説明

断熱圧縮防止構造及び圧力調整器

【課題】中心に設けた小流路が入り込んだゴミやホコリによって塞がれたような場合でも、断熱圧縮を防止して高圧ガスを流通させることができる断熱圧縮防止構造と、この断熱圧縮防止構造を利用した圧力調整器を提供する。
【解決手段】断熱圧縮防止構造は、高い圧力を持ったガスが供給されるガス通路4に設けた段差部6と、段差部6に対し摺動可能に配置され中心に小さい断面積を持った小流路5aを形成すると共に外周に大きい断面積を持った大流路5cを形成し且つ段差部6と当接したとき該大流路5cが段差部6によって遮蔽されるように構成した仕切部材5と、仕切部材5をガス通路4に於けるガスの流通方向上流側に付勢するばね7とを有し、前記仕切部材5に、小流路5aと大流路5cを連通させた穴25又は溝26を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一次側から高圧ガスを供給したときに生じる虞のある断熱圧縮を防止し得るように構成した断熱圧縮防止構造であって、特に、ゴミやホコリの影響を排除した断熱圧縮防止構造と、この構造を設けた圧力調整器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば末端が閉鎖された又は断面積が空隙に絞られた大気圧の系に高圧ガスを供給したとき、この系が断熱圧縮してガスの温度が上昇する現象が生じる。高圧ガスが酸素のような支燃性を持ったガスである場合、ガスの温度上昇によって系を構成する配管や弁等に悪影響を及ぼす虞がある。
【0003】
上記の如き系の一つにマニホールドがある。例えば酸素マニホールドは、圧力調整装置と複数の導管を取り付けた供給配管を有しており、夫々の導管に酸素ボンベを取り付けて開放することで、各酸素ボンベに充填された高圧酸素を集合させ、この酸素を圧力調整装置で予め設定された圧力に減圧して、例えば工場の屋内配管に供給し得るように構成されている。
【0004】
上記マニホールドでは、新しい酸素ボンベを導管に取り付けてバルブを開放すると、供給配管には充填された酸素が持つ高圧が作用して断熱圧縮が生じ、該供給配管に残存しているガス、供給された酸素、供給配管の温度が上昇する。このため、高圧ガス配管系、特に、高圧酸素配管系には断熱圧縮を防止し得る機構を設けるのが一般的である。
【0005】
また上記の如き系の他の一つに圧力調整器がある。この圧力調整器は、ガスボンベや屋内配管を含む一次側の供給部材に接続される一次側接続部と、一次側の供給部材から供給された高圧ガスを減圧する減圧機構と、減圧された低圧ガスを二次側の被供給部材に供給するために該二次側の被供給部材を接続する二次側接続部とを有して構成される。
【0006】
上記圧力調整器では、一次側の供給部材に接続して高圧ガスの供給を開始したとき、減圧機構と一次側接続部との間の空間に断熱圧縮現象が生じ、これに伴って熱が発生し、予め存在していた気体、高圧ガス、周囲の温度が上昇するという現象が生じる。特に、供給されるガスが酸素であり、減圧機構を構成するダイヤフラムやシート部材が可燃性物質によって形成されているような場合、断熱圧縮に伴って生じる熱がダイヤフラムやシート部材に悪影響を及ぼす虞がある。
【0007】
このため、特許文献1に開示されるような、断熱圧縮を生じさせることがない酸素調整器が提案されている。前記酸素調整器は、高圧ガスボンベに連通するスリーブを調整器本体に設け、スリーブの内面に、弁と、これを作動させるコイルばねを収容し、前記弁は外周に凹部を設けてスリーブ内面との間に大流路を形成し、中心の小孔を小流路とし、前記弁により、大流路を塞ぐ弁座部を形成して構成されたものである。
【0008】
上記酸素調整器は、高圧ガスボンベに取り付けた状態では、弁はコイルばねに付勢されて弁座部から離脱しており、スリーブの内部は弁の小流路と大流路が連通している。この状態で高圧ガスボンベを開放して高圧ガスを供給すると、供給された高圧ガスが弁の上流側の端面に作用して弁が弁座部に当接することで大流路が塞がれる。このため、高圧ガスは弁の中心に設けた小流路から流れることとなり、下流側に存在する気体に対し瞬時に高い圧力が作用することがなく、断熱圧縮を防止することができる。そして弁の下流側の圧力が一次側の圧力に接近するとコイルばねの作用で弁が移動し、弁座による大流路の閉塞が開放されて、一次側から減圧機構側に大流量の高圧ガスが供給される。
【0009】
