説明

散乱および吸光分析を行うシステム

【課題】臨床診断において散乱分析および吸光分析を行うための光学システムを提供する。
【解決手段】本発明の光学システムは、光路において光軸と平行な平行光を発するための光源と、少なくとも1つの試料把持位置を含む試料把持ユニットと、試料把持位置において光路上に配置されている試料を透過した光を測定する光学検出器とを含む。この光学システムはさらに調節可能な光角セレクタを含み、この光角セレクタは、散乱分析が行われている場合には、試料を透過し、かつ一定の値よりも大きな角度で光軸から発散する光が検出器に到達することを妨げるように調整される。またこの光角セレクタは、吸光分析が行われている場合には、試料を透過し、かつ一定の値よりも小さな角度で光軸から発散する光を検出器に到達させるように調整される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の技術分野は、散乱物質が吸光分析を干渉し得る臨床診断において、散乱および吸光分析を行うための光学システムおよび方法である。
【背景技術】
【0002】
生体試料などの試料の分析に用いられる機器のいくつかは、試料を照射するための光源と、光度測定を行うための光学検出器とを含む。臨床化学およびいくつかの免疫化学の分析においては、例えば、液体試料を収容するキュベットを通る光の透過が測定される。測定結果は減光データを出すために用いられ、このデータとは入力光強度と試料を透過した後の光強度との比率である。減光は、試料による光の吸収または散乱のいずれかにより生じ得る。吸光の場合には、通常選択された波長における、特定の物質による光の選択的な吸収によって減光が生じる。また散乱の場合には、担体液体中の粒子や滴により光が全方向にそれることによって減光が生じる。散乱は通常、波長からは独立したものである。特に、散乱は溶液中の高分子または粒子の濃度を測定するために用いられ得る。1つまたはそれ以上の種類に対して一定の全体濃度を与えると、散乱信号が溶液中の量平均分子量の直接の指標となり、錯体が形成または分離されるに従って変化する。それゆえ、表面が検体結合基で誘導体化されているラテックスビーズなど、試料中に存在する検体と錯体を形成する試薬がこの種の分析で通常用いられ、この分析は比濁分析とも呼ばれる。
【0003】
このようにして、臨床診断の状態を示し得るような試料中の検体の存在および/または濃度を、応答信号を測定することによって決定できる。
【0004】
吸光および散乱の減光測定のどちらの形態も、起こり得る干渉、すなわち測定において偏差や誤差を導き得る、試料中の望ましくない物質の干渉を被る。
【0005】
散乱分析において、減光は、試料中の目的物質によって生じる散乱、または比濁分析の場合と同様に目的物質と1つ以上の試薬との反応工程によって生じる散乱によるものである。この測定は、しかしながら、例えば高脂血症の試料の場合に誤りを生じるおそれがある。試料中に懸濁する脂質は、実際には散乱を引き起こすものとしても知られており、ゆえに目的物質の測定を干渉するものとして知られている。
【0006】
散乱分析における他の種類の干渉は、散乱の測定を干渉する吸光物質である。しかしながら散乱はいずれの波長でも観察でき、吸光による干渉は通常特定の波長範囲に制限されるので、通常、測定波長の適切な選択によって干渉を回避することが可能である。
【0007】
吸光分析における干渉は、高脂血症の試料における脂質など、吸光測定を妨げる望ましくない物質によって生じる散乱によるものである。
【0008】
散乱による干渉はいずれの波長においても存在するので、散乱に対する感度は、自動的に吸光分析の妨害を引き起こす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、散乱および吸光分析の両方に最適化された光学システムを提供することにある。
【0010】
この目的は光学システム中の光角セレクタにより達成され、この光角セレクタは、散乱分析が行われている場合には平行光といった発散の小さな光を検出させ、吸光分析が行われている場合には発散がより強力な光を検出器に到達させるように調整されている。
【0011】
本発明の利点は、散乱分析が行われている場合には散乱への感度を維持できる一方で、吸光分析が行われている場合には散乱への感度を除去または減少できることにあり、結果として散乱による干渉に対する感度が低くなる。すなわち、吸光分析に対する散乱による干渉の影響は、散乱分析における感度を損なうことなく減少され得る。本発明は、散乱分析および吸光分析の両方に同一の光学システムおよび/または同一の機器を使用することを可能にするので、コストの節約、空間の節約および複雑さの減少もまた達成できる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、臨床診断において散乱分析および吸光分析を行うための光学システムに関する。この光学システムは、光路において光軸と平行な平行光を発するための光源と、少なくとも1つの試料把持位置を含む試料把持ユニットと、試料把持位置において光路上に配置されている試料を透過した光を測定する光学検出器とを含む。この光学システムはさらに調節可能な光角セレクタを含み、この光角セレクタは、
焦点距離(f)を有する少なくとも1つのレンズ(59)および焦点距離(f)に配置される、可変な開口(58)を備える絞り(57)またはスイッチで切り替え可能なピクセルを備えるLCD(57’)、
可変な焦点距離(f)を有するズーム対物レンズ(83)としての、一群のレンズ(80、81、82)およびこれらレンズ間の相対距離を変更するドライバ、および
前記光軸(51)に沿った、試料把持位置(22)と検出器(70)との間の相対距離を変更するドライバ(84)
のうちの少なくとも1つを含む。
【0013】
散乱分析に際して、上述の光角セレクタは、試料を透過し、かつ5度未満の角度で光軸から発散する光のみを検出器に到達させるように調整されるべく適合される。
【0014】
吸光分析に際して、上述の光角セレクタは、試料を透過しかつ60度未満の角度で光軸から発散する光を検出器に到達させるように調整されるべく適合される。
【0015】
