説明

放電セル放電回路及び放電セル放電回路制御システム

【課題】駆動周波数を常に自動的に共振周波数近傍としながらオゾン生成量を効率良く調整できる放電セル放電回路を提供すること。
【解決手段】直流電力を供給する電力供給部(Uw)と、インバータ(Uj)と、トランス(Tr)と、トランス(Tr)の2次側の放電セル(Ds)と共振インダクタ(Lm)とを接続した閉ループからなり共振インダクタ(Lm)と寄生容量(Cm)とによって構成される共振部とを具備する。共振部の共振周波数とインバータ(Uj)の駆動周波数とを同調させるようにインバータ(Uj)の駆動周波数を制御する同調制御部(Us)と、電力供給部(Uw)の出力電力を調整可変して規定の出力電力になるように制御する電力制御回路(Uwc)とを具備し、同調制御部(Us)によるインバータ(Uj)の駆動周波数の制御と、電力制御回路(Uwc)による電力制御との2つの制御系によって放電セル(Ds)の放電を継続させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一定の間隔をおいた平板電極の片側、もしくは両側の電極を誘電体で覆った一対の平面電極に対し、交流電圧を印加した場合に起こる無声放電、誘電体バリア放電であって、特に、高濃度のオゾン発生装置やオゾン水製造装置等に用いられる放電セル放電回路及び放電セル放電回路制御システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
オゾンの生成技術において、無声放電又は沿面放電によるオゾンの発生方法及び装置があり、具体的には、高圧電極と接地電極とを両電極間に空隙部が形成されるように誘電体を介在させた放電セルを構成し、両電極間に酸素ガスを流しつつ高電圧を印加することにより放電を起こし、高濃度のオゾンを生成させるオゾンの発生方法及び装置が開発され、使用されている。オゾンは有用な酸化殺菌剤として利用されているが、例えば半導体製造分野においても、幅広く利用されている。そして従来、前記オゾンを生成するための高電圧発生回路(放電セル放電回路)においても、オゾン発生量の向上を目的とした回路方式が提案されている。
【0003】
図13は従来の直列共振方式による放電セル放電回路のオゾン生成回路を示すブロック図である。図13において、まずノード(R、S、T)より整流部(Ur)に商用交流電源が接続され前記整流部(Ur)にて単純全波整流され、直流電源が平滑コンデンサ(C10、C11)で生成される。次に前記直流電源は、インバータ(Uj)に供給され、前記インバータ(Uj)の中点間に交流電圧が形成される。前記インバータ(Uj)で形成された交流電圧は、昇圧トランス(T10)により高電圧に変換され、インダクタ(L1)を介して誘電体を介在させた放電セル(Ds)に印加される。このインダクタ(L1)を設ける第1の目的は、前記インバータ(Uj)上のスイッチング素子(Q10、Q11)に過渡的な電流が流れることを制限して保護するためである。またその第2の目的は、前記放電セル(Ds)は抵抗成分とツェナーダイオードと容量成分とを並列に接続した回路と等価と考えることができるので、インダクタ(L1)と前記放電セル(Ds)が持つ寄生容量(Cm)とから構成される共振部の共振周波数で前記インバータ(Uj)を動作させるためである。
【0004】
同調制御部(Us’)は、前記放電セル(Ds)の電圧と前記放電セル(Ds)への電流との各波形を取り込んで各位相信号を取り込み、両者の位相差を認識するものである。例えば、LC回路で構成された共振部の電圧印加駆動の周波数を共振周波数で印加している場合、トランス(T10)の一次側の位相差はゼロ近傍となり、トランス(T10)の2次側であるLC回路の接続ノード電圧が最大になることは公知の事実である。例えば特許文献1においても、インバータの周波数を共振周波数と合わせ、高い電圧出力が得られることを紹介している。インバータとして高電圧、つまり前記放電セル(Ds)における電圧印加状態を最大にするために、前記トランス(T10)の電流と電圧の位相差をゼロにすべく、前記インバータ(Uj)を駆動する駆動回路(Gq10)に前記共振周波数と一致したパルス信号を伝達する。
【0005】
次に、図14は図13に示す直列共振方式によるオゾン生成回路における前記インバータ(Uj)上に配置された前記スイッチング素子(Q10、Q11)の動作説明図である。同図に示すように、前記インバータ(Uj)の前記スイッチング素子(Q10、Q11)の各々のDUTY比は略50%とし、前記スイッチング素子(Q10、Q11)各々のオン時間の間、つまり両スイッチング素子ともにオフとなる適当な極短い期間を設定した上でこれを交互に動作させるとともに、前記インバータ(Uj)の駆動周波数は、周波数変調を行うこととしている。
【0006】
特に、オゾン発生用の放電セルにおいて、共振作用による高電圧の印加時、オゾン生成が高効率で行われることが一般的に知られており、その際は放電セル(Ds)の持つ前記寄生容量(Cm)成分と前記放電セル(Ds)に直列に接続された前記インダクタ(L1)とで構成された共振部のもつ共振周波数を利用してインバータ(Uj)を共振周波数で駆動し高電圧を印加することが好適である。そして、同時にインバータ(Uj)のスイッチング素子(Q10、Q11)がゼロ電流スイッチングを達成し、スイッチングロスを低減して電源としての効率も改善することが好適である。
【0007】
ここで図15を用いて前記スイッチング素子(Q10、Q11)が動作する駆動周波数について説明する。図15では横軸に周波数、縦軸に共振の鋭さ(Q)を表示する。前記したように、オゾン濃度を高く設定または調整する際は、前記共振周波数近傍で前記インバータ(Uj)を動作させるため、放電セル(Ds)に対し高い電圧を印加できるため非常に高いオゾン生成効率を得ることができる。そのため、前記放電セル(Ds)の特性から最も高いQが得られるべく予め予測的に算出された共振周波数(f0)で前記インバータ(Uj)を制御する方式としている。しかしながら、放電セル(Ds)の冷却条件の変化や、放電セル(Ds)へのガス流量による放電セル(Ds)の温度の変化や、放電による寿命劣化による電極間距離変化、放電セル(Ds)の容量成分の減少などにより周波数を一定としても共振周波数の変化が実際に生じるため常に最良の効率を達成できない欠点があった。
【0008】
また、オゾン生成量を調整する際において特にその生成量を減じたい場合における前記インバータ(Uj)の駆動周波数は前記共振周波数から外れた領域で運転を行うことにより、放電セル(Ds)に対して低い電圧を印加する方式としている。したがってインバータ(Uj)のスイッチング素子(Q10、Q11)がゼロ電流スイッチングを達成できない欠点があった。まして、昇圧トランス(T10)に存在するリーケージインダクタンスによりノイズを発生しやすく、制御系の回路が誤作動を引き起こすリスクがあり、そのための対策を実施しなければならなかった。
【0009】
オゾン生成濃度を減少させたい場合は、本本式においては前記共振周波数(f0)から前記インバータ(Uj)の駆動周波数を離していき、放電セル(Ds)への印加電圧を落とす方法が試されている。その際は規定の周波数領域区間(Δf)の区間をもって共振周波数(f0)より離れた周波数で制御される。そのため本方式では、例えば、PLL(Phase Locked Loop)技術、つまり、基準周波数と、出力信号との周波数を一致させる電子回路を用いて入力信号と出力信号との位相差を検出し、VCO(電圧によって周波数を変化させる発振器)や回路のループを制御することで、正確に同期した周波数の信号を発信する方式を使った場合は、煩雑な回路構成になるばかりか、前記共振周波数(f0)から前記インバータ(Uj)の駆動周波数が外れるため、結果として、オゾン生成効率の面で効率低下を招く問題があった。さらに、駆動周波数が離れる方向としてより高い周波数を選択すれば、スイッチング周波数が高まるから、当然、スイッチング素子の発熱量も増加する問題があった。さらにスイッチングロスの観点から、電流と電圧の位相が一致していないため、例えば、電流が多く流れているときであってもスイッチング素子は遮断処理をしなければならず、所謂ハードスイッチングとなり、スイッチングロスを増大させるとともにノイズも増大させてしまう欠点があった。
【0010】
さらに本本式においては、前記インバータ(Uj)の駆動周波数を前記共振周波数(f0)とすることが最善である旨を前述したが、実際のところ、前記放電セル(Ds)への印加電圧が過剰に上昇してしまい、放電セル(Ds)を破壊してしまった。これは前述したように共振の鋭さ(Q)が大きいためであり、また同時に前記インバータ(Uj)への供給電力を制限する手段を持たないからであった。
【0011】
さらに、前記インバータ(Uj)の駆動周波数を前記放電セル寄生容量(Cm)と前記インダクタ(L1)との共振周波数に合わせ一定とした場合においては、前記放電セル(Ds)はその寄生容量(Cm)自体にばらつきが存在しており、例えば前記放電セル(Ds)を交換した際、交換された放電セルによっては交換以前と同一とならず、所望の消費電力、所望のオゾン濃度が得られないという問題があった。
【0012】
さらに、一定の周波数でブリッジを駆動している場合において、例えば入力電源が単相50Hzの場合、平滑コンデンサ(C10、C11)には整流後の100Hzのリップルが存在しており、オゾン生成濃度においても、この100Hzのうねりが生じてしまい、極短い時間ではあるが規定された濃度が得られていない問題があった。そのため極端に大きな容量を持った電界コンデンサを用意する必要があり、大型化が避けられなかった。
【0013】
特許文献3においては、放電セルの持つ寄生容量成分と放電セルと直列に接続されたトランスとトランスの漏れインダクタンスにて構成された共振部のもつ共振周波数を利用しインバータを共振周波数で駆動し、スイッチングロスを低減し、電源としての効率を上げるように制御するものが記載されているが、上記各問題については解決されていなかった。
【0014】
また、特許文献4においては、インバータのスイッチング素子をDuty比50%にて共振周波数で駆動し、PDM(Pulse Density Modulation)方式を採用した方式が記載されているが、上記各問題については解決されていなかった。
【0015】
また特許文献2においては、商用交流電源の極性に応じて信号を出力し、商用交流電源の電圧の極性を利用する方法により商用電源周波数の変動を回避する方策が提案されているが、オゾン生成に必要なインバータの印加周波数は、概ね10kHz〜50kHz程度の高周波が必要であり、前記共振部によるオゾン生成の効率面から考えても上記各問題を解決する方策となりえなかった。
【0016】
図16は従来の他の放電セル放電回路のオゾン生成回路を示すブロック図である。また図17は図16に示すオゾン生成回路におけるスイッチング素子(Q10,Q11)の動作説明図である。図16における方式は、駆動周波数を一定とし、オン幅を可変とする、PWM(Pulse Width Modulation)制御を行い、オゾン生成量を制御する方式である。図16に示す形態においては、前記したように共振周波数での周波数の印加動作時に非常に高いオゾン生成効率を得ることができるから、そのため前記放電セル(Ds)の持つ寄生容量(Cm)とインダクタ(L2)との関係から共振周波数を導き出し、並列共振方式にて駆動周波数を予め固定した方式として高電圧を放電セル(Ds)に印加している。そして、電力制御部(Us’’)により前記放電セル(Ds)への電力及び前記放電セル(Ds)への電圧を管理しインバータ(Uj)を駆動する駆動部(Gq20)にフィードバックするものである。
【0017】
図16におけるインバータ(Uj)上のスイッチング素子(Q20、21、22、23)における駆動タイミングは、図17に示すように、共振状態が得られる状態において周期(T1)を一定にして、オン時間(T2)が最大で概ね50%近くになるように設計されている。
【0018】
しかしながら、前記放電セル(Ds)は温度や圧力の上昇に伴って放電セル(Ds)の放電電圧が上昇し、次第に放電セル(Ds)の寄生容量(Cm)成分が増加してしまうため、前記共振周波数も変化してしまい、その結果、前記インバータ(Uj)の駆動周波数が前記した共振周波数から外れてしまう問題があった。
【0019】
また、オゾン生成濃度を減少させたい場合においては、PWMの前記オン時間(T2)を減少させる方式となる。抵抗をはじめとする一般的な負荷においては電流の増加とともにその分だけ電圧が上昇するが、放電セル(Ds)では独特な性質を持つ。具体的には前記オン時間(T2)を減少させた際は、前記放電セル(Ds)へのエネルギー量が減少し、前記放電セル(Ds)の温度が低下し、前記放電セル(Ds)の電圧が低下し、前記寄生容量(Cm)も減少し、結果として、同様にインバータ(Uj)の駆動周波数が共振周波数から大幅に外れてしまう問題があった。
【0020】
仮に共振状態を外れたスイッチングをしている場合において、スイッチング素子がオンとなる直前の状態は、スイッチング素子のドレイン端子−ソース端子両端に電圧が存在しているから、スイッチング素子の寄生容量に電荷が蓄積されており、スイッチング素子がオンとなる瞬間に、前記電荷がスイッチング素子を介しショート電流となり流れスイッチング素子のオン抵抗で熱となり消費される。一方、スイッチング素子がオフとなる直前の状態は、スイッチング素子のドレイン端子−ソース端子には電流が流れており、この時スイッチング素子をオフしてしまうためスイッチングロスが生じる。これらは不要な発熱となるとともに、ノイズ発生原因にもなりうる。またこの方式でも、前記図13の方式と同様に、放電セル(Ds)固有のばらつき(寄生容量(Cm)のばらつき)により、必ずしも適応した周波数が得られないため、その都度調整を行わなければならない欠点があった。
【0021】
