説明

放熱構造を有する電装品モジュール

【課題】本発明は、電子部品の放熱性能を向上させた放熱構造を有する電装品モジュールを提供することを目的とする。
【解決手段】電装品モジュール10は、基板12、基板12に実装された電子部品14a、基板12に設けられた開口部16、電子部品14aの熱を放熱する放熱器18、基板12と放熱器18との間において、開口部16を介して電子部品14aと接触する伝熱シート20を備える。複雑な形状の電子部品14aであっても、伝熱シート20を密着させて放熱させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に実装された電子部品に対する放熱構造を有する電装品モジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、IGBT(insulated gate bipolar transistor)やFWD(free wheeling diode)などのパワーデバイスを基板に実装した電装品モジュールが種々ある。パワーデバイスは高発熱であるため、強制的に放熱させる必要がある。そこで、電装品モジュール50は、パワーデバイス52の熱を例えばヒートスプレッダ54、サーマルビア56、絶縁性の伝熱シート58などを介して放熱器60に熱伝導させる(図7)。パワーデバイス52は、ヒートスプレッダ54などに取り付けやすい平面形状を有している。パワーデバイス52とヒートスプレッダ54とを密着させることが容易であり、放熱させやすい。
【0003】
基板12にはパワーデバイス52以外の他の電子部品も実装される。その電子部品としては、コモンモードチョークコイル(CMC)、シャント抵抗、リレー、電解コンデンサ、フィルムコンデンサなどが挙げられる。これらの電子部品も電流が流れると発熱するため、自然空冷で冷却できなければ強制的に冷却する必要がある。
【0004】
しかし、上述したCMCなどは立体的形状で、巻線などによってその形状が複雑になっている。CMCなどをパワーモデバイス52のようにヒートスプレッダ54に取り付けて強制的に冷却するのは困難である。またシャント抵抗は小型であり、空冷による気流が当たりにくい場合がある。放熱のために部品サイズを大きくする必要があり、装置の大型化を招く。
【0005】
熱伝導性の高い樹脂で電子部品の樹脂封止をおこなう場合があるが、材料費や硬化などの作業に時間がかかる。また、放熱用のシートやゲルを用いて、伝熱により放熱する場合も電子部品の表面を完全に覆うことは困難である。
【0006】
下記の特許文献1には、凸部72を有する平面型ヒートパイプ74によって放熱する電装品モジュール70が開示されている(図8)。基板12に設けられた開口部76に凸部72がはめ込まれ、凸部72の先端に配置した放熱シート78を介して電子部品80の吸熱をおこなう。平面型ヒートパイプ74の平面が基板12に接触し、基板12からも熱を吸収する。平面型ヒートパイプ74は銅やアルミニウムなどの金属である。
【0007】
しかし、平面型ヒートパイプ74が金属であるため、基板12における平面型ヒートパイプ74との接触面には配線パターンを形成できない。凸部72を形成するために金属を加工する必要があり、基板12に形成した開口部76に対して正確に凸部72を形成する必要がある。基板72が設計変更されたときに容易に平面型ヒートパイプを変更できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000−156584号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、電子部品の放熱性能を向上させた放熱構造を有する電装品モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の電装品モジュールは、基板、基板に実装された電子部品、基板に設けられた開口部、基板の実装面の反対面に設けられた放熱器、および基板と放熱器との間に配置され、開口部を介して電子部品に接触する伝熱シートを備える。開口部は電子部品の基板への対向部分の面積よりも狭くなっている。電子部品で発生した熱は、開口部の伝熱シートを介して放熱器に伝熱される。
【0011】
基板の実装面および反対面には配線パターンが形成されており、配線パターン間を接続するスルーホールが基板に設けられている。反対面の配線パターンは伝熱シートに接する。電子部品の熱は、伝熱シートに直接伝熱される以外に、配線パターンから伝熱シートに伝熱することもできる。
