説明

放熱シート及び放熱シートの製造方法

【課題】導電性重合体浸潤シートに残留塩素が存在せず、かつ、発熱デバイスが発生する熱を効率よく放散することが可能であるという熱的特性を有する。
【解決手段】酸化剤である芳香族スルホン酸第2鉄を用いて重合された含硫黄π共役系導電性重合体が浸潤された含硫黄π共役系導電性重合体浸潤シート18の主面18a及び裏面18bの双方又はいずれか一方の面に金属層16又は20が密着された構成の放熱シートである。含硫黄π共役系導電性重合体浸潤シートは、芳香族スルホン酸第2鉄を第1溶媒で希釈した溶液に浸潤させた後、含硫黄π共役系導電性重合体形成物質を第2溶媒で希釈した溶液に浸潤し重合反応させて製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、パワーデバイスあるいは発光デバイスから発生する熱を効率よく外部に放散させる放熱用サーマルモジュール等の構成素材である放熱シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パワーデバイスあるいは発光デバイスといった発熱デバイスに対しては、放熱機構を直接取り付けることによって、これら発熱デバイスから発生する熱を発熱デバイス外に放散させる構成が採用されてきた。ここで、放熱機構とは、ヒートシンク(heat sink)や放熱機能を有する筺体、あるいはサーマルモジュール等を指す。
【0003】
発熱デバイスは、自己が発生する熱によって過熱されて自己の温度が上昇することにより、電気的特性の低下あるいは光学的特性の低下等の性能の劣化が起こる。従って、発熱デバイスの性能を維持するためには、発熱デバイスから発生する熱を効率よく放散して、発熱デバイスの温度上昇を抑える必要がある。
【0004】
そこでこの課題を解決する手法として、一般に発熱デバイスとヒートシンクとの間の接触熱抵抗を低減するため、放熱シートを介在させる手段がとられてきた。
【0005】
放熱シートとして単体の金属板を利用することが考えられるが、放熱シートを単体の金属板とすると重量が重くなる。そのため、単体の金属板を放熱シートとして利用することは、重量を可能な限り小さくすることが求められるモバイル電子機器等への応用は敬遠される。そのため、最近は、放熱シートの材料として、単体の金属板に代えて、軽量であってしかも放熱効果の高いグラファイトシートを利用することが提案されている(例えば、特許文献1及び2参照)。
【0006】
しかしながら、グラファイトシートは層間剥離が生じやすいという問題が指摘されている。そこで、グラファイトシートの層間剥離を生じにくくするため、グラファイトシートを金属線からなる網状体で挟んで一体化して放熱シートとして加工した例が開示されている(特許文献3参照)。
【0007】
また、天然黒鉛等の黒鉛粉末をシート化して得られるグラファイトフィルムを用い、このグラファイトフィルムの表面に無機物質層を形成させて形成される放熱シートが開示されている(特許文献4参照)。ここで、グラファイトフィルムの表面に形成される無機物質層とは、メッキ等によって形成される金属膜、あるいは無機物質を形成するための液状体を直接グラファイトフィルムに塗布して形成される無機物質膜等である。この放熱シートは、電子機器などの湾曲部分に容易に取り付けられるという柔軟性を有することが特長である。
【0008】
しかしながら、熱伝導層としてグラファイト材を用いて構成される放熱シートにあっては、この放熱シートを切断する際に炭素粉等の塵が発生する。発熱デバイスとヒートシンクとの間に放熱シートを介在させる作業を行うに当たってこの放熱シートを必要な大きさに切断する必要があるが、この際に発生する炭素粉等がヒートシンクに取り付けられる電子モジュールに付着し、電気的なショートが生じる等の不都合が生じる可能性がある。
【0009】
また、上述の特許文献3に開示されている放熱シートによれば大変優れた放熱特性が得られるが、放熱シートの切断面から金属繊維が突起し、この金属繊維に対する取り扱いが面倒である。この金属繊維は、放熱用サーマルモジュール等に取り付けられる電子モジュールに接触すると電気的なショートが生じる等の不都合が生じる可能性もある。
【0010】
そこで、発熱デバイスから発生される熱を効率よく放散することが可能であるという熱的特性を有するとともに、軽量かつ放熱用サーマルモジュール等への取り付け作業が容易であり、電子モジュールに悪影響を与える炭素粉等の塵が発生しない放熱シートが開示されている(特許文献5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平11−240706号公報
【特許文献2】特開2003−168882号公報
【特許文献3】特開2005−229100号公報
【特許文献4】特開2008−78380号公報
【特許文献5】特許第4202409号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上述の特許文献5に開示されている放熱シートは、セルロースシートにポリピロール重合体が浸潤されたポリピロール浸潤シートの主面及び裏面の双方又はいずれか一方の面に金属層が密着されて成る放熱シートである。ポリピロール浸潤シートを作製する工程において、まず、セルロースシートに塩化第2銅を含浸させ、次に気体状態のピロールを接触させてピロールを重合させることによってポリピロール浸潤シートが作製されている。
【0013】
この方法によって作製された放熱シートは、大変優れた放熱特性を有し、軽量かつ放熱用サーマルモジュール等への取り付け作業が容易であり、電子モジュールに悪影響を与える炭素粉等の塵が発生しないという上述した優れた効果が得られるが、放熱に寄与する導電性高分子であるポリピロールのドーパント酸化剤として塩化第2銅が使用されており、ポリピロール浸潤シートにハロゲン元素である塩素が残留している。そのため、この残留塩素が放熱シートから徐々に放出される。従って、この残留塩素によって腐食が懸念される放熱体に対してはその使用が制限されることが予想される。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この出願の発明者は、導電性高分子のドーパント酸化剤を塩化第2銅からスルホン酸系に変更することで、放熱に寄与する導電性高分子が浸潤されたシート状基材であるセルロースシート中に塩素が残留するという問題を回避することが可能であることに想到した。
【0015】
そこで、この発明の目的は、導電性重合体浸潤シートに残留塩素が存在せず、かつ、発熱デバイスが発生する熱を効率よく放散することが可能であるという熱的特性を有するとともに、軽量かつ放熱用サーマルモジュール等への取り付け作業が容易であり、電子モジュールに悪影響を与える炭素粉等の塵が発生しない放熱シートを提供することにある。
【0016】
上述の理念に基づくこの発明の要旨によれば、以下の放熱シート、この放熱シートの構成部材である導電性重合体浸潤シートの製造方法、及び放熱シートの製造方法が提供される。
【0017】
請求項1に記載のこの発明の第1の放熱シートは、シート状基材に、酸化剤である芳香族スルホン酸第2鉄を用いて重合された含硫黄π共役系導電性重合体が浸潤された含硫黄π共役系導電性重合体浸潤シートの主面及び裏面の双方又はいずれか一方の面に金属層が密着されて成る放熱シートである。また、請求項6に記載のこの発明の第1の放熱シートは、上述の含硫黄π共役系導電性重合体浸潤シートの主面及び裏面の双方又はいずれか一方の面に接着部材を介して金属シートが密着されて成る放熱シートである。
【0018】
ここで、酸化剤である芳香族スルホン酸第2鉄は、パラトルエンスルホン酸第2鉄、ベンゼンスルホン酸第2鉄、メトキシベンゼンスルホン酸第2鉄、ドデシルベンゼンスルホン酸第2鉄、ナフタレンスルホン酸第2鉄、アントラセンスルホン酸第2鉄、アントラキノンスルホン酸第2鉄、テトラリンスルホン酸第2鉄またはフェノールスルホン酸第2鉄からなる群から選択される何れか一種である。また、含硫黄π共役系導電性重合体は、3,4-エチレンジオキシチオフェン、チオフェン誘導体、チオフェン、3-アルキルチオフェン、3-アルコキシチオフェン、3,4-ジアルキルチオフェン、3,4-ジアルコキシチオフェンからなる群から選択される単量体の何れか一種が重合されて形成される重合体である。
【0019】
請求項2に記載のこの発明の第2の放熱シートは、シート状基材に、酸化剤である芳香族スルホン酸第2銅を用いて重合された含硫黄π共役系導電性重合体が浸潤された含硫黄π共役系導電性重合体浸潤シートの主面及び裏面の双方又はいずれか一方の面に金属層が密着されて成る放熱シートである。また、請求項7に記載のこの発明の第2の放熱シートは、上述の含硫黄π共役系導電性重合体浸潤シートの主面及び裏面の双方又はいずれか一方の面に接着部材を介して金属シートが密着されて成る放熱シートである。
【0020】
ここで、酸化剤である芳香族スルホン酸第2銅は、パラトルエンスルホン酸第2銅、ベンゼンスルホン酸第2銅、メトキシベンゼンスルホン酸第2銅、ドデシルベンゼンスルホン酸第2銅、ナフタレンスルホン酸第2銅、アントラセンスルホン酸第2銅、アントラキノンスルホン酸第2銅、テトラリンスルホン酸第2銅またはフェノールスルホン酸第2銅からなる群から選択される何れか一種である。また、含硫黄π共役系導電性重合体は、3,4-エチレンジオキシチオフェン、チオフェン誘導体、チオフェン、3-アルキルチオフェン、3-アルコキシチオフェン、3,4-ジアルキルチオフェン、3,4-ジアルコキシチオフェンからなる群から選択される単量体の何れか一種が重合されて形成される重合体である。
【0021】
請求項3に記載のこの発明の第3の放熱シートは、シート状基材に、酸化剤である芳香族スルホン酸第2鉄を用いて重合されたピロール導電性重合体が浸潤されたピロール導電性重合体浸潤シートの主面及び裏面の双方又はいずれか一方の面に金属層が密着されて成る放熱シートである。また、請求項8に記載のこの発明の第3の放熱シートは、上述のピロール導電性重合体浸潤シートの主面及び裏面の双方又はいずれか一方の面に接着部材を介して金属シートが密着されて成る放熱シートである。
【0022】
ここで、酸化剤である芳香族スルホン酸第2鉄は、パラトルエンスルホン酸第2鉄、ベンゼンスルホン酸第2鉄、メトキシベンゼンスルホン酸第2鉄、ドデシルベンゼンスルホン酸第2鉄、ナフタレンスルホン酸第2鉄、アントラセンスルホン酸第2鉄、アントラキノンスルホン酸第2鉄、テトラリンスルホン酸第2鉄またはフェノールスルホン酸第2鉄からなる群から選択される何れか一種である。
【0023】
請求項4に記載のこの発明の第4の放熱シートは、シート状基材に、酸化剤である芳香族スルホン酸第2銅を用いて重合されたピロール導電性重合体が浸潤されたピロール導電性重合体浸潤シートの主面及び裏面の双方又は何れか一方の面に金属層が密着されて成る放熱シートである。また、請求項9に記載のこの発明の第4の放熱シート上述のピロール導電性重合体浸潤シートの主面及び裏面の双方又はいずれか一方の面に接着部材を介して金属シートが密着されて成る放熱シートである。
【0024】
ここで、酸化剤である芳香族スルホン酸第2銅は、パラトルエンスルホン酸第2銅、ベンゼンスルホン酸第2銅、メトキシベンゼンスルホン酸第2銅、ドデシルベンゼンスルホン酸第2銅、ナフタレンスルホン酸第2銅、アントラセンスルホン酸第2銅、アントラキノンスルホン酸第2銅、テトラリンスルホン酸第2銅またはフェノールスルホン酸第2銅からなる群から選択される何れか一種である。
【0025】
請求項5に記載のこの発明の第5の放熱シートは、シート状基材に、導電性重合体溶液を用いて導電性重合体が浸潤された導電性重合体浸潤シートの主面及び裏面の双方又はいずれか一方の面に金属層が密着されて成る放熱シートである。また、請求項10に記載のこの発明の第5の放熱シートは、上述の導電性重合体浸潤シートの主面及び裏面の双方又はいずれか一方の面に接着部材を介して金属シートが密着されて成る放熱シートである。
【0026】
