説明

敷設船上での管の突き合わせ溶接部の非破壊検査方法および非破壊検査装置

【課題】比較的小さな敷設船であっても、必要な作業ステージを確保することができ、作業ステージを効率的に活用できる。
【解決手段】停止させた敷設船1上で既に接続した管Pbの端部に新たに接続しようとする管Paを突き合わせ溶接により接続し、次いで敷設船を管の長さ分だけ前進させると同時に既に接続した管の基端側の所定長を海中へ投入し、以下、停止させた敷設船上で新たに接続しようとする管の突き合わせ溶接、敷設船の前進並びに既に接続した管の基端側所定長の海中への投入を順次繰返しながら海底パイプラインを構築する。既に接続した管の端部に新たに接続しようとする管を突き合わせて溶接する溶接工程の後に行う、管の突き合わせ溶接部の非破壊検査工程を、敷設船を前進させながら行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海底パイプラインを構築する際の敷設船上での管の突き合わせ溶接部の非破壊検査方法および非破壊検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
海をまたいで石油やガスを輸送する場合海底パイプラインを利用することがある(下記特許文献1参照)。
海底パイプラインの敷設方法として敷設船を利用するものがある。敷設船を利用する従来の海底パイプラインの敷設方法の一例について説明すると、例えば、図5に示すように、敷設船100上に、敷設船100の船首から船尾に向けて、位置合わせおよび第1の溶接ステージS1、第2の溶接ステージS2、第3の溶接ステージS3、第4の溶接ステージS4、非破壊検査ステージS5、防食下地処理ステージS6、防食処理ステージS7が、接続しようとする管の長さごとに順に配備される。
【0003】
敷設船100上では、位置合わせおよび第1の溶接ステージS1にて、既に接続した管Pbの端部と新たに接続しようとする管Paが同一軸線上となるように、双方の管の位置合わせを行い、その後既に接続した管Pbの端部に対して新たに接続しようとする管Paを突き合わせて溶接する。第2〜第4の溶接ステージS2〜S4では、位置合わせおよび第1の溶接ステージS1で行った溶接箇所についてさらに必要な箇所に追加の溶接を行う。これにより、既に接続した管Pbに対して新たに接続しようとする管Paを接続する。非破壊検査ステージS5では、突き合わせ溶接部が正規に溶接されているか否かを検査する。ここで、正規に溶接されていないと判断した場合には、このステージS5の後段で溶接箇所の補修を行う。他方、正規に溶接されていたと判断した場合には、防食下地処理ステージS6にて、溶接箇所を素地調整した後さらに下地処理する。また、防食処理ステージS7では、下地処理された既に接続した管Pbに対し、処理熱収縮用のチューブにて該管の外周を覆った後にさらにその外周部をウレタンで蓋う防食処理を行う。これら一連の工程は敷設船100を停止させた状態で同時に行うが、接続されるあるいは接続された管を基準に考えると、先端側から基端側に向けて順に行う。これら各作業ステージでの一連の工程が完了したら、敷設船を新たに接続しようとする管の長さ分(例えば12m)だけ前進させ、これと同時に既に接続した管Pbの基端側の所定長を海中へ投入する。
以下、停止させた前記敷設船上の各作業ステージで一連の工程を行うことと、敷設船の前進並びに既に接続した管の基端側の所定長の海中への投入を順次繰返すことによって、海底パイプラインを構築しながらその敷設を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−213372号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
敷設船を利用して海底パイプラインの敷設工事を行う場合、前述したように、敷設船100上では種々の作業ステージS1〜S7が接続しようとする管の長さごとに必要になり、比較的小さな敷設船の場合に種々の必要な作業ステージの確保が困難になる問題があった。
