説明

放射線画像記録媒体および画像表示媒体

【課題】 放射線画像を担持した放射線の照射を受けて上記放射線画像を記録する放射線画像記録媒体であって、その記録された放射線画像に応じた画像信号を読み出すための多数の透明線状電極を有する放射線画像記録媒体において、画像信号のS/Nを向上させる。
【解決手段】 第1の電極層11を透過した放射線の照射を受けて記録用光導電層12で発生した電荷を蓄積部16に蓄積し、この蓄積された電荷と読取光の照射により読取用光導電層14において発生した電荷とが結合することにより透明線状電極15aに放射線の照射量に応じた電荷が流れ出す放射線画像記録媒体において、透明線状電極15aの長さ方向に延びる端部15cを除き中央部15dに不透明良導電性部材17を延設し、端部15c近傍の読取用光導電層14においても電荷を効率よく発生させるとともに、透明線状電極15aの線抵抗の大きさを小さくし、熱雑音を低下させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線画像を担持した放射線の照射を受けて上記放射線画像を記録する放射線画像記録媒体であって、その記録された放射線画像に応じた電荷信号を読み出すための多数の透明線状電極を有する放射線画像記録媒体、および画像情報に応じた電圧印加により光学特性が変化して上記画像情報を表示する画像表示媒体であって、上記電圧が印加される多数の透明線状電極を有する画像表示媒体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、医療分野などにおいて、被写体を透過した放射線の照射を受けて電荷を発生し、その電荷を蓄積することにより被写体に関する放射線画像を記録する放射線画像記録媒体が各種提案、実用化されている。
【0003】
上記のような放射線画像記録媒体としては、たとえば、特許文献1には、放射線を透過する第1の電極層、放射線の照射を受けることにより電荷を発生する記録用光導電層、一方の極性の電荷に対しては絶縁体として作用し、かつ他方の極性の電荷に対しては導電体として作用する電荷輸送層、読取光の照射を受けることにより電荷を発生する読取用光導電層、および読取光を透過する透明線状電極と読取光を遮る線状の読取光非透過電極とが平行に交互に配列された第2の電極層をこの順に積層してなる放射線画像記録媒体が提案されている。
【0004】
そして、上記のように構成された放射線画像記録媒体により放射線画像の記録を行う際には、まず、図7(A)に示すように、放射線画像記録媒体の第1の電極層1に接続された高圧電源により第1の電極層1に負の高電圧が印加された状態で、被写体を透過した放射線が照射される。上記のようにして照射された放射線は、第1の電極層1を透過し、記録用光導電層2に照射され、記録用光導電層2の放射線の照射された部分において電荷が発生し、この電荷のうち正の電荷は負に帯電した第1の電極層1に向かって移動し、第1の電極層1における負の電荷と結合して消滅する。一方、上記ようにして発生した電荷対のうち負の電荷は正に帯電した第2の電極層5に向かって移動するが、上記のように電荷輸送層3は負の電荷に対しては絶縁体として作用するため、図7(B)に示すように、上記負の電荷は記録用光導電層2と電荷輸送層3との界面である蓄電部6に蓄積され、この蓄電部への負電荷の蓄積により放射線画像の記録が行われる。
【0005】
そして、上記のようにして記録された放射線画像を放射線画像記録媒体から読み取る際には、まず、図7(C)に示すように、読取光が第2の電極層5側から照射される。照射された読取光は、第2の電極層5における透明線状電極5aを透過し、読取用光導電層4に照射され、読取用光導電層4において電荷対が発生する。そして、読取用光導電層4において発生した電荷対のうち正の電荷が蓄電部6に蓄積された負電荷と結合するとともに、負の電荷が透明線状電極5aに帯電した正の電荷と、読取光非透過電極5bからGNDを介して透明線状電極5a側に流れてくる正の電荷とに結合することにより、透明線状電極5aに接続された電流検出アンプ8により電流iが検出され、その電流iが電圧に変換されて画像信号として取得される。
【0006】
ここで、上記のような放射斜線画像記録媒体を用いて、たとえば、乳房の放射線画像を記録し、これを読み出して画像信号を取得する場合などにおいては、放射線画像を構成する画素の幅を50μm程度にする必要があるため透明線状電極の幅を10〜20μm程度にする必要がある。しかしながら、このように細い透明線状電極を形成した場合、透明線状電極の材料は比抵抗が大きいITOなどの酸化物材料であるため透明線状電極の線抵抗が大きくなって電流検出アンプにおける熱雑音が増加し、画像信号のS/Nが劣化してしまう。また、上記のように透明線状電極の線抵抗が大きいと画像信号を取得する際の時定数も大きくなるため応答速度が遅くなってしまう。透明線状電極の線抵抗の大きさを小さくする方法としては、特許文献2において、透明線状電極の導電性よりも高い導電性を呈する金属などの不透明導電性部材を透明線状電極に接触して配設する方法が提案されている。
