説明

故障要因表示機能を備えた情報処理装置

【課題】情報処理装置の起動時において、連鎖的に発生した故障要因信号の発生した時系列順にその場で容易に表示させ、故障からの復旧作業を容易に行えるようにした故障要因表示機能を備えた情報処理装置を提供する。
【解決手段】プログラムを実行する演算処理部1、周辺装置3、及び当該演算処理部及び周辺装置の故障要因信号を処理する故障要因処理部2とから成る情報処理装置であって、故障要因処理部は、POSTコード信号、温度異常信号、及び出力低下信号から成る故障要因信号を受信して時系列に記憶・表示させるための故障要因記憶制御部21と、故障要因信号を記憶する不揮発性メモリ22と、出力された故障要因信号を表示させる表示部23と、不揮発性メモリに記憶した故障要因信号の表示順を発生した時系列順方向、または、その逆方向を指定し、更新を指令する表示更新スイッチ24とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置の故障要因を表示することが可能な故障要因表示機能を備えた情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
産業や公共のシステムに使用される産業用コンピュータなどの情報処理装置は、CPU、メモリ、電源、HDDなどの複数のユニットで構成されている。
【0003】
連続運転されるこれらの情報処理装置は、何らかの原因で故障が発生した場合に、その原因がどのユニットに起因するかを判断できれば、故障からの復旧が素早く行なえる。
【0004】
一般に、OS(Operating System、基本ソフトウェア)、または、アプリケーションソフトウェアが動作している場合には、それらが備える故障診断プログラムが出力するログファイルを解析することで故障の原因を比較的容易に特定することが可能である。
【0005】
また、ログファイルが生成できないようなOSが動作する前段階での故障要因の解析は、BIOS(Basic Input Output System)プログラムによって、コンピュータが起動された時に、情報処理装置のCPUに接続されたハードウェアの診断と初期化を行うPOST(Post On Self Test)処理中に出力するPOSTコードによって故障原因を知る方法が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0006】
一般に、このPOSTコードは、現在のPOST処理がどこまで進んだかを示すもので、2桁の16進数で表現される。例えば、メインメモリ診断の際のPOSTコードを「22h」とするなど、BIOSソフトウェア及びハードウェアからメーカ毎に予め設定されている。
【0007】
また、POST処理中にエラーを検出すると、CPUボードや情報処理装置本体の表示用LEDに表示したり、ビープ音で知らせたりすることも行なわれている。
【0008】
また、OSが動作する前の段階において、BIOSが起動中、または、POST処理中の段階で発生した故障や、エラーログを確実に記憶する情報処理装置も開示されている(例えば、特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開2007−241832号公報(段落0029〜0097)
【特許文献2】特願2007−064227号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に示すような、従来の情報処理装置においては、故障を解析するための専用のプロセッサを備え、記憶したPOSTコードを解析する手段を備えているが、デスクトップ型の小型パソコンなどの情報処理装置においては、記憶したPOSTコードのログファイルを他の故障解析装置に転送しなければ故障要因の解析が困難であることや、素早く故障から復旧させることが困難である問題がある。
【0010】
さらに、情報処理装置の起動時においては、電源の出力低下やCPUチップの温度異常など、POST処理では判別できない故障と、周辺装置、メモリ、及びキーボードの故障といったPOST処理で判別可能な故障が、同時または連鎖的に発生した場合には、故障の原因をその場で判定することが困難である。
【0011】
例えば、情報処理装置が起動し、POST処理としてメインメモリの初期化を行なっている段階で、POSTコード表示用LEDに「22h」が表示されているとする。この段階で、電源の電圧低下が発生してPOST処理が停止したとする。
【0012】
この状態では、POSTコード表示用LEDは「22h」を示しているため、その場では電源出力の異常でなく、メインメモリの故障と誤った判断が行われる問題が有る。
【0013】
また、メモリの故障と電源の電圧低下とのどちらが先に発生したのかを判断することができない、故障からの復旧に時間がかかる問題がある。
【0014】
