説明

放熱グリース用プライマー及び放熱部品

【課題】 ポンピングアウト現象のない、長期にわたり安定した放熱グリースの熱伝導性性能を発揮することができる信頼性の高い放熱グリース用プライマー、及びこのプライマーが塗布されてなる放熱部品を提供する。
【解決手段】 (A)ポリジオルガノシロキサン:成分(A)と成分(B)の合計量の20〜80質量%、
(B)R13SiO0.5単位(R1は炭素数1〜10の1価炭化水素基)及びSiO2単位を含有し、R13SiO0.5単位/SiO2単位のモル比が0.6〜1.7であるポリオルガノシロキサン:成分(A)と成分(B)の合計量の80〜20質量%、
(C)有機溶剤:組成物全体の0〜99.9質量%
を含有する組成物からなる放熱グリース用プライマー、及び放熱グリースと接触する放熱部品の両面又は片面に、上記プライマーが塗布されてなることを特徴とする放熱部品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放熱グリースの長期にわたる使用に適した放熱グリース用プライマー及びこのプライマーが塗布されてなる放熱部品に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線基板上に実装される電子部品であるCPU等のICやトランジスターなどは、使用時の発熱による温度上昇によって性能が低下したり、破損したりすることがあるため、従来、これらのパッケージと放熱フィン等の間に熱伝導性のよい放熱シートや放熱グリースが用いられている。
【0003】
放熱シートは、手軽にマウントできるメリットはあるが、CPUや放熱フィン等の表面は一見平滑に見えてもミクロ的に観れば凸凹があるため、実際はそれらの被着面へ確実に密着ができず、空気層が介在し、結果的には、放熱効果を性能通りに発揮できない不都合がある。それを解決するために、放熱シートの表面に粘着層等を設けて密着性を向上させたものや、放熱シートの硬度を低硬度化させたものなどが提案されているが、これらもまた十分なものではない。
【0004】
それに対して、放熱グリースは、パッケージや放熱フィン等の表面の凹凸に影響されることなく、それら被着面に密着し、性能が十分に発揮できる。しかし、環境による温度変化や電源のON/OFFなどによる温度変化があると、プリント基板やパッケージ、放熱フィンなどの膨張係数の違いから放熱グリースの接している部分にズレや反りが発生し、これによって放熱グリースが経時で徐々に外側にはみ出てしまい、場合によってはグリースそのものが存在しない部分ができてしまうことがある。当然その部分は熱が伝わりにくくなるので、結果として熱抵抗が上昇してしまう等の問題点があった(以下、これをポンピングアウト現象と呼ぶ)。
【0005】
近年、高性能なCPUやトランジスター、IGBTなど、高発熱な電子部品が台頭してきており、これらにとってはポンピングアウト現象による放熱性の低下は大きな問題となってきている。
【0006】
従来から、高性能な放熱グリースとして各種放熱用シリコーングリースが知られている(特公昭52−33272号、特公昭59−52195号、特開昭52−125506号、特開昭57−36302号、特開昭62−43492号、特開平2−212556号、特開平3−162493号公報:特許文献1〜7)が、高発熱な電子部品に対してのポンピングアウト現象の対策は十分ではない。
【0007】
【特許文献1】特公昭52−33272号公報
【特許文献2】特公昭59−52195号公報
【特許文献3】特開昭52−125506号公報
【特許文献4】特開昭57−36302号公報
【特許文献5】特開昭62−43492号公報
【特許文献6】特開平2−212556号公報
【特許文献7】特開平3−162493号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、ポンピングアウト現象のない、長期にわたり安定した放熱グリースの熱伝導性性能を発揮することができる信頼性の高い放熱グリース用プライマー、及びこのプライマーが塗布されてなる放熱部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、(A)ポリジオルガノシロキサンと(B)R13SiO0.5単位(R1は炭素数1〜10の1価炭化水素基)及びSiO2単位を含有し、R13SiO0.5単位/SiO2単位のモル比が0.6〜1.7であるポリオルガノシロキサンとを質量比で20/80〜80/20の割合で、更に(C)有機溶剤を組成物全体の0〜99.9質量%の割合で含有する組成物からなる放熱グリース用プライマーが、放熱グリースに対して非常に有効なプライマーであることを知見した。
