説明

放射線硬化性樹脂組成物およびその放射線硬化性樹脂組成物用いた積層体の製造方法

【課題】
本発明の目的は、防眩性、ハードコート性、密着性、特に耐光性試験後の基材との密着性に優れた積層体を提供することにある。
【解決手段】
トリアセチルセルロース透明基板上に塗布するための放射線硬化性樹脂組成物であって、放射線硬化性化合物(A)5〜80重量%、
環状エーテルを有するビニル化合物(B)および/またはアミド基を有するビニル化合物(C)0.1〜30重量%、
一次粒径の平均粒径が0.1〜10μmである有機微粒子(D)0.1〜30重量%、および
溶剤(E)10〜90重量%からなる放射線硬化性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テレビ、コンピューター、カーナビゲーションシステム、車載用計器盤、携帯電話等の画像表示装置として用いられる、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、ELディスプレイ、リアプロジェクションディスプレイ、CRTディスプレイ等各種ディスプレイにおいて、ディスプレイ最表面に、画像の映り込みや、光の反射を防止するために設ける積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、CRT、PDP、LCD、ELD等の画像表示装置、特にPDP、LCD、ELDなどの表面がフラットな画像表示装置には、室内照明や、太陽光の入射等による、表示画面への操作者等の影の映り込みが、画像の視認性を著しく妨げるという問題があった。
この映り込みを抑えるために、シリカ等のフィラーを含む樹脂をディスプレイの最表面に塗工し、表面に凸凹を形成することにより、表面に防眩効果を付与するという手法が特許文献1に記載されている(特許文献1:特開平7−294740号公報参照)。
しかし、シリカ粒子を利用して防眩効果を得るためには、多量のシリカを混入しなければならないため、表面が白っぽくコントラストが低い、透明性の落ちた画面(以下白ぼけという)となってしまう。更には、透明基材にトリアセチルセルロースフィルムを使用した場合では、シリカを含む塗膜に接着性改善の目的でアルカリ浸漬による鹸化処理を行うと、得られたトリアセチルセルロースフィルムのヘイズ値が大きくなり、コントラスト、透明性の落ちたフィルムとなる。この原因としては、樹脂組成物と無機フィラーの接着性が低く、界面がアルカリに侵されるためと考えられる。
【0003】
また、表面に有機ポリマー微粒子を混入したハードコート層を形成するという方法で、表面に防眩効果を付与するという手法が特許文献2に記載されており(特許文献2:特開平6−18706号公報参照)、シリカ粒子を使用した場合と比較して比較的少ない使用量にて防眩性が発現されるため、白ぼけが少ないという利点がある。更には、有機ポリマー微粒子はシリカ微粒子等の無機フィラーと比較し、樹脂組成物と有機ポリマー微粒子の接着性が良く、鹸化処理においても界面がアルカリに侵されにくい。しかしながら、表面に有機ポリマー微粒子を混入したハードコート層は、有機ポリマー微粒子の平均粒径が大きければハードコート層の膜厚が厚くなりハードコート性は出やすいが、平均粒径が小さくなるとハードコート層の膜厚が薄くなりハードコート性(特に鉛筆硬度)は出にくくなる。
【0004】
ハードコート層の膜厚が薄くてもハードコート性を確保するために、樹脂組成物としてエチレン性不飽和二重結合を多数有する電離放射線硬化型樹脂を硬化させたものを使用する事が多い。しかしながら、これらエチレン性不飽和二重結合を多数有する電離放射線硬化型樹脂は、硬化収縮が大きく、基材との密着性が悪くなる傾向が有る。更に、防眩フィルムの信頼性試験として、耐光性試験を実施した後に基材との密着性が更に低下するという問題がある。これは、耐光性試験にて照射される紫外線にてハードコート層の硬化が更に進み、硬化収縮が増大し密着性が低下したと考えられる。
【0005】
トリアセチルセルロース透明基板への密着性を向上させる目的で、トリアセチルセルロース透明基材を溶解する溶剤を用いた塗布液から形成された防眩性フィルムが特許文献3および4に記載されている。(特許文献3:特開平11−209717号公報、特許文献4:特開2002−169001号公報参照)
しかしながら、単にトリアセチルセルロース透明基板を溶解する溶剤を使用しただけでは、塗工後の密着性は良好となるが耐光性試験後の密着性は十分とはいえず問題となる。
【特許文献1】特開平7−294740号公報
【特許文献2】特開平6−18706号公報
【特許文献3】特開平11−209717号公報
【特許文献4】特開2002−169001号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、防眩性、ハードコート性、密着性、特に耐光性試験後の基材との密着性に優れた積層体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、トリアセチルセルロース透明基板上に、特定の組み合わせの放射線硬化性樹脂、環状エーテルを有するビニル化合物および/またはアミド基を有するビニル化合物、有機微粒子、光開始剤および有機溶剤よりなる、放射線硬化性樹脂組成物を硬化させてなる微細凸凹形状が形成されている防眩層が、これらの欠点を解消し得ることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