本発明は上記問題点を解決するために成されたもので、情報処理装置の起動時において、連鎖的に発生した故障要因信号を時系列にその場で容易に表示させ、故障からの復旧作業を容易に行えるようにした故障要因表示機能を備えた情報処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために、本発明の故障要因表示機能を備えた情報処理装置は、プログラムを実行する演算処理部、演算処理部の周辺装置,及び当該演算処理部及び周辺装置の故障要因信号を処理する故障要因処理部とから成る情報処理装置であって、前記演算処理部は、起動時のPOST処理を実行する中央演算処理部と、前記演算処理部及び前記故障要因処理部に供給する電源部とを備え、前記中央演算処理部は、前記POST処理を実行するためのBIOSプログラムを記憶するメモリ部と、当該中央演算処理部の温度異常を検出する温度センサと、前記BIOSプログラムを実行してPOSTコードを出力するCPU部と、前記温度センサ及び前記POSTコードを受信して時系列に出力する故障要因信号インタフェース部とを備え、前記電源部は、前記演算処理部及び前記故障要因処理部に供給する電源回路と、当該電源回路の出力低下を検出し、前記故障要因処理部に送信する電圧低下検出回路とを備え、前記故障要因処理部は、前記POSTコード信号、前記温度異常信号、及び前記出力低下信号から成る故障要因信号を受信して時系列に記憶・表示させるための故障要因記憶制御部と、前記故障要因信号を記憶する不揮発性メモリと、前記故障要因記憶制御部から出力された故障要因信号を表示させる表示部と、前記不揮発性メモリに記憶した前記故障要因信号の表示順を発生した時系列順方向、または、その逆方向を指定し、更新を指令する表示更新スイッチとを備え、情報処理装置の故障要因の表示を、故障要因の発生した時系列順方向、もしくはその逆方向にインクリメントして表示させるようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、故障要因表示機能を備えた情報処理装置の起動時において、連鎖的に発生した故障要因信号を時系列にその場で容易に表示させることが出来るので、故障からの復旧作業を容易に行える故障要因表示機能を備えた情報処理装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1は、本発明による故障要因表示機能を備えた情報処理装置の構成図である。
【0018】
本発明による故障要因表示機能を備えた情報処理装置は、演算処理部1と、故障要因処理部2と、周辺装置3とから成り、具体的な製品では、ノート型パソコン、デスクトップパソコンが適用される。また、周辺処理装置3は、システムの要求によって最適な入出力機器、例えば、ハードディスク装置などが適宜選択される。
【0019】
次に、各部の構成について説明する、演算処理部1は、起動時のPOST処理を実行する中央演算処理部11と、演算処理部1及び故障要因処理部2に供給する電源部12とから成る。
【0020】
また、中央演算処理部11は、POST処理を実行するためのBIOSプログラムを記憶するメモリ部11cと、中央演算処理部11に実装されるICチップの温度異常を検出する温度センサ11a1と、BIOSプログラムを実行してPOSTコードを出力するCPU部11aとそのCPUバス11eと、周辺装置3との入出力インタフェース部11dと、温度センサ11a1の温度異常信号とCPU部11aで処理したPOSTコード信号とをCPUバス11eを介して受信し、故障要因処理部2に送信する故障要因信号インタフェース部11bとからなる。
【0021】
そして、故障要因インタフェース部11bは、CPU部11aがBIOSプログラムを実行してCPUバス11eに出力したPOSTコード信号と温度センサが出力した温度信号とを受信して、出力された夫々の信号を発生した時系列順に故障要因記憶制御部21に送信する。
【0022】
さらに、CPU部11a及び故障要因処理部2に供給されるシステムリセットスイッチ11fを備える。
【0023】
また、電源部12は、演算処理部1及び故障要因処理部2に供給する電源回路12aと電源回路12aの予め設定される出力規定値以下となる出力低下を検出し、故障要因処理部2に送信する電圧低下検出回路12bとを備える。
【0024】
また、電源部12は、電源回路12aの出力が正常値の範囲以下に低下した場合でも、故障要因信号が不揮発性メモリ22に正しく記憶されるように図示しない二次電池でバックアップしておく。
【0025】
次に、故障要因処理部2は、POST信号、温度異常信号、及び出力低下信号から成る故障要因信号を時系列に記憶・表示させるための故障要因記憶制御部21と、故障要因信号を記憶する不揮発性メモリ22と、故障要因記憶制御部21で選択された故障要因信号を表示させる表示部23と、不揮発性メモリ22に記憶した故障要因信号を発生した時系列順方向、または、その逆の方向を指定して、故障要因を順次更新して表示させるための表示更新スイッチ24とを備える。