【0012】
伝熱シートは弾性を有する。伝熱シートを電子部品に押しつけるようにすることによって、密着させることができる。電子部品はコイルを備えた電子部品を含み、コイルが伝熱シートに接する。
【0013】
電子部品はリードを備えた電子部品を含み、リードが基板の実装面から反対面を通過して突出し、リードが伝熱シートに接する。リードから伝熱シートを介して放熱器に熱が伝熱することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、電子部品に直接伝熱シートを接触させることによって電子部品の放熱性能が向上する。電子部品が複雑な形状であっても、伝熱シートが弾性を有するため、電子部品に伝熱シートを密着させることができる。電子分から直接伝熱シートに伝熱させる以外に、配線パターンやリードからも伝熱シートに伝熱させる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】電装品モジュールの構成を示す図であり、(a)は正面図であり、(b)は(a)のA−A線断面図である。
【図2】伝熱シートを示す図である。
【図3】三相のCMCを使用した電装品モジュールを示す正面図である。
【図4】リードを有する電子部品を使用した電装品モジュールを示す断面図である。
【図5】高さの低い電子部品を使用した電装品モジュールを示す断面図である。
【図6】複数の電子部品が1つの開口部および凸部を共有する正面図である。
【図7】従来の電装品モジュールの構成を示す図である。
【図8】従来の凸部を有する平面型ヒートパイプを使用した電装品モジュールの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の電装品モジュールについて図面を用いて説明する。図面は模式的に示しており、実際の大きさとは異なる場合がある。
【実施例1】
【0017】
図1(a)、(b)の電装品モジュール10は、基板12、基板12に実装された電子部品14a、基板12に設けられた開口部16、電子部品14aの熱を放熱する放熱器18、基板12と放熱器18との間において、開口部16を介して電子部品14aと接触する伝熱シート20を備える。
【0018】
基板12は、樹脂基板、セラミック(アルミナ)基板、金属基板などの板体が挙げられる。樹脂基板は、ガラスクロス含浸エポキシ樹脂基板などである。金属基板は、アルミニウムや銅などの金属板の上に絶縁層が設けられたものである。
【0019】
基板12の実装面22に電子部品14aが実装される。電子部品14aとしては、従来技術で挙げた種々のものがあるが、本実施例ではコモンモードチョークコイル(CMC)を使用して説明する。以下、符号14aはCMCとする。図1では単相のCMC14aである。CMC14aの巻線(コイル)24の端部(リード)26が、基板12の表面に形成された配線パターン28に接続される。パワーデバイスを含む他の電子部品もCMC14aと同時に基板12に実装される。なお、リード26は後述する方法で基板12を貫通させても良い。
【0020】
基板12の開口部16は、CMC14aが実装される位置に設けられる。開口部16は、CMC14aが実装されるために、CMC14aの基板12との対向部分よりも狭くする。また、配線パターン28の無い位置に開口部16を設ける。
【0021】
なお、開口部16がCMC14aの基板12への対向部分からはみ出しても良い。開口部16がはみ出したとしても、CMC14aの一部分のみが開口部16の上方に配置され、開口部16がCMC14aの実装の障害にならないようにする。
【0022】
放熱器18は伝熱シート20を介してCMC14aの熱を放熱するものである。放熱器18は、アルミニウムや銅などの熱伝導性の高い物質で形成されたものである。放熱器18は、放熱フィンや放熱ファンを備えても良く、また冷媒が通過する管に取り付ける冷媒ジャケットや電装品モジュール10を収納する筐体であっても良い。
【0023】