本発明者らは、一つ一つの作業ステージの作業内容を見直し鋭意研究した結果、溶接後の非破壊検査を行うにあたり敷設船を停止させて行うのではなく敷設船の前進中に行うことを見出した。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、比較的小さな敷設船であっても、必要な作業ステージを確保することができ、作業ステージを効率的に活用することができる、敷設船上での管の突き合わせ溶接部の非破壊検査方法及び非破壊検査装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る敷設船上での管の突き合わせ溶接部の非破壊検査方法は、停止させた敷設船上で既に接続した管の端部に新たに接続しようとする管を突き合わせ溶接により接続し、次いで前記敷設船を前記管の長さ分だけ前進させると同時に既に接続した管の基端側を海中へ投入し、以下、停止させた前記敷設船上で新たに接続しようとする管の突き合わせ溶接、前記敷設船の前進並びに既に接続した管の基端側の海中への投入を順次繰返しながら海底パイプラインを形成する際に、前記既に接続した管の端部に前記新たに接続しようとする管を突き合わせて溶接する溶接工程の後に行う、管の突き合わせ溶接部の非破壊検査工程を、前記敷設船を前進させながら行うことを特徴とする。
【0008】
前記敷設船上での管の突き合わせ溶接部の非破壊検査方法によれば、突き合わせ溶接部の非破壊検査工程を、前記敷設船を前進させながら行うため、背景技術で説明した従来の技術で説明した、他の作業ステージと同様に接続しようとする管の長さごと配置されていた固定の専用非破壊検査ステージが不要になる。
つまり、非破壊検査は敷設船を前進させながら行うため、例えば、最後の溶接工程を行う作業ステージと防食を行う下地処理の作業ステージの間に非破壊検査ステージを配置すれば足り、接続しようとする管の長さごとに配置される固定の専用非破壊検査ステージは不要になる。
【0009】
また、前記敷設船上に既に接続した管の先端側から基端側に向かう延在方向に沿って、該既に接続した管を支持する第1の移動支持台車、前記突き合わせ溶接部の非破壊検査を行う非破壊検査本体を搭載する移動台車、前記接続した管を支持する第2の移動支持台車を順に配備し、前記非破壊検査工程が、前記第2の移動支持台車により前記既に接続した管を支持しながら該第2の移動支持台車を前記敷設船とともに前進させる一方、前記第1の移動支持台車に前記移動台車を連結させた状態でこれら第1の移動支持台車および前記移動台車を前記既に接続した管に対し固定した位置に保ちながら前記移動台車上の非破壊検査本体によって非破壊検査を行う第1非破壊検査工程と、前記第1の移動支持台車により前記既に接続した管を支持しながら該第1の移動支持台車を前記敷設船とともに前進させる一方、前記第2の移動支持台車に前記移動台車を連結させた状態でこれら第2の移動支持台車および前記移動台車を前記既に接続した管に対し固定した位置に保ちながら前記移動台車上の非破壊検査本体によって非破壊検査を行う第2非破壊検査工程と、を備えることが好ましい。
【0010】
前述したように敷設船の前進中に管の突き合わせ溶接部の非破壊検査を行うため、非破壊検査本体は管の突き合わせ溶接部に固定的に取り付けられることとなり、非破壊検査中においては、非破壊検査本体は敷設船に対して相対移動する。このため、単純に考えると、検査対象である管の突き合わせ溶接部の前後部分は、敷設船からの支持がとれなくなり、自重によって撓むおそれが出てくる。
ところが、この場合、非破壊検査工程の前段の工程で、敷設船とともに前進する第2の移動支持台車で既に接続された管を支持しつつ、敷設船に対し相対移動する移動台車上の非破壊検査本体で非破壊検査を行い、また、非破壊検査工程の後段の工程では、敷設船とともに前進する第1の移動支持台車で既に接続された管を支持しつつ、敷設船に対し相対移動する移動台車上の非破壊検査本体で非破壊検査を行う。このように、非破壊検査工程において、前段は第2の移動支持台車でまた後段は第1の移動支持台車で、既に接続された管の検査対象部位の前後部分をそれぞれ支持するので、非破壊検査中に管の検査対象部位の近傍が自重によって撓むといった不具合の発生を防止できる。
【0011】
