説明

断熱材用硬質ウレタンフォーム、硬質ウレタンフォーム製造用プレミックスポリオール、硬質ウレタンフォームの製造方法及び冷蔵庫

【課題】ウレタンフォームとABS樹脂製内箱との間に表層ボイドが形成され、冷蔵庫内の空間を形成するABS樹脂製内箱表面の外観に凹凸のある歪を与える、冷蔵庫の断熱箱体及び断熱扉体に充填する硬質ウレタンフォーム、その硬質ウレタンフォーム製造用プレミックスポリオール、硬質ウレタンフォームの製造方法及び冷蔵庫の提供。
【解決手段】活性水素を4〜8個有する活性水素含有化合物にアルキレンオキシドを付加した、低粘度のポリオール成分30〜80重量%を含み、また、整泡剤が一般式(1)の化学構造を有する、SP値(溶解パラメータ)8.1〜8.6であることを特徴とするプレミックスポリオールを用いて発泡する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷蔵庫の断熱箱体及び断熱扉体に充填する硬質ウレタンフォーム、その硬質ウレタンフォーム製造用プレミックスポリオール、硬質ウレタンフォームの製造方法及び冷蔵庫に関する。
【背景技術】
【0002】
冷蔵庫の断熱体には、金属板と樹脂板の空間に気泡を有する硬質ポリウレタンフォームを用いた断熱材が用いられている。この硬質ウレタンフォームは、ポリオール成分とイソシアネート成分を発泡剤、触媒、整泡剤の存在下で反応させることにより得られるものである。
【0003】
ウレタン用発泡剤として広く使われてきたCFC−11は、日米において1995年末、HCFC−141Cは2003年末までに全廃となった。これに伴い、オゾン層破壊係数がゼロのノンフロン系発泡剤は、欧州を中心に炭化水素系化合物への代替えが活発となり、日本でもシクロペンタン発泡剤が冷蔵庫の断熱分野に使用されてきた(特許文献1、2、非特許文献1)。
【0004】
しかし、シクロペンタンはフロン系発泡剤に比べ、ガスの熱伝導率が高く断熱性能が大きく劣るという問題があった。また、シクロペンタン処方のウレタンフォームは高密度で流動性が劣るため、ウレタン充填量を多く使用しなければ、細部までウレタンが充填されず、断熱性能および強度の確保が十分でないという問題があった。この問題に対し、発泡剤としてシクロペンタンと併用する水の配合量を多くし、低密度および高強度の特性が両立できるシクロペンタン処方が開発された(特許文献2)。
【0005】
特許文献3には、真空断熱パネルの面積増大により、ヒートブリッジの影響を抑制し、真空断熱パネルの折り曲げ部からの熱リークを防止するために、バインダーを含まない遷移集合体からなる芯材を用いる技術が開示されている。
【0006】
また、地球温暖化問題への対応やエネルギー需給バランスの確保について深刻に考える時期であり省エネによる冷蔵庫の断熱性能の向上は必至である。これらの観点から、シクロペンタン発泡剤を用いたウレタン断熱材の更なる高性能化が要求される。
【0007】
特に、近年では、より断熱性能が優れた冷蔵庫の要求に対し、真空断熱材を厚くする設計が検討されている。しかし、真空断熱材を厚くすると、断熱体内部のウレタフォーム原料が流動する空間が狭くなり、ウレタンフォームを充分に充填するのが難しくなる。また、冷蔵庫の省スペース化の要求等により、断熱体内の空間の狭隙化及び複雑形状化に伴い、断熱体内部はウレタンフォーム原料が流動しにくくなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3475763号
【特許文献2】特許第3475762号
【特許文献3】特開2009−228917号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】『ポリウレタン創製への道―材料から応用まで―』監修:松永勝治
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ウレタンフォーム原料の流動性が悪く、断熱箱内部にウレタンフォームが充分に充填されずに、断熱体内部空間にボイドが生じると冷蔵庫の断熱効果が低下する。流動性改善には、ウレタンフォーム原料のひとつであるプレミックスポリオールの低粘度化が有効である。しかし、プレミックスポリオールを低粘度化するため、低分子ポリオールの配合量を増加させると、ウレタン強度が低下する問題がある。
【0011】
本発明の目的は、硬質ウレタンフォームの機械的強度を低下させることなく、ウレタンフォーム原料(プレミックスポリオール)の流動性を向上させ、冷蔵庫の断熱体への充填性を良くし、冷蔵庫の断熱性及び外観性を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、ウレタンフォーム原料(プレミックスポリオール)の流動性を向上させるため、ウレタンフォームの強度を低下させることなく、プレミックスポリオールの粘度を低くできる組成として、活性水素を4〜8個を有する活性水素化合物にアルキレンオキシドを付加した、低粘度のポリオール成分の30〜80重量%を含み、また、整泡剤において一般式(1)の化学構造を有する、SP値(溶解パラメータ)8.1〜8.6であることを特徴とする整泡剤を含むプレミックスポリオールを提供するものである。上記整泡剤を用いると、プレミックスポリオール組成物中のポリオールとシクロペンタンとの相溶性が改善され、プレミックスポリオール組成物の低粘度化がはかられ、断熱体への充填性が改善され、かつ得られる硬質ウレタンフォームの十分な強度を保持することができる。
