説明

放熱機構を備える照明装置、照明機器

【課題】実装コストを下げつつ複数のLEDの最適な発光制御を実現すると共に高い輝度で発光しても発光素子の熱を放出できる照明装置を提供する。
【解決手段】本発明の照明装置1は、実装基板2と、実装基板2に実装される複数の発光素子3と、実装基板2上に設けられ、複数の発光素子3の周囲を囲む封止枠4と、封止枠4内部に充填され、発光素子3と接触しつつ発光素子3を封止する封止材5と、実装基板2に含まれ、複数の発光素子3の実装領域から周辺領域に、発光素子3の熱を拡散する熱拡散部7と、熱拡散部7からの熱を、所定方向に輸送する熱輸送部8と、熱輸送部8によって輸送された熱を外部に放出する放熱部9と、を備え、封止材5は、透明もしくは半透明であると共にその上面は、凹形状および凸形状の少なくとも一つを有し、封止材5は、発光素子3の発する光を拡散および集光の少なくとも一方を行なう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベアチップ状態のLED(Light Emitting Diode)を始めとする発光素子を実装する封止枠等で発光素子を制御すると共に、発光素子の実装によって生じる熱を、遠隔の位置に輸送して放出できる放熱機構を備える照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の蛍光灯や白熱電球に代わる新しい光源としてLEDを始めとする発光素子が照明装置に用いられることが多くなっている。LEDを始めとする半導体を利用した発光素子は、小型であること、消費電力が小さいことおよび発光色や発光パターンを容易に制御できること、などのメリットを提供できる。
【0003】
従来においては、単数のLEDであってパッケージに封止されたLEDが、樹脂等で外形を施されて発光を制御することが行なわれている(例えば特許文献1参照)。加えて、液晶画面のバックライトに用いるLEDを、液晶画面に集光させる技術を開示する文献もある(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
一方で、様々な発光色や発光パターンを容易に生成するためには、複数のLEDをまとめて実装するほうが都合がよい。単数のLEDを個々に封止した発光ユニットを配列する場合には、個々のLEDの封止状態のばらつきによって、制御側が想定する通りの発光パターンや発光色が得られないデメリットがあるからである。
【0005】
近年では、多くのLEDを配列し、コンピュータープログラムによって複雑な発光色や発光パターンを制御することが行なわれており、個別にパッケージ化されて封止されたLEDを配列する場合には、封止ばらつきによる悪影響が生じる。これらは、特に、信号装置などの分野で顕著である。
【0006】
このため、複数のLEDを実装し、実装された複数のLEDをまとめて封止することおよび封止した複数のLEDの発光を制御することが求められていた。特に、実装コストおよび封止コストを低減するために、複数のLEDを封止すると共にLEDの光を制御することを同時に実現することが求められていた。
【0007】
このような状況下において、複数の発光素子を実装する技術が提案されている(例えば、特許文献3、4参照)。
【0008】
ここで、複数の発光素子を実装する場合には、十分な電力を発光素子に与えて、高い輝度による発光をさせたい。しかしながら、発光素子はその実装面において高い発熱を生じさせるので、十分な電力を発光素子に与えることができない。結果として、複数の発光素子を実装した照明装置は、高い輝度を発光することができない。このため、実装された発光素子の実装面から生じる熱を放出する機構が必要となる。このような放熱機構を有する照明装置についての提案がなされている(例えば、特許文献5、6参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−88098号公報
【特許文献2】特開2006−100575公報
【特許文献3】特開平11−162232号公報
【特許文献4】特開2007−227679号公報
【特許文献5】特開2010−49830号公報
【特許文献6】特開2005−340065号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1、2は、単数のLEDを封止する技術を開示する。特許文献1は、単数のLEDを砲弾型のケースによって封止する技術を開示する。砲弾型のケースを樹脂やレンズを用いて構成する技術を開示するが、砲弾型ケースは単数のLEDにしか適用できず、複数のLEDの封止を行なうことは困難である。
【0011】
また、特許文献2は、単数のLEDの前方に凹レンズを設けて、LEDからの光を液晶画面に集光させる技術を開示する。この技術も、複数のLEDを封止しつつ集光を制御することに適用することは困難である。
【0012】
特許文献3は、複数のベアチップ状態であるLEDを実装し、実装されたLEDに樹脂の封止材とマイクロレンズを形成する技術を開示する。特許文献3は、樹脂による封止材で複数のLEDを実装するとの解決と、複数のLED素子のそれぞれに対応する位置に配置されるレンズ群(レンズ群がマイクロレンズとなる)を配置することで、個々のLEDの発光を外部に導くという解決を図っている。
【0013】
しかしながら、マイクロレンズの個々のレンズが複数のLEDのそれぞれのLEDに対応して光を制御するため、制御のばらつきが生じる問題がある。信号や集魚灯などのように、複数のLED全体に基づく発光色や発光パターンを生成する必要性に対しては、個々のレンズのばらつきが悪影響を及ぼす問題がある。加えて、マイクロレンズを用いることでコストが上昇する問題がある。
【0014】
特許文献3は、LEDを封止する機構と光を制御する機構とを別々に捉えており、光の制御のばらつきやコスト上昇といった問題に対処できない。
【0015】
特許文献4は、複数のLEDを封止する大型のレンズ板を基礎に、レンズ板の内部においてLEDと接触する部分に樹脂を充填して、この樹脂がLEDを保護する構成を開示する。
【0016】
しかしながら、特許文献4の技術は、レンズ板を基準にして複数のLEDを封止するので、LEDの発光制御がレンズ板の精度に依存する問題がある。加えて、LEDの封止もレンズ板の大きさや耐久性に依存する問題があり、多くのLEDをまとめて封止しつつ発光を制御することには適していない問題がある。
【0017】
特許文献5は、LEDが実装される実装基板が、放熱パターンを有したり、放熱フィンを備えたりする照明装置を開示する。このような放熱パターンや放熱フィンによって、LEDの実装面から生じる熱が放出される。
【0018】
しかしながら、特許文献5に開示される照明装置は、LEDを実装する基板において熱を放出する構造しか有していない。このため、放熱フィンから放出された熱は、LEDの近傍に滞留し、LEDを実装している空間全体の温度が下がらないことになり、LEDに高い電力を与えられなくなる。特許文献5のように、単体のLEDを実装するだけであればこのように実装基板に直に設けられた放熱フィンなどによる放熱でも足りるが、多くのLEDを実装し、それぞれのLEDに高い電力を与えたい場合には、特許文献5のような構成では、放熱能力が不十分である。
【0019】
また、特許文献6は、複数の発光ダイオードが並んでいる基板を通じて、発光ダイオードが発する熱を輸送して送風ファンで放熱する照明装置を開示する。
【0020】
しかしながら、特許文献6に開示される照明装置は、一列に並んだ発光ダイオードの熱を一方向に輸送するだけなので、多くの発光ダイオードが実装される場合には、熱の輸送は不十分である。特に、高い輝度を必要とする照明装置では、発光素子は、格子状に実装されやすく、一方向に輸送する構成だけでは十分な熱輸送ができない。また、特許文献6の照明装置のように通常の実装基板によって熱を輸送するだけでは、熱輸送が十分とはいえず、実装される発光素子が多くなる場合には不適である。加えて、平面において熱を輸送して送風ファンで放熱する構成であるので、発光ダイオードの実装基板付近に熱が滞留する問題もある。
【0021】
すなわち、特許文献5、6の技術は、多数の発光素子を実装し、これらの熱を実装基板付近より十分に遠ざけた上で放出する、ことができない問題を有している。
【0022】
以上のように、従来技術の照明装置は、複数のLEDを封止する機構と光を制御する機構とを別々に構成しており、光の制御がばらついたりコストが上昇したりする問題を有している。特に、工事用照明装置、道路灯、トンネル内照明装置、信号装置や集魚灯などのように複数のLED全体で照明を制御する場合には、複数のLEDをまとめて封止しつつ複数のLEDの発光をばらつきなく制御することが求められる。従来技術は、このような要請に対応できない問題がある。
【0023】
また、複数の発光素子を封止して照明装置とする場合には、工事用照明装置、道路灯、トンネル内照明装置、信号装置や集魚灯などのように、高い輝度を必要とする装置に適用されることが求められる。すなわち、高い輝度を得るために、複数の発光素子に対して、高い電力を与える必要がある。
【0024】
多くの発光素子に対して高い電力を与えると、発光素子は、高い熱を発する。照明装置は、これらの熱を、発光素子の周辺からより遠ざけて放出する必要がある。発光素子より熱を遠ざけて放出しなければ、発光素子周辺の温度が上昇して、発光素子に対して十分な電力を与えることができなくなるからである。
【0025】
以上のように、従来技術の照明装置は、(1)多数の発光素子を低コストに実装する、(2)多数の発光素子に高い電力を与えて高い輝度で発光させる、(3)多数の発光素子から発せられる熱を、発光素子の実装空間より遠ざけた上で放出する、といったことを実現できない問題を有していた。
【0026】
本発明は、以上の課題に鑑み、工事用照明装置、道路灯、トンネル内照明装置、信号装置や集魚灯などに最適であって、実装コストを下げつつ複数のLEDの最適な発光制御を実現すると共に高い輝度で発光しても発光素子の熱を放出できる照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0027】
上記課題を解決するために、本発明の照明装置は、実装基板と、実装基板に実装される複数の発光素子と、実装基板上に設けられ、複数の発光素子の周囲を囲む封止枠と、封止枠内部に充填され、発光素子と接触しつつ発光素子を封止する封止材と、実装基板に含まれ、複数の発光素子の実装領域から周辺領域に、発光素子の熱を拡散する熱拡散部と、熱拡散部からの熱を、所定方向に輸送する熱輸送部と、熱輸送部によって輸送された熱を外部に放出する放熱部と、を備え、封止材は、透明もしくは半透明であると共にその上面は、凹形状および凸形状の少なくとも一つを有し、封止材は、発光素子の発する光を拡散および集光の少なくとも一方を行なう。
【発明の効果】
【0028】
