説明

断熱材充填検査方法

【課題】工業化住宅に用いられるパネル部材の断熱性能をパネル部材を破壊することなくパネル部材の出荷前に確認することができる断熱材充填検査方法を提供する。
【解決手段】壁体10の製造時に該壁体の内部に断熱材11を配置した後、壁体10の外壁材12の表面12aを加熱し、内壁材13をサーモグラフィ装置18により撮影し、撮影された熱画像から内壁材13に生じた温度差を認識し、この温度差から壁体10内の断熱材11が充填された充填部17と充填不良が生じた充填不良部16とを判別し、その後、壁体10を製品として製造工場から出荷する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工業化住宅の例えば壁体を構成するパネル部材内に配置された断熱材の充填状態を検査するための断熱材充填検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物の例えば壁体を改修工事する際に壁体内に配置された管部材や電線等の配置状態を検査するための方法として、サーモグラフィ装置を用いた検査方法が知られている(例えば、特許文献1及び2参照。)。
【0003】
この検査方法では、壁体の表面を建設現場でバーナー及びドライヤー等により加熱し、輻射熱により表面に戻ってきた熱をサーモグラフィ装置により撮影する。サーモグラフィ装置により撮影された熱画像から壁体の表面に生じた温度差を認識し、この温度差から壁体内の管部材や電線等が配置された部分を判別する。これにより、壁体を破壊することなく壁体内の管部材や電線等の配置状態を建設現場で検査することができるので、改修工事時に壁体内に配置された管部材や電線等に損傷を与えることを防止することができる。
【0004】
このようなサーモグラフィ装置を用いることにより、建物の壁体内に設けられた断熱材の充填状態を、壁体を破壊することなく建設現場で検査することができる。
【特許文献1】特開平8−278204号(第3頁、図1)
【特許文献2】特開平9−281065号(第3−4頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、壁、床及び天井等がパネル部材で構成される工業化住宅の場合、パネル部材内への断熱材の充填作業は製造工場で行われるため、建設現場での作業工程数の削減を図るべくパネル部材の断熱性能が適正であることすなわちパネル部材内に断熱材が適切に充填されていることが確認された状態でパネル部材を製造工場から出荷することが望ましい。
【0006】
しかしながら、工業化住宅に用いられるパネル部材の断熱性能を製造工場からのパネル部材の出荷前に確認することは考えられていない。
【0007】
そこで、本発明の目的は、工業化住宅に用いられるパネル部材の断熱性能をパネル部材を破壊することなくパネル部材の出荷前に確認することができる断熱材充填検査方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、工業化住宅に用いられ内部に断熱材が収納される空間が形成されたパネル部材内の前記断熱材の充填状態を検査する断熱材充填検査方法であって、前記パネル部材の製造時に該パネル部材の内部に前記断熱材を配置した後、前記パネル部材を製造工場から出荷する前に、前記パネル部材をサーモグラフィ装置により撮影し、撮影された熱画像から温度差を認識し、この温度差から前記パネル部材内の前記断熱材が充填された充填部と充填不良が生じた充填不良部とを判別することを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記パネル部材の一面を加熱し、該一面から前記パネル部材の前記一面と反対側に位置する他面に伝わる輻射熱により該他面の前記充填部に対応する部分と前記充填不良部に対応する部分との間に温度差を生じさせ、前記他面を前記サーモグラフィ装置によって撮影することにより前記他面の温度差を前記熱画像から認識することを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、前記パネル部材は、互いに間隔をおき且つほぼ平行に配置される板状の外壁材及び内壁材を有する壁体であり、前記断熱材は、前記外壁材及び前記内壁材間に配置されており、前記一面は、前記外壁材の表面であり、該表面に施された塗装を乾燥させるための熱源の熱により前記表面を加熱し、前記内壁材を前記サーモグラフィ装置によって撮影することにより前記内壁材に生じた温度差を前記熱画像から認識することを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記パネル部材内に温風を吹き込むことにより該パネル部材内を加熱し、前記パネル部材の前記サーモグラフィ装置により撮影される被撮影面の前記充填部に対応する部分と前記充填不良部に対応する部分との間に温度差を生じさせ、その温度差を前記熱画面から認識することを特徴とする。