好適な実施形態によれば、散乱分析に際して、上述の光角セレクタは、試料を透過しかつ3度以下の角度で光軸から発散する光のみを検出器に到達させるように調整されるべく適合される。
【0016】
本発明によれば、光学システムは分離したユニットか、分析機器に一体化された構成部品またはモジュールである。とりわけこの光学システムは、試料把持ユニットに配置される試料を通して、制御された様態で光を導くことと、試料中に存在する検体を光学分析するために、例えば吸光および散乱などの光透過における変化を測定することを可能にする。この光学システムユニットは、しかしながら、さらに他の分光測定を行うように構成されてもよい。また、一時的な静的測定、時間分解測定、またはその両方を伴ってもよい。
【0017】
試料把持ユニットは、少なくとも1つの試料把持位置を含むアセンブリである。試料把持位置は、分析されるべき試料を直接受け取る容器、チューブまたはチャネルとして適合されてもよい。代替的には、試料把持位置は、試料容器、例えば試料がキュベット中に配置されている光学キュベットを受け取る容器、フレームまたはアームとして適合されてもよい。この試料把持ユニットは、例えば少なくとも一方向に移動する直線状または回転型のコンベヤとして具体化されてもよく、1つまたはそれ以上の電気モータにより駆動され、前方への移動を行うことができるロボットアームとして具体化されてもよい。一実施形態によれば、試料把持ユニットは多数の試料把持位置を含み、この試料把持位置は、確定した分析順序に従って光路上に1つずつ配置される。好適な実施形態によれば、試料把持ユニットは、多数の光学キュベットを受け取り、光路上、すなわち光学システムの他の構成要素との光学的アラインメントにおいてキュベットを1つずつ移動させるために、多数の試料把持位置を含むロータとして組み立てられる。
【0018】
この光学システムはとりわけ生体試料の分析に適している。試料は、好ましくは、1つまたはそれ以上の目的とする検体が発見される可能性のある液体溶液であって、例えば血液、血清、血漿、尿、母乳、唾液、脳脊髄液などの体液である。試料は、そのまま分析されても他の溶液で希釈された後に分析されてもよく、また、例えば臨床化学分析および免疫分析を行うために、試薬と混合された後に分析されてもよい。光学システムは、例えば凝固分析、凝集分析、比濁分析において化学または生体反応の結果を検出するため、または化学または生体反応の進行を観察するために、散乱分析の実施において有利に用いられてもよい。散乱分析によって測定されている検体の例は、ほんの一例に過ぎないが、DダイマーおよびC反応性蛋白である。光学システムは、検体の他の一例に過ぎないが、アルブミンおよびグルコースなどの臨床化学検体の定性および/または定量分析のための吸光分析の実施において有利に用いられてもよい。ゆえに、測定される検体によって、本発明の光学システムは散乱分析モードまたは吸光分析モードに切り替えられ得る。
【0019】
本発明の光源は、使用可能な範囲で平行光を発することができる、光学システム内のユニットである。「使用可能な」とは、試料を通して導かれる光が、試料中に存在する検体の濃度を測定できるような、選択された波長または波長帯のことを言う。
【0020】
この光源は、少なくとも1つの発光エレメントを含む。発光エレメントは、白熱灯、エレクトロルミネセントランプ、放電灯、光輝度放電ランプおよびレーザなどの電力線源である。
【0021】
一実施形態によれば、この少なくとも1つの発光エレメントは例えばハロゲンランプであって、ハロゲンランプは全ての白熱光電球と同様、近紫外線から遠赤外線まで連続的かつ広範囲にわたって光を生み出す。
【0022】
別の実施形態によれば、この少なくとも1つの発光エレメントは発光ダイオードまたは「LED」である。LEDは通常、加えられた電気エネルギーを光に変換する無機半導体ダイオードである。LEDは、高分子または低分子(有機または無機)の有機発光ダイオード(OLED)でもよく、端発光ダイオード(ELED)、薄膜エレクトロルミネセント素子(TFELD)、無機ベースの量子ドット型の「有機LED」および燐光性OLED(PHOLED)でもよい。
【0023】
平行光はほぼ平行な光線の光なので、距離に伴う発散が最小限である。光は、多数の方法により平行にでき、例えばコリメータレンズおよびコリメータミラーなど、光学分野で公知のコリメータを用いて平行にすることができる。
【0024】
ある実施形態によれば、光源は発せられた光を平行にするためのコリメータを含む。また別の実施形態によれば、発光エレメントは、既に平行にされた光を発することができ、これは例えばレーザ源の場合などである。
【0025】
本発明の光学検出器は光検出器であって、これは電磁エネルギーを電気信号に変換し、単素子光学検出器と多素子光学検出器またはアレイ光学検出器の両方を含む装置である。したがって、光学検出器は、光学電磁信号を監視し、電気出力信号、または光路に配置されている試料中の検体の存在および/または濃度を示すベースライン信号に関する応答信号を提供することができる装置である。このような装置としては、例えば、アバランシェフォトダイオードを含むフォトダイオード、フォトトランジスタ、光導電検出器、リニアセンサアレイ、CCD検出器、CMOSアレイ検出器を含むCMOS光学検出器、光電子増倍管、および光電子増倍管アレイが挙げられる。ある実施形態によれば、フォトダイオードや光電子増倍管などの光学検出器は、信号を調整または処理する付加的な電子機器をさらに含んでいてもよい。例えば、光学検出器は、少なくとも1つのプリアンプ、電子フィルタ、または積分回路を含んでもよい。適切なプリアンプは、積分プリアンプ、トランスインピーダンスプリアンプ、および電流増幅(電流ミラー)プリアンプを含む。一実施形態によれば、検出器はCCDまたはCMOS型のものである。また別の実施形態によれば、検出器はフォトダイオードまたはPMT型のものである。
【0026】
