説明

放熱筐体

【課題】放熱筐体のサイズを大きくすることなく発熱体の放熱効果を向上する。
【解決手段】発熱体21の下面に接触設置される熱拡散体23と、この熱拡散体23の外側面、即ち、下面及び側端面に接触して当該熱拡散体23及び発熱体21を収納する収納体25とを備え、この収納体25の底部31に冷却水等の冷媒が流れる冷媒経路27を形成するとともに、熱拡散体23及び収納体25の側部33等の内部にヒートパイプ29を形成する。冷媒経路27をヒートパイプ29を跨ぐようにするなどして、ヒートパイプ29の軸方向と、複数のヒートパイプ29の並置方向の両方に熱拡散を行いながら、効率よく放熱を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体デバイス等の発熱体を放熱しながら収納する放熱筐体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ハイブリッド自動車や燃料電池自動車等の電気自動車において、高出力の電気モータが搭載されるようになっている。自動車における電動モータは交流動作しており、インバータを介してモータを駆動している。
【0003】
このインバータは、パワーMOSFET等の半導体デバイスを用いており、この半導体デバイスが高速に動作するため、その発熱量は大きくならざるを得ない。そして、発熱体である半導体デバイスの動作不良を防止するためには、熱放散が非常に重要である。
【0004】
かかる半導体デバイスの発熱を効率良く放散するために、この半導体デバイスに対して熱放散し得る構造の放熱筐体を設置することが行われていた。
【0005】
図7は従来の放熱筐体を示す底面視断面模式図、図8は内部に発熱体が収納された放熱筐体を示す側面視断面模式図である。この図7及び図8に示した例では、パワーMOSFET等の発熱体1に熱伝導性の高い銅合金等の熱拡散材3が接触設置され、この熱拡散材3に放熱筐体5が接触設置される。放熱筐体5は、発熱体1及び熱拡散材3を収納する保護ケースとしても機能するもので、底部7、側部8及び天部9を備えている。そして、特に熱拡散材3との接触面積の大きい底部7においては、内部に冷却水等の冷媒が流れる冷媒経路11が形成されている。
【0006】
かかる構成において、発熱体1が発熱したとき、その熱が熱拡散材3に伝達され、この熱拡散材3の熱が放熱筐体5に伝達される。この際、放熱筐体5の底部7内の冷媒経路11には冷媒が流されており、冷媒経路11の冷媒供給口13から当該冷媒経路11内に導入された冷媒が放熱筐体5の底部7の熱を吸収し、この冷媒が冷媒経路11の冷媒排出口15から排出されることで、放熱筐体5が冷却される。このように、冷媒により放熱筐体5を冷却することで、発熱体1で発生した熱が、熱拡散材3及び放熱筐体5を通じて冷媒により外部に効率良く排出され、その発熱体1の動作不良を防止することが可能となる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、放熱筐体5の内部に発熱体1を収納し、放熱筐体5を通じて放熱を行う場合、放熱筐体5のサイズを大きくするなどして、この放熱筐体5の外気との接触面積を増大することで、放熱効果を大きくすることができる。
【0008】
しかしながら、放熱筐体5のサイズをむやみに大きくすることは、自動車のスペース効率を害することになる。即ち、放熱筐体5のサイズを大きくして放熱効果を増大することと、自動車のスペース効率を向上することとは、いわばトレードオフの関係にあると言え、両者を両立して向上させることが困難であった。したがって、放熱筐体5のサイズを大きくすることなく、他の方法によって放熱効果の向上を図ることができる技術が望まれていた。
【0009】
