説明

放射線監視装置

【課題】原子力施設などで使用される放射線監視装置は、多数の測定点の放射線レベルを中央制御室で集中監視しているため、集中監視装置の故障は全測定点の監視機能喪失につながる恐れがある。
監視装置の一部の機能に故障が発生した場合でも、故障の影響を小さくし、他の機能の健全性を保ち、信頼性の高い放射線監視装置を得る。
【解決手段】複数の放射線測定現場にそれぞれ設置された複数の放射線検出器1−1、1−2…1−Nに対応して設けられ、各放射線検出器1−1、1−2…1−Nからの測定データを基に放射線量を演算する演算部11を有し、モニタ機能を有する複数の監視モジュール2−1、2−2…2−Nと、前記複数の監視モジュール2−1、2−2…2−Nと接続され、共通機能を有する共通モジュール4とから構成し、モニタ機能と共通機能とを分離し、モニタ機能を各監視モジュール2−1、2−2…2−Nに持たせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は放射線検出器と、計算機を備えた監視モジュールとから構成され、原子力発電所などの原子力施設で用いられる放射線監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電プラントのような原子力施設においては、作業者の放射線防護の目的や、放射線に対する安全性を確認するために、施設内の多数の測定点における放射線レベル(線量)を連続的に測定し、監視制御する放射線監視装置が設けられている。
【0003】
放射線監視装置は大きく分けて、放射線センサを備え、原子力施設内の複数の放射線測定現場にそれぞれ設けられたモニタ機能を有する複数の放射線検出器と、測定現場から離れた中央制御室に設置され、前記複数の放射線検出器から送られてくる測定データを基に、放射線レベルを演算する制御用の計算機を備えた監視モジュールとから構成されている(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2001−337169号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の放射線監視装置においては、測定現場に設けられた複数の放射線検出器の測定データを、監視モジュールの一台の計算機によって受け、そこで演算処理して集中的に監視制御を行っている。
このため、監視モジュールの計算機が万一故障した場合は全ての測定現場に対する監視制御機能を喪失してしまうことになり、故障に対する信頼性が低かった。
【0005】
本発明は以上の課題を解決するためになされたものであり、監視装置の一部の機能に故障が発生した場合でも、故障の影響を小さくし、他の機能の健全性を保ち、故障に対する信頼性の高い放射線監視装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の目的を達成するために本発明の放射線監視装置は、放射線センサを備え、複数の放射線測定現場にそれぞれ設けられ、モニタ機能を有する複数の放射線検出器と、前記各放射線検出器に対応して設けられ、各放射線検出器からの測定データを受け、放射線量を演算する演算部を有する複数の監視モジュールと、前記複数の監視モジュールと接続され、共通機能を有する共通モジュールとから構成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の放射線監視装置によれば、監視装置の一部の機能に故障が発生した場合でも、故障の影響を小さくし、他の機能の健全性を保ち、故障に対する信頼性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。図1から図3は本発明の第1の実施の形態を示す図である。
【0009】
図1において、符号1−1、1−2…1−Nはそれぞれ原子力施設内の複数の異なる測定現場に設置された複数チャンネルの放射線検出器、符号2は測定現場から離れた中央制御室に設置された放射線の監視モジュール本体で、この監視モジュール本体2は前記複数チャンネルの放射線検出器1−1、1−2…1−Nにそれぞれ対応し、放射線の測定データをそれぞれケーブル3を介して受信する複数の監視モジュール2−1、2−2…2−Nと、これらの監視モジュール2−1、2−2…2−Nに共通に接続された一台の共通モジュール4と、この共通モジュール4に接続された表示装置5および同じく操作部6とから構成されている。
【0010】