【0010】
即ち、放熱部品の放熱グリースを接触させる部分に、予め上記放熱グリース用プライマーを塗布した後、放熱グリースを塗布することにより、ポンピングアウト現象のない、長期にわたり安定した放熱グリースの熱伝導性性能を有する信頼性の高い放熱部品が得られることを見出し、本発明をなすに至った。
【0011】
従って、本発明は、下記に示す放熱グリース用プライマー及び放熱部品を提供する。
〔1〕(A)ポリジオルガノシロキサン
成分(A)と成分(B)の合計量の20〜80質量%
(B)R13SiO0.5単位(R1は炭素数1〜10の1価炭化水素基)及びSiO2単位を含有し、R13SiO0.5単位/SiO2単位のモル比が0.6〜1.7であるポリオルガノシロキサン 成分(A)と成分(B)の合計量の80〜20質量%
(C)有機溶剤 組成物全体の0〜99.9質量%
を含有する組成物からなる放熱グリース用プライマー。
〔2〕放熱グリースと接触する放熱部品の両面又は片面に、〔1〕記載の放熱グリース用プライマーが塗布されてなることを特徴とする放熱部品。
【発明の効果】
【0012】
本発明の放熱グリース用プライマーは、放熱部品の放熱グリースに接触する部分に予め塗布した後、放熱グリースを塗布することにより、経時において放熱グリースがポンピングアウト現象を起こすことがないことから、放熱部品の信頼性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明に用いられる成分(A)は、ポリジオルガノシロキサンであり、下記式で示されるものであることが好ましい。
23SiO−(R22SiO)p−SiR23
22(HO)SiO−(R22SiO)p−SiR22(OH)
(式中、R2は同一又は異種の炭素数1〜10の1価炭化水素基であり、pはこのポリジオルガノシロキサンの25℃における粘度を500mPa・s以上とする数である。)
【0014】
ここで、R2は炭素数1〜10、特に1〜6の1価炭化水素基であり、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などのアルキル基、シクロヘキシル基などのシクロアルキル基、フェニル基、トリル基などのアリール基などが挙げられ、特にメチル基、フェニル基が好ましい。
【0015】
このポリジオルガノシロキサンの性状は、オイル状、生ゴム状であればよい。成分(A)の25℃における粘度は、オイル状のものであれば500mPa・s以上、特に10,000mPa・s以上であることが好ましい。500mPa・s未満では凝集力(保持力)が低下する場合がある。また、生ゴム状のものであれば、30質量%の濃度となるようにトルエンで溶解したときの粘度が100,000mPa・s以下であることが好ましい。100,000mPa・sを超えると、組成物が高粘度となりすぎて製造時の撹拌が困難になる場合がある。
なお、本発明において、粘度はB型粘度計により測定した25℃における値である。
【0016】
また、成分(A)の分子構造中には、その流動性を妨げない程度のR2SiO1.5単位、更にはR220.5Si−R3−SiR220.5単位(R2は上記と同様、R3は2価の炭化水素基)を含有することもできる。更に、成分(A)は1種を単独でも2種以上を併用してもよい。
【0017】
本発明に用いられる成分(B)は、R13SiO0.5単位(R1は炭素数1〜10の1価炭化水素基)及びSiO2単位を含有し、R13SiO0.5単位/SiO2単位のモル比が0.6〜1.7、好ましくは0.7〜1.3であるポリオルガノシロキサンである。R13SiO0.5単位/SiO2単位のモル比が0.6未満では粘着力やタックが低下し、1.7を超えると粘着力や保持力が低下する。
【0018】
なお、上記単位中のR1は、炭素数1〜10、特に1〜6の1価炭化水素基であり、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などのアルキル基、シクロヘキシル基などのシクロアルキル基、フェニル基、トリル基などのアリール基、ビニル基、アリル基、ヘキセニル基などのアルケニル基等が挙げられ、中でもメチル基が好ましい。
【0019】
成分(B)は、OH基を含有していてもよく、また、本発明の特性を損なわない範囲でR1SiO1.5単位,R12SiO単位を成分(B)中に含有させることも可能である。なお、成分(B)は1種単独でも2種以上を併用してもよい。