光路は光学系の構成であって、試料把持ユニットに配置されている試料を通して光源から光学検出器まで、制御された方法で光を導くことを可能にする。光軸は、光源から検出器まで移動する際に、光が進む平均的な経路を示す想像線である。光路は、レンズ、ミラー、開口、フィルタ、シャッター、遮熱材、光ファイバー、光混合エレメント、分散エレメントなどの構成要素を含んでいてもよい。分散エレメントは、透過回析格子または反射回析格子でもよく、透過光を受け取りその光を複数のスペクトル成分へ分散するよう構成されたモノクロメータまたはポリクロメータであってもよい。また、分散エレメントはプリズムなどの反射エレメントでもよい。
【0027】
本発明によれば、光学システムはさらに、調節可能な光角セレクタを含む。光角セレクタは、少なくとも1つの可動部材を備え、可動部材の動作に応じて、試料を透過し検出器に到達する光の部分に影響を及ぼす。とりわけ光角セレクタは、光軸からの発散角度に応じて試料から発する光線を選択するという機能を有する。入射角の方向によるものではなく、試料中の物質の散乱による光軸からの発散を、小さいものであっても検出するために、試料を光軸と平行な平行光で照射することが重要である。散乱物質が試料中に存在しない場合には、平行光線は試料を通過した後も光軸に平行なままだが、散乱物質が存在する場合には、平行光線は散乱物質の濃度に比例した角度だけ、光軸から発散する。
【0028】
分析の感度は、対照、例えばブランク溶液と比較した際の、変化を生じさせる試料中の物質の濃度の関数としての、透過における変化である。散乱への感度が高いということは、濃度のパリティでの透過における変化が大きいことを意味する。とりわけ、散乱分析は透過において検出される変化が小さければ感度が高いと言え、すなわち、光軸から5度未満、好ましくは3度未満の角度だけ発散している光が検出される場合である。角度が小さいほど分析である散乱への感度が高い。ゆえに光角セレクタは、散乱分析が行われている際には、5度未満の角度で光軸から発散している光のみを検出器に到達させ、言い換えれば、5度よりも大きな角度の光を遮断するように調整される。非常に感度の高い散乱分析を実行するために、角度はできる限り減少されるべきであって、例えば、試料を通して透過され、かつ1度よりも大きな角度で光軸から発散している光を遮断する。
【0029】
分析は、5度よりも大きな角度で光軸から発散している光が検出され得る場合に、散乱に対して感度が低いと言え、角度が大きいほど分析である散乱に対して感度が低い。とりわけ、散乱による干渉に対して感度が低い吸光分析が行われなければならない場合には、試料から発せられている光のできる限り多く、好ましくは全ての光が検出されることが重要であって、ゆえに光の角度は関係ない。しかし実際には、60度よりも大きな角度の発散を検出することは、技術的に困難または費用がかかる。そこで光角セレクタは、吸光分析が行われている場合に、試料を通して透過され、かつ60度よりも小さな角度で光軸から発散している光を、検出器に到達させるように調整されている。
【0030】
それゆえ本発明の光角セレクタは、試料を通して透過されるどの光線が検出されるかを、分析の種類、すなわち散乱分析または吸光分析によって選択でき、また散乱への感度も所望の感度にできる装置である。
【0031】
一実施形態によれば、光角セレクタは可変な開口を備える絞りを含み、この絞りは分析の種類および所望の散乱への感度に従って開口を変化させ、開口が小さいほど散乱への感度が高い。本実施形態において、光路は好ましくは試料把持位置と絞りとの間に位置づけられる集束レンズを含み、ここで集束レンズと絞りとの間の距離は、焦点距離fと一致する。試料把持位置と集束レンズとの間の距離は、試料から発せられる光を全て受け取るのに充分な大きさであれば、それほど重要ではない。とりわけ、大きなレンズの使用およびそれに伴う費用の増加を避けるために、この距離は数ミリメートルに制限される。
【0032】
焦点距離fを有するレンズであって、レンズから距離fのところにあり、半径rの開口を有する絞りと結合されたレンズは、アークサインr/fと同一のカットオフ角αを得る(α=sin-1r/f)。言い換えれば、光軸に関してαよりも大きな角度を有する光線は遮断、すなわち検出器への到達を妨げられるが、αよりも小さな角度を有する光線は開口を通過するので検出器に到達する。光角セレクタを調整することはこの場合、絞りの開口を変化させることを意味する。焦点距離とは通常、用いられるレンズの性質であって、ゆえにfは固定されているので、開口の半径rを変更することが異なる角度選択を提供する。この半径が小さいほど開口を通して通過できる光の角度は小さくなり、ゆえに散乱への感度が高くなる。
【0033】
この実施形態の変形例によれば、光角セレクタはスイッチで切り替え可能なピクセルを備えるLCD(液晶ディスプレイ)を含み、各ピクセルは、分析の種類および散乱に対する所望の感度に応じて、光を遮断するためにオフにされ、または光を通過させるLCDの中央部分に透明な開口を形成するためにオンにされるよう構成されている。形成される開口が小さい、すなわち光を検出器に到達させる中央部分におけるピクセルの数が少ないほど、散乱への感度が高い。LCDが機能する原理としては、例えば偏光層の利用がよく知られているが、ここではこれ以上説明しない。もちろん、LCDを異なるセクションに分けることも可能であって、例えば、2つの開口を提供するために少なくとも2つのセクションに分けられる。すなわち、5度未満の角度で光軸から発散する光のみを検出器に到達させる小さな開口を提供するために、中心でオン状態にされた1つの小さなセクションと、この中心部分を囲み、角度の大きな光を検出器に到達させるために、オン状態にされた際に大きな開口を提供するセクションとに分けられる。ゆえにピクセルは、通常LCDのスイッチで切り替え可能なセクションと定義され、異なる形状および大きさのものが想定される。
【0034】
同様の効果は例えば、CCDまたはCMOS型の検出器を用いる場合に達成され得る。この場合中央の小さな部分のみが、小さなカットオフ角を有する光を検出するために用いられ、大きなまたは全部の領域が、角度にかかわらずできる限り多くの光を検出するために用いられる。
【0035】