そこで、本発明の課題は、放熱筐体のサイズを大きくする以外にも発熱体の放熱効果を向上し得る放熱筐体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決すべく、請求項1に記載の発明は、発熱体に接触設置される熱拡散体と、前記熱拡散体に接触して当該熱拡散体及び前記発熱体を収納する収納体とを備え、少なくとも前記熱拡散体の内部に前記発熱体の熱を拡散するためのヒートパイプが形成され、前記収納体の内部に、前記ヒートパイプにより拡散された熱を外部に排出するための冷媒経路が形成されたものである。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の放熱筐体であって、前記収納体が、前記熱拡散体の側端面に接触設置された側部を備え、前記ヒートパイプが、前記熱拡散体の側端面を経て前記側部に延設されて形成されたものである。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の放熱筐体であって、前記収納体が、前記熱拡散体の下面に接触設置された底部をさらに備え、前記冷媒経路が、前記底部内で前記ヒートパイプを跨ぐように形成されたものである。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項2または請求項3に記載の放熱筐体であって、前記収納体が、前記側部の外側側面に位置する外延側部をさらに備え、前記冷媒経路が、前記外延側部内で前記ヒートパイプを横切るように形成されたものである。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の発明では、発熱体に設けられる熱拡散体にヒートパイプを形成することにより、熱拡散の効果を大きくできる。そして、このように熱拡散体内で拡散された熱を、冷媒経路内の冷媒によって外部に排出することができ、放熱筐体のサイズをあまり大きくしなくても、放熱効果を向上することができる。特に、冷媒経路が複数形成されている場合に、各ヒートパイプで熱を拡散しつつ、その複数のヒートパイプ間の熱分布を冷媒経路内の冷媒で均一化しながら外部に放出でき、放熱効果を容易に向上できる。
【0015】
請求項2に記載の発明では、ヒートパイプを収納体の側部にまで延設しているので、放熱筐体の全体に熱を容易に分散させて放熱効果を向上することができる。
【0016】
請求項3に記載の発明では、熱拡散体の下面に接触配置される底部内に冷媒経路を形成しているので、熱拡散体を板状に形成すれば、この熱拡散体に対して接触面積の大きな底部内に冷媒経路を配策形成でき、冷媒による冷却効果を向上できる。
【0017】
請求項4に記載の発明では、ヒートパイプの熱拡散機能を積極的に活用して側面側に熱を集中させつつ、側面に形成された外延側部に冷媒経路を形成しているので、底部を設けない場合は高さ方向のサイズを抑制して放熱筐体の小型化を図ることができ、また底部を設けて当該底部内に冷媒経路を形成する場合は、冷媒経路を側面側にまで広げることでヒートパイプにより拡散された熱の放熱を効果的に行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
{第1実施形態}
図1は本発明の第1実施形態に係る放熱筐体20の一部を示す底面視断面模式図、図2は内部に発熱体が収納された放熱筐体20を示す側面視断面模式図である。
【0019】
この放熱筐体20は、図1及び図2の如く、例えば自動車用のインバータ等に使用されるパワーMOSFET等の半導体デバイスである発熱体21を収納して保護するとともに、この発熱体21で発生した熱を外部に放熱するためのものであって、発熱体21の下面に接触設置される熱拡散体23と、この熱拡散体23の外側面、即ち、下面及び側端面に接触して当該熱拡散体23及び発熱体21を収納する収納体25とを備え、この収納体25の底部31に冷却水等の冷媒が流れる冷媒経路27が形成されるとともに、熱拡散体23及び収納体25の側部33の内部にヒートパイプ29が形成されたものである。
【0020】
熱拡散体23は、例えばアルマイト等の絶縁性を有し、且つ熱伝導性に優れた材料が使用された板体であり、その上面に、伝熱シールやシリコングリス等の熱伝導性の高い接着材等を用いて発熱体21が接着される。
【0021】
収納体25は、例えばアルマイト等の高い熱伝導性を有する絶縁材料を用いて、底部31、側部33及び天部35を備えて略箱形に形成されている。
【0022】
ヒートパイプ29は、極細線ウィックを用いるなどして、液体の蒸発と凝縮の潜熱を利用することで、小さな温度差で大量の熱輸送が可能な閉ループの電熱素子である。このヒートパイプ29は、図1の如く、その軸が熱拡散体23の板面に平行にその一方向(例えば長手方向)に沿って形成されるとともに、その端部が収納体25の側部に、その上方に向かって延設されるようにして配置される。そして、このヒートパイプ29は、熱拡散体23の一方向に対して直交する方向(例えば幅方向)に沿って複数本並列形成される。これにより、熱拡散体23及び収納体25の側部33の一定の単位面積の全ての部分に、ヒートパイプ29が配置されるように形成されることになり、特にヒートパイプ29の軸方向に対して発熱体21の熱を効率良く分散させることができるようになっている。
