説明

断熱性シート及びこれを備えた帽子

【課題】緩衝性と断熱性が高く低コストで使用後の処分が容易である。
【解決手段】ヘルメットの帽体の内面にヘッドバンドとハンモックを取付け、その内側に断熱性シート10を押し込んで装着する。断熱性シート10は、合成樹脂製の二枚の気泡シート14をキャップ17aを外側にして背中合わせに貼り合わせ、これを合成樹脂製の不織布15で挟んだ状態で熱溶着した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帽子等、例えばヘルメットの本体内面に取付けて断熱性と緩衝性を発揮するようにした断熱性シート及びこの断熱性シートを取付けた帽子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建設現場や一部の工場等では作業員等の安全のためにヘルメットを装着することを義務づけている。夏場等に野外で作業すると太陽熱のためにヘルメットが暖められ、ヘルメットを通して作業員の頭部を熱するために蒸れたりして体調に悪影響を与え、作業の効率を落としていた。また、工場等の作業環境や作業内容によっては高温や高湿度の環境下で作業を行うために季節を問わず、上述したようにヘルメット内の頭部が蒸れたり、熱かったりする状況が生じるために、同様に体調への悪影響や作業能率の低下等を起こしていた。また、通常の帽子であっても同様に夏場の直射日光等によって頭部が蒸れたりすることがあった。
このような不具合を改善する提案として例えば特許文献1に記載の冷却帽が提案されている。この冷却帽は、帽子の内面に断熱シートからなる断熱インナーキャップを取付けている。断熱シートは、アルミニウム等の金属箔と独立気泡型のウレタンフォームとを重合し、ウレタンフォームの内側に補強用の合成繊維布を接着している。
【0003】
また、特許文献2に記載のヘルメット用断熱具は、気泡性緩衝シートの表裏両面にアルミシートを貼着したものであり、この断熱具を人間の頭部に適合するように成型してヘルメットの内面に装着している。
この種の断熱具としては、特許文献2とは別に特許文献3に記載の気泡シート断熱材が提案されている。この気泡シート断熱材は、透明性の高いポリエチレン製で内部に気泡を封じ込めた多数のキャップ状の膨らみを有するキャップフィルムを平坦なバックフィルムと貼り合わせた気泡シートを2枚設け、アルミニウムの蒸着層を有するプラスチックフィルムを間に挟んで貼り合わせた積層構造を有している。このような気泡シート断熱材は主に建築材料として断熱材に用いられる。
【特許文献1】特開2000−8217号公報
【特許文献2】特開2006−37253号公報
【特許文献3】特開2001−65784号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の断熱シートは、アルミニウム等の金属箔とウレタンフォームという異種の材料を接合して用いているために、製造コストが高く、廃棄時には分別しなければならないために廃棄処理が煩雑であった。また特許文献2に記載の断熱具も異種材料であるアルミシートとプラスチック製の気泡性緩衝シートとを接合してなるため、同様の不具合があった。また、特許文献3に記載の気泡シート断熱材も、プラスチック製の気泡シートにアルミニウム層を貼り合わせた構造であるため、特許文献1、2と同様の欠点を有している。
本発明は、このような実情に鑑みて、断熱性と緩衝性を有していて低コストで使用後の処分の容易な断熱性シート及びこれを備えた帽子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明による断熱性シートは、合成樹脂製の気泡シートの両面を合成樹脂製の不織布で挟んで熱溶着してなることを特徴とする。
本発明による断熱性シートは、内部に気泡シートを収納しているために断熱性と緩衝性があり、表裏両面が合成樹脂製の不織布であるために通気性がある上に肌触りが良くフィット感があるから、ヘルメット等の帽子やその他身体等に接触する断熱材や緩衝材として好適である。しかも、気泡シートと不織布が同種の材質でありアルミシート等の金属材料を使用していないから、廃棄処分やリサイクルに際しては分別処理の必要がなく処分に手間がかからず、低コストで絶縁性が高い。
