説明

放射線硬化性の蛍光発光性組成物

【課題】紫外線放射線への暴露によって硬化し、かつ可視波長で蛍光を発光する蛍光発光性組成物を提供する。
【解決手段】本発明は、重合性成分及び重合開始剤の混合物中に蛍光発光性ユーロピウム化合物を含む実質的に均質な流体を含む液体の放射線硬化性組成物である。ここで、重合性成分は少なくとも1つの有機のフリーラジカル重合性成分及び/又は少なくとも1つの有機のカチオン重合性成分を含み、重合開始剤は少なくとも1つのフリーラジカル重合開始剤及び/又は少なくとも1つのカチオン重合開始剤を含む。よって、これらの混合物は有機のフリーラジカル重合性成分及びフリーラジカル重合開始剤の組合せ、並びに/又は有機のカチオン重合性成分及びカチオン重合開始剤の組合せを含む。本発明の放射線硬化性組成物には接着剤、コーティングなどとしての用途がある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線放射線への暴露によって硬化し、かつ可視波長で蛍光を発光する化合物を含有する蛍光発光性組成物に関する。より詳しくは、本発明は重合性成分及び重合開始剤の混合物中に蛍光発光性ユーロピウム化合物を含む実質的に均質な流体を含む、液体の放射線硬化性組成物に関する。かかる放射線硬化性組成物には、接着剤、コーティングなどとしての用途がある。特に、これらは可視波長で蛍光を発光するので、硬化された組成物の完全性を検査することができる。
【背景技術】
【0002】
重要な表面に接着することのできる感光性接着剤組成物を製造することは、当技術分野において知られている。例えば、医療用デバイスの分野では、カテーテル界面の隣接する表面が実際に付着し合っていることを検査して確認することが重要である。コーティング組成物中に蛍光性の化合物を組み入れて、これを検査のために提供することは、当技術分野において知られている。また、基材に塗布されたコーティングの均一性を検出する方法及び欠陥を見つける方法も知られている。先行技術は、硬化されたフィルムの存在を確認し、かつそれらがコーティングで適切に被覆されていることを確実にするための手段として、UV硬化されたコーティング中への蛍光発光剤の組み込みを記載している。かかる用途でのUVコーティングの使用は、コーティングの質及び深さを測定しモニターすることに対する要求を創り出した。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
放射線硬化性組成物の硬化は光の波長に依存し、光開始剤に当たって重合性成分の重合を起こすフリーラジカルを発生させ、それにより所望のポリマーフィルムを形成させるための光の波長に依存する。当技術分野において硬化の質を検査するために使用される多くの蛍光発光剤、例えば置換オキサゾール化合物及びフルオランテンなどは、必要なフリーラジカルを発生させるために使用される光開始剤と同じスペクトル領域の放射線を吸収する。その結果として生じるフィルタリング又は遮蔽現象は、コーティング配合物又は接着剤配合物へ組み込むことができる蛍光発光剤の濃度を制限してきたが、これは、蛍光発光剤の過剰量が成分の適切な反応及び適切な硬化の深さを妨げるからである。このことが、明瞭な蛍光応答を必要とするコーティングのためのUV組成物の受容を妨げてきた。
【0004】
一般的に、少量の蛍光発光剤は、達成される硬化の深さに対して顕著な悪影響なく、従来のUV硬化性光開始剤を含有する組成物中に組み込むことができる。しかし、応答の明瞭さを増すために蛍光性材料のレベルを高めようとすると、コーティングが適切に硬化しないことがしばしば見受けられる。紫外及び可視両方のスペクトル領域の放射線への暴露は、蛍光剤分子の分解というさらなる効果を有することがあり、それによってさらにコーティングの光に対する応答を弱める。
【0005】
スペクトルの可視部分に応答する光開始剤の使用は、蛍光発光剤のフィルタリング効果を弱める1つの方法である。しかし、これらは得られるフィルム又は接着剤に赤色又は暗い黄色を与え、それ故に望ましくない。先行技術は光開始剤としてのモノ及びビスホスフィンオキシドの使用を記載しており、これはUV硬化性コーティングにおいて優れた硬化の深さを提供することができる。これらのホスフィンオキシドの成功は、近紫外/可視スペクトル領域で応答するこれらの能力及び光漂白に帰される。
【0006】
特許文献1(米国特許第6,080,450号)によって提案されている1つの解決策は、可視吸収性蛍光剤のホスフィンオキシド光開始剤との組合せを使用する。この配合剤は、0.5%未満のホスフィンオキシドを含有する。ホスフィンオキシドは、380nmにピークを有して440nmまで吸収する。硬化の深さは良好である。しかし、蛍光発光性化合物の量を増加する場合に、同じ硬化の深さを維持するためにはホスフィンオキシドの量を増加しなければならない。
【特許文献1】米国特許第6,080,450号公報
【0007】
また、ある市販製品は、ジフェニル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(CAS 75980−60−8)を青色の蛍光発光性接着剤組成物中で使用している。その可視光領域における吸収はより低いので、通常はより多くのホスフィンオキシドが必要である。このホスフィンオキシドが原因でこの液体配合物はわずかに黄色である。
【0008】
通常のケトン光開始剤は、可視領域ではなく紫外領域で光を吸収する。したがって、これらは配合剤の色を変えない。しかし、これらのケトン光開始剤は、可視光領域で吸収する青色の蛍光発光性化合物との組合せで使用するには適当でない。
【0009】
亜鉛塩などの他の無機蛍光発光性化合物は、通常のモノマー中に十分には溶解又は分散しない。ベンゾオキサジノン誘導体などの青色ではない有機蛍光発光性化合物も幅広い発光スペクトルを有するが、これらは通常の重合性モノマー中に溶解させた後では蛍光を発光しない。反応性側鎖基を有する他の有機蛍光発光性化合物は、硬化後には弱くしか蛍光を発光しない。
【0010】