【0007】
【特許文献1】特開2000−284056号公報
【特許文献2】特開2001−284565号公報
【特許文献3】特願2003−433467号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献2に記載の放射線画像記録媒体においては、透明線状電極の長さ方向に延びる端部の上面に上記不透明導電性部材を配設しているため、端部を透過する読取光が遮断され、端部近傍の読取用光導電層において電荷を発生させることができない。特許文献1に記載の放射線画像記録媒体のように透明線状電極と読取光非透過電極とにより放射線画像の読取りを行う際には、透明線状電極の端部近傍での電荷の発生が最も画像信号の読取効率に寄与するため、特許文献2に記載の放射線画像記録媒体のように、透明線状電極の端部の上面に不透明導電性部材を配設したのでは、十分な大きさの画像信号を取得することができず画像信号のS/Nが劣化してしまう。
【0009】
また、特許文献1に記載の放射線画像記録媒体のように、透明線状電極と読取光非透過電極とにより放射線画像を読取るのではなく、透明線状電極のみで放射線画像の読取りを行う放射線画像記録媒体も提案されている。このような放射線画像記録媒体においては、電流検出アンプにおけるノイズを減らすため透明線状電極間の隣接間容量をできるだけ減らす必要があり、そのためには透明線状電極の配列ピッチに対する透明線状電極の幅の比率をできるだけ小さくすることが望ましい。しかしながら、上記比率を小さくするとともに、線抵抗の大きさを小さくするため、特許文献2に記載の放射線画像記録媒体のように透明線状電極の端部の上面に不透明導電性部材を設けるようにしたのでは、読取効率が大きく低下してしまう。
【0010】
また、上記のような放射線画像記録媒体と同様に、透明線状電極を利用した画像表示媒体も提案されており、具体的には、特許文献3において、印加された電界に応じて光学特性が変化する表示層と、表示用のアドレス光の照射により上記電界を形成するための電荷を発生する光スイッチング層と、表示用のアドレス光を透過する透明線状電極が多数平行に配列された電極層とがこの順に積層された画像表示媒体が提案されている。
【0011】
上記のような画像表示媒体においては、画像に応じて電極層における透明線状電極毎に選択的に電圧が印加されるとともに、電極層側から透明線状電極の長さ方向に直交する方向に延びるアドレス光が透明線状電極の長さ方向に沿って走査され、このアドレス光の照射により光スイッチング層において電荷が発生し、この電荷により表示層に電界が形成されて表示層の光学特性が変化し、上記画像が表示される。
【0012】
そして、上記のように画像表示媒体においては、高速な画像表示を可能にするため、できるだけ透明線状電極間の隣接間容量を減らして時定数を小さくする必要があり、そのためには透明線状電極の配列ピッチに対する透明線状電極の幅の比率を小さくすることが望ましい。しかしながら、上記比率を小さくすると光スイッチング層における電荷の発生に寄与する透明線状電極の面積が低下してしまうため、透明線状電極間に対応する範囲の表示層において適切に画像が表示されない領域が発生してしまう。また、特許文献2に記載の放射線画像記録媒体のように透明線状電極に不透明導電性部材を設けることにより線抵抗を小さくして上記時定数を小さくし、画像表示の高速化を図ることもできるが、特許文献2に記載の放射線画像記録媒体のように透明線状電極の端部の上面に導電性部材を設けたのでは、透明線状電極の端部近傍の光スイッチング層において電荷を発生させることができないため、やはり透明線状電極間に対応する範囲の表示層において適切に画像が表示されない領域が発生してしまう。
【0013】
本発明は、上記事情に鑑み、上記のような透明線状電極を利用した放射線画像記録媒体において、読取効率の低下を招くことなく透明線状電極の線抵抗の大きさを小さくし、画像信号のS/Nを向上することができる放射線画像記録媒体を提供することを目的とするものである。
【0014】
また、本発明は、上記のような透明線状電極を利用した画像表示媒体において、透明線状電極間に対応する範囲の表示層においても適切に画像を表示させることができるとともに、画像表示の高速化を図ることができる画像表示媒体を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の第1の放射線画像記録媒体は、放射線画像を担持した放射線の照射を受けて電荷を発生し、その電荷を蓄積して画像情報を記録する電荷蓄積層と、読取用の電磁波の照射を受けて上記蓄積された電荷と結合する電荷を発生する読取用光導電層と、読取用の電磁波を透過する透明線状電極と読取用の電磁波を遮る線状の電磁波非透過電極とが交互に多数平行に配列された電極層とがこの順に積層された放射線画像記録媒体において、透明線状電極の長さ方向に延びる端部を除きその透明線状電極の中央部に不透明良導電性部材が延設されていることを特徴とする。