また、前記敷設船上に既に接続した管の先端側から基端側に向かう延在方向に沿って、該既に接続した管を支持する第1の移動支持台車、前記突き合わせ溶接部の非破壊検査を行う非破壊検査本体を搭載する移動台車、前記接続した管を支持する第2の移動支持台車を順に配備し、前記非破壊検査工程が、前記第2の移動支持台車により前記既に接続した管を支持しながら該第2の移動支持台車を前記敷設船とともに前進させる一方、前記第1の移動支持台車に前記移動台車を連結させた状態でこれら第1の移動支持台車および前記移動台車を前記既に接続した管に対し固定した位置に保ちながら前記移動台車上の非破壊検査本体によって非破壊検査を行う第1非破壊検査工程と、前記第2の移動支持台車が下降することにより、前記第1の移動支持台車および前記移動台車が前記既に接続した管に対し固定した位置を保ちながら前記移動台車上の非破壊検査本体によって非破壊検査を行う昇降工程と、前記第1の移動支持台車および前記移動台車が前記第2の移動支持台車上を通過した後、前記第2の移動支持台車が上昇して前記既に接続した管を支持しながら該第2の移動支持台車が前記敷設船とともに前進する一方、前記第1の移動支持台車および前記移動台車が前記既に接続した管に対し固定した位置を保ちながら前記移動台車上の非破壊検査本体によって非破壊検査を行う第2非破壊検査工程と、を備えるようにしてもよい。
【0012】
この場合、非破壊検査工程の前段および後段において、第2の移動支持台車により既に接続された管の検査対象部位の前後部分をそれぞれ支持するので、非破壊検査中に管の検査対象部位の近傍が自重によって撓むといった不具合の発生を防止できる。
【0013】
本発明に係る非破壊検査装置は、敷設船上で既に接続した管の突き合わせ溶接部の非破壊検査を行う非破壊検査装置であって、既接続した前記管を支持する第1の移動支持台車と、前記突き合わせ溶接部の非破壊検査を行う非破壊検査本体を搭載する移動台車と、既接続した前記管を支持する第2の移動支持台車とを備え、前記移動台車が前記第1の移動支持台車と前記第2の移動支持台車に対して、それぞれ連結並びに該連結を解く切離しが可能とされていることを特徴とする。
【0014】
前記非破壊検査装置によれば、前述したように、非破壊検査工程において、前段が第2の移動支持台車でまた後段が第1の移動支持台車で、既に接続された管の検査対象部位の前後部分をそれぞれ支持することができる。
【0015】
また、既接続した前記管を支持する第1の移動支持台車と、前記突き合わせ溶接部の非破壊検査を行う非破壊検査本体を搭載する移動台車と、既接続した前記管を支持する昇降機能を具備した第2の移動支持台車とを備えるようにしてもよい。
この場合、本願の請求項3に係る敷設船上での管の突き合わせ溶接部の非破壊検査方法を好適に実施できる。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に係る発明によれば、接続しようとする管の長さごとに配置される固定の専用非破壊ステージが不要となり、従来存していたこの作業ステージを他の作業ステージとして供することができ、敷設船全体の作業ステージを効率的に活用することが可能になる。
【0017】
請求項2に係る発明によれば、非破壊検査工程において、前段は第2の移動支持台車でまた後段は第1の移動支持台車で、既に接続された管の検査対象部位の前後部分をそれぞれ支持するので、非破壊検査中に管の検査対象部位の近傍が自重によって撓むといった不具合の発生を防止できる。
【0018】
請求項3に係る発明によれば、非破壊検査工程の前段および後段において、第2の移動支持台車により既に接続された管の検査対象部位の前後部分をそれぞれ支持するので、非破壊検査中に管の検査対象部位の近傍が自重によって撓むといった不具合の発生を防止できる。
【0019】
請求項4に係る発明によれば、請求項2に係る発明の敷設船上での管の突き合わせ溶接部の非破壊検査方法を好適に実施できる。
【0020】
請求項5に係る発明によれば、請求項3に係る発明の敷設船上での管の突き合わせ溶接部の非破壊検査方法を好適に実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る敷設船上での管の突き合わせ溶接部の非破壊検査方法の一実施形態が実施される敷設船を示す概略側面図である。
