説明

放電型光触媒反応装置

【課題】放熱性能に優れた放電型光触媒反応装置を提供する。
【解決手段】一実施形態にかかる放電型光触媒反応装置は、主面の外周部分に外周パターンを有する基板と、前記基板に接続され、前記基板の電圧によって放電する端子を有する放電部と、前記放電により活性化する光触媒を有する触媒部と、前記基板の外周を保持するとともに、前記外周パターンが形成された前記基板の外周部分に面接触する接触片を有する内ケースと、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、放電型光触媒反応装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、殺菌、脱臭、空気の清浄等の様々な用途に用いるために光触媒反応を促進させる光触媒反応装置が知られている。この種の光触媒反応装置として、高電圧を生成する電源基板と、高電圧によって放電する高電圧端子と放電光により活性化する触媒部とを有する放電部と、それらを収める筐体と、を備えたものが提供されている。
【0003】
電源基板は、放電のために高電圧を作り出し、放電部へ供給している。この電源基板の表面には、発熱の大きな部品が実装されている。放電部で発生するオゾンの侵入を防ぎ、また外部からのゴミの侵入を防ぐために、電源部は密閉構造となっている。このような密閉構造の光触媒反応装置では、ファン等で伝達(対流)による放熱をすることができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−140624号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
実施形態では、放熱性能に優れた光触媒反応装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態にかかる放電型光触媒反応装置は、主面の外周部分に外周パターンを有する電源基板と、前記基板に接続され、前記基板の電圧によって放電する端子を有する放電部と、前記放電により活性化する光触媒を有する触媒部と、前記基板の外周を保持するとともに、前記外周パターンが形成された前記基板の外周部分に面接触する接触片を有する内ケースと、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の一実施形態にかかる光触媒反応装置を示す斜視図。
【図2】同光触媒反応装置を示す分解斜視図。
【図3】同光触媒反応装置の一部を破断して示す説明図。
【図4】同光触媒反応装置の触媒部の断面構造を示す説明図。
【図5】同実施形態にかかる基板の構成を示す説明図。
【図6】同実施形態にかかる内ケースと基板の構成を示す説明図。
【図7】同実施形態にかかる内ケースと基板の構成を拡大して示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の一実施形態かかる光触媒反応装置1について、図1乃至図7を参照して説明する。各図中矢印X,Y,Zはそれぞれ互いに直交する3方向を示す。また、各図において説明のため、適宜構成を拡大、縮小または省略して示している。
【0009】
図1乃至図3に示す光触媒反応装置1は、上筐体11及び下筐体12を組み合わせてなるハウジング10と、ハウジング10内に配置され高電圧を生成する電源基板20(基板)と、ハウジング10内に設けられ電源基板20を保持する内ケース30と、電源基板20に接続され高電圧によって放電する高電圧端子ユニット42を有する放電部40と、放電部40に隣接して設けられた触媒部50と、を備えて構成されている。
【0010】
図2に示すように、上筐体11は、矩形の下面開口の箱形状をなし、側壁11a及び上壁11bを一体に有している。側壁11a及び上壁11bの外周部11cは金属製で一体に構成され、上壁11bの中央部分11dは流体の流通を可能とするメッシュ構造になっている。
【0011】
上筐体11は、矩形の上面開口の箱形状をなし、側壁12a及び底壁12bを一体に有している。側壁12a及び下壁12bの外周部11cは金属製で一体に構成され、下壁12bの中央部分12dは流体の流通を可能とするメッシュ構造になっている。
【0012】
図2及び図3に示すように、下筐体12の内部には金属製のガイドプレート13が配置されている。このガイドプレート13は、下筐体12の下壁12bから立ち上がり、電源基板20が設けられた電源部と、放電部40及び触媒部50とを仕切る。このため電源部が密閉構造となり、放電部40で発生するオゾンの侵入を防ぐとともに、外部からのゴミの侵入を防ぐようになっている。
【0013】
図2乃至図5に示す電源基板20は放電のために高電圧を作り出し、放電部40へ供給する電源基板である。電源基板20は、図中X方向に沿う厚さ方向に複数層積層されたリジッド基板であり、ここでは例えば4層構造になっている。電源基板20は例えば厚さ(X方向)2mm×長さ(Y方向)230mm×高さ(Z方向)30mm程度に構成されている。電源基板20はハウジング10内のガイドプレート13の一方側に配置され、内ケース30によって外周部分20bが保持される。電源基板20の外周部分20bには内ケース30の複数の爪35にそれぞれ係合する複数の切欠き25が形成されている。