即ち、本発明は、トリアセチルセルロース透明基板上に塗布するための放射線硬化性樹脂組成物であって、放射線硬化性化合物(A)5〜80重量%、
環状エーテルを有するビニル化合物(B)および/またはアミド基を有するビニル化合物(C)0.1〜30重量%、
一次粒径の平均粒径が0.1〜10μmである有機微粒子(D)0.1〜30重量%、および
溶剤(E)10〜90重量%からなる放射線硬化性樹脂組成物に関する。
【0009】
また、本発明は、トリアセチルセルロース透明基板上に塗布するための放射線硬化性樹脂組成物であって、
放射線硬化性化合物(A)5〜80重量%、
環状エーテルを有するビニル化合物(B)および/またはアミド基を有するビニル化合物(C)0.1〜30重量%、
一次粒径の平均粒径が0.1〜10μmである有機微粒子(D)0.1〜30重量%、
トリアセチルセルロース透明基板溶解性溶剤(E‘)0.1〜80重量%、および
トリアセチルセルロース透明基板非溶解性溶剤(E“)10〜89.9重量%からなる放射線硬化性樹脂組成物に関する。
【0010】
また、本発明は、放射線硬化性化合物(A)が、トリアセチルセルロース透明基板溶解性溶剤(E‘)に、不揮発分60重量%になるように溶解したときの粘度が、EL型回転粘度計で、25℃の液体温度にて測定したときに、5〜20mPa・sである上記放射線硬化性樹脂組成物に関する。
【0011】
本発明は、さらに、二次粒径の平均粒径が0.5〜3μmである無機フィラー(F)を含む上記放射線硬化性樹脂組成物に関する。
【0012】
また、本発明は、上記放射線硬化性樹脂組成物をトリアセチルセルロース透明基板に塗布してなる積層体に関する。
【0013】
また、本発明は、環状エーテルを有するビニル化合物(B)が、テトラヒドロフルフリル環を有するビニル化合物またはジオキソラン環を有するビニル化合物である上記積層体に関する。
【0014】
また、本発明は、アミド基を有するビニル化合物(C)が、N−ビニルホルムアミドである上記積層体に関する。
【0015】
また、本発明は、放射線硬化性樹脂組成物層の厚みが、1〜20μmである上記積層体に関する。
【0016】
また、本発明は、上記放射線硬化性樹脂組成物をトリアセチルセルロース透明基板に塗工後、放射線照射することを特徴とする上記積層体の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0017】
本発明の放射線硬化性樹脂組成物は、トリアセチルセルロース透明基板上に塗布するため、特定の組み合わせの放射線硬化性樹脂、環状エーテルを有するビニル化合物および/またはアミド基を有するビニル化合物、有機微粒子、光開始剤および有機溶剤よりなるものである。また、トリアセチルセルロース透明基板上で前記放射線硬化性樹脂組成物を硬化させてなる積層体は、微細凸凹形状を形成されている防眩層を成し、耐光試験後の密着性に優れ、白ぼけが少なく、耐擦傷性、鉛筆硬度等の塗膜硬度に優れた防眩性フィルムとして用いることができる。このような特性に優れた防眩性フィルムは、従来両立し難かった。防眩性、ハードコート性、密着性、特に耐光性試験後の基材との密着性に優れるという顕著な効果を奏する。

【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に本発明の好ましい実施形態を説明する。
【0019】
本発明におけるトリアセチルセルロース透明基板としては、トリアセチルセルロースを溶剤に溶解することで調整されたトリアセチルセルロースドープを単層流延、複数層共流延の何れかの流延方法により流延することにより作成されたトリアセチルセルロースフィルムを用いることが好ましい。トリアセチルセルロース透明基板の厚さは、適宜に決定しうるが、一般には強度や取り扱い等の作業性、薄層性等の点より10〜500μm程度である。特に20〜300μmが好ましく、30〜200μmがより好ましい。
本発明における放射線硬化性化合物(A)は、スチールウールラビング試験による耐擦傷性(以下耐擦傷性という)、鉛筆引っ掻き試験による硬度(以下鉛筆硬度という)に代表されるハードコート性、クロスカットセロハンテープ剥離試験によるトリアセチルセルロース透明基材との密着性(以下密着性という)、更には耐光性試験実施後のベースフィルム基材との密着性(以下耐光試験後の密着性という)等の防眩フィルムの要求物性を満足させるために使用される。
【0020】
本発明の放射線硬化性化合物(A)としては、脂肪族及び/又は脂環族イソシアネート化合物由来のウレタン結合を有してなる(メタ)アクリロイル基が少なくとも6個の多官能ウレタン(メタ)アクリレート化合物、脂肪族炭化水素系(メタ)アクリレート化合物、エポキシ(メタ)アクリレート化合物、ポリエステル(メタ)アクリレート化合物、ポリエーテル(メタ)アクリレート化合物等が挙げられる。また、これらは、1種類でも、2種類以上を混合して使用することもできる。
【0021】
前記脂肪族及び/又は脂環族イソシアネート化合物由来のウレタン結合を有してなる(メタ)アクリル基が少なくとも6個の多官能ウレタン(メタ)アクリレート化合物は、脂肪族及び/又は脂環族イソシアネート化合物と、イソシアネート基と反応しうる活性水素(例えば、カルボキシル基、水酸基、あるいはアミノ基の水素)を有する化合物とを反応させたウレタン結合を有する化合物、
さらに、脂肪族及び/又は脂環族イソシアネート化合物、および/または、前記活性水素を有する化合物が、(メタ)アクリル基を持つことに化合物(A)となりうる。また、イソシアネート化合物と活性水素を有する化合物とを反応させたのち、(メタ)アクリル変性することによっても、化合物(A)となりうる。
