説明

放射線硬化性組成物

【化1】


放射線硬化性組成物及びインキジェットインキとの向上した適合性及びそれらの中での向上した溶解性を示し、且つ硬化後に光開始剤及びその残留物の抽出可能な量が少ない、基A、L、R及びRが請求項1において規定される通りである式(I)に従う重合可能なノリッシュII型光開始剤ならびにそれを含有する放射線硬化性組成物及びインキジェットインキを開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術的分野
本発明は、食品包装用途に適した放射線硬化性組成物、そしてさらに特定的に放射線硬化性インキ及びインキジェットインキに関する。
【背景技術】
【0002】
背景の技術
フリーラジカル光開始剤は、化学線に暴露された時にフリーラジカルの生成によりモノマーの重合を開始させる。光開始剤は、多くの場合にUV−硬化性組成物、例えばUV−硬化性インキジェットインキ中で用いられる。
【0003】
2つの型のフリーラジカル光開始剤を区別することができる。ノリッシュI型開始剤は、励起の後に開裂してすぐに開始ラジカルを与える開始剤である。ノリッシュII型−開始剤は、化学線により活性化され、第2の化合物からの水素引き抜きによりフリーラジカルを生成する光開始剤であり、第2の化合物が実際の開始フリーラジカルとなる。この第2の化合物は共−開始剤又は重合相乗剤と呼ばれる。
【0004】
光開始剤は一官能基性化合物であることができるが、多官能基性化合物、すなわち1個より多い光開始基を有する化合物であることもできる。特許文献1(COATES BROTHERS)は、多官能基性チオキサントン光開始剤を開示している。
【0005】
放射線硬化性組成物を食品包装、おもちゃ及び歯科用途で用いる場合、抽出可能な残留物の量は重大な問題であり、最少にする必要がある。低分子量生成物は通常、ポリマー網目中に完全には組み込まれず、容易に抽出されるか又は硬化した組成物から拡散する傾向がある。
【0006】
特にノリッシュII型開始剤は、抽出可能な残留物に関して心配な点である。ベンゾフェノン及びチオキサントンのようなノリッシュII型光−開始剤は、常に共−開始剤を必要とする。脂肪族第3級アミン、芳香族アミン及びチオールは、共−開始剤の好ましい例である。ノリッシュII型開始剤への水素原子の移動の後、共−開始剤上に生成するラジカルは重合を開始させる。理論的に、共−開始剤はポリマー網目中に組み込まれる。しかしながら、水素移動及び開始反応の両方の収率が100パーセントであることは、到底ありそうもない。副反応が起こり、硬化した組成物中に未反応共−開始剤及び副生成物を存在させそうである。そのような放射線硬化性組成物を用いて上に印刷された食品包装において、これらの低分子量残留物は移動性のままであり、毒性ならば、食品中に抽出されると健康上の危険を引き起こすであろう。
【0007】
光開始剤の抽出を最少にする1つの方法は、比較的高い分子量を有するノリッシュII型開始剤を用いることである。しかしながら、高分子開始剤は反応性を失う多少の傾向を有する。従って多くの場合、所望の硬化速度を達成するためにかなりの(considerable)量の高分子開始剤が必要であり、それにより粘度も、例えばインキジェット印刷のような放射線硬化性組成物を用いる多数の用途に望ましくないレベルまで向上させる。
【0008】
特許文献2(AGFA GRAPHICS)は、少なくとも1個の開始官能基及び少なくとも1個の共−開始官能基を有する樹枝状ポリマーコアを含んでなる放射線硬化性組成物及び光反応性ポリマーを開示している。樹枝状ポリマーコアの使用は放射線硬化性組成
物の低粘度を保つのに有利であるが、特に窒素不活性化(nitrogen inertisation)の不在下で、硬化速度における向上がまだ望ましい。
【0009】
抽出の問題の解決における別の方法は、光開始剤が放射線硬化性組成物の他のモノマーと共重合できるように、1個もしくはそれより多いエチレン性不飽和重合可能基を有する光開始剤を設計することである。しかしながら、共重合は光開始剤の移動性を低下させ、従って硬化速度における低下が観察され得る。
【0010】
特許文献3(NIPPON KAYAKU)は、放射線硬化性組成物の硬化したフィルムからの開始剤の蒸発又は昇華を減少させるための、自己−光重合型光重合開始剤を開示している。
【0011】
他の問題は、先行技術において既知の重合可能II型−開始剤が放射線硬化性調製物中で限られた程度までしか可溶性でなく、比較的低い硬化速度を生ずることである。十分な硬化速度を達成するために、重合可能及び非−重合可能II型−開始剤の混合物が用いられる。例えばCytec Surface SpecialtiesからのEbecrylTM P36は、さらに非−重合可能ベンゾフェノンを含有する重合可能アクリル化ベンゾフェノンであり、従って硬化した組成物から有意な量の抽出可能な光開始剤及び残留物が観察される。
【0012】
かくして広範囲の放射線硬化性組成物中における優れた溶解性、放射線硬化性組成物の粘度に低い影響を有する高い反応性を示し、且つそれでも抽出可能残留物の少ない量を保っているノリッシュII型光開始剤に対する必要性がまだ残っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】国際公開第03/033492号パンフレット
【特許文献2】欧州特許第1674499A号明細書
【特許文献3】日本特許第2004224993号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
発明の概略
上記の問題を克服するために、本発明の好ましい態様は請求項1により定義される光開始剤を提供する。
【0015】
本発明のさらなる目的は、放射線硬化性組成物の硬化した層からの抽出可能な残留物の少ない量を保ちながら、優れた硬化速度、溶解性及び低粘度を示す共−開始剤及び重合可能なノリッシュII型光開始剤を含む放射線硬化性組成物及びそれらを用いるインキジェット印刷法を提供することである。
【0016】
本発明のさらなる利点及び態様は、以下の記述から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0017】
発明の開示
定義
本発明の好ましい態様において用いられる「着色剤」という用語は、染料及び顔料を意味する。
【0018】
本発明の好ましい態様において用いられる「染料」という用語は、それが適用される媒
体中で、且つ関係する周囲条件下で10mg/Lかもしくはそれより高い溶解度を有する着色剤を意味する。
【0019】
「顔料」という用語は、引用することによりその記載事項が本明細書の内容となるDIN 55943において、関係する周囲条件下で、適用媒体中に実質的に不溶性である、従ってその中で10mg/Lより低い溶解度を有する着色剤として定義されている。
【0020】
「C.I.」という用語は、本発明の好ましい態様において、カラーインデックスに関する略語として用いられる。
【0021】
「アルキル」という用語は、アルキル基中の炭素原子のそれぞれの数に関して可能なすべての変形、すなわち3個の炭素原子の場合:n−プロピル及びイソプロピル;4個の炭素原子の場合:n−ブチル、イソブチル及び第3級−ブチル;5個の炭素原子の場合:n−ペンチル、1,1−ジメチル−プロピル、2,2−ジメチルプロピル及び2−メチル−ブチルなどを意味する。
【0022】
放射線硬化性組成物及びインキ
本発明に従う放射線硬化性組成物は、少なくとも1個の重合可能エチレン性不飽和基を有する少なくとも1種のジアルキルアミノ置換芳香族共−開始剤ならびに少なくとも1種の下記に定義される重合可能なノリッシュII型光開始剤を含む。
【0023】
重合可能なノリッシュII型−光開始剤の好ましい量は、放射線硬化性組成物の合計重量の1〜50重量%、より好ましくは2〜25重量%そして最も好ましくは5〜10重量%である。本発明に従う放射線硬化性組成物中で、I型及びII型光開始剤の組み合わせを用いることができる。
【0024】
最も好ましい態様において、放射線硬化性組成物は1種もしくはそれより多いモノマー及び/又はオリゴマーを含む。
【0025】
放射線硬化性組成物の好ましい態様は、上記で定義された重合可能なノリッシュII型−光開始剤、共−開始剤ならびに重合可能組成物を含み、重合可能組成物は本質的に:
a)25〜100重量%の、少なくとも1個のアクリレート基G1ならびにビニルエーテル基、アリルエーテル基及びアリルエステル基より成る群から選ばれる少なくとも1個の第2のエチレン性不飽和重合可能官能基G2を有する1種もしくはそれより多い重合可能化合物PA;
b)0〜55重量%の一官能基性アクリレート及び二官能基性アクリレートより成る群から選ばれる1種もしくはそれより多い重合可能化合物PB;ならびに
c)0〜55重量%の三官能基性アクリレート、四官能基性アクリレート、五官能基性アクリレート及び六官能基性アクリレートより成る群から選ばれる1種もしくはそれより多い重合可能化合物PC
から成り、但し、化合物PBの重量パーセンテージ>24重量%の場合、化合物PCの重量パーセンテージ>1重量%であり;
且つここでPA、PB及びPCのすべての重量パーセンテージは重合可能組成物の合計重量に基づく。
【0026】
後者の放射線硬化性組成物の例は、非公開欧州特許第071191710A号明細書(AGFA GRAPHICS)に開示されており、その内容は、化合物PA、PB及びPCに関する、ならびに化合物PA、PB及びPCの重合可能組成物に関する特定的引用として本明細書の内容となる。
【0027】
放射線硬化性組成物及びインキは、好ましくはUV線により硬化し、好ましくは放射線硬化性インキジェット液又はインキである。放射線硬化性組成物及びインキを、オフセット印刷、スクリーン印刷、フレキソグラフ印刷及び他の印刷又はコーティング法において有利に用いることもできる。
【0028】
放射線硬化性組成物及びインキは、好ましくは非−水性液又はインキである。「非−水性」という用語は、水を含有してはならない液体担体を指す。しかしながら、少量の、一般に組成物又はインキの合計重量に基づいて5重量%より少量の水が存在できることもある。この水は意図的に加えられたのではなく、例えば極性有機溶剤のような他の成分を介して汚染物として調製物中に含まれた。5重量%より多量の水は、非−水性液及びインキを不安定にする傾向があり、好ましくは、含水率は放射線硬化性組成物又はインキの合計重量に基づいて1重量%より低く、そして最も好ましくは、水は全く存在しない。
【0029】
放射線硬化性組成物及びインキは、好ましくは有機溶剤のような蒸発性成分を含有しない。しかし、UV−硬化後の基質の表面への接着を向上させるために、少量の有機溶剤を導入するのが有利であることもあり得る。この場合、加えられる溶剤は、溶剤抵抗性(solvent resistance)及びVOCの問題を引き起こさない範囲内のいずれの量であることもでき、好ましくはそれぞれ硬化性組成物又はインキの合計重量に基づいて0.1〜10.0重量%、そして特に好ましくは0.1〜5.0重量%であることができる。
【0030】
放射線硬化性組成物及びインキは、好ましくは、1種もしくはそれより多い着色剤、好ましくは1種もしくはそれより多い有色顔料を含有する少なくとも1つのインキを含んでなるインキセット、より好ましくはインキジェットインキセットの一部である。硬化性インキセットは、好ましくは少なくとも1つのイエロー硬化性インキ(Y)、少なくとも1つのシアン硬化性インキ(C)及び少なくとも1つのマゼンタ硬化性インキ(M)ならびに好ましくは少なくとも1つのブラック硬化性インキ(K)も含んでなる。画像の色域をさらに拡大するために、硬化性CMYK−インキセットを、レッド、グリーン、ブルー及び/又はオレンジのような余分のインキで増量することもできる。カラーインキ及び/又はブラックインキの両方の全濃度(full density)及び淡濃度(light
density)インキの組み合わせによってCMYK−インキセットを増量し、粒状性を低下させることにより画質を向上させることもできる。
【0031】
顔料添加放射線硬化性インキは、好ましくは顔料を分散させるための分散剤、より好ましくは高分子分散剤を含有する。顔料添加硬化性インキは、インキの分散の質及び安定性を向上させるために、分散相乗剤を含有することができる。好ましくは、少なくともマゼンタインキは分散相乗剤を含有する。分散相乗剤の混合物を用い、分散安定性をさらに向上させることができる。
【0032】
硬化性液及びインキの粘度は、好ましくは30℃において且つ100s−1のせん断速度において100mPa.sより低い。放射線硬化性インキジェットインキ及び液の粘度は、100s−1のせん断速度及び10〜70℃の噴射温度において、好ましくは50mPa.sより低く、より好ましくは30mPa.sより低く、そして最も好ましくは2〜15mPa.sである。より好ましい態様において、放射線硬化性インキジェットインキ及び液の粘度は、100s−1のせん断速度及び25℃の噴射温度において、好ましくは50mPa.sより低く、より好ましくは30mPa.sより低く、そして最も好ましくは2〜15mPa.sである。
【0033】
硬化性液及びインキの表面張力は、好ましくは25℃において約20mN/m〜約70mN/mの範囲内、より好ましくは25℃において約22mN/m〜約40mN/mの範
囲内である。
【0034】
硬化性組成物又はインキは、組成物又はインキの熱安定性を向上させるために、さらに少なくとも1種の抑制剤を含有することもできる。
【0035】
硬化性組成物又はインキは、基質上における優れた拡散特性(spreading characteristics)を得るために、さらに少なくとも1種の界面活性剤を含有することもできる。
【0036】
重合可能なノリッシュII型光開始剤
本発明に従う重合可能なノリッシュII型光開始剤は、式(I):
【0037】
【化1】