ある実施形態によれば、光角セレクタは可変な焦点距離を備えるズーム対物レンズとして、一群のレンズおよびこれらレンズ間の相対距離を変更するドライバを含み、この対物レンズは分析の種類および散乱への所望の感度に応じて焦点距離を変更するように構成されており、焦点距離が長いほど散乱への感度が高い。とりわけ、1つまたはそれ以上のレンズが、これらレンズのいずれかを他のレンズに対して動かすドライバと結合されてもよく、これは焦点距離を変更する効果を有する。より長い焦点距離は、検出器に到達できる光の角度がより小さくなることに対応する。ゆえにこの効果は、可変な開口を備える絞りの開口半径を減少させることによって達成される効果と同一である。これは、焦点距離を増加させることによっても散乱への感度が向上することを意味する。
【0036】
一定のまたは可変な開口を備える絞りは、対物レンズの一群のレンズと結合されてもよく、その位置は特定の対物レンズのデザイン、例えば焦点距離の範囲によって変わり得る。
【0037】
ある実施形態によれば、光角セレクタは、試料把持位置と検出器との間の相対距離を変更するためのドライバを含んでおり、このドライバは分析の種類および散乱への所望の感度に応じて距離を変更するように構成されている。距離が長いほど散乱への感度が高い。
【0038】
ある実施形態によれば、このドライバは、検出器の試料把持ユニットに対する距離を変更するために、検出器に結合される。
【0039】
検出器を移動させることは、絞りの開口を変化させることに相当する。検出器の、光を受け取る感度の高い部分、すなわちセンサーの表面は、開口と類似しており、試料把持位置に近づくにつれて角度が大きくなる光の検出を可能にする。これは、可変な開口を有する絞りを含む実施形態と比較した場合にはその大きな開口に類似しており、可変な焦点距離を有する対物レンズを含む実施形態と比較した場合にはその短い焦点距離と類似している。同様に、検出器と試料把持位置との間の距離が大きくなると、発散角度の小さな光のみが検出器に到達する。これは、可変な開口を有する絞りを含む実施形態における小さな開口および可変な焦点距離を有する対物レンズを含む実施形態における長い焦点距離と比較できる。ゆえに、散乱分析が行われている場合には、検出器と試料把持位置との間の距離は、試料を通して透過されかつ5度未満の角度で光軸から発散している光のみを検出器に到達させるように適合される。正確な距離およびそれに伴う角度は、検出器の表面の面積および散乱に対する所望の感度によって決まり、距離が遠いほど分析の感度は高くなる。一方で、吸光分析が行われている場合には、検出器と試料把持位置との間の距離は、試料を通して透過されかつ60度未満の角度で光軸から発散している光を検出器に到達させるように適合される。
【0040】
上記の実施形態は試料把持位置に関して作動する検出器に関して記載されているが、試料把持位置が検出器に関して作動してもよいし、両方が互いに関して作動してもよい。
【0041】
ドライバは光軸と平行な線に沿ってモータにより駆動されるリニアステージまたはアームとして設置されてもよく、このドライバには1つ以上の移動部材が取り付けられる。移動するエレメントおよび移動方向による適合は当然可能である。
【0042】
異なる実施形態を組み合わせることも可能であって、例えば、光角セレクタが、可変な開口を備える絞り、少なくとも1つのレンズ、焦点距離および/または試料把持位置と検出器との間の相対距離を変更するための1つまたはそれ以上のドライバからなる群から選択される少なくとも2つのエレメントの組み合わせを含んでもよい。また代替的には、光角セレクタが、スイッチで切り替え可能なピクセルを備えるLCD、少なくとも1つのレンズ、焦点距離および/または試料把持位置と検出器との間の相対距離を光軸に沿って変更するための1つまたはそれ以上のドライバからなる群から選択される少なくとも2つのエレメントの組み合わせを含んでもよい。
【0043】
好適な実施形態によれば、光学システムは、分析の種類および/または測定される特定の分析パラメータによって、光角セレクタを自動的に調節するための制御ユニットを含む。この制御ユニットは、プログラム可能な論理制御装置として具体化されてもよく、これはプロセスオペレーションプランに基づきオペレーションを行うための命令を備えた、コンピュータが読み取り可能なプログラムを実行する。
【0044】
この制御ユニットは、分析の種類および/または測定される特定の分析パラメータに基づいて、分析の順序、すなわち実行される多数の分析の順番を自動的に決定するように設定されてもよい。このように、例えば、異なる分析の種類が所定の試料または試料のセットに対して行われなければならない場合に起こる、光学システムの再調整による時間差を回避することによって、全体のワークフローが最適化され得る。
【0045】
本発明は、臨床診断において散乱および吸光分析を行うための機器にも言及し、この機器は上述の光学システムを含む。
【0046】
本発明による機器は、ユーザによる検出、例えば診断目的での試料の質的および/または量的な光学評価を補助する装置である。このような機器の例は、臨床化学分析器、凝固化学分析器、免疫化学分析器、尿分析器であって、これらは自立式の機器または上述したモジュールを複数含むシステム中のモジュールとして、化学または生体反応の結果を検出するため、または化学または生体反応の進行を観察するために用いられる。
【0047】
とりわけ、この機器は、試料および試薬のピペット操作、投与、混合を補助するユニット、試料管または試料管を含むラックの取り付けおよび/または取り外し、および/または輸送、および/または保管のためのユニット、試薬コンテナまたはカセットの取り付けおよび/または取り外し、および/または輸送、および/または保管のためのユニットを含んでいてもよい。また分析器は、センサーを含む識別ユニット、例えばバーコードリーダを含んでいてもよい。RFIDなどの代替的な技術も、識別のために用いられ得る。
【0048】
好適な実施形態によれば、この機器はさらに、分析される試料を受け取るための試料受け取りユニットを含む。試料は、例えば採血管などの管の形状や、試料のアリコットを含むより小さなチューブまたは容器の形状で受け取られてもよい。試料は、単一のキャリアまたはホルダに配置されてもよいし、複数の試料のためのラックに配置されてもよい。
【0049】
好適な実施形態によれば、この機器はさらに、分析を行うために試薬を把持する試薬把持ユニットを含む。試薬は例えば、個別の試薬または試薬の群を収容し、適切な容器または保管区画またはコンベヤ内の適切な位置に配置されるコンテナまたはカセットの形状で配置されてもよい。
