2放射線検出器42と、検出タイミングの制御を行うタイミング制御部50と、画像補正部34とを備え、第1放射線検出器32の画素の像検出方向に直行する直交方向での第1画素幅Wb1は、第2放射線検出器42の画素の直交方向での第2画素幅Wb2より小さく、タイミング制御部50は、第2放射線検出器42の検出タイミングを第1放射線検出器32の検出タイミングに同期させ、画像補正部34は、第1放射線検出器32からの画像における連続するWb2/Wb1個の画素データを加算する。
【解決手段】一実施形態に係る放射線検出装置80は、サブトラクション法を用いる異物検査用の放射線検出装置であって、被検査物Sを透過した放射線を検出する第1放射線検出器32及び第2放射線検出器42と、検出タイミングの制御を行うタイミング制御部50と、画像補正部34とを備え、第1放射線検出器32の画素の像検出方向に直行する直交方向での第1画素幅Wb1は、第2放射線検出器42の画素の直交方向での第2画素幅Wb2より小さく、タイミング制御部50は、第2放射線検出器42の検出タイミングを第1放射線検出器32の検出タイミングに同期させ、画像補正部34は、第1放射線検出器32からの画像における連続するWb2/Wb1個の画素データを加算する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デュアルエナジータイプの放射線検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ベルトコンベア等で搬送される被検査物のインラインでの非破壊検査において、異物の検出、成分分布の計測、重量の計測等を行う放射線検出装置が知られている。放射線検出装置は、シンチレータ層と画素とを有する放射線検出器を備え、被検査物を透過した放射線を検出して放射線像を生成する。
【0003】
この種の放射線検出装置が特許文献1に開示されている。特許文献1に記載の放射線検出装置は、画素の面積が異なる2つの放射線検出器をベルトコンベアの運搬方向に並置する。この放射線検出装置では、画素の面積が大きい放射線検出器によって大きな異物を検出し、画素の面積が小さい放射線検出器によって小さな異物を検出する。このように、検出したい異物の大きさに応じて画素サイズを予め選択することによって、異物の検査精度を向上させることができるとしている。
【0004】
異物の検査精度を高める別の手法としては、デュアルエナジータイプの放射線検出装置が知られている。デュアルエナジータイプの放射線検出装置は、異なるエネルギ感度を有する2つの放射線検出器を備え、被検査物を透過した低エネルギ範囲(第1エネルギ範囲)の放射線及び高エネルギ範囲(第2エネルギ範囲)の放射線を検出する。この放射線検出装置によれば、低エネルギ範囲の放射線像及び高エネルギ範囲の放射線像を同時に取得し、これらの放射線像に基づいて重み付け減算処理や重ね合わせ処理等(例えば、サブトラクション処理)が施された画像を作成し、この画像のコントラスト差によって異物を浮き出させることによって、高精度の異物検査を実現することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−85627号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
例えば、食品内の異物検査では、食肉内の骨や軟骨、金属等を異物として検査することが要求され、食肉の放射線吸収量と異物(骨や軟骨、金属等)の放射線吸収量との相違を利用して、これらを透過した放射線像のサブトラクション画像のコントラスト差によって異物を浮き出させ、異物の有無を判断する。
【0007】
ここで、骨や金属は、食肉に比べて放射線透過性が大きく異なる(低い)ので、少なくとも一方の放射線検出器による放射線像のコントラスト差が大きい。その結果、二つの放射線像のサブトラクション画像のコントラスト差が大きく、異物検査が容易である。しかしながら、軟骨は、食肉と同様に放射線透過率が高く、その差が小さいので、双方の放射線検出器による放射線像のコントラスト差が小さくなってしまう。その結果、これらの放射線像のサブトラクション画像のコントラスト差も小さく、異物検査が困難であった。
【0008】
この点に関し、本願発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、食肉や軟骨等の軽い原子同士、すなわち放射線透過性が高い物質同士の放射線像のコントラスト差は、より低エネルギ範囲の放射線像において大きくすることができることを見出した。更に、本願発明者らは、低エネルギ範囲検出用の放射線検出器における画素の面積を小さくして、各画素によって変換される電荷量を小さくすると、放射線透過性が高い物質同士の放射線像による電荷量差を相対的に大きくすることができ、これらの放射線像のコントラスト差を大きくできることを見出した。
【0009】
しかしながら、低エネルギ放射線検出器における画素の面積を小さくするために、この画素の配列方向(像検出方向)に直行する方向の画素幅を小さくして画素数(ライン出力数)が増えると、低エネルギ放射線検出器から出力される画素数(ライン出力数)と高エネルギ放射線検出器から出力される画素数(ライン出力数)とが異なってしまい、その結果、サブトラクション処理、すなわち差分処理を行うことが困難となってしまう。
【0010】
そこで、本発明は、2つの放射線検出器における画素数が異なっても、これらの放射線検出器による放射線像に基づく演算処理を容易にする放射線検出装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の放射線検出装置は、サブトラクション法を用いる異物検査用の放射線検出装置であって、被検査物を透過して放射線入射方向から入射する第1エネルギ範囲の放射線及び第1エネルギ範囲の放射線よりも高い第2エネルギ範囲の放射線を検出する放射線検出装置において、放射線入射方向に対して上流側に位置し、第1エネルギ範囲の放射線を検出して、当該放射線の像に応じた画像を生成する第1放射線検出器と、放射線入射方向に対して下流側に位置し、第2エネルギ範囲の放射線を検出して、当該放射線の像に応じた画像を生成する第2放射線検出器と、第1放射線検出器の検出タイミング及び第2放射線検出器の検出タイミングの制御を行うタイミング制御部と、第1放射線検出器からの画像の補正を行う画像補正部と、を備える。第1放射線検出器は、像検出方向に沿って配列された複数の画素を有して、第1エネルギ範囲の放射線の像による第1画像を取得する第1画素部とを有し、第2放射線検出器は、像検出方向に沿って配列された複数の画素を有して、第2エネルギ範囲の放射線の像による第2画像を取得する第2画素部とを有する。第1画素部における複数の画素それぞれの像検出方向に直交する直交方向での第1画素幅Wb1は、第2画素部における複数の画素それぞれの直交方向での第2画素幅Wb2より小さく、タイミング制御部は、第2放射線検出器の検出タイミングを第1放射線検出器の検出タイミングに同期させ、画像補正部は、第1画素幅Wb1と第2画素幅Wb2との比率Wb2/Wb1に基づいて、第1放射線検出器からの画像における連続するWb2/Wb1個の画素データを加算する。
【0012】
サブトラクション法を用いる場合、2つの放射線検出器は、空間的かつ時間的に、被検査物における同一の位置を撮像する必要がある。そのため、特許文献1に記載のように2つの放射線検出器を横並びに配置するタイプでは、それぞれの放射線検出器の検出タイミングを調整しなければならない。また、例え、検出タイミングを調整したとしても、被検査物において同一の位置、すなわち、全く同一のエリアを撮像することは困難であり、位置精度が低い可能性がある。このように、検出エリアの端の一部がずれたサブトラクション画像を作成すると、サブトラクション画像における検出物の端部に明るいエッジ(白エッジ)や暗いエッジ(黒エッジ)といった擬似エッジが生じてしまうことがある。
【0013】
一方、この放射線検出装置では、第1放射線検出器と第2放射線検出器とが放射線入射方向に対して重なって配置されているので、すなわち、縦積みタイプであるので、検出タイミング制御を行うことなく、容易に、時間的に同時に、かつ、被検査物における同一の位置を撮像することができる。
【0014】
この放射線検出装置によれば、タイミング制御部によって、第2放射線検出器の検出タイミングを第1放射線検出器の検出タイミングに同期させるので、1回の検出タイミングにおいて、第2放射線検出器は、第1放射線検出器に対して、第1画素幅Wb1と第2画素幅Wb2との比率Wb2/Wb1倍の画素データを取得する。そして、画像補正部によって、第1画素幅Wb1と第2画素幅Wb2との比率Wb2/Wb1に基づいて、第1放射線検出器からの画像における連続するWb2/Wb1個の画素データを加算するので、補正後の第1放射線検出器からの画像の画素数と第2放射線検出器からの画像の画素数とを等しくすることができる。したがって、第1放射線検出器における画像の像検出方向に直交する直交方向での第1画素幅が第2放射線検出器における画素の直交方向での第2画素幅より小さい場合であっても、すなわち、第1放射線検出器における画素数と第2放射線検出器における画素数とが異なっていても、第1放射線検出器による放射線像及び第2放射線検出器による放射線像に基づく演算処理、例えばサブトラクション処理を容易にすることができる。
【0015】
上記した第1放射線検出器と上記した第2放射線検出器とは、第1放射線検出器の検出タイミングによる被検査物の検出位置と第2放射線検出器の検出タイミングによる被検査物の検出位置との位置ずれが第1画素幅の0.3倍以下になるように配置されていることが好ましい。
【0016】
第1放射線検出器と第2放射線検出器との配置により、第1放射線検出器の検出タイミングによる被検査物の検出位置と第2放射線検出器の検出タイミングによる被検査物の検出位置とが大きくずれることがある。すると、第1放射線検出器による放射線像及び第2放射線検出器による放射線像に基づくサブトラクション画像において、この検出位置に対応する部分の前後に白エッジや黒エッジが発生してしまうことがある。
【0017】
しかしながら、第1放射線検出器の検出タイミングによる被検査物の検出位置と第2放射線検出器の検出タイミングによる被検査物の検出位置との位置ずれが第1画素幅の0.3倍以下になるように、第1放射線検出器と第2放射線検出器とを配置すると、第1放射線検出器による放射線像及び第2放射線検出器による放射線像に基づくサブトラクション画像において、この検出位置に対応する部分の前後に白エッジや黒エッジが発生することを抑制することができ、良好なサブトラクション画像を得ることができる。
【0018】
上記したタイミング制御部は、第1放射線検出器の検出タイミングと第2放射線検出器の検出タイミングとの何れか一方を遅延させることが好ましい。
【0019】