さらに上述の図13,図16に示す従来の各例においては、オゾン発生効率の観点から共振周波数近傍で駆動すべきである要素があるにも関わらず、オゾン濃度を調整するためには前記インバータ(Uj)の駆動周波数を共振周波数から外してスイッチング素子をオンオフしなければならず、前記インバータ(Uj)のスイッチング素子に対しても不要なストレスを掛け、時としてスイッチング素子の破損に至るだけでなく、放電セル(Ds)の冷却条件の変化、放電セル(Ds)へのガス流量による放電セル(Ds)の温度の変化、放電による寿命劣化による電極間距離変化、放電セル(Ds)の容量成分の減少などによりインバータ(Uj)の駆動周波数を一定としても共振周波数の変化が実際に生じるため常に最良の効率を達成できない欠点があった。
【0022】
次にオゾン生成装置の制御システムの一例を簡略化して示すブロック図である図18を用いて、オゾン生成装置について説明する。前記装置は所望のオゾン濃度のオゾンガスを得るための装置であって前記説明した放電セル放電回路(PS)の他に酸素や冷却水や窒素などのユーティリティーの供給バルブ(V1、V2)やマスフローコントローラ(MFC1、MFC2)やオゾン検知器(Od)を初めとした機器、図中では省略するが圧力計や流量センサなど装置に必要な部品を具備しており、自動制御化が可能なように放電セル放電回路制御システム(以下「装置制御システム」という)(ES)を搭載している。そして、放電セル放電回路(PS)は放電セル(Ds)へ放電を行い、その際は酸素(O2)、および微量の窒素(N2)を添加して放電セル(Ds)内に供給する。前記放電セル(Ds)内に酸素(O2)が供給されれば、オゾン(O3)が生成される。
【0023】
放電セル放電回路(PS)は、装置制御システム(ES)からの指令により制御される。特に、装置制御システム(ES)は放電セル放電回路(PS)に対し放電開始指令と放電電力量を操作することができる。例えば、放電セル放電回路(PS)をスレーブ、装置制御システム(ES)をマスターとすればマスターは4mA〜20mAの範囲での電流信号を出力し、スレーブは、スレーブ上のコントロール基板に実装した抵抗、例えば250オームの抵抗で受け1V〜5Vに変換した信号を受け取り放電セル(Ds)への電力投入量をフィードバック制御する。装置制御システム(ES)からの電流信号は、放電セル放電回路(PS)で定義したオゾン生成最低値とオゾン生成最大値の間を表現しているものである。
【0024】
放電セル放電回路(PS)は、装置制御システム(ES)から得られた4mA〜20mAの信号を例えば1000分解能で検出して放電セル(Ds)への供給電力量を微妙に設定することが可能である。装置制御システム(ES)は発生したオゾン量をオゾンガス検知器(Od)を用いて監視しており、オゾン生成量が少なければ放電セル放電回路(PS)に対して前記指令値を増加させるし、オゾン生成量が多ければ放電セル放電回路(PS)に対して指令値を減少させている。
【0025】
次に図19を用いて放電セル(DS)への電力投入量とオゾン濃度との関係について説明する。オゾン生成用の放電セル(Ds)に誘電体バリア放電(無声放電)を発生させるため電力を投入するとオゾンが発生する。放電セル放電回路(PS)がオゾン生成用放電セル(DS)に対して数kVの電圧を数十kHzの駆動周波数で印加すると、バリア放電が発生し、その中を酸素(O2)が通過する際に、分解されてラジカルとなって、オゾン(O3)として再結合する。放電セル放電回路(PS)に対して前記指令値を増加させれば前記放電セル(Ds)への投入電力量も増加することを説明したが、前記放電セル(Ds)に過剰な電力を投入した際は、生成したオゾン(O3)を破壊してしまい逆にオゾン濃度を減少させる現象が起きる欠点があった。これは、装置制御システム(ES)が単純な一方向のPID制御で、所望のオゾン濃度を得ようと放電セル放電回路(PS)を制御しているため、オゾン量を増加させるべく前記指令量を多くした場合はオゾン生成の最高効率点を経過しオゾン濃度が減少してしまう電力が放電セル(Ds)に投入されてしまうからである。
【0026】
そのため、装置制御システム(ES)は、電力範囲(ΔW’)の範囲での電流信号を出力し、オゾン生成の最良点よりも低く、十分なマージンを確保した上での範囲で設定しなければならず、放電セル放電回路(PS)も最大の本来の定格出力電力より低くなるように最大の出力を都度、再設定する必要があった。そして何よりもオゾン生成用放電セル(Ds)にとって最大限のオゾン生成性能を引き出せる形態とは言えなかった。例えば、放電電源は使用している経時変化による劣化により放電セル(Ds)が持つ寄生容量の変化、連続的な使用時間に伴う温度変化、例えば放電セル(Ds)への冷却水供給流量による冷却条件の変化、酸素流量条件によるオゾン生成条件の変化により、一旦、オゾン生成濃度を調整設定したにも関わらず、数時間後にオゾン濃度が変わってしまう問題があった。
【0027】
また、放電セル放電回路(PS)からの放電セル(Ds)への出力を装置制御システム(ES)からの指令値で規定するにあたって、オゾン生成濃度の最高のポイントで調整したとしても前記要因により、最大のオゾン生成濃度が得られるとは限らない。何となればオゾン生成能力が減少に転ずる電力投入ポイント(WO)が逐次変化しているからである。
【0028】
ここまで、放電セル(Ds)のオゾン生成能力を最大限に発揮するために、大きく別けて2つの欠点が存在することについて説明してきた。一つ目は、放電セル放電回路(PS)による放電セル(Ds)への電圧の印加方法であり、放電セル放電回路(PS)は放電セル(Ds)の共振周波数の変化によって、印加される電圧が時間や外乱と共に変化してしまい、常に最良の電圧を放電セル(Ds)に印加することができないことである。もう一つは、放電セル放電回路(PS)を制御するためオゾン量を増加させるべく装置制御システム(ES)からの指令値を増加した場合に、オゾン生成の最高効率点を経過しオゾン濃度が減少に転じてしまう電力が放電セル(Ds)に投入されてしまう欠点があったことである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0029】
【特許文献1】特開2000−209873号公報
【特許文献2】特開平11−243690号公報
【特許文献3】特開平11−074057号公報
【特許文献4】特開平06−141554号公報
【特許文献5】特開2000−134943号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0030】
本発明は上記問題点に鑑みて発明されたものでありその目的は、一対の平板と誘電体で構成された高濃度のオゾンを生成する放電セルの放電セル放電回路において、周波数印加手段の駆動周波数を常に自動的に共振周波数近傍の状態としながらオゾン生成量の調整を可能とし、且つ安価に構成することができる放電セル放電回路を提供することにある。
【0031】
また本発明の目的は、上記放電セル放電回路を外部から制御する際に、オゾン生成量を最大限まで調整可能とし、且つ安価に構成することができる放電セル放電回路制御システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0032】
本願請求項1に記載の発明は、対となる放電板の間に誘電体を設置してなる放電セル(Ds)を放電させる放電セル放電回路であって、直流電力を供給する電力供給部(Uw)と、前記電力供給部(Uw)から供給される直流電力を交流電力に変換するインバータ(Uj)と、前記インバータ(Uj)で変換された交流電力を昇圧するトランス(Tr)と、前記トランス(Tr)の2次側に前記放電セル(Ds)と共振インダクタ(Lm)とを接続した閉ループを構成することで共振インダクタ(Lm)と前記放電セル(Ds)の寄生容量(Cm)とによって構成される共振部と、を具備し、さらに、前記共振部の共振周波数と前記インバータ(Uj)の駆動周波数とを同調させるようにインバータ(Uj)の駆動周波数を制御する同調制御部(Us)と、前記電力供給部(Uw)の出力電力を調整可変して規定の出力電力になるように制御する電力制御回路(Uwc)と、を具備し、前記同調制御部(Us)によるインバータ(Uj)の駆動周波数の制御と、前記電力制御回路(Uwc)による電力制御との2つの制御系によって放電を継続させることを特徴とする放電セル放電回路にある。
【0033】
本願請求項2に記載の発明は、前記同調制御部(Us)は、前記共振部に流れる電流位相検出手段(Ui)と、前記共振部の電圧位相検出手段(Uv)とに接続され、前記電流位相検出手段(Ui)で得た電流位相信号(Sfi)と前記電圧位相検出手段(Uv)で得た電圧位相信号(Sfv)とを比較して共振位相差信号(Sfr)を得る比較部(Uf)と、前記位相差信号(Sfr)を受けて前記インバータ(Uj)の駆動周波数を前記共振部の共振周波数に同調させるように周波数制御信号(Sfg)の値を決定してインバータ(Uj)にフィードバック制御する演算比較手段(Uz)とを有することを特徴とする請求項1に記載の放電セル放電回路にある。
【0034】
本願請求項3に記載の発明は、前記同調制御部(Us)による同調動作は、前記周波数制御信号(Sfg)を、上限周波数から開始して下限周波数に向かって掃引動作を行い、前記共振位相差信号(Sfr)レベルが最良の共振状態を得た状態での前記周波数制御信号(Sfg)を記憶すると共に、その後、前記共振部の共振周波数に対応する前記周波数制御信号(Sfg)近傍の、前記上限周波数から下限周波数に対応する範囲よりも狭い範囲において掃引動作を行うことで、常時、前記共振部をその共振周波数近傍で動作させることを特徴とする請求項2に記載の放電セル放電回路にある。
【0035】
本願請求項4に記載の発明は、前記同調制御部(Us)は、前記共振インダクタ(Lm)に印加される電圧を検出する電圧検出手段(Uv’)に接続され、前記電圧検出手段(Uv’)から得られる共振電圧信号(Su)を受けて前記インバータ(Uj)の駆動周波数を前記共振部の共振周波数に同調させるように周波数制御信号(Sfg)の値を決定してインバータ(Uj)にフィードバック制御する演算比較手段(Uz)とを有することを特徴とする請求項1に記載の放電セル放電回路にある。
【0036】
本願請求項5に記載の発明は、前記同調制御部(Us)による同調動作は、前記周波数制御信号(Sfg)を、上限周波数から開始して下限周波数に向かって掃引動作を行い、前記共振電圧信号(Su)レベルが最良の共振状態を得た状態での前記周波数制御信号(Sfg)を記憶すると共に、その後、前記共振部の共振周波数に対応する前記共振電圧信号(Su)近傍の、前記上限周波数から下限周波数に対応する範囲よりも狭い範囲において掃引動作を行うことで、常時、前記共振部を共振周波数近傍で動作させることを特徴とする請求項4に記載の放電セル放電回路にある。
【0037】
本願請求項6に記載の発明は、規定の電力を供給するための前記電力供給部(Uw)を制御する前記電力制御回路(Uwc)の制御周期(τx)と、前記周波数制御信号(Sfg)の値を決定して前記インバータ(Uj)の駆動周波数をフィードバック制御するように動作する前記演算比較手段(Uz)の制御周期(τz)とが、n:m(n≠m)の関係により時間的頻度差をもって制御されることを特徴とする請求項2乃至5の内の何れかに記載の放電セル放電回路にある。
【0038】
本願請求項7に記載の発明は、前記電力供給部(Uw)をフィードバック制御するように動作する前記電力制御回路(Uwc)と、前記インバータ(Uj)の駆動周波数をフィードバック制御するように動作する前記演算比較手段(Uz)とを、一つのマイクロコンピュータで構成したことを特徴とする請求項2乃至6の内の何れかに記載の放電セル放電回路にある。
【0039】
本願請求項8に記載の発明は、放電を開始する始動初期において前記同調制御部(Us)は前記インバータ(Uj)の駆動周波数を上限周波数から下限周波数に向けて掃引動作を行うとともに、前記電力制御回路(Uwc)は前記電力供給部(Uw)の出力電力(WO)、または、前記電力供給部(Uw)の出力電圧(VO)、または、前記電力供給部(Uw)の出力電流(IO)を低く設定して徐々に(5秒〜120秒間かけて)定格に移行していくことを特徴とする請求項1乃至7の内の何れかに記載の放電セル放電回路にある。
【0040】
本願請求項9に記載の発明は、放電を開始する始動初期以前において前記同調制御部(Us)は前記インバータ(Uj)の駆動周波数を上限周波数から下限周波数に向けて掃引動作を行い、前記インバータ(Uj)の駆動周波数を予め共振周波数近傍の値を検出し、この値を記憶し設定した後、放電開始を行い、さらに共振周波数への精度を高めることを持続することを特徴とする請求項1乃至7の内の何れかに記載の放電セル放電回路にある。
【0041】
本願請求項10に記載の発明は、請求項1に記載の放電セル放電回路(PS)を外部から制御する放電セル放電回路制御システム(ES)であって、前記放電セル放電回路制御システム(ES)は、オゾン濃度を検出するオゾン検知器(Od)から入力信号(Ods)を入力するとともに、前記放電セル放電回路(PS)の電力供給部(Uw)の出力電力を外部から制御する出力信号(PSd)を前記電力制御回路(Uwc)に出力することでオゾン濃度を制御するオゾン濃度制御回路(Up)を具備することを特徴とする放電セル放電回路制御システムにある。
【0042】
本願請求項11に記載の発明は、前記オゾン濃度制御回路(Up)は、前記入力信号(Ods)によって得られたオゾン濃度が所望のオゾン濃度に達しない場合は前記出力信号(Psd)を増加し、前記入力信号(Ods)によって得られたオゾン濃度が所望のオゾン濃度より過剰な場合は前記出力信号(PSd)を減少させるようにフィードバック制御し、さらに前記出力信号(PSd)を増加しているにも関わらず前記入力信号(Osd)が減少に転じた際は操作変化量の符号を負とし、逆に前記出力信号(PSd)を減少しているにも関わらず前記入力信号(Osd)が減少に転じた際は操作変化量の符号を正とするフィードバック制御を行う制御系を具備していることを特徴とする請求項10に記載の放電セル放電回路制御システムにある。