現在、可視光領域で吸収しない蛍光発光性化合物は、光開始剤としてホスフィンオキシドを必要としないことが分かっている。特に、ユーロピウム化合物などの希土類金属化合物が適当であることが見出されている。これらの蛍光発光性化合物は、青い周囲環境中で検出可能な単色の赤の発光、重合性モノマー中への容易な溶解性、及び硬化された状態での非浸出性などの確かな利点を有する。ユーロピウムのキレートは、先行技術においてジケトネート及びカルボン酸錯体として周知である。カルボン酸錯体はより光及び熱安定性であることが多い。ユーロピウムのキレートは通常の重合性モノマーに溶解しやすい。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、重合性成分及び重合開始剤の混合物中に蛍光発光性ユーロピウム化合物を含む実質的に均質な流体を含む液体の放射線硬化性組成物であって、重合性成分は少なくとも1つの有機のフリーラジカル重合性成分及び/又は少なくとも1つの有機のカチオン重合性成分を含み、重合開始剤は少なくとも1つのフリーラジカル重合開始剤及び/又は少なくとも1つのカチオン重合開始剤を含み、混合物は有機のフリーラジカル重合性成分及びフリーラジカル重合開始剤の組合せ並びに/又は有機のカチオン重合性成分及びカチオン重合開始剤の組合せを含み、重合開始剤は前記重合性成分の重合を開始させるのに十分な量で存在する、液体の放射線硬化性組成物を提供する。
【0012】
本発明は、重合性成分及び重合開始剤の混合物中に蛍光発光性ユーロピウム化合物を含む実質的に均質な流体を形成する段階を含む放射線硬化性組成物を調製する方法であって、重合性成分は少なくとも1つの有機のフリーラジカル重合性成分及び/又は少なくとも1つの有機のカチオン重合性成分を含み、重合開始剤は少なくとも1つのフリーラジカル重合開始剤及び/又は少なくとも1つのカチオン重合開始剤を含み、混合物は有機のフリーラジカル重合性成分及びフリーラジカル重合開始剤の組合せ並びに/又は有機のカチオン重合性成分及びカチオン重合開始剤の組合せを含み、重合開始剤は前記重合性成分の重合を開始させるのに十分な量で存在する放射線硬化性組成物を調製する方法をも提供する。
【0013】
本発明はさらに、下記段階を含む第1の表面を第2の表面に接着させる方法を提供する。
【0014】
a)重合性成分及び重合開始剤の混合物中に蛍光発光性ユーロピウム化合物を含む実質的に均質な流体を含む放射線硬化性接着剤組成物であって、重合性成分は少なくとも1つの有機のフリーラジカル重合性成分及び/又は少なくとも1つの有機のカチオン重合性成分を含み、重合開始剤は少なくとも1つのフリーラジカル重合開始剤及び/又は少なくとも1つのカチオン重合開始剤を含み、混合物は有機のフリーラジカル重合性成分及びフリーラジカル重合開始剤の組合せ並びに/又は有機のカチオン重合性成分及びカチオン重合開始剤の組合せを含み、重合開始剤は十分な化学線に暴露したときに前記重合性成分の重合を開始させるのに十分な量で存在する放射線硬化性接着剤組成物を、第1の表面に塗布する段階。
b)第2の表面を放射線硬化性接着剤組成物と接触させる段階。
c)放射線硬化性接着剤組成物の第1の表面及び第2の表面との接触を維持しつつ、放射線硬化性接着剤組成物を十分な化学線に暴露させて前記重合性成分の重合を開始させる段階。
【0015】
本発明はさらに、下記段階を含む放射線硬化性組成物を硬化させる方法を提供する。
【0016】
a)重合性成分及び重合開始剤の混合物中に蛍光発光性ユーロピウム化合物を含む実質的に均質な流体を含む放射線硬化性組成物であって、重合性成分は少なくとも1つの有機のフリーラジカル重合性成分及び/又は少なくとも1つの有機のカチオン重合性成分を含み、重合開始剤は少なくとも1つのフリーラジカル重合開始剤及び/又は少なくとも1つのカチオン重合開始剤を含み、混合物は有機のフリーラジカル重合性成分及びフリーラジカル重合開始剤の組合せ並びに/又は有機のカチオン重合性成分及びカチオン重合開始剤の組合せを含み、重合開始剤は前記重合性成分の重合を開始させるのに十分な量で存在する放射線硬化性組成物を提供する段階。
b)放射線硬化性組成物を前記重合性成分の重合を開始させるのに十分な化学線に暴露させる段階。
【0017】
本発明は、下記段階を含むコーティングを表面に接着させる方法をも提供する。
【0018】
a)重合性成分及び重合開始剤の混合物中に蛍光発光性ユーロピウム化合物を含む実質的に均質な流体を含む放射線硬化性コーティング組成物であって、重合性成分は少なくとも1つの有機のフリーラジカル重合性成分及び/又は少なくとも1つの有機のカチオン重合性成分を含み、重合開始剤は少なくとも1つのフリーラジカル重合開始剤及び/又は少なくとも1つのカチオン重合開始剤を含み、混合物は有機のフリーラジカル重合性成分及びフリーラジカル重合開始剤の組合せ並びに/又は有機のカチオン重合性成分及びカチオン重合開始剤の組合せを含み、重合開始剤は前記重合性成分の重合を開始させるのに十分な量で存在する放射線硬化性コーティング組成物を表面に塗布する段階。
b)放射線硬化性コーティング組成物を前記重合性成分の重合を開始させるのに十分な化学線に暴露させる段階。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明は、重合性成分及び重合開始剤の混合物中に蛍光発光性ユーロピウム化合物を含む実質的に均質な流体を含む、液体の放射線硬化性組成物を提供する。混合物は有機のフリーラジカル重合性成分及びフリーラジカル重合開始剤の組合せ並びに/又は有機のカチオン重合性成分及びカチオン重合開始剤の組合せの少なくとも1つを含む。
【0020】
好ましくは、蛍光発光性ユーロピウム化合物は、少なくとも1つの有機リガンドを有するユーロピウム錯体を含む。一実施形態では、蛍光発光性ユーロピウム化合物は、少なくとも1つのβ−ジケトネートリガンド、好ましくは芳香族基を有するβ−ジケトネートリガンド、より好ましくはヘテロ環式芳香族基を有するβ−ジケトネートリガンドを有するユーロピウム錯体を含む。
【0021】
他の一実施形態では、蛍光発光性ユーロピウム化合物は、少なくとも1つのβ−ジケトネートリガンドを及び少なくとも1つのホスフィンオキシドリガンドを有するユーロピウム錯体を含む。
【0022】
一実施形態では、蛍光発光性ユーロピウム化合物は、100℃以上、好ましくは150℃以上、より好ましくは200℃以上の融点を有する。
【0023】
好ましくは、蛍光発光性ユーロピウム化合物は、重合開始剤の化学線吸収ピークとは異なる電磁スペクトルの領域に減衰ピークを有する。
【0024】
好ましくは、蛍光発光性ユーロピウム化合物は、電磁スペクトルの紫外光領域内に減衰ピークを有し、かつ電磁スペクトルの可視光領域内に発光ピークを有する。
【0025】
好ましい一実施形態では、蛍光発光性ユーロピウム化合物は260nm〜400nmに及ぶ電磁スペクトルの領域内に減衰ピークを有し、重合開始剤は260nm〜400nmに及ぶ電磁スペクトルの領域内に化学線吸収ピークを有し、但し、ユーロピウム化合物は重合開始剤の化学線吸収ピークとは異なる減衰ピークを有する。
