文字認識装置
【課題】キーボードやタッチパネルなどの目で見ながら特定の文字や数字を入力する必要がなくなり、親指による加圧中心を入力したい文字のように動かすことで、文字や数字の入力が可能になる文字認識装置を提供する。
【解決手段】文字認識装置は、時間の経過とともに、キートップに加わる指先(好ましくは親指の指先)による加圧と加重の重心移動よってX方向データ、Y方向データ、Z方向データを検出して順次出力するデータ出力手段を持つ静電容量式圧力センサと、データ出力手段からのX、Y、Zデータを格納する取得データ用メモリと、取得データ用メモリに格納されたX、Y、Zデータと比較するためのデータを登録するための登録データ用メモリと、取得データ用メモリに格納されたX、Y、Zデータと登録データ用メモリに登録された登録データの比較を行うことによって文字を認識して出力するマイクロプロセッサと、を備える。
【解決手段】文字認識装置は、時間の経過とともに、キートップに加わる指先(好ましくは親指の指先)による加圧と加重の重心移動よってX方向データ、Y方向データ、Z方向データを検出して順次出力するデータ出力手段を持つ静電容量式圧力センサと、データ出力手段からのX、Y、Zデータを格納する取得データ用メモリと、取得データ用メモリに格納されたX、Y、Zデータと比較するためのデータを登録するための登録データ用メモリと、取得データ用メモリに格納されたX、Y、Zデータと登録データ用メモリに登録された登録データの比較を行うことによって文字を認識して出力するマイクロプロセッサと、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、文字認識装置に関し、特に、片手操作で、好ましくは親指の押し圧の変化によって操作部位を直接見なくても文字入力し、入力した文字(英数字、漢字、ひらがな、カタカナ、記号等:以下、文字または文字等という)を認識し、認識した文字のデータをパソコン、マイコン、自動車、テレビチャンネルの制御に利用するためにそれらに送ることができる文字認識装置に関する。
【背景技術】
【0002】
手書き入力での文字認識装置の代表的な従来例には、タッチパネルやパソコンに備えられているIMEパッドの手書き入力機能がある。タッチパネルでは、指先、例えば、人指し指の指先やペンでタッチパネルに触れながら文字を描き、描いた文字と予め登録してある文字と比較し、最も近い登録した文字を選び出し正しければ、描いた文字を登録文字と決定するものである。また、IMEパッドの手書き入力では、手書き入力の画面にカーソルで文字を描き、描いた文字と候補となる登録した文字を比較して正しい文字を選んで決定するものである。
【0003】
これらの文字認識装置に用いられる文字認識には、通常、X方向、Y方向の位置を検出するベクトル入力装置が用いられる。ベクトル入力装置の従来例を開示するものとしては、特許第2516762号公報および特許第2630595号公報がある。特許第2516762号公報および特許第2630595号公報は、圧力センサを備えた操作板により、X、Y方向のベクトルを検出することを開示している。
【0004】
一方、1個の静電容量式圧力センサにより、X、Y、Z方向のベクトルを検出する圧力センサ等を開示するものとして特許第4514509号公報がある。この特許第4514509号公報には、検出した出力の利用については何ら記載がなく、また、圧力センサにおいて、力を加える部分が平板状になっており、後述する本発明で用いるような一筆書きによる手書き入力には適したものではない。
【0005】
また、手のひらに包み込んで、おもに親指でパソコンのカーソル制御に適したポインチングデバイス(マウス)として、カーソルのX、Y方向を制御することを開示するものとしては、特開2009−193279がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許番号第2516762号
【特許文献2】特許番号第2630595号
【特許文献3】特許番号第4514509号
【特許文献4】特願2008−032569号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述の従来例の特許文献1、特許文献2の発明においては、詳細には、微小移動できる入力用の操作板と、該操作板の稼動方向に加えられた力の方向と量を検出する複数の圧力センサと、該センサのそれぞれの出力をデジタル化するA/D変換器と、前記デジタル値に対応する複数の標準パターンを記憶する記憶手段と、前記デジタル値からなる入力パターンと前記標準パターンとを照合して入力ベクトルの種類をプロセッサーで判別するための装置である。
【0008】
そのため、操作部位が大きく、パソコンの前でテーブルなどの設置場所が必要であり、携帯できるような大きさにできない。さらに、操作部位は、X軸とそれに直交するY軸の2次元空間でベクトル量を検出するもので、文字認識にはその2次元的なデータを用いていたため、十分な認識ができたとはいえない。さらに、文字認識をさせるための文字の開始する点が平面であることで、指や手のひらを最初に置く位置が不安定であり、開始点を定めにくかった。
【0009】
したがって、本発明の目的は、XYZ方向の圧力を1個の圧力センサで検出できうる15mm×15mm以下の小型の圧力センサで、圧力検出器と操作部(キートップおよび突起物)を一体化、小型化し、センサと好ましくは親指で押し圧を受ける突起物とキートップをテレビ用のリモコンのような手のひらに収まる大きさのハウジングに装着して、突起物を介して人間の指先(好ましくは親指の指先)によるセンサ部へのZ方向の加圧(以下、単に、加圧ということもある)とXY面内の加重の重心移動(以下、単に加重の重心移動ということもある)によって文字を認識できる文字認識装置を提供することにある。ここで、Z方向の加圧とは、Z軸方向で指が押す方向に加える圧力を意味し、XY面内の加重の重心移動とは指のセンサを押し付けている点をXY軸方向にずらそうとする行為に伴う重心(加圧中心)の移動を意味する。このとき、加重の重心が動いても、センサに押し圧を与える突起物(突起部)は、その下端でキートップと連結されている(または一体に形成されている)ので、その上部が揺動するだけで、全体がXY面内で移動するものではない。
【0010】