これにより、第1放射線検出器と第2放射線検出器との配置に起因する、第1放射線検出器の検出タイミングによる被検査物の検出位置と第2放射線検出器の検出タイミングによる被検査物の検出位置とを低減することができる。したがって、第1放射線検出器による放射線像及び第2放射線検出器による放射線像に基づくサブトラクション画像において、この検出位置に対応する部分の前後に白エッジや黒エッジが発生することを抑制することができ、良好なサブトラクション画像を得ることができる。
【0020】
上記した第1放射線検出器は、像検出方向に沿って延在し、第1エネルギ範囲の放射線の像を光像に変換する第1シンチレータ層と、第1シンチレータ層で変換された光像による第1画像を取得する第1画素部とを有し、上記した第2放射線検出器は、像検出方向に沿って延在し、第2エネルギ範囲の放射線の像を光像に変換する第2シンチレータ層と、第2シンチレータ層で変換された光像による第2画像を取得する第2画素部とを有していてもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、サブトラクション法を用いるデュアルエナジータイプの放射線検出装置において、2つの放射線検出器における画素数が異なっても、これらの放射線検出器による放射線像に基づく演算処理、例えばサブトラクション処理を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本実施形態に係るX線異物検査装置の斜視図である。
【図2】本実施形態に係るX線異物検査装置の概略構成図である。
【図3】本発明の実施形態に係る放射線検出装置におけるデュアルエナジーセンサの概略構造図である。
【図4】図3に示すデュアルエナジーセンサにおける低エネルギ検出器及び高エネルギ検出器のX線入射面を示す図である。
【図5】図2に示す低エネルギ画像補正部及び高エネルギ画像補正部における画像処理を示す概念図である。
【図6】図2に示すタイミング制御部による検出タイミング制御の概念図である。
【図7】図2に示す低エネルギ検出器及び高エネルギ検出器から出力される画像の画素データを示す図である。
【図8】図2に示す低エネルギ画像補正部による画像補正処理を示す概念図である。
【図9】本実施形態の検出タイミング制御及び画像補正処理を行わない場合の低エネルギ検出器及び高エネルギ検出器によって検出した画像を示す図である。
【図10】本実施形態の検出タイミング制御及び画像補正処理を行った場合の低エネルギ検出器及び高エネルギ検出器によって検出した画像を示す図である。
【図11】図10に示す画像に基づくサブトラクション画像である。
【図12】同一の被検査物を検出したときの画像の輝度ファイルを示す図である。
【図13】図12に示す輝度ファイルを有する画像によるサブトラクション画像の輝度ファイルを示す図である。
【図14】検出タイミングが異なる2つの画像によるサブトラクション画像の一例を示す図である。
【図15】本発明の変形例のデュアルエナジーセンサにおける低エネルギ検出器及び高エネルギ検出器のX線入射面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、各図面において同一又は相当の部分に対しては同一の符号を附すこととする。
【0024】
図1は、本実施形態に係るX線異物検査装置の斜視図であり、図2は、本実施形態に係るX線異物検査装置の概略構成図である。図1及び図2に示されるように、X線異物検査装置1は、X線源からのX線(放射線)を照射方向Zへ向けて被検査物Sに照射し、照射されたX線のうち被検査物Sを透過した透過X線を複数のエネルギ範囲で検出する装置である。X線異物検査装置1は、透過X線画像を用いて被検査物Sに含まれる異物検査や手荷物検査等を行う。このようなX線異物検査装置1は、ベルトコンベア10、X線照射器20、低エネルギ画像取得部30、高エネルギ画像取得部40、タイミング制御部50、タイミング算出部60及び画像処理装置70を備えている。低エネルギ画像取得部30、高エネルギ画像取得部40及びタイミング制御部50から本発明の実施形態に係るデュアルエナジー型の放射線検出装置80が構成される。
【0025】
ベルトコンベア10は、図1に示すように、被検査物Sが載置されるベルト部12を備える。ベルトコンベア10は、ベルト部12を搬送方向Yに移動させることで、被検査物Sを所定の搬送速度で搬送方向Yに搬送する。被検査物Sの搬送速度は、例えば48m/分である。ベルトコンベア10は、必要に応じて、ベルトコンベア制御部14により、例えば24m/分や96m/分といった搬送速度に速度を変更することができる。また、ベルトコンベア制御部14は、ベルト部12の高さ位置を変更することができる。ベルト部12の高さ位置を変更することで、X線照射器20と被検査物Sとの距離を変更させることができる。この変更により、低エネルギ画像取得部30及び高エネルギ画像取得部40で取得されるX線透過像の解像度を変更させることが可能となる。なお、ベルトコンベア10で搬送される被検査物Sとしては、例えば、食肉等の食品やタイヤなどのゴム製品、セキュリティ・安全のための手荷物検査や貨物検査、その他に樹脂製品や金属製品、鉱物など資源材料、分別や資源回収(リサイクル)のための廃棄物、電子部品等など広くあげることができる。
【0026】
X線照射器20は、X線源としてX線を照射方向Zへ向けて被検査物Sに照射する装置である。X線照射器20は、点光源であり、照射方向Z及び搬送方向Yに直交する検出方向Xに所定の角度範囲でX線を拡散させて照射する。X線照射器20は、X線の照射方向Zがベルト部12に向けられると共に拡散するX線が被検査物Sの幅方向(検出方向X)全体に及ぶように、ベルト部12から所定の距離を離れてベルト部12の上方に配置される。また、X線照射器20は、被検査物Sの長さ方向(搬送方向Y)においては、長さ方向における所定の分割範囲が照射範囲とされ、被検査物Sがベルトコンベア10で搬送方向Yへ搬送されることにより、被検査物Sの長さ方向全体に対してX線が照射されるようになっている。
【0027】
低エネルギ画像取得部30は、低エネルギ検出器(第1放射線検出器)32と低エネルギ画像補正部(画像補正部)34と備えている。
【0028】
低エネルギ検出器32は、X線入射方向Zに対して上流側に位置し、X線照射器20から照射されたX線のうち被検査物Sを透過した低エネルギ範囲(第1エネルギ範囲)のX線を検出して、低エネルギ画像データ(第1放射線画像データ)を生成する。
【0029】
低エネルギ画像補正部34は、低エネルギ検出器32で生成された低エネルギ画像データを増幅及び補正する部分である。低エネルギ画像補正部34は、低エネルギ画像データを増幅するアンプ34a、アンプ34aで増幅された低エネルギ画像データをA/D変換するA/D変換部34b、A/D変換部34bで変換された低エネルギ画像データに対して所定の補正処理を行う補正回路34c、補正回路34cで補正された画像データを外部出力する出力インターフェイス34dを備えている。低エネルギ画像補正部(画像補正部)34の詳細は後述する。
【0030】
高エネルギ画像取得部40は、高エネルギ検出器(第2放射線検出器)42と高エネルギ画像補正部44と備えている。
【0031】
高エネルギ検出器42は、X線入射方向Zに対して下流側に位置し、X線照射器20から照射されて、X線のうち被検査物S及び低エネルギ検出器32を透過した高エネルギ範囲(第2エネルギ範囲)のX線を検出して、高エネルギ画像データ(第2放射線画像データ)を生成する。なお、低エネルギ検出器32で検出される低エネルギ範囲と高エネルギ検出器42で検出される高エネルギ範囲とは、明確に区別されるものではなく、エネルギ範囲がある程度、重なるようになっている。
【0032】
高エネルギ画像補正部44は、高エネルギ検出器42で生成された高エネルギ画像データを増幅及び補正する部分である。高エネルギ画像補正部44は、高エネルギ画像データを増幅するアンプ44a、アンプ44aで増幅された高エネルギ画像データをA/D変換するA/D変換部44b、A/D変換部44bで変換された高エネルギ画像データに対して所定の補正処理を行う補正回路44c、補正回路44cで補正された画像データを外部出力する出力インターフェイス44dを備えている。
【0033】
タイミング制御部50は、低エネルギ検出器32での透過X線の検出タイミングと高エネルギ検出器42での透過X線の検出タイミングとを制御する。タイミング制御部50は、タイミング算出部60によって低エネルギ画像データと高エネルギ画像データとがそれぞれ対応するように算出した検出タイミングに従って、下記のサブトラクション処理における画像ずれを低減させる。タイミング制御部50及びタイミング算出部60の詳細は後述する。
【0034】
画像処理装置70は、低エネルギ検出器32で検出及び生成された低エネルギ画像データと高エネルギ検出器42で検出及び生成された高エネルギ画像データとの差分データを求める演算処理(サブトラクション処理)を行い、合成画像であるサブトラクション像を生成する装置である。画像処理装置70に入力される両エネルギ画像データは、タイミング制御部50により、互いの画像データが対応するように検出タイミングが制御されている。画像処理装置70は、演算処理により生成したサブトラクション像をディスプレイ等に出力表示する。この出力表示により、被検査物Sに含まれる異物等を目視で確認することができる。なお、サブトラクション像を出力表示せずに、データ出力のみを行って画像データ上での検出処理により画像データから直接、被検査物Sに含まれる異物等を検出するようにしてもよい。
【0035】
次に、低エネルギ検出器32及び高エネルギ検出器42について詳細に説明する。図3は、図2に示す放射線検出装置80における低エネルギ検出器32と高エネルギ検出器42とからなるデュアルエナジーセンサ86の概略構造図であり、図4は、低エネルギ検出器32のX線入射面(a)、及び、高エネルギ検出器42のX線入射面(b)を示す図である。
【0036】
図3及び4に示すように、低エネルギ検出器32は、低エネルギシンチレータ層(第1シンチレータ層)322と低エネルギラインセンサ(第1画素部)324とを有する。低エネルギシンチレータ層322は、像検出方向Xに沿って延在し、低エネルギ範囲のX線の像を光像に変換する。低エネルギラインセンサ324は、像検出方向Xに沿って配列された複数の画素326を有し、低エネルギシンチレータ層322で変換された光像による低エネルギ画像(第1画像)を取得する。このようにして、低エネルギ検出器32は、低エネルギ範囲のX線を検出する。
【0037】
同様に、高エネルギ検出器42は、高エネルギシンチレータ層(第2シンチレータ層)422と高エネルギラインセンサ(第2画素部)424とを有する。高エネルギシンチレータ層422は、像検出方向Xに沿って延在し、高エネルギ範囲のX線の像を光像に変換する。高エネルギラインセンサ424は、像検出方向Xに沿って配列された複数の画素426を有し、高エネルギシンチレータ層422で変換された光像による高エネルギ画像(第2画像)を取得する。このようにして、高エネルギ検出器42は、高エネルギ範囲のX線を検出する。