【0016】
本発明の第2の放射線画像記録媒体は、放射線画像を担持した放射線の照射を受けて電荷を発生し、その電荷を蓄積して画像情報を記録する電荷蓄積層と、読取用の電磁波の照射を受けて上記蓄積された電荷と結合する電荷を発生する読取用光導電層と、読取用の電磁波を透過する透明線状電極が多数平行に配列された電極層とがこの順に積層された放射線画像記録媒体において、透明線状電極の長さ方向に延びる端部を除きその透明線状電極の中央部に不透明良導電性部材が延設されていることを特徴とする。
【0017】
また、上記第2の放射線画像記録媒体においては、透明線状電極の配列ピッチに対する透明線状電極の幅の比率を40%以下とすることが望ましい。
【0018】
また、上記第1および第2の放射線画像記録媒体においては、端部の幅を、0.5μm以上とすることが望ましい。
【0019】
本発明の画像表示媒体は、印加された電界に応じて光学特性が変化する表示層と、表示用の電磁波の照射により前記電界を形成する電荷を発生する光スイッチング層と、表示用の電磁波を透過する透明線状電極が多数平行に配列された電極層とがこの順に積層された画像表示媒体において、透明線状電極の長さ方向に延びる端部を除きその透明線状電極の中央部に不透明良導電性部材が延設されていることを特徴とする。
【0020】
ここで、上記「不透明良導電性部材」の「良導電性」とは、少なくとも透明線状電極の導電性よりも高い導電性を呈することを意味する。
【0021】
また、上記「透明線状電極の長さ方向に延びる端部を除き」とは、必ずしも透明線状電極の長さ方向の一端から他端まで延びる端部の全てを除く必要はなく、端部を透過した読取用の電磁波が実質的に読取用光導電層に照射されるようにするのであれば、上記一端から他端まで延びる端部の一部に不透明良導電性部材を設けるようにしてもよい。また、必ずしも両端部に不透明良導電性部材を設けないようにする必要はなく、一方の端部に不透明良導電性部材を設けるようにし、他方の端部に不透明良導電性材料を設けないようにしてもよい。
【0022】
また、上記「中央部」とは、透明線状電極の上記「端部」を除く部分のことを意味する。
【0023】
また、上記「中央部に不透明良導電性部材が延設されている」とは、必ずしも透明線状電極の長さ方向の一端から他端まで延びる中央部の全てに不透明導電性部材を設ける必要はなく、上記一端から他端まで延びる中央部の一部に不透明良導電性部材を設けないようにしてもよい。
【0024】
また、上記画像表示媒体において、上記「光学特性が変化する」するとは、視覚により確認できるように光学特性が変化することを意味し、上記表示層としては、たとえば、液晶層を有するもの、正に帯電した白色粉末と負に帯電した黒色粉末を含有したマイクロカプセルを分散した分散層を有するものなどを利用することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の第1および第2の放射線画像記録媒体によれば、透明線状電極の長さ方向に延びる端部を除きその透明線状電極の中央部に不透明良導電性部材を延設するようにしたので、透明線状電極の端部近傍の読取用光導電層においても電荷を発生させることができ、読取効率の低下を招くことなく透明線状電極の線抵抗の大きさを小さくし、画像信号のS/Nを向上することができる。
【0026】
また、上記第2の放射線画像記録媒体において、透明線状電極の配列ピッチに対する透明線状電極の幅の比率を40%以下とした場合には、透明線状電極間の隣接間容量を減少させることができるので、上記隣接間容量に起因するノイズを減少させることができ、さらに画像信号のS/Nを向上することができる。
【0027】
また、上記端部の幅を、0.5μm以上とした場合には、たとえば、読取用の電磁波として波長が0.5μm程度の読取光(青色光)を利用した場合、この読取光を十分に読取用光導電層に照射させるようにすることができる。
【0028】
本発明の画像表示媒体によれば、透明線状電極の長さ方向に延びる端部を除きその透明線状電極の中央部に不透明良導電性部材を延設するようにしたので、透明線状電極の端部近傍の光スイッチング層においても電荷を発生させることができ、透明線状電極間に対応する範囲の表示層の領域においても電界を形成することができるので、上記領域にも適切に画像を表示させることができるとともに、透明線状電極の線抵抗の大きさを小さくして時定数を小さくすることができるので画像表示の高速化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、図面を参照して本発明の放射線画像記録媒体の一実施形態について説明する。図1(A)は本放射線画像記録媒体の斜視図、図1(B)は図1(A)に示す放射線画像記録媒体のB−B線断面図である。