例えば、水酸基含有(メタ)アクリレート化合物と脂肪族及び/又は脂環族イソシアネート化合物の反応生成物であって、(メタ)アクリル基を少なくとも6個有する化合物である。また、ポリオール化合物に前記イソシアネート化合物を反応させ、得られた生成物に更に水酸基含有(メタ)アクリレート化合物を反応させた生成物であって、(メタ)アクリル基を少なくとも6個有する化合物である。
【0022】
水酸基含有(メタ)アクリレート化合物としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセリン(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等が挙げられ、これらは単独でも複数組み合わせて使用することもできる。
【0023】
脂肪族及び/又は脂環族イソシアネート化合物としては、ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4’−メチレンビスシクロヘキシルイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,3−(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、ノルボルネンジイソシアネート等、およびこれらのビュレット化物、ヌレート化物、アダクト化物等の重合物を挙げることができる。これらは、これらは単独でも複数組み合わせて使用することもできる。特に好ましくは、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−メチレンビスシクロヘキシルイソシアネートおよびこれらのヌレート化物が挙げられる。
なお芳香族イソシアネート化合物は、防眩フィルムの信頼性試験、特に耐光性試験においてハードコート層の黄変が多く好ましくはない。
【0024】
ポリオール化合物としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、カルボン酸含有ポリオール等の脂肪族多価アルコール、各種ビスフェノールのエチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイド反応物、ビスフェノールフルオレンのエチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイド反応物等の芳香族多価アルコール等が挙げられる。更には、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリアクリルポリオール等も使用される。
【0025】
また、これら多官能ウレタン(メタ)アクリレート化合物の(メタ)アクリル基の数としては、少なくとも6個あることが好ましい。(メタ)アクリル基の数が5個以下では、耐擦傷性、鉛筆硬度等のハードコート性が不充分となる。
【0026】
本発明における脂肪族炭化水素系(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、カプロラクトン変性トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0027】
その他の(メタ)アクリレート化合物としては、例えばエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ジシクロヘキサンジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエツレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、3−メチルペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリシクロデカンジメチロールジアクリレート、ポリウレタンポリアクリレート、ポリエステルポリアクリレート等の多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化合物;
ポリエステルポリ(メタ)アクリレート、ポリエーテルポリ(メタ)アクリレート、ポリアクリルポリ(メタ)アクリレート、ポリアルキッドポリ(メタ)アクリレート、ポリエポキシポリ(メタ)アクリレート、ポリスピロアセタールポリ(メタ)アクリレート、ポリブタジエンポリ(メタ)アクリレート、ポリチオールポリエンポリ(メタ)アクリレート、ポリシリコンポリ(メタ)アクリレート等の多官能化合物の(メタ)アクリレート化合物;
1,4−ジビニルベンゼン、4−ビニル安息香酸−2−アクリロイルエチルエステル、1,4−ジビニルシクロヘキサン等のビニルベンゼン及びその誘導体;
ジビニルスルホン等のビニルスルホン化合物;
メチルビスアクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド化合物;
ビス(4−メタクリロイルチオフェニル)スルフィド、ビスフェノキシエタノールフルオレンジアクリレート、ビニルナフタレン、ビニルフェニルスルフィド、4−メタクリオキシフェニル−4’−メトキシフェニルチオエーテル、テトラビロモビスフェノールAジエポキシアクリレート等のいわゆる高屈折率モノマー等が挙げられる。
【0028】