このように、特許文献1の技術では、酸素調整器に対し一次側から高圧ガスを供給することに伴う断熱圧縮を防止することができ、これにより、減圧機構を構成するダイヤフラムやシート部材を加熱する虞がなく、安全な酸素調整器を構成することができる。
【0010】
また特許文献1に記載された断熱圧縮を防止するための構造は、高圧ガスの配管系にも適用されており、該配管系に於ける断熱圧縮を防止して安全性の高い配管系を実現するのに寄与している。
【0011】
【特許文献1】実公平4−19280号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかし、上記したマニホールドや圧力調整器は、常に酸素ボンベを取り付けていたり、酸素ボンベや屋内配管を含む一次側のガス供給部に取り付けておくものではなく、頻繁に着脱を繰り返して利用するものであるため、弁の上流側にゴミやホコリが入り込んで中心に形成した小流路を塞いでしまうことがある。この場合、高圧ガスの供給に伴って、弁が弁座部に当接して大流路が塞がれ、且つ小流路がゴミやホコリに塞がれることにより、高圧ガスが弁の下流側にある減圧機構に流通しなくなる、という問題が生じる。
【0013】
本発明の目的は、中心に設けた小流路が入り込んだゴミやホコリによって塞がれたような場合でも、断熱圧縮を防止して高圧ガスを流通させることができる断熱圧縮防止構造と、この断熱圧縮防止構造を利用した圧力調整器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために本発明に係る断熱圧縮防止構造は、高い圧力を持ったガスが供給されるガス通路に設けた段差部と、前記段差部に対し摺動可能に配置され中心に小さい断面積を持った小流路を形成すると共に外周に大きい断面積を持った大流路を形成し且つ前記段差部と当接したとき該大流路が段差部によって遮蔽されるように構成した仕切部材と、前記仕切部材をガス通路に於けるガスの流通方向上流側に付勢する付勢部材と、を有する断熱圧縮防止構造に於いて、前記仕切部材に、小流路と大流路を連通させた連通路を形成したものである。
【0015】
上記断熱圧縮防止構造に於いて、仕切部材に形成した連通路が、仕切部材の側面に形成され且つ中心に形成された小流路と外周に形成された大流路とを結ぶ穴であるか、又は仕切部材に於けるガスの流通方向下流側に形成され且つ中心に形成された小流路と外周に形成された大流路とを結ぶ溝であることが好ましい。
【0016】
また本発明に係る圧力調整器は、減圧機構を内蔵し一次側から供給された高い圧力を持ったガスを減圧して二次側に供給し得るように構成した圧力調整器に於いて、一次側のガス通路に上記の如く構成された何れかの断熱圧縮防止構造を設けたものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る断熱圧縮防止構造では、仕切部材の中心に形成された小流路がゴミやホコリによって閉塞された場合でも、断熱圧縮を防止して一次側から供給された高圧ガスを安定した状態で供給することができる。
【0018】
即ち、一次側から高圧ガスを供給したとき、仕切部材が段差部に当接して仕切部材の外周に形成した大流路が段差部によって塞がれたとしても、仕切部材の外周に形成した大流路に侵入した高圧ガスが連通路を通って中心の小流路に流通する。従って、仕切部材の下流側で断熱圧縮が生じることがない。そして、仕切部材の下流側の圧力が上昇すると、付勢部材の付勢力によって仕切部材が段差部から離隔して大流路が開放され、大流量の高圧ガスが下流側に流通する。
【0019】
特に、仕切部材の中心に形成した小流路と、外周に形成した大流路とを連通させる連通路を、仕切部材の側面に形成した穴、或いは仕切部材の下流側の端面に形成した溝とすることによって、中心に形成した小流路が塞がれた場合でも、簡単な構造で確実に断熱圧縮を防止して、供給された高圧ガスを減圧機構に流通させることができる。
【0020】
また本発明の圧力調整器では、仕切部材の中心に形成された小流路がゴミやホコリによって閉塞された場合でも、断熱圧縮を防止して一次側から供給された高圧ガスを減圧して二次側に安定した状態で供給することができる。
【0021】
