説明

放電表面処理方法及び表面処理が施された金型

【課題】 CuやCu合金等の熱伝導率の高い部品や金型への放電表面処理技術を確立し、それらの耐久性を向上させる
【解決手段】 金属粉末または金属の化合物の粉末、あるいはセラミックスの粉末を成形した粉末成形体、もしくは、該粉末成形体を加熱処理した粉末成形体の電極と、熱伝導率120W/mK以上の金属との間にパルス状の放電を発生させ、放電によるエネルギーにより、上記熱伝導率120W/mK以上の金属表面に電極材料あるいは電極材料が放電エネルギーにより反応した物質からなる被膜を形成させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属粉末または金属の化合物の粉末、或いはセラミックスの粉末を成形した粉末成形体、もしくは、該粉末成形体を加熱処理した粉末成形体を電極として加工液中或いは気中において電極とワークの間にパルス状の放電を発生させ、そのエネルギーにより、ワーク表面に電極材料或いは電極材料が放電エネルギーにより反応した物質からなる被膜を形成する放電表面処理に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鋳造金型材料として従来から鉄鋼が使用されてきているが、従来の硬質の鉄鋼を金型として使用すると、該金型の熱伝導率は40W/mK程度と低いため、鋳物の冷却性能に劣り生産性が低いという問題があった。
また、小さい熱伝導率のため、金型の予熱に長時間を要するや金型内の温度勾配が大きく、金型表面で引っ張り圧縮応力が繰り返されることで塑性歪みが蓄積され、金型に早期にクラックが発生するなどの問題を生じさせていた。
【0003】
この問題を解決するため、金型に熱伝導率の高い銅合金を適用する方法が検討されたが、Cu合金は鉄鋼に比べ強度が劣るため、上記熱疲労によるクラックの発生を抑制できなかった。
【0004】
そこで、金型の耐久性を向上させるため、損傷が生じやすい部分に、セラミックスと金属の複合材であるサーメットの被膜を施す方法が検討され、特許3150291号公報に開示されている。
しかしながら、特許3150291号公報に開示された方法では、被膜と金型の密着性が悪いため、被膜が剥離し、損傷を抑制するには不十分であった。
【0005】
一方、剥離を抑制するため、CuやCu合金表面にサーメット被膜を形成させる従来の表面処理方法が、特開2002−361394号公報に開示されている。
それによると、120W/mK以上の熱伝導率と180HV以上の硬さを併せ持つ銅合金に、放電被覆により被成したNi基合金を中間層として、その上に放電被覆により被成したCo、Cu、Cr及びNiのうちから選んだ少なくとも一種を含むサーメット層を形成させる技術が開示されている。
この技術を銅合金からなる金型の内面、および、表面酸化膜を除去するために設けられた射出口よりも口径がわずかに小さい開口部を有するスカルプゲートの表面及び射出口の内面それぞれ一部または全面に適用すると、金型の耐久性を向上できる。
【0006】
【特許文献1】特許3150291号公報
【特許文献2】特開2002−361394号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特開2002−361394号公報に開示されている放電被覆法(エレクトロ・スパーク・デポジション)は、金属またはサーメットの棒を電極として用い、被加工物との間に発生させた放電のエネルギーで電極を溶融させ、被加工物に堆積させる加工法である。
一回の放電で直径0.1mm〜数mmの金属棒の一部を溶融させるため、被加工物に移行される溶滴も直径で0.1mm〜数mmとなり、その溶滴体積が多いため、溶滴の積み重ねで形成される被膜が厚くなってしまう。
CuやCu合金を被加工物(部品や金型)に用いるのは、高い熱伝導率を必要とする場合が多く、別の金属やサーメットの被膜が厚くなってしまうと、熱伝導率が低下し、熱疲労に対する強度も低下し、所望の性能を損なう可能性があった。
また、放電により形成された被膜を、金型として精度を出すため、研磨等の後処理で被膜を薄くする必要であり、金型製作の作業効率が悪かった。
【0008】
さらに、被加工物表面に形成された溶融域の上に、Co、Cu、Cr等を含むサーメット層を堆積させると、被膜自体は拡散接合となる。
この拡散接合における被膜と被加工物の密着強度は、メッキや溶射と比べれば高くなる。しかしながら、熱伝導率が高いCuやCu合金にサーメットの被膜を形成する場合には、被加工物の熱拡散かつサーメットとCuのなじみ性の関係上、被加工物表面に直接サーメット層を形成できず、中間層として熱伝導率がCuに比べ1/3程度のNiやCoなどの金属層が必要であった。