ここで導電性重合体溶液は、導電性ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)のポリスチレンスルホン酸系水分散液、導電性ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)の有機溶媒分散液、導電性ポリアニリン系水分散液、メタノールを分散媒(disperse medium)とする高導電性ポリアニリン系有機溶媒分散液、メチルエチルケトンを分散媒とする高導電性ポリアニリン系有機溶媒分散液、メチルエチルケトンを分散媒とする高導電性ポリピロール有機溶媒分散液からなる群から選択される何れか一種である。
【0027】
上述の請求項1あるいは請求項6に記載の第1の放熱シートの構成部材である導電性重合体浸潤シートは、請求項11に記載のこの発明の導電性重合体浸潤シートの製造方法によって製造することが可能である。
【0028】
請求項11に記載のこの発明の導電性重合体浸潤シートの製造方法は、酸化剤である芳香族スルホン酸第2鉄を第1溶媒で希釈した溶液を第1シート状基材に浸潤させて第2シート状基材を生成する酸化剤浸潤工程と、第2シート状基材から第1溶媒を蒸発させた後に、この基材に、含硫黄π共役系導電性重合体形成物質を第2溶媒で希釈した溶液を浸潤させて0〜80℃の温度範囲で重合反応させて第3シート状基材を生成する重合反応工程と、第3シート状基材から第2溶媒を蒸発させる溶媒除去工程とを含み、この第2溶媒が除去された第3シート状基材を含硫黄π共役系導電性重合体浸潤シートとして製造する導電性重合体浸潤シートの製造方法である。
【0029】
ここで、酸化剤である芳香族スルホン酸第2鉄は、パラトルエンスルホン酸第2鉄、ベンゼンスルホン酸第2鉄、メトキシベンゼンスルホン酸第2鉄、ドデシルベンゼンスルホン酸第2鉄、ナフタレンスルホン酸第2鉄、アントラセンスルホン酸第2鉄、アントラキノンスルホン酸第2鉄、テトラリンスルホン酸第2鉄またはフェノールスルホン酸第2鉄からなる群から選択される何れか一種である。また、含硫黄π共役系導電性重合体は、3,4-エチレンジオキシチオフェン、チオフェン誘導体、チオフェン、3-アルキルチオフェン、3-アルコキシチオフェン、3,4-ジアルキルチオフェン、3,4-ジアルコキシチオフェンからなる群から選択される単量体の何れか一種が重合されて形成される重合体である。
【0030】
上述の請求項2あるいは請求項7に記載の第2の放熱シートの構成部材である導電性重合体浸潤シートは、請求項12に記載のこの発明の導電性重合体浸潤シートの製造方法によって製造することが可能である。
【0031】
請求項12に記載のこの発明の導電性重合体浸潤シートの製造方法は、酸化剤である芳香族スルホン酸第2銅を第1溶媒で希釈した溶液を第1シート状基材に浸潤させて酸化剤が浸潤された第2シート状基材を生成する酸化剤浸潤工程と、第2シート状基材から第1溶媒を蒸発させた後に、この基材に、含硫黄π共役系導電性重合体形成物質を第2溶媒で希釈した溶液を浸潤させて0〜80℃の温度範囲で重合反応させて第3シート状基材を生成する重合反応工程と、第3シート状基材から第2溶媒を蒸発させる溶媒除去工程とを含み、この第2溶媒が除去された第3シート状基材を含硫黄π共役系導電性重合体浸潤シートとして製造する導電性重合体浸潤シートの製造方法である。
【0032】
ここで、酸化剤である芳香族スルホン酸第2銅は、パラトルエンスルホン酸第2銅、ベンゼンスルホン酸第2銅、メトキシベンゼンスルホン酸第2銅、ドデシルベンゼンスルホン酸第2銅、ナフタレンスルホン酸第2銅、アントラセンスルホン酸第2銅、アントラキノンスルホン酸第2銅、テトラリンスルホン酸第2銅またはフェノールスルホン酸第2銅からなる群から選択される何れか一種である。また、含硫黄π共役系導電性重合体は、3,4-エチレンジオキシチオフェン、チオフェン誘導体、チオフェン、3-アルキルチオフェン、3-アルコキシチオフェン、3,4-ジアルキルチオフェン、3,4-ジアルコキシチオフェンからなる群から選択される単量体の何れか一種が重合されて形成される重合体である。
【0033】
上述の請求項3あるいは請求項8に記載の第3の放熱シートの構成部材である導電性重合体浸潤シートは、請求項13に記載のこの発明の導電性重合体浸潤シートの製造方法によって製造することが可能である。
【0034】
請求項13に記載のこの発明の導電性重合体浸潤シートの製造方法は、酸化剤である芳香族スルホン酸第2鉄を第1溶媒で希釈した溶液を第1シート状基材に浸潤させて第2シート状基材を生成する酸化剤浸潤工程と、この第2シート状基材から第1溶媒を蒸発させた後に、この基材に、ピロール導電性重合体形成物質を第2溶媒で希釈した溶液を浸潤させて0〜80℃の温度範囲で重合反応させて第3シート状基材を生成する重合反応工程と、第3シート状基材から第2溶媒を蒸発させる溶媒除去工程とを含み、この第2溶媒が除去された第3シート状基材をピロール導電性重合体浸潤シートとして製造する導電性重合体浸潤シートの製造方法である。
【0035】
ここで、酸化剤である芳香族スルホン酸第2鉄は、パラトルエンスルホン酸第2鉄、ベンゼンスルホン酸第2鉄、メトキシベンゼンスルホン酸第2鉄、ドデシルベンゼンスルホン酸第2鉄、ナフタレンスルホン酸第2鉄、アントラセンスルホン酸第2鉄、アントラキノンスルホン酸第2鉄、テトラリンスルホン酸第2鉄またはフェノールスルホン酸第2鉄からなる群から選択される何れか一種である。
【0036】
上述の請求項4あるいは請求項9に記載の第4の放熱シートの構成部材である導電性重合体浸潤シートは、請求項14に記載のこの発明の導電性重合体浸潤シートの製造方法によって製造することが可能である。
【0037】
請求項14に記載のこの発明の導電性重合体浸潤シートの製造方法は、酸化剤である芳香族スルホン酸第2銅を第1溶媒で希釈した溶液を第1シート状基材に浸潤させて第2シート状基材を生成する酸化剤浸潤工程と、この第2シート状基材から第1溶媒を蒸発させた後に、この基材に、ピロール導電性重合体形成物質を第2溶媒で希釈した溶液を浸潤させて0〜80℃の温度範囲で重合反応させて第3シート状基材を生成する重合反応工程と、第3シート状基材から第2溶媒を蒸発させる溶媒除去工程とを含み、この第2溶媒が除去された第3シート状基材をピロール導電性重合体浸潤シートとして製造する導電性重合体浸潤シートの製造方法である。
【0038】
ここで、酸化剤である芳香族スルホン酸第2銅は、パラトルエンスルホン酸第2銅、ベンゼンスルホン酸第2銅、メトキシベンゼンスルホン酸第2銅、ドデシルベンゼンスルホン酸第2銅、ナフタレンスルホン酸第2銅、アントラセンスルホン酸第2銅、アントラキノンスルホン酸第2銅、テトラリンスルホン酸第2銅またはフェノールスルホン酸第2銅からなる群から選択される何れか一種である。
【0039】
上述の請求項5あるいは請求項10に記載の第5の放熱シートの構成部材である導電性重合体浸潤シートは、請求項15に記載のこの発明の導電性重合体浸潤シートの製造方法によって製造することが可能である。
【0040】
請求項15に記載のこの発明の導電性重合体浸潤シートの製造方法は、シート状基材に導電性重合体溶液を浸潤させて導電性重合体溶液浸潤シート状基材を生成する導電性重合体浸潤工程と、導電性重合体溶液浸潤シート状基材から分散媒を蒸発させる分散媒除去工程とを含み、この分散媒が除去された導電性重合体溶液浸潤シート状基材を導電性重合体浸潤シートとして製造する導電性重合体浸潤シートの製造方法である。
【0041】
ここで導電性重合体溶液は、導電性ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)のポリスチレンスルホン酸系水分散液、導電性ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)の有機溶媒分散液、導電性ポリアニリン系水分散液、メタノールを分散媒とする高導電性ポリアニリン系有機溶媒分散液、メチルエチルケトンを分散媒とする高導電性ポリアニリン系有機溶媒分散液、メチルエチルケトンを分散媒とする高導電性ポリピロール有機溶媒分散液からなる群から選択される何れか一種である。
【0042】
上述の請求項11〜14に記載のこの発明の導電性重合体浸潤シートの製造方法がそれぞれ含んでいる溶媒除去工程の終了後に引き続いて、第2溶媒が除去された第3シート状基材に導電性重合体の水分散液、または導電性重合体の溶媒分散液を塗布する導電性重合体溶液塗布工程と、この第3シート状基材から、導電性重合体の水分散液または導電性重合体の溶媒分散液の溶媒を蒸発させる分散媒除去工程とを更に含むのがよい。
【0043】
また、上述の請求項11〜14に記載のこの発明の導電性重合体浸潤シートの製造方法がそれぞれ含んでいる溶媒除去工程の終了後に引き続いて、第2溶媒が除去された第3シート状基材に、テトラエチルアンモニウムパラトルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸ナトリウム、トリフルオロメタンスルホン酸テトラアルキルアンモニウム塩、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルコキシベンゼンスルホン酸ナトリウム、またはアルキルベンゼンスルホン酸テトラアルキルアンモニウム塩からなる群から選択される何れか一種を支持電解質とし、この支持電解質をプロピレンカーボネート、アセトニトリル、γ−ブチロラクトン、硝酸、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸ブチル、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、エチレングリコール、または水からなる群から選択される何れか一種あるいは複数種を支持電解質溶媒とする支持電解質溶液に、3,4-エチレンジオキシチオフェン、ピロール、チオフェン、チオフェン誘導体、3-アルキルチオフェン、3-アルコキシチオフェン、3,4-ジアルキルチオフェン、または3,4-ジアルコキシチオフェンからなる群から選択される単量体の何れか一種を溶解させて、電解重合させる電解重合工程と、この電解重合工程が終了した後の第3シート状基材を洗浄する洗浄工程とを更に含むのがよい。
【0044】
また、上述の請求項15に記載のこの発明の導電性重合体浸潤シートの製造方法が含んでいる分散媒除去工程の終了後に引き続いて、分散媒が除去された導電性重合体溶液浸潤シート状基材に、テトラエチルアンモニウムパラトルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸ナトリウム、トリフルオロメタンスルホン酸テトラアルキルアンモニウム塩、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルコキシベンゼンスルホン酸ナトリウム、またはアルキルベンゼンスルホン酸テトラアルキルアンモニウム塩からなる群から選択される何れか一種を支持電解質とし、この支持電解質をプロピレンカーボネート、アセトニトリル、γ−ブチロラクトン、硝酸、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸ブチル、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、エチレングリコール、または水からなる群から選択される何れか一種あるいは複数種を支持電解質溶媒とする支持電解質溶液に、3,4-エチレンジオキシチオフェン、ピロール、チオフェン、チオフェン誘導体、3-アルキルチオフェン、3-アルコキシチオフェン、3,4-ジアルキルチオフェン、または3,4-ジアルコキシチオフェンからなる群から選択される単量体の何れか一種を溶解させて、電解重合させる電解重合工程と、この電解重合工程が終了した後の導電性重合体溶液浸潤シート状基材を洗浄する洗浄工程とを更に含むのがよい。
【0045】