【0050】
好適な実施形態によれば、この機器はさらに光学キュベットを試料把持ユニットに供給するキュベット供給ユニットを含む。
【0051】
好適な実施形態によれば、この機器はさらに液体処理ユニット、例えばピペット処理ユニットを含み、このユニットは試料および/または試薬を光学キュベットに運ぶためのものである。このピペット処理ユニットは、再利用可能かつ洗浄可能な針、例えばスチール針を含んでいてもよく、使い捨て可能なピペットチップを含んでいてもよい。通常、ピペット処理ユニットは、機器に関してピペットチップまたは針を移動させる自動位置決め装置に操作可能に結合されており、また例えばガイドレールによって平面上で2つの進行方向に動かされ、例えばスピンドルドライブによって平面と直交する第3の移動方向に動かされ得る移送ヘッドに取り付けられてもよい。
【0052】
この機器はさらに、反応の間、試料/試薬混合物を一定の温度に維持するための培養ユニット、ピペットチップまたは針を洗浄するための洗浄ステーション、混合パドルなどを含んでいてもよい。
【0053】
好適な実施形態によれば、この機器は、分析の種類および/または測定される特定の分析パラメータに基づいて、分析の順序、すなわち実行される多数の分析の順番を自動的に決定するための制御ユニットを含む。この制御ユニットは、プログラム可能な論理制御装置として具体化されてもよく、これはプロセスオペレーションプランに基づきオペレーションを行うための命令を備えた、コンピュータが読み取り可能なプログラムを実行する。同一の制御ユニットが光学システムの光角セレクタも制御してもよく、光学システムの第2の制御ユニットと協働してもよい。
【0054】
一実施形態によれば、この機器は複数の光学システムを含む。
【0055】
本発明はまた、臨床診断において散乱および吸光分析を行うための方法にも関し、この方法は、
光路において光軸と平行な平行光を光源から発する工程と、
検出器を用いて、試料把持ユニットにおける光路に配置されている試料を通して透過する光を測定する工程と、
散乱分析が行われている際に、試料を透過し、かつ0.1〜5度の間に含まれる値よりも大きな角度で光軸から発散している光が検出器に到達することを妨げるように、光角セレクタを調整する工程と、
吸光分析が行われている際に、試料を透過し、かつ60度未満の角度で光軸から発散している光を検出器に到達させるように、光角セレクタを調整する工程とを含む。
【0056】
好適な実施形態によれば、この方法は、分析の種類および/または測定される特定の分析パラメータによって光角セレクタを自動的に調節する工程を含む。
【0057】
好適な実施形態によれば、光角セレクタの調節は、分析の種類および所望の散乱への感度によって絞りの開口を変化させる工程を含み、開口が小さいほど散乱への感度が高い。
【0058】
好適な実施形態によれば、この方法は、分析の種類および所望の散乱への感度によって焦点距離を変更するために、レンズ間の相対距離を変更する工程を含み、焦点距離が長いほど散乱への感度が高い。
【0059】
好適な実施形態によれば、この方法は、分析の種類および所望の散乱への感度によって、前記光軸(51)に沿った、試料把持位置と検出器との間の相対距離を変更する工程を含み、距離が長いほど散乱への感度が高い。
【0060】
好適な実施形態によれば、この方法は、分析の種類および/または測定される特定の分析パラメータに基づいて、分析の順序、すなわち行われる多数の分析の順番を自動的に決定する工程を含む。例えば処理能力が問題である場合には、結果として待ち時間が生じるおそれのある連続的な光学システムの再調整を回避するために、一定の数の同じ種類の分析が、第2の種類の分析へと変わる前に行われてもよい。優先順位もまた、例えば試料の安定性により、試料の種類および測定されるパラメータによって自動的に設定され得る。
【0061】
本発明のその他の目的、特徴および利点は、以下の記載および好適な実施形態を図解し、本発明の原理のより詳細な説明に役立つ、付随する図面から明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】臨床診断において散乱および吸光分析を行うための光学システムを概略的に描く図である。
【図2】第1の種類の調節可能な光角セレクタを備える光学システムを概略的に描く図である。
【図3】一実施形態による光角の選択の決定における、光学パラメータ間の関係を概略的に描く図である。
【図4】第2の種類の調節可能な光角セレクタを備える光学システムを概略的に描く図である。
【図5】第3の種類の調節可能な光角セレクタを備える光学システムを概略的に描く図である。
【図6】第4の種類の調節可能な光角セレクタを概略的に参照する図である。
【図7】臨床診断において散乱および吸光分析を行うための機器であって、多数の試料把持位置を備える光学システムを含む機器を概略的に描く図である。
【発明を実施するための形態】
【0063】
図1は、臨床診断において散乱および吸光分析を行うための光学システム100を概略的に描く。光学システム100は光源60を含む。光源60は、例えばハロゲンランプなどの発光エレメント61と、発光エレメント61によって発光された光を平行にするための、コリメータレンズなどのコリメータ63とを含む。平行光50は、光路51’の光軸51と平行である。光の方向は光路51に沿う矢印によって示される。光学システム100はさらに、光路51’内にある試料10を含む光学キュベット20を把持するための、試料把持位置22を含む試料把持ユニット21を含む。光学システム100はさらに、電磁エネルギーを電気信号に変換する、CCDセンサーなどのアレイ光学センサー71を含む光学検出器70を含む。光学システム100はさらに調節可能な光角セレクタ55を含み、この光角セレクタ55は、散乱分析が行われている際には、試料10を透過し、かつ所定の範囲に含まれる数値よりも大きな角度で光軸51から発散している光50’が検出器70に到達することを妨げるように調整されている。またこの光角セレクタ55は、吸光分析が行われている際には、試料10を透過しかつ所定の範囲に含まれる数値よりも小さな角度で光軸51から発散している光50’を検出器70に到達させるように調整されている。光学システム100はさらに、レンズ52、開口53、ミラー54および回折格子56などの光路の構成要素を含み、この回折格子56は、光角セレクタによって選択される光67を受け取り、その光を複数のスペクトル成分68に分散させるように構成されている。センサー71は複数のセクターに分割され、各セクターはある波長帯のために設けられる。