即ち、一次側から高圧ガスを供給したとき、仕切部材が段差部に当接して仕切部材の外周に形成した大流路が段差部によって塞がれたとしても、仕切部材の外周に形成した大流路に侵入した高圧ガスが連通路を通って中心の小流路に流通するため、仕切部材の下流側にある減圧機構の近傍で断熱圧縮が生じることがない。そして、仕切部材の下流側の圧力が上昇すると、付勢部材の付勢力によって仕切部材が段差部から離隔して大流路が開放され、大流量の高圧ガスが下流側に流通する。これにより、二次側に対する減圧されたガスを供給することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明に係る断熱圧縮防止構造及びこの断熱圧縮防止構造を用いた圧力調整器の最も好ましい実施形態について説明する。本発明の断熱圧縮防止構造は、仕切部材の中心に設けた小流路と外周に設けた大流路を連通路で連通させることによって、小流路がゴミやホコリによって遮蔽された場合でも、高圧ガスが連通路を介して小流路に流入することで、仕切部材としての機能を発揮し得るように構成したものである。
【0023】
従って、一次側の高圧ガスが供給されるガスボンベや、工場或いは病院等を含む屋内配管に着脱させて使用する際に、仕切部材の上流側にゴミやホコリが入り込んだ場合でも、断熱圧縮を防止して安定した且つ確実な高圧ガスの流れを確保することが可能である。
【0024】
本発明の断熱圧縮防止構造では、一次側から供給される高圧ガスの種類を限定するものではなく、酸素や窒素或いは空気等のガスに適用することが可能である。しかし、支燃性を有する酸素を対象とすることによって、適用された系に対し高い安全性を確保することが可能となる。
【0025】
本発明の断熱圧縮防止構造に於いて、一次側の高圧ガスが供給される経路に設けた段差部に摺動可能に配置された仕切部材には、中心に形成された小流路と外周に形成された大流路とを連通する連通路が形成されている。小流路の断面積は一次側から供給された高圧ガスが瞬時に減圧機構に到達することを防止し得る程度の値である。
【0026】
しかし、小流路は仕切部材の中心を貫通して構成される必要はなく、加工上の面から見ると、小流路の長さは可及的に短いことが好ましく、従って、仕切部材の中心であって上流側に断面積の小さい小径部を形成すると共に該小流路の下流側に断面積が大きく加工が容易な大径部を連続させて小流路を構成することが好ましい。
【0027】
仕切部材に形成する連通路は、該仕切部材の側面に穴を形成することで外周の大流路と中心の小流路とを連通させて構成することが可能である。例えば、小流路が小径部と大径部とによって構成されている場合、連通路を小径部に接続する場合には該連通路の径は小径部の径に関わらず充分に大きい径とすることが可能である。また連通路を大径部に接続する場合には該連通路の断面積は小径部の断面積と同程度であることが必要である。
【0028】
また仕切部材に形成する連通路を、該仕切部材の下流側の端面に溝を形成することで外周の大流路と中心の小流路とを連通させて構成することが可能である。例えば、小流路が小径部のみによって構成されている場合、連通路の断面積は小径部の径に関わらず充分に大きい値とすることが可能である。また小流路が小径部と大径部とによって構成されている場合、連通路の断面積は小径部の断面積と同程度であることが必要である。
【0029】
本発明に係る圧力調整器は、高圧ガスが供給される一次側に前述した何れかの断熱圧縮防止構造を設けることで、減圧機構の近傍で生じる虞のある断熱圧縮を防止したものである。従って、一次側に配置された仕切部材の上流側にゴミやホコリが入り込んだ場合でも、安定した且つ確実な高圧ガスの流れを確保することが可能である。
【0030】
本発明の圧力調整器は断熱圧縮を防止することから、供給される高圧ガスの種類を限定するものではないものの、支燃性を有する酸素の圧力調整器として使用することによって高い安全性を確保することが可能となり好ましい。
【実施例1】
【0031】
次に、本発明に係る断熱圧縮防止構造を採用した圧力調整器の実施例について説明する。図1は圧力調整器の構成を説明する図である。図2は第1実施例に係る仕切部材の構成を説明する図である。図3は仕切部材の作用を説明する図である。
【0032】
先ず、図1により圧力調整器Aの構成について簡単に説明する。この圧力調整器Aは、医療用酸素を患者に供給するための酸素供給器として構成されており、図示しない医療用の酸素ボンベに着脱可能に取り付けられ、該酸素ボンベに充填された高圧酸素を減圧して低圧酸素とすると共に、選択された流量を保持して患者が装着した酸素マスクやカニューラに供給し得るように構成されている。
【0033】
圧力調整器Aのケーシング1には一次側の供給部材である酸素ボンベの吐出口に取り付けられる装着部材2が固定されており、該装着部材2を嵌合した袋ナット3を利用して着脱可能し得るように構成されている。