【0038】
ここで、低エネルギラインセンサ324における複数の画素326それぞれの像検出方向Xでの画素幅(第1像検出方向幅)Wa1は、高エネルギラインセンサ424における複数の画素426それぞれの像検出方向Xでの画素幅(第2像検出方向幅)Wa2と同一である。一方、低エネルギラインセンサ324における複数の画素326それぞれの像検出方向Xに直交する直交方向(搬送方向Y)での画素幅(第1直交方向幅)Wb1は、高エネルギラインセンサ424における複数の画素426それぞれの直交方向Yでの画素幅(第2直交方向幅)Wb2より小さくなっている。このようにして、低エネルギラインセンサ324における複数の画素326それぞれの面積(第1面積)S1は、高エネルギラインセンサ424における複数の画素426それぞれの面積(第2面積)S2より小さくなっている。すなわち、低エネルギラインセンサ324における画素数(ライン出力数)は、高エネルギラインセンサ424における画素数(ライン出力数)より多くなる。
【0039】
なお、低エネルギシンチレータ層322の材料と高エネルギシンチレータ層422の材料とは同一であってもよいが、低エネルギシンチレータ層322と高エネルギシンチレータ層422とで異なる材料が用いられてもよい。例えば、低エネルギシンチレータ層322及び高エネルギシンチレータ層422の材料としては、Gd2O2S:Tb、CsI:Tl、CdWO4、CaWO4、GSO、LGSO、BGO、LSO、YSO、YAP、Y2O2S:Tb、YTaO4:Tm等が適用可能であり、検出するX線に応じて材料の組合せを選択すればよい。なお、低エネルギ検出器32と高エネルギ検出器42は、CdTe(テルル化カドミウム)などの直接変換方式によるエネルギ弁別機能を備えたX線検出器であってもよい。
【0040】
ここで、食品内の異物検査では、食肉内の骨や軟骨、金属等を異物として検査することが要求され、食肉の放射線吸収量と異物(骨や軟骨、金属等)の放射線吸収量との相違を利用して、これらを透過した放射線像のサブトラクション画像のコントラスト差によって異物を浮き出させ、異物の有無を判断する。
【0041】
ここで、骨や金属は、食肉に比べて放射線透過性が大きく異なる(低い)ので、少なくとも一方の放射線検出器による放射線像のコントラスト差が大きい。その結果、二つの放射線像のサブトラクション画像のコントラスト差が大きく、異物検査が容易である。しかしながら、軟骨は、食肉と同様に放射線透過率が高く、その差が小さいので、双方の放射線検出器による放射線像のコントラスト差が小さくなってしまう。その結果、これらの放射線像のサブトラクション画像のコントラスト差も小さく、異物検査が困難であった。
【0042】
しかしながら、食肉や軟骨等の軽い原子同士、すなわち放射線透過性が高い物質同士の放射線像のコントラスト差を比較的大きくすることができる低エネルギ範囲の放射線像を検出する低エネルギ検出器32において、各画素326の搬送方向Yでの画素幅Wb1を小さくすると、すなわち、低エネルギ検出器32における各画素326の面積S1を小さくすると、各画素326によって変換される電荷量が小さくなり、食肉や軟骨等の軽い原子同士、すなわち放射線透過性が高い物質同士の放射線像による電荷量差を相対的に大きくすることができ、これらの放射線像のコントラスト差を大きくすることができる。その結果、異物検査を容易にすることができる。
【0043】
次に、低エネルギ画像補正部34における補正回路34c、タイミング制御部50及びタイミング算出部60について詳細に説明する。
【0044】
図5は、低エネルギ画像補正部34による画像処理(a)、及び、高エネルギ画像補正部44における画像処理(b)を示す概念図である。
【0045】
図5(a)に示すように、低エネルギ検出器32から出力される画像は、M画素(検出方向X)×Nライン出力(搬送方向Y)が2次元画像処理され、その画素数はM×N画素となる。一方、図5(b)によれば、高エネルギ検出器42から出力される画像は、M画素(検出方向X)×N’ライン出力(搬送方向Y)が2次元画像処理され、その画素数はM×N’画素となる(N’<N)。
【0046】
このように、低エネルギ検出器32の画素面積S1と高エネルギ検出器42の画素面積S2が異なる場合、すなわち、低エネルギ検出器32の搬送方向Yでの画素幅Wb1と高エネルギ検出器42の搬送方向Yでの画素幅Wb2とが異なる場合、低エネルギ検出器32から出力される画像のライン出力数Nと高エネルギ検出器42から出力される画像のライン出力数N’とが異なり、すなわち、低エネルギ検出器32からの画像の搬送方向Yの画素数Nと高エネルギ検出器42からの画像の搬送方向Yの画素数N’とが異なり、これらの差分処理を行うことによってサブトラクション画像を作成することが難しい。
【0047】
そこで、タイミング制御部50は、低エネルギ検出器32の検出タイミングと高エネルギ検出器42の検出タイミングとを同期させて、低エネルギ検出器32から出力される画像のライン出力数Nと高エネルギ検出器42から出力される画像のライン出力数N’とを等しくする。すなわち、低エネルギ検出器32からの画像の搬送方向Yの画素数Nと高エネルギ検出器42からの画像の搬送方向Yの画素数N’とを等しくする。
【0048】
図6は、タイミング制御部50による検出タイミング制御の概念図であり、図7は、低エネルギ検出器32から出力される画像の画素データ(a)、及び、高エネルギ検出器42から出力される画像の画素データ(b)を示す図である。
【0049】
例えば、タイミング制御部50は、低エネルギ検出器32及び高エネルギ検出器42へ検出タイミングのための繰り返しパルス信号を供給する。タイミング制御部50は、これらの繰り返しパルス信号を同期させることにより、検出タイミングを同期させる。繰り返しパルス信号は、例えば、PLL(Phase Locked Loop:位相同期回路)等を用いて、タイミング算出部60からの制御信号に応じて制御される。タイミング算出部60では、例えば、ベルトコンベア10の搬送速度V、ラインセンサの画素の搬送方向Yでの画素幅Wb1又はWb2、光源20から被検査物Sまでの距離FOD、光源20から検出器32又は42までの距離FDD等を考慮して制御信号の値、すなわち、検出タイミングを調整する。なお、各値は、例えば予めユーザによって設定されればよい。
【0050】
具体的には、タイミング制御部50は、低エネルギ検出器32のための繰り返しパルス信号の周期を、低エネルギ検出器32における画素326の搬送方向Yでの画素幅Wb1に制御し、高エネルギ検出器42のための繰り返しパルス信号の周期を低エネルギ検出器32のための繰り返しパルス信号の周期に同期させている。このように、本実施形態では、搬送方向Yの画素幅の大きい方の高エネルギ検出器42の検出タイミングを、自身の画素426の画素幅Wb2ではなく、低エネルギ検出器32における画素326の画素幅Wb1で調整する。
【0051】
すると、例えば、図6及び図7に示すように、1ライン目の検出タイミングでは、低エネルギ検出器32によって画素データAを検出すると共に、高エネルギ検出器42によって画素データA+ノイズNを検出することができる。次に、2ライン目の検出タイミングでは、低エネルギ検出器32によって画素データBを検出すると共に、高エネルギ検出器42によって画素データB+Aを検出することができる。次に、3ライン目の検出タイミングでは、低エネルギ検出器32によって画素データCを検出すると共に、高エネルギ検出器42によって画素データC+Bを検出することができる。次に、4ライン目の検出タイミングでは、低エネルギ検出器32によって画素データDを検出すると共に、高エネルギ検出器42によって画素データD+Cを検出することができる。次に、5ライン目の検出タイミングでは、低エネルギ検出器32によって画素データEを検出すると共に、高エネルギ検出器42によって画素データE+Dを検出することができる。次に、6ライン目の検出タイミングでは、低エネルギ検出器32によって画素データFを検出すると共に、高エネルギ検出器42によって画素データF+Eを検出することができる。次に、7ライン目の検出タイミングでは、低エネルギ検出器32によって画素データGを検出すると共に、高エネルギ検出器42によって画素データG+Fを検出することができる。次に、8ライン目の検出タイミングでは、低エネルギ検出器32によってノイズNを検出すると共に、高エネルギ検出器42によってノイズN+画素データGを検出することができる。
【0052】
そして、差分処理のために、低エネルギ画像補正部34における補正回路34cによって、低エネルギ検出器32側の画素データと高エネルギ検出器42側の画素データを揃える補正処理を行う。具体的には、低エネルギ画像補正部34における補正回路34cは、低エネルギ検出器32における画素326の画素幅Wb1と高エネルギ検出器42における画素426の画素幅Wb2との比率Wb2/Wb1に基づいて、低エネルギ検出器32からの画像における連続するWb2/Wb1個の画素データを加算する。
【0053】
本実施形態では、Wb2/Wb1=2であるので、図8に示すように、補正回路34cは、2ライン目で検出した画素データBに1ライン前に検出した画素データAを加算して補正データB+Aを生成し、3ライン目で検出した画素データCに1ライン前に検出した画素データBを加算して補正データC+Bを生成し、4ライン目で検出した画素データDに1ライン前に検出した画素データCを加算して補正データD+Cを生成し、5ライン目で検出した画素データEに1ライン前に検出した画素データDを加算して補正データE+Dを生成し、6ライン目で検出した画素データFに1ライン前に検出した画素データEを加算して補正データF+Eを生成し、7ライン目で検出した画素データGに1ライン前に検出した画素データFを加算して補正データG+Fを生成する。このようにして、補正回路34cは、高エネルギ検出器42側の画素データB+A、C+B、D+C、E+D、F+E、G+Fのそれぞれに対応する補正データB+A、C+B、D+C、E+D、F+E、G+Fを生成する。
【0054】
このように、本実施形態の放射線検出装置80によれば、タイミング制御部50によって、高エネルギ検出器42の検出タイミングを低エネルギ検出器32の検出タイミングに同期させるので、1回の検出タイミングにおいて、高エネルギ検出器42は、低エネルギ検出器32に対して、搬送方向Yでの画素幅Wb1と画素幅Wb2との比率Wb2/Wb1倍の画素データを取得する。そして、低エネルギ画像補正部34における補正回路34cによって、画素幅Wb1と画素幅Wb2との比率Wb2/Wb1に基づいて、低エネルギ検出器32からの画像における連続するWb2/Wb1個の画素データを加算するので、補正後の低エネルギ検出器32からの画像の画素数と高エネルギ検出器42からの画像の画素数とを等しくすることができる。したがって、低エネルギ検出器32における画像の搬送方向Yでの画素幅Wb1が高エネルギ検出器42における画素の搬送方向Yでの画素幅Wb2より小さい場合であっても、すなわち、低エネルギ検出器32における画素数と高エネルギ検出器42における画素数とが異なっていても、低エネルギ検出器32による放射線像及び高エネルギ検出器42による放射線像に基づく演算処理、例えばサブトラクション処理を容易にすることができる。