【0014】
電源基板20の表面20a上には発熱の大きな発熱部品21が実装されている。また電源基板20の表面20aの外周部分20bには熱伝導性及び導電性を有する外周パターン22が形成されている。さらに発熱部品21の下層、すなわち、表層とX方向に隣接する内層には、熱伝導性及び導電性を有する基板GNDパターン23(グランドパターン)が形成されたGND層が設けられている。外周パターン22と基板GNDパターン23とは、1点接続ではなく、共通化されている。外周パターン22には厚さ方向に貫通する多数のスルーホール24が打ってあり、この熱伝導性及び導電性を有するスルーホール24を介してGNDパターン23と外周パターン22とが接続されている。
【0015】
図6及び図7に示す内ケース30は、左右及び上下の4辺を一体に有し電源基板20の外周を囲む金属製の矩形のフレーム31を有して構成されている。フレーム31の各辺は断面視L字状に構成されている。図3に示すように、フレーム31の外側の面、すなわち、上面32、下面33、及び外側面34が、ハウジング10の内側の面に面接触している。ここでは上面32が上壁11bの下面に、下面33が下壁12aの上面に、外側面34が側壁12bの内側の面に、それぞれ面接触している。なお、図3では、光触媒反応装置1の一部を切欠して、一部断面を示している。
【0016】
フレーム31のX方向一端側の縁には、X方向に突出する複数の爪35が設けられている。ここでは上下にそれぞれ4つ、計8つの爪35が設けられている。爪35は基端部分にY方向に延びる基板挿入用のスリット36を有し、平面視L字状に屈曲している。爪35のX方向の寸法は切欠き25のX方向の寸法と対応し、切欠き25の寸法よりも僅かに小さく設定されている。組み立ての際には、図7に矢印で示すように、電源基板20の切り欠きと内ケース30の爪35の位置を合わせて、爪35が切欠き25に収まるように電源基板20を内ケース30にX方向に押し当てる。その後、電源基板20の上下の端縁26がスリット36に挿入されるようにY方向に沿って一方側に電源基板20をスライドさせることにより、電源基板20が内ケース30に嵌合する。このとき、各切欠き25のY方向他方側に隣接し切欠き25よりも上下に突出する端縁26が、スリット36内に挿入されてそれぞれ保持されることにより、フレーム31に囲まれる領域に電源基板20が配置される。
【0017】
内ケース30のX方向一端側の端縁部分は、Z方向に沿うように曲成された複数の接触片37が設けられている。接触片37は内ケース30の爪35のスリット36と並ぶZ方向の接触面37aを形成し、電源基板20の表面20aの外周部分20bに面接触する。この構成により、組立状態では電源基板20の外周パターン22と内ケース30とが安定的に接触する。
【0018】
また、内ケース30の外面は下筐体12の内面に面接触するとともに、内ケース30の下辺の端縁はガイドプレート13に接触している。
【0019】
内ケース30に電源基板20を嵌め込んだ後、内ケース30が下筐体12内のガイドプレート13の一方側の空間に隙間なく嵌め込まれることで、発熱部品21から、直下のGNDパターン23、スルーホール24、外周パターン22、内ケース30、を介してハウジング10に熱が伝達し、ハウジング10から放熱されるようになっている。
【0020】
放電部40は、フレキシブル基板41等を介して電源基板20に接続される一対の高電圧端子43,44をそれぞれ有する端子ユニット42がY方向に複数並列配置されている。放電部40は、この複数の端子ユニット42の高電圧端子43,44間に電圧が供給されることにより放電し、オゾンと放電光を発生させる。
【0021】
図2乃至図4に示すように、触媒部50は、光触媒担持体51と、触媒担持体51の表面に形成されるオゾン分解触媒層53と、オゾン分解触媒層53の一部表面に形成される光触媒層52とで構成されている。触媒担持体51は、例えばアルミなどの金属で構成され、例えばハニカム構造に構成されている。オゾン分解触媒層53は、例えば二酸化マンガン等の物質を主成分とするオゾン分解触媒を含んで構成されている。光触媒層52は、例えば微粒子状の酸化チタンあるいは酸化亜鉛等の物質を主成分とする光触媒を含んで構成されている。放電部40での発生する放電光を光源として光触媒層52が触媒活性することで、殺菌、脱臭、空気清浄等の機能を果たす。
【0022】
以上のように構成された光触媒反応装置1は、電源基板20で生成した高電圧の電流供給によって、端子ユニット42の一対の高電圧端子間でオゾンと放電光を発生させる。そして、光触媒担持体51に発生する放電光を光源として光触媒層52が触媒活性することで、脱臭や空気清浄等の機能を果たす。
【0023】