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記パネル部材内に前記断熱材を配置するに先立って該断熱材を加熱し、加熱した該断熱材を前記パネル部材内に配置することにより前記パネル部材の前記サーモグラフィ装置により撮影される被撮影面の前記充填部に対応する部分と前記充填不良部に対応する部分との間に温度差を生じさせ、その温度差を前記熱画面から認識することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載の発明によれば、工業化住宅に用いられるパネル部材の製造時に該パネル部材の内部に断熱材を配置した後、パネル部材を製造工場から出荷する前に、パネル部材をサーモグラフィ装置により撮影し、撮影された熱画像から温度差を認識し、この温度差からパネル部材内の断熱材が充填された充填部と充填不良が生じた充填不良部とを判別することにより、パネル部材内の断熱材の充填状態を、パネル部材を製造工場から製品として出荷する前に検査することができる。これにより、パネル部材の断熱性能が確認された状態でパネル部材を製造工場から出荷することができる。
【0014】
また、パネル部材をサーモグラフィ装置により撮影することによってパネル部材内の断熱材の充填状態を検査することができるので、製造されたパネル部材を断熱材の充填状態の検査のために破壊する必要はない。これにより、製造されたパネル部材をパネル部材内の断熱材の充填状態の検査のために破壊することによる製造コストの増大を確実に防止することができる。
【0015】
更に、パネル部材の出荷前にパネル部材の断熱性能を確認することができることから、建物の完成後に建設現場でパネル部材の断熱性能を検査する必要はない。これにより、例えば壁体の断熱性能を従来のように建設現場で検査する場合に比べて、建設現場での作業工程数の削減を確実に図ることができる。
【0016】
請求項2に記載の発明によれば、パネル部材の一面を加熱することにより該一面からパネル部材の一面と反対側に位置する他面に熱を伝える。このとき、パネル部材の他面の充填不良部に対応する部分は、一面からの輻射熱の輻射が断熱材により妨げられることがないので、一面からの輻射熱により加熱される。他方、パネル部材の他面の充填部に対応する部分は、一面からの輻射熱の輻射が断熱材により妨げられるので、他面の充填部に対応する部分に比べて一面からの輻射熱による加熱がされ難くなる。これにより、他面の充填部に対応する部分と充填不良部に対応する部分との間に温度差を生じさせることができる。従って、パネル部材の他面をサーモグラフィ装置によって撮影することにより得られた他面の熱画像から他面の温度差を認識し、この温度差からパネル部材内に形成された充填部及び充填不良部を判別することができる。
【0017】
請求項3に記載の発明によれば、パネル部材が、互いに間隔をおき且つほぼ平行に配置される板状の外壁材及び内壁材を有する壁体であり、断熱材が、外壁材及び内壁材間に配置されており、前記一面は、外壁材の表面であり、該表面に施された塗装を乾燥させるための熱源の熱により表面を加熱することから、外壁材の表面を均一に加熱することができる。
【0018】
外壁材の表面が均一に加熱されない場合、パネル部材の充填部及び充填不良部のそれぞれの内部で温度の偏りが生じてしまい、サーモグラフィ装置で撮影された内壁材の熱画像から正確な温度分布を得ることができない。
【0019】
これに対し、本発明によれば、外壁材の表面を均一に加熱することができることから、パネル部材の充填部及び充填不良部のそれぞれの内部に温度の偏りが生じることはなく、従って、サーモグラフィ装置で撮影された内壁材の熱画像から正確な温度分布を確実に得ることができる。
【0020】
