説明

散気装置及び膜分離装置の運転方法

【課題】ブロワを損傷する虞がなく、かつ気液分離装置も必要としない散気装置及び膜分離装置の運転方法を提供する。
【解決手段】汚泥を貯留した好気槽7と、好気槽7に設置した膜分離モジュール12と、該膜分離モジュール12の下方に設置される散気装置14と、該散気装置14へ空気供給管15、空気給排管16を介して気体を供給するブロワ13とを備えた膜分離装置において、空気給排管16に散気装置14の散気管17内を負圧にする負圧発生装置を接続し、前記負圧発生装置が、ブロワ13を利用したエジェクター20であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、散気装置及び膜分離装置の運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、膜分離活性汚泥処理システムの中には、処理槽に配置された膜分離モジュールを用いて被処理水の固液分離を行う膜分離装置を用いるものがある。処理槽内に配置された膜分離モジュールの下方に、ブロワによって空気を供給する散気管が配置され、散気管から放出される空気の気泡により処理槽内の被処理水を曝気すると共に、散気管から放出された空気の気泡が上昇することを利用して気液混合流を生成し、膜分離モジュールを揺動させてろ過面に付着した汚泥を剥離させ膜面の目詰まりを抑制している。
ここで、この散気管に形成された散気孔は、散気によって空気が通過しているが、経時的使用によって散気管に堆積する汚泥や、散気運転を停止した際に沈降しながら堆積する汚泥などにより目詰まりを生じるという問題がある。
そのため、散気管に空気を送るブロワの吸入側を散気管を延長して接続し、ブロワによる散気運転を停止した状態で、再度ブロワを駆動して今度はブロワの吸入側から散気管内を吸引し、散気孔から被処理水を流入させ散気孔のまわりに付着した固形成分を被処理液で溶解除去している(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−62196号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の膜分離装置においては、散気管に空気を供給するブロワの吸入側に散気管を接続するため、散気管の内部に速やかに汚泥を流入させて、散気孔の付着物を取り除くことができる点で有利であるが、散気管から流入した汚泥がそのままブロワの吸入側に至るとブロワが破損するため、ブロワと散気管との間に気液分離装置が必要となるという問題がある。
また、ブロワによって吸入される散気管内の空気は汚泥に晒されているため、例えば、活性汚泥から硫化水素などの腐食性ガスが発生した場合に、ブロワを損傷してしまう虞がある。
【0005】
そこで、この発明は、ブロワを損傷する虞がなく、かつ気液分離装置も必要としない散気装置及び膜分離装置の運転方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載した発明は、被処理液(例えば、実施形態における汚泥)を貯留した処理槽(例えば、実施形態における好気槽7)内に設置されると共に気体供給管(例えば、実施形態における空気供給管15、空気給排管16)を介して気体供給装置(例えば、実施形態におけるブロワ13)に接続され、前記処理槽内に散気管(例えば、実施形態における散気管17)から気体を供給する散気装置において、前記気体供給管に前記散気管内を負圧にする負圧発生装置を接続し、前記負圧発生装置が、流体供給装置(例えば、実施形態におけるブロワ13、原水流入用ポンプ6、汚泥循環ポンプ10、ポンプ66)を利用したアスピレーター(例えば、実施形態におけるエジェクター20、アスピレーター60)であることを特徴とする。
このように構成することで、被処理液や原水や水を液体供給装置により送給する際の流体エネルギーを利用して、アスピレーターによって負圧を発生させ、この負圧により散気管から被処理液を吸引することができる。
【0007】
請求項2に記載した発明は、前記流体供給装置が、原水槽(例えば、実施形態における原水タンク3)から前記処理槽の上流側に配置された無酸素槽(例えば、実施形態における無酸素槽4)に送給される原水或いは前記処理槽と前記無酸素槽との間を循環する汚泥の送給装置(例えば、実施形態における原水流入用ポンプ6、汚泥循環ポンプ10)であることを特徴とする。
このように構成することで、原水槽から無酸素槽に送給される原水或いは処理槽と無酸素槽との間を循環する汚泥の送給装置を有効利用して、アスピレーターによって負圧を発生させ、この負圧により散気管から被処理液を吸引することができる。
【0008】
