説明

断熱材の製造方法

【課題】 良好な断熱性能を保持しつつ、処理時の問題や湿度調節、消臭に配慮した断熱材を製造することができる製造方法を提供することである。
【解決手段】 植物性材を、新たな酸素の供給が実質的に行われない状態で間接的に加熱することによって炭化させて植物性炭化材を生成する工程を含むことを特徴とする断熱材の製造方法が提供される。この製造方法は好ましくは、植物性炭化材に、1重量%〜27重量%の接着剤を添加して混合し、熱間又は常温で加圧成形する工程を更に含んでいる。接着剤は好ましくは、接着剤が、酢酸ビニル樹脂系エマルジョン接着剤である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、断熱材の製造方法に関する。より詳細には、本発明は、植物性材料を原料とする断熱材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来用いられている断熱材は、化学合成によって製造される無機系断熱材が主流を占めている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、無機系断熱材は、数十年後に到来する処理において産業廃棄物として処理せざるを得ない場合が多いという課題を包含している。また、断熱材は主として、住宅を始めとする建築物に用いられるが、従来の無機系断熱材には、湿度調節機能や消臭機能を兼ね備えたものは見当たらないのが現状である。
【0004】
本発明は、このような状況に鑑みて開発されたものであって、良好な断熱性能を保持しつつ、上述の処理時の問題や湿度調節、消臭に配慮した断熱材を製造することができる新規な断熱材の製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願請求項1に記載の断熱材の製造方法は、植物性材を、新たな酸素の供給が実質的に行われない状態で間接的に加熱することによって炭化させて植物性炭化材を生成する工程を含むことを特徴とするものである。
【0006】
本願請求項2に記載の断熱材の製造方法は、前記請求項1の方法において、前記植物性炭化材に、1重量%〜27重量%の接着剤を添加して混合し、熱間又は常温で加圧成形する工程を更に含むことを特徴とするものである。
【0007】
本願請求項3に記載の断熱材の製造方法は、前記請求項1の方法において、前記植物性炭化材に、1重量%〜32重量%の接着剤を添加して混合し、常温、大気圧下において成形する工程を更に含むことを特徴とするものである。
【0008】
本願請求項4に記載の断熱材の製造方法は、前記請求項2又は3の方法において、前記接着剤が、酢酸ビニル樹脂系エマルジョン接着剤であることを特徴とするものである。
【0009】
本願請求項5に記載の断熱材の製造方法は、前記請求項1から請求項4までのいずれか1項の方法において、前記植物性材が、木質材、木質材をチップ状に破砕した木質チップ材、籾殻、畳のいずれか1種、又は、これらを任意に組み合わせた材料であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の製造方法により、湿度調節機能や消臭機能を有するとともに、数十年後に到来する処理において産業廃棄物としての処理を回避できる有機系断熱材を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
次に、本発明の好ましい実施の形態に係る断熱材の製造方法について詳細に説明する。本発明の製造方法に使用する原材料としては、木質材、木質材をチップ状に破砕した木質チップ材、籾殻、畳のいずれか1種、又は、これらを任意に組み合わせたものが用いられる。本明細書においては、木質材、木質チップ材、籾殻、畳のいずれか1種又はこれらを任意に組み合わせたものを「植物性材」という。
【0012】
本発明の製造方法は、植物性材を、新たな酸素の供給が実質的に行われない状態で間接的に加熱することによって炭化させて植物性炭化材を生成する工程を含んでいる。加熱は、最大350°Cとするのが好ましい。この工程において、植物性材は、新たな酸素の供給が行われない状態で間接的に加熱されるので、還流による熱分解が行われ、従来の炭化物と比較して酸素進行度が50%程度〜72%程度減少した粒状植物性炭化材が生成される。なお、新たな酸素の供給が行われない状態で間接的に加熱するのは、酸素が存在する状態で直接的に加熱すると、植物性材が燃焼してしまうからである。
【0013】
籾殻を原料として上述の工程で生成された植物性炭化材は、比表面積が約120m2 /gであり、有機高分子生成率が3重量%〜22重量%の炭化材であり、良好な断熱性能とともに、臭気及び有害物質吸着機能を併せ持っている。
【0014】
好ましくは、本発明の製造方法は、上述のようにして生成された植物性炭化材に、約1重量%〜約27重量%の接着剤を添加して混合し、熱間又は常温で加圧成形する工程を更に含んでいる。また、好ましくは、本発明の製造方法は、植物性炭化材に、約1重量%〜約32重量%の接着剤を添加して混合し、常温、大気圧下において成形する工程を更に含んでいる。
【0015】
上述の工程において用いる接着剤は、酢酸ビニル樹脂系エマルジョン接着剤であるのが好ましい。
【0016】
次に、本発明の好ましい実施の形態に係る断熱材の製造方法を実施するためのシステムについて説明する。図1は、本発明の好ましい実施の形態に係る断熱材の製造方法を実施するためのシステムの一例を模式的に示した全体図である。本例では、植物性材として籾殻を用いるものとする。
【0017】
まず、籾殻貯留槽10に貯留された籾殻を、籾殻貯留槽10の底部に配置された定量搬送装置10aにより、投入用ロッカーバルブ12を介して、炭化装置14に搬送する。投入用ロッカーバルブ12は、通常の型式のものを用いてよく、炭化装置14への空気の流入を実質的に遮断する役目を果たす。炭化装置14は、内部への空気の流入が実質的に遮断された状態で、籾殻を間接的に加熱するためのものである。炭化装置14に籾殻を搬入した後、投入用ロッカーバルブ12を停止させることによって、炭化装置14内への空気の流入を実質的に遮断し、間接加熱を開始する。加熱は、350°C以下で行われ、約20分〜約240分経過後に炭化が完了し、粒状の植物性炭化材が生成される。