請求項4に記載の発明によれば、パネル部材内に温風を吹き込むことにより該パネル部材内を加熱する。このとき、パネル部材の充填不良部では、その内部への温風の流入が許されるので、パネル部材のサーモグラフィ装置により撮影される被撮影面の充填不良部に対応する部分がパネル部材の内部から温風により直接加熱される。他方、パネル部材の充填部では、断熱材によりパネル部材内への温風の流入が許されないので、被撮影面の充填部に対応する部分が充填不良部に対応する部分に比べて温風による加熱がされ難くなる。これにより、被撮影面の充填部に対応する部分と充填不良部に対応する部分との間に温度差を生じさせることができる。従って、パネル部材の被撮影面をサーモグラフィ装置によって撮影することにより得られた被撮影面の熱画像から被撮影面の温度差を認識し、この温度差からパネル部材内に形成された充填部及び充填不良部を判別することができる。
【0021】
請求項5に記載の発明によれば、パネル部材内に断熱材を配置するに先立って該断熱材を加熱し、加熱した該断熱材をパネル部材内に配置する。このとき、サーモグラフィ装置により撮影される被撮影面の断熱材に接触する部分は断熱材からの放熱により加熱され、被撮影面の断熱材に接触していない部分は断熱材からの放熱によっては加熱されない。これにより、被撮影面の充填部に対応する部分と充填不良部に対応する部分との間に温度差を生じさせることができる。従って、パネル部材の被撮影面をサーモグラフィ装置によって撮影することにより得られた被撮影面の熱画像から被撮影面の温度差を認識し、この温度差からパネル部材内に形成された充填部及び充填不良部を判別することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明を図示の実施例に沿って説明する。
【実施例】
【0023】
[実施例1]
図1は、工業化住宅の壁体10を構成するパネル部材内に配置された断熱材11の充填状態を検査するのに本発明を用いた例を示す。
【0024】
本発明に係る壁体10は、板状の外壁材12及び内壁材13を有する。外壁材12及び内壁材13は、互いに間隔をおき且つほぼ平行に配置されており、その上端部12a,13a及び下端部12b,13bで連結部材14により互いに連結されている。
【0025】
断熱材11は、図示の例では、例えばグラスウール及び発泡ウレタン等からなり、外壁材12及び内壁材13間に配置されている。
【0026】
壁体10は、従来よく知られているように、製造工場で製造された後、建設現場に運搬され、他のパネル部材に組み付けられる。
【0027】
壁体10を製造工場で製造する際、先ず、図2(a)に示すように、外壁材12及び内壁材13を連結部材14により互いに連結し、外壁材12及び内壁材13間に断熱材11を配置する。このとき、断熱材11がグラスウールからなる場合には、断熱材11を外壁材12及び内壁材13間に敷き詰め、断熱材11が発泡ウレタンからなる場合には、液状のウレタンを外壁材12及び内壁材13間に発泡させながら注入することができる。外壁材12及び内壁材13間への断熱材11の配置により、壁体10が組み立てが完了する。続いて、外壁材12の表面12cに、従来よく知られた塗装ガン15を用いて塗装を施す。
【0028】
その後、図2(b)に示すように、図示しない加熱装置により外壁材12の表面12cを加熱することにより、該表面に塗布された塗装を乾燥させる。
【0029】
外壁材12の表面12cを前記加熱装置により加熱すると、図2(c)に示すように、外壁材12からの輻射熱が内壁材13に伝わる。このとき、壁体10内において断熱材11が充填されていない充填不良部16では、外壁材12からの輻射熱の輻射が断熱材11により妨げられることがないので、内壁材13の充填不良部16に対応する部分が、外壁材12からの輻射熱により直接加熱される。他方、壁体10内において断熱材11が充填された充填部17では、外壁材12からの輻射熱の輻射が断熱材11により妨げられるので、内壁材13の充填部17に対応する部分が充填不良部16に対応する部分に比べて外壁材12からの輻射熱による加熱がされ難くなる。これにより、内壁材13の充填不良部16に対応する部分の温度が充填部17に対応する部分よりも高くなり、内壁材13に温度差が生じる。
【0030】