【0023】
収納体25の底部31内に形成される冷媒経路27は、当該底部31の熱分布をできるだけ均一にするため、図1の如く、蛇行状またはジグザグ状等に形成されており、且つ、底面視または平面視した場合に、複数本のヒートパイプ29を横切るようにして形成される。このように、冷媒経路27が複数本のヒートパイプ29を横切るようにして形成されることで、複数のヒートパイプ29同士の温度差を可及的に均一にすることが可能となる。そして、この冷媒経路27の冷媒供給口32aから当該冷媒経路27内に冷媒を導入し、この冷媒が冷媒経路27の冷媒排出口32bから排出されることで、収納体25の底部31の全体が冷却される。
【0024】
上記構成によれば、発熱体21が発熱したとき、その熱が熱拡散体23を通じて収納体25の底部31及び側部33に伝達され、外部に放出される。
【0025】
この際、熱拡散体23から収納体25の側部33にかけて内部設置された複数のヒートパイプ29により、その各ヒートパイプ29の軸方向に熱拡散が効率よく行われる。
【0026】
そして、熱拡散体23及び収納体25の側部33に拡散された熱は、これらの全底面に密接された底部31に伝達される。そして、この底部31に内部形成された冷媒経路27に冷媒が流れることで、底部31の熱が外部に効率よく排出される。特に、冷媒経路27がヒートパイプ29の軸方向に対して直交するように形成されているので、一旦複数のヒートパイプ29同士の熱分布を可及的に均一にできる。このように、複数のヒートパイプ29でその軸方向に熱拡散を行い、この各ヒートパイプ29に直交するように形成された冷媒経路27内に冷媒を流すことで、ほぼ面状に熱拡散を行いながら放熱を行うことができるので、極めて効率の良い放熱が行われる。
【0027】
したがって、従来のように、放熱筐体のサイズをやみくもに大きくしなくても、複数のヒートパイプ29と冷媒経路27との相乗作用により効率良く放熱を行うことができる。
【0028】
{第2実施形態}
図3は本発明の第2実施形態に係る放熱筐体20を示す底面視断面模式図、図4は内部に発熱体が収納された放熱筐体20を示す側面視断面模式図である。なお、図3及び図4では図1及び図2に示した第1実施形態と同様の機能を有する要素について同一符号を付している。また、図3及び図4では、冷媒経路27の冷媒供給口32a及び冷媒排出口32bを省略して図示している。
【0029】
この実施の形態の放熱筐体20は、基本的には第1実施形態と同様に、図3の如く、熱拡散体23から収納体25の側部33内にかけて複数のヒートパイプ29が形成され、このヒートパイプ29にできるだけ直交するように収納体25に冷媒経路27が形成されている。ただし、収納体25の側部33のさらに外側の外延側部37に、冷媒経路27が延設されており、この外延側部37の冷媒経路27が、複数のヒートパイプ29の端部同士を横切るように配置されている。
【0030】
このような構成とすることで、収納体25の側部33に配置された複数のヒートパイプ29同士の温度分布をできるだけ均一化しながら、この側部33の熱を冷媒経路27内の冷媒により効率よく外部に放出することができる。したがって、第1実施形態に比べて放熱筐体20のサイズが若干大きくなるものの、この放熱筐体20の放熱効率をさらに向上することが可能となる。
【0031】
{第3実施形態}
図5は本発明の第3実施形態に係る放熱筐体20を示す底面視断面模式図、図6は内部に発熱体が収納された放熱筐体20を示す側面視断面模式図である。なお、図5及び図6では図3及び図4に示した第2実施形態と同様の機能を有する要素について同一符号を付している。また、図5及び図6では、冷媒経路27の冷媒供給口32a及び冷媒排出口32bを省略して図示している。
【0032】