【0055】
図9は、本実施形態の検出タイミング制御及び画像補正処理を行わない場合の低エネルギ検出器32によって検出した画像(a)、及び、高エネルギ検出器42によって検出した画像(b)を示す図であり、図10は、本実施形態の検出タイミング制御及び画像補正処理を行った場合の低エネルギ検出器32によって検出した画像(a)、及び、高エネルギ検出器42によって検出した画像(b)を示す図である。また、図11は、図10に示す画像に基づくサブトラクション画像である。
【0056】
図9に示すように、低エネルギ検出器32からの画像の搬送方向Yでの画素数と高エネルギ検出器42からの画像の搬送方向Yでの画素数とが異なるので、これらの画像に基づくサブトラクション画像を生成することが困難である。
【0057】
図10に示すように、低エネルギ検出器32からの画像の搬送方向Yでの画素数と高エネルギ検出器42からの画像の搬送方向Yでの画素数とを等しくすることによって、図11に示すように、所望の物質のみを浮き立たせたサブストラクション画像を容易に得られることがわかる。
【0058】
なお、本発明は上記した本実施形態に限定されることなく種々の変形が可能である。
【0059】
本実施形態では、タイミング制御部50、低エネルギ画像補正部34及び高エネルギ画像補正部44がハードウエアで構成される例を示したが、タイミング制御部50、低エネルギ画像補正部34及び高エネルギ画像補正部44は、例えば外部のコンピュータにおけるソフトウエア処理によって実現されてもよい。すなわち、本発明のタイミング制御部と画像補正部とがコンピュータプログラムによって実現され、本発明の検出タイミング制御処理及び画素補正処理がソフトウエア的に処理されてもよい。
【0060】
また、本実施形態では、低エネルギ検出器32と高エネルギ検出器42とが左端が揃うように配置されている場合を例示したが、低エネルギ検出器32と高エネルギ検出器42との配置は様々な形態が考えられる。例えば、低エネルギ検出器32と高エネルギ検出器42とは中心軸が揃うように配置されてもよい。
【0061】
このように、低エネルギ検出器32と高エネルギ検出器42との配置としては様々な態様が考えられるわけであるが、この配置の仕方によっては、低エネルギ検出器32の検出タイミングと高エネルギ検出器42の検出タイミングとの何れか一方を遅延させることが好ましい。
【0062】
図12は、同一の被検査物を検出したときの画像の輝度ファイルを示す図である。被検査物は、3画素分に相当する長さの高透過率部分を有しており、図12(a)では、検出時点4〜7において被検査物の高透過率部分を検出できるように検出タイミングが調整されている。一方、12(b)は、図12(a)に対して検出タイミングが1/2画素分だけずれたときの輝度ファイルであり、図12(c)は、図12(a)に対して検出タイミングが1/4画素分だけずれたときの輝度ファイルである。
【0063】
図13は、図12に示す輝度ファイルを有する画像によるサブトラクション画像の輝度ファイルを示す図である。図13(a)は、図12(a)の輝度ファイルを有する画像と図12(b)に示す輝度ファイルを有する画像によるサブトラクション画像の輝度ファイル、すなわち、検出タイミングが1/2画素ずれた画像によるサブトラクション画像の輝度ファイルである。図13(a)によれば、被検査物の高透過率部分の前後に正の方向の擬似エッジが発生している。この正の方向の擬似エッジの発生は、サブトラクション画像において後述する白エッジの発生原因となる。一方、図13(b)は、図12(a)の輝度ファイルを有する画像と図12(c)に示す輝度ファイルを有する画像によるサブトラクション画像の輝度ファイル、すなわち、検出タイミングが1/4画素ずれた画像によるサブトラクション画像の輝度ファイルである。図13(b)によれば、被検査物の高透過率部分の前に正の方向の擬似エッジが発生し、被検査物の高透過率部分の後に負の方向の擬似エッジが発生している。この正の方向の擬似エッジの発生は、サブトラクション画像において後述する白エッジの発生原因となり、負の方向の擬似エッジの発生は、サブトラクション画像において後述する黒エッジの発生原因となる。
【0064】
図14は、検出タイミングが異なる2つの画像によるサブトラクション画像の一例を示す図である。図14によれば、被検査物における各物質の下方部分に白いエッジが発生し、上方部分に黒いエッジが発生している。このように、二つの検出器において被検査物の検出箇所に対する検出タイミングが大きく異なると、良好なサブトラクション画像を得ることができないことがある。
【0065】
このような場合、一方の検出器の検出タイミングによる被検査物の検出位置と他方の検出器の検出タイミングによる被検査物の検出位置との位置ずれを低減するように、低エネルギ検出器32の検出タイミングと高エネルギ検出器42の検出タイミングとの何れか一方を遅延させることが好ましい。例えば、図6のように、低エネルギ検出器32が3ライン目を検出する際に隣接する画素データB、Dを含まず画素データCのみを検出し、高エネルギ検出器42が3ライン目を検出する際に隣接する画素データA、Dを含まず画素データB+Cのみを検出するように、どちらか一方の検出タイミングに遅延時間を持たせればよい。
【0066】
なお、本願発明者らの検討によれば、一方の検出器の検出タイミングによる被検査物の検出位置と他方の検出器の検出タイミングによる被検査物の検出位置との位置ずれが、低エネルギ検出器32における画素326の画素幅Wb1の0.3倍以下であれば、サブトラクション画像において白エッジ及び黒エッジの発生を低減することができた。換言すれば、一方の検出器の検出タイミングによる被検査物の検出位置と他方の検出器の検出タイミングによる被検査物の検出位置との位置ずれが、低エネルギ検出器32における画素326の画素幅Wb1の0.3倍を超える場合には、上記したように、一方の検出器の検出タイミングによる被検査物の検出位置と他方の検出器の検出タイミングによる被検査物の検出位置との位置ずれを低減するように、低エネルギ検出器32の検出タイミングと高エネルギ検出器42の検出タイミングとの何れか一方の遅延時間を調整する必要がある。
【0067】
また、本実施形態では、低エネルギ検出器32のラインセンサ324における複数の画素326それぞれの面積S1を、高エネルギ検出器42のラインセンサ424における複数の画素426それぞれの面積S2より小さくするために、各画素326の画素幅Wb1を各画素426の画素幅Wb2より小さくしたが、図15に示すように、更に、各画素326の画素幅Wa1を各画素426の画素幅Wa2より小さくしてもよい。このように、検出方向Xの画素数が異なる場合には、同一の画素数となるように、一方の放射線検出器において画像の間引き処理を行ったり、他方の放射線検出器において画像の補間処理を行ったりしてもよい。
【符号の説明】
【0068】
1…X線異物検査装置、10…ベルトコンベア、12…ベルト部、14…ベルトコンベア制御部、20…X線照射器、30…低エネルギ画像取得部、32…低エネルギ検出器(第1放射線検出器)、322…低エネルギシンチレータ層(第1シンチレータ層)、324…低エネルギラインセンサ(第1画素部)、326…画素、34…低エネルギ画像補正部(画像補正部)、34a…アンプ、34b…A/D変換部、34c…補正回路、34d…出力インターフェイス、40…高エネルギ画像取得部、42…高エネルギ検出器(第2放射線検出器)、422…高エネルギシンチレータ層(第2シンチレータ層)、424…高エネルギラインセンサ(第2画素部)、426…画素、44…高エネルギ画像補正部、44a…アンプ、44b…A/D変換部、44c…補正回路、44d…出力インターフェイス、50…タイミング制御部、60…タイミング算出部、70…画像処理装置、80…放射線検出装置、86…デュアルエナジーセンサ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、デュアルエナジータイプの放射線検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ベルトコンベア等で搬送される被検査物のインラインでの非破壊検査において、異物の検出、成分分布の計測、重量の計測等を行う放射線検出装置が知られている。放射線検出装置は、シンチレータ層と画素とを有する放射線検出器を備え、被検査物を透過した放射線を検出して放射線像を生成する。
【0003】
この種の放射線検出装置が特許文献1に開示されている。特許文献1に記載の放射線検出装置は、画素の面積が異なる2つの放射線検出器をベルトコンベアの運搬方向に並置する。この放射線検出装置では、画素の面積が大きい放射線検出器によって大きな異物を検出し、画素の面積が小さい放射線検出器によって小さな異物を検出する。このように、検出したい異物の大きさに応じて画素サイズを予め選択することによって、異物の検査精度を向上させることができるとしている。
【0004】
異物の検査精度を高める別の手法としては、デュアルエナジータイプの放射線検出装置が知られている。デュアルエナジータイプの放射線検出装置は、異なるエネルギ感度を有する2つの放射線検出器を備え、被検査物を透過した低エネルギ範囲(第1エネルギ範囲)の放射線及び高エネルギ範囲(第2エネルギ範囲)の放射線を検出する。この放射線検出装置によれば、低エネルギ範囲の放射線像及び高エネルギ範囲の放射線像を同時に取得し、これらの放射線像に基づいて重み付け減算処理や重ね合わせ処理等(例えば、サブトラクション処理)が施された画像を作成し、この画像のコントラスト差によって異物を浮き出させることによって、高精度の異物検査を実現することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−85627号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
例えば、食品内の異物検査では、食肉内の骨や軟骨、金属等を異物として検査することが要求され、食肉の放射線吸収量と異物(骨や軟骨、金属等)の放射線吸収量との相違を利用して、これらを透過した放射線像のサブトラクション画像のコントラスト差によって異物を浮き出させ、異物の有無を判断する。
【0007】
ここで、骨や金属は、食肉に比べて放射線透過性が大きく異なる(低い)ので、少なくとも一方の放射線検出器による放射線像のコントラスト差が大きい。その結果、二つの放射線像のサブトラクション画像のコントラスト差が大きく、異物検査が容易である。しかしながら、軟骨は、食肉と同様に放射線透過率が高く、その差が小さいので、双方の放射線検出器による放射線像のコントラスト差が小さくなってしまう。その結果、これらの放射線像のサブトラクション画像のコントラスト差も小さく、異物検査が困難であった。