本発明の他の目的は、自動車、オートバイ、自転車におけるハンドル部に本発明の文字認識装置(好ましくは、親指の指先による加圧と重心移動によって文字を認識させる)を取り付けることで、視点を文字認識装置に置かなくても運転しながらナビゲーション画面の操作や、音楽の選曲、音量の可変操作を容易にする文字認識装置を提供するものである。
【0011】
本発明の他の目的は、テレビのリモートコントローラにおいて、チャンネルの文字を目で確認することなしに、好ましくは親指の指先による加圧と重心移動による文字認識によって、チャンネルを変えたり、音量を変えることができる文字認識装置を提供するものである。
【0012】
本発明の他の目的は、親指の指先による加圧と加重移動による文字認識によって、目でキーボードや画面を確認することなしに携帯電話の数字入力、アルファベット入力を行えるようにする文字認識装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の文字認識装置は、時間の経過とともに、キートップに加わる指先(好ましくは親指の指先)による加圧と重心移動によってX方向データ、Y方向データ、Z方向データを検出して順次出力するデータ出力手段を持つ1個の静電容量式圧力センサと、該データ出力手段からのX、Y、Zデータを格納する取得データ用メモリと、該取得データ用メモリに格納されたX、Y、Zデータと比較するためのデータを登録するための登録データ用メモリと、前記取得データ用メモリに格納されたX、Y、Zデータと登録データ用メモリに登録された登録データの比較を行うことによって文字を認識して出力するマイクロプロセッサと、を有することを特徴とする。
【0014】
本発明では、前述の指先による加圧を受ける部分と加重の重心移動を受ける部分(これらは共通の部分である)の形状を突起形状とし、指先(好ましくは親指の指先)をその突起形状物の上に載せた状態で、スライドさせることなく、指先を移動することによってX方向、Y方向およびZ方向のデジタルデータを生成させ、その生成されたデジタル値を揮発性もしくは、不揮発性のメモリに蓄える。なお、突起物に指が触れることで常に文字を認識するための開始位置が定まりやすい。
【0015】
さらに、あらかじめメモリに保存された特定の文字を意味するデータとの照合をマイクロプロセッサによって行う。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、キーボードやタッチパネルなどの目で見ながら特定の文字や数字を入力する必要がなくなり、指先を入力したい文字等を描くように移動することで、文字や数字の入力が可能になる。すなわち、キーボードやタッチパネルなどの目で見ながら特定の文字や数字を入力する必要がなくなり、指先を入力したい文字を描くように動かすことで、文字や数字の入力が可能になる。このため、自動車やその他の機器に本発明の文字認識装置を装備すると、自動車その他の機器や装置を手で制御しながらでも文字認識できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の文字認識装置を適応するのに適したパソコン用マウスを示す斜視図である。
【図2】本発明の文字認識装置を適応したパソコン用マウスを示す写真である。
【図3】文字認識装置本体の静電容量式圧力センサからX、Y、Z方向データの出力の数値と、文字の移動軌跡およびZ方向データの棒グラフを表示する画面である。
【図4】文字認識装置本体のキートップと突起物を示す正面図である。
【図5】文字認識装置本体の突起物に加わる加重重心の移動方向を示す平面図である。
【図6】文字認識装置本体を示す断面図である。
【図7】文字認識装置本体に含まれる電極の形状を示す平面図である。
【図8】文字認識装置の制御を行うための構成を示すブロック図である。
【図9】文字認識装置の制御の流れを示すフローチャートである。
【図10】静電容量式圧力センサからX、Y、Z方向データの出力を示す棒グラフである。
【図11】文字認識装置本体の静電容量式圧力センサからX、Y、Z方向データの出力の数値と、文字の移動軌跡およびZ方向データの棒グラフを表示する画面である。
【図12】文字認識装置本体の静電容量式圧力センサからX、Y、Z方向データの出力の数値と、文字の移動軌跡およびZ方向データの棒グラフを表示する画面である。
【図13】文字認識装置本体の静電容量式圧力センサからX、Y、Z方向データの出力の数値と、文字の移動軌跡およびZ方向データの棒グラフを表示する画面である。
【図14】文字認識装置本体の静電容量式圧力センサからX、Y、Z方向データの出力の数値と、文字の移動軌跡およびZ方向データの棒グラフを表示する画面である。
【図15】本発明の文字認識装置を自動車のハンドルに適用した状態を示す図である。
【図16】本発明の文字認識装置を自転車またはオートバイのハンドルに適用した状態を示す図である。
【図17】本発明の文字認識装置をテレビのリモコンに適用した状態を示す図である。
【図18】文字認識装置本体の突起物の他の実施例を示す写真である。
【図19】文字認識装置本体の突起物の他の実施例を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明では、静電容量式圧力センサを加圧する指先(好ましくは親指の指先)の移動に基づいて圧力センサのX方向、Y方向の加重重心の中心位置を検出し、そのときの、Z方向の加圧を検出し、検出値に基づいて、XYの10ビットデジタル値および下方向(Z)の10ビットデジタル値で出力するためのデジタル回路と、これらXYZのデジタル値を格納するメモリと、あらかじめ保存された文字データのXYZで表されたデジタルデータと格納されているデータをすばやく類似検査(認識)を行い認識した文字を登録するメモリと、制御を行うマイクロプロセッサと、を有し、認識した文字をASCIIデータもしくはそのほかのデジタルフォーマットで出力する機能を小さく一体化した基板上に、これらのデジタル回路、格納するメモリ、登録するメモリおよびマイクロプロセッサを実装する。
【実施例1】
【0019】
図1は、本発明の文字認識装置を適用するのに適したパソコンへのデータ入力用のマウスの例を示す。図1の左側の図は上面から見た斜視図であり、図1の右側の図は下面から見た斜視図である。このマウスは前述の先行技術の特許文献4に示すものと同等のマウスであってもよく、キートップ23が本発明の文字認識装置本体と置き換えられて用いられる。図1中、符号1はマウス本体を示し、符号2は左クリックスイッチを示し、符号3は右クリックスイッチを示す。その他スイッチ等の機能は本発明の文字認識装置に直接関係ないので、説明は省略する。