請求項3に記載した発明は、前記アスピレーターが、前記気体供給装置を利用したエジェクター(例えば、実施形態におけるエジェクター20)であることを特徴とする。
このように構成することで、空気を散気管に送給するブロワやその他気体供給装置によって送給する気体エネルギーを利用してアスピレーターの一形態であるエジェクターによって負圧を発生させ、この負圧により散気管から被処理液を吸引することができる。
【0009】
請求項4に記載した発明は、被処理液(例えば、実施形態における汚泥)を貯留した処理槽(例えば、実施形態における好気槽7)と、該処理槽に設置した膜分離モジュール(例えば、実施形態における膜分離モジュール12)と、該膜分離モジュールの下方に請求項1〜請求項3の何れか一項に記載した散気装置(例えば、実施形態における散気装置14)を備えた膜分離装置の運転方法であって、前記膜分離モジュールをエアスクラビング洗浄しながら被処理液のろ過を行う通常運転と、前記エアスクラビング洗浄を停止し前記散気装置の散気管内を負圧にする負圧発生装置により前記散気管内を負圧にして被処理液を前記散気管の散気孔から流入させ、流入した被処理液で前記散気孔の被処理液の固形成分を除去して前記散気管の目詰まりを解消する洗浄運転を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載した発明によれば、被処理液や原水や水を流体供給装置により送給する際の流体エネルギーを利用して、アスピレーターによって負圧を発生させ、この負圧により散気管から被処理液を吸引することができるため、気体供給管を介して散気装置へ空気を供給するブロワの吸入側の負圧を利用し被処理液を吸引した場合のように気液分離装置を必要とせず、ブロワが被処理液を吸い込んだり、被処理液から発生する酸化性のガスを吸入してブロワを破損させることなく散気管の目詰まりを防止できる。
請求項2に記載した発明によれば、原水槽から無酸素槽に送給される原水或いは処理槽と無酸素槽との間を循環する汚泥の送給装置を有効利用して、アスピレーターによって負圧を発生させ、この負圧により散気管から被処理液を吸引することができるため、気体供給管を介して散気装置へ空気を供給するブロワの吸入側の負圧を利用し被処理液を吸引した場合のように気液分離装置を必要とせず、ブロワが被処理液を吸い込んだり、被処理液から腐食性のガスを吸入してブロワを破損させることなく散気管の目詰まりを防止できる。
請求項3に記載した発明によれば、空気を散気管に送給するブロワやその他気体供給装置によって送給する気体エネルギーを利用してアスピレーターの一形態であるエジェクターによって負圧を発生させ、この負圧により散気管から被処理液を吸引することができるため、気体供給管を介して散気装置へ空気を供給するブロワの吸入側の負圧を利用し被処理液を吸引した場合のように気液分離装置を必要とせず、ブロワが被処理液を吸い込んだり、被処理液から発生する腐食性のガスを吸入してブロワを破損させることなく散気管の目詰まりを防止できる。
請求項4に記載した発明によれば、気体供給管を介して散気装置へ空気を供給するブロワの吸入側の負圧を利用し被処理液を吸引した場合のように気液分離装置を必要とせず、ブロワが被処理液を吸い込んだり、被処理液から発生する酸化性のガスを吸入してブロワを破損させることなく散気管の目詰まりを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明の実施形態の膜分離装置を用いた膜分離活性汚泥処理システムを模式的に示す説明図である。
【図2】図1の要部説明図である。
【図3】この発明の実施形態の膜分離モジュールと散気装置の斜視図である。
【図4】図3の部分拡大斜視図である。
【図5】この発明の実施形態の散気装置の斜視図である。
【図6】この発明の第1実施形態の通常運転状態を示す要部説明図である。
【図7】この発明の第1実施形態の洗浄運転状態を示す要部説明図である。
【図8】この発明の第2実施形態の通常運転状態を示す要部説明図である。
【図9】この発明の第2実施形態の洗浄運転状態を示す要部説明図である。
【図10】この発明の第3実施形態の通常運転状態を示す要部説明図である。
【図11】この発明の第3実施形態の洗浄運転状態を示す要部説明図である。
【図12】この発明の第4実施形態の通常運転状態を示す要部説明図である。
【図13】この発明の第4実施形態の洗浄運転状態を示す要部説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、この発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、この発明の実施形態の膜分離装置を用いた循環式硝化脱窒法による膜分離活性汚泥処理システムを模式的に示す説明図である。