【0038】
[式中:
Aは場合により置換されていることができるベンゾフェノン基及び場合により置換されていることができるチオキサントン基より成る群から選ばれるノリッシュII型開始基を示し;
LはノリッシュII型開始剤部分A及びC=O−基が1〜X位置に位置する2価連結基を示し、ここで位置1はAの芳香環中のLが共有結合している原子として定義され、位置XはC=O−基の炭素原子として定義され;
nは0又は1を示し;
mは0又は1を示し、但しmが0に等しい場合、nは0に等しく;且つ但しAが場合により置換されていることができるチオキサントン基を示す場合、n及びmは両方とも1に等しく;
Xは3〜7の整数を示し;
R1は水素、場合により置換されていることができるアルキル基、場合により置換されていることができるアルケニル基、場合により置換されていることができるアルキニル基、場合により置換されていることができるアラルキル基、場合により置換されていることができるアルカリール基、場合により置換されていることができるアリール基、場合により置換されていることができるヘテロアリール基及びアシル基より成る群から選ばれ;
R2は場合により置換されていることができるアルキル基、場合により置換されていることができるアルケニル基、場合により置換されていることができるアルキニル基、場合により置換されていることができるアラルキル基、場合により置換されていることができるアルカリール基、場合により置換されていることができるアリール基及び場合により置換されていることができるヘテロアリール基より成る群から選ばれ;
但し、R1及びR2の少なくとも1つはアクリレート及びメタクリレートより成る群から選ばれるエチレン性不飽和重合可能基を含有する]
に従う光開始剤である。
【0039】
式(I)に従う少なくとも1種の重合可能なノリッシュII型光開始剤の好ましい態様において、R1は水素及びアシル基より成る群から選ばれる。
【0040】
式(I)に従う少なくとも1種の重合可能なノリッシュII型光開始剤の好ましい態様において、nは0に等しい。
【0041】
式(I)に従う少なくとも1種の重合可能なノリッシュII型光開始剤の好ましい態様において、mは1に等しい。
【0042】
式(I)に従う少なくとも1種の重合可能なノリッシュII型光開始剤の特に好ましい態様において、R2は−CHOR3基を示し、ここでR3は水素、場合により置換されていることができるアルキル基、場合により置換されていることができるアルケニル基、場合により置換されていることができるアルキニル基、場合により置換されていることができるアリール基、場合により置換されていることができるヘテロアリール基及びアシル基より成る群から選ばれる。
【0043】
式(I)に従う少なくとも1種の重合可能なノリッシュII型光開始剤のより好ましい態様において、R3は場合により置換されていることができるアルキル基又はアシル基である。
【0044】
1つの態様において、重合可能なノリッシュII型光開始剤は2個、3個又はそれより多いエチレン性不飽和重合可能基を含有することができる。
【0045】
好ましい態様において、重合可能なノリッシュII型光開始剤は1個のみの(メタ)アクリレート基を含有し、それは、複数の(メタ)アクリレート基が硬化した層の柔軟性を低下させるからである。
【0046】
より好ましい態様において、重合可能なノリッシュII型光開始剤は1個のみのアクリレート基を含有し、それは、メタクリレート基を有する重合可能なノリッシュII型光開始剤が硬化後に比較的多量の抽出可能な残留物を示す傾向があるからである。
【0047】
チオキサントン基を含有する好ましい重合可能なノリッシュII型開始剤を下記に表1において示すが、それらに限られるわけではない。
【0048】
【表1−1】

【0049】
【表1−2】

【0050】
【表1−3】

【0051】
ベンゾフェノン基を含有する好ましい重合可能なノリッシュII型開始剤を下記に表2において示すが、それらに限られるわけではない。
【0052】
【表2−1】

【0053】
【表2−2】

【0054】
重合可能共−開始剤
本発明に従う放射線硬化性組成物は、少なくとも1種の共−開始剤を含有するが、2種、3種もしくはそれより多くの共−開始剤の混合物を含有することができる。共−開始剤の好ましい量は、放射線硬化性組成物の合計重量の1〜30重量%、より好ましくは2〜20重量%、そして最も好ましくは5〜10重量%である。
【0055】
特に食品包装用途の場合、安全性の理由で、共−開始剤はいわゆる拡散が妨げられた共−開始剤(diffusion hindered co−initiator)である。拡散が妨げられた共−開始剤は、放射線硬化性組成物又はインキの硬化した層において
、一官能基性、非−重合可能共−開始剤、例えばジアルキルアミノベンゾエートよりずっと低い移動性を示す共−開始剤である。光開始剤の移動性を低くするために、いくつかの方法を用いることができる。1つの方法は、共−開始剤の分子量を増加させ、拡散速度を低下させることであり、例えば多官能基性共−開始剤又は高分子共−開始剤である。他の方法は、それが重合する網目の中に組み込まれるように、その反応性を増すことであり、例えば多官能基性共−開始剤及び重合可能共−開始剤である。非−高分子二−もしくは多官能基性共−開始剤は、通常300〜900ダルトンの分子量を有する。
【0056】
本発明において、拡散が妨げられた共−開始剤は、少なくとも1個の重合可能エチレン性不飽和基を含有する重合可能ジアルキルアミノ置換芳香族共−開始剤である。
【0057】
重合可能共−開始剤は、アクリレート、置換アクリレート、メタクリレート、スチレン、アクリルアミド、メタクリルアミド、アリルエステル、アリルエーテル、ビニルエステル、ビニルエーテル、フマレート、マレート、マレイミド及びビニルニトリルより成る群から独立して選ばれる2個、3個もしくはそれより多い重合可能エチレン性不飽和官能基を含有することができる。
【0058】
好ましい態様において、ジアルキルアミノ置換芳香族共−開始剤は、少なくとも1個のアクリレート基又はメタクリレート基を含有する。
【0059】
より好ましい態様において、ジアルキルアミノ置換芳香族共−開始剤は、少なくとも1個のアクリレート基を含有する。
【0060】
好ましい態様において、少なくとも1個の重合可能エチレン性不飽和基を含んでなるジアルキルアミノ置換芳香族共−開始剤は、式(II):
【0061】
【化2】

【0062】
[式中、
R1及びR2は独立してアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、アルカリール基、アリール基及びヘテロアリール基より成る群から選ばれ;
R3からR6は独立して水素、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アシル基、チオアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン、アラルキル基、アルカリール基、アリール基及びヘテロアリール基より成る群から選ばれ;
R7は水素、アルデヒド基、ケトン基、エステル基、アミド基、アシル基、チオアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン、ニトリル基、スルホネート基、スルホンアミド基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、アルカリール基、アリール基及びヘテロアリール基より成る群から選ばれ;
R1とR2、R1とR3、R2とR5、R3とR4、R4とR7、R5とR6、及びR6とR7は、5−〜8−員環の形成に必要な原子を示すことができ;且つ但し、芳香族アミ
ンは少なくとも1個のα−水素を有し;そして
R1からR7の少なくとも1個はアクリレート、置換アクリレート、メタクリレート、スチレン、アクリルアミド、メタクリルアミド、アリルエステル、アリルエーテル、ビニルエステル、ビニルエーテル、フマレート、マレート、マレイミド及びビニルニトリルより成る群から選ばれる重合可能エチレン性不飽和官能基を含む]
に従う共−開始剤である。重合可能共−開始剤において、好ましくは、R7は、アルデヒド、ケトン、エステル及びアミドより成る群から選ばれる電子求引性基を示し、そしてより好ましくは、R3、R4、R5及びR6はすべて水素を示す。
【0063】
R1からR7に関して用いられるアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、アルカリール基、アリール基及びヘテロアリール基は、置換されているか又は置換されていない基であることができ、すなわち置換もしくは非置換アルキル基、置換もしくは非置換アルケニル基、置換もしくは非置換アルキニル基、置換もしくは非置換アラルキル基、置換もしくは非置換アルカリール基及び置換もしくは非置換(ヘテロ)アリール基を用いることができる。
【0064】
好ましい態様において、重合可能共−開始剤は式(III):
【0065】
【化3】