上述の第1〜第5の放熱シートは、請求項11〜18のいずれか一項に記載の方法で作製された導電性重合体浸潤シートを準備する導電性重合体浸潤シート準備工程と、導電性重合体浸潤シートの主面及び裏面の双方またはいずれか一方の面に、物理気相成長法(PVD: Physical Vapor Deposition)、化学気相成長法(CVD: Chemical Vapor Deposition)、電解メッキ法、あるいは無電解メッキ法によって金属層を密着させる金属層形成工程と、を含む放熱シートの製造方法によって製造することが可能である。
【0046】
また、上述の導電性重合体浸潤シート準備工程と、導電性重合体浸潤シートの主面及び裏面の双方またはいずれか一方の面に、金属微粒子が粘性物質に練り込まれて構成される金属ペーストを塗布して金属層を密着させる金属ペースト塗布工程と、を含む放熱シートの製造方法によって製造することが可能である。
【0047】
また、上述の導電性重合体浸潤シート準備工程と、導電性重合体浸潤シートの主面及び裏面の双方またはいずれか一方の面に、金属微粒子を印刷固定して金属層を密着させる金属層印刷工程と、を含む放熱シートの製造方法によって製造することが可能である。
【0048】
また、上述の導電性重合体浸潤シート準備工程と、導電性重合体浸潤シートの主面及び裏面の双方またはいずれか一方の面に、接着部材を介して金属シートを接着する金属シート接着工程と、を含む放熱シートの製造方法によって製造することが可能である。
【発明の効果】
【0049】
この発明の第1の放熱シートによれば、シート状基材に、酸化剤である芳香族スルホン酸第2鉄を用いて重合された含硫黄π共役系導電性重合体が浸潤された含硫黄π共役系導電性重合体浸潤シートを含んでおり、この含硫黄π共役系導電性重合体浸潤シートは、その主面及び裏面の双方又はいずれか一方の面に金属層が密着され、あるいは接着部材を介して金属シートが密着されている。
【0050】
この発明の第2の放熱シートによれば、シート状基材に、酸化剤である芳香族スルホン酸第2銅を用いて重合された含硫黄π共役系導電性重合体が浸潤された含硫黄π共役系導電性重合体浸潤シートを含んでおり、この含硫黄π共役系導電性重合体浸潤シートは、その主面及び裏面の双方又はいずれか一方の面に金属層が密着され、あるいは接着部材を介して金属シートが密着されている。
【0051】
この発明の第3の放熱シートによれば、シート状基材に、酸化剤である芳香族スルホン酸第2鉄を用いて重合されたピロール導電性重合体が浸潤されたピロール導電性重合体浸潤シートを含んでおり、この主面及び裏面の双方又はいずれか一方の面に金属層が密着され、あるいは接着部材を介して金属シートが密着されている。
【0052】
この発明の第4の放熱シートによれば、シート状基材に、酸化剤である芳香族スルホン酸第2銅を用いて重合されたピロール導電性重合体が浸潤されたピロール導電性重合体浸潤シートを含んでおり、この主面及び裏面の双方又はいずれか一方の面に金属層が密着され、あるいは接着部材を介して金属シートが密着されている。
【0053】
この発明の第5の放熱シートによれば、シート状基材に、導電性重合体溶液を用いて導電性重合体が浸潤された導電性重合体浸潤シートを含んでおり、この主面及び裏面の双方又はいずれか一方の面に金属層が密着され、あるいは接着部材を介して金属シートが密着されている。
【0054】
上述の導電性重合体浸潤シートの熱伝導率は、金属シートあるいは金属層の熱伝導率に比べて小さい。しかしながら、この発明の第1〜第5の放熱シートは、上述の導電性重合体浸潤シートが金属シートあるいは金属層と密着されて構成されているため、放熱シートの表面に平行な熱拡散率αpが垂直な方向に対する熱拡散率αtより大きく、すなわちαpt>1となっている。このため、発熱デバイスをこの発明の放熱シートに取り付け、この放熱シートをヒートシンクに装着した場合の等温面は、放熱シートの表面に垂直な方向よりも平行な方向に速い速度で広がる。
【0055】
ここで、熱伝導率とは熱エネルギーの伝播特性を示す物理量であるのに対して、温度拡散率とは温度の伝播特性を示す物理量である。すなわち、温度拡散率は、材料の熱伝導率に比例し熱容量に反比例する値である。
【0056】
この発明の第1〜第5の放熱シートに利用される上述の導電性重合体浸潤シートに浸潤された重合体は、π共役系重合体である。π共役系重合体は、2重結合と単結合が交互に並んだ構造である骨格(主鎖)をもっており、この主鎖によって熱的性質の異方性が発生するものと推定される。すなわち、π共役系重合体は、この主鎖に沿った方向に垂直な方向に比べて、この主鎖に沿った方向に熱伝導率が大きくなる性質を備えるものと考えられる。このため、この発明の第1〜第5の放熱シートが有する上述のαpt>1の関係が満たされる熱的性質の発現に、π共役系重合体の主鎖の方向に対する熱的特性の異方性が有効に寄与しているものと考えられる。
【0057】
また、上述の導電性重合体浸潤シート製造方法により製造される導電性重合体浸潤シートは、その製造過程において、芳香族スルホン酸がドーパントして重合体に取り込まれ、重合体からπ電子の一部を引き抜き、ホール(正孔)を形成することによって、電子伝導率の高い重合体として形成される。この高い電子伝導率を備えることによって、π共役系重合体の主鎖の方向に沿った熱的性質の異方性の発現にも寄与している。
【0058】
また、上述の請求項11〜15に記載の酸化重合反応による方法よって製造された導電性重合体浸潤シートが、上述のようにこの高い電子伝導率を備えていることから、請求項17及び18に記載の電解重合反応による製造方法を適用することが可能となる。シート状基材に導電性重合体を浸潤する工程は、一回だけでなく数回繰り返すことによって、熱伝導率及び電子伝導率を向上させることが可能である。すなわち、一層優れた放熱効果を有する放熱シートを製造することが可能となる。
【0059】
発熱デバイスを効率よく冷却するには、発熱デバイスと放熱シートあるいはヒートシンクとが接触している場所の温度が常に発熱デバイスよりも低い温度に保たれていることが必要である。しかも、発熱デバイスと放熱シートあるいはヒートシンクとが接触している場所の温度が低温であるほど、発熱デバイスの冷却効率が高く、発熱デバイスとヒートシンクとの間の熱抵抗が小さいほど、発熱デバイスは効率よく冷却される。
【0060】
なお、周知の通り、熱抵抗とは、単位時間当たりの発熱量に対する温度上昇量を意味し、近似的に発熱デバイス(高温部)とヒートシンク(低温部)との間の熱伝達係数の逆数を発熱デバイスの接触面積で除することで求められる。熱伝達係数は、発熱デバイスとヒートシンクとの間を短時間に単位面積を通過する熱エネルギーを、発熱デバイスとヒートシンクとの温度差で除することで求められる。すなわち熱抵抗とは温度の伝えにくさを表す数値であり、この数値が大きいほど温度を伝えにくいことを意味する。
【0061】
ここで、ヒートシンクに対応する低温部が発熱デバイス等の高温部を囲む周辺空間雰囲気である場合であっても、熱抵抗を定義することができる。後述するように、発熱デバイスとこの発熱デバイスに接する空間との間の熱抵抗値等も算出することが可能である。発熱デバイスとこの発熱デバイスに接する空間との間の熱抵抗値が大きいほど、発熱デバイスから発生する熱が放散されにくいことを意味し、発熱デバイス自身の温度が上昇しやすい状態にあることを意味する。
【0062】
この発明の第1〜第5の放熱シートは、この放熱シートに直接または間接に接して設置された発熱デバイスから発生した熱を、放熱シートの表面に平行な方向に沿ってすばやく拡散し、放熱シートと接触しているヒートシンク面の広い範囲にわたり短時間で高温領域が形成されるという熱的特性を有している。ヒートシンクに単位時間に吸収される熱量の総量は、放熱シートと接触しているヒートシンク面の温度が広い範囲にわたって高温であるほど大きい。
【0063】
すなわち、この発明の第1〜第5の放熱シートを介して発熱デバイスとヒートシンクとを直接又は間接に接触させる構成とすれば、発熱デバイスから発生した熱を効率よく放散することが可能となる。
【0064】
また、この発明の放熱シートを構成する、上述の導電性重合体浸潤シートは、切断処理等の工作処理中に炭素粉等が発生することがない。このため、この発明の放熱シートは、従来のグラファイト材を用いて構成される放熱シートのように、切断処理等の工作処理中に炭素粉等の塵が発生しない。従って、例えば、この発明の放熱シートを放熱用サーマルモジュールの構成に利用すれば、この放熱用サーマルモジュール等に取り付けられる電子モジュールに炭素粉等が付着し電気的なショートが生じる等の不都合が生じることがない。
【0065】
上述の第1〜第5の放熱シートを、請求項11〜18のいずれか一項に記載の方法で作製された導電性重合体浸潤シートの主面及び裏面の双方またはいずれか一方の面に、PVD、CVD、電解メッキ法、あるいは無電解メッキ法によって金属層を形成することによって、導電性重合体浸潤シートに金属層を密着させることができる。
【0066】
また、上述の導電性重合体浸潤シートの主面及び裏面の双方またはいずれか一方の面に、接着部材を介して金属シートを接着することによって金属シートと導電性重合体浸潤シートと接着部材を介して密着させることができる。
【0067】
上述の導電性重合体浸潤シートの主面及び裏面に金属層あるいは金属シートが密着されることによって、熱抵抗を効果的に低減することが可能となる。
【0068】
この発明の放熱シートを構成する導電性重合体浸潤シートを製造するに当たって、重合反応を担う酸化剤として上述のように芳香族スルホン酸第2鉄あるいは芳香族スルホン酸第2銅が使われており、製造される導電性重合体浸潤シートには塩素が残留されることはない。そのため、この発熱シートを介して設置される発熱性電子素子等の腐食が懸念されることはない。
【0069】
また、シート状基材としては後述するようにセルロースシート等、切断処理を行っても炭素粉等が発生しない素材を利用できるので、軽量かつ放熱用サーマルモジュール等への取り付け作業が容易であり、電子モジュールに悪影響を与える炭素粉等の塵が発生しない放熱シートを提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】この発明の実施形態の放熱シートの構造の説明に供する図であり、(A)は導電性重合体浸潤シートの主面及び裏面の双方に金属層が密着された構成の放熱シートの概略的断面構造図であり、(B)は導電性重合体浸潤シートの主面及び裏面の双方に金属シートが接着部材を介して密着された構成の放熱シートの概略的断面構造図である。
【図2】この発明の実施の形態の放熱シートの熱的性質についての検証実験の説明に供する図である。
【図3】この発明の実施の形態の第1の放熱シートを放熱シートとして用いた場合の、CH1〜CH8における温度の時間変化を示す図である。
【図4】この発明の実施の形態の第2の放熱シートを放熱シートとして用いた場合の、CH1〜CH8における温度の時間変化を示す図である。
【図5】放熱シートとして比較例1の放熱シートを用いた場合の、CH1〜CH8における温度の時間変化を示す図である。
【図6】放熱シートとして比較例2の放熱シートを用いた場合の、CH1〜CH8における温度の時間変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0071】
以下、図を参照してこの発明の実施形態につき説明するが、この発明の実施形態はこれら各図に基づき限定されるものではない。これらの図は、この発明が理解できる程度に構成要素の形状、大きさおよび配置関係を概略的に示してあるにすぎず、また、以下に説明する数値的およびその他の条件は単なる好適例であり、この発明はこの発明の実施の形態のみに限定されるものではない。
【0072】
<この発明の実施形態の放熱シートの構造及びその製造方法>
図1(A)及び(B)を参照してこの発明の実施の形態の第1〜第5の放熱シートの構成について説明する。図1(A)及び(B)は、それぞれ第1〜第5の放熱シートの構造の説明に供する図であり、図1(A)は導電性重合体浸潤シートの主面及び裏面の双方に金属層が密着された構成の第1〜第5の放熱シートの概略的断面構造図であり、図1(B)は導電性重合体浸潤シートの主面及び裏面の双方に金属シートが接着部材を介して密着された構成の第1〜第5の放熱シートの概略的断面構造図である。