【0008】
この点に関し、本願発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、食肉や軟骨等の軽い原子同士、すなわち放射線透過性が高い物質同士の放射線像のコントラスト差は、より低エネルギ範囲の放射線像において大きくすることができることを見出した。更に、本願発明者らは、低エネルギ範囲検出用の放射線検出器における画素の面積を小さくして、各画素によって変換される電荷量を小さくすると、放射線透過性が高い物質同士の放射線像による電荷量差を相対的に大きくすることができ、これらの放射線像のコントラスト差を大きくできることを見出した。
【0009】
しかしながら、低エネルギ放射線検出器における画素の面積を小さくするために、この画素の配列方向(像検出方向)に直行する方向の画素幅を小さくして画素数(ライン出力数)が増えると、低エネルギ放射線検出器から出力される画素数(ライン出力数)と高エネルギ放射線検出器から出力される画素数(ライン出力数)とが異なってしまい、その結果、サブトラクション処理、すなわち差分処理を行うことが困難となってしまう。
【0010】
そこで、本発明は、2つの放射線検出器における画素数が異なっても、これらの放射線検出器による放射線像に基づく演算処理を容易にする放射線検出装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の放射線検出装置は、サブトラクション法を用いる異物検査用の放射線検出装置であって、被検査物を透過して放射線入射方向から入射する第1エネルギ範囲の放射線及び第1エネルギ範囲の放射線よりも高い第2エネルギ範囲の放射線を検出する放射線検出装置において、放射線入射方向に対して上流側に位置し、第1エネルギ範囲の放射線を検出して、当該放射線の像に応じた画像を生成する第1放射線検出器と、放射線入射方向に対して下流側に位置し、第2エネルギ範囲の放射線を検出して、当該放射線の像に応じた画像を生成する第2放射線検出器と、第1放射線検出器の検出タイミング及び第2放射線検出器の検出タイミングの制御を行うタイミング制御部と、第1放射線検出器からの画像の補正を行う画像補正部と、を備える。第1放射線検出器は、像検出方向に沿って配列された複数の画素を有して、第1エネルギ範囲の放射線の像による第1画像を取得する第1画素部とを有し、第2放射線検出器は、像検出方向に沿って配列された複数の画素を有して、第2エネルギ範囲の放射線の像による第2画像を取得する第2画素部とを有する。第1画素部における複数の画素それぞれの像検出方向に直交する直交方向での第1画素幅Wb1は、第2画素部における複数の画素それぞれの直交方向での第2画素幅Wb2より小さく、タイミング制御部は、第2放射線検出器の検出タイミングを第1放射線検出器の検出タイミングに同期させ、画像補正部は、第1画素幅Wb1と第2画素幅Wb2との比率Wb2/Wb1に基づいて、第1放射線検出器からの画像における連続するWb2/Wb1個の画素データを加算する。
【0012】
サブトラクション法を用いる場合、2つの放射線検出器は、空間的かつ時間的に、被検査物における同一の位置を撮像する必要がある。そのため、特許文献1に記載のように2つの放射線検出器を横並びに配置するタイプでは、それぞれの放射線検出器の検出タイミングを調整しなければならない。また、例え、検出タイミングを調整したとしても、被検査物において同一の位置、すなわち、全く同一のエリアを撮像することは困難であり、位置精度が低い可能性がある。このように、検出エリアの端の一部がずれたサブトラクション画像を作成すると、サブトラクション画像における検出物の端部に明るいエッジ(白エッジ)や暗いエッジ(黒エッジ)といった擬似エッジが生じてしまうことがある。
【0013】
一方、この放射線検出装置では、第1放射線検出器と第2放射線検出器とが放射線入射方向に対して重なって配置されているので、すなわち、縦積みタイプであるので、検出タイミング制御を行うことなく、容易に、時間的に同時に、かつ、被検査物における同一の位置を撮像することができる。
【0014】
この放射線検出装置によれば、タイミング制御部によって、第2放射線検出器の検出タイミングを第1放射線検出器の検出タイミングに同期させるので、1回の検出タイミングにおいて、第2放射線検出器は、第1放射線検出器に対して、第1画素幅Wb1と第2画素幅Wb2との比率Wb2/Wb1倍の画素データを取得する。そして、画像補正部によって、第1画素幅Wb1と第2画素幅Wb2との比率Wb2/Wb1に基づいて、第1放射線検出器からの画像における連続するWb2/Wb1個の画素データを加算するので、補正後の第1放射線検出器からの画像の画素数と第2放射線検出器からの画像の画素数とを等しくすることができる。したがって、第1放射線検出器における画像の像検出方向に直交する直交方向での第1画素幅が第2放射線検出器における画素の直交方向での第2画素幅より小さい場合であっても、すなわち、第1放射線検出器における画素数と第2放射線検出器における画素数とが異なっていても、第1放射線検出器による放射線像及び第2放射線検出器による放射線像に基づく演算処理、例えばサブトラクション処理を容易にすることができる。
【0015】
上記した第1放射線検出器と上記した第2放射線検出器とは、第1放射線検出器の検出タイミングによる被検査物の検出位置と第2放射線検出器の検出タイミングによる被検査物の検出位置との位置ずれが第1画素幅の0.3倍以下になるように配置されていることが好ましい。
【0016】
第1放射線検出器と第2放射線検出器との配置により、第1放射線検出器の検出タイミングによる被検査物の検出位置と第2放射線検出器の検出タイミングによる被検査物の検出位置とが大きくずれることがある。すると、第1放射線検出器による放射線像及び第2放射線検出器による放射線像に基づくサブトラクション画像において、この検出位置に対応する部分の前後に白エッジや黒エッジが発生してしまうことがある。
【0017】
しかしながら、第1放射線検出器の検出タイミングによる被検査物の検出位置と第2放射線検出器の検出タイミングによる被検査物の検出位置との位置ずれが第1画素幅の0.3倍以下になるように、第1放射線検出器と第2放射線検出器とを配置すると、第1放射線検出器による放射線像及び第2放射線検出器による放射線像に基づくサブトラクション画像において、この検出位置に対応する部分の前後に白エッジや黒エッジが発生することを抑制することができ、良好なサブトラクション画像を得ることができる。
【0018】
上記したタイミング制御部は、第1放射線検出器の検出タイミングと第2放射線検出器の検出タイミングとの何れか一方を遅延させることが好ましい。
【0019】
これにより、第1放射線検出器と第2放射線検出器との配置に起因する、第1放射線検出器の検出タイミングによる被検査物の検出位置と第2放射線検出器の検出タイミングによる被検査物の検出位置とを低減することができる。したがって、第1放射線検出器による放射線像及び第2放射線検出器による放射線像に基づくサブトラクション画像において、この検出位置に対応する部分の前後に白エッジや黒エッジが発生することを抑制することができ、良好なサブトラクション画像を得ることができる。
【0020】
上記した第1放射線検出器は、像検出方向に沿って延在し、第1エネルギ範囲の放射線の像を光像に変換する第1シンチレータ層と、第1シンチレータ層で変換された光像による第1画像を取得する第1画素部とを有し、上記した第2放射線検出器は、像検出方向に沿って延在し、第2エネルギ範囲の放射線の像を光像に変換する第2シンチレータ層と、第2シンチレータ層で変換された光像による第2画像を取得する第2画素部とを有していてもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、サブトラクション法を用いるデュアルエナジータイプの放射線検出装置において、2つの放射線検出器における画素数が異なっても、これらの放射線検出器による放射線像に基づく演算処理、例えばサブトラクション処理を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本実施形態に係るX線異物検査装置の斜視図である。
【図2】本実施形態に係るX線異物検査装置の概略構成図である。
【図3】本発明の実施形態に係る放射線検出装置におけるデュアルエナジーセンサの概略構造図である。
【図4】図3に示すデュアルエナジーセンサにおける低エネルギ検出器及び高エネルギ検出器のX線入射面を示す図である。
【図5】図2に示す低エネルギ画像補正部及び高エネルギ画像補正部における画像処理を示す概念図である。
【図6】図2に示すタイミング制御部による検出タイミング制御の概念図である。
【図7】図2に示す低エネルギ検出器及び高エネルギ検出器から出力される画像の画素データを示す図である。
【図8】図2に示す低エネルギ画像補正部による画像補正処理を示す概念図である。
【図9】本実施形態の検出タイミング制御及び画像補正処理を行わない場合の低エネルギ検出器及び高エネルギ検出器によって検出した画像を示す図である。
【図10】本実施形態の検出タイミング制御及び画像補正処理を行った場合の低エネルギ検出器及び高エネルギ検出器によって検出した画像を示す図である。
【図11】図10に示す画像に基づくサブトラクション画像である。
【図12】同一の被検査物を検出したときの画像の輝度ファイルを示す図である。
【図13】図12に示す輝度ファイルを有する画像によるサブトラクション画像の輝度ファイルを示す図である。
【図14】検出タイミングが異なる2つの画像によるサブトラクション画像の一例を示す図である。
【図15】本発明の変形例のデュアルエナジーセンサにおける低エネルギ検出器及び高エネルギ検出器のX線入射面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、各図面において同一又は相当の部分に対しては同一の符号を附すこととする。
【0024】
図1は、本実施形態に係るX線異物検査装置の斜視図であり、図2は、本実施形態に係るX線異物検査装置の概略構成図である。図1及び図2に示されるように、X線異物検査装置1は、X線源からのX線(放射線)を照射方向Zへ向けて被検査物Sに照射し、照射されたX線のうち被検査物Sを透過した透過X線を複数のエネルギ範囲で検出する装置である。X線異物検査装置1は、透過X線画像を用いて被検査物Sに含まれる異物検査や手荷物検査等を行う。このようなX線異物検査装置1は、ベルトコンベア10、X線照射器20、低エネルギ画像取得部30、高エネルギ画像取得部40、タイミング制御部50、タイミング算出部60及び画像処理装置70を備えている。低エネルギ画像取得部30、高エネルギ画像取得部40及びタイミング制御部50から本発明の実施形態に係るデュアルエナジー型の放射線検出装置80が構成される。
【0025】