【0030】
本放射線画像記録媒体10は、図1に示すように、被写体の放射線画像を担持した放射線を透過する第1の電極層11、放射線の照射を受けて電荷を発生する記録用光導電層12、記録用光導電層12において発生した一方の極性の電荷に対しては絶縁体として作用し、かつ他方の極性の電荷に対しては導電体として作用する電荷輸送層13、読取光の照射を受けることにより電荷を発生する読取用光導電層14、および読取光を透過する透明線状電極15aと読取光を遮る線状の読取光非透過電極15bとが多数平行に配列された第2の電極層15がこの順に積層されたものである。そして、記録用光導電層12と電荷輸送層13との界面には記録用光導電層12で発生した電荷が蓄積される蓄積部16が形成されている。
【0031】
第1の電極層11としては、放射線を透過するものであればよく、たとえば、ネサ皮膜(SnO)、ITO(Indium Tin Oxide)、アモルファス状光透過性酸化膜であるIDIXO(Idemitsu Indium X-metal Oxide ;出光興産(株))などを50〜200nm厚にして用いることができ、また、100nm厚のAlやAuなども用いることもできる。
【0032】
第2の電極層15は、上記のように透明線状電極15aと読取光非透過電極15bとを有するものであるが、透明線状電極15aの材料としては読取光を透過し、導電性を有するものであれば如何なるものでもよいが、たとえば、第1の電極層11と同様に、ITOやIDIXOを用いることができる。また、Al、Crなどの金属を用いて読取光を透過する程度の厚さ(たとえば、10nm程度)で形成するようにしてもよい。また、読取光非透過電極15bの材料としては読取光を遮光し、導電性を有するものであれば如何なるものでもよいが、たとえば、Al、Crなどの金属を用いて読取光を遮光する程度の厚さ(たとえば、100nm厚程度)で形成するようにすればよい。また、本実施形態の放射線画像記録媒体10においては、図1(B)に示すように、透明線状電極15aと読取光非透過電極15bとの間隔Dは10μmである。
【0033】
記録用光導電層12は、放射線の照射を受けることにより電荷を発生するものであればよく、放射線に対して比較的量子効率が高く、また暗抵抗が高いなどの点で優れているa−Seを主成分とするものを使用する。厚さは500μm程度が適切である。
【0034】
電荷輸送層13としては、たとえば、放射線画像の記録時に第1の電極層11に帯電する電荷の移動度と、その逆極性となる電荷の移動度の差が大きい程良く(例えば10以上、望ましくは10以上)、たとえば、放射線画像の記録時に第1の電極層11に負の電圧を印加するような場合には、正の電荷の移動度と、その逆極性となる負の電荷の移動度の差が大きいものが良く、ポリN−ビニルカルバゾール(PVK)、N,N'−ジフェニル−N,N'−ビス(3−メチルフェニル)−〔1,1'−ビフェニル〕−4,4'−ジアミン(TPD)やディスコティック液晶等の有機系化合物、或いはTPDのポリマー(ポリカーボネート、ポリスチレン、PVK)分散物,Clを10〜200ppmドープしたa−Se等の半導体物質が適当である。
【0035】
読取用光導電層14としては、読取光の照射を受けることにより導電性を呈するものであればよく、例えば、a−Se、Se−Te、Se−As−Te、無金属フタロシアニン、金属フタロシアニン、MgPc(Magnesium phtalocyanine),VoPc(phaseII of Vanadyl phthalocyanine)、CuPc(Cupper phtalocyanine)などのうち少なくとも1つを主成分とする光導電性物質が好適である。厚さは0.1〜1μm程度が適切である。
【0036】
ここで、本放射線画像記録媒体10の透明線状電極15aには、その端部15cを除く中央部15dの上面に不透明良導電性部材17が延設されている。不透明良導電性部材17の材料については、透明線状電極15aの導電性よりも高い導電性を呈するものであれば如何なる材料でもよいが、たとえば、Al、AgまたはCuなどを使用すればよい。また、図1(B)に示すように、本実施形態の放射線画像記録媒体10の透明線状電極15aおよび読取光非透過電極15bの幅L1は15μmであり、不透明良導電性材料17の幅L2は10μmであり、端部15cの幅L3は2.5μmである。不透明良導電性材料17を設けない端部の幅L3は読取光の波長よりも長くするようにすることが望ましく、たとえば、読取光として波長が0.5μm程度の青色の光を利用する場合には、端部の幅L3は0.5μm以上とすることが望ましく、たとえば、1μm〜2μm程度とすればよい。また、2つの端部15cの幅L3の合計が透明線状電極15aの幅L1の1/3以上とすることが望ましい。