【0064】
図2aおよび2bは、第1の形態の調節可能な光角セレクタ55を備える光学システム100を概略的に描く。光源60は、光軸51に平行な平行光50を提供する。平行光50は、試料把持位置22で光学キュベット20に収容されている試料10を透過する。試料10中の散乱物質の存在により、光50は散乱、すなわち光軸51から発散される。これは、試料10中で異なる方向を示す小さな矢印によって表される。本実施形態によれば、光角セレクタ55は可変な開口58を備えた絞り57を含む。
【0065】
図2aは、散乱分析が行われている場合の実施形態を示す。ここで開口58は調整、例えば絞られており、これは試料10を透過しかつ5度未満の角度αを伴って光軸51から発散する光50’のみを検出器70に到達させるためである。
【0066】
図2bは、吸光分析が行われている場合の実施形態を示し、開口58は調整、例えば広げられており、これは試料10を透過しかつ所定の値、すなわち60度未満の角度αを伴って光軸51から発散する光50’を検出器70に到達させるためである。ゆえに散乱粒子が存在している場合でも、実質的には試料10を透過した全ての光50’が検出器70に到達し、測定される減光は吸光に関連づけられ得る。
【0067】
ゆえに絞り57は、分析の種類、すなわち散乱または吸光によって開口58を変化させ、また所望の散乱への感度によっても開口58を変化させるように構成されており、開口が小さいほど散乱に対する感度が高い。
【0068】
図2a、2bおよび図3では、試料把持位置22と絞り57との間に配置される集束レンズ59が示されている。図3は、図2bに示される形態の光角セレクタ55を拡大したものである。絞り57は集束レンズ59から所定の距離離れて配置されており、この距離はレンズ59の焦点距離fと一致する。焦点距離fを有する集束レンズ59およびレンズ59から距離fだけ離れた位置にあり、半径rを備える開口58を有する絞り57によって、アークサインr/fと同一のカットオフ角αを得る(α=sin-1r/f)。言い換えれば、αよりも大きな角度を有する光線は遮断、すなわち検出器70への到達を妨げられるが、αよりも小さな角度を有する光線は開口58を通過するので検出器70に到達する。試料把持位置22と集束レンズ59との間の距離は、試料から発せられる光を全て受け取るのに充分な大きさであれば、それほど重要ではない。しかし実際には、大きなレンズの使用およびそれに伴う費用の増加を避けるために、この距離は数ミリメートルに制限される。光角セレクタ55を調整することはこの場合、絞り57の開口58を変化させることを意味する。焦点距離fは用いられるレンズ59の性質であって、ゆえにfは固定されているので、開口の半径rを変更することが異なる角度の選択を提供する。この半径rが小さいほど開口58を通して通過できる光の角度αは小さくなり、ゆえに散乱への感度が高くなる。とりわけ、散乱分析には、5度よりも小さい角度αが選択される。例えば焦点距離fが7mmのレンズを用いる場合、5度のカットオフ角αを得るためには約0.6mmの半径rを備える開口58が要求される。非常に感度の高い散乱分析を実行するためには、1度よりも小さな角度α、例えば0.1度に近い角度αが選択される。例えば0.1度のカットオフ角αを得るためには、約0.01mmの半径rを備える開口58が要求される。また感度の低い散乱分析を実行するためには、5度に近い角度αが選択される。通常、例えば1〜3度の角度αが選択される。吸光分析を実行するためには、好ましくは60度未満の角度αが選択される。これは約6mmまたはそれ以下の半径rを有する開口58に対応する。これは、60度未満の角度αを有する光は開口58を通過できるので、検出器70に到達するということを意味する。吸光分析が行われる場合には、原理上は5度未満の角度αも選択され得るが、望ましくない散乱物質によって生じ得る干渉を回避するためには、5度よりも大きい角度αが好ましい。
【0069】
図4aおよび4bは、第2の形態の調節可能な光角セレクタ55を備える光学システム100を概略的に描く。上述の図2a、2bおよび図3の実施形態と異なる部分のみを説明する。本実施形態によれば、光角セレクタ55は、可変な焦点距離fを有するズーム対物レンズ83としての、一群のレンズ80、81、82およびこれらレンズ80、81、82間の相対距離を変更するドライバ(図示せず)を有する。この対物レンズ83は分析の種類および所望の散乱への感度によって焦点距離fを変更するように構成され、焦点距離fが長いほど散乱への感度が高い。とりわけ本実施例では、3つのレンズ80、81、82が描かれ、中央のレンズ81を他の2つのレンズ80、82に対して移動させることが、焦点距離fを変更する効果を有する。異なる数のレンズおよび/または移動部材も用いられ得る。通常、対物レンズ83も開口または可変な開口を有する絞り(図示せず)を含み、実際の変化する位置は特定の光学構造およびレンズ数によって変化する。
【0070】
図4aは散乱分析が行われている場合の実施形態を描き、この実施形態においては、試料10を透過しかつ5度よりも小さい角度αを伴って光軸51から発散している光50’のみが検出器70に到達できるように、対物レンズ83が調整され、すなわち焦点距離fが長くされている。
【0071】
図4bは吸光分析が行われている場合の実施形態を描き、この実施形態においては、試料10を透過しかつ所定の値、すなわち少なくとも60度、よりも小さい角度αを伴って光軸51から発散している光50’が検出器70に到達できるように、焦点距離fが調整、すなわち減少されている。
【0072】