ベルトコンベア10は、図1に示すように、被検査物Sが載置されるベルト部12を備える。ベルトコンベア10は、ベルト部12を搬送方向Yに移動させることで、被検査物Sを所定の搬送速度で搬送方向Yに搬送する。被検査物Sの搬送速度は、例えば48m/分である。ベルトコンベア10は、必要に応じて、ベルトコンベア制御部14により、例えば24m/分や96m/分といった搬送速度に速度を変更することができる。また、ベルトコンベア制御部14は、ベルト部12の高さ位置を変更することができる。ベルト部12の高さ位置を変更することで、X線照射器20と被検査物Sとの距離を変更させることができる。この変更により、低エネルギ画像取得部30及び高エネルギ画像取得部40で取得されるX線透過像の解像度を変更させることが可能となる。なお、ベルトコンベア10で搬送される被検査物Sとしては、例えば、食肉等の食品やタイヤなどのゴム製品、セキュリティ・安全のための手荷物検査や貨物検査、その他に樹脂製品や金属製品、鉱物など資源材料、分別や資源回収(リサイクル)のための廃棄物、電子部品等など広くあげることができる。
【0026】
X線照射器20は、X線源としてX線を照射方向Zへ向けて被検査物Sに照射する装置である。X線照射器20は、点光源であり、照射方向Z及び搬送方向Yに直交する検出方向Xに所定の角度範囲でX線を拡散させて照射する。X線照射器20は、X線の照射方向Zがベルト部12に向けられると共に拡散するX線が被検査物Sの幅方向(検出方向X)全体に及ぶように、ベルト部12から所定の距離を離れてベルト部12の上方に配置される。また、X線照射器20は、被検査物Sの長さ方向(搬送方向Y)においては、長さ方向における所定の分割範囲が照射範囲とされ、被検査物Sがベルトコンベア10で搬送方向Yへ搬送されることにより、被検査物Sの長さ方向全体に対してX線が照射されるようになっている。
【0027】
低エネルギ画像取得部30は、低エネルギ検出器(第1放射線検出器)32と低エネルギ画像補正部(画像補正部)34と備えている。
【0028】
低エネルギ検出器32は、X線入射方向Zに対して上流側に位置し、X線照射器20から照射されたX線のうち被検査物Sを透過した低エネルギ範囲(第1エネルギ範囲)のX線を検出して、低エネルギ画像データ(第1放射線画像データ)を生成する。
【0029】
低エネルギ画像補正部34は、低エネルギ検出器32で生成された低エネルギ画像データを増幅及び補正する部分である。低エネルギ画像補正部34は、低エネルギ画像データを増幅するアンプ34a、アンプ34aで増幅された低エネルギ画像データをA/D変換するA/D変換部34b、A/D変換部34bで変換された低エネルギ画像データに対して所定の補正処理を行う補正回路34c、補正回路34cで補正された画像データを外部出力する出力インターフェイス34dを備えている。低エネルギ画像補正部(画像補正部)34の詳細は後述する。
【0030】
高エネルギ画像取得部40は、高エネルギ検出器(第2放射線検出器)42と高エネルギ画像補正部44と備えている。
【0031】
高エネルギ検出器42は、X線入射方向Zに対して下流側に位置し、X線照射器20から照射されて、X線のうち被検査物S及び低エネルギ検出器32を透過した高エネルギ範囲(第2エネルギ範囲)のX線を検出して、高エネルギ画像データ(第2放射線画像データ)を生成する。なお、低エネルギ検出器32で検出される低エネルギ範囲と高エネルギ検出器42で検出される高エネルギ範囲とは、明確に区別されるものではなく、エネルギ範囲がある程度、重なるようになっている。
【0032】
高エネルギ画像補正部44は、高エネルギ検出器42で生成された高エネルギ画像データを増幅及び補正する部分である。高エネルギ画像補正部44は、高エネルギ画像データを増幅するアンプ44a、アンプ44aで増幅された高エネルギ画像データをA/D変換するA/D変換部44b、A/D変換部44bで変換された高エネルギ画像データに対して所定の補正処理を行う補正回路44c、補正回路44cで補正された画像データを外部出力する出力インターフェイス44dを備えている。
【0033】
タイミング制御部50は、低エネルギ検出器32での透過X線の検出タイミングと高エネルギ検出器42での透過X線の検出タイミングとを制御する。タイミング制御部50は、タイミング算出部60によって低エネルギ画像データと高エネルギ画像データとがそれぞれ対応するように算出した検出タイミングに従って、下記のサブトラクション処理における画像ずれを低減させる。タイミング制御部50及びタイミング算出部60の詳細は後述する。
【0034】
画像処理装置70は、低エネルギ検出器32で検出及び生成された低エネルギ画像データと高エネルギ検出器42で検出及び生成された高エネルギ画像データとの差分データを求める演算処理(サブトラクション処理)を行い、合成画像であるサブトラクション像を生成する装置である。画像処理装置70に入力される両エネルギ画像データは、タイミング制御部50により、互いの画像データが対応するように検出タイミングが制御されている。画像処理装置70は、演算処理により生成したサブトラクション像をディスプレイ等に出力表示する。この出力表示により、被検査物Sに含まれる異物等を目視で確認することができる。なお、サブトラクション像を出力表示せずに、データ出力のみを行って画像データ上での検出処理により画像データから直接、被検査物Sに含まれる異物等を検出するようにしてもよい。
【0035】
次に、低エネルギ検出器32及び高エネルギ検出器42について詳細に説明する。図3は、図2に示す放射線検出装置80における低エネルギ検出器32と高エネルギ検出器42とからなるデュアルエナジーセンサ86の概略構造図であり、図4は、低エネルギ検出器32のX線入射面(a)、及び、高エネルギ検出器42のX線入射面(b)を示す図である。
【0036】
図3及び4に示すように、低エネルギ検出器32は、低エネルギシンチレータ層(第1シンチレータ層)322と低エネルギラインセンサ(第1画素部)324とを有する。低エネルギシンチレータ層322は、像検出方向Xに沿って延在し、低エネルギ範囲のX線の像を光像に変換する。低エネルギラインセンサ324は、像検出方向Xに沿って配列された複数の画素326を有し、低エネルギシンチレータ層322で変換された光像による低エネルギ画像(第1画像)を取得する。このようにして、低エネルギ検出器32は、低エネルギ範囲のX線を検出する。
【0037】
同様に、高エネルギ検出器42は、高エネルギシンチレータ層(第2シンチレータ層)422と高エネルギラインセンサ(第2画素部)424とを有する。高エネルギシンチレータ層422は、像検出方向Xに沿って延在し、高エネルギ範囲のX線の像を光像に変換する。高エネルギラインセンサ424は、像検出方向Xに沿って配列された複数の画素426を有し、高エネルギシンチレータ層422で変換された光像による高エネルギ画像(第2画像)を取得する。このようにして、高エネルギ検出器42は、高エネルギ範囲のX線を検出する。
【0038】
ここで、低エネルギラインセンサ324における複数の画素326それぞれの像検出方向Xでの画素幅(第1像検出方向幅)Wa1は、高エネルギラインセンサ424における複数の画素426それぞれの像検出方向Xでの画素幅(第2像検出方向幅)Wa2と同一である。一方、低エネルギラインセンサ324における複数の画素326それぞれの像検出方向Xに直交する直交方向(搬送方向Y)での画素幅(第1直交方向幅)Wb1は、高エネルギラインセンサ424における複数の画素426それぞれの直交方向Yでの画素幅(第2直交方向幅)Wb2より小さくなっている。このようにして、低エネルギラインセンサ324における複数の画素326それぞれの面積(第1面積)S1は、高エネルギラインセンサ424における複数の画素426それぞれの面積(第2面積)S2より小さくなっている。すなわち、低エネルギラインセンサ324における画素数(ライン出力数)は、高エネルギラインセンサ424における画素数(ライン出力数)より多くなる。
【0039】
なお、低エネルギシンチレータ層322の材料と高エネルギシンチレータ層422の材料とは同一であってもよいが、低エネルギシンチレータ層322と高エネルギシンチレータ層422とで異なる材料が用いられてもよい。例えば、低エネルギシンチレータ層322及び高エネルギシンチレータ層422の材料としては、Gd2O2S:Tb、CsI:Tl、CdWO4、CaWO4、GSO、LGSO、BGO、LSO、YSO、YAP、Y2O2S:Tb、YTaO4:Tm等が適用可能であり、検出するX線に応じて材料の組合せを選択すればよい。なお、低エネルギ検出器32と高エネルギ検出器42は、CdTe(テルル化カドミウム)などの直接変換方式によるエネルギ弁別機能を備えたX線検出器であってもよい。
【0040】
ここで、食品内の異物検査では、食肉内の骨や軟骨、金属等を異物として検査することが要求され、食肉の放射線吸収量と異物(骨や軟骨、金属等)の放射線吸収量との相違を利用して、これらを透過した放射線像のサブトラクション画像のコントラスト差によって異物を浮き出させ、異物の有無を判断する。
【0041】
ここで、骨や金属は、食肉に比べて放射線透過性が大きく異なる(低い)ので、少なくとも一方の放射線検出器による放射線像のコントラスト差が大きい。その結果、二つの放射線像のサブトラクション画像のコントラスト差が大きく、異物検査が容易である。しかしながら、軟骨は、食肉と同様に放射線透過率が高く、その差が小さいので、双方の放射線検出器による放射線像のコントラスト差が小さくなってしまう。その結果、これらの放射線像のサブトラクション画像のコントラスト差も小さく、異物検査が困難であった。
【0042】
しかしながら、食肉や軟骨等の軽い原子同士、すなわち放射線透過性が高い物質同士の放射線像のコントラスト差を比較的大きくすることができる低エネルギ範囲の放射線像を検出する低エネルギ検出器32において、各画素326の搬送方向Yでの画素幅Wb1を小さくすると、すなわち、低エネルギ検出器32における各画素326の面積S1を小さくすると、各画素326によって変換される電荷量が小さくなり、食肉や軟骨等の軽い原子同士、すなわち放射線透過性が高い物質同士の放射線像による電荷量差を相対的に大きくすることができ、これらの放射線像のコントラスト差を大きくすることができる。その結果、異物検査を容易にすることができる。
【0043】
次に、低エネルギ画像補正部34における補正回路34c、タイミング制御部50及びタイミング算出部60について詳細に説明する。
【0044】
図5は、低エネルギ画像補正部34による画像処理(a)、及び、高エネルギ画像補正部44における画像処理(b)を示す概念図である。
【0045】
図5(a)に示すように、低エネルギ検出器32から出力される画像は、M画素(検出方向X)×Nライン出力(搬送方向Y)が2次元画像処理され、その画素数はM×N画素となる。一方、図5(b)によれば、高エネルギ検出器42から出力される画像は、M画素(検出方向X)×N’ライン出力(搬送方向Y)が2次元画像処理され、その画素数はM×N’画素となる(N’<N)。