【0026】
有用なユーロピウム化合物は非排他的に以下のものを含む:
トリス(メタクリレート)ユーロピウム(III)(CAS 79718−24−4、融点>280℃)
トリス(2,4−ペンタンジオナート)ユーロピウム(III)(CAS 14284−86−7、融点188℃)
トリス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナート)ユーロピウム(III)(CAS 15522−71−1、融点188℃)
トリス(テノイルトリフルオロアセトナート)ユーロピウム(III)(CAS 14054−87−6、融点137℃)
トリス(ベンゾイルアセトナート)モノ(フェナントロリン)ユーロピウム(III)(CAS 18130−95−5、融点182℃)
トリス(ジベンゾイルメタナート)ユーロピウム(III)(CAS 14552−07−9、融点215℃)
トリス(ジベンゾイルメタナート)モノ(1,10−フェナントロリン)ユーロピウム(III)(CAS 17904−83−5、融点188℃)
トリス(ジベンゾイルメタナート)モノ(5−アミノ1,10−フェナントロリン)ユーロピウム(III)(CAS 352546−68−0、融点165℃)
トリス(6,6,7,7,8,8,8−ヘプタフルオロ−2,2−ジメチル−3,5−オクタンジオナート)ユーロピウム(III)(CAS 17631−68−4、融点211℃)
トリス(1−(2−チエニル)−4,4,4−トリフルオロ−1,3−ブタンジオナート)ユーロピウム(III)(CAS 14054−87−6、融点137℃)
トリス(1−(2−チエニル)−4,4,4−トリフルオロ−1,3−ブタンジオナート)ビス(トリフェニルホスフィンオキシド)ユーロピウム(III)(CAS 12121−29−8、融点246℃)
トリス(3−トリフルオロメチルヒドロキシメチレン)−d−カンホラート)ユーロピウム(III)(CAS 34830−11−0、融点200℃)
トリス(3−(ヘプタフルオロプロピルヒドロキシメチレン)−d−カンホラート)ユーロピウム(III)(CAS 34788−82−4、融点160℃)
【0027】
蛍光発光性ユーロピウム化合物は、放射線硬化性組成物中に放射線硬化性組成物の重量に対して通常0.01%〜1%、より通常には0.02%〜0.2%、さらにより通常には0.03%〜0.1%の量で存在する。
【0028】
有機のフリーラジカル重合性成分は、少なくとも1つ好ましくは2つのオレフィン性(olefinically)不飽和二重結合を有するモノマー、オリゴマー又はポリマーでよい。かかるものは当技術分野において周知である。
【0029】
有用なフリーラジカル重合性成分には、アクリレート及びメタクリレートが含まれる。重合性成分としての使用に適当なものは、アクリル酸及びメタクリル酸のエーテル、エステル及び部分エステル並びに好ましくは2個〜7個の炭素原子を有する芳香族及び脂肪族ポリオール、又は好ましくは5個もしくは6個の環炭素原子を有する脂環族ポリオールである。これらのポリオールは、エチレンオキシド又はプロピレンオキシドなどのエポキシドで修飾することもできる。ポリオキシアルキレングリコールの部分エステル及びエステルも適当である。
【0030】
例えば、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、200〜2000の範囲内の平均分子量を有するポリエチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、200〜2000の範囲内の平均分子量を有するポリエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパンエトキシレートトリメタクリレート、500〜1500の範囲内の平均分子量を有するトリメチロールプロパンポリエトキシレートトリメタクリレート、500〜1500の範囲内の平均分子量を有するトリメチロールプロパンエトキシレートトリアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールジアクリレート、ジペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、トリペンタエリスリトールオクタアクリレート、ペンタエリスリトールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ジペンタエリスリトールジメタクリレート、ジペンタエリスリトールテトラメタクリレート、トリペンタエリスリトールオクタメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、ソルビトールトリアクリレート、ソルビトールテトラアクリレート、ソルビトールテトラメタクリレート、ソルビトールペンタアクリレート、ソルビトールヘキサアクリレート、オリゴエステルアクリレート、オリゴエステルメタクリレート、グリセリンジ−及びトリアクリレート、1,4−シクロヘキサンジアクリレート、100〜1500の平均分子量を有するポリエチレングリコールのビスアクリレート及びビスメタクリレート、エチレングリコールジアリルエーテル、1,1,1−トリメチロールプロパントリアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、ジアリルサクシネート並びにジアリルアジペート又は前記の化合物の混合物である。
【0031】
好ましい多官能性アクリレートオリゴマーには、これらだけには限定されないが、Interez CorporationのNovacure 3701のようなアクリレート化エポキシ、Sartomer Co.のC9505のようなアクリレート化ポリウレタン、及びHenkel Corp.のPhotomer 5007のようなアクリレート化ポリエステルが含まれる。
【0032】
好ましい光重合性ポリマーには、これらだけには限定されないが、Bomerから入手可能なアクリルアミド置換セルロースアセテートブチレート及びセルロースアセテートプロピオネート、Echo Resinsから入手可能なアクリレート化エポキシ、アクリレート化ポリエステル、アクリレート化ポリエーテル並びにアクリレート化ウレタンが含まれる。1つの好ましい光重合性ポリマーは、Bomer Specialtiesによって製造されているアクリルアミド改質セルロースアセテートブチレートポリマーであるJaylink 106Eである。