そのため、中間層形成のための処理工程が別途必要であり、被膜形成を容易に行うことができなかった。
【0009】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、CuやCu合金等の熱伝導率の高い部品や金型への放電表面処理技術を確立し、それらの耐久性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る放電表面処理方法は、金属粉末または金属の化合物の粉末、あるいはセラミックスの粉末を成形した粉末成形体、もしくは、該粉末成形体を加熱処理した粉末成形体の電極と、熱伝導率120W/mK以上の金属との間にパルス状の放電を発生させ、放電によるエネルギーにより、上記熱伝導率120W/mK以上の金属表面に電極材料あるいは電極材料が放電エネルギーにより反応した物質からなる被膜を形成させるものである。
【発明の効果】
【0011】
電極から微粉末を供給し、数μsの間に数十Aの電流値を流して被膜を形成する放電表面処理では、被加工物表面に溶融域を形成できるため、熱伝導率が120W/mK以上の材料の表面に、被膜と十分に密着した厚さ数μm〜数十μmの被膜を形成でき、被加工物の高熱伝導という性質を維持しつつ表面硬度を向上できる。
また、放電表面処理により充填口内面に被膜を形成させると、膜厚が非常に薄いため、金型の持つ120W/mKの熱伝導率をほとんど低下させず、鋳造の生産性を落とすことなく、金型の寿命を拡大することができる。
なお、金型製造に関しても、放電表面処理後に研磨等の後処理が不要になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
実施の形態1.
本実施の形態におけるCu−Cr−Zr合金上へのWCとCoからなるサーメット被膜を、放電表面処理を用いて形成する原理について図1を用いて説明する。
ここで、母材となるCu−Cr−Zr合金は、Cr:0.2重量%、Zr:0.1重量%、Zn:0.2重量%、残りCuからなる熱伝導率が311W/mKの合金であり、主に金型やプリント基板の材料として使用されている。
また、WCとCoからなるサーメット被膜を形成するための表面処理用電極は、平均粒径0.75μm程度のWC粉末と平均粒径1.4μm程度のCo粉末をWC:75重量%、Co:25重量%の重量比で混合し、70MPa程度のプレス圧力により圧縮成形し、その後、740℃の真空炉で約2時間程度保持することにより製造した導電性を有する圧粉体電極である。
なお、電極の成形としては、圧縮成形のほかに、泥漿、MIM(Metal Injection Molding)、溶射、ナノ粉末をジェット気流に同伴させ成形させる方法などがある。
【0013】
図1に示されるように、被加工物であるCu−Cr−Zr合金を陽極とし、加工液(油)中でWCとCoからなる圧粉体電極(陰極)が接触しないよう主軸でサーボをとった状態で設置し、両者に所定の電圧を印加することにより放電を発生させる。
電圧印可後、放電が発生すると、放電の熱により電極の一部は溶融・気化され、放電による爆風や静電気力によって電極の粉末が離脱し、ワーク上に溶融・堆積する。
【0014】
具体的な加工条件としては、60×16×5(mm)の直方体形状に形成された上記電極を用い、処理面を16×5、電流値を11A、放電パルス時間を8μsの加工条件で、熱伝導率が120W/mK以上のCu−Cr−Zr合金上に5分間処理した。
処理後の様子(被膜表面)を図2に示す。
被加工物表面の上部がWCとCoからなるサーメット被膜である。
また、被膜断面写真を図3に示す。
上述の加工条件で形成される被膜の厚さは15μm程度であり、被加工物であるCu−Cr−Zr合金の高い熱伝導率を損なうものではない。
なお、本実施の形態で示す放電表面処理による被膜厚さは、加工時間を変更することにより制御することが可能である。
また、被膜のビッカース硬度を測定すると1500HV程度を示した。
母材であるCu−Cr−Zr合金のビッカース硬度は300HV程度であったため、WCとCoからなるサーメット被膜が表面に形成されていることがわかる。
また、被膜表面を1000番のペーパーで研磨し、その表面硬度を測定すると、1450HV程度で被膜硬度はほとんど低下しかなった。
これは、被膜の密着強度が大きいため、ペーパーでも被膜を剥離できなかったことを示している。
【0015】
上記の被膜の表面粗さを測定すると、算術平均粗さRa=4.49、最大高さRy=28.5、十点平均粗さRzDIN=25.12であった。
本実施の形態における加工条件は、上述の電流値11A、放電時間8μs、加工時間5分として説明したが、電流値を11A以上にしても、被膜を形成することができる。
しかしながら、その場合は、表面粗さが大きくなるため、金型等の表面精度を必要とする場合は、なるべく電流値を小さくしたほうがよい。