本発明の照明装置は、封止枠、封止材およびレンズ板によって、ベアチップ状態である発光素子を封止することと発光素子からの光を制御することとを両立させることができる。この結果、発光素子の実装コストを低減できる。封止に必要な要素と発光制御に必要な要素とを兼用したことによって、封止と発光制御を両立させつつコスト削減も実現できる。特に、実装工程が簡略化されるので、実装コスト削減が更に進む。
【0029】
また、本発明の照明装置は、封止枠、封止材およびレンズ板によって、複数の発光素子の光を一体的に制御できるので、発光状態のばらつきを生じさせず、信号装置や集魚灯などに最適に適用できる。
【0030】
また、発光素子から実装基板に発せられる熱は、熱拡散部によって発光素子の実装領域から周辺領域にかけて拡散され、拡散された熱が3次元方向に輸送されてから放熱される。このため、複数の発光素子が発する熱は、発光素子から離れた空間で放出されるので、発光素子およびその周囲での温度上昇が抑制される。この結果、発光素子に対して高い電力を与えることができるようになるので、照明装置は、高い輝度で光を照射できる。
【0031】
加えて、本発明の照明装置は、発光素子が発光面に向けて生じさせる熱と発光素子が実装面に向けて生じさせる熱と、のそれぞれを3次元方向において放出できる。結果として、発光素子の近傍に熱を滞留させることが無くなり、発光素子の発熱が抑制され、発光素子は、高い電力を付与されることができる。
【0032】
特に、高い輝度を必要とする信号装置、工事用照明装置、トンネル内照明装置、道路灯や集魚灯に最適に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施の形態1における照明装置の側面図である。
【図2】本発明の実施の形態1における照明装置の正面図である。
【図3】本発明の実施の形態1における照明装置の側面図である。
【図4】本発明の実施の形態1における照明装置の側面図である。
【図5】本発明の実施の形態1における照明装置の一部の側面図である。
【図6】本発明の実施の形態1における照明装置の正面図である。
【図7】本発明の実施の形態1における熱拡散部の側面分解図である。
【図8】本発明の実施の形態1における熱拡散部の内部正面図である。
【図9】本発明の実施の形態1における照明装置の側面図である。
【図10】本発明の実施の形態2における照明装置の側面図である。
【図11】本発明の実施の形態2における照明装置の側面図である。
【図12】本発明の実施の形態3における集魚灯の使用態様を示す模式図である。
【図13】本発明の実施の形態4における比較例に対応する照明装置モデルの模式図である。
【図14】本発明の実施の形態4における実施例に対応する照明装置モデルの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明の第1の発明に係る照明装置は、実装基板と、実装基板に実装される複数の発光素子と、実装基板上に設けられ、複数の発光素子の周囲を囲む封止枠と、封止枠内部に充填され、発光素子と接触しつつ発光素子を封止する封止材と、実装基板に含まれ、複数の発光素子の実装領域から周辺領域に、発光素子の熱を拡散する熱拡散部と、熱拡散部からの熱を、所定方向に輸送する熱輸送部と、熱輸送部によって輸送された熱を外部に放出する放熱部と、を備え、封止材は、透明もしくは半透明であると共にその上面は、凹形状および凸形状の少なくとも一つを有し、封止材は、発光素子の発する光を拡散および集光の少なくとも一方を行なう。
【0035】
この構成により、照明装置は、低コストおよび簡易な構成で、複数の発光素子を実装しつつ、発光素子の温度上昇を抑制できる。結果として、照明装置は、高い輝度で光を照射できる。
【0036】
本発明の第2の発明に係る照明装置では、第1の発明に加えて、複数の発光素子は、ある平面に沿った実装平面において実装され、熱拡散部は、実装平面の方向に沿って、発光素子の熱を拡散し、熱輸送部は、実装平面に交差する方向に沿って、熱拡散部からの熱を輸送する。
【0037】
この構成により、照明装置は、発光素子の熱を、3次元的に離隔した領域に輸送して放出できる。
【0038】
本発明の第3の発明に係る照明装置では、第1又は第2の発明に加えて、封止材の上層に積層されるレンズ板を更に備え、封止材およびレンズ板は、透明もしくは半透明であって、レンズ板が凸レンズである場合には、封止材およびレンズ板の積層は、光を集光し、レンズ板が凹レンズである場合には、封止材およびレンズ板の積層は、光を拡散する。
【0039】
この構成により、レンズ板を備えることで照明装置は、発光素子からの光を確実に制御できる。
【0040】
本発明の第4の発明に係る照明装置では、第1から第3のいずれかの発明に加えて、封止材は、発光素子および封止材の少なくとも一部からの熱を封止枠に伝導する熱伝導部材を更に備える。
【0041】
この構成により、照明装置は、発光素子の発する熱の内、発光面に生じさせる熱を、外部に放出できる。
【0042】
本発明の第5の発明に係る照明装置では、第1から第4のいずれかの発明に加えて、封止枠は、その表面および側面の少なくとも一部に、放熱フィンを更に備え、放熱フィンは、熱伝導部材から伝導される熱を、外部に放出する。
【0043】
この構成により、照明装置は、発光素子が発する熱の内、発光面に生じさせる熱を外部に効率的に放出できる。この結果、発光素子からの熱は、発光面に生じる熱も実装面に生じる熱も、いずれも照明装置は外部に放出できる。結果として、発光素子の温度上昇が抑制される。
【0044】
本発明の第6の発明に係る照明装置では、第1から第5のいずれかの発明に加えて、熱拡散部は、上部板と、上部板と対向する下部板と、上部板と下部板との間に積層される単数または複数の中間板と、を備え、上部板、下部板および中間板によって形成される内部空間に冷媒が封止可能であり、中間板は、気化した冷媒を移動させる単数又は複数の蒸気拡散路と、凝縮した冷媒を移動させる単数又は複数の毛細管流路と、を形成する。
【0045】
この構成により、熱拡散部は、発光素子の熱を、発光素子の実装平面に沿った方向に、効率的に拡散できる。
【0046】
本発明の第7の発明に係る照明装置では、第6の発明に加えて、中間板は、蒸気拡散路を形成する切り欠き部と毛細管流路を形成する内部貫通孔を有し、切り欠き部は、熱拡散部の略中央から放射状に形成される。
【0047】
この構成により、熱拡散部は、放射状に熱を拡散しやすくなる。
【0048】
本発明の第8の発明に係る照明装置では、第6又は第7の発明に加えて、内部空間は、同一平面において、複数の蒸気拡散路のそれぞれが、複数の毛細管流路のそれぞれと隣接する。
【0049】
この構成により、熱拡散部は、高い効率で熱を拡散できる。
【0050】
本発明の第9の発明に係る照明装置では、第1から第8のいずれかの発明に加えて、熱輸送部は、熱拡散部の周辺において、熱拡散部と熱的に接触する。
【0051】
この構成により、熱輸送部は、熱拡散部からの熱を効率的に受け取ることができる。
【0052】
本発明の第10の発明に係る照明装置では、第1から第9のいずれかの発明に加えて、熱輸送部は、冷媒を封止可能な内部空間を有し、内部空間は、気化した冷媒を移動させる蒸気通路と、凝縮した冷媒を移動させる毛細管流路と、を備える。
【0053】
この構成により、熱輸送部は、所定方向に、熱を効率的に輸送できる。
【0054】
本発明の第11の発明に係る照明装置では、第1から第10のいずれかの発明に加えて、熱拡散部を収容し、熱拡散部と熱輸送部とを熱的に接続する、装着部を更に備える。
【0055】
この構成により、熱拡散部と熱輸送部とは、確実に熱的に接触される。
【0056】
本発明の第12の発明に係る照明装置では、第11の発明に加えて、装着部は、熱拡散部を収容するソケット、台座およびクリップの少なくとも一つを有する。
【0057】
この構成により、熱拡散部と熱輸送部との、熱的な接触が容易に実現できる。
【0058】
本発明の第13の発明に係る照明装置では、第1から第12のいずれかの発明に加えて、放熱部は、ヒートシンク、冷却ファン、ペルチェ素子、放熱板および液冷ジャケットの少なくとも一つを有する。
【0059】
この構成により、放熱部は、効率的に、熱輸送部からの熱を外部に放出できる。
【0060】
(実施の形態1)
【0061】
実施の形態1について説明する。
【0062】
(全体概要)
まず、図1、図2を用いて、実施の形態1における照明装置の全体概要を説明する。図1は、本発明の実施の形態1における照明装置の側面図である。図2は、本発明の実施の形態1における照明装置の正面図である。図1は、照明装置を側面から見た状態を示しており、封止枠や封止材の内部に存在する発光素子を可視状態にして示している。また、図2は、照明装置を上から見た状態を示しており、封止枠や封止材の内部に存在する発光素子を可視状態にして示している。
【0063】
照明装置1は、実装基板2と、実装基板2にベアチップ状態で実装される複数の発光素子3と、複数の発光素子3の周囲を囲む封止枠4と、封止枠4内部で発光素子3と接触しつつ発光素子3を封止する封止材5と、を備える。加えて、照明装置1は、実装基板2に含まれる熱拡散部7と、熱拡散部7からの熱を所定方向に輸送する熱輸送部8と、熱輸送部8が輸送した熱を放出する放熱部9を備える。
【0064】
また、封止材5は、透明もしくは半透明であって、封止材5の表面は、凹形状および凸形状の少なくとも一つを有する。この構成によって、封止材5は、発光素子3の発する光を拡散および集光の少なくとも一方を行なう。この構成によって、照明装置1は、発光素子3を封止する部材を活用して、ベアチップ状態で実装された複数の発光素子3が発する光を、適切に外部に照射できる。
【0065】
複数の発光素子3は、実装基板2の実装面に実装されるが、図2に示されるように、マトリクス状に配置されて実装されることが好適である。このようなマトリクス状で実装されることで、照明装置1は、高い輝度および照射力によって、対象物を照射することができるからである。
【0066】
(発光素子からの放熱)
また、複数の発光素子3を実装する実装基板2は、熱拡散部7を含んでいる。熱拡散部7は、実装基板2そのものが熱拡散部7であってもよいし(実装基板2と一体で形成される)、実装基板2内部に熱拡散部7が設けられてもよい。熱拡散部7は、発光素子3の実装面から発せられる熱を、複数の発光素子3の実装されている実装領域から周辺領域に拡散する。
【0067】
熱拡散部7には、熱輸送部8と熱的に接続しているので、熱拡散部7が拡散した熱は、熱輸送部8に伝導する。熱輸送部8は、熱拡散部7より伝導した熱を、所定方向に輸送する。輸送された熱は、熱輸送部8に熱的に接触する放熱部9に到達し、放熱部9は、到達した熱を外部に放出する。
【0068】