上記実施形態では、内ケース30を設け、電源基板20の外周パターン22と接触する接触片37を設けたことにより、電源基板20と内ケース30とを安定的に接触させることができ、放熱性能の向上、振動耐性の向上、EMC性能の向上、安全性の向上、を実現できる。また、内ケース30を下筐体12に隙間なく嵌め込む構造により、内ケース30と下筐体12とを安定的に接触させることができ、また、振動環境下でも固定させることがでる。
【0024】
上記実施形態では、電源基板20の外周パターン22と内ケース30とを面接触することで導電経路、熱伝導経路を確保しており、EMC性能向上、放熱性能向上に寄与している。
【0025】
さらに、外周パターン22と基板GNDパターン23とを、1点接続ではなく、共通化することでも、導電経路、熱伝導経路を確保でき、EMC性能向上、放熱性能向上に寄与している。
【0026】
電源基板20外周パターン22には多数のスルーホール24が形成され、電源基板20内層のGNDパターン23と接続することで、導電経路、熱伝導経路を確保しており、EMC性能向上、放熱性能向上に寄与している。
【0027】
上記実施形態では、発熱部品21の下の層にGND層を配置することによって、発熱部品21、電源基板20、GNDパターン23の伝導による熱抵抗を低減させ、放熱性能向上に寄与している。
【0028】
さらに、一般に電源基板20サイズが長いと反りの影響が大きくなるが、本実施形態では、内ケース30と電源基板20を嵌合させることで、電源基板20の反りを防止できる。
【0029】
なお、上記実施形態では、ハウジング20を構成する筐体11,12の内面が直接内ケース30の外面に面接触して熱伝導する構成を例示したが、これに限られるものではない。たとえば筐体11,12と内ケース30との間に伝熱プレートを介在して伝熱する構成であっても本発明を適用可能であり、上述の実施形態と同様の放熱効果を得られる。この他、例えば電源基板20と筐体11,12との間にさらに熱伝導性を有するスペーサなどを設けてもよい。
【0030】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0031】
1…光触媒反応装置、10…ハウジング、11…上筐体、12…下筐体、
13…ガイドプレート、20…電源基板、20b…外周部分、20a…表面、
21…発熱部品、22…外周パターン、23…GNDパターン、24…スルーホール、
30…内ケース、31…フレーム、35…爪、36…スリット、37…接触片、
37a…接触面、40…放電部、42…端子ユニット、43.44…高電圧端子、
50…触媒部、51…光触媒担持体、52…光触媒層、53…オゾン分解触媒層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主面の外周部分に外周パターンを有する基板と、
前記基板に接続され、前記基板の電圧によって放電する端子を有する放電部と、
前記放電により活性化する光触媒を有する触媒部と、
前記基板の外周を保持するとともに、前記外周パターンが形成された前記基板の外周部分に面接触する接触片を有する内ケースと、
を備えたことを特徴とする放電型光触媒反応装置。
【請求項2】
前記内ケース、前記基板、前記放電部、及び前記触媒部を収めるハウジングを備え、
前記内ケースと前記ハウジングとの間で熱伝導されることを特徴とする請求項1記載の放電型光触媒反応装置。
【請求項3】
前記基板は複数の層を有し、
前記基板上に発熱部品が搭載され、
前記基板の前記発熱部品の下層にグランドパターンが形成され、
前記外周パターンにはスルーホールが形成され、
前記外周パターンと前記グランドパターンとが接続されていることを特徴とする請求項1または2記載の放電型光触媒反応装置。
【請求項4】
前記内ケースは前記基板の外周部を保持するフレームと、前記フレームの端縁から突出形成されて前記基板と嵌合する爪と、前記フレームの端縁から曲成されて前記基板の主面の外周部分に沿って面接触する接触片と、を有して構成され、
前記基板は、その外周に前記爪部に係合する切欠きを有して構成されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか記載の放電型光触媒反応装置。
【請求項5】
前記爪の基端部分には前記端縁に沿うスリットが設けられ、
前記基板の前記切欠きを前記爪に対向させて前記基板を前記フレームにはめ込み、
前記スリットに沿ってスライドさせることで前記基板が前記内ケースに嵌合することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか記載の放電型光触媒反応装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−192376(P2012−192376A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−59827(P2011−59827)
【出願日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】