【発明の効果】
【0043】
請求項1に記載の発明によれば、高濃度のオゾンを生成する放電セルの放電セル放電回路において、インバータ(Uj)への供給電力を制御することでオゾン濃度を制御し、同時にインバータ(Uj)の駆動周波数を常に自動的に共振部の共振周波数近傍の状態となるように制御するので、放電セル(Ds)が主放電中にあってオゾン濃度の調整が行なわれる場合であっても、最良のオゾン生成効率を享受することができ、且つ安価な放電セル放電回路を提供することができる。
【0044】
請求項2,請求項4に記載の発明によれば、同調制御部(Us)によるインバータ(Uj)の駆動周波数の制御が、簡単な構成で確実に行なえる。
【0045】
請求項3,請求項5に記載の発明によれば、常に確実に共振部を共振周波数近傍で動作させることができる。
【0046】
請求項6に記載の発明によれば、安定性を欠くことなく放電セル放電回路を制御することができる。
【0047】
請求項7に記載の発明によれば、安価で小型な制御システムを提供することができる。
【0048】
請求項8に記載の発明によれば、放電セル(Ds)の保護と寿命に貢献することができ、放電セル(Ds)の破壊防止に寄与しオゾン生成効率を高く保ちながら、安全に放電セル(Ds)を起動させることが可能になる。
【0049】
請求項9に記載の発明によれば、主放電開始前に共振周波数を検出しているため放電開始指令がオンとなってから素早くオゾン生成効率を高めることが可能であり、不要に長く共振周波数から外れてインバータ(Uj)を駆動する必要がないため放電回路の破壊リスク低減に寄与することが可能になる。
【0050】
請求項10に記載の発明によれば、放電セル放電回路制御システム(ES)のオゾン濃度制御回路(Up)によって、放電セル放電回路(PS)を外部から制御してオゾン濃度を制御することができる。
【0051】
請求項11に記載の発明によれば、オゾン濃度制御回路(Up)によって、放電セル(Ds)に最適な電力を供給し、放電セル(Ds)が持つ最大の能力を発揮させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】第一実施形態にかかる放電セル放電回路を簡略化して示すブロック図である。
【図2】電力供給部(Uw)と電力制御回路(Uwc)とを簡略化して示すブロック図である。
【図3】電力供給部(Uw)における定電力制御に関する出力電圧、出力電流、出力電力の関係を簡略化して示す特性図である。
【図4】同調制御部(Us)の回路の一例を簡略化して示すブロック図である。
【図5】同調制御部(Us)の回路の他の例を簡略化して示すブロック図である。
【図6】同調制御部(Us)の演算比較手段(Uz)と周期駆動回路(Ug)とインバータ(Uj)の部分を簡略化して示すブロック図である。
【図7】図4の回路図を用いた場合の自動同調動作を説明するタイムチャート図である。
【図8】図4の回路図を用いた場合の自動同調動作を説明する動作フローチャート図である。
【図9】共振部の周波数特性を示す図であり、上限周波数(Fmax)から下限周波数(Fmin)に向かってスイッチング周波数を掃引する理由を説明するための図である。
【図10】実験波形を示す図である。
【図11】放電セル放電回路の制御動作を示すフローチャート図である。
【図12】放電セル放電回路の制御動作を示すタイミング図である。
【図13】従来の放電セル放電回路のオゾン生成回路を示すブロック図である。
【図14】図13に示すオゾン生成回路のスイッチング素子(Q10、Q11)の動作説明図である。
【図15】従来の放電セル放電回路を簡略化して示す周波数特性図である。
【図16】従来の他の放電セル放電回路のオゾン生成回路を示すブロック図である。
【図17】図16に示すオゾン生成回路におけるスイッチング素子(Q10,Q11)の動作説明図である。
【図18】オゾン生成装置の制御システムの一例を簡略化して示すブロック図である。
【図19】放電セルへの電力投入量とオゾン濃度の関係を簡略化して示す特性図である。
【図20】第二実施形態にかかる放電セル放電回路(PS)を簡略化して示すブロック図である。
【図21】同調制御部(Us)の回路の一例を簡略化して示すブロック図である。
【図22】装置制御システム(ES)と放電セル放電回路(PS)とオゾン検知器(Od)の信号の取り合いの一例を簡略化して示すブロック図である。
【図23】図22の回路図を用いた場合のオゾン制御回路(Up)による自動制御方法を説明するタイムチャート図である。
【図24】放電セルへの電力投入量とオゾン濃度の関係を簡略化して示す特性図である。
【図25】図23で説明した出力信号(PSd)の増減方向が反転する処理を表した動作フロー図である。
【図26】放電セル放電回路(PS)と装置制御システム(ES)とオゾン検知器(Od)を用いた制御ブロック線図である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。
〔放電セル放電回路の第一実施形態〕
図1は本発明の第一実施形態にかかる放電セル放電回路を簡略化して示すブロック図である。同図に示す放電セル放電回路において、放電セル(Ds)への電力の供給元となる商用交流電源、例えば3相電源は、ノード(R、S、T)より整流部(Ur)に接続される。前記整流部(Ur)は複数のダイオードを備えていて全波整流を行い、規定された電力を供給するための電力制御回路(Uwc)を備えた電力供給部(Uw)にてDC出力となって、平滑コンデンサ(C1、C2)に蓄えられる。インバータ(Uj)は、前記DC出力を交流化し、この交流電力は、昇圧トランス(Tr)を介して高電圧に変換され、前記昇圧トランス(Tr)の2次巻線側に配置されたインダクタ(Lm)を介して誘電体を介在させた放電セル(Ds)に印加される。
【0054】
同調制御部(Us)は、前記放電セル(Ds)の交流電圧位相と前記放電セル(Ds)への交流電流位相とを取り込み、位相差信号を生成しこの位相差が最も少ない状態にすべく前記インバータ(Uj)を駆動する駆動回路(Ug)にパルス信号として駆動信号を出力しフィードバック制御を行う。
【0055】
インバータ(Uj)上に配置されたスイッチング素子(Q1、Q2)の動作について説明すると、スイッチング素子(Q1、Q2)の各々のDUTY比は略50%とし、前記スイッチング素子(Q1、Q2)各々のオン時間の間、つまり両スイッチング素子(Q1、Q2)ともにオフとなる適当な極短い期間を設定した上でこれを交互に動作させるとともに、前記インバータ(Uj)の駆動周波数は、後述する共振周波数に合うようにフィードバック機能を備えた周波数変調を行うこととしている。
【0056】
ここで、オゾン濃度を調整する場合においては、前記電力供給部(Uw)を制御する前記電力制御回路(Uwc)が、前記インバータ(Uj)への供給電力を制御することによりオゾン濃度を制御する。
【0057】
一方、前記インバータ(Uj)の駆動周波数は常時、放電セル(Ds)の寄生容量(Cm)成分とインダクタ(Lm)とで構成されるトランス(Tr)の2次側の共振部の共振周波数近傍となるように制御する。何となれば、オゾン発生用の放電セル(Ds)において、共振周波数での高電圧の印加時は、前記電力供給部(Uw)が必要最低限の供給電力で、電力放電セル(Ds)へ最も高い電圧を印加できることで、オゾン生成が高効率で行われるからである。従って放電セル(Ds)の持つ前記寄生容量(Cm)成分と前記放電セル(Ds)と直列に接続された前記インダクタ(Lm)とで構成された共振部のもつ共振周波数を利用し、その周波数で駆動して高電圧を印加することが好適である。
【0058】
以上のように、インバータ(Uj)への供給電力を制御することでオゾン濃度を制御し、同時にインバータ(Uj)の駆動周波数は常時放電セル(Ds)における共振周波数近傍となるように制御したので、放電セル(Ds)が主放電中にあって、オゾン濃度の調整が行われる場合であっても、最良のオゾン生成効率を享受することができる。
【0059】
尚、本実施形態において前記インバータ(Uj)は、スイッチング素子(Q1,Q2)を2つ使ったハーフブリッジ式としているが、スイッチング素子をさらに2つ追加し、図16で示したフルブリッジ方式とした回路形態とし、駆動周波数を共振周波数とした上で対極にあるスイッチング素子をDuty比略50%で、ペアとして交互に動作する形態としても構わない。
【0060】
尚、本実施形態において整流部(Ur)は、ダイオードによる整流回路を用いて説明しているが、力率改善回路であるPFCの技術や昇圧バックコンバータや倍電圧整流回路を用いて概ね300V〜400VのDC電圧を生成しても良く、入力電源に関しても3相電源に限定するものでなく、この部分における回路方式は本発明の本質とするところではない。
【0061】
次に図2は、電力供給部(Uw)と電力制御回路(Uwc)とを簡略化して示すブロック図である。同図に示すようにこれらの回路は、電力供給部(Uw)の入力電圧(VI)を一定の出力電圧(VO)に変換するために用いられる回路であって、主スイッチング素子(Q20)とインダクタ(L20)と平滑コンデンサ(C21)とフライホイールダイオード(D20)を具備した降圧型DC−DCコンバータが用いられている。前記主スイッチング素子(Q20)の制御は規定周期でオンオフ制御を繰り返すPWM制御が一般的である。PWM制御における詳細な説明は省略するが、これを具現化する手段の一つとして、例えばμPC494やTL494を初めとするPWMコントローラ専用のICが広く知られている。
【0062】
前記出力電圧(VO)は、図1に示す前記放電セル(Ds)の電圧と前記トランス(Tr)の巻き線比率によって概ね決定されるが、その時の前記放電セル(Ds)の状態、即ち放電セル(Ds)の内部圧力や温度により結果として前記出力電圧(VO)に影響が及ぼされる。つまり、前記出力電圧(VO)は負荷に依存して変動するため、前記出力電圧(VO)を測定して出力電流(IO)を制御し、出力電力を一定とする制御が試みられる。尚、前記電力供給部(Uw)自体に発生する不要な損失を低減するために部分共振型ソフトスイッチング技術を用いた方式を用いても構わないし、降圧型バックコンバータでの臨界制御方式を用いても構わないし、絶縁型のフライバックやフォワードコンバータでも構わない。
【0063】
所望の電力制御を行うために、前記電力制御回路(Uwc)は、出力電圧信号(Sv)と出力電流信号(Si)とを取り込む必要がある。ただし、出力電流信号(Si)は電流検出抵抗(R22)の抵抗値が小さいから、その両端に発生する電圧信号が非常に微弱な信号である。そのため、一度増幅器(A20)にて増幅した上で前記電力制御回路(Uwc)に取り込む必要がある。そして、外部からオゾン濃度を設定するための電力設定信号(Sw)を前記電力制御回路(Uwc)に取り込む。取得した前記出力電圧信号(Sv)と前記出力電流信号(Si)から現在の出力電力を求めることができる。尚ここでは、前記電力制御回路(Uwc)としてマイクロコンピュータ(MPU)を採用している。これらにより、前記電力制御回路(Uwc)は、下記する装置制御システム(ES)から所望された電力値(設定電力値)を設定する電力設定信号(Sw)を取り込んでいるため、実際の出力電力との大小を比較できる。例えば算出した実際の出力電力値が所望の設定電力値より小さければ、前記出力電流(IO)を増加すべく前記主スイッチング素子(Q20)のPWM信号のオン幅を大きくするように、前記電力制御回路(Uwc)は、前記主スイッチング素子(Q20)のドライブ回路(GQ20)にPWM信号を伝達する。また、逆の場合である所望の設定電力値より大きい場合においては、PWM信号のオン幅を小さくし前記出力電流(IO)を減少させる。このようにフィードバック制御を行うため、背景技術で述べた例えば、50Hzの整流リプルである100Hzの電力変動は大幅に減少し、放電セル(Ds)のオゾン濃度の変動はほぼ無視することでき、安定したオゾン生成が可能となる。またこれにより従来より小さい平滑コンデンサを採用する利点もある。このようにフィードバック制御を行うことで所望の電力を放電セル(Ds)に投入することが可能となる。
【0064】
図3は、前記電力供給部(Uw)における定電力制御に関する出力電圧、出力電流、出力電力の関係を簡略化して示す特性図である。以下これらの関係について説明する。前記主スイッチング素子(Q20)の特性である絶対最大定格電流による破損の観点から、また、前記インダクタ(L20)における電流損による発熱の観点から、前記出力電流(IO)は有限の値にする必要があり、前記出力電流(IO)に最大制限電流値(Imax)を設けている。一方、安定的に前記出力電圧(VO)を出力できる最大制限電圧値も設定する。これは前記主スイッチング素子(Q20)のDuty比を制御する設計条件による最大オン幅に依存していることもあるが、出力電圧(VO)が不要に高く設定されれば、前記インバータ(Uj)上のスイッチング素子(Q1、Q2)を耐電圧が高いスイッチング素子に選定する必要があり、例えば図1におけるスイッチング素子(Q1、Q2)に例えばFETを採用した場合、耐圧の上昇とともにオン抵抗も増加するため、結果として不要に発熱を招くことになるからである。また、FETの選定という側面からも耐電圧が低いほうが選択肢が広がる利点があるからである。
【0065】
尚、図3における設定例としてのパラメータは以下の通りである。
V1:100V
V2:200V
Imax:4A
W0:400W
主として、前記放電セル(Ds)のばらつきや放電条件を十分加味し、通常使われる出力電力状態は、定電力範囲(WC)内に中心電圧付近となるように設定されるべきである。そして、オゾン濃度を変更する際は、定電力領域のライン(W0)が電力変調可変領域区(ΔW)内である、例えば電力ライン(W1)へシフトし、放電セル(Ds)に対しての電力供給量を制限するように働く。これにより、従来、消費電力が無管理状態であった部分においても前記インバータ(Uj)に依存することなく前記電力制御回路(Uwc)が独立して電力管理することで高効率なオゾン生成という利点を享受できる。すなわち、前記電力制御回路(Uwc)がオゾン濃度制御を行ったとしても、前記インバータ(Uj)は、常にオゾン生成に最適な共振作用による高電圧Sin波を印加し続けることができると言える。