【0046】
このように、低エネルギ検出器32の画素面積S1と高エネルギ検出器42の画素面積S2が異なる場合、すなわち、低エネルギ検出器32の搬送方向Yでの画素幅Wb1と高エネルギ検出器42の搬送方向Yでの画素幅Wb2とが異なる場合、低エネルギ検出器32から出力される画像のライン出力数Nと高エネルギ検出器42から出力される画像のライン出力数N’とが異なり、すなわち、低エネルギ検出器32からの画像の搬送方向Yの画素数Nと高エネルギ検出器42からの画像の搬送方向Yの画素数N’とが異なり、これらの差分処理を行うことによってサブトラクション画像を作成することが難しい。
【0047】
そこで、タイミング制御部50は、低エネルギ検出器32の検出タイミングと高エネルギ検出器42の検出タイミングとを同期させて、低エネルギ検出器32から出力される画像のライン出力数Nと高エネルギ検出器42から出力される画像のライン出力数N’とを等しくする。すなわち、低エネルギ検出器32からの画像の搬送方向Yの画素数Nと高エネルギ検出器42からの画像の搬送方向Yの画素数N’とを等しくする。
【0048】
図6は、タイミング制御部50による検出タイミング制御の概念図であり、図7は、低エネルギ検出器32から出力される画像の画素データ(a)、及び、高エネルギ検出器42から出力される画像の画素データ(b)を示す図である。
【0049】
例えば、タイミング制御部50は、低エネルギ検出器32及び高エネルギ検出器42へ検出タイミングのための繰り返しパルス信号を供給する。タイミング制御部50は、これらの繰り返しパルス信号を同期させることにより、検出タイミングを同期させる。繰り返しパルス信号は、例えば、PLL(Phase Locked Loop:位相同期回路)等を用いて、タイミング算出部60からの制御信号に応じて制御される。タイミング算出部60では、例えば、ベルトコンベア10の搬送速度V、ラインセンサの画素の搬送方向Yでの画素幅Wb1又はWb2、光源20から被検査物Sまでの距離FOD、光源20から検出器32又は42までの距離FDD等を考慮して制御信号の値、すなわち、検出タイミングを調整する。なお、各値は、例えば予めユーザによって設定されればよい。
【0050】
具体的には、タイミング制御部50は、低エネルギ検出器32のための繰り返しパルス信号の周期を、低エネルギ検出器32における画素326の搬送方向Yでの画素幅Wb1に制御し、高エネルギ検出器42のための繰り返しパルス信号の周期を低エネルギ検出器32のための繰り返しパルス信号の周期に同期させている。このように、本実施形態では、搬送方向Yの画素幅の大きい方の高エネルギ検出器42の検出タイミングを、自身の画素426の画素幅Wb2ではなく、低エネルギ検出器32における画素326の画素幅Wb1で調整する。
【0051】
すると、例えば、図6及び図7に示すように、1ライン目の検出タイミングでは、低エネルギ検出器32によって画素データAを検出すると共に、高エネルギ検出器42によって画素データA+ノイズNを検出することができる。次に、2ライン目の検出タイミングでは、低エネルギ検出器32によって画素データBを検出すると共に、高エネルギ検出器42によって画素データB+Aを検出することができる。次に、3ライン目の検出タイミングでは、低エネルギ検出器32によって画素データCを検出すると共に、高エネルギ検出器42によって画素データC+Bを検出することができる。次に、4ライン目の検出タイミングでは、低エネルギ検出器32によって画素データDを検出すると共に、高エネルギ検出器42によって画素データD+Cを検出することができる。次に、5ライン目の検出タイミングでは、低エネルギ検出器32によって画素データEを検出すると共に、高エネルギ検出器42によって画素データE+Dを検出することができる。次に、6ライン目の検出タイミングでは、低エネルギ検出器32によって画素データFを検出すると共に、高エネルギ検出器42によって画素データF+Eを検出することができる。次に、7ライン目の検出タイミングでは、低エネルギ検出器32によって画素データGを検出すると共に、高エネルギ検出器42によって画素データG+Fを検出することができる。次に、8ライン目の検出タイミングでは、低エネルギ検出器32によってノイズNを検出すると共に、高エネルギ検出器42によってノイズN+画素データGを検出することができる。
【0052】
そして、差分処理のために、低エネルギ画像補正部34における補正回路34cによって、低エネルギ検出器32側の画素データと高エネルギ検出器42側の画素データを揃える補正処理を行う。具体的には、低エネルギ画像補正部34における補正回路34cは、低エネルギ検出器32における画素326の画素幅Wb1と高エネルギ検出器42における画素426の画素幅Wb2との比率Wb2/Wb1に基づいて、低エネルギ検出器32からの画像における連続するWb2/Wb1個の画素データを加算する。
【0053】
本実施形態では、Wb2/Wb1=2であるので、図8に示すように、補正回路34cは、2ライン目で検出した画素データBに1ライン前に検出した画素データAを加算して補正データB+Aを生成し、3ライン目で検出した画素データCに1ライン前に検出した画素データBを加算して補正データC+Bを生成し、4ライン目で検出した画素データDに1ライン前に検出した画素データCを加算して補正データD+Cを生成し、5ライン目で検出した画素データEに1ライン前に検出した画素データDを加算して補正データE+Dを生成し、6ライン目で検出した画素データFに1ライン前に検出した画素データEを加算して補正データF+Eを生成し、7ライン目で検出した画素データGに1ライン前に検出した画素データFを加算して補正データG+Fを生成する。このようにして、補正回路34cは、高エネルギ検出器42側の画素データB+A、C+B、D+C、E+D、F+E、G+Fのそれぞれに対応する補正データB+A、C+B、D+C、E+D、F+E、G+Fを生成する。
【0054】
このように、本実施形態の放射線検出装置80によれば、タイミング制御部50によって、高エネルギ検出器42の検出タイミングを低エネルギ検出器32の検出タイミングに同期させるので、1回の検出タイミングにおいて、高エネルギ検出器42は、低エネルギ検出器32に対して、搬送方向Yでの画素幅Wb1と画素幅Wb2との比率Wb2/Wb1倍の画素データを取得する。そして、低エネルギ画像補正部34における補正回路34cによって、画素幅Wb1と画素幅Wb2との比率Wb2/Wb1に基づいて、低エネルギ検出器32からの画像における連続するWb2/Wb1個の画素データを加算するので、補正後の低エネルギ検出器32からの画像の画素数と高エネルギ検出器42からの画像の画素数とを等しくすることができる。したがって、低エネルギ検出器32における画像の搬送方向Yでの画素幅Wb1が高エネルギ検出器42における画素の搬送方向Yでの画素幅Wb2より小さい場合であっても、すなわち、低エネルギ検出器32における画素数と高エネルギ検出器42における画素数とが異なっていても、低エネルギ検出器32による放射線像及び高エネルギ検出器42による放射線像に基づく演算処理、例えばサブトラクション処理を容易にすることができる。
【0055】
図9は、本実施形態の検出タイミング制御及び画像補正処理を行わない場合の低エネルギ検出器32によって検出した画像(a)、及び、高エネルギ検出器42によって検出した画像(b)を示す図であり、図10は、本実施形態の検出タイミング制御及び画像補正処理を行った場合の低エネルギ検出器32によって検出した画像(a)、及び、高エネルギ検出器42によって検出した画像(b)を示す図である。また、図11は、図10に示す画像に基づくサブトラクション画像である。
【0056】
図9に示すように、低エネルギ検出器32からの画像の搬送方向Yでの画素数と高エネルギ検出器42からの画像の搬送方向Yでの画素数とが異なるので、これらの画像に基づくサブトラクション画像を生成することが困難である。
【0057】
図10に示すように、低エネルギ検出器32からの画像の搬送方向Yでの画素数と高エネルギ検出器42からの画像の搬送方向Yでの画素数とを等しくすることによって、図11に示すように、所望の物質のみを浮き立たせたサブストラクション画像を容易に得られることがわかる。
【0058】
なお、本発明は上記した本実施形態に限定されることなく種々の変形が可能である。
【0059】
本実施形態では、タイミング制御部50、低エネルギ画像補正部34及び高エネルギ画像補正部44がハードウエアで構成される例を示したが、タイミング制御部50、低エネルギ画像補正部34及び高エネルギ画像補正部44は、例えば外部のコンピュータにおけるソフトウエア処理によって実現されてもよい。すなわち、本発明のタイミング制御部と画像補正部とがコンピュータプログラムによって実現され、本発明の検出タイミング制御処理及び画素補正処理がソフトウエア的に処理されてもよい。
【0060】
また、本実施形態では、低エネルギ検出器32と高エネルギ検出器42とが左端が揃うように配置されている場合を例示したが、低エネルギ検出器32と高エネルギ検出器42との配置は様々な形態が考えられる。例えば、低エネルギ検出器32と高エネルギ検出器42とは中心軸が揃うように配置されてもよい。
【0061】
このように、低エネルギ検出器32と高エネルギ検出器42との配置としては様々な態様が考えられるわけであるが、この配置の仕方によっては、低エネルギ検出器32の検出タイミングと高エネルギ検出器42の検出タイミングとの何れか一方を遅延させることが好ましい。
【0062】
図12は、同一の被検査物を検出したときの画像の輝度ファイルを示す図である。被検査物は、3画素分に相当する長さの高透過率部分を有しており、図12(a)では、検出時点4〜7において被検査物の高透過率部分を検出できるように検出タイミングが調整されている。一方、12(b)は、図12(a)に対して検出タイミングが1/2画素分だけずれたときの輝度ファイルであり、図12(c)は、図12(a)に対して検出タイミングが1/4画素分だけずれたときの輝度ファイルである。
【0063】
図13は、図12に示す輝度ファイルを有する画像によるサブトラクション画像の輝度ファイルを示す図である。図13(a)は、図12(a)の輝度ファイルを有する画像と図12(b)に示す輝度ファイルを有する画像によるサブトラクション画像の輝度ファイル、すなわち、検出タイミングが1/2画素ずれた画像によるサブトラクション画像の輝度ファイルである。図13(a)によれば、被検査物の高透過率部分の前後に正の方向の擬似エッジが発生している。この正の方向の擬似エッジの発生は、サブトラクション画像において後述する白エッジの発生原因となる。一方、図13(b)は、図12(a)の輝度ファイルを有する画像と図12(c)に示す輝度ファイルを有する画像によるサブトラクション画像の輝度ファイル、すなわち、検出タイミングが1/4画素ずれた画像によるサブトラクション画像の輝度ファイルである。図13(b)によれば、被検査物の高透過率部分の前に正の方向の擬似エッジが発生し、被検査物の高透過率部分の後に負の方向の擬似エッジが発生している。この正の方向の擬似エッジの発生は、サブトラクション画像において後述する白エッジの発生原因となり、負の方向の擬似エッジの発生は、サブトラクション画像において後述する黒エッジの発生原因となる。