【0073】
ここで、含硫黄π共役系導電性重合体とピロール導電性重合体とを互いに区別して説明する必要がない場合は、以下の説明において単に導電性重合体と表記するものとする。また、第1〜第5の放熱シートとの表記において、第1〜第5との識別表記は、構成要素である導電性重合体浸潤シートの製造方法あるいは浸潤されている導電性重合体の相違を識別するための表記であり、第1〜第5の放熱シートのそれぞれは、図1(A)及び(B)に示すいずれの構造とすることも可能である。従って、以下の説明において、構成要素である導電性重合体浸潤シートの製造方法あるいは浸潤されている導電性重合体の相違を識別して説明する必要がない場合は、単に放熱シートと表記することもある。
【0074】
発熱デバイスとヒートシンクとの間の熱抵抗を低減するために挿入される放熱シートは、必要に応じて発熱デバイスと放熱シートとの間、あるいはヒートシンクと放熱シートとの間に電気的絶縁膜を挟んで固定されることがある。また、放熱シートと発熱デバイスとを密着させるため、あるいはヒートシンクと放熱シートとを密着させるための接着部材等が利用される。
【0075】
しかしながら、電気的絶縁を必要とせずに放熱シートを発熱デバイスとヒートシンクとの間に挿入することが可能であって、しかも放熱シートを発熱デバイスとヒートシンクとに恒久的に接着固定する必要がなく、単に圧着固定すればよい場合もある。この場合には放熱シートと発熱デバイスあるいはヒートシンクとは、圧着固定される。
【0076】
図1(A)及び(B)においては、放熱シートに付随して使われることのある電気的絶縁膜や接着部材等を省き、この発明の実施形態の放熱シートについてのみ示してある。図示は省略してあるが、放熱シートに電気的絶縁膜、あるいは放熱シートに発熱デバイス、あるいは放熱シートにヒートシンクを密着させるために接着部材等を適宜設けても良い。
【0077】
図1(A)に示す実施の形態の放熱シートは、導電性重合体が浸潤された導電性重合体浸潤シート18の主面18a及び裏面18bの少なくともいずれか一方の面に金属層が密着されて構成される。図1(A)には、導電性重合体浸潤シート18の主面18a及び裏面18bのそれぞれに金属層16及び金属層20が形成されている例を示しているが、金属層16及び金属層20のいずれか一方が形成されていれば良い。
【0078】
図1(B)に示す実施の形態の放熱シートは、導電性重合体が浸潤された導電性重合体浸潤シート26の主面26a及び裏面26bの少なくともいずれか一方の面に接着部材を介して金属シートが接着されて構成される。図1(B)には、導電性重合体浸潤シート26の主面26aに接着部材24を介して金属シート22が接着され、裏面26bに接着部材28を介して金属シート30が接着されて構成されて成る放熱シートを示しているが、金属シート22及び金属シート30のいずれか一方が形成されていれば良い。
【0079】
接着部材24及び28としては、例えば、ニチバン株式会社製の両面粘着テープ(製品番号NW-50)あるいは、セメダイン株式会社製のアクリル変成シリコーン樹脂であるセメダイン(製品番号SX720W)等を適宜選択して利用することが可能である。
【0080】
導電性重合体浸潤シートを構成するシート状基材として、例えば、濾過作業に用いられる濾紙に代表されるセルロースシート、パルプ紙、布帛、不織布、和紙等を適宜利用できる。ここでは、濾過作業に用いられる濾紙をシート状基材として利用した。
【0081】
後述する熱的な特性の評価は、厚さが0.1 mmの濾紙を用いて試作した導電性重合体浸潤シートを構成要素として構成された放熱シートに対して行った。しかしながら、この発明の導電性重合体浸潤シートは、濾過作業用の厚さが0.1 mmの濾紙を利用して形成することに限定されることはない。
【0082】
(第1の放熱シート用導電性重合体浸潤シートの製造方法)
上述した様に、酸化剤である芳香族スルホン酸第2鉄としては、パラトルエンスルホン酸第2鉄、ベンゼンスルホン酸第2鉄、メトキシベンゼンスルホン酸第2鉄、ドデシルベンゼンスルホン酸第2鉄、ナフタレンスルホン酸第2鉄、アントラセンスルホン酸第2鉄、アントラキノンスルホン酸第2鉄、テトラリンスルホン酸第2鉄またはフェノールスルホン酸第2鉄の何れか一種を利用することが可能であるが、ここではパラトルエンスルホン酸第2鉄を利用する場合を取り上げて説明する。なお、以下の説明に基づいて、パラトルエンスルホン酸第2鉄以外の物質であっても、酸化剤として上述した物質の何れをも同様に利用可能である。
【0083】
また、含硫黄π共役系導電性重合体を形成するための単量体としては、3,4-エチレンジオキシチオフェン、チオフェン誘導体、チオフェン、3-アルキルチオフェン、3-アルコキシチオフェン、3,4-ジアルキルチオフェン、3,4-ジアルコキシチオフェンの何れか一種を利用することが可能であるが、ここでは3,4-エチレンジオキシチオフェンを利用する場合を取り上げて説明する。なお、以下の説明に基づいて、3,4-エチレンジオキシチオフェン以外の単量体であっても、上述の単量体の何れをも同様に利用可能である。
【0084】
酸化剤であるパラトルエンスルホン酸第2鉄を、第1溶媒で希釈した溶液を第1シート状基材に浸潤させて第2シート状基材を生成する酸化剤浸潤工程は以下のとおりに行った。
【0085】
第1溶媒には、純度99.8%エチルアルコールを利用した。また、エチルアルコールで希釈された50%濃度のパラトルエンスルホン酸第2鉄溶液6gと第1溶媒である純度99.8%エチルアルコール4gを容器内で混合し調合した30%濃度のパラトルエンスルホン酸第2鉄溶液に第1シート状基材としてセルロースシートを5分浸し浸潤させて第2シート状基材を生成した。
【0086】
第2シート状基材から第1溶媒であるエチルアルコールを蒸発させた後に、この第2シート状基材に、含硫黄π共役系導電性重合体形成物質を第2溶媒で希釈した溶液を浸潤させて0〜80℃の温度範囲で重合反応させて第3シート状基材を生成する重合反応工程を以下のとおりに行った。
【0087】
パラトルエンスルホン酸第2鉄が含浸された第2シート状基材を含硫黄π共役系導電性重合体形成物質である50%濃度の3,4-エチレンジオキシチオフェン溶液に浸し、室温大気中で放置することで化学重合反応を起こさせて、含硫黄π共役系導電性重合体であるポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)が第2シート状基材に浸潤された第3シート状基材を生成した。3,4-エチレンジオキシチオフェンの溶媒である第2溶媒はエチルアルコールである。化学重合反応が終了した後第2溶媒を蒸発させる溶媒除去工程を実行する。
【0088】
ここで、重合反応工程は、上述のように室温で行ったが、この温度に限定されることはなく、0℃〜80℃の範囲で適宜実施することが可能である。以下、説明する同種の重合反応工程においても同様に、室温で行うことに限定されることはなく、0℃〜80℃の範囲で適宜実施することが可能である。
【0089】
溶媒除去工程に引き続いて、この第3シート状基材を重合反応で生成された重合体以外の残渣を除去するため、蒸留水あるいはエチルアルコールで洗浄し室温大気中で放置乾燥することで、この蒸留水あるいはエチルアルコールを除去して、含硫黄π共役系導電性重合であるポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)がシート状基材に浸潤された導電性重合体浸潤シートを形成した。
【0090】
第3シート状基材は、既に含硫黄π共役系導電性重合体浸潤シートとして利用可能な状態であるが、さらに導電性を高めるために、上述の酸化剤浸潤工程、重合反応工程及び溶媒除去工程を経て、蒸留水あるいはエチルアルコールで洗浄するまでの工程を3回繰り返し実行した。こうして含硫黄π共役系導電性重合体浸潤シートを完成させた。その結果、1×103Ω/cm以下の抵抗値を有する含硫黄π共役系導電性重合体浸潤シートを製造することができた。
【0091】
(第2の放熱シート用導電性重合体浸潤シートの製造方法)
上述した様に、酸化剤である芳香族スルホン酸第2銅としては、パラトルエンスルホン酸第2銅、ベンゼンスルホン酸第2銅、メトキシベンゼンスルホン酸第2銅、ドデシルベンゼンスルホン酸第2銅、ナフタレンスルホン酸第2銅、アントラセンスルホン酸第2銅、アントラキノンスルホン酸第2銅、テトラリンスルホン酸第2銅またはフェノールスルホン酸第2銅の何れか一種を利用することが可能であるが、ここではパラトルエンスルホン酸第2銅を利用する場合を取り上げて説明する。なお、以下の説明に基づいて、パラトルエンスルホン酸第2銅以外の物質であっても、酸化剤として上述した物質の何れをも同様に利用可能である。
【0092】
また、含硫黄π共役系導電性重合体を形成するための単量体としては、3,4-エチレンジオキシチオフェン、チオフェン誘導体、チオフェン、3-アルキルチオフェン、3-アルコキシチオフェン、3,4-ジアルキルチオフェン、3,4-ジアルコキシチオフェンの何れか一種を利用することが可能であるが、ここでは3,4-エチレンジオキシチオフェンを利用する場合を取り上げて説明する。なお、以下の説明に基づいて、3,4-エチレンジオキシチオフェン以外の単量体であっても、上述の単量体の何れをも同様に利用可能である。
【0093】
酸化剤であるパラトルエンスルホン酸第2銅を、第1溶媒で希釈した溶液を第1シート状基材に浸潤させて第2シート状基材を生成する酸化剤浸潤工程は以下のとおりに行った。
【0094】
第1溶媒には、純度99.8%エチルアルコールを利用した。また、エチルアルコールで希釈された50%濃度のパラトルエンスルホン酸第2銅溶液6gと第1溶媒である純度99.8%エチルアルコール4gを容器内で混合して調合した30%濃度のパラトルエンスルホン酸第2銅溶液に第1シート状基材としてセルロースシートを5分浸し浸潤させて第2シート状基材を生成した。
【0095】
第2シート状基材から第1溶媒であるエチルアルコールを蒸発させた後に、この第2シート状基材に、含硫黄π共役系導電性重合体形成物質を第2溶媒で希釈した溶液を浸潤させて0〜80℃の温度範囲で重合反応させて第3シート状基材を生成する重合反応工程を以下のとおりに行った。
【0096】
パラトルエンスルホン酸第2銅が含浸された第2シート状基材を、含硫黄π共役系導電性重合体形成物質である50%濃度の3,4-エチレンジオキシチオフェン溶液に浸し、室温大気中で放置することで化学重合反応を起こさせて、含硫黄π共役系導電性重合体であるポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)が第2シート状基材に浸潤された第3シート状基材を生成した。3,4-エチレンジオキシチオフェンの溶媒である第2溶媒はエチルアルコールである。化学重合反応が終了した後第2溶媒を蒸発させる溶媒除去工程を実行する。
【0097】
溶媒除去工程に引き続いて、この第3シート状基材を重合反応で生成された重合体以外の残渣を除去するため、蒸留水あるいはエチルアルコールで洗浄し室温大気中で放置乾燥することで、この蒸留水あるいはエチルアルコールを除去して、含硫黄π共役系導電性重合であるポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)がシート状基材に浸潤された導電性重合体浸潤シートを形成した。
【0098】
第3シート状基材は、既に含硫黄π共役系導電性重合体浸潤シートとして利用可能な状態であるが、さらに導電性を高めるために、上述の酸化剤浸潤工程、重合反応工程及び溶媒除去工程を経て、蒸留水あるいはエチルアルコールで洗浄するまでの工程を3回繰り返し実行した。こうして含硫黄π共役系導電性重合体浸潤シートを完成させた。その結果、1×103Ω/cm以下の抵抗値を有する含硫黄π共役系導電性重合体浸潤シートを製造することができた。