【0013】
本発明はまた、硬質ウレタンフォームの製造方法及びこの硬質ウレタンフォームを真空断熱パネルに用いた冷蔵庫を提供するものである。
【0014】
【化1】

【0015】
式(1)において、x/y=10〜20、m+n=20〜35が好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ウレタンフォーム原料の流動性を改善し、冷蔵庫の金属板及び樹脂板と硬質ポリウレタンフォームの間に形成されたボイドを低減し、冷蔵庫の断熱性及び外観性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明が適用される冷蔵庫の正面図。
【図2】図1の断面図。
【図3】図2のB部拡大図。
【図4】図2のC部拡大図。
【図5】真空断熱材の構成法の一例を示す概略斜視図。
【図6】4点注入により硬質ウレタンフォームを充填する図。
【図7】1点注入により扉体に硬質ウレタンフォームを充填する図。
【図8A】従来の硬質ウレタンフォーム原料を用いた冷蔵庫の真空断熱パネルの断面構造図。
【図8B】本発明による硬質ウレタンフォーム原料を用いた冷蔵庫の真空断熱パネルの断面構造図。
【図9】硬質ウレタンフォームを充填した断熱扉体のサンプル採取位置を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明について詳細に説明する。
まず、冷蔵庫本体1の全体構成に関して図1及び図2を参照しながら説明する。図1は本発明が適用される冷蔵庫の正面図、図2は図1のA−A断面図である。
【0019】
冷蔵庫本体1は、断熱箱体20と断熱扉6a、6b、7a、7b、8、9とを主要な構成要素として備えている。この断熱箱体20は、天面、底面、両側面及び背面からなり、前面を開口した箱型形状をしている。そして、断熱箱体20は、図2に示すように、2、製氷室3a、貯氷室3b及び切替え室、冷凍室4、野菜室5を上からこの順に有している。
【0020】
断熱扉6a〜9は、各室2〜5の前面開口部を閉塞する扉である。各室2〜5に対応して冷蔵室扉6a、6b、貯氷室扉7a及び上段冷凍室扉7b、下段冷凍室扉8、野菜室扉9が配置されている。冷蔵室扉6a、6bはヒンジ10を中心に回動する観音開き式扉であり、冷蔵室扉6a、6b以外の扉は全て引き出し式の扉である。これらの引き出し式扉7〜9を引き出すと、各室を構成する容器が扉と共に引き出されてくる。各扉6〜9は断熱箱体20を密閉するためのパッキン11を備えている。このパッキン11は各扉6〜9の室内側外周縁に取り付けられている。
【0021】
また、冷蔵室2と製氷室3a及び上段冷凍室3bとの間は、区画断熱するための断熱仕切り12が配置されている。この断熱仕切り12は、厚さ30〜50mm程度の断熱壁であり、発泡スチロール、発泡断熱材(例えばウレタンフォーム)、真空断熱パネル等のそれぞれを単独使用又は複数の断熱材を組み合わせて作られている。また、製氷室3a及び上段冷凍室3bと下段冷凍室4との間は、温度帯が同じであるため区画断熱する断熱仕切りではなく、パッキン受面を形成する仕切り部材13が設けられている。下段冷凍室4と野菜室5との間には、区画断熱するための断熱仕切り14が設けられている。この断熱仕切り14は、断熱仕切り12と同様に、30〜50mm程度の断熱壁である。基本的に冷蔵、冷凍等の貯蔵温度帯の異なる部屋の仕切りには断熱仕切りが設置されている。断熱仕切り12、14は、発泡スチロール33と真空断熱パネル50とで構成されている。
【0022】
なお、断熱箱体20内には上から冷蔵室2、製氷室3a及び上段冷凍室3b、下段冷凍室4、野菜室5の貯蔵室をそれぞれ区画形成しているが、各貯蔵室の配置については特にこれに限定するものではない。また、冷蔵室扉6a、6b、製氷室扉7a、上段冷凍室扉7b、下段冷凍室扉8、野菜室扉9に関しても回転による開閉、引き出しによる開閉及び扉の分割数等、特に限定するものではない。
【0023】
断熱箱体20は、金属製の外箱21と合成樹脂製の内箱22とを備え、外箱21と内箱22とによって形成される空間に断熱部を設けて各貯蔵室と外部とを断熱している。この外箱21または内箱22の内側に沿って真空断熱パネル50′を配置し、真空断熱パネル50′以外の空間に硬質ウレタンフォーム等の発泡断熱材23を充填して断熱部が構成されている。真空断熱パネルを一般的に表す際には符号50を用い、特定の場所の真空断熱パネルを表す際には符号50の後にアルファベット等の添え字をすることとする。
【0024】
外箱21は、折り曲げられた鋼板または平坦な鋼板を溶接することにより、天面、底面、両側面及び背面からなる箱状に形成されている。内箱22は、合成樹脂板を成形することにより、天面、底面、両側面及び背面からなる箱状に形成されている。
【0025】
冷蔵室2、製氷室3a、冷凍室4、野菜室5等の各室を所定の温度に冷却するために製氷室3a、冷凍室4の背側には冷却器28が備えられている。この冷却器28と圧縮機30と凝縮器31とキャピラリーチューブ(図示せず)とを接続し、冷凍サイクルを構成している。冷却器28の上方にはこの冷却器28にて冷却された冷気を冷蔵庫内に循環して所定の低温温度を保持する送風機27が配設されている。
【0026】
内箱22の天面の一部に、発泡断熱材23側に突き出したケース45aを有する庫内灯45を設置し、冷蔵庫の扉を開けたときの庫内を明るく、見え易くしている。庫内灯45は、白熱電球、蛍光灯、キセノンランプ等が用いられる。庫内灯45の設置により、ケース45aと外箱21との間の発泡断熱材23の厚さが薄くなってしまうため、この部分に真空断熱パネル50aを配置して断熱性能を確保している。