焦点距離fが長くなることは、より小さい角度αを伴う光が検出器70に到達できることに対応する。これは、焦点距離fを長くすることで散乱への感度も高まることを意味し、図2a、2bおよび図3の可変な開口58を有する絞り57の開口半径rを減少させることで達成される効果と類似している。
【0073】
図5aおよび5bは、第3の形態の調節可能な光角セレクタ55を備える光学システム100を概略的に描く。上述の図2a〜図4の実施形態と異なる部分のみを説明する。とりわけ光角セレクタは、検出器70の、光軸51に沿った試料把持位置22に対する距離dを変更するために、検出器に結合されるドライバ84を含む。距離dは分析の種類および所望の散乱への感度によって変更されており、距離dが長いほど散乱への感度が高い。
【0074】
図5aは、散乱分析が行われている場合の状況を描く。検出器70と試料把持位置22との間の距離dは、試料10を透過しかつ5度よりも小さな角度αを伴って光軸51から発散している光50’のみを検出器70に到達させるように適合されてもよい。正確な距離dおよびそれに伴う角度αは、検出器のセンサー表面の面積および散乱分析に対する所望の感度によって決まり、距離dが長いほど分析の感度が高い。
【0075】
図5bは、吸光分析が行われている場合の状況を描く。検出器70と試料把持位置22との間の距離dは、試料を透過しかつ60度よりも小さな角度αを伴って光軸51から発散している光50’を検出器70に到達させるように適合されてもよい。
【0076】
検出器70を移動させることは、絞り57の開口58またはズーム対物レンズ83における焦点距離fを変化させることに相当する効果を有する。
【0077】
図6aおよび6bは、図2aおよび2bの絞り57に取って替わる、第4の形態の調節可能な光角セレクタを参照する。とりわけ図6aおよび6bは、閉鎖(スイッチオフ)および開放(スイッチオン)状態をそれぞれ示すために白黒の正方形によって表されるスイッチで切り替え可能なピクセルを備えるLCD57’を概略的に描く。ピクセルが開放されている際には、ピクセルは光50’が通過し検出器70に到達することを許可する。ピクセルが閉鎖されている際には、ピクセルは光50’を遮断、すなわち光50’が検出器70に到達することを妨げる。本実施形態によれば、この方法はLCDの中央において、光を検出器70に到達させる開放ピクセル58’の数を変更する工程を含み、ピクセルの数は分析の種類および散乱への所望の感度によって変更され、中央における開放ピクセル58’の数が少ないほど、または中央における開放部分が大きいほど、散乱への感度が高い。
【0078】
図6aは、散乱分析が行われている場合の状況を描く。LCD57’の中央における開放ピクセル58’の数を少なくすることにより、図2aおよび2bの絞り57の開口58を絞ることに相当する効果が得られる。開放ピクセル58’の数が少ないほど、散乱への感度が高い。
【0079】
図6bは、吸光分析が行われている場合の状況を描く。LCD57’の中央における開放ピクセル58’の数を多くし、好ましくは全てのピクセル58’を開放する(図示せず)ことにより、図2aおよび2bの絞り57の開口58を開くことに相当する効果が得られ、実質的には全てまたはほとんどの光50’を検出器70に到達させる。
【0080】
図7は、臨床診断において散乱および吸光分析を行うための機器200の一例を概略的に描き、この機器200は図2aおよび2bに示される種類の光学システム100を含む。この光学システムは、多数の試料把持位置22を含む、ロータとして設置される試料把持ユニット21を含む。機器200はさらに、分析される試料を含む試料管(図示せず)を受け取るための試料受け取りユニット201を有する。機器200はさらに、分析を行うための試薬を含む試薬コンテナを把持する試薬把持ユニット202を含む。機器200はさらに、光学キュベットを試料把持ユニット21に供給するためのキュベット供給ユニット203を含む。機器200はさらに、試料および/または試薬を光学キュベット20へと運ぶために、少なくとも1つのピペット処理ユニットなどの、液体処理ユニット204を含む。キュベット20は、試料および/または試薬の追加のため、またはロータ21の周りに配置されるロボットワークステーション(図示せず)による混合操作のために、一時的にロータ21から取り外されてもよい。機器200はさらに、分析の種類および/または測定される特定の分析パラメータに基づいて、分析の順序を自動的に決定するための制御ユニット205を含む。ゆえにロータ21は、確定された分析の順序に従って、試料把持位置を光学システム100の光路51’に1つずつ置くように指示されてもよい。
【0081】
当然、上記記載に鑑みて、本発明の様々な修正および変更が可能である。ゆえに添付の請求項の範囲内であれば、本発明は詳細に考案されたもの以外にも実施され得るということを理解されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
臨床診断において散乱および吸光分析を行うための光学システム(100)であって、
該光学システム(100)が、
光路(51’)における光軸(51)と平行な平行光(50)を発するための光源(60)と、
少なくとも1つの試料把持位置(22)を含む試料把持ユニット(21)と、
前記試料把持位置(22)において前記光路(51’)に配置されている試料(10)を通って透過する光(50’、67)を測定するための光学検出器(70)と、
調節可能な光角セレクタ(55)であって、
焦点距離(f)を有する少なくとも1つのレンズ(59)および前記焦点距離(f)に配置される、可変な開口(58)を有する絞り(57)またはスイッチで切り替え可能なピクセルを有するLCD(57’)、
可変な焦点距離(f)を備えるズーム対物レンズ(83)としての、一群のレンズ(80、81、82)および前記レンズ間の相対距離を変更するドライバ、および
前記光軸(51)に沿った、前記試料把持位置(22)と前記検出器(70)との間の相対距離を変更するドライバ(84)
のうちの少なくとも1つを含んでなる調節可能な光角セレクタ(55)と
を含んでなり、
散乱分析の際には、前記光角セレクタ(55)は、前記試料(10)を透過し、かつ5度未満の角度(α)を伴って前記光軸(51)から発散する光(50’)のみを前記検出器(70)に到達させるように調整されるべく適合され、