【図2】前記敷設船で行われる管の突き合わせ溶接部の非破壊検査方法の一実施形態の工程の一部を説明するもので、(a)は全体の工程を示す側面図、(b)はA円部の工程を詳しく説明する側面図、(c)はA円部の工程を詳しく説明する側面図である。
【図3】前記敷設船で行われる管の突き合わせ溶接部の非破壊検査方法の一実施形態の工程の一部を説明するもので、(a)は全体の工程を示す側面図、(b)はA円部の工程を詳しく説明する側面図である。
【図4】前記敷設船で行われる管の突き合わせ溶接部の非破壊検査方法の一実施形態の工程の一部を説明するもので、(a)は全体の工程を示す側面図、(b)はA円部の工程を詳しく説明する側面図、(c)はA円部の工程の次の工程を詳しく説明する側面図である。
【図5】敷設船を利用する従来の海底パイプラインの敷設方法の一例を示す概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の好適な一実施形態を添付図面に基づいて詳述する。
図1は本発明に係る敷設船上での管の突き合わせ溶接部の非破壊検査方法の一実施形態が実施される敷設船を示す概略側面図である。
この図に示すように、敷設船1上に、船首から船尾に向けて、位置合わせおよび第1の溶接ステージS1、第2の溶接ステージS2、第3の溶接ステージS3、第4の溶接ステージS4、防食下地処理ステージS6、防食処理ステージS7が、接続しようとする管の長さごとに順に配備される。なお、これらステージ上での作業は前述の背景技術で説明したとおりである。
【0023】
この敷設船が、図5に示す背景技術の敷設船と異なるところは、非破壊検査ステージS5が、他の作業ステージと同様接続しようとする管Paの長さごと配置されているのではなく、第4の溶接ステージS4と防食下地処理ステージS6との間に配備されている点である。
【0024】
図2〜図4は、前記敷設船で行われる管の突き合わせ溶接部の非破壊検査方法の一実施形態の説明する工程を説明する側面図である。
これらの図に示すように、非破壊ステージS5には非破壊検査装置10が配備されている。非破壊検査装置10は、既に接続した管Pbを支持する第1の移動支持台車11と、突き合わせ溶接部の非破壊検査を行う非破壊検査本体12を搭載する移動台車13と、既に接続した管Pbを支持する第2の移動支持台車14とを備える。それら第1の移動支持台車11、移動台車13、第2の移動支持台車14は、敷設船1上の既に接続した管Pbの先端側から基端側に向かう延在方向に沿って順に配置されている。
【0025】
第1の移動支持台車11は、台車本体15の下方に走行車輪16を有し、この走行車輪16に連結されたモータにバッテリー(ともに図示略)から電力が供給されることにより、既に接続された管Pbに沿って敷設船の甲板上を走行可能な構成になっている。また、台車本体15の上方には、既に接続された管Pbを下側から支持する支持ローラ17が取り付けられている。なお、敷設船の甲板上には、必要に応じて、走行車輪16を案内するレール等の案内部材を配置してもよい。
第2の移動支持台車14も第1の移動支持台車11と同様な構成であり、ここででは、それらの共通部材に共通の符号を付してその説明を省略する。
【0026】
移動台車13は、管の突き合わせ溶接部Yについて非破壊検査を行う前記非破壊検査本体12を搭載する。非破壊検査本体12は、例えば超音波、放射線、あるいは渦電流等を利用することにより、管の突き合わせ溶接部Yについて、溶け込み不足やのブローホールのような内部傷の検出を行うものである。非破壊検査本体12は、非破壊検査する際に、管の突き合わせ溶接部Yに対向するよう、図示せぬブラケットによって既に接続された管Pbに固定される。ブラケットを介した非破壊検査本体12の既に接続された管Pbへの固定は、例えば電磁石あるいは管を挟み込む把持機構等により行われる。
また、移動台車13は下方に走行車輪18を有するとともに、台車上に、非破壊検査本体12に対して、圧縮エアーを供給するコンプレッサ19、並びに、ポンプを介して冷却兼媒質用の水を供給する水タンク20を備える。
【0027】
第1の移動支持台車11と移動台車13の対向面並びに移動台車と第2の移動支持台車の対向面には、それぞれ互いの連結並びに該連結を解く切離しが可能な機構が配設されている。