以下、循環式硝化脱窒法のフローに基づき説明するが、循環式硝化脱窒法に限らず、嫌気好気法(AO法)、循環式嫌気好気法(A2O法)など、いずれの方法と組み合わせても良い。
この膜分離活性汚泥処理システムは、工業用排水や生活排水中に含まれる有機物、或いは微生物や細菌類を含む排水を生物学的に処理し、中空糸膜を用いて固液分離を行うシステムである。
【0013】
浄化処理対象となる汚水が、例えば、50mmの一次スクリーン1と1mmの二次スクリーン2でろ過された後に、原水として原水タンク3に収容されている。
原水タンク3の下流側には無酸素槽4が配置されている。原水タンク3と無酸素槽4とは原水配管5で接続され、原水配管5の開口端が無酸素槽4の上方で開口し、原水配管5に原水流入用ポンプ6が介装されている。この原水流入用ポンプ6によって原水が原水タンク3から無酸素槽4に供給される。
【0014】
無酸素槽4の下流側には好気槽7が配置されている。無酸素槽4と好気槽7とは、汚泥を無酸素槽4から好気槽7に供給するオーバーフロー経路8と、汚泥を好気槽7から無酸素槽4へ戻す戻り配管9で接続されている。戻り配管9の開口端は無酸素槽4の上方で開口している。戻り配管9には汚泥循環ポンプ10が介装され、オーバーフロー経路8でオーバーフローさせながら無酸素槽4と好気槽7との間で汚泥が循環できるようになっている。尚、無酸素槽4には槽内を攪拌する攪拌装置11が収容されている。
【0015】
好気槽7は収容された汚泥内に複数の膜分離モジュール12を浸漬した状態で備えている。膜分離モジュール12の下方にはブロワ13に接続された散気装置14が配置されている。ブロワ13から延びる空気供給管15にはエジェクター20の入口ポート21が接続され、エジェクター20の出口ポート22には開閉バルブ25が接続されている。エジェクター20には、エジェクター20のノズル19の周囲の負圧室23に連通するように空気給排管16が接続され、空気給排管16は散気装置14の散気管17に接続されている。これら好気槽7、膜分離モジュール12、散気装置14、ブロワ13、空気供給管15、空気給排管16及びエジェクター20が膜分離装置を構成している。ここで、エジェクター20はアスピレーターの一種である。アスピレーターとは流体が流れる際のベンチュリ効果を利用して減圧状態を作り出すための器具であって、その中でエジェクターは流体として空気や水蒸気を利用するものをいう。
【0016】
好気槽7の下流側には処理水タンク27が配置されている。膜分離モジュール12の浄水側のポートである吸水口51c(図4参照)と処理水タンク27は処理水配管28で接続され、処理水配管28に介装されたろ過ポンプ29によって、膜分離モジュール12で吸引ろ過された処理水は更にろ過されて処理水タンク27に供給される。処理水配管28には化学的浄化ユニット30からポンプ31によって供給される浄化液の浄化液配管32が接続されている。尚、処理水タンク27には排水管33が接続されている。
【0017】
図2に具体的に示すように、好気槽7には膜分離モジュール12が各々散気装置14を備えて4組配置されている。各膜分離モジュール12の吸水口51cから処理水配管28に至る集水管35には各々流量調整バルブ34が設けられている。また、エジェクター20の負圧室23に接続された空気給排管16には、各散気装置14に至る分岐管24が接続され、各分岐管24には空気量調整バルブ26が設けられている。
【0018】
図3に示すように、好気槽7に載置されるフレーム39に膜分離モジュール12とその下方に所定間隔をおいて散気装置14が一体固定されている。
膜分離モジュール12は長さ方向を垂直に向けた複数枚の中空糸膜エレメント40を並列させたものが支持固定されている。
【0019】
中空糸膜エレメント40は、多数本の多孔質中空糸膜40aを等間隔で隣接して同一平面上に配置した膜シート41の上端開口端部をポッティング材41aを介してろ過水取出管42に連通支持させると共に、下端を閉塞して同じくポッティング材41aを介して下枠43により固定支持させ、ろ過水取出管42及び下枠43の各両端を一対の縦杆44によって固定されている。
多数枚の中空糸膜エレメント40が、シート面を鉛直にして上下端面が開口した矩形筒状の上部壁材50のほぼ全容積内に収容されて並列支持されている。
【0020】
図4に示すように、各中空糸膜エレメント40のろ過水取出管42の一端には各多孔質中空糸膜40aによってろ過された良質のろ過水の取出口42aが形成されている。各取出口42aには、L型継手42bがシール材を介して液密に取り付けられている。また、上部壁材50の上端の取出口42aが形成されている側の端縁に沿って集水ヘッダー管51が横設されている。この集水ヘッダー管51は複数の取出口42aに対応する位置に各々集水口51aを備え、各集水口51aに取出口42aと同様のL型継手51bがシール材を介して液密に取り付けられている。