【0037】
また、本実施形態の放射線画像記録媒体10においては、透明線状電極15aの一端から他端まで延びる端部15cの全部に不透明良導電性材料17を設けないようにしたが、必ずしも透明線状電極15aの一端から他端まで延びる端部15cの全部に不透明良導電性材料17を設けないようにする必要はなく、端部15cを透過した読取光が実質的に読取用光導電層14に照射されるようにするのであれば、一端から他端まで延びる端部15cの一部に不透明良導電性部材17を設けるようにしてもよい。また、必ずしも両側の端部15cに不透明良導電性部材17を設けないようにする必要はなく、一方の端部15cに不透明良導電性部材17を設けるようにし、他方の端部15cに不透明良導電性材料17を設けないようにしてもよい。また、本実施形態の放射線画像記録媒体10においては、透明線状電極15aの一端から他端まで延びる中央部15dの全てに不透明導電性部材17を設けるようにしたが、必ずしも透明線状電極15aの一端から他端まで延びる中央部15dの全てに不透明導電性部材17を設ける必要はなく、一端から他端まで延びる中央部15dの一部に不透明良導電性部材17を設けないようにしてもよい。
【0038】
上記のように構成された放射線画像記録媒体10に被写体を透過した放射線を照射して放射線画像を記録すると、図2に示すように、蓄電部16に放射線の照射量に応じた量の負の電荷が蓄積される。そして、蓄電部16に蓄積された電荷を読み出す際には、第2の電極層14側から読取光が照射され、透明線状電極15aを透過した読取光が読取用光導電層14に照射され、この読取光の照射により読取用光導電層14において電荷が発生するが、上記のように透明線状電極15aの端部15cに不透明良導電性材料17を設けないようにすれば、その端部15c近傍の読取用光導電層14に読取光を照射して電荷を発生させることができるので、透明線状電極15aの配列方向(長さ方向に直交する方向)に、より広い範囲で電荷を発生させることができる。したがって、読取効率の低下を招くことなく透明線状電極の線抵抗の大きさを小さくし、画像信号のS/Nを向上させることができる。
【0039】
また、上記実施形態の放射線画像記録媒体10においては、第2の電極層15における読取光非透過電極15bを、読取光を遮る材料から形成するようにしたが、たとえば、図3に示すように、読取光を透過する透明線状電極15aの端面および上面を、読取光を遮る読取光非透過材料18で被覆することにより読取光非透過電極を形成するようにしてもよい。
【0040】
また、上記実施形態の放射線画像記録媒体10においては、透明線状電極15aの上面に不透明良導電性材料17を設けるようにしたが、これに限らず、たとえば、図4に示すように、透明線状電極15aの内部の中央部15dに不透明良導電性材料17を設けるようにしてもよい。つまり、透明線状電極15aの端部15cを読取光が透過するようにするのであれば、如何なる態様で不透明良導電性材料17を設けるようにしてもよい。
【0041】
また、上記実施形態の放射線画像記録媒体10においては、第2の電極15を透明線状電極15aと読取光非透過電極15bとから構成するようにしたが、読取光非透過電極15bを設けずに、透明線状電極15aのみから構成するようにしてもよい。透明線状電極15aのみから構成する場合においては、透明線状電極15aの幅の透明線状電極15aの配列ピッチに対する比率を40%以下とすることが望ましい。また、上記実施形態の放射線画像記録媒体10と同様に、不透明良導電性材料17を設けない端部の幅は読取光の波長よりも長くするようにすることが望ましく、たとえば、読取光として波長が0.5μm程度の青色の光を利用する場合には、端部の幅は0.5μm以上とすることが望ましく、たとえば、1μm〜2μm程度とすればよい。また、2つの端部15cの幅の合計が透明線状電極15aの幅の1/3以上とすることが望ましい。
【0042】
また、上記実施形態の放射線画像記録媒体10は、放射線の照射を直接受けて電荷を発生するいわゆる直接変換の放射線画像記録媒体であるが、図5に示すような、放射線の照射を受け可視光を発する波長変換層21が第1の電極層11側に設けられた、いわゆる間接変換の放射線画像記録媒体20に、上記実施形態の放射線画像記録媒体10と同様に不透明良導電性材料17を設けるようにしてもよい。なお、上記間接変換の放射線画像記録媒体20においては、第1の電極層11は、上記波長変換層21において発生した可視光を透過する材料から形成し、記録用光導電層12は、上記可視光の照射を受けて電荷を発生する材料から形成する必要がある。波長変換層21は、たとえば、CaWOなどの蛍光体を用いて形成するようすればよい。また、記録用光導電層12の厚さは10μm程度が適切である。