【0020】
図2に示すように、図1のキートップ23の上部に棒状の突起物22を取り付け、または一体に形成し、その上に親指を載せて、スライドさせることがない指先の移動による加圧と加重の重心移動でキートップのXYZ方向の出力を作りだす。すなわち、突起物(突起部)22は下端でキートップ23に固定され、または一体に形成されているので、突起物22の上端に置かれた指先の加圧を伴う移動により、突起物22は、主に、その下端を支点として加圧を伴う揺動運動を行うことになる。これにより、キートップのXYZ方向の出力が作りだされる。
【0021】
XYZ方向の出力は、下記の表1に示すように、デジタル化され、マイコンから出力されるデータ列である。X、Y、Zはそれぞれ10ビットの値で出力される。
【0022】
【表1】
【0023】
図3は、例えば、本発明を容易に理解できるように、パソコンの画面にX、Y、Zの値を表示したものであり、画面上の右側では、X、Y、Zのデータは数値として表示されるとともに、画面上の左側では、X、Yのデータは、XY座標上の点10として表示され、また、Zは、棒グラフ11として表示される。なお、後述するデータを登録するために、このようなパソコン画面を用いても良いし、用いなくてもよい。
【0024】
図4は、本発明の文字認識装置本体の一部であるキートップおよび突起物を示す。キートップ23上の突起物22に親指の指先21を触れて、または載せてスライドすることなく指先を移動させて押し圧しながら加重重心をずらして得られる図3に示す10や11のデータは、約4msecおきにXYZそれぞれがメモリに保存される。ここで、図4は、親指を突起物22に載せて上から加圧している状態をも示している。このとき、図3に示す棒グラフ11は親指の加圧力にほぼ比例して上昇する。
【0025】
下記の表2はメモリに保存されたデータを示し、表記は10進法である。
【0026】
【表2】
【0027】
図5は、親指を下に加圧した状態で、その加重重心をXY方向にずらすときの状態を上から示す。このとき、図3に示されるXYの座標の点10は加重重心の移動に応じて移動する。図3はその移動軌跡を残すように表示したものである。なお、図5に示すように、親指21の指先は突起物22の上端に置かれ、ずらすことなく、移動される。また、キートップは、図3に示すように、円形であってもよく、図5に示すように四角形であってよい。
【0028】
次に、図6は、本発明の文字認識装置本体を示す断面図である。文字認識装置20には、電子回路をレイアウトする基板30上に銅版電極29と27が配置されている。基板30の上方に硬いシリコンゴムで形成された上部電極を支持するためのカバー25が取り付けられ、カバー25には、電極26、電極28が配置されている。柔らかいシリコンゴム24はキートップ23や突起物22と硬いシリコンゴムの間の緩衝材として働く。
【0029】
さらに、電極28は硬いシリコンゴムのカバー25上で電極26の内側に取り付けられ、電極27との間の静電容量の変化を読み取って、圧力センサのZ方向の変化量を検出する。ここで、いままで述べた電極26、27、28、29はいずれもドーナツ状の形状であり、さらに電極29は、基板30を上面から見た図7に示すように4つに分割され、それぞれ、29a、29b、29c、29dとなっている。
【0030】
次に、親指21が突起物22を加圧したときの図7で示した29a〜29dの電気的な動作と信号の取り出し方法を説明する。電極26と電極29a、29b、29c、29dの間の静電容量をそれぞれCa、Cb、Cc、Cdとすると、親指21によって加圧された結果、硬いシリコンゴムのカバー25と基板30の特定部分の空間が小さくなる。このことが、電極間の静電容量変化につながり、次のような計算式によって、XY軸の方向データが得られる。
X=Kx((Ca+Cd)―(Cb+Cc))/(Ca+Cb+Cc+Cd)
Y=Ky((Ca+Cb)―(Cd+Cc))/(Ca+Cb+Cc+Cd)
ここで、Kx、Kyは実験で得られるべき係数である。
【0031】
また、Z軸方向のデータについては、電極27と電極28の間の静電容量変化によって下記の式より単純に求めることができる。
Z=Zz×(C27−28)
ここで、Zzは実験で得られるべき係数であり、(C27−28)は電極27と電極28の間の静電容量である。
【0032】
図8は文字認識装置の構成を示す概略ブロック図である。最初に、文字認識装置の動作を図8を参照して概略する。前述のようにして得られたXYZの各データ値は図8に示すようにマイクロプロセッサ40に送られ、そこで、データにフィルター効果を加えたり、間引きを行ったりした後に、取得データ用メモリ41に送られる。
【0033】
さらに、マイクロプロセッサ30はあらかじめ登録データ用メモリ42に記憶されているXYZデータ値と比較、類似確認の動作を行い、類似した文字や数字を見つけたなら、その文字等を正しいと認識し、その文字等を出力する。
【0034】
次に、親指による加圧、加重の重心移動によって得られるXYZデータの取得開始から終了動作について述べる。データ取得の開始は、親指の加重重心がY軸の+側、あるいは、Y軸の−側、またはX軸の+側、あるいは、X軸の−側に大きく動いたことを検出した直後に開始される。また、終了動作については、Z軸のデータが親指による加重圧力が一定時間なくなったときを見極めて行う。
【0035】
すなわち、図9に示すように、開始直後、取得メモリ31をクリアし(ステップS1)、上もしくは下に重心が動くのを持ち(ステップS2)、上もしくは下に重心が動いたら、X、Y、Zデータの取得を行い(ステップS3)、Z=0で中心にデータが戻るのを持ち(ステップS4)、Z=0、つまり、Z軸方向の加圧がなくなった状態で中心にデータが戻ったなら、XYZデータと登録データの照合を行い(ステップS5)、その結果、認識した文字等を出力する。
【0036】
取得されたXYZデータは、図10のグラフのように、時間軸に対し、10ビットデータの値として記録される。したがって、照合されるデータもXYZそれぞれについて行われる。本発明の文字認識装置では、Z軸のデータが照合結果を判断するのに大きく寄与し、正確性を増す働きをする。
【0037】
XY軸の2軸データで文字認識するときは、照合すべきデータと取得データとの類似計算処理は、フィルターや統計的な手法を用いて行うが、類似のあいまいな部分はそれ以上の判断はつかなかった。しかし、本発明の文字認識装置におけるように、Z軸の要素を盛り込むことで、あいまいな類似について、判断が格段につきやすくなる。