複数の発光素子3が、実装基板2に実装され、高い輝度で発光できるように高い電力が複数の発光素子3に与えられる場合には、複数の発光素子3は、実装基板2における実装面に対して高い熱を発することになる。この熱は、実装面から実装基板2に伝導するが、実装基板2は熱拡散部7を含むので、これらの熱は熱拡散部7によってまず周辺領域に拡散される。周辺領域に拡散されることで、発光素子3が実装されている領域(この領域には、発光素子3が発光している限りは、熱が発生する)の過大な発熱が抑えられる。加えて、拡散された熱は、熱輸送部8および放熱部9を通じて外部に放出されるので、発光素子3が生じさせる熱は、連続して放出される。
【0069】
このように、実装基板2が熱拡散部7を含んでおり、熱拡散部7から発光素子3の発光方向と逆側に輸送されて外部に熱が放出されることで、発光素子3および発光素子3の周辺における熱の滞留を防止できる。この結果、発光素子3の過大な発熱を抑えることができるようになるので、発光素子3に対して高い電力を与えることができるようになり、発光素子3は、非常に高い輝度で発光できる。この結果、照明装置1は、高い輝度の光を照射できる。図1、図2に示される照明装置1は、複数の発光素子3を実装することおよび高い電力で生じる発光素子3から実装基板2に対する熱を、効率的に放出できるので、発光素子3への電力によって生じる熱の問題を解消できる。
【0070】
すなわち、複数の発光素子3は、ある平面に沿った実装平面(実装基板2によって形成される平面である)において実装され、熱拡散部7は、この実装平面に沿って、複数の発光素子3の熱を拡散し、熱輸送部8は、この実装平面に交差する方向に沿って、熱拡散部7からの熱を輸送し、放熱部9が、外界に放出する。このように、照明装置1は、実装平面に実装された複数の発光素子3の熱を、3次元的な方向への輸送によって放出できる。この結果、複数の発光素子3の周囲に、熱を滞留させることがなくなり、発光素子3へ高い電力を与えることが容易となる。
【0071】
特に、発光素子3からの熱は、その多くが実装面に(すなわち実装基板2に)生じる。熱拡散部7、熱輸送部8および放熱部9によって、この実装面に生じる熱が、発光素子3より3次元的に離隔した領域で、外部に放出される。この結果、発光素子3および発光素子3の近傍に熱が滞留しにくくなり、発光素子3の温度上昇が抑制される。この抑制の結果、発光素子3は高い電力を付与されることができ、照明装置1は、高い輝度で光を照射できる。
【0072】
(照明装置による光の照射)
発光素子3の発光と照明装置1による光の照射について説明する。
【0073】
複数の発光素子3は、実装基板2にワイヤボンディングやボールグリッドによって実装されている。この実装によって、発光素子3には、電力が供給される。この供給される電力によって、発光素子3は、発光する。また、複数の発光素子3のそれぞれは、青色、赤色、緑色などの固有色を有している。それぞれの固有色を有する発光素子3に電力が供給されることで、複数の発光素子3は、青色、赤色、緑色、混合色の光を発する。
【0074】
複数の発光素子3の周囲には封止枠4が設けられており、この封止枠4内部には樹脂などを素材とする封止材5が充填される。封止材5は、複数の発光素子3の表面や側面と接触した上で、複数の発光素子3を封止する。この封止によって、封止材5は、発光素子3を保護する。また、封止枠4が設置された上で、封止材5が充填されるので、封止材5は、封止枠4の形状、大きさに応じた形状や大きさを有する。
【0075】
封止材5の表面(上面)は、凹形状および凸形状の少なくとも一つを有することで、複数の発光素子3からの光を集光および拡散の少なくとも一方を行ないながら、外部に発する。すなわち、封止材5は、発光素子3の発光制御機能を発揮して、発光素子3からの光を外部に照射する。
【0076】
封止枠4、封止材5は、例えばベアチップ状態である発光素子3を外部露出から保護するための封止機能を持っており、本来的には、この封止機能が封止枠4などの役割である。しかし、封止枠4や封止材5は、封止機能に加えて、封止枠4、封止材5は、複数の発光素子3が発する光の集光や拡散を制御する機能を備える。
【0077】
すなわち、余分な部材を追加することなく、封止と発光を実現できるので、照明装置1は、余分なコストを必要としない。加えて、照明装置1は、複数の発光素子3をまとめて封止した上で発光を制御できるので、発光素子3毎に発光や封止のばらつきが生じない。加えて、封止と発光制御とが同時に同一の部材で実現できるので、封止と発光制御とがアンバランスになることが無くなり、発光のばらつきも防止される。特に、複数の発光素子3をまとめて封止することがそのまま発光制御につながるので、照明装置1は、複数の発光素子3をまとめて発光させた上で集光や拡散を実現できる。
【0078】
(レンズ板の積層)
また、照明装置1は、封止材5の上にレンズ板6を積層する構成を有してもよい。レンズ板6を有することで、封止材5とレンズ板6とが、より確実に複数の発光素子3からの光を集光したり拡散したりできるようになる。結果として、照明装置1は、複数の発光素子3による外部への照射をより確実に制御できる。
【0079】
図3、図4は、本発明の実施の形態1における照明装置の側面図である。図3、図4は、封止材5の上にレンズ板6が積層されている構成を示している。
【0080】
図3、図4に示されるようにレンズ板6は、封止材5の上に積層される。レンズ板6は、凸レンズや凹レンズ形状を有しており、封止材5の積層面において、レンズ板6のカーブに応じた形状で積層される。封止材5は、封止枠4に充填される際には、溶融樹脂などであるので、レンズ板6の形状に応じて、封止材5の積層面の形状が容易に対応できる。この結果、封止材5とレンズ板6とは、スムーズな曲面で接触する。
【0081】
図3では、封止材5の表面が凹状の曲面を有しており、封止材5の上に積層されるレンズ板6は、凸レンズである。一方、図4では、封止材5の上に積層されるレンズ板6は、凹レンズである。
【0082】
封止材5およびレンズ板6は、半透明もしくは透明であって、発光素子3からの光を透過させる。このとき、封止材5およびレンズ板6が形成する屈折カーブに従って、発光素子3は、発する光を外部に照射する。このとき、封止材5およびレンズ板6は、カーブ形状に従って、発光素子3の光を拡散および集光の少なくとも一方を行なう。すなわち照明装置1は、複数の発光素子3の光を一つの集光機能や拡散機能によってまとめた上で、外部に照射する。
【0083】
すなわち、封止材5とレンズ板6とが合わさって、複数の発光素子3の光を制御して外部に照射させる。封止材5だけの場合よりも、レンズ板6が合わさることで、より精細な発光制御が可能となる。
【0084】
加えて、レンズ板6が封止材5の上層に積層されることで、レンズ板6は、封止材5を保護する役割も果たす。これらの結果、封止材5およびレンズ板6によって、照明装置1は、複数の発光素子3をまとめて封止すると共にまとめて発光制御して、外部へ光を照射できる。
【0085】
図2を用いて、照明装置1の上面(正面)から見た状態での照明装置1による光の照射を説明する。図2は、照明装置を上から見た状態を示しており、封止枠4や封止材4の内部に存在する発光素子3を可視状態にして示している。
【0086】
図2に示される照明装置1では、封止枠4が複数の発光素子3を一体とした周囲を囲む。ここで、封止枠4は、上面から見た際に略円形を有している。略円形の封止枠4の内部に複数の発光素子3が実装されているので、複数の発光素子3が発する光は、略円形から拡散したり集光したりすることになり、照明装置1は、発光方向や発光角度を調整しやすくなる。もちろん、封止枠4は、略楕円形状や多角形状を有していてもよい。
【0087】
また、上面から見た場合には、レンズ板6、封止材5、発光素子3の順に積層されているが、レンズ板6および封止材5が半透明若しくは透明であるので、発光素子3が透過して見える。この結果、発光素子3の発する光は、レンズ板6および封止材5を透過して外部に照射される。このとき、レンズ板6および封止材5によって形成されるカーブによって、発光素子3の発する光は拡散したり集光したりする。
【0088】
このとき、図3に示されるようにレンズ板6が凸レンズである場合には、凸レンズの屈折によって、発光素子3の光は対象に対して集光されるように照射される。これは、矢印Aに示されるとおりである。封止材5とレンズ板6とは、矢印Aに沿って発光素子3からの光を外部に照射する。レンズ板6が凸レンズである場合は、遠方より照明を視認したい場合に有効である。
【0089】
一方、図4に示されるようにレンズ板6が凹レンズである場合には、凹レンズの屈折によって、発光素子3の光は対象に対して拡散されるように照射される。これは、矢印Bに示されるとおりである。封止材5とレンズ板6とは、矢印Bに沿って発光素子3からの光を外部に照射する。レンズ板6が凹レンズである場合は、広い範囲に渡って一様に照射したい場合に有効である。
【0090】
このように、封止材5の表面の形状(カーブ)およびレンズ板6の形状によって、照明装置1は、発光素子3の光を集光したり拡散したりして、外部を照射する。
【0091】
また、実装基板2に封止枠4からレンズ板6までが実装された状態で照明装置1が構成されるので、照明装置1は、可搬性に優れており、一つのユニットとして様々な機器に組み込まれる。照明装置1は、複数の発光素子3をまとめて封止すると共にまとめてその発光を制御するので、信号装置、集魚灯、トンネル内の照明装置、道路灯などのように、高い発光量を必要とする機器に最適に組み込まれる。
【0092】
以上のように、実施の形態1の照明装置1は、複数の発光素子3をまとめて一つの封止枠4内部に封止することで、封止における発光素子3ごとのばらつきを防止できる。また、封止枠4内部に封止材5とレンズ板6とが積層されることで、複数の発光素子3の発する光をまとめて制御できる。特に、封止枠4、封止材5およびレンズ板6と、がそれぞれ接触した(物理的に厳密な接触を必要とするのではなく、明らかに離隔している状態ではないことを示す)状態であることによって、封止枠4、封止材5およびレンズ板6は、複数の発光素子3を封止するという機能と発光を制御するという機能を両立させる。
【0093】
以上より、照明装置1は、発光素子3の封止機能と発光制御機能を、少ない部材で実現できる。結果としてコストも低減できる。
【0094】
なお、図1〜図4においては、図の明瞭を確保するために、複数の発光素子のうち一つの発光素子に符号「3」を付しているが、他の発光素子も同様の符号によって把握される。
【0095】
(発光素子から発光面への熱の制御)
次に、照明装置1における発光素子3から発光面に伝わる熱の放出について、図5を参照しながら説明する。図5は、本発明の実施の形態1における照明装置の一部の側面図である。
【0096】