【0016】
また放電時間は8μs以下にしなければならない。
放電時間を変化させたときの被膜の状態を図4に示す。
なお、放電時間を4μsとしたときの被膜を(a)とし、16μsとしたときの被膜を(b)としている。また、それぞれ右側をペーパーで研磨している。
図に示されるとおり、放電時間4μsでの被膜(a)はペーパーで擦ってもほとんど剥離せず母材がほとんど見えないが、放電16μsの被膜(b)は母材が現れている。
これは冷却過程においてCu合金の凝固の前に、融点の高いWCのみが先に析出してしまい、CuとWCのなじみが悪いためにCuとWCが結合できないために起こると考えられる。
つまり、放電時間が短いと急加熱急冷となり、CuとWCをほぼ同時に凝固させられるため、密着強度の高い被膜を形成できる。
【0017】
また、WC粉末はセラミックスであるため、溶融するのに大きなエネルギーを要することから、筆者らの研究の結果、放電電流の電流値8A以下、放電時間2μs以下の条件では、平均粒径0.75μm以上のWC粉末を溶融させられないことがわかった。
ただし、平均粒径0.4μm以下のWC粉末を用いた場合は、電流値8A以下、放電時間2μsでも被膜を形成できる。
つまり、平均粒径0.75μm程度のWC粉末が混入された圧粉体電極を用いる場合、電流値11A、パルス時間8μs程度で加工すると緻密で高硬度の被膜を形成でき、WC粉末の平均粒径が0.4μm以下といった微小になる場合は、電流値8A以下、放電時間2μs以下でも被膜を形成することができる。
【0018】
つぎに、Fe合金軸製造用金型の分割面の模式図を図5に示す。
ここで、金型材質は、Cu−Cr−Zr合金であり、上記電極を用いて、電流値11A、パルス時間8μsの加工条件で金型キャビティーの充填口内面(斜線部)にWCとCoからなるサーメット被膜を形成させた。
斜線部の形状は、幅は30mm、R15の半円筒面であり、まず60×30×5電極を製造し、その電極を用い、斜線部と電極30×5の面で対向させ、電流値2A、放電時間2μsの条件で加工することにより、斜線部の加工及び斜線部への被膜形成することなく電極を斜線部にならった形状に崩す。
次に電極を10mm/min程度の速度で処理部と平行に移動させ、電流値11A、パルス時間8μsの加工条件で斜線部全面にWCとCoからなるサーメット被膜を形成させる。
このようにCu−Cr−Zr合金に対しWCとCoからなるサーメット被膜をつけて製造された金型と、従来のCu−Cr−Zr合金のみの金型とを比較した場合、被膜が無い場合には、数十ショットから100ショットで金型の充填口から延びた流路(斜線部)に大きなクラックがいくつも入ってしまい、金型としての機能が失われたが、被膜を形成させた金型では、700ショットでもクラックが入らなかった。
また、特に大きなクラックが入っていた充填口内面(斜線部)の末端面a部にのみ被膜を形成させても、約300ショット使用することができた。
つまり、Cu合金製金型に放電表面処理によりWC−Coの被膜を形成させると、金型の寿命を5〜7倍に拡大でき、金型製造に要するコスト削減に寄与し、製造コストを低減できる。
【0019】
本実施の形態では、被加工物をCu−Cr−Zr合金とした場合について説明したが、従来の方法でサーメット被膜を形成し難かった熱伝導率が120W/mK以上の被加工物には、本実施の形態によりその他のサーメット被膜を形成できる。
熱伝導率が120W/mK以上の材料を被加工物とした場合、従来の方法では、溶融域が十分に形成できないため、高い密着強度を持ったサーメット被膜を形成できず、また、被膜を形成できてもその厚みが厚くなり、本来の被加工物が持つ高熱伝導率という性質を失わせていたが、電極から微粉末を供給し、数μsの間に数十Aの電流値を流して被膜を形成する放電表面処理では、急加熱急冷却であることから被加工物表面にWCとCuの混合した溶融域を形成できるため、被膜と十分に密着した厚さ数μm〜数十μmの被膜を形成でき、被加工物の高熱伝導という性質を維持しつつ表面硬度を向上できる。
また、120W/mK以上の材料を金型の材料として用い、上記放電表面処理により充填口内面(斜線部)に被膜を形成させた場合、膜厚が非常に薄いため、金型の持つ120W/mKの熱伝導率をほとんど低下させず、鋳造の生産性を落とすことなく、金型の寿命を拡大することができる。
また、本実施の形態では、WC−Coの被膜を形成させたが、WC−Ni、TiC−Ni、MoB−Ni、Cr−Ni、TiC−Co等のサーメットも同様にCuまたはCu合金上に被膜を形成できる。Niとセラミックスの混合被膜の場合、母材のCu合金とNiのなじみがいいため、被膜と母材の密着力がより高くなる。
【0020】
実施の形態2.