【発明の効果】
【0006】
本発明による断熱性シートは、断熱性と緩衝性を有すると共に表面が不織布であるために通気性とフィット感があるから、身体等に接触する断熱材や緩衝材として好適である。しかも気泡シートと不織布がいずれも合成樹脂製であるから、製造コストが比較的低廉であり、廃棄に際しては分別の必要がなく、絶縁性が高く電気に対する安全性も高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明による断熱性シートは、基部シートに空気を内包した多数のキャップを突出させてなり、基部シート同士を当接させることで二枚の気泡シートを背中合わせに熱溶着してなることが好ましい。
断熱性シートの表裏両面が不織布で覆われていても、内側の気泡シートは両面にそれぞれ多数のキャップが突出しているために、表裏いずれを身体等への接触面としても緩衝性が良い。
また、断熱性シートには気泡シートと不織布を熱溶着した折り目が形成されていてもよく、ヘルメット内面等の被装着面に断熱性シートを装着する際に、被装着面の形状に倣って変形させて取付けることができる。
また、気泡シートはポリエチレンからなり、不織布はポリエステルからなることが好ましく、この場合には気泡シートと不織布を重ねた状態での熱溶着が容易である。
【0008】
本発明による帽子は、請求項1乃至4のいずれかに記載の上述した断熱性シートを内面に取付けてなることを特徴とする。
ヘルメット等の帽子内面に断熱性シートを装着することで、頭部に装着した際、帽子本体に対して断熱性を有すると共に頭部に対して緩衝性があり、表面が不織布であるために通気性とフィット感がある。しかも気泡シートと不織布が同種の材質であるから、断熱性シートを廃棄処分する際に分別することなく処理でき、絶縁性が高く安全性も高い。本発明は帽子用断熱性シートとして好適である。
【実施例】
【0009】
以下、本発明の実施例による断熱性シートを備えたヘルメットについて添付図面により説明する。
図1乃至図6は本発明の第一実施例を示すものであり、図1はヘルメットの帽体内に挿入するヘッドバンド及びハンモックと断熱性シートとを示す分解斜視図、図2は断熱性シートを帽体に装着した状態の平面図、図3は同じく縦断面図、図4は断熱性シートの平面図、図5は図4に示す気泡シートのA−A線縦断面図、図6は断熱性シートの縦断面図である。
図1乃至図3に示すヘルメット1は略半球状の帽体2とその一端から突出する庇部3とを備えている。帽体2の内面には略リング状のヘッドバンド4が内周寸法を調整可能に形成され、ヘッドバンド4は庇部3とは反対側領域が途中でバンドが二段に分かれている。ヘッドバンド4にはハンモック5が着脱可能に連結されている。ハンモック5は作業者の頭頂部が着座する頂部5aと頂部5aから略90°間隔に略十字状に延びる4本のバンド部5b、…とを備え、各バンド部5bは長手方向途中部分でその内面に設けた係止部5cでヘッドバンド4に係止されている。各バンド部5bの先端外面にはヘルメット1の内面に略90°間隔で形成された係合受け部7に係合可能な係合部8がそれぞれ設けられている。
ヘッドバンド4及びハンモック5の内面には断熱性シート10が着脱可能に設けられている。
【0010】
次に断熱性シート10について図4乃至図6により説明する。
断熱性シート10は図4に示すように平面視略円形または楕円形状に形成され、その周方向には所定間隔で略V字形状の切り込み部11が複数(図では4本)形成され、切り込み部11の内奥部は切れ目が進むのを防止すべき円形孔11aが穿孔されている。そして断熱性シート10の左右両側には例えば略半楕円形状の一対の耳部12、12が形成されている。各耳部12と各切り込み部11とを含む断熱性シート10の全周は熱溶着による溶着部13が所定幅で連続して形成され、周縁部が密封されている。特に耳部12は全体が熱溶着されている。
断熱性シート10は図5に示すように合成樹脂からなる一対の気泡シート14、14とその表裏両面を覆う合成樹脂からなる不織布15、15とで構成されている。即ち、気泡シート14は図6に示すように平坦な基部シート16上に、空気が封入された略半球状または断面略台形状のキャップ17aが微細な間隔で個々に独立して多数形成されてなるフィルムシート17が熱溶着されて一体化されてシート状に形成されている。