すなわち、第1の移動支持台車11と移動台車の対向面の何れか一方には、例えば雄形の連結具11aが取り付けられ、第1の移動支持台車11と移動台車13の対向面の他方には前記雄形の連結具11aに対応する雌形の連結具13aが取り付けられている。そして、これら対をなす連結具11a、13aにより、第1の移動支持台車11と移動台車13とが互いに接近するように近づいたときに両台車11,13が連結され、また遠隔操作される解除操作部を操作することにより両連結具の連結状態が解除されて、両台車11,13が個々に独立して走行可能になっている。また、移動台車13と第2の移動支持台車14の対向面の何れか一方と他方にも、前記と同様な構造の雄形の連結具13bと雌形の連結具14bが取り付けられている。
【0028】
なお、図2(b)において、符号21は溶接具、また符号30は敷設船1上に固定的に取り付けられた固定支持部である。固定支持部30は上方に取り付けられた支持ローラ30aによって既に接続した管Pbを支持するものである。
【0029】
次に、敷設船1を利用した海底パイプラインの敷設方法について説明する。
敷設船1上では、位置合わせおよび第1の溶接ステージS1にて、既に接続した管Pbの端部と新たに接続しようとする管Paが同一軸線上となるように、双方の管の位置合わせを行い、その後既に接続した管Pbの端部に対して新たに接続しようとする管Paを突き合わせて溶接する。第2〜第4の溶接ステージS2〜S4では、位置合わせおよび第1の溶接ステージS1で行った溶接箇所についてさらに必要な箇所に追加の溶接を行う。これにより、既に接続した管Pbに対して新たに接続しようとする管Paを接続する。
【0030】
次いで、第4の溶接ステージS4と防食下地処理ステージS6との間に配備された非破壊検査ステージS5によって、突き合わせ溶接部Yが正規に溶接されているか否かを検査する。これについては、後に詳しく説明する。
そして、この非破壊検査ステージS5で正規に溶接されていないと判断した場合には、この作業ステージS5の後段、つまり防食下地処理ステージS6の近傍で溶接箇所の補修を行う。他方、正規に溶接されていたと判断した場合には、防食下地処理ステージS6にて、溶接箇所を素地調整した後さらに下地処理する。続いて、防食処理ステージS7では、下地処理された既に接続した管Pbに対し、処理熱収縮用のチューブにて該管の外周を覆った後にさらにその外周部をウレタンで蓋う防食処理を行う。
【0031】
これら一連の工程のほとんどは、敷設船1を停止させた状態で同時に行う。ただし、非破壊検査ステージS5によって行う非破壊検査は、敷設船1が既に接続された管Pbに対して前方へ移動している間つまり敷設船1の前進中に行う。非破壊検査を除き各ステージで行う一連の工程が完了したら、敷設船1を新たに接続しようとする管Paの長さ分(例えば12m)だけ前進させ、前記非破壊検査を行うと同時に既に接続した管の基端側の所定長を海中へ投入する。
以下、敷設船1上の各作業ステージS1、S2,S3,S4,S6、S7で一連の工程を行うことと、敷設船の前進、この前進中に行う非破壊検査、並びに既に接続した管の基端側の所定長の海中への投入することを交互に繰返すことによって、海底パイプラインの構築を行いながらその敷設を行う。
【0032】
前記非破壊検査方法について詳しく説明する。敷設船1上で接続しようとする管Paの長さごとに配置された各作業ステージS1,S2,S3,S4,S6、S7での一連の工程が完了する前に、図2に示すように、予め、第1の移動支持台車11及び移動台車13を、非破壊検査ステージS5の前端位置まで移動させておく。このとき、第1の移動支持台車11及び移動台車13を、雄形の連結具11a並びに雌形の連結具13aを介して互いに連結させる。そして、移動台車13に搭載させてある非破壊検査本体12を、検査対象である、管の突き合わせ溶接部Yに対向するよう、図示せぬブラケットによって既に接続された管Pbに固定する。
また、第2の移動支持台車14を、非破壊検査ステージS5の略中央、すなわち、第4の溶接ステージS4と防食下地処理ステージS6との略中間位置に配置させておく。
【0033】