【0038】
再び、図8を参照して、マイクロプロセッサ40、取得データ用メモリ41、登録データ用メモリ42の動作について補足説明する。計算されたX、Y、Zのデータは10ビットの分解能でデジタル化され、そのデータはマイクロプロセッサ40に送られる。登録データ用メモリ42には、登録された文字を意味するデータが準備段階で生成され、あらかじめ記録されている。準備段階において、登録データを作成するが、登録データの作り方は、たとえば、“a”の文字だと、突起物の上で指先を”a”を描くように動かすことでその文字のXYZデータのなかで、類似した10種類程度のデータの平均値、あるいは、標準偏差のσ(シグマ)値内のもののなかで、代表的なものを、データとして保存し、登録データとする。指先で、突起物の上部に触れて、突起物の上で滑らすことなく、その加圧中心をX方向およびY方向に関して移動することで”a”という文字を描くと、そのX、Y、Zデータは、取得データ用メモリ41に格納される。
【0039】
マイクロプロセッサ40は、取得データ用メモリ41の中のXYZのデータと、前述のようにして予め保存した、数十種類あるいは、数百種類の文字のデータと比較を行い、近い文字があれば、その文字を、認識された文字と認識し、出力する。つまり、登録データ用メモリ42の中には、たくさんの文字のX、Y、Zデータが格納されており、マイクロプロセッサ40によって取得データメモリ41の内容と照合を行った結果、最も類似している登録データ用メモリ42に登録されている文字を判定して、出力する働きを行う。
【0040】
”a”を描いてみたときの実際のXYデータとZデータについて、図11〜図14を参照して説明する。図11において、その左側には、指先で”a”と描くように加圧中心を移動したときの軌跡を示す。X、Y軸は、指先が触れないときは、データは、各々512を示し、指先の加圧中心を上にすると、XYの値はそれぞれ 512より多くなり、下にすると、512より小さな値となる。Z軸は、XY軸の動作時に上下動しているが、図11では、最終の値になっている(10bitは十進数で1023、半分で、512)。Z軸も指を触れないときは、おおよそ480程度の数値であり、指を触れて、圧力を加えるとこの値は増える。
【0041】
同様に、何度も、同じように、”a”のデータを取ってみると図12〜図14に示すようになる。XYの2軸データのみでは、文字の判別はしずらいが、Z軸のデータが加わることで、文字の判別確立が格段に向上してくる。
【0042】
実際に取得されたデータ(10進数)は、以下の表3に示すとおりのものである。X、Y軸の動作に伴って、Z軸のデータも変化しているのがわかる。
【0043】
【表3】
【実施例2】
【0044】
次に、自動車に適用した本発明の文字認識装置を説明する。図15に示すように、自動車のハンドルの右手、左手で触れられる両側に、あるいは、片側に文字認識装置20を取り付ける。人は、ハンドルを握った状態で、親指を文字認識装置20の突起物の先端に触れることができる。この状態で、車の内部の制御、例えば、カーステレオの音量、周波数の選択、カーナビゲーションの地図操作、拡大縮小、室内灯の明るさ調整、エアコンの温度調節などをハンドルに取り付けられた文字認識装置によって行うことができる。例えば、“a”がエアコンの制御を指定し、その後に続く数字がレベルを表すものとすると、指の加圧中心の移動によって、”a”とつづいて“3”と入れると、エアコンを3のレベルにするといったように操作する。
【実施例3】
【0045】
図16に示すように、自転車やオートバイなどのグリップ部にも文字認識装置を取り付けて、例えば、ランプの点灯、消灯、オーディオ機器の音量調整、選曲等その他の制御を行える。
【実施例4】
【0046】
図17に示すように、従来のテレビ用リモコンに代えて、文字認識装置を備えたテレビ用リモコンを用いることができる。通常、目で、番号を確認し、その数字のボタンを押すことで、テレビの選局を行う。ところが、この方法では、お年寄りや近眼の人は数字を見づらく、左図で示す従来のリモコンでは、リモコンの操作がしづらかった。そこで、右図に示すように、チャンネルの数字部分をなくし、指で、”1”、”2”のように数字を加圧中心の移動によって入力することで、いままでのスイッチの代わりをさせることができる。一筆書きのように、数字を指で書いて、指を離せば、そのあとで、認識された数字のデータが、テレビへIR(赤外線)で送られる。
【実施例5】
【0047】
図18、図19は、図2および図4に示す突起物の構成に代えて用いることができる文字認識装置を示す。この実施例では、突起物がドーム型に形成されているものであり、親指が突起物に触れるときの感触をよくしている。
【符号の説明】
【0048】
20 静電容量式圧力センサの文字認識装置本体
22 突起物
23 キートップ
26、27、28、29 電極
30 基板
40 マイクロプロセッサ
41 取得データ用メモリ
42 登録データ用メモリ
【技術分野】
【0001】
本発明は、文字認識装置に関し、特に、片手操作で、好ましくは親指の押し圧の変化によって操作部位を直接見なくても文字入力し、入力した文字(英数字、漢字、ひらがな、カタカナ、記号等:以下、文字または文字等という)を認識し、認識した文字のデータをパソコン、マイコン、自動車、テレビチャンネルの制御に利用するためにそれらに送ることができる文字認識装置に関する。
【背景技術】
【0002】
手書き入力での文字認識装置の代表的な従来例には、タッチパネルやパソコンに備えられているIMEパッドの手書き入力機能がある。タッチパネルでは、指先、例えば、人指し指の指先やペンでタッチパネルに触れながら文字を描き、描いた文字と予め登録してある文字と比較し、最も近い登録した文字を選び出し正しければ、描いた文字を登録文字と決定するものである。また、IMEパッドの手書き入力では、手書き入力の画面にカーソルで文字を描き、描いた文字と候補となる登録した文字を比較して正しい文字を選んで決定するものである。
【0003】
これらの文字認識装置に用いられる文字認識には、通常、X方向、Y方向の位置を検出するベクトル入力装置が用いられる。ベクトル入力装置の従来例を開示するものとしては、特許第2516762号公報および特許第2630595号公報がある。特許第2516762号公報および特許第2630595号公報は、圧力センサを備えた操作板により、X、Y方向のベクトルを検出することを開示している。