【0020】
成分(A),成分(B)の配合比は、質量比として20/80〜80/20、特に30/70〜70/30とすることが好ましい。成分(A)のポリジオルガノシロキサンの配合比が20/80より低いと粘着力や保持力が低下し、80/20を超えると粘着力やタックが低下する。
【0021】
成分(A),(B)は、単純に混合したものを使用してもよいし、成分(A)に下記式
22(HO)SiO−(R22SiO)p−SiR22(OH)
(R2,pは上記と同じである。)
で示されるものを含有し、成分(B)にOH基を含有したものを用いる場合、成分(A),(B)の縮合反応物として使用してもよい。縮合反応を行うには、トルエンなどの溶剤に溶解した成分(A),(B)の混合物をアルカリ性触媒を用い、室温乃至還流下で反応させればよい。
【0022】
本発明の放熱グリース用プライマーは、塗布が可能な低粘度の場合、そのままで放熱グリース用プライマーとして使用してもよいが、作業性を向上させるため、成分(C)の有機溶剤で希釈して使用される。
【0023】
成分(C)の有機溶剤としては、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤、ヘキサン、オクタン、イソパラフィンなどの脂肪族系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸イソブチルなどのエステル系溶剤、ジイソプロピルエーテル、1,4−ジオキサンなどのエーテル系溶剤、エタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール系溶剤、又はこれらの混合溶剤が使用される。この際の配合比や有機溶剤は、塗布方法や乾燥条件など使用条件に見合うものを選択すればよい。
【0024】
有機溶剤の使用量は、組成物全体の0〜99.9質量%、好ましくは50〜99質量%、より好ましくは80〜95質量%の範囲である。99.9質量%より多いと、塗布してもプライマーとしての効果が出にくくなる。
【0025】
このようにして得られた本発明の放熱グリース用プライマーは、放熱部品の放熱グリースを接触させる部分に塗布するものである。
【0026】
ここで、本発明に用いられる放熱部品としては、CPUやトランジスター、IGBTなどの電子部品やそれが実装されたプリント基板などの発熱する部品と、それらから発生する熱を発散するパッケージや放熱フィンなどの放熱させる部品が挙げられる。発熱や放熱させる部品を構成する材質には、アルミニウム、銅、ニッケル、シリコン、基板を構成するプラスチック類などが挙げられるが、本発明の放熱グリース用プライマーは、いかなる材質においても効果を発揮する。本発明においては、これら放熱部品の発熱する部品及び放熱させる部品の少なくとも一方、好ましくは両方の放熱グリースと接触する部分に本発明の放熱グリース用プライマーを塗布するものである。
【0027】
放熱グリース用プライマーの塗布方法は、公知の塗工方式を用いて塗布すればよく、はけ塗りやスプレー塗布、デップ塗布などが挙げられる。また、放熱グリース用プライマーが有機溶剤を含む場合は、自然乾燥や温風乾燥、赤外線加熱などの乾燥工程を行ってもよい。これらの塗布方法や乾燥方法には特に制限はなく、使用される部品の材質や耐熱性、作業性、工程が行われる環境などを考慮して選択すればよい。
【0028】
このようにして得られた本発明の放熱部品は、発熱する部品及び放熱させる部品の少なくとも一方の放熱用グリースが接触する部分に放熱グリース用プライマーが塗布されてなるものであり、これら発熱する部品と放熱させる部品との間に、本発明の放熱グリース用プライマーを介して放熱グリースが塗布されるものである。
【0029】
ここで、使用される放熱グリースは公知のものであり、特に制限はないが、従来から高性能な放熱グリースとして知られている各種放熱用シリコーングリースを用いることができる。この放熱用シリコーングリースは、ベースオイルであるシリコーンオイルに熱伝導性フィラーを主成分として配合、グリース状としたものであり、熱伝導性フィラー由来の熱伝導性とシリコーンオイル由来の耐熱性や耐久性を両立したものである。
【0030】