この状態で、各ステージS1、S2,S3,S4,S6、S7での一連の工程が完了すると、敷設船1を新たに接続する管Paの長さ分だけ前進させる。このとき、既に接続された管Pbは、敷設船1に搭載されたテンショナーの無限軌道(図示略)により上下から挟み込まれた状態で把持されており、この無限軌道が敷設船1の速度と同期して回転されることで、当該既に接続された管Pbは敷設船1が前進した距離だけ後退して、基端側の所定長が海中へ投入される。また、前述したように非破壊検査本体12は既に接続された管Pbに固定されており、敷設船1の前進中、この非破壊検査本体12によって管の突き合わせ溶接部Yが正規に溶接されているか否かを検査する。このとき、第1の移動支持台車11及びこの台車11に連結されている移動台車13は、敷設船1が前進した距離と同じ距離だけ甲板上を後退する。したがって、第1の移動支持台車11及び移動台車13は、非破壊検査本体12や既に接続された管Pbに対しては、あたかも固定されているようにそれらに対して同じ相対位置に保たれる。
【0034】
一方、第2の移動支持台車14は、走行車輪16が停止されることにより敷設船1上に固定されており、既に接続された管Pbに対しては、前進しながら支持ローラ17を介して該既に接続された管Pbを支持する。
なお、図2(c)中白抜き矢印では、見易いように既に接続された管Pbや移動台車13等を移動させる図示になっているが、実際には逆に敷設船1側が移動することになる。
【0035】
敷設船1が新たに接続する管Paの長さの半分の距離前進した時点で、図3(b)に示すように、移動台車13が第2の移動支持台車14に突き当たる。この時点で、移動台車13を、雄形の連結具13b並びに雌形の連結具14bを介して第2の移動支持台車14に連結する。これと同時に、図示せぬ遠隔操作によって、第1の移動支持台車11と移動台車13との連結を解く。
【0036】
その後、第1の移動支持台車11は敷設船1上においてその位置に固定されて、既に連結された管Pbを支持する。一方、第2の移動支持台車14に連結された移動台車13は、第2の移動支持台車14が敷設船1の前方への移動距離と同じ距離だけ甲板上を後退するのに伴い、該第2の移動支持台車14と同様、非破壊検査本体12や既に接続された管Pbに対しては、あたかも固定されているようにそれらに対して同じ相対位置に保たれる。
【0037】
そして、敷設船1が新たに接続する管Paと同じ距離前進した時点で敷設船1が停止する。このとき、図4(a)(b)に示すように、非破壊検査本体12及び移動台車13は、非破壊検査ステージS5の後端に至る。そしてこの時点で、管の突き合わせ溶接部Yに対する非破壊検査を終了する。
【0038】
その後、非破壊検査本体12を搭載した移動台車13を第2の移動支持台車14によって前方へ移動させる。移動台車13は、管Paの長さの半分の距離移動した時点で、図4(c)に示すように、第1の移動支持台車11に突き当たる。この時点で、移動台車13が、雄形の連結具11a並びに雌形の連結具13aを介して再び第1の移動支持台車11に連結する。これと同時に、図示せぬ遠隔操作によって、第2の移動支持台車14と移動台車13との連結を解く。その後、第1の移動支持台車11を前方へ移動させることによって、この第1の移動支持台車11及び移動台車13を、図2(b)に示す初期位置である、非破壊検査ステージS5の前端位置まで移動させる。
【0039】
このように突き合わせ溶接部Yの非破壊検査を、敷設船1を前進させながら行うから、接続しようとする管の長さごと配置されていた固定の専用非破壊検査ステージは不要になる。
つまり、非破壊検査は敷設船1を前進させながら行うため、例えば、最後の溶接工程を行う第4溶接ステージS4と防食を行う下地処理の作業ステージS6の間に非破壊検査ステージを配置すれば足り、接続しようとする管の長さごとに配置される固定の専用非破壊ステージは不要となる。この結果、従来存していたこの作業ステージを他の作業ステージとして供することができ、敷設船全体の作業ステージを効率的に活用することが可能になる。
【0040】
また、本実施形態の非破壊検査工程では、前段の工程において、敷設船1とともに前進する第2の移動支持台車14で既に接続された管Pbを支持しつつ、敷設船1に対し相対移動する移動台車13上の非破壊検査本体12で非破壊検査を行い、また、後段の工程において、敷設船1とともに前進する第1の移動支持台車11で既に接続された管Pbを支持しつつ、敷設船1に対し相対移動する移動台車13上の非破壊検査本体12で非破壊検査を行うので、非破壊検査中に管の検査対象部位の近傍が自重によって撓むといった不具合の発生を防止できる。