そして断熱性シート10は二枚の気泡シート14、14を基部シート16、16で背中合わせに当接させ、その表裏両面に合成樹脂製の不織布15、15を重ねた状態で、全周縁部を熱溶着して上述した溶着部13を形成している。
【0011】
気泡シート14を構成する基部シート16及びフィルムシート17としての合成樹脂は例えばポリエチレンを用い、不織布15を構成する合成樹脂は例えばポリエステルを用いる。気泡シート14と不織布15は合成樹脂からなる同系統の材質であるため、熱溶着が確実で接着剤が不要であり、しかも廃棄に際して分別する必要がない。なお、気泡シート14と不織布15の両方をポリエチレンまたはポリエステル等の同一材質で製造してもよい。
また、気泡シート14の各キャップ17aは大きすぎると帽体2の内面に装着する際に凹曲面状に湾曲させるのが困難になり、ヘルメット1を被った際に頭部に違和感を感じる不具合がある。そのため、キャップ17aは例えば直径5〜10mm、高さ4mm程度の略半球状に形成するのがよい。
断熱性シート10を製造するには、二枚の気泡シート14、14を基部シート16、16で背中合わせにした上でその表裏両面に不織布15、15を重ねた状態で、図4に示す所定形状に型抜き切断する。そして、全周縁部を熱溶着すればよいため、熱処理は1工程で済む
【0012】
本実施例によるヘルメット1及び断熱性シート10は上述の構成を備えており、ヘルメット1を作業者等が被る際に、ヘルメット1の帽体2の内面にヘッドバンド4及びハンモック5を連結した状態で挿入し、ハンモック5の4本のバンド部5bにそれぞれ設けた係合部8を帽体2の内面の係合受け部7に係合させる。これによって、ヘッドバンド4及びハンモック5を帽体2の内面に装着できる。そして、その内側に断熱性シート10を押し込む。
その際、図2及び図3に示すように、断熱性シート10には切り込み部11が設けられているために、各切り込み部11が互いに接触するように内側に湾曲または折り曲げることで帽体2の内面やハンモック5の形状に倣った略凹曲面状に形成して押し込むことができる。この状態で、両側の耳部12,12を係止部としてヘッドバンド4と帽体2の内面との間に差し込む等することで係止できる。
断熱性シート10は軽量であるため、厳密に帽体2やヘッドバンド4等に係止しなくても落下しにくい。しかも、帽体2の内面が深くても浅くても断熱性シート10を被着面の形状に倣って装着できる。
そして作業者が頭部にヘルメット1を被ればよい。
【0013】
上述のように本実施例によるヘルメット1の断熱性シート10によれば、頭部にヘルメット1を装着した状態で、頭部とハンモック5及び帽体2との間に断熱性シート10が位置することで緩衝性と断熱性を発揮でき、更に表面が不織布15であるために通気性が良くて蒸れにくいと共に装着時のフィット感や感触がよい。しかも、断熱性シート10は二枚の気泡シート14、14の各キャップ17aがそれぞれ外側に向いているために表裏いずれの面を内側にしても頭部に緩衝性を与えることができる。
更に断熱性シート10は気泡シート14と不織布15がいずれも合成樹脂製であるために、表面にアルミシートを用いた従来のものと比較して低コストである上に絶縁性が高く、電気工事等の現場でも安全性が高い。しかも断熱性シート10の廃棄処分やリサイクル処理に際して気泡シート14と不織布15が同種の材質からなるために分別することなく一緒に廃棄やリサイクル処理することができて便利である。
また、断熱性シート10の製造に際しても、加熱による溶着は1工程で済むため熱による素材に与える悪影響を最小限に留めることができる。
【0014】
次に本発明の第二実施例を図7により説明するが、上述の第一実施例による断熱性シート10と同一または同様な部材、部分には同一の符号を用いて説明を省略する。
図7に示す断熱性シート20は第一実施例による断熱性シート10と同一の構成を有しており、内部に背中合わせに設けた一対の気泡シート14,14を配置し、その表裏両面に不織布15,15を重ねて周縁部を熱溶着して溶着部13としている。