照明装置1は、高い輝度を必要とする工事用照明装置、道路灯、トンネル内照明装置、信号装置や集魚灯などに適用されることが求められる。このため、発光素子3が高い輝度で発光を行なうために、発光素子3には、高い電流値や高い電圧値が付与される。このような高い輝度での発光によって、発光素子3は、高い熱を発生させる。ここで、複数の発光素子3は、実装面、発光面および側面から、熱を発する。
【0097】
発光素子3が発するこれらの熱の内、実装面から発せられる熱は、熱拡散部7によって拡散されて、熱輸送部8を介して、放熱部9から外部に放出される。この熱の放出は、上述の通りである。
【0098】
一方、発光素子3が発するこれらの熱の内、発光面および側面から発する熱は、封止材5に伝導する。封止材5は、発光素子3の発光面および側面を封止することで、発光素子3の発光面および側面と熱的に接触するからである。このため、封止材5は、発光素子3からの熱を受けることになる。
【0099】
また、封止材5は、発光素子3を封止する目的上、溶融樹脂などが用いられる。溶融樹脂などは、金属などに比較して熱伝導性が悪いので、封止材5は、発光素子3からの熱を蓄積してしまうことが多い。封止材5が発光素子3からの熱を蓄積してしまうと、照明装置1は、誤動作を生じさせたり、損傷や故障を生じさせたりする。このような問題を回避するためには、発光素子3へ与える電流値や電圧値を下げる必要がある。しかし、発光素子3へ与える電流値や電圧値を下げると、発光素子3の発光輝度が低くなり、照明装置1を、高い輝度を必要とする工事用照明装置、道路灯、トンネル内照明装置、信号装置や集魚灯などに適用することが難しくなる。
【0100】
封止材5は、その内部に熱伝導部材50を備える。熱伝導部材50は、封止材5内部の熱を受け取り、封止枠4に伝導する。このため、熱伝導部材50は、熱伝導性の高い素材で形成された格子形状を有していることが好ましい。例えば、金属メッシュなどである。
【0101】
熱伝導部材50は、封止材5内部に設けられており封止枠4と熱的に接触する。このため、熱伝導部材50は、封止材5からの熱を(すなわち発光素子3からの熱を)封止枠4に伝導できる。封止枠4は、外部に露出されており、熱伝導部材50から受け取った熱を、外部に放出できる。特に、封止枠4は、金属、合金あるいは熱伝導性の高い樹脂などで形成されるので、封止枠4は、伝導された熱を外部、基板、筐体などに放出できる。この結果、発光素子3の発光面および側面の少なくとも一部から発せられる熱は、封止材5内部に蓄積することなく、熱伝導部材50および封止枠4を経由して外部に放出される。
【0102】
このように、熱伝導部材50は、熱の溜まりやすい封止材5内部の熱を、効率的に外部に放出できる。
【0103】
また、封止枠4が、その表面および側面の少なくとも一部に放熱フィンを有することで、熱伝導部材50から伝導した熱を、外部に放出できる。図6は、本発明の実施の形態1における照明装置の正面図である。図6は、照明装置1の光を照射する方向から見た状態を示している。すなわち、透明もしくは半透明の封止材5を透視して、実装されている複数の発光素子3が見える状態を、図6は示している。
【0104】
封止枠4は、その側面に放熱フィン40を備えている。放熱フィン40は、封止枠4の側面から延伸している。放熱フィン40は、封止枠4と一体で形成されても良いし、別体で形成されて接着されても良い。この放熱フィン40は、熱伝導部材50から封止枠4に伝導した熱を、外部に放出する。すなわち、放熱フィン40は、発光素子3が発光する際に発光面である封止材5に伝導させた熱を、外部に放出できる。
【0105】
また、図6に示されるとおり、熱伝導部材50は、実装された複数の発光素子3の実装位置に重複しないように格子形状を有している。このような格子形状によって、発光素子3の発光が阻害されないようになる。
【0106】
(実装面への熱の放出と発光面への熱の放出)
以上のように、実施の形態1における照明装置1は、熱拡散部7、熱輸送部8および放熱部9の組み合わせによって、複数の発光素子3の発する熱の内、実装面に生じさせる熱を、発光素子3から離隔した領域において放出できる。すなわち、実装面に生じる熱は、3次元的に発光素子3から離隔した領域で放出される。加えて、封止材5に熱伝導部材50が設けられる場合には、熱伝導部材50、封止枠4および放熱フィン40によって、複数の発光素子3の発する熱の内、発光面に生じさせる熱を、発光素子3から離隔した領域において放出できる。すなわち、発光面に生じる熱は、3次元的に発光素子3から離隔した領域で放出される。
【0107】
図5では、矢印G、矢印Hによって、これらの熱の放出経路が示されている。発光素子3の発光面に生じる熱は、矢印Gに沿って外部へ放出され、発光素子3の実装面に生じる熱は、矢印Hに沿って外部へ放出される。これらの2系統の放熱によって、発光素子3の近傍には、熱が滞留しにくくなり、発光素子3および発光素子3の近傍の温度上昇が抑制される。すなわち、矢印Gおよび矢印Hによる混合された系統の放熱によって、発光素子3の温度上昇抑制が更に高まる。
【0108】
このように、発光素子3の温度上昇が抑制されることで、発光素子3は、高い電力が付与できて、照明装置1は、高い輝度で光を照射できる。この高い輝度で光を照射できることで、照明装置1は、例えば、工事用照明装置、道路灯、トンネル内照明装置、信号装置や集魚灯などに好適に用いられる。
【0109】
もちろん、熱伝導部材50、封止枠4および放熱フィン40による矢印Gに沿った経路の放熱は、必須の構成ではない。
【0110】
次に、各部の詳細について説明する。
【0111】
(実装基板)
まず、実装基板について説明する。
実装基板2は、複数の発光素子3を実装する。実装基板2は、ガラスエポキシ基板のように、汎用に電子部品や半導体集積回路を実装できる基板であって、電気信号のやり取りを行なえる配線層を備えているものであればよい。
【0112】
実装基板2は、照明装置1として利用される複数の発光素子3のみを実装しても良いし、発光素子3以外の電子部品や半導体集積回路を実装しても良い。例えば、実装基板2は、制御機能やプロセッシング機能を有する半導体集積回路と必要な電子部品を実装しており、これ等以外の領域において複数の発光素子3を実装しても良い。
【0113】
また、実装基板2は、発光素子3をワイヤボンディング、フリップチップあるいはボールグリッドなどによって電気的に実装し、実装基板2の内外に設けられる他の回路からの電気信号を、発光素子3に与えることができる。
【0114】
すなわち、実装基板2は、照明装置1の基本形状を形成すると共に、複数の発光素子3に電気信号を与える。実装基板2の形状や大きさは、複数の発光素子3の個数に応じてもよいし、照明装置1として使用される状態に応じてもよい。また、実装基板2は、発光素子3に加えて封止枠4を実装できるような接着面を有していることも好適である。
【0115】
また、実装基板2は、熱拡散部7を含んでいる。これは、例えば、実装基板2の内部に熱拡散部7が収納されていても良いし、実装基板2に熱拡散部7が積層されていても良いし、実装基板2そのものが電子部品等を実装可能な熱拡散部7となっていることでもよい。この場合には、熱拡散部7は、表面に発光素子3をはじめとする電子部品や電子素子を実装できる、配線層などを有していることがよい。
【0116】
(発光素子)
次に、発光素子3について説明する。複数の発光素子3が実装基板2に実装されることで、照明装置1は、高い輝度で光を照射できる。複数の発光素子3のそれぞれに電力が供給されて発光し、複数の発光素子3のそれぞれが発光した光が集まって、高い輝度の光を、照明装置1は照射できる。
【0117】
発光素子3は、電気信号を受けて光を発する素子である。電気信号を受けて発光する機能を有する素子であればなんでもよいが、実装や制御の容易性から、LEDが用いられるのが好適である。LEDは、付与される電気信号の電流・電圧によって、発光状態を制御でき、青色、赤色、緑色などの固有色を有することで、発光色のパターンを容易に制御できるメリットを有するからである。
【0118】
複数の発光素子3が、実装基板2に実装される。発光素子3の個数は、照明装置1の仕様に応じて適宜定められれば良く、数個から数百個(あるいは数千個)の発光素子3が実装基板2に実装される。発光素子3は、実装基板2に対して、ワイヤボンディングやボールグリッドによって実装され、実装基板2に対して(更には、実装基板2に実装されている他の電子部品に対して)電気的に接続される。この電気的な接続によって、発光素子3は、電気信号を受けて発光する。
【0119】
発光素子3は、受ける電気信号の電流値・電圧値や、信号の波形パターンに応じて発光し、発光素子3が備えている固有色に基づいた発光を行なう。これらの発光変化に基づいて、発光素子3は、種々の発光パターンを実現する。実装基板2もしくは実装基板2とは別に設けられた制御機能に基づいて、発光素子3は、色、発光レベル、発光間隔などの様々な基準に応じた発光を実現する。
【0120】
発光素子3のそれぞれは、ベアチップ状態で実装基板2に実装されることも多い。ベアチップ状態で実装されることで、発光素子3のコストや体積が削減でき、照明装置1のコストや体積を削減できる。加えて、発光素子3がベアチップ状態で実装されることで、発光素子3の発する光を、封止材5およびレンズ板6が直接受け取ることができ、余分な発光制御が不要となる。このため、発光素子3は、ベアチップ状態で実装されることが好適である。
【0121】
また、発光素子3がベアチップ状態であることで、発光素子3は、表面、裏面および側面を有することになる。裏面は、実装基板2との実装面になり、表面および側面の少なくとも一部から、光を発する。また、実装基板2に複数の発光素子3が実装されるので、発光素子3は、隣接する発光素子3との間での光の反射を生じさせることもある。
【0122】
なお、発光素子3は、それぞれに固有色を有しており、加えられる電流値および電圧値に応じて発光する。固有色の同じ発光素子3がまとめられて配列されても良いし、異なる固有色毎に配列されても良い。また、複数の発光素子3のそれぞれは、並列接続されても良いし直列接続されても良い。もちろん、並列接続と直列接続とが混在した状態で、複数の発光素子3が電気的に接続されても良い。
【0123】
(封止枠)
次に、封止枠4について説明する。
【0124】
封止枠4は、実装基板2上において実装される複数の発光素子3の周囲を囲む。図2に示されるように、封止枠4は、実装される複数の発光素子3の周囲をぐるりと囲んでいる。封止枠4は、略円形、略楕円形を形成しつつ発光素子3の周囲を囲むことが好ましいが、方形や多角形を形成しつつ発光素子3の周囲を囲んでもよい。封止枠4は、複数の発光素子3の周囲を囲んで形成されるので、この封止枠4によって、照明装置1の光の照射を行う基本的な外形が形成される。
【0125】
また、封止枠4の高さおよび開口面積の少なくとも一方は、発光素子3の個数に応じて定まる。発光素子3の個数が多ければ封止枠4の外周は大きくなるので、封止枠4の開口面積は大きくなる。加えて、発光素子3の個数が多ければ発光素子3からの発光量が多くなるので、多くの光を反射させるために封止枠4の高さが高くなる。