【0041】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、本発明は、この実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の構成の変更等も含まれる。
前記実施形態では、敷設船1上に、位置合わせおよび第1の溶接ステージS1、第2の溶接ステージS2、第3の溶接ステージS3、第4の溶接ステージS4、防食下地処理ステージS6、防食処理ステージS7の6つの作業ステージを設け、第4の溶接ステージS4と防食下地処理ステージS6との間に非破壊検査ステージS5を配置する例を挙げて本発明を説明したが、これはあくまで例示であり、固定的に配置される作業ステージはもちろん他の例であってもよい。また、非破壊検査ステージS5も、必ず溶接ステージS4と防食下地処理ステージS6との間に配置する必要はない。要は、非破壊検査を敷設船の前進中に行う構成であればよい。
【0042】
また、前記実施形態では、例えば、移動台車13を移動支持台車11,14に連結させてそれら移動支持台車と一体的に移動させていたが、これに限られることなく、移動台車13自体に走行機能を持たせ、それ自身が走行する構成にしても良い。また、クレーン等の他の移動手段を利用して、非破壊検査ステージS5の後端位置から前端位置まで移動させる構成にしてもよい。
【0043】
また、非破壊検査工程が、前記第2の移動支持台車により前記既に接続した管を支持しながら該第2の移動支持台車を前記敷設船とともに前進させる一方、前記第1の移動支持台車に前記移動台車を連結させた状態でこれら第1の移動支持台車および前記移動台車を前記既に接続した管に対し固定した位置に保ちながら前記移動台車上の非破壊検査本体によって非破壊検査を行う第1非破壊検査工程と、前記第2の移動支持台車が下降することにより、前記第1の移動支持台車および前記移動台車が前記既に接続した管に対し固定した位置を保ちながら前記移動台車上の非破壊検査本体によって非破壊検査を行う昇降工程と、前記第1の移動支持台車および前記移動台車が前記第2の移動支持台車上を通過した後、前記第2の移動支持台車が上昇して前記既に接続した管を支持しながら該第2の移動支持台車が前記敷設船とともに前進する一方、前記第1の移動支持台車および前記移動台車が前記既に接続した管に対し固定した位置を保ちながら前記移動台車上の非破壊検査本体によって非破壊検査を行う第2非破壊検査工程と、を備える構成にしてもよい。
この場合、第2の移動支持台車は、昇降機能を備える構成にすれば足りる。
【符号の説明】
【0044】
1 敷設船、
10 非破壊検査装置、
11 第1の移動支持台車、
12 非破壊検査本体、
13 移動台車、
14 第2の移動支持台車、
17支持ローラ、
30 固定支持台、
S1 位置合わせおよび第1の溶接ステージ、
S2 第2の溶接ステージ、
S3 第3の溶接ステージ、
S4 第4の溶接ステージ、
S5 非破壊検査ステージ、
S6 防食下地処理ステージ、
S7 防食処理ステージS7、
Pb 既に接続した管Pb、
Pa 新たに接続しようとする管Pa、
Y 管の突き合わせ溶接部、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
停止させた敷設船上で既に接続した管の端部に新たに接続しようとする管を突き合わせ溶接により接続し、次いで前記敷設船を前記管の長さ分だけ前進させると同時に前記既に接続した管の基端側の所定長を海中へ投入し、以下、停止させた前記敷設船上で新たに接続しようとする管の突き合わせ溶接、前記敷設船の前進並びに前記既に接続した管の基端側所定長の海中への投入を順次繰返しながら海底パイプラインを構築する際に、
前記既に接続した管の端部に前記新たに接続しようとする管を突き合わせて溶接する溶接工程の後に行う、管の突き合わせ溶接部の非破壊検査工程を、前記敷設船を前進させながら行うことを特徴とする敷設船上での管の突き合わせ溶接部の非破壊検査方法。