【0027】
断熱箱体20の天面の後部には、冷蔵庫本体1の運転を制御するための制御基板や電源基板等の電気部品41を収納するための凹段部40が形成されている。これによって、外箱21の天面は凹段部40による立体形状を呈することとなる。電気部品41は発熱量が大きな自己発熱部品である。凹段部40には、電気部品41を覆うカバー42が設けられている。カバー42の高さは外観意匠性と内容積確保を考慮して、外箱21の天面とほぼ同じ高さになるように配置している。カバー42の高さが外箱の天面よりも突き出る場合は10mm以内の範囲に収めることが望ましい。凹段部40は発泡断熱材23側に電気部品41を収納する空間だけ窪んだ状態であるため、発泡断熱材23を厚くしてこの部分の断熱性能を確保しようとすると、内容積が犠牲になってしまう。逆に、内容積を確保しようとすると、凹段部40と内箱22との間の発泡断熱材23の厚さが薄くなり、断熱性能が悪くなってしまう。
【0028】
これらのことから、凹段部40の発泡断熱材23側の面に真空断熱パネル50aを配置して断熱性能を強化している。具体的には、真空断熱パネル50aを庫内灯45のケース45aと電気部品41とに跨るように1枚の立体形状の真空断熱パネル50aを設置している。
【0029】
断熱箱体20の底面の後部に機械室15が左右全幅にわたって形成されている。この機械室15には圧縮機30及び凝縮器31が配置されている。圧縮機30、凝縮器31は発熱量の大きい自己発熱部品である。そこで、この機械室15から庫内への熱侵入を防止するため、内箱22側への投影面に1枚の立体形状の真空断熱パネル50bを配置している。
【0030】
次に、図3及び図4を参照しながら、真空断熱パネル50a、50bの設置に関して具体的に説明する。図3は図2におけるB部拡大図、図4は図2におけるC部拡大図である。
【0031】
図3に示すように、凹段部40の前方に位置する外箱21の天面の内側に接する蛇行状の放熱パイプ60が設置されている。この放熱パイプ60はアルミテープ60aでカバーされて外箱21に固定されている。これによって、放熱パイプ60の熱はアルミテープ60aを介しても外箱21に伝熱される。
【0032】
凹段部40は、外箱21の天面の後部から傾斜して後方に沈み込む傾斜面と、この傾斜面から後方に水平に延びる水平底面とを備える。即ち、外箱21の天面は前側水平面と傾斜面と後側水平面とからなる立体形状となっている。
【0033】
一方、真空断熱パネル50aは、板厚がほぼ同一で2段曲げ成形された立体形状を有し、前側水平部と、この前側水平部から後方に沈み込む傾斜部と、この傾斜部から後方に水平に延びる後側水平部と、からなっている。真空断熱パネル50aの立体形状は、外箱21の天面の立体形状とほぼ合致している。
【0034】
この真空断熱パネル50aは、放熱パイプ60と凹段部40とに跨るように設置されている。具体的には、真空断熱パネル50aの一側の全面が柔軟性と断熱性とを有する接着部材62を介して外箱21の天面に貼り付けられている。これによって、放熱パイプ60の熱を直接真空断熱パネル50aに伝えないため、放熱パイプ60の熱による真空断熱パネル50aの断熱性能の経時劣化を抑制し、長期に亘って断熱性能を維持することができる。本実施例では、この接着部材62として、両面粘着剤付のポリエチレンフォーム製のシート材を用いているので、放熱パイプ60による隙間を塞ぎながら、真空断熱パネル50aを簡単に設置することができる。
【0035】
上述したように、放熱パイプ60と電気部品41を配置した凹段部40とに跨って1枚の真空断熱パネル50aで断熱しているので、簡単な構成で、自己発熱部品を配置した部分における断熱性能を格段に向上することができる。
【0036】
また、高温部側に近い部分で真空断熱パネル50aにより断熱しているので、放熱パイプ60及び電気部品41から庫内への熱漏洩をより一層低減することができる。
【0037】
図4に示すように、断熱箱体20の底面の後部には、圧縮機30及び凝縮器31が配置される機械室15が設けられている。この機械室15の形成により、断熱箱体20の底面は、前側水平部と、この前側水平部から後方に立ち上がる傾斜部と、この傾斜部から後方に水平に延びる後側水平部と、からなる立体形状をしている。従って、外箱21及び内箱22の底面は、前側水平部と、この前側水平部から後方に立ち上がる傾斜部と、この傾斜部から後方に水平に延びる後側水平部とからなる立体形状をしている。
【0038】
一方、真空断熱パネル50bは、板厚がほぼ同一で2段曲げ成形された立体形状を有し、前側水平部と、この前側水平部から後方に立ち上がる傾斜部と、この傾斜部から後方に水平に延びる後側水平部と、からなっている。真空断熱パネル50の立体形状は、内箱22の底面の立体形状とほぼ合致している。
【0039】
この真空断熱パネル50bは、内箱22の前側水平部、傾斜部及び後側水平部に跨るように設置されているので、簡単な構成で、断熱性能を格段に向上することができ、圧縮機30及び凝縮器31から庫内への熱漏洩を確実に低減することができる。
【0040】