これら放射線硬化性化合物(A)の配合量は、放射線硬化性樹脂組成物全体量に対して、5〜80重量%が好ましく、10〜60重量%がさらに好ましい。5重量%未満ではハードコート性等の十分な塗膜強度が得られず、80重量%を超えると後記環状エーテルを有するビニル化合物(B)および/またはアミド基を有するビニル化合物(C)、有機微粒子(D)の含有量が少なくなり、十分な密着性、および防眩性が得られず問題となる。
【0029】
本発明における環状エーテルを有するビニル化合物(B)および/またはアミド基を有するビニル化合物(C)は、耐光性試験後の密着性を付与するものである。
これら環状エーテルを有するビニル化合物(B)および/またはアミド基を有するビニル化合物(C)の添加量は、放射線硬化性樹脂組成物全体量に対して、0.1〜30重量%が好ましく、1〜20重量%がさらに好ましい。0.1重量%未満では、耐光性試験後の密着性が不足し、30重量%超過では、ハードコート性が不足し、問題となる。
【0030】
本発明における環状エーテルを有するビニル化合物(B)は、例えば、下記式(1)で表されるテトラヒドロフラン環を持つモノマー、および式(2)〜(4)で表されるジオキソラン環を持つモノマー、グリシジル(メタ)アクリレート、オキセタニルメチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロピラニル(メタ)アクリレート、環状トリメチロールプロパンフォルマールアクリレート等と、それぞれのエチレンオキシド変性(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらのうち、式(1)で表されるテトラヒドロフラン骨格をもつモノマーが好ましい。
【0031】
(式1)
【化1】

【0032】
(式2)
【化2】

【0033】
(式3)
【化3】

【0034】
(式4)
【化4】

【0035】
これらのうち、市販品としては、ビスコート#150、ビスコート#150D、MEDOL10、MIBDOL10、CHDOL10(以上、大阪有機化学工業(株)製)等が挙げられる。
【0036】
本発明における、アミド基を有するビニル化合物(C)は、例えば、N−ビニルホルムアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−シアノ(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニル−ε−カプロラクタム等のN−ビニルラクタム等が挙げられる。
【0037】
本発明における、平均粒径が0.1〜10μmの有機微粒子(D)は、表面に凸凹を形成して防眩性を付与するものであり、例えばスチレンビーズ、アクリルビーズ、スチレン−アクリルビーズ、メラミンビーズ、ベンゾグアナミンビーズ、ポリカーボネートビーズ、ポリエチレンビーズ、シリコーンビーズ、フッ素ビーズ、フッ化ビニリデンビーズ、塩ビビーズ、エポキシビーズ、ナイロンビーズ、フェノールビーズ、ポリウレタンビーズ等が挙げられる。これらの有機微粒子(D)の粒径は、平均粒径が3〜10μmであることが好ましく、3〜6μmであることがより好ましい。防眩層には、膜厚の2分の1よりも大きい粒径の粒子が、該粒子全体の40〜100%を占める有機微粒子(D)を用いることが好ましい。平均粒径が0.1μm未満では光を散乱する効果が不足するため、得られる防眩性が不十分であり、10μmを超えると防眩層内部での光の散乱効果が減少するため、映像のギラツキを生じやすい。粒子の平均粒径は、例えば、電気抵抗法で測定できる。
【0038】
有機微粒子(D)は水及び有機溶剤に不溶のものが好ましく、形状は不定形でも球状でもよい。また、これら有機微粒子(D)は、表面凸凹をコントロールするために2種類以上の粒子を組み合わせてもよい。有機微粒子(D)の添加量は、放射線硬化性樹脂組成物全体量に対して、0.1〜30重量%が好ましく、1〜10重量%がさらに好ましい。0.1重量%未満では十分な防眩性が得られず、30重量%を超えると防眩性は良好だが白ぼけが出やすくなり好ましくはない。

【0039】
本発明における溶剤(E)としては、例えばジブチルエーテル、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、プロピレンオキシド、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、1,3,5−トリオキサン、テトラヒドロフラン、アニソール、フェネトール等のエーテル類;
アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン等のケトン類;
蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸ペンチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、γ−プチロラクトン等のエステル類;
その他、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、シクロヘキシルアルコール、酢酸イソブチル、メチルイソブチルケトン、2−オクタノン、2−ペンタノン、2−ヘキサノン、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコールイソプロピルエーテル、エチレングリコールブチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、2−メトキシ酢酸メチル、2−エトキシ酢酸メチル、2−エトキシ酢酸エチル、2−エトキシプロピオン酸エチル、2−メトキシエタノール、2−プロポキシエタノール、2−ブトキシエタノール、1,2−ジアセトキシアセトン、アセチルアセトン、ジアセトンアルコール、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル等が挙げられる。これらは1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。これら溶剤(E)の添加量は、放射線硬化性樹脂組成物全体量に対して、10〜90重量%が好ましく、20〜80重量%がさらに好ましい。