【0043】
また、放射線画像記録媒体の層構成は上記実施形態のような層構成に限らずその他の層を加えたりしてもよい。
【0044】
次に、本発明の画像表示媒体の一実施形態を利用した画像表示装置について説明する。図6(A)は本画像表示装置における画像表示媒体の斜視図、図6(B)は図6(A)の画像表示媒体のB−B線断面図である。
【0045】
本画像表示装置における画像表示媒体30は、図6(A)に示すように、可視光を透過する第1の電極層31、電界に応じて光学特性が変化する表示層32、読取光の照射により導電性を呈する光スイッチング層33、線状のアドレス光を透過する透明線状電極34aが多数平行に配列された第2の電極層34をこの順に積層してなるものである。
【0046】
そして、本画像表示装置は、上記画像表示媒体30と、その画像表示媒体30の透明線状電極34aに所定の電圧を印加する電圧印加部36と、画像表示媒体30の第2の電極層34側から線状のアドレス光を照射するライン光源40とを備えている。なお、ライン光源40は、透明線状電極34aの長さ方向、つまり図6(A)における矢印Y方向に移動するものであるが、その移動機構については図示省略してある。
【0047】
第1の電極層31としては、可視光を透過するものであればよく、たとえば、ネサ皮膜(SnO)、ITO(Indium Tin Oxide)、アモルファス状光透過性酸化膜であるIDIXO(Idemitsu Indium X-metal Oxide ;出光興産(株))などを50〜200nm厚にして用いることができる。
【0048】
第2の電極層34は、上記のように多数の透明線状電極34aからなるものであるが、その材料としてはアドレス光を透過するものであれば如何なるものでもよく、たとえば、第1の電極層31と同様に、ITOやIDIXOを用いることができる。
【0049】
ここで、画像表示媒体30の透明線状電極34aには、その端部34cを除く中央部34cの上面に不透明良導電性部材35が延設されている。不透明良導電性部材35の材料については、透明線状電極34aの導電性よりも高い導電性を呈するものであれば如何なる材料でもよいが、たとえば、Al、AgまたはCuなどを使用すればよい。また、不透明良導電性材料35を設けない端部34bの幅はアドレス光の波長よりも長くするようにすることが望ましく、たとえば、アドレス光として波長が0.5μm程度の青色の光を利用する場合には、端部34bの幅は0.5μm以上とすることが望ましく、たとえば、1μm〜2μm程度とすればよい。また、2つの端部15cの幅L3の合計が透明線状電極15aの幅L1の1/3以上とすることが望ましい。
【0050】
表示層32は、液晶からなる液晶層32aと黒色シートからなる光吸収層32bとから構成されている。液晶層32aに使用する液晶としては、ポリマーネットワーク液晶(PNLCD)を用いることが望ましい。
【0051】
光スイッチング層33は、アドレス光の照射により電荷を発生する第1および第2の電荷発生層33a,33cと、その第1の電荷発生層33aと第2の電荷発生層33cとの間に挟まれて設けられた正孔輸送層33bとから構成されている。第1および第2の電荷発生層33a,33cとしては、アドレス光の照射により電荷を発生するものであれば如何なるものでもよいが、たとえば、a−Se、Se−Te、Se−As−Te、無金属フタロシアニン、金属フタロシアニン、MgPc(Magnesium phtalocyanine),VoPc(phaseII of Vanadyl phthalocyanine)、CuPc(Cupper phtalocyanine)などのうち少なくとも1つを主成分とする光導電性物質が好適である。また、正孔輸送層33bとしては、正の電荷の移動度と、その逆極性となる負の電荷の移動度の差が大きいもの(例えば10以上、望ましくは10以上)であればよく、たとえば、ポリN−ビニルカルバゾール(PVK)、N,N'−ジフェニル−N,N'−ビス(3−メチルフェニル)−〔1,1'−ビフェニル〕−4,4'−ジアミン(TPD)やディスコティック液晶等の有機系化合物、或いはTPDのポリマー(ポリカーボネート、ポリスチレン、PVK)分散物などの半導体物質が適当である。
【0052】
電圧印加部36は、入力された画像データに応じて各透明線状電極34aに+30Vまたは0V(接地電圧)を切り替えて印加するものである。
【0053】