上述した実施の形態はWC及びCo粉末の圧粉体電極を用いて、WCとCoからなるサーメット被膜を形成した場合について説明したが、本実施の形態では、Coを含まないWC粉末圧粉体電極による被膜形成について説明する。
本実施の形態における圧粉体電極は、平均粒径1μm程度のWCの粉末を70MPa程度のプレス圧力で圧縮成形し、その後1100℃の真空炉で約2時間程度保持することにより製造した導電性を有する圧粉体電極である。
なお、電極の形状は、50×11×5(mm)の直方体である。
電極の成形方法としては、実施の形態1での説明と同様に圧縮成形のほかに、泥漿、MIM、溶射、ナノ粉末をジェット気流に同伴させ成形する方法などがある。
【0021】
上記電極を用い、処理面を16×5、電流値15A、放電パルス時間を8μsとし、Cu−Cr−Zr合金上に5分間処理し、被膜を形成させた。
処理後の被膜のビッカース硬度を測定すると2200HV程度を示し、WCの被膜が形成されていることがわかる。
これは、母材であるCu−Cr−Zr合金のビッカース硬度が300HV程度であるため、ビッカース硬度の高いWCの被膜が表面に形成されていることを裏付けるものである。
なお、実施の形態1のWCとCoからなるサーメット被膜は、1500HV程度の硬度を得ていた。
本実施の形態では、被膜にCoを含まないため、実施の形態1による被膜と比較し、硬度をより高くすることができる。
【0022】
次に、実施の形態1と同様に、Cu−Cr−Zr合金からなるFe合金軸製造用金型の金型キャビティーの充填口内面(斜線部)にWCの被膜を形成させた。
ここでの加工条件は、上述の如く、上記電極を用いて、電流値11A、放電時間8μsの加工条件で被膜を形成させた。
被膜の有無に基づく金型の比較を行った場合、被膜が無いものでは数十ショットから100ショットで金型の充填口から延びた流路(斜線部)に大きなクラックが入ってしまい、金型としての機能が失われたが、被膜を形成させた金型では、700ショットでもクラックが入らなかった。
また、特に大きなクラックが入っていた充填口内面(斜線部)の末端面a部にのみ被膜を形成させても、約500ショット使用することができた。
つまり、Cu合金製金型に放電表面処理によりWCの被膜を形成させると、金型表面の硬度をより大きくすることができ、金型の寿命を5〜7倍に拡大でき、金型製造に要するコスト削減に寄与し、製造コストを低減できる。
【0023】
本実施の形態では、被膜の材料としてWCについて説明したが、TiC、Cr等のセラミックス、またはビッカース硬度が1000HV以上のWやMoであれば、同様に硬質の被膜を形成でき、金型の寿命の延長できる。
【0024】
実施の形態3.
本実施の形態では、母材として熱伝導率が127W/mKで120W/mK以上のAl合金(Al5154)を選択し、上述した実施の形態1で製造した電極を用いて、その表面にWC−Coのサーメット被膜を形成させたものである。
なお、加工条件として、処理面を16×5、電流値を11A、放電パルス時間を8μs、加工時間を5分間とした。
本実施の形態の加工により、Al合金表面に形成された被膜のビッカース硬度を測定すると1500HV程度を示した。
母材であるAl合金のビッカース硬度は80HV程度であったため、WC−Coの被膜が表面に形成されていることがわかる。
また、被膜表面を1000番のペーパーで研磨し、その表面硬度を測定すると、1450HV程度で被膜硬度はほとんど低下しかなった。
被膜の密着強度が大きいため、ペーパーでも被膜を剥離できなかったことがわかる。
つまり、実施の形態で示したCu−Cr−Zr合金のみならず、Al合金にも本実施の形態に係る放電表面処理により、高硬度かつ緻密なWCとCoからなるサーメット被膜を形成することができる。
【0025】
本実施の形態では、被膜の材料としてWCとCoからなるサーメットについて説明したが、WC、TiC、Cr等のセラミックス、MoB−Ni、Cr−Ni、TiC−Co等のサーメットであれば、同様に硬質の被膜を形成できる。
【0026】
熱伝導率が120W/mK以下の材料について、上述の加工条件で処理すると、熱伝導率が小さいために放電の熱によりヒートスポットが形成され、電極からの供給量よりも被加工物の除去量が多くなり、結果として被加工物が除去されることがある。
また、被膜が形成されても表面粗さがRa=5以上となり、後処理等が必要となる。
つまり、熱伝導率が120W/mK以上のAl合金やCu合金やAg合金で、上記条件で緻密で高硬度な被膜を形成できる。