【0099】
(第3の放熱シート用導電性重合体浸潤シートの製造方法)
上述した様に、酸化剤である芳香族スルホン酸第2鉄としては、パラトルエンスルホン酸第2鉄、ベンゼンスルホン酸第2鉄、メトキシベンゼンスルホン酸第2鉄、ドデシルベンゼンスルホン酸第2鉄、ナフタレンスルホン酸第2鉄、アントラセンスルホン酸第2鉄、アントラキノンスルホン酸第2鉄、テトラリンスルホン酸第2鉄またはフェノールスルホン酸第2鉄の何れか一種を利用することが可能であるが、ここではパラトルエンスルホン酸第2鉄を利用する場合を取り上げて説明する。なお、以下の説明に基づいて、パラトルエンスルホン酸第2鉄以外の物質であっても、酸化剤として上述した物質の何れをも同様に利用可能である。
【0100】
酸化剤であるパラトルエンスルホン酸第2鉄を、第1溶媒で希釈した溶液を第1シート状基材に浸潤させて第2シート状基材を生成する酸化剤浸潤工程は以下のとおりに行った。
【0101】
第1溶媒には、純度99.8%エチルアルコールを利用した。また、エチルアルコールで希釈された50%濃度のパラトルエンスルホン酸第2鉄溶液6gと第1溶媒である純度99.8%エチルアルコール4gを容器内で混合して調合した30%濃度のパラトルエンスルホン酸第2鉄溶液に第1シート状基材としてセルロースシートを5分浸し浸潤させて第2シート状基材を生成した。
【0102】
第2シート状基材から第1溶媒であるエチルアルコールを蒸発させた後に、この第2シート状基材に、ピロール導電性重合体形成物質を第2溶媒で希釈した溶液を浸潤させて0〜80℃の温度範囲で重合反応させて第3シート状基材を生成する重合反応工程を以下のとおりに行った。ここで、ピロール導電性重合体形成物質を希釈した第2溶媒は、エチルアルコールである。
【0103】
パラトルエンスルホン酸第2鉄が含浸された第2シート状基材を、純度99.8%のエチルアルコール5gと100%濃度のピロール5gを混合して調合した50%濃度のピロール溶液に浸し、室温大気中で放置することで化学重合反応を起こさせて、ピロール導電性重合体が第2シート状基材に浸潤された第3シート状基材を生成した。化学重合反応が終了した後第2溶媒を蒸発させる溶媒除去工程を実行する。
【0104】
溶媒除去工程に引き続いて、この第3シート状基材を重合反応で生成された重合体以外の残渣を除去するため、蒸留水あるいはエチルアルコールで洗浄し室温大気中で放置乾燥することで、この蒸留水あるいはエチルアルコールを除去して、ピロール導電性重合体がシート状基材に浸潤された導電性重合体浸潤シートを形成した。
【0105】
第3シート状基材は、既にピロール導電性重合体浸潤シートとして利用可能な状態であるが、さらに導電性を高めるために、上述の酸化剤浸潤工程、重合反応工程及び溶媒除去工程を経て、蒸留水あるいはエチルアルコールで洗浄するまでの工程を3回繰り返し実行した。こうしてピロール導電性重合体浸潤シートを完成させた。その結果、1×103Ω/cm以下の抵抗値を有するピロール導電性重合体浸潤シートを製造することができた。
【0106】
(第4の放熱シート用導電性重合体浸潤シートの製造方法)
上述した様に、酸化剤である芳香族スルホン酸第2銅としては、パラトルエンスルホン酸第2銅、ベンゼンスルホン酸第2銅、メトキシベンゼンスルホン酸第2銅、ドデシルベンゼンスルホン酸第2銅、ナフタレンスルホン酸第2銅、アントラセンスルホン酸第2銅、アントラキノンスルホン酸第2銅、テトラリンスルホン酸第2銅またはフェノールスルホン酸第2銅の何れか一種を利用することが可能であるが、ここではパラトルエンスルホン酸第2銅を利用する場合を取り上げて説明する。なお、以下の説明に基づいて、パラトルエンスルホン酸第2銅以外の物質であっても、酸化剤として上述した物質の何れをも同様に利用可能である。
【0107】
酸化剤であるパラトルエンスルホン酸第2銅を、第1溶媒で希釈した溶液を第1シート状基材に浸潤させて第2シート状基材を生成する酸化剤浸潤工程は以下のとおりに行った。
【0108】
第1溶媒には、純度99.8%エチルアルコールを利用した。また、エチルアルコールで希釈された50%濃度のパラトルエンスルホン酸第2銅溶液6gと第1溶媒である純度99.8%エチルアルコール4gを容器内で混合し調合した30%濃度のパラトルエンスルホン酸第2銅溶液に第1シート状基材としてセルロースシートを5分浸し浸潤させて第2シート状基材を生成した。
【0109】
第2シート状基材から第1溶媒であるエチルアルコールを蒸発させた後に、この第2シート状基材に、ピロール導電性重合体形成物質を第2溶媒で希釈した溶液を浸潤させて0〜80℃の温度範囲で重合反応させて第3シート状基材を生成する重合反応工程を以下のとおりに行った。ここで、ピロール導電性重合体形成物質を希釈した第2溶媒は、エチルアルコールである。
【0110】
パラトルエンスルホン酸第2銅が含浸された第2シート状基材に、純度99.8%のエチルアルコール5gと100%濃度のピロール5gを混合して調合した50%濃度のピロール溶液に第2シート状基材を浸し、室温大気中で放置することで化学重合反応を起こさせて、ピロール導電性重合体が第2シート状基材に浸潤された第3シート状基材を生成した。化学重合反応が終了した後第2溶媒を蒸発させる溶媒除去工程を実行する。
【0111】
溶媒除去工程に引き続いて、この第3シート状基材を重合反応で生成された重合体以外の残渣を除去するため、蒸留水あるいはエチルアルコールで洗浄し室温大気中で放置乾燥することで、この蒸留水あるいはエチルアルコールを除去して、ピロール導電性重合体がシート状基材に浸潤された導電性重合体浸潤シートを形成した。
【0112】
第3シート状基材は、既にピロール導電性重合体浸潤シートとして利用可能な状態であるが、さらに導電性を高めるために、上述の酸化剤浸潤工程、重合反応工程及び溶媒除去工程を経て、蒸留水あるいはエチルアルコールで洗浄するまでの工程を3回繰り返し実行した。こうしてピロール導電性重合体浸潤シートを完成させた。その結果、1×103Ω/cm以下の抵抗値を有するピロール導電性重合体浸潤シートを製造することができた。
【0113】
(第5の放熱シート用導電性重合体浸潤シートの製造方法)
シート状基材に導電性重合体溶液を浸潤させて導電性重合体溶液浸潤シート状基材を生成する導電性重合体浸潤工程において、導電性重合体溶液を以下のとおり生成した。
【0114】
導電性ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)のポリスチレンスルホン酸系水分散液5g、純度99.8%エチルアルコール5gとエチレングリコール5体積%を混合し、導電性重合体溶液とした。エチレングリコールの代わりにジメチルスルホキシドやN-メチルピロリドンを用いても良い。
【0115】
この導電性ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)のポリスチレンスルホン酸系水分散液にシート状基材としてセルロースシートを5分浸し浸潤させることによって導電性重合体溶液浸潤シート状基材を生成した。
【0116】
ここでは、導電性重合体溶液として導電性ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)のポリスチレンスルホン酸系水分散液を使用したが、これに限定されることなく導電性ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)の有機溶媒分散液、導電性ポリアニリン系水分散液、メタノールを分散媒とする高導電性ポリアニリン系有機溶媒分散液、メチルエチルケトンを分散媒とする高導電性ポリアニリン系有機溶媒分散液、メチルエチルケトンを分散媒とする高導電性ポリピロール有機溶媒分散液の何れか一種を利用することも可能である。
【0117】
上述の導電性重合体溶液浸潤シート状基材から分散媒を蒸発させる分散媒除去工程を実行することにより、導電性重合体浸潤シートを形成した。
【0118】
このようにして生成した導電性重合体浸潤シートは、1×103 Ω/cm以下の抵抗値を有していることを確かめた。
【0119】
(溶媒除去工程に続く追加の化学重合工程)
上述の第1〜第4の放熱シート用導電性重合体浸潤シートの製造方法において、溶媒除去工程の終了後に、第2溶媒が除去された第3シート状基材に導電性重合体の水分散液、または導電性重合体の溶媒分散液を塗布する導電性重合体溶液塗布工程と、この第3シート状基材から、導電性重合体の水分散液または導電性重合体の溶媒分散液の溶媒を蒸発させる分散媒除去工程とを続けて実行することによって、シート状基材に導電性重合体がより一層密に浸潤されるので、放熱効果を向上させることが可能である。導電性重合体溶液塗布工程において、化学重合反応が起こり、シート状基材には重合されて生成された導電性重合体が浸潤される。
【0120】
導電性重合体溶液塗布工程は、例えば以下のように実行することができる。導電性ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)のポリスチレンスルホン酸系水分散液5g、純度99.8%エチルアルコール5gとエチレングリコール5体積%を容器内で混合し導電性ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)のポリスチレンスルホン酸系分散溶液を導電性重合体の溶媒分散液として調合する。この導電性ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)のポリスチレンスルホン酸系分散溶液を、上述の第1〜第4の放熱シート用導電性重合体浸潤シートの製造方法において製造された導電性重合体浸潤シート状基材に塗布する。
【0121】
上述の導電性重合体溶液塗布工程を終了して生成された第3シート状基材を室温で1時間、80℃で10分重合させ、エチルアルコールで分散媒除去工程を実行することによって、導電性重合体浸潤シートを形成する。
【0122】
(溶媒除去工程に続く追加の電解重合工程)
上述の第1〜第5の放熱シート用導電性重合体浸潤シートの製造方法において、溶媒除去工程の終了後に、電解重合工程と洗浄工程とを続けて実行することによって、シート状基材に導電性重合体がより一層密に浸潤されるので、放熱効果を向上させることが可能である。
【0123】
上述の第1〜第4の放熱シート用導電性重合体浸潤シートの製造方法において、溶媒除去工程の終了後に形成されている導電性重合体浸潤シートは、第3シート状基材が該当し、上述の第5の放熱シート用導電性重合体浸潤シートの製造方法において、分散媒除去工程の終了後に形成されている導電性重合体浸潤シートは、導電性重合体溶液浸潤シート状基材が該当する。
【0124】
電解重合工程は、例えば以下のように実行することができる。
【0125】
プロピレンカーボネート500ミリリットルに蒸留水1%(体積パーセント)を加えて調合した溶液に、0.3モル/リットルのテトラエチルアンモニウムパラトルエンスルホン酸と0.2モル/リットルの単量体のピロールを混合溶解し、電解溶液を作成する。
【0126】
この電解溶液中に白金板を対極に、作用極に含硫黄π共役系導電性重合体浸潤シート状基材をセットし電解溶液が-20℃条件下で0.2 mA/cm2の電流密度で2時間重合反応を実行することで、作用極にセットされた含硫黄π共役系導電性重合体浸潤シート状基材の面に厚さ5μmポリピロール重合体膜が電解重合によって形成され、含硫黄π共役系導電性重合体及びピロール導電性重合体が浸潤された複合浸潤シート状基材が形成できた。
【0127】