既に述べたように、機械室15の直上に位置する庫内背面部に冷却器28を備え、立体形状の真空断熱パネル50bが冷却器28と圧縮機30及び凝縮器31との間に介在するように配置されている。このように最も温度が低くなる冷却器28と最も温度が高くなる圧縮機30と間に配置する真空断熱パネル50bを立体形状にして、その一側端部が発熱部である圧縮機30及び凝縮器31から離れた位置にしているので、そのヒートブリッジによる影響を低減することができる。なお、圧縮機30と冷却器28の間に位置する真空断熱パネル50bは、ドレンパイプ(図示せず)を逃げるための切欠きを設けている。この切欠きの有無、或いはその形状については特に限定するものではない。
【0041】
機械室15の内箱側投影面の一部には庫内温度を感知するための庫内温度検知手段(庫内温度検知センサー)48が設けられている。この庫内温度検知手段48は、庫内への突き出しを無くすために、発泡断熱材23側に内箱22を突き出して形成された突き出し部48aの中に収納されている。このため、真空断熱パネル50bはこの突き出し部分48aの形状に合わせて凹凸形状を成形して被覆している。即ち、真空断熱パネル50bは、板厚方向表裏面にそれぞれ窪み部と膨らみ部を一対に形成し且つ窪み部と膨らみ部との間の板厚が他部とほぼ同じとした凹凸形状を有しており、その凹凸形状の窪み部内に突き出し部48aを収納している。
【0042】
なお、図3に示す天面部分の真空断熱パネル50aは、曲げ用の治具を用いて曲げ加工を2回行って略Z形状を得るようにしたものである。図4に示す底面部分の真空断熱パネル50bは、絞りプレスにより凹凸形状を加工し、曲げ用治具によって略Z形状を得るようにしたものである。
【0043】
次に、本発明の他の実施形態の冷蔵庫について図5を用いて説明する。図5は本発明の更に他の実施形態の冷蔵庫の真空断熱パネルの組み込み状態を説明する斜視図である。この実施形態は、次に述べる点は先に説明した実施形態と相違するが、その他の点については先に説明した実施形態と基本的には同一であるので、重複する説明を省略する。
【0044】
この実施形態の冷蔵庫本体1は、断熱箱体20の天面、両側面、背面及び底面の各面に、それぞれ立体形状或いは芯材の一部に切欠きを有する真空断熱パネル50a、50b、50c、50gを配置したものである。天面には先の実施形態で使用のものと同じ真空断熱パネル50aを、側面には芯材の1コーナー部を面取り加工した5角形の板状真空断熱パネル50gを、背面には外板背面21bの形状に沿って略コの字形状に折り曲げ真空断熱パネル50cを、底面には実施形態2で使用したものと同じ真空断熱パネル50bを用いた。
(1)真空断熱パネル(VIP;真空層を有する中空体)と断熱箱(外箱と内箱とによって形成される空間に断熱材を配置したもの)とを組み合わせて断熱層を構成する。
(2)真空断熱パネルは形状が複数種類あり、これらを断熱箱の内部に配置して、断熱層を形成するか、断熱箱体の外面に複数の真空断熱パネルを配置して断熱層を形成する。断熱箱の内部には硬質ウレタンフォームが充填されている。
(3)真空断熱パネルの内少なくとも1つは屈曲した構造を持ち、またそのような真空断熱パネルを包囲する断熱箱体内に屈曲部や狭隘部などのウレタンフォームの充填が困難な部分が形成され得る。
(4)前記外箱の天面、背面及び底面に前記外箱又は前記内箱形状に沿った立体形状の真空断熱パネルを配置し、且つ側面には矩形板状、切欠き形状、立体形状のいずれかの真空断熱パネルを配置すれば、今まで部品の配置等の問題で真空断熱パネルを配置できなかった部分にも、立体形状や切欠き形状等によって配置できるようになり、箱体の断熱性能を飛躍的に向上させることができる。
【0045】
次に本発明において使用されるプレミックスポリオール及びそれを用いて得られる硬質ウレタンフォームについて説明する。
【0046】
本発明のプレミックスポリオール組成物は、ポリオール、整泡剤、触媒、水とシクロペンタンを含むプレミックスポリオール組成物において、活性水素を4〜8個有する活性水素含有化合物にアルキレンオキシドを付加したポリオールをポリオール成分に対し、30〜80重量%を含む化合物である。本発明におけるポリオールは活性水素を4〜8個有する活性水素含有化合物にアルキレンオキシドを付加したポリオールである。これらのポリオールは、反応架橋点が多く、ウレタン強度低下させずにポリオールの低粘度化が可能となる。
【0047】
活性水素基を4〜8個有する活性水素含有化合物としては、活性水素基を4個有する化合物としてはジグリセリン、ペンタエリスリトール、メチルグルコシド、エチレンジアミン、トリレンジアミン、ジフェニルメタンジアミン、テトラメチロールシクロヘキサン等、活性水素基を5個有する化合物としてはグルコース、マンノース、フルクトース、2,2,6,6−テトラキス(ヒドロキシルメチル)シクロヘキサノール等、活性水素基を6個有する化合物としてはジペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール、ズルシトール等、7〜8価アルコールとしてはシュークロース、ラクトースなどの糖類およびその誘導体、フェノール類が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0048】
上記ポリオールの中で、シュークロースは架橋点が多く、硬質ウレタンフォームの強度を保持しながら、プレミックスポリオールとしての粘度を低下させることができるので好ましいポリオールである。
【0049】