【0066】
[式中、
R1からR6は式(II)に関して定義したと同じ意味を有し;
XはO、S及びNR9より成る群から選ばれ;
R8及びR9は独立して水素、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、アルカリール基、アリール基及びヘテロアリール基より成る群から選ばれ;
R1とR2、R1とR3、R2とR5、R3とR4、R5とR6、R4とR8、R6とR8、及びR8とR9は、5−〜8−員環の形成に必要な原子を示すことができ;そしてR1からR6及びR8の少なくとも1個はアクリレート、置換アクリレート、メタクリレート、スチレン、アクリルアミド、メタクリルアミド、アリルエステル、アリルエーテル、ビニルエステル、ビニルエーテル、フマレート、マレート、マレイミド及びビニルニトリルより成る群から選ばれる重合可能エチレン性不飽和官能基を含んでなる]
に相当する。重合可能共−開始剤において、好ましくは、R3、R4、R5及びR6はすべて水素を示す。
【0067】
式(III)を有する重合可能共−開始剤の1つの好ましい態様において、R1はメチル又はエチルを示し、そしてR2はアクリレート、置換アクリレート、メタクリレート、スチレン、アクリルアミド、メタクリルアミド、アリルエステル、アリルエーテル、ビニルエステル、ビニルエーテル、フマレート、マレート、マレイミド及びビニルニトリルより成る群から選ばれる重合可能エチレン性不飽和官能基を含んでなり;そしてより好ましくはやはり、R3、R4、R5及びR6はすべて水素を示す。
【0068】
式(III)を有する重合可能共−開始剤の別の好ましい態様において、R1及びR2は独立してメチル又はエチルを示し、そしてR8はアクリレート、置換アクリレート、メタクリレート、スチレン、アクリルアミド、メタクリルアミド、アリルエステル、アリルエーテル、ビニルエステル、ビニルエーテル、フマレート、マレート、マレイミド及びビニルニトリルより成る群から選ばれる重合可能エチレン性不飽和官能基を含んでなり;そしてより好ましくはやはり、R3、R4、R5及びR6はすべて水素を示す。
【0069】
より好ましい態様において、重合可能共−開始剤は式(IV):
【0070】
【化4】

【0071】
[式中、
R1及びR2は独立してメチル、エチル、プロピル及びブチルより成る群から選ばれ;
Lは少なくとも1個の炭素原子を含んでなる2価の連結基を示し;そして
R10は水素、メチル、エチル、プロピル又はブチルを示す]
に相当する。
【0072】
式(IV)に相当する重合可能共−開始剤の好ましい態様において、2価の連結基Lは1〜30個の炭素原子、より好ましくは2〜10個の炭素原子、そして最も好ましくは3〜6個の原子を含んでなる。
【0073】
重合可能共−開始剤は、1個より多い第3級アミン官能基を含有することもでき、好ましくは、第2もしくは第3の第3級アミン官能基も芳香族第3級アミン、最も好ましくはジアルキルアミノ安息香酸誘導体である。
【0074】
重合可能ジアルキルアミノ置換芳香族共−開始剤の適した例を表3に示すが、それらに限られるわけではない。
【0075】
【表3−1】