【0004】
一方、1個の静電容量式圧力センサにより、X、Y、Z方向のベクトルを検出する圧力センサ等を開示するものとして特許第4514509号公報がある。この特許第4514509号公報には、検出した出力の利用については何ら記載がなく、また、圧力センサにおいて、力を加える部分が平板状になっており、後述する本発明で用いるような一筆書きによる手書き入力には適したものではない。
【0005】
また、手のひらに包み込んで、おもに親指でパソコンのカーソル制御に適したポインチングデバイス(マウス)として、カーソルのX、Y方向を制御することを開示するものとしては、特開2009−193279がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許番号第2516762号
【特許文献2】特許番号第2630595号
【特許文献3】特許番号第4514509号
【特許文献4】特願2008−032569号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述の従来例の特許文献1、特許文献2の発明においては、詳細には、微小移動できる入力用の操作板と、該操作板の稼動方向に加えられた力の方向と量を検出する複数の圧力センサと、該センサのそれぞれの出力をデジタル化するA/D変換器と、前記デジタル値に対応する複数の標準パターンを記憶する記憶手段と、前記デジタル値からなる入力パターンと前記標準パターンとを照合して入力ベクトルの種類をプロセッサーで判別するための装置である。
【0008】
そのため、操作部位が大きく、パソコンの前でテーブルなどの設置場所が必要であり、携帯できるような大きさにできない。さらに、操作部位は、X軸とそれに直交するY軸の2次元空間でベクトル量を検出するもので、文字認識にはその2次元的なデータを用いていたため、十分な認識ができたとはいえない。さらに、文字認識をさせるための文字の開始する点が平面であることで、指や手のひらを最初に置く位置が不安定であり、開始点を定めにくかった。
【0009】
したがって、本発明の目的は、XYZ方向の圧力を1個の圧力センサで検出できうる15mm×15mm以下の小型の圧力センサで、圧力検出器と操作部(キートップおよび突起物)を一体化、小型化し、センサと好ましくは親指で押し圧を受ける突起物とキートップをテレビ用のリモコンのような手のひらに収まる大きさのハウジングに装着して、突起物を介して人間の指先(好ましくは親指の指先)によるセンサ部へのZ方向の加圧(以下、単に、加圧ということもある)とXY面内の加重の重心移動(以下、単に加重の重心移動ということもある)によって文字を認識できる文字認識装置を提供することにある。ここで、Z方向の加圧とは、Z軸方向で指が押す方向に加える圧力を意味し、XY面内の加重の重心移動とは指のセンサを押し付けている点をXY軸方向にずらそうとする行為に伴う重心(加圧中心)の移動を意味する。このとき、加重の重心が動いても、センサに押し圧を与える突起物(突起部)は、その下端でキートップと連結されている(または一体に形成されている)ので、その上部が揺動するだけで、全体がXY面内で移動するものではない。
【0010】
本発明の他の目的は、自動車、オートバイ、自転車におけるハンドル部に本発明の文字認識装置(好ましくは、親指の指先による加圧と重心移動によって文字を認識させる)を取り付けることで、視点を文字認識装置に置かなくても運転しながらナビゲーション画面の操作や、音楽の選曲、音量の可変操作を容易にする文字認識装置を提供するものである。
【0011】
本発明の他の目的は、テレビのリモートコントローラにおいて、チャンネルの文字を目で確認することなしに、好ましくは親指の指先による加圧と重心移動による文字認識によって、チャンネルを変えたり、音量を変えることができる文字認識装置を提供するものである。
【0012】
本発明の他の目的は、親指の指先による加圧と加重移動による文字認識によって、目でキーボードや画面を確認することなしに携帯電話の数字入力、アルファベット入力を行えるようにする文字認識装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の文字認識装置は、時間の経過とともに、キートップに加わる指先(好ましくは親指の指先)による加圧と重心移動によってX方向データ、Y方向データ、Z方向データを検出して順次出力するデータ出力手段を持つ1個の静電容量式圧力センサと、該データ出力手段からのX、Y、Zデータを格納する取得データ用メモリと、該取得データ用メモリに格納されたX、Y、Zデータと比較するためのデータを登録するための登録データ用メモリと、前記取得データ用メモリに格納されたX、Y、Zデータと登録データ用メモリに登録された登録データの比較を行うことによって文字を認識して出力するマイクロプロセッサと、を有することを特徴とする。
【0014】
本発明では、前述の指先による加圧を受ける部分と加重の重心移動を受ける部分(これらは共通の部分である)の形状を突起形状とし、指先(好ましくは親指の指先)をその突起形状物の上に載せた状態で、スライドさせることなく、指先を移動することによってX方向、Y方向およびZ方向のデジタルデータを生成させ、その生成されたデジタル値を揮発性もしくは、不揮発性のメモリに蓄える。なお、突起物に指が触れることで常に文字を認識するための開始位置が定まりやすい。
【0015】
さらに、あらかじめメモリに保存された特定の文字を意味するデータとの照合をマイクロプロセッサによって行う。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、キーボードやタッチパネルなどの目で見ながら特定の文字や数字を入力する必要がなくなり、指先を入力したい文字等を描くように移動することで、文字や数字の入力が可能になる。すなわち、キーボードやタッチパネルなどの目で見ながら特定の文字や数字を入力する必要がなくなり、指先を入力したい文字を描くように動かすことで、文字や数字の入力が可能になる。このため、自動車やその他の機器に本発明の文字認識装置を装備すると、自動車その他の機器や装置を手で制御しながらでも文字認識できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の文字認識装置を適応するのに適したパソコン用マウスを示す斜視図である。