【0034】
装着部材2を長手方向に貫通して一次側のガス通路4が構成されている。前記ガス通路4に於ける装着部材2の自由端側には仕切部材5を摺動可能に収容する段差部6が形成されている。段差部6は、仕切部材5の下流側の端面5eが当接したときに該仕切部材5の外周に構成された大流路5hを遮蔽し得る寸法を持って形成された段差端面6aと、仕切部材5の外周に形成された平面5fと共に大流路5hを構成する内周面6bとを有して構成されている。
【0035】
段差部6のケーシング1側には、仕切部材5を装着部材2の自由端側に付勢する付勢部材となるばね7を収容する収容部8が連続して形成されている。更に、ガス通路4の端部には中心に酸素ボンベに充填された高圧酸素を通す穴9aが設けられ、且つばね8に付勢された仕切部材5の移動限界を規定する規定部材9が固定されている。更に、段差部6を覆うようにフィルター10が配置されており、該フィルター10が規定部材9によって保持されている。
【0036】
ケーシング1の内部には、ガス通路4と連通して該ガス通路4を通った高圧酸素を減圧する減圧機構11が構成されている。この減圧機構は、ノズル11aとシート11bを有しており、該シート11bはばね12によってノズル11aから離隔する方向に付勢されたピストン13に取り付けられている。従って、高圧酸素が供給されることのない状態では、シート11bはノズル11aから離隔しており、高圧酸素がノズル11bから二次圧室14に流れる過程で減圧される。減圧された酸素は二次圧室14と連通した室15にも供給され、ピストン13の面積が二次圧室14の面積よりも大きいため、ピストン13はシート11bをノズル11aに接近させる方向に移動し、ノズル11aとシート11bとの離隔距離が一定に保持される。
【0037】
二次圧室14に連続して減圧された酸素を二次側に供給する供給孔16が形成されており、該供給孔16に対向して二次側のガス通路17が構成されている。このガス通路17には、患者が装着する酸素マスクやカニューラに減圧された酸素を供給するチューブを取り付けるためのターミナル18が配置されると共にケーシング1に固定されている。
【0038】
また供給孔16とガス通路17との間に、径の異なる複数のオリフィス19aが形成されたセレクター19が配置されている。このセレクター19はハンドル20に固定されており、該ハンドル20を外部から操作してセレクター19を回転させ、供給孔16に所望の径を持ったオリフィス19aを対向させることで、二次側に対する酸素の供給流量を設定することが可能である。
【0039】
次に、図2により仕切部材5の構成について説明する。図に示すように、仕切部材5の中心には断面積が小さい小流路5aが形成されている。この小流路5aは、上流側の端面5d側に小径部5bが形成され、下流側の端面5e側に大径部5cが連続して形成されることで構成されている。小径部5bの径及び大径部5cの径は、圧力調整器Aに供給する一次側の圧力の値に応じて適宜設定される。
【0040】
仕切部材5は外形が略六角形に形成されており、該六角形の頂部5fが内接する円(一点鎖線で示す)と平面5gとで構成される隙間が大流路5hとしての機能を発揮するように構成されている。
【0041】
尚、仕切部材5はガス通路4に設けた段差部6に対し摺動可能に配置されるため、頂部5fは段差部6の内周面6bに対し円滑に摺動し得るような寸法と平滑さを確保して構成されている。また対向する二つの平面5g間の寸法は段差部6の段差端面6aによって遮蔽し得る寸法を持って形成されている。
【0042】
仕切部材5の大流路5hを構成する平面5gから小流路5aの小径部5bに向けて連通路を構成する穴25が形成されている。この穴25は、仕切部材5の対向する二つの平面5gを貫通して形成されていても良く、一つの平面5gから小径部5bに到達させた状態で形成されていても良い。
【0043】
上記の如く構成された圧力調整器Aでは、酸素ボンベに取り付け、該酸素ボンベから高圧酸素を供給していない状態では、図3(a)に示すように、仕切部材5はばね7によって高圧酸素の供給側に配置されたフィルター10側に付勢され、この付勢状態を保持している。
【0044】
上記状態から酸素ボンベを開放すると、高圧酸素がフィルター10を通って供給され、この圧力が仕切部材5の上流側の端面5dに作用し、ばね7による付勢力に抗して下流側に摺動し、同図(b)に示すように、下流側の端面5eが段差部6の段差端面6aに当接する。この状態では、仕切部材5の平面5gと段差部6の内周面6bとによって構成された大流路5hが段差端面6aによって遮蔽されている。