上述の例では、電解溶液を調合するために支持電解質としてテトラエチルアンモニウムパラトルエンスルホン酸を用い、電解質溶媒としてプロピレンカーボネートを用いたが、これに限定されるものではなない。支持電解質としてはトリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸ナトリウム、トリフルオロメタンスルホン酸テトラアルキルアンモニウム塩、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルコキシベンゼンスルホン酸ナトリウム、またはアルキルベンゼンスルホン酸テトラアルキルアンモニウム塩からなる群から選択される一種を利用することが可能である。また、電解溶媒としては、アセトニトリル、γ−ブチロラクトン、硝酸、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸ブチル、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、エチレングリコール、または水からなる群から選択される一種あるいは複数種を用いることが可能である。
【0128】
電解重合工程終了後、含硫黄π共役系導電性重合体及びピロール導電性重合体が浸潤された複合浸潤シート状基材を蒸留水とエチルアルコールにて洗浄し、上述の支持電解質溶液の溶媒を除去し、室温大気圧中で放置乾燥することで洗浄工程が実行される。この洗浄工程では、含硫黄π共役系導電性重合体及びピロール導電性重合体が浸潤された複合浸潤シート状基材から、電解重合工程において生成された重合体以外の残渣が除去される。
【0129】
また、第5の放熱シート用導電性重合体浸潤シートの製造方法において、分散媒除去工程の終了後に、上述の第1〜第4の放熱シート用導電性重合体浸潤シートの製造方法と同様に、電解重合工程と洗浄工程とを続けて実行することによって、シート状基材に導電性重合体がより一層密に浸潤されるので、放熱効果を向上させることが可能である。
【0130】
<この発明の実施形態の放熱シートの製造方法>
(電解メッキ法による放熱シートの製造方法)
上述の第1〜第5の放熱シート用導電性重合体浸潤シートの製造方法によって製造された導電性重合体浸潤シートの主面及び裏面の少なくとも一方の面に電解メッキを施す。
【0131】
蒸留水500ミリリットルに、硫酸第二銅を150 g及び硫酸を20 ミリリットルを加えて攪拌し、硫酸第二銅を溶解させることによって電解メッキ液を調合した。この電解メッキ液中に銅金属板を陽極に上述の第1〜第5の放熱シート用導電性重合体浸潤シートの製造方法によって製造された導電性重合体浸潤シートを陰極(作用極)にセットして電解メッキを実行した。この電解メッキ液の温度は50℃に保ち、導電性重合体浸潤シートの主面及び裏面に厚さ0.01mmの銅の金属層を形成した。
【0132】
導電性重合体浸潤シートの主面及び裏面の何れか一方の面にのみ金属層を形成する場合は、金属層が形成されない側の面を絶縁体層で覆ってから電解メッキ処理を行えばよい。
【0133】
厚さ0.01mmの銅の金属層が形成された導電性重合体浸潤シートを蒸留水にて洗浄し、電解メッキ液を除去し、常温大気圧中で放置乾燥することで放熱シートを形成した。
【0134】
以上説明した例では、電解メッキ法を利用して金属層を形成したが、電解メッキ法に限定されることなく、PVD法、CVD法、あるいは無電解メッキ法によっても金属層の形成をすることが可能である。
【0135】
(金属ペースト塗布法による放熱シートの製造方法)
上述の第1〜第5の放熱シート用導電性重合体浸潤シートの製造方法によって製造された導電性重合体浸潤シートの主面及び裏面の少なくとも一方の面に金属ペーストを塗布することによって金属層を形成する。
【0136】
導電性重合体浸潤シートの主面及び裏面の少なくとも一方の面に金属ペーストの一種である有機溶媒分散銀ペーストを塗布し、有機溶媒分散銀ペーストが塗布された導電性重合体浸潤シートをオーブンにて温度150℃条件下で30分加熱硬化することで導電性重合体浸潤シートに金属層が密着された構成の放熱シートを形成した。
【0137】
ここで有機溶媒分散銀ペーストは、藤倉化成株式会社製のドータイト製品のFA-545を使用した。また、上述の有機溶媒分散銀ペースト以外にも一般的に利用されているリジット基板および印刷回路基板の銀スルーホール、ジャンパー、カーボン接点、慴動電極用などに使用される有機溶媒分散銀ペースト状インク等も使用することが可能である。
【0138】
(印刷技法による放熱シートの製造方法)
上述の第1〜第5の放熱シート用導電性重合体浸潤シートの製造方法によって製造された導電性重合体浸潤シートの主面及び裏面の少なくとも一方の面に印刷技法によって金属層を形成する。
【0139】
導電性重合体浸潤シートの主面及び裏面の少なくとも一方の面に金属ペーストの一種である有機溶媒分散銀ペーストをシルク印刷によって5μmの厚さに印刷した。有機溶媒分散銀ペーストが印刷された導電性重合体浸潤シートをオーブンにて温度150℃条件下で30分加熱することで導電性重合体浸潤シートに金属層が密着された構成の放熱シートを形成した。
【0140】
ここで有機溶媒分散銀ペーストは、藤倉化成株式会社製のドータイト製品のFA-545を使用した。また、上述の有機溶媒分散銀ペースト以外にも一般的に利用されているリジット基板および印刷回路基板の銀スルーホール、ジャンパー、カーボン接点、慴動電極用などに使用される有機溶媒分散銀ペースト状インク等も使用することが可能である。
【0141】
(金属シートの接着技法による放熱シートの製造方法)
上述の第1〜第5の放熱シート用導電性重合体浸潤シートの製造方法によって製造された導電性重合体浸潤シートの主面及び裏面の少なくとも一方の面に接着部材を介して金属シートを接着して放熱シートを形成する。
【0142】
接着部材としては、ニチバン株式会社製の両面粘着テープ(製品番号NW-50)あるいは、セメダイン株式会社製のアクリル変成シリコーン樹脂であるセメダイン(製品番号SX720W)等を適宜選択して利用することが可能である。
【0143】
<放熱シートの熱的性質の検証>
図2から図6を参照して、この発明の実施の形態の放熱シートの熱的性質についての検証実験の結果を説明する。
【0144】
図2は、この発明の実施の形態の放熱シートの熱的性質についての検証実験の説明に供する図であり、発熱デバイス40、電気配線ボード42、放熱シート44、及びヒートシンク46の配置関係を概略的に示した断面構造図である。
【0145】
発熱デバイス40として1Wの発光ダイオードを使った。電気配線ボード42は周知のユニバーサルプリント基板を使った。このユニバーサルプリント基板は、ガラスエポキシ材を使って形成されたサンハヤト株式会社製のユニバーサルプリント基板(型番:ICB-93SHG)である。ヒートシンク46はアルミニウム製の厚みが0.5 mmのアルミニウム板ヒートシンクを使った。
【0146】
電気配線ボード42、放熱シート44、及びヒートシンク46はそれぞれ60 mmの正方形に切断して、図2に示すように重ね合わせてある。発熱デバイス40は、60 mmの正方形の一辺から5 mm離れた位置であって、この一辺と垂直な2辺から等距離の位置に配置されている。
【0147】
放熱シート44には、この発明の実施の形態の第1の放熱シート、第3の放熱シートに対する熱的特性を検証した。第2の放熱シート、第4の放熱シート及び第5の放熱シーtの熱的特性は、第1の放熱シートの熱的特性および第3の放熱シートの熱的特性と有意差が認められなかったので、ここでは、第1の放熱シート及び第3の放熱シートに対する熱的特性の検証結果を提示することとする。
【0148】
また、比較のためにポリピロールのドーパント酸化剤として塩化第2銅を使用して作成したピロール導電性重合体浸潤シートを用いて形成した放熱シートの熱的特性の検証結果を掲げる。
【0149】
酸化剤として塩化第2銅を使用して作成したピロール導電性重合体浸潤シートを用いて形成した放熱シートとしては、比較例1の放熱シートとして、金属シートの主面及び裏面にポリピロール重合体膜が形成されて放熱シートを取り上げた。また、比較例2の放熱シートとして、セルロースシートにポリピロール重合体が浸潤されたポリピロール浸潤シートの主面及び裏面に金属層が密着されて成る放熱シートを取り上げた。
【0150】
放熱シートの熱的特性の評価は、図2に示すCH1〜CH8の合計8箇所での発熱デバイス40への通電開始時からの温度時間変化を観測することによって行った。CH1、CH3、CH5及びCH7は、電気配線ボード42の、発熱デバイス40が設置されている側の表面の温度測定ポイントを示す。また、CH2、CH4、CH6及びCH8は、ヒートシンク46の電気配線ボード42が設置された側とは反対側の表面の温度測定ポイントを示す。
【0151】
図2に示すように、CH1は発熱デバイス40の直下に設定された温度測定ポイントであり、CH3、CH5及びCH7は、それぞれ発熱デバイス40から15 mm、30 mm及び45 mm離れた位置に設定された温度測定ポイントである。また、CH2は発熱デバイス40の直下に設定された温度測定ポイントであり、CH4、CH6及びCH8は、それぞれ発熱デバイス40から15 mm、30 mm及び45 mm離れた位置に設定された温度測定ポイントである。
【0152】
図3は、この発明の実施の形態の第1の放熱シートを放熱シート44として用いた場合の、CH1〜CH8における温度の時間変化を示す図である。横軸は時間を分単位で目盛って示してあり、縦軸は温度を℃目盛で目盛って示してある。
【0153】
第1の放熱シートは、セルロースシートに芳香族スルホン酸鉄を用いて重合された含硫黄π共役系導電性重合体が浸潤されたシート状基材の主面及び裏面に銅の薄膜金属層が形成され放熱シートである。ここでは、電気配線ボード42としてのユニバーサルプリント基板と放熱シート44とは直に密着されており、ヒートシンク46としてのアルミニウム製のヒートシンクと放熱シート44とは直に密着されている。
【0154】
図3に示すように、発熱デバイス40の直下に設定された温度測定ポイントCH1における温度変化は、発熱デバイスである発光ダイオードに通電を開始後3分後に43.5℃に達している。そして、最終的に52.5℃に達して熱的に平衡状態となっている。温度測定ポイントCH2〜CH8は、CH1よりも概ね13℃程度低い温度となっている。
【0155】
表1に、一連の放熱シートの熱的特性の評価において求められた熱抵抗の大きさを一覧にまとめて示してある。I〜IVと示す縦の欄には、放熱シート44にそれぞれ第1の放熱シート、第2の放熱シート、比較例1の放熱シート及び比較例2の放熱シートを用いた場合の熱抵抗の大きさを示してある。
【0156】
【表1】

【0157】
表1のA〜Hと示してある横の欄には、それぞれ以下に示す2箇所の間の熱抵抗の値を示してある。Aの欄は発熱デバイスとこの発熱デバイスに接する空間との間の熱抵抗値、Bの欄はCH2とCH2に接する空間との間の熱抵抗値、Cの欄はCH3とCH3に接する空間との間の熱抵抗値、Dの欄はCH4とCH4に接する空間との間の熱抵抗値、Eの欄はCH5とCH5に接する空間との間の熱抵抗値、Fの欄はCH6とCH6に接する空間との間の熱抵抗値、Gの欄はCH7とCH7に接する空間との間の熱抵抗値、Hの欄はCH8とCH8に接する空間との間の熱抵抗値を示している。
【0158】
この発明の実施の形態の第1の放熱シートを放熱シート44として用いた場合の、熱抵抗値は、概ね19.1℃/W〜32.0℃/Wとなっている。
【0159】
図4は、この発明の実施の形態の第2の放熱シートを放熱シート44として用いた場合の、CH1〜CH8における温度の時間変化を示す図である。横軸は時間を分単位で目盛って示してあり、縦軸は温度を℃目盛で目盛って示してある。
【0160】
第2の放熱シートは、セルロースシートに芳香族スルホン酸鉄を用いて重合されたピロール重合体が浸潤されたシート状基材の主面及び裏面に銅の薄膜金属層が形成され放熱シートである。ここでも、上述の第1の放熱シートの場合と同様に、電気配線ボード42としてのユニバーサルプリント基板と放熱シート44とは直に密着されており、ヒートシンク46としてのアルミニウム製のヒートシンクと放熱シート44とは直に密着されている。
【0161】
図4に示すように、発熱デバイス40の直下に設定された温度測定ポイントCH1における温度変化は、発熱デバイスである発光ダイオードに通電を開始後3分後に43.7℃に達している。そして、最終的に51.6℃に達して熱的に平衡状態となっている。温度測定ポイントCH2〜CH8は、CH1よりも概ね13℃程度低い温度となっている。