【0033】
こうしたものは、特許文献2(米国特許第4,557,951号)及び特許文献3(米国特許第4,490,516号)に記載されている。これらはホモ重合又はビニルモノマーと共重合する能力がある重合性セルロース系エステル又はエーテル生成物を記載している。それらは、2.0〜2.9の間の置換度を有し、メチロール基を含有するアクリルアミド反応剤と反応させると0.05〜0.5の置換度をもたらし、かつ0.05〜0.5のヒドロキシル置換度をもたらす。
【特許文献2】米国特許第4,557,951号公報
【特許文献3】米国特許第4,490,516号公報
【0034】
もう1つの好ましい光重合性成分は、Sartomerによって製造されているペンタアクリレートエステルであるSartomer 9041である。
【0035】
他の適当な反応性アクリレートモノマーには、単官能性及び多官能性化合物の両方が含まれる。こうしたモノマーは、一般的にアクリル酸及び/又はメタクリル酸の、1つ又は複数の一価又は多価で置換又は無置換のアルキル(C〜C18)アリールアルコール又はアラルキルアルコールとの反応生成物である。アルコール部分が極性置換基(例えば、ヒドロキシル、アミン、ハロゲン、シアノ、ヘテロ環又はシクロヘキシル基)を含有しているアクリレートが、それによって架橋又は他の分子間結合が促進されるので、好ましい。
【0036】
具体的なアクリレートには以下のものが含まれる:ヒドロキシエチルアクリレート、イソボルニルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、ブチレンステアリルアクリレート、グリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクレレート、オクチルアクリレート及びデシルアクリレート(普通は混合物で)、ポリエチレングリコールジアクリレート、トリメチルシクロヘキシルアクリレート、ベンジルアクリレート、ブチレングリコールジアクリレート、ポリブチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジ−トリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、並びにジ−ペンタエリスリトールペンタアクリレート。
【0037】
対応するメタクリレート化合物も有用である。有機のフリーラジカル重合性成分は、十分な化学線に暴露したときに重合するのに足る量で存在する。好ましい実施形態では、有機のフリーラジカル重合性成分は、全放射線硬化性組成物中に、全放射線硬化性組成物の溶媒以外の部分に対して1重量%〜99重量%、好ましくは50重量%〜99重量%の量で存在する。
【0038】
本発明の放射線硬化性組成物は、好ましくは光分解によってフリーラジカルを発生するフリーラジカル重合開始剤成分をさらに使用する。フリーラジカル発生成分の例には、それら自体が光分解的に断片化又はノリッシュI型機序によってフリーラジカルを発生する光開始剤が含まれる。これらうち、後者は、その結合において開裂して2つのラジカルを形成する能力がある炭素−カルボニル結合を有し、そのラジカルの少なくとも1つは光開始をする能力がある。
【0039】
適当な開始剤には、芳香族ケトン、例えば、ベンゾフェノン、アクリレート化ベンゾフェノン、2−エチルアントラキノン、フェナントラキノン、2−tert−ブチルアントラキノン、1,2−ベンツアントラキノン、2,3−ベンツアントラキノン、2,3−ジクロロナフトキノン、ベンジルジメチルケタール並びに他の芳香族ケトン、例えばベンゾイン、ベンゾインエーテル(例えばベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル及びベンゾインフェニルエーテル)、メチルベンゾイン、エチルベンゾイン及び他のベンゾイン類;ジフェニル−2,4,6−トリメチルベンゾイルホスフィンオキシド;ビス(ペンタフルオロフェニル)チタノセンが含まれる。
【0040】
フリーラジカル発生成分は、ノリッシュI型機序によってフリーラジカルを発生するラジカル発生開始剤及びスペクトル増感剤の組合せを含めばよい。
【0041】
かかる組合せには、Ciba GeigyからIrgacure 907として入手可能な2−メチル−1−[4−メチルチオフェニル]−2−モルホリノプロパノンの4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノンであるエチルミヒラーケトン(EMK)との組合せ;Irgacure 907の2−イソプロピルチオキサンタノン(ITX)との組合せ;ベンゾフェノンのEMKとの組合せ;ベンゾフェノンのITXとの組合せ;Ciba−GeigyからIrgacure 369として入手可能な2−ベンジル−2−N,N−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−1−ブタノンのEMKとの組合せ;Irgacure 369のITXとの組合せが含まれる。こうした事例では、ラジカル重合開始剤とスペクトル増感剤との重量比は、5:1〜1:5の範囲が好ましい。
【0042】
本発明のために有用な他のフリーラジカル重合開始剤には、2−置換−4,6−ビス(トリハロメチル)−1,3,5−トリアジンのような塩素ラジカル発生剤などのトリアジンが非排他的に含まれる。前述の置換はトリアジンに電磁放射線スペクトルの一部分に対するスペクトル感度を与える発色団によるものである。
【0043】
これらのラジカル発生剤の非排他的な例には、とりわけPCAS、Longjumeau Cedex(France)からTriazine Bとして市販されている2−(4−メトキシナフト−1−イル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン;2−(4−メチルチオフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン;2−(4−メトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン;2−(4−ジエチルアミノフェニル−1,3−ブタジエニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジンが含まれる。
【0044】