【0126】
封止枠4には封止材5が充填されるので、封止枠4の外周は、閉鎖されていることが好ましい。封止材5は、溶融樹脂であることが多く、充填される溶融樹脂が封止枠4の外部にもれ出ることを防止するためである。このため、封止枠4は、枠材であって、この枠材が実装基板2上に設置されればよい。
【0127】
封止枠4は、樹脂、金属、合金などで形成されれば良く、実装基板2上に接着あるいは溶着される。接着においては接着剤が用いられれば良い。封止枠4は、熱伝導部材50から伝導される熱を外部に放出するので、熱伝導性の高い素材で形成されるのが好適である。
【0128】
封止枠4は、透明もしくは半透明でも良いが、発光素子3からの光を封止材5やレンズ板6に反射させるために光を反射可能なように非透明であることも好ましい。封止枠4は、封止材5を充填する際の枠となると共に発光素子3が発する光の反射部位となるからである。
【0129】
また、封止枠4は、必要に応じて放熱フィン40を備える。放熱フィン40は、封止材5を介して(場合によっては、熱伝導部材50を通じて)、発光素子3が発光面に対して生じさせる熱を、外部に放出する。放熱フィン40は、封止枠4と一体に形成されても良いし、封止枠4に後から接着、接合等されてもよい。
【0130】
(封止材)
封止材5は、封止枠4で囲まれた領域を充填する。封止材5は、溶融された樹脂などで構成されており、溶融された樹脂が流し込まれて凝固することで、封止枠4内部に封止材5が形成される。
【0131】
例えば、封止枠4が設置された後で、溶融した樹脂が封止枠4の内部に流し込まれる。流し込みの際には、空気層や空気泡が生じないように、自動充填装置が用いられるのが好適である。流し込まれた後で、温度の低下によって、溶融した樹脂は凝固し、封止枠4の外形に合わせて固体の封止材5が形成される。
【0132】
また、封止材5は、熱伝導部材50が予め設置された後で、充填されてもよい。封止材5が、封止枠4に充填される溶融樹脂である場合には、予め熱伝導部材50が設置された後で溶融樹脂が充填されれば、凝固することによって封止材5が発光素子3を封止すると共に熱伝導部材50を封止するからである。
【0133】
もちろん、熱伝導部材50を封止した状態の封止材5を封止枠4内部に充填(あるいは設置)することで、封止材5が形成されても良い。
【0134】
封止材5は単体でもしくは封止枠4およびレンズ板6と合わせて、発光素子3の光を集光したり拡散したりする。このため、封止材5は、発光素子3の光の集光や拡散をさせる基本的な部材となる。
【0135】
封止材5は、透明もしくは半透明であり、透明もしくは半透明であることで、発光素子3が発する光を透過させる。透過した光は、後述のレンズ板6の集光もしくは拡散作用によって外部に放射され、複数の発光素子3からの光が外部に放射される。
【0136】
封止材5は、凹形状もしくは凸形状の上面(表面)を有する。複数の発光素子3からの光を集光および拡散のいずれかを行なうためである。封止材5の上面が、凹形状である場合には、封止材5は、発光素子3の光を集光する。逆に、封止材5の上面が凸形状である場合には、封止材5は、発光素子3の光を拡散する。
【0137】
あるいは、レンズ板6の形状に合わせて上層面の形状が定まってもよい。レンズ板6が封止材5の上層に積層される場合には、このレンズ板6の形状によって封止材5の上面形状が定まるからである。例えば、レンズ板6が凸レンズである場合には、封止材5の上層面は、凹形状のカーブを有し、レンズ板6が凹レンズである場合には、封止材5の上層面は、凸形状のカーブを有する。
【0138】
(熱伝導部材)
次に、熱伝導部材50について説明する。
【0139】
熱伝導部材50は、封止材5内部に設けられる。熱伝導部材50は、発光素子3から封止材5に伝わる熱を、封止枠4に伝導させる。封止枠4に伝導した熱は、封止枠4から外部に放出される。
【0140】
熱伝導部材50は、封止材5内部に存在する熱を封止枠4に伝導するため、封止枠4と熱的に接触する。このため、例えば熱伝導部材50の端部は、封止枠4と接触していることも好適である。熱伝導部材50は、発光素子3から封止材5に伝わる熱を、封止枠4に伝導させるので、熱伝導性の高い素材で形成されることが好ましい。例えば、金属、合金などである。一例として、熱伝導部材50は、銅、アルミニウム、銀、アルミニウム合金、鉄、鉄合金、ステンレスなどの熱伝導率の高いあるいは防錆性(あるいは耐久性)の高い金属で形成されることが好ましい。
【0141】
また、熱伝導部材50は、封止材5の熱を封止枠4に伝導する機能を担うが、発光素子3からの光が外部に照射されるのを阻害することは不都合である。このため、熱伝導部材50は、図3に示されるように熱伝導性の素材で形成された格子形状を有することも好適である。例えば、熱伝導部材50は、金属、合金もしくは熱伝導性の高い樹脂で形成されたメッシュ形状を有することでもよい。熱伝導部材50が、格子形状を有することで、封止材5の熱を封止枠4に伝導できると共に発光素子3からの光を阻害することがない。発光素子3からの光は、格子形状の空き領域をもれ出て行くからである。特に、発光素子3に高い電流値や電圧値が付与されて、高い輝度で発光素子3が発光する場合には、格子形状の熱伝導部材50は、発光における阻害とはなりにくい。特に、照明装置1が信号装置、工事用照明装置、トンネル内照明装置、道路灯および集魚灯などのように、輝度を要求するが高精細な発光や発色を要求しない機器に用いられる場合には、熱伝導部材50は、発光素子3からの光の阻害要因とはなりにくい。
【0142】
なお、熱伝導部材50が格子形状を有する場合には、発光素子3の個数、発光素子3の配列間隔に合わせた格子形状を有すればよい。例えば、格子形状における空き領域の個数や面積は、発光素子3の配列間隔に合わせることも好適である。また、熱伝導部材50は、方形の枠からなる格子形状以外であっても、円形、楕円形、多角形等の枠からなる格子形状を有してもよい。もちろん、封止材5の熱を伝導できると共に発光素子3からの光の照射を阻害しない形状であれば、どのような形状を有してもよい。
【0143】
熱伝導部材50は、封止材5内部に設けられれば良いが、封止材5において、発光素子3と上面との間のいずれかの位置において設けられればよい。例えば、発光素子3と上面とのおよそ中間位置において、熱伝導部材50が封止材5内部において設けられればよい。
【0144】
以上のように、熱伝導部材50は、封止材5内部に設けられて、発光素子3および封止材5の少なくとも一部からの熱を、封止枠4に伝導する。封止枠4に伝導された熱は、封止枠4から外部に放出されると共に、封止枠4に設けられた放熱フィン40からも外部に放出される。このように、熱伝導部材50は、発光素子3が発光面に対して生じさせる熱を効率よく外部と接触する封止枠4に伝導させる。特に、封止材5内部に滞留しやすい熱を、封止枠4に伝導させるので、発光素子3の周辺に熱が滞留しにくくなる。
【0145】
(レンズ板)
次に、レンズ板6について説明する。レンズ板6は、必要に応じて封止材5の上層に積層される。あるいは、レンズ板6は、封止材5の表面形状を形成するために、照明装置1の製造時に使用される。レンズ板6は、封止材5の上層に積層される。レンズ板6は、封止枠4および封止材5と合わせて、複数の発光素子3からの光を集光させたり拡散させたりする。レンズ板6の形状および構造が、発光素子3からの光を制御する。
【0146】
レンズ板6は、ガラスや樹脂などで構成される。レンズ板6は、透明もしくは半透明であって、封止材5と共に、発光素子3の光を透過させる。この光の透過の過程において、封止材5およびレンズ板6の形状によって、照明装置1は、発光素子3の光を集光もしくは拡散させて外部に出力する。
【0147】
レンズ板6は、封止枠4の外周に合わせた外周を有してもよいし、封止枠4の外周より小さい外周を有していてもよい。但し、レンズ板6は、封止枠4の外周に合わせた形状を有することで、封止材5は、封止枠4とレンズ板6とに封止されるので、照明装置1の耐久性や強度が向上するメリットがある。
【0148】
レンズ板6は、封止材5の上層に積層されるので、レンズ板6の形状によって、封止材5の形状(封止材5のレンズ板6との積層面の形状)が定まる。また、レンズ板6と封止材5とが合わさった形状によって、複数の発光素子3の光は、集光されるか拡散されるかが決まる。レンズ板6の形状によって、封止材5の形状が決定されると共に、発光素子3からの光が集光されたり拡散されたりすることは、図3、図4を用いて説明した通りである。
【0149】
照明装置1は、封止枠4、封止材5およびレンズ板6の積層のみで、低コストで多数の発光素子3を実装しつつ封止でき、加えて発光制御も行える。
【0150】
(熱拡散部)
熱拡散部7は、実装基板2に含まれる。例えば、実装基板2そのものが熱拡散部7であってもよく(この場合には、熱拡散部7は、表面に発光素子3をはじめとする電子部品を実装できる構成を有する)、実装基板2の内部に熱拡散部7が収容されてもよく、実装基板2の底面に熱拡散部7が積層されても良い。
【0151】
熱拡散部7は、発光素子3から実装面に伝導される熱を、周辺に向けて拡散する。このとき、複数の発光素子3が実装されている実装平面に略平行な平面に向けて、熱を拡散する。特に、発熱体3が実装されている実装領域から周辺領域に向けて、熱拡散部7は発光素子3からの熱を拡散する。複数の発光素子3は、一例として図2に示されるようにマトリクス状に実装される。マトリクス状に実装される場合には、実装されている領域(実装領域)に発光素子3からの熱が集中する。このため、熱拡散部7が、まずこの実装領域に集中する熱を周辺領域に拡散することで、発光素子3およびその実装領域における温度を低減できる。
【0152】
熱拡散部7は、実装領域から周辺領域に向けて、熱を拡散できる部材であるので、例えば熱伝導性の高い銅、アルミニウムなどの金属・合金の板状部材を用いる。しかしながら、より効率的に熱を拡散するために、熱拡散部7は、平板形状のヒートパイプであることも好適である。
【0153】
ヒートパイプは、周囲が遮蔽された内部空間に封止された冷媒の、気化と凝縮の繰り返しによって、発熱体の熱を奪って拡散する機能を有する。
【0154】
ヒートパイプ構造を有する熱拡散部7の一例について説明する。例えば、熱拡散部7は、上部板と、上部板と対向する下部板と、上部板と下部板との間に積層される単数または複数の中間板と、を備える。上部板、下部板および中間板によって形成される内部空間は、冷媒を封止可能であって、中間板が形成する蒸気拡散路において気化した冷媒が移動し、中間板が形成する毛細管流路において凝縮した冷媒が移動する。また、蒸気拡散路および毛細管流路が、熱拡散部の中央付近から放射状に、発光素子3の熱を拡散する。このとき、蒸気拡散路では、気化した冷媒が、水平方向および垂直方向の少なくとも一方に移動し、毛細管流路では、凝縮した冷媒が、水平方向および垂直方向の少なくとも一方に移動する。但し、内部空間は、上部板と下部板との積層によって形成された平板空間であるので、熱拡散部7は、実装平面に沿った方向に熱を拡散する。