【0064】
図14は、検出タイミングが異なる2つの画像によるサブトラクション画像の一例を示す図である。図14によれば、被検査物における各物質の下方部分に白いエッジが発生し、上方部分に黒いエッジが発生している。このように、二つの検出器において被検査物の検出箇所に対する検出タイミングが大きく異なると、良好なサブトラクション画像を得ることができないことがある。
【0065】
このような場合、一方の検出器の検出タイミングによる被検査物の検出位置と他方の検出器の検出タイミングによる被検査物の検出位置との位置ずれを低減するように、低エネルギ検出器32の検出タイミングと高エネルギ検出器42の検出タイミングとの何れか一方を遅延させることが好ましい。例えば、図6のように、低エネルギ検出器32が3ライン目を検出する際に隣接する画素データB、Dを含まず画素データCのみを検出し、高エネルギ検出器42が3ライン目を検出する際に隣接する画素データA、Dを含まず画素データB+Cのみを検出するように、どちらか一方の検出タイミングに遅延時間を持たせればよい。
【0066】
なお、本願発明者らの検討によれば、一方の検出器の検出タイミングによる被検査物の検出位置と他方の検出器の検出タイミングによる被検査物の検出位置との位置ずれが、低エネルギ検出器32における画素326の画素幅Wb1の0.3倍以下であれば、サブトラクション画像において白エッジ及び黒エッジの発生を低減することができた。換言すれば、一方の検出器の検出タイミングによる被検査物の検出位置と他方の検出器の検出タイミングによる被検査物の検出位置との位置ずれが、低エネルギ検出器32における画素326の画素幅Wb1の0.3倍を超える場合には、上記したように、一方の検出器の検出タイミングによる被検査物の検出位置と他方の検出器の検出タイミングによる被検査物の検出位置との位置ずれを低減するように、低エネルギ検出器32の検出タイミングと高エネルギ検出器42の検出タイミングとの何れか一方の遅延時間を調整する必要がある。
【0067】
また、本実施形態では、低エネルギ検出器32のラインセンサ324における複数の画素326それぞれの面積S1を、高エネルギ検出器42のラインセンサ424における複数の画素426それぞれの面積S2より小さくするために、各画素326の画素幅Wb1を各画素426の画素幅Wb2より小さくしたが、図15に示すように、更に、各画素326の画素幅Wa1を各画素426の画素幅Wa2より小さくしてもよい。このように、検出方向Xの画素数が異なる場合には、同一の画素数となるように、一方の放射線検出器において画像の間引き処理を行ったり、他方の放射線検出器において画像の補間処理を行ったりしてもよい。
【符号の説明】
【0068】
1…X線異物検査装置、10…ベルトコンベア、12…ベルト部、14…ベルトコンベア制御部、20…X線照射器、30…低エネルギ画像取得部、32…低エネルギ検出器(第1放射線検出器)、322…低エネルギシンチレータ層(第1シンチレータ層)、324…低エネルギラインセンサ(第1画素部)、326…画素、34…低エネルギ画像補正部(画像補正部)、34a…アンプ、34b…A/D変換部、34c…補正回路、34d…出力インターフェイス、40…高エネルギ画像取得部、42…高エネルギ検出器(第2放射線検出器)、422…高エネルギシンチレータ層(第2シンチレータ層)、424…高エネルギラインセンサ(第2画素部)、426…画素、44…高エネルギ画像補正部、44a…アンプ、44b…A/D変換部、44c…補正回路、44d…出力インターフェイス、50…タイミング制御部、60…タイミング算出部、70…画像処理装置、80…放射線検出装置、86…デュアルエナジーセンサ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サブトラクション法を用いる異物検査用の放射線検出装置であって、被検査物を透過して放射線入射方向から入射する第1エネルギ範囲の放射線及び前記第1エネルギ範囲の放射線よりも高い第2エネルギ範囲の放射線を検出する放射線検出装置において、
前記放射線入射方向に対して上流側に位置し、前記第1エネルギ範囲の放射線を検出して、当該放射線の像に応じた画像を生成する第1放射線検出器と、
前記放射線入射方向に対して下流側に位置し、前記第2エネルギ範囲の放射線を検出して、当該放射線の像に応じた画像を生成する第2放射線検出器と、
前記第1放射線検出器の検出タイミング及び前記第2放射線検出器の検出タイミングの制御を行うタイミング制御部と、
前記第1放射線検出器からの画像の補正を行う画像補正部と、を備え、
前記第1放射線検出器は、像検出方向に沿って配列された複数の画素を有して、前記第1エネルギ範囲の放射線の像による第1画像を取得する第1画素部を有し、
前記第2放射線検出器は、前記像検出方向に沿って配列された複数の画素を有して、前記第2エネルギ範囲の放射線の像による第2画像を取得する第2画素部とを有し、
前記第1画素部における前記複数の画素それぞれの前記像検出方向に直交する直交方向での第1画素幅Wb1は、前記第2画素部における前記複数の画素それぞれの前記直交方向での第2画素幅Wb2より小さく、
前記タイミング制御部は、前記第2放射線検出器の検出タイミングを前記第1放射線検出器の検出タイミングに同期させ、
前記画像補正部は、前記第1画素幅Wb1と前記第2画素幅Wb2との比率Wb2/Wb1に基づいて、前記第1放射線検出器からの画像における連続するWb2/Wb1個の画素データを加算する、
ことを特徴とする、放射線検出装置。
【請求項2】
前記第1放射線検出器と前記第2放射線検出器とは、前記第1放射線検出器の検出タイミングによる前記被検査物の検出位置と前記第2放射線検出器の検出タイミングによる前記被検査物の検出位置との位置ずれが前記第1画素幅の0.3倍以下になるように配置されている、ことを特徴とする、
請求項1に記載の放射線検出装置。
【請求項3】
前記タイミング制御部は、前記第1放射線検出器の検出タイミングと前記第2放射線検出器の検出タイミングとの何れか一方を遅延させる、ことを特徴とする、
請求項1に記載の放射線検出装置。
【請求項4】
前記第1放射線検出器は、前記像検出方向に沿って延在し、前記第1エネルギ範囲の放射線の像を光像に変換する第1シンチレータ層と、前記第1シンチレータ層で変換された光像による前記第1画像を取得する前記第1画素部とを有し、
前記第2放射線検出器は、前記像検出方向に沿って延在し、前記第2エネルギ範囲の放射線の像を光像に変換する第2シンチレータ層と、前記第2シンチレータ層で変換された光像による前記第2画像を取得する前記第2画素部とを有する、
請求項1に記載の放射線検出装置。
【請求項1】
サブトラクション法を用いる異物検査用の放射線検出装置であって、被検査物を透過して放射線入射方向から入射する第1エネルギ範囲の放射線及び前記第1エネルギ範囲の放射線よりも高い第2エネルギ範囲の放射線を検出する放射線検出装置において、
前記放射線入射方向に対して上流側に位置し、前記第1エネルギ範囲の放射線を検出して、当該放射線の像に応じた画像を生成する第1放射線検出器と、
前記放射線入射方向に対して下流側に位置し、前記第2エネルギ範囲の放射線を検出して、当該放射線の像に応じた画像を生成する第2放射線検出器と、
前記第1放射線検出器の検出タイミング及び前記第2放射線検出器の検出タイミングの制御を行うタイミング制御部と、
前記第1放射線検出器からの画像の補正を行う画像補正部と、を備え、
前記第1放射線検出器は、像検出方向に沿って配列された複数の画素を有して、前記第1エネルギ範囲の放射線の像による第1画像を取得する第1画素部を有し、
前記第2放射線検出器は、前記像検出方向に沿って配列された複数の画素を有して、前記第2エネルギ範囲の放射線の像による第2画像を取得する第2画素部とを有し、
前記第1画素部における前記複数の画素それぞれの前記像検出方向に直交する直交方向での第1画素幅Wb1は、前記第2画素部における前記複数の画素それぞれの前記直交方向での第2画素幅Wb2より小さく、
前記タイミング制御部は、前記第2放射線検出器の検出タイミングを前記第1放射線検出器の検出タイミングに同期させ、
前記画像補正部は、前記第1画素幅Wb1と前記第2画素幅Wb2との比率Wb2/Wb1に基づいて、前記第1放射線検出器からの画像における連続するWb2/Wb1個の画素データを加算する、
ことを特徴とする、放射線検出装置。
【請求項2】
前記第1放射線検出器と前記第2放射線検出器とは、前記第1放射線検出器の検出タイミングによる前記被検査物の検出位置と前記第2放射線検出器の検出タイミングによる前記被検査物の検出位置との位置ずれが前記第1画素幅の0.3倍以下になるように配置されている、ことを特徴とする、
請求項1に記載の放射線検出装置。
【請求項3】
前記タイミング制御部は、前記第1放射線検出器の検出タイミングと前記第2放射線検出器の検出タイミングとの何れか一方を遅延させる、ことを特徴とする、
請求項1に記載の放射線検出装置。
【請求項4】
前記第1放射線検出器は、前記像検出方向に沿って延在し、前記第1エネルギ範囲の放射線の像を光像に変換する第1シンチレータ層と、前記第1シンチレータ層で変換された光像による前記第1画像を取得する前記第1画素部とを有し、
前記第2放射線検出器は、前記像検出方向に沿って延在し、前記第2エネルギ範囲の放射線の像を光像に変換する第2シンチレータ層と、前記第2シンチレータ層で変換された光像による前記第2画像を取得する前記第2画素部とを有する、
請求項1に記載の放射線検出装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図12】
【図13】
【図15】
【図9】
【図10】
【図11】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図12】
【図13】
【図15】
【図9】
【図10】
【図11】
【図14】
【公開番号】特開2011−64643(P2011−64643A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−217544(P2009−217544)
【出願日】平成21年9月18日(2009.9.18)
【出願人】(000236436)浜松ホトニクス株式会社 (1,479)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月18日(2009.9.18)
【出願人】(000236436)浜松ホトニクス株式会社 (1,479)
【Fターム(参考)】
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