【0076】
【表3−2】

【0077】
【表3−3】

【0078】
モノマー及びオリゴマー
特に食品包装用途のための放射線硬化性組成物及びインキ中で用いられるモノマー及びオリゴマーは、好ましくは全くもしくはほとんど不純物を有していない、さらに特定的に毒性又は発がん性不純物を有していない精製された化合物である。不純物は通常、重合可能化合物の合成の間に得られる誘導化合物である。しかしながら、純粋な重合可能化合物にいくつかの化合物、例えば重合抑制剤又は安定剤を無害な量で故意に加えることができることもある。
【0079】
フリーラジカル重合できるいずれのモノマー又はオリゴマーも重合可能化合物として用いることができる。モノマー、オリゴマー及び/又はプレポリマーの組み合わせを用いることもできる。モノマー、オリゴマー及び/又はプレポリマーは、種々の官能価を有することができ、一−、二−、三−及びもっと高い官能価のモノマー、オリゴマー及び/又はプレポリマーの組み合わせを含む混合物を用いることができる。モノマーとオリゴマーの間の比率を変えることにより、放射線硬化性組成物及びインキの粘度を調整することができる。
【0080】
特に好ましいモノマー及びオリゴマーは、特定的引用として本明細書の内容となる欧州特許第1911814A号明細書(AGFA GRAPHICS)中で[0106]から[0115]に挙げられているものである。
【0081】
好ましい種類のモノマー及びオリゴマーは、引用することによりその記載事項が本明細書の内容となる米国特許第6310115号明細書(AGFA)中に記載されているもののようなビニルエーテルアクリレートである。特に好ましい化合物は2−(2−ビニルオキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレートであり、最も好ましくは、化合物は2−(2−ビニルオキシエトキシ)エチルアクリレートである。
【0082】
抑制剤
放射線硬化性組成物及びインキは、重合抑制剤を含有することができる。適した重合抑制剤には、フェノール型酸化防止剤、ヒンダードアミン光安定剤、蛍りん光体型酸化防止剤、(メタ)アクリレートモノマーにおいて通常用いられるヒドロキノンモノメチルエーテルが含まれ、ヒドロキノン、t−ブチルカテコール、ピロガロール、2,6−ジ−tert.ブチル−4−メチルフェノールも使用することができる。
【0083】
適した市販の抑制剤は、例えばSumitomo Chemical Co.Ltd.により製造されるSumilizerTM GA−80、SumilizerTM GM及びSumilizerTM GS;Rahn AGからのGenoradTM 16、GenoradTM 18及びGenoradTM 20;Ciba Specialty ChemicalsからのIrgastabTM UV10及びIrgastabTM UV22、TinuvinTM 460及びCGS20;Kromachem LtdからのFloorstabTM UV領域(UV−1、UV−2、UV−5及びUV−8)、Cytec Surface SpecialtiesからのAdditolTM
S領域(S100、S110、S120及びS130)である。
【0084】
抑制剤は、好ましくは重合可能抑制剤である。
【0085】
これらの重合抑制剤の過剰の添加は、硬化速度を遅くし得るので、重合を妨げることができる量を、配合前に決定するのが好ましい。重合抑制剤の量は、好ましくはインキ又は液全体の5重量%より少なく、より好ましくは3重量%より少ない。
【0086】
界面活性剤
放射線硬化性組成物及びインキは、界面活性剤を含有することができる。界面活性剤はアニオン性、カチオン性、非−イオン性又は両性イオン性であることができ、通常、放射線硬化性組成物又はインキの合計重量に基づいて10重量%より少ない合計量で、そして特に放射線硬化性組成物又はインキの合計重量に基づいて5重量%より少ない合計量で加えられる。
【0087】
適した界面活性剤には、特定的引用として本明細書の内容となる国際公開第2008/074548号パンフレット(AGFA GRAPHICS)の[0283]節から[0
291]節中に開示されているものが含まれる。
【0088】
着色剤
放射線硬化性インキ中で用いられる着色剤は染料、顔料又はそれらの組み合わせであることができる。有機及び/又は無機顔料を用いることができる。着色剤は、好ましくは顔料又は高分子染料、最も好ましくは顔料である。
【0089】
顔料は、ブラック、ホワイト、シアン、マゼンタ、イエロー、レッド、オレンジ、バイオレット、ブルー、グリーン、ブラウン、それらの混合物などであることができる。この有色顔料は、HERBST,Willy,et al.著,Industrial Organic Pigments,Production,Properties,Applications.第3版,Wiley−VCH,2004年,ISBN 3527305769により開示されているものから選ばれることができる。
【0090】
適した顔料は、国際公開第2008/074548号パンフレット(AGFA GRAPHCS)の[0128]節から[0138]節中に開示されている。
【0091】
適した顔料は、上記の特定の好ましい顔料の混晶を含む。混晶は固溶体とも呼ばれる。例えばある条件下で、種々のキナクリドンは互いと混ざって固溶体を形成し、それは化合物の物理的混合物及び化合物自身の両方と全く異なる。固溶体において、成分の分子は、必ずではないが通常、成分の1つの結晶格子である同じ結晶格子中に入る。得られる結晶性固体のx−線回折パターンはその固体に特徴的であり、同じ割合における同じ成分の物理的混合物のパターンと明確に区別され得る。そのような物理的混合物では、成分のそれぞれのx−線パターンを区別することができ、これらの線の多くの消失は固溶体の形成の基準の1つである。商業的に入手可能な例は、Ciba Specialty ChemicalsからのCinquasia Magenta RT−355−Dである。
【0092】
放射線硬化性インキ中で、顔料の混合物を用いることもできる。いくつかのインキジェット用途のために、純黒インキジェットインキが好ましく、それは例えばインキ中にブラック顔料及びシアン顔料を混合することにより得られ得る。インキジェット用途には、例えば包装インキジェット印刷又は編織布インキジェット印刷のために、1個もしくはそれより多いスポットカラー(spot colours)も必要である。インキジェットポスター印刷及び販売時点展示のために、シルバー及びゴールドは多くの場合に望ましい色である。
【0093】
非−有機顔料をカラーインキジェットインキ中で用いることができる。特に好ましい顔料は、C.I.Pigment Metal 1,2及び3である。無機顔料の代表的な例には、赤色酸化鉄(III)、カドミウムレッド、ウルトラマリンブルー、プルシアンブルー、酸化クロムグリーン、コバルトグリーン、アンバー、チタンブラック及び合成アイアンブラックが含まれる。
【0094】
インキジェットインキ中の顔料粒子は、インキジェット−印刷装置を介する、特に噴出ノズルにおけるインキの自由な流れを許すのに十分に小さくなければならない。最大の色濃度のため、及び沈降を遅くするためにも、小さい粒子を用いるのが望ましい。
【0095】
数平均顔料粒度は、好ましくは0.050〜1μm、より好ましくは0.070〜0.300μmそして特に好ましくは0.080〜0.200μmである。最も好ましくは、数平均顔料粒度は、0.150μmより大きくない。0.050μmより小さい平均粒度は、耐光堅牢度の低下のために、しかし主に、非常に小さい顔料粒子又はその個々の顔料分子が食品包装用途においてやはり抽出され得るためにも、あまり望ましくない。顔料粒子の平均粒度は、動的光散乱法の原理に基づいてBrookhaven Instruments Particle Sizer BI90plusを用いて決定される。酢酸エチルを用いて0.002重量%の顔料濃度にインキを希釈する。BI90plusの測定設定は:23℃、90°の角、635nmの波長及び図=補正関数(graphics=correction function)において5回の実験である。
【0096】
しかしながら、ホワイト放射線硬化性インキの場合、ホワイト顔料の数平均粒径は、好ましくは50〜500nm、より好ましくは150〜400nm、そして最も好ましくは200〜350nmである。平均直径が50nmより小さい場合、十分な隠蔽力を得ることができず、平均直径が500nmを超えると、インキの保存可能性及び噴出適切性が下がる傾向がある。数平均粒径の決定は、顔料添加インキジェットインキの希釈された試料についての、4mW HeNeレーザーを用いる633nmの波長における光子相関分光法により、最も良く行なわれる。用いられた適した粒度分析計は、Goffin−Meyvisから入手可能なMalvernTM nano−Sであった。例えば1.5mLの酢酸エチルを含有するキュベットに1滴のインキを加え、均一な試料が得られるまで混合することにより、試料を調製することができる。測定される粒度は、20秒の6回の実験から成る3回の連続的測定の平均値である。
【0097】
適したホワイト顔料は、国際公開第2008/074548号パンフレット(AGFA
GRAPHICS)の[0116]中の表2により示されている。ホワイト顔料は、好ましくは1.60より大きい屈折率を有する顔料である。ホワイト顔料を単独で、又は組み合わせて用いることができる。好ましくは、1.60より大きい屈折率を有する顔料として二酸化チタンを用いる。適した二酸化チタン顔料は、、国際公開第2008/074548号パンフレット(AGFA GRAPHICS)の[0117]及び[0118]中に開示されているものである。
【0098】
顔料は、それぞれ放射線硬化性インキの合計重量に基づいて0.01〜10重量%の範囲内、好ましくは0.1〜5重量%の範囲内で存在する。ホワイト放射線硬化性インキの場合、ホワイト顔料は、好ましくはインキ組成物の3重量%〜30重量%、そしてより好ましくは5重量%〜25重量%の量で存在する。3重量%より少ない量は、十分な被覆力を達成することができず、通常非常に劣った保存安定性及び噴出性を示す。
【0099】
一般に顔料は、分散剤、例えば高分子分散剤により、分散媒中で安定化される。しかしながら、顔料の表面を改質し、いわゆる「自己−分散可能」又は「自己−分散性」顔料、すなわち分散剤なしで分散媒中で分散可能である顔料を得ることができる。
【0100】
分散剤
分散剤は、好ましくは高分子分散剤である。典型的な高分子分散剤は、2種のモノマーのコポリマーであるが、3、4、5種又はそれより多種のモノマーさえ含有することができる。高分子分散剤の性質は、モノマーの性質及びポリマー中におけるそれらの分布の両方に依存する。適したコポリマー分散剤は、以下のポリマー組成を有する:
・ランダム重合したモノマー(例えばモノマーA及びBがABBAABABに重合した);
・交互重合したモノマー(例えばモノマーA及びBがABABABABに重合した);
・勾配(gradient)(テーパード(tapered))重合したモノマー(例えばモノマーA及びBがAAABAABBABBBに重合した);
・それぞれのブロックのブロック長(2、3、4、5又はそれより多くさえ)が高分子分散剤の分散能力に重要であるブロックコポリマー(例えばモノマーA及びBがAAAAABBBBBBに重合した);
・グラフトコポリマー(グラフトコポリマーは、主鎖に結合した高分子側鎖を有する高分
子主鎖から成る);ならびに
・これらのポリマーの混合形態、例えばブロック様勾配コポリマー。
【0101】
適した高分子分散剤は、特定的引用として本明細書の内容となる欧州特許第1911814A号明細書中の「分散剤」についての節、さらに特定的に[0064]から[0070]及び[0074]から[0077]中に挙げられている。
【0102】
高分子分散剤は、好ましくは500〜30000、より好ましくは1500〜10000の数平均分子量Mnを有する。
【0103】
高分子分散剤は、好ましくは100000より小さい、より好ましくは50000より小さい、そして最も好ましくは30000より小さい重量平均分子量Mwを有する。
【0104】
高分子分散剤は、好ましくは2より小さい、より好ましくは1.75より小さい、そして最も好ましくは1.5より小さい多分散性(polydispersity)PDを有する。
【0105】
高分子分散剤の市販の例は以下である:
・BYK CHEMIE GMBHから入手可能なDISPERBYKTM分散剤;
・NOVEONから入手可能なSOLSPERSETM分散剤;
・DEGUSSAからのTEGOTMDISPERSTM分散剤;
・MUENZING CHEMIEからのEDAPLANTM分散剤;
・LYONDELLからのETHACRYLTM分散剤;
・ISPからのGANEXTM分散剤;
・CIBA SPECIALTY CHEMICALS INCからのDISPEXTM及びEFKATM分散剤;
・DEUCHEMからのDISPONERTM分散剤;及び
・JOHNSON POLYMERからのJONCRYLTM分散剤。
【0106】
特に好ましい高分子分散剤には、NOVEONからのSolsperseTM分散剤、CIBA SPECIALTY CHEMICALS INCからのEfkaTM分散剤及びBYK CHEMIE GMBHからのDisperbykTM分散剤が含まれる。特に好ましい分散剤は、NOVEONからのSolsperseTM 32000、35000及び39000分散剤である。
【0107】
高分子分散剤は、好ましくは顔料の重量に基づいて2〜600重量%、より好ましくは5〜200重量%の量で用いられる。
【0108】
分散相乗剤
分散相乗剤は通常アニオン性部分及びカチオン性部分から成る。分散相乗剤のアニオン性部分は有色顔料とのある種の分子類似性を示し、分散相乗剤のカチオン性部分は、分散相乗剤のアニオン性部分の電荷を補償するために、1個もしくはそれより多いプロトン及び/又はカチオンから成る。
【0109】
相乗剤は、好ましくは高分子分散剤より少量で加えられる。高分子分散剤/分散相乗剤の比は顔料に依存し、実験的に決められるべきである。典型的には、高分子分散剤の重量%/分散相乗剤の重量%の比は、2:1〜100:1、好ましくは2:1〜20:1の間で選ばれる。
【0110】
商業的に入手可能な適した分散相乗剤には、NOVEONからのSolsperse
5000及びSolsperseTM 22000が含まれる。
【0111】
用いられるマゼンタインキのために特に好ましい顔料は、ジケトピロロ−ピロール顔料又はキナクリドン顔料である。適した分散相乗剤には、欧州特許第1790698A号明細書(AGFA GRAPHICS)、欧州特許第1790696A号明細書(AGFA
GRAPHICS)、国際公開第2007/060255号パンフレット(AGFA GRAPHICS)及び欧州特許第1790695A号明細書(AGFA GRAPHICS)に開示されているものが含まれる。
【0112】
C.I.Pigment Blue 15:3の分散において、スルホン化Cu−フタロシアニン分散相乗剤、例えばNOVEONからのSolsperseTM 5000の使用が好ましい。イエローインキジェットインキのための適した分散相乗剤には、欧州特許第1790697A号明細書(AGFA GRAPHICS)に開示されているものが含まれる。
【0113】
放射線硬化性インキの調製
平均粒度及び分布は、インキジェットインキに関する重要な特徴である。分散媒中で分散剤の存在下に、顔料を沈降させるか又は磨砕することにより、インキを調製することができる。
【0114】
混合装置には圧力混練機、開放混練機、遊星型ミキサー、溶解機及びDalton Universal Mixerが含まれ得る。適した磨砕及び分散装置は、ボールミル、パールミル、コロイドミル、高速分散機、ダブルローラー、ビーズミル、ペイントコンディショナー及びトリプルローラーである。超音波エネルギーを用いて分散系を調製することもできる。
【0115】
磨砕媒体として、ガラス、セラミックス、金属及びプラスチックのような多種の型の材料を用いることができる。好ましい態様において、磨砕(grinding)媒体は粒子、好ましくは実質的に球形の粒子、例えば本質的に高分子樹脂から成るビーズ又はイットリウム安定化酸化ジルコニウムビーズを含んでなることができる。
【0116】
混合、磨砕及び分散のプロセスにおいて、それぞれのプロセスは、熱の蓄積を防ぐために冷却しながら且つ放射線硬化性インキのために可能な限り化学線が実質的に排除された光の条件下で行なわれる。
【0117】
インキは1種より多い顔料を含有することができ、各顔料に関して別の分散系を用いてインキを調製することができるか、あるいはまた、いくつかの顔料を混合し、分散系の調製において共−磨砕することができる。
【0118】
分散プロセスを連続、バッチ又は半−バッチ様式で行なうことができる。
【0119】
ミルグラインド(mill grind)の成分の好ましい量及び比は、特定の材料及び意図される用途に依存して広く変わるであろう。磨砕混合物の内容物は、ミルグラインド及び磨砕媒体を含んでなる。ミルグラインドは、顔料、高分子分散剤及び液体担体を含んでなる。インキジェットインキの場合、顔料は通常、磨砕媒体を除いて1〜50重量%でミルグラインド中に存在する。顔料対高分子分散剤の重量比は20:1〜1:2である。
【0120】
磨砕時間は広く変り得、顔料、選ばれる機械的手段及び滞留条件、初期の及び所望の最終的な粒度などに依存する。本発明において、100nmより小さい平均粒度を有する顔
料分散系を調製することができる。
【0121】
磨砕が完了した後、通常の分離法、例えば濾過、メッシュスクリーンを介する篩別などを用いて、磨砕された粒子状生成物(乾燥もしくは液体分散系形態における)から磨砕媒体を分離する。多くの場合、例えばビーズミル用のミル中に篩が組み込まれる。磨砕された顔料濃厚液を、好ましくは濾過により磨砕媒体から分離する。
【0122】
一般に、インキを濃厚ミルグラインドの形態で調製するのが望ましく、それを続いて印刷系における使用のために適した濃度に希釈する。この方法は、装置からの比較的多量の顔料添加インキの調製を可能にする。希釈により、インキを特定の用途のための所望の粘度、表面張力、色、色相、飽和濃度(saturation density)及び印刷領域被覆力に調整する。
【0123】
インキジェット印刷法
本発明に従うインキジェット印刷法は:
a)本発明に従う放射線硬化性組成物を準備し;そして
b)放射線硬化性組成物を少なくとも部分的に硬化する
段階を含んでなる。
【0124】
インキジェット印刷法の好ましい態様において、インキジェット印刷により、又はフレキソグラフ印刷により、放射線硬化性組成物を基質に適用する。例えばフレキソグラフ印刷により放射線硬化性組成物をプライマーとして基質上に適用し、少なくとも部分的に硬化し、次いで溶剤インキジェットインキ又は放射線硬化性インキジェットインキを少なくとも部分的に硬化したプライマー上に印刷する。
【0125】
インキジェット印刷法の1つの態様において、適用される層は、好ましくは二酸化チタン顔料を含有するホワイトプライマーである。例えば透明基質上で、カラーインキのコントラスト及び鮮明さ(vividness)を強化するために、ホワイトプライマーを有利に用いることができる。その場合、ホワイト硬化性インキをいわゆる「表面印刷」又は「裏刷り(backing printing)」として用い、透明基質上に反射画像を形成する。表面印刷では、ホワイトインキを用いて透明基質上にホワイト背景が形成され、さらにその上にカラー画像が印刷され、その後、形成された最終的な画像が印刷面から見られる。いわゆる裏刷りでは、カラーインキを用いて透明基質上にカラー画像が形成され、次いでカラーインキ上にホワイトインキが適用され、最終的な形成される画像は透明基質を介して観察される。好ましい態様において、カラーインキジェットインキを部分的に硬化したホワイトインキジェットインキ上に噴射する。ホワイトインキが部分的にしか硬化していないと、ホワイトインキ層上におけるカラーインキの濡れ性の向上が観察される。部分的な硬化は、基質表面上のインキを固定する。印刷表面を横切って指又は布でこすり、それによりインキを表面上で不鮮明にするか、又はにじませることができることを観察することにより、ホワイトインキジェットインキが部分的に硬化していることを確かめる迅速な試験を行なうことができる。
【0126】
インキジェット印刷法の他の好ましい態様において、適用される層は無色層である。この層は、例えば画像の接着を向上させるためのプライマーとして、あるいは例えば画像の光沢を向上させるための最外層として存在することができる。
【0127】
上記の層は、好ましくはインキジェット印刷、フレキソグラフ印刷、オフセット印刷及びスクリーン印刷より成る群から選ばれる印刷法により適用される。
【0128】
あるいはまた、上記の層は、浸漬コーティング、ナイフコーティング、押出コーティン
グ、スピンコーティング、スライドホッパーコーティング及びカーテンコーティングより成る群から選ばれるコーティング法により適用される。
【0129】
インキジェット印刷手段
本発明に従う硬化性組成物及びインキを、インキの小滴を噴出させる1個もしくはそれより多い印刷ヘッドにより、印刷ヘッドに相対的に動いているインキ−受容体表面上に、制御されたやり方でノズルを介して噴射することができる。
【0130】
インキジェット印刷系のための好ましい印刷ヘッドは、圧電ヘッドである。圧電インキジェット印刷は、圧電セラミック変換器の、電圧がそれに適用される時の動きに基づく。電圧の適用は、印刷ヘッド中の圧電セラミック変換器の形を変化させて空隙を作り、次いでそれはインキで満たされる。再び電圧が取り除かれると、セラミックはその最初の形に膨張し、印刷ヘッドからインキの滴を噴出させる。しかしながら、インキジェット印刷法は圧電インキジェット印刷に制限されない。他のインキジェット印刷ヘッドを用いることができ、連続型ならびに熱的、静電的及び音響的ドロップオンデマンド(drop on
demand)型のような種々の型が含まれる。
【0131】
高い印刷速度において、インキは印刷ヘッドから容易に噴出しなければならず、それはインキの物理的性質に複数のこと、例えば25℃〜110℃で変り得る噴射温度における低粘度、印刷ヘッドノズルが必要な小滴を形成できるような表面エネルギー、乾燥印刷領域への迅速な転換が可能な均一なインキを強制する。
【0132】
インキジェット印刷ヘッドは通常、動いているインキ−受容体表面を横切って横方向で行ったり来たり走査される。多くの場合、インキジェット印刷ヘッドは、帰り道に印刷しない。二−方向印刷は、高い面積処理量を得るために好ましい。他の好ましい印刷法は、「1回通過印刷法(single pass printing process)」による方法であり、それはインキ−受容体表面の幅全体に及ぶページ幅インキジェット印刷ヘッド又は多数の互い違いのインキジェット印刷ヘッドの使用により達成され得る。1回通過印刷法では、インキジェット印刷ヘッドは通常静止したままであり、インキ−受容体表面がインキジェット印刷ヘッドの下を輸送される。
【0133】
硬化手段
本発明に従う硬化性組成物及びインキを、それらを化学線に暴露することにより、好ましくは紫外線により硬化することができる。
【0134】
硬化手段を、インキジェットプリンターの印刷ヘッドと組み合わせて配置し、それと一緒に移動させ、硬化性組成物が噴射された直後に硬化放射線に暴露されるようにすることができる。
【0135】
そのような配置において、印刷ヘッドに連結され、且つそれと一緒に移動するのに十分に小さい放射線源を備えるのは困難であり得る。従って、光ファイバー束又は内反射性フレキシブルチューブ(internally reflective flexible
tube)のような柔軟性放射線伝導手段により放射線源に連結された静止固定放射線源、例えば硬化UV−光源を用いることができる。
【0136】
あるいはまた、放射線ヘッドの上の鏡を含む鏡の配置により、固定源から放射線ヘッドに化学線を供給することができる。
【0137】
印刷ヘッドと一緒に動かないように配置される放射線源は、硬化するべきインキ−受容体表面を横切って横に、且つ印刷ヘッドの横通過路に隣接して延びる長い放射線源である
こともでき、印刷ヘッドにより形成される画像の連続する列が段階的又は連続的にその放射線源の下を通過するようにすることもできる。
【0138】
発光される光の一部が光−開始剤又は光−開始剤系により吸収され得る限り、高圧もしくは低圧水銀ランプ、冷陰極管、ブラックライト、紫外LED、紫外レーザー及び閃光(flash light)のようないずれの紫外光源も放射線源として用いることができる。これらの中で好ましい源は、300〜400nmの主波長を有する比較的長波長UV−寄与(long wavelength UV−contribution)を示すものである。特にUV−A光源は、それを用いて光散乱が減少し、より有効な内部硬化を生ずる故に、好ましい。
【0139】
UV線は一般に、UV−A、UV−B及びUV−Cとして以下の通りに分類される:
・UV−A:400nm〜320nm
・UV−B:320nm〜290nm
・UV−C:290nm〜100nm。
【0140】
さらに、異なる波長又は照度の2種の光源を連続的又は同時に用いて、画像を硬化することができる。例えば第1のUV−源を、特に260nm〜200nmの領域内のUV−Cが豊富なように選択することができる。その場合、第2のUV−源はUV−Aが豊富であり、例えばガリウムがドーピングされたランプであるか、あるいはUV−A及びUV−Bの両方が高い異なるランプであることができる。2種のUV−源の使用は利点、例えば速い硬化速度及び高い硬化度を有することが見出された。
【0141】
硬化を助長するために、インキジェットプリンターは多くの場合に1個もしくはそれより多い酸素消耗装置(oxygen depletion units)を含む。酸素消耗装置は、硬化環境中の酸素濃度を低下させるために、調整可能な位置及び調整可能な不活性ガス濃度で、窒素又は他の比較的不活性なガス(例えばCO)のブランケット(blanket)を置く。残留酸素レベルは通常、200ppmのように低く保たれるが、一般に200ppm〜1200ppmの範囲内である。
【発明を実施するための形態】
【0142】
実施例
材料
以下の実施例において用いられるすべての材料は、他に特定しなければ、Aldrich Chemical Co.(Belgium)及びAcros(Belgium)のような標準的な供給源から容易に入手可能であった。用いられた水は、脱イオン水であった。
【0143】
VEEAは、2−(ビニルエトキシ)エチルアクリレート、NIPPON SHOKUBAI,Japanから入手可能な二官能基性モノマーである:
【0144】
【化5】