【0018】
なお、炭化装置14としては、例えば、水平方向に延びた円筒形の外部本体と、外部本体の内部に配置された円筒形の内部本体と、外部本体の外面又は外部本体と内部本体との間に配置された熱源とを備え、内部本体内に収容された籾殻を熱源で間接的に加熱するように構成されたものが考えられるが、内部への空気の流入を実質的に遮断した状態で籾殻を間接的に加熱することができるものであれば、他の構成のものを用いてもよい。なお、熱源としては、バーナやマイクロ波発生装置などが用いられる。
【0019】
植物性炭化材が生成されると、排出用ロッカーバルブ16を作動させて植物性炭化材を炭化装置14から排出し、炭化材貯留槽18を経由して、投入準備槽20に搬送する。次いで、植物性炭化材を、計量装置22によって計量した後、混合装置24に投入する。一方、混合装置24に、接着剤貯留槽26から定量供給ポンプ28を介して、所定の接着剤を投入し、混合装置24内で植物性炭化材と接着剤を攪拌混合(6分間程度)する。
【0020】
このようにして生成された植物性炭化材と接着剤の混合材を、半製品槽30に搬送する。次いで、半製品槽30は、成形型枠32上を移動しつつ成形型枠32内に上記混合材を投入する。そして、成形型枠32を加圧成形装置34内に移動させ、熱間加圧又は常温加圧による成形を行って、成形製品(成形した断熱材)を製造する。
【0021】
一方、別の製造ルートとして、上記混合材が投入された成形型枠32を振動締め固め装置36に移動させ、振動を与えつつ締め固めを行った後、大気圧下での常温成形を行って、成形製品(成形した断熱材)を製造してもよい。
【0022】
本発明の方法によって製造された植物性炭化材(厚さ50mm)について、熱伝導率を測定したところ、0.02W/mK〜0.025W/mKの熱伝導率が測定された。また、植物性炭化材に接着剤を混合して加圧成形した断熱材(厚さ10mm及び25mm)について、熱伝導率を測定したところ、それぞれ、0.018W/mK〜0.021W/mK、0.017W/mK〜0.02W/mKの熱伝導率が測定された。従来の無機系断熱材の熱伝導率が0.027W/mK〜0.037W/mKであることを考慮すると、本発明の植物性炭化材、断熱材は、従来品と比較して、断熱効率が約33%、約47%向上することが検証された。
【0023】
上述の方法で生成される植物性炭化材は、断熱材として使用される他、コンクリート用の混和材料としても使用することができる。また、接着剤を混合して成形された製品は、良好な断熱性能、湿度調整機能、臭気・有害物質吸着機能をもつ断熱材としての外装建材、臭気・有害物質吸着機能をもつ断熱材としての内装建材、有機高分子系炭素成分を含有する植物性炭化材を含んだ水質浄化材、有機高分子系炭素成分を含有する植物性炭化材を含んだ微生物繁殖材、湿度調整機能付き家具材、有害物質吸着機能をもつ建具材などの広範囲における用途についての使用が期待される。
【0024】
本発明は、以上の発明の実施の形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で、種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0025】
たとえば、前記実施の形態で説明された本発明の製造方法を実施するためのシステムは、単なる一例にすぎず、説明し図示したシステム以外の製造システムを用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の好ましい実施の形態に係る断熱材の製造方法を実施するためのシステムの一例を模式的に示した全体図である。
【符号の説明】
【0027】
10 籾殻貯留槽
12 投入用ロッカーバルブ
14 炭化装置
16 排出用ロッカーバルブ
18 炭化材貯留槽
20 投入準備槽
22 計量装置
24 混合装置
26 接着剤貯留槽
28 定量供給ポンプ
30 半製品槽
32 成形型枠
34 加圧成形装置
36 締め固め装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
断熱材の製造方法であって、
植物性材を、新たな酸素の供給が実質的に行われない状態で間接的に加熱することによって炭化させて植物性炭化材を生成する工程、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記植物性炭化材に、1重量%〜27重量%の接着剤を添加して混合し、熱間又は常温で加圧成形する工程、
を更に含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記植物性炭化材に、1重量%〜32重量%の接着剤を添加して混合し、常温、大気圧下において成形する工程、
を更に含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記接着剤が、酢酸ビニル樹脂系エマルジョン接着剤であることを特徴とする請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
前記植物性材が、木質材、木質材をチップ状に破砕した木質チップ材、籾殻、畳のいずれか1種、又は、これらを任意に組み合わせた材料であることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【公開番号】特開2008−50196(P2008−50196A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−227256(P2006−227256)
【出願日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【出願人】(597133293)
【出願人】(599025031)
【Fターム(参考)】