説明

放熱体

【課題】従来の放熱体では、放熱性を向上させようとすると、形状が大型化するという課題があった。
【解決手段】発熱体に接する金属からなる熱伝導体11と、この熱伝導体11に接する放熱シート12と、この放熱シート12を挟んで熱伝導体11に固定された複数個の開口部14を有する保持体13とを備え、放熱シート12の単位体積あたりの熱容量を熱伝導体11の単位体積あたりの熱容量よりも小さいものとしたものであり、このようにすることにより、熱を効率良く放熱することができるとともに、小型化、薄型化を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種電子機器に用いられる放熱体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年各種電子機器の小型化、薄型化、多機能化等が進み、電子回路で発生する熱も大きくなり、これを放熱させる必要があり、放熱フィンを用いて放熱させようとしているが、これにより小型化、薄型化の妨げとなってきた。
【0003】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−286684号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら放熱性を向上させようとすると、放熱フィンを大きくする必要があるが、これにより電子機器の小型化、薄型化がしにくいという課題があった。
【0006】
本発明は、このような課題を解決し、放熱特性の改善を図るとともに、小型化、薄型化が可能となる放熱体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は発熱体に接する金属からなる熱伝導体と、この熱伝導体に接する放熱シートと、この放熱シートを挟んで熱伝導体に固定された複数個の開口部を有する保持体とを備え、放熱シートの単位体積あたりの熱容量を熱伝導体の単位体積あたりの熱容量よりも小さいものとしたものである。
【発明の効果】
【0008】
以上のように本発明によれば、電子回路で発生した熱を効率良く放熱することができ、小型化、薄型化を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施の形態における放熱体の分解斜視図
【図2】本発明の一実施の形態における放熱体の分解断面図
【図3】本発明の一実施の形態における別の放熱体の分解斜視図
【図4】本発明の一実施の形態におけるさらに別の放熱体の斜視図
【図5】図4の放熱体のB−B’断面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施の形態1)
以下、本発明の一実施の形態における放熱体について、図面を参照しながら説明する。
【0011】
図1は、本発明の一実施の形態における放熱体の分解斜視図であり、図2は図1のa−a線で切った時の断面図である。図1、図2において、厚さ約2mmのアルミ板からなる熱伝導体11に、厚さ約0.07mmのグラファイトシートからなる放熱シート12を挟んで、厚さ約0.5mmのステンレス板からなる保持体13をネジ16により固定することにより、放熱体を構成している。この放熱体の熱伝導体11の部分を、IC等の発熱体にグリス等を用いて接触させ、発熱体から出た熱を、放熱シート12を通じて放熱させ、発熱体が高温にならないようにすることができる。
【0012】
ここで、保持体13には大きさが約5mm×5mmの開口部14がほぼ全面にわたって幅約5mmの桟15を挟んで設けられ、この開口部14から放熱シート12が露出している状態となっている。このように開口部14の狭い方の幅よりも、保持体13の厚さを薄くすることにより、開口部14で露出した放熱シート12が空気と接触しやすくなり、より放熱性を高めることができる。
【0013】
この保持体13は、熱伝導体11と放熱シート12とを密着させることにより、熱をスムーズに伝えることができるようにするものであり、一定の固さが必要となる。本実施の形態では、保持体13にステンレス板を用いているため、薄くしても必要な固さを確保することができる。従来のような放熱フィンでは、放熱性を高めるために、フィンの高さを高くする必要があり、これによって放熱体が大きくなっていた。これに対し本発明の実施形態の構成をとると、保持体13の厚さを薄くする方が、放熱性が増すため、放熱体の小型化、薄型化に非常に有利なものとなる。以上のように保持体13の材料に熱伝導体11よりも固い材料を用いることにより、保持体13の厚さを薄くし、放熱体の高さを低くすることができる。
【0014】
従来のような放熱フィンを用いる場合、例えばアルミニウムでは、その比熱容量が0.9J・g-1・K-1、密度が2.7g/cm3であるため、単位体積あたりの熱容量が大きくなり、この放熱フィンに熱が伝わった場合、放熱フィン全体を暖めようと作用し、放熱が進みにくい。これに対し本実施の形態のように、開口部14から露出しているグラファイトシートの比熱容量が0.85J・g-1・K-1、密度が約1.2g/cm3であるため、単位体積あたりの熱容量がアルミニウムに比べて半分以下となり、熱が伝わっても開口部14からどんどん放熱させ、熱伝導体11の温度が高くなることを防ぐことができる。