本発明において、放熱グリースは、放熱部品の発熱する部品及び/又は放熱させる部品に放熱グリース用プライマーを介して塗布されることとなる。本発明の放熱グリース用プライマーは、放熱部品と放熱グリースの両方に対して非常に馴染みがよいため、放熱部品から本プライマー自身がズレることもなく、また放熱グリースを保持しつづけることにより、経時における放熱グリースのポンピングアウト現象を防止する。特に放熱グリースが放熱用シリコーングリースである場合は、本放熱グリース用プライマーの成分もシリコーンであるため相性がよく、ポンピングアウト現象の防止効果が大きい。また、本プライマーの成分が耐熱性や耐久性のよいシリコーンであるため、放熱用シリコーングリースの耐熱性や耐久性に悪影響を及ぼすこともない。更に、プライマー層の厚さは、好ましくは10μm以下、特に好ましくは1μm以下の薄膜であり、放熱用シリコーングリースの放熱特性にもほとんど影響しない。
【実施例】
【0031】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記の例において%は質量%を示し、Meはメチル基を示し、粘度はB型粘度計により測定した25℃における値を示す。
【0032】
[放熱グリース用プライマー調製1]
30%の濃度となるようにトルエンで溶解したときの粘度が42,000mPa・sであり、分子鎖末端がOH基で封鎖されたポリジメチルシロキサン450g、Me3SiO0.5単位、SiO2単位からなるポリシロキサン(Me3SiO0.5単位/SiO2単位=0.80)の60%トルエン溶液920g、トルエン300gを3リットルのフラスコに入れ、還流させながら4時間加熱した。冷却した後、ここから50g採取し、更にそこに550gのトルエンを加え、有効成分5%の放熱グリース用プライマーP−1を調製した。
【0033】
[放熱グリース用プライマー調製2]
30%の濃度となるようにトルエンで溶解したときの粘度が67,000mPa・sであり、分子鎖末端がOH基で封鎖されたポリジメチルシロキサン450gを用いた以外は、全て調製1と同様にして有効成分5%の放熱グリース用プライマーP−2を調製した。
【0034】
[放熱グリース用プライマー調製3]
30%の濃度となるようにトルエンで溶解したときの粘度が58,000mPa・sであり、分子鎖末端がトリメチルシリル基で封鎖されたポリジメチルシロキサン450gを用いた以外は、全て調製1と同様にして有効成分5%の放熱グリース用プライマーP−3を調製した。
【0035】
[放熱グリース用プライマー調製4]
30%の濃度となるようにトルエンで溶解したときの粘度が42,000mPa・sであり、分子鎖末端がOH基で封鎖されたポリジメチルシロキサン350g、Me3SiO0.5単位、SiO2単位からなるポリシロキサン(Me3SiO0.5単位/SiO2単位=0.70)の60%トルエン溶液1,080gを用いた以外は、全て調製1と同様にして有効成分5%の放熱グリース用プライマーP−4を調製した。
【0036】
[放熱グリース用プライマー調製5]
30%の濃度となるようにトルエンで溶解したときの粘度が42,000mPa・sであり、分子鎖末端がOH基で封鎖されたポリジメチルシロキサン50gとトルエン950gを3リットルのフラスコに入れ、室温にて24時間撹拌分散させ、有効成分5%の放熱グリース用プライマーP−5を調製した。
【0037】
[放熱グリース用プライマー調製6]
Me3SiO0.5単位、SiO2単位からなるポリシロキサン(Me3SiO0.5単位/SiO2単位=0.80)の60%トルエン溶液100gとトルエン1,100gを3リットルのフラスコに入れ、室温にて4時間撹拌溶解させ、有効成分5%の放熱グリース用プライマーP−6を調製した。
【0038】
[放熱グリース用プライマー調製7]
30%の濃度となるようにトルエンで溶解したときの粘度が42,000mPa・sであり、分子鎖末端がOH基で封鎖されたポリジメチルシロキサン100g、Me3SiO0.5単位、SiO2単位からなるポリシロキサン(Me3SiO0.5単位/SiO2単位=0.80)の60%トルエン溶液1,500gにした以外は、全て調製1と同じにして有効成分5%の放熱グリース用プライマーP−7を調製した。
【0039】
[放熱グリース用プライマー調製8]
30%の濃度となるようにトルエンで溶解したときの粘度が42,000mPa・sであり、分子鎖末端がOH基で封鎖されたポリジメチルシロキサン900g、Me3SiO0.5単位、SiO2単位からなるポリシロキサン(Me3SiO0.5単位/SiO2単位=0.80)の60%トルエン溶液167gにした以外は、全て調製1と同じにして有効成分5%の放熱グリース用プライマーP−8を調製した。
【0040】
[実施例1〜8、比較例1〜6]