【0040】
本発明におけるトリアセチルセルロース透明基材を溶解する有機溶剤(E‘)としては、例えば、ジブチルエーテル、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、プロピレンオキシド、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、1,3,5−トリオキサン、テトラヒドロフラン、アニソール、フェネトール等のエーテル類;
アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン等のケトン類;
蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸ペンチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、γ−プチロラクトン等のエステル類;
その他、2−メトキシ酢酸メチル、2−エトキシ酢酸メチル、2−エトキシ酢酸エチル、2−エトキシプロピオン酸エチル、2−メトキシエタノール、2−プロポキシエタノール、2−ブトキシエタノール、1,2−ジアセトキシアセトン、アセチルアセトン、ジアセトンアルコール、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル等が挙げられる。これらは1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0041】
トリアセチルセルロース透明基材を溶解しない有機溶剤(E‘’)としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、シクロヘキシルアルコール、酢酸イソブチル、メチルイソブチルケトン、2−オクタノン、2−ペンタノン、2−ヘキサノン、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコールイソプロピルエーテル、エチレングリコールブチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等が挙げられるがこれらに限定するものではない。これらは1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0042】
トリアセチルセルロース透明基材を溶解する有機溶剤(E‘)の添加量としては、放射線硬化性樹脂組成物全体量に対して、0.1〜80重量%になるように使用量を調整することが好ましい。更に好ましくは、1〜50重量%である。0.1重量%未満では、耐光性試験後の密着性が不足することがあり、80重量%超過では、防眩性、ハードコート性の面内バラツキが問題となることがある。
トリアセチルセルロース透明基材を溶解しない有機溶剤(E‘’)の添加量は、放射線硬化性樹脂組成物全体量に対して、10〜89.9重量%が好ましい。
【0043】
放射線硬化性化合物(A)を、トリアセチルセルロース透明基材溶解性溶剤(E‘)に不揮発分60重量%で溶解したときの粘度が、EL型回転粘度計で25℃の液体温度にて測定したときに、5〜20mPa・sである場合に、ベースフィルム基材に放射線硬化性化合物(A)が前記溶剤(E’)と共にしみ込み易くなり、よりベースフィルム基材に対する密着性が向上するため、耐光性試験後の密着性も良好となる。
当該粘度が、5mPa・s未満ではトリアセチルセルロース透明基材に対するしみ込みが多くなり、防眩層の膜厚が薄くなりすぎるため十分なハードコート性が得られない。また、20mPa・sを超えるとトリアセチルセルロース透明基材に対するしみ込みが少なく、耐光性試験後の密着性が不十分となる。
【0044】
放射線硬化性化合物(A)の粘度を特定する際に使用する有機溶剤(E‘)は、(A)〜(F)を含んでなる放射線硬化性組成物となったとき使用される有機溶剤(E’)そのものを用いる。従って、放射線硬化性樹脂組成物とするための有機溶剤(E‘)が混合溶剤である場合は、粘度測定は、当該混合溶剤で測定される。
【0045】
本発明における無機フィラー(F)としては、例えば、二酸化ケイ素粒子、二酸チタン粒子、酸化ジルコニウム粒子、酸化アルミニウム粒子等が挙げられる。これらの無機フィラー(F)の二次粒径の平均粒径は、0.5〜3.0μmであることが好ましく、0.5〜2.0μmであることがより好ましい。また、これらの無機フィラー(F)の形状は不定形でも球状でもよい。また、これら無機フィラー(F)は、2種類以上の粒子を組み合わせてもよい。また、これらの無機フィラー(F)の添加量は、放射線硬化性樹脂組成物全体量に対して0.1〜30重量%が好ましく、1〜20重量%がさらに好ましい。
【0046】