そして本実施例では、各切り込み部11の円形孔11a同士をつなぐように線状の折り目溶着部21を形成し、折り目溶着部21の部分で4枚の気泡シート14及び不織布15を一体に熱溶着している。これら折り目溶着部21は図7に示すように略四角形に形成され、帽体2の内面に押し込む際に折り目になる。
これによって、断熱性シート20は帽体2及びハンモック5の内面側に押し込む際に各折り目溶着部21で四方を折り曲げられ、帽体2の内面に沿って略四角錐形状に装着され定形性が高い。
この構成によれば、断熱性シート20を帽体2の内面に装着する際に一定形状で略屈曲または湾曲形成されるために、帽体2の内部で断熱性シート20がずれたりしわになったりすることなく定形性を以て装着できる。
【0015】
なお、上述の各実施例では、断熱性シート10、20に設ける気泡シート14は平坦な基部シート16を背中合わせにして二枚貼り合わせたり当接したりしたが、不織布15で包み込んで封止する気泡シート14は一枚でもよい。この場合、頭部側にキャップ17aが位置するように不織布15等の断熱性シート10の表面に表裏の別を表示しておくことが好ましい。
また、断熱性シート10,20に四つの切り込み部11を設けたが、切り込み部11の数は任意である。或いは切り込み部11を設けなくてもよい。
断熱性シート10,20は耳部12、12によってヘッドバンド4に挟み込むようにしたが、ヘッドバンド4やハンモック5等に貼着したり係止するようにしてもよい。
なお、帽体2の内面に直接断熱性シート10,20を貼る等して取付けてもよく、このようなヘルメットは通学用ヘルメット等に好適である。
また、ハンモック5のバンド部5bは4本に限定されることなく8本等任意の数のものを採用できることはいうまでもない。また、本発明による断熱性シートはヘルメット1に限定されることなく他の各種の帽子等、特に身体等に接触するものに装着できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第一実施例による断熱性シートを備えたヘルメットの分解斜視図である。
【図2】断熱性シートを帽体内に装着した状態の平面図である。
【図3】断熱性シートを帽体内に装着したヘルメットの概略縦断面図である。
【図4】断熱性シートの平面図である。
【図5】図4に示す断熱性シートのA−A線縦断面図である。
【図6】気泡シートの縦断面図である。
【図7】本発明の第二実施例による断熱性シートの平面図である。
【符号の説明】
【0017】
1 ヘルメット
2 帽体
5 ハンモック
10 断熱性シート
12 耳部
14 気泡シート
15 不織布
16 基部シート
17a キャップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂製の気泡シートの両面を合成樹脂製の不織布で挟んで熱溶着してなる断熱性シート。
【請求項2】
前記気泡シートは基部シートに空気を内包した多数のキャップを突出させてなり、前記基部シート同士を当接させることで二枚の前記気泡シートを背中合わせにして熱溶着してなる請求項1に記載の断熱性シート。
【請求項3】
前記断熱性シートには気泡シートと不織布を熱溶着した折り目が形成されている請求項1または2に記載の断熱性シート。
【請求項4】
前記気泡シートはポリエチレンからなり、前記不織布はポリエステルからなる請求項1乃至3のいずれかに記載の断熱性シート。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の前記断熱性シートを帽体の内面に取付けてなることを特徴とする帽子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−313706(P2007−313706A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−143962(P2006−143962)
【出願日】平成18年5月24日(2006.5.24)
【出願人】(500272347)ディックプラスチック株式会社 (27)
【Fターム(参考)】