放熱グリース用プライマーP−1〜P−8を用い、テストピース作製後、ポンピングアウト試験を行った。結果を表1,2に示す。
なお、本発明に係わる効果に関する試験は次のように行った。
【0041】
〔テストピース1の作製〕
調製した放熱グリース用プライマーをガーゼに含ませ、2枚の5cm角の透明スライドガラスの表面(片面のみ)に塗りつけた後、70℃乾燥機にて1時間放置し、希釈溶剤を揮発させた。1時間後、スライドガラスを乾燥機から取り出し、室温まで冷却した。このときのプライマーの厚さは1μm以下であった。シリコーン放熱グリースG−765(信越化学工業社製)0.15gをスライドガラスの中央に塗布し、もう一枚のスライドガラスで挟み込み(プライマー塗布面が内側になるようにする)、2枚のスライドガラスが動かないようにクリップで固定した。このとき0.4mmのスペーサーを2枚の間に入れ、放熱グリースの厚みを実質的に0.4mmにした。
【0042】
〔テストピース2の作製〕
調製した放熱グリース用プライマーをガーゼに含ませ、1枚の5cm角の透明スライドガラスの表面(片面のみ)に塗りつけた後、70℃乾燥機にて1時間放置し、希釈溶剤を揮発させた。1時間後、スライドガラスを乾燥機から取り出し、室温まで冷却した。このときのプライマーの厚さは1μm以下であった。シリコーン放熱グリースG−765(信越化学工業社製)0.15gをスライドガラスの中央に塗布し、もう一枚の放熱グリース用プライマーが塗られていないスライドガラスで挟み込み、2枚のスライドガラスが動かないようにクリップで固定した。このとき0.4mmのスペーサーを2枚の間に入れ、放熱グリースの厚みを実質的に0.4mmにした。
【0043】
〔テストピース3の作製〕
調製した放熱グリース用プライマーをガーゼに含ませ、1枚づつの5cm角のアルミニウム板とスライドガラスの表面(片面のみ)に塗りつけた後、70℃乾燥機にて1時間放置し、希釈溶剤を揮発させた。1時間後、アルミニウム板とスライドガラスを乾燥機から取り出し、室温まで冷却した。このときのプライマーの厚さは1μm以下であった。シリコーン放熱グリースG−765(信越化学工業社製)0.15gをアルミニウム板の中央に塗布し、もう一枚のスライドガラスで挟み込み(このときスライドガラスのプライマー塗布面が内側になるようにする)、2枚のアルミニウム板とスライドガラスが動かないようにクリップで固定した。このとき0.4mmのスペーサーを2枚の間に入れ、放熱グリースの厚みを実質的に0.4mmにした。
【0044】
〔テストピース4の作製〕
調製した放熱グリース用プライマーをガーゼに含ませ、1枚の5cm角のアルミニウム板の表面(片面のみ)に塗りつけた後、70℃乾燥機にて1時間放置し、希釈溶剤を揮発させた。1時間後、アルミニウム板を乾燥機から取り出し、室温まで冷却した。このときのプライマーの厚さは1μm以下であった。シリコーン放熱グリースG−765(信越化学工業社製)0.15gをアルミニウム板の中央に塗布し、一枚の放熱グリース用プライマーが塗られていないスライドガラスで挟み込み、2枚のアルミニウム板とスライドガラスが動かないようにクリップで固定した。このとき0.4mmのスペーサーを2枚の間に入れ、放熱グリースの厚みを実質的に0.4mmにした。
【0045】
〔テストピース5の作製〕
調製した放熱グリース用プライマーをガーゼに含ませ、1枚の5cm角のスライドガラスの表面(片面のみ)に塗りつけた後、70℃乾燥機にて1時間放置し、希釈溶剤を揮発させた。1時間後、スライドガラスを乾燥機から取り出し、室温まで冷却した。このときのプライマーの厚さは1μm以下であった。シリコーン放熱グリースG−765(信越化学工業社製)0.15gをスライドガラスの中央に塗布し、一枚の放熱グリース用プライマーが塗られていないアルミニウム板で挟み込み、2枚のアルミニウム板とスライドガラスが動かないようにクリップで固定した。このとき0.4mmのスペーサーを2枚の間に入れ、放熱グリースの厚みを実質的に0.4mmにした。
【0046】
〔テストピース6の作製〕
シリコーン放熱グリースG−765(信越化学工業社製)0.15gを放熱グリース用プライマーが塗られていないスライドガラスの中央に塗布し、もう一枚の放熱グリース用プライマーが塗られていないスライドガラスで挟み込み、2枚のスライドガラスが動かないようにクリップで固定した。このとき0.4mmのスペーサーを2枚の間に入れ、放熱グリースの厚みを実質的に0.4mmにした。
【0047】
〔テストピース7の作製〕