ITXなどのチオキサントン及びトリエタノールアミンなどの引き抜き可能な水素源の組合せなどのノリッシュII型機序の化合物も本発明のために有用である。
【0045】
上記で特定された化合物に加えて有用なフリーラジカル光開始剤には、ホウ酸ヘキシルトリアリール、カンファーキノン、ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン(IRGACURE 651);2−ベンジル−2−N,N−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−1−ブタノン(IRGACURE 369);及び2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(DAROCUR 1173)、並びに特許文献4(米国特許第4,820,744号、特に4欄43行〜7欄7行)に開示されている光開始剤が含まれる。
【特許文献4】米国特許第4,820,744号公報
【0046】
これらに代わる適当なUV/可視の光開始剤には、2,4,5−トリメチルベンゾイルジフェニル−ホスフィンオキシドのDAROCUR 1173中50%溶液であるDAROCUR 4265、及びIRGACURE 819、ホスフィンオキシド、フェニル−ビス(2,4,6−トリメチル)ベンゾイル;TPO(2,4,5−トリメチル(ベンゾイル)ジフェニルホスフィンオキシド);DAROCUR 1173(HMPP)(2−ヒドロキシメチル−1−フェニルプロパノン);IRGACURE 184(HCPK)(1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン);IRGACURE 651(BDK)(ベンジルジメチルケタール、又は2,2−ジメトキシル−2−フェニルアセトフェノン);ベンゾフェノン及びBM611(N−3−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド)の等量混合物;DAROCUR 1173及びITX(イソプロピルチオキサントン[2及び4異性体の混合物]の等量混合物;IRGACURE 369(2−ベンジル−2−N,N−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−1−ブタノン);IRGACURE 907(2−メチル−1−[4−メチルチオフェニル]−2−モルホリノプロパノン);IRGACURE 2959(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピル)ケトン);UVI−6990及びIRGACURE 819の等量混合物;並びにカンファーキノンが含まれる。
【0047】
本明細書の前記及び後記でIRGACURE及びDAROCURの標記によって特定される製品はCiba Specialty Chemicals Companyから入手可能であり、UVI−6990はDow Chemical Companyから入手可能である。
【0048】
フリーラジカル発生成分は、好ましくは十分な化学線に暴露したときに重合性化合物の重合を起こすのに足る量で存在する。重合開始剤は、放射線硬化性組成物の溶媒以外の部分の0.1%〜50%、好ましくは0.1%〜10%を構成することができる。
【0049】
有機のカチオン重合性成分には、Araldite GY 6010(ビスフェノールAとエピクロロヒドリンの反応生成物、CAS 25068−38−6、Huntsmanから入手可能)、Epon 58006(CAS 25068−38−6、Hexionから入手可能)、Epodil 743(フェニルグリシジルエーテルの1種)、DER 736(ポリ(プロピレングリコール)のジグリシジルエーテルの1種、CAS 41638−13−5、Ted Pellaから入手可能)、UVR−6110(脂環式エポキシドの1種、CAS 2386−87−0、Dowから入手可能)、及びUVR−6128(CAS 3130−19−8、Dowから入手可能)が非排他的に含まれる。
【0050】
有機のカチオン重合性成分は、放射線硬化性組成物の溶媒以外の部分の1%〜99%、好ましくは10%〜90%、より好ましくは30%〜70%を構成することができる。
【0051】
カチオン重合開始剤には、アリールジアゾニウム塩、ジアリールヨードニウム塩、及びVIa族元素のオニウム塩、特に正に荷電したイオウの塩が非排他的に含まれる。アニオンはテトラフルオロボレート又はヘキサフルオロホスフェートのように求核性の低いものである。
【0052】
ジアリールオニウム塩の例には、Irgacure 250(4−メチルフェニル−(4−(2−メチルプロピル)フェニル))ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、CAS 344562−80−7、Ciba Specialty Chemicals Companyから入手可能)及びジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート(CAS 58109−40−3)、及びUVI−6990(50%プロピレンカーボネート中のトリアリールスルホニウムヘキサフルオロホスフェート混合塩)が含まれる。ジアリールジアゾニウム塩の一例は、2,5−ジエトキシ−4(4−トルイルチオ)−ベンゼンジアゾニウムテトラフルオロボレートである。
【0053】
カチオン重合開始剤は、放射線硬化性組成物の溶媒以外の部分の0.1%〜10%、より好ましくは0.2%〜5%、最も好ましくは0.3%〜3%を構成することができる。
【0054】
一実施形態では、前記混合物は有機のフリーラジカル重合性成分及びフリーラジカル重合開始剤の組合せを含む。他の一実施形態では、混合物は有機のカチオン重合性成分及びカチオン重合開始剤の組合せを含む。さらに他の一実施形態では、混合物は有機のフリーラジカル重合性成分及びフリーラジカル重合開始剤の組合せ並びに有機のカチオン重合性成分及びカチオン重合開始剤の組合せの両方を含む。
【0055】
放射線硬化性組成物の特定の最終使用及び他の様々な条件に応じて、様々な任意選択の添加物を組成物に加えることができる。これらの例には、熱重合禁止剤、可塑剤、充填剤、電気伝導性粒子、熱伝導性粒子、スペーサー剤、着色料、接着促進剤、界面活性剤、増感剤、暴露インジケーターなどが含まれる。
【0056】