この実施の形態の放熱筐体20は、第2実施形態における収納体25の底部31を省略し、外延側部37内に形成された冷媒経路27のみで、熱拡散体23及び側部33内の複数のヒートパイプ29で拡散された熱を外部に放出するようになっている。外延側部37の冷媒経路27が、複数のヒートパイプ29の端部同士を横切るように配置されている点で、この実施形態の構成は、第2実施形態と共通している。
【0033】
この場合、外延側部37の冷媒経路27は、主として側部33の熱のみを冷媒により外部に排出することになるが、第2実施形態の構成から底部31とその内部の冷媒経路27を省略しても、ヒートパイプ29自体が、小さな温度差で大量の熱輸送が可能な構造となっているため、このヒートパイプ29により熱拡散体23と側部33の全体の熱を大量に外延側部37に輸送し、この外延側部37の冷媒経路27内の冷媒により外部に熱を排出することが可能である。したがって、高さ方向にコンパクトで、且つ放熱効率の高い放熱筐体20を提供できる。
【0034】
尚、上記各実施形態は放熱筐体20の一例を説明したものであり、収納体25内の冷媒経路27が、複数のヒートパイプ29を跨ぐようにしてまたは横切るようにして形成されているのであれば、冷媒経路27及びヒートパイプ29の形状は図1〜図6に示した形状に限られるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の第1実施形態に係る放熱筐体を示す底面視断面模式図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る放熱筐体であって内部に発熱体が収納された状態を示す側面視断面模式図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係る放熱筐体を示す底面視断面模式図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る放熱筐体であって内部に発熱体が収納された状態を示す側面視断面模式図である。
【図5】本発明の第3実施形態に係る放熱筐体を示す底面視断面模式図である。
【図6】本発明の第3実施形態に係る放熱筐体であって内部に発熱体が収納された状態を示す側面視断面模式図である。
【図7】従来の放熱筐体を示す底面視断面模式図である。
【図8】従来の放熱筐体であって内部に発熱体が収納された状態を示す側面視断面模式図である。
【符号の説明】
【0036】
20 放熱筐体
21 発熱体
23 熱拡散体
25 収納体
27 冷媒経路
29 ヒートパイプ
31 底部
32a 冷媒供給口
32b 冷媒排出口
33 側部
35 天部
37 外延側部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱体に接触設置される熱拡散体と、
前記熱拡散体に接触して当該熱拡散体及び前記発熱体を収納する収納体と
を備え、
少なくとも前記熱拡散体の内部に前記発熱体の熱を拡散するためのヒートパイプが形成され、
前記収納体の内部に、前記ヒートパイプにより拡散された熱を外部に排出するための冷媒経路が形成されたことを特徴とする放熱筐体。
【請求項2】
請求項1に記載の放熱筐体であって、
前記収納体が、前記熱拡散体の側端面に接触設置された側部を備え、
前記ヒートパイプが、前記熱拡散体の側端面を経て前記側部に延設されて形成されたことを特徴とする放熱筐体。
【請求項3】
請求項2に記載の放熱筐体であって、
前記収納体が、前記熱拡散体の下面に接触設置された底部をさらに備え、
前記冷媒経路が、前記底部内で前記ヒートパイプを跨ぐように形成されたことを特徴とする放熱筐体。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の放熱筐体であって、
前記収納体が、前記側部の外側側面に位置する外延側部をさらに備え、
前記冷媒経路が、前記外延側部内で前記ヒートパイプを横切るように形成されたことを特徴とする放熱筐体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−120971(P2006−120971A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−309195(P2004−309195)
【出願日】平成16年10月25日(2004.10.25)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】