活性水素基を4〜8個有する活性水素含有化合物に付加するアルキレンオキシドとしては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド等を用いることができる。このうち、いずれかのオキシド1種を用いてもよく、2種以上のオキシドを併用してもよい。2種以上のオキシドを併用する場合、これらを順次反応させてもよく、またはこれらを混合して反応させてもよい。
【0050】
用いることができるポリオールの粘度は、2000〜6000mPa・s(25℃)であり、好ましくは3000〜5000mPa・sである。また、当該ポリオールの平均分子量は600〜1300であり、好ましくは平均分子量が800〜1000のポリオールが良い。平均分子量が600よりも小さなポリオールを用いた場合、ポリオールの粘度は低下し流動性は向上するが、硬質ウレタンフォームの強度が低下する。一方、1300よりも大きなポリオールを用いると、プレミックスポリオールの粘度が上昇し、ウレタンフォームにボイドが発生し熱伝導率が悪化する。
【0051】
一方で、低粘度化を可能にする活性水素基を4〜8個有する活性水素含有化合物にアルキレンオキシドを付加したポリオールは極性が高いため、発泡剤であるシクロペンタンとプレミックスポリオールの相溶性を悪化させてしまう。そこで、本発明に用いることのできる整泡剤は一般式(1)の化学構造を有し、SP値(溶解パラメータ)が8.1〜8.6であることを特徴とする。
【0052】
ここで、SP値(溶解パラメータ)とは、数式(1)で求められるものである。
【0053】
【数1】

【0054】
ただし、式中、ΔHはモル蒸発熱(cal/モル)、Vはモル体積(cm3/モル)を表す。また、ΔHおよびVは“Polymer Engineering and Science, February, 1974, Vol. 14,No.2, Robert F.Fedors. (p151-153)”に記載の原子団のモル体積(Δvi)の合計(V)を用いることができる。
【0055】
また、一般式(1)で示される構造の整泡剤のうち、x/yは10〜20および、m+nが20〜35の範囲にある有機シリコーンであれば、限定されない。
【0056】
本発明で用いることができる整泡剤を含むプレミックスポリオールにおいて、相溶あるいは溶解していないシクロペンタンの平均粒径(液体粒子)は6μm以下である。平均粒径が6μm超であると、プレミックスポリオールとシクロペンタンの相溶性が悪化しているため、断熱箱体の内箱と硬質ウレタンフォームとの間に形成されたボイドの数及び大きさが増して、断熱箱体の断熱性を低下させる。シクロペンタンの平均粒径は、6μm以下(ゼロを含む)であればよく、シクロペンタンがプレミックスポリオールに完全に相溶し、シクロペンタン粒子が観察できなくなってもよい。
【0057】
ここでいう平均粒径とはプレミックスポリオールをパイレックス(登録商標)製プレパラートに50μL滴下し、カバーガラスで試料を挟み、顕微鏡、Nikon製OPTIPHOT2−POLを用いて、混合組成物に対し、相溶あるいは溶解していないシクロペンタンの粒径を顕微鏡により観察し、計測した粒径である。
【0058】
本発明において、公知の泡化触媒、樹脂化触媒、ヌレート化触媒が用いられ、具体的には、ペンタメチルジエチレントリアミン、ビス(ジメチルアミノエチル)エーテル、N,N,N′−トリメチルアミノエチルエタノールアミン、N,N−ジメチルアミノエトキシエタノール、ジエチルシクロヘキシルアミン、トリエチレンジアミン、N,N,N′,N′−テトラメチルヘキサンジアミン、N,N,N′,N′−テトラメチルプロピレンジアミン、N,N,N′,N′−テトラメチルエチレンジアミン、N,N′,N″−トリス(3−ジメチルアミノプロピル)ヘキサヒドロ−s−トリアジン、N,N′,N″−トリス(3−ジエチルアミノプロピル)ヘキサヒドロ−s−トリアジン等を用いることができる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を混合して用いて用いてもよい。
【0059】
本発明のプレミックスポリオールにおける水とシクロペンタンの最適な配合比は、ポリオール100重量部に対し、1.4〜2.0部の水と14.0〜18.0部のシクロペンタンである。水とシクロペンタンの配合比は、前記記載の範囲であれば限定されない。
【0060】
本発明に使用されるポリイソシアネートは、従来公知のものであればよく、特に限定するものではないが、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)とその誘導体があり、これらは単独で使用しても、混合して使用しても差し支えない。TDIとその誘導体としては、例えば、2,4−TDIと2,6−TDIの混合物、TDIの末端イソシアネートプレポリマー誘導体等を挙げることができる。また、MDIとその誘導体としては、例えば、MDIとその重合体のポリフェニルポリメチレンジイソシアネートの混合体、末端イソシアネート基をもつジフェニルメタンジイソシアネート誘導体等を挙げることができる。
【0061】
本発明の硬質ウレタンフォームは通常の高圧発泡機で形成され、例えばプロマート社製PU−30型発泡機を用いることができる。発泡条件は液温18〜30℃、吐出圧力80〜150kg/cm2、吐出量15〜30kg/min、型箱の温度は45℃近辺である。
【0062】
本発明の冷蔵庫に発泡充填する硬質ウレタンフォームは、低粘度かつシクロペンタンとの相溶性の良好なプレミックスポリオールを用いることで、樹脂とウレタンフォームの間に形成される表層ボイドが少ない、すなわち、冷蔵庫内の空間を形成する樹脂製内箱表面の外観歪が少ない冷蔵庫を製造できる。外観歪の除去は冷蔵庫の美観上、重要な要素である。