【0066】
次に図4は同調制御部(Us)の回路の一例を簡略化して示すブロック図である。同図に示す同調制御部(Us)においては、前記放電セル(Ds)と前記インダクタ(Lm)とで構成される前記共振部に流れる電流位相検出手段(Ui)としてカレントトランスを用いて電流波形を検出し、前記共振部に流れる電圧位相検出手段(Uv)として昇圧トランスの3次巻き線を利用して電圧波形を検出している。以下その詳細について説明する。
【0067】
まず回路用電源として例えば、20Vと5Vの2系統の電源を用意する。電圧信号及び電流信号を検出する電圧位相検出手段(Uv)及び電流位相検出手段(Ui)の巻き線部からの2本の線の片側は前記5Vラインに接続されている。電圧波形および電流波形の信号は、5Vを中心として所謂Sin波となり検出されており、コンパレータ(A40、A41)の電源を20Vラインに接続し、電圧波形または電流波形をコンパレータ入力端子に接続し、もう一方の入力端子を前記5Vラインに接続している。そのため、コンパレータ(A40、A41)からの出力はDUTY比50%の方形波となる。
【0068】
前記方形波に変換された電流位相信号(Sfi)と電圧位相信号(Sfv)は、両者とも0−5Vレベルの位相信号なので、両者を比較すればその位相差を計量できるから、比較部(Uf)として排他的論理和(Exclusive−OR)を利用して位相差量を計測することができる。
【0069】
仮に位相差が存在する場合、例えば、前記コンパレータ(A40)からの前記電圧位相信号(Sfv)がLowレベル(0)、前記コンパレータ(A41)からの前記電流位相信号(Sfi)がHighレベル(1)となって前記排他的論理和の出力はHighレベル(1)となる。逆に位相差が存在しない場合、例えば、前記コンパレータ(A40)からの前記電圧位相信号(Sfv)がHighレベル(1)、前記コンパレータ(A41)からの前記電流位相信号(Sfi)がHighレベル(1)となって、前記排他的論理和の出力はLowレベル(0)となる。したがって位相差が大きければ大きいほど排他的論理和の出力は、時系列上でHighレベル(1)となる時間が多くなるため、CR回路(R45、C40)で平滑されてコンデンサ(C40)に蓄えられる電圧(Vsd)はアナログ量となって現在の位相差信号(Sfr)を表現することができる。
【0070】
これにより演算比較手段(Uz)は、位相差信号の大小を検出することができ、もし前記共振部で共振状態である場合は、前記電圧位相信号(Sfv)と前記電流位相信号(Sfi)は同位相となるため、前記位相差信号(Sfr)の前記電圧(Vsd)は略ゼロになるように近づく。生成された前記位相差信号(Sfr)は演算比較手段(Uz)に入力されるが、演算比較手段(Uz)は、アナログ量をデジタル化することを前提にマイクロプロセッサーを用いているがアナログーデジタル変換器を一旦用いても良い。または、マイクロプロセッサーを用いずに、アナログ信号をそのまま制御回路として運用しても良い。
【0071】
図5は同調制御部(Us)の回路の他の例を簡略化して示すブロック図である。図4に示す回路では電圧波形と電流波形の位相を検出する方式を用いているが、図5に示す回路ではより簡略化された形態となっている。即ちこの同調制御部(Us)は、前記共振部の前記インダクタ(Lm)に印加される電圧を検出するため、インダクタ(Lm)の2次巻き線間の電圧を検出する電圧検出手段(Uv’)を具備している。仮に前記共振部が共振状態に近ければ、前記電圧検出手段(Uv’)で得た信号は略Sin波信号になるため前記インダクタ(Lm)の2次巻き線間に発生する電圧は最も振幅が大きい波形となる。この2次巻き線で発生した電圧は、ダイオード(D50、D51、D52、D53)により整流され、CR回路(R50、C50)で平滑されてコンデンサ(C50)に蓄えられる。コンデンサ(C50)に蓄えられる電圧(Vse)は、アナログ量となって現在の共振電圧信号(Su)を表現することができ、演算比較手段(Uz)に入力される。この例ではダイオード(D50、D51、D52、D53)による単純全波整流方式を用いているが、オペアンプなどで構成したピークホールド回路を用いても良い。
【0072】
図6は同調制御部(Us)の演算比較手段(Uz)と周期駆動回路(Ug)とインバータ(Uj)の部分を簡略化して示すブロック図である。図4で説明した同調制御部(Us)の形態においては、前記位相差信号(Sfr)を受けて前記インバータ(Uj)の駆動周波数を前記共振部の共振周波数に同調している条件、つまり前記位相差信号(Sfr)が最も小さい場合を共振条件として検出し、前記演算比較手段(Uz)は、周波数制御信号(Sfg)の値を決定する。そして前記インバータ(Uj)上の前記スイッチング素子(Q1、Q2)を駆動するゲート回路(Ug)に前記周波数制御信号(Sfg)を伝達し、前記スイッチング素子(Q1、Q2)を動作させる。この例では演算比較手段(Uz)としてマイクロコンピュータ(MPU)を使用しているが、マイクロコンピュータ(MPU)から直接に高い周波数の信号が出力できない場合はマイクロコンピュータ(MPU)からDA出力を行い、Vcoを介して前記周波数制御信号(Sfg)を生成しても良いし、PLLシンセサイザ等の技術を導入し具現化しても構わない。
【0073】
図5で説明した同調制御部(Us)の形態の場合、前記共振電圧信号(Su)を受けて前記インバータ(Uj)の駆動周波数を前記共振部の共振周波数に同調している条件、つまり前記共振電圧信号(Su)の前記電圧(Vse)が最も大きい場合を共振条件として検出し、前記演算比較手段(Uz)は、前記周波数制御信号(Sfg)の値を決定する。そして前記インバータ(Uj)上の前記スイッチング素子(Q1、Q2)を駆動する前記ゲート回路(Ug)に前記周波数制御信号(Sfg)を伝達し、前記スイッチング素子(Q1、Q2)を動作させる。
【0074】
尚、この実施形態にかかる高濃度オゾン生成用の放電セル放電回路の場合においては、概ね、前記周波数制御信号(Sfg)は10kHz〜40kHzの範囲で設定されるのが通常である。
【0075】
次に、常時共振周波数近傍で動作する自動同調動作を図4の回路図を用いた場合について、タイムチャート図である図7と、動作フローチャートである図8を用いて説明する。
【0076】
ここでまず図7のタイムチャートで説明する。前記周波数制御信号(Sfg)は、上限周波数(Fmax)から下限周波数(Fmin)に向かいスイッチング周波数を掃引する。初期時点で前記周波数制御信号(Sfg)は、上限周波数(Fmax)であるため、目標として共振周波数とは大きく離れているため前記位相差信号(Sfr)の前記電圧(Vsd)は大きい値となっている。
【0077】
掃引動作を行い続ければ、一時的に前記共振周波数を通過することになるが、時点(t1)までの期間においては、前記共振周波数に近づいていくため、前記位相差信号(Sfr)の前記電圧(Vsd)が減少していくことを演算比較手段(Uz)が検知している。そして、前記周波数制御信号(Sfg)を下限周波数(Fmin)に向かい引き続いて掃引させれば、前記周波数制御信号(Sfg)は前記共振周波数から外れていき、前記電圧(Vsd)は増加する。演算比較手段(Uz)は、時点(t2)にて前記電圧(Vsd)が増加していることを検出し共振周波数を通過してしまったことを認識する。つまり、前記周波数制御信号(Sfg)は最適点よりもやや低い周波数であることから、次に、前記周波数制御信号(Sfg)を増加させる方向に動作させるべく制御を開始する。すると、時点(t3)までは、共振周波数に近づいていくため、前記位相差信号(Sfr)の前記電圧(Vsd)が減少していくことを演算比較手段(Uz)が検知し、前記周波数制御信号(Sfg)の増加を継続する。時点(t4)のおいては再度転じて減少させる。この一連の動作を繰り返すことで常に位相差信号電圧(Vsd)が小さくなる方向に制御され、範囲指定された周波数帯域(Δf)にて安定し、すなわち常に共振周波数に向かい続けることができる。
【0078】
次に、図7で説明した自動同調動作を実施するための演算比較手段(Uz)における処理方法を、図8の動作フロー図を用いて説明する。先ずブロック(B1)にて制御開始条件(CND1)がオンしている場合において、例えば電源運転中であるかどうかを判別し前記周波数制御信号(Sfg)の制御を行うもので、以降は制御開始条件(CND1)はオンであるものとして説明する。
【0079】
演算比較手段(Uz)のMPU(マイクロコンピュータ)は、ブロック(B2)にて前記位相差信号(Sfr)の前記電圧(Vsd)のデータを取得、所謂AD変換を行い最新の値(NOW_AD)を取得する。前記電圧位相信号(Sfv)と前記電流位相信号(Sfi)の位相差が無ければ前記電圧(Vsd)は極めて小さいはずであるため、ブロック(B3)にてAD変換された前記電圧(Vsd)が所定の設定値(k)より小さい場合は、前記周波数制御信号(Sfg)の出力量を更新する必要がないため、現在のブリッジの周波数を保持する。しかしながら、前記電圧(Vsd)が所定の設定値(k)より大きい場合は、ブロック(B4)にてAD変換された前記電圧(Vsd)と所定の設定値(m)とを比較する。つまり位相差の絶対値が、設定値(m)よりも大きい場合、前記周波数制御信号(Sfg)の周波数変調の操作量を大きくするべく以降はブロック(B7)で処理される。前記電圧(Vsd)が設定値(k)より大きく、設定値(m)より小さい範囲であれば、前記周波数制御信号(Sfg)の周波数変調の操作量を小さくするべく以降はブロック(B5)で処理される。この一連の処理を繰り返し、常に共振周波数近傍を保持させることを目的としている。
【0080】
次に前記電圧(Vsd)が設定値(k)から設定値(m)の間の場合について説明する。図8の動作ルーチンは例えば10ms程度毎に実施されているとする場合、一つ前に実施した前記電圧(Vsd)のAD変換の値、つまり10ms前の本値を記憶しておくようブロック(B13)を配置する。したがって、ブロック(B5)は、前回の値(OLD_AD)と最新の値(NOW_AD)の比較が可能となり、仮に、OLD_AD<NOW_ADとなる場合は、前回に比して前記電圧(Vsd)は増加している方向であることを意味するので前記共振周波数から離れていると判断できる。この場合ブロック(B9)にて、前記周波数制御信号(Sfg)が現在増加方向であれば前記周波数制御信号(Sfg)を減少方向に、逆に前記周波数制御信号(Sfg)が現在減少方向であれば前記周波数制御信号(Sfg)を増加方向にするべく、逆方向、反転させる動作を行うための増減方向決定フラグ(F_ALLOW)を反転(Exclusive−OR)させる。これは図7で説明した例を用いれば、時点(t1)にて前記電圧(Vsd)が増加していることを検出し共振周波数を通過してしまったことを認識した際は前記周波数制御信号(Sfg)の増減を時点(t2)にて反転していた動作と同義である。
【0081】
そして増減方向決定フラグ(F_ALLOW)により前記周波数制御信号(Sfg)が減少方向となる場合はブロック(B12)にて現在の操作量に対し−1を増加させるし、現在増加方向となる場合はブロック(B11)にて現在の操作量に対し+1を増加させる。
【0082】
逆に、ブロック(B5)にてOLD_AD>NOW_ADとなる場合は、前回に比して前記電圧(Vsd)は減少している方向であることを意味するので前記周波数制御信号(Sfg)は前記共振周波数に近づいていると判断できるので、前回設定された増減方向決定フラグ(F_ALLOW)に従い、つまり増減方向決定フラグ(F_ALLOW)の反転処理を行うことなく、増減方向を維持する。
【0083】
尚、前記電圧(Vsd)値が設定値(k)から設定値(m)の間であれば、ここで説明した前記周波数制御信号(Sfg)の周波数変調の操作量を小さくするためブロック(B11、B12)では+1及び−1つづと小さい変化量で増減を行う。
【0084】
ブロック(B4)にて前記電圧(Vsd)値が設定値(m)より大きい、つまり前記位相差が大きいと判断された場合はブロック(B7)に移行する。ブロック(B7、B8、B10)の動作は前記ブロック(B5、B6、B9)と同意となるが、前記周波数制御信号(Sfg)の周波数変調の操作量を大きくするため、ブロック(B13,B14)では例えば+10及び−10ずつと大きい変化量で前記周波数制御信号(Sfg)量の増減を行う。
【0085】
なおここでは周波数制御信号(Sfg)の増減の量として+10、−10,+1、−1と表記しているがこれは説明の便宜性からの設定値であり、実際はこの限りではなく、実際の値は実験を通して調整される値になる。
【0086】
尚、本発明における実施形態の一つである高濃度オゾン生成用放電セルの場合においては、概ね、前記周波数制御信号(Sfg)は10kHz〜40kHzの範囲を4000分解能で制御、設定され、一方の位相差信号電圧(Vsd)は1000分解能で制御するのが通常であるが、その限りではない。
【0087】
このようにフィードバックを常に行うことにより、常に共振周波数近傍での運転が行なえ、たとえ、前記放電セル(Ds)の圧力や温度が変化することで、前記放電セル(Ds)の放電電圧が変化したり、前記寄生容量(Cm)の容量値が変化したりして、共振周波数が変わったとしても、これに追従してインバータ(Uj)の駆動周波数も変化した共振周波数近傍に変化するので、最良のオゾン生成効率を常時満足できる。
【0088】