適当な熱重合禁止剤の例には、ヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、カテコール、β−ナフトール、モノ−t−ブチルヒドロキノン、ピロガロール、4−tert−ブチルフェノール、2,5−ジ−tert−ブチルヒドロキノン又は2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノールが含まれる。使用することができる熱重合禁止剤の適当な量は、組成物の溶媒以外の部分の重量に対して0.01重量%〜5重量%、好ましくは0.1重量%〜3重量%の範囲である。
【0057】
適当な可塑剤の例には、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ブチルフタリル、ブチルグリコレート、トリクレシルホスフェート、ポリエステル系可塑剤及び塩素化パラフィンが含まれる。可塑剤の適当な量は、放射線硬化性組成物の溶媒以外の部分の重量に対して0.1重量%〜20重量%、好ましくは1重量%〜10重量%の範囲でよい。
【0058】
本発明の放射線硬化性組成物には、接着剤又はコーティングの組成物としての用途がある。好ましくは、放射線硬化性組成物は有機の非反応性溶媒を実質的に含まない。好ましい一実施形態では、放射線硬化性組成物は、ウレタンアクリレート及び/又はウレタンメタクリレートのオリゴマー並びに/あるいはエポキシオリゴマーをアクリレートモノマー及び/又はメタクリレートモノマーとの組合せである重合性成分を有し、重合開始剤はケトン及び/又はホスフィンオキシドを含み、蛍光発光性ユーロピウム化合物は少なくとも1つの有機リガンドを有するユーロピウム錯体を含む。
【0059】
本発明の放射線硬化性組成物は、組成物の成分を実質的に均質な流体が形成されるまで混合することによって調製することができる。一使用では、放射線硬化性組成物を形成し、次いで前記重合性成分の重合を開始するのに足る化学線に暴露させる。
【0060】
他の一実施形態では、放射線硬化性組成物は表面にコーティングとして塗布され、次いで前記重合性成分の重合を開始するのに足る化学線に暴露させる。
【0061】
他の一実施形態では、接着剤の形態の放射線硬化性組成物を第1の表面に塗布し、次いで第2の表面を放射線硬化性組成物に接触させ、次いで放射線硬化性接着剤組成物の第1及び第2の表面との接触を維持しつつ、放射線硬化性接着剤組成物を前記重合性成分の重合を開始させるのに足る化学線に暴露させる。
【0062】
重合性成分の重合は、(a)紫外光、(b)可視光、(c)電子線放射線の1つ又は複数、あるいはこれらの組合せへの暴露によって開始させることができる。一実施形態では、前記重合性成分の重合は、390nm〜410nm、好ましくは400nm〜405nmの波長を有する放射線への暴露によって開始させることができる。
【0063】
他の一実施形態では、重合性成分の重合は、390nm〜410nm、好ましくは400nm〜405nmの発光波長を有するものなどの発光ダイオードによる紫外放射線、可視放射線、又はこれらの組合せへの暴露によって開始することができる。
【0064】
暴露時間の長さは当業者によって容易に決定可能であり、放射線硬化性組成物の特定の成分の選択に依存する。暴露は、通常1秒間〜60秒間、好ましくは2秒間〜30秒間、より好ましくは2秒間〜15秒間の範囲である。暴露の強度は、通常10mW/cm〜600W/cm、好ましくは50mW/cm〜450W/cm、より好ましくは100mW/cm〜300W/cmの範囲である。
【0065】
実施例1〜3:表1記載の3つの溶液を調製した。これらはホスフィンオキシド光開始剤を含有していなかった。ユーロピウムの蛍光発光性化合物を有するサンプル2及び3は、同一の暴露条件すなわち金属ハライドランプを用いて10秒間で、この化合物を含まない対照サンプル1と同じ速度で硬化した。3つの硬化された材料の物理的性質に相違は認められなかった。
【0066】
表中、UR7は二官能性ウレタンアクリレートオリゴマー(2−ヒドロキシエチルメタクリレートでキャップされたトリレン−2,4−ジイソシアネート末端を有するポリテトラメチレングリコールエーテル)であり、IBOAはイソボルニルアクリレート(CAS 5888−33−5)であり、BEAは2−(((ブチルアミノ)カルボニル)オキシ)エチルアクリレート(CAS 63225−53−6)であり、DMAはN,N−ジメチルアシルアミドであり、AAはアクリル酸(CAS 79−10−7)であり、MBFはメチルベンゾイルホルメート(CAS 15206−55−0)であり、EU1はトリス(1−(2−チエニル)−4,4,4−トリフルオロ−1,3−ブタンジオナート)ビス(トリフェニルホスフィンオキシド)ユーロピウム(III)(CAS 12121−29−8)である。
【0067】
【表1】

【0068】
実施例4〜5:表2記載の2つの溶液を調製した。これらはホスフィンオキシド光開始剤を含有していなかった。ユーロピウムの蛍光発光性化合物を有するサンプル5は、同一の暴露条件、金属ハライドランプを用いて20秒間及び450nmのLEDを用いて60秒間のそれぞれで、この化合物を含まない対照サンプル4と同じ速度で硬化した。2つの硬化された材料の物理的性質に相違は認められなかった。しかし、サンプル5では、450nmのLED暴露を用いて硬化させたときには、金属ハライドランプを用いたときよりも多くの蛍光発光が認められた。
【0069】
表中、UR3は二官能性のウレタンアクリレートオリゴマー(CAS 72121−94−9、2−ヒドロキシエチルメタクリレートでキャップされたイソホロンジイソシアネート末端を有するヘキサン二酸とジエチレングリコールとのポリエステル)であり、CQは1,7,7−トリメチル−ビシクロ(2,2,1)ヘプタン−2,3−ジオン(CAS 10373−78−1)である。
【0070】
【表2】

【0071】
実施例6〜8:表3記載の3つの溶液を調製した。これらはホスフィンオキシド光開始剤及び非ホスフィンオキシド光開始剤の組合せを含有していた。ユーロピウムの蛍光発光性化合物を有するサンプル7及び8は、同一の暴露条件すなわち金属ハライドランプを用いて5秒間で、この化合物を含まない対照サンプル6と同じ速度で硬化した。3つの硬化された材料の物理的性質に相違は認められなかった。
【0072】