シリコーン放熱グリースG−765(信越化学工業社製)0.15gを放熱グリース用プライマーが塗られていないスライドガラスの中央に塗布し、もう一枚の放熱グリース用プライマーが塗られていないアルミニウム板で挟み込み、2枚のアルミニウム板とスライドガラスが動かないようにクリップで固定した。このとき0.4mmのスペーサーを2枚の間に入れ、放熱グリースの厚みを実質的に0.4mmにした。
【0048】
〔ポンピングアウト試験〕
−40℃(30分)←→+125℃(30分)のヒートサイクル試験器に、上記テストピースを垂直になるように立て掛けて、1,000サイクル後にグリース上端が初期位置から下方にどの位ズレたかを測定した。
【0049】
【表1】

【0050】
【表2】

【0051】
[実施例9,10、比較例7]
放熱グリース用プライマーP−1を用い、テストピース作製後、熱抵抗試験を行った。結果を表3に示す。なお、本発明に係わる効果に関する試験は次のように行った。
【0052】
〔熱抵抗測定用試験片1の作製〕
調製した放熱用グリースプライマーP−1をガーゼに含ませ、熱抵抗試験用の2枚の標準アルミニウムプレート表面(片面のみ)に塗りつけた後、70℃の乾燥機にて1時間放置し、希釈溶剤を揮発させた。1時間後、これら熱抵抗試験用の標準アルミニウムプレート(直径1.26mm、厚み1mm、円形状)を乾燥機から取り出し、室温まで冷却させた。このときのプライマーの厚さは1μm以下であった。シリコーン放熱グリースG−765(信越化学工業社製)0.15gをその2枚の標準アルミニウムプレートで挟み込んでから(プライマー塗布面が内側になるようにする)、14N/cm2で1時間圧縮し、熱抵抗を測定した。このとき0.4mmのスペーサーを2枚の間に入れ、放熱グリースの厚みを実質的に0.4mmにした。
【0053】
〔熱抵抗測定用試験片2の作製〕
放熱用グリースプライマーP−1を、アルミニウムプレート2枚のうち1枚の片面のみに塗布した以外は、全て熱抵抗測定用試験片1の作製と同じにし、熱抵抗を測定した。
【0054】
〔熱抵抗測定用試験片3の作製〕
放熱用グリースプライマーP−1を塗布せず、2枚の未塗布のアルミニウムプレートを使用した以外は、全て熱抵抗測定用試験片1の作製と同じにし、熱抵抗を測定した。
【0055】
〔熱抵抗試験方法〕
上記で作製した試験片を用いて、25℃における熱抵抗をレーザーフラッシュ法による熱抵抗測定機(Holometrix Micromet社製、Micro Flash300)を用いて測定した。また、耐久性を確認するために、ここで作製したテストピースに14N/cm2の圧力を掛けながら、−40℃(30分)←→+125℃(30分)の冷熱サイクル試験器にて1,000サイクル曝し、その熱抵抗も測定した。
【0056】
【表3】

【0057】
表3の結果から明らかなように、初期熱抵抗値は何れも優位差が見られない。従って本発明の放熱用グリースプライマーは、基材に塗布されていても放熱用シリコーングリースそのものの放熱特性に与える影響は殆どない。しかしながら、耐久性(冷熱サイクル試験)においては、プライマーを塗布することによって熱抵抗の変化が少なくなり、経時において好適な放熱特性が維持される。これは実施例に示したようにプライマーを塗布することにより放熱用シリコーングリースのポンピング現象が抑えられるためである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリジオルガノシロキサン
成分(A)と成分(B)の合計量の20〜80質量%
(B)R13SiO0.5単位(R1は炭素数1〜10の1価炭化水素基)及びSiO2単位を含有し、R13SiO0.5単位/SiO2単位のモル比が0.6〜1.7であるポリオルガノシロキサン 成分(A)と成分(B)の合計量の80〜20質量%
(C)有機溶剤 組成物全体の0〜99.9質量%
を含有する組成物からなる放熱グリース用プライマー。
【請求項2】
放熱グリースと接触する放熱部品の両面又は片面に、請求項1記載の放熱グリース用プライマーが塗布されてなることを特徴とする放熱部品。


【公開番号】特開2006−114546(P2006−114546A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−297485(P2004−297485)
【出願日】平成16年10月12日(2004.10.12)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】