【0063】
本発明の冷蔵庫に発泡充填する硬質ウレタンフォームは、ウレタン注入口から少なくとも500mm以上離れた硬質ウレタンフォームの曲げ強度が0.4MPa以上である。
【0064】
[実施例]
以下実施例について説明する。
【0065】
(実施例1〜8)
ポリオール成分(a)として、アルキレンオキサイドを付加したペンタエリスリトール系ポリオール(ポリオールA)またはシュークロース系ポリオール(ポリオールB)またはソルビトール系ポリオール(ポリオールC)のうち少なくとも1種類以上を使用した。
なお、ポリオールは混合物であるので、“系”を付して記載した。
【0066】
ポリオール成分(a)として、トリレンジアミン、グリセリン、トリエタノールアミンにアルキレンオキサイドを付加したポリオール(それぞれ、ポリオールD、E、Fとする)のうち少なくとも1種類以上を使用した。
【0067】
ポリオール成分(a)+(b)の平均分子量Mwは600〜1300である。ポリオール成分(ポリオール成分(a):ポリオール成分の30〜80重量%、ポリオール成分(b):70〜20重量%を含む)100重量部を用いて、発泡剤として水1.8部およびシクロペンタン(日本ゼオン社製)15.3部、反応触媒として三級アミン触媒を3.0部、整泡剤としてSP値が8.1〜8.6である有機シリコーンを2.5部、イソシアネート成分としてポリメチレンポリフェニルジイソシアネートを使用し、充填発泡して硬質ウレタンフォームを作製した。
【0068】
図6に4点注入により硬質ウレタンフォームが充填される断熱箱体の模式図を示す。箱体の場合は箱体前面を下側、箱体背面が上側になるように、こちらも予め温調された発泡治具にセットし、規定量の硬質ウレタンフォームを空隙部分に注入する。その時に、プレミックスポリオールの活性水素基含有化合とイソシアネートが化学反応し、発泡圧力により加圧され、発泡ウレタンフォームが冷蔵庫の壁内、すなわち、外箱スチール板103と内箱樹脂板104からなる空間に注入され断熱箱体が形成される。
【0069】
また、図7は、1点注入により扉体に硬質ウレタンフォームを充填する模式図を示す。
ウレタン注入空隙を有するスチール板からなる外箱(ドア板)108と、樹脂の成形品からなる内箱(ドアライナ)106から成形される断熱体を作製し予め温調する。その後、扉体の場合は外箱(ドア板)108が下側、内箱(ドアライナ)106が上側になるように、発泡冶具109a、109bにセットし規定量の硬質ウレタンフォームを空隙部分に注入する。なお、扉体の場合は、外箱(ドア板)面108に硬質ウレタンフォームを注入後、規定時間後に発泡治具上蓋109aを閉じることにより断熱空間を確保する。また、冷蔵室扉6a、6b、製氷室扉7a、上段冷凍室扉7b、野菜室扉9に関しては、真空断熱材パネルの有無や位置に違いはあるが、同様に発泡冶具109a、109bを使用して断熱扉体は形成される。
【0070】
図6に断熱箱体に充填された硬質ウレタンフォームのサンプル採取位置105aを、図9に断熱扉体に充填された硬質ウレタンフォームのサンプル採取位置105bを示す。該サンプルからウレタンフォームを切り出した。
【0071】
箱体と扉体それぞれの断熱材の物性・特性結果を表1に示す。なお、表1の各物性・特性は下記のようにして調べた。
【0072】
【表1】

【0073】
粘度
回転粘度計、HAKKE社Rhep Stress RS100 TC500により、直径20mmのパラレルプレートを使用して25℃の室温で、各サンプルの測定を行った。
【0074】
プレミックスポリオール中のシクロペンタンの粒径
プレミックスポリオール(混合ポリオール成分100重量部を用いて、発泡剤として水1.8部およびシクロペンタン(日本ゼオン社製)15.3部、反応触媒として三級アミン触媒を3.0部、整泡剤としてSP値が8.1〜8.6である有機シリコーンを2.5部混合した組成物)をパイレックス製プレパラートに50μL滴下し、カバーガラスで試料を挟み、顕微鏡、Nikon製OPTIPHOT2−POLを用いて、混合組成物に対し、相溶あるいは溶解していないシクロペンタンの粒径を観察、平均粒径を計測した。
【0075】
熱伝導率
断熱箱体:ウレタン注入口から少なくとも500mm以上離れたウレタン充填された断熱材部分から、200mm×200mm×20〜25tmmのフォームを切り出し、英弘精機社製HC−073型(熱流計法、平均温度10℃)にて評価した。
断熱扉体:扉外側面から少なくとも50mm以上離れたウレタンが充填された断熱材部分から、200mm×200mm×20〜25tmmのフォームを英弘精機社製HC−73型(熱流計法、平均温度10℃)にて評価した。
【0076】
曲げ強度
断熱箱体:ウレタン注入口から少なくとも500mm以上離れたウレタン充填された断熱材部分から、80mm×250mm×20〜25tmmのフォームを送り速度10mm/minで負荷し、フォーム折損時の荷重をフォームの幅と厚さの2乗で除した値を評価した。
断熱扉体:扉外側面から少なくとも50mm以上離れたウレタンが充填された断熱材部分から、80mm×250mm×20〜25tmmのフォームを送り速度10mm/minで負荷し、フォーム折損時の荷重をフォームの幅と厚さの2乗で除した値を評価した。
【0077】
低温寸法変化率
断熱箱体:ウレタン注入口から少なくとも500mm以上離れたウレタン充填された断熱材部分から、200mm×200mm×20〜25tmmのフォームを採取し、これを−20℃で24時間放置したときの厚さの寸法変化率を評価した。