【図2】本発明の文字認識装置を適応したパソコン用マウスを示す写真である。
【図3】文字認識装置本体の静電容量式圧力センサからX、Y、Z方向データの出力の数値と、文字の移動軌跡およびZ方向データの棒グラフを表示する画面である。
【図4】文字認識装置本体のキートップと突起物を示す正面図である。
【図5】文字認識装置本体の突起物に加わる加重重心の移動方向を示す平面図である。
【図6】文字認識装置本体を示す断面図である。
【図7】文字認識装置本体に含まれる電極の形状を示す平面図である。
【図8】文字認識装置の制御を行うための構成を示すブロック図である。
【図9】文字認識装置の制御の流れを示すフローチャートである。
【図10】静電容量式圧力センサからX、Y、Z方向データの出力を示す棒グラフである。
【図11】文字認識装置本体の静電容量式圧力センサからX、Y、Z方向データの出力の数値と、文字の移動軌跡およびZ方向データの棒グラフを表示する画面である。
【図12】文字認識装置本体の静電容量式圧力センサからX、Y、Z方向データの出力の数値と、文字の移動軌跡およびZ方向データの棒グラフを表示する画面である。
【図13】文字認識装置本体の静電容量式圧力センサからX、Y、Z方向データの出力の数値と、文字の移動軌跡およびZ方向データの棒グラフを表示する画面である。
【図14】文字認識装置本体の静電容量式圧力センサからX、Y、Z方向データの出力の数値と、文字の移動軌跡およびZ方向データの棒グラフを表示する画面である。
【図15】本発明の文字認識装置を自動車のハンドルに適用した状態を示す図である。
【図16】本発明の文字認識装置を自転車またはオートバイのハンドルに適用した状態を示す図である。
【図17】本発明の文字認識装置をテレビのリモコンに適用した状態を示す図である。
【図18】文字認識装置本体の突起物の他の実施例を示す写真である。
【図19】文字認識装置本体の突起物の他の実施例を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明では、静電容量式圧力センサを加圧する指先(好ましくは親指の指先)の移動に基づいて圧力センサのX方向、Y方向の加重重心の中心位置を検出し、そのときの、Z方向の加圧を検出し、検出値に基づいて、XYの10ビットデジタル値および下方向(Z)の10ビットデジタル値で出力するためのデジタル回路と、これらXYZのデジタル値を格納するメモリと、あらかじめ保存された文字データのXYZで表されたデジタルデータと格納されているデータをすばやく類似検査(認識)を行い認識した文字を登録するメモリと、制御を行うマイクロプロセッサと、を有し、認識した文字をASCIIデータもしくはそのほかのデジタルフォーマットで出力する機能を小さく一体化した基板上に、これらのデジタル回路、格納するメモリ、登録するメモリおよびマイクロプロセッサを実装する。
【実施例1】
【0019】
図1は、本発明の文字認識装置を適用するのに適したパソコンへのデータ入力用のマウスの例を示す。図1の左側の図は上面から見た斜視図であり、図1の右側の図は下面から見た斜視図である。このマウスは前述の先行技術の特許文献4に示すものと同等のマウスであってもよく、キートップ23が本発明の文字認識装置本体と置き換えられて用いられる。図1中、符号1はマウス本体を示し、符号2は左クリックスイッチを示し、符号3は右クリックスイッチを示す。その他スイッチ等の機能は本発明の文字認識装置に直接関係ないので、説明は省略する。
【0020】
図2に示すように、図1のキートップ23の上部に棒状の突起物22を取り付け、または一体に形成し、その上に親指を載せて、スライドさせることがない指先の移動による加圧と加重の重心移動でキートップのXYZ方向の出力を作りだす。すなわち、突起物(突起部)22は下端でキートップ23に固定され、または一体に形成されているので、突起物22の上端に置かれた指先の加圧を伴う移動により、突起物22は、主に、その下端を支点として加圧を伴う揺動運動を行うことになる。これにより、キートップのXYZ方向の出力が作りだされる。
【0021】
XYZ方向の出力は、下記の表1に示すように、デジタル化され、マイコンから出力されるデータ列である。X、Y、Zはそれぞれ10ビットの値で出力される。
【0022】
【表1】
【0023】
図3は、例えば、本発明を容易に理解できるように、パソコンの画面にX、Y、Zの値を表示したものであり、画面上の右側では、X、Y、Zのデータは数値として表示されるとともに、画面上の左側では、X、Yのデータは、XY座標上の点10として表示され、また、Zは、棒グラフ11として表示される。なお、後述するデータを登録するために、このようなパソコン画面を用いても良いし、用いなくてもよい。
【0024】
図4は、本発明の文字認識装置本体の一部であるキートップおよび突起物を示す。キートップ23上の突起物22に親指の指先21を触れて、または載せてスライドすることなく指先を移動させて押し圧しながら加重重心をずらして得られる図3に示す10や11のデータは、約4msecおきにXYZそれぞれがメモリに保存される。ここで、図4は、親指を突起物22に載せて上から加圧している状態をも示している。このとき、図3に示す棒グラフ11は親指の加圧力にほぼ比例して上昇する。
【0025】
下記の表2はメモリに保存されたデータを示し、表記は10進法である。
【0026】
【表2】
【0027】
図5は、親指を下に加圧した状態で、その加重重心をXY方向にずらすときの状態を上から示す。このとき、図3に示されるXYの座標の点10は加重重心の移動に応じて移動する。図3はその移動軌跡を残すように表示したものである。なお、図5に示すように、親指21の指先は突起物22の上端に置かれ、ずらすことなく、移動される。また、キートップは、図3に示すように、円形であってもよく、図5に示すように四角形であってよい。
【0028】
次に、図6は、本発明の文字認識装置本体を示す断面図である。文字認識装置20には、電子回路をレイアウトする基板30上に銅版電極29と27が配置されている。基板30の上方に硬いシリコンゴムで形成された上部電極を支持するためのカバー25が取り付けられ、カバー25には、電極26、電極28が配置されている。柔らかいシリコンゴム24はキートップ23や突起物22と硬いシリコンゴムの間の緩衝材として働く。
【0029】