以上、図7,図8において説明したように、同調制御部(Us)による同調動作は、前記周波数制御信号(Sfg)を、上限周波数から開始して下限周波数に向かって掃引動作を行い、前記共振位相差信号(Sfr)レベルが最良の共振状態を得た状態での前記周波数制御信号(Sfg)を記憶すると共に、その後、前記共振部の共振周波数に対応する前記周波数制御信号(Sfg)近傍の、前記上限周波数から下限周波数に対応する範囲よりも狭い範囲において掃引動作を行うことで、常時、前記共振部をその共振周波数近傍で動作させるようにしている。なお図5を用いた場合は、前記同調制御部(Us)による同調動作は、前記周波数制御信号(Sfg)を、上限周波数から開始して下限周波数に向かって掃引動作を行い、前記共振電圧信号(Su)レベルが最良の共振状態を得た状態での前記周波数制御信号(Sfg)を記憶すると共に、その後、前記共振部の共振周波数に対応する前記共振電圧信号(Su)近傍の、前記上限周波数から下限周波数に対応する範囲よりも狭い範囲において掃引動作を行うことで、常時、前記共振部を共振周波数近傍で動作させることとなる。
【0089】
図9は前記共振部の周波数特性を示す図であり、上限周波数(Fmax)から下限周波数(Fmin)に向かってスイッチング周波数を掃引する理由を説明するための図である。即ち図9にあるように、Qが一番高い部分が共振状態であり、このときの共振周波数(f0)近傍を常に保持するようにつまりΔfに入るように周波数制御信号(Sfg)の周波数が制御される。
【0090】
上限から掃引を行なわなければ理由として、奇数次共振による共振モードが上げられる。これは下限周波数(Fmin)から上限周波数(Fmax)に向かって掃引した場合、例えば3次共振が発生しているところで、共振状態と認識してしまう恐れがあり、この場合は、最良の放電条件とは言えなくなるからである。そのため上限周波数(Fmax)より開始することが最適である。これら上記の制御シーケンスは煩雑となるためマイクロコンピュータを使って制御することが好適である。
【0091】
また、放電セル(Ds)を負荷として本発明の回路形態である図1にて実施した際の実験波形である図10を用いて説明する。同図において、(a)は前記放電セル(Ds)両端への印加電圧波形、(b)は前記放電セル(Ds)への電流波形、(c)はトランス1次側の電圧波形、(d)はトランス1次側に流れる電流波形であり、波形より下記の通り結果が得られた。
インバータ周波数: 24.9kHz
放電セル出力電流: 0.9Arms
放電セル出力電圧: 4.8kVp―p
この実験例でのその他のパラメータとしては以下の通りである。
供給電力: 略200W
Lm: 11.5mH
放電セル: 荏原製作所製2Cells
Tr巻線比率: Pri:Sec/1:8
放電セルへの酸素供給量4L/M
放電セルへの窒素添加量32ccm
オゾン生成量:78ppm
【0092】
放電セル(Ds)両端への印加電圧波形(a)と前記放電セル(Ds)への電流波形(b)を見ると、前記放電セル(Ds)両端への印加電圧値が最大の時、前記放電セル(Ds)への電流値は0となっていることから共振条件が得られていることが理解できる。さらに、この共振状態を維持するため、前記スイッチング素子(Q1、Q2)が、前記放電セル(Ds)への電流値が0となった時点(ti)でインバート動作し本共振をアシストしていることがトランス1次側の電圧波形(c)から知ることができる。この時点(ti)、トランス1次側の電圧波形からインバータ(Uj)に流れる電流は略0となっており、ゼロ電圧(電流)スイッチングを達成し、スイッチング素子(Q1、Q2)に対してストレスを与えずに安定した動作波形が得られている。昇圧トランス(Tr)に存在するリーケージインダクタンスがあっても、そのL値を吸収した共振系となり、ノイズという観点からも改善された。
【0093】
図13で説明したように、インバータ(Uj)の駆動周波数を無理に共振周波数(f0)に合わせれば、電力を制限する手段がないために過剰な電圧が放電セル(Ds)に印加されるため、不本意ながらインバータ(Uj)の駆動周波数を共振周波数(f0)から外して駆動していた。そのためトランス1次側の電圧波形とトランス1次側に流れる電流波形の位相が異なっており、力率の面でも最良とは言うことができなかった。
【0094】
ここで電力を説明のため簡単に
W=V×I×cosφ
と表現すれば、インバータ(Uj)の駆動周波数を常時共振状態とした本発明では前記トランス1次側の電流及び電圧波形の位相が一致していることになるのでcosφ=1となるが、位相が異なっていればφが増加するため、cosφは1以下となる。その結果、同じ電力を出力する場合においては、位相が一致している条件に比してVとIを増加させなければならないことから、本来の電流値よりも大きいピーク値が必要となる。これは、例えばトランスにとっては、銅損が増加するばかりでなく、鉄損も増加するため、トランスの巻き線の径を増大させ、トランス自体のサイズもより大型化する方向になる。この問題からも本発明により最適の電圧と電流を供給するためトランスにとっても小型軽量化、コスト低減に寄与することが可能である。
【0095】
以上説明したように、本実施形態によれば、本発明の主要な目的である、電力供給部(Uw)を使い安定した条件の元で同調制御部(Us)の動作により、必要最小限の投入電力で前記放電セル(Ds)の印加電圧が最高の効果が得られるため、常時、最良の効率でオゾン生成が可能になると共に、前記インバータ(Uj)上のスイッチング素子が不必要に共振外れを起こさないため前記インバータ(Uj)のスイッチング素子(Q1、Q2)のストレスが低減すること、さらには副次的効果として放射ノイズ及び伝導ノイズが抑制されることを可能とした。つまりは、従来に比して、少ない消費電力で同量のオゾンを生成することが可能となり、オゾン生成装置のランニングコストの低減さらには、省エネルギー、地球環境問題にも寄与するものであり、最良の形態での放電回路を提供することができた。
【0096】
さて、次に図2に記載の前記電力供給部(Uw)の制御を行う前記電力制御回路(Uwc)上のマイクロコンピュータ(MPU)と、図4〜図6記載の前記周波数制御信号(Sfg)を制御する前記演算比較手段(Uz)上のマイクロコンピュータ(MPU)とを一つのマイクロコンピュータ(MPU)で構成した場合について説明する。例えば、このマイクロコンピュータは16bitタイマを2本装備している8bit演算子であるマイクロコンピュータを使うことができる。1本目のタイマは前記電力制御回路(Uwc)のため、マイクロコンピュータよりPWM信号出力として使うことで、図2で説明したように定電力制御を行うべく図2記載の前記電力供給部(Uw)の前記出力電圧(VO)を測定して目標電流を決定しゲート回路(GQ20)にその信号を出力し電力制御を行うことができる。そして、もう一本のタイマは、方形波出力として使うことにより、例えば、図6で説明した前記演算比較手段(Uz)の前記周波数制御信号(Sfg)出力に割り当てられ、周波数可変とした信号出力を生成することが可能となり、前述した共振部の共振周波数制御を行うことができる。16bitクラスのタイマを使う理由としては、上記2つの制御を高い精度で制御することができるからである。
【0097】
前記電力制御回路(Uwc)と前記演算比較手段(Uz)の機能の全部を、仮にソフトウエアを介在せずにハード回路だけで構成した場合は膨大な回路量となりコスト上の観点から非現実的であり、このため前記電力制御回路(Uwc)及び前記演算比較手段(Uz)の機能の全部またはその一部をマイクロコンピュータで実施することが好適である。当然、前記電力制御回路(Uwc)上のマイクロコンピュータ(MPU)と前記演算比較手段(Uz)上のマイクロコンピュータ(MPU)とを別々のマイクロコンピュータとしても構わないが、1つのマイクロコンユータとして統合することで、最終的に安価で小型な制御システムを提供することができる。さらに、デジタルシグナルプロセッサー(DSP)を用いた場合、特に、前記電力制御回路(Uwc)と前記電力供給部(Uw)における周辺回路をより一層簡略化し、省スペース化、低コスト化することが可能である。
【0098】
次に図11を用いて、前記電力制御回路(Uwc)の制御と前記演算比較手段(Uz)の制御とを1つのマイクロコンピュータとして統合した、放電セル放電回路を制御するソフトウエア動作を概念的に現した動作フローチャートである図8を用いて、本発明を実施するための形態について説明する。
【0099】
電源回路をデジタル処理にてフィードバックを行う際は制御フィードバック時間にばらつきが生じないよう定時的に前記電力制御と前記周波数制御信号(Sfg)制御を行う。そのためブロック(B20)は、タイマ(TIMER)が所望の時間(Lt)が経過する毎にブロック(B21)以降に進むように制限され、例えば、本ソフトウエアのループ(LOOP=Lt)は実験上から2msと設定されている。ブロック(B21)は、前述したように制御の必要なAD変換処理やデジタル入力の有無の処理など行う。
【0100】
これ以降の2重ループ制御について説明する。前述したように前記電力制御回路(Uwc)の制御と前記演算比較手段(Uz)上の制御機能とを実施するが、その各々の実施タイミングは必ずしも一致させる必要はない。
【0101】
前記電力制御回路(Uwc)の制御を実施するタイミングを計るためブロック(B22)にカウンター1(COUNTER1)を配置し所定の時間、例えば2msを設定、つまり設定値(N)は、N=1と設定でき、2ms毎に放電電源の出力電力のフィードバック制御をブロック(B23)で実施する。これにより前記電力制御回路(Uwc)は16ビットで表現した電流制限レベルを1LSBづつ増減しつつ、所望の出力電力値に安定させる。
【0102】
同様に前記演算比較手段(Uz)の制御を実施するタイミングを計るためブロック(B24)にカウンター2(COUNTER2)を配置し所定の時間、例えば10msを設定、つまり設定値(M)は、M=5と設定でき、10ms毎に前記周波数制御信号(Sfg)制御をブロック(B25)で実施し、結果的にインバータ(Uj)の発振周波数を変調させる。例えば前記ブロック(B25)の詳細は説明した図8で処理される一連の動作を意味している。
【0103】
この2重ループ制御が必要な理由を以下に記す。即ち、本装置の使用状態において電力指令値は常に一定ではないこと、発生させるオゾン量を変調させる場合がある為であること、その為電力指令とインバータ(Uj)の周波数指令をそれぞれ制御する必要があるが電力指令値を変化させると共振周波数も変化する為それぞれの制御周期(τx,τz)に時間差を設ける事が必要であること、が挙げられる。そして前記共振周波数は、何よりも放電セル(Ds)は投入される電力に依存してその共振周波数が変化してしまうことから、インバータ(Uj)の制御周期より電力制御周期の方が早い方が好適であり、つまりM>Nである条件が最適である。しかしながらM>Nの条件が極大すると、周波数変調に遅れが出て共振周波数を外れてしまい、必要な電力が投入されなくなり、前記電力制御回路(Uwc)は、前記電力供給部(Uw)が電力を投入すべく出力電圧を上昇すべく制御し、その後に周波数変調により共振周波数とが一致し、上昇させ過ぎた出力電圧で電力が投入され過剰な電力が投入されてしまうことを繰り返す異常発信のような状況が懸念される。そのため、制御的に異常発振など安定性を欠くことなく制御できるよう、実験的に導き出された値では、N:M=1:5の値で具体的条件が得られた。
【0104】
即ちこの実施形態では、規定の電力を供給するための前記電力供給部(Uw)を制御する前記電力制御回路(Uwc)の制御周期(τx)と、前記周波数制御信号(Sfg)の値を決定して前記インバータ(Uj)の駆動周波数をフィードバック制御するように動作する前記演算比較手段(Uz)の制御周期(τz)とが、n:m(n≠m、特にn<m)の関係により時間的頻度差をもって制御されている。
【0105】
次に、前記電力供給部(Uw)の出力部である前記出力電流(IO)、前記出力電力(WO)におけるタイムチャートである図12を用いて前記放電セル(Ds)への電力投入シーケンスについて説明する。前記放電セル(Ds)の放電初期状態に対しては、前記放電セル(Ds)に急激な温度上昇や、前記放電セル(Ds)への過剰な供給電力のオーバーシュートや前記放電セル(Ds)に印加される電流または電圧波形が規定以上の突出状態となることを避けるべく制御されることが好適である。ここでは、図12に従い以下のように制御を行うことにしている。
・時点(tA)にて放電を開始する。
・最大電流上限値を徐々に0から最大制限電流値(Imax)へ制御する。
・最大電流上限値が最大制限電流値(Imax)に到達するまでの時点(tB)を規定する。
・時点(tC)以降は定電力領域で通常の運転状態に入る。
【0106】
ここでは、前記時間(tB)は放電開始より略60秒と設定して前記出力電流(IO)の最大電流上限値を徐々に緩和していく方式であるが前記電力供給部(Uw)の前記出力電圧(VO)を序所に上げるようにしていく方式としても良く、また設定する時間(tB−tA)は任意に設定して良く、例えば5秒〜120秒間としても良い。すなわち、前記時点(tA)から前記時点(tB)への移行期間において前記電力供給部(Uw)の出力を徐々に立ち上げる所謂ソフトスタート機能によって放電セル(Ds)の保護と寿命に貢献することができ、時として発生する放電セル(Ds)の破壊防止に寄与しオゾン生成効率を高く保ちながら安全に放電セル(Ds)を起動させることが可能である。これらは、例えば、前記電力制御回路(Uwc)上のマイクロコンピュータにおけるソフウエアで簡単に実現することができる。このソフトスタート方式は前述してきた本発明の主目的が前提となって初めて実現できるものであり前記電力供給部(Uw)を配置した本発明の利点を享受できるものと言える。
【0107】
即ちこの実施形態では、放電を開始する始動初期において前記同調制御部(Us)は前記インバータ(Uj)の駆動周波数を上限周波数から下限周波数に向けて掃引動作を行うとともに、前記電力制御回路(Uwc)は前記電力供給部(Uw)の出力電力(WO)、または、前記電力供給部(Uw)の出力電圧(VO)、または、前記電力供給部(Uw)の出力電流(IO)を低く設定して徐々に定格に移行していくこととしている。