【0145】
M600はジペンタエリトリトールヘキサアクリレートであり、RAHN AGから入手可能なMiramerTM M600に関する略語である。
【0146】
IC127はIrgacureTM 127であり、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン、CIBA SPECIALTY CHEMICALSから入手可能な光開始剤である。
【0147】
Type Iは、以下の構造:
【0148】
【化6】

【0149】
を有するα−ヒドロキシ−ケトンノリッシュI型光開始剤である。
【0150】
COINI−1は、RAHN AGにより供給されるGenopolTM AB、高分子アミノベンゾエート誘導体である。
【0151】
COINI−2は、以下の構造:
【0152】
【化7】

【0153】
を有する重合可能共開始剤である。
【0154】
TEGOTM RAD 2100は、DEGUSSAから入手可能なシリコーンポリエーテルアクリレート界面活性剤である。
【0155】
PET100は、AGFA−GEVAERTからP100C PLAIN/ABASとして入手可能な、帯電防止性を有するブロッキング防止層を背面上に有する100μmの下塗りされないPET基質である。
【0156】
測定
1.光開始剤の溶解性
下記の基準に従い、放射線硬化性組成物の視覚的評価により、光開始剤の溶解性を調べた。
基準:
1=室温で可溶性。
2=室温で不溶性であるが、70℃において可溶性。
3=70℃においてさえ不溶性。
【0157】
2.硬化速度
試料の硬化に必要なランプの最大出力のパーセンテージとして硬化速度を定義した。数が低いほど、硬化速度が高い。試料は、Q−チップを用いる引っ掻きが視覚的損傷を引き起こさない時点に十分に硬化したと考えられた。
【0158】
ランプの最大出力の100%より高いパーセンテージは、ランプの最大出力において試料を十分に硬化するために、コンベアベルトの速度を下げなければならないことを意味する。パーセンテージが高いほど、ベルトを遅くしなければならない。160%の硬化速度は、ランプの最大出力における12.5m/分のベルト速度を意味する。150%〜200%のパーセンテージは、実際の使用の限界(edge)にあると考えられる。200%より高いパーセンテージは、実際の使用のための範囲外であると考えられ、もっと高いパーセンテージは測定されない。
【0159】
3.粘度
Brookfield DV−II+粘度計を用い、25℃において、CPE 40スピンドルを用いて分当たり3回転(RPM)において、調製物の粘度を測定した。50mPa.sより低い粘度は、インキジェット印刷に適しているとみなされた。
【実施例1】
【0160】
この実施例は、本発明に従う重合可能なノリッシュII型光開始剤の合成を例示する。
【0161】
TX−5の合成
アクリル酸 4−{2−ヒドロキシ−3−[2−(9−オキソ−9H−チオキサンテン−2−イルオキシ)−アセトキシ]−プロポキシ}−ブチルエステルの合成:
【0162】
【化8】