断熱扉体:扉外側面から少なくとも50mm以上離れたウレタンが充填された断熱材部分から、150mm×300mm×20〜25tmmのフォームを−20℃で24時間放置した時の厚さ寸法変化率を評価した。
【0078】
高温寸法変化率
断熱箱体:ウレタン注入口から少なくとも500mm以上離れたウレタン充填された断熱材部分から、200mm×200mm×20〜25tmmのフォームを採取し、これを70℃で24時間放置したときの厚さの寸法変化率を評価した。
断熱扉体:扉外側面から少なくとも50mm以上離れたウレタンが充填された断熱材部分から、150mm×300mm×20〜25tmmのフォームを70℃で24時間放置した時の厚さ寸法変化率を評価した。
【0079】
冷蔵庫の熱漏洩量
冷蔵庫の熱漏洩量は、冷蔵庫の動作状態と反対の温度条件を設定し庫内からの熱漏洩量として測定を行った。具体的には、−10℃の恒温室内に冷蔵庫を設置し、庫内温度を所定の測定条件(温度差)になるようにヒータにそれぞれ通電し冷蔵庫の消費電力と冷却性能を比較する温度条件で測定した。冷蔵庫は、本発明の断熱扉体と断熱箱体からなる。実施例1〜5の断熱箱体に対しては、実施例7の組成からなる硬質ウレタンフォームを充填した断熱扉体を組み合わせ、熱漏洩量を測定した。実施例6〜10の断熱扉体に対しては、実施例1の組成からなる硬質ウレタンフォームを充填した断熱箱体を組み合わせ、熱漏洩量を測定した。
【0080】
ボイド数
発泡後24時間以上常温放置し、60℃の試験室に3日間放置後、6時間以上常温放置した冷蔵庫断熱箱体の内箱壁の200mm×200mmの範囲で、内箱面と硬質ウレタンフォームの間に形成された100mm2以上の面積を有するボイドを数えた。図8Aは、本発明の硬質ウレタンフォームを用いた冷蔵庫の真空断熱パネルの断面図で、硬質ウレタンフォームは、断熱箱体102の内部に断熱箱と真空断熱層110の間に充填される。硬質ウレタンフォームの充填性が悪いと、図8Bに示すように内箱樹脂壁と硬質ウレタンフォーム表面の内部にボイド111が形成され、内箱樹脂壁の箱体の表面が変形して外観が悪くなる。
【0081】
なお、断熱扉体は断熱箱体と成形加工方法が異なるため、扉体で箱体に見られる表層ボイドによる樹脂壁の凹凸は生じない。しかし、ウレタンの流動性が悪い場合、扉体の複雑形状部にウレタンが充填せず、複雑形状部全体が変形する。この場合は、箱体の表層ボイドのように数で評価できないが、扉体の熱漏洩量が大きくなり、断熱性能が低下する。以上の理由より、扉体においてはボイド数の評価は行わず、熱漏洩量で評価した。
【0082】
(比較例1〜6)
ポリオール成分(a)として、アルキレンオキサイドを付加したシュークロース系ポリオール(ポリオールB)を使用した。ポリオール成分(a)+(b)の平均分子量Mwは600より小さく、または3000より大きいポリオールを使用した。
【0083】
以下、前記記載実施例1〜8と同様に硬質ウレタンフォームを作製した。
表1において、実施例と比較例1、2を比較する。活性水素を4〜8個有する活性水素含有化合物にアルキレンオキシドを付加したポリオールの配合量が、ポリオール成分に対し、30wt%よりも少ない比較例1では、反応架橋点の多いポリオールが少ないため、曲げ強度が箱体:0.28MPa、扉体:0.25MPaと低下している。また、85wt%以上配合した比較例2では、シクロペンタンとプレミックスポリオールの相溶性が悪化し、シクロペンタンの粒径は11.3μmとなり、熱伝導率は比較例1と比較して、0.8mW/m・K上昇し、熱漏洩量は比較例1と比較して1.7W増加し、冷蔵庫の断熱性能が低下した。
【0084】
実施例と比較例3を比較する。比較例3では熱伝導率と熱漏洩量が上昇しており、1300よりも大きい平均分子量のポリオールを用いると、粘度上昇によりボイドが多く発生し、断熱性能が低下する。
【0085】
実施例と比較例4を比較する。比較例4では、600よりも小さい平均分子量Mwのポリオールを用いており、強度が0.21MPaまで低下し、低分子ポリオールは、フォームの強度を低下させる。
【0086】
実施例と比較例5、6を比較する。整泡剤のSP値が8.1〜8.6の範囲外の整泡剤を用いた比較例5、6では、シクロペンタンの粒径は、それぞれ11.3μm、6.7μmであり、シクロペンタンとプレミックスポリオールの相溶性が悪化し、内箱とウレタンフォームのボイド数が多く、また熱伝導率もそれぞれ、比較例1に比べ、0.4、0.5mW/m・K上昇した。
【0087】
以上より、本発明のプレミックスポリオールにおいて、活性水素基を4〜8個有する活性水素含有化合物にアルキレンオキシドを付加したポリオールをポリオール成分の30〜80重量%を含み、整泡剤のSP値8.1〜8.6であることを特徴とするプレミックスポリオールを用いることで、内箱とウレタンフォームの間に形成されるボイドを減少させ、熱伝導性が向上し熱漏洩量が低下する。さらに、上記プレミックスポリオールを用いると、低温寸法安定性、高温寸法安定性ともに絶対値2%以下となり、ウレタン強度を低下させないウレタンフォームを充填した冷蔵庫を製造できる。
【符号の説明】
【0088】
1 冷蔵庫本体
50a、50b 真空断熱パネル
100 ウレタン注入ヘッド
101 ウレタン注入口
102 断熱箱体
103 外箱スチール板
104 内箱樹脂板
105 ウレタンフォームサンプル採取位置
106 樹脂からなる内箱