本発明の組成物を放射線で硬化させる場合には、通常、光重合開始剤を添加する。光重合開始剤の種類は特に制限はなく、例えばアセトフェノン類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、アントアキノン類、ホスフィンオキシド類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類等が挙げられる。具体的には、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−アミノアントラキノン、2,4,6−トリメチルベンゾインジフェニルホスフィンオキシド、ミヒラーズケトン、N,N−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、チオキサン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン等が挙げられ、これらの光重合開始剤は2種以上を適宜併用することもできる。これらの光重合開始剤の使用量は、放射線硬化性化合物(A)に対して、0.1〜20重量%であり、好ましくは1〜10重量%である。
【0047】
本発明で使用される紫外線硬化型組成物には、更に光増感剤、レベリング剤、チキソトロピー剤等を含有する事ができる。
光増感剤としては、例えばn−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、ポリ−n−ブリルホスフィン等が挙げられ、これらの光増感剤は2種以上を適宜併用することもできる。
【0048】
本発明の積層体は、トリアセチルセルロース透明基板上に、(A)〜(F)を含んで成る放射線硬化性樹脂組成物を塗布後、放射線硬化させてなる。
【0049】
本発明における放射線硬化性樹脂組成物をトリアセチルセルロース透明基板上塗布して積層体を形成する方法としては、放射線硬化性樹脂組成物をバーコーティング、ブレードコーティング、スピンコーティング、リバースコーティング、ダイティング、スプレーコーティング、ロールコーティング、グラビアコーティング、マイクログラビアコーティング、リップコーティング、エアーナイフコーティング、ディッピング法等の塗工方法でベースフィルム基材に塗工した後、必要に応じ溶剤を乾燥させ、更に放射線を照射することにより、塗工した放射線硬化性樹脂組成物を架橋硬化させることによって形成される。
放射線硬化としては、紫外線硬化、電子線硬化、可視光硬化、X線硬化、γ線硬化等、活性エネルギー線硬化等が挙げられる。
例えば、前記紫外線としては、キセノンランプ、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、カーボンアーク灯、タングステンランプ等の光源から発せられる紫外線を用いることができる。このようにして形成される防眩層の膜厚はハードコート性を保有していれば特に限定されず、使用させる有機微粒子(D)の粒径により適宜決定されるが、通常1〜20μm、好ましくは2〜5μmの厚みとする。
【0050】
トリアセチルセルロース等の透明基板上に、本発明における放射線硬化性樹脂組成物を硬化させてなる防眩層の微細凸凹形状の表面に、画面表示のコントラストや白ぼけを更に改善する方法として、前記防止防眩層の屈折率よりも低い屈折率の低屈折率層を設けることもできる。これら低屈折率層には例えばポリシロキサン構造を有するものが用いられ、好ましくはフッ素含有ポリシロキサン構造を有するものである。このような低屈折率層は、たとえばフッ素含有アルコキシシランにより形成することができる。低屈折率層の厚さは0.05〜0.15μmとするのが好ましい。低屈折率層は適宜な方法にて防眩層の表面に形成することができる。形成方法としては、積層体の形成と同様の方法を使用できる。
【0051】
このようにして、トリアセチルセルロース透明基材上に表面に微細な凹凸を有する防眩層を形成することにより作成された本発明の積層体は、全光線透過率85%以上、かつ、ヘイズ値3.0〜35.0%の光学特性を有していることが好ましく、また、全光線透過率90%以上、ヘイズ値4.0〜20.0%の光学特性を有していることが更に好ましい。全光線透過率は85%を下回ると、コントラストの高い画像表示が出来なくなる。ヘイズ値は3.0%未満となると、充分な防眩性が得られず、また35.0%を超えると、白ぼけが出やすくなるため好ましくない。
【0052】
また、前記積層体である防眩性フィルムのトリアセチルセルロース透明基材には、光学素子を接着することができる。光学素子としては、偏光板、位相差板、楕円偏光板、光学補償付き偏光板等が挙げられ、これらは積層体として用いることができる。光学素子の接着は、接着に応じてアクリル系、ゴム系、シリコーン系等の粘着剤やホットメルト系接着剤などの透明性や耐候性等に優れる適宜な接着層を用いることができる。
【0053】
偏光板としては、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムにヨウ素や染料等を吸着させて延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等の偏向フィルムが挙げられる。位相差板としては、前記透明基板で例示したポリマーフィルムの一軸または二軸延伸フィルムや液晶ポリマーフィルム等が挙げられる。位相差板は、2層以上の延伸フィルムから形成されていてもよい。楕円偏光板、光学補償付き偏光板は、偏光板と位相差板を積層することにより形成しうる。楕円偏光板、光学補償付き偏光板は、偏光板側の面に防眩層を形成している。

【実施例】
【0054】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら具体例のみに限定されるものではない。なお、例中[部][%]とあるのは、それぞれ[重量部][重量%]を示す。