【0163】
欧州特許第1380580A号明細書(GREAT LAKES)に従って、2−[(9−オキソ−9H−チオキサンテン−2−イル)オキシ]−酢酸を製造した。
【0164】
(9−オキソ−9H−チオキサンテン−2−イルオキシ)酢酸(4.0g,14ミリモル)、アセトニトリル(55ml)、ジメチルアセトアミド(10mL)、テトラブチルアンモニウムブロミド(0.5g,1.4ミリモル)及び2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール(0.03g,0.114ミリモル)を含有する反応混合物を加熱還流した。この温度で、4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル(2.3g,11.4ミリモル)を加え、混合物を還流温度で16時間撹拌した。混合物を室温
に冷まし、溶媒を減圧下で蒸発させて、8.0gの黄色の油を与えた。生成物をProchrom LC80カラム上で、シリカとしてKromasil Si 60A 10μm及び溶離剤としてジクロロメタン/酢酸エチル(60/40)を用いて精製し、1.8gの黄色の油を与えた。
【0165】
TX−7の合成
アクリル酸 4−{2−ヒドロキシ−3−[2−(9−オキソ−9H−チオキサンテン−2−イルオキシ)−プロピオニルオキシ]プロポキシ}−ブチルエステルの合成:
【0166】
【化9】

【0167】
欧州特許第1380580A号明細書(GREAT LAKES)に従って、2[(9−オキソ−9H−チオキサンテン−2−イル)オキシ]−プロピオン酸を製造した。
【0168】
2−(9−オキソ−9H−チオキサンテン−2−イルオキシ)−プロピオン酸(4.2g,14ミリモル)、アセトニトリル(55ml)、ジメチルアセトアミド(10mL)、テトラブチルアンモニウムブロミド(0.5g,1.4ミリモル)及び2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール(0.03g,0.114ミリモル)を含有する反応混合物を加熱還流した。この温度で、4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル(2.3g,11.4ミリモル)を加え、混合物を還流温度で16時間撹拌した。混合物を室温に冷まし、溶媒を減圧下で蒸発させた。残留油をメチル−tert−ブチルエーテル(100mL)中に溶解し、水酸化ナトリウムの水溶液(1N)及び蒸留水の混合物(1/1)で抽出した。有機層を分離し、MgSO上で乾燥し、濾過し、蒸発させて、3.7gの黄色の油を与えた。
【0169】
BP−3の合成
2−ベンゾイル−安息香酸 3−(4−アクリロイルオキシ−ブトキシ)−2−ヒドロキシ−プロピルエステルの合成:
【0170】
【化10】

【0171】
2−ベンゾイル安息香酸(40.0g,0.1722モル)、アセトニトリル(300mL)、ジメチルアセトアミド(10mL)、テトラブチルアンモニウムブロミド(5.6g,17.22ミリモル)及び2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール(0.3g,1.4ミリモル)を含有する反応混合物を加熱還流した。この温度で、4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル(28.0g,140ミリモル)を加え、混合物を還流温度で16時間撹拌した。混合物を室温に冷まし、溶媒を減圧下で蒸発させた。残留油をメチル−tert−ブチルエーテル(300mL)中に溶解し、水酸化ナトリウムの水溶液(1N)及び蒸留水の混合物(1/2.4)で3回抽出した。有機層を分離し、MgSO上で乾燥し、濾過し、蒸発させて、45.2gの褐色の油を与えた。
【0172】
BP−7の合成
アクリル酸 4−[3−(4−ベンゾイル−フェノキシ)−2−ヒドロキシ−プロポキシ]ブチルエステルの合成:
【0173】
【化11】

【0174】
4−ヒドロキシベンゾフェノン(14.9g,75ミリモル)、アセトニトリル(40mL)、炭酸カリウム(7.8g,56.25ミリモル)及び4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル(7.5g,37.5ミリモル)を含有する反応混合物を加熱還流した。混合物を還流温度で24時間撹拌した。混合物を室温に冷まし、濾過して、溶解しない炭酸カリウムを除去した。濾液を減圧下で蒸発させた。残留油を酢酸エチル(250ml)で希釈し、水酸化ナトリウムの水溶液(1N)及び蒸留水の混合物(4/1)で抽出した。有機層を分離し、MgSO上で乾燥し、濾過し、蒸発させて、15.1gの黄色の油を与えた。生成物をSVP D40 Merck Npカラム上で、溶離剤としてジクロロメタン/n−ヘキサン(50/50)を用いて精製し、5.5gの黄色の油を与えた。
【実施例2】
【0175】
この実施例は、本発明に従う放射線硬化性組成物が2種の比較用重合可能なノリッシュ
II型光開始剤COMPINI−1及びCOMPINI−2と比較して、重合可能なノリッシュII型光開始剤の溶解性の問題を有しておらず、同時に向上した硬化速度、抽出可能な残留物の少ない量及びインキジェット印刷に適した粘度を示すことを例示する。
【0176】
比較用開始剤COMPINI−1の合成
比較用開始剤COMPINI−1は、9−オキソ−9H−チオキサンテン−1−カルボン酸−(2−アクリロイルオキシエチルエステル)である。
【0177】
【化12】

【0178】
10g(39ミリモル)の9−オキソ−9H−チオキサンテン−1−カルボン酸、33.2g(128ミリモル)のトリフェニルホスフィン及び14.8g(13.4mL,128ミリモル)の2−ヒドロキシエチルアクリレートを100mLのジメチルホルムアミド中に溶解した。28mL(128ミリモル)のd−イソプロピル−アゾジカルボキシレートを滴下した。滴下の間に、温度は80℃に上昇した。反応を室温で48時間続けさせた。減圧下に45℃において溶媒を除去した。残留物を水で処理し、200mLのクロロホルムで3回抽出した。沈殿したトリフェニルホスフィンオキシドを濾過により除去し、プールされたクロロホルム画分を200mLの水で2回抽出した。有機画分をMgSO上で乾燥し、減圧下で蒸発させた。過剰の反応生成物を、Kieselgel 60上の調製的クロマトグラフィーにより、溶離剤としてシクロヘキサン/酢酸エチル 1/1を用いて取り出した。プールされた9−オキソ−9H−チオキサンテン−1−カルボン酸−(2−アクリロイルオキシエチルエステル)を含有する画分を減圧下で蒸発させ、残留物を50mLのエタノールで処理した。濾過により9−オキソ−9H−チオキサンテン−1−カルボン酸−(2−アクリロイルオキシエチルエステル)を単離し、エタノールで洗浄し、乾燥した。3.0g(22%)の9−オキソ−9H−チオキサンテン−1−カルボン酸−(2−アクリロイルオキシエチルエステル)が単離された(融点 118−9℃)。
【0179】
比較用開始剤COMPINI−2の合成
比較用開始剤COMPINI−2は、2−プロペン酸−(9−オキソ−9H−チオキサンテン−2−イルエステル)である。
【0180】
【化13】

【0181】
2−ヒドロキシ−チオキサンテン−9−オン:
16g(103ミリモル)のチオサリチル酸を150mLの濃硫酸にゆっくり加えた。混合物を5分間撹拌し、60g(440ミリモル)のフェノールを30分かけて加えた。温度は60℃に上昇した。反応を80℃で2時間続けさせた。反応物を室温に冷まし、3リットルの熱湯にゆっくり加えた。混合物を沸点に5分間保った。混合物を室温に冷ました。沈殿した2−ヒドロキシ−チオキサンテン−9−オンを濾過により単離し、乾燥した
。14.1g(63%)の2−ヒドロキシ−チオキサンテン−9−オンが単離された(融点 232−241℃)。
【0182】
2−プロペン酸−(9−オキソ−9H−チオキサンテン−2−イルエステル):
30g(130ミリモル)の2−ヒドロキシ−チオキサンテン−9−オンを300mLのアセトン中に懸濁させた。63.5g(460ミリモル)の炭酸カリウム及び0.7gのBHTを加えた。33g(260ミリモル)の3−クロロ−プロピオニルクロリドを15分かけて加えた。混合物を加熱還流し、反応を還流において3時間続けさせた。反応混合物を室温に冷まし、沈殿した塩を濾過により除去した。溶媒を減圧下で蒸発させ、粗2−プロペン酸−(9−オキソ−9H−チオキサンテン−2−イルエステル)をProchrom LC80カラム上の調製的カラムクロマトグラフィーにより、シリカとしてKromasil Si 60A 10μm及び溶離剤として塩化メチレンを用いて精製した。15.6g(43.3%)の2−プロペン酸−(9−オキソ−9H−チオキサンテン−2−イルエステル)が単離された。
【0183】
共−開始剤POLCOINI−1の合成
以下のスキームに従って合成を行った:
【0184】
【化14】

【0185】
14.2g(215ミリモル)の85%KOHを100mLのエタノール中に溶解した。温度は30℃に上昇した。30g(178ミリモル)の4−ジメチルアミノ安息香酸を加え、混合物を90分間撹拌した。溶媒を減圧下で蒸発させた。残留物を300mLのメチルtert.ブチルエーテルで処理し、濾過により単離し、乾燥した。
【0186】
9.4g(47ミリモル)の4−ジメチルアミノ安息香酸カリウム塩を、40mLのジメチルアセトアミド中の10g(56ミリモル)の2−ブロモエチルアクリレートの溶液に加えた。1gのBHTを加え、混合物を60℃に2時間加熱した。反応物を室温に冷ました。生成する臭化カリウムを濾過により除去し、150mLのメチルtert.ブチルエーテルを加えた。混合物を150mLの水で抽出した。有機画分を単離し、MgSO上で乾燥し、減圧下で蒸発させた。残留物を150mLのメチルtert.ブチルエーテル中に再溶解し、150mLの1M NaHCO−溶液で抽出した。有機層をMgSO上で乾燥し、減圧下で蒸発させた。残留物を水で処理した。媒体から沈殿したPOLCOINI−1を濾過により単離し、乾燥した。4.3gのPOLCOINI−1が単離された。
【0187】
前駆体9−オキソ−9H−チオキサンテン−1−カルボン酸の合成
9−オキソ−9H−チオキサンテン−1−カルボン酸の合成は、米国特許第4367324号明細書(CIBA−GEIGY)に開示された合成から出発して最適化された。
【0188】
【化15】