ライン光源40は、図示省略した移動機構により矢印Y方向に移動させられ、画像表示媒体30を線状のアドレス光で走査するものである。なお、本実施形態においては、上記のように線状のアドレス光を矢印Y方向に走査することにより画像表示媒体30の全面をアドレス光により走査するようにしたが、必ずしも線状の光に限らず、スポット光により透明線状電極34aの配列方向および矢印Y方向に走査することにより画像表示媒体30の全面を走査するようにしてもよい。
【0054】
次に、本画像表示装置の作用について説明する。
【0055】
まず、第1の電極層31が接地された状態において、画像表示媒体30に表示させる画像を構成する画素データのうちの1ライン分の画素データが電圧印加部36に入力され、電圧印加部36は入力された1ライン分の画素データに応じて各透明線状電極34aに電圧を印加する。本実施形態においては、画像表示媒体30を矢印A方向から見た場合に、黒く見える画素に対応する透明線状電極34aには0Vを印加し、白く見える画素に対応する透明線状電極34aには+30Vを印加する。そして、上記のように透明線状電極34aに電圧が印加されるとともに、ライン光源40が駆動され、透明線状電極34aの配列方向に延びるアドレス光が画像表示媒体30の第2の電極層34側から照射される。第2の電極層34側から照射されたアドレス光は、光スイッチング層33の第2の電荷発生層33cに照射されるとともに、第2の電荷発生層33cおよび正孔輸送層33bを透過したアドレス光の一部が第1の電荷発生層33aに照射される。そして、アドレス光の照射により第1および第2の電荷発生層33a,33cにおいて電荷が発生するが、上記のように透明線状電極34aの端部34bに不透明良導電性材料35を設けないようにすれば、その端部34cを透過したアドレス光により第1および第2の電荷発生層33a,33cにおいて電荷を発生させることができるので、透明線状電極34aの配列方向(長さ方向に直交する方向)に、より広い範囲で電荷を発生させることができる。
【0056】
そして、正の電圧が印加された透明線状電極34aに対応する範囲の第1の電荷発生層33aにおいて発生した電荷のうちの正の電荷は、接地された第1の電極層31側に移動し、第1の電荷発生層33aの表示層32との界面で留まり、負の電荷は電荷発生層33aの正孔輸送層33bとの界面に留まる。また、正の電圧が印加された透明線状電極34aに対応する第2の電荷発生層33cにおいて発生した電荷のうちの正の電荷は、接地された第1の電極層31側に正孔輸送層33bを通過して移動し、上記のようにして電荷発生層33aの正孔輸送層33bとの界面に留まった負の電荷と結合して消滅し、負の電荷は透明線状電極34aに帯電された正の電荷と結合して消滅する。なお、接地された透明線状電極34aに対応する範囲の第1の電荷発生層33aおよび第2の電荷発生層33cにおいては電界が形成されないので電荷は発生しない。
【0057】
そして、上記のような作用の結果、図6(B)に示すように、第1の電荷発生層33aにおいて発生した電荷のうちの正の電荷のみが、第1の電荷発生層33aの表示層32との界面で留まることになり、正の電圧が印加された透明線状電極34aに対応する範囲の第1の電荷発生層33aと第1の電極層31との間に電界が形成され、その電界に応じて表示層32の液晶層32aの液晶分子の長軸方向が変化する。具体的には、正の電圧が印加された透明線状電極34aに対応した液晶層32aにおいては、上記のように第1の電荷発生層33aに蓄積された正の電荷により第1の電荷発生層33aと第1の電極層31との間に電界が形成されるので、液晶分子の長軸方向が矢印A方向に沿った方向となり、矢印A方向から見た場合、黒く表示される。また、接地された透明線状電極34aに対応した液晶層32aにおいては、上記のように第1および第2の電荷発生層33a,33cにおいて電荷が発生しないので電界が形成されず、液晶分子の長軸方向が不規則状態になるため光が散乱し、矢印A方向から見た場合、白く表示される。
【0058】
そして、上記のように1ラインの表示が終わった後は、ライン光源が矢印Y方向に移動するととともに、次のラインの1ライン分の画素データが電圧印加部20に入力され、上記と同様の作用により次の1ラインの白黒表示がされる。そして、全てのラインについて順次上記と同様の作用を繰り返すことにより最終的には画像表示装置10全体に画像が表示される。
【0059】
本実施形態の画像表示媒体30においては、上記のように透明線状電極34aの端部34bに不透明良導電性材料35を設けないようにしたので、表示層32において、透明線状電極34aの配列方向(長さ方向に直交する方向)に、より広い範囲で電界を形成することができ、透明線状電極34a間に対応する範囲の表示層32においても適切な画像表示を行うことができる。
【0060】