次に、この内壁材13の温度差に基づいて、壁体10内の断熱材11の充填状態の検査を行う。本発明に係る断熱材充填検査方法では、壁体10内の断熱材11の充填状態の検査は、サーモグラフィ装置18を用いて行われる。サーモグラフィ装置18は、図2(d)に示すように、壁体10を撮影するためのサーモグラフィカメラ19と、該サーモグラフィカメラにより撮影された画像すなわち熱画像を表示する図示しないモニターとを備える。
【0031】
壁体10内の断熱材11の充填状態を検査する際、先ず、壁体10を内壁材13がサーモグラフィカメラ19に対向するように配置し、内壁材13をサーモグラフィカメラ19により撮影する。サーモグラフィカメラ19は、内壁材13を撮影すると、従来よく知られているように、該内壁材の温度分布を画像化し、その熱画像を表示する旨を示す信号を前記モニターに送る。前記モニターは、サーモグラフィカメラ19から前記信号を受けると、内壁材13の熱画像を表示する。このとき、前記したように、内壁材13の充填不良部16に対応する部分と充填部17に対応する部分との間に温度差が生じていることから、前記モニターに表示された熱画像には、充填不良部16と充填部17との間で従来と同様に色の変化が生じる。熱画像の色は、図示の例では、温度に0.5度以上の差が生じたときに変化する。この熱画像の色の変化により、前記モニターに表示された熱画像から、内壁材13の温度差を容易に認識することができ、この温度差から、壁体10内に形成された充填部17及び充填不良部16を判別することができる。
【0032】
壁体10内に形成された充填不良部16と充填部17とを判別した結果、充填不良部16が検出されたときは、充填不良部16に断熱材11を充填する作業を行い、充填不良部16が検出されなかったときは、壁体10を製品として出荷する。
【0033】
このように、工業化住宅に用いられる壁体10の製造時に、サーモグラフィ装置18により撮影された熱画像から内壁材13の温度差を認識し、この温度差から壁体10内の断熱材11が充填された充填部17と充填不良が生じた充填不良部16とを判別することがきる。従って、製造された壁体10内の断熱材11の充填状態を壁体10の製造過程で検査することができるので、壁体10の断熱性能が確認された状態で該壁体を製造工場から出荷することができる。
【0034】
また、壁体10をサーモグラフィ装置18により撮影することによって壁体10内の断熱材11の充填状態を検査することができるので、製造された壁体10を断熱材11の充填状態の検査のために破壊する必要はない。
【0035】
壁体10内の断熱材11の充填状態を検査する度に壁体10を破壊すると、再び壁体10を製造する必要があるため、製造コストの増大を招く。
【0036】
これに対し、本実施例によれば、前記したように、製造された壁体10を断熱材11の充填状態の検査のために破壊する必要はないので、製造された壁体10をパネル部材内の断熱材の充填状態の検査のために破壊することによる製造コストの増大を確実に防止することができる。
【0037】
更に、壁体10の出荷前に該壁体の断熱性能を検査することができることから、建物の完成後に建設現場で壁体10の断熱性能を検査する必要はない。これにより、建物の壁体の断熱性能を従来のように建設現場で検査する場合に比べて、建設現場での作業工程数の削減を確実に図ることができる。
【0038】
また、前記したように、壁体10の外壁材12の表面12cに施された塗装を乾燥させるための前記加熱装置の熱を利用して該表面を加熱することから、外壁材12の表面12cを均一に加熱することができる。
【0039】
外壁材12の表面12cが均一に加熱されない場合、壁体10の充填部17及び充填不良部16のそれぞれの内部で温度の偏りが生じてしまい、サーモグラフィ装置18で撮影された内壁材13の熱画像から正確な温度分布を得ることができない。
【0040】
これに対し、本実施例によれば、外壁材12の表面12cを均一に加熱することができることから、壁体10の充填部17及び充填不良部16のそれぞれの内部に温度の偏りが生じることはなく、従って、サーモグラフィ装置18で撮影された内壁材13の熱画像から正確な温度分布を確実に得ることができる。
【0041】
[実施例2]
実施例1では、壁体10のサーモグラフィカメラ19により撮影される被撮影面である内壁材13に前記した充填不良部16に対応する部分と前記した充填部17に対応する部分との間で温度差を生じさせるために、外壁材12の表面12cに施された塗装を乾燥させるための前記加熱装置の熱を利用して外壁面12の表面12cを加熱した例を示したが、これに代えて、図3に示すように、壁体10の前記被撮影面に充填不良部16に対応する部分と充填部17に対応する部分との間で温度差を生じさせるために、組み立てられた壁体10内に温風を吹き込むことにより該パネル部材内を加熱することができる。