共通モジュール4は、表示装置5に各チャンネルの監視情報を表示する機能と、操作部6からの運転員の操作を受付け、監視モジュール2−1、2−2…2−Nに伝えるマンマシンインターフェイス機能、および外部計算機7と接続し、計算機7への伝送インターフェイス機能を有している。
前記監視モジュール2−1、2−2…2−Nはそれぞれ外部の記録装置8および警報装置9と接続している。
【0011】
次に、本発明の放射線監視装置の作用について図2の監視モジュールの機能ブロック図を参照して説明する。
図2においては、図1に示す第1のチャンネルの場合について図示説明しているが、他のチャンネルにおいても同様の作用を行うため詳細な説明は省略する。
【0012】
監視モジュール2−1は対応するチャンネルに対する監視機能を集約したモジュールであり、放射線検出器1−1と接続し、放射線検出器1−1から放射線量の測定データをケーブル3を介して検出器インターフェイス(I/F)回路10によって受信する。
受信した測定データは放射線量演算回路11に送り、必要に応じた演算を行い、その演算結果をレコーダ出力回路12を通して外部の記録装置8へ出力して保存する。
【0013】
また、放射線量演算回路11から出力される演算結果は放射線量監視回路13に送られ、ここで演算結果があらかじめ設定された正常値の範囲内であるかどうかを判定し、その判定結果を警報出力回路14を通して警報装置9へ出力する。
警報装置9では、測定された放射線量が正常値の範囲を逸脱していた場合には音または表示などで警報を発生する。
【0014】
符号15は監視モジュール2−1に設けられた共通モジュールインターフェイス回路で、共通モジュール4と接続するためのインターフェイスであり、符号16は同じく監視モジュール2−1に設けられた計算機インターフェイスで、外部計算機7と接続するためのインターフェイスである。
【0015】
また、符号17は監視モジュール2−1に設けられた自己診断回路で、監視モジュール2−1自身の健全性を自己診断し、何らかの異常を検出した場合は警報出力回路14を通して警報装置9へ出力する。
他のチャンネルにおける監視モジュール2−2…2−Nにおいても前記した第1の監視モジュール2−1と同様な放射線監視機能をそれぞれ独立して行う。
【0016】
図3は共通モジュール4の機能ブロック図である。
共通モジュール4は、各チャンネルの監視モジュール2−1、2−2…2−Nと接続する監視モジュールインターフェイス回路18と、表示装置5を制御する表示制御回路19、操作部6を制御する操作制御回路20、外部計算機7と接続する計算機インターフェイス回路21、共通モジュール4自身を自己診断し何らかの異常が発生したとき警報装置9へ出力する自己診断回路22とから構成されている。
【0017】
このように構成された本実施の形態による放射線監視装置であると、放射線レベルを常時監視し、警報出力や記録計出力を行うモニタ機能は個々のチャンネルにおける監視モジュール2−1、2−2…2−Nとして設けられ、その他の表示装置5を制御する機能、操作部6を制御する機能、外部計算機と接続する機能などの共通機能は共通モジュール4として設けられ、各機能が分離して設けられている。
また監視モジュール2−1、2−2…2−Nは、チャンネルごとに分割され、各チャンネルの監視モジュ−ルは独自に演算部を持ち、それぞれが独立して動作する。
【0018】
これにより、従来の放射線監視装置のように演算部を全チャンネルのモニタ機能やマンマシンインターフェイス機能等で共有しないので、いずれかの監視モジュールに故障が発生した場合でも、故障の影響範囲は故障した監視モジュールの機能の範囲に限定され、他の監視モジュールの機能の健全性は保たれる。
また機能ごとにモジュール化されているため、どの機能が故障したかを調べることにより、容易に故障箇所を特定することができる。
【0019】
さらに、共通モジュール4によって全チャンネルの監視モジュール2−1、2−2…2−Nを制御することにより、運転員は従来の監視装置と同様に1つの操作部6から全てのチャンネルを操作することができる。
したがって、監視装置の一部の機能に故障が発生した場合でも、故障の影響を小さくし、他の機器の健全性を保ち、故障に対する信頼性が向上する。
【0020】
次に本発明の第2の実施の形態について図4を参照して説明する。なお以下の実施の形態の説明において、前記第1の実施の形態と同一部分には同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0021】