【0162】
表1に示すように、この発明の実施の形態の第2の放熱シートを放熱シート44として用いた場合の、熱抵抗値は、概ね19.1℃/W〜32.2℃/Wとなっている。
【0163】
図5は、この発明の実施の形態の第1及び2の放熱シートを放熱シート44として用いた場合と比較するために、放熱シート44として比較例1の放熱シートを用いた場合の、CH1〜CH8における温度の時間変化を示す図である。図5の横軸は時間を分単位で目盛って示してあり、縦軸は温度を℃目盛で目盛って示してある。
【0164】
図5に示すように、発熱デバイス40の直下に設定された温度測定ポイントCH1における温度変化は、発熱デバイスである発光ダイオードに通電を開始後3分後に47.1℃に達している。そして、最終的に54.8℃に達して熱的に平衡状態となっている。温度測定ポイントCH2〜CH8は、CH1よりも概ね15℃程度低い温度となっている。
【0165】
表1に示すように、比較例1の放熱シートを放熱シート44として用いた場合の、熱抵抗値は、概ね20.2℃/W〜35.4℃/Wとなっている。
【0166】
図6は、この発明の実施の形態の第1及び2の放熱シートを放熱シート44として用いた場合と比較するために、放熱シート44として比較例2の放熱シートを用いた場合の、CH1〜CH8における温度の時間変化を示す図である。横軸は時間を分単位で目盛って示してあり、縦軸は温度を℃目盛で目盛って示してある。
【0167】
図6に示すように、発熱デバイス40の直下に設定された温度測定ポイントCH1における温度変化は、発熱デバイスである発光ダイオードに通電を開始後3分後に45.1℃に達している。そして、最終的に52.3℃に達して熱的に平衡状態となっている。温度測定ポイントCH2〜CH8は、CH1よりも概ね13℃程度低い温度となっている。
【0168】
表1に示すように、比較例2の放熱シートを放熱シート44として用いた場合の、熱抵抗値は、概ね19.2℃/W〜32.7℃/Wとなっている。
【0169】
上述の図3〜図6に示すように、この発明の実施の形態の第1及び第2の放熱シート及び比較例1及び2のそれぞれの放熱シートの熱的特性に大差がないことが分かる。このことから、この発明の実施の形態の第1及び第2の放熱シートは、従来のドーパント酸化剤として塩化第2銅を用いて重合されたピロール重合体が浸潤されたピロール重合体浸潤シートを用いて形成される放熱シートが有する優れた放熱特性を有し、かつ導電性重合体浸潤シートに残留塩素が存在しないという優れた特性を有していることが分かる。
【符号の説明】
【0170】
16、20:金属層
18、26:導電性重合体浸潤シート
22、30:金属シート
24、28:接着部材
40:発熱デバイス
42:電気配線ボード
44:放熱シート
46:ヒートシンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状基材に、酸化剤である芳香族スルホン酸第2鉄を用いて重合された含硫黄π共役系導電性重合体が浸潤された含硫黄π共役系導電性重合体浸潤シートの主面及び裏面の双方又はいずれか一方の面に金属層が密着されて成ることを特徴とする放熱シート。
ここで、酸化剤である前記芳香族スルホン酸第2鉄は、パラトルエンスルホン酸第2鉄、ベンゼンスルホン酸第2鉄、メトキシベンゼンスルホン酸第2鉄、ドデシルベンゼンスルホン酸第2鉄、ナフタレンスルホン酸第2鉄、アントラセンスルホン酸第2鉄、アントラキノンスルホン酸第2鉄、テトラリンスルホン酸第2鉄またはフェノールスルホン酸第2鉄からなる群から選択される何れか一種である。また、前記含硫黄π共役系導電性重合体は、3,4-エチレンジオキシチオフェン、チオフェン誘導体、チオフェン、3-アルキルチオフェン、3-アルコキシチオフェン、3,4-ジアルキルチオフェン、3,4-ジアルコキシチオフェンからなる群から選択される単量体の何れか一種が重合されて形成される重合体である。
【請求項2】
シート状基材に、酸化剤である芳香族スルホン酸第2銅を用いて重合された含硫黄π共役系導電性重合体が浸潤された含硫黄π共役系導電性重合体浸潤シートの主面及び裏面の双方又はいずれか一方の面に金属層が密着されて成ることを特徴とする放熱シート。
ここで、酸化剤である前記芳香族スルホン酸第2銅は、パラトルエンスルホン酸第2銅、ベンゼンスルホン酸第2銅、メトキシベンゼンスルホン酸第2銅、ドデシルベンゼンスルホン酸第2銅、ナフタレンスルホン酸第2銅、アントラセンスルホン酸第2銅、アントラキノンスルホン酸第2銅、テトラリンスルホン酸第2銅またはフェノールスルホン酸第2銅からなる群から選択される何れか一種である。また、前記含硫黄π共役系導電性重合体は、3,4-エチレンジオキシチオフェン、チオフェン誘導体、チオフェン、3-アルキルチオフェン、3-アルコキシチオフェン、3,4-ジアルキルチオフェン、3,4-ジアルコキシチオフェンからなる群から選択される単量体の何れか一種が重合されて形成される重合体である。
【請求項3】
シート状基材に、酸化剤である芳香族スルホン酸第2鉄を用いて重合されたピロール導電性重合体が浸潤されたピロール導電性重合体浸潤シートの主面及び裏面の双方又はいずれか一方の面に金属層が密着されて成ることを特徴とする放熱シート。
ここで、酸化剤である前記芳香族スルホン酸第2鉄は、パラトルエンスルホン酸第2鉄、ベンゼンスルホン酸第2鉄、メトキシベンゼンスルホン酸第2鉄、ドデシルベンゼンスルホン酸第2鉄、ナフタレンスルホン酸第2鉄、アントラセンスルホン酸第2鉄、アントラキノンスルホン酸第2鉄、テトラリンスルホン酸第2鉄またはフェノールスルホン酸第2鉄からなる群から選択される何れか一種である。
【請求項4】
シート状基材に、酸化剤である芳香族スルホン酸第2銅を用いて重合されたピロール導電性重合体が浸潤されたピロール導電性重合体浸潤シートの主面及び裏面の双方又は何れか一方の面に金属層が密着されて成ることを特徴とする放熱シート。
ここで、酸化剤である前記芳香族スルホン酸第2銅は、パラトルエンスルホン酸第2銅、ベンゼンスルホン酸第2銅、メトキシベンゼンスルホン酸第2銅、ドデシルベンゼンスルホン酸第2銅、ナフタレンスルホン酸第2銅、アントラセンスルホン酸第2銅、アントラキノンスルホン酸第2銅、テトラリンスルホン酸第2銅またはフェノールスルホン酸第2銅からなる群から選択される何れか一種である。
【請求項5】
シート状基材に、導電性重合体溶液を用いて導電性重合体が浸潤された導電性重合体浸潤シートの主面及び裏面の双方又はいずれか一方の面に金属層が密着されて成ることを特徴とする放熱シート。
ここで前記導電性重合体溶液は、導電性ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)のポリスチレンスルホン酸系水分散液、導電性ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)の有機溶媒分散液、導電性ポリアニリン系水分散液、メタノールを分散媒(disperse medium)とする高導電性ポリアニリン系有機溶媒分散液、メチルエチルケトンを分散媒とする高導電性ポリアニリン系有機溶媒分散液、メチルエチルケトンを分散媒とする高導電性ポリピロール有機溶媒分散液からなる群から選択される何れか一種である。
【請求項6】
シート状基材に、酸化剤である芳香族スルホン酸第2鉄を用いて重合された含硫黄π共役系導電性重合体が浸潤された含硫黄π共役系導電性重合体浸潤シートの主面及び裏面の双方又はいずれか一方の面に接着部材を介して金属シートが密着されて成ることを特徴とする放熱シート。
ここで、酸化剤である前記芳香族スルホン酸第2鉄は、パラトルエンスルホン酸第2鉄、ベンゼンスルホン酸第2鉄、メトキシベンゼンスルホン酸第2鉄、ドデシルベンゼンスルホン酸第2鉄、ナフタレンスルホン酸第2鉄、アントラセンスルホン酸第2鉄、アントラキノンスルホン酸第2鉄、テトラリンスルホン酸第2鉄またはフェノールスルホン酸第2鉄からなる群から選択される何れか一種である。また、前記含硫黄π共役系導電性重合体は、3,4-エチレンジオキシチオフェン、チオフェン誘導体、チオフェン、3-アルキルチオフェン、3-アルコキシチオフェン、3,4-ジアルキルチオフェン、3,4-ジアルコキシチオフェンからなる群から選択される単量体の何れか一種が重合されて形成される重合体である。
【請求項7】
シート状基材に、酸化剤である芳香族スルホン酸第2銅を用いて重合された含硫黄π共役系導電性重合体が浸潤された含硫黄π共役系導電性重合体浸潤シートの主面及び裏面の双方又はいずれか一方の面に接着部材を介して金属シートが密着されて成ることを特徴とする放熱シート。
ここで、酸化剤である前記芳香族スルホン酸第2銅は、パラトルエンスルホン酸第2銅、ベンゼンスルホン酸第2銅、メトキシベンゼンスルホン酸第2銅、ドデシルベンゼンスルホン酸第2銅、ナフタレンスルホン酸第2銅、アントラセンスルホン酸第2銅、アントラキノンスルホン酸第2銅、テトラリンスルホン酸第2銅またはフェノールスルホン酸第2銅からなる群から選択される何れか一種である。また、前記含硫黄π共役系導電性重合体は、3,4-エチレンジオキシチオフェン、チオフェン誘導体、チオフェン、3-アルキルチオフェン、3-アルコキシチオフェン、3,4-ジアルキルチオフェン、3,4-ジアルコキシチオフェンからなる群から選択される単量体の何れか一種が重合されて形成される重合体である。
【請求項8】
シート状基材に、酸化剤である芳香族スルホン酸第2鉄を用いて重合されたピロール導電性重合体が浸潤されたピロール導電性重合体浸潤シートの主面及び裏面の双方又はいずれか一方の面に接着部材を介して金属シートが密着されて成ることを特徴とする放熱シート。
ここで、酸化剤である前記芳香族スルホン酸第2鉄は、パラトルエンスルホン酸第2鉄、ベンゼンスルホン酸第2鉄、メトキシベンゼンスルホン酸第2鉄、ドデシルベンゼンスルホン酸第2鉄、ナフタレンスルホン酸第2鉄、アントラセンスルホン酸第2鉄、アントラキノンスルホン酸第2鉄、テトラリンスルホン酸第2鉄またはフェノールスルホン酸第2鉄からなる群から選択される何れか一種である。
【請求項9】
シート状基材に、酸化剤である芳香族スルホン酸第2銅を用いて重合されたピロール導電性重合体が浸潤されたピロール導電性重合体浸潤シートの主面及び裏面の双方又はいずれか一方の面に接着部材を介して金属シートが密着されて成ることを特徴とする放熱シート。
ここで、酸化剤である前記芳香族スルホン酸第2銅は、パラトルエンスルホン酸第2銅、ベンゼンスルホン酸第2銅、メトキシベンゼンスルホン酸第2銅、ドデシルベンゼンスルホン酸第2銅、ナフタレンスルホン酸第2銅、アントラセンスルホン酸第2銅、アントラキノンスルホン酸第2銅、テトラリンスルホン酸第2銅またはフェノールスルホン酸第2銅からなる群から選択される何れか一種である。
【請求項10】
シート状基材に導電性重合体溶液を用いて導電性重合体が浸潤された導電性重合体浸潤シートの主面及び裏面の双方又はいずれか一方の面に接着部材を介して金属シートが密着されて成ることを特徴とする放熱シート。
ここで前記導電性重合体溶液は、導電性ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)のポリスチレンスルホン酸系水分散液、導電性ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)の有機溶媒分散液、導電性ポリアニリン系水分散液、メタノールを分散媒(disperse medium)とする高導電性ポリアニリン系有機溶媒分散液、メチルエチルケトンを分散媒とする高導電性ポリアニリン系有機溶媒分散液、メチルエチルケトンを分散媒とする高導電性ポリピロール有機溶媒分散液からなる群から選択される何れか一種である。
【請求項11】
酸化剤である芳香族スルホン酸第2鉄を第1溶媒で希釈した溶液を第1シート状基材に浸潤させて第2シート状基材を生成する酸化剤浸潤工程と、