【0155】
図7、図8を用いて熱拡散部7の詳細を説明する。
【0156】
図7は、本発明の実施の形態1における熱拡散部の側面分解図であり、図8は、本発明の実施の形態1における熱拡散部の内部正面図である。図7は、上部板、下部板および中間板のそれぞれを分離した状態で示しており、図8は、熱拡散部7の上部板を取り払って、内部が見えるように示している。
【0157】
熱拡散部7は、上部板71、上部板71と対向する下部板72および上部板71と下部板72との間に積層される単数または複数の中間板73とが、積層されて形成される。このとき、上部板71、下部板72および中間板73と、が積層される際には、それぞれの接合部位に設けられた突起によって、それぞれの部材が接合される。この接合によって、熱拡散部70は、内部空間79を形成する。内部空間には、冷媒が封止される。例えば、注入口(図示せず)から内部空間79に冷媒が注入されて、注入口が閉鎖されて冷媒が封止される。このとき、真空下もしくは減圧下において冷媒が注入されることで、冷媒が気化しやすくなり、熱拡散部7は、高い効率で熱を拡散できるようになる。
【0158】
上部板71、下部板72および複数の中間板73(図7では中間板73は4枚である)のそれぞれが同一位置で重なるような位置関係に合わせられる。加えて、複数の中間板73は、複数の中間板73のそれぞれに設けられた内部貫通孔76のそれぞれの一部のみが重なるような位置関係にあわせられる。
【0159】
上部板71、下部板72および複数の中間板73の少なくとも一つは、接合突起を有している。上部板71、下部板72、複数の中間板73は、位置あわせされた上で積層され、ヒートプレスによって直接接合されて一体化される。このとき、各部材は、接合突起によって直接接合される。
【0160】
ここで、直接接合とは、接合しようとする2つの部材の面を密着させた状態で加圧しつつ熱処理を加えることであって、面部の間に働く原子間力によって原子同士を強固に接合させることであり、接着剤を用いることなく、2つの部材の面同士を一体化しうる。このとき、接合突起が強固な接合を実現する。この結果、熱拡散部7が製造される。
【0161】
また、中間板73は、切り欠き部74と内部貫通孔76とを有する。図8において、放射状に切り取られた切り欠き部74が示されると共に、切り欠き部74以外の部材に設けられた内部貫通孔76が示される。切り欠き部74は、蒸気拡散路75を形成し、内部貫通孔76は、毛細管流路77を形成する。蒸気拡散路75は、熱拡散部7の略中央から放射状に形成されている。この放射状に形成される蒸気拡散路75の残部が、毛細管流路77を形成する領域となる。
【0162】
このため、内部空間79においては、内部空間79の平面方向にそった平面において、複数の蒸気拡散路75と複数の毛細管流路77のそれぞれが、隣接する。特に、図8に示されるように、蒸気拡散路75と毛細管流路77とが、交互に隣接するように並ぶことも好適である。このように、熱拡散部7が熱を拡散する方向にそった平面において、複数の蒸気拡散路75のそれぞれと複数の毛細管流路77のそれぞれとが交互に隣接するように並ぶことで、熱拡散部7の略中央で気化した冷媒は、放射状に周辺領域に向けて移動し、熱拡散部7の周辺領域で凝縮した冷媒は、放射状に略中央に向けて移動する。この気化した冷媒と凝縮した冷媒の移動によって、熱拡散部7は、熱を放射状に拡散できる。
【0163】
このとき、熱拡散部7の略中央に対向する位置は、発光素子3が実装される実装領域であるので、熱拡散部7は、発光素子3の実装されている実装領域から周辺領域に向けて、発光素子3の熱を拡散できることになる。
【0164】
なお、図8に示される蒸気拡散路75と毛細管流路77との形状は一例であり、発光素子3の熱を拡散できる構成であれば他の構成であっても良い。また、実装の都合によって、発光素子3が熱拡散部7の端部に対向する領域に実装される場合には、この端部から周辺に向けて熱を拡散できるように、蒸気拡散路75と毛細管流路77とが形成されれば良い。
【0165】
また、上部板71および下部板72の少なくとも一方は、蒸気拡散路75および毛細管流路77の少なくとも一方と連通する凹部78を備えていることも好適である。凹部78によって、気化した冷媒や凝縮した冷媒が蒸気拡散路75から毛細管流路77に移動しやすくなったり、毛細管流路77の一部から他の領域へ移動しやすくなったりする。結果として、熱拡散部7は、高速に熱を拡散できる。
【0166】
熱拡散部7を構成する各部の詳細について説明する。
【0167】
(上部板)
上部板71について説明する。上部板71は、平板形状を有しており、熱拡散部7の外形形状に合わせた形状を有している。上部板71は、金属、樹脂などで形成されるが、銅、アルミニウム、銀、アルミニウム合金、鉄、鉄合金、ステンレスなどの熱伝導率の高いあるいは防錆性(あるいは耐久性)の高い金属で形成されることが好ましい。
【0168】
上部板71は、下部板72と共に内部空間79を形成する。例えば、上部板71や下部板72は、その周縁に内部空間79を形成するための凸部や壁材を有しており、上部板71と下部板72とが、これら凸部や壁材などを介して接合されることで上部板71と下部板72との間に内部空間79が形成される。もちろん、中間板73が積層されることで、この中間板73によって生じる厚みが、内部空間79を形成する。
【0169】
また、上部板71は、少なくとも内部空間79に接する面(気化した冷媒や凝縮した冷媒と接する面)に、金属めっきを有していることも好適である。金属めっきが施されていることで、表面状態が改質され、気化した冷媒の移動を促進させるからである。金属めっきとしては、金、銀、銅、アルミニウム、ニッケル、コバルトおよびこれらの合金などの金属から選ばれれば良い。勿論、単層めっき、多層めっき、電解めっき、非電解めっきのいずれでもよい。
【0170】
上部板71は、「上部」との呼称を有するが、物理的に上方に配置されなければならないわけではなく、便宜上の呼称である。発光素子3が実装される実装基板2は上部板71に接してもよいし、下部板72に接しても良い。あるいは、熱拡散部7に発光素子3が直接実装される場合には、上部板71の表面もしくは下部板72の表面に発光素子3が実装される。
【0171】
(下部板)
下部板72は、上部板71と対向する部材であり上部板71と同じ構造や形状を有する。このため、下部板72も上部板71と同様に平板形状を有し、熱拡散部7の外形形状に応じた形状を有する。また、上部板71と同様の素材や構造を有する。また、下部板72が上部板71と同様に冷媒の注入口を備えていても良い。
【0172】
下部板71は、「下部」との呼称を有するが、物理的に下を向いていなければならないわけではなく、便宜上の呼称である。実装基板2は下部板72に接してもよいし、上部板71に接しても良い。
【0173】
(中間板)
単数又は複数の中間板73は、上部板71と下部板72の間に積層される。中間板73は、上部板71および下部板72との間に積層されるので、上部板71と同様に平板形状を有し、上部板71と同様の素材で形成されることが適当である。また、積層されるので、上部板71および下部板72と同じサイズを有しているのが好適であるが、内部空間79を形成するように若干小さいサイズであっても良い。
【0174】
中間板73は、切り欠き部74と内部貫通孔76とを備えている。切り欠き部74は、上述の通り、空隙となって、気化した冷媒が移動する蒸気拡散路75を形成する。内部貫通孔76は、非常に小さな細孔であり、この細孔の組み合わせは、毛細管力を生じさせる。毛細管流路77は、この毛細管力によって、凝縮した冷媒を移動させる。
【0175】
ここで、切り欠き部74が図8に示されるように放射状に形成されることで、蒸気拡散路75も放射状に形成され、気化した冷媒は、放射状に移動する。当然ながら、凝縮した冷媒も放射状に移動する。切り欠き部74の形状を変えれば、熱拡散部7は、気化した冷媒と凝縮した冷媒の移動方向を制御でき、発光素子3の熱の拡散方向を変えることができる。毛細管流路77は、切り欠き部74以外の部分に形成されるからである。
【0176】
ここで、毛細管流路77は、内部貫通孔76によって形成されるので、中間板73の積層状態によって、毛細管流路77の構造が決定される。
【0177】
例えば、中間板73が単数の場合には、中間板73に設けられている内部貫通孔76がそのまま毛細管流路になる。
【0178】
これに対して、中間板73が複数である場合には、複数の中間板73のそれぞれに設けられた内部貫通孔76の一部のみが重なって、内部貫通孔76の水平方向の断面積よりも小さい断面積を有する毛細管流路77が形成される。このように、中間板73が複数である場合には、内部貫通孔77そのものの断面積よりも小さい断面積を有する毛細管流路77が形成されるので、毛細管流路77における凝縮した冷媒を、より効率的に移動できる。特に、複数の中間板73が積層されることで内部貫通孔76が熱拡散部7の厚み方向に内部貫通孔76が重なっていく。この重なりによって、水平方向および垂直方向に沿った毛細管流路77が形成されることになる。結果として、凝縮した冷媒は、毛細管流路77に沿って、水平方向および垂直方向に移動できる。この結果、熱拡散部7は、高速に凝縮した冷媒を移動させる。
【0179】
なお、ここで、中間板73には、複数の内部貫通孔76が設けられる。毛細管流路77として機能するためには、内部貫通孔76が複数であることが好ましいからである。
【0180】
内部貫通孔76は、中間板73の表面から裏面にかけて貫通しており、その形状は円形でも楕円形でも方形でもよい。内部貫通孔76の一部同士が重なって毛細管流路77を形成することから、内部貫通孔76は方形であることが適当である。これは製造上の容易性からも適当である。
【0181】
内部貫通孔76は、掘削、プレス、ウェットエッチング、ドライエッチングなどで形成されれば良いが、微小加工および加工精度の面から、ウェットエッチング、ドライエッチングなどのエッチング加工で形成されるのが適当である。
【0182】
中間板73が複数の場合には、内部貫通孔76は、複数の中間板73のそれぞれに設けられる。ここで、複数の中間板73は、その内部貫通孔76の一部同士のみがそれぞれ重なるように積層されるので、内部貫通孔76の位置は、隣接する中間板73毎にずれていることが適当である。例えば、ある中間板73における内部貫通孔73の位置と、この中間板73と隣接する別の中間板73における内部貫通孔76の位置は、内部貫通孔73の面積の一部ずつが重なるようにずれている。このように、隣接する中間板73毎に内部貫通孔76の位置がずれていることで、複数の中間板73が積層された場合に、内部貫通孔76の水平方向の断面積よりも小さい断面積を有する毛細管流路77が形成される。