【0021】
ろ過水取出管42の取出口42aと集水ヘッダー管51の集水口51aとが、各々に取り付けられたL型継手42b,51b同士を接続することにより通水可能に連結されている。集水ヘッダー管51の一端部には、ろ過ポンプ29と処理水配管28、集水管35を介して接続される吸水口51cが形成されている。
ここで、集水管35は集水ヘッダー管51から好気槽7の液面より高い上方位置まで立ち上がり、それぞれが水平に配された処理水配管28に接続されている。
【0022】
図5に示すように、散気装置14は、上部壁材50の下端に結合された同じく上下が開口する矩形の下部壁材54を備えている。下部壁材54の4隅には下端から下方に延びる4本の支柱54aが設けられ、この下部壁材54の底部に散気装置14が収容固設されている。散気装置14は空気給排管16から分岐する分岐管24を備えている。分岐管24の開口端は下部壁材54の正面側内壁面に沿って幅方向に水平に延設された分岐管路55の一端部に接続されている。分岐管路55の長さ方向には、所定の間隔をおいて梯子状に配され、一端が分岐管路55に連通して固設されると共に、他端が背面側の下部壁材54の内壁面に沿って水平に固設された複数本の散気管17が設けられている。散気管17には図示しない散気孔が多数形成されている。散気孔は、散気管17の上面、下面、側面のいずれの位置にあっても良い。
散気管17の分岐管24との接続側端部は分岐管24の内部と連通しており、散気管17の他端は閉塞されている。
【0023】
ここで、多孔質中空糸膜40aは中心部に沿って長さ方向に中空とされたPVDF(ポリフッ化ビニデン)の多孔質中空糸膜が使われており、ろ過孔の孔径は0.4μmである。また、多孔質中空糸膜40aの1本あたりの有効膜面積は25m2である。
【0024】
ただし、多孔質中空糸膜40a、ろ過水取出管42及び縦杆44などの材質、中空糸膜エレメント40の大きさ、散気装置14をも含めた一ユニットの大きさやユニット1基あたりの中空糸膜エレメント40の枚数などは、用途に応じて多様に変更が可能である。例えば、中空糸膜エレメント40の枚数で言えば処理量に合わせて20枚、40枚、60枚、…と任意に設定でき、或いは多孔質中空糸膜40aの材質には、セルロース系、ポリオレフィン系、ポリスルホン系、ポリビニルアルコール系、ポリメチルメタクリレート、ポリフッ化エチレンなど、従来公知のものを適用することができる
【0025】
次に、第1実施形態の作用について説明する。原水タンク3から原水流入用ポンプ6によって供給された無酸素槽4内の汚泥は、汚泥循環ポンプ10によりオーバーフロー経路8と戻り配管9とを流れ無酸素槽4と好気槽7との間で循環する。
この間、好気槽7においては、膜分離モジュール12をエアスクラビング洗浄しながら好気槽7内の膜分離モジュール12で汚泥を吸引ろ過して固液分離する通常運転と、散気装置14の散気管17の詰まりを解消するために散気管17から汚泥を吸引して散気管17の固着成分を溶解する洗浄運転とが行われる。
【0026】
図6は通常運転状態にある第1実施形態の膜分離装置の要部を模式的に示し、図7は洗浄運転状態にある第1実施形態の膜分離装置の要部を模式的に示している。図6に示すように、膜分離装置の通常運転の場合には、開閉バルブ25を閉塞し、ブロワ13をオンにして空気供給管15から空気を供給するとエジェクター20の負圧室23から負圧室23に連通する空気給排管16に空気が送給され、散気装置14の散気管17の多数の散気孔から泡となって好気槽7内に放出される曝気が行われる。したがって、エジェクター20は単なる配管の一部として機能するに過ぎない。
【0027】
散気装置14の散気管17から放出される気泡により発生した気液混合流は、斜め方向に飛散せず、まっすぐに上昇して膜分離モジュール12に効率よく接触する。このとき、膜分離モジュール12の膜面に対する気液混合流の一様な分散により、多孔質中空糸膜40aを揺動させて各中空糸膜エレメント40を均一に洗浄する。その後、気液混合流は上昇して周辺へと流れて下降し、全体として上下方向の旋回流を形成する。この旋回流により活性汚泥は攪拌され、生物学的処理が均一化される。
【0028】
ここで、散気装置14の散気管17には多数の散気孔が形成されており、この散気孔から通常運転を行っている間は空気が放出されるものの、散気装置14の経時的使用によって散気管17の散気孔が徐々に汚泥によって閉塞されエアスクラビング洗浄が効果的に行えなくなる。
この閉塞を防止するために、定期的に上記洗浄運転を繰り返すことが望ましい。
或いは、散気管17の散気孔の閉塞状態をブロワ13の吐出側の圧力を検出することにより洗浄運転を行うことができる。