【0108】
なお例えば共振インダクタ(Lm)の電圧信号を見て、それが前記放電セル(Ds)を破壊してしまうような電圧値以上である場合は、例え位相差があったとしても、インバータ周波数掃引動作の周波数を下げて、あえて共振からずらし、放電セル(Ds)への印加電圧を下げて、放電セル(Ds)への過剰電圧印加からの保護手段としても良い。
【0109】
次に、放電開始のタイミングについて説明する。前記インバータ(Uj)は位相変調を行うため、放電セルにとってインバータ(Uj)が最適な共振周波数となるまである一定の時間を要することが挙げられる。一般的に言って、放電開始のトリガーは放電回路の外部より、例えばフォトカプラ等を介して信号として与えられ、電力供給部(Uw)とインバータ(Uj)のインバータ動作がスタートするが、この信号入力以前から前記インバータ(Uj)のみを駆動させておく方式が提案される。当然、前記電力供給部(Uw)は、停止したままの状態であるため、給電そのものは停止しているが、例えば、制御を行うための制御電源からインバータ部や出力電圧信号(Sv)部から微弱な電気が流出しているため、この微弱な漏洩電流を源とし前記インバータ(Uj)を駆動する。これを元に電流位相信号(Sfi)、電圧位相信号(Sfv)は検出できるため、同調すべく周波数掃引動作を行えば、概ねの共振周波数を検出することができる。ただし、この程度では放電セル(Ds)が放電したり、オゾンを生成したりすることがない領域で試される。このように、放電開始のトリガーが入る以前にインバータ(Uj)の駆動周波数に目処を付けて運転している為、検出時間が省かれることにより、放電開始指令後は素早いオゾン生成の立ち上がりを期待できる。
【0110】
また、前記インバータ(Uj)は実際に電力が供給される以前から共振周波数近傍で運転をしているため、不要に長い時間、共振周波数から外れた状態で前記インバータ(Uj)を駆動する必要がなくなり、放電回路の破壊リスク低減に寄与することが可能になる。何となれば、インバータは始動初期からゼロ電流スイッチングとなるからである。
【0111】
〔放電セル放電回路の第二実施形態〕
図20は本発明の第二実施形態にかかる放電セル放電回路を簡略化して示すブロック図である。なお以下の第二実施形態の説明において、第一実施形態と同一部分については同一符号を付している。図20に示す放電セル放電回路においても、放電セル(Ds)への電力の供給元となる商用交流電源、例えば3相電源は、ノード(R、S、T)より整流部(Ur)に接続される。前記整流部(Ur)は複数のダイオードを備えていて全波整流を行い、規定された電力を供給するための電力制御回路(Uwc)を備えた電力供給部(Uw)にてDC出力となる。当然のことながら電力供給部(Uw)は内部に平滑コンデンサを備えているものとする。インバータ(Uj)は、前記DC出力を交流化し、この交流電力は、昇圧トランス(Tr)を介して高電圧に変換され、前記昇圧トランス(Tr)の2次巻線側に配置されたインダクタ(Lm)を介してサファイア等の誘電体を介在させた放電セル(Ds)に印加される。
【0112】
同調制御部(Us)は、前記放電セル(Ds)の交流電圧位相と前記放電セル(Ds)への交流電流位相とを取り込み、位相差信号を生成しこの位相差が最も少ない状態にすべく前記インバータ(Uj)を駆動する駆動回路(Ug)にパルス信号として駆動信号を出力しフィードバック制御を行う。交流電圧位相は前記昇圧トランス(Tr)に更に巻き線を追加しても良いが、本実施形態では、前記インバータ(Uj)を駆動する周波数制御信号(Sfg)を用いている。これは巻き線をわざわざ用意する必要もなく、且つ、前記昇圧トランス(Tr)に印可される位相信号と同意であるからである。また交流電流位相は前記昇圧トランス(Tr)に流れる電流とカレントトランスを用いて受けている。
【0113】
インバータ(Uj)上に配置されたスイッチング素子(Q1、Q2、Q3、Q4)の動作について説明すると、スイッチング素子(Q1、Q2)の各々のDUTY比は略50%とし、前記スイッチング素子(Q1、Q2)各々のオン時間の間、つまり両スイッチング素子(Q1、Q2)ともにオフとなる適当な極短い期間を設定した上でこれを交互に動作させる。本動作についてはスイッチング素子(Q3、Q4)についても同様である。フルブリッジインバータは、スイッチング素子(Q1、Q4)のペアとスイッチング素子(Q2、Q3)のペアの対角上に配置されたスイッチング素子が交互にオンオフ動作するものである。前記インバータ(Uj)の駆動周波数は、後述する共振周波数に合うようにフィードバック機能を備えた周波数変調を行うこととしている。
【0114】
前記インバータ(Uj)の駆動周波数は常時、放電セル(Ds)の寄生容量(Cm)成分とインダクタ(Lm)とで構成されるトランス(Tr)の2次側の共振部の共振周波数近傍となるように制御する。何となれば、オゾン発生用の放電セル(Ds)において、共振周波数での高電圧の印加時は、前記電力供給部(Uw)が必要最低限の供給電力で、放電セル(Ds)へ最も高い電圧を印加できることで、オゾン生成が高効率で行われるからである。従って放電セル(Ds)の持つ前記寄生容量(Cm)成分と前記放電セル(Ds)と直列に接続された前記インダクタ(Lm)とで構成された共振部のもつ共振周波数を利用し、その周波数で駆動して高電圧を印加することが好適である。
【0115】
以上のように、インバータ(Uj)への供給電力を制御することでオゾン濃度を制御し、同時にインバータ(Uj)の駆動周波数は常時放電セル(Ds)における共振周波数近傍となるように制御したので、放電セル(Ds)が主放電中にあって、オゾン濃度の調整が行われる場合であっても、最良のオゾン生成効率を享受することができる。
【0116】
尚、本実施形態において前記インバータ(Uj)は、スイッチング素子(Q1、Q2、Q3、Q4)を4つ使ったフルブリッジ式としているが、スイッチング素子を2つ減らし、図13で示したハーフブリッジ方式とした回路形態とし、駆動周波数を共振周波数とした上で対極にあるスイッチング素子をDuty比略50%で、ペアとして交互に動作する形態としても構わない。
【0117】
尚、オゾン濃度を調整する場合においては、前記電力供給部(Uw)を制御する前記電力制御回路(Uwc)が、前記インバータ(Uj)への供給電力を制御することによりオゾン濃度を制御する。
【0118】
本実施形態において整流部(Ur)は、ダイオードによる整流回路を用いて説明しているが、力率改善回路であるPFCの技術や昇圧バックコンバータや倍電圧整流回路を用いて概ね300V〜400VのDC電圧を生成しても良く、入力電源に関しても3相電源に限定するものでなく、この部分における回路方式は本発明の本質とするところではない。
【0119】
本実施形態において、電力供給部(Uw)を用いた結果、電源の入力に対しては高調波が著しく低減する効果が得られた。従来の回路方式においては、ノード(R、S、T)より整流部(Ur)に接続され、コンデンサに接続されていた。このコンデンサは容量が大きい電解コンデンサが用いられていたこと、つまりコンデンサインプット形式であったことで高い高調波電流が入力電源ラインに流れていた。本実施形態では、電力供給部(Uw)にこれを抑制する機能を付加したものである。したがって入力電流のピーク値を小さくできたことから、本回路を接続せしめる電力設備の電源容量を低減できることになる。
【0120】
次に電力供給部(Uw)と電力制御回路(Uwc)の構成は前記図2を用いて説明した第一実施形態と同じなので、その説明は省略する。
【0121】
次に図21は同調制御部(Us)の回路の一例を簡略化して示すブロック図である。同図に示す同調制御部(Us)においては、前記放電セル(Ds)と前記インダクタ(Lm)とで構成される前記共振部に流れる電流位相検出手段(Ui)としてカレントトランスを用いて電流波形を検出する。ここでは前記昇圧トランス(Tr)の1次側巻き線の電流を測定することを想定している。前記共振部に流れる電圧位相検出手段(Uv)として前記昇圧トランス(Tr)に電圧を印加している前記インバータ(Uj)を操作する周波数制御信号(Sfg)を利用し電圧波形を検出している。以下その詳細について説明する。
【0122】
まず回路用電源として例えば、20Vと5Vの2系統の電源を用意する。位相検出手段(Ui)の巻き線部からの2本の線の片側は前記5Vラインに接続されている。電流波形の信号は、5Vを中心として所謂Sin波となり検出されており、コンパレータ(A41)の電源を20Vラインに接続し、電圧波形または電流波形をコンパレータ入力端子に接続し、もう一方の入力端子を前記5Vラインに接続している。そのため、コンパレータ(A41)からの出力はDUTY比50%の方形波となり、電流位相信号(Sfi)が生成される。電圧位相検出手段(Uv)は、前記昇圧トランス(Tr)に電圧を印加している前記インバータ(Uj)を操作する周波数制御信号(Sfg)がマイクロコンピュータ(MPU)から出力されているため、この信号を電圧位相信号(Sfv)に利用している。ただし、周波数制御信号(Sfg)は周期駆動回路(Ug)を介して前記インバータ(Uj)を構成するスイッチング素子までに信号が伝達するまでに遅れ時間が存在するため、これを考慮し周波数制御信号(Sfg)を一旦、バッファ(Ub)で受けてCRの時定数回路(C41、R46)で遅らせた信号を電圧位相信号(Sfv)としている。
【0123】
マイクロコンピュータ(MPU)は、後述するように前記インバータ(Uj)の出力電流と出力電圧の位相差を確認しつつ、前記インバータ(Uj)の駆動周波数をフィードバックするため、周波数制御信号(Sfg)をマイクロコンピュータ(MPU)から出力している。この実施形態にかかる高濃度オゾン生成用の放電セル放電回路の場合においては、概ね、前記周波数制御信号(Sfg)は10kHz〜40kHzの範囲で制御される方形波が出力されている。
【0124】
前記方形波に変換された電流位相信号(Sfi)と電圧位相信号(Sfv)は、両者とも0−5Vレベルの位相信号なので、両者を比較すればその位相差を計量できるから、比較部(Uf)として排他的論理和(Exclusive−OR)を利用して位相差量を計測することができる。
【0125】
仮に位相差が存在する場合、例えば、前記電圧位相信号(Sfv)がLowレベル(0)、前記コンパレータ(A41)からの前記電流位相信号(Sfi)がHighレベル(1)となって前記排他的論理和の出力はHighレベル(1)となる。逆に位相差が存在しない場合、例えば、前記電圧位相信号(Sfv)がHighレベル(1)、前記コンパレータ(A41)からの前記電流位相信号(Sfi)がHighレベル(1)となって、前記排他的論理和の出力はLowレベル(0)となる。したがって位相差が大きければ大きいほど排他的論理和の出力は、時系列上でHighレベル(1)となる時間が多くなるため、CR回路(R45、C40)で平滑されてコンデンサ(C40)に蓄えられる電圧(Vsd)はアナログ量となって現在の位相差信号(Sfr)を電圧(Vsd)として表現することができる。
【0126】
これによりマイクロコンピュータ(MPU)は、位相差信号の大小を検出することができ、もし前記共振部で共振状態である場合は、前記電圧位相信号(Sfv)と前記電流位相信号(Sfi)は同位相となるため、前記位相差信号(Sfr)の前記電圧(Vsd)は略ゼロになるように近づく。生成された前記位相差信号(Sfr)はマイクロコンピュータ(MPU)に入力されるが、マイクロコンピュータ(MPU)は、アナログ量をデジタル化することを前提にマイクロプロセッサーを用いているがアナログーデジタル変換器を一旦用いても良い。または、マイクロプロセッサーを用いずに、アナログ信号をそのまま制御回路として運用しても良い。
【0127】
次に、常時共振周波数近傍で動作する自動同調動作を図21の回路図を用いた場合についてのタイムチャートや動作フローとこれにより享受できる利点については第一実施形態と同様であり、その説明は省略する。
【0128】
これらのようにフィードバックを常に行うことにより、常に共振周波数近傍での運転が行なえ、たとえ、前記放電セル(Ds)の圧力や温度が変化することで、前記放電セル(Ds)の放電電圧が変化したり、前記寄生容量(Cm)の容量値が変化したりして、共振周波数が変わったとしても、これに追従してインバータ(Uj)の駆動周波数も変化した共振周波数近傍に変化するので、最良のオゾン生成効率を常時満足できる。
【0129】
また、放電セル(Ds)を負荷として本発明の回路形態である図20にて実施した際の実験波形は、前記図10と同様であった。
【0130】
実際に本願出願人の放電セルを用いて実験を行った際の条件と得られたオゾン濃度を以下に記載する。
インバータ周波数: 略23kHz
インバータ出力電圧:略150V
インバータ出力電力:略110W
放電セル出力電圧: 略7.4kVp―p
放電セル: 荏原製作所製 0.5A−13型セル+コンデンサ負荷1nF
放電セルへの酸素供給量0.5L/M
放電セルへの窒素添加量4ccm
オゾン生成量:160g/Nm3
共振インダクタ:34mH
高圧トランス:1次13ターン/2次19ターン/フェライトコア
【0131】
前記したコンデンサ負荷について記載しておく。前記コンデンサ負荷は、電気回路上は放電セルと並列に接続されるコンデンサである。共振周波数、つまり前記インバータ(Uj)の駆動周波数を23kHz程度とすべく設計目標にした場合、仮に前記コンデンサを挿入しない際は極端に大きなL値が必要な、且つコストやサイズの観点から製品上適さない共振インダクタ(Lm)となってしまう。この問題を鑑み、あえて安価で小型なコンデンサ負荷を放電セル(Ds)に並列に接続して前記寄生容量(Cm)を大きくすることで、共振インダクタ(Lm)を適切なサイズとすることができた。しかしながら、十分な寄生容量を持った放電セルを選択した場合においては前記コンデンサ負荷を付加する必要はない。