伝熱シート20は、絶縁性および熱伝導性を有するシートである。そのために伝熱シート20は、絶縁性のシートに熱伝導性の高い粒子または粉体を均一に混合させたものである。絶縁性のシートとしては、シリコーンゴム、ポリイソブチレンゴム、またはアクリルゴムよりなるシートが挙げられる。これらのシートは、絶縁性と同時に弾性も有する。熱伝導性の粒子または粉体としては、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、水酸化アルミニウム、酸化亜鉛、シリカ、またはマイカなどの粒子または粉体が挙げられる。
【0024】
伝熱シート20は、基板12の実装面22に対する反対面23に配置される。伝熱シート20の一部が開口部16を介してCMC14aに接触する。伝熱シート20に凸部30を設けて(図2)、凸部30が開口部16にはめ込まれるようにする。平面状のシート31に、同じ材質の凸部30を取り付けるだけで簡単に製造することができる。材質として多少の粘着性があるため、接着剤を使用せずに凸部30を取り付けることもできる。接着剤を使わなければ、凸部30の配置の変更は容易である。なお、肉厚のシートを削って凸部30を設けても良い。
【0025】
また、伝熱シート20は弾性を有するため、伝熱シート20を基板12の厚みよりも厚くして、伝熱シート20を基板12に押しつけて密着させ、伝熱シート20の一部が開口部16を介してCMC14aに到達するようにしても良い。
【0026】
基板12と放熱器18とは、ねじによって固定することができる。この固定するとき、基板12と放熱器18で伝熱シート20を挟み込んで配置する。伝熱シート20は弾性を有するため、基板12と放熱器18に密着されるだけでなく、CMC14aに対しても伝熱シート20が押しつけられて密着されることとなる。開口部16をCMC14aの巻線24の配置される位置に設けておけば、伝熱シート20は巻線24に密着される。
【0027】
図1(a)ではCMC14aと配線パターン28との位置関係を示している。基板12には巻線24と同じだけの電流容量となるように幅広の配線パターン28が形成されており、一部の配線パターン28は、CMC14aが配置される位置に形成されている。したがって、CMC14aが入り込むような大きな開口部16を形成することはできない。
【0028】
しかし、CMC14aの巻線24は銅または銅合金などの熱伝導性の良い材料である。巻線24の全てが伝熱シート20に接しなくても、一部が接することによって、その接触部分に大きな熱伝導が生じ、放熱をおこなうことができる。配線パターン28同士の間の狭い領域に形成した小さな開口部16であっても、その開口部16に嵌められた伝熱シート20を介して放熱をおこなうことができる。
【0029】
また、開口部16は配線パターン28同士の間に設けることに限られず、基板12におけるCMC14aの巻線24が配置される位置で、かつ配線パターン28の無い位置に開口部16を設ける。さらに、CMC14aの巻線24が伝熱シート20と接するが、巻線24と同時にCMC14aのコア32が伝熱シート20と接しても良い。
【0030】
図1(a)では開口部16を四角形にしているが、他の形状であっても良い。開口部16の形状に合わせて伝熱シート20の凸部30の形状を変更する。
【0031】
基板12にCMC14aを実装した後に、伝熱シート20と放熱器18を取り付けても良いし、基板12に伝熱シート20と放熱器18を取り付けた後に、CMC14aを実装しても良い。
【0032】
基板12に設けられる配線パターン28は、基板12の実装面22と反対面23の両方に設ける。その配線パターン28をつなげるスルーホール34を設ける。スルーホール34によって電気的に配線パターン28が接続される。スルーホール34に使用した導体によって配線パターン28間で熱伝導が生じる。
【0033】
基板12の反対面23に設けられた配線パターン28は伝熱シート20に密着される。CMC14aの一部の熱は、実装面22の配線パターン28から反対面23の配線パターン28までスルーホール34を介して熱伝導される。さらに伝熱シート20によって放熱器18まで熱が伝導されて、放熱がおこなわれる。
【0034】
以上のように、従来は放熱器18による放熱が難しかったCMC14aなどの複雑な形状の電子部品であっても、伝熱シート20を密着させて放熱させることができる。CMC14aから直接伝熱される以外に、配線パターン28を介しても伝熱がおこなわれるため、放熱性能が高い。
【0035】
なお、実施例1はCMC14aの代わりにリレーであってもよい。リレーのコイルが開口部16を介して伝熱シート20に接触されるようにする。その他の複雑な形状を有する電子部品であっても、電子部品に伝熱シート20を接触させて放熱させることができる。