[配合例1]
脂肪族イソシアネート由来のウレタン結合を有してなるアクリロイル基の数が6個のウレタンアクリレート化合物である紫光UV7605B(日本合成化学工業社製)90部および、ビスコート#150D(大阪有機化学工業株式会社製)10部を、トルエン58.8部および、1,3−ジオキソラン14.7部に溶解し、光重合開始剤(イルガキュア184,チバガイギー社製)を5部加えた。この溶液に平均粒径3.5μm、屈折率1.525の架橋ポリスチレン−メチルメタアクリレート粒子(XX−12AE、積水化学社製)5.2部を加え、高速ディスパーにて4000rpmで15分撹拌し、放射線硬化性樹脂組成物(1)を調製した。また、紫光UV7605B100部を、1,3−ジオキソラン66.7部に溶解し不揮発分60%の溶液を調製し、溶液の温度25℃での粘度をEL型回転粘度計にて測定したところ15mPa・sであった。
【0055】
[配合例2]
配合例1で使用した紫光UV7605B(日本合成化学工業社製)95部および、ビームセット770(荒川化学工業株式会社製)5部を、トルエン58.8部および、1,3−ジオキソラン14.7部に溶解し、光重合開始剤(イルガキュア184,チバガイギー社製)を5部加えた。この溶液に平均粒径3.5μm、屈折率1.525の架橋ポリスチレン−メチルメタアクリレート粒子(XX−12AE、積水化学社製)5.2部を加え、高速ディスパーにて4000rpmで15分撹拌し、放射線硬化性樹脂組成物(2)を調製した。
【0056】
[配合例3]
配合例1で使用した紫光UV7605B(日本合成化学工業社製)90部および、ビスコート#150D(大阪有機化学工業株式会社製)10部を、トルエン64.1部および、1,3−ジオキソラン16.0部に溶解し、光重合開始剤(イルガキュア184,チバガイギー社製)を5部加えた。この溶液に平均粒径3.5μm、屈折率1.525の架橋ポリスチレン−メチルメタアクリレート粒子(XX−12AE、積水化学社製)5.2部および、2次粒子の平均粒径1.4μのシリカ粒子10部を加え、高速ディスパーにて4000rpmで15分撹拌し、放射線硬化性樹脂組成物(3)を調製した。
【0057】
[配合例4]
配合例1で使用した紫光UV7605B(日本合成化学工業社製)95部および、ビームセット770(荒川化学工業株式会社製)5部を、トルエン64.1部および、1,3−ジオキソラン16.0部に溶解し、光重合開始剤(イルガキュア184,チバガイギー社製)を5部加えた。この溶液に平均粒径3.5μm、屈折率1.525の架橋ポリスチレン−メチルメタアクリレート粒子(XX−12AE、積水化学社製)5.2部および、2次粒子の平均粒径1.4μのシリカ粒子10部を加え、高速ディスパーにて4000rpmで15分撹拌し、放射線硬化性樹脂組成物(4)を調製した。
【0058】
[配合例5]
配合例1で使用した紫光UV7605B(日本合成化学工業社製)95部および、ビームセット770(荒川化学工業株式会社製)5部を、トルエン80.1部に溶解し、光重合開始剤(イルガキュア184,チバガイギー社製)を5部加えた。この溶液に平均粒径3.5μm、屈折率1.525の架橋ポリスチレン−メチルメタアクリレート粒子(XX−12AE、積水化学社製)5.2部および、2次粒子の平均粒径1.4μのシリカ粒子10部を加え、高速ディスパーにて4000rpmで15分撹拌し、放射線硬化性樹脂組成物(5)を調製した。
【0059】
[配合例6]
配合例1で使用した、紫光UV7605B(日本合成化学工業社製)100部を、トルエン58.8部および、1,3−ジオキソラン14.7部に溶解し、光重合開始剤(イルガキュア184,チバガイギー社製)を5部加えた。この溶液に平均粒径3.5μm、屈折率1.525の架橋ポリスチレン−メチルメタアクリレート粒子(XX−12AE、積水化学社製)5.2部を加え、高速ディスパーにて4000rpmで15分撹拌し、放射線硬化性樹脂組成物(6)を調製した。
【0060】
[配合例7]
脂肪族イソシアネート由来のウレタン結合を有する、アクリロイル基の数が7個のウレタンアクリレート化合物である紫光UV6300B(日本合成化学工業社製)90部および、ビスコート#150D(大阪有機化学工業株式会社製)10部を、トルエン58.8部および、1,3−ジオキソラン14.7部に溶解し、光重合開始剤(イルガキュア184,チバガイギー社製)を5部加えた。この溶液に平均粒径3.5μm、屈折率1.525の架橋ポリスチレン−メチルメタアクリレート粒子(XX−12AE、積水化学社製)5.2部を加え、高速ディスパーにて4000rpmで15分撹拌し防眩塗布液(7)を調製した。
また、紫光UV6300B100部を、1,3−ジオキソラン66.7部に溶解し、不揮発分60%の溶液を調整し、溶液の温度25℃での粘度を、EL型回転粘度計にて測定したところ、33mPa・sであった。
なお、配合例1〜7をまとめたものを表1に示した。
【0061】
【表1】

【0062】
[実施例1]
厚さ80μmのトリアセチルセルロースフィルム(富士写真フィルム社製)に配合例1の防眩塗布液(1)をバーコーターを用いて塗布し、70℃−1分で乾燥後させた。その後窒素パージによって0.3%以下酸素濃度雰囲気にて、高圧水銀ランプを用いて紫外線を照射量400mJ/cm2で照射して塗布層を硬化させ、厚さ4.5μmの防眩層を形成した。得られた防眩フィルムの評価結果を表2に示した。
【0063】
[実施例2〜5]