【0045】
例えば、上記状態で仕切部材5の上流側の端面5dにゴミやホコリが付着して小流路5aを構成する小径部5bが閉鎖されているような場合、フィルター10を通して供給された高圧酸素は、仕切部材5の平面5gと段差部6の内周面6bとの間に流入し、該平面5gに形成された穴25から小流路5aを構成する小径部5bに供給され、小流路5aを介してガス通路4に流れ込み、減圧機構11を構成するノズル11aに供給される。
【0046】
上記の如く、仕切部材5に於ける小流路5aに、一つの小径部5b及び二つの穴25が接続されることとなり、小径部5bの上流側の端面5dに於ける開口部分がゴミやホコリによって遮蔽されていても、穴25が開放されていることで、前記不具合に関わらず、高圧酸素を減圧機構11に供給することが可能となる。
【0047】
減圧機構11に流れる高圧酸素は、仕切部材5の小流路5aによって絞られることとなり、ノズル11a及びシート11bの近傍での断熱圧縮を防止することが可能である。
【0048】
減圧機構11に対して充分な高圧酸素が供給されて圧力が上昇すると、ばね7による仕切部材5に対する付勢が復活する。このとき、減圧された酸素が二次側に供給されていない状態では、同図(a)に示すように、仕切部材5がフィルター10に当接する。また減圧された酸素が二次側に供給され、ガス通路4に高圧酸素の流れが形成されている場合には、同図(c)に示すように、仕切部材5は段差部6で浮遊するような位置を保持する。
【実施例2】
【0049】
次に、仕切部材の第2実施例について図を用いて説明する。図4は第2実施例に係る仕切部材の構成を説明する図である。尚、図に於いて前述の実施例と同一部分及び同一の機能を有する部分には同一の符号を付して説明を省略する。
【0050】
本実施例では、仕切部材5の下流側の端面5eに、大流路5hを構成する平面5gと小流路5aを構成する大径部5cを結んで連通路となる溝26を構成したものである。前述したように、溝26の断面積は、該溝26が小流路5aを構成する小径部5bに接続されるか或いは大径部5cに接続されるか、に応じて適宜設定される。
【0051】
即ち、小流路5aが、小径部5bを仕切部材5に貫通させて構成されている場合、溝26の断面積は小流路5aの断面積に比較して充分に大きい値とすることが可能である。しかし、本実施例のように、小流路5aが、小径部5bと大径部5cを連続して構成されており、溝26が大径部5cに接続されるものである場合、該溝26の断面積は小流路5aの断面積と略同じ値を持つように構成される。
【0052】
上記の如く構成された仕切部材5を用いた場合でも、小流路5aの上流側の端面5dに於ける開口部分がゴミやホコリによって閉塞された場合、供給された高圧酸素を溝26を介して小流路5aに供給し、更に減圧機構11に到達させることが可能である。
【実施例3】
【0053】
次に、本発明に係る断熱圧縮防止構造を採用した導管の実施例について説明する。図5は導管の構成を説明する図である。尚、図に於いて前述の実施例と同一の部分及び同一の機能を有する部分には同一の符号を付して説明を省略する。
【0054】
図に示す導管Bは、図示しないマニホールドに於ける供給配管とガスボンベ(酸素ボンベ)を接続するためのものであり、所定の圧力でガスが充填されている新しいガスボンベを接続し、該ガスボンベを開放したときに供給配管側で生じる虞のある断熱圧縮を防止し得るように構成されている。
【0055】
図に於いて、導管Bは金属製のパイプ31の一方側の端部に内部に断熱圧縮防止構造を構成する一次側の通路となるガス通路4が形成され、該ガス通路4に仕切部材5を配置した装着部材2がロー付け等の手段で固定されている。尚、装着部材2には予め袋ナット3が取り付けられており、該袋ナット3を図示しないガスボンベの口金に締結することで、導管Bをガスボンベに接続し得るように構成されている。
【0056】
パイプ31の他方の端部には、例えばマニホールドを構成する供給配管に着脱されるソケット32及び袋ナット33が取り付けられている。例えば導管Bがマニホールドに適用される場合、袋ナット33は供給配管に設けたターミナルに締結された状態を保持し、空になったガスボンベを取り外す場合は、袋ナット3の操作によるのが一般的である。
【0057】