したがって、ブロワ13の吐出側の圧力や空気供給管15や空気給排管16に設けた圧力センサにより、空気供給管15や空気給排管16の圧力が一定以上となった場合に、散気管17の散気孔が閉塞していると考えられるので、通常運転を停止して膜分離装置の洗浄運転を開始する。
【0029】
図7に示すように、膜分離装置の洗浄運転を開始するにあたっては、ブロワ13をオンのままで、開閉バルブ25を開放する。すると空気供給管15からエジェクター20、開閉バルブ25に向かって空気が噴出され、エジェクター20のノズル19からエジェクター20の出口ポート22に向かって噴出される空気流によるベンチュリ効果によってノズル19の周りの負圧室23に負圧が発生する。発生した負圧により空気給排管16には吸引力が作用する。
したがって、空気給排管16の負圧により、散気管17の散気孔から汚泥が吸引されて、吸引される際の流速で固形成分が散気孔から剥がれると共に固体化した汚泥が溶解することで散気管17の散気孔の閉塞状態が解消される。ここで、洗浄運転に際しては散気管17からの吸引汚泥がエジェクター20に至らないように洗浄運転の時間を調整してもよい。このとき、エジェクター20により負圧が十分に確保されれば、吸引した汚泥を散気管17内から開閉バルブ25を経由して、排除することができるため、散気孔を閉塞していた固形成分が十分に溶解していない場合でも散気管17の内部に戻ることがなく、再度詰まりを生じさせる原因とならないようにすることができる。
散気管17の散気孔の閉塞状態が解消されると再び前述した通常運転に移行する。通常運転に移行すると、通常運転初期において散気管17内の乾燥汚泥は溶解した状態で散気管17の散気孔から好気槽7に押し戻され、その後、散気管17への空気供給によるエアスクラビングが再開される。
【0030】
第1実施形態によれば、散気装置14に用いられるブロワ13を有効利用し、かつブロワ13からの吐出空気を利用して負圧発生装置としてのエジェクター20で負圧を発生させているため、ブロワ13には空気給排管16内のガスが吸入されることはなく、したがって、ブロワ13の吸入側の負圧を利用し汚泥を吸入した場合のように、ブロワ13が汚泥を吸い込んだり、汚泥から発生する腐食性のガスをブロワ13が吸入して破損を招くことなく、ブロワ13を保護するために気液分離装置も必要としないで散気管17の目詰まりを防止できる。
とりわけ、この実施形態においてはブロワ13は連続運転したままで、開閉バルブ25の開閉操作のみで通常運転と洗浄運転とを切り換えられるので、操作が簡単に行える。そして、散気用の既存のブロワ13のみを用いて洗浄運転を行うことができるので、装置構成が単純であり既存設備への設置も容易となる。
【0031】
次に、この発明の第2実施形態を図1〜図5を援用し、図8、図9に基づいて説明する。図8は通常運転状態にある第2実施形態の膜分離装置の要部を模式的に示し、図9は洗浄運転状態にある第2実施形態の膜分離装置の要部を模式的に示している。尚、以下の説明で第1実施形態と同一部分には同一符号を付して説明する。
【0032】
この実施形態は散気装置14の散気管17に負圧を作用させる負圧発生装置として第1実施形態のエジェクター20に換えて、独立したポンプ66を利用したアスピレーター60を用いている。ブロワ13は散気装置14に空気を送る機能のみであり負圧発生には何ら関与していない。
【0033】
図8、図9に示すように、散気管17に接続された空気給排管16が開閉バルブ56を介してアスピレーター60の負圧室63に連通可能に接続されている。アスピレーター60の入口ポート61に水タンク58の水をポンプ66により供給する水配管57が接続されている。アスピレーター60の出口ポート62には好気槽7に開口する戻り配管64が接続されている。ブロワ13には、開閉バルブ65が介装された空気供給管15が接続され、空気供給管15は開閉バルブ56と散気管17との間で空気給排管16に合流して接続されている。尚、59はアスピレーター60内部のノズルを示す。
【0034】
次に、第2実施形態の作用について説明する。図8に示すように、膜分離装置の通常運転の際にはポンプ66をオフとし、開閉バルブ56を閉塞し、開閉バルブ65を開放した状態でブロワ13をオンにするとブロワ13から空気供給管15に送られた空気が空気給排管16を経て散気装置14の散気管17の多数の散気孔から泡となって好気槽7内に放出される曝気が行われる。次に、通常運転により散気装置14の散気管17の散気孔が閉塞したことが、ブロワ13の吐出側の圧力等により検出されると、通常運転を停止して洗浄運転を行う。
【0035】