【請求項2】
請求項1記載の敷設船上での管の突き合わせ溶接部の非破壊検査方法において、
前記敷設船上に既に接続した管の先端側から基端側に向かう延在方向に沿って、該既に接続した管を支持する第1の移動支持台車、前記突き合わせ溶接部の非破壊検査を行う非破壊検査本体を搭載する移動台車、前記接続した管を支持する第2の移動支持台車を順に配備し、
前記非破壊検査工程が、
前記第2の移動支持台車により前記既に接続した管を支持しながら該第2の移動支持台車を前記敷設船とともに前進させる一方、前記第1の移動支持台車に前記移動台車を連結させた状態でこれら第1の移動支持台車および前記移動台車を前記既に接続した管に対し固定した位置に保ちながら前記移動台車上の非破壊検査本体によって非破壊検査を行う第1非破壊検査工程と、
前記第1の移動支持台車により前記既に接続した管を支持しながら該第1の移動支持台車を前記敷設船とともに前進させる一方、前記第2の移動支持台車に前記移動台車を連結させた状態でこれら第2の移動支持台車および前記移動台車を前記既に接続した管に対し固定した位置に保ちながら前記移動台車上の非破壊検査本体によって非破壊検査を行う第2非破壊検査工程と、
を備えること特徴とする敷設船上での管の突き合わせ溶接部の非破壊検査方法。
【請求項3】
請求項1記載の敷設船上での管の突き合わせ溶接部の非破壊検査方法において、
前記敷設船上に既に接続した管の先端側から基端側に向かう延在方向に沿って、該既に接続した管を支持する第1の移動支持台車、前記突き合わせ溶接部の非破壊検査を行う非破壊検査本体を搭載する移動台車、前記接続した管を支持する第2の移動支持台車を順に配備し、
前記非破壊検査工程が、
前記第2の移動支持台車により前記既に接続した管を支持しながら該第2の移動支持台車を前記敷設船とともに前進させる一方、前記第1の移動支持台車に前記移動台車を連結させた状態でこれら第1の移動支持台車および前記移動台車を前記既に接続した管に対し固定した位置に保ちながら前記移動台車上の非破壊検査本体によって非破壊検査を行う第1非破壊検査工程と、
前記第2の移動支持台車が下降することにより、前記第1の移動支持台車および前記移動台車が前記既に接続した管に対し固定した位置を保ちながら前記移動台車上の非破壊検査本体によって非破壊検査を行う昇降工程と、
前記第1の移動支持台車および前記移動台車が前記第2の移動支持台車上を通過した後、前記第2の移動支持台車が上昇して前記既に接続した管を支持しながら該第2の移動支持台車が前記敷設船とともに前進する一方、前記第1の移動支持台車および前記移動台車が前記既に接続した管に対し固定した位置を保ちながら前記移動台車上の非破壊検査本体によって非破壊検査を行う第2非破壊検査工程と、
を備えること特徴とする敷設船上での管の突き合わせ溶接部の非破壊検査方法。
【請求項4】
請求項2記載の敷設船上での管の突き合わせ溶接部の非破壊検査方法を実施するための非破壊検査装置であって、
既接続した前記管を支持する第1の移動支持台車と、
前記突き合わせ溶接部の非破壊検査を行う非破壊検査本体を搭載する移動台車と、
既接続した前記管を支持する第2の移動支持台車とを備え、
前記移動台車が前記第1の移動支持台車と前記第2の移動支持台車に対して、それぞれ連結並びに該連結を解く切離しが可能とされていることを特徴とする非破壊検査装置。
【請求項5】
請求項3記載の敷設船上での管の突き合わせ溶接部の非破壊検査方法を実施するための非破壊検査装置であって、
既接続した前記管を支持する第1の移動支持台車と、
前記突き合わせ溶接部の非破壊検査を行う非破壊検査本体を搭載する移動台車と、
既接続した前記管を支持する昇降機能を具備した第2の移動支持台車とを備えることを特徴とする非破壊検査装置。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−185099(P2012−185099A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−49617(P2011−49617)
【出願日】平成23年3月7日(2011.3.7)
【出願人】(306022513)新日鉄エンジニアリング株式会社 (897)
【Fターム(参考)】