装着部材2の内部に形成されたガス通路4には段差部6が形成されており、この段差部6に仕切部材5が摺動可能に配置されている。また段差部6に連続して収容する収容部8が形成されており、この収容部8に仕切部材5を規制部材9側に付勢するばね7が収容されている。
【0058】
従って、導管Bを構成する装着部材2には、前述した第1実施例に係る圧力調整器Aと同様な断熱圧縮防止構造が構成されていることとなる。このため、導管Bの袋ナット3をガスボンベに締結して該ガスボンベを開放したとき、ガスボンベから供給された高圧ガスは仕切部材5の小流路を通ってパイプ31に流入することになり、該パイプ31の内部の圧力が急激に上昇することがない。従って、パイプ31内に於ける断熱圧縮を防止することが可能となり、温度が上昇することがない。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明に係る断熱圧縮防止構造では、仕切部材5の小流路5aがゴミやホコリによって閉塞された場合でも、一次側から高圧ガスを供給したときの断熱圧縮を防止することが可能である。このため、酸素ガスの供給系に利用したときに高い安全性を確保することができるため有利である。
【0060】
また本発明に係る圧力調整器Aでは、一次側から高圧ガスを供給したときの断熱圧縮を防止して確実に減圧されたガスを二次側に供給することが可能となる。このため、安定したガスの供給が要求される例えば病院で使用する酸素供給装置として、或いは産業用の圧力調整器として有利に利用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】断熱圧縮防止構造を用いた圧力調整器の構成を説明する図である。
【図2】第1実施例に係る仕切部材の構成を説明する図である。
【図3】仕切部材の作用を説明する図である。
【図4】第2実施例に係る仕切部材の構成を説明する図である。
【図5】断熱圧縮防止構造を用いた導管の構成を説明する図である。
【符号の説明】
【0062】
A 圧力調整器
1 ケーシング
2 装着部材
3 袋ナット
4 ガス通路
5 仕切部材
5a 小流路
5b 小径部
5c 大流路
5d 上流側の端面
5e 下流側の端面
5f 頂部
5g 平面
5h 大流路
6 段差部
6a 段差端面
6b 内周面
7 ばね
8 収容部
9 規定部材
9a 穴
10 フィルター
11 減圧機構
11a ノズル
11b シート
12 ばね
13 ピストン
14 二次圧室
15 室
16 供給孔
17 ガス通路
18 ターミナル
19 セレクター
19a オリフィス
20 ハンドル
25 穴
26 溝
31 パイプ
32 ソケット
33 袋ナット


【特許請求の範囲】
【請求項1】
高い圧力を持ったガスが供給されるガス通路に設けた段差部と、前記段差部に対し摺動可能に配置され中心に小さい断面積を持った小流路を形成すると共に外周に大きい断面積を持った大流路を形成し且つ前記段差部と当接したとき該大流路が段差部によって遮蔽されるように構成した仕切部材と、前記仕切部材をガス通路に於けるガスの流通方向上流側に付勢する付勢部材と、を有する断熱圧縮防止構造に於いて、前記仕切部材に、小流路と大流路を連通させた連通路を形成したことを特徴とする断熱圧縮防止構造。
【請求項2】
前記仕切部材に形成した連通路が、該仕切部材の側面に形成され且つ中心に形成された小流路と外周に形成された大流路とを結ぶ穴であることを特徴とする請求項1に記載した断熱圧縮防止構造。
【請求項3】
前記仕切部材に形成した連通路が、該仕切部材に於けるガスの流通方向下流側に形成され且つ中心に形成された小流路と外周に形成された大流路とを結ぶ溝であることを特徴とする請求項1に記載した断熱圧縮防止構造。
【請求項4】
減圧機構を内蔵し一次側から供給された高い圧力を持ったガスを減圧して二次側に供給し得るように構成した圧力調整器に於いて、一次側のガス通路に請求項1乃至請求項3の何れかに記載した断熱圧縮防止構造を設けたことを特徴とする圧力調整器。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2007−64372(P2007−64372A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−251466(P2005−251466)
【出願日】平成17年8月31日(2005.8.31)
【出願人】(595099960)株式会社群馬コイケ (6)
【Fターム(参考)】