さらに、電極28は硬いシリコンゴムのカバー25上で電極26の内側に取り付けられ、電極27との間の静電容量の変化を読み取って、圧力センサのZ方向の変化量を検出する。ここで、いままで述べた電極26、27、28、29はいずれもドーナツ状の形状であり、さらに電極29は、基板30を上面から見た図7に示すように4つに分割され、それぞれ、29a、29b、29c、29dとなっている。
【0030】
次に、親指21が突起物22を加圧したときの図7で示した29a〜29dの電気的な動作と信号の取り出し方法を説明する。電極26と電極29a、29b、29c、29dの間の静電容量をそれぞれCa、Cb、Cc、Cdとすると、親指21によって加圧された結果、硬いシリコンゴムのカバー25と基板30の特定部分の空間が小さくなる。このことが、電極間の静電容量変化につながり、次のような計算式によって、XY軸の方向データが得られる。
X=Kx((Ca+Cd)―(Cb+Cc))/(Ca+Cb+Cc+Cd)
Y=Ky((Ca+Cb)―(Cd+Cc))/(Ca+Cb+Cc+Cd)
ここで、Kx、Kyは実験で得られるべき係数である。
【0031】
また、Z軸方向のデータについては、電極27と電極28の間の静電容量変化によって下記の式より単純に求めることができる。
Z=Zz×(C27−28)
ここで、Zzは実験で得られるべき係数であり、(C27−28)は電極27と電極28の間の静電容量である。
【0032】
図8は文字認識装置の構成を示す概略ブロック図である。最初に、文字認識装置の動作を図8を参照して概略する。前述のようにして得られたXYZの各データ値は図8に示すようにマイクロプロセッサ40に送られ、そこで、データにフィルター効果を加えたり、間引きを行ったりした後に、取得データ用メモリ41に送られる。
【0033】
さらに、マイクロプロセッサ30はあらかじめ登録データ用メモリ42に記憶されているXYZデータ値と比較、類似確認の動作を行い、類似した文字や数字を見つけたなら、その文字等を正しいと認識し、その文字等を出力する。
【0034】
次に、親指による加圧、加重の重心移動によって得られるXYZデータの取得開始から終了動作について述べる。データ取得の開始は、親指の加重重心がY軸の+側、あるいは、Y軸の−側、またはX軸の+側、あるいは、X軸の−側に大きく動いたことを検出した直後に開始される。また、終了動作については、Z軸のデータが親指による加重圧力が一定時間なくなったときを見極めて行う。
【0035】
すなわち、図9に示すように、開始直後、取得メモリ31をクリアし(ステップS1)、上もしくは下に重心が動くのを持ち(ステップS2)、上もしくは下に重心が動いたら、X、Y、Zデータの取得を行い(ステップS3)、Z=0で中心にデータが戻るのを持ち(ステップS4)、Z=0、つまり、Z軸方向の加圧がなくなった状態で中心にデータが戻ったなら、XYZデータと登録データの照合を行い(ステップS5)、その結果、認識した文字等を出力する。
【0036】
取得されたXYZデータは、図10のグラフのように、時間軸に対し、10ビットデータの値として記録される。したがって、照合されるデータもXYZそれぞれについて行われる。本発明の文字認識装置では、Z軸のデータが照合結果を判断するのに大きく寄与し、正確性を増す働きをする。
【0037】
XY軸の2軸データで文字認識するときは、照合すべきデータと取得データとの類似計算処理は、フィルターや統計的な手法を用いて行うが、類似のあいまいな部分はそれ以上の判断はつかなかった。しかし、本発明の文字認識装置におけるように、Z軸の要素を盛り込むことで、あいまいな類似について、判断が格段につきやすくなる。
【0038】
再び、図8を参照して、マイクロプロセッサ40、取得データ用メモリ41、登録データ用メモリ42の動作について補足説明する。計算されたX、Y、Zのデータは10ビットの分解能でデジタル化され、そのデータはマイクロプロセッサ40に送られる。登録データ用メモリ42には、登録された文字を意味するデータが準備段階で生成され、あらかじめ記録されている。準備段階において、登録データを作成するが、登録データの作り方は、たとえば、“a”の文字だと、突起物の上で指先を”a”を描くように動かすことでその文字のXYZデータのなかで、類似した10種類程度のデータの平均値、あるいは、標準偏差のσ(シグマ)値内のもののなかで、代表的なものを、データとして保存し、登録データとする。指先で、突起物の上部に触れて、突起物の上で滑らすことなく、その加圧中心をX方向およびY方向に関して移動することで”a”という文字を描くと、そのX、Y、Zデータは、取得データ用メモリ41に格納される。
【0039】
マイクロプロセッサ40は、取得データ用メモリ41の中のXYZのデータと、前述のようにして予め保存した、数十種類あるいは、数百種類の文字のデータと比較を行い、近い文字があれば、その文字を、認識された文字と認識し、出力する。つまり、登録データ用メモリ42の中には、たくさんの文字のX、Y、Zデータが格納されており、マイクロプロセッサ40によって取得データメモリ41の内容と照合を行った結果、最も類似している登録データ用メモリ42に登録されている文字を判定して、出力する働きを行う。
【0040】
”a”を描いてみたときの実際のXYデータとZデータについて、図11〜図14を参照して説明する。図11において、その左側には、指先で”a”と描くように加圧中心を移動したときの軌跡を示す。X、Y軸は、指先が触れないときは、データは、各々512を示し、指先の加圧中心を上にすると、XYの値はそれぞれ 512より多くなり、下にすると、512より小さな値となる。Z軸は、XY軸の動作時に上下動しているが、図11では、最終の値になっている(10bitは十進数で1023、半分で、512)。Z軸も指を触れないときは、おおよそ480程度の数値であり、指を触れて、圧力を加えるとこの値は増える。
【0041】
同様に、何度も、同じように、”a”のデータを取ってみると図12〜図14に示すようになる。XYの2軸データのみでは、文字の判別はしずらいが、Z軸のデータが加わることで、文字の判別確立が格段に向上してくる。
【0042】
実際に取得されたデータ(10進数)は、以下の表3に示すとおりのものである。X、Y軸の動作に伴って、Z軸のデータも変化しているのがわかる。
【0043】
【表3】
【実施例2】
【0044】