【0036】
また、図1では単相のCMC14aを使用したが、図3のように三相のCMC14bであってもよい。図3に示すように、配線パターン28の無い位置に開口部16を設けている。開口部16を介して伝熱シート20の凸部30がCMC14bの巻線24に接するようになっている。
【実施例2】
【0037】
電子部品14cはリード36を備えており、リード36が実装面22から反対面23を貫き、基板12から突出する電装品モジュール10bであっても良い(図4)。リード36が基板12の反対面23に配置された伝熱シート20に接触する。リード36が伝熱シート20に突き刺さっても、放熱器18には接触しないように伝熱シート20を厚くするか、放熱器18にリード36が接触しないための溝などを設ける。電子部品14cとしては、電解コンデンサなどが挙げられる。他の構成は実施例1と同じである。
【0038】
リード36から伝熱シート20を介して放熱器18に熱を伝熱することができる。開口部16を介して接触する伝熱シート20の他にリード36からも放熱をおこなうことができるため、実施例1に比べて放熱性能が向上する。
【実施例3】
【0039】
電子部品14dとしてシャント抵抗などの高さの低いものを使用した電装品モジュール10cであってもよい(図5)。基板12における電子部品14dの配置される位置に開口部16が設けられる。他の構成は実施例1と同じである。電子部品14dの高さが低く、ファンなどからの気流が当たりにくくても、伝熱シート30を介して放熱することができる。なお、低い電子部品14dに限られず、電子部品14dの配置によって気流の当たりにくい場合に適用しても良い。
【実施例4】
【0040】
図6の電装品モジュール10dのように、複数の電子部品14dが1つの開口部16および凸部30を共有する構成であっても良い。電子部品14のいずれが発熱しても、1つの凸部30から伝熱がおこなわれる。なお、高さの低い電子部品14dを例示しているが、CMC14aなどの他の電子部品にも適用可能である。
【0041】
その他、本発明は、その主旨を逸脱しない範囲で当業者の知識に基づき種々の改良、修正、変更を加えた態様で実施できるものである。各実施例は独立的または排他的なものではなく、組み合わされても良い。
【符号の説明】
【0042】
10、10b、10c、10d:電装品モジュール
12:基板
14a、14b、14c、14d:電子部品
16:開口部
18:放熱器
20:伝熱シート
22:実装面
23:反対面
24:巻線
26:端部
28:配線パターン
30:凸部
31:シート
32:コア
34:スルーホール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板に形成された配線パターンと、
前記基板の実装面に実装された電子部品と、
前記基板における電子部品が実装される位置に設けられた開口部と、
前記基板における実装面の反対面側に配置され、電子部品の熱を放熱する放熱器と、
前記基板と放熱器との間に配置され、かつ前記開口部を介して電子部品に接触し、電子部品の熱を放熱器に伝熱する伝熱シートと、
を備えた電装品モジュール。
【請求項2】
前記配線パターンが実装面および反対面に形成されており、前記実装面の配線パターンと反対面の配線パターンとを接続するスルーホールを備え、反対面の配線パターンが伝熱シートに接する請求項1の電装品モジュール。
【請求項3】
前記伝熱シートが弾性を有する請求項1または2の電装品モジュール。
【請求項4】
前記電子部品はコイルを備えた電子部品を含み、該コイルが伝熱シートに接する請求項1から3のいずれかの電装品モジュール。
【請求項5】
前記電子部品はリードを備えた電子部品を含み、該リードが基板の実装面から反対面を通過して突出し、リードが伝熱シートに接する請求項1から4のいずれかの電装品モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−119401(P2012−119401A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−265886(P2010−265886)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】