【0132】
さて、オゾン生成用放電セル(Ds)の特徴として、放電セル(Ds)に印加する電圧はサイン波で印加されているが、実際の放電が生じているときは、このサイン波の尖塔部分近辺となる。そのため、前記インバータ(Uj)の駆動周波数が高いほうがオゾン生成濃度は上昇する。仮に同じオゾン濃度を得るために前記駆動周波数を上げた場合は、放電セル(Ds)に印加する電圧をその分、低くできる利点がある。前記駆動周波数は共振インダクタ(Lm)とセルの寄生容量(Cm)との共振周波数(f0=1/(2π√(LC))で概ね確定し、その周波数で前記インバータ(Uj)を運転することになるから、前記共振インダクタ(Lm)の値を小さくして、共振周波数(f0)を上げれば放電セル(Ds)に印加する電圧を下げることもできる。したがって放電セル(Ds)への印加電圧を下げられるので前記放電セル(Ds)の誘電体バリアの絶縁破壊リスクが低減され、従来、稀に発生していたバリア破壊のリスクを低減することができる。前記0.5セルでは従来の回路方式ではインバータ(Uj)の駆動周波数が5kHzであったものを20kHz近辺で運転したことで実際に印加電圧を下げることに成功しており、同時に従来の回路方式に比べ、安定的に10%程度のオゾン生成濃度能力が向上したことが実験より確認された。
【0133】
以上説明したように、本実施形態によれば、電力供給部(Uw)を使い安定した条件の元で同調制御部(Us)の動作により、必要最小限の投入電力で前記放電セル(Ds)の印加電圧が最高の効果が得られるため、常時、最良の効率でオゾン生成が可能になると共に、前記インバータ(Uj)上のスイッチング素子が不必要に共振外れを起こさないため前記インバータ(Uj)のスイッチング素子(Q1、Q2、Q3、Q4)のストレスが低減すること、さらには副次的効果として放射ノイズ及び伝導ノイズが抑制されることを可能とした。つまりは、従来に比して、少ない消費電力で同量のオゾンを生成することが可能となり、オゾン生成装置のランニングコストの低減に寄与するものであり、最良の形態での放電回路を提供することができた。何よりも本発明の主要な目的である、外乱条件や時系列的な要因で前記共振周波数(f0)が変化したとしても前記放電セル(Ds)の能力を最大限に発揮することが可能となった。これにより第一の問題点であった前記共振周波数(f0)が変動し、前記放電セル(Ds)の能力を最大限に引き出せない課題は解決された。
【0134】
〔放電セル放電回路制御システムの実施形態〕
図22は放電セル放電回路制御システム(以下「装置制御システム」という)(ES)と放電セル放電回路(PS)とオゾン検知器(Od)の信号の取り合いの一例を簡略化して示すブロック図である。同図においてオゾン検知器(Od)からは、検出できるオゾン濃度の最大から最小を規定された電圧、または電流の範囲で信号出力をする。信号出力は、検出したオゾン濃度が電圧または電流レベルにスケーリング処理されて、検出したオゾン濃度に見合った信号をオゾン検知器(Od)がアナログ出力信号を生成し、つまりは装置制御システム(ES)が入力信号(Ods)として受け取る。一般的に言って、電流信号である場合は、電流信号は4mA〜20mAで表現されているから、装置制御システム(ES)は、一度、抵抗(R50)で受ける。抵抗(R50)は250Ωであり、抵抗(R50)の両端に発生する電圧は1V−5Vの電圧信号に変換して、バッファ(Ub)を介してオゾン濃度制御回路(Up)に取り込む。これによりオゾン濃度制御回路(Up)は現在のオゾン濃度を認識することができる。前記オゾン濃度制御回路(Up)には、プログラマブルロジックコントローラー(PLC)と呼ばれる、例えば三菱電機社製のシーケンサのアナログ入力ユニットを用いても良い。
【0135】
一方、放電セル放電回路(PS)は、前記オゾン濃度制御回路(Up)からの指令に基づいて、放電セル(Ds)への投入電力を管理している。オゾン濃度制御回路(Up)からは、バッファ(Ub)を介して電流または電圧信号にて出力信号(PSd)を出力する。この場合は例えば、三菱電機社製のシーケンサのアナログ出力ユニットが用いられる。シーケンサを使用することで、そのインターフェイスとしてタッチパネルを使用してオゾン濃度のパラメータの変更もエンドユーザーが簡単に行えるシステムの構築が容易であり、その利点を享受できる。放電セル放電回路(PS)は、取得した前記した出力電圧信号(Sv)と前記出力電流信号(Si)から現在の出力電力を求めることができ、前記電力制御回路(Uwc)としてマイクロコンピュータ(MPU)を採用している。これらにより、前記電力制御回路(Uwc)は、装置制御システム(ES)から所望された電力値(設定電力値)を設定する出力信号(PSd)を電力設定信号(Sw)として取り込んでいるため、実際の出力電力との大小を比較でき、電力を任意に管理するフィードバック制御を行うことが可能となる。
【0136】
本実施形態では、出力信号(PSd)を電流信号で表現しているが通信による制御、例えばRS422、232C、485を使い、前記電力制御回路(Uwc)への電力設定信号(Sw)へ書き込みを行う形式を用いても良い。この実施形態の放電セル放電回路(PS)では、RS422方式を採用した。これは所望のオゾン濃度、量が非常に多い場合、複数の放電セル(Ds)を用い、且つ複数の放電セル放電回路(PS)を用いて、大容量のオゾンを生成することがある。その場合は、RS422通信により装置制御システム(ES)は、複数の放電セル放電回路(PS)に対して個別に放電セル(Ds)への最適な投入電力の制御を各々行うことができるからである。その際は、放電セル放電回路(PS)及び装置制御システム(ES)にRS422のドライバーIC、例えば(SN75ALS181)などを双方に実装し、クロスオーバーケーブルで接続して、装置制御システム(ES)からコマンドを送信して、放電セル放電回路(PS)の電力設定信号(Sw)としてマイクロコンピュータ(MPU)上のメモリに上書きしていく方式を採用している。また、1対多の関係で通信を行うと言う点から、RS485を採用しても、同じ利点が得られる。このような通信方式を用いれば複数の放電セル放電回路(PS)を外部から制御する場合、シーケンサのアナログ出力チャンネルを複数点用意するより安価で且つ簡単に実現できるものである。
【0137】
次に、オゾン生成濃度の最高点近傍で動作する自動制御動作を図22のブロック図を用いた場合について、タイムチャート図である図23を用いてその概念を説明する。前記放電セル放電回路(PS)への前記出力信号(PSd)は、電力指令の下限設定値から上限(max)に向かい放電セル(Ds)への投入電力を増加する。初期時点で前記放電セル放電回路(PS)への前記出力信号(PSd)は、下限近傍であるため、目標としての最大オゾン生成量とは大きく離れているためオゾン検知器(Od)からの入力信号(Ods)は小さい値となっている。
【0138】
増加を行い続ければ、前述したように前記放電セル(Ds)の特性である最大オゾン発生点である電力投入ポイント(WO)を一時的に通過することになるが、時点(t11)までの期間においては、最大のオゾン生成ポイントに近づき、オゾン検知器(Od)からの入力信号(Ods)が増加していることを認識する。そして、前記放電セル放電回路(PS)への前記出力信号(PSd)を増加させれば、前記放電セル放電回路(PS)への前記出力信号(PSd)は最大オゾン発生点である電力投入ポイント(WO)を通過して、最良点を外れてしまい、オゾン検知器(Od)からの入力信号(Ods)は逆に減少する。オゾン濃度制御回路(Up)は時点(t12)にてオゾン検知器(Od)からの入力信号(Ods)が減少していることを検出し、前記電力投入ポイント(WO)を通過してしまったことを認識する。つまり、前記放電セル放電回路(PS)への前記出力信号(PSd)は最適点よりもやや高い指令値であることから、次に、前記放電セル放電回路(PS)への前記出力信号(PSd)を減少させる方向に動作させるべく制御を開始する。すると、時点(t13)までは、前記電力投入ポイントに近づいていくため、オゾン検知器(Od)からの入力信号(Ods)が増加していくことをオゾン濃度制御回路(Up)が検知し、時点(t14)にて逆に前記放電セル放電回路(PS)への前記出力信号(PSd)を増加させる。この一連の動作を繰り返すことで常に最大のオゾン濃度が得られるように制御され、範囲指定された放電セル放電回路(PS)の電力帯域(ΔPSd)にて安定し、すなわち常に最大のオゾン濃度限界値に向かい続けることができる。
【0139】
このようにフィードバック制御を常に行うことにより、仮にその放電セル(Ds)が持つオゾン生成能力を限界以上まで要求された場合であっても、電力投入ポイント(WO)を超えてしまうことによりオゾン濃度が低くなってしまう問題を解決し、その放電セル(Ds)が持つ最大の能力を発揮させて、最大限度でのオゾン生成が行える。また最大オゾン発生点である電力投入ポイント(WO)が変化してしまったとしても、これに追従して、最良のオゾン生成効率を常時満足できる。
【0140】
別の言い方をすれば、装置制御システム(ES)は、最良ポイントを経過した電力を前記放電セル(Ds)に前記放電セル放電回路(PS)が投入していないかをオゾン濃度(Ods)を監視することにより判断し、過剰電力が投入されていると判断された場合は、電力をそれより減ずるよう上限値を随時決定することを特徴としている。前記装置制御システム(ES)からの前記放電セル放電回路(PS)への電力指令である出力信号(PSd)は、例えば4mA〜20mAに対応する放電セル放電回路(PS)の電力調整範囲は少し広めに設定し、実際には4mA〜16mAで調整され、ある時は4mA〜14mAの範囲で調製されることになる。例えば、定格出力200Wの放電セル放電回路(PS)である場合は10W〜140Wの範囲で調整作業を必要とせずに自動的に使われることになる。これは、例えば150ppmのオゾン濃度を所望した場合は、オゾン濃度が足りない場合は、出力信号(PSd)を最大の20mAまで出力をしたいところであるが、実際には出力信号(PSd)が14mAの時点で最大のオゾンを生成する電力ポイント(WO)を経過しており、出力信号(PSd)を14mA近辺で制御することで、オゾン濃度が足りていないとは言え、最大限の生成を行うことを目標としている。
【0141】
図24を用いて放電セルへの電力投入量とオゾン濃度との関係について説明する。従来は測定器を用いて、最高のオゾン生成ポイントを確認し、出力信号(PSd)の上限(max‘)を微調整し固定していた。しかしながら本実施形態においては最大オゾン発生点である電力投入ポイント(WO)が変化してしまったとしても、これに追従して、最大点を求めることができるため、上限(max)、つまり前記放電セル放電回路(PS)の定格出力電力の設定に関しては多少の無頓着でも良く、調整に関する手間が大幅に削減できる。しかしながら、制御の最大をオゾン生成濃度が最高点を少し超えたところに設定したとすれば、より前記出力信号(PSd)の分解能を有効に使うことができ好適である。その際は、前述したように外部的要因によりバラつきがあるため、少なくともこれを考慮して最大電力値を決定すべきである。
【0142】
次に、図22で説明したオゾン濃度制御回路(Up)の制御動作を実施するための演算処理方法の一部であって、図23で説明した前記出力信号(PSd)の増減方向が反転する処理を表した動作フロー図である図25を用いて説明する。先ずブロック(b1)にて制御開始条件(CND1)がオンしている場合において、例えば電源運転中であるかどうか、また例えば5秒ごとに処理をするためのタイマーフラグを判別する。前記放電セル放電回路(PS)へ電力の出力信号(PSd)が到達し、前記放電セル(Ds)が実際にオゾンを生成し、それをオゾン検知器(Od)が検知するため、全体の制御系としては遅れ系であると言える。そのため5秒などの適切な時間を設けた上で、前記出力信号(PSd)の制御を行うもので、以降は制御開始条件(CND1)はオンであるものとして説明する。
【0143】
オゾン濃度制御回路(Up)のソフトウエアは、ブロック(b2)にて最新のオゾン検知器(Od)からの入力信号(Ods)のデータを取得、所謂AD変換を行い最新の値(NOW_AD)を取得する。次にブロック(b3)にて、最新の入力信号(Osd)が所望するオゾン濃度である値(k)の近辺(α)以内であるかを判別する。近辺でない場合、つまり現在のオゾン濃度が目標にまだ余地がある場合においては、ブロック(b4)にて前記入力信号(Ods)が前回の数秒前、例えば前記した5秒前に取得したオゾン検知器(Od)からの入力信号(Ods)のデータと比較する。ここで最新の入力信号(Ods)のデータの方が前回のデータよりも大きければオゾン濃度は増加傾向にあることを示している。しかしながらこの時点で、オゾンガス濃度が減少に転じている、即ち、数秒前の前記入力信号(Ods)のデータより最新の前記入力信号(Ods)が下回っていれば、前記出力信号(PSd)の増減方向を反転させる必要があるため最大のオゾンを生成する前記電力ポイント(W0)を経過していると判断してブロック(b5)にて増減フラグ(PS_ALLOW)を反転させる。最後にブロック(b6)において、このルーチンで取得した最新の入力データ(Ods)を次回数秒後の処理のため、変数(OLD_AD)に格納する。
【0144】
この一連動作の中の増減方向を決定する増減フラグ(PS_ALLOW)は、出力信号(PSd)を反転させる動作を行うための動作であって、図23で説明した例を用いれば、時点(t12)での動作と同義である。
【0145】