【0027】
本実施の形態によれば、放電表面処理によりAl合金の表面に数μm〜数十μm程度の厚さのサーメット被膜またはセラミックス被膜を形成でき、部品の重量をほとんど変化させることなく、または熱伝導率を低下させることなく、表面を高硬度化できる。
その被膜により、Al合金部品の叩き摩耗を抑制でき、部品の耐久性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係る放電表面処理の原理を示す図である。
【図2】熱伝導率が120W/mK以上のCu−Cr−Zr合金に、WC−Co被膜を形成した表面図である。
【図3】Cu−Cr−Zr合金に、WC−Co被膜を形成した被膜断面図である。
【図4】放電時間を変化させた際に形成される被膜の状態を示す図である。
【図5】Fe合金軸製造用金型の分割面の模式図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属粉末または金属の化合物の粉末、あるいはセラミックスの粉末を成形した粉末成形体、もしくは、該粉末成形体を加熱処理した粉末成形体の電極と、熱伝導率120W/mK以上の金属との間にパルス状の放電を発生させ、放電によるエネルギーにより、上記熱伝導率120W/mK以上の金属表面に電極材料あるいは電極材料が放電エネルギーにより反応した物質からなる被膜を形成させることを特徴とする放電表面処理方法。
【請求項2】
熱伝導率120W/mKの金属として、Cu、Cu合金、Al、Al合金、Ag、Ag合金であることを特徴とする請求項1記載の放電表面処理方法。
【請求項3】
WCとCoとの粉末混合物、WCとNiの粉末混合物、TiCとNiの粉末混合物、MoBとNiの粉末混合物、CrとNiの粉末混合物、TiCとCoの粉末混合物、を電極材料とし、WC−Co、MoB−Ni、Cr−Ni、TiC−Co等のサーメット被膜を形成することを特徴とする請求項1または2に記載の放電表面処理方法。
【請求項4】
WC粉末、Cr粉末、TiC粉末を電極材料とし、WC、Cr、TiC等のセラミックス被膜を形成することを特徴とする請求項1または2に記載の放電表面処理方法。
【請求項5】
W粉末、Mo粉末を電極材料とし、W、Mo等のビッカース硬度1000HV以上の高硬度金属被膜を形成することを特徴とする請求項1または2に記載の放電表面処理方法。
【請求項6】
放電パルスの条件として、電流値が10A以上、放電時間が8μs以下とすることを特徴とする請求項1に記載の放電表面処理方法。
【請求項7】
金属粉末または金属の化合物の粉末、あるいはセラミックスの粉末を成形した粉末成形体、もしくは、該粉末成形体を加熱処理した粉末成形体の電極と、熱伝導率120W/mK以上の金属との間にパルス状の放電を発生させ、放電によるエネルギーにより、上記熱伝導率120W/mK以上の金属表面に電極材料あるいは電極材料が放電エネルギーにより反応した物質からなる被膜を形成させたことを特徴とする金型。
【請求項8】
熱伝導率120W/mKの金属として、Cu、Cu合金、Al、Al合金、Ag、Ag合金であることを特徴とする請求項7に記載の金型。
【請求項9】
WCとCoとの混合物、MoBとNiの混合物、CrとNiの混合物、TiCとCoの混合物、を電極材料とし、WC−Co、WC−Ni、TiC−Ni、MoB−Ni、Cr−Ni、TiCと−Co等のサーメット被膜を形成することを特徴とする請求項7または8に記載の金型。
【請求項10】
WC粉末、Cr粉末、TiC粉末を電極材料とし、WC、Cr、TiC等のセラミックス被膜を形成することを特徴とする請求項7または8に記載の金型。
【請求項11】
W粉末、Mo粉末を電極材料とし、W、Mo等のビッカース硬度1000HV以上の高硬度金属被膜を形成することを特徴とする請求項7または8に記載の金型。
【請求項12】
Fe合金軸製造用金型における充填口から延びた流路に被膜を形成したことを特徴とする請求項7乃至11何れかに記載の金型。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−16672(P2006−16672A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−196887(P2004−196887)
【出願日】平成16年7月2日(2004.7.2)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】