吸光分析の際には、前記光角セレクタ(55)は、前記試料(10)を透過し、かつ60度未満の角度(α)を伴って前記光軸(51)から発散する光(67)を前記検出器(70)に到達させるように調整されるべく適合される光学システム(100)。
【請求項2】
散乱分析の際には、前記光角セレクタ(55)が、前記試料(10)を透過しかつ3度以下の角度(α)を伴って前記光軸から発散する光(50’)のみを前記検出器(70)に到達させるように調整されるべく適合される請求項1記載の光学システム(100)。
【請求項3】
前記絞り(57)が、分析の種類および散乱に対する所望の感度によって前記開口(58)を変化させるように構成され、前記開口(58)が小さいほど散乱への感度が高くなる請求項1または2記載の光学システム(100)。
【請求項4】
前記LCD(57’)の各ピクセル(58’)が、分析の種類および散乱に対する所望の感度によって、光を遮断するためにスイッチをオフにされまたは光を通過させるためにスイッチをオンにされるように構成され、光を前記検出器に到達させる中央における前記ピクセル(58’)の数が少ないほど散乱への感度が高くなる請求項1または2記載の光学システム(100)。
【請求項5】
前記対物レンズ(83)が、分析の種類および散乱に対する所望の感度によって、前記焦点距離(f)を変更するように構成され、該焦点距離(f)が長いほど散乱への感度が高くなる請求項1〜4のいずれか1項に記載の光学システム(100)。
【請求項6】
前記ドライバ(84)が、分析の種類および散乱に対する所望の感度によって、前記試料把持位置(22)と前記検出器(70)との間の距離を変更するように構成され、該距離が長いほど散乱への感度が高くなる請求項1〜5のいずれか1項に記載の光学システム(100)。
【請求項7】
分析の種類および/または測定される特定の分析パラメータによって、前記光角セレクタ(55)を自動的に調節するための制御ユニット(205)を含んでなる請求項1〜6のいずれか1項に記載の光学システム(100)。
【請求項8】
臨床診断において散乱および吸光分析を行うための方法であって、
光路(51’)における光軸(51)と平行な平行光(50)を光源(60)から発する工程と、
検出器(70)を用いて、試料把持位置(22)において前記光路(51’)に配置されている試料(10)を通して透過する光(50’)を測定する工程と、
散乱分析が行われている際には、前記試料(10)を透過しかつ5度未満の角度(α)を伴って前記光軸(51)から発散している光(50’)のみが前記検出器(70)に到達するように、光角セレクタ(55)を調整する工程と、
吸光分析が行われている際には、前記試料(10)を透過しかつ60度未満の角度(α)を伴って前記光軸から発散している光が前記検出器(70)に到達するように、前記光角セレクタ(55)を調整する工程とを含んでなる方法。
【請求項9】
分析の種類および/または測定される特定の分析パラメータによって、前記光角セレクタ(55)を自動的に調節する工程を含んでなる請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記光角セレクタ(55)の調整が、
分析の種類および散乱に対する所望の感度によって絞り(57)の開口(58)を変化させ、前記開口(58)が小さいほど散乱への感度が高くなる、開口(58)を変化させる工程、または
分析の種類および散乱に対する所望の感度によって光を前記検出器(70)に到達させるLCD(57’)のピクセル(58’)の数を変更し、前記検出器(70)に到達させる前記ピクセル(58’)の数が少ないほど散乱への感度が高くなる、ピクセル(58’)の数を変更する工程
を含んでなる請求項8または9記載の方法。
【請求項11】
前記光角セレクタ(55)の調整が、分析の種類および散乱に対する所望の感度によって焦点距離(f)を変更するために、レンズ(80、81、82)間の相対距離を変更し、前記焦点距離(f)が長いほど散乱への感度が高くなる、レンズ(80、81、82)間の相対距離を変更する工程を含んでなる請求項8〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記光角セレクタ(55)の調整が、分析の種類および散乱に対する所望の感度によって、前記試料把持位置(22)と前記検出器(70)との間の相対距離を変更し、該距離が長いほど散乱への感度が高くなる、相対距離を変更する工程を含んでなる請求項8〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
分析の種類および/または測定される特定の分析パラメータに基づいて、分析の順序を自動的に決定する工程を含んでなる請求項8〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
臨床診断において散乱および吸光分析を行うための機器(200)であって、
該機器(200)が、
請求項1〜7のいずれか1項に記載の光学システム(100)と、
分析される試料を受け取る試料受け取りユニット(201)と、
前記分析を行うための試薬を把持する試薬把持ユニット(202)と、
前記試料受け取りユニット(201)に光学キュベット(20)を供給するためのキュベット供給ユニット(203)と
試料および/または試薬を前記光学キュベット(20)へ運ぶための液体処理ユニット(204)と
を含んでなる機器(200)。

【図1】
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【図6】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−98282(P2012−98282A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−237325(P2011−237325)
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(501205108)エフ ホフマン−ラ ロッシュ アクチェン ゲゼルシャフト (285)
【Fターム(参考)】