図23、図24、図25で説明した、オゾン濃度制御部(Up)による制御動作は、前記放電セル放電回路(PS)への前記出力信号(PSd)を、下限から開始して上限に向かって増加し、オゾン検知器(Od)からの入力信号(Ods)レベルが最良を得た状態での前記放電セル放電回路(PS)への前記出力信号(PSd)を記憶すると共に、その後、前記放電セル(Ds)の特性である最大オゾン発生点である電力投入ポイント(WO)に対応する前記放電セル放電回路(PS)への前記出力信号(PSd)近傍の、前記上限から下限に対応する範囲よりも狭い範囲において自動調整を行うことで、オゾン濃度が逆に減少することなく、オゾン生成量を最大限まで得られるよう自動的に制御することが可能となる。その結果、最大オゾン発生点である電力投入ポイント(WO)が存在するために供給過剰な電力によるオゾン生成濃度の低下という第2の問題も解決された。
【0146】
最後に、図26を用いて、前記放電セル放電回路(PS)と装置制御システム(ES)とオゾン検知器(Od)を用いた制御ブロック線図により、簡略化して制御方法の概念について説明する。本ブロック線図は、フィードバック制御ループを記載したものである。前記制御システムは、図25で説明した内容であり、装置制御システム(ES)のオゾン濃度制御回路(Up)はオゾン検知器(Od)からの入力信号(Ods)として、増減フラグをブロック(INVERTorNONINVERT)で決定し、その出力の正、負を決定する。
【0147】
そして、このフラグを付加してフィードバック全体を制御することを特徴としている。フィードバックの関数としてはブロック(K1、K2/S、K3*S)にて目標とするオゾン濃度と現在のオゾン濃度の差である偏差の比例と積分と微分を表しており、K1、K2、K3は定数である。これら3つの要素を加味した上で、式(1/(S2+3S+1))と直列に処理される。尚ここでのSは変数であり制御式はラプラス変換から導き出されるものである。所謂PID(比例、積分、微分)制御であり、これは簡単に言えば、比例が現在のオゾン濃度値からの制御、積分は過去のオゾン濃度値からの制御、微分要素は未来の値を予測しての制御である。先に述べたように、前記装置制御システム(ES)からは前記放電セル放電回路(PS)へ電力の出力信号(PSd)が到達し、前記放電セル(Ds)が実際にオゾンを生成し、それをオゾン検知器(Od)が検知するため、全体の制御系としては、追従までの時間が掛かる遅れ系であるから、制御のタイミングが遅れてしまう。一般的に言って遅れが大きくなるほど,制御が不安定になる。しかしながら、それを補償するため微分要素を使い、安定的な制御が可能となった。(INVERTorNONINVERT)の増減フラグの決定は、正動作、逆動作を決定しているものである、例えば温度調節計のPID制御で言うところの「加熱動作」「冷却動作」を決定付けているものである。
【0148】
この装置制御システム(ES)から得られたフィードバックの解は操作量として、放電セル放電回路(PS)に送られる。この操作量は前記出力信号(PSd)であり、これは放電セル放電回路(PS)における前記電力制御回路(Uwc)に取り込む。そして、外部からオゾン濃度を設定するための電力設定信号(Sw)として採用され、所望の電力を前記放電セル(Ds)に供給するものである。その結果オゾンが生成され、オゾン検知器(Od)がそのオゾン濃度を検出し、そのアナログ量を前記装置制御システム(ES)が入力信号(Ods)として入力する。
【0149】
前記インバータ(Uj)の駆動周波数を制御する同調制御部(Us)である第1の制御部と、前記電力供給部(Uw)の出力電力を規定の出力電力になるように制御する電力制御回路(Uwc)である第2本制御部と、図26にて説明した前記オゾン濃度制御回路(Up)である第3の制御部をバランス良く組み合わせることで、常に確実に共振部を共振周波数近傍で安定動作でき、最良のオゾン生成効率を享受することができ、放電セル放電回路(PS)を制御し、放電セル(Ds)の破壊防止に寄与しオゾン生成効率を高く保ちながら、安全に放電セル(Ds)を起動させつつ、任意の条件で放電セル(Ds)が持つ最大の能力を発揮させることが可能になる。
【0150】
最後に、発生したノイズを低減するための回路、例えばスナバー回路やそのためのセラミックコンデンサやインダクタを用いたノイズフィルタを含む回路や加熱保護素子やスイッチング素子を含む回路素子への保護回路については、本説明とは別で、必要に応じ前記した図に追加されるものである。また同時に、本発明にかかる放電セル放電回路の構成は、上記した回路方式及びタイミング図に限定するものではない。
【符号の説明】
【0151】
Ds 放電セル
Uw 電力供給部
Uj インバータ
Tr トランス
Lm 共振インダクタ
Cm 寄生容量
Us 同調制御部
Uwc 電力制御回路
Ui 電流位相検出手段
Uv 電圧位相検出手段
Sfi 電流位相信号
Sfv 電圧位相信号
Sfr 共振位相差信号
Uf 比較部
Sfg 周波数制御信号
Uz 演算比較手段
Uv’ 電圧検出手段
Su 共振電圧信号
τx 制御周期
τz 制御周期
WO 出力電力
VO 出力電圧
IO 出力電流
R、S、T ノード
Ur 整流部
C10、C11 平滑コンデンサ
T10 昇圧トランス
L1 インダクタ
Q10、Q11 スイッチング素子
Us’ 同調制御部
Gq10 駆動回路
f0 共振周波数
Δf 周波数領域区間
Q 共振の鋭さ
Gq20 駆動部
Q20、21、22、23 スイッチング素子
T1 周期
T2 オン時間
Ug 周期駆動回路
Q1、Q2 スイッチング素子
VI 入力電圧
Q20 主スイッチング素子
L20 インダクタ
C21 平滑コンデンサ
D20 ダイオード
Sv 出力電圧信号
Si 出力電流信号
R22 電流検出抵抗
A20 増幅器
Sw 電力設定信号
MPU マイクロコンピュータ
GQ20 ドライブ回路
Imax 最大制限電流値
WC 定電力範囲
W0 定電力領域のライン
ΔW 電力変調可変領域区
W1 電力ライン
A40、A41 コンパレータ
Exclusive−OR 排他的論理和
R45、C40 CR回路
C40 コンデンサ
Vsd 電圧
D50、D51、D52、D53 ダイオード
R50、C50 CR回路
C50 コンデンサ
Vse 電圧
Fmax 上限周波数
Fmin 下限周波数
t1 時点
t2 時点
t3 時点
Δf 周波数帯域
CND1 制御開始条件
B1〜B15 ブロック
B20〜B25 ブロック
k 設定値
m 設定値
OLD_AD 前回の値
NOW_AD 最新の値
F_ALLOW 増減方向決定フラグ
Exclusive−OR 反転
TIMER タイマ
Lt 所望の時間
COUNTER1 カウンター1
N 設定値
COUNTER2 カウンター2
M 設定値
tA 時点
tB 時点
tC 時点
PS 放電セル放電回路
ES 装置制御システム
Od オゾン検知器
Ods 入力信号
PSd 出力信号
Up オゾン濃度制御回路
2 酸素
3 オゾン
WO 電力投入ポイント
Ub バッファ
t11 時点
t12 時点
t13 時点
t14 時点
ΔPSd 電力帯域
max‘ 上限
b1〜b6 ブロック
K1 式
K2/S 式
K3*3 式
1/(S2+3S+1) 式

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対となる放電板の間に誘電体を設置してなる放電セル(Ds)を放電させる放電セル放電回路であって、
直流電力を供給する電力供給部(Uw)と、
前記電力供給部(Uw)から供給される直流電力を交流電力に変換するインバータ(Uj)と、
前記インバータ(Uj)で変換された交流電力を昇圧するトランス(Tr)と、
前記トランス(Tr)の2次側に前記放電セル(Ds)と共振インダクタ(Lm)とを接続した閉ループを構成することで共振インダクタ(Lm)と前記放電セル(Ds)の寄生容量(Cm)とによって構成される共振部と、を具備し、
さらに、前記共振部の共振周波数と前記インバータ(Uj)の駆動周波数とを同調させるようにインバータ(Uj)の駆動周波数を制御する同調制御部(Us)と、
前記電力供給部(Uw)の出力電力を調整可変して規定の出力電力になるように制御する電力制御回路(Uwc)と、を具備し、
前記同調制御部(Us)によるインバータ(Uj)の駆動周波数の制御と、前記電力制御回路(Uwc)による電力制御との2つの制御系によって放電を継続させることを特徴とする放電セル放電回路。
【請求項2】
前記同調制御部(Us)は、前記共振部に流れる電流位相検出手段(Ui)と、前記共振部の電圧位相検出手段(Uv)とに接続され、前記電流位相検出手段(Ui)で得た電流位相信号(Sfi)と前記電圧位相検出手段(Uv)で得た電圧位相信号(Sfv)とを比較して共振位相差信号(Sfr)を得る比較部(Uf)と、
前記位相差信号(Sfr)を受けて前記インバータ(Uj)の駆動周波数を前記共振部の共振周波数に同調させるように周波数制御信号(Sfg)の値を決定してインバータ(Uj)にフィードバック制御する演算比較手段(Uz)とを有することを特徴とする請求項1に記載の放電セル放電回路。
【請求項3】
前記同調制御部(Us)による同調動作は、前記周波数制御信号(Sfg)を、上限周波数から開始して下限周波数に向かって掃引動作を行い、前記共振位相差信号(Sfr)レベルが最良の共振状態を得た状態での前記周波数制御信号(Sfg)を記憶すると共に、その後、前記共振部の共振周波数に対応する前記周波数制御信号(Sfg)近傍の、前記上限周波数から下限周波数に対応する範囲よりも狭い範囲において掃引動作を行うことで、常時、前記共振部をその共振周波数近傍で動作させることを特徴とする請求項2に記載の放電セル放電回路。
【請求項4】
前記同調制御部(Us)は、前記共振インダクタ(Lm)に印加される電圧を検出する電圧検出手段(Uv’)に接続され、前記電圧検出手段(Uv’)から得られる共振電圧信号(Su)を受けて前記インバータ(Uj)の駆動周波数を前記共振部の共振周波数に同調させるように周波数制御信号(Sfg)の値を決定してインバータ(Uj)にフィードバック制御する演算比較手段(Uz)とを有することを特徴とする請求項1に記載の放電セル放電回路。
【請求項5】
前記同調制御部(Us)による同調動作は、前記周波数制御信号(Sfg)を、上限周波数から開始して下限周波数に向かって掃引動作を行い、前記共振電圧信号(Su)レベルが最良の共振状態を得た状態での前記周波数制御信号(Sfg)を記憶すると共に、その後、前記共振部の共振周波数に対応する前記共振電圧信号(Su)近傍の、前記上限周波数から下限周波数に対応する範囲よりも狭い範囲において掃引動作を行うことで、常時、前記共振部を共振周波数近傍で動作させることを特徴とする請求項4に記載の放電セル放電回路。
【請求項6】
規定の電力を供給するための前記電力供給部(Uw)を制御する前記電力制御回路(Uwc)の制御周期(τx)と、前記周波数制御信号(Sfg)の値を決定して前記インバータ(Uj)の駆動周波数をフィードバック制御するように動作する前記演算比較手段(Uz)の制御周期(τz)とが、n:m(n≠m)の関係により時間的頻度差をもって制御されることを特徴とする請求項2乃至5の内の何れかに記載の放電セル放電回路。
【請求項7】
前記電力供給部(Uw)をフィードバック制御するように動作する前記電力制御回路(Uwc)と、前記インバータ(Uj)の駆動周波数をフィードバック制御するように動作する前記演算比較手段(Uz)とを、一つのマイクロコンピュータで構成したことを特徴とする請求項2乃至6の内の何れかに記載の放電セル放電回路。
【請求項8】
放電を開始する始動初期において前記同調制御部(Us)は前記インバータ(Uj)の駆動周波数を上限周波数から下限周波数に向けて掃引動作を行うとともに、前記電力制御回路(Uwc)は前記電力供給部(Uw)の出力電力(WO)、または、前記電力供給部(Uw)の出力電圧(VO)、または、前記電力供給部(Uw)の出力電流(IO)を低く設定して徐々に定格に移行していくことを特徴とする請求項1乃至7の内の何れかに記載の放電セル放電回路。
【請求項9】
放電を開始する始動初期以前において前記同調制御部(Us)は前記インバータ(Uj)の駆動周波数を上限周波数から下限周波数に向けて掃引動作を行い、前記インバータ(Uj)の駆動周波数を予め共振周波数近傍の値を検出し、この値を記憶し設定した後、放電開始を行い、さらに共振周波数への精度を高めることを持続することを特徴とする請求項1乃至7の内の何れかに記載の放電セル放電回路。
【請求項10】
請求項1に記載の放電セル放電回路(PS)を外部から制御する放電セル放電回路制御システム(ES)であって、
前記放電セル放電回路制御システム(ES)は、オゾン濃度を検出するオゾン検知器(Od)から入力信号(Ods)を入力するとともに、前記放電セル放電回路(PS)の電力供給部(Uw)の出力電力を外部から制御する出力信号(PSd)を前記電力制御回路(Uwc)に出力することでオゾン濃度を制御するオゾン濃度制御回路(Up)を具備することを特徴とする放電セル放電回路制御システム。
【請求項11】
前記オゾン濃度制御回路(Up)は、前記入力信号(Ods)によって得られたオゾン濃度が所望のオゾン濃度に達しない場合は前記出力信号(Psd)を増加し、
前記入力信号(Ods)によって得られたオゾン濃度が所望のオゾン濃度より過剰な場合は前記出力信号(PSd)を減少させるようにフィードバック制御し、
さらに前記出力信号(PSd)を増加しているにも関わらず前記入力信号(Osd)が減少に転じた際は操作変化量の符号を負とし、
逆に前記出力信号(PSd)を減少しているにも関わらず前記入力信号(Osd)が減少に転じた際は操作変化量の符号を正とするフィードバック制御を行う制御系を具備していることを特徴とする請求項10に記載の放電セル放電回路制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公開番号】特開2010−35402(P2010−35402A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−33290(P2009−33290)
【出願日】平成21年2月16日(2009.2.16)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)
【Fターム(参考)】