【0183】
なお、毛細管流路77では、凝縮した冷媒が移動するが、気化した冷媒が移動こともありえる。
【0184】
また、毛細管流路77、凹部78の角部や切り欠き部74の角部は、面取りされていたり、Rが設けられていたりすることも好適である。毛細管流路77の断面は、六角形、円形、楕円形、方形、多角形など様々な断面形状を有していて良い。毛細管流路77の断面形状は、内部貫通孔76の形状と、内部貫通孔76同士の重ね合わせ方により定まる。また、断面積も同様に定まる。
【0185】
以上のように、熱拡散部7は、その略中央付近である実装領域に実装される発光素子3の熱を、周辺領域に向けて拡散する。拡散された熱は、熱的に接触している熱輸送部8に伝導される。
【0186】
(熱輸送部)
【0187】
熱輸送部8は、熱拡散部7から伝導された熱を、所定方向(図1では、Y軸方向)に輸送する。熱拡散部7は、発光素子3が実装されている実装領域から周辺領域に向けて熱を拡散する。これは、発光素子3の温度上昇を抑制するために、発光素子3が発する熱を熱拡散部7が発光素子3から遠ざけることが重要だからである。このため、熱輸送部8は、熱拡散部7の周辺において、熱拡散部7と熱的に接触することが好ましい。
【0188】
熱輸送部8は、所定方向に熱拡散部7から伝導された熱を輸送する。ここで、熱拡散部7は、実装平面に沿った方向に熱を拡散するので、熱輸送部8は、実装平面に交差する方向に沿って熱を輸送することが好ましい。図1に示されるとおり、熱拡散部7は、X軸方向に沿って熱を拡散し、熱輸送部8は、Y軸方向に沿って熱を輸送する。このように、熱拡散部7と熱輸送部8とが交差する方向に熱を移動させることで、発光素子3の熱は、3次元的に移動される。この結果、発光素子3から熱が遠ざかりやすくなると共に、照明装置1は、例えばX軸方向のみに大きくなりすぎたり、Y軸方向のみに大きくなりすぎたりすることがなくなる。
【0189】
熱輸送部8は、例えば熱伝導性の高い金属や合金の棒状の部材であってもよい。このような棒状の部材によって、熱輸送部8は、熱拡散部7からの熱を所定方向に輸送できる。
【0190】
あるいは、熱輸送効率を高めるために、熱輸送部8は、熱拡散部7と同様にヒートパイプ構造を有することも好適である。例えば、熱輸送部8は、図1に示されるように、棒状の形状を有する。この棒状の形状の内部は、冷媒を封止可能な内部空間を有し、内部空間は、気化した冷媒を移動させる蒸気通路と凝縮した冷媒を移動させる毛細管流路とを備える。特に、熱輸送部8は、Y軸方向に沿って、蒸気通路と毛細管流路とを備えることで、Y軸方向に沿って気化した冷媒と凝縮した冷媒を移動させることができる。
【0191】
例えば、熱輸送部8の内部空間の中央に毛細管流路が設けられ、この周囲に蒸気通路が設けられても良いし、その逆でもよい。このように、熱輸送部8の内部空間は、蒸気通路と毛細管流路とに分けられることで、気化した冷媒と凝縮した冷媒の移動が生じ、熱輸送部8は、所定方向に熱を輸送できる。
【0192】
(放熱部)
放熱部9について説明する。
【0193】
放熱部9は、熱輸送部8と熱的に接触する部材であり、熱輸送部8が輸送した熱を外部に放出する。この放熱部9の放熱によって、発光素子3の発する熱の内実装面に伝導される熱が、外部に放出される。結果として、発光素子3の温度上昇が抑制される。
【0194】
放熱部9は、外部に熱を放出できる構成を有していればなんでもよい。
【0195】
例えば、放熱部9は、ヒートシンク、冷却ファン、ペルチェ素子、放熱板および液冷ジャケットの少なくとも一つを有する。これらの部材によって、熱輸送部8が輸送した熱を外部に放出する。図1では、例えば、放熱部9は、ヒートシンク91を備えている。ヒートシンク91は、熱輸送部8の底面から熱輸送部8の熱輸送方向と同じ方向(Y軸)に沿って、熱を外部に放出できる。もちろん、ヒートシンク91は、熱輸送部8に対して交差する方向に延伸してもよく、照明装置1の仕様や全体構造に応じてヒートシンク91の構成が定まればよい。
【0196】
また、図9に示されるように、放熱部9は、放熱板92と冷却ファン93との組み合わせを備えることも好適である。図9は、本発明の実施の形態1における照明装置の側面図である。
【0197】
放熱部9は、放熱板92を備える。放熱板92は、熱輸送部8と熱的に接触し、熱輸送部8が輸送する熱を受け取る。冷却ファン93は、この放熱板92に風を送り、放熱板92の内部に対流を生じさせて、放熱を促す。この結果、放熱板92は、効率よく熱を排出できるようになる。
【0198】
もちろん、放熱板92ではなくヒートシンク91に冷却ファン93が組み合わされても良い。ペルチェ素子が用いられる場合には、ペルチェ素子の出力側に液冷ジャケットが設けられて、ペルチェ素子が移動させる熱を冷却させることも好適である。
【0199】
このように、放熱部9が、様々な部材を備えることで、放熱部9は、熱輸送部8が輸送した熱を外部に放出できる。結果的に、発光素子3の発する熱を、外部に放出でき、発光素子3の温度上昇を抑制できる。抑制の結果、発光素子3には高い電力が供給でき、照明装置1は、高い輝度で光を照射できる。
【0200】
以上のように、実施の形態1における照明装置1は、発光素子3の生じさせる熱の内、発光面に生じる熱および実装面に生じる熱のそれぞれを外部に放出できる。結果として発光素子3に高い電力を与えることが可能となり、照明装置1は、高い輝度で光を照射できる。このような照明装置1は、高い輝度の光を必要としていながら、温度の問題などで、ハロゲンランプや白熱灯を用いていた照明分野に、LEDなどの低電力かつ操作性の高い発光素子を用いることを可能とする。例えば、LEDなどの発光素子を用いた集魚灯、工事用照明装置、道路灯、トンネル内照明装置、信号装置や集魚灯などに、照明装置1は好適に用いられる。
【0201】
(実施の形態2)
【0202】
次に、実施の形態2について説明する。
【0203】
実施の形態2は、熱拡散部7を収容し、熱拡散部7と熱輸送部8とを熱的に接続する装着部を更に備える照明装置について説明する。
【0204】
図10は、本発明の実施の形態2における照明装置の側面図である。なお、図10では、照明装置1において、発光素子3の封止の構成を省略している。発光素子3の封止については、図1等で説明したのと同様である。装着部10は、熱拡散部7を収容する。このため、装着部10は、凹部101を有し、この凹部101に、熱拡散部7が収容される。熱拡散部7は、実装基板2に含まれたり、実装基板2と一体であったり、実装基板2に積層されたりするが、例えば熱拡散部7が図10に示されるように、実装基板2に積層される場合もある。
【0205】
このように、実装基板2に熱拡散部7が積層される場合には、熱拡散部7が外部に露出する。装着部10は、この熱拡散部7を収容する。装着部10が熱拡散部7を収容することで、熱拡散部7と熱輸送部8とが容易に接続される。
【0206】
例えば、装着部10は、凹部102を備えることで、この凹部102に棒状である熱輸送部8を収容する。このため、熱輸送部8は、予め装着部10の凹部102に装着されていても良い。この熱輸送部8が装着された状態で、装着部10が熱拡散部7を凹部101に装着すれば、装着部10によって、熱輸送部8と熱拡散部7とが容易に接続される。この接続において、図10のように熱拡散部7と熱輸送部8とが接触している場合には、熱拡散部7と熱輸送部8とは、装着部10への装着によって、熱的に接触できる。あるいは、装着部10の内部で熱拡散部7と熱輸送部8とが離隔している場合でも、装着部10を介して熱拡散部7と熱輸送部8とが熱的に接触できる。この熱的な接触の結果、熱拡散部7から熱輸送部8に、効率的に熱が伝導される。
【0207】
このように、装着部10によって、熱拡散部7が装着されることで(更には、熱輸送部8が装着されることで)熱拡散部7と熱輸送部8とが、熱的に接触できるようになる。
【0208】
装着部10は、例えば、熱拡散部7を収容するソケット、台座およびクリップの少なくとも一つを有する。このような部材や構成を有することで、装着部10は、容易に熱拡散部7を装着できる。
【0209】
また、装着部10は、図11に示されるように、熱拡散部7を支えつつ熱輸送部8を装着する台座105を有していてもよい。図11は、本発明の実施の形態2における照明装置の側面図である。台座105は、熱拡散部7から熱輸送部8へ熱を効率的に伝導させる。これは、台座105によって、熱拡散部7と熱輸送部8とが確実に熱的に接触するからである。図11では、図10の場合と異なり、実装基板2に熱拡散部7が含まれる場合を示している。この熱拡散部7を、台座105は、支えつつ、熱拡散部7と熱輸送部8とを熱的に接触させるようになる。
【0210】
このように、装着部10は、熱拡散部7から熱輸送部8への熱の伝導を効率化する。
【0211】
実施の形態2の照明装置1は、熱拡散部7および熱輸送部8の装着や接続を容易にし、発光素子3の熱の輸送を効率化できる。
【0212】
(実施の形態3)
【0213】
実施の形態3は、実施の形態1、2で説明された照明装置を、筐体に組み込んで使用する照明機器について説明する。照明機器は、実施の形態1,2で説明された照明装置1と、この照明装置1を格納する筐体と、照明装置1に電力を供給する電力供給部を備えることで、照明機器は、必要に応じて光を照射できる。このような照明機器は、工事用照明装置、トンネル内照明装置、道路灯、信号装置および集魚灯などに用いられる。
【0214】
図12を用いて、照明機器が集魚灯に適用される場合について説明する。図12は、本発明の実施の形態3における集魚灯の使用態様を示す模式図である。図12は、船舶202よりワイヤなどで吊り下げられた集魚灯110が海中200を照らしている状態を示している。
【0215】
集魚灯110は、実施の形態1、2で説明した照明装置1を備えている。照明装置1は、複数の発光素子3を実装する実装基板に、発光素子3の熱を拡散する熱拡散部7等を備えている。熱拡散部7等は、実施の形態1、2で説明したように、発光素子3からの熱を拡散し、次いで輸送して放出する。
【0216】
集魚灯110は、このような構成を有する照明装置1を筐体111内部に格納している。また、集魚灯110は、図12に示されるように、海中200に投入されることもあるので、筐体111は、防水加工が施されている。また、集魚灯110は、照明装置1(すなわち発光素子3)に発光に必要な電力を供給する電力供給部112を備えている。図12においては、電力供給部112は、筐体11の外側に設けられているが、内部に設けられても良い。あるいは、集魚灯110が電源コードによって船舶202に設置された電力供給部と接続されることで、集魚灯110は、電力を供給される。
【0217】