図9に示すように、膜分離装置の洗浄運転を開始するにあたっては、ブロワ13をオフとし、開閉バルブ65を閉塞すると共に開閉バルブ56を開放した状態でポンプ66をオンにする。これにより水タンク58の水が水配管57を経てアスピレーター60に供給される。アスピレーター60のノズル59からアスピレーター60の出口ポート62に向かって噴出される水流によるベンチュリ効果によってノズル59の周りの負圧室63に負圧が発生する。発生した負圧により空気給排管16には吸引力が作用する。
【0036】
したがって、空気給排管16の負圧により、散気管17の散気孔から汚泥が吸引されて、吸引される際の流速で固形成分が散気孔から剥がれると共に固体化した汚泥が溶解することで散気管17の散気孔の閉塞状態が解消される。ここで、空気給排管16からアスピレーター60の負圧室63に導入された汚泥は、アスピレーター60によって十分に負圧が確保されれば、アスピレーター60のノズル59から噴出される水と共に引き込まれるようにして戻り配管64に送られて好気槽7に戻される。一定時間の洗浄運転で散気管17の散気孔の閉塞状態が解消されると再び前述した通常運転に戻る。
【0037】
第2実施形態によれば、ブロワ13は散気装置14に空気を供給するためにのみ使用され、散気管17に負圧を作用させる負圧発生装置として、水を流体としたアスピレーター60を用いているため、ブロワ13には空気給排管16内のガスが吸入されることはなく、したがって、ブロワ13の吸入側の負圧を利用し汚泥を吸入した場合のように、ブロワ13が汚泥を吸い込んだり、汚泥から発生する腐食性のガスをブロワ13が吸入して破損を招くことなく、ブロワ13を保護するために気液分離装置も必要としないで散気管17の目詰まりを防止できる。
とりわけ、この実施形態においては、アスピレーター60により負圧が十分に確保されれば、吸引した汚泥を好気槽7に戻せるため、散気孔を閉塞していた固形成分が十分に溶解していない場合でも散気管17の内部に戻ることがなく、再度詰まりを生じさせる原因とならない点で有利である。
【0038】
次に、この発明の第3実施形態を図1〜図5を援用し、図10、図11に基づいて説明する。図10は通常運転状態にある第3実施形態の膜分離装置の要部を模式的に示し、図11は洗浄運転状態にある第3実施形態の膜分離装置の要部を模式的に示している。尚、以下の説明で第1実施形態及び第2実施形態と同一部分には同一符号を付して説明する。
【0039】
この実施形態は散気装置14の散気管17に負圧を作用させる負圧発生装置として第1実施形態のエジェクター20に換えて、既存の設備である原水タンク3から原水を無酸素槽4に送る原水流入用ポンプ6を利用したアスピレーター60を用いている。ブロワ13は散気装置14に空気を送る機能のみであり負圧発生には何ら関与していない。
【0040】
図10、図11に示すように、散気管17に接続された空気給排管16が開閉バルブ56を介してアスピレーター60の負圧室63に連通可能に接続されている。アスピレーター60は原水タンク3の原水を無酸素槽4に送る原水配管5に介装され、具体的には原水流入用ポンプ6と無酸素槽4との間に取り付けられている。つまり、アスピレーター60の入口ポート61と出口ポート62は原水配管5に接続されている。ブロワ13には、開閉バルブ65が介装された空気供給管15が接続され、空気供給管15は開閉バルブ56と散気管17との間で空気給排管16に合流して接続されている。
【0041】
次に、第3実施形態の作用について説明する。図10に示すように、膜分離装置の通常運転の際には、原水タンク3の原水が原水流入用ポンプ6により原水配管5からアスピレーター60を経て無酸素槽4に供給されているため、アスピレーター60のノズル59からアスピレーター60の出口ポート62に向かって噴出される原水流によるベンチュリ効果によってアスピレーター60のノズル59の周りの負圧室63には既に負圧が発生している。
【0042】
この状態で開閉バルブ56を閉塞し、開閉バルブ65を開放した状態でブロワ13をオンにすると、ブロワ13から空気供給管15に送られた空気が空気給排管16を経て散気装置14の散気管17の多数の散気孔から泡となって好気槽7内に放出される曝気が行われる。次に、通常運転により散気装置14の散気管17の散気孔が閉塞したことが、ブロワ13の吐出側の圧力等により検出された場合、または定期洗浄を実施する場合には通常運転を停止して洗浄運転を行う。
【0043】
図11に示すように、膜分離装置の洗浄運転を開始するにあたっては、ブロワ13をオフとし、開閉バルブ65を閉塞すると共に開閉バルブ56を開放する。すると、既に通常運転の際に原水タンク3の原水が原水配管5を経てアスピレーター60に供給されていることにより発生している負圧がアスピレーター60の負圧室63から空気給排管16に吸引力として作用する。
【0044】