【0189】
3−ニトロ−フタルアニリド:
710mLの酢酸中の50g(259ミリモル)の3−ニトロ−フタル酸無水物及び24.7g(24.1mL,266ミリモル)のアニリンを、アルゴン雰囲気下で3時間加熱還流した。減圧下で酢酸を除去し、残留物を0℃において150mLのエタノールで処理した。沈殿した3−ニトロ−フタルアニリドを濾過により単離し、少量の冷エタノールで洗浄し、乾燥した。59.1g(58%)の3−ニトロ−フタルアニリドが単離された(融点 139−141℃)。
【0190】
3−フェニルチオ−フタルアニリド:
185mLのメタノール中の4.63g(204ミリモル)のナトリウムから調製されたばかりのナトリウムメタノラート溶液に、22.2mL(204ミリモル)のチオフェノールを加えた。減圧下で溶媒を除去し、単離されたナトリウムチオフェノラートを185mLのDMSO中に溶解した。49.7g(185ミリモル)の3−ニトロ−フタルアニリドを加え、撹拌しながら混合物を50℃に90分間加熱した。発泡を抑制するために撹拌しながら、混合物を185mLの酢酸と185mLの水の混合物に注意深く加えた。沈殿した3−フェニルチオ−フタルアニリドを濾過により単離し、0℃において水で洗浄し、85℃において減圧下で乾燥した。60.5g(99%)の3−フェニルチオ−フタルアニリドが単離された(融点 150−2℃)。
【0191】
3−フェニルチオ−フタル酸:
34.33g(103.6ミリモル)の3−フェニル−フタルアニリドを466mLの20%水酸化ナトリウム溶液中に懸濁させた。混合物を105℃に30分間加熱した(猛烈な発泡!)。混合物を室温に冷まし、冷却しながら239mLの濃塩酸中に注意深く注いだ。粗3−フェニルチオ−フタル酸を濾過により単離し、330mLの濃塩酸中に懸濁させ、加熱還流し、冷ました。3−フェニルチオ−フタル酸を濾過により単離し、2N塩酸で2回、次いで飽和NaCl−溶液で2回洗浄し、減圧下に85℃において乾燥した。26.7g(94%)の3−フェニルチオ−フタル酸が単離された(融点 154−8℃)。
【0192】
3−フェニルチオ−フタル酸無水物:
25.6g(93.5ミリモル)の3−フェニルチオ−フタル酸及び26.4mL(281ミリモル)の無水酢酸を6時間加熱還流した。反応混合物を室温に冷ました。終夜放置すると、3−フェニルチオ−フタル酸無水物が媒体から沈殿した。16.8gの3−フ
ェニルチオ−フタル酸無水物の第1の収穫を濾過により単離し、乾燥した。濾液をその体積の半分まで蒸発させ、4.1gの3−フェニルチオ−フタル酸無水物の第2の収穫を単離した。20.9g(87%)の3−フェニルチオ−フタル酸無水物が単離された(融点
148−50℃)。
【0193】
9−オキソ−9H−チオキサンテン−1−カルボン酸:
17.5g(68.3ミリモル)の3−フェニルチオ−フタル酸無水物を170mLのトルエン中に懸濁させ、9.64g(72.8ミリモル)のAlClを加え、反応を室温で4時間続けさせた。トルエンをデカンテーションし、残留物を0℃において水で処理した。媒体から沈殿した9−オキソ−9H−チオキサンテン−1−カルボン酸を濾過により単離し、水で洗浄し、乾燥した。15.7g(90%)の粗9−オキソ−9H−チオキサンテン−1−カルボン酸が単離された(融点 269−70℃)。カルボン酸をさらなる精製なしで用いた。
【0194】
前駆体9−オキソ−9H−チオキサンテン−2−カルボン酸の合成
【0195】
【化16】

【0196】
ジフェニルスルフィド−2,4’−ジカルボン酸:
31.08g(202ミリモル)のチオサリチル酸及び50g(202ミリモル)の4−ヨード−安息香酸を410mLの10%NaOHに加えた。12.3gの銅粉末及び2.04gの亜鉛粉末を加え、混合物を激しく撹拌しながら6時間還流させた。発泡を抑制するのは困難であった。反応混合物を室温に冷ました。銅及び亜鉛粉末を濾過により除去した。反応混合物を800mLの水で希釈し、600mLの2N HClで中和した。沈殿したジフェニルスルフィド−2,4’−ジカルボン酸を濾過により単離し、水で3回洗浄し、乾燥した。55gのジフェニルスルフィド−2,4’−ジカルボン酸が単離された。(融点 235−7℃)
【0197】
9−オキソ−9H−チオキサンテン−2−カルボン酸:
52.74(192ミリモル)のジフェニルスルフィド−2,4’−ジカルボン酸を1Lの濃硫酸中に溶解し、反応を室温で24時間続けさせた。反応混合物を12Lの熱湯にゆっくり加えた。混合物を100℃にさらに1時間保った。混合物を室温に冷ました。混合物から沈殿した粗9−オキソ−9H−チオキサンテン−2−カルボン酸を濾過により単離し、水で3回及びエタノールで1回洗浄し、乾燥した。41.76gの粗9−オキソ−9H−チオキサンテン−2−カルボン酸を417mLの2N NaOH中に溶解し、室温で30分間撹拌し、600mLの2N HClを用いてゆっくり酸性化した。混合物を30分間撹拌し、沈殿した9−オキソ−9H−チオキサンテン−2−カルボン酸を濾過により単離し、水で2回及びエタノールで2回洗浄し、乾燥した。31.5g(64%)の9−オキソ−9H−チオキサンテン−2−カルボン酸が単離された(融点:310−6℃)。
【0198】
比較用開始剤CTX−1の合成
9−オキソ−9H−チオキサンテン−1−カルボン酸−3−(4−アクリロイルオキシ−ブトキシ)2−ヒドロキシ−プロピルエステルの合成:
【0199】
【化17】

【0200】
9−オキソ−9H−チオキサンテン−1−カルボン酸(3.8g,15ミリモル)、アセトニトリル(40mL)、ジメチルスルホキシド(23mL)、テトラブチルアンモニウムブロミド(0.5g,1.5ミリモル)及び2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール(0.03g,0.122ミリモル)を含有する反応混合物を加熱還流した。この温度で、4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル(2.4g,12.2ミリモル)を加え、混合物を還流温度で24時間撹拌した。混合物を室温に冷まし、濾過して、残留物である溶解しなかった9−オキソ−9H−チオキサンテン−1−カルボン酸を除去した。濾液を減圧下で蒸発させた。ジメチルスルホキシドを含有する残留油を蒸留水中に入れた。1時間撹拌した後、水層をデカンテーションした。残留物をジクロロメタン(100mL)中に溶解し、水酸化ナトリウムの水溶液(1N)及び蒸留水の混合物(1/2)で抽出した。有機層を分離し、MgSO上で乾燥し、濾過し、蒸発させて4.9gの黄色の油を与えた。生成物をSVP D40 Merck Npカラム上で、溶離剤としてジクロロメタン/酢酸エチル(80/20)を用いて精製し、2.6gの黄色の油を与えた。
【0201】
比較用開始剤CTX−2の合成
9−オキソ−9H−チオキサンテン−2−カルボン酸−3−(4−アクリロイルオキシ−ブトキシ)2−ヒドロキシ−プロピルエステルの合成:
【0202】
【化18】

【0203】
9−オキソ−9H−チオキサンテン−2−カルボン酸(2.0g,7.8ミリモル)、
アセトニトリル(30mL)、ジメチルアセトアミド(20mL)、テトラブチルアンモニウムブロミド(0.3g,0.78ミリモル)及び2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール(0.02g,0.0634ミリモル)を含有する反応混合物を加熱還流した。この温度で、4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル(1.3g,6.34ミリモル)を加え、混合物を還流温度で24時間撹拌した。混合物を室温に冷まし、濾過して、残留物である溶解しなかった9−オキソ−9H−チオキサンテン−2−カルボン酸を除去した。濾液を減圧下で蒸発させた。残留油をメチル−tert−ブチルエーテル(100mL)中に溶解し、水酸化ナトリウムの水溶液(1N)及び蒸留水の混合物(1/4)で抽出した。有機層を分離し、MgSO上で乾燥し、濾過し、蒸発させて2.5gの褐色の油を与えた。
【0204】
比較用開始剤CTX−8の合成
9−オキソ−9H−チオキサンテン−1−カルボン酸 2−ヒドロキシ−3−(2−メチル−アクリロイルオキシ)−プロピルエステルの合成
【0205】
【化19】

【0206】
9−オキソ−9H−チオキサンテン−1−カルボン酸(4.0g,15.6ミリモル)、アセトニトリル(40mL)、ジメチルアセトアミド(10mL)、テトラブチルアンモニウムブロミド(0.5g,1.56ミリモル)及び2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール(0.03g,0.127ミリモル)を含有する反応混合物を加熱還流した。この温度で、グリシジルメタクリレート(1.8g,12.7ミリモル)を加え、混合物を還流温度で8時間撹拌した。混合物を室温に冷まし、濾過して、残留物である溶解しなかった9−オキソ−9H−チオキサンテン−1−カルボン酸を除去した。濾液を減圧下で蒸発させた。残留油をメチル−tert−ブチルエーテル(100mL)中に溶解し、水酸化ナトリウムの水溶液(1N)及び蒸留水の混合物(1/4)で抽出した。有機層を分離し、MgSO上で乾燥し、濾過し、蒸発させて2.5gの黄色の油を与えた。生成物をProchrom LC80カラム上で、シリカとしてKromasil Si 60A 10μm及び溶離剤としてジクロロメタン/酢酸エチル(90/10)を用いて精製し、1.63gの黄色の油を与えた。
【0207】
比較用開始剤CTX−9の合成
9−オキソ−9H−チオキサンテン−2−カルボン酸 2−ヒドロキシ−3−(2−メチル−アクリロイルオキシ)−プロピルエステルの合成
【0208】
【化20】

【0209】
9−オキソ−9H−チオキサンテン−2−カルボン酸(7.7g,30ミリモル)、アセトニトリル(115mL)、ジメチルアセトアミド(77mL)、テトラブチルアンモ
ニウムブロミド(1.0g,3ミリモル)及び2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール(0.05g,0.244ミリモル)を含有する反応混合物を加熱還流した。この温度で、グリシジルメタクリレート(3.5g,24.4ミリモル)を加え、混合物を還流温度で16時間撹拌した。混合物を室温に冷まし、濾過して、残留物である溶解しなかった9−オキソ−9H−チオキサンテン−2−カルボン酸を除去した。濾液を減圧下で蒸発させた。残留油をメチル−tert−ブチルエーテル(100mL)中に溶解し、水酸化ナトリウムの水溶液(1N)及び蒸留水の混合物(2.3/1)で抽出した。有機層を分離し、MgSO上で乾燥し、濾過し、蒸発させて5.9gの褐色の油を与えた。生成物をProchrom LC80カラム上で、シリカとしてKromasil Si 60A 10μm及び溶離剤としてジクロロメタン/酢酸エチル(80/20)を用いて精製し、1.1gの黄色の油を与えた。
【0210】
放射線硬化性組成物の調製
表4及び表5に従って、比較用放射線硬化性組成物COMP−1〜COMP−8ならびに本発明の放射線硬化性組成物INV−1及びINV−2を調製した。重量%(wt%)は、放射線硬化性組成物の合計重量に基づいた。フタル酸ジブチルを、抽出可能な残留物の分析のための内部標準としてそれを用いることができるように、放射線硬化性組成物に加えた。
【0211】
【表4】