【0042】
この断熱材充填検査方法では、図3に示すように、壁体10内に吹き込む温風を発生する温風発生装置20を用いる。また、本実施例では、壁体10の外壁材12及び内壁材13は、それぞれ平面が矩形状をなしており、壁体10内には、外壁材12の短辺方向に沿って伸びる四つの断熱材11が外壁材12の長辺方向に配列されている。
【0043】
壁体10内の断熱材11の充填状態を検査する際、先ず、前記したように組み立てられた壁体10を、その外壁材12及び内壁材13の各一方の長辺12d,13cが温風発生装置20に対向するように配置し、温風発生装置20からの温風を外壁材12と前記内壁材との間に吹き込む。
【0044】
このとき、壁体10内の前記充填不良部16では、その内部への温風の流入が各断熱材11により妨げられることなく許される。これにより、外壁材12及び内壁材13の前記充填不良部16に対応する部分が壁体10の内部から温風により直接加熱される。
【0045】
他方、壁体10内の前記した充填部17では、各断熱材11により壁体10内への温風の流入が許されない。これにより、外壁材12及び内壁材13の充填部17に対応する部分が充填不良部16に対応する部分に比べて温風による加熱がされ難くなる。
【0046】
これにより、外壁材12及び内壁材13のそれぞれの充填不良部16に対応する部分の温度が、それぞれの充填部17に対応する部分の温度よりも高くなり、外壁材12及び内壁材13のそれぞれに温度差が生じる。
【0047】
次に、壁体19を、図示の例では、その外壁材12が図示しないが前記したと同様のサーモグラフィカメラに対向するように配置し、外壁材12を前記サーモグラフィカメラにより撮影する。その後、実施例1と同様に、前記サーモグラフィカメラにより得られた外壁材12の熱画像から外壁材12に生じた温度差を認識し、この温度差から壁体10内に形成された充填部17及び充填不良部16を判別する。
【0048】
本実施例では、外壁材12を前記サーモグラフィカメラにより撮影した例を示したが、これに代えて、内壁材13を前記サーモグラフィカメラにより撮影することができる。
【0049】
[実施例3]
実施例1及び実施例2とは別に、壁体10の前記被撮影面に充填不良部16に対応する部分と充填部17に対応する部分との間で温度差を生じさせるために、壁体10の製造時に、加熱した断熱材11を壁体10内に配置することができる。
【0050】
本実施例に係る断熱材充填検査方法では、先ず、図4(a)に示すように、外壁材12の上端部12a及び下端部12bにそれぞれ前記した連結部材14を取り付け、図4(b)に示すように、加熱された断熱材11を各連結部材14間に配置する。
【0051】
断熱材11の加熱は、図5に示すように、加熱炉21を用いて行われる。加熱炉21は、全体に箱型をなしており、その下部21aには、加熱炉21内に温風を放出する温風ヒータ22が設けられている。この加熱炉21を用いて断熱材11を加熱する際、加熱炉21内に断熱材11を収納し、温風ヒータ22から放出される温風の熱により断熱材11を加熱する。
【0052】
加熱した断熱材11を壁体10内に配置した後、図4(c)に示すように、外壁材12に各連結部材14を介して内壁材13を取り付ける。この状態では、外壁材12及び内壁材13の断熱材11に接触する部分すなわち外壁材12及び内壁材13のそれぞれの前記した充填部17に対応する部分は、断熱材11から放出される熱により加熱される。他方、外壁材12及び内壁材13の断熱材11に接触していない部分すなわち外壁材12及び内壁材13のそれぞれの前記した充填不良部17に対応する部分は、断熱材11からの放熱によっては加熱されない。
【0053】
これにより、外壁材12及び内壁材13のそれぞれの断熱材11に接触している部分の温度が、外壁材12及び内壁材13のそれぞれの断熱材11に接触していない部分の温度よりも高くなり、外壁材12及び内壁材13のそれぞれに温度差が生じる。
【0054】