表中、UR5は二官能性のウレタンアクリレートオリゴマー(CAS 69011−33−2、2−ヒドロキシエチルアクリレートでキャップされた4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)末端を有するヘキサン二酸とジエチレングリコールとのポリエステルであり)、DPは2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン(CAS 24650−42−8)であり、PPOはフェニルビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(CAS 162881−26−7)であり、GTSは(3−グリシジルオキシプロピル)トリメトキシシラン(CAS 2530−83−8)である。
【0073】
【表3】

【0074】
実施例9〜12:表4記載の4つの溶液を調製した。これらはホスフィンオキシド光開始剤及び非ホスフィンオキシド光開始剤の組合せを含有していた。これらを、金属ハライドランプを用いて同一の条件で暴露させた。最大の発光を与えた励起波長は、キュベット中の未硬化の個々のEU化合物それぞれの100ppmDMA溶液から決定した。612nmでの蛍光発光の量を、未硬化の100ppm溶液をその波長で励起して測定した。612nmでの蛍光発光の量は、下記の一覧表の溶液から円板形の硬化固体を作製してその波長で励起したときにも測定した。EU1を含む硬化円板が最も蛍光を発光した。
【0075】
表中、EU2はトリス(ジベンゾイルメタナート)モノ(5−アミノ−1,10−フェナントロリン)ユーロピウム(III)(CAS 352546−68−0)であり、EU3はトリス(ジベンゾイルメタナート)モノ(1,10−フェナントロリン)ユーロピウム(III)(CAS 17904−83−5)であり、EU4はトリス(ベンゾイルアセトナート)モノ(フェナントロリン)ユーロピウム(III)(CAS 18130−95−5)である。
【0076】
【表4】

【0077】
実施例13〜16:表5記載の4つの溶液を調製した。これらはホスフィンオキシド光開始剤及び非ホスフィンオキシド光開始剤の組合せを含有していた。これらを、金属ハライドランプを用いて同一の条件で暴露させた。612nmでの蛍光発光の量は、円板形の硬化固体を384nmの波長で励起して測定した。それぞれの円板の暴露ランプに向かって前方側及び後方側を測定した。
【0078】
表中、EHAは2−エチルヘキシル−4−ジメチレンアミノ−ベンゾエート(CAS 21245−02−3)であり、TEAはトリエタノールアミン(CAS 102−71−6)である。これらのアミンの添加は蛍光発光を安定化させた。
【0079】
【表5】

【0080】
実施例17〜22:表6記載の5つの溶液を調製した。これらはホスフィンオキシド光開始剤及び非ホスフィンオキシド光開始剤の組合せを含有していた。サンプル19及び20は青色蛍光色素を含有していたが、サンプル21及び22はユーロピウムの蛍光発光性化合物を含有していた。サンプルは同一の暴露条件、すなわち405nmのLEDを用いて25秒間で硬化させた。硬化の深さに相違が認められた。同じ添加量で、ユーロピウム化合物を有するサンプルは硬化の深さが青色色素を有するサンプルの2倍であった。
【0081】
表中、HEMAは2−ヒドロキシエチルメタクリレート(CAS 868−77−9)であり、HPKは1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(CAS 947−19−3)であり、SC5は2,5−ビス(5−tert−ブチル−ベンゾオキサゾール)チオフェン(CAS 7128−64−5)である。
【0082】
【表6】

【0083】
実施例23〜24:表7記載の2つの溶液を調製した。これらはホスフィンオキシド光開始剤を含有していなかった。サンプル23は青色蛍光色素を含有していたが、サンプル24はユーロピウムの蛍光発光性化合物を含有していた。サンプルは同一の暴露条件、すなわち金属ハライドランプを用いて30秒間で硬化させた。硬化の深さに相違が認められた。同じ添加量で、ユーロピウム化合物を有するサンプルは硬化の深さが青色色素を有するサンプルの2倍超であった。加えて、エタノール(CAS 64−17−5)中に浸漬した硬化サンプルを用いて10日間の浸出試験を行った。サンプル23からの浸出液は青い蛍光を発光したが、サンプル24からのものは蛍光を発光しなかった。
【0084】
【表7】

【0085】
実施例25〜26:表8記載の2つの溶液を調製した。これらはホスフィンオキシド光開始剤を含有していなかった。サンプル25は青色蛍光色素を含有していたが、サンプル26はユーロピウムの蛍光発光性化合物を含有していた。溶液を回路基板上に100μm(0.004インチ)の厚さになるまでスプレーした。金属ハライドランプを用いた場合、サンプル26はサンプル25の2倍の速さで硬化した。サンプルは、未暴露のコーティングを周囲空気中に7日間置くことによっても完全に硬化された。両方のコーティングが、水分硬化後に蛍光を発光した。
【0086】
表中、UR1は二官能性ウレタンアクリレートオリゴマー(CAS 37302−70−8、2−ヒドロキシエチルアクレレートでキャップされたトリレン−2,6−ジイソシアネート末端を有するポリプロピレングリコールのポリエーテル)であり、nBAはn−ブチルアセテート(CAS 123−86−4)であり、DDはジブチル錫ジラウレート(CAS 77−58−7)であり、PHDIはポリ(ヘキサメチレンジイソシアネート)(CAS 28182−81−2)であり、HMDIはヘキサメチレンジイソシアネート(CAS 822−06−0)であり、HMPは2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン(CAS 7473−98−5)である。
【0087】
【表8】

【0088】
実施例27〜28:表9記載の2つの溶液を調製した。これらはホスフィンオキシド光開始剤を含有していなかった。サンプル27は青色蛍光色素を含有していたが、サンプル28はユーロピウムの蛍光発光性化合物を含有していた。溶液を回路基板上に100μm(0.004インチ)の厚さになるまでスプレーした。金属ハライドランプを用いた場合、サンプル28はサンプル27の2倍の速さで硬化した。サンプルは120℃で30分間ベークすることによっても完全に硬化した。コーティングは両方共、ベーキング後に蛍光を発色した。表中、TBPはtert−ブチルペルオキシベンゾエート(CAS 614−45−9)である。
【0089】
【表9】

【0090】