【0212】
【表5】

【0213】
比較用放射線硬化性組成物COMP−1〜COMP−8ならびに本発明の放射線硬化性組成物INV−1及びINV−2の両方の100g当たりに30mgのTegorad 2100を加えた。
【0214】
評価
光開始剤COMPINI−1、COMPINI−2、CTX−1、CTX−2、CTX−8、CTX−9、TX−5及びTX−7の放射線硬化性組成物との適合性を評価した。
【0215】
放射線硬化性組成物COMP−1、COMP−3〜COMP−8、INV−1及びINV−2の硬化速度を評価した。バーコーター及び10μmのワイアバー(wired bar)を用い、放射線硬化性組成物をPET100基質上にコーティングした。Fusion VPS/I600ランプ(D−バルブ)が備えられたFusion DRSE−120コンベアを用いてコーティングを硬化し、コンベアはコンベアベルト上のUV−ランプの下に20m/分の速度で試料を輸送した。硬化速度は、試料の硬化に必要なランプの最大出力のパーセンテージとして定義された。
【0216】
Brookfield DV−II+粘度計を用いて、放射線硬化性組成物COMP−1、COMP−3〜COMP−8、INV−1及びINV−2の粘度を測定した。
【0217】
結果を表6にまとめる(*:45℃で分当たり12回転において測定された)。
【0218】
【表6】

【0219】
表6から、本発明に従う放射線硬化性組成物が、比較的高濃度においてさえ、光開始剤の溶解性の問題を示さず、周囲雰囲気下における向上した硬化速度及び十分に噴射可能な調製物に関する範囲内の粘度を示すことが明らかなはずである。
【0220】
抽出可能な残留物の評価
下記の通りに放射線硬化性組成物COMP−4〜COMP−8、INV−1及びINV−2のコーティングされた試料を調製し、抽出可能な残留物を決定した。
【0221】
バーコーター及び10μmのワイアバーを用い、放射線硬化性組成物COMP−4〜COMP−8、INV−1及びINV−2をPET100基質上にコーティングした。Fusion VPS/I600ランプ(D−バルブ)が備えられたFusion DRSE
−120コンベアを用いて各コーティングされた試料を硬化し、コンベアはコンベアベルト上のUV−ランプの下に20m/分の速度で試料を輸送した。ランプはその最大出力において用いられた。
【0222】
抽出法:
COMP−4〜COMP−8、INV−1及びINV−2の7.068cmの2つの試料を50mLのビーカー中に入れ、超音波を用い、室温で30分間、4.5mlのアセトニトリルで抽出した。抽出物を5mLのメスフラスコに移した。試料を少量のアセトニトリルで2回濯ぎ、濯ぎ溶媒を5mLのメスフラスコに、体積が5mLに調整されるまで移した。溶液を十分に混合し、0.45μmのフィルター上で濾過した。各試料の15μlをHPLC上に注入した。
【0223】
クロマトグラフィー法:
Alltechにより供給されるAlltima C18 5μmカラム(150x3.2mm)を用いた。40℃の温度で0.5ml/分の流量を用いた。抽出された開始剤の検出のために、258nm及び312nmにおけるDAD検出器を用いた。
【0224】
すべての試料の場合に、以下のHPLC−法を用いた。
・溶離剤A:HO+0.02M KHPO pH=HPOを用いて2.5
・溶離剤B:HO+0.02M KHPO pH=HPO/CHCN[40/60](v/v)を用いて2.5
・溶離剤C:HO/CHCN[40/60](v/v)
・溶離剤D:HO/CHCN[10/90](v/v)
【0225】
勾配(最後の実施(end run)=38分)を表7により示す。
【0226】
【表7】

【0227】
抽出された試料と同じ条件下で溶離される既知の濃度の各本発明の開始剤の参照試料と比較して、濃度を決定した。各試料に関して、10g/mの合計コーティング重量を仮定した。
【0228】
表8中にまとめられる結果は、本発明に従う放射線硬化性組成物を用いて得られる抽出可能な残留物の少ない量を示している。
【0229】
【表8】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】

[式中:
Aは場合により置換されていることができるベンゾフェノン基及び場合により置換されていることができるチオキサントン基より成る群から選ばれるノリッシュII型開始基を示し;
LはノリッシュII型開始剤部分A及びC=O−基が1〜X位置に位置する2価連結基を示し、ここで位置1はAの芳香環中のLが共有結合している原子として定義され、位置XはC=O−基の炭素原子として定義され;
nは0又は1を示し;
mは0又は1を示し、但しmが0に等しい場合、nは0に等しく;且つ但しAが場合により置換されていることができるチオキサントン基を示す場合、n及びmは両方とも1に等しく;
Xは3〜7の整数を示し;
R1は水素、場合により置換されていることができるアルキル基、場合により置換されていることができるアルケニル基、場合により置換されていることができるアルキニル基、場合により置換されていることができるアラルキル基、場合により置換されていることができるアルカリール基、場合により置換されていることができるアリール基、場合により置換されていることができるヘテロアリール基及びアシル基より成る群から選ばれ;
R2は場合により置換されていることができるアルキル基、場合により置換されていることができるアルケニル基、場合により置換されていることができるアルキニル基、場合により置換されていることができるアラルキル基、場合により置換されていることができるアルカリール基、場合により置換されていることができるアリール基及び場合により置換されていることができるヘテロアリール基より成る群から選ばれ;
但し、R1及びR2の少なくとも1つはアクリレート及びメタクリレートより成る群から選ばれるエチレン性不飽和重合可能基を含有する]
に従う重合可能なノリッシュII型光開始剤。
【請求項2】
式(I)に従う光開始剤に関し、R1が水素及びアシル基より成る群から選ばれる請求項1に記載の重合可能なノリッシュII型光開始剤。
【請求項3】
式(I)に従う光開始剤に関し、nが0に等しい請求項1又は2に記載の重合可能なノリッシュII型光開始剤。
【請求項4】
式(I)に従う光開始剤に関し、mが1に等しい請求項1〜3のいずれか1項に記載の重合可能なノリッシュII型光開始剤。
【請求項5】
式(I)に従う光開始剤に関し、R2が−CHOR3基を示し、ここでR3は水素、場合により置換されていることができるアルキル基、場合により置換されていることができるアルケニル基、場合により置換されていることができるアルキニル基、場合により置換されていることができるアリール基、場合により置換されていることができるヘテロア
リール基及びアシル基より成る群から選ばれる請求項1〜4のいずれか1項に記載の重合可能なノリッシュII型光開始剤。
【請求項6】
式(I)に従う光開始剤に関し、R3が場合により置換されていることができるアルキル基又はアシル基である請求項5に記載の重合可能なノリッシュII型光開始剤。
【請求項7】
少なくとも1個の重合可能エチレン性不飽和基を有する少なくとも1種のジアルキルアミノ置換芳香族共−開始剤及び請求項1〜6のいずれか1項に記載の少なくとも1種の重合可能なノリッシュII型光開始剤を含んでなる放射線硬化性組成物。
【請求項8】
少なくとも1個の重合可能エチレン性不飽和基を有する少なくとも1種のジアルキルアミノ置換芳香族共−開始剤が式(II):
【化2】

[式中、
R1及びR2は独立してアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、アルカリール基、アリール基及びヘテロアリール基より成る群から選ばれ;
R3からR6は独立して水素、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アシル基、チオアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン、アラルキル基、アルカリール基、アリール基及びヘテロアリール基より成る群から選ばれ;
R7は水素、アルデヒド基、ケトン基、エステル基、アミド基、アシル基、チオアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン、ニトリル基、スルホネート基、スルホンアミド基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、アルカリール基、アリール基及びヘテロアリール基より成る群から選ばれ;
R1とR2、R1とR3、R2とR5、R3とR4、R4とR7、R5とR6、及びR6とR7は5−〜8−員環の形成に必要な原子を示すことができ;且つ但し、芳香族アミンは少なくとも1個のα−水素を有し;そして
R1からR7の少なくとも1個はアクリレート、置換アクリレート、メタクリレート、スチレン、アクリルアミド、メタクリルアミド、アリルエステル、アリルエーテル、ビニルエステル、ビニルエーテル、フマレート、マレート、マレイミド及びビニルニトリルより成る群から選ばれる重合可能エチレン性不飽和官能基を含む]
に従う共−開始剤である請求項7に記載の放射線硬化性組成物。
【請求項9】
式(II)に従う共−開始剤に関し、R7がアルデヒド、ケトン、エステル及びアミドより成る群から選ばれる電子求引性基を示す請求項8に記載の放射線硬化性組成物。
【請求項10】
式(II)に従う共−開始剤に関し、R3、R4、R5及びR6がすべて水素を示す請求項8又は9に記載の放射線硬化性組成物。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の放射線硬化性組成物を含む放射線硬化性インキジェットインキ。
【請求項12】
a)請求項7〜10のいずれか1項に記載の放射線硬化性組成物を準備し;そして
b)放射線硬化性組成物を少なくとも部分的に硬化させる
段階を含んでなるインキジェット印刷法。
【請求項13】
放射線硬化性組成物を基質に適用し、少なくとも部分的に硬化した放射線硬化性組成物上にインキジェットインキを印刷する請求項12に記載のインキジェット印刷法。
【請求項14】
放射線硬化性組成物を基質上に噴射する請求項12に記載のインキジェット印刷法。
【請求項15】
光開始剤を含有する放射線硬化性組成物の硬化した層から抽出可能な光開始剤の量を減少させるための請求項1〜6のいずれか1項に記載の重合可能なノリッシュII型光開始剤の使用。

【公表番号】特表2012−502130(P2012−502130A)
【公表日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−525554(P2011−525554)
【出願日】平成21年9月4日(2009.9.4)
【国際出願番号】PCT/EP2009/061442
【国際公開番号】WO2010/029016
【国際公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(507253473)アグフア・グラフイクス・ナームローゼ・フエンノートシヤツプ (21)
【Fターム(参考)】