次に、壁体19を、図4(d)に示す例では、その内壁材13が前記したと同様のサーモグラフィカメラ19に対向するように配置し、内壁材13を前記したと同様のサーモグラフィ装置18のサーモグラフィカメラ19により撮影する。その後、実施例1と同様に、サーモグラフィカメラ19により得られた内壁材13の熱画像から内壁材13に生じた温度差を認識し、この温度差から壁体10内に形成された充填部17及び充填不良部16を判別する。
【0055】
本実施例では、内壁材13をサーモグラフィカメラ19により撮影した例を示したが、これに代えて、外壁材12をサーモグラフィカメラ19により撮影することができる。
【0056】
実施例1乃至実施例3では、壁体10を構成するパネル部材内に配置された断熱材11の充填状態を検査するのに本発明を用いた例を示したが、これに代えて、工業化住宅の例えば床や天井等を構成するパネル部材内に配置された断熱材の充填状態を検査するのに本発明を用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明に係る壁体を概略的に示す縦断面図である。
【図2】(a)乃至(d)は、実施例1に係る断熱材充填検査方法を概略的に示す説明図である。
【図3】実施例2に係る断熱材充填検査方法を概略的に示す説明図である。
【図4】(a)乃至(d)は、実施例3に係る断熱材充填検査方法を概略的に示す説明図である。
【図5】実施例3に係る加熱炉を概略的に示す説明図である。
【符号の説明】
【0058】
10 パネル部材(壁体)
11 断熱材
12 外壁材
12a 表面(外壁材の表面)
13 内壁材
16 充填不良部
17 充填部
18 サーモグラフィ装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
工業化住宅に用いられ内部に断熱材が収納される空間が形成されたパネル部材内の前記断熱材の充填状態を検査する断熱材充填検査方法であって、前記パネル部材の製造時に該パネル部材の内部に前記断熱材を配置した後、前記パネル部材を製造工場から出荷する前に、前記パネル部材をサーモグラフィ装置により撮影し、撮影された熱画像から温度差を認識し、この温度差から前記パネル部材内の前記断熱材が充填された充填部と充填不良が生じた充填不良部とを判別することを特徴とする断熱材充填検査方法。
【請求項2】
前記パネル部材の一面を加熱し、該一面から前記パネル部材の前記一面と反対側に位置する他面に伝わる輻射熱により該他面の前記充填部に対応する部分と前記充填不良部に対応する部分との間に温度差を生じさせ、前記他面を前記サーモグラフィ装置によって撮影することにより前記他面の温度差を前記熱画像から認識することを特徴とする請求項1に記載の断熱材充填検査方法。
【請求項3】
前記パネル部材は互いに間隔をおき且つほぼ平行に配置される板状の外壁材及び内壁材を有する壁体であり、前記断熱材は前記外壁材及び前記内壁材間に配置されており、前記一面は前記外壁材の表面であり、該表面に施された塗装を乾燥させるための熱源の熱により前記表面を加熱し、前記内壁材を前記サーモグラフィ装置によって撮影することにより前記内壁材に生じた温度差を前記熱画像から認識することを特徴とする請求項2に記載の断熱材充填検査方法。
【請求項4】
前記パネル部材内に温風を吹き込むことにより該パネル部材内を加熱し、前記パネル部材の前記サーモグラフィ装置により撮影される被撮影面の前記充填部に対応する部分と前記充填不良部に対応する部分との間に温度差を生じさせ、その温度差を前記熱画面から認識することを特徴とする請求項1に記載の断熱材充填検査方法。
【請求項5】
前記パネル部材内に前記断熱材を配置するに先立って該断熱材を加熱し、加熱した該断熱材を前記パネル部材内に配置することにより前記パネル部材の前記サーモグラフィ装置により撮影される被撮影面の前記充填部に対応する部分と前記充填不良部に対応する部分との間に温度差を生じさせ、その温度差を前記熱画面から認識することを特徴とする請求項1に記載の断熱材充填検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−147284(P2007−147284A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−337947(P2005−337947)
【出願日】平成17年11月24日(2005.11.24)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】