次に、自動車に適用した本発明の文字認識装置を説明する。図15に示すように、自動車のハンドルの右手、左手で触れられる両側に、あるいは、片側に文字認識装置20を取り付ける。人は、ハンドルを握った状態で、親指を文字認識装置20の突起物の先端に触れることができる。この状態で、車の内部の制御、例えば、カーステレオの音量、周波数の選択、カーナビゲーションの地図操作、拡大縮小、室内灯の明るさ調整、エアコンの温度調節などをハンドルに取り付けられた文字認識装置によって行うことができる。例えば、“a”がエアコンの制御を指定し、その後に続く数字がレベルを表すものとすると、指の加圧中心の移動によって、”a”とつづいて“3”と入れると、エアコンを3のレベルにするといったように操作する。
【実施例3】
【0045】
図16に示すように、自転車やオートバイなどのグリップ部にも文字認識装置を取り付けて、例えば、ランプの点灯、消灯、オーディオ機器の音量調整、選曲等その他の制御を行える。
【実施例4】
【0046】
図17に示すように、従来のテレビ用リモコンに代えて、文字認識装置を備えたテレビ用リモコンを用いることができる。通常、目で、番号を確認し、その数字のボタンを押すことで、テレビの選局を行う。ところが、この方法では、お年寄りや近眼の人は数字を見づらく、左図で示す従来のリモコンでは、リモコンの操作がしづらかった。そこで、右図に示すように、チャンネルの数字部分をなくし、指で、”1”、”2”のように数字を加圧中心の移動によって入力することで、いままでのスイッチの代わりをさせることができる。一筆書きのように、数字を指で書いて、指を離せば、そのあとで、認識された数字のデータが、テレビへIR(赤外線)で送られる。
【実施例5】
【0047】
図18、図19は、図2および図4に示す突起物の構成に代えて用いることができる文字認識装置を示す。この実施例では、突起物がドーム型に形成されているものであり、親指が突起物に触れるときの感触をよくしている。
【符号の説明】
【0048】
20 静電容量式圧力センサの文字認識装置本体
22 突起物
23 キートップ
26、27、28、29 電極
30 基板
40 マイクロプロセッサ
41 取得データ用メモリ
42 登録データ用メモリ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
時間の経過とともに、キートップに加わる指先による加圧および加重の重心移動によってX方向データ、Y方向データ、Z方向データを検出して順次出力するデータ出力手段を持つ静電容量式圧力センサと、
該データ出力手段からのX、Y、Zデータを格納する取得データ用メモリと、
該取得データ用メモリに格納されたX、Y、Zデータと比較するためのデータを登録するための登録データ用メモリと、
前記取得データ用メモリに格納されたX、Y、Zデータと登録データ用メモリに登録された登録データの比較を行うことによって文字を認識して出力するマイクロプロセッサと、
を有することを特徴とする文字認識装置。
【請求項2】
請求項1記載の文字認識装置において、前記登録データ用メモリに登録される登録データは同一文字に対して複数回にわたって取得データ用メモリに格納されたX、Y、Zデータから予め算出されることを特徴とする文字認識装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の文字認識装置が自動車に装備され、自動車の機器の制御に用いられることを特徴とする文字認識装置。
【請求項4】
請求項1または2記載の文字認識装置が自転車またはオートバイに装備され、自転車またはオートバイの機器の制御に用いられることを特徴とする文字認識装置。
【請求項5】
請求項1または2記載の文字認識装置がテレビのリモコンに装備され、テレビの制御に用いられることを特徴とする文字認識装置。
【請求項6】
X方向データ、Y方向データ、Z方向データを検出する静電容量式圧力センサと、該静電容量式圧力センサのキートップに設けられ、指先で操作される突起物と、を有することを特徴とする文字認識センサ。
【請求項1】
時間の経過とともに、キートップに加わる指先による加圧および加重の重心移動によってX方向データ、Y方向データ、Z方向データを検出して順次出力するデータ出力手段を持つ静電容量式圧力センサと、
該データ出力手段からのX、Y、Zデータを格納する取得データ用メモリと、
該取得データ用メモリに格納されたX、Y、Zデータと比較するためのデータを登録するための登録データ用メモリと、
前記取得データ用メモリに格納されたX、Y、Zデータと登録データ用メモリに登録された登録データの比較を行うことによって文字を認識して出力するマイクロプロセッサと、
を有することを特徴とする文字認識装置。
【請求項2】
請求項1記載の文字認識装置において、前記登録データ用メモリに登録される登録データは同一文字に対して複数回にわたって取得データ用メモリに格納されたX、Y、Zデータから予め算出されることを特徴とする文字認識装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の文字認識装置が自動車に装備され、自動車の機器の制御に用いられることを特徴とする文字認識装置。
【請求項4】
請求項1または2記載の文字認識装置が自転車またはオートバイに装備され、自転車またはオートバイの機器の制御に用いられることを特徴とする文字認識装置。
【請求項5】
請求項1または2記載の文字認識装置がテレビのリモコンに装備され、テレビの制御に用いられることを特徴とする文字認識装置。
【請求項6】
X方向データ、Y方向データ、Z方向データを検出する静電容量式圧力センサと、該静電容量式圧力センサのキートップに設けられ、指先で操作される突起物と、を有することを特徴とする文字認識センサ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2012−234450(P2012−234450A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−103937(P2011−103937)
【出願日】平成23年5月9日(2011.5.9)
【出願人】(508047071)株式会社ブルーマウステクノロジー (5)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月9日(2011.5.9)
【出願人】(508047071)株式会社ブルーマウステクノロジー (5)
【Fターム(参考)】
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