実施例29〜30:表10記載の2つの溶液を調製した。これらはホスフィンオキシド光開始剤を含有していなかった。サンプル29は青色蛍光色素を含有していたが、サンプル30はユーロピウムの蛍光発光性化合物を含有していた。溶液を回路基板上に100μm(0.004インチ)の厚さになるまでスプレーした。金属ハライドランプを用いた場合、サンプル30はサンプル29の2倍の速さで硬化した。サンプルは未暴露のコーティングを周囲空気中に3日間置くことによっても完全に硬化した。両方のサンプルが、水分硬化後に蛍光を発光した。
【0091】
表中、SiOHはシラノール末端を有するポリジメチルシロキサンであり、SiSHはメルカプト末端を有するポリジメチルシロキサンであり、VTはビニルトリス(トリメチルシロキシ)シラン(CAS 5356−84−3)である。
【0092】
【表10】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合性成分及び重合開始剤の混合物中に蛍光発光性ユーロピウム化合物を含む実質的に均質な流体を含む液体の放射線硬化性組成物であって、
前記重合性成分は少なくとも1つの有機のフリーラジカル重合性成分及び/又は少なくとも1つの有機のカチオン重合性成分を含み、
前記重合開始剤は少なくとも1つのフリーラジカル重合開始剤及び/又は少なくとも1つのカチオン重合開始剤を含み、
前記混合物は有機のフリーラジカル重合性成分及びフリーラジカル重合開始剤の組合せ、並びに/又は有機のカチオン重合性成分及びカチオン重合開始剤の組合せを含み、
前記重合開始剤は前記重合性成分の重合を開始させるのに十分な量で存在する組成物。
【請求項2】
蛍光発光性ユーロピウム化合物が、重合開始剤の化学線吸収ピークとは異なる電磁スペクトルの領域中に減衰ピークを有する請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
蛍光発光性ユーロピウム化合物が、電磁スペクトルの紫外光領域中に減衰ピークを有し、かつ電磁スペクトルの可視光領域中に発光ピークを有する請求項1又は請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
蛍光発光性ユーロピウム化合物が、100℃以上の融点を有する請求項1〜請求項3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
有機の非反応性溶媒を実質的に含まない請求項1〜請求項4のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
重合性成分及び重合開始剤の混合物中に蛍光発光性ユーロピウム化合物を含む実質的に均質な流体を形成する段階を含む放射線硬化性組成物を調製する方法であって、
前記重合性成分は少なくとも1つの有機のフリーラジカル重合性成分及び/又は少なくとも1つの有機のカチオン重合性成分を含み、
前記重合開始剤は少なくとも1つのフリーラジカル重合開始剤及び/又は少なくとも1つのカチオン重合開始剤を含み、
前記混合物は有機のフリーラジカル重合性成分及びフリーラジカル重合開始剤の組合せ並びに/又は有機のカチオン重合性成分及びカチオン重合開始剤の組合せを含み、
前記重合開始剤を前記重合性成分の重合を開始させるのに十分な量で存在させる方法。
【請求項7】
第1の表面を第2の表面に接着させる方法であって、下記段階を含む方法。
a)重合性成分及び重合開始剤の混合物中に蛍光発光性ユーロピウム化合物を含む実質的に均質な流体を含む放射線硬化性接着剤組成物であって、
前記重合性成分は少なくとも1つの有機のフリーラジカル重合性成分及び/又は少なくとも1つの有機のカチオン重合性成分を含み、
前記重合開始剤は少なくとも1つのフリーラジカル重合開始剤及び/又は少なくとも1つのカチオン重合開始剤を含み、
前記混合物は有機のフリーラジカル重合性成分及びフリーラジカル重合開始剤の組合せ並びに/又は有機のカチオン重合性成分及びカチオン重合開始剤の組合せを含み、
前記重合開始剤は、十分な化学線に暴露したときに前記重合性成分の重合を開始させるのに十分な量で存在する放射線硬化性接着剤組成物を、第1の表面に塗布する段階。
b)第2の表面を前記放射線硬化性接着剤組成物と接触させる段階。
c)前記放射線硬化性接着剤組成物の前記第1の表面及び前記第2の表面との接触を維持しつつ、放射線硬化性接着剤組成物を十分な化学線に暴露させて前記重合性成分の重合を開始させる段階。
【請求項8】
放射線硬化性組成物を硬化させる方法であって、下記段階を含む方法。
a)重合性成分及び重合開始剤の混合物中に蛍光発光性ユーロピウム化合物を含む実質的に均質な流体を含む放射線硬化性組成物であって、
前記重合性成分は少なくとも1つの有機のフリーラジカル重合性成分及び/又は少なくとも1つの有機のカチオン重合性成分を含み、
前記重合開始剤は少なくとも1つのフリーラジカル重合開始剤及び/又は少なくとも1つのカチオン重合開始剤を含み、
前記混合物は有機のフリーラジカル重合性成分及びフリーラジカル重合開始剤の組合せ並びに/又は有機のカチオン重合性成分及びカチオン重合開始剤の組合せを含み、
前記重合開始剤は前記重合性成分の重合を開始させるのに十分な量で存在する放射線硬化性組成物を、提供する段階。
b)放射線硬化性組成物を前記重合性成分の重合を開始させるのに十分な化学線に暴露させる段階。
【請求項9】
コーティングを表面に接着させる方法であって、下記段階を含む方法。
a)重合性成分及び重合開始剤の混合物中に蛍光発光性ユーロピウム化合物を含む実質的に均質な流体を含む放射線硬化性コーティング組成物であって、
前記重合性成分は少なくとも1つの有機のフリーラジカル重合性成分及び/又は少なくとも1つの有機のカチオン重合性成分を含み、
前記重合開始剤は少なくとも1つのフリーラジカル重合開始剤及び/又は少なくとも1つのカチオン重合開始剤を含み、
前記混合物は有機のフリーラジカル重合性成分及びフリーラジカル重合開始剤の組合せ並びに/又は有機のカチオン重合性成分及びカチオン重合開始剤の組合せを含み、
前記重合開始剤は前記重合性成分の重合を開始させるのに十分な量で存在する放射線硬化性コーティング組成物を表面に塗布する段階。
b)放射線硬化性コーティング組成物を前記重合性成分の重合を開始させるのに十分な化学線に暴露させる段階。

【公開番号】特開2009−52046(P2009−52046A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−214036(P2008−214036)
【出願日】平成20年8月22日(2008.8.22)
【出願人】(508006159)ダイマックス コーポレーション (5)
【Fターム(参考)】