したがって、空気給排管16の負圧により、散気管17の散気孔から汚泥が吸引されて、吸引される際の流速で固形成分が散気孔から剥がれると共に固体化した汚泥が溶解することで散気管17の散気孔の閉塞状態が解消される。ここで、空気給排管16からアスピレーター60の負圧室63に導入された汚泥は、アスピレーター60によって十分に負圧が確保されれば、アスピレーター60のノズル59から噴出される原水と共にアスピレーター60に引き込まれる原水配管5に送られて無酸素槽4に排出される。一定時間の洗浄運転で散気管17の散気孔の閉塞状態が解消されると再び前述した通常運転に戻る。
この実施形態では循環式硝化脱窒法を用いて説明しているため無酸素槽4に汚泥を排出しているが、汚泥の排出先は、原水タンク、または好気法(AO法)、循環式嫌気好気法(A2O法)など、他法であれば、好気槽、無酸素槽、膜槽、いずれの槽であっても良い。
【0045】
第3実施形態によれば、ブロワ13は散気装置14に空気を供給するためにのみ使用され、散気管17に負圧を作用させる負圧発生装置として、原水を流体としたアスピレーター60を用いているため、ブロワ13には空気給排管16内のガスが吸入されることはなく、したがって、ブロワ13の吸入側の負圧を利用し汚泥を吸入した場合のように、ブロワ13が汚泥を吸い込んだり、汚泥から発生する腐食性のガスをブロワ13が吸入して破損を招くことなく、ブロワ13を保護するために気液分離装置も必要としないで散気管17の目詰まりを防止できる。
とりわけ、この第3実施形態では既存の設備である原水タンク3から原水流入用ポンプ6により原水配管5に送られる原水の流れを有効利用している点で有利である。
また、この実施形態においては、アスピレーター60により負圧が十分に確保されれば、吸引した汚泥を無酸素槽4に排出できるため、散気孔を閉塞していた固形成分が十分に溶解していない場合でも散気管17の内部に戻ることがなく、再度詰まりを生じさせる原因とならない点で有利である。
【0046】
次に、この発明の第4実施形態を図1〜図5を援用し、図12、図13に基づいて説明する。図12は通常運転状態にある第4実施形態の膜分離装置の要部を模式的に示し、図13は洗浄運転状態にある第4実施形態の膜分離装置の要部を模式的に示している。尚、以下の説明で第1実施形態及び第3実施形態と同一部分には同一符号を付して説明する。
【0047】
この実施形態は散気装置14の散気管17に負圧を作用させる負圧発生装置として第1実施形態のエジェクター20に換えて、既存の設備である好気槽7から汚泥を無酸素槽4に戻す汚泥循環ポンプ10を利用したアスピレーター60を用いている。ブロワ13は散気装置14に空気を送る機能のみであり負圧発生には何ら関与していない。
【0048】
図12、図13に示すように、散気管17に接続された空気給排管16が開閉バルブ56を介してアスピレーター60の負圧室63に連通可能に接続されている。アスピレーター60は好気槽7の汚泥を無酸素槽4に循環させるための戻り配管9に介装され、具体的には汚泥循環ポンプ10と無酸素槽4との間に取り付けられている。つまり、アスピレーター60の入口ポート61と出口ポート62は戻り配管9に接続されている。ブロワ13には、開閉バルブ65が介装された空気供給管15が接続され、空気供給管15は開閉バルブ56と散気管17との間で空気給排管16に合流して接続されている。
【0049】
次に、第4実施形態の作用について説明する。図12に示すように、膜分離装置の通常運転の際には、好気槽7の汚泥が汚泥循環ポンプ10により戻り配管9からアスピレーター60を経て無酸素槽4に供給されているため、アスピレーター60のノズル59からアスピレーター60の出口ポート62に向かって噴出される汚泥流によるベンチュリ効果によってアスピレーター60のノズル59の周りの負圧室63には既に負圧が発生している。
【0050】
この状態で開閉バルブ56を閉塞し、開閉バルブ65を開放した状態でブロワ13をオンにすると、ブロワ13から空気供給管15に送られた空気が空気給排管16を経て散気装置14の散気管17の多数の散気孔から泡となって好気槽7内に放出される曝気が行われる。次に、通常運転により散気装置14の散気管17の散気孔が閉塞したことが、ブロワ13の吐出側の圧力等により検出された場合、または定期洗浄を実施する場合には通常運転を停止して洗浄運転を行う。
【0051】
図13に示すように、膜分離装置の洗浄運転を開始するにあたっては、ブロワ13をオフとし、開閉バルブ65を閉塞すると共に開閉バルブ56を開放する。すると、既に通常運転の際に好気槽7の汚泥が戻り配管9を経てアスピレーター60に供給されていることにより発生している負圧がアスピレーター60の負圧室63から空気給排管16に吸引力として作用する。