【0015】
通常グラファイトシートのようなものを用いる場合、製品の組み立て作業時等にグラファイトシート表面に接触した場合、放熱シートを接触、衝撃等によりグラファイトシートが損傷する可能性があるため、表面に保護層を設けているが、この保護層を設けることにより、放熱性が劣化する。これに対して本実施の形態では保護層を設けずに、保持体13によって組み立て時の接触による放熱シートが損傷を防止しているため、放熱性を劣化させる保護層を設ける必要がなく、放熱性を向上させることができる。
【0016】
また、従来放熱シートを金属板に接触保持する場合、金属板、放熱シート間に粘着材からなる粘着層を必要とするが、粘着材による接触保持では、粘着材が熱伝導体11から放熱シートへの熱伝導を阻害する。これに対して、本実施の形態では、保持体13をネジ16による固定で保持する為、粘着材を用いずに放熱シートを金属板に直接接触保持させ、熱伝導を阻害する粘着材がなく、金属板から放熱シートへの伝熱性を向上させることができる。
【0017】
さらに、ステンレスの熱伝導率15W・m-1・K-1に対して、グラファイトシートの面方向の熱伝導率が、1000W・m-1・K-1とはるかに大きくなっているため、熱伝導体11の温度を均一化するとともに、グラファイトシートの表面をステンレスのような比較的熱伝導率の小さな材料からなる保持体13の桟15で覆っていても、速やかに熱を開口部14の方に伝導させることができ、開口部14から放熱させ、放熱体の温度が上昇することを防ぐことができる。
【0018】
また熱伝導体11の放熱シート12を設置する面に、放熱シート12が入る掘り込み17を設けても良い。このとき掘り込み17の深さは、放熱シート12の厚さよりも深いものとすることが望ましい。このようにすることにより、放熱シート12の外周部を熱伝導体11で覆うことができ、放熱シート12の側面露出による損傷を防止することができる。
【0019】
図3は、本発明の一実施の形態における別の放熱体の分解斜視図であり、図3においては、開口部14の形状が一方の方向が、端から端までつながった長方形の形状としたものである。このようにすることにより、例えば放熱体をほぼ鉛直方向に立てて使う場合、開口部14が長い方が鉛直方向になるようにして設置する。空気の流れは、暖まると上方に向かって流れるため、上記のように設置すると、開口部14の長手方向に沿って空気が流れるため、放熱性がより向上する。
【0020】
図4、図5は本発明の一実施の形態におけるさらに別の放熱体の斜視図(熱伝導体は省略している)およびそのB−B’断面図であり、Bを上にして鉛直方向に立てて使うものにおいて、開口部14の放熱シート12と対向する部分の一部に、放熱シート12の面と斜交する方向を向いた複数個のフィン18を設けたものである。このときフィン18は放熱シート12と接しないようになっており、水平よりも下の方を向くようにしている。このようにすることにより、放熱シート12付近の空気は暖められ、フィン18は放熱シート12と接していないため、開口部14の長手方向に沿って上方に空気が流れる。このときフィン18周辺の空気もその流れに吸い込まれるようにして、放熱シート12の表面を流れ、その上方に抜けていく。そのため放熱シート12表面からの放熱がさらに促進され、放熱体としてより大きな効果を発揮させることができる。
【0021】
なお、フィン18は保持体13の上に溶接等の方法で固定しても構わないが、保持体13に開口部14を設ける際に、その一部を残し、これを折り曲げることによりフィン18を形成することが望ましい。このようにすることにより、新たな材料を使うことなくフィン18を形成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明に係る放熱体は、電子回路で発生した熱を効率良く放熱することができるとともに、小型化、薄型化を行うことができ、産業上有用である。
【符号の説明】
【0023】
11 熱伝導体
12 放熱シート
13 保持体
14 開口部
15 桟
16 ネジ
17 掘り込み
18 フィン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱体に接する金属からなる熱伝導体と、この熱伝導体に接する放熱シートと、この放熱シートを挟んで前記熱伝導体に固定された複数個の開口部を有する保持体とを備え、前記放熱シートの単位体積あたりの熱容量を前記熱伝導体の単位体積あたりの熱容量よりも小さいものとした放熱体。
【請求項2】
前記放熱シートの面方向の熱伝導率を、前記熱伝導体の熱伝導率よりも大きいものとした請求項1記載の放熱体。
【請求項3】
前記開口部は長方形の形状をしており、前記開口部の長手方向がほぼ鉛直方向に向くように設置されたものであり、前記開口部の前記放熱シートと対向する部分の一部に、前記放熱シートの面と斜交する方向を向いた複数個のフィンを設けた請求項1記載の放熱体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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