図4において、符号25は本実施の形態による監視モジュール本体で、複数チャンネルの監視モジュール2−1、2−2…2−N、共通モジュール4、表示装置5、操作部6、およびオンラインメンテナンススイッチ23から構成されている。
【0022】
各監視モジュール2−1、2−2…2−Nと共通モジュール4とは、それぞれがハードウェア的に分割され、監視モジュール本体2から個々に着脱が可能な構成となっている。
【0023】
オンラインメンテナンススイッチ23は、各監視モジュール2−1、2−2…2−Nおよび共通モジュール4を個々に放射線監視装置のシステムと接続切り離しを行うもので、監視および共通のモジュ−ルを個々の単位で運転モードとメンテナンスモードとに切替えることができるようになっている。
【0024】
このように構成された本実施の形態による放射線監視装置においては、オンラインメンテナンススイッチ23を切り離し、メンテナンスモードに設定したモジュールは放射線監視装置のシステムから切り離され、他の監視あるいは共通モジュールは運転継続したまま、切り離したモジュールを監視モジュール本体2から着脱できる。
【0025】
本実施の形態によれば、他の正常なモジュールを停止することなく、故障したモジュールのみを監視モジュール本体2から取り外し、修理または交換することができ、システム稼働率の向上、および平均復旧時間(MTTR)の短縮を図ることができる。
【0026】
次に本発明の第3の実施の形態について図5を参照して説明する。
図5において、符号26は本実施の形態による監視モジュール本体で、複数チャンネルの監視モジュール2−1、2−2…2−Nと予備の監視モジュール2−S、共通モジュール4と予備の共通モジュール4−Sとを有している。
【0027】
各監視モジュール2−1、2−2…2−Nは切替装置24を介して対応する各チャンネルの放射線検出器1−1、1−2…1−Nに接続され、予備の監視モジュール2−Sも切替装置24に接続されている。
【0028】
一方、共通モジュール4は同じく前記切替装置24を介して複数の監視モジュール2−1、2−2、…2−Nに接続され、予備の共通モジュール4−Sも切替装置24に接続されている。
【0029】
各監視モジュール2−1、2−2…2−N、共通モジュール4、予備の監視モジュール2−S、予備の共通モジュール4−Sは、それぞれがハードウェア的に分割され、監視モジュール本体2から個々に着脱が可能な構成となっている。
【0030】
切替装置24は監視モジュール2−1、2−2…2−Nのいずれかと予備の監視モジュール2−Sとを切替え、また共通モジュール4と予備の共通モジュール4−Sとを切替える機能を有している。
【0031】
符号5は切替装置24を介して共通モジュール4に接続された表示装置、符号6は同じく切替装置24を介して共通モジュール4に接続された操作部である。
【0032】
このように構成された本実施の形態による放射線監視装置においては、万一監視モジュール2−1、2−2…2−Nのいずれかがが故障した場合には、切替装置24によって予備の監視モジュール2−Sに切替えて運転を継続する。
【0033】
同様に万一共通モジュール4が故障した場合には、切替装置24によって予備の共通モジュール4−Sに切替えて運転を継続する。
故障したモジュールは、他のモジュールを停止することなく監視モジュール本体26から取外し、修理または交換することができる。
【0034】
本実施の形態によれば、モジュール単位でのバックアップが可能となり、従来のように監視モジュールごと多重化する必要がなく、システムの簡略化、省スペース化、省コスト化が可能となる。
【0035】
なお、前記第1から第3の実施の形態において、監視モジュール2−1、2−2…2−Nおよび共通モジュール4に電源投入時の突入電流を低減するための電流制限回路を設けるようにしてもよい。
【0036】
このようにすれば、監視モジュール2−1、2−2…2−Nまたは共通モジュール4を装着し、電源を投入する際の突入電流を低減し、放射線監視装置システム全体の電源電圧の変動を防ぎ、他のモジュールの電源電圧変動を防ぐことができる。
【0037】
前記第1の実施の形態において、監視モジュール2−1、2−2…2−Nおよび共通モジュール4に設けられた自己診断回路17、22は自己のモジュールを診断し、異常を検知するもので、例えばそれぞれ監視モジュール2−1、2−2…2−Nおよび共通モジュール4に加わる電源電圧の変動を監視する。
【0038】