前記第2シート状基材から前記第1溶媒を蒸発させた後に、当該第2シート状基材に、含硫黄π共役系導電性重合体形成物質を第2溶媒で希釈した溶液を浸潤させて0〜80℃の温度範囲で重合反応させて第3シート状基材を生成する重合反応工程と、
前記第3シート状基材から前記第2溶媒を蒸発させる溶媒除去工程と
を含み、
前記第2溶媒が除去された前記第3シート状基材を含硫黄π共役系導電性重合体浸潤シートとして製造する導電性重合体浸潤シートの製造方法。
ここで、酸化剤である前記芳香族スルホン酸第2鉄は、パラトルエンスルホン酸第2鉄、ベンゼンスルホン酸第2鉄、メトキシベンゼンスルホン酸第2鉄、ドデシルベンゼンスルホン酸第2鉄、ナフタレンスルホン酸第2鉄、アントラセンスルホン酸第2鉄、アントラキノンスルホン酸第2鉄、テトラリンスルホン酸第2鉄またはフェノールスルホン酸第2鉄からなる群から選択される何れか一種である。また、前記含硫黄π共役系導電性重合体は、3,4-エチレンジオキシチオフェン、チオフェン誘導体、チオフェン、3-アルキルチオフェン、3-アルコキシチオフェン、3,4-ジアルキルチオフェン、3,4-ジアルコキシチオフェンからなる群から選択される単量体の何れか一種が重合されて形成される重合体である。
【請求項12】
酸化剤である芳香族スルホン酸第2銅を第1溶媒で希釈した溶液を第1シート状基材に浸潤させて第2シート状基材を生成する酸化剤浸潤工程と、
前記第2シート状基材から前記第1溶媒を蒸発させた後に、当該第2シート状基材に、含硫黄π共役系導電性重合体形成物質を第2溶媒で希釈した溶液を浸潤させて0〜80℃の温度範囲で重合反応させて第3シート状基材を生成する重合反応工程と、
前記第3シート状基材から前記第2溶媒を蒸発させる溶媒除去工程と
を含み、
前記第2溶媒が除去された前記第3シート状基材を含硫黄π共役系導電性重合体浸潤シートとして製造する導電性重合体浸潤シートの製造方法。
ここで、酸化剤である前記芳香族スルホン酸第2銅は、パラトルエンスルホン酸第2銅、ベンゼンスルホン酸第2銅、メトキシベンゼンスルホン酸第2銅、ドデシルベンゼンスルホン酸第2銅、ナフタレンスルホン酸第2銅、アントラセンスルホン酸第2銅、アントラキノンスルホン酸第2銅、テトラリンスルホン酸第2銅またはフェノールスルホン酸第2銅からなる群から選択される何れか一種である。また、前記含硫黄π共役系導電性重合体は、3,4-エチレンジオキシチオフェン、チオフェン誘導体、チオフェン、3-アルキルチオフェン、3-アルコキシチオフェン、3,4-ジアルキルチオフェン、3,4-ジアルコキシチオフェンからなる群から選択される単量体の何れか一種が重合されて形成される重合体である。
【請求項13】
酸化剤である芳香族スルホン酸第2鉄を第1溶媒で希釈した溶液を第1シート状基材に浸潤させて第2シート状基材を生成する酸化剤浸潤工程と、
当該第2シート状基材から前記第1溶媒を蒸発させた後に、当該第2シート状基材に、ピロール導電性重合体形成物質を第2溶媒で希釈した溶液を浸潤させて0〜80℃の温度範囲で重合反応させて第3シート状基材を生成する重合反応工程と、
前記第3シート状基材から前記第2溶媒を蒸発させる溶媒除去工程と
を含み、
前記第2溶媒が除去された前記第3シート状基材をピロール導電性重合体浸潤シートとして製造する導電性重合体浸潤シートの製造方法。
ここで、酸化剤である前記芳香族スルホン酸第2鉄は、パラトルエンスルホン酸第2鉄、ベンゼンスルホン酸第2鉄、メトキシベンゼンスルホン酸第2鉄、ドデシルベンゼンスルホン酸第2鉄、ナフタレンスルホン酸第2鉄、アントラセンスルホン酸第2鉄、アントラキノンスルホン酸第2鉄、テトラリンスルホン酸第2鉄またはフェノールスルホン酸第2鉄からなる群から選択される何れか一種である。
【請求項14】
酸化剤である芳香族スルホン酸第2銅を第1溶媒で希釈した溶液を第1シート状基材に浸潤させて第2シート状基材を生成する酸化剤浸潤工程と、
当該第2シート状基材から前記第1溶媒を蒸発させた後に、当該第2シート状基材に、ピロール導電性重合体形成物質を第2溶媒で希釈した溶液を浸潤させて0〜80℃の温度範囲で重合反応させて第3シート状基材を生成する重合反応工程と、
前記第3シート状基材から前記第2溶媒を蒸発させる溶媒除去工程と
を含み、
前記第2溶媒が除去された前記第3シート状基材をピロール導電性重合体浸潤シートとして製造する導電性重合体浸潤シートの製造方法。
ここで、酸化剤である前記芳香族スルホン酸第2銅は、パラトルエンスルホン酸第2銅、ベンゼンスルホン酸第2銅、メトキシベンゼンスルホン酸第2銅、ドデシルベンゼンスルホン酸第2銅、ナフタレンスルホン酸第2銅、アントラセンスルホン酸第2銅、アントラキノンスルホン酸第2銅、テトラリンスルホン酸第2銅またはフェノールスルホン酸第2銅からなる群から選択される何れか一種である。
【請求項15】
シート状基材に導電性重合体溶液を浸潤させて導電性重合体溶液浸潤シート状基材を生成する導電性重合体浸潤工程と、
前記導電性重合体溶液浸潤シート状基材から分散媒を蒸発させる分散媒除去工程と
を含み、
前記分散媒が除去された前記導電性重合体溶液浸潤シート状基材を導電性重合体浸潤シートとして製造する導電性重合体浸潤シートの製造方法。
ここで前記導電性重合体溶液は、導電性ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)のポリスチレンスルホン酸系水分散液、導電性ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)の有機溶媒分散液、導電性ポリアニリン系水分散液、メタノールを分散媒(disperse medium)とする高導電性ポリアニリン系有機溶媒分散液、メチルエチルケトンを分散媒とする高導電性ポリアニリン系有機溶媒分散液、メチルエチルケトンを分散媒とする高導電性ポリピロール有機溶媒分散液からなる群から選択される何れか一種である。
【請求項16】
前記溶媒除去工程の終了後に、
前記第2溶媒が除去された前記第3シート状基材に導電性重合体の水分散液、または導電性重合体の溶媒分散液を塗布する導電性重合体溶液塗布工程と、
前記導電性重合体溶液が塗布された第3シート状基材から、前記導電性重合体の水分散液または前記導電性重合体の溶媒分散液の溶媒を蒸発させる分散媒除去工程と
を更に含むことを特徴とする請求項11〜14のいずれか一項に記載の導電性重合体浸潤シートの製造方法。
【請求項17】
前記溶媒除去工程の終了後に、
前記第2溶媒が除去された前記第3シート状基材に、テトラエチルアンモニウムパラトルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸ナトリウム、トリフルオロメタンスルホン酸テトラアルキルアンモニウム塩、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルコキシベンゼンスルホン酸ナトリウム、またはアルキルベンゼンスルホン酸テトラアルキルアンモニウム塩からなる群から選択される何れか一種を支持電解質とし、該支持電解質をプロピレンカーボネート、アセトニトリル、γ−ブチロラクトン、硝酸、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸ブチル、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、エチレングリコール、または水からなる群から選択される何れか一種あるいは複数種を支持電解質溶媒とする支持電解質溶液に、3,4-エチレンジオキシチオフェン、ピロール、チオフェン、チオフェン誘導体、3-アルコキシチオフェン、3,4-ジアルキルチオフェン、または3,4-ジアルコキシチオフェンからなる群から選択される単量体の何れか一種を溶解させて、電解重合させる電解重合工程と、
該電解重合工程が終了した後の前記第3シート状基材を洗浄する洗浄工程と
を更に含むことを特徴とする請求項11〜14のいずれか一項に記載の導電性重合体浸潤シートの製造方法。
【請求項18】
前記分散媒除去工程の終了後に、
前記分散媒が除去された前記導電性重合体溶液浸潤シート状基材に、テトラエチルアンモニウムパラトルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸ナトリウム、トリフルオロメタンスルホン酸テトラアルキルアンモニウム塩、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルコキシベンゼンスルホン酸ナトリウム、またはアルキルベンゼンスルホン酸テトラアルキルアンモニウム塩からなる群から選択される何れか一種を支持電解質とし、該支持電解質をプロピレンカーボネート、アセトニトリル、γ−ブチロラクトン、硝酸、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸ブチル、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、エチレングリコール、または水からなる群から選択される何れか一種あるいは複数種を支持電解質溶媒とする支持電解質溶液に、3,4-エチレンジオキシチオフェン、ピロール、チオフェン、チオフェン誘導体、3-アルキルチオフェン、3-アルコキシチオフェン、3,4-ジアルキルチオフェン、または3,4-ジアルコキシチオフェンからなる群から選択される単量体の何れか一種を溶解させて、電解重合させる電解重合工程と、
該電解重合工程が終了した後の前記導電性重合体溶液浸潤シート状基材を洗浄する洗浄工程と
を更に含むことを特徴とする請求項15に記載の導電性重合体浸潤シートの製造方法。
【請求項19】
請求項11〜18のいずれか一項に記載の方法で作製された導電性重合体浸潤シートを準備する導電性重合体浸潤シート準備工程と、
前記導電性重合体浸潤シートの主面及び裏面の双方またはいずれか一方の面に、物理気相成長法(PVD: Physical Vapor Deposition)、化学気相成長法(CVD: Chemical Vapor Deposition)、電解メッキ法、あるいは無電解メッキ法によって金属層を密着させる金属層形成工程と
を含むことを特徴とする放熱シートの製造方法。
【請求項20】
請求項11〜18のいずれか一項に記載の方法で作製された導電性重合体浸潤シートを準備する導電性重合体浸潤シート準備工程と、
前記導電性重合体浸潤シートの主面及び裏面の双方またはいずれか一方の面に、金属微粒子が粘性物質に練り込まれて構成される金属ペーストを塗布して金属層を密着させる金属ペースト塗布工程と
を含むことを特徴とする放熱シートの製造方法。
【請求項21】
請求項11〜18のいずれか一項に記載の方法で作製された導電性重合体浸潤シートを準備する導電性重合体浸潤シート準備工程と、
前記導電性重合体浸潤シートの主面及び裏面の双方またはいずれか一方の面に、金属微粒子を印刷固定して金属層を密着させる金属層印刷工程と
を含むことを特徴とする放熱シートの製造方法。
【請求項22】
請求項11〜18のいずれか一項に記載の方法で作製された導電性重合体浸潤シートを準備する導電性重合体浸潤シート準備工程と、
前記導電性重合体浸潤シートの主面及び裏面の双方またはいずれか一方の面に、接着部材を介して金属シートを接着する金属シート接着工程と
を含むことを特徴とする放熱シートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−155048(P2011−155048A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−14219(P2010−14219)
【出願日】平成22年1月26日(2010.1.26)
【特許番号】特許第4564586号(P4564586)
【特許公報発行日】平成22年10月20日(2010.10.20)
【出願人】(508204098)有限会社アイレックス (3)
【出願人】(591028577)純正化学株式会社 (3)
【Fターム(参考)】