【0052】
したがって、空気給排管16の負圧により、散気管17の散気孔から汚泥が吸引されて、吸引される際の流速で固形成分が散気孔から剥がれると共に固体化した汚泥が溶解することで散気管17の散気孔の閉塞状態が解消される。ここで、空気給排管16からアスピレーター60の負圧室63に導入された汚泥は、アスピレーター60によって十分に負圧が確保されれば、アスピレーター60のノズル59から噴出される汚泥と共に引き込まれるようにして戻り配管9に送られて無酸素槽4に排出される。一定時間の洗浄運転で散気管17の散気孔の閉塞状態が解消されると再び前述した通常運転に戻る。
【0053】
第4実施形態によれば、ブロワ13は散気装置14に空気を供給するためにのみ使用され、散気管17に負圧を作用させる負圧発生装置として、汚泥を流体としたアスピレーター60を用いているため、ブロワ13には空気給排管16内のガスが吸入されることはなく、したがって、ブロワ13の吸入側の負圧を利用し汚泥を吸入した場合のように、ブロワ13が汚泥を吸い込んだり、汚泥から発生する腐食性のガスをブロワ13が吸入して破損を招くことなく、ブロワ13を保護するために気液分離装置も必要としないで散気管17の目詰まりを防止できる。
【0054】
とりわけ、この第4実施形態では既存の設備である好気槽7から汚泥循環ポンプ10により戻り配管9に送られる汚泥の流れを有効利用している点で有利である。
また、この実施形態においては、アスピレーター60により負圧が十分に確保されれば、吸引した汚泥を無酸素槽4に戻せるため、散気孔を閉塞していた固形成分が十分に溶解していない場合でも散気管17の内部に戻ることがなく、再度詰まりを生じさせる原因とならない点で有利である。
尚、この発明は上記実施形態に限られるものではなく、例えば、負圧発生装置として用いた気体に対応するエジェクター或いは液体に対応するアスピレーターは、気体或いは液体が流過することにより発生するベンチュリ効果を使用して負圧を発生させることができるものであれば、どの部分に設けてもよい。膜分離装置であれば対象となっている被処理水は工業用、飲料用等様々な処理水に対応できる。
【符号の説明】
【0055】
7 好気槽(処理槽)
15 空気供給管(気体供給管)
16 空気給排管(気体供給管)
13 ブロワ(気体供給装置、流体供給装置)
17 散気管
6 原水流入用ポンプ(流体供給装置、送給装置)
10 汚泥循環ポンプ(流体供給装置、送給装置)
66 ポンプ(流体供給装置)
20 エジェクター(アスピレーター、負圧発生装置)
60 アスピレーター(アスピレーター、負圧発生装置)
3 原水タンク(原水槽)
4 無酸素槽
12 膜分離モジュール
14 散気装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理液を貯留した処理槽内に設置されると共に気体供給管を介して気体供給装置に接続され、前記処理槽内に散気管から気体を供給する散気装置において、前記気体供給管に前記散気管内を負圧にする負圧発生装置を接続し、前記負圧発生装置が、流体供給装置を利用したアスピレーターであることを特徴とする散気装置。
【請求項2】
前記流体供給装置が、原水槽から前記処理槽の上流側に配置された無酸素槽に送給される原水或いは前記処理槽と前記無酸素槽との間を循環する汚泥の送給装置であることを特徴とする請求項1記載の散気装置。
【請求項3】
前記アスピレーターが、前記気体供給装置を利用したエジェクターであることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の散気装置。
【請求項4】
被処理液を貯留した処理槽と、該処理槽に設置した膜分離モジュールと、該膜分離モジュールの下方に請求項1〜請求項3の何れか一項に記載した散気装置を備えた膜分離装置の運転方法であって、
前記膜分離モジュールをエアスクラビング洗浄しながら被処理液のろ過を行う通常運転と、前記エアスクラビング洗浄を停止し前記散気装置の散気管内を負圧にする負圧発生装置により前記散気管内を負圧にして被処理液を前記散気管の散気孔から流入させ、流入した被処理液で前記散気孔の被処理液の固形成分を除去して前記散気管の目詰まりを解消する洗浄運転を備えたことを特徴とする膜分離装置の運転方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−61432(P2012−61432A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−208378(P2010−208378)
【出願日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】