この電源電圧の変動を切替装置24で監視することにより、監視モジュールのいずれかに、または共通モジュールに異常が発生した場合には自動的に予備のモジュールに切替え
ることができ、システム稼働率の向上、運転員の負荷の低減が可能となる。
【0039】
また、前記電源電圧の変動に代わって、各モジュールの消費電流の変動を監視することによっても監視モジュール2−1、2−2…2−Nおよび共通モジュール4の故障を検知することができる。
【0040】
さらに、自己診断回路17、22により各モジュールの演算部の動作異常を監視するようにすれば、より確実にモジュールの異常を検知し、予備のモジュールへの切替えが可能となり、システム稼働率の向上、運転員の負荷の低減が可能となる。
【0041】
監視モジュール2−1、2−2…2−Nおよび共通モジュール4の異常を監視する手段としては前記した手段のほかに、監視モジュール2−1、2−2…2−Nおよび共通モジュール4のノイズ量を監視する手段を用いることもできる。
さらに、放射線監視装置の外部よりモジュールの切替装置24を制御する構成とすることもできる。
【0042】
本実施の形態によれば、モジュールの異常発生時に、例えば中央制御室の主制御盤から予備のモジュールへの切替えが可能となり、システム稼働率の向上、運転員の負荷の低減が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の第1の実施の形態よる放射線監視装置の構成を示すブロック図。
【図2】本発明の第1の実施の形態よる放射線監視装置における監視モジュールの機能ブロック図。
【図3】本発明の第1の実施の形態よる放射線監視装置における共通モジュールの機能ブロック図。
【図4】本発明の第2の実施の形態よる放射線監視装置の構成を示すブロック図。
【図5】本発明の第3の実施の形態よる放射線監視装置の構成を示すブロック図。
【符号の説明】
【0044】
1−1、1−2、…1−N…放射線検出器、2、25、26…監視モジュール本体、2−1、2−2、…2−N…監視モジュール、2−S…予備の監視モジュール、3…ケーブル、4…共通モジュール、4−S…予備の共通モジュール、5…表示装置、6…操作部、7…計算機、8…記録装置、9…警報装置、10…検出器I/F回路、11…放射線量演算回路、12…レコーダ出力回路、13…放射線量監視回路、14…警報出力回路、15…共通モジュールI/F回路、16…計算機I/F回路、17…事故診断回路、18…監視モジュールI/F回路、19…表示制御回路、20…操作制御回路、21…計算機I/F回路、22…事故診断回路、23…オンラインメンテナンススイッチ、24…切替装置。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線センサを備え、複数の放射線測定現場にそれぞれ設けられ、モニタ機能を有する複数の放射線検出器と、前記各放射線検出器に対応して設けられ、各放射線検出器からの測定データを受け、放射線量を演算する演算部を有する複数の監視モジュールと、前記複数の監視モジュールと接続され、共通機能を有する共通モジュールとから構成されたことを特徴とする放射線監視装置。
【請求項2】
前記監視モジュールが、前記放射線監視装置本体から個々に着脱できることを特徴とする請求項1記載の放射線監視装置。
【請求項3】
前記複数の監視モジュールと前記共通モジュールに対してそれぞれ切替可能な予備のモジュールを設けたことを特徴とする請求項1記載の放射線監視装置。
【請求項4】
前記監視モジュールおよび前記共通モジュールに電源投入時の突入電流を低減する電流制限回路を設けたことを特徴とする請求項1記載の放射線監視装置。
【請求項5】
前記各モジュールに自己診断回路を設けたことを特徴とする請求項1記載の放射線監視装置。
【請求項6】
前記自己診断回路により異常が検出された前記モジュールを前記予備のモジュールに切替える切替装置を設けたことを特徴とする請求項3記載の放射線監視装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−3160(P2006−3160A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−178397(P2004−178397)
【出願日】平成16年6月16日(2004.6.16)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】