107 硬質ウレタンフォーム
108 スチールからなる外箱
109a、109b 発泡冶具
110 真空断熱層
111 表層ボイド
112 サンプル採取距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール、整泡剤、触媒、水とシクロペンタンを含むプレミックスポリオール組成物において、活性水素を4〜8個有する活性水素含有化合物にアルキレンオキシドを付加したポリオールを前記ポリオール成分に対し、30〜80重量%を含むことを特徴とするプレミックスポリオール組成物。
【請求項2】
請求項1において、前記活性水素含有化合物がシュークロースであることを特徴とするプレミックスポリオール組成物。
【請求項3】
請求項1または2において、前記ポリオール成分の粘度が2000〜6000mPa・s(25℃)であることを特徴とするプレミックスポリオール組成物。
【請求項4】
請求項1または2において、前記ポリオール成分の重量平均分子量が600〜1300であることを特徴とするプレミックスポリオール組成物。
【請求項5】
請求項3または4において、前記整泡剤のSP値(溶解パラメータ)が8.1〜8.6である整泡剤を含むことを特徴とするプレミックスポリオール組成物。
【請求項6】
請求項5において、前記整泡剤が式(1)の化学構造を有することを特徴とするプレミックスポリオール組成物。
【化1】

【請求項7】
請求項3または4において、前記シクロペンタンの平均粒径が6μm以下(ゼロを含む)であることを特徴とするプレミックスポリオール組成物。
【請求項8】
請求項6または7に記載のプレミックスポリオール組成物を用いて発泡させた、冷蔵庫断熱箱体の内箱壁の、200mm×200mmの範囲で、内箱面と硬質ポリウレタンフォームの間に形成された100mm2以上の面積を有するボイドが2ヶ所以下である冷蔵庫の外箱と内箱の間の空間に充填された硬質ポリウレタンフォーム。
【請求項9】
請求項6または7に記載のプレミックスポリオール組成物を用いて発泡させたことを特徴とする硬質ポリウレタンフォーム。
【請求項10】
ポリオール、整泡剤、触媒、水とシクロペンタンを含むプレミックスポリオール組成物において、活性水素を4〜8個有する活性水素含有化合物にアルキレンオキシドを付加したポリオールを前記ポリオール成分に対し、30〜80重量%を含むプレミックスポリオール組成物を断熱箱体内において発泡させ、ウレタン注入口から少なくとも500mm以上離れた硬質ウレタンフォームの曲げ強度が0.4MPa以上であることを特徴とする硬質ウレタンフォーム。
【請求項11】
請求項10に記載の硬質ウレタンフォームを冷蔵庫の外箱と内箱の間に形成された空間に充填したことを特徴とする冷蔵庫。
【請求項12】
活性水素含有化合物、整泡剤、触媒、水とシクロペンタンを含むプレミックスポリオール組成物を準備し、該プレミックスポリオールとイソシアネートを混合し、容器内において反応、発泡させて硬質ウレタンフォームを製造するものであって、前記ポリオール成分は、活性水素を4〜8個有する活性水素含有化合物にアルキレンオキシドを付加したポリオールを30〜80重量%を含むことを特徴とする硬質ウレタンフォームの製造方法。
【請求項13】
請求項12において、前記ポリオール成分の粘度が2000〜6000mPa・s(25℃)であることを特徴とする硬質ウレタンフォームの製造方法。
【請求項14】
請求項12または13において、前記ポリオール成分の重量平均分子量が600〜1300であることを特徴とする硬質ウレタンフォームの製造方法。
【請求項15】
請求項12または13において、前記整泡剤のSP値(溶解パラメータ)が8.1〜8.6である整泡剤を含むことを特徴とする硬質ウレタンフォームの製造方法。
【請求項16】
金属板と樹脂板とによって形成される空間内に充填された硬質ウレタンフォームを有する断熱箱及び断熱扉と、前記断熱箱及び断熱扉と接して配置された複数の真空断熱パネルとによって構成された断熱層を有する冷蔵庫において、
前記硬質ウレタンフォームはウレタン注入口から少なくとも500mm以上離れた硬質ウレタンフォームの曲げ強度が0.4MPa以上であることを特徴とする硬質ウレタンフォームであることを特徴とする冷蔵庫。
【請求項17】
金属板と樹脂板とによって形成される空間内で且つ前記金属板または前記樹脂板に沿って複数の真空断熱パネルを配置すると共に前記空間内に硬質ウレタンフォームを充填した断熱箱体と断熱扉体を複数有する冷蔵庫において、
ポリオール、整泡剤、触媒、水とシクロペンタンを含むプレミックスポリオール組成物において、活性水素を4〜8個有する活性水素含有化合物にアルキレンオキシドを付加したポリオールを前記ポリオール成分に対し、30〜80重量%を含むプレミックスポリオール組成物を断熱箱体及び断熱扉体内おいて発泡させ、ウレタン注入口から少なくとも500mm以上離れた硬質ウレタンフォームの曲げ強度が0.4MPa以上であることを特徴とする硬質ウレタンフォーム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−255141(P2012−255141A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−109062(P2012−109062)
【出願日】平成24年5月11日(2012.5.11)
【出願人】(399048917)日立アプライアンス株式会社 (3,043)
【Fターム(参考)】