実施例1と同様に防眩塗布液(2)〜(5)を塗工硬化させ、防眩層を形成した。得られた防眩フィルムの評価結果を表2に示した。
[比較例1〜2]
実施例1と同様に防眩塗布液(6)〜(7)を塗工硬化させ、防眩層を形成した。得られた防眩フィルムの評価結果を表2に示した。
また、実施例1〜5および比較例1〜2の全光線透過率は、85%以上であった。測定は、ヘイズメーター300A(東京電色社製)測定装置を用いた。
【0064】
【表2】

【0065】

(1)ヘイズ値:ヘイズメーター300A(東京電色社製)を用いてヘイズ値を
測定。
(2)鉛筆硬度:JIS K5400による。
(3)密着性試験:JIS K5400の碁盤目テープ法(間隔1mm)による。
(4)耐光性試験後の密着性試験:スーパーUV耐光性試験機(ダイプラーメタルウエザー、型式:KU−R5CI−A、光源:メタルハライドランプ)にて、63℃−45%RH−65mW/cm−24時間の条件にて耐光性試験を実施後、JIS K5400の碁盤目テープ法(間隔1mm)により、密着性試験を実施。
(5)耐擦傷性:スチールウール#0000を用い、500g/10往復評価
◎ : 非常に良好
○ : 良好
△ : やや劣る
× : 劣る
(6)防眩性:作成した防眩フィルムにルーバーなしのむき出しの蛍光灯を写し、その反射像のボケの程度を目視判定した。
◎:蛍光灯の輪郭が全くわからない
○:蛍光灯の輪郭がわずかにわかる
△:蛍光灯はぼやけているが輪郭は識別できる
×:蛍光灯が殆どぼやけない(防眩性無し)
(7)白ぼけ:液晶ディスプレイの表面に防眩フィルムを、透明粘着剤を用いて貼り合わせ、黒表示にして黒さを目視判定した。
○:白ぼけが抑えられ、黒さがある
△:やや白ぼけがある
×:白ぼけがあり、画面が白化する
【0066】
表2に示される結果から以下のことが明らかである。実施例1〜5の本発明で特定される防眩フィルムは、耐光試験後の密着性が良好であり、かつ防眩性、鉛筆硬度、耐擦傷性、白ぼけ(コントラスト)を同時に満たす。一方、比較例1および比較例2は、耐光性試験後の密着性が不足である。

【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明の積層体は、表示面に傷が付きにくく、外光の写り込みが少なくかつコントラストが良好であり、更に耐光性試験等における信頼性に優れるので画像表示装置に使用できる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
トリアセチルセルロース透明基板上に塗布するための放射線硬化性樹脂組成物であって、放射線硬化性化合物(A)5〜80重量%、
環状エーテルを有するビニル化合物(B)および/またはアミド基を有するビニル化合物(C)0.1〜30重量%、
一次粒径の平均粒径が0.1〜10μmである有機微粒子(D)0.1〜30重量%、および
溶剤(E)10〜90重量%からなる放射線硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
トリアセチルセルロース透明基板上に塗布するための放射線硬化性樹脂組成物であって、
放射線硬化性化合物(A)5〜80重量%、
環状エーテルを有するビニル化合物(B)および/またはアミド基を有するビニル化合物(C)0.1〜30重量%、
一次粒径の平均粒径が0.1〜10μmである有機微粒子(D)0.1〜30重量%、
トリアセチルセルロース透明基板溶解性溶剤(E‘)0.1〜80重量%、および
トリアセチルセルロース透明基板非溶解性溶剤(E“)10〜89.9重量%からなる放射線硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
放射線硬化性化合物(A)が、トリアセチルセルロース透明基板溶解性溶剤(E‘)に、不揮発分60重量%になるように溶解したときの粘度が、EL型回転粘度計で、25℃の液体温度にて測定したときに、5〜20mPa・sである請求項2記載の放射線硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
さらに、二次粒径の平均粒径が0.5〜3μmである無機フィラー(F)を含む請求項1〜3いずれか記載の放射線硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1〜4いずれか記載の放射線硬化性樹脂組成物をベースフィルムに塗布してなる積層体。
【請求項6】
環状エーテルを有するビニル化合物(B)が、テトラヒドロフルフリル環を有するビニル化合物またはジオキソラン環を有するビニル化合物である請求項5記載の積層体。
【請求項7】
アミド基を有するビニル化合物(C)が、N−ビニルホルムアミドである請求項5または6記載の積層体。
【請求項8】
放射線硬化性樹脂組成物層の厚みが、1〜20μmである請求項5〜7いずれか記載の積層体。
【請求項9】
請求項1〜4いずれか記載の放射線硬化性樹脂組成物をトリアセチルセルロース透明基板に塗工後、放射線照射することを特徴とする請求項5〜8いずれか記載の積層体の製造方法。

【公開番号】特開2007−231223(P2007−231223A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−57484(P2006−57484)
【出願日】平成18年3月3日(2006.3.3)
【出願人】(000222118)東洋インキ製造株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】