集魚灯110は、海中200もしくは海面201を照らす。図12では、海中200に、集魚灯110の一部が投入されており、発光素子3からの光は、矢印M、矢印Nに示されるように海中200内部を照らしている。発光素子3が、海中200を向くように集魚灯110が海中200に投入されるからである。もちろん、海中200に投入されずに、海面201を発光素子3が照らすように集魚灯110が固定されても良い。
【0218】
発光素子3が発する熱は、熱拡散部7によって拡散される。熱拡散部7が拡散した熱は、熱輸送部8が所定方向に輸送する。熱輸送部8は、図12より明らかな通り、海面201から遠ざかる方向に、熱を輸送する。熱輸送部8が、熱拡散部7が拡散する拡散方向に交差する方向であって、放熱部9への方向(熱源である発光素子3から遠ざかる方向)に、熱を輸送するからである。熱輸送部8が輸送した熱は、放熱部9(放熱フィン、冷却ファン、ヒートシンク、液冷ジャケット、ペルチェ素子などを備える)で放出される。放出される空間は、海中200と逆側であって、放熱部9が放出する熱は、外気と間接的に接触できる。このため、放熱部9は、より効率的に熱を放出できる。もちろん、筐体111の構造によっては、放熱部9が放出する熱は、外気と直接的に接触したり、海水と接触したりできる。あるいは、筐体111の構造によって、海水を筐体111内部に取り込んで放熱部9が直接もしくは間接的に海水と接触することで、放熱部9は、効率よく熱を放出できる。
【0219】
すなわち集魚灯110が海中200を照らしたり海面201を照らしたりする場合には、発光素子3の熱は、海面201から遠い外気を通じて放出される。すなわち、集魚灯110は、発光素子3の熱を、発光側と逆側に放出できる。特に、海面201から遠ざかる外気空間は、温度が低いことが多く、放熱部9は効率的に熱を放出できる。このため、照明装置1は、発光素子3の熱を、効率的に外気へ放出できる。結果として、発光素子3の温度上昇が抑制されて、集魚灯110は、高い輝度で光を照射できる。
【0220】
特に、集魚灯110は、長時間の使用を前提としているので、発光素子3の温度上昇が高くなりすぎると、発光素子3の輝度を抑えざるを得ない。しかしながら、実施の形態3の集魚灯110であれば、海中200を照射側、外界を放熱側として使い分けることで、発光素子3の温度上昇を抑制できる。もちろん、放熱部9を含めて海中200に投入される場合でも、海中200の海水に対して放熱部9は、熱を放出できるので、効率的に熱を放出できる。
【0221】
また、工事用照明装置、トンネル内照明装置、信号装置、道路灯であっても、同様である。
【0222】
(実施の形態4)
【0223】
実施の形態4では、実施の形態1〜3で説明した照明装置の放熱効果のシミュレーション結果を説明する。
【0224】
発明者は、比較例と実施例のそれぞれについてモデルを作成し、モデルに従って熱源である発光素子に、発熱を仮定して、照明装置のそれぞれの部位での温度状態を計算した。
【0225】
(比較例)
【0226】
比較例は、図13に示されるように、熱源301を実装する熱拡散部302と、熱拡散部302を支える台座303と、台座303から伸びる熱輸送部304とを備える照明装置300を仮定している。図13は、本発明の実施の形態4における比較例に対応する照明装置モデルの模式図である。図13(a)は、照明装置300を上斜めから見た状態を示しており、図13(b)は、照明装置300を下斜めから見た状態を示している。図13(b)に示されるように、照明装置300は裏面305を有する。
【0227】
このようなシミュレーションモデルにおいて、熱源301が熱を発生している状態で、
(1)照明装置300全体
(2)熱拡散部302表面
(3)台座303表面
(4)熱輸送部304
(5)裏面305
のそれぞれの位置で、最大値(MAX)、平均値(TYP)、最小値(MIN)の3つの温度を測定した。測定された結果は(表1)の通りである。
【表1】

【0228】
(実施例)
【0229】
一方、実施例は、図14に示されるように、熱源301を実装する熱拡散部302と、熱拡散部302を支える台座303と、台座303から伸びる熱輸送部304と、放熱部306と、を備える照明装置310を仮定している。図14は、本発明の実施の形態4における実施例に対応する照明装置モデルの模式図である。図14では、実施例が放熱部306を備えていることを明確にするために、照明装置310を下斜めから見た状態が示されている。
【0230】
図14に示される実施例においても、比較例と同様に、
(1)照明装置300全体
(2)熱拡散部302表面
(3)台座303表面
(4)熱輸送部304
(5)放熱部306
のそれぞれの位置で、最大値(MAX)、平均値(TYP)、最小値(MIN)の3つの温度を測定した。測定された結果は(表2)の通りである。
【表2】

【0231】
ここで、表1と表2を見比べるとわかる通り、実施例は、比較例よりも熱源301によって生じる温度上昇を抑制できている。特に、放熱部306によって、温度上昇が抑制されていることが分かる。
【0232】
このように、温度上昇を抑制できることで、実施の形態1〜3における照明装置は、発光素子の発熱を抑えることができることがわかる。結果として、発光素子に高い電力を付与することができ、照明装置は、高い輝度の光を照射できる。
【0233】
以上、実施の形態1〜4で説明された照明装置および照明機器は、本発明の趣旨を説明する一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲での変形や改造を含む。
【符号の説明】
【0234】
1 照明装置
2 実装基板
3 発光素子
4 封止枠
40 放熱フィン
5 封止材
50 熱伝導部材
6 レンズ板
7 熱拡散部
71 上部板
72 下部板
73 中間板
74 切り欠き部
75 蒸気拡散路
76 内部貫通孔
77 毛細管流路
78 凹部
79 内部空間
8 熱輸送部
9 放熱部
91 ヒートシンク
92 放熱板
93 冷却ファン
10 装着部
101、102 凹部
105 台座
110 集魚灯
111 筐体
112 電力供給部
200 海中
201 海面
202 船舶

【特許請求の範囲】
【請求項1】
実装基板と、
前記実装基板に実装される複数の発光素子と、
前記実装基板上に設けられ、前記複数の発光素子の周囲を囲む封止枠と、
前記封止枠内部に充填され、前記発光素子と接触しつつ前記発光素子を封止する封止材と、
前記実装基板に含まれ、前記複数の発光素子の実装領域から周辺領域に、前記発光素子の熱を拡散する熱拡散部と、
前記熱拡散部からの熱を、所定方向に輸送する熱輸送部と、
前記熱輸送部によって輸送された熱を外部に放出する放熱部と、を備え、
前記封止材は、透明もしくは半透明であると共にその上面は、凹形状および凸形状の少なくとも一つを有し、
前記封止材は、前記発光素子の発する光を拡散および集光の少なくとも一方を行なう照明装置。
【請求項2】
前記複数の発光素子は、ある平面に沿った実装平面において実装され、
前記熱拡散部は、前記実装平面の方向に沿って、前記発光素子の熱を拡散し、
前記熱輸送部は、前記実装平面に交差する方向に沿って、前記熱拡散部からの熱を輸送する、請求項1記載の照明装置。
【請求項3】
前記封止材の上層に積層されるレンズ板を更に備え、
前記封止材および前記レンズ板は、透明もしくは半透明であって、
前記レンズ板が凸レンズである場合には、前記封止材および前記レンズ板の積層は、光を集光し、
前記レンズ板が凹レンズである場合には、前記封止材および前記レンズ板の積層は、光を拡散する請求項1又は2記載の照明装置。
【請求項4】
前記封止材は、前記発光素子および前記封止材の少なくとも一部からの熱を前記封止枠に伝導する熱伝導部材を更に備える請求項1から3のいずれか記載の照明装置。
【請求項5】
前記封止枠は、その表面および側面の少なくとも一部に、放熱フィンを更に備え、前記放熱フィンは、前記熱伝導部材から伝導される熱を、外部に放出する請求項1から4のいずれか記載の照明装置。
【請求項6】
前記熱拡散部は、
上部板と、
前記上部板と対向する下部板と、
前記上部板と前記下部板との間に積層される単数または複数の中間板と、を備え、
前記上部板、前記下部板および前記中間板によって形成される内部空間に冷媒が封止可能であり、
前記中間板は、気化した冷媒を移動させる単数又は複数の蒸気拡散路と、凝縮した冷媒を移動させる単数又は複数の毛細管流路と、を形成する請求項1から5のいずれか記載の照明装置。
【請求項7】
前記中間板は、前記蒸気拡散路を形成する切り欠き部と前記毛細管流路を形成する内部貫通孔を有し、
前記切り欠き部は、前記熱拡散部の略中央から放射状に形成される、請求項6記載の照明装置。
【請求項8】
前記内部空間は、同一平面において、複数の前記蒸気拡散路のそれぞれが、複数の前記毛細管流路のそれぞれと隣接する、請求項6又は7に記載の照明装置。
【請求項9】
前記熱輸送部は、前記熱拡散部の周辺において、前記熱拡散部と熱的に接触する請求項1から8のいずれか記載の照明装置。
【請求項10】
前記熱輸送部は、冷媒を封止可能な内部空間を有し、
前記内部空間は、気化した冷媒を移動させる蒸気通路と、凝縮した冷媒を移動させる毛細管流路と、を備える請求項1から9のいずれか記載の照明装置。
【請求項11】
前記熱拡散部を収容し、前記熱拡散部と前記熱輸送部とを熱的に接続する、装着部を更に備える請求項1から10のいずれか記載の照明装置。
【請求項12】
前記装着部は、前記熱拡散部を収容するソケット、台座およびクリップの少なくとも一つを有する請求項11記載の照明装置。
【請求項13】
前記放熱部は、ヒートシンク、冷却ファン、ペルチェ素子、放熱板および液冷ジャケットの少なくとも一つを有する請求項1から12のいずれか記載の照明装置。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか記載の照明装置と、
前記照明装置を格納する筐体と、
前記照明装置に電力を供給する電力供給部と、を備える照明機器。
【請求項15】
前記照明機器は、集魚灯であって、
前記発光素子は、海面もしくは海中を照らし、前記放熱部は、海面もしくは海中と逆側に位置して、前記発光素子の熱を海面もしくは海中と逆側に放出する、請求項14記載の照明機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−233635(P2011−233635A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−101131(P2010−101131)
【出願日】平成22年4月26日(2010.4.26)
【出願人】(390015244)日本モレックス株式会社 (37)
【出願人】(502089671)交和電気産業株式会社 (9)
【出願人】(504258527)国立大学法人 鹿児島大学 (284)
【Fターム(参考)】