なお、上記実施形態の画像表示媒体30においては、表示層32を液晶層32aと光吸収層32bとから構成するようにしたが、これに限らず、たとえば、正に帯電した白色粉末と負に帯電した黒色粉末を含有したマイクロカプセルを分散した分散層と光吸収層とから構成するようにしてもよい。なお、表示層を上記のような構成とした場合には、表示層に形成された電界に応じて分散層に分散されたマイクロカプセル内の白色粉末および黒色粉末が移動し、上記白色粉末および黒色粉末の移動の結果、第1の電極層側に白色粉末が集まっている部分については、矢印A方向から見た際、白く表示されて見え、第1の電極層側に黒色粉末が集まっている部分については、矢印A方向から見た際、黒く表示されて見える。
【0061】
また、本画像表示装置における画像表示媒体の層構成は上記実施形態のような層構成に限らずその他の層を加えたりしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の放射線画像記録媒体の一実施形態の斜視図(A)、図1(A)に示す放射線画像記録媒体のB−B線断面図(B)
【図2】本発明の放射線画像記録媒体の作用を説明するための図
【図3】本発明の放射線画像記録媒体における読取光非透過電極のその他の構成を示す図
【図4】本発明の放射線画像記録媒体における不透明良導電性部材のその他の配置を示す図
【図5】本発明の放射線画像記録媒体のその他の実施形態を示す図
【図6】本発明の画像表示媒体の一実施形態の斜視図(A)、図6(A)に示す画像表示媒体のB−B線断面図(B)
【図7】従来の放射線画像記録媒体の作用を説明するための図
【符号の説明】
【0063】
1,11 第1の電極層
2,12 記録用光導電層
3,13 電荷輸送層
4,14 読取用光導電層
5,15 第2の電極層
5a,15a 透明線状電極
5b,15b 読取光非透過電極
6,16 蓄電部
8 電流検出アンプ
10,20 放射線画像記録媒体
17 不透明良導電性部材
18 読取光非透過材料
21 波長変換層
31 第1の電極層
32 表示層
32a 液晶層
32b 光吸収層
33 光スイッチング層
33a 第1の電荷発生層
33b 正孔輸送層
33c 第2の電荷発生層
34 第2の電極層
34a 透明線状電極
34b 端部
34c 中央部
35 不透明良導電性部材
36 電圧印加部
40 ライン光源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線画像を担持した放射線の照射を受けて電荷を発生し、該電荷を蓄積して前記画像情報を記録する電荷蓄積層と、
読取用の電磁波の照射を受けて前記蓄積された電荷と結合する電荷を発生する読取用光導電層と、
前記読取用の電磁波を透過する透明線状電極と前記読取用の電磁波を遮る線状の電磁波非透過電極とが交互に多数平行に配列された電極層とがこの順に積層された放射線画像記録媒体において、
前記透明線状電極の長さ方向に延びる端部を除き該透明線状電極の中央部に不透明良導電性部材が延設されていることを特徴とする放射線画像記録媒体。
【請求項2】
放射線画像を担持した放射線の照射を受けて電荷を発生し、該電荷を蓄積して前記画像情報を記録する電荷蓄積層と、
読取用の電磁波の照射を受けて前記蓄積された電荷と結合する電荷を発生する読取用光導電層と、
前記読取用の電磁波を透過する透明線状電極が多数平行に配列された電極層とがこの順に積層された放射線画像記録媒体において、
前記透明線状電極の長さ方向に延びる端部を除き該透明線状電極の中央部に不透明良導電性部材が延設されていることを特徴とする放射線画像記録媒体。
【請求項3】
前記透明線状電極の配列ピッチに対する前記透明線状電極の幅の比率が40%以下であることを特徴とする請求項2記載の放射線画像記録媒体。
【請求項4】
前記端部の幅が、0.5μm以上であることを特徴とする請求項1から3いずれか1項記載の放射線画像記録媒体。
【請求項5】
印加された電界に応じて光学特性が変化する表示層と、
表示用の電磁波の照射により前記電界を形成する電荷を発生する光スイッチング層と、
前記表示用の電磁波を透過する透明線状電極が多数平行に配列された電極層とがこの順に積層された画像表示媒体において、
前記透明線状電極の長さ方向に延びる端部を除き該透明線状電極の中央部に不透明良導電性部材が延設されていることを特徴とする画像表示媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−5057(P2006−5057A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−178169(P2004−178169)
【出願日】平成16年6月16日(2004.6.16)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】