【0026】
さらに、表示更新スイッチ24は、不揮発性メモリ22に記憶された故障要因信号を時系列方向、またはその逆方向のいずれかの方向を指定する表示方向指定スイッチ24aと、指定された表示方向で表示される故障要因信号を一つずつ順次インクリメントするための更新釦24bとを備える。
【0027】
そして、故障要因記憶制御部21は、演算処理部1から送信される故障要因信号を時系列に不揮発性メモリ22に記憶させるとともに、演算処理部1が故障要因信号を送信して停止した場合、表示方向指定スイッチ24aで設定された方向で、更新釦24bが押される毎に故障要因信号を順次インクリメントして表示部23に出力する。
【0028】
次ぎに、このように構成された情報処理装置の動作について説明する。通常、情報処理装置の電源スイッチ13をオンすると、予め組み込まれたPOST処理が実行され、OS及びアプリケーションソフトウェアが立ち上がる。
【0029】
そして、情報処理装置の起動後のPOST処理で検出された故障要因信号、温度センサ11a1の温度異常、及び電源の電圧低下が発生した順に、時系列に不揮発性メモリ22に記憶される。
【0030】
このように構成された情報処理装置は、電源スイッチ12cをオンしてからOSが立ち上がる前の故障要因信号を漏れなく記憶するとともに、記憶した故障要因信号を遡って、または、発生した時系列順に表示させることで、起動時に、連鎖的に発生した故障要因信号であっても、素早くその場で故障からの復旧作業が容易に行える。
【0031】
本発明は、上述した実施例に何ら限定されるものではなく、故障要因信号の時系列に記憶させ、記憶した故障要因信号を発生した時系列順、またはその逆に遡って読み出して表示させるものであれば良く、故障要因信号の構成、記憶させるメモリは、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の故障要因表示機能を備えた情報処理装置の構成図。
【符号の説明】
【0033】
1 演算処理部
2 故障要因処理部
3 周辺装置
11 中央演算処理部
11a CPU部
11a1 温度センサ
11b 故障要因インタフェース部
11c メモリ部
11d 入出力インタフェース部
11e CPUバス
11f システムリセットスイッチ
12 電源部
12a 電源回路
12b 電圧低下検出回路
12c 電源スイッチ
21 故障要因記憶制御部
22 不揮発性メモリ
23 表示部
24 表示更新スイッチ
24a 表示方向指定スイッチ
24b 更新釦

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プログラムを実行する演算処理部、演算処理部の周辺装置、及び当該演算処理部及び周辺装置の故障要因信号を処理する故障要因処理部とから成る情報処理装置であって、
前記演算処理部は、起動時のPOST処理を実行する中央演算処理部と、前記演算処理部及び前記故障要因処理部に供給する電源部とを備え、
前記中央演算処理部は、前記POST処理を実行するためのBIOSプログラムを記憶するメモリ部と、当該中央演算処理部の温度異常を検出する温度センサと、前記BIOSプログラムを実行してPOSTコードを出力するCPU部と、前記温度センサ及び前記POSTコードを受信して時系列に出力する故障要因信号インタフェース部とを備え、
前記電源部は、前記演算処理部及び前記故障要因処理部に供給する電源回路と、当該電源回路の出力低下を検出し、前記故障要因処理部に送信する電圧低下検出回路とを備え、
前記故障要因処理部は、前記POSTコード信号、前記温度異常信号、及び前記出力低下信号から成る故障要因信号を受信して時系列に記憶・表示させるための故障要因記憶制御部と、前記故障要因信号を記憶する不揮発性メモリと、前記故障要因記憶制御部から出力された故障要因信号を表示させる表示部と、前記不揮発性メモリに記憶した前記故障要因信号の表示順を発生した時系列順方向、または、その逆方向を指定し、更新を指令する表示更新スイッチとを備え、
情報処理装置の故障要因の表示を、故障要因の発生した時系列順方向、もしくはその逆方向にインクリメントして表示させるようにしたことを特徴とする故障要因表示機能を備えた情報処理装置。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2010−152